説明

EP4受容体作動剤としてのシクロヘキシルプロスタグランジン類似体

本発明は、EP作動剤および特に眼圧降下剤としての、E型プロスタグランジンの新規シクロヘキシル類似体の使用に関する。本発明に従って使用するシクロヘキシル類似体は、下記式Iで示される:


[式中、
波線は、αまたはβ結合を表し;
破線は、結合の存在または不存在を表し;
W、Y、Z、R、R1、R2およびR3は明細書に定義するとおりである。]。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EP受容体作動剤としてのシクロヘキシルプロスタグランジン類似体に関する。本発明の化合物は、有効な眼圧降下剤であり、緑内障の処置に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
眼圧降下剤は、多様な高眼圧症状、例えば術後およびレーザートラベクレクトミー後の高眼圧や、緑内障の処置において、並びに術前の補助薬として有用である。
【0003】
緑内障は、眼圧の上昇により特徴付けられる眼疾患である。緑内障は、その病因により、原発性または続発性として分類されている。例えば、成人の原発性緑内障(先天性緑内障)は、開放隅角緑内障であるか、または急性もしくは慢性の閉塞隅角緑内障であり得る。続発性緑内障は、ブドウ膜炎、眼内腫瘍または拡大した白内障のような既存の眼疾患から生じる。
【0004】
原発性緑内障の原因は、未だ解明されていない。その眼圧上昇は、房水流出遮断による。慢性開放隅角緑内障においては、前房およびその解剖学的構造は正常に見えるが、房水の排出は妨げられる。急性または慢性の閉塞隅角緑内障においては、前房が浅く、透過角が狭く、虹彩がシュレンム管の入口の小柱網を閉塞し得る。瞳孔の拡張により、虹彩根部が隅角に対して前方に押され、および瞳孔ブロックを起こして、病状を急進し得る。前房隅角の狭い眼は、種々の重篤度の急性閉塞隅角緑内障に患る素因を有する。
【0005】
続発性緑内障は、後房から前房、次いでシュレンム管への房水の流れのいかなる妨害によっても起こる。前房の炎症性疾患は、膨隆虹彩における完全な虹彩後癒着を起こすことにより房水排出を妨げ得、排液路を滲出物で閉塞し得る。他の通常の原因は、眼内腫瘍、拡大した白内障、網膜中心静脈閉塞、眼の外傷、手術操作および眼内出血である。
【0006】
すべての種類を考慮すると、緑内障は、40歳を超えるすべての人の約2%に起こり、視力が急速に損われるまで何年間も無症候性であり得る。手術が指示されない場合、局所用β−アドレナリン受容体拮抗剤が、従来、緑内障処置薬物として選択されている。
【0007】
ある種のエイコサノイドおよびその誘導体は、眼圧降下活性を有することが報告されており、緑内障処置に使用することが推奨されている。エイコサノイドおよび誘導体は、プロスタグランジンおよびその誘導体のような、多くの生物学的に重要な化合物を包含する。プロスタグランジンは、下記式で示されるプロスタン酸の誘導体であるといえる:
【化1】

【0008】
プロスタン酸骨格の脂環上の構造および置換基によって、様々な種類のプロスタグランジンが知られている。更なる分類は、側鎖中の不飽和結合数に基づいてなされ、プロスタグランジンの種類の後に数字で示され[例えば、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)]、また、脂環上の置換基の配置に基づいてもなされ、αまたはβで示される[例えば、プロスタグランジンF(PGF)]。
【0009】
プロスタグランジンはかつて、有効な眼圧上昇剤であると見なされていた; しかし、過去10年間に蓄積された証拠によると、いくつかのプロスタグランジンは非常に有効な眼圧降下剤であり、緑内障の長期処置に好適であることがわかった(例えば、Bito,L.Z.,Biological Protection with Prostaglandins,Cohen,M.M.編,Boca Raton,Fla,CRC Press Inc.,1985,第231〜252頁;並びにBito,L.Z.,Applied Pharmacology in the Medical Treatment of Glaucomas,Drance,S.M.およびNeufeld,A.H.編,New York,Grune & Stratton,1984,第477〜505頁参照)。そのようなプロスタグランジンは、PGF、PGF、PGE2、およびそれらの脂溶性エステル(例えば、1−イソプロピルエステルのようなC1−C2アルキルエステル)を包含する。
【0010】
プロスタグランジンによる眼圧降下の詳しいメカニズムは未だわかっていないが、実験結果により、ブドウ膜強膜流出の増加によるものであることが示された[Nilssonら,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.(suppl),284(1987)]。
【0011】
PGFのイソプロピルエステルは、親化合物よりもはるかに大きい降圧活性を有することがわかっている。これは、角膜透過性がより高いことによると考えられる。1987年にこの化合物は、「かつて報告されたうちで最も強力な眼圧降下剤」であると文献に記載された[例えば、Bito,L.Z.,Arch.Ophthalmol.,105、1036(1987)、およびSieboldら,Prodrug 5、3(1989)参照]。
【0012】
プロスタグランジンは顕著な眼内副作用を持たないと考えられるが、眼表面(結膜)充血および異物感は、ヒトの眼に対するそのような化合物(とりわけPGFおよびそのプロドラッグ、例えば1−イソプロピルエステル)の局所適用に伴って必ず起こる。高眼圧を伴う症状(例えば緑内障)の処置におけるプロスタグランジンの臨床的使用可能性は、上記のような副作用の故に非常に制限されている。
【0013】
Allergan,Inc.に譲渡された一連の同時係属米国特許出願において、眼圧降下活性が高く、副作用は無い、または実質的に副作用の無いプロスタグランジンエステルが開示されている。同時係属米国特許出願第596430号(1990年10月10日出願、米国特許第5446041号に対応)は、ある種の11−アシル−プロスタグランジン、例えば11−ピバロイル、11−アセチル、11−イソブチリル、11−バレリル、および11−イソバレリルPGFに関する。同時係属米国特許出願第175476号(1993年12月29日出願、現在では放棄されている)には、眼圧降下作用を有する15−アシルプロスタグランジンが開示されている。同様に、プロスタグランジンの11,15−、9,15−および9,11−ジエステル、例えば11,15−ジピバロイルPGFも、眼圧降下活性を有することが知られている。同時係属米国特許出願第385645号(1989年7月7日出願、米国特許第4994274号に対応)、第584370号(1990年9月18日出願、米国特許第5028624号に対応)、および第585284号(1990年9月18日出願、米国特許第5034413号に対応)参照。これらすべての特許出願の開示を、特に引用により本発明の一部とする。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、高眼圧および/または緑内障を処置する方法であって、処置有効量の下記式Iの化合物並びに薬学的に許容されるその塩およびエステルを、高眼圧および/または緑内障の哺乳動物に投与することを含んで成る方法に関する:
【化2】

[式中、
波線は、αまたはβ結合を表し;
破線は、結合の存在または不存在を表し;
Rは、CO2R4、CONR42、CH2OR4、CONR4SO2R4、P(O)(OR4)、および
【化3】

から成る群から選択され;
ここで、Rは、H、フェニル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から成る群から選択され;
nは、0、または1〜4の整数であり;
R1およびR2は、水素、ヒドロキシル、6個までの炭素原子を有する低級アルキルオキシ基、および6個までの炭素原子を有する低級アシルオキシ基から成る群から独立に選択され;
R3は、水素、6個までの炭素原子を有する低級アルキル基、および6個までの炭素原子を有する低級アシル基から成る群から選択され;
Wは、=Oまたはハロゲンであり;
Yは、共有結合であるか、またはCH2、O、SおよびNから成る群から選択され;
Zは、3〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキル基、あるいは6〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル芳香族基、または4〜10個の炭素原子を有し、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される複素環原子を有する複素環式芳香族基を包含する芳香族基である]。
【0015】
他の局面において、本発明は、処置有効量の式(I)の化合物[式中の記号は前記の意義を有する]または薬学的に許容されるその塩を、非毒性の眼科的に許容される液体賦形剤との混合物として含有し、計量適用に好適な容器に充填された眼用液剤に関する。
【0016】
さらに他の局面において、本発明は、
内容物を計量形態でディスペンスするのに好適な容器;および
該容器中の、前記に定義した眼用液剤
を含んで成る医薬生成物に関する。
最後に、前記の式で示され、下記に開示され、本発明の方法に使用される化合物のいくつかは、新規であり自明でない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、EP4受容体作動剤としてのシクロヘキシルプロスタグランジン類似体の使用に関する。本発明に使用される化合物は、下記の構造式Iで示される化合物並びに薬学的に許容されるその塩およびエステルを包含する:
【化4】

[式中、
波線は、αまたはβ結合を表し;
破線は、結合の存在または不存在を表し;
Rは、CO2R4、CONR42、CH2OR4、CONR4SO2R4、P(O)(OR4)、および
【化5】

から成る群から選択され;
ここで、Rは、H、フェニル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から成る群から選択され;
nは、0、または1〜4の整数であり;
R1およびR2は、水素、ヒドロキシル、6個までの炭素原子を有する低級アルキルオキシ基、および6個までの炭素原子を有する低級アシルオキシ基から成る群から独立に選択され;
R3は、水素、6個までの炭素原子を有する低級アルキル基、および6個までの炭素原子を有する低級アシル基から成る群から選択され;
Wは、=Oまたはハロゲンであり;
Yは、共有結合であるか、またはCH2、O、SおよびNから成る群から選択され;
Zは、3〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキル基、あるいは6〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル芳香族基、または4〜10個の炭素原子を有し、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される複素環原子を有する複素環式芳香族基を包含する芳香族基である]。
【0018】
本発明化合物の好ましい群は、下記の構造式IIで示される化合物を包含する:
【化6】

[式中、ハッチ線はα結合を表し、三角形に塗り潰した線はβ結合を表す]。
【0019】
他の好ましい群は、下記の式IIIで示される化合物を包含する:
【化7】

【0020】
本発明の方法に使用される最も好ましい化合物の群は、Zが、フェニルであるかまたは下記の式IVによって示されるものの群から選択される:
【化8】

[式中、
Uは、OおよびSから成る群から選択され;
Aは、N、−CHおよびCから成る群から選択され;
R5は、水素、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシから成る群から選択され;
R6およびR7は、水素、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシから成る群から選択されるか、またはR6およびR7は、
【化9】

と共に、縮合アリール環を形成する]。
好ましくは、RはCO2R4であり、より好ましくは、R4はHまたはメチルである。
【0021】
前記の本発明化合物は、当分野において既知の方法によるか、または下記の実施例に従って製造しうる。下記の化合物は、本発明化合物の特に好ましい代表例である:
(Z)−7−{(1R,2R)−2−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−6−オキソ−シクロヘキシル}−ヘプタ−5−エン酸;
(Z)−7−{(1R,6R)−6−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−2−オキソ−シクロヘキサ−3−エニル}−ヘプタ−5−エン酸;
7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−3−ヒドロキシ−オクチル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタン酸;
7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−ペンタ−1−エニル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−イン酸;
(Z)−7−{(1R,2R,3R)−2−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−3−ヒドロキシ−6−オキソ−シクロヘキシル}−ヘプタ−5−エン酸;
【0022】
(Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−4−フェニル−ブタ−1−エニル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−エン酸;
7−[(1R,2R,3R)−2−((E)−4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3−ヒドロキシ−ブタ−1−エニル)−3−ヒドロキシ−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−イン酸;
(Z)−7−[(1R,2R,3R)−2−((E)−4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3−ヒドロキシ−ブタ−1−エニル)−3−ヒドロキシ−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−エン酸;
(Z)−7−[(1R,2R,4S)−4−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−4−フェニル−ブタ−1−エニル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−エン酸;
(Z)−7−{(1R,2R,3R,6R)−6−クロロ−2−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−3−ヒドロキシ−シクロヘキシル}−ヘプタ−5−エン酸。
【0023】
薬学的に許容される塩は、親化合物の活性を維持しており、被投与体に対しまたは投与環境において有害または望ましくない影響を及ぼさないいずれの塩であってもよい。無機イオン、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛との塩が特に好ましい。
【0024】
医薬組成物は、少なくとも1種の本発明化合物または薬学的に許容し得るその酸付加塩の処置有効量を活性成分として、眼科的に許容し得る通常の薬剤賦形剤と組み合わせることによって、および眼への局所適用に適当な単位用量形態を形成することによって調製し得る。処置有効量は通例、液体製剤中約0.0001〜5%(w/v)、好ましくは約0.001〜1.0%(w/v)である。
【0025】
眼科的な適用のためには、主な賦形剤として生理食塩液を用いて液剤を調製することが好ましい。そのような眼用液剤のpHは、適当な緩衝系によって6.5〜7.2に保つことが好ましい。このような製剤は、薬学的に許容し得る通常の保存剤、安定剤および界面活性剤をも含有し得る。
【0026】
本発明の医薬組成物中に使用し得る好ましい保存剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい界面活性剤は、例えば、Tween 80である。同様に、本発明の眼用製剤中に種々の好ましい賦形剤を使用し得る。このような賦形剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0027】
必要に応じて、または好都合に、浸透圧調整剤を添加し得る。浸透圧調整剤は、塩、とりわけ塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリンを包含するが、これらに限定されるものではなく、眼科的に許容し得る他の適当な浸透圧調整剤も使用し得る。
【0028】
眼科的に許容し得る製剤が得られるのであれば、pH調整のためにどのような緩衝剤および手段を用いてもよい。緩衝剤は、酢酸、クエン酸、リン酸およびホウ酸の緩衝剤を包含する。製剤のpHを調整するために、必要に応じて酸または塩基を使用し得る。
【0029】
同様に、本発明において使用するための眼科的に許容し得る抗酸化剤は、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の眼用製剤が含有し得る他の佐剤成分はキレート剤である。好ましいキレート剤はエデト酸二ナトリウムであるが、その代わりに、またはそれと組み合わせて他のキレート剤も使用し得る。
【0031】
上記成分は通例、次のような量で使用する:

【0032】
本発明の活性化合物の実際の用量は、化合物によって、および処置する症状によって異なる。当業者はその知識の範囲内で、適当な用量を選択することができる。
本発明の眼用製剤は、眼への適用を容易にするよう、計量適用に適した形態(例えばドロッパー付き容器)に充填することが好都合である。滴下適用に適した容器は通例、不活性で無毒性の適当なプラスチック材料製であり、液剤を通例約0.5〜15ml収容する。
【0033】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。実施例は図1および図2の反応式にまとめて示す。実施例および図面において、同じ番号によって化合物を特定する。
【実施例1】
【0034】
(Z)−7−{(1R,2R,3R)−2−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−3−ヒドロキシ−6−オキソ−シクロヘキシル}−ヘプタ−5−エン酸(7Hおよび7L、図2)
段階1: 1a、2aおよび3の3成分をカップリングして4を得る。
tert-ブチルリチウム(ペンタン中1.7M、1.93mL、3.3mmol)を、THF(3.0mL)中の{(E)−1−[2−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−エチル]−3−ヨード−アリルオキシ}−tert-ブチルジメチルシラン(2a、740mg、1.5mmol)の溶液に、窒素下において−78℃で添加した(2aは、本明細書に組み入れられる2003年2月11日出願の米国特許出願第365369号に開示されているように調製した)。−78℃で15分後に、ジメチル亜鉛(PhMe中2.0M、0.73mL、1.5mmol)を添加し、反応溶液を0℃に温めた。0℃で15分後、反応を−78℃に再冷却した。THF(1.0mL)中のエノン1a(226mg、1.0mmol)の溶液を、シリンジポンプで50分間にわたって添加し、シリンジをTHF(0.5mL)で濯いだ(1aは、Lopez-Pelegrin, J. A.、Janda, K. D.、Chem. Eur. J. 2000, 6, 1917-1922およびそれに引用されている文献に記載のように調製した)。15分後、HMPA(1.74mL、10.0mmol)を添加した。さらに15分後、THF(3.0mL)中の沃化プロパルギル3(1.33g、5.0mmol)の溶液を添加した(3は、ジクロロメタン溶媒中で沃素、トリフェニルホスフィンおよびイミダゾールを使用して、対応するプロパルギルアルコール(Casy, G.、Petersen, J. W.、Taylor, R. J. K.、Org. Synth. 1993, Collect. Vol. VIII, 415-420))から調製した。
【0035】
次に、反応を−40℃の冷凍浴に入れ、その温度で21時間維持した。反応をNH4Cl飽和水溶液(40mL)で停止し、EtOAc(3x25mL)で抽出した。合わした有機相をブライン(50mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(0→7% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、335mg(46%)の所望生成物4を得た。
【0036】
段階2: 脱保護して5Hおよび5Lを得る。
プラスチックシンチレーションバイアルにおいて、MeCN(4.0mL)中の、段階1からのビス−シリルエーテル(4、150mg、0.21mmol)の溶液に、HF−ピリジン(0.6mL)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応をNaHCO3飽和水溶液(20mL)で停止し、EtOAc(3x25mL)で抽出した。有機相をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(50→100% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、高Rfジアステレオ異性体(5H)29.2mg(28%)および低Rfジアステレオ異性体(5L)26.5mg(26%)を得た。
【0037】
段階3: アルキンを還元して、アルケン6Hおよび6Lを得る。
方法A: MeOH(1.5mL)中の、段階2からの高Rfアルキン(5H、6.0mg、0.012mmol)の溶液に、Pd/C(10mol%、2mg)を添加した。排気および水素(3x)での再充填によって水素雰囲気を確立し、反応混合物を水素のバルーン下に1.25時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、100% EtOAc)によって精製して、1.0mgの回収5Hと共に4.6mg(76%)の6Hを得た。
【0038】
方法B: EtOAc(2.0mL)中の、段階2からの低Rfアルキン(5L、20mg、0.04mmol)の溶液に、リンドラー触媒(20mg)を添加した。排気および水素(3x)での再充填によって水素雰囲気を確立し、反応混合物を水素のバルーン下に19時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、EtOAcで洗浄し、濾液を真空濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、100% EtOAc)によって精製して、10mgの回収5Lと共に4.8mg(24%)の6Lを得た。
【0039】
段階4: エステルを酸7Hおよび7Lに変換する。
方法A: 段階3Aからのエステル(6H、2.6mg、0.005mmol)、MeCN(0.1mL)、pH7.2燐酸緩衝液(2.0mL)およびブタ肝臓エステラーゼ(50μL)の溶液を、室温で一晩撹拌した。混合物をEtOAc(2x10mL)で抽出した。合わした抽出物をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮して、標記化合物(7H)2.0mg(79%)を得た。
【0040】
方法B: 段階3Bからのエステル(6L、3mg、0.006mmol)、MeCN(0.1mL)、pH7.2燐酸緩衝液(3.0mL)およびウサギ肝臓エステラーゼ(1mg)の溶液を、室温で一晩撹拌した。混合物を真空下に濃縮乾固した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、10% MeOH/CH2Cl2)によって精製して、標記化合物(7L)0.8mg(27%)を得た。
【実施例2】
【0041】
(Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−4−フェニル−ブタ−1−エニル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−エン酸
実施例1(段階1、2、3Bおよび4B)の手順に従って、((E)−1−ベンジル−3−ヨード−アリルオキシ)−tert-ブチルジメチルシラン(2b)およびエノン1aから製造した(2bは、前記2aと同様に製造した)。
【実施例3】
【0042】
(Z)−7−[(1R,2R,3R)−2−((E)−4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3−ヒドロキシ−ブタ−1−エニル)−3−ヒドロキシ−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−エン酸
実施例1(段階1、2および4B)および3C(下記参照)の手順に従って、((E)−1−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルメチル−3−ヨード−アリルオキシ)−tert-ブチルジメチルシラン(2c)およびエノン1aから製造した(2cは、前記2aと同様に製造した)。
【0043】
段階3: アルキンを還元してアルケンを得る。
方法C: 水素化硼素ナトリウム(8.0mg、0.21mmol)を95%エタノール(2.0mL)中の塩化ニッケル(II)(55mg、0.43mmol)の懸濁液に添加すると、混合物がすぐに黒色になった。室温で5分後、エチレンジアミン(46μL、0.69mmol)を添加した。室温で15分後、95%エタノール(2.0mL)中の段階2からのアルキン(40mg、0.085mmol)を添加した。排気および水素(3x)での再充填によって水素雰囲気を確立し、反応混合物を水素のバルーン下に19時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、エタノールで洗浄し、濾液を真空濃縮した。得られた残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50→100% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、所望のアルケン20mg(50%)を得た。
【実施例4】
【0044】
7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−ペンタ−1−エニル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−イン酸
実施例1(段階1、2および4B)の手順に従って、((E)−3−ヨード−1−フェネチル−アリルオキシ)−tert-ブチルジメチルシラン(2d)およびエノン1aから製造した(2dは前記2aと同様に製造した)。
【実施例5】
【0045】
(Z)−7−[(1R,2R,4S)−4−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−4−フェニル−ブタ−1−エニル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−エン酸
実施例1および3(段階1、2、3Cおよび4B)の手順に従って、(2b)および(S)−5−(tert-ブチルジメチルシロキシ)-2-シクロヘキセノン(1b)から製造した(1bは、Hareau, G. P-J.ら、J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3640-50に記載のように製造した)。
【実施例6】
【0046】
(Z)−7−{(1R,2R,3R,6R)−6−クロロ−2−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−3−ヒドロキシ−シクロヘキシル}−ヘプタ−5−エン酸(11L、図3)
段階1: ケトン4をα−アルコール8に変換する。
L-Selectride(THF中1.0M、0.76mL、0.76mmol)を、THF(5.0mL)中の、実施例1、段階1の生成物(4、370mg、0.51mmol)の溶液に、窒素下において−78℃で添加した。30分後、蟻酸(0.4mL)を添加し、反応を0℃に温めた。30分後、HCl水溶液(1.0M、5mL)を添加し、混合物をEtOAc(3x3mL)で抽出した。合わした有機相をブラインで洗浄し、次に、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(10→15% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、194mg(53%)の8を得た。
【0047】
段階2: アルコール8をメシレート9に変換する。
CH2Cl2(2.0mL)中の、段階1からのアルコール(8、188mg、0.26mmol)の溶液に、塩化メタンスルホニル(24μL、0.31mmol)およびトリエチルアミン(54μL、0.39mmol)を室温で順次に添加した。5時間後、追加量の塩化メタンスルホニル(40μL、0.51mmol)およびトリエチルアミン(54μL、0.39mmol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、NaHCO3飽和水溶液(10mL)を添加し、反応混合物をCH2Cl2(3x15mL)で抽出した。合わした有機相を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(10→20% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、134mg(64%)の9を得た。
【0048】
段階3: α−メシレート9をβ−クロリド10に変換する。
段階2からのメシレート(9、130mg、0.16mmol)、テトラブチルアンモニウムクロリド(445mg、1.6mmol)およびトルエン(5.0mL)を合わし、窒素下において40℃で一晩撹拌した。反応を室温に冷却し、ブライン(10mL)を添加し、混合物をEtOAc(3x15mL)で抽出した。合わした有機相を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(10% EtOAc/Hex)によって精製して、53mgの回収9と共に31mg(26%)の10を得た。
次に、実施例1および3(段階2、3Cおよび4B)の手順に従って、段階3の生成物を標記化合物(11)に変換した。
【実施例7】
【0049】
(Z)−7−{(1R,2R)−2−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−6−オキソ−シクロヘキシル}−ヘプタ−5−エン酸(15L、図4)
段階1: 1b、2aおよび3の3成分をカップリングして、12を得る。
実施例1(段階1)の手順に従って、3成分のカップリング生成物12を、沃化ビニル2aおよびエノン1bから得た。
【0050】
段階2: 脱保護および脱離して、13Hおよび13Lを得る。
β−シリルオキシケトン(12、198mg、0.27mmol)および酢酸/THF/H2O(2:1:1、2.0mL)の混合物を、70℃で一晩加熱した。反応を室温に冷却し、NaHCO3飽和水溶液(20mL)を添加し、混合物をEtOAc(2x20mL)で抽出した。合わした有機相をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。1H NMR分析は、脱離反応が未完了であることを示し、従って、粗物質を反応条件に再度3日間付した。反応を室温に冷却し、NaHCO3飽和水溶液(15mL)を添加し、混合物をEtOAc(3x10mL)で抽出した。合わした有機相を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣を、分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、50% EtOAc/Hex)によって精製して、7.4mg(6%)の13Hおよび3.7mg(3%)の13Lを得た。
【0051】
段階3: 還元して14Lを得る。
MeOH(1.0mL)中の、段階2からの低Rfジアステレオ異性体(13L、3.7mg、0.0076mmol)の溶液に、Pd/C(10mol%、1mg)を添加した。排気および水素(3x)での再充填によって水素雰囲気を確立し、反応混合物を水素のバルーン下に1時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、30% EtOAc/Hex)によって精製して、2.3mg(61%)の14Lを得た。
次に、実施例1(段階4B)の手順に従って、段階3の生成物を、標記化合物15Lに変換した。
【実施例8】
【0052】
7−[(1R,2R,3R)−2−((E)−4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3−ヒドロキシ−ブタ−1−エニル)−3−ヒドロキシ−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタ−5−イン酸
実施例1(段階1、2および4B)の手順に従って、沃化ビニル2cおよびエノン1aから製造した。
【実施例9】
【0053】
7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−3−ヒドロキシ−オクチル)−6−オキソ−シクロヘキシル]−ヘプタン酸(20、図5)
段階1: 3成分をカップリングして、エノキシシラン16を経て17を得る。
Et2O(7.0mL)中の[(S)−1−((E)−2−ヨード−ビニル)−ヘキシルオキシ]−tert-ブチルジメチルシラン(2e、500mg、1.36mmol)の溶液を、窒素下に−78℃において、tert-ブチルリチウム(ペンタン中1.7M、1.6mL、2.72mmol)で処理した(2eは、Nissan Chemical Industriesから購入した)。−78℃で30分後、リチウム2−チエニルシアノクプレート(THF中0.25M、5.44mL、1.36mmol)を添加した。−78℃で30分後、Et2O(1.0mL)中のエノン1a(237mg、1.05mmol)の溶液を滴下した。−78℃で1.5時間後、TMSCl(0.80mL、6.3mmol)を添加した。−78℃で15分後、Et3N(1.9mL、13.6mmol)を添加し、溶液を室温に温めた。混合物をヘキサンおよび水に注いだ。相を分離し、水性相を追加ヘキサン(3x50mL)で抽出した。合わした有機相を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。THF(6.0mL)中の粗エノキシシラン16(約1.0mmol)の溶液を、窒素下に−23℃において、メチルリチウム(Et2O中1.4M、1.1mL、1.5mmol)で処理した。30分後、溶液を−78℃に冷却し、次に、THF(7.0mL)中の沃化物3(1.06g、4.0mmol)の溶液をカニューレで添加した。−78℃で1時間後、反応を−23℃に2時間温め、次に、室温に温めた。反応をNH4Cl飽和水溶液(50mL)で停止し、EtOAc(3x30mL)で抽出した。合わした有機相をブライン(75mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(0→10% EtOAc/Hex)によって精製して、157mg(25%)の17を得た。
【0054】
段階2: 脱保護して18を得る。
プラスチックシンチレーションバイアルにおいて、MeCN(3.0mL)中の、段階1からのビス−シリルエーテル(17、150mg、0.25mmol)の溶液に、HF−ピリジン(0.3mL)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応をNaHCO3飽和水溶液(20mL)で停止し、EtOAc(2x25mL)で抽出した。有機相をブライン(25mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(40→80% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、61mg(65%)の18を得た。
【0055】
段階3: アルキンおよびアルケンを還元して、19を得る。
MeOH(1.5mL)中の、段階2の生成物(18、15mg、0.039mmol)の溶液に、Pd/C(10mol%、5mg)を添加した。排気および水素(3x)での再充填によって水素雰囲気を確立し、反応混合物を水素のバルーン下に一晩撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(30%→50% EtOAc/Hex、勾配)によって精製して、3.7mg(25%)の19を得た。
【0056】
段階4: エステルを酸20に変換する。
実施例1(段階4B)の手順に従って、段階3の生成物を標記化合物(20)に変換した。
【実施例10】
【0057】
(Z)−7−{(1R,6R)−6−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−2−オキソ−シクロヘキサ−3−エニル}−ヘプタ−5−エン酸(24L、図6)
段階1: 脱保護して21Hおよび21Lを得る。
プラスチックシンチレーションバイアルにおいて、MeCN(5.0mL)中の、実施例7、段階1からのビス−シリルエーテル(12、421mg、0.58mmol)の溶液に、HF−ピリジン(1.5mL)を添加した。室温で3時間撹拌した後、反応をNaHCO3飽和水溶液(25mL)で停止し、EtOAc(3x25mL)で抽出した。有機相をブライン(25mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、70% EtOAc/Hex)によって精製して、37mg(13%)の21Hおよび22mg(8%)の21Lを得た。
【0058】
段階2: アルキンを還元してアルケン22Lを得る。
MeOH(1.0mL)中の、段階1の生成物(21L、13mg、0.026mmol)の溶液に、Pd/C(10mol%、2mg)を添加した。排気および水素(3x)での再充填によって、水素雰囲気を確立し、反応混合物を水素のバルーン下に4.5時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、MeOHで洗浄し、濾液を真空濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、90% EtOAc/Hex)によって精製して、7.5mg(57%)の22Lを得た。
【0059】
段階3: β−ヒドロキシケトンを脱離して、エノン23Lを得る。
段階2の生成物(22L、7.5mg、0.015mmol)および酢酸/THF/H2O(2:1:1、1.0mL)の混合物を、70℃で一晩加熱した。反応を室温に冷却し、NaHCO3飽和水溶液(7mL)を添加し、混合物をEtOAc(2x6mL)で抽出した。合わした有機相をブライン(5mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた残渣を、分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、50% EtOAc/Hex)によって精製して、5.0mg(69%)の23Lを得た。
【0060】
段階4: エステルを酸24Lに変換する。
次に、実施例1(段階4B)の手順に従って、段階3の生成物を標記化合物(24L)に変換した。
【0061】
ヒト組換えEP受容体:安定トランスフェクタント
ヒトEP受容体をコードするプラスミドを、それをコードする配列を真核細胞発現ベクターpCEP4(Invitrogen)にクローニングすることによって調製した。pCEP4ベクターは、EBウイルス(EBV)複製起点を有し、それによりEBV核抗原(EBNA−1)を発現する霊長類細胞系においてエピソーム複製することができる。pCEP4ベクターはハイグロマイシン耐性遺伝子をも有し、これは真核細胞選抜に用いられる。安定トランスフェクションに使用した細胞は、EBNA−1タンパク質をトランスフェクトし、EBNA−1タンパク質を発現するヒト胚性腎細胞(HEK−293)であった。このHEK−293−EBNA細胞(Invitrogen)を、ジェネティシン(G418)含有培地中で増殖させてEBNA−1タンパク質の発現を維持した。HEK−293細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、250μg/ml G418(Life Technologies)および200μg/mlゲンタマイシンまたはペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で増殖させた。安定トランスフェクタントの選抜は、200μg/mlハイグロマイシンを用いて行い、この最適濃度は、予め行ったハイグロマイシン死滅曲線の実験により決定した。
【0062】
トランスフェクションを行うために、10cmプレート上で細胞を50〜60%コンフルエントに増殖させた。ヒトプロスタノイド受容体用のcDNAインサートを組み込んだプラスミドpCEP4(20μg)を、250mM CaCl 500μlに加えた。HEPES緩衝塩類液×2(2×HBS、280mM NaCl、20mM HEPES酸、1.5mM NaHPO、pH7.05〜7.12)を次いで室温でボルテックスを続けながら滴下して、総量500μlとした。30分後、その混合物にDMEM 9mlを加えた。次いで、そのDNA/DMEM/リン酸カルシウム混合物を細胞に加えた。細胞は予め10mlのPBSで濯いでおいた。次いで、細胞を、加湿95%空気/5%CO中で37℃で5時間インキュベートした。次いで、リン酸カルシウム溶液を除去し、細胞を、DMEM中10%グリセロールで2分間処理した。次いで、グリセロール溶液を、10%FBS含有DMEMで取り替えた。細胞を一晩インキュベートし、培地を、250μg/mlのG418およびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM/10%FBSで取り替えた。翌日に、ハイグロマイシンBを終濃度200μg/mlで加えた。
【0063】
トランスフェクションから10日後、ハイグロマイシンB耐性クローンを個別に選抜し、24ウェルプレートの各ウェルに移した。コンフルエンスになったら、各クローンを6ウェルプレートの1つのウェルに移し、次いで10cm皿に広げた。細胞を使用するまで、連続したハイグロマイシン選抜下に維持した。
【0064】
上記組換えヒトEP受容体アッセイにおける活性を、上記化合物のいくつかについて試験した。結果を下記表1に示す。
【表1−1】

【0065】
【表1−2】

【0066】
【表1−3】

【0067】
EP活性は、本発明の化合物が、喘息処置、月経困難処置、並びに緑内障処置および眼圧降下に有用であることを示す。
他の適用可能な処置対象は、骨粗鬆症、便秘、腎疾患、生殖器機能障害、脱毛症、および免疫調節の疾患である。
【0068】
EP受容体作動剤は、下記疾患の防止および/または処置に有用であり得る:
急性肝炎、喘息、気管支炎、火傷、慢性閉塞性呼吸器疾患、クローン病、消化性潰瘍、緑内障(および高眼圧に関連する他の疾患)、食血症候群、肝臓病、透析における高サイトカイン血症、高血圧、免疫疾患(自己免疫疾患、臓器移植など)、炎症(例えば慢性関節リウマチ)、川崎病、肝障害、マクロファージ活性化症候群、心筋虚血、腎炎、神経細胞死、骨粗鬆症および骨障害に関連する疾患、早産、肺気腫、肺線維症、肺障害、腎不全、敗血症、生殖器機能障害、ショック、睡眠障害、スティル病、口内炎、全身性肉芽腫、全身性炎症症候群、血栓症および卒中、潰瘍性大腸炎。
【0069】
本発明の化合物は、急性心筋梗塞、血栓症、高血圧症、肺高血圧症、虚血性心疾患、欝血性心不全、および狭心症を包含する種々の病理生理学的疾患の処置にも有用であり得る。そのような場合、血管を拡張することによって症状を軽減するいずれの方法で化合物を投与してもよい。例えば、経口、経皮、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮または口腔内投与を行い得る。
【0070】
本発明の化合物は、適当な基剤(例えば白色ワセリン、鉱油、ワセリンおよびラノリンアルコール)中、活性成分含量約0.10〜10%の軟膏に調製し得る。他の適当な基剤は、当業者に自明である。
【0071】
本発明の医薬製剤は、更なる前記病理生理学的疾患の処置において投与するために、既知の方法によって、例えば本発明化合物(すべて水に溶解または懸濁する)を従来の方法で溶解または懸濁させることによって調製する。経口的に使用し得る医薬製剤は、ゼラチン製プッシュフィットカプセル、並びにゼラチンおよび可塑剤(例えばグリセロールまたはソルビトール)から成る密封軟カプセルを包含する。プッシュフィットカプセルは、賦形剤(例えばラクトース)、結合剤(例えばデンプン)および/または滑剤(例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム)並びに場合により安定剤と混合し得る、液体形態の活性化合物を含有し得る。軟カプセル中では、活性化合物は適当な液体(例えば緩衝塩溶液)に溶解または懸濁していることが好ましい。更に、安定剤を加え得る。
【0072】
本発明の医薬製剤は、例えばゼラチンカプセルまたは他の適当な賦形剤中の液体形態で提供することに加えて、活性化合物の薬学的に使用し得る製剤への調製を促進する適当な佐剤を含有し得る。すなわち、経口的に使用する医薬製剤を得るのに、活性化合物溶液を固体担体に付着させ、場合によりその混合物を粉砕し、顆粒混合物を加工し、適当な助剤を加えて(必要に応じて)、錠剤または糖衣錠コアとすることができる。
【0073】
適当な佐剤は、とりわけ、賦形剤、例えば、糖(例えばラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール)、セルロース製剤および/またはリン酸カルシウム(例えばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)、並びに結合剤、例えばデンプン、ペースト(例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプンを用いたもの)、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンである。要すれば、上記デンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)を、崩壊剤として加えてもよい。助剤はとりわけ、流動性調節剤および滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸もしくはその塩(例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアには、適当なコーティング(要すれば胃液耐性のもの)を施す。この目的のために、高濃度糖溶液を使用し得る。該溶液は場合により、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液並びに適当な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含有し得る。胃液耐性のコーティングを形成するには、適当なセルロース製剤、例えばアセチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液を使用する。錠剤または錠剤コーティングに、例えば識別のため、または活性化合物用量組み合わせを指示するために、色素または顔料を加え得る。
【0074】
静脈内または非経口投与用の適当な製剤は、活性化合物の水溶液を包含する。更に、油性注射用懸濁液として活性化合物懸濁液を投与してもよい。水性の注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇する物質(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランを包含する)を含有し得る。場合により、そのような懸濁液は安定剤をも含有し得る。
【0075】
以上の記載は、本発明の実施に使用し得る特定の方法および組成物を詳細に説明したもので、好ましい態様を示すものである。しかし、同様の方法で所望の薬理学的性質を有する他の化合物をも合成し得ること、および開示された化合物は、異なる出発物質から異なる化学反応によっても合成し得ることは、当業者には明らかである。同様に、異なる医薬組成物を調製し、使用して、実質的に同様の結果を得ることもできる。すなわち、以上の説明は詳細であり得るが、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、二重または三重結合を有するα鎖を有する化合物を包含する本発明化合物の一般化学合成を示す図である。
【図2】図2は、実施例1に特に開示されているような本発明化合物の化学合成を示す図である。
【図3】図3は、実施例6に特に開示されているような本発明化合物の化学合成を示す図である。
【図4】図4は、実施例7に特に開示されているような本発明化合物の化学合成を示す図である。
【図5】図5は、実施例9に特に開示されているような本発明化合物の化学合成を示す図である。
【図6】図6は、実施例10に特に開示されているような本発明化合物の化学合成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高眼圧または緑内障を処置する方法であって、高眼圧または緑内障の哺乳動物に下記式Iで示される化合物並びに薬学的に許容されるその塩およびエステルを処置有効量で投与することを含んで成る方法:
【化1】

[式中、
波線は、αまたはβ結合を表し;
破線は、結合の存在または不存在を表し;
Rは、CO2R4、CONR42、CH2OR4、CONR4SO2R4、P(O)(OR4)、および
【化2】

から成る群から選択され;
ここで、Rは、H、フェニル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から成る群から選択され;
nは、0、または1〜4の整数であり;
R1およびR2は、水素、ヒドロキシル、6個までの炭素原子を有する低級アルキルオキシ基、および6個までの炭素原子を有する低級アシルオキシ基から成る群から独立に選択され;
R3は、水素、6個までの炭素原子を有する低級アルキル基、および6個までの炭素原子を有する低級アシル基から成る群から選択され;
Wは、=Oまたはハロゲンであり;
Yは、共有結合であるか、またはCH2、O、SおよびNから成る群から選択され;
Zは、3〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキル基、あるいは6〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル芳香族基、または4〜10個の炭素原子を有し、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される複素環原子を有する複素環式芳香族基を包含する芳香族基である]。
【請求項2】
化合物が式II:
【化3】

[式中、ハッチ線はα結合を表し、三角形に塗り潰した線はβ結合を表す]
で示される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が式III:
【化4】

で示される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Zが、フェニルであるか、または式IV:
【化5】

[式中、
Uは、OおよびSから成る群から選択され;
Aは、N、−CHおよびCから成る群から選択され;
R5は、水素、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシから成る群から選択され;
R6およびR7は、水素、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシから成る群から選択されるか、またはR6およびR7は、
【化6】

と共に、縮合アリール環を形成する]
で示される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
UがSである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
RがCO2R4である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
RがHまたはメチルである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Zがフェニルである請求項4に記載の方法。
【請求項9】
RがCO2R4である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
R4がHである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Zがクロロベンゾチエニルである請求項4に記載の方法。
【請求項12】
RがCO2R4である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
R4がHである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
処置有効量の請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容されるその塩を、非毒性の眼科的に許容される液体賦形剤との混合物として含有し、計量適用に好適な容器に充填された眼用液剤。
【請求項15】
化合物が式III:
【化7】

で示される請求項14に記載の眼用液剤。
【請求項16】
内容物を計量形態でディスペンスするのに好適な容器;および
該容器中の、請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容されるその塩を、非毒性の眼科的に許容される液体賦形剤との混合物として含有する眼用液剤
を含んで成る医薬生成物。
【請求項17】
化合物が式III:
【化8】

で示される請求項16に記載の生成物。
【請求項18】
Zがフェニルである請求項17に記載の生成物。
【請求項19】
RがCO2R4であり、R4がHまたはメチルである請求項18に記載の生成物。
【請求項20】
R4がHである請求項19に記載の生成物。
【請求項21】
下記式Iで示される化合物並びに薬学的に許容されるその塩およびエステル:
【化9】

[式中、
波線は、αまたはβ結合を表し;
破線は、結合の存在または不存在を表し;
Rは、CO2R4、CONR42、CH2OR4、CONR4SO2R4、P(O)(OR4)、および
【化10】

から成る群から選択され;
ここで、Rは、H、フェニル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から成る群から選択され;
nは、0、または1〜4の整数であり;
R1およびR2は、水素、ヒドロキシル、6個までの炭素原子を有する低級アルキルオキシ基、および6個までの炭素原子を有する低級アシルオキシ基から成る群から独立に選択され;
R3は、水素、6個までの炭素原子を有する低級アルキル基、および6個までの炭素原子を有する低級アシル基から成る群から選択され;
Wは、=Oまたはハロゲンであり;
Yは、共有結合であるか、またはCH2、O、SおよびNから成る群から選択され;
Zは、3〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキル基、あるいは6〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル芳香族基、または4〜10個の炭素原子を有し、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される複素環原子を有する複素環式芳香族基を包含する芳香族基である]。
【請求項22】
式II:
【化11】

[式中、ハッチ線はα結合を表し、三角形に塗り潰した線はβ結合を表す]
で示される請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
式III:
【化12】

で示される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
Zが、フェニルであるか、または式IV:
【化13】

[式中、
Zは、OおよびSから成る群から選択され;
Aは、N、−CHおよびCから成る群から選択され;
R5は、水素、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシから成る群から選択され;
R6およびR7は、水素、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、および1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシから成る群から選択されるか、またはR6およびR7は、
【化14】

と共に、縮合アリール環を形成する]
で示される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
UがSである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
RがCO2R4である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
RがHまたはメチルである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
Zがフェニルである請求項24に記載の方法。
【請求項29】
RがCO2R4である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
R4がHである請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−504134(P2007−504134A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524710(P2006−524710)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026607
【国際公開番号】WO2005/023267
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】