説明

EPDM系連続気泡体及びその製造方法

【課題】スコーチや熱劣化の起こらないEPDM系連続気泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るEPDM系連続気泡体の製造方法は、EPDM系樹脂100重量部にチアベンゾダール系スコーチ防止剤0.1〜1重量部、有機過酸化物0.2〜0.9重量部、軟化剤0〜100重量部、充填剤0〜150重量部、発泡剤、発泡助剤を添加混練して発泡性樹脂組成物を得、得られた発泡性樹脂組成物を加圧下で加熱し、中間発泡体を生成させる第一工程と、次いで、該中間発泡体を常圧下で加熱し、発泡剤を分解する第二工程からなることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EPDM系連続気泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られたEPDM系連続気泡体製品は、その優れたクッション性やシール性、防音性に基づいてクッション材や断熱材、吸音材等として家電製品や自動車、建築等の用途に使用されている。
【0003】
EPDM系連続気泡体は硫黄加硫(特公昭59―11613号公報(特許第1353666号))が一般的であるが、生産時にスコーチが生じたり、製品の熱劣化の問題が起こっていた。
【0004】
有機過酸化物を使用すると上記問題は解決するが、有機過酸化物による架橋は硫黄に比較して速いため、架橋と発泡のバランスが非常に難しく、スコーチ防止剤を添加する方法(特開平5−262917号公報、特開2001−310963号公報、特開2001−316538号公報)が知られている。
【特許文献1】特公昭59−11613号公報
【特許文献2】特開平5−262917号公報
【特許文献3】特開2001−310963号公報
【特許文献4】特開2001−316538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
【特許文献2】はキノン系、チウラム系、チアゾール系、およびニトロソアミン系の老化防止剤を使用する固形のEPDM組成物に関するものであり、
【特許文献3】、
【特許文献4】は架橋剤に有機過酸化物を使用し、2−メルカプトベンズイミダゾール系スコーチ防止剤を使用するEPDM発泡体に関するものであるが、架橋調整が難しく、独立気泡体しか得られなかった。
【0006】
本発明者らは、EPDM系樹脂に有機過酸化物とチアベンダゾール系スコーチ防止剤を添加することにより、架橋の調整が容易であることに着目し、生産時にスコーチが生じたり、製品の熱劣化が起こらないEPDM系連続気泡体およびその製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るEPDM系連続気泡体は、EPDM系樹脂100重量部にチアベンダゾール系スコーチ防止剤0.1〜1重量部、有機過酸化物0.2〜0.9重量部、軟化剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤を添加混練して加熱発泡させてなるものである。
本発明に係るEPDM系連続気泡泡体の製造方法は、EPDM系樹脂100重量部にチアベンダゾール系スコーチ防止剤0.1〜1重量部、有機過酸化物0.2〜0.9重量部、軟化剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤を添加混練して加熱発泡させてなる製造方法である。
【0008】
上記発泡体において、該スコーチ防止剤の添加量は、0.1〜1重量部であることが好ましい。この条件を満たすと、生産時のスコーチや製品の熱劣化がなくなる。該スコーチ防止剤の添加量が0.1重量部未満の場合は、スコーチや熱劣化が起き、満足な発泡体が得られない。添加量が1重量部を超える場合は、架橋を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0009】
上記発泡体において、有機過酸化物の添加量は、0.2〜0.9重量部であることが好ましい。有機過酸化物の添加量が0.2重量部未満の場合は、架橋不足により、満足な発泡体が得られない。添加量が0.9重量部を超える場合は、架橋が進みすぎるため、満足な発泡体が得られない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、生産時にスコーチが生じたり、製品の熱劣化が起こらないEPDM系連続気泡体を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明でいうEPDM系樹脂とは、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴムであり、第3成分としてエチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどがあるが、特に限定されない。
【0012】
本発明でいう有機過酸化物とは、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等である。
【0013】
本発明でいう軟化剤とは、プロセスオイル、可塑剤、パラフィンワックス、流動性パラフィン等のゴムとの相溶性が良いものであり、ゴム成分100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは10〜70重量部含むことが望ましい。軟化剤の添加量が上記範囲未満である場合、発泡体の柔軟性が乏しくなり、上記範囲を越えて添加する場合、発泡成形を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0014】
本発明でいう充填剤とは、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、又は各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。充填剤の添加量は、ゴム成分100重量部に対して、0〜150重量部、好ましくは10〜120重量部含むことが望ましい。充填剤の添加量が上記範囲を超える場合、発泡成形を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0015】
本発明でいう発泡剤とは、アゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等である。
【0016】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0017】
本発明のEPDM系連続気泡体の製造方法は、用いた有機過酸化物や発泡剤などによる発泡温度や架橋開始温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。特に好ましい方法及び条件を下記に記述する。
【0018】
EPDM系樹脂100重量部にチアベンダゾール系スコーチ防止剤0.1〜1.0重量部、有機過酸化物0.2〜0.9重量部、軟化剤10〜100重量部、充填剤10〜120重量部を添加し、周知の発泡剤及び発泡助剤を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性樹脂組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下に115〜150℃で加熱し、発泡剤を一部分解し、発泡倍率1.05〜1.1の中間発泡体を生成させる。次いで、該中間発泡体を常圧下にて密閉系でない直方体型などの所望の形状の型内に入れ、140〜180℃で加熱し、有機過酸化物及び発泡剤を完全に分解させて発泡体を得る。
【0019】
以上のようにして得られた気泡体(いわゆる独立気泡体)は、次いで例えば等速二本ロール等により圧縮変形を加えることによって気泡膜は破壊され、気泡が連通化されて連続気泡体が得られる。等速二本ロールの表面に無数の小さい針を設けるか、又は等速二本ロールの前及び/又は後に無数の小さい針を設けたロールを配置して、該気泡体の表面に無数の小孔を開けることによって、気泡の連通化を促進させることができる。
【実施例1】
【0020】
EPDM樹脂(商品名:EP133P、ムーニー粘度38ML(1+4)100℃、ヨウ素価15、JSR株式会社製)100重量部と、チアベンゾダール系スコーチ防止剤(商品名:シントールM−100、シントーファイン株式会社製)0.3重量部、ジクミルパーオキサイド0.4重量部、炭酸カルシウム100重量部、プロセスオイル30重量部、アゾジカルボンアミド8重量部、酸化亜鉛0.1重量部からなる組成物を140℃に加熱された、プレス内の金型(52×160×160mm)に充填し、100kg/cmの圧力で80分間加熱し、中間発泡体(55×170×170mm)を生成した。
【0021】
次いで、中間発泡体を気密でない金型(90×300×300mm)の略中央に載置し、160℃で180分間加熱して取り出し、発泡体(90×300×300mm)を得た。
【0022】
得られた発泡体をロール間隔20mmに設定した等速二本ロールの間を5回通化させて気泡膜を破壊させ、気泡の連通化を行った。
【0023】
得られた発泡体の見掛け密度は150kg/mであり、弾力性のあるEPDM連続気泡体(連続気泡率98%)が得られた。
【実施例2】
【0024】
チオベンダゾール系スコーチ防止剤の添加量を0.1重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0025】
得られた発泡体の見掛け密度は150kg/mであり、弾力性のあるEPDM連続気泡体(連続気泡率98%)が得られた。
【実施例3】
【0026】
チオベンダゾール系スコーチ防止剤の添加量を1.0重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0027】
得られた発泡体の見掛け密度は152kg/mであり、弾力性のあるEPDM連続気泡体(連続気泡率97%)が得られた。
比較例1
【0028】
チオベンダゾール系スコーチ防止剤の添加量を0.05重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、スコーチがひどく、満足な発泡体を得ることが出来なかった。
比較例2
【0029】
スコーチ防止剤の添加量を1.5重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、架橋阻害がひどく、満足な発泡体を得ることが出来なかった。
【実施例4】
【0030】
有機過酸化物の添加量を0.2重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0031】
得られた発泡体の見掛け密度は149kg/mであり、弾力性のあるEPDM連続気泡体(連続気泡率98%)が得られた。
【実施例5】
【0032】
有機過酸化物の添加量を0.9重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0033】
得られた発泡体の見掛け密度は153kg/mであり、弾力性のあるEPDM連続気泡体(連続気泡率97%)が得られた。
比較例3
【0034】
有機過酸化物の添加量を0.1重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、架橋不足によるガス抜けがひどく、満足な発泡体を得ることが出来なかった。
比較例4
【0035】
有機過酸化物の添加量を1重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、架橋オーバーによる割れがひどく、満足な発泡体を得ることが出来なかった。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明の方法によれば、架橋剤に有機過酸化物を使用し、生産時にスコーチが生じたり、製品の熱劣化が起こらないEPDM系連続気泡体を得ることが出来る。本発明の方法によって製造されたEPDM系連続気泡体は、クッション材や断熱材、吸音材等の用途に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
EPDM系樹脂100重量部にチアベンダゾール系スコーチ防止剤0.1〜1重量部、有機過酸化物0.2〜0.9重量部、軟化剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤を添加混練して加熱発泡させてなるEPDM系連続気泡泡体。
【請求項2】
EPDM系樹脂100重量部にチアベンダゾール系スコーチ防止剤0.1〜1重量部、有機過酸化物0.2〜0.9重量部、軟化剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤を添加混練して加熱発泡させてなるEPDM系連続気泡泡体の製造方法。


【公開番号】特開2007−204583(P2007−204583A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24315(P2006−24315)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】