説明

ERKプロテインキナーゼの選択的阻害剤およびその使用

ERK2阻害剤として有用な化合物がここに記載される。これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、癌のような増殖性障害を含む種々の障害を治療するため、またはその重症度を軽減するのに有用である。本発明の組成物は、抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤、神経栄養因子、心血管疾患の治療剤、肝臓疾患の治療剤、抗ウイルス剤、血液障害の治療剤、糖尿病の治療剤、または免疫不全障害の治療剤から選択される治療剤をさらに含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤であるヘテロアリール化合物、そのような化合物を含む組成物、およびそれらの使用方法に関する。本発明の化合物および組成物は、癌、神経性障害、自己免疫疾患、およびプロテインキナーゼ阻害剤により軽減される他の疾患に有用である。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞は、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼファミリーのメンバー(細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)類、p38MAPキナーゼ類、およびc−Jun N−末端キナーゼ(JNK)類が含まれる)が媒介する活性化シグナル伝達カスケードによって細胞外刺激に応答する。MAPキナーゼ(MAPK)類は、成長因子、サイトカイン類、UV照射、およびストレス誘発因子を含む種々のシグナルによって活性化される。MAPK類は、セリン/トレオニンキナーゼ類であり、その活性化は、トレオニンおよびチロシンが活性化ループのThr−X−Tyrセグメントにおいて二重にリン酸化されることにより起こる。MAPK類は、転写因子を含む種々の物質をリン酸化し、その結果、特定の遺伝子群の発現が制御され、そして刺激に対する特定の応答が媒介される。
【0003】
ERK2は、広範に分布するプロテインキナーゼであり、それは、上流のMAPキナーゼであるMEK1によってThr183とTyr185の両方がリン酸化されるとき、最大活性をもたらす。活性化と同時に、ERK2は、多くの調節タンパク質(プロテインキナーゼRsk90およびMAPKAP2、並びに転写因子(例えばATF2、Elk−1、c−Fos、およびc−Myc)を含む)をリン酸化する。また、ERK2は、Ras/Raf依存性経路の下流標的であり、これらの潜在的に発癌性のタンパク質からのシグナルを中継する。ERK2は、乳癌細胞の負の成長制御において役割を果たすことが明らかにされており、また、ヒト乳癌におけるERK2の過剰発現が報告されている。活性化されたERK2は、エンドセリンによって刺激される気道平滑筋細胞の増殖にも関与しており、これは、喘息におけるこのキナーゼの役割を示唆している。
【0004】
EGFRおよびErbB2のような受容体チロシンキナーゼの過剰発現は、RasGTPアーゼタンパク質またはB−Raf変異体における突然変異の活性化とともに、ヒトの癌の主要な寄与因子である。これらの遺伝的変化は、好ましくない臨床予後と結びついており、ヒト腫瘍の広範なパネルにおいて、Raf−1/2/3−MEK1/2−ERK1/2シグナル伝達カスケードの活性化をもたらしている。活性化されたERK(すなわちERK1および/またはERK2)は、中心的なシグナル伝達分子であり、それは、増殖、分化、足場非依存性の細胞生存、および血管形成の調節に関連しており、悪性腫瘍の形成および進行に重要な相当数の過程に寄与している。これらのデータは、ERK1/2阻害剤が、多面的な活性(プロアポトーシス作用、増殖阻害効果、転移抑制効果、および血管形成抑制効果を含む)を発揮するであろうこと、そして、ヒト腫瘍の非常に広範なパネルに対して治療の可能性を開くであろうことを示唆している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロテインキナーゼが媒介する事象によって誘発される異常な細胞応答に、多くの病気が関係しており、そのような病気には、例えば自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝病、神経性疾患および神経変性疾患、癌、心血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、並びにホルモン関連疾患がある。従って、治療剤として有効なプロテインキナーゼ阻害剤を見出すため、薬化学において相当な努力がなされてきており、そして、これらのタンパク質標的を阻害する新しい治療剤が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
驚くべきことに、本発明の化合物およびその組成物がERK2の選択的阻害剤として有効であることが見出された。これらの化合物は、以下の一般式IおよびIIを有するものであるかまたはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで、環B、n、p、R、R、R、およびRは、本明細書に定義するとおりである。
【0007】
【化9】

これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の疾患、特に癌などの増殖性疾患を治療またはその重症度を軽減するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
(本発明の化合物)
第一の局面において、本発明は、以下の式を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩を特徴とする。
【0009】
【化10】

ここで、
環Bは、
【0010】
【化11】

からなる群から選択され、
は、CN、ハロゲン、N(R)、OR、またはRであり、
nは、0〜4であり、
各Rは、それぞれ独立して水素または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族基から選択されるか、または同一窒素上の二つのRは、該窒素と一緒になって、窒素、酸素または硫黄からそれぞれ独立して選択される1〜3のヘテロ原子を有する5〜8員のヘテロシクリルまたはヘテロアリール環を形成し、
は、R、ハロゲン、(CHOR、COR、(CHN(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)であり、
各wは、0〜3であり、
各Rは、それぞれ独立してオキソ、NO、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され、
pは、0〜2であり、かつ
各Rは、それぞれ独立してオキソ、NO、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され、
ただし、nおよびpがともに0であるとき、環Bはピロール−3−イルであり、かつRはメチルであり、そしてRはCFではない。
【0011】
特に断らない限り、ここでは以下の定義を適用する。ここに記載する本発明の化合物または本発明の化合物の群は、必要に応じて一つ以上の置換基、例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、または五つの置換基で必要に応じて置換される。明らかなとおり、用語「必要に応じて置換される」は、用語「置換または非置換(置換されているまたは置換されていない)」と同義なものとして使用される。一般に、用語「置換される」は、用語「必要に応じて」が前についていようがいまいが、所定の構造において一つ以上の水素ラジカルが特定の置換基のラジカルで置換されることを指す。特に断らない限り、必要に応じて置換される基は、該基の置換可能なそれぞれの位置において置換基を有することができる。所定の構造において一つより多い位置が特定の群から選択される一つより多い置換基で置換できる場合、該置換基は各位置において同じでもよいし異なっていてもよい。
【0012】
ここに記載するように、用語「必要に応じて置換される」がある一覧の前にくる場合、この用語は、その一覧において列挙される置換可能な基のすべてを指している。例えば、Xがハロゲン、必要に応じて置換されるC〜Cアルキルまたはフェニルである場合、Xは必要に応じて置換されるアルキルまたは必要に応じて置換されるフェニルとすることができる。同様に、用語「必要に応じて置換される」がある一覧の後にくる場合、この用語は、特に断らない限り、前にある一覧中の置換可能な基のすべてを指している。例えば、Xがハロゲン、C〜Cアルキル、またはフェニルであり、ここでXはJによって必要に応じて置換される場合、C〜Cアルキルおよびフェニルの両方が、Jによって必要に応じて置換される。当業者にとって明らかなとおり、例えばH、ハロゲン、NO、CN、NH、OH、またはOCFのような基は、置換可能な基ではないため、これに該当しない。置換基のラジカルまたは構造が「必要に応じて置換される」として特定または規定されていない場合、該置換基のラジカルまたは構造は置換されていないものである。
【0013】
ここで使用する用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、完全に飽和であるかもしくは一つ以上の不飽和単位を含む直鎖または分岐鎖のC〜C12炭化水素鎖、または、完全に飽和であるかもしくは一つ以上の不飽和単位を含む単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素であって、ただし芳香族ではなく(ここで「炭素環」または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子の残りの部分に対して単一の結合点を有し、二環式環系において個々の任意の環は3〜7員であるものを意味する。例えば、適切な脂肪族基には、直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらの複合体、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルがあるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
単独でまたはより大きな部分の一部として使用される用語「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、および「アルコキシカルボニル」のそれぞれは、1〜12の炭素原子を含む直鎖および分岐鎖の両方を包含する。単独でまたはより大きな部分の一部として使用される用語「アルケニル」および「アルキニル」は、2〜12の炭素原子を含む直鎖および分岐鎖の両方を包含するものである。
【0015】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、または「ハロアルコキシ」は、場合によって一つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」はF、Cl、Br、またはIを意味する。
【0016】
用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素、または硫黄を意味し、また、窒素および硫黄の任意の酸化型、並びに任意の塩基性窒素の四級化型を含む。また、用語「窒素」は、複素環式環の置換可能な窒素も含む。例えば、酸素、硫黄または窒素から選択される0〜3のヘテロ原子を有する飽和のまたは部分的に不飽和の環において、その窒素は、N(例えば3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)、NH(例えばピロリジニルにおけるような)、またはNR(例えばN−置換ピロリジニルにおけるような)とすることができる。
【0017】
単独で使用されるかまたは「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、合計5〜14の環員を有する単環式、二環式および三環式の環系であって、該系における少なくとも一つの環が芳香族であり、かつ該系における各環が3〜7の環員を含むものを指す。用語「アリール」は、用語「アリール環」と同義なものとして用いることができる。
【0018】
ここで使用する用語「複素環式環」、「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、5〜14の環員を有する非芳香族、単環式、二環式、または三環式の環系であって、そこにおいて一以上の環員がヘテロ原子であり、該系における各環が3〜7の環員を含むものを意味する。
【0019】
単独で使用されるかまたは「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」におけるようなより大きな部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、合計5〜14の環員を有する単環式、二環式および三環式の環系であって、該系における少なくとも一つの環が芳香族であり、該系における少なくとも一つの環が一つ以上のヘテロ原子を含み、かつ該系における各環が3〜7の環員を含むものを指す。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と同義なものとして用いることができる。
【0020】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシ等を含む)は、一つ以上の置換基を含んでもよい。アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、またはヘテロアラルキル基の不飽和炭素原子上にある適切な置換基は、ハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、保護されたOH(例えば、アシルオキシ、それは、当該技術において−OC(O)Rとして識別される)、フェニル(Ph)、Rで置換されたPh、−O(Ph)、Rで置換されたO−(Ph)、−CH(Ph)、Rで置換された−CH(Ph)、−CHCH(Ph)、Rで置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−(CHNHC(O)Rから選択され、ここでyは0〜6であり、各Rは、それぞれ独立して水素、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、置換されていない5〜6員のヘテロアリール環もしくは複素環式環、フェニル(Ph)、−O(Ph)、または−CH(Ph)−CH(Ph)から選択される。Rの脂肪族基上にある置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ(C〜C脂肪族))、またはハロ(C〜C脂肪族)から選択される。
【0021】
また、アリール基またはヘテロアリール基は、Rで必要に応じて置換される−CH=CH(Ph);−NRC(S)N(R;−C(S)R;−B(OR;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(=NOR)R;−N(OR)R;−L’−R;−L’−N(R;−L’−SR;−L’−OR;−L’(C〜C10シクロ脂肪族);−L’−(C〜C10アリール);−L’−(5〜10員のヘテロアリール);−L’−(5〜10員のヘテロシクリル);オキソ;C〜Cハロアルコキシ;C〜Cハロアルキル;−L’−NO;−L’−CN;−L’−OH;−L’−CFから選択される一つ以上の置換基を含んでもよく、ここでL’は、C〜Cアルキレン基(そこにおいて最高3つまでのメチレン単位が、−NH−、−NR−、−O−、−S−、−CO−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)−、−NHCO−、−NRCO−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−SONH−、−SONR−、−NHSO−、−NRSO−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR−、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR−、−NHSONH−、−NRSONH−、−NHSONR−、−NRSONR−、−SO−、または−SO−によって置換される)、かつ各Rは、それぞれ独立して、水素、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、置換されていない5〜6員のヘテロアリールまたは複素環式環、フェニル、または−CH(Ph)から選択されるか、または、同じまたは異なる置換基上にある二つの独立したRは、各R基に結合する一つまたは複数の原子とともに、5〜8員のヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成しており、ここで、該へテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素または硫黄からそれぞれ独立して選択される1〜3のヘテロ原子を有し、Rの脂肪族基上に必要に応じて存在する置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロC〜C脂肪族)、またはハロC〜C脂肪族から選択され、ここでRのC〜C脂肪族基のそれぞれは、置換されていないものである。
【0022】
脂肪族基または非芳香族複素環式環は、一つ以上の置換基を含んでもよい。脂肪族基または非芳香族複素環式環の飽和炭素上にある適切な置換基は、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙されたものおよび以下のもの:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NRから選択され、ここで、各Rは、それぞれ独立して水素または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族から選択され、かつRの脂肪族基上に必要に応じて存在する置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ−C〜C脂肪族)、およびハロ(C〜C脂肪族)から選択され、ここでRの上記C〜C脂肪族基のそれぞれは、置換されていないものである。
【0023】
非芳香族へテロ環の窒素上にある置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−NRSOから選択され、ここでRは、水素、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、必要に応じて置換されるフェニル(Ph)、必要に応じて置換される−O(Ph)、必要に応じて置換される−CH(Ph)、必要に応じて置換される−CHCH(Ph)、または置換されていない5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環である。Rの脂肪族基またはフェニル環上にある置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ(C〜C脂肪族))、またはハロ(C〜C脂肪族)から選択される。
【0024】
用語「アルキリデン鎖」は、完全に飽和であり得るかまたは一つ以上の不飽和単位を有することができかつ分子の残りの部分に対して二つの結合点を有する線状または枝分かれの炭素鎖を指す。
【0025】
本発明の化合物は、化学的に実現可能でかつ安定なものに限られる。ここで使用する用語「安定な」は、その製造、検出が可能な条件、並びに好ましくはその回収、精製、およびここに開示する目的の一つ以上に対する使用が可能な条件に供されるとき、実質的に変化しない化合物を指す。従って、上記化合物における置換基または可変部の組合せが許されるのは、そのような組合せが安定でかつ化学的に実現可能な化合物をもたらす場合に限られる。所定の実施態様において、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分または他の化学的に反応性の条件が存在しない場合において40℃以下の温度で1週間以上保持したとき、その化学構造が実質的に変化しないものである。
【0026】
また、特に断らない限り、ここに示す構造は、該構造のすべての立体化学形(すなわち、各不斉中心に対してはR配置およびS配置)を含むことを意図している。従って、本化合物の単一の立体化学異性体、さらには、本化合物のエナンチオマーおよびジアステレオマーの混合物は、本発明の技術的範囲内にある。特に断らない限り、ここに示す構造は、同位体に富む原子が一つ以上存在することのみにおいて異なる化合物をも含むことを意図している。例えば、重水素または三重水素によって水素を置換したこと以外は本構造を有する化合物、あるいは、13Cまたは14Cに富む炭素によって炭素を置換した以外は本構造を有する化合物は、本発明の技術的範囲内にある。
【0027】
本発明の化合物は、選択可能な互変異性型として存在してもよい。特に断らない限り、いずれかの互変異性体を表すものは、その他のものを含むことを意図している。
【0028】
式Iの化合物は、包括的に米国特許第6743791号に記載されている。驚くべきことに、上で示したアニリン基上の2−クロロ置換基が、他のキナーゼよりもERK2プロテインキナーゼに対して選択性をもたらすことが見出された。さらに驚くべきことに、R基が水素以外ものであるとき、ERK2プロテインキナーゼに対する選択性がもたらされることが見出された。
【0029】
一実施態様において、式Iの化合物のRは、水素、N(R)、ハロゲン、OH、または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族から選択される。Rが必要に応じて置換される脂肪族基であるとき、脂肪族基上の好ましい置換基は、R、ハロ、ニトロ、アルコキシ、およびアミノである。そのようなR基の具体例には、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロヘキシル、CHOCH、CHOH、NH、NHCH、NHAc、NHC(O)NHCH、およびCHNHCHが挙げられる。一具体例において、式IのR基はメチルである。もう一つの具体例において、式IのR基は水素である。
【0030】
もう一つの実施態様において、式Iの化合物のR基は、ハロゲン、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、OR、またはSRである。式IのそのようなR基の具体例には、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、イソプロピル、OCH、OH、またはSCHがある。一具体例において、式IのR基はクロロである。もう一つの具体例によれば、式IのR基は水素である。ある特定の実施態様において、Rを有するフェニル環に結合した炭素は、(S)−配置を有する。
【0031】
特定の実施態様において、pは1であり、かつ式IのB環基上にあるR置換基は水素、メチル、またはエチルである。他の実施態様において、pは0である。
【0032】
さらに他の実施態様において、nは1であり、かつ式IのR基はハロゲン、NO、R、OR、またはN(R)である。そのようなR基の具体例には、フルオロ、NH、Cl、Br、OCH、ハロアルキル(例えばCF)、OCF、およびOHが挙げられる。さらなる実施態様において、R基は、フルオロまたはNOである。さらに他の実施態様において、式Iの化合物のR基は、4位のフルオロである。
【0033】
特定の実施態様において、式Iの化合物のB環基は、以下から選択される5員環である。
【0034】
【化12】

他の実施態様において、式IのB環基は以下から選択される6員アリール環である。
【0035】
【化13】

式Iの典型的な環系を表2に示す。
【0036】
表2:式Iの典型的な環系
【0037】
【表2−1】

【0038】
【表2−2】

【0039】
【表2−3】

【0040】
【表2−4】

【0041】
【表2−5】

もう一つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩を特徴とする。
【0042】
【化14】

ここで、環B、p、R、R、R、およびRは、式Iの化合物について上記で定義したとおりである。これらの化合物は、米国特許第6743791号に包括的に記載されている。驚くべきことに、上で示したアニリン基上の2−クロロ置換基が、ERK2プロテインキナーゼに対して選択性をもたらすことが見出され、さらに、上で示したアニリン基の4位におけるR置換基が、該アニリン基の4位にR置換基がない化合物と比べて、化合物に代謝安定性をもたらすことが見出された。
【0043】
一実施態様において、式IIの化合物のRは、水素、N(R)、ハロゲン、OH、またはC〜C脂肪族から選択される必要に応じて置換される基から選択される。Rが必要に応じて置換される脂肪族基であるとき、脂肪族基上の好ましい置換基は、R、ハロ、ニトロ、アルコキシ、およびアミノである。そのようなR基の具体例には、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロヘキシル、CHOCH、CHOH、NH、NHCH、NHAc、NHC(O)NHCH、およびCHNHCHがある。一具体例において、式IIのR基はメチルである。もう一つの具体例において、式IIのR基は水素である。
【0044】
特定の実施態様において、式IIのR基は、ハロゲン、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、OR、またはSRである。式IIのそのようなR基の具体例には、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、イソプロピル、OCH、OH、またはSCHが挙げられる。さらなる実施態様において、式IIのR基はクロロである。さらにもう一つの実施態様において、式IIのR基は水素である。さらに他の実施態様において、Rを有するフェニル環に結合した炭素は、(S)−配置を有する。
【0045】
特定の実施態様において、pは1であり、かつ式IIのB環基上にあるR置換基は水素、メチル、またはエチルである。他の実施態様において、pは0である。
【0046】
もう一つの実施態様において、式IIの化合物のR基はハロゲン、NO、R、OR、またはN(R)である。そのようなR基の具体例には、フルオロ、NH、Cl、Br、OCH、ハロアルキル(例えばCF)、OCF、およびOHが挙げられる。さらなる実施態様において、Rは、フルオロ、クロロ、またはNOである。さらに他の実施態様において、式IIの化合物のR基は、フルオロである。
【0047】
特定の実施態様において、式IIのB環基は、以下から選択される5員環である。
【0048】
【化15】

他の実施態様において、式IIのB環基は以下から選択される6員アリール環である。
【0049】
【化16】

式IIの典型的な環系を以下の表3に示す。
【0050】
表3:式IIの典型的な環系
【0051】
【表3−1】

【0052】
【表3−2】

【0053】
【表3−3】

【0054】
【表3−4】

式IおよびIIの化合物の典型的な構造を表4に示す。
【0055】
表4.式Iの典型的な化合物
【0056】
【表4】

(処方、使用、および投与)
ここに記載する化合物および組成物は、通常、一つ以上の酵素のプロテインキナーゼ活性を阻害するのに有用である。特定の一実施態様において、本発明の化合物および組成物は、ERK2の阻害剤であり、従って、該化合物および組成物は、ERK2に関連する病気または症状を治療またはその重症度を軽減するのに特に有用である。
【0057】
本発明においてERK2の阻害剤として使用される化合物の活性は、インビトロ、インビボ、または細胞株において検定することができる。インビトロアッセイ(インビトロ検定)には、活性化されたERK2のATPアーゼ活性またはリン酸化活性のいずれかの阻害を測定するアッセイがある。その代わりとなるインビトロアッセイは、阻害剤がERK2に結合する能力を定量する。阻害剤の結合は、結合の前に阻害剤を放射性標識し、阻害剤/ERK2複合体を分離し、そして結合した放射性標識の量を求めることにより測定することができる。一方、阻害剤の結合は、既知の放射性リガンドに結合されたERK2とともに新規の阻害剤をインキュベートする競合試験を行うことにより、測定することができる。本発明においてERK2キナーゼの阻害剤として使用される化合物を検定するための詳細な条件は、下記の実施例に示している。
【0058】
もう一つの局面において、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体と、薬学的に受容可能な担体、佐剤、または賦形剤とを含む組成物を特徴とする。本発明の組成物における化合物の量は、生物学的試料または患者において、プロテインキナーゼ、特にERK2を検出可能に阻害するのに有効なものである。好ましくは、本発明の組成物は、そのような組成物が必要な患者に投与するため処方される。最も好ましくは、本発明の組成物は、患者への経口投与のため処方される。
【0059】
ここで使用する用語「患者」は、動物を意味し、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0060】
上述したとおり、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、薬学的に受容可能な担体、佐剤、または賦形剤をさらに含み、ここでそれらには、任意のあらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体の賦形剤、分散助剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存料、固体の結合剤、滑沢剤など、必要な特定の剤形に適するものが含まれる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st版,2005,D.B.Troy編,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,J.Swarbrick and J.C.Boylan編,1988−1999,Marcel Dekker,New York(それらのそれぞれの内容は引用により、本明細書に含まれる)には、薬学的に受容可能な組成物の調製に使用される種々の担体およびその調製のための既知の技術が開示されている。通常の担体媒体で本発明の化合物と適合しない(例えば、何らかの望ましくない生物学的作用をもたらすか、あるいは薬学的に受容可能な組成物の一つまたは複数の他の成分と有害な態様で相互作用することにより)何らかのものを除き、担体媒体の使用は、本発明の技術的範囲内であることを意図している。
【0061】
用語「薬学的に受容可能な担体、佐剤、または賦形剤」は、ともに配合される化合物の薬理活性を損なわない非毒性の担体、佐剤、または賦形剤を指す。本発明の組成物に使用できる薬学的に受容可能な担体、佐剤または賦形剤には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えばリン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、シリカコロイド、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロール系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂があるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
ここで使用する用語「検出可能に阻害」は、本発明の化合物または組成物およびERK2キナーゼを含む試料と、該化合物または組成物なしでERK2キナーゼを含む対照試料との間で、ERK2活性に測定可能な変化があることを意味する。
【0063】
「薬学的に受容可能な誘導体」は、本発明による化合物の任意の非毒性の塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体であって、投与時に受容体に対して直接的または間接的に本発明の化合物またはその阻害活性代謝産物もしくは残留物をもたらすことができるものを意味する。
【0064】
ここで使用する用語「その阻害活性代謝産物もしくは残留物」は、その代謝産物または残留物もERK2の阻害剤であることを意味する。
【0065】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩は、薬学的に受容可能な無機酸および無機塩基並びに有機酸および有機塩基から誘導されるものを含む。適切な酸塩の具体例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、二硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パーモエート(palmoate)、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩がある。他の酸、例えばシュウ酸(それ自体は薬学的に受容可能なものではないが)は、本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な酸付加塩を得るのに中間体として有用な塩の調製に用いてもよい。
【0066】
適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム、およびN(C〜Cアルキル)の塩がある。また本発明は、ここに開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基を四級化することも意図している。水または油溶性または分散性の生成物を、そのような四級化により得ることができる。
【0067】
本発明の組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーにより投与、局所投与、直腸投与、鼻投与、口腔粘膜投与、経膣投与、または移植貯留器を介して投与することができる。ここで使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病変内、および頭蓋内の注射または点滴の技法を含む。本組成物は、経口投与、腹腔内投与、または静脈投与することが好ましい。注射可能な無菌の形態の本発明の組成物は、水性または油性の懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いる当該技術において知られた技法により調製することができる。また注射可能な無菌製剤は、非毒性の非経口投与できる希釈剤または溶媒における注射可能な無菌溶液または懸濁液(例えば1,3−ブタンジオールにおける溶液)とすることができる。使用できる可能な賦形剤および溶媒には、水、リンゲル溶液、および生理食塩液がある。さらに、無菌の不揮発油を溶媒または懸濁媒質として通常用いることができる。
【0068】
この目的のため、任意の無刺激不揮発油(合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む)を用いることができる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に受容可能な油、例えばオリーブ油またはヒマシ油と同様、特にそのポリオキシエチル化された形態において、注射剤の調製に有用である。また、これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤(例えばカルボキシメチルセルロース)または乳剤および懸濁剤などの薬学的に受容可能な剤形の調製に通常使用される同様の分散剤を含んでもよい。また、他の通常使用される界面活性剤、例えばツイーン(Tween)類、スパン(Span)類および他の乳化剤、あるいは、薬学的に受容可能な固体、液体または他の剤形の製造に通常使用されるバイオアベイラビリティエンハンサーを製剤の目的に使用することもできる。
【0069】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、任意の経口投与可能な剤形(例えばカプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液があるがこれらに限定されない)で経口投与することができる。経口用錠剤の場合、通常使用される担体にはラクトースおよびコーンスターチがある。滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)も典型的に加えることができる。カプセル剤形による経口投与の場合、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥コーンスターチがある。水性懸濁剤が経口使用に必要な場合、有効成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。必要ならば、所定の甘味剤、矯味・矯臭剤、または着色剤も添加することができる。
【0070】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与してもよい。これらは、薬剤と適切な非刺激性賦形剤とを混合することにより調製することができる。該非刺激性賦形剤は、室温で固体である一方、直腸温度では液体であり、従って、直腸で溶けて薬剤を放出するものである。そのような材料には、カカオ脂、蜜ろう、およびポリエチレングリコールがある。
【0071】
また、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、特に、治療の対象が、眼、皮膚、または下部腸管の疾患など、局所塗布によって容易に処置できる領域または器官を含む場合、局所投与することができる。適切な局所製剤は、それらの領域または器官のそれぞれに対して容易に調製される。
【0072】
下部腸管に対する局所塗布は、直腸坐剤製剤(上記参照)または適切な浣腸製剤により行うことができる。また、局所経皮パッチも使用することができる。
【0073】
局所塗布のため、薬学的に受容可能な組成物は、一以上の担体中に懸濁または溶解された有効成分を含む適切な軟膏剤に調製することができる。本発明の化合物の局所投与用担体には、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水があるが、これらに限定されるものではない。一方、薬学的に受容可能な組成物は、一以上の薬学的に受容可能な担体中に懸濁または溶解された有効成分を含む適切なローション剤またはクリーム剤に調製することができる。適切な担体には、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート(polysorbate)60、セチルエステルワックス、ステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水があるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
眼用に対して、薬学的に受容可能な組成物は、等張性のpHを調節した無菌食塩水における微粒懸濁液として調製することができ、好ましくは、塩化ベンザルコニウムのような保存剤を含むまたは含まない等張性のpHを調節した無菌食塩水における溶液として調製することができる。一方、眼用に対して、薬学的に受容可能な組成物は、ワセリンのような軟膏剤に調製してもよい。
【0075】
また、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、鼻用エアゾール剤または吸入剤により投与してもよい。そのような組成物は、製剤技術においてよく知られた手法により調製することができ、また、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フッ化炭素類、および/または他の一般的な可溶化剤もしくは分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調製することができる。
【0076】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与用に調製することが好ましい。
【0077】
単一剤形の組成物を製造するため担体材料と組み合わせることができる本発明の化合物の量は、治療される対象、投与の特定の態様によって変わってくる。0.01〜100mg/kg体重/日の用量の阻害剤を組成物摂取の患者に投与することができるよう、組成物を調製することが好ましい。
【0078】
当然のことながら、任意の特定の患者に対する特定の用量および治療法は、種々の因子によって変わる。そのような因子には、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食生活、投与の時期、排出率、薬剤の組み合わせ、治療する医師の判断、および治療する特定の病気の重症度が含まれる。また、組成物における本発明の化合物の量は、該組成物中の特定の化合物によっても変わってくる。
【0079】
もう一つの局面によれば、本発明は、生物学的試料中の、プロテインキナーゼ活性、例えばERK2キナーゼ活性を阻害する方法を特徴とし、該方法は、該生物学的試料を、本発明の化合物または該化合物を含む組成物と接触させる工程を備える。
【0080】
ここで使用する用語「生物学的試料」は、動物の外にある試料を意味し、例えば、細胞培養物もしくはその抽出物;動物から得られる生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、または他の体液もしくはその抽出物を含むが、それらに限定されるものではない。生物学的試料中のキナーゼ活性、特にERKキナーゼ活性の阻害は、当業者に知られる種々の目的に有用である。そのような目的の具体例には、輸血、臓器移植、生体試料の保存、および生物検定があるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
もう一つの局面において、本発明は、患者のプロテインキナーゼ活性、例えばERK2キナーゼ活性を阻害する方法を特徴とし、該方法は、本発明の化合物または該化合物を含む組成物を患者に投与する工程を備える。
【0082】
もう一つの実施態様によれば、本発明は、患者においてERK2が媒介する病気または症状を治療またはその重症度を軽減する方法を提供し、該方法は、本発明による組成物を患者に投与する工程を備える。
【0083】
ここで使用する用語「ERKが媒介する病気」または「症状」は、ERKがある役割を果たすことが知られている任意の病気または他の有害な症状を意味する。従って、本発明のもう一つの実施態様は、ERKが役割を果たすことが知られている一以上の病気を治療またはその重症度を軽減することに関する。特に本発明は、癌、脳卒中、糖尿病、肝腫、心臓肥大を含む心血管疾患、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム硬化症、再狭窄、乾癬、喘息を含むアレルギー性障害、炎症、神経性疾患、およびホルモン関連疾患から選択される病気または症状を治療またはその重症度を軽減する方法に関し、ここで該方法は、それが必要な患者に本発明による組成物を投与することを備える。ある特定の実施態様において、治療される病気または症状は癌である。用語「癌」および「癌(性)の」は、無秩序な細胞成長/増殖を典型的に特徴とする哺乳動物の生理学的症状を指すかまたは表している。癌の具体例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病があるがこれらに限定されるものではない。そのような癌のさらに特定の具体例には、腺癌、腺腫、副腎皮質癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、口腔前庭癌、頚癌、結腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜癌もしくは子宮癌、類表皮癌、食道癌、眼癌、濾胞状癌、胆嚢癌、胃腸癌、尿生殖路の癌、グリア芽細胞腫、毛様細胞癌、様々な種類の頭部および頚部の癌、肝癌、肝細胞癌、ホジキン病、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、大腸の癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌(例えば肺の腺癌、小細胞肺癌、肺の扁平上皮癌、非小細胞肺癌)、黒色腫および非黒色腫の皮膚癌、リンパ球障害、骨髄増殖性障害(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性の突発性骨髄線維症、骨髄線維症を伴う骨髄化生、慢性の骨髄性白血病(CML)、慢性の骨髄単球性白血病、慢性の好酸球性白血病、好酸球増多症候群、系統的肥満細胞疾患、異型性CML、または若年性骨髄単球性白血病)、神経芽細胞腫、卵巣癌、乳頭状癌、膵臓癌、腹膜の癌、前立腺癌(良性前立腺増殖症を含む)、直腸癌、唾液腺癌、肉腫、セミノーマ、扁平上皮癌、小細胞癌、小腸の癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、未分化の癌腫、および外陰部の癌があるがこれらに限定されるものではない。特定の実施態様において、治療される癌は、黒色腫(メラノーマ)、乳癌、結腸癌、または膵臓癌である。
【0084】
本発明のERK阻害剤を投与することを含む治療方法は、化学療法剤もしくは抗増殖剤または抗炎症剤から選択される追加の治療剤を患者に投与することをさらに含むことができ(併用療法)、ここで該追加の治療剤は、治療する病気に対して適切なものであり、かつ該追加の治療剤は、単一の剤形として本発明の化合物または組成物とともに投与されるかまたは複数の剤形の一部として該化合物または組成物とは別に投与される。該追加の治療剤は、本発明の化合物と同時にまたは異なる時期に投与することができる。後者の場合、通常、互いに対して5時間以内に投与するが、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、または2ヶ月時期がずれていてもよい。本発明の化合物と組み合わせることができる化学療法剤または他の抗増殖剤には、例えば、アドリアマイシン、ゲムシタビン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、エトポシド、フルオロウラシル、Gleevec(商標)、インターフェロン類、白金誘導体(例えばカルボプラチン)、トポテカン、タキソール、ビンブラスチン、およびビンクリスチンがあるがこれらに限定されるものではない。
【0085】
本発明の化合物の量または単一の剤形を製造すべく担体材料と組み合わせることができる化合物および追加の治療剤の量(上述した追加の治療剤を含む組成物中の量)は、治療される対象および投与の特定の態様によって変わってくる。本発明の組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の用量で式Iの化合物が投与できるよう、処方することが好ましい。
【0086】
追加の治療剤を含む組成物において、該追加の治療剤と本発明の化合物は、相乗作用を示すものであってもよい。従って、そのような組成物における追加の治療剤の量は、該治療剤のみを使用する単独療法に必要な量より少なくなる。そのような組成物において、0.01〜100μg/kg体重/日の用量で該追加の治療剤を投与することができる。
【0087】
本発明の組成物中に存在する追加の治療剤の量は、該治療剤を唯一の有効薬剤として含む組成物において通常投与する量以下となる。本開示の組成物における追加の治療剤の量は、該薬剤を唯一の治療上有効な薬剤として含む組成物において通常存在する量の約50%〜100%の範囲にあることが好ましい。
【0088】
また、本発明の化合物またはその医薬組成物は、移植可能な医療器具(例えばプロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステント、およびカテーテル)をコーティングするための組成物に組み込んでもよい。例えば血管ステントは、再狭窄(損傷の後、血管壁が再び狭くなること)を克服するため使用されている。しかし、ステントまたは他の移植可能な器具を使用する患者は、血塊の形成や血小板の活性化の危険性にさらされる。これらの望ましくない作用は、キナーゼ阻害剤を含む薬学的に受容可能な組成物で器具を予めコーティングすることにより、防止または緩和することができる。適切なコーティングおよびコーティングした移植可能な器具の一般的な調製は、米国特許第6099562号、第5886026号、および第5304121号に記載されている。そのようなコーティングは、典型的に生体適合性ポリマー材料(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物)である。必要に応じて、そのようなコーティングは、組成物に徐放特性を付与するため、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはそれらの組み合わせからなる適切なトップコートでさらに被覆することができる。本発明の化合物でコーティングされた移植可能な器具は、本発明のもう一つの実施態様である。
【0089】
(本発明の化合物の調製)
本発明の化合物は、当業者に知られる方法および米国特許第6743791号(その内容はすべて、この引用により本明細書に含まれる)に記載された方法により調製することができる。スキーム1は、本発明の式I−ttのピロール−3−イル化合物を調製するため用いられる一般的な合成経路を示している。
【0090】
それによれば、塩化プロパノイルを2,2,2−トリクロロ−1−(1H−ピロール−2−イル)エタノン、ジクロロメタン、および三塩化アルミニウムと反応させ、化合物101を生成させる。DMF中室温において化合物101を(S)−2−アミノ−2−フェニルエタノールで処理することによりN−((S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)−4−プロピオニル−1H−ピロール−2−カルボキサミド(化合物102)を生成させる。室温で化合物102をtert−ブトキシ−N,N,N’,N’−テトラメチルメタンジアミンで処理することにより、4−((Z)−3−(ジメチルアミノ)−2−メチルアクリロイル)−N−((S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)−1H−ピロール−2−カルボキサミド(化合物103)を生成させる。高温(例えば還流エタノール)において化合物103を式I−ssのグアニジンで処理することにより、式I−tt(ここで、Rは本明細書に規定されるとおり)の化合物が生成される。一方、化合物103をS−メチルチオ尿素で処理し、N−((S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)−4−(5−メチル−2−(メチルチオ)ピリミジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボキサミドを生成させてもよい。次いでこれをm−CPBAで酸化して対応するスルホンにすることができる。次いでそのスルホニル基を、式I−ssのフェニルグアニジンに対応するアニリンによって置換し、式I−ttの化合物を生成させることができる。表Iに例示するとおり、この方法によって合成した式III−aの化合物は、分取HPLC(逆相、水中10〜90%CHCN、15分間)により分離した。
【0091】
【化17】

特定の例示的な実施態様をここに示し説明しているが、明らかなとおり、本発明の化合物は、市販されているかまたは当業者が通常利用できる方法によって得られる適切な出発材料を用いて、ここに一般的に示されるとおり、調製することができる。ここに説明した本発明がさらに十分に理解されるように、以下に実施例を示す。当然のことながら、これらの実施例は、単に例示を目的とするものであり、決して、本発明を限定するものとして解釈されるものではない。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、本発明の化合物の具体例を調製するための詳細な方法を示している。明らかなとおり、本発明の他の化合物も、ここに示す開示および当業者に知られる方法に従って調製される。各H−NMRは500MHzで得られた。
【0093】
以下の定義は、ここで用いる用語および省略形(略語)を示すものである。
【0094】
ATP アデノシン三リン酸
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
EDCI 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ESMS エレクトロスプレー質量分析
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HOBt 1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC−MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
Me メチル
MeOH メタノール
NADH 水素化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
Ph フェニル
tBu 第三級ブチル
TLC 薄層クロマトグラフィー
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン。
【0095】
(実施例1 4−[2−(2−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−ピリミジン−4−イル]−1H−ピロール−2−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(I−1))
化合物103をスキーム1に示すとおり調製した。この化合物を、還流エタノール中12時間、(2−クロロ−4−フルオロフェニル)グアニジンで処理した。揮発性物質を減圧除去し、得られた粗化合物I−1を逆相HPLCで精製した。H−NMR(メタノール−d):δ7.2−8.15(m,10H),5.2(m,1H),3.85(m,2H),2.5(s,3H)。化合物103を(2,4−ジクロロフェニル)グアニジンおよび(2−クロロ−4−ニトロフェニル)グアニジンで処理することにより、それぞれ、化合物I−3およびI−4を得た。
【0096】
【数1】

(実施例2 4−[2−(2−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−ピリミジン−4−イル]−3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(I−2))
2,2,2−トリクロロ−1−(1H−ピロール−2−イル)エタノンの代わりに2,2,2−トリクロロ−1−(3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−イル)エタノンを用いて、化合物103の合成に使用したと同じ手順を行い、4−((Z)−3−(ジメチルアミノ)−2−メチルアクリロイル)−N−((S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)−3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−カルボキサミドを生成させた。この化合物を、還流エタノール中12時間、(2−クロロ−4−フルオロフェニル)グアニジンで処理した。揮発性物質を減圧除去し、得られた粗化合物I−2を逆相HPLCで精製した。
【0097】
【数2】

(実施例3 ERK2阻害アッセイ)
分光光度共役酵素アッセイ(Fox et al Protein Sci.1998,7,2249)によりERK2の阻害について化合物を検定した。このアッセイにおいて、固定濃度の活性化ERK2(10nM)を、種々の濃度の本発明の化合物とともに、0.1M HEPES緩衝液(pH7.5、10mMのMgCl、2.5mMのホスホエノールピルビン酸塩、200μMのNADH、150μg/mlのピルビン酸キナーゼ、50μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼ、および200μMのerktideペプチドを含む)中のDMSO(2.5%)において10分間30℃でインキュベートした。65μMのATPの添加により反応を開始させた。340nmにおける吸光度の減少速度をモニターした。速度データからKi値を阻害剤濃度の関数として求めた。Ki値を表5に示す。表5では、0.1μM以下のKiを「A」として示し、0.1μMより大きなKiを「B」として示している。表5の化合物番号は、表4の化合物番号に対応している。
【0098】
【表5】

(実施例4 ERK2阻害:細胞増殖アッセイ)
細胞増殖アッセイにより、ERK2の阻害について化合物を検定することができる。このアッセイにおいて、RPMI1640培地(JRH Biosciences)に10%ウシ胎児血清およびペニシリン/ストレプトマイシン溶液を添加して完全培地を調製する。結腸癌細胞(HT−29細胞株)を、96ウェルプレートの84ウェルのそれぞれに10000細胞/ウェル/150μLの播種密度で加える。細胞を、37℃で2時間インキュベートすることによりプレートに付着させる。段階希釈によって試験化合物の完全培地溶液を調製し、以下の濃度を得る:20μM、6.7μM、2.2μM、0.74μM、0.25μM、および0.08μM。試験化合物の溶液(50μL)を72の細胞含有ウェルのそれぞれに加える。残りの12の細胞含有セルには、完全培地(200μL)のみを加えて、最大増殖を測定するための対照群を形成する。残りの12の空のウェルには完全培地を加えて、バックグランドを測定するための媒質対照群を形成する。プレートを37℃で3日間インキュベートする。H−チミジンの原液(1mCi/mL、New England Nuclear,Boston,MA)をRPMI培地中20μCi/mLに希釈し、そしてこの溶液20μLを各ウェルに加える。プレートを37℃で8時間さらにインキュベートし、次いで採取し、液体シンチレーションカウンターを用いてH−チミジンの取り込みについて分析する。
【0099】
(実施例5 ERK1阻害アッセイ)
分光光度共役酵素アッセイ(Fox et al(1998)Protein Sci,7,2249)によりERK1の阻害について化合物を検定する。このアッセイにおいて、固定濃度の活性化ERK1(20nM)を、種々の濃度の化合物とともに、0.1M HEPES緩衝液(pH7.6、10mMのMgCl、2.5mMのホスホエノールピルビン酸塩、200μMのNADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼ、10μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼ、および150μMのerktideペプチドを含む)中のDMSO(2.0%)において10分間30℃でインキュベートする。140μMのATP(20μL)の添加により反応を開始させる。340nMにおける吸光度の減少速度をモニターする。速度データからKiを阻害剤濃度の関数として評価する。
【0100】
本明細書において引用したすべての刊行物および特許は、引用により、それぞれの刊行物または特許の内容が具体的かつ個別に本明細書に記載されたものとする。明瞭な理解のため、例示および具体例によって上記発明をかなり詳細に説明してきたが、本発明の開示に照らし合わせて当業者に明らかなとおり、添付の請求の範囲の精神または技術的範囲を逸脱することなく、特定の変更および修飾を行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
環Bは、
【化2】

からなる群から選択され、
は、CN、ハロゲン、N(R)、OR、またはRであり、
nは、0〜4であり、
各Rは、それぞれ独立して水素もしくは必要に応じて置換されるC〜C脂肪族基から選択されるか、または同一窒素上の二つのRは、該窒素と一緒になって、窒素、酸素もしくは硫黄からそれぞれ独立して選択される1〜3のヘテロ原子を有する5〜8員のヘテロシクリル環もしくはヘテロアリール環を形成し、
は、R、ハロゲン、(CHOR、COR、(CHN(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)であり、
各wは、0〜3であり、
各Rは、それぞれ独立してオキソ、NO、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され、
pは、0〜2であり、かつ
各Rは、それぞれ独立してオキソ、NO、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され、ここで、
任意のアリール基およびヘテロアリール基上に必要に応じて存在する各置換基は、それぞれ独立してハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、アシルオキシ、フェニル(Ph)、Rで置換されたPh、−O(Ph)、Rで置換されたO(Ph)、−CH(Ph)、Rで置換された−CH(Ph)、−CHCH(Ph)、Rで置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−(CHNHC(O)Rから選択され、ここでyは0〜6であり、各Rは、それぞれ独立して水素、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、置換されていない5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環、フェニル(Ph)、−O(Ph)、または−CH(Ph)−CH(Ph)から選択され、Rの脂肪族基上にある置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ(C〜C脂肪族))、またはハロ(C〜C脂肪族)から選択され、かつ
任意の脂肪族基、ハロ脂肪族基、シクロ−脂肪族基、およびヘテロシクリル基上に必要に応じて存在する置換基は、それぞれ独立して、前記アリール基およびヘテロアリール基について規定されたとおりであり、かつさらに=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NRを含み、ここで、各Rは、それぞれ独立して水素または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族から選択され、かつRの該脂肪族基上に必要に応じて存在する置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ−C〜C脂肪族)、およびハロ(C〜C脂肪族)から選択され、ここでRの該C〜C脂肪族基のそれぞれは、置換されておらず、
ただし、nおよびpがともに0であるとき、環Bはピロール−3−イルであり、かつRはメチルであり、そしてRはCFではない、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
nは1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は水素、N(R)、ハロゲン、OH、または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロヘキシル、CHOCH、CHOH、NH、NHCH、NHAc、NHC(O)NHCH、またはCHNHCHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
はメチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
は水素である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
はハロゲン、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、OR、またはSRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、イソプロピル、OCH、OH、またはSCHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
はクロロである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
は水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
nは1であり、かつRはハロゲン、NO、R、OR、またはN(R)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
はフルオロ、NO、NH、Cl、Br、OMe、CF、OCF、またはOHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
はフルオロまたはNOである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
環Bは
【化3】

から選択される5員環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
環Bは
【化4】

から選択される6員アリール環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
以下の式:
【化5】

を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
環Bは、
【化6】

からなる群から選択され、
は、CN、ハロゲン、N(R)、OR、またはRであり、
各Rは、それぞれ独立して水素もしくは必要に応じて置換されるC〜C脂肪族基から選択されるか、または同一窒素上の二つのRは、該窒素と一緒になって、窒素、酸素または硫黄からそれぞれ独立して選択される1〜3のヘテロ原子を有する5〜8員のヘテロシクリル環またはヘテロアリール環を形成し、
は、R、ハロゲン、(CHOR、COR、(CHN(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)であり、
各wは、0〜3であり、
各Rは、それぞれ独立してオキソ、NO、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)であり、
pは、0〜2であり、かつ
は、オキソ、NO、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)であり、ここで、
任意のアリール基およびヘテロアリール基上に必要に応じて存在する各置換基は、それぞれ独立してハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、アシルオキシ、フェニル(Ph)、Rで置換されたPh、−O(Ph)、Rで置換されたO(Ph)、−CH(Ph)、Rで置換された−CH(Ph)、−CHCH(Ph)、Rで置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−(CHNHC(O)Rから選択され、ここでyは0〜6であり、各Rは、それぞれ独立して水素、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、置換されていない5〜6員のヘテロアリール環もしくは複素環式環、フェニル(Ph)、−O(Ph)、または−CH(Ph)−CH(Ph)から選択され、Rの脂肪族基上にある置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ(C〜C脂肪族))、またはハロ(C〜C脂肪族)から選択され、かつ
任意の脂肪族基、ハロ脂肪族基、シクロ−脂肪族基、およびヘテロシクリル基上に必要に応じて存在する置換基は、それぞれ独立して、該アリール基およびヘテロアリール基について規定されたとおりであり、かつさらに=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NRを含み、ここで、各Rは、それぞれ独立して水素または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族から選択され、かつRの前記脂肪族基上に必要に応じて存在する置換基は、NH、NH(C〜C脂肪族)、N(C〜C脂肪族)、ハロゲン、C〜C脂肪族、OH、O(C〜C脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C〜C脂肪族)、O(ハロ−C〜C脂肪族)、およびハロ(C〜C脂肪族)から選択され、ここでRの該C〜C脂肪族基のそれぞれは、置換されていない、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項17】
は水素、N(R)、ハロゲン、OH、または必要に応じて置換されるC〜C脂肪族から選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロヘキシル、CHOCH、CHOH、NH、NHCH、NHAc、NHC(O)NHCH、またはCHNHCHである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
はメチルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
は水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
はハロゲン、必要に応じて置換されるC〜C脂肪族、OR、またはSRである、請求項16に記載の化合物。
【請求項22】
はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、イソプロピル、OCH、−OH、またはSCHである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
はクロロである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
は水素である、請求項16に記載の化合物。
【請求項25】
nは1であり、かつRはハロゲン、NO、R、OR、またはN(R)である、請求項16に記載の化合物。
【請求項26】
はフルオロ、NO、NH、Cl、Br、OMe、CF、OCF、またはOHである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
はフルオロまたはNOである、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
環Bは
【化7】

から選択される5員環である、請求項16に記載の化合物。
【請求項29】
環Bは
【化8】

から選択される6員アリール環である、請求項16に記載の化合物。
【請求項30】
請求項1または16のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に受容可能な担体、佐剤、または賦形剤とを含む、組成物。
【請求項31】
抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤、神経栄養因子、心血管疾患の治療剤、肝臓疾患の治療剤、抗ウイルス剤、血液障害の治療剤、糖尿病の治療剤、または免疫不全障害の治療剤から選択される治療剤をさらに含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
生物学的試料中のプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該生物学的試料を請求項1に記載の化合物または請求項16に記載の化合物と接触させる工程を備える、方法。
【請求項33】
患者におけるERK2活性を阻害するための医薬の製造における、請求項1もしくは請求項16に記載の化合物または請求項30もしくは請求項31に記載の組成物の使用。
【請求項34】
癌、脳卒中、糖尿病、肝腫、心血管疾患、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害、炎症、神経性障害、またはホルモン関連疾患の重症度を軽減するためのものである、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記癌は、腺腫、腺癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、口腔前庭癌、結腸癌、直腸結腸癌、癌腫、食道癌、濾胞状癌、尿生殖路の癌、グリア芽細胞腫、毛様細胞癌、ホジキン病、角化棘細胞腫、腎臓癌、大細胞癌、大腸の癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺の腺癌、肺癌、リンパ球障害、黒色腫および非黒色腫の皮膚癌、骨髄増殖性障害、神経芽細胞腫、卵巣癌、乳頭状癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、肉腫、セミノーマ、小細胞癌、小腸の癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、または未分化の癌腫から選択される、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記癌は、黒色腫、乳癌、結腸癌、または膵臓癌から選択される、請求項35に記載の使用。

【公表番号】特表2008−525461(P2008−525461A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548395(P2007−548395)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046177
【国際公開番号】WO2006/071644
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】