説明

ERK2のピリジンインヒビターおよびそれらの使用

本発明は、式(I)のプロテインキナーゼのインヒビターの有用な化合物に関する。本発明はまた、該化合物を含む薬学的に受容可能な組成物および種々の疾患、状態または障害の処置においてこれらの組成物を使用する方法を提供する。式(I)またはそれらの薬学的に受容可能な塩であって、ここで、環Aは、必要に応じて置換したピロール環である。本発明により提供される化合物はまた、生物学的現象および病理学的現象におけるキナーゼの研究;このようなキナーゼが媒介する細胞内シグナル伝達経路の研究。および新規キナーゼインヒビターの比較評価に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2004年3月26日に出願された米国仮特許出願第60/556,766号から優先権を主張しており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物および種々の障害の処置において該組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新規治療薬についての研究は、近年、疾患に関連する酵素および他の生体分子の構造の十分な理解によって非常に促進されている。広範な研究の対象である酵素の1つの重要なクラスは、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御を担う構造的に関連する酵素の大きなファミリーを構成する(非特許文献1を参照のこと)。プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能が保存されていることに起因して、共通する先祖遺伝子から発達してきたと考えられる。ほとんど全てのキナーゼは、類似の250〜300個のアミノ酸触媒ドメインを含む。キナーゼは、それらがリン酸化する基質によってファミリーに分類され得る(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質など)。配列モチーフは、一般にこれらのキナーゼファミリーの各々に対応すると確認されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照のこと)。
【0005】
一般に、プロテインキナーゼは、ヌクレオシド三リン酸から、シグナル伝達路に関与するタンパク質受容体へのホスホリル転移をもたらすことにより、細胞内のシグナル伝達を媒介している。これらのリン酸化事象は、分子のオン/オフスイッチの働きをし、このスイッチが、標的タンパク質の生物学的機能を変調または調節し得る。これらのリン酸化事象は、最終的に、種々の細胞外刺激および他の刺激に応答して誘発される。このような刺激の例としては、環境および化学的なストレスシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、菌体内毒素およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α))、ならびに成長因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および線維芽細胞成長因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は細胞の成長、遊走、分化、ホルモン分泌、転写因子の活性化、筋収縮、ブドウ糖の代謝、タンパク質合成の制御、および細胞サイクルの調節に関係する一つ以上の細胞応答に影響を及し得る。
【0006】
多くの疾患は、上記のようなプロテインキナーゼに媒介された事象によって誘発される異常な細胞応答に関連する。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝病、神経性疾患および神経変性疾患、癌、心臓血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、ならびにホルモン関連疾患が挙げられるが、これらに限定されない。従って、治療薬として有用なプロテインキナーゼインヒビターを見出すために医薬品化学においてかなりの試みがなされてきた。
【0007】
(ERKキナーゼ)
ERK2は、Thr183およびTyr185の両方が、上流のMAPキナーゼキナーゼであるMEK1によってリン酸化される場合に最大の活性を達成する、広範に分布したプロテインキナーゼである(非特許文献7;非特許文献8)。活性化される際に、ERK2は、多くの調節タンパク質(プロテインキナーゼRsk90(非特許文献9)およびMAPKAP2(非特許文献10)、ならびに転写因子(例えば、ATF2(非特許文献11)、Elk−1(非特許文献11)、c−Fos(非特許文献12)、およびc−Myc(非特許文献13))が挙げられる)をリン酸化する。ERK2はまた、Ras/Raf依存性経路の下流標的(非特許文献14)であり、これらの潜在的に発癌性のタンパク質からのシグナルを中継する。ERK2は、乳癌細胞の負の増殖制御において役割を果たす(非特許文献15)と示され、ヒトの乳癌におけるERK2の過剰発現が報告されている(非特許文献16)。活性化ERK2はまた、エンドセリン刺激性気道平滑筋細胞の増殖に関係し、このことは、喘息におけるこのキナーゼの役割を示唆している(非特許文献17)。
【0008】
レセプターチロシンキナーゼ(例えば、EGFRおよびErbB2)(非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20)の過剰発現、およびRas GTPaseタンパク質における活性化変異(非特許文献21;非特許文献22)またはB−Raf変異体(非特許文献23;非特許文献24)は、ヒトの癌の主要な原因である。これらの遺伝的変化は、不十分な臨床治療の予後に関連し、広範なパネルのヒトの腫瘍においてRaf−1/2/3−MEK1/2−ERK1/2シグナル伝達カスケードの活性化を生じる。活性化ERK(すなわち、ERK1および/またはERK2)は、増殖、分化、足場非依存性(anchorage independent)な細胞の生存、および脈管形成の制御に関連する中心的シグナル伝達分子であり、悪性腫瘍の形成および進行に重要である多くのプロセスに寄与する。これらのデータは、ERK1/2インヒビターが多面発現活性(アポトーシス誘発効果、抗増殖効果、抗転移効果および抗脈管形成効果を含む)を発揮し、非常に広範なパネルのヒトの腫瘍に対して治療機会を提供することを示す。
【0009】
選択された癌の腫瘍形成挙動におけるERK MAPK経路の構成的活性化と関係する証拠が非常に増えてきている。Rasの活性化変異は、すべての癌のうちの約30%において見出され、いくつか(例えば、膵臓癌(90%)および結腸癌(50%))については、特に高い変異率を有していた。Ras変異はまた、黒色腫のうちの9〜15%において同定されたが、構成的活性化を与えるB−Raf体細胞ミスセンス変異は、より頻繁であり、悪性黒色腫の60〜66%において見出された。Ras、RafおよびMEKの活性化変異は、線維芽細胞をインビトロで腫瘍形成的に形質転換し得、そしてRas変異またはRaf変異は、腫瘍サプレッサ遺伝子(例えば、p16INK4A)の損失と共に、インビボでの自発的な腫瘍の発達を引き起こし得る。増大したERK活性は、これらのモデルで実証され、そして適切なヒトの腫瘍で広く報告もされている。黒色腫において、B−Raf変異またはN−Ras変異あるいはオートクライン増殖因子活性化のいずれかから生じる高い基礎ERK活性は、よく実証されており、そして急速な腫瘍増殖、増加する細胞生存およびアポトーシスに対する耐性と関連する。さらに、ERK活性化は、黒色腫の非常に転移性の挙動の裏にある主要な推進力であると考えられており、この挙動は、細胞外マトリックス分解プロテアーゼおよび侵潤を促進するインテグリンの両方の増加した発現、ならびに通常、ケラチノサイト相互作用を媒介してメラノサイトの増殖を制御するE−カドヘリン接着分子のダウンレギュレーションと関連する。これらのデータは一緒になって、ERKが、現在処置不可能な疾患である黒色腫の処置のための有望な治療学上の標的であることを示している。
【0010】
(Rockキナーゼ)
目的の別のキナーゼファミリーは、Rho関連コイル状コイル形成タンパク質セリン/スレオニンキナーゼ(ROCK)であり、これは、Ras関連小GTPase Rhoのエフェクターであると考えられる。ROCKファミリーとしては、p160ROCK(ROCK−1)(非特許文献25)およびROKα/Rho−キナーゼ/ROCK−II(非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28)、プロテインキナーゼPKN(非特許文献29;非特許文献30)、ならびにシトロンおよびシトロンキナーゼ(非特許文献31;非特許文献32)が挙げられる。キナーゼのROCKファミリーは、種々の機能(アクチン張線維のRho誘導性形成および焦点接着が挙げられる(非特許文献33;非特許文献34;非特許文献35))、およびミオシンホスファターゼのダウンレギュレーション(非特許文献36)、血小板活性化(非特許文献37)、種々の刺激による大動脈平滑筋収縮(非特許文献38)、大動脈平滑筋細胞のトロンビン誘導性応答(非特許文献39)、心筋細胞の肥大(非特許文献40)、気管支平滑筋収縮(非特許文献41)、平滑筋収縮および非筋細胞の細胞骨格再構成(非特許文献42)、容量調節アニオンチャネルの活性化(非特許文献43)、神経突起退縮(非特許文献44)、好中球走化性(非特許文献45)、創傷治癒(非特許文献46)、腫瘍浸潤(非特許文献47)、および細胞形質転換(非特許文献48)に関連すると示されている。従って、ROCKキナーゼのインヒビターの開発は、ROCKキナーゼ経路によって媒介される障害の処置のための治療薬として有用である。
【非特許文献1】Hardie,G.およびHanks,S.、「The Protein Kinase Facts Book,I and II」、Academic Press、San Diego、CA、1995年
【非特許文献2】Hanks,S.K.、Hunter,T.、FASEB J.、1995年、第9巻、p.576−596
【非特許文献3】Knightonら、Science、1991年、第253巻、p.407−414
【非特許文献4】Hilesら、Cell、1992年、第70巻、p.419−429
【非特許文献5】Kunzら、Cell、1993年、第73巻、p.585−596
【非特許文献6】Garcia−Bustosら、EMBO J.、1994年、第13巻、p.2352−2361
【非特許文献7】Andersonら、Nature、1990年、第343巻、p.651
【非特許文献8】Crewsら、Science、1992年、第258巻、p.478
【非特許文献9】Bjorbaekら、J.Biol.Chem.1995年、第270巻、p.18848
【非特許文献10】Rouseら、Cell、1994年、第78巻、p.1027
【非特許文献11】Raingeaudら、Mol.Cell Biol.、1996年、第16巻、p.1247
【非特許文献12】Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993年、第90巻、p.10952
【非特許文献13】Oliverら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、1995年、第210巻、p.162
【非特許文献14】Moodieら、Science、1993年、第260巻、p.1658
【非特許文献15】FreyおよびMulder、Cancer Res.、1997年、第57巻、p.628
【非特許文献16】Sivaramanら、J Clin.Invest.、1997年、第99巻、p.1478
【非特許文献17】Whelchelら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.、1997年、第16巻、p.589
【非特許文献18】Arteaga CL、Semin Oncol.、2002年、第29巻、p.3−9
【非特許文献19】Eccles SA、J Mammary Gland Biol Neoplasia、2001年、第6巻、p.393−406
【非特許文献20】Mendelsohn J & Baselga J、Oncogene、2000年、第19巻、p.6550−65
【非特許文献21】Nottage M & Siu LL、Curr Pharm Des、2002年、第8巻、p.2231−42
【非特許文献22】Adjei AA、J Natl Cancer Inst、2001年、第93巻、p.1062−74
【非特許文献23】Davies H.ら、Nature、2002年、第417巻、p.949−54
【非特許文献24】Broseら、Cancer Res、2002年、第62巻、p.6997−7000
【非特許文献25】Ishizakiら、EMBO J.、1996年、第15巻、p.1885−1893
【非特許文献26】Leungら、J.Biol.Chem.、1995年、第270巻、p.29051−29054
【非特許文献27】Matsuiら、EMBO J.、1996年、第15巻、p.2208−2216
【非特許文献28】Nakagawaら、FEBS Lett.、1996年、第392巻、p.189−193
【非特許文献29】Amanoら、Science、1996年、第271巻、p.648−650
【非特許文献30】Watanabeら、Science、1996年、第271巻、p.645−648
【非特許文献31】Madauleら、Nature、1998年、第394巻、p.491−494
【非特許文献32】Madauleら、FEBS Lett.、1995年、第377巻、p.243−248
【非特許文献33】Leungら、Mol.Cell Biol.、1996年、第16巻、p.5313−5327
【非特許文献34】Amanoら、Science、1997年、第275巻、p.1308−1311
【非特許文献35】Ishizakiら、FEBS Lett.、1997年、第404巻、p.118−124
【非特許文献36】Kimuraら、Science、1996年、第273巻、p.245−248
【非特許文献37】Klagesら、J.Cell.Biol.、1999年、第144巻、p.745−754
【非特許文献38】Fuら、FEBS Lett.、1998年、第440巻、p.183−187
【非特許文献39】Seasholtzら、Cir.Res.、1999年、第84巻、p.1186−1193
【非特許文献40】Kuwaharaら、FEBS Lett.、1999年、第452巻、p.314−318
【非特許文献41】Yoshiiら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.、1999年、第20巻、p.1190−1200
【非特許文献42】Fukataら、Trends in Pharm.Sci、2001年、第22巻、p.32−39
【非特許文献43】Niliusら、J.Physiol.、1999年、第516巻、p.67−74
【非特許文献44】Hiroseら、J.Cell.Biol.、1998年、第141巻、p.1625−1636
【非特許文献45】Niggli、FEBS Lett.、1999年、第445巻、p.69−72
【非特許文献46】NobesおよびHall、J.Cell.Biol.、1999年、第144巻、p.1235−1244
【非特許文献47】Itohら、Nat.Med.、1999年、第5巻、p.221−225
【非特許文献48】Sahaiら、Curr.Biol.、1999年、第9巻、p.136−145
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物を開発するための重大な必要性が存在する。特に、現在、ERK2プロテインキナーゼROCKプロテインキナーゼの活性化に関係する大多数の障害について現在利用可能な不適切な処置を考えると、ERK2プロテインキナーゼおよびROCKプロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物を開発することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
現在、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な組成物は、1種またはそれ以上のERK2およびROCKプロテインキナーゼのインヒビターとして有効であることが発見された。これらの化合物は、一般式Iを有するか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である:
【0013】
【化9】

ここで、環AおよびZは、本明細書中で記述したとおりである。
【0014】
これらの化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、種々の疾患、障害または病態を処置または予防するのに有用であり、これらには、心臓病、糖尿病、アルツハイマー病、免疫不全障害炎症疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害(例えば、骨粗鬆症)、増殖障害、感染症、免疫学的に媒介される疾患、神経変性障害または神経障害、またはウイルス性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物はまた、細胞死および過形成を防止する方法で有用であり、従って、脳卒中、心臓麻痺および臓器低酸素における再灌流/虚血を処置または予防するのに使用され得る。これらの組成物はまた、トロンビンが誘発する血小板凝集を防止する方法で有用である。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、本発明の化合物および組成物を製造する方法を提供することにある。
【0016】
本発明により提供される化合物はまた、生物学的現象および病理学的現象におけるキナーゼの研究;このようなキナーゼが媒介する細胞内シグナル伝達経路の研究。および新規キナーゼインヒビターの比較評価に有用である。
【0017】
(発明の詳細な説明)
(1.本発明の化合物の概要)
本発明は、式Iの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0018】
【化10】

ここで:
環Aは、ピロール環であり、該ピロール環は、必要に応じて、1−位置で、Rで置換され、そして以下で置換されている:
(i)0個、1個または2個のR基、および
(ii)QR
各Rは、別個に、必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基、Ar、CN、NO、ハロゲン、N(R)、SR、またはORから選択されるが、但し、2個のR基は、同時にArにはならない;
は、R、C(O)R、C(O)ORまたはSORである;
は、NまたはC−T(m)である;
Tは、原子価結合またはC1〜6アルキリデン鎖である;
mは、0または1である;
は、CN、ハロゲン、OR、SR、N(R)RまたはRである;
Qは、−C(O)N(R)−、−SON(R)−、−SO−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−N(R)C(O)O−、−C(O)−または−C(O)O−である;
は、ハロゲン、CN、(CH、(CHCH(R、(CHCH(R)CH(R、(CHN(RまたはN(R)(CHN(Rである;
各Rは、別個に、RまたはArから選択される;
各yは、別個に、0〜6である;
各Arは、別個に、必要に応じて置換した3員〜7員の飽和、部分不飽和または完全不飽和単環式環または必要に応じて置換した8員〜10員の飽和、部分不飽和または完全不飽和二環式環から選択され、該単環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該二環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
各Rは、別個に、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基から選択されるか、または:
同じ窒素原子上の2個のRは、そこに結合した窒素原子と一緒になって、4員〜8員の飽和、部分不飽和または完全不飽和環を形成し、該環は、1個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
各Rは、別個に、R、C(O)R、CO、CON(R、SOから選択される;
各Rは、別個に、R、OR、CO、(CHN(R、N(R、N(R)C(O)R、N(R)CON(R、CON(R、SO、N(R)SO、C(O)R、CN、またはSON(Rから選択される;
は、R(CHOR、(CHN(R、または(CHSRから選択される;そして
各wは、別個に、0〜4から選択される。
【0019】
(2.化合物および定義)
本発明の化合物には、上で一般的に記述したものが挙げられ、さらに、本明細書中で開示した実施態様、下位実施態様および種により例示される。本明細書中で使用する以下の定義は、特に明記しない限り、適用される。本発明の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って、同定される。さらに、有機化学の一般的な原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999および「March’s Advanced Organic Chemistry」、5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001で記述されており、それらの全内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0020】
本明細書中で記述する本発明の化合物は、必要に応じて、1個またはそれ以上の置換基(例えば、上で一般に例示したもの、または本発明の特定のクラス、下位分類および種で代表されるもの)で置換され得る。「必要に応じて置換した」との語句は、「置換または非置換」との語句と交換可能に使用されることが分かる。一般に、「置換された」との用語(その前に「必要に応じて」との用語が付いていようといまいと)は、特定した置換基のラジカルを有する所定の構造にある水素ラジカルを置き換えることを意味する。特に明記しない限り、必要に応じて置換した基は、その基の各置換可能位置で置換基を有し得、任意の所定の構造にある1個より多い位置が特定した基から選択される1個より多い置換基で置換され得るとき、その置換基は、どの位置でも、同一または異なり得る。本発明で想定される置換基および変数の組合せは、好ましくは、例えば、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物の形成を生じるものである。
【0021】
本明細書中で使用する「安定な」との用語は、それらの製造、検出、好ましくは、それらの回収、精製、および本明細書中で開示した目的の1つまたはそれ以上に使用することを可能にする条件に晒すとき、実質的に変化しない化合物を意味する。ある実施態様では、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分または他の化学的に反応性の状態なしで、40℃以下の温度で、少なくとも1週間保持したとき、実質的に変化しないものである。
【0022】
本明細書中で使用する「脂肪族」または「脂肪族基」との用語は、直鎖(すなわち、分枝していない)または分枝の置換または非置換炭化水素鎖(これは、完全に飽和しているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有する)または単環式炭化水素または二環式炭化水素(これは、完全に飽和しているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有する)であるが、芳香族ではなく(これはまた、本明細書中にて、「炭素環式」または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子の残りと単一の結合点を有する。特に明記しない限り、脂肪族基は、1個〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。ある実施態様では、脂肪族基は、1個〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施態様では、脂肪族基は、1個〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施態様では、脂肪族基は、1個〜6個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施態様では、脂肪族基は、1個〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。ある実施態様では、「環状脂肪族」(または「炭素環式」または「シクロアルキル」)とは、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素を意味し、これは、完全に飽和しているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有するが、それは、芳香族ではなく、分子の残りと単一の結合点を有し、ここで、該二環式の環系にある任意の個々の環は、3員〜7員を有する。適当な脂肪族基には、直鎖または分枝の置換または非置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらの混成体(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書中で使用する「ヘテロ脂肪族」との用語は、1個または2個の炭素原子を1個またはそれ以上の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素で別個に置換した脂肪族基を意味する。ヘテロ脂肪族基は、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であり得、「ヘテロサイクル」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロ環状脂肪族」基または「複素環」基を含む。
【0024】
本明細書中で使用する「ヘテロサイクル」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環状脂肪族」または「複素環」との用語は、1個またはそれ以上の環メンバーが別個に選択したヘテロ原子である単環式、二環式または三環式の環系を意味する。ある実施態様では、この「ヘテロサイクル」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロ環状脂肪族」基または「複素環」基は、3個〜14個の環メンバーを有し、ここで、1個またはそれ以上の環メンバーは、酸素、イオウ、窒素またはリンから別個に選択されるヘテロ原子であり、そして該系内の各環は、3個〜7個の環メンバーを含有する。
【0025】
「ヘテロ原子」との用語は、1種またはそれ以上の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素(窒素、イオウ、リンまたはケイ素の任意の酸化形状;任意の塩基性窒素の四級化形状;複素環の置換可能窒素(例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中のもののように)、NH(ピロリジニル中のもののように)またはNR(N−置換ピロリジニル中のもののように)を含めて)を意味する。
【0026】
本明細書中で使用する「不飽和」との用語は、ある部分が1個またはそれ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0027】
本明細書中で使用する「アルコキシ」または「チオアルキル」との用語は、酸素(「アルコキシ」)またはイオウ(「チオアルキル」)原子を介して炭素主鎖に結合したアルキル基(これは、先に定義した)を意味する。
【0028】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」との用語は、場合によっては、1個またはそれ以上のハロゲン原子で置換され得るアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。「ハロゲン」との用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0029】
「アリール」との用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」のようなそれより大きい部分の一部として使用されるが、全部で5員〜14員を有する単環式、二環式および三環式の環系を意味し、ここで、この環系内の各環は、3員〜7員を含有する。「アリール」との用語は、「アリール環」との用語と交換可能に使用され得る。「アリール」との用語はまた、以下で定義するヘテロアリール環系を意味する。
【0030】
「ヘテロアリール」との用語は、単独で、または「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」のようなそれより大きい部分の一部として使用されるが、全部で5員〜14員を有する単環式、二環式および三環式の環系を意味し、ここで、この系内の少なくとも1個の環は、芳香族であり、この系内の少なくとも1個の環は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有し、ここで、この系内の各環は、3員〜7員を含有する。「ヘテロアリール」との用語は、「ヘテロアリール環」との用語または「ヘテロ芳香族」との用語と交換可能に使用され得る。
【0031】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含めて)基またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含めて)基は、1個またはそれ以上の置換基を含有し得る。上でまたはアリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適当な置換基は、一般に、以下から選択される:ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;必要に応じてRで置換したフェニル(Ph);必要に応じてRで置換した−O(Ph);必要に応じてRで置換した−(CH1〜2(Ph);必要に応じてRで置換した−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(O)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(O)N(R;−OC(O)N(R;−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSOR°;−C(=S)N(R;−C(=NH)−N(R;または−(CH0〜2NHC(O)R;ここで、Rの各存在は、水素、必要に応じて置換したC1〜6、非置換5員〜6員ヘテロアリールまたは複素環、フェニル、−O(Ph)または−CH(Ph)、または上記定義にもかかわらず、Rの2個の別個の存在は、同じ置換基または異なる置換基上にて、各R基が結合する原子と一緒になって、3員〜8員シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環を形成し、この環は、0個〜3個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロC1〜4脂肪族から選択され、ここで、Rの前述のC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0032】
脂肪族またはヘテロ脂肪族基または非芳香族複素環は、1個またはそれ以上の置換基を含有しる。脂肪族またはヘテロ脂肪族基または非芳香族複素環の飽和炭素上の適当な置換基には、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上で列挙したものから選択され、さらに、以下が挙げられる:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)または=NRであって、ここで、各Rは、別個に、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここで、Rの前述のC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0033】
非芳香族複素環の窒素上の任意の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rまたは−NRSOから選択される;ここで、Rは、水素、必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基、必要に応じて置換したフェニル、必要に応じて置換した−O(Ph)、必要に応じて置換した−CH(Ph)、必要に応じて置換した−(CH)(Ph)、必要に応じて置換した−CH=CH(Ph);または非置換5員〜6員ヘテロアリールまたは複素環(これは、1個〜4個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される)、または上記定義にもかかわらず、Rの2個の別個の存在は、同じ置換基または異なる置換基上にて、各R基が結合する原子と一緒になって、3員〜8員シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール環を形成し、この環は、0個〜3個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。Rの脂肪族基またはフェニル環上の任意の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロC1〜4脂肪族から選択され、ここで、Rの前述のC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0034】
「アルキリデン鎖」との用語は、直鎖または分枝炭素鎖であって、完全に飽和であり得るか1個またはそれ以上の不飽和単位を有し得かつ分子の残りと2個の結合点を有するものを意味する。
【0035】
上で詳述したように、ある実施態様では、R(またはR、または本明細書中で同様に定義した他の変数)は、各変数が結合する原子と一緒になって、3員〜8員シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環を形成し、この環は、0個〜3個のヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。R(またはR、または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の存在が、各変数が結合する原子と一緒になるとき、形成される代表的な環には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:a)同じ原子に結合するR(またはR、または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の存在は、その原子と一緒になって、環、例えば、N(Rを形成し、ここで、Rの両方の存在は、その窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基またはモルホリン−4−イル基を形成する;b)異なる原子に結合するR(またはR、または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の存在は、これらの原子の両方と一緒になって、環を形成し、例えば、ここで、フェニル基は、OR
【0036】
【化11】

の2個の存在で置換されており、Rのこれらの2個の存在は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、以下の縮合6員酸素含有環を形成する:
【0037】
【化12】

(またはR、または本明細書中で同様に定義した他の変数)の2個の別個の存在が各変数が結合する原子と一緒になるときに、他の種々の環が形成でき上で詳述した例は、限定するつもりはないことが明らかである。
【0038】
特に明記しない限り、本明細書中で描写した構造はまた、その構造の全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体(すなわち、立体配座))形状;例えば、各非対称中心のRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z)および(E)立体配座異性体を含むことを意味する。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体だけでなく鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体(すなわち、立体配座)混合物は、本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形状は、本発明の範囲内である。あるいは、特に明記しない限り、本明細書中で描写した構造はまた、1個またはそれ以上の同位体的に富んだ原子の存在下にてのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、水素を重水素または三重水素で置き換えるか炭素を13C−または14C−富んだ炭素で置き換えたこと以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析手段またはプローブとして、有用である。
【0039】
(3.代表的な化合物の説明)
1実施態様によれば、本発明は、Zが、C−T(m)であり、それゆえ、ピリジン環を形成する式Iの化合物に関する。従って、本発明は、式I−aの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0040】
【化13】

ここで、環A、T、mおよびRは、上で定義したとおりである:
別の実施態様によれば、本発明は、ZがNであり、それゆえ、ピリミジン環を形成する式Iの化合物に関する。従って、本発明は、式I−bの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0041】
【化14】

ここで、環Aは、上記のとおりである:
1実施態様によれば、式Iまたは式I−aのいずれかのR基は、水素、N(R)R、OR、3員〜6員カルボシクリル、または必要に応じて置換した基から選択され、該必要に応じて置換した基は、C1〜6脂肪族または5員〜6員アリール環から選択され、該環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。Rが必要に応じて置換したフェニルまたはC1〜6脂肪族基であるとき、該フェニルまたはC1〜6脂肪族基上の代表的な置換基には、R、ハロ、ニトロ、ORおよびアミノが挙げられる。本発明の別の実施態様は、式Iまたは式I−aのいずれかの化合物に関し、ここで、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロヘキシル、フェニル、ピリジル、CHOCH、CHOH、NH、NHCH、NHAc、NHC(O)NHCH、またはCHNHCHである。
【0042】
特定の実施態様では、式Iまたは式I−aのいずれかのT部分は、原子価結合である。
【0043】
他の実施態様では、式Iまたは式I−aのいずれかのT部分は、−CH−である。
【0044】
別の実施態様は、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、Rは、(CH、(CHCH(R、(CHCH(R)CH(Rまたは(CHN(Rから選択される。別の実施態様は、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、Rは、(CH、(CHCH(Rまたは(CHCH(R)CH(Rから選択される。
【0045】
がRであるとき、R基は、必要に応じて置換した5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環、または必要に応じて置換した9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環から選択され、該5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。このような基の例には、ピロリジン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、およびピペラジン−1−イル、4−メチル[1,4]ジアゼパン−1−イル、4−フェニル−ピペラジン−1−イルがあり、ここで、各基は、必要に応じて、置換されている。
【0046】
が(CHまたは(CHCH(Rであるとき、R基は、さらに、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、イミダゾリル、フラン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロフラン−2−イル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、CHOH、(CHOH、およびイソプロピルから選択され、ここで、各基は、必要に応じて、置換されている。R上の置換基の例には、OH、ピリジル、ピペリジニル、および必要に応じて置換したフェニルが挙げられる。
【0047】
が(CHCH(Rであるとき、R基は、R、OR、CO、(CH)N(RまたはCNから選択される。式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのR部分のR基は、別個に、R、OR、CO、(CH)N(R、CN、必要に応じて置換した5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環、または必要に応じて置換した9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環から選択され、該5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。このようなR基の例には、フェニル、ピリジル、モルホリン−4−イル、イミダゾリル、OH、およびCHOHから選択される必要に応じて置換した基が挙げられる。
【0048】
が(CHCH(R)CH(Rであるとき、R基は、R、(CHORまたは(CHN(Rから選択される。別の実施態様によれば、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのR部分のR基は、Rまたは(CHORから選択される。さらに別の実施態様によれば、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのR部分のR基は、OH、CHOH、(CHOHから選択される。該(CHCH(R)CH(R部分のR基は、別個に、R、OR、Ar、CO、(CHN(RまたはCNから選択される。別の実施態様によれば、該R基は、別個に、R、OR、CO、(CHN(R、CN、必要に応じて置換した5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環、または必要に応じて置換した9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環から選択され、該5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。このようなR基の例には、フェニル、ピリジル、モルホリン−4−イル、イミダゾリル、OHおよびCHOHから選択される必要に応じて置換した基が挙げられる。
【0049】
別の実施態様によれば、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのR基は、存在するとき、別個に、C1〜4脂肪族またはArから選択され、ここで、Arは、必要に応じて置換した3員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和単環式環、または必要に応じて置換した9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和二環式環から選択され、該単環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該二環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。別の実施態様は、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、R基は、C1〜4脂肪族またはArから選択され、ここで、Arは、必要に応じて置換した5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和単環式環であり、該単環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される。このような基の例には、フェニル、ピリジル、メチル、シクロヘキシル、シクロペンチルまたはエチルが挙げられる。
【0050】
本発明の別の実施態様は、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、Rには、水素、必要に応じて置換したC1〜4脂肪族、C(O)RおよびC(O)ORが挙げられる。別の実施態によれば、Rは、水素、メチル、エチル、C(O)Me、C(O)OCHフェニルおよびCHフェニルである。さらに別の実施態様によれば、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのR基は、水素である。
【0051】
1実施態様によれば、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのQ基は、−C(O)N(R)−および−C(O)O−から選択される。別の実施態様によれば、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかのQ基は、−C(O)N(H)−および−C(O)O−から選択される。
【0052】
1実施態様によれば、本発明は、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、Qは、−C(O)N(H)−である。
【0053】
別の実施態様によれば、本発明は、式I、式I−aまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、Qは、−C(O)O−である。
【0054】
さらに別の実施態様によれば、本発明は、式Iまたは式I−bのいずれかの化合物に関し、ここで、T(m)は、水素以外のものである。
【0055】
別の実施態様によれば、本発明は、式IIの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0056】
【化15】

ここで、Z、Q、R、RおよびRは、上で定義したとおりである。
【0057】
式IIのZ、Q、R、RおよびR基に関連した実施態様およびそれらの下位実施態様には、式I、式I−aおよび式I−bの化合物について上で述べたものがある。
【0058】
別の実施態様によれば、本発明は、式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0059】
【化16】

ここで、Z、R、RおよびRは、上で定義したとおりである。
【0060】
式IIIのZ、R、RおよびR基に関連した実施態様およびそれらの下位実施態様には、式I、式I−aおよび式I−bの化合物について上で定義したものがある。
【0061】
別の実施態様によれば、本発明は、式IVの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩に関する:
【0062】
【化17】

ここで、Z、R、R、RおよびRは、上で定義したとおりである。
【0063】
式IVのZ、R、R、RおよびR基に関連した実施態様およびそれらの下位実施態様には、式I、式I−aおよび式I−bの化合物について上記のものがある。
【0064】
式Iの代表的な化合物は、以下の表1で示されている。
【0065】
【化18】

【0066】
【化19】

【0067】
【化20】

【0068】
【化21】

【0069】
【化22】

(4.本発明の化合物を提供する一般的な方法)
本発明の化合物は、一般に、以下の一般スキームIおよびIIならびにそれに続く調製例で説明されているように、類似の化合物について当業者に公知の合成方法および/または疑似合成方法により、調製または単離され得る。
【0070】
【化23】

試薬および条件:(a)無水酢酸/H;(b)HNO/HSO;(c)還元;(d)臭素化;(e)カップリング;(f)脱保護/ケン化;(g)R−H、カップリング条件。
【0071】
上記スキームIは、Qが−C(O)NH−である式Iの化合物を調製する一般的な方法を描写している。工程(a)では、ピリジン/ピリミジン化合物1は、酸化されて、中間体化合物2を形成し、これは、次いで、硝酸で処理されて、ニトロ化合物3を形成する。工程(c)では、そのニトロ基は、還元される。当業者は、このニトロ基の還元には、種々の方法が受け入れられることを認識する。工程(d)では、得られたアミノ部分は、臭素で置き換えられて、化合物5を形成する。次いで、このブロモ中間体は、適当に保護したピロール部分とカップリングされて、化合物6を形成する。当業者は、上記反応に種々の保護基が適当であることを認識する。アミノ保護基は、当該技術分野で周知であり、そしてProtecting Groups in Organic Synthesis,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts,1991(これは、John Wiley and Sonsにより出版され、その全内容は、本明細書中で参考として援用されている)で詳細に記載されている。
【0072】
工程(f)では、そのピロリル保護基は、除去され、このエステルは、ケン化されて、化合物7を形成する。次いで、化合物7のカルボキシルは、種々のアミンとカップリングされて、Qが−C(O)NH−である本発明の化合物を形成し得る。あるいは、当業者は、カルボン酸化合物7から、種々の本発明の化合物が容易に得られることを認識する。例えば、化合物7は、種々のアミンとカップリングされて、描写されたアミド化合物を調製するか、あるいは、種々のアルコールとカップリングされて、Qが−C(O)O−である本発明の化合物を調製する。
【0073】
【化24】

試薬および条件:(a)無水酢酸/H;(b)HNO/HSO;(c)Fe/酢酸;(d)CuBr/t−BuONO(アセトニトリル中);(e)4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステルおよびPd(PPh/NaCO(ベンゼン中);(f)NaOH/MeOH;(g)(S)−3−クロロフェニルグリシノール−HCl、EDCI/HOBt、DMF/DIEA。
【0074】
例示のための化合物1〜20の調製を使用して、スキームIIは、本発明の化合物を調製する代表的な合成を描写しているが、これは、決して、本発明の範囲を限定すると見なすべきではない。スキームIIで示された反応の詳細は、以下の実施例で提供する。
【0075】
上でおよび本明細書中では、特定の代表的な実施態様が描写され記述されているものの、本発明の化合物は、当業者に一般に利用可能な方法により、適当な出発物質を使用して、上で一般に記述した方法に従って、調製できる。
【0076】
(5.使用、処方物および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
上で議論されるように、本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターである化合物を提供し、従って、本化合物は、癌、自己免疫疾患、神経変性障害および神経障害、統合失調症、骨関連障害、肝臓病および心臓障害を含むがこれらに限定されない疾患、障害および病気を処置するのに有用である。従って、本発明の別の局面において、薬学的に受容可能な組成物が提供され、これらの組成物は、本明細書中に記載されるとおりの化合物のいずれかを含み、そして必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含む。特定の実施形態において、これらの組成物は、1つ以上のさらなる治療剤を必要に応じてさらに含む。
【0077】
本発明の特定の化合物は、処置のために遊離形態で存在するか、あるいは適切な場合には、その薬学的に受容可能な誘導体として存在し得る。本発明に従って、薬学的に受容可能な誘導体としては、薬学的に受容可能な塩、エステル、このようなエステルの塩、あるいは本明細書中で他のように記載されるとおりの化合物、またはその代謝物、もしくは残渣を必要とする患者への投与の際に直接的かもしくは間接的に提供可能である任意の他の付加物または誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、信頼できる医療判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適切であり、そして妥当な利益/危険性の比で釣り合っている塩をいう。「薬学的に受容可能な塩」は、本発明の化合物の任意の非毒性の塩またはエステルの塩であって、レシピエントへの投与の際に、本発明の化合物またはその阻害的に活性な代謝物もしくは残渣を、直接的かもしくは間接的のどちらかで提供可能である塩を意味する。本明細書中で使用される場合、「阻害的に活性な代謝物またはその残渣」は、ERK2またはROCKプロテインキナーゼのインヒビターでもある、代謝物またはその残渣を意味する。
【0079】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19において、薬学的に受容可能な塩を詳細に記載し、これは、本明細書中で参考として援用される。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、適切な無機酸から誘導される塩および有機酸から誘導される塩ならびに無機塩基から誘導される塩および有機塩基から誘導される塩を含む。薬学的に受容可能な、非毒性の酸添加塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸)、または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸)で形成されるアミノ基の塩であるか、あるいは当該分野で使用される他の方法(例えば、イオン交換)を使用することにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に受容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコネート、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプト酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート(pamoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基より誘導された塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。水溶性生成物もしくは油溶性生成物または水分散性生成物もしくは油分散性生成物が、このような四級化により得られ得る。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に受容可能な塩としては、適切である場合、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、および対イオン(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルホン酸低級アルキル、およびスルホン酸アリール)を使用して形成されるアミンカチオンが挙げられる。
【0080】
上記のように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルをさらに含み、このキャリア、アジュバント、またはビヒクルは、本明細書中で使用される場合、所望される特定の投薬形態に適するような、任意および全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助剤もしくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、濃化剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa,1980)により、薬学的に受容可能な組成物を処方するのに使用される種々のキャリア、およびその調製についての公知の技術が開示される。あらゆる従来のキャリア媒体が、本発明の化合物と適合可能である(例えば、任意の望ましくない生物学的効果を生じることによるか、あるいはそうでない場合は、上記薬学的に受容可能な組成物の任意の他の成分と有害な様式において相互作用することによる)の範囲を除いて、その使用は、本発明の範囲内にあると考慮される。薬学的に受容可能なキャリアとして作用し得る物質のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸)、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素ニナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、羊毛脂、糖類(例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、およびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロース);粉末状トラガント;麦芽;ゼラチン;滑石;賦形剤(例えば、ココアバター、および坐剤蝋);油状物(例えば、ピーナッツ油、綿実油);ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油;大豆油);グリコール;(例えば、プロピレングリコール;ポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、マグネシウムヒドロキシド、アルミニウムヒドロキシド);アルギン酸;ピロゲンを含まない水;等張性塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、および他の非毒性の適合可能な潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)が挙げられるがこれらに限定されず、ならびに着色剤、遊離剤、被覆剤、甘味剤、矯味矯臭剤、および芳香剤、防腐剤、および酸化防止剤もまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0081】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の使用)
さらに他の局面において、癌、自己免疫疾患、神経変性障害および神経障害、統合失調症、骨関連障害、肝臓病および心臓障害を処置するかその重篤度を軽減する方法が提供され、この方法は、有効量の化合物または化合物を含む薬学的に受容可能な組成物を、これらを必要とする被験体へ投与する工程を包含する。本発明の特定の実施形態において、本発明の化合物または本発明の化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物の「有効量」とは、癌、自己免疫疾患、神経変性障害および神経障害、統合失調症、骨関連障害、肝臓病および心臓障害から選択される疾患、病態または障害を処置するかその重篤度を軽減するのに有効な量である。本発明の方法に従う化合物および組成物は、癌、自己免疫疾患、神経変性障害および神経障害、統合失調症、骨関連障害、肝臓病および心臓障害を処置するかその重篤度を軽減するのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。必要な正確な量は、被験体の種、年齢および一般的な健康状態、感染の重篤度、特定の薬剤、その投与様式などに依存して、被験体ごとに変わる。本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし投薬を均一にするために、単位剤形で処方される。本明細書中で使用する「単位剤形」との表現は、処置する患者に適当な物理的に別個の単位の薬剤を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の全毎日用法は、適切な医学的判断の範囲内で、担当医により決定されることが分かる。任意の特定の患者または生物体に特定の有効用量レベルは、種々の要因に依存しており、これらには、処置する障害およびその障害の重篤度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および常食;使用する特定の化合物の投与時間、投与経路および排出速度;処置の持続時間;使用する特定の化合物と併用または同時使用する薬剤;および医学分野で周知の類似の要因が挙げられる。本明細書中で使用する「患者」との用語は、動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0082】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、処置する感染の重篤度に依存して、経口的、直腸的、非経口的、大槽内的、膣内的、腹腔内的、局所的(粉末、軟膏または小滴により)、舌下的、経口または鼻内スプレーとしてなどで、投与できる。ある実施態様では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日1回またはそれ以上で、1日あたり、被験体の体重1kgあたり、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約1mg/kg〜約25mg/kgで、経口的または非経口的に投与され得る。
【0083】
経口投与用の液状剤形には、薬学的に受容可能な乳濁液、微小乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの活性化合物に加えて、これらの液状剤形は、当該技術分野で通例使用される不活性希釈剤(例えば、水および他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチレングリコール、イソプロピレングリコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油))、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤以外に、これらの経口組成物はまた、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁液、甘味料、香料および調香剤)も含有できる。
【0084】
注射可能製剤(例えば、無菌注射可能水性または油性懸濁液)は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁液を使用して、公知技術に従って、処方され得る。この無菌注射可能製剤はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射可能溶液、懸濁液または乳濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。それに加えて、無菌の不揮発性油は、通常、溶媒または懸濁媒体として、使用される。この目的のために、任意のブランドの不揮発性油が使用でき、これらには、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる。それに加えて、注射可能物の調製では、脂肪酸(例えば、オレイン酸)が使用される。
【0085】
これらの注射可能処方は、例えば、細菌保持フィルターで濾過することにより、または使用前に滅菌水または他の無菌注射可能媒体に溶解または分散できる無菌固形組成物の形状で可溶化剤を取り込むことにより、滅菌できる。
【0086】
本発明の化合物の効果を延ばすために、しばしば、皮下注射または筋肉内注射からのその化合物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶性物質または非晶質物質の液状懸濁液の使用を伴い得る。次いで、この化合物の吸収速度は、その溶解度に依存し、これは、順に、結晶の大きさおよび結晶形状に依存し得る。あるいは、非経口投与した化合物形状の遅延吸収は、その化合物をオイルビヒクルに溶解または懸濁することを伴う。注射可能デポー形状は、その化合物のマイクロカプセル化マトリックスを生物分解性重合体(例えば、ポリラクチド−ポリグリコチド)で形成することにより、行われる。化合物と重合体との比および使用する重合体の性質に依存して、化合物放出速度が制御できる。他の生体分解性重合体の例には、(ポリ(オルトエステル))およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能処方もまた、その化合物をリポソームまたは微小乳濁液(これらは、体組織と相溶性である)に取り込むことにより、調製される。
【0087】
直腸投与または膣内投与用の組成物には、好ましくは、座剤があり、これらは、本発明の化合物を適当な非刺激性賦形剤または担体(例えば、ココアバター。ポリエチレングリコールまたは座剤ワックス(これらは、室温で固形であるが、対応で液状となり、従って、直腸または膣腔で溶解して、活性化合物を放出する))と混合することにより、調製できる。
【0088】
経口投与用の固形剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉剤および顆粒が挙げられる。このような剤形では、その活性化合物は、少なくとも1種の不活性で薬学的に受容可能な賦形剤または担体(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)および/またはa)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア)、c)湿潤剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、バラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、g)加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト、粘土)、およびi)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物)と混合される。
【0089】
類似の種類の固形組成物もまた、ラクトースまたは乳糖だけでなく高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質ゼラチンカプセルの充填剤として、使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒の固形剤形は、被覆および殻(例えば、腸溶性被覆および医薬処方技術で周知の他の被覆)と共に調製できる。それらは、必要に応じて、不透明化剤を含有し得、また、優先的には、腸管の一部にて、必要に応じて、遅延様式で、その活性成分のみを放出する組成であり得る。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。類似の種類の固形組成物もまた、ラクトースまたは乳糖だけでなく高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質ゼラチンカプセルの充填剤として、使用され得る。
【0090】
これらの活性化合物はまた、上で述べたような1種またはそれ以上の賦形剤とのマイクロカプセル化形状であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒の固形剤形は、被覆および殻(例えば、腸溶性被覆および医薬処方技術で周知の他の被覆)と共に調製できる。このような固形剤形では、その活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混合され得る。このような剤形はまた、通常の方法と同様に、不活性希釈剤以外の追加物質(例えば、錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロース))を含有し得る。カプセル、錠剤および丸薬の場合、それらの剤形はまた、緩衝剤を含有し得る。それらは、必要に応じて、不透明化剤を含有し得、また、優先的には、腸管の一部にて、必要に応じて、遅延様式で、その活性成分のみを放出する組成であり得る。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。
【0091】
本発明の化合物を局所投与または経皮投与する剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、噴霧剤、吸入剤またはパッチが挙げられる。その活性成分は、必要に応じて、無菌条件下にて、薬学的に受容可能な担体および任意の必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。眼科処方、点耳液および点眼液もまた、本発明の範囲内であると見なされる。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を考慮しており、これらは、ある化合物を体内に制御した送達するという追加の利点がある。このような剤形は、その化合物を適当な媒体に溶解または分散することにより、製造できる。この化合物が皮膚を横切る流動を高めるために、吸収向上剤もまた使用できる。その速度は、速度制御膜を提供することにより、またはその化合物を重合体マトリックスまたはゲルに分散させることにより、いずれかにより、制御できる。
【0092】
上で一般的に記載されるように、本発明の化合物は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用である。1実施態様では、本発明の化合物および組成物は、ERK2またはROCKプロテインキナーゼの1つ以上のインヒビターであり、従って、任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、これらの化合物および組成物は、疾患、病気または障害を処置するかまたはその重篤度を軽減するために特に有用であり、ここで、ERK2またはROCKプロテインキナーゼの1つ以上の活性化が、この疾患、病気または障害に関係している。ERK2またはROCKプロテインキナーゼの活性化が特定の疾患、病気または障害に関係する場合、この疾患、病気または障害は、「ERK2またはROCK媒介疾患」、病態または疾患症状と呼ばれ得る。従って、別の局面において、本発明は、ERK2またはROCKプロテインキナーゼの1つ以上の活性化が疾患状態に関連する疾患、病気または障害を処置するかまたはその重篤度を軽減するための方法を提供する。
【0093】
ERK2またはROCKプロテインキナーゼのインヒビターとして本発明において利用される化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞株においてアッセイされ得る。インビトロアッセイとしては、活性化されたERK2またはROCKプロテインキナーゼのリン酸化活性またはATPase活性のどちらかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。インビトロアッセイの代替物は、ERK2またはROCKプロテインキナーゼに結合するためのインヒビターの能力を、定量化する。インヒビターの結合は、結合する前にインヒビターを放射標識すること、インヒビター/ERK2複合体またはインヒビター/ROCK複合体を単離すること、および結合した放射標識量を決定することによって、測定され得る。あるいは、新規インヒビターを、例えば、既知の放射性リガンドに結合されたERK2またはROCKプロテインキナーゼとともにインキュベートする競合実験を行うことによって、インヒビターの結合を決定し得る。
【0094】
本明細書中で使用する「測定可能に阻害する」との用語は、該組成物およびERK2またはROCKプロテインキナーゼを含有する試料と該組成物なしでERK2またはROCKプロテインキナーゼを含有する等価試料との間のERK2またはROCKプロテインキナーゼの活性の測定可能な変化を意味する。プロテインキナーゼ活性のこのような測定は、当業者に公知であり、そして本明細書中にて以下で述べる方法が挙げられる。
【0095】
別の実施態様によれば、本発明は、患者におけるERK2またはROCKプロテインキナーゼ活性を阻害する方法に関し、該方法は、該患者に、本発明の化合物、または該化合物を含有する組成物を投与する工程を包含する。
【0096】
本明細書中で使用する「ERK媒介病」または「疾患」との用語は、ERKが役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な病気を意味する。「ERK媒介病」または「疾患」との用語は、また、ERKインヒビターで処置することにより軽減される疾患または病気を意味する。このような病気には、癌、卒中、糖尿病、肝腫大、循環器病(心肥大を含めて)、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害(喘息を含めて)、炎症、神経障害、およびホルモン関連疾患が挙げられる。「癌」との用語には、以下の癌が挙げられるが、これらに限定されない:乳房、卵巣、子宮頚管、前立腺、精巣、尿生殖器路、食道、喉頭、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、類表皮癌腫、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨、大腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞性癌腫、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫および胆管路、腎臓癌腫、骨髄性障害、リンパ球障害、ホジキン有毛細胞、頬側口腔および咽頭(経口)、唇、舌、口、咽頭、小腸、大腸−直腸、大腸、直腸、脳および中枢神経系、および白血病。
【0097】
従って、本発明の別の実施態様は、ERKが役割を果たす1種またはそれ以上の疾患を処置するかその重篤度を軽減することに関する。具体的には、本発明は、癌、卒中、糖尿病、肝腫大、循環器病(心肥大を含めて)、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害(喘息を含めて)、炎症、神経障害、およびホルモン関連疾患から選択される疾患または病気を処置するかその重篤度を軽減する方法に関し、ここで、該方法は、それを必要とする患者に、本発明に従った組成物を投与する工程を包含する。
【0098】
別の実施態様によれば、本発明は、乳房、卵巣、子宮頚管、前立腺、精巣、尿生殖器路、食道、喉頭、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、類表皮癌腫、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨、大腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞性癌腫、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫および胆管路、腎臓癌腫、骨髄性障害、リンパ球障害、ホジキン有毛細胞、頬側口腔および咽頭(経口)、唇、舌、口、咽頭、小腸、大腸−直腸、大腸、直腸、脳および中枢神経系、および白血病から選択される癌を処置する方法に関する。
【0099】
他の実施態様は、それを必要とする患者において、黒色腫、乳癌、大腸癌または膵臓癌を処置する方法に関する。
【0100】
本明細書中で使用する「ROCK媒介病」または「疾患」との用語は、ROCKが役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な病気を意味する。「ROCK媒介病」または「疾患」との用語は、また、ROCKインヒビターで処置することにより軽減される疾患または病気を意味する。このような病気には、高血圧症、狭心症、脳血管収縮、喘息、末梢循環障害、早産、癌、勃起不全、動脈硬化症、攣縮(脳血管攣縮および冠動脈攣縮)、網膜症(例えば、緑内障)、炎症障害、自己免疫疾患、AIDS、骨粗鬆症、心筋肥大、虚血/再灌流誘発傷害、および内皮不全が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
従って、本発明の別の実施態様は、ROCKが役割を果たす1種またはそれ以上の疾患を処置するかその重篤度を軽減することに関する。具体的には、本発明は、高血圧症、狭心症、脳血管収縮、喘息、末梢循環障害、早産、癌、勃起不全、動脈硬化症、攣縮(脳血管攣縮および冠動脈攣縮)、網膜症(例えば、緑内障)、炎症障害、自己免疫疾患、AIDS、骨粗鬆症、心筋肥大、虚血/再灌流誘発傷害、および内皮不全から選択される疾患または病気を処置するかその重篤度を軽減する方法に関し、ここで、該方法は、それを必要とする患者に、本発明に従った組成物を投与する工程を包含する。
【0102】
本発明の化合物および薬学的に受容可能な組成物は、併用療法において使用され得ることもまた、理解される。すなわち、これらの化合物および薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上のほかの所望の処置または医学的手順と同時にか、その前にか、またはそれに引き続いて、投与され得る。併用レジメンにおいて使用するための処置(治療剤または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/または手順の適合性、ならびに達成されることが所望される治療効果を考慮する。使用される治療剤は、同じ障害について望ましい効果を達成し得ること(例えば、本発明の化合物は、尾暗示障害を処置するために使用される別の薬剤と同時に投与され得る)、またはこれらは、異なる効果(例えば、任意の有害な効果の制御)を達成し得ることもまた、理解される。本明細書中で使用される場合、特定の疾患または状態を処置または予防するために通常投与される、さらなる治療剤は、「処置されるべき疾患または状態に適切」であるとして公知である。
【0103】
例えば、化学療法剤またはほかの抗増殖薬剤は、本発明の化合物と組み合わせられて、増殖性疾患および癌を処置し得る。公知の化学療法剤の例としては、例えば、本発明の新規抗癌剤と組み合わせて使用され得る、他の治療剤または抗癌剤が挙げられるが、これらに限定されず、外科手術、放射線療法(ほんのいくつかの例において、少し例を挙げれば、γ放射線、ニュートロンビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、プロトン療法、近接照射療法、および全身放射能同位体)、内分泌療法、生物学的応答調節因子(少し例を挙げれば、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、高温および低温療法、任意の有害な影響を軽減するための薬剤(例えば、制吐薬)、ならびに他の認可された化学療法薬物(アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン)、紡錘体インヒビター(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、ならびにホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメガストロール)、GleevecTM、Velcade(登録商標)、アドリアマイシン、デキサメタゾン、ならびにシクロホスファミドが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。更新された癌治療剤のより包括的な議論については、http://www.nci.nih.gov/、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmのFDAにより認可された癌薬物のリスト、およびThe Merck Manual,第17版.1999を参照のこと。これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0104】
本発明のインヒビターである薬剤のほかの例はまた、以下が挙げられるがこれらに限定されないものと組み合わせられ得る:アルツハイマー病の治療薬(例えば、Aricept(登録商標)およびExcelon(登録商標));パーキンソン病の治療薬(例えば、L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール、プロミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキシフェンジルおよびアマンダジン);多発性硬化症(MS)の治療薬(例えば、β−インターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)およびミトキサントロン);喘息の治療薬(例えば、アルブテロールおよびSingulair(登録商標));精神分裂病の治療薬(例えば、ジプレキサ、リスパダール、セロクエルおよびハロペリドール);抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、TNF遮断薬、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびスルファサラジン);免疫調節薬または免疫抑制薬(例えば、サイクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリンおよびスルファサラジン);神経栄養因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネル遮断薬、リルゾールおよび抗パーキンソン病薬);循環器病の治療薬(例えば、β−遮断薬、ACEインヒビター、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャンネル遮断薬およびスタチン);肝臓病の治療薬(例えば、コルチコステロイド、コレステラミン、インターフェロンおよび抗ウイルス薬);血液障害の治療薬(例えば、コルチコステロイド、抗白血病薬および成長因子);ならびに免疫不全疾患の治療薬(γ−グロブリン)。
【0105】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療剤の量は、唯一の活性薬剤としてこの治療剤を含有する組成物において通常投与される量以下である。好ましくは、本開示の組成物中のさらなる治療剤の量は、唯一の治療活性薬剤としてこの薬剤を含有する組成物中に通常存在する量の、約50%〜100%の範囲である。
【0106】
代替実施態様では、追加治療薬を含有しない組成物を利用する本発明の方法は、前記患者に、追加治療薬を別々に投与する工程を包含する。これらの追加治療薬は、別々に投与されるとき、本発明の組成物の投与前、投与と連続して、または投与に続いて、投与され得る。
【0107】
本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な組成物はまた、移植可能な医療デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、脈管移植片、ステントおよびカテーテル)をコーティングするための組成物に組み込まれ得る。従って、本発明は、別の局面において、移植可能なデバイスをコーティングするための組成物を包含し、この組成物は、本明細書中の上記ならびにクラスおよびサブクラスで一般的に記載されたような本発明の化合物、およびこの移植可能なデバイスをコーティングするために適切なキャリアを含有する。なお別の局面において、本発明は、本明細書中の上記ならびにクラスおよびサブクラスで一般的に記載されたような本発明の化合物、およびこの移植可能なデバイスをコーティングするために適切なキャリアを含有する組成物でコーティングされた、移植可能なデバイスを包含する。
【0108】
例えば、脈管ステントは、再狭窄(傷害後の脈管壁の再狭小化)を克服するために使用されている。しかし、ステントまたは他の移植可能なデバイスを使用する患者は、血餅の形成または血小板の活性化の危険を有する。これらの望ましくない影響は、キナーゼインヒビターを含有する、薬学的に受容可能な組成物でデバイスを予めコーティングすることによって、防止または改善され得る。適切なコーティングおよびコーティングされた移植可能なデバイスの一般的調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。コーティングは、代表的に、生体適合性のポリマー材料(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸、エチレン酢酸ビニル、およびこれらの混合物)である。このコーティングは、必要に応じて、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはこれらの組み合わせの適切なトップコートによってさらに覆われ、この組成物の制御放出特徴を与え得る。
【0109】
本発明の別の局面は、生体試料または患者におけるERK2またはROCKプロテインキナーゼの活性を阻害することに関し、この方法は、式Iの化合物またはこの化合物を含有する組成物を、患者に投与する工程、または生物学的サンプルと接触させる工程を包含する。用語「生物学的サンプル」とは、本明細書中で使用される場合、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料またはその抽出物、または血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、もしくは他の体液またはその抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
生体試料におけるERK2またはROCKプロテインキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の種々の目的で有用である。このような目的の例としては、輸血、器官移植、生物学的標本の貯蔵、および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0111】
(合成実施例)
本明細書中で使用する「R」との用語は、次のHPLC方法を使用して、その化合物に関連した保持時間(分間)を意味する:
カラム:YMC ODS−AQ 55 120Aカラム(これは、3.0×150mmのサイズを有する)
勾配:8分間にわたって、水:MeCN、0.1%TFA(90:10→0:100)
流速:1mL/分
波長:214nm。
【0112】
特に明記しない限り、各H NMRは、500MHzで得、そして化合物の番号は、表1で列挙した化合物番号に対応している。
【0113】
(実施例1)
2−クロロ−5−メチル−4−ニトロピリジンN−オキシド:Z.Talik and A.Puszko,Roczniki Chemii Ann.Soc.Chim.Polonorum 1976,50,2209の様式と実質的に類似の様式で、2−クロロ−5−メチルピリジン(10g、0.078mol)の無水酢酸(25mL)懸濁液に、30%過酸化水素(25mL)を少しずつ加えた。この混合物を、室温で、24時間撹拌し、次いで、60℃で、30時間加熱した。減圧下にて過剰の酢酸を除去した後、その残渣を濃硫酸(15mL)に少しずつ加えた。得られた溶液を、濃硫酸(15mL)と発煙硝酸(25mL)との混合物に加え、次いで、100℃で、90分間加熱した。その反応混合物を氷に注ぎ、固形炭酸アンモニウムで中和し、最後に、pHが塩基性になるまで、アンモニア水で中和すると、沈澱物が形成された。濾過した後、淡黄色固形物(9.4g、0.050mol、HPLC R 3.272分間、FIA ES+ 188.9、ES− 188.0)として、表題化合物を単離した。
【0114】
(実施例2)
4−アミノ−2−クロロ−5−メチルピリジン:2−クロロ−5−メチル−4−ニトロピリジンN−オキシド(500mg、2.6mmol)の氷酢酸(10mL)溶液に、鉄(1.0g)を加えた。次いで、その反応混合物を、100℃で、20分間加熱した。この懸濁液をNaOH(1M)水溶液に注ぎ、そして酢酸エチルで抽出した。NaSOで乾燥した後、次いで、溶媒を蒸発させ、そして無色固形物(370mg、2.6mmol、HPLC R 1.3分間、FIA ES+ 143.0)として、表題化合物を単離した。
【0115】
(実施例3)
4−ブロモ−2−クロロ−5−メチルピリジン:アセトニトリル(4mL)中にて、CuBr(984mg、4.4mmol、2.0当量)と亜硝酸第三級ブチル(0.5mL)とを混合した。得られた混合物を、65℃で、20分間加熱し、次いで、4−アミノ−2−クロロ−5−メチルピリジン(320mg、2.2mmol、1.0当量)を加え、そして得られた混合物を、65℃で、10分間撹拌した。その反応混合物を水に注ぎ、そして酢酸エチルで抽出した。水層において青色が観察されなくなるまで、有機層をNHOHで洗浄した。水で洗浄した後、有機抽出物をNaSOで乾燥し、そして減圧下にて溶媒を除去した。その粗残渣をSiO分取TLC(ジクロロメタン)で精製して、無色油状物(170mg、0.8mmol、HPLC R 6.709分間、FIA ES+ 205.9、207.9、ES−205.9)として、表題化合物を得た。
【0116】
(実施例4)
4−(2−クロロ−5−メチルピリジン−4−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル:4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(125mg、0.29mmol、0.6当量)および4−ブロモ−2−クロロ−5−メチルピリジン(96mg、0.47mmol、1.0当量)をベンゼン(4mL)に溶解した。メタノール(0.94mL)およびNaCO水溶液を加えた後、次いで、Pd(PPh(108mg、0.094mol、0.2当量)を加え、そして得られた混合物を、還流状態で、16時間加熱した。その反応混合物を酢酸エチルに溶解し、そして水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥した後、減圧下にて溶媒を除去した。粗製物質を逆相HPLC(アセトニトリル/水/TFA)で精製して、無色固形物(54mg、0.125mmol、HPLC R 9.087分間、ES+ 433.0、ES−431.0)として、表題化合物を得た。
【0117】
(実施例5)
4−(2−クロロ−5−メチルピリジン−4−イル)−1H−ピロール−2−カルボン酸[1−(S)−(3−クロロフェニルグリシノール]アミド(1−20):4−(2−クロロ−5−メチルピリジン−4−イル)−1−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル(190mg、0.44mmol、粗製物質、1.0当量)をメタノール(2mL)に溶解した。次いで、1M NaOH(2mL)水溶液を加え、そして得られた混合物を3時間還流した。その反応混合物を1M HClで中和し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層をNaSOで乾燥した後、減圧下にて溶媒を除去した。次いで、粗製物質をDMF(3mL)およびEDCI(103mg、0.54mmol、1.2当量)に溶解し、HOBt(73mg、0.54mmol、1.2当量)およびDIEA(0.22mL、1.3mmol、3当量)に加えた。その反応混合物を、室温で、30分間撹拌した。(S)−3−クロロフェニルグリシノールHCl塩(183mg、0.88mmol、2.0当量)を加え、次いで、この反応混合物を、室温で、16時間撹拌した。次いで、その粗反応混合物を酢酸エチルに溶解した。水で洗浄した後、有機抽出物をNaSOで乾燥し、そして減圧下にて溶媒を除去した。その粗残渣をSiO分取TLC(DCM/メタノール 95:5)で精製して、無色固形物(31mg、0.08mmol)として、表題化合物を得た。HPLC R5.880分間;FIA ES+390.0,ES−388.1;LC/MS R3.3分間,ES+390.0,ES−388.1;HNMR(CDOD)d2.45(s,3H),3.8(d,2H),5.1(t,1H),7.4(m,6H),7.48(s,1H),8.15(s,1H)。
【0118】
(生物学的試験)
プロテインキナーゼインヒビターとしての本発明の化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞株においてアッセイされ得る。インビトロでのアッセイとしては、活性化プロテインキナーゼのリン酸化活性またはATPase活性のいずれかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。代替のインビトロでのアッセイは、インヒビターがプロテインキナーゼに結合する能力を定量化する。インヒビター結合は、結合する前にインヒビターを放射標識し、インヒビター/プロテインキナーゼ複合体を単離し、結合した放射標識の量を決定することによって測定され得る。あるいは、インヒビター結合は、新規のインヒビターが、公知の放射リガンドに結合したプロテインキナーゼとともにインキュベートされる競合実験を実施することによって決定され得る。これらのアッセイを実施するために使用される条件の詳細は、実施例6〜9に示される。
【0119】
(実施例6)
(ERK2阻害アッセイ)
分光光度結合酵素アッセイ(spectrophotometric coupled−enzyme assay)(Foxら(1998)Protein Sci 7、2249)によって、化合物をERK2の阻害についてアッセイした。このアッセイにおいて、固定された濃度の活性化ERK2(10nM)を、DMSO(2.5%)中の種々の濃度の化合物とともに、0.1M HEPES緩衝液(pH7.5、10mMのMgCl、2.5mMのホスホエノールピルベート、200μMのNADH、150μg/mLのピルベートキナーゼ、50μg/mLの乳酸デヒドロゲナーゼ、および200μMのエルクチド(erktide)ペプチドを含む)中で30℃にて10分間、インキュベートした。この反応を、65μMのATPを添加することによって開始した。340nMにて吸光度の減少率をモニタリングした。KおよびIC50を、インヒビター濃度の機能としてこの率のデータから評価した。
【0120】
(実施例7)
(ERK2阻害:細胞増殖アッセイ)
細胞増殖アッセイによって、化合物をERK2の阻害についてアッセイした。このアッセイにおいて、完全培地を、10%のウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン溶液をRPMI 1640培地(JRH Biosciences)に添加することによって調製する。結腸癌細胞(HT−29細胞株)を、10,000細胞/ウェル/150μLの播種密度にて96ウェルプレートの84ウェルの各々に添加する。この細胞を、37℃で2時間インキュベートすることによって、プレートに付着させる。試験化合物の溶液を段階希釈によって完全培地中で調製し、以下の濃度:20μM、6.7μM、2.2μM、0.74μM、0.25μMおよび0.08μMを得る。この試験化合物溶液(50μL)を、72個の細胞含有ウェルの各々に添加する。12個の残っている細胞含有ウェルに、完全培地(200μL)のみを添加して、最大増殖を測定するためにコントロール群を形成させる。残っている12個の空のウェルに、完全な培地を添加して、バックグランドを測定するためにビヒクルコントロール群を形成させる。プレートを37℃で3日間、インキュベートする。H−チミジンのストック溶液(1mCi/mL、New England Nuclear、Boston、MA)を、RPMI培地中で20μCi/mLに希釈し、次いで、この溶液の20μLを各ウェルに添加する。プレートをさらに、37℃で8時間インキュベートし、次いで、収集して、液体シンチレーションカウンターを用いてH−チミジン取り込みを分析する。
【0121】
(実施例8)
(ERK1阻害アッセイ)
分光光度結合酵素アッセイ(Foxら(1998)Protein Sci 7、2249)によって、化合物をERK1の阻害についてアッセイし得る。このアッセイにおいて、固定された濃度の活性化ERK1(20nM)を、DMSO(2.0%)中の種々の濃度の化合物とともに、0.1M HEPES緩衝液(pH7.6、10mMのMgCl、2.5mMのホスホエノールピルベート、200μMのNADH、30μg/mLのピルベートキナーゼ、10μg/mLの乳酸デヒドロゲナーゼ、および150μMのエルクチドペプチドを含む)中で30℃にて10分間、インキュベートする。この反応を、140μMのATP(20μL)を添加することによって開始する。340nMにて吸光度の減少率をモニタリングする。Kを、インヒビター濃度の機能としてこの率のデータから評価する。
【0122】
(実施例9)
(ROCK阻害アッセイ)
標準的な結合酵素アッセイ(Foxら(1998)Protein Sci 7、2249)を用いて、化合物を、それらがROCKを阻害する能力についてスクリーニングし得る。反応を、100mMのHEPES pH7.5、10mMのMgCl、25mMのNaCl、1mMのDTTおよび1.5%のDMSO中で実施する。このアッセイにおける最終的な基質濃度は、13μMのATP(Sigma chemical)および200μMのペプチド(American Peptide、Sunnyvale、CA)である。アッセイを、30℃および200nM ROCKにて実施する。結合酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMのホスホエノールピルベート、400μMのNADH、30μg/mLのピルベートキナーゼおよび10μg/mLの乳酸デヒドロゲナーゼである。
【0123】
ROCK、DTT、および目的の試験化合物を除いて、上記に列挙した全ての試薬を含む、アッセイストック緩衝溶液を調製する。56μLの試験反応物を384ウェルプレートに入れ、続いて、試験化合物を含むμlの2mMのDMSOストックを添加する(最終化合物濃度30μM)。プレートを、約10分間30℃でプレインキュベートし、反応を10μLの酵素を添加することによって開始する(最終濃度100nM)。反応速度を、30℃にて5分間の読み取り時間にわたって、BioRad Ultramarkプレートリーダー(Hercules、CA)を用いて得る。
【0124】
本発明者は、本発明の多数の実施態様を提示したものの、本発明の基本的な構成は、本発明の化合物および方法を使用する他の実施態様を提供するために、変更し得ることが明らかである。従って、本発明の範囲は、例として提示した特定の実施態様ではなく、添付した請求の範囲により規定されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩:
【化1】

ここで:
環Aは、ピロール環であり、該ピロール環は、必要に応じて、1−位置で、Rで置換され、そして以下で置換されている:
(i)0個、1個または2個のR基、および
(ii)QR
各Rは、別個に、必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基、Ar、CN、NO、ハロゲン、N(R)、SR、またはORから選択されるが、但し、2個のR基は、同時にArにはならない;
は、R、C(O)R、C(O)ORまたはSORである;
は、NまたはC−T(m)である;
Tは、原子価結合またはC1〜6アルキリデン鎖である;
mは、0または1である;
は、CN、ハロゲン、OR、SR、N(R)RまたはRから選択される;
Qは、−C(O)N(R)−、−SON(R)−、−SO−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−N(R)C(O)O−、−C(O)−または−C(O)O−である;
は、ハロゲン、CN、(CH、(CHCH(R、(CHCH(R)CH(R、(CHN(RまたはN(R)(CHN(Rから選択される;
各Rは、別個に、RまたはArから選択される;
各yは、別個に、0〜6である;
各Arは、別個に、必要に応じて置換した3員〜7員の飽和、部分不飽和または完全不飽和単環式環または必要に応じて置換した8員〜10員の飽和、部分不飽和または完全不飽和二環式環から選択され、該単環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該二環式環は、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
各Rは、別個に、水素または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基から選択されるか、または:
同じ窒素原子上の2個のRは、そこに結合した窒素原子と一緒になって、4員〜8員の飽和、部分不飽和または完全不飽和環を形成し、該環は、1個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子は、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される;
各Rは、別個に、R、C(O)R、C(O)、CON(R、SOから選択される;
各Rは、別個に、R、OR、CO、(CHN(R、N(R、N(R)C(O)R、N(R)CON(R、CON(R、SO、N(R)SO、C(O)R、CN、またはSON(Rから選択される;
は、R、(CHOR、(CHN(R、または(CHSRから選択される;そして
各wは、別個に、0〜4から選択される、
化合物。
【請求項2】
前記化合物が、式IIの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の化合物:
【化2】

【請求項3】
が、C−T(m)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、水素、N(R)R、OR、3員〜6員カルボシクリル、または必要に応じて置換した基から選択され、該必要に応じて置換した基が、C1〜6脂肪族または5員〜6員アリール環から選択され、該環が、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Tが、原子価結合である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
Tが、−CH−である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
が、Nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、(CH、(CHCH(R、(CHCH(R)CH(Rまたは(CHN(Rから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
各Rが、別個に、必要に応じて置換した5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環、または必要に応じて置換した9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環から選択され、該5員〜6員飽和、部分不飽和または完全不飽和環が、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択され、そして該9員〜10員飽和、部分不飽和または完全不飽和環が、0個〜4個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子が、別個に、窒素、酸素またはイオウから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
各Rが、別個に、R、OR、CO、(CH)N(RまたはCNから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の化合物:
【化3】

【請求項12】
前記化合物が、式IVの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の化合物:
【化4】

【請求項13】
以下からなる群から選択される、化合物:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【請求項14】
請求項1に記載の化合物と、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルとを含有する、組成物。
【請求項15】
前記組成物が、ERK2またはROCKプロテインキナーゼ活性を測定可能に阻害するのに十分な量で、前記化合物を含有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
さらに、治療薬を含有し、該治療薬が、化学療法薬または抗増殖薬、抗炎症薬、免疫調節薬または免疫抑制薬、神経障害を処置する薬剤、循環器病を処置する薬剤、破壊性骨障害を処置する薬剤、肝臓病を処置する薬剤、抗ウイルス薬、血液疾患を処置する薬剤、糖尿病を処置する薬剤、または免疫不全障害を処置する薬剤から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
生体試料において、ERK2またはROCKプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法は、該生体試料を、以下のa)またはb)と接触させる工程を包含する:
a)請求項14に記載の組成物;または
b)請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
患者において、ERK2またはROCKプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法は、該患者に、以下のa)またはb)を投与する工程を包含する:
a)請求項14に記載の組成物;または
b)請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
処置を必要とする患者において、癌、卒中、糖尿病、肝腫大、循環器病、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害、炎症、神経障害、ホルモン関連疾患、臓器移植に関連した病気、免疫不全障害、破壊性骨障害、増殖障害、感染症、細胞死に関連した病気、トロンビン誘発血小板凝集、慢性骨髄性白血病(CML)、肝臓病、T細胞活性化が関与する病的免疫状態、またはCNS障害を処置するかその重篤度を軽減する方法であって、該患者に、請求項14に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
前記方法が、癌を処置するかその重篤度を軽減するのに使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、以下から選択される癌を処置するかその重篤度を軽減するのに使用される、請求項20に記載の方法:乳房;卵巣;子宮頚管;前立腺;精巣、尿生殖器路;食道;喉頭、グリア芽細胞腫;神経芽細胞腫;胃;皮膚、ケラトアカントーマ;肺、類表皮癌腫、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌;骨;大腸、腺腫;膵臓、腺癌;甲状腺、濾胞性癌腫、未分化癌、乳頭癌;精上皮腫;黒色腫;肉腫;膀胱癌腫;肝臓癌腫および胆管路;腎臓癌腫;骨髄性障害;リンパ球障害、ホジキン有毛細胞;頬側口腔および咽頭(経口)、唇、舌、口、咽頭;小腸;大腸−直腸、大腸、直腸;脳および中枢神経系;または白血病。
【請求項22】
前記癌が、黒色腫、乳癌、大腸癌または膵臓癌から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、循環器病を処置するかその重篤度を軽減するのに使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記循環器病が、再狭窄、心肥大、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または鬱血性心不全から選択される循環器病から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、外傷、グルタミン酸塩、神経毒性または低酸素症により引き起こされるアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、脳虚血または神経変性疾患を処置するかその重篤度を軽減するのに使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記患者に、追加治療薬を投与する追加工程を包含し、該追加治療薬が、化学療法薬または抗増殖薬、抗炎症薬、免疫調節薬または免疫抑制薬、神経栄養因子、循環器病を処置する薬剤、破壊性骨障害を処置する薬剤、肝臓病を処置する薬剤、抗ウイルス薬、血液疾患を処置する薬剤、糖尿病を処置する薬剤、または免疫不全障害を処置する薬剤から選択され、ここで:
(a)該追加治療薬が、処置する疾患に適当であり、そして
(b)該追加治療薬が、単一剤形で前記組成物と共に投与されるか、または複数剤形の一部として前記組成物とは別に投与される、
請求項19に記載の方法。
【請求項27】
移植可能装置を被覆する組成物であって、請求項1に記載の化合物と、該移植可能装置を被覆するのに適当にキャリアとを含有する、組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の組成物で被覆される、移植可能装置。
【請求項29】
Qが、−C(O)N(R)−または−C(O)O−である、請求項1に記載の化合物。

【公表番号】特表2007−530595(P2007−530595A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505245(P2007−505245)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/010204
【国際公開番号】WO2005/100342
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】