説明

ETC通信エリア多点同時測定装置

【課題】ETC通信エリア内の電界強度を正確に測定する。
【解決手段】車両10には、電子制御ユニット11、測定装置20等が搭載される。測定装置20は、ETC通信用の路側無線装置から送信される電波をそれぞれ受信する複数の受信用アンテナ21を備える。それぞれの受信用アンテナ21は、車両10の走行方向の先端部12に、車両10の幅方向に並べて設置される。また、測定装置20は、検出部25、測定部26、記憶部27を備える。検出部25は、所定の時点における車両10の位置を検出し、検出データとして出力する。測定部26は、上記所定の時点でそれぞれの受信用アンテナ21により受信された電波を測定し、測定データとして出力する。記憶部27は、検出部25から出力される検出データと測定部26から出力される測定データとを対応付けて記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関するものである。本発明は、特に、ETC(登録商標)(Electronic・Toll・Collection)通信エリア多点同時測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ETC/DSRC(Dedicated・Short・Range・Communication)路側無線装置(「路側機」ともいう)の電界強度分布を測定するために使用する測定装置として、電界強度の計測器を専用の手押しの台車に搭載する「台車タイプ」(例えば、特許文献1参照)と、電界強度の計測器を車両に搭載する「車載タイプ」(例えば、特許文献2,3参照)との2種類がある。運用状態の路側無線装置の電界強度分布を測定する場合、台車タイプの測定装置では、道路の交通規制を行わなければ測定を実施することができない。一方、車載タイプの測定装置では、道路の交通規制を行わずに測定を実施することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−96786号公報
【特許文献2】特開2009−164876号公報
【特許文献3】特開2011−2288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車載タイプの測定装置では、アンテナの取り付け位置が、車両上部に設置したキャリア又は車内のダッシュボードである。そのため、車両のボディ(ボンネット等)による電波反射や車両のフロントガラスによる減衰等の影響が大きく、正確な値を測定することが難しいという課題があった。
【0005】
また、ETCの規格では、路側機と車載器とが通信を行う通信エリアが地上高1メートルで規定されているため、アンテナを地上高1メートルに設置して測定を実施する必要がある。しかし、アンテナをキャリアに取り付ける場合に高さを1メートルとすることは困難であり、また、アンテナをダッシュボードに取り付ける場合には車両の高さに依存するため、高さの調整は困難であるという課題があった。
【0006】
また、ETCの料金所では、通常、車両の先端が通信エリアに入った瞬間から路側無線装置が電波を放射し、車両の先端が通信エリアから出た瞬間に路側無線装置が電波を停止する。そのため、アンテナの取り付け位置がキャリアやダッシュボードであると、車両の先端より後方で受信した電波が測定対象となるため、正確に通信エリア内の電界強度を測定することができないという課題があった。
【0007】
本発明は、例えば、ETC通信エリア内の電界強度を正確に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様に係るETC通信エリア多点同時測定装置は、
車両のフロントバンパーの前端と前記車両のフロントバンパー及びボディの境界から約0.5メートル後方の位置との間である前記車両の走行方向の先端部において、前記車両の下端から約1メートルの位置に、前記車両の幅方向に並べて設置される複数のアンテナであって、路上の第1地点に設置された車両検知器が前記車両の走行方向の先端部を検知する第1時点で電波の送信を開始し路上の第2地点に設置された別の車両検知器が前記車両の走行方向の先端部を検知する第2時点で前記電波の送信を停止するETC(Electronic・Toll・Collection)通信用の路側無線装置から、前記電波をそれぞれ受信する複数のアンテナと、
前記第1時点と前記第2時点との間の複数の時点における前記車両の位置を検出し、検出データとして出力する検出部と、
前記複数の時点で前記複数のアンテナにより受信された電波を測定し、測定データとして出力する測定部と、
前記検出部から出力される検出データと前記測定部から出力される測定データとを対応付けて記憶する記憶部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一の態様によれば、ETC通信エリア多点同時測定装置が、車両の走行方向の先端部に複数のアンテナを備えることにより、ETC通信エリア内の電界強度を正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両に搭載された、実施の形態1に係る測定装置の構成を示す図。
【図2】実施の形態1における車両への受信用アンテナの取り付け例を示す図。
【図3】実施の形態1及び従来においてアンテナにより受信される電波を比較した図。
【図4】実施の形態1における通信エリアと測定エリアとの関係を示す図。
【図5】従来における通信エリアと測定エリアとの関係を示す図。
【図6】実施の形態1に係る測定装置の動作の一例を示すフローチャート。
【図7】実施の形態1における電界強度の測定結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、車両10に搭載された、本実施の形態に係る測定装置20の構成を示す図である。図2は、車両10への受信用アンテナ21の取り付け例を示す図である。
【0013】
図1において、車両10には、電子制御ユニット11、測定装置20等が搭載されている。
【0014】
電子制御ユニット11は、車両10の内部に搭載されている。電子制御ユニット11は、例えば、車輪の回転を検出し、車輪の回転に応じた車速パルスを生成して処理装置22に入力する。
【0015】
測定装置20は、受信用アンテナ21、処理装置22、操作用PC23(パーソナルコンピュータ)、操作用コントローラ24を備える。なお、操作用PC23は、車両10の外部に設置されてもよい。
【0016】
受信用アンテナ21は、アンテナの一例であり、車両10の走行方向の先端部12に少なくとも1つ設置される。受信用アンテナ21は、ETC通信用の路側無線装置から送信される電波を受信する。
【0017】
本実施の形態において、車両10の先端部12とは、車両10のフロントバンパー13の前端と、車両10のフロントバンパー13及びボディ14の境界からDメートル後方の位置との間の部分をいう。Dは、最長で約0.5(50センチメートル)とし、望ましくは約0.3(30センチメートル)、より望ましくは約0.2(20センチメートル)とする。
【0018】
本実施の形態では、複数の受信用アンテナ21が、車両10の先端部12に、車両10の幅方向に並べて設置される。これにより、通信エリアにおける電波の多点同時測定を実施することが可能となる。
【0019】
図2の例では、5つの受信用アンテナ21が、車両10の先端部12に、車両10の幅方向に等間隔に並ぶように取り付けられている。それぞれの受信用アンテナ21は、幅Wセンチメートル×長さLセンチメートルであり、車両10の下端から(即ち、地上高)Hメートルの位置に設置されている。Hは、約1(メートル)とすることが望ましい。Wは、例えば9(センチメートル)、Lは、例えば15(センチメートル)である。この場合、受信用アンテナ21を水平方向から15度傾けて取り付けるとすると、車両10の走行方向において受信用アンテナ21の後端の位置が受信用アンテナ21の前端の位置から約14.5センチメートル(=15・cos15°)後方にくることになる。なお、ここでは、受信用アンテナ21の奥行(厚さ)は考慮していない。
【0020】
受信用アンテナ21の前端及び後端の位置は、車両10のフロントバンパー13やボディ14の形状等に合わせて適宜調整すればよい。例えば、受信用アンテナ21をフロントバンパー13の前端とボンネット先端(即ち、ボディ14の前端)との間に取り付けてもよく、この場合、受信用アンテナ21の後端がボンネットより前方にくることになる。あるいは、例えば、受信用アンテナ21をボンネット上でボンネット先端ぎりぎりに取り付けてもよく、この場合、受信用アンテナ21の前端がボンネット先端、受信用アンテナ21の後端がボンネット先端から約14.5センチメートル後方の位置にくることになる。あるいは、例えば、受信用アンテナ21をボンネット内側に取り付けてもよく、この場合、受信用アンテナ21の前端がボンネット先端より後方にくることになる。なお、受信用アンテナ21をボンネット内側に取り付ける場合は、ボンネットを、電波を通しやすい材質のものに交換する必要がある。また、受信用アンテナ21をフロントバンパー13の前端とボンネット先端との間やボンネット上に取り付ける場合に、受信用アンテナ21を、電波を通しやすい材質の保護用カバーで覆ってもよい。
【0021】
それぞれの受信用アンテナ21は、ケーブル28を介して処理装置22と接続される。5つの受信用アンテナ21のうち、中央より車両10の走行方向に向かって右側の2つの受信用アンテナ21は、その左側面にケーブル28が接続されている。そして、中央より車両10の走行方向に向かって左側の2つの受信用アンテナ21は、その右側面にケーブル28が接続されている。中央の受信用アンテナ21は、左側面にケーブル28が接続されているが、右側面にケーブル28が接続されていてもよい。それぞれの受信用アンテナ21から延びるケーブル28は、車両10のボディ14(例えば、ボンネット)にあけられた穴からボディ14の内側へと引き込まれ、束ねられて処理装置22まで繋げられている。
【0022】
このように、本実施の形態では、複数の受信用アンテナ21が、なるべく左右対称になるように設置される。つまり、1つの受信用アンテナ21及び当該1つの受信用アンテナ21より右側の受信用アンテナ21は、左方向からケーブル28が接続され、当該1つの受信用アンテナ21より左側の受信用アンテナ21は、右方向からケーブル28が接続される。これにより、ボディ14の内側でケーブル28を束ねやすくなる。また、ケーブル28が車両10の幅方向において外側に出っ張らなくなるため、受信用アンテナ21を車両10の左右両端まで設置することができ、車両10の幅方向における測定範囲を広くすることができる。こういった効果は、特に、曲がりにくい材質のケーブル28(同軸ケーブル等)を使用する場合に顕著となる。
【0023】
それぞれの受信用アンテナ21は、ETCの料金所に設置された路側無線装置から送信される電波を受信する。
【0024】
処理装置22は、車両10の内部に搭載されており、検出部25、測定部26、記憶部27を備える。
【0025】
検出部25は、所定の時点における車両10の位置を検出し、検出データとして出力する。本実施の形態において、検出部25は、電子制御ユニット11から入力される車速パルスをカウントすることにより車両10の位置を検出する。なお、検出部25は、GPS(Global・Positioning・System)や準天頂衛星システムを利用して車両10の位置を検出したり、その他の方式を利用して車両10の位置を検出したりしてもよい。
【0026】
測定部26は、上記所定の時点でそれぞれの受信用アンテナ21により受信された電波を測定し、測定データとして出力する。本実施の形態において、測定部26は、上記所定の時点でそれぞれの受信用アンテナ21により受信された電波の電界強度を測定し、測定値のデジタルデータを測定データとして出力する。なお、測定部26は、上記所定の時点でそれぞれの受信用アンテナ21により受信された電波のアナログデータを測定データとして出力してもよい。
【0027】
記憶部27は、メモリやテープ等であり、検出部25から出力される検出データと測定部26から出力される測定データとを対応付けて記憶する。なお、記憶部27は、取り付け及び取り外し可能な状態で、設置されていてもよい。また、測定部26がアナログデータを測定データとして出力する場合は、当該出力されたアナログデータが、例えば記憶部27の磁気テープに記録されるようにしてもよい。
【0028】
なお、検出部25、測定部26、記憶部27のいずれか又はその一部が、処理装置22の代わりに、操作用PC23に実装されてもよい。
【0029】
操作用PC23は、分析部の一例であり、図1に示す例では車両10の内部に搭載されている。操作用PC23は、処理装置22の記憶部27に記憶された検出データと測定データとから、車両10の位置ごとの電波の特性を分析し、グラフ等として画面等に出力する。本実施の形態において、操作用PC23は、車両10の位置と電界強度との関係をグラフ化して画面表示する。
【0030】
なお、上述した通り、操作用PC23を車両10の外部に設置してもよい。操作用PC23を車両10の外部に設置する場合は、記憶部27を車両10から取り外して利用する。例えば、取り外した記憶部27を車両10の外部に設置された操作用PC23に接続して、記憶部27に記憶された検出データと測定データとから、車両10の位置ごとの電波の特性を分析し、グラフ等として画面等に出力する。あるいは、操作用PC23を車両10の外部に設置する場合は、処理装置22の一部として、車両10に通信部(図示していない)を設ける。例えば、無線通信機能を有する通信部を介して、記憶部27に記憶された検出データと測定データとを車両10の外部に設置された操作用PC23に送信し、送信された検出データと測定データとから、車両10の位置ごとの電波の特性を分析し、グラフ等として画面等に出力する。
【0031】
図示していないが、処理装置22、操作用PC23は、プログラムを実行するCPU(Central・Processing・Unit)を備えている。CPUは、ROM(Read・Only・Memory)、RAM(Random・Access・Memory)、その他のハードウェアデバイスを制御する。本実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜工程」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。即ち、「〜部」として説明するものは、ROMに記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアのみ、あるいは、素子、デバイス、基板、配線といったハードウェアのみで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、あるいは、ソフトウェアとハードウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されていても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、記録媒体に記憶される。プログラムはCPUにより読み出され、CPUにより実行される。即ち、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0032】
操作用コントローラ24は、操作部の一例であり、車両10の内部に搭載されている。操作用コントローラ24は、測定開始操作、測定終了操作、マーキング操作を受け付ける。操作用コントローラ24は、例えば、各操作を受け付けるためのボタンを具備している。各操作の詳細については後述する。
【0033】
上記のように、本実施の形態では、測定装置20が、複数の受信用アンテナ21を用いてETC通信用の路側無線装置から送信される電波を受信し、処理装置22を用いてそれぞれの受信用アンテナ21により受信された電波の電界強度を測定する。つまり、測定装置20が、ETC通信エリア多点同時測定装置として機能する。なお、測定装置20は、ETC以外のDSRCシステムを測定対象としてもよいし、その他の無線通信方式を採用したシステムを測定対象としてもよい。
【0034】
図3は、本実施の形態及び従来においてアンテナにより受信される電波を比較した図である。
【0035】
図3に示すように、従来、アンテナがキャリアやダッシュボードに取り付けられる場合は、車体からの電波反射等の影響を受けやすかった。一方、本実施の形態では、受信用アンテナ21が車両10の先端部12に取り付けられるため、車体が受信用アンテナ21の後方に位置することになり、車体からの電波反射等の影響を受けにくい。よって、本実施の形態によれば、ETCの料金所に設置されるETC/DSRC路側無線装置30(ETC通信用の路側無線装置)からの電波の電界強度を正確に測定することができる。
【0036】
また、従来、アンテナがキャリアに取り付けられる場合は、アンテナの取り付け高さを1メートルに調整することができなかった。また、アンテナがダッシュボードに取り付けられる場合は、車種等によってアンテナの取り付け高さが決まってしまうため、アンテナの取り付け高さを1メートルに調整することが難しかった。一方、本実施の形態では、受信用アンテナ21が車両10の先端部12に取り付けられるため、受信用アンテナ21の取り付け高さを1メートルに調整することが容易にできる。よって、本実施の形態によれば、ETCの規格で定められた地上高1メートルの電界強度を正確に測定することができる。
【0037】
図4は、本実施の形態における通信エリアと測定エリアとの関係を示す図である。図5は、従来における通信エリアと測定エリアとの関係を示す図である。
【0038】
ETCの料金所では、通信エリアの始点(路上の第1地点)に車両検知器31aが設置され、通信エリアの終点(路上の第2地点)に別の車両検知器31bが設置される。車両検知器31a,31bは、いずれも車両10の先端部12(例えば、バンパー)を検知する。ETC/DSRC路側無線装置30は、車両検知器31aが車両10の先端部12を検知する第1時点、即ち、車両10の先端が通信エリアに入るタイミングで、電波の送信(放射)を開始する。そして、ETC/DSRC路側無線装置30は、車両検知器31bが車両10の先端部12を検知する第2時点、即ち、車両10の先端が通信エリアから出るタイミングで、電波の送信を停止する。
【0039】
図5に示すように、従来、アンテナがキャリアに取り付けられる場合は、車両10の先端より後方で受信した電波が測定対象となるため、正確に通信エリア内の電界強度を測定することができなかった。例えば、車両10の先端が通信エリアを出た瞬間から電波が停止するが、この時点ではアンテナが通信エリアの終点に到達していないため、通信エリアの一部に電界強度を測定できない領域が生じてしまう。また、通信エリアと測定エリアとがずれるため、車両10の位置と電界強度の測定結果との対応付けを行う際に、車両10の位置を補正する必要が生じてしまう。これらの課題は、アンテナがダッシュボードに取り付けられる場合も同様に生じるものである。
【0040】
一方、図4に示すように、本実施の形態では、受信用アンテナ21が車両10の先端部12に取り付けられるため、正確に通信エリア内の電界強度を測定することができる。例えば、車両10の先端が通信エリアを出た瞬間から電波が停止するが、この時点で受信用アンテナ21が通信エリアの終点に到達するため、通信エリアの全域における電界強度を測定することができる。また、通信エリアと測定エリアとが一致するため、車両10の位置と電界強度の測定結果との対応付けを容易に行うことができる。
【0041】
以下では、測定装置20の動作について説明する。
【0042】
図6は、測定装置20の動作の一例を示すフローチャートである。図7は、本実施の形態における電界強度の測定結果の一例を示す図である。
【0043】
図6のステップS11において、操作用コントローラ24は、ユーザによる測定開始操作(例えば、ボタンを押下することにより行われる)を受け付けると、測定の開始を指示する信号を処理装置22に入力する。ユーザは、任意のタイミングで測定開始操作を行ってよいが、ここでは、車両10が車両検知器31aの手前を走行中に(例えば、約5メートル手前の位置で)測定開始操作を行うものとする。
【0044】
図6のステップS12において、処理装置22は、測定の開始を指示する信号が操作用コントローラ24から入力されると、検出部25による車速パルスのカウントと測定部26による電界強度の測定とを開始する。これ以降、検出部25は、電子制御ユニット11から一定時間ごとに入力される車速パルスの数をカウントし、カウントデータとしてリアルタイムに(例えば、電子制御ユニット11から車速パルスが入力される度に)出力する。測定部26は、受信用アンテナ21ごとに、受信用アンテナ21が受信したETC/DSRC路側無線装置30の電波の電界強度をデジタル値へ変換し、測定データとしてリアルタイムに出力する。記憶部27は、検出部25からカウントデータが出力される度に、カウントデータと、対応する時刻と、測定部26から出力された受信用アンテナ21ごとの測定データ(同時刻に受信用アンテナ21が受信した電波の電界強度の測定値)とを記憶する。
【0045】
図7に示すように、車両10の先端部12が車両検知器31aを通過する前は、ETC/DSRC路側無線装置30から電波が放射されておらず、受信用アンテナ21がノイズしか受信しないため、ほとんど0に近い値が測定データとして記録される。車両10の先端部12が車両検知器31aを通過すると、それ以降、ETC/DSRC路側無線装置30から電波が放射され、受信用アンテナ21が当該電波を受信するため、当該電波の電界強度の測定値(単位:dBm)が測定データとして記録される。このとき、路面等による反射波の影響で、測定値にリップルが生じることがある。また、受信用アンテナ21がETC/DSRC路側無線装置30の直下付近を移動するときには、ETC/DSRC路側無線装置30から放射されるビームのサイドローブの影響で、一旦小さくなった測定値が再び大きくなる。
【0046】
図6のステップS13において、操作用コントローラ24は、ユーザによるマーキング操作(例えば、ボタンを押下することにより行われる)を受け付けると、マーキングを指示する信号を処理装置22に入力する。ユーザは、車両10が車両検知器31bの位置(即ち、通信エリアの終点)を通過する際にマーキング操作を行う。
【0047】
図6のステップS14において、処理装置22は、マーキングを指示する信号が操作用コントローラ24から入力されると、記憶部27にマーク情報を記録する。このとき、記憶部27は、車両10が車両検知器31bの位置を通過した時刻を示すタイムスタンプ(時刻データや、タイムスタンプとして識別可能な識別信号)を、マーク情報として記憶する。
【0048】
図7に示すように、車両10の先端部12が車両検知器31bを通過した後は、ETC/DSRC路側無線装置30から電波が放射されておらず、受信用アンテナ21がノイズしか受信しないため、ほとんど0に近い値が測定データとして記録される。
【0049】
図6のステップS15において、操作用コントローラ24は、ユーザによる測定終了操作(例えば、ボタンを押下することにより行われる)を受け付けると、測定の終了を指示する信号を処理装置22に入力する。ユーザは、任意のタイミングで測定終了操作を行ってよいが、ここでは、車両10が車両検知器31bの先を走行中に(例えば、約10メートル先の位置で)測定終了操作を行うものとする。
【0050】
図6のステップS16において、処理装置22は、測定の終了を指示する信号が操作用コントローラ24から入力されると、検出部25による車速パルスのカウントと測定部26による電界強度の測定とを終了する。このとき、検出部25は、記憶部27に記憶されたカウントデータと測定データとの組み合わせごとに、対応する時刻(以下、「測定時刻」という)を記憶部27から読み出す。また、検出部25は、記憶部27に記憶されたマーク情報によって示される時刻(以下、「マーキング時刻」という)に対応するカウントデータを記憶部27から読み出す。検出部25は、それぞれの測定時刻について、測定時刻とマーキング時刻との差分、及び、測定時刻に対応するカウントデータによって示される車速パルスの数とマーキング時刻に対応するカウントデータによって示される車速パルスの数との差分から、測定時刻における、車両検知器31bの位置(即ち、通信エリアの終点)からの車両10の相対位置を算出する。そして、検出部25は、算出した車両10の相対位置を示す検出データを出力する。即ち、検出部25は、それぞれの測定時刻(所定の時点の一例)と操作用コントローラ24によりマーキング操作が受け付けられた時刻との差分を計算し、計算した差分に基づき、それぞれの測定時刻における車両10の位置として、車両検知器31bの位置(所定の地点の一例)からの車両10の相対位置を検出する。記憶部27は、それぞれの測定時刻に対応する測定データと対応付けて、検出部25から出力された検出データを記憶する。
【0051】
図6のステップS17において、操作用PC23は、処理装置22の記憶部27に記憶された検出データと測定データとを参照して、車両10の位置、即ち、受信用アンテナ21の位置ごとの電界強度の測定値から、通信エリア内の受信電界強度分布を解析する。そして、操作用PC23は、解析結果を、例えば図7に示すようなグラフとして画面表示する。
【0052】
なお、操作用PC23を車両10の外部に設置する場合は、前述したように、記憶部27を車両10から取り外す。その後、取り外した記憶部27を車両10の外部に設置された操作用PC23に接続し、記憶部27に記憶された検出データと測定データとから、車両10の位置ごとの電波の特性を分析し、例えば図7に示すようなグラフを画面表示する。あるいは、操作用PC23を車両10の外部に設置する場合は、前述したように、車両10に設けた通信部を介して、記憶部27に記憶された検出データと測定データとを車両10の外部に設置された操作用PC23に送信し、送信された検出データと測定データとから、車両10の位置ごとの電波の特性を分析し、例えば図7に示すようなグラフを画面表示する。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態に係る測定装置20は、車載タイプの測定器を用いたETC路側無線装置の電界強度分布測定において、測定器のアンテナ位置及び構造を工夫することで、測定車両による電波反射の影響を減らし、より正確な位置の電界強度測定を行うことができるものである。
【0054】
前述したように、従来、車載タイプの測定器を用いた電界強度測定装置では測定用アンテナを車内ダッシュボード上、もしくは、車両天井部に取り付けたキャリアに設置する方式がとられていた。しかし、このような方式では、車両天井部やボンネットでの反射波の影響やフロントガラスによる電波の減衰等の外乱により正確に電界強度を測定することは難しかった。また、アンテナ設置位置の関係により所望の高さ(地上高1メートル)での測定を行うことが困難であった。さらに、ETC料金所では車両先端が通信エリアに進入した瞬間から電波が放射されるが、受信アンテナが車両先端に取り付けられていないため、正確に通信エリアでの電界強度を測定することができなかった。
【0055】
これに対し、本実施の形態では、車両先端のバンパー付近に測定用アンテナを設置することにより、車体がアンテナ後方となるため、車体による反射波の影響を減らすことが可能である。また、アンテナを車両先端に取り付けるため、ETC料金所の通信エリアでの電界強度を正確に測定することができ、実装時の調整によって設置高を所望の高さに調整することが可能である。また、アンテナと測定器本体を接続する配線をアンテナの左右方向の2種類とすることで車両実装しやすい構造となっている。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 車両、11 電子制御ユニット、12 先端部、13 フロントバンパー、14 ボディ、20 測定装置、21 受信用アンテナ、22 処理装置、23 操作用PC、24 操作用コントローラ、25 検出部、26 測定部、27 記憶部、28 ケーブル、30 ETC/DSRC路側無線装置、31a,31b 車両検知器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントバンパーの前端と前記車両のフロントバンパー及びボディの境界から約0.5メートル後方の位置との間である前記車両の走行方向の先端部において、前記車両の下端から約1メートルの位置に、前記車両の幅方向に並べて設置される複数のアンテナであって、路上の第1地点に設置された車両検知器が前記車両の走行方向の先端部を検知する第1時点で電波の送信を開始し路上の第2地点に設置された別の車両検知器が前記車両の走行方向の先端部を検知する第2時点で前記電波の送信を停止するETC(Electronic・Toll・Collection)通信用の路側無線装置から、前記電波をそれぞれ受信する複数のアンテナと、
前記第1時点と前記第2時点との間の複数の時点における前記車両の位置を検出し、検出データとして出力する検出部と、
前記複数の時点で前記複数のアンテナにより受信された電波を測定し、測定データとして出力する測定部と、
前記検出部から出力される検出データと前記測定部から出力される測定データとを対応付けて記憶する記憶部と
を備えることを特徴とするETC通信エリア多点同時測定装置。
【請求項2】
前記ETC通信エリア多点同時測定装置は、さらに、
前記車両が所定の地点を通過する際に行われる操作を受け付ける操作部
を備え、
前記検出部は、前記複数の時点と前記操作部により前記操作が受け付けられた時点との差分を計算し、計算した差分に基づき、前記複数の時点における前記車両の位置として、前記所定の地点からの前記車両の相対位置を検出することを特徴とする請求項1のETC通信エリア多点同時測定装置。
【請求項3】
前記複数のアンテナは、それぞれケーブルを介して前記測定部と接続され、
前記複数のアンテナのうち、1つのアンテナ及び当該1つのアンテナより前記車両の走行方向に向かって右側のアンテナは、左方向から前記ケーブルが接続され、当該1つのアンテナより前記車両の走行方向に向かって左側のアンテナは、右方向から前記ケーブルが接続されることを特徴とする請求項1又は2のETC通信エリア多点同時測定装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記測定データとして、前記複数の時点で前記複数のアンテナにより受信された電波の電界強度を示すデータを出力することを特徴とする請求項1から3のいずれかのETC通信エリア多点同時測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−89133(P2013−89133A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231028(P2011−231028)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(597165618)株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング (18)
【Fターム(参考)】