説明

EUVリソグラフィ用の光学機構及び該光学機構を構成する方法

【課題】温度の影響による変形を低減する、EUVリソグラフィ用の光学機構、特に投影レンズと、光学素子を有する該光学機構を構成する方法とを提供する。
【解決手段】反射面31a及び第1ゼロ交差温度TZC1でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有するTiOドープ石英ガラスから構成された基板32を備える第2ミラー22と、反射面及び第1ゼロ交差温度とは異なる第2ゼロ交差温度でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有するTiOドープ石英ガラスから構成された第2基板を備える第2光学素子とを備え、第1ゼロ交差温度における第1基板32の熱膨張率の勾配(ΔCTE>)及び/又は第2ゼロ交差温度における第2基板の熱膨張率の勾配(ΔCTE)は負の符号を有する光学機構に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUVリソグラフィ用の光学機構、特に投影レンズと、該光学機構を構成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特にEUVリソグラフィ装置の投影レンズに存在する幾何学的公差及び安定性に関する極めて厳しい要件を理由として、EUVリソグラフィでの反射光学素子用の基板として使用される材料は、そこで使用される温度範囲内で非常に低い熱膨張率(CTE)しか有することが許されない。そこで使用される基板材料は、通常は2つの構成要素を備え、それらの熱膨張率は、事実上完全に作動温度範囲内で相互に補償し合うよう相互に反対の温度依存性を有する。
【0003】
EUV用途に対するCTEの厳しい要件を満たす第1材料群は、ドープドシリケートガラス(doped silicate glasses)、例えば、ケイ酸塩ガラスの割合が通常は80%を超える、二酸化チタンをドープしたケイ酸塩ガラス又は石英ガラスを含む。市販されているこのようなケイ酸塩ガラスの1つは、Corning Inc.によりULR(登録商標)(超低膨張ガラス)の商品名で販売されている。言うまでもなく、例えば特許文献1に提示されているように、TiOドープ石英ガラスにさらに他の材料を、例えばガラスの粘度を低下させる材料を適宜ドープすることもでき、特にガラス材料の脈理の効果を低減するためにアルカリ金属が使用される。
【0004】
EUVミラー用の基板として適した第2材料群は、ガラスセラミックを含み、そのガラス相に対する結晶相の比は、異なる相の熱膨張率が相互に事実上打ち消し合うよう設定される。このようなガラスセラミックは、例えば、Schott AGからZerodur(登録商標)の商品名で、又はOhara Inc.からClearceram(登録商標)の商品名で提供される。
【0005】
上述の材料の熱膨張(長さの変化)の温度依存性は、該当温度範囲において放物線状であり、すなわち、特定の温度で熱膨張の極値が存在する。温度に対するゼロ膨張材料の熱膨張の微分、すなわち熱膨張率は、この範囲内の温度に略線形に依存し、熱膨張が極値となる温度で符号を変え、この理由からこの温度をゼロ交差温度と称する。結果として、熱膨張は、基板の作動又は使用温度がゼロ交差温度と一致する場合にのみ最小となる。ゼロ交差温度からわずかにずれている場合、熱膨張率は依然として低いが、ゼロ交差温度に対する温度差の増加に伴いさらに増加する。
【0006】
TiOドープ石英ガラスのゼロ交差温度は、(軟化点よりも高い温度での)石英ガラスの製造中の二酸化チタンの割合の設定により変えることができることが知られている。従来のTiOドープ石英ガラスの場合、ゼロ交差温度付近の熱膨張率の勾配は、通常は約1ppb/K〜3ppbKの範囲内にある。
【0007】
特許文献2から、TiOドープ石英ガラスのゼロ膨張温度(軟化点を超えない)を、最終熱処理ステップにより規定の値範囲内の特定の値に設定できることが知られている。このように、異なるゼロ膨張温度を有する複数の基板を、全く同一のブール(TiOの割合が(ほぼ)一定である石英ガラスブロック)の部分体積から製造することができる。ゼロ膨張温度を追加の熱処理ステップにより設定できるようにする温度範囲は、約±10℃又は約±5℃である。ゼロ膨張温度付近の熱膨張率の勾配は、この場合は全く又はごくわずかにしか変化しない。
【0008】
ガラスの熱処理プロセス中の温度/時間曲線の適切な選択により、ガラスの仮想温度を、したがってゼロ交差温度だけでなくゼロ交差温度における熱膨張係数の勾配も設定できることが同様に知られている。したがって、例として、特許文献3は、12(重量)%〜20(重量)%のTiOからなるTiO−SiOガラスの熱膨張率を設定する方法であって、700℃〜約900℃の温度でガラスに熱処理を施すことにより、熱膨張率の符号を負から正に変えることができる方法を開示している。
【0009】
石英ガラスのTiO含有量が高く、例えば10%を超える場合、Tiリッチ粒子が晶出する傾向があり、これが石英ガラスの研磨性に悪影響を及ぼし得るという問題が生じ得る。特許文献4は、高いTiOドープ量(10%以上)を有する石英ガラス基体に、より弱くドープした石英ガラスから構成された層を塗布し、これを研磨して石英ガラス基体よりも高い表面品質にすることができることを開示している。
【0010】
特許文献5は、最高1200℃の仮想温度と、最高600ppmのOH基濃度と、0℃〜100℃で0±200ppb/Kの熱膨張率とを有することが意図されるTiO含有石英ガラスを開示している。製造中、石英ガラスを所定の期間にわたり500℃を超える温度に保ち、温度をその後最高10℃/時の平均冷却速度で500℃に低下させる。
【0011】
特許文献6は、ゼロ膨張温度の領域が勾配に関して、特に熱膨張率の勾配の符号に関して異なる種々の材料から構成された少なくとも2つの光学素子を備える、157nm未満の波長用の投影レンズを記載している。指定された種々の材料の例として、第1にガラスセラミック、特にZerodur(登録商標)、第2に非晶質チタンケイ酸塩ガラス、特にULE(登録商標)が挙げられる。
【0012】
特許文献7は、光学部品の材料のゼロ交差温度を、光学部品が加熱される最高温度に実質的に(約±3K以内で)対応するよう設定することを開示している。光学系の像収差は、このようにして最小化されることが意図される。特許文献8は、所望の温度から最高±10℃ずれるゼロ交差温度を有するガラスセラミックを製造する方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0004169号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0048075号明細書
【特許文献3】独国特許第21 40 931号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0052869号明細書
【特許文献5】欧州特許第1 608 598号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0035814号明細書
【特許文献7】国際公開第2004/015477号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0125184号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、温度の影響による変形を低減する、EUVリソグラフィ用の光学機構、特に投影レンズと、光学素子を有する該光学機構を構成する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、EUVリソグラフィ用の光学機構、特に投影レンズであって、EUV放射線を反射する表面及び第1ゼロ交差温度でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有するTiOドープ石英ガラスから構成された第1基板を備える第1光学素子と、EUV放射線を反射する表面及び第1ゼロ交差温度とは異なる第2ゼロ交差温度でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有するTiOドープ石英ガラスから構成された第2基板を備える第2光学素子とを備え、第1ゼロ交差温度における第1基板の熱膨張率の勾配及び/又は第2ゼロ交差温度における第2基板の熱膨張率の勾配は負の符号を有する光学機構により達成される。
【0016】
本発明は、光学機構の、例えばマイクロリソグラフィ用の投影レンズの少なくとも2つの光学素子に、異なるゼロ交差温度を有するTiOドープ石英ガラス材料から構成された基板を設け、各ゼロ交差温度における熱膨張率が基板の少なくとも1つの場合に負の符号を有するようにすることを提案する。このように、各光学素子の基板材料を、光学素子を作動させる周囲条件に個別に適合させることができる。特に、基板材料又はゼロ交差温度を、光学機構における光学素子の作動温度に応じて選択することができる。
【0017】
基板材料における種々のゼロ交差温度は、例えば、石英ガラスの製造中に異なるTiO割合を設定することにより、且つ/又は軟化点未満に冷却後の石英ガラス材料のゼロ交差温度を適切に変更するために、すなわち通常は光学機構における光学素子の作動中の各使用温度に適合させるために、1つ又は複数の熱処理ステップを実行することにより発生させることができる。
【0018】
一実施形態では、第1ゼロ交差温度における第1基板の熱膨張率の勾配及び第2ゼロ交差温度における第2基板の熱膨張率の勾配は、符号に関して異なる。熱膨張率の勾配の符号が異なる基板の使用は、光学構成体の、特に投影レンズの性能を高めることを可能にするが、それは像収差又は収差をこのようにして低減できるからである。
【0019】
さらに別の実施形態では、第1ゼロ交差温度における第1基板の熱膨張率の勾配の絶対値及び/又は第2ゼロ交差温度における第2基板の熱膨張率の勾配の絶対値は、1.0ppb/K未満、好ましくは0.5ppb/K未満、特に0.2ppb/K未満である。言うまでもなく、両方の基板のCTEの勾配は便宜上1.0ppb/K未満である。すでにさらに上述したように、CTEの勾配は、適切に選択されたパラメータを用いた熱処理プロセスにより変更することができるので、上記の値未満の勾配の絶対値を達成することが可能である。
【0020】
一実施形態では、第1ゼロ交差温度と第2ゼロ交差温度との間の差の絶対値は、6Kよりも大きく、好ましくは10Kよりも大きい。基板材料の熱膨張率のゼロ交差温度の差のこのような絶対値は、例えば投影レンズにおける光学素子の作動温度が通常は少なくとも上記絶対値だけ異なるので有利であることが分かっている。言うまでもなく、3つ以上の光学素子が光学機構にある場合、上記条件がそこに設けられた光学素子の少なくとも2つについて満たされるべきである。
【0021】
一実施形態では、第1基板のTiO含有量は第2基板のTiO含有量と異なる。ガラスのゼロ交差温度は、確かに熱処理中に特定の限度内で設定することができるが、ゼロ交差温度に著しい差を与えるために、又はより詳細にはそれぞれ異なる符号を有するCTEの勾配をもたらすために、TiO含有量が相互に異なる基板材料が通常は必要である。
【0022】
一実施形態では、第1基板のTiOの割合は、8重量%〜12重量%、好ましくは8重量%〜10重量%である。TiOの割合がこの間隔内にある場合、(温度上昇に伴う)CTEの正勾配がゼロ交差温度で普通は生じる。基板のTiOの割合の増加は、概して、比較的高いゼロ交差温度(40℃以上)につながり、低冷却速度での適切な熱処理プロセスによってより低い温度にシフトさせることができ、CTEの勾配も同時に所望の値に低下する。この目的で、780℃未満の低い仮想温度を得ることが有利である(導入部で引用した欧州特許第1 608 598号明細書を参照)。950℃〜1050℃の初期温度及び0.1℃/時〜2℃/時の範囲の冷却速度での熱処理プロセスの実行が、この場合に特に有利であることが分かった。
【0023】
さらに別の実施形態では、第2基板のTiO含有量は、12%よりも多く、特に約15%以上である。ここで該当する温度で、このようなTiO含有量を有する石英ガラス材料は、通常はまずゼロ交差温度で大きな負勾配を有する。又は、負勾配を、導入部で引用した独国特許第21 40 931号明細書に示されている熱処理により生じさせることができる。例えば独国特許第21 40 931号明細書に記載のように、1つ又は複数の後続の熱処理ステップにおいて、ゼロ交差温度での(負の)勾配の絶対値を、続いてより小さな値にシフトさせることができる。例として、CTEの勾配を減らすために、約750℃〜850℃の範囲の温度から始めて約1℃/時〜約2℃/時の速度で低速の冷却を行う熱処理ステップを行うことができる。この熱処理ステップのパラメータは、残留負勾配(remaining negative gradient)が−1ppb/K未満となるよう選択すべきである。言うまでもなく、CTEの勾配のこの絶対値又は場合によってはさらにより小さな絶対値を得るために、低冷却速度での複数の熱処理ステップが場合によっては必要であり得る。これらの低速熱処理ステップ中、0℃よりも高い範囲にあるゼロ交差温度は、通常は全く又はわずかにしか変化しない。
【0024】
さらに別の実施形態では、第1ゼロ交差温度及び第2ゼロ交差温度は、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃、特に好ましくは約20℃〜約40℃の温度範囲内にある。基板材料のゼロ交差温度は、光学機構における光学素子の作動温度の範囲内に又はそれよりもわずかに低く若しくは高くすべきである。光学素子は通常は冷却されないので、概して最低作動温度は室温(約22℃)に相当する。例えば投影レンズの光学素子の最高作動温度は、特に、使用されるEUV放射線の放射パワーに応じて変わり、通常は最高約30℃又は最高約40℃の範囲内で変化する。
【0025】
EUVリソグラフィ用の光学素子の十分な反射率を得るためには、各光学素子が45°を超える大きな入射角で又は70°を超える非常に大きな入射角で作動される場合、金属又は金属層(特にルテニウムから構成される)を基板に塗布すれば十分であり得る。約45°未満の小さな入射角では、反射多層コーティングを第1基板及び/又は第2基板に塗布し、反射面を上記コーティングに形成する。反射コーティングは、概して、高屈折率材料及び低屈折率材料から構成された複数の交互層、例えばモリブデン及びシリコンから構成された交互層を有し、それらの層厚は、コーティングがその光学機能を果たして高屈折率が確保されるよう互いに協調させる。多層コーティングは、酸化又は他の劣化機構から下位層を保護するためにキャッピング層を通常はさらに有する。該キャッピング層は、金属材料、例えばルテニウム、ロジウム、又はパラジウムからなり得る。
【0026】
一展開形態では、少なくとも1つの機能層、特に研磨を簡略化する層が、第1基板及び/又は第2基板と反射コーティングとの間に嵌められる。機能層も同様に、例えば、基板よりもTiOの割合が低い、例えばTiO含有量が約5重量%〜約8重量%又は最高で約10重量%のTiOドープ石英ガラスから製造することができ、その理由は、TiOの割合が低いガラス材料が、反射コーティングを塗布するためにより研磨しやすいからである。代替的又は付加的に、照射により誘起される劣化効果(特に圧縮)を回避するために、例えば高吸収材料、特にニッケルから構成された他の機能層を塗布することも可能である。
【0027】
さらに別の実施形態は、少なくとも1つの基板を加熱する少なくとも1つの加熱デバイスと、少なくとも1つの基板の温度を使用温度に設定するために少なくとも1つの加熱デバイスを駆動する制御デバイスとをさらに備える。投影レンズの基板又は反射面の温度は、特に照明設定に応じて変わるので、開ループ又は閉ループ制御により基板の温度を使用温度に制御することが有利であることが分かった。例として、ペルチェ素子、電熱線、放射源等が、加熱デバイスとしての役割を果たし得る。閉ループ制御により温度を使用温度に制御するために、1つ又は複数の温度センサを加熱される光学素子又は基板に設けることができる。基板が加熱される使用温度は、特に、光学機構の作動中に光学素子の反射面で生じる最高温度に(少なくとも)対応するよう選択され得る。
【0028】
一展開形態では、基板のゼロ交差温度からの使用温度のずれは、3K未満、好ましくは2K未満、特に1K未満である。理想的には、使用温度はゼロ交差温度に相当する。使用温度がゼロ交差温度に非常に近く、熱膨張率の勾配が非常に小さい(1.0ppb/K未満)場合、基板の変形は小さく、したがって特に光学面の変形も小さく、これには光学機構又は投影レンズの全体的性能に対して有利な効果がある。
【0029】
本発明は、EUV放射線を反射する表面及びTiOドープ石英ガラスから構成された基板を有する少なくとも2つの光学素子を備える、EUVリソグラフィ用の光学機構、特に投影レンズを構成する方法であって、TiOドープ石英ガラスから構成された第1基板群又は第2基板群から光学素子用の基板材料を選択するステップを含み、第1群は、第1ゼロ交差温度でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有し、第2群は、第1ゼロ交差温度とは異なる第2ゼロ交差温度でゼロ交差を有する熱膨張率を有し、第1ゼロ交差温度における第1基板群の熱膨張率の勾配及び/又は第2ゼロ交差温度における第2基板群の熱膨張率の勾配は負の符号を有する方法にも関する。
【0030】
光学機構の構成に関して、少なくとも2つの異なる基板群又は基板バッチを利用可能にしておき、各群の基板が同じ製造プロセス又は同一タイプの製造プロセスで製造され、したがって同一の割合のTiOを含むようにすることが提案される。例として、1群中の基板は、全く同一のブール(石英ガラスブロック)の部分体積からでき得る。
【0031】
本方法の一変形形態では、基板材料を選択するステップは、光学機構における各光学素子の位置に応じて行われる。いずれの場合も、入射EUV放射線の約60%しか各光学素子で反射されないので、各光学素子に衝突する放射線の放射パワー又はパワー密度は、光学機構におけるその位置に応じて変わる。より正確に言うと、衝突パワー密度は、したがって光学素子の作動温度も、特に放射源と光学素子の位置との間に設置される光学素子の数に応じて変わる。
【0032】
一変形形態では、第1ゼロ交差温度における第1基板群の熱膨張率の勾配は、第2ゼロ交差温度における第2基板群の熱膨張率の勾配とは符号が異なる。両方の基板群が熱膨張率の符号に関して異なれば有利であることが分かった。この場合、熱膨張率の勾配が正である第1基板群が通常有するゼロ交差温度は、例えば光学機構における光学素子の基板又は反射面の最高予測作動又は使用温度とほぼ同じか又はそれよりも高い。これは有利であることが分かっており、その理由は、適切な熱処理プロセス(下記を参照)によってゼロ交差温度をより小さな値にシフトさせて、第1群の基板材料を種々の光学素子の使用温度に柔軟に適合させることができるようにすることができるからである。各基板材料群の各ゼロ交差温度におけるCTEの勾配の絶対値は、可能な限り小さな値を有するべきであり、この値は1.6ppb/K以下であることが好ましい。
【0033】
特に、この場合、第1基板材料群のTiO含有量は、第2基板材料群のTiO含有量とは異なり得る。すなわち、両群が異なる製造プロセスで製造されるか又は異なるブールに属する。この場合、各群の石英ガラス材料のTiOの割合は、特に、光学機構に関連して上述した値をとり得る。
【0034】
さらに別の変形形態では、本方法は、ゼロ交差温度を光学素子にとって所望のゼロ交差温度に変えるため及び/又は光学素子の所望のゼロ交差温度での熱膨張率の勾配を1.0ppb/K未満、好ましくは0.5ppb/K未満、特に0.2ppb/K未満の絶対値に減らすために、選択基板の熱処理を行うステップをさらに含む。この追加の熱処理は、選択基板のゼロ交差温度を各光学素子に与えられた使用温度に適合させること、及び/又はCTEの勾配の絶対値を減らすことを可能にする。概して、追加の熱処理前に、基板又はブランクの幾何学的形状が、適当なサイズに切断された選択基板により、それぞれ割り当てられた光学素子の幾何学的形状に適合される。CTEの最大許容勾配も同様に、光学機構における光学素子の各位置に応じて変わるので、勾配の所望値が得られるまで複数の熱処理ステップが必要となる可能性があり得る。
【0035】
一変形形態では、(追加の)熱処理は、選択基板を最低750℃、好ましくは最低800℃の保持温度に加熱するステップと、基板を保持温度で少なくとも40時間保持するステップと、基板を0.1K/時〜5.0K/時の冷却速度で保持温度〜500℃の温度範囲内で冷却するステップとを含む。低冷却速度でのこのような熱処理ステップは、選択基板のゼロ交差温度をより低い温度にシフトさせ、このようにして所望の使用温度に適合させるのに有利であることが分かった。熱処理プロセス中、800℃未満の、したがって欧州特許第1 608 598号明細書で指定されている840℃(実施例4)という最低仮想温度未満の仮想温度を設定することが意図される。言うまでもなく、特定の温度、例えば500℃に達しない場合、冷却速度を制御せずに(すなわち基板を放置することにより)室温への冷却が通常は行われる。
【0036】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明に重要な細部を示す図面を参照した以下の発明の例示的な実施形態の説明から、また特許請求の範囲から明らかである。個々の特徴は、個別に単独で又は任意の所望の組み合わせでまとめて本発明の変形形態においてそれぞれ実現することができる。
【0037】
例示的な実施形態を概略図で示し、以下の説明において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】4つの反射光学素子を有する投影レンズを備えるEUVリソグラフィ装置の概略図を示す。
【図2a】第2反射光学素子とは異なる使用温度で作動される図1からの投影レンズの第1反射光学素子の概略図を示す。
【図2b】第1反射光学素子とは異なる使用温度で作動される図1からの投影レンズの第2反射光学素子の概略図を示す。
【図3a】第1光学素子用の第1TiOドープ石英ガラス基板の温度依存性の熱膨張率の概略図を示す。
【図3b】第2光学素子用の第2TiOドープ石英ガラス基板の温度依存性の熱膨張率の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、EUVリソグラフィ装置40を概略的に示す。EUVリソグラフィ装置40は、50nm未満、より詳細には約5nm〜約15nmのEUV波長領域の高エネルギー密度を有するEUV放射線を発生させるEUV光源1を備える。EUV光源1は、例えば、レーザ誘起プラズマを発生させるプラズマ光源の形態で、又はシンクロトロン放射源として具現され得る。特に前者の場合、図1に示すように、コレクタミラー2を使用することにより、EUV光源1からのEUV放射線を集束させて照明光線3を形成し、且つこのようにしてエネルギー密度をさらに高めることができる。照明光線3は、本例では4つの反射光学素子13〜16を備える照明系10により構造物Mを照明する役割を果たす。
【0040】
構造物Mは、例えば、構造物M上の少なくとも1つの構造を製造するために反射領域と非反射領域又は少なくとも反射の少ない領域とを有する反射マスクであり得る。代替的に、構造物Mは、1次元又は多次元配置で配置される複数のマイクロミラーとすることができ、適当であれば、各ミラーに対するEUV放射線3の入射角を設定するために少なくとも1つの軸を中心に可動である。
【0041】
構造物Mは、照明光線3の一部を反射して構造物Mの構造に関する情報を担持する投影光線4を整形し、投影光線4は投影レンズ20へ放射され、投影レンズ20は基板Wに構造物M又はその各部分領域を結像させる。基板W、例えばウェーハは、半導体材料、例えばシリコンを含み、ウェーハステージWSとも称するマウント上に配置される。
【0042】
本例では、投影レンズ20は、構造物M上にある構造の像をウェーハWに対して生成するために、4つの反射光学素子21〜23(ミラー)を備える。投影レンズ20におけるミラーの数は、通常は4つ〜8つであるが、適当であれば2つのミラーしか使用しないことも可能である。
【0043】
ウェーハW上の各像点IPへの構造物Mの各物体点OPの結像中に、高い結像品質を達成するために、ミラー21〜24の表面形状に関して極めて厳しい要件が課されなければならず、相互に対する又は対象物M及び基板Wに対するミラー21〜24の位置又は向きも、ナノメートル範囲での精度を必要とする。
【0044】
投影レンズ20の作動中、投影光線4のうち最大約30%になり得る割合の放射線が、各光学素子21〜24により吸収されるという問題が生じる。吸収された放射線の量に応じて、各ミラー21〜24において加熱が生じる結果として熱膨張が生じ、これが各ミラー21〜24の反射面の変形を招くことでミラー21〜24の向き又は表面形状を不所望に変化させる。この問題に対処する1つの可能性は、個々のミラー21〜24の温度を設定するために開ループ又は閉ループ制御デバイス30を使用することである。しかしながら、このような制御デバイス30が設けられる場合でも、ミラー21〜24に、可能な限り低く、例えば20℃〜40℃の該当温度範囲内で2ppb/K未満の絶対値を有する熱膨張率を有する基板材料を設ける必要がある。このようにして、温度の変動により生じる各基板の膨張の変化を小さく保つことができる。
【0045】
図1に示す投影レンズ20の場合、4つのミラー21〜24全部がTiOドープ石英ガラスを基板材料として含む。図2aは、例として投影レンズ20の第2ミラー22を概略図で示す。第2ミラー22は、TiOの割合が8重量%を超え、通常は12重量%以下である基板32を備える。
【0046】
反射コーティング31が基板32に塗布され、該反射コーティングは、交互に異なる屈折率を有する材料からなる複数の個別層(より具体的には指示しない)を有する。約13.5nmの領域の波長でのEUV放射線が投影レンズ20で使用される場合、個別層は、普通はモリブデン及びシリコンからなる。例えばモリブデン及びベリリウム、ルテニウム及びモリブデン、又はランタン及びBC等の他の材料の組み合わせも同様に可能である。個別層に加えて、反射コーティングは、拡散を防止する中間層及び酸化又は腐食を防止するキャッピング層も備え得る。厳密に言えば反射コーティング31全体がEUV放射線の反射を行うのだが、反射コーティング31の上側を以下で反射面31aと称する。
【0047】
中間層34(機能層)は、基板32と反射コーティング31との間に導入され、この層は、反射コーティング31の塗布前の基板32の表面の研磨を簡略化する。本例では、中間層34は、TiOの割合がその下の基板32よりも低く(例えば約5重量%)、したがって基板32よりも研磨しやすいTiOドープ石英ガラスから形成される。
【0048】
基板32は、キャリア33に塗布され、キャリア33内にはペルチェ素子の形態の複数の加熱素子33aが設けられ、これらは基板32を使用温度TA1(図3aを参照)まで均一に加熱する役割を果たす。光学素子22の反射面31aに対する投影光線4の強度が時間的に変化する場合でも使用温度TA1を得るために、図1に示す制御デバイス30が使用され、これが加熱デバイス33aを駆動する役割を果たす。閉ループにより基板32の温度を使用温度TA1に制御するために、温度センサ35が基板32の側方に設けられ、該温度センサは、接続線(図示せず)を介して制御デバイス30に接続される。言うまでもなく、制御デバイス30は、投影レンズ20のさらに他の光学素子21、23、24の温度の閉ループ制御又は開ループ制御に使用することもできる。
【0049】
図2a及び図3aに示す例では、基板32の使用温度はTA1=33℃である。温度変動により生じる変形及び/又は基板32の長さの変化の結果としての反射面31a全体におけるシフトを回避するために、光学素子22の使用温度TA1が基板32の熱膨張率のゼロ交差温度TZC1に可能な限り正確に対応すれば有利である(図3aを参照)。光学素子の使用又は作動温度TA1がゼロ交差温度TZC1からずれている場合でも基板32の長さが最小限にしか変化しないようにするために、ゼロ交差温度TZC1における熱膨張率CTEの(正)勾配ΔCTEは、可能な限り小さく、1.0ppb/K未満、好ましくは0.5ppb/K未満、特に0.2ppb/K未満であるべきである。しかしながら、小さな勾配ΔCTEの場合でも、使用温度TA1とゼロ交差温度TZC1との間の差は3K未満であるべきであり、すなわち|TA1−TZC1|<3Kが当てはまるべきである。
【0050】
言うまでもなく、この場合、正確には次式に従って、熱膨張率CTEと勾配ΔCTEとの間で直線関係をとった。
CTE(T)=ΔCTE(T−TZC1
言うまでもなく、この関係は、厳密に言えばゼロ交差温度TZC1からのずれが小さい場合にのみ当てはまる。
【0051】
図2bは、例として投影レンズ20の第4光学素子24を示しており、これは図2aからの光学素子22のように、反射面36aを有する反射コーティング36と、本例では加熱デバイスが設けられていないキャリア38とを有する。図2bからの光学素子24が図2aからの光学素子22と異なるのは、石英ガラス基板37のTiOの割合が図2aからの光学素子22の基板32の石英ガラスのTiOの割合からずれている点である。本例では、図2bからの光学素子24の基板37のTiOの割合は、約15重量%である。図3bで分かり得るように、ゼロ交差温度TZC2は、本例では22℃の室温である光学素子24の使用温度TA2に対応する。したがって、図2aからの光学素子22の基板32及び図2bからの光学素子24の基板37のゼロ交差温度はそれぞれ、|TZC2−TZC1|<11Kだけ異なる。
【0052】
図3bに同様に示すように、図2bからの光学素子24の基板37の熱膨張率の勾配ΔCTEは、負の符号を有し、したがって図2aからの光学素子22の熱膨張率CTEの勾配ΔCTEの正の符号とは異なる。図2aからの光学素子22の場合のように、図2bからの光学素子24の熱膨張率の勾配ΔCTEの絶対値は、1.0ppb/K未満、好ましくは0.5ppb/K未満、特に0.2ppb/K未満である。
【0053】
以下で説明する方法は、投影レンズ20の光学素子21〜24を構成又は提供するために実行することができる。
【0054】
第1に、異なるゼロ交差温度TZC1,0、TZC2,0を有する2つの材料バッチ(又は、TiOドープ石英ガラスブランク(「ブール」)の形態の基板群)を準備する。さらに、2つのバッチは、各ゼロ交差温度TZC1,0、TZC2,0における各熱膨張率の勾配ΔCE1,0、ΔCTE2,0の異符号に関して異なる。このような異なるゼロ交差温度TZC1,0、TZC2,0又は対応の熱膨張率の勾配ΔCE1,0、ΔCTE2,0は、ガラス製造中に各石英ガラスブランクで異なるTiOの割合を選択することにより達成することができ、熱膨張率の負勾配は、TiOの割合が12重量%を超える場合に通常は成立する。特に、負勾配を生じさせるために、導入部で引用した独国特許第21 40 931号明細書におけるような手順を採用し、例えば石英ガラスブランクの製造中に、約960℃の初期温度及び約3℃/時の冷却速度で約700℃まで熱処理を実行することが可能である。
【0055】
本例では、TZC1,0=40℃の値を第1材料バッチのゼロ交差温度TZC1,0として選択し、第1材料バッチから図2aからの光学素子22を製造した。この値は、投影レンズ20の光学素子21〜24の作動中に通常使用される使用温度よりもわずかに高い。本例では、第1材料バッチの熱膨張率の勾配ΔCTE1,0は、約+1.6ppb/Kである。図2aからの光学素子22を製造するために、石英ガラスブロックが前のステップでEUVミラー用の基板を製造するのに十分なほど大きな基板群又は体積要素群に分割されていなければ、十分に大きな部分体積を石英ガラスブロックから切り出す。
【0056】
切り出した石英ガラス体積は、最初に図2からの光学素子22の幾何学的形状及びサイズに適合させ、続いて加熱処理ステップを施し、このステップを、切り出した石英ガラス体積を少なくとも40時間保持する1000℃の保持温度から始めて、通常は500℃を超える温度で約0.1℃/時〜5℃/時の低冷却速度で行う。この場合、ゼロ交差温度は、第1材料バッチ全体の値TZC1,0=42℃から、図2aからの光学素子22の使用温度TA1に対応する所望値TZC1=33℃に低下する。同時に、熱膨張係数の勾配ΔCTE1,0が減少して、33℃の使用温度TA1における上記勾配が+1.0ppb/K未満となる。言うまでもなく、熱処理ステップの持続時間又は熱処理中の冷却速度及び初期温度は、所望のゼロ交差温度TZC1=TA1に対する最大限の近似又は勾配ΔCTE1,0の最小限の絶対値が達成されるよう適合させることができる。言うまでもなく、ゼロ交差温度を使用温度TA1に適合させるために複数の熱処理ステップが必要な可能性があり、熱膨張率の勾配は通常はわずかにしか変化しない。
【0057】
20℃のゼロ交差温度TZC2,0(図3bを参照)を有する第2バッチの石英ガラス材料を図2bからの光学素子24の使用温度TA2=22℃における所望の特性に適合させるために、類似の手順を採用することができる。すなわち、熱膨張率の(負)勾配の絶対値を減らすために、最終的な幾何学的形状に適合させた石英ガラス体積に熱処理プロセスを施すことができる。熱処理は、例として、約750℃〜約850℃の初期温度で開始して、約1℃/時〜約2℃/時の冷却温度で実行することができる。熱処理中の正確なパラメータは、熱処理後の残留(負)勾配が図3bに示すように1.0ppb/K未満の絶対値を有するよう選択すべきである。基板37のゼロ交差温度は、この熱処理プロセス中に(変化するとしても)わずかにしか変化しない。図3bに示す例の場合、これにより、第2材料バッチのゼロ交差温度TZC2,0に、図2bからの光学素子24の使用温度TA2=22℃まで約2℃のわずかなシフトが生じる。他の製造パラメータの選択に応じて、このシフトをわずかに異ならせることもでき、又はシフトが全く生じなくてもよい。
【0058】
2つの材料バッチ又は基板群の一方の選択は、投影レンズ20における各光学素子21〜24の位置に応じて通常は行われ、これは正確には以下の理由からである。概して入射放射線の放射パワーの約60%〜70%しか各光学素子21〜24により反射されず、したがって各衝突放射パワーが第1光学素子21から第4光学素子24までに減少するので、位置が光学素子21〜24の使用温度に影響を及ぼす。
【0059】
特に、投影レンズ20の収差の補正又は低減のためには、光学素子21〜24の少なくとも2つの各ゼロ交差温度における熱膨張率の勾配が逆符号であれば有利であることが分かった。言うまでもなく、3つ以上の材料バッチ群も、投影レンズ20の光学素子の出発材料としての役割を果たすことができる。しかしながら、ゼロ交差温度は特定の限度内で調整可能であるので、概して2つの材料バッチしか必要なく、これらを使用して熱膨張率の異符号の勾配の所望の特性を実現することができる。言うまでもなく、上述の方法は、EUV放射線で作動するよう設計された他の光学機構、例えばEUVマスク計測システム(mask metrology system)で実行することもできる。2つの材料バッチのゼロ交差温度において熱膨張率の異符号の勾配を生じさせる代替形態として、両方の材料バッチが各ゼロ交差温度において、熱膨張率の負勾配を有することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィ用の光学機構であって、
反射面(31a)及び第1ゼロ交差温度(TZC1)でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有するTiOドープ石英ガラスから構成された第1基板(32)を備える第1光学素子(22)と、
反射面(36a)及び前記第1ゼロ交差温度とは異なる第2ゼロ交差温度(TZC2)でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有するTiOドープ石英ガラスから構成された第2基板(37)を備える第2光学素子(24)と
を備え、前記第1ゼロ交差温度(TZC1)における前記第1基板(32)の熱膨張率の勾配(ΔCTE)及び/又は前記第2ゼロ交差温度(TZC2)における前記第2基板(37)の熱膨張率の勾配(ΔCTE)は、負の符号を有する光学機構。
【請求項2】
請求項1に記載の光学機構において、前記第1ゼロ交差温度(TZC1)における前記第1基板(32)の熱膨張率の前記勾配(ΔCTE)及び前記第2ゼロ交差温度(TZC2)における前記第2基板(37)の熱膨張率の前記勾配(ΔCTE)は、符号に関して異なる光学機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学機構において、前記第1ゼロ交差温度(TZC1)における前記第1基板(32)の熱膨張率の前記勾配(ΔCTE)の絶対値及び/又は前記第2ゼロ交差温度(TZC2)における前記第2基板(37)の熱膨張率の前記勾配(ΔCTE)の絶対値は、1.0ppb/K未満である光学機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学機構において、前記第1ゼロ交差温度(TZC1)と前記第2ゼロ交差温度(TZC2)との間の差の絶対値(|TZC2−TZC1|)は、6Kよりも大きい光学機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学機構において、前記第1基板(32)のTiO含有量は、前記第2基板(37)のTiO含有量とは異なる光学機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学機構において、前記第1基板(32)のTiO含有量は、8%〜12%である光学機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学機構において、前記第2基板(37)のTiO含有量は、12%を超える光学機構。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学機構において、前記第1ゼロ交差温度(TZC1)及び前記第2ゼロ交差温度(TZC2)は、0℃〜100℃の温度範囲内にある光学機構。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学機構において、反射コーティング(31、36)が前記第1基板(32)及び/又は前記第2基板(37)に塗布され、前記反射面(31a、36a)は前記反射コーティングに形成される光学機構。
【請求項10】
請求項9に記載の光学機構において、少なくとも1つの機能層(34)が、前記第1基板(32)及び前記第2基板(37)と前記反射コーティング(31、36)との間に嵌められる光学機構。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学機構において、
少なくとも1つの基板(32)を加熱する少なくとも1つの加熱デバイス(33)と、
前記少なくとも1つの基板(32)の温度を使用温度(TA1)に設定するために前記少なくとも1つの加熱デバイス(33)を駆動する制御デバイス(30)と
をさらに備える光学機構。
【請求項12】
請求項11に記載の光学機構において、前記基板(32)の前記ゼロ交差温度(TZC1)からの前記使用温度(TA1)のずれは、3K未満である光学機構。
【請求項13】
EUV放射線を反射する表面(31a、36a)及びTiOドープ石英ガラスから構成された基板(32、37)を有する少なくとも2つの光学素子(22、24)を備える、EUVリソグラフィ用の光学機構を構成する方法であって、
TiOドープ石英ガラスから構成された第1基板群又は第2基板群から前記光学素子(22、24)用の基板(32、37)を選択するステップを含み、前記第1群は、第1ゼロ交差温度(TZC1,0)でゼロ交差を有する温度依存性の熱膨張率を有し、前記第2群は、前記第1ゼロ交差温度とは異なる第2ゼロ交差温度(TZC2,0)でゼロ交差を有する熱膨張率を有し、前記第1ゼロ交差温度(TZC1,0)における前記第1基板群(32)の熱膨張率の勾配(ΔCTE1,0)及び/又は前記第2ゼロ交差温度(TZC2,0)における前記第2基板群(37)の熱膨張率の勾配(ΔCTE2,0)は、負の符号を有する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記選択するステップは、前記光学機構における各光学素子(22、24)の位置に応じて行われる方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法において、前記第1ゼロ交差温度(TZC1,0)における前記第1基板群(32)の熱膨張率の前記勾配(ΔCTE1,0)は、前記第2ゼロ交差温度(TZC2,0)における前記第2基板群(37)の熱膨張率の前記勾配(ΔCTE2,0)とは符号が異なる方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法において、前記第1基板材料群(32)のTiO含有量は、前記第2基板材料群(37)のTiO含有量とは異なる方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法において、
前記ゼロ交差温度(TZC1,0、TZC2,0)を前記光学素子(22、24)にとって所望のゼロ交差温度(TZC1、TZC2)に変えるため及び/又は前記光学素子(22、24)の前記所望のゼロ交差温度(TZC1、TZC2)での熱膨張率の前記勾配(ΔCTE1,0、ΔCTE2,0)を1.0ppb/K未満の絶対値に減らすために、選択基板(32、37)の熱処理を行うステップをさらに含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記熱処理を行うステップは、前記選択基板(32)を最低900℃の保持温度に加熱するステップと、
前記基板(32)を前記保持温度で少なくとも40時間保持するステップと、
前記基板(32)を0.1K/時〜2.0K/時の冷却速度で前記保持温度〜500℃の温度範囲内で冷却するステップと
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate


【公開番号】特開2013−95659(P2013−95659A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−136845(P2012−136845)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】