説明

EVOH樹脂組成物の製造方法

【課題】エチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物を2種類以上配合した共重合体加溶媒分解物組成物を提供する。
【解決手段】エチレン−ビニルエステル共重合(A’)及び、一般式(2)に示される化合物に由来する構造単位を含有する変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)を同一系内で加溶媒分解し製造する。


[一般式(2)において、R7とR8は結合して5員環を形成してもよい]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン−ビニルエステル共重合体の加溶媒分解物(以下EVOH樹脂と称す)及び変性EVOH樹脂を含むEVOH樹脂組成物の製造方法に関するものであり、詳しくはEVOH樹脂(A)および後述する一般式(1)で表される構造単位を有する変性EVOH樹脂(B)を含有するEVOH樹脂組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、EVOH樹脂のガスバリア性や成形性を向上させるため、例えば、エチレン含有量やケン化度等の異なる2種以上のEVOH樹脂を混合したEVOH樹脂組成物を成形物に用いる技術が検討されている。
【0003】
上記のような異なるEVOH樹脂を混合したEVOH樹脂組成物は、主として溶融成形に用いられるため、熱によって均一に溶融し、かつ成形後に均一に固化することが好ましい。しかしながら、異なるEVOH樹脂を混合する技術では、エチレン含量やケン化度、変性基の種類や変性量などが互いに異なるEVOH樹脂を混合するが、当然ながら各々EVOH樹脂の有する融点が異なるため、得られたEVOH樹脂組成物には融解ピークが複数存在する。
ゆえに、得られたEVOH樹脂組成物を溶融混合および/または溶融成形する場合には、融解性が均一でないために組成成分の相溶性が不十分となり、また固化するスピードが異なるために相分離を起こす傾向があり、該EVOH樹脂組成物から得られた成形物には厚みムラやすじが発生するという問題があった。
【0004】
これに対し、下記一般式(1)で示される構造単位を有する変性EVOH樹脂と、通常のEVOH樹脂を混合したEVOH樹脂組成物を製造し、かかる樹脂組成物層とポリオレフィン樹脂層とを積層することにより、高速製膜を行った場合でもネックインが小さく、延伸性に優れ、延伸後のガスバリア性が安定した積層体を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【化1】


[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【0005】
しかしながら、このような変性基を有する変性EVOH樹脂と、通常のEVOH樹脂を有するEVOH樹脂組成物を製造するにあたり、あらかじめ各々のEVOH樹脂の融解ピーク差を小さくするようにエチレン含有量やケン化度や変性度を調節した変性EVOH樹脂と通常のEVOH樹脂をそれぞれ別に製造した後、混合する場合は、一つ一つの樹脂を個別に製造しなければならないため、生産性を損なう傾向がある。
また、各々の加溶媒分解前の樹脂同士を混合し、同時に加溶媒分解する場合には互いに融解ピークが近づき、かつ生産性が良好になるものの、融解ピーク差は未だ大きく、不十分であった。
【特許文献1】特開2006−124668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記一般式(1)で示される構造単位を含有する変性EVOH樹脂と、異なるEVOH樹脂とを含むEVOH樹脂組成物において、簡便な工程にて、融解ピーク差が特に小さくなり、生産性、成形性に優れたEVOH樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、前記エチレン−ビニルエステル共重合体(以下、EVA樹脂と称する)(A’)のエチレン含有量を、変性EVA樹脂(B’)のエチレン含有量よりも高くした場合、EVOH樹脂組成物の融解ピーク差が小さくなることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、エチレン−ビニルエステル共重合体(A’)及び、一般式(2)に示される化合物に由来する構造単位を含有する変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)を同一系内で加溶媒分解して、エチレン−ビニルエステル共重合体の加溶媒分解物(A)及び一般式(1)で示される構造単位を有する変性エチレン−ビニルエステル共重合体の加溶媒分解物(B)を含有するエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物を製造する工程を含み、
該加溶媒分解する工程における、エチレン−ビニルエステル共重合体(A’)及び変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)のエチレン含有量の比(B’)/(A’)が0.3以上1未満であることを特徴とする、エチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法である。
【化2】


[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表す。]
【化3】



[一般式(2)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、炭化水素基またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)を表し、R7とR8は結合して5員環を形成してもよく、該5員環は環状カーボネート構造または環状アセタール構造である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、EVA樹脂(A')、および一般式(2)に示される化合物に由来する構造単位を含有する変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解し、かつ前記EVA樹脂(A')のエチレン含有量と、前記変性EVA樹脂(B')のエチレン含有量の比(B’)/(A’)が0.3以上1未満として製造されるEVOH樹脂組成物の融解ピーク差が特に小さくなり、生産性および成形性が向上するという予想外の効果が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、EVA樹脂(A’)及び、一般式(2)に示される化合物に由来する構造単位を含有する変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解する工程、及び、EVOH樹脂(A)及び一般式(1)で示される構造単位を有する変性EVOH樹脂(B)を含有するEVOH樹脂組成物を製造する工程を含み、該加溶媒分解する工程におけるEVA樹脂(A’)及び変性EVA樹脂(B’)のエチレン含有量の比(B’)/(A’)が0.3以上1未満である、EVOH樹脂組成物の製造方法に関する。
【化4】


[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表す。]
【化5】



[一般式(2)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、炭化水素基またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)を表し、R7とR8は結合して5員環を形成してもよく、該5員環は環状カーボネート構造または環状アセタール構造である。]
なお、下記一般式(3)は、一般式(2)において、R7及びR8が結合して5員環を形成し、該5員環が環状カーボネート構造である化合物の例であり、下記一般式(4)は、一般式(2)において、R7及びR8が結合して5員環を形成し、該5員環が環状アセタール構造である化合物の例である。
【化6】


【化7】


[一般式(4)において、R10およびR11は水素または炭化水素基を示す。]
【0011】
<EVA樹脂(A’)、およびEVOH樹脂(A)の説明>
本発明における、EVOH樹脂(A)は、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させたEVA樹脂(A’)を得た後に、該EVA樹脂(A’)を加溶媒分解させることにより得られる樹脂であり、一般的に食品包装用のフィルムなどとして用いられる公知のものが挙げられる。EVA樹脂(A’)は公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造される。
【0012】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。経済的な点から、特に好ましくは酢酸ビニルが用いられる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0013】
EVA樹脂(A’)、およびEVOH樹脂(A)におけるエチレン含有量は、加溶媒分解の前後に変化するものではなく、同じ値となる。ISO14663に基づいて計測した値で、20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、特に好ましくは29〜44モル%、殊に好ましくは38〜44モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、成形性が不足する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が不足する傾向がある。
【0014】
また、該EVA樹脂(A’)の粘度は、B型粘度計(ローターNo.2、回転数10rpm、ペースト温度65℃)にて測定した値で、通常101〜105mPa・s、好ましくは102〜104mPa・s、特に好ましくは102〜103mPa・sである。かかる値が大きすぎる場合又は小さすぎる場合、相溶性不良となる傾向がある。
EVA樹脂(A’)の粘度は、樹脂分により調節することができ、樹脂分が多いと粘度が大きくなる傾向があり、少ないと粘度が小さくなる傾向がある。
【0015】
<変性EVA樹脂(B’)、および変性EVOH樹脂(B)の説明>
本発明で用いる、一般式(1)で示される構造単位を有する変性EVOH樹脂(B)自体は公知のものである。
【化8】


[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【0016】
かかる樹脂は通常、エチレンとビニルエステル系モノマーと一般式(2)で示される化合物との共重合により得られた変性EVA樹脂(B’)を加溶媒分解することにより得られる樹脂である。
【化9】


[一般式(2)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、炭化水素基またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)を表し、R7とR8は結合して5員環を形成してもよく、該5員環は環状カーボネート構造または環状アセタール構造である。]
かかる一般式(2)で示される化合物は、エチレンおよびビニルエステル系モノマーとの共重合後、該共重合体を加溶媒分解した場合に、ビニルエステル系モノマー由来の構造単位が加溶媒分解される条件と同条件下で加溶媒分解され、上記一般式(1)で示される構造単位となるような化合物である。
【0017】
なお、上述したように、下記一般式(3)は、一般式(2)において、R7及びR8が結合して5員環を形成し、該5員環が環状カーボネート構造である化合物の例であり、下記一般式(4)は、一般式(2)において、R7及びR8が結合して5員環を形成し、該5員環が環状アセタール構造である化合物の例である。
【化10】



【化11】


[一般式(4)において、R10およびR11は水素または炭化水素基を示す。]
【0018】
一般式(2)で示される化合物の中でも、工業生産性の点から、下記一般式(2a)に示すような化合物を用いることが好ましい。
【化12】



[一般式(2a)において、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)である]
【0019】
但し、上記一般式(2a)において、R1〜R6は前記一般式(1)と同様である。R7及びR8について好ましくはそれぞれR9−CO−である。R9は通常炭素数1〜20のアルキル基であり、工業生産性から好ましくは1〜10のアルキル基であり、特に好ましくは1〜5のアルキル基であり、殊に好ましくはメチル基である。
すなわち、一般式(2a)に示す化合物として具体的には、通常3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテンが挙げられ、好ましくは3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3−アセトキシ−4−オール−1−ブテン、4−アセトキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−2−メチル−1−ブテンであり、特に好ましくは3,4−ジアセトキシ−1−ブテンである。
【0020】
前記ビニルエステル系モノマーとしては、前記EVA樹脂(A’)およびEVOH樹脂(A)に用いられるものと同様のものが用いられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。経済的な点から、特に好ましくは酢酸ビニルが用いられる。かかるビニルエステル系モノマーは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0021】
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
1〜R3は、それぞれ独立して、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は、それぞれ独立して、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素原子であるものが最も好ましい。
【0022】
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、結晶性が維持されガスバリア性が優れる点から、好ましくは単結合である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2m−、−(CH2O)mCH2−等のエーテル結合部位を含む構造、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−等のカルボニル基を含む構造、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−等の硫黄原子を含む構造、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造、−HPO4−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−等のチタン原子を含む構造、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。)。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R1〜R6がすべて水素原子であり、Xが単結合であるものである。すなわち、下記一般式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
【化13】

【0024】
次に、EVOH樹脂(B)の加溶媒分解前のポリマーであるEVA樹脂(B’)が有する構造単位について説明する。
[i]一般式(2)で表わされる化合物に由来する構造単位
下記一般式(2−1)で示される構造単位は、一般式(2)で表わされる化合物に由来する構造単位である。
【化14】


[一般式(2−1)において、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、炭化水素基またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)を表し、R7とR8は結合して5員環を形成してもよく、該5員環は環状カーボネート構造または環状アセタール構造である。]
但し、上記一般式(3−1)において、R1〜R6は前記一般式(1)と同様である。
【0025】
[ii]一般式(3)で表わされる化合物に由来する構造単位
下記一般式(3−1)で示される構造単位は、一般式(3)で表わされる化合物に由来する構造単位である。なお、一般式(3)は、一般式(2)において、R7及びR8が結合して5員環を形成し、該5員環が環状カーボネート構造である化合物の例である。
【化15】


但し、上記一般式(3−1)において、R1〜R6は前記一般式(1)と同様である。
【0026】
[iii]一般式(4)で表わされる化合物に由来する構造単位
下記一般式(4−1)で示される構造単位は、一般式(4)で表わされる化合物に由来する構造単位である。なお、一般式(4)は、一般式(2)において、R7及びR8が結合して5員環を形成し、該5員環が環状アセタール構造である化合物の例である。
【化16】


[一般式(4−1)において、R10およびR11は水素または炭化水素基を示す。]
但し、上記一般式(4−1)において、R1〜R6は前記一般式(1)と同様である。R10およびR11は通常炭素数1〜20のアルキル基であり、生産性から好ましくは1〜10のアルキル基であり、特に好ましくは1〜5のアルキル基であり、殊に好ましくはメチル基である。
【0027】
さらに、例えば最も好ましい構造である構造単位(1a)を含有する変性EVOH樹脂を例とすると、その製造方法としては、[1]コモノマーとして、一般式(2a)に示すような、3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンと共重合して共重合体を得、次いでこれを加溶媒分解する方法、あるいは、[2]コモノマーとして、一般式(3)に示すような、ビニルエチレンカーボネート等を用いてこれらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンと共重合して共重合体を得、次いでこれを加溶媒分解、脱炭酸する方法、あるいは、[3]コモノマーとして、一般式(4)に示すような、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンと共重合して共重合体を得、次いで加溶媒分解、脱アセタール化する方法等が挙げられる。
【0028】
上記のなかでも、重合が良好に進行し、1,2−ジオール構造単位を高分子主鎖中に均一に導入しやすいという製造時の利点や、未反応モノマーが少なく製品中の不純物を減らすことができることから、上記[1]の製造方法を採用することが好ましく、特に好ましくは、共重合反応性に優れる点で3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体を加溶媒分解する方法である。さらには3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。また、上記[1]の製造方法で例示したモノマーの混合物を用いてもよい。
【0029】
なお、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701、であり、これは後述のビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
【0030】
また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、ビニルエチレンカーボネートの場合の、Cx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランの場合のCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合の阻害要因となって重合度が上がりにくくなったり、重合速度低下の原因となることがないことを示すものである。
【0031】
また、かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合体を加溶媒分解する際に発生する副生物が主構造単位である酢酸ビニル構造単位に由来するものと同一であり、その後処理に特別な装置や工程を設ける必要がない点も、工業的に大きな利点である。また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
【0032】
なお、3,4−ジオール−1−ブテンは、イーストマンケミカル社から、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。また、1,4―ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを利用することも出来る。
【0033】
上記[2]の製造方法により製造された1,2−ジオール構造単位を有する変性EVOH樹脂は、ケン化度が低い場合や、脱炭酸が不充分な場合には側鎖にカーボネート環が残存し、溶融成形時に脱炭酸され、樹脂が発泡する原因となる傾向がある。また、[3]の製造方法により製造された1,2−ジオール構造単位を有する変性EVOH樹脂も、[2]の製造方法により製造された1,2−ジオール構造単位を有する変性EVOH樹脂と同様に、側鎖に残存したモノマー由来の官能基(アセタール環)が溶融成形時に脱離して、臭気が発生する傾向があるため、これに留意して使用する必要がある。
【0034】
変性EVOH樹脂(B)における上記一般式(1)で示される構造単位の含有量は、1H−NMRを用いて特開2004−359965号公報に記載の方法にて測定した値で、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.5〜15モル%、特に好ましくは1〜8モル%である。かかる含有量が少なすぎる場合、成形性不良となる傾向があり、多すぎる場合は成形物のガスバリア性が低下する傾向がある。
また、変性EVA樹脂(B’)において、上記一般式(2)で示される化合物の共重合割合は、変性EVOH樹脂(B)における上記一般式(1)で示される構造単位の含有量に対応するため、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.5〜15モル%、特に好ましくは1〜8モル%である。かかる含有量は、モノマーの仕込み量によって調節可能である。
【0035】
変性EVA樹脂(B’)、および変性EVOH樹脂(B)におけるエチレン含有量は、加溶媒分解前後に変化するものではなく、同じ値となる。ISO14663に基づいて計測した値で、20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、特に好ましくは29〜44モル%、殊に好ましくは29〜35モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、EVOH樹脂の成形性が不足する傾向があり、逆に高すぎる場合は、EVOH樹脂のガスバリア性が不足する傾向がある。
【0036】
また、該変性EVA樹脂(B’)の粘度は、B型粘度計(ローターNo.2、回転数10rpm、ペースト温度65℃)にて測定した値で、通常101〜105mPa・s、好ましくは102〜104mPa・s、特に好ましくは102〜103mPa・sである。かかる値が大きすぎたり又は小さすぎた場合、相溶性不良となる傾向がある。
変性EVA樹脂(B’)の粘度は、樹脂分により調節することができ、樹脂分が多いと粘度が大きくなる傾向があり、少ないと粘度が小さくなる傾向がある。
【0037】
また、EVOH樹脂(A)および変性EVOH樹脂(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を例えば10モル%以下にて有していてもよい。(すなわちEVA樹脂(A')および変性EVA樹脂(B’)も同様に本発明の効果を阻害しない範囲で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を例えば10モル%以下にて有していてもよい。)
かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0038】
又、本発明の製造方法によって得られるEVOH樹脂組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の後変性反応をしても差し支えない。
【0039】
EVA樹脂(A')と変性EVA樹脂(B')の配合割合は目的及び用途により任意に設定できる。例えば、配合割合(A’)/(B’)は、通常99/1〜1/99(重量比)、好ましくは90/10〜5/95(重量比)、特に好ましくは80/20〜5/95(重量比)である。
【0040】
本発明においては、EVOH樹脂(A)(すなわちEVA樹脂(A'))のエチレン含有量のほうが、変性EVOH樹脂(B)(すなわち変性EVA樹脂(B’))のエチレン含有量よりも多いことが好ましく、このときEVOH樹脂組成物が持つ特性を充分に発揮することができる。
【0041】
さらに、本発明ではEVA樹脂(A’)と変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解することが特徴であるが、これらを同一系内で加溶媒分解せず、個別に加溶媒分解してEVOH樹脂(A)と変性EVOH樹脂(B)を製造した場合、その融解ピーク値は、通常、EVOH樹脂(A)の方が大きくなる。
しかし、本発明のように、EVA樹脂(A’)と変性EVA樹脂(B’)の混合物を同一系内で加溶媒分解した場合、生成するEVOH樹脂組成物に含まれるEVOH樹脂(A)は、EVA樹脂(A’)単独(変性EVA樹脂(B’)非存在下)で加溶媒分解した場合、すなわち通常法で製造したものに比べて、融解ピーク値が下がる傾向がある。
【0042】
また逆に、EVA樹脂(A’)と変性EVA樹脂(B’)を、互いに同一系内で加溶媒分解した場合、生成するEVOH樹脂組成物に含まれる変性EVOH樹脂(B)は、変性EVA樹脂(B’)単独(EVA樹脂(A’)の非存在下)で加溶媒分解した場合、すなわち通常法で製造したものに比べて、融解ピーク値が上がる傾向がある。
【0043】
従って、本発明においては、EVOH樹脂(A)(すなわちEVA樹脂(A'))のエチレン含有量のほうが、変性EVOH樹脂(B)(すなわち変性EVA樹脂(B’))のエチレン含有量よりも大きい場合、EVA樹脂(A’)と変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解すると、融解ピーク値の調節に適切に作用し、自動的に融解ピーク差が特に小さいEVOH樹脂組成物が得られる。
従って、本発明の製造方法は製造工程が簡略化され、自動的に融解ピーク差が特に小さいEVOH樹脂組成物が得られる。
【0044】
本発明では、EVA樹脂(A’)のエチレン含有量を、変性EVA樹脂(B’)のエチレン含有量よりも高くする点が最大の特徴である。かかるエチレン含有量の比(B’)/(A’)が0.3以上1未満であり、好ましくは0.5以上1未満、より好ましくは0.6〜0.99、特に好ましくは0.8〜0.97である。
また、エチレン含有量の差(A’)−(B’)は、通常0.1〜40モル%、好ましくは0.1〜30モル%、より好ましくは1〜10モル%、特に好ましくは2〜5モル%である。
【0045】
また、EVA樹脂(A’)と変性EVA樹脂(B’)のB型粘度計(ローターNo.2、回転数10rpm、ペースト温度65℃)にて測定した粘度の差は、相溶性の点から、通常0〜105mPa・sであり、好ましくは0〜104mPa・sであり、特に好ましくは0〜2000mPa・sである。粘度差が小さいほど混合効率が良好になり、相溶性が向上する傾向がある。
【0046】
<製造方法>
本発明のEVOH樹脂組成物の製造方法は、EVA樹脂(A’)および変性EVA樹脂(B’)の混合物を同一系内で加溶媒分解することに特徴がある。
【0047】
かかる加溶媒分解にあたっては、EVA樹脂(A’)および変性EVA樹脂(B’)がアルコール又は水/アルコール混合溶媒に溶解された状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。
アルコールとしては通常、炭素数1〜4の脂肪族アルコール等が挙げられるが、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノールであり、経済的な点から特に好ましくはメタノールである。
水/アルコール混合溶媒の場合、その重量比は通常10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、特に好ましくは40/60〜60/40である。
【0048】
EVA樹脂(A’)溶液および変性EVA樹脂(B’)溶液の濃度は系の粘度により適宜選択される。通常は10〜60重量%(樹脂分)であり、好ましくは25〜50重量%(樹脂分)である。粘度は、樹脂分により調節することができ、樹脂分が多いと粘度が大きくなる傾向があり、少ないと粘度が小さくなる傾向がある。
【0049】
EVA樹脂(A’)および変性EVA樹脂(B’)の混合溶液を得るには、(1)両樹脂をドライブレンドして共通の溶媒に溶解する手法、(2)各樹脂を溶媒に溶解し、それぞれの樹脂溶液を混合する手法、(3)一方の樹脂を溶媒に溶解し、かかる溶液に他方の樹脂を添加し、溶解して混合する手法、(4)両樹脂を溶融状態にて混合した後、溶媒に溶解する手法が挙げられる。これらの中でも生産性の点から(2)の手法が好ましく、特には、各々の樹脂の重合後の溶液をそのまま用いることが好ましい。
【0050】
加溶媒分解に使用される触媒としては、アルカリ触媒、酸触媒等が挙げられる。例えば具体的に、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、メタスルフォン酸等の有機酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等が挙げられる。取り扱い性や工業生産性の点から好ましくはアルカリ触媒であり、特に好ましくはアルカリ金属水酸化物である。即ち、本発明の加溶媒分解は塩基性条件下で行われること、言い換えれば、ケン化であることが好ましい。
かかる加溶媒分解触媒の使用量については、加溶媒分解の方法、目標とする加溶媒分解度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、酢酸ビニル量に対して通常0.001〜100ミリモル当量が適当である。
ここで、加溶媒分解度とは、JIS K6726に基づいて計測される値である。特に、加溶媒分解がケン化である場合、ケン化度と言う。
【0051】
かかる加溶媒分解の方法に関しては目標とする加溶媒分解度等に応じて、バッチ加溶媒分解、ベルト上の連続加溶媒分解、塔式の連続加溶媒分解の何れも可能で、加溶媒分解時のアルカリ触媒量が低減できることや加溶媒分解反応が高効率で進み易い等の理由より、好ましくは、一定加圧下での塔式加溶媒分解が用いられる。また、加溶媒分解時の圧力は目的とするエチレン含有量により一概に言えないが、通常2〜7kg/cm2の範囲から選択され、このときの温度は通常60〜140℃、であり、通常0.5〜6.0時間反応させる。
【0052】
上記のように加溶媒分解されたEVOH樹脂組成物のメタノール溶液は、公知の方法、例えば遠心分離器や、凝固液中へ押出す方法によって固液分離する。乾燥方法としても、公知の方法を採用することができ、機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられ、流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うことも可能である。
【0053】
該乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては通常空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、特に限定されず40〜150℃が、生産性とEVOH樹脂組成物の熱劣化防止の点で好ましい。該乾燥処理の時間としては、EVOH樹脂組成物の含水量やその処理量にもよるが、通常は15分〜72時間程度が、生産性と熱劣化防止の点で好ましい。
【0054】
上記の条件で乾燥処理されるのであるが、該乾燥処理後の樹脂組成物の含水率は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0055】
本発明の製造方法によって得られたEVOH樹脂組成物の平均加溶媒分解度は、JIS K6726に基づいて計測した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかる加溶媒分解度が低すぎる場合にはガスバリア性が低下する傾向がある。
【0056】
また、本発明の製造方法によって得られたEVOH樹脂組成物のMFRは、210℃、2160g荷重にて計測した値で、通常1〜120g/10分、好ましくは1〜45g/10分、特に好ましくは3〜25g/10分である。
【0057】
本発明の製造方法によって得られたEVOH樹脂組成物中のEVOH樹脂(A)と変性EVOH樹脂(B)の割合は、前記したEVA樹脂(A')と変性EVA樹脂(B')の割合に対応する。例えば、配合割合(A)/(B)及び配合割合(A’)/(B’)は、通常99/1〜1/99(重量比)、好ましくは90/10〜5/95(重量比)、特に好ましくは80/20〜5/95(重量比)である。
【0058】
本発明の製造方法によって得られた樹脂組成物の融解ピーク値は、示差走査熱量計(DSC)で昇温速度5℃/minにて融解メインピークを測定したセカンドランを計測することにより得られる。
本発明の製造方法によって得られた樹脂組成物の融解ピーク差は、通常0〜20℃、好ましくは0〜10℃、好ましくは0(即ち、ただ1つの融解ピークを有する)である。かかる値が大きすぎる場合、EVOH樹脂(A)および変性EVOH樹脂(B)の相溶性が不良となる傾向がある。
【0059】
また、本発明の製造方法によって得られるEVOH樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲(例えばEVOH樹脂分に対して10重量%以下)において公知の配合剤を配合することもできる。かかる配合剤としては、例えば、酢酸、リン酸、ホウ酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩である。飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなどの可塑剤、光安定剤、酸化防止剤、乾燥剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、不溶性無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、充填材(例えば無機フィラー等)、酸素吸収剤、EVOH以外の他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリアミド等)等が挙げられる。
【0060】
本発明においては、EVOH樹脂(A)と、上記一般式(1)で示される構造単位を有する変性EVOH樹脂(B)とを、それぞれ加溶媒分解前の樹脂である前記EVA樹脂(A’)および前記変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解し、かつ、EVA樹脂(A’)のエチレン含有量が変性EVA樹脂(B’)のエチレン含有量よりも高い場合に、融解ピーク差が特に小さいEVOH樹脂組成物が得られ、生産性および成形性が向上するという予想外の効果が得られる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、重量基準を意味する。
【0062】
各EVA樹脂のエチレン含有量はISO14663に準拠して測定した。
各EVA溶液の粘度は、B型粘度計(ローターNo.2、回転数10rpm、ペースト温度65℃)にて測定した。
各EVOH樹脂の平均加溶媒分解度は、JIS K6726に準拠して測定した。
変性EVA樹脂(B’)の変性構造単位の含有量は、1H−NMRを用いて特開2004−359965号公報に記載の方法にて測定した。
融解ピークは、示差走査熱量計(DSC)で昇温速度5℃/minにて融解ピークを測定したセカンドランを計測した。
得られたEVOH樹脂組成物のMFRは、210℃、2160g荷重にて計測した。
【0063】
実施例1
EVA樹脂(A’)としてエチレン含有量44モル%、樹脂分40%メタノール溶液における粘度が2800mPa・sであるEVA樹脂(A1’)を用い、変性EVA樹脂(B’)として3,4−ジ−アセトキシ−1−ブテン由来の構造単位の含有量3モル%、エチレン含有量35モル%、樹脂分40%メタノール溶液における粘度が500mPa・sである変性EVA樹脂(B1’)を用いた。
【0064】
EVA樹脂(A1’)のメタノール溶液(樹脂分40重量%)10重量部と、変性EVA樹脂(B1’)のメタノール溶液(樹脂分41重量%)90重量部を混合した(加溶媒分解後の樹脂分の重量比(A)/(B)が10/90となる)。次いで、該混合樹脂溶液にNaOH水溶液(NaOH3.5重量%)を8重量部配合し、100℃で3時間加溶媒分解してEVOH樹脂(A)および変性EVOH樹脂(B)のEVOH樹脂組成物溶液を得た。得られたEVOH樹脂組成物溶液を凝固液に浸漬して析出させ、118℃にて18時間乾燥して、固体EVOH樹脂組成物を得た。
【0065】
得られたEVOH樹脂組成物の平均ケン化度は99.8モル%、MFRは12g/10分であり、かかるEVOH樹脂組成物の融解ピークを計測したところ、151℃と160℃にピークが確認された。
【0066】
実施例2
EVA樹脂(A’)としてエチレン含有量38モル%、樹脂分49%メタノール溶液における粘度が3500mPa・sであるEVA樹脂(A2’)を用い、変性EVA樹脂(B’)として3,4−ジ−アセトキシ−1−ブテン由来の構造単位の含有量が3モル%、エチレン含有量35モル%、樹脂分49%メタノール溶液における粘度が2000mPa・sである変性EVA樹脂(B2’)を用いた。
【0067】
EVA樹脂(A2’)のメタノール溶液(樹脂分49重量%)47重量部と、変性EVA樹脂(B2’)のメタノール溶液(樹脂分45重量%)53重量部を混合した(加溶媒分解後の樹脂分の重量比(A)/(B)が50/50となる)。次いで、該混合樹脂溶液にNaOH水溶液(NaOH3.5重量%)を6重量部配合し、107℃で3時間加溶媒分解してEVOH樹脂(A)および変性EVOH樹脂(B)のEVOH樹脂組成物の溶液を得た。得られたEVOH樹脂組成物の溶液を凝固液中にストランド状に押出して析出させ、かかるストランドをカットし、118℃にて16時間乾燥して、固体のEVOH樹脂組成物を得た。
【0068】
得られたEVOH樹脂組成物の平均ケン化度は99.8モル%、MFRは11.4g/10分であり、かかるEVOH樹脂組成物の融解ピークを計測したところ、166℃にピークが確認された。
【0069】
実施例3
EVA樹脂(A2’)のメタノール溶液(樹脂分44重量%)10重量部と、変性EVA樹脂(B2’)のメタノール溶液(樹脂分45重量%)90重量部を混合した(加溶媒分解後の樹脂分の重量比(A)/(B)が10/90となる)以外は実施例2と同様にして固体のEVOH樹脂組成物を得た。
得られたEVOH樹脂組成物の平均ケン化度は99.8モル%、MFRは10.7g/10分であり、かかるEVOH樹脂組成物の融解ピークを計測したところ、155℃にピークが確認された。
【0070】
実施例4
EVA樹脂(A2’)のメタノール溶液(樹脂分49重量%)69重量部と、変性EVA樹脂(B2’)のメタノール溶液(樹脂分48重量%)31重量部を混合した(加溶媒分解後の樹脂分の重量比(A)/(B)が70/30となる)以外は実施例2と同様にして固体のEVOH樹脂組成物を得た。
得られたEVOH樹脂組成物の平均ケン化度は99.8モル%、MFRは11.4g/10分であり、かかるEVOH樹脂組成物の融解ピークを計測したところ、169℃にピークが確認された。
【0071】
比較例1
EVOH樹脂(A)として、実施例2で用いたEVA樹脂(A2’)のメタノール溶液(樹脂分49重量%)47重量部にNaOH水溶液(NaOH3.5重量%)を6重量部配合し、107℃で3時間加溶媒分解してEVOH樹脂(A2)溶液を得た。かかるEVOH樹脂(A2)溶液を凝固液に浸漬して析出させ、118℃にて16時間乾燥して、固体EVOH樹脂(A2)を得た。
また、実施例2で用いた変性EVA樹脂(B2’)のメタノール溶液(樹脂分45重量%)53重量部にNaOH水溶液(NaOH3.5重量%)を7重量部配合し、100℃で3時間加溶媒分解して変性EVOH樹脂(B2)溶液を得た。かかるEVOH樹脂(B2)溶液を凝固液に浸漬して析出させ、118℃にて16時間乾燥して、固体EVOH樹脂(B2)を得た。
【0072】
上記EVOH樹脂(A2)を50重量部、および変性EVOH樹脂(B2)を50重量部(重量比にて(A)/(B)=50/50)にてドライブレンドし、押出機で210℃で溶融混錬し、かかるEVOH樹脂組成物をストランド状に押出してカッターで切断し、EVOH樹脂組成物ペレットを得た。
得られたEVOH樹脂組成物の平均ケン化度は99.8モル%、MFRは11.5g/10分であり、かかるEVOH樹脂組成物の融解ピークを計測したところ、152℃と173℃にピークが確認された。
【0073】
比較例2
EVA樹脂(A’)として、エチレン含有量32モル%、樹脂分36%メタノール溶液における粘度が6300mPa・sであるEVA樹脂(A3’)を用い、変性EVA樹脂(B’)として、3,4−ジ−アセトキシ−1−ブテン由来の構造単位の含有量が3モル%、エチレン含有量35モル%、樹脂分40%メタノール溶液における粘度が500mPa・sである変性EVA樹脂(B1’)を用いた以外は実施例3と同様に行なって、固体のEVOH樹脂組成物を得た。
得られたEVOH樹脂組成物の平均ケン化度は99.8モル%であり、MFRは20.9g/10分であり、かかるEVOH樹脂組成物の融解ピークを計測したところ、139℃と168℃にピークが確認された。
【0074】
実施例および比較例における条件および結果を表1に示す。

【0075】
なお、単独で加溶媒分解する方法にて製造したエチレン含有量32モル%、ケン化度99.8モル%のEVOH樹脂の融点ピークは183℃であり、エチレン含有量38モル%、ケン化度99.8モル%のEVOH樹脂の融点ピークは173℃であり、エチレン含有量44モル%、ケン化度99.8モル%のEVOH樹脂の融点ピークは164℃であった。また、構造単位(1a)含有量3モル%、エチレン含有量35モル%、ケン化度99.8モル%のEVOH樹脂の融点ピークは150℃であった。
【0076】
EVOH樹脂(A)と、一般式(1)で示される構造単位を有する変性EVOH樹脂(B)とを、それぞれ別々に製造し、各々の樹脂をドライブレンドした後に溶融混錬する方法によってEVOH樹脂組成物を得た比較例1では、152℃(変性EVOH樹脂(B)に相当)と173℃(EVOH樹脂(A)に相当)の融解ピークが確認され、その差は21℃であった。
【0077】
これに対してEVA樹脂(A’)および変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解し、かつEVA樹脂(A’)のエチレン含有量が変性EVA樹脂(B’)のエチレン含有量よりも高いという本発明の製造方法によって製造した実施例1では、融解ピーク差の絶対値が9℃であるEVOH樹脂組成物が得られ、実施例2〜4では融解ピーク差の絶対値が0(即ち、ただ1つの融解ピークを有する)であるEVOH樹脂組成物が得られた。
【0078】
本発明の製造方法によって得られたEVOH樹脂組成物は、それぞれをドライブレンドする方法(比較例1)により得られたEVOH樹脂組成物、また、EVA樹脂(A’)のエチレン含有量が変性EVA樹脂(B’)のエチレン含有量よりも低い条件でEVA樹脂(A’)および変性EVA樹脂(B’)を同一系内で加溶媒分解する方法(比較例2)により得られたEVOH樹脂組成物よりも融解ピーク差が小さくなる。このことから、本発明の製造方法によって得られたEVOH樹脂組成物は、溶融成形時に融解性が良好となり相溶性が良くなり、溶融状態から固化する場合の固まり方が均一となるため、相分離しにくいEVOH樹脂組成物であることがわかる。
【0079】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2007年12月27日出願の日本特許出願(特願2007-335892)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、一般式(1)で示される構造単位を含有する変性EVOH樹脂と、異なるEVOH樹脂とを含むEVOH樹脂組成物において、簡便な工程にて、融解ピーク差の小さなEVOH樹脂組成物を得ることができるもので、生産性、成形性に優れたEVOH樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は実施例1におけるEVOH樹脂組成物の融解ピークを示す。
【図2】図2は実施例2におけるEVOH樹脂組成物の融解ピークを示す。
【図3】図3は実施例3におけるEVOH樹脂組成物の融解ピークを示す。
【図4】図4は実施例4におけるEVOH樹脂組成物の融解ピークを示す。
【図5】図5は比較例2におけるEVOH樹脂組成物の融解ピークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルエステル共重合体(A’)及び、一般式(2)に示される化合物に由来する構造単位を含有する変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)を同一系内で加溶媒分解して、
エチレン−ビニルエステル共重合体の加溶媒分解物(A)及び一般式(1)で示される構造単位を有する変性エチレン−ビニルエステル共重合体の加溶媒分解物(B)を含有するエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物を製造する工程を含み、
該加溶媒分解する工程における、エチレン−ビニルエステル共重合体(A’)及び変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)のエチレン含有量の比(B’)/(A’)が0.3以上1未満である、エチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【化1】


[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表す。]
【化2】



[一般式(2)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、炭化水素基またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)を表し、R7とR8は結合して5員環を形成してもよく、該5員環は環状カーボネート構造または環状アセタール構造である。]
【請求項2】
エチレン−ビニルエステル共重合体(A')、および変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)の配合割合(A’)/(B’)が、重量比で99/1〜1/99である請求項1記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項3】
変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)が、一般式(2)に示される化合物に由来する構造単位を0.1〜30モル%含有する請求項1または2記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物製造方法。
【請求項4】
エチレン−ビニルエステル共重合体(A')、および変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)のエチレン含有量の差(A’)−(B’)が、0.1〜40モル%である請求項1〜3いずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項5】
エチレン−ビニルエステル共重合体(A’)及び変性エチレン−ビニルエステル共重合体(B’)のエチレン含有量が20〜60モル%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項6】
エチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の融解ピーク差が、0〜20℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項7】
エチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の平均加溶媒分解度が、90〜100モル%である請求項1〜6のいずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項8】
エチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物のMFRが、210℃、2160g荷重にて計測した値で、1〜120g/10分である請求項1〜7のいずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項9】
一般式(1)に示される構造単位および一般式(2)に示される化合物において、R1〜R3がそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子を表し、R4〜R6がそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子を表す請求項1〜8いずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項10】
一般式(1)に示される構造単位および一般式(2)に示される化合物において、Xが単結合または炭素数1〜6の炭化水素鎖である請求項1〜9いずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項11】
一般式(2)に示される化合物が、下記一般式(2a)で表わされる化合物である請求項1〜8いずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【化3】



[一般式(2a)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、Xは単結合または結合鎖を表し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を表し、R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)を表す。]
【請求項12】
一般式(1)に示される構造単位が、下記一般式(1a)で表わされる構造単位であり、一般式(2)に示される化合物が、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンである請求項1〜11いずれかに記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【化4】


【請求項13】
加溶媒分解が、塩基性条件下で行われる請求項1〜12のいずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。
【請求項14】
加溶媒分解が、アルコール又は水/アルコール混合溶媒中で行われる請求項1〜13のいずれか1項に記載のエチレン−ビニルエステル共重合体加溶媒分解物組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−173903(P2009−173903A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328929(P2008−328929)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】