説明

ErbB療法に耐性である癌を治療するための方法

本明細書では、抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性であり、活性化MET遺伝子突然変異またはMET遺伝子増幅に関連する癌を治療するための方法を提供する。この方法では、抗ErbB治療剤と抗MET治療剤の組合せを対象に投与する。癌細胞におけるErbB媒介シグナル伝達またはPI3キナーゼ媒介シグナル伝達を低減するための方法も提供する。ある特定の実施形態では、この癌は、例えば、肺癌、脳の癌、乳癌、頭頸部癌、大腸癌、卵巣癌、胃癌、または膵癌とすることができる。例示的な実施形態では、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2007年4月13日に出願された、米国仮出願第60/923,384号(上記出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
政府支援
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた、認可番号RO1CA114465およびK08CA120060−01下の政府支援で行われた。政府は、本発明において、ある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
肺癌は、癌による死の主要原因であり、世界中のすべての死の3分の1を占める。非小細胞肺癌(NSCLC)は、すべての組織型(histotype)の肺癌の約75〜85%を占め、小細胞肺癌(SCLC)が残りを占める。大規模な前臨床的および臨床的研究にもかかわらず、NSCLCを有する患者についての全体的な予後は、依然として乏しいままであり、5年生存率はわずかに14%である。
【0004】
近年、細胞形質転換の基礎をなす分子機構および癌の発症に関する知見は、大いに拡大している。肺癌を含めた様々な癌に関与する、ErbB受容体などのチロシンキナーゼ受容体を標的にする治療剤が発見された。特に、上皮成長因子受容体(EGFR)、ErbB受容体を標的にする薬剤が開発された。EGFR−チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)ZD1839(Iressa(商標))およびエルロチニブ(Tarceva(商標))を含めた、小分子EGFR標的療法は、良好な最初の臨床的結果を示したが、腫瘍細胞は、時間ととともに耐性を発生させることが多く、治療に対して非応答性となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のTKI療法に対して応答性でない、NSCLCなどの癌に罹患している患者を治療するための新規の手法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性である癌に罹患している対象を治療するための方法であって、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0007】
ある特定の実施形態では、癌は、例えば、肺癌、脳の癌(brain cancer)、乳癌、頭頸部癌、大腸癌、卵巣癌、胃癌、または膵癌とすることができる。例示的な実施形態では、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0008】
ある特定の実施形態では、対象は、ErbB活性化突然変異または遺伝子増幅(例えば、EGFR、ErbB2、ErbB3、またはErbB4活性化突然変異または遺伝子増幅)を有する場合がある。ある特定の実施形態では、対象は、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する場合がある。ある特定の実施形態では、対象は、ErbB活性化突然変異または遺伝子増幅と、MET活性化突然変異または遺伝子増幅の両方を有する場合がある。
【0009】
ある特定の実施形態では、癌は、以下の抗ErbB治療剤の1つまたは複数を用いた治療に耐性である場合がある:抗EGFR治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤、または抗ErbB4治療剤。癌が耐性である抗ErbB治療剤は、例えば、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤である場合がある。ある特定の実施形態では、癌は、抗ErbB抗体、ErbB遺伝子を標的にしたsiRNA、またはErbBキナーゼ阻害剤を用いた治療に耐性となり得る。例示的な実施形態では、癌は、EGFRキナーゼ阻害剤に用いた治療に耐性である。ある特定の実施形態では、癌は、以下の抗EGFR治療剤の1つまたは複数を用いた治療に耐性である:ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412、EXEL−7647、HKI−272、セツキシマブ、パンチヌムマブ(pantinumumab)、またはトラスツズマブ。
【0010】
ある特定の実施形態では、以下の抗ErbB治療剤の1つまたは複数を、対象に投与する:抗EGFR治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤、または抗ErbB4治療剤。対象に投与するのに適した抗ErbB治療剤には、例えば、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤が含まれる。例示的な実施形態では、以下の抗EGFR治療剤の1つまたは複数を対象に投与する:ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412、EXEL−7647、HKI−272、セツキシマブ、パンチヌムマブ、またはトラスツズマブ。
【0011】
ある特定の実施形態では、以下の抗MET治療剤の1つまたは複数を対象に投与する:小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤。例示的な実施形態では、以下の抗MET治療剤の1つまたは複数を対象に投与する:PHA−665,752、SU11274、SU5416、PF−02341066、XL−880、MGCD265、XL184、ARQ197、MP−470、SGX−523、JNJ38877605、AMG102、またはOA−5D5。
【0012】
ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を対象に同時に投与する。抗ErbB治療剤および抗MET治療剤は、同時製剤(coformulation)として対象に投与することができる。
【0013】
ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性である癌に罹患している患者を治療するための方法は、少なくとも1つの追加の治療を前記対象に施すステップをさらに含むことができる。例示的な治療には、例えば、追加の治療剤の投与、照射、光ダイナミック療法、レーザー療法、または手術が含まれる。
【0014】
ある特定の実施形態では、治療される対象は、哺乳動物、例えば、ヒトなどとすることができる。
【0015】
別の態様では、本発明は、ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、この対象は、抗ErbB治療剤を用いた治療に対する耐性を発生しており、この対象がMET活性および/またはレベルの上昇(例えば、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅)を有するかどうかを判定するステップと、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する対象に、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を投与するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象をモニターすることによって、この患者が、METレベルおよび/または活性の上昇(例えば、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅)を発生させるかどうかを判定するステップと、(ii)この対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を発生させている場合、この対象の治療レジメンを修正することによって、抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップとを含む方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象をモニターすることによって、この対象が阻害剤に対する耐性を発生させるかどうかを判定するステップと、(ii)この対象を検査することによって、この対象が、METレベルおよび/または活性の上昇(MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅など)を有するかどうかを判定するステップと、(iii)この対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する場合、この対象の治療レジメンを修正することによって、抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、METレベルおよび/または活性が上昇している患者は、HGFレベルおよび/または活性も上昇している。
【0018】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤を評価するための方法であって、(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象の集団をモニターすることによって、治療剤に対する耐性を発生させる対象を特定するステップと、(ii)耐性の対象を検査することによって、この対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有するかどうかを判定するステップと、(iii)この対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する場合、この対象の治療レジメンを修正することによって、抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップとを含む方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中のErbBリン酸化を低減するための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、ErbBはErbB−3とすることができ、抗ErbB治療剤は、抗ErbB−3治療剤とすることができる。
【0020】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中のPI3K媒介シグナル伝達を低減するための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中のErbB媒介シグナル伝達を低減するための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞の、抗ErbB治療剤に対する感受性を回復させるための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞の成長または増殖を低減するための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞のアポトーシスを増大させるための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞の、抗ErbB治療剤に対する耐性を低減するための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中の、獲得された抗ErbB治療剤耐性を治療するための方法であって、この細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0027】
ある特定の実施形態では、癌細胞は哺乳動物癌細胞、例えば、ヒト癌細胞などである。癌細胞は、細胞株または一次組織試料由来であってもよい。ある特定の実施形態では、癌細胞は、肺癌細胞、脳の癌細胞、乳癌細胞、頭頸部癌細胞、大腸癌細胞、卵巣癌細胞、胃癌細胞、または膵癌細胞とすることができる。ある特定の実施形態では、癌細胞は、任意のErbB誘導性癌とすることができる。ある特定の実施形態では、癌細胞の成長および/または生存は、ErbBによって促進される。ある特定の実施形態では、癌細胞は、ErbB活性化突然変異、例えば、EGFR活性化突然変異などを含むことができる。ある特定の実施形態では、癌細胞は、ErbB遺伝子増幅、例えば、EGFR遺伝子増幅などを含むことができる。ある特定の実施形態では、ErbB遺伝子増幅および/またはMET増幅は、少なくとも2倍である。
【0028】
ある特定の実施形態では、癌細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性の増大に関連するErbB遺伝子突然変異、例えば、EGFRのT790M突然変異などを含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤は、抗EGFR治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤、または抗ErbB4治療剤からなる群から選択される。抗ErbB治療剤は、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤とすることができる。ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤は、抗体、アンチセンス分子、または小分子キナーゼ阻害剤である。例示的な実施形態では、抗ErbB治療剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412、EXEL−7647、HKI−272、セツキシマブ、パンチヌムマブ、またはトラスツズマブからなる群から選択されるEGFRキナーゼ阻害剤である。例示的な実施形態では、抗ErbBタンパク質治療剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、およびトラスツズマブからなる群から選択される抗EGFR抗体である。例示的な実施形態では、抗ErbB核酸治療剤はsiRNA分子である。
【0030】
ある特定の実施形態では、抗MET治療剤は、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤である。例示的な実施形態では、抗MET治療剤は、METに対する抗体、または肝細胞成長因子(HGF)に対する抗体である。例示的な実施形態では、抗MET治療剤は、PHA−665,752、SU11274、SU5416、PF−02341066、XL−880、MGCD265、XL184、ARQ197、MP−470、SGX−523、JNJ38877605、AMG102、またはOA−5D5である。例示的な実施形態では、抗MET治療剤はsiRNA分子である。
【0031】
ある特定の実施形態では、細胞を抗MET治療剤およびErbB治療剤と接触させるステップは、少なくとも1つの追加の治療様式を含む治療レジメンの一部であり、例えば、少なくとも1つの追加の治療様式は、前記細胞を1つまたは複数の追加の治療剤と接触させること、照射、光ダイナミック療法、レーザー療法、および手術からなる群から選択される。
【0032】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤を用いて治療されており、前記抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した癌に罹患している対象を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を用いて治療するための候補として特定するための方法であって、前記対象由来の癌細胞中のMET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を検出するステップを含む方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、抗MET治療剤を特定するための方法であって、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得し、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞を、抗ErbB治療剤および試験化合物と接触させるステップと、抗ErbB治療剤のみと接触させた同じ細胞中の細胞の過程(cellular process)と比較した、ErbBリン酸化の減少、METリン酸化の減少、ErbB−MET会合(ErbB−MET association)の減少、EGFRリン酸化の減少、AKTリン酸化の減少、細胞成長の減少、細胞増殖の減少、およびアポトーシスの増大からなる群から選択される前記細胞の過程の変化を検出するステップとを含む方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤を用いて治療されており、前記抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得するリスクのある対象を特定するための方法であって、前記対象由来の癌細胞中のMET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅の存在を検出するステップを含み、前記MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅の存在が、前記耐性を獲得するリスクを示す方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した細胞を作製するための方法であって、抗ErbB治療剤に感受性である細胞を、少なくとも1つの抗ErbB治療剤と少なくとも4週間接触させるステップと、前記抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得する細胞を特定するステップとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、細胞は、前記抗ErbB治療剤に対する耐性を付与するErbB遺伝子中に突然変異を含まない。
【0036】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される方法によって作製される細胞を提供する。例えば、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した細胞を提供する。
【0037】
別の態様では、本願は、抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性である癌に罹患している対象を治療するための方法であって、この対象に、抗ErbB治療剤、およびMETのHGF媒介活性化を阻害する薬剤を投与するステップを含む方法を提供する。METのHGF媒介活性化を阻害する薬剤は、例えば、HGFがMETに結合するのを妨げる抗体、例えば、抗HGF抗体または抗MET抗体とすることができる。
【0038】
別の態様では、本開示は、EGFRのエクソン19中の欠失およびMET遺伝子増幅を含む細胞または細胞株を提供する。ある特定の実施形態では、細胞または細胞株は、哺乳動物細胞または細胞株、例えば、ヒト細胞または細胞株などである。ある特定の実施形態では、細胞または細胞株は、上皮細胞または細胞株である。ある特定の実施形態では、細胞または細胞株は、腺癌細胞または細胞株、例えば、肺腺癌細胞株などである。ある特定の実施形態では、エクソン19中の欠失は、ヒトEGFRの残基E746−A750の欠失である。ある特定の実施形態では、MET遺伝子は、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、または3〜10倍、3〜5倍、または5〜10倍増幅される。ある特定の実施形態では、MET遺伝子増幅を有していない細胞中のMETタンパク質発現のレベルと比較した場合、METタンパク質発現のレベルは、少なくとも2倍、少なくとも3倍、5倍、少なくとも10倍、または3〜10倍、3〜5倍、または5〜10倍上昇する。ある特定の実施形態では、細胞または細胞株は、EGFR遺伝子中にT790M突然変異を含まない。ある特定の実施形態では、細胞または細胞株は、少なくとも1つのTKI、例えば、EGFR阻害剤などに耐性である。ある特定の実施形態では、細胞または細胞株は、CL−387,785および/またはゲフィチニブに耐性である。
【0039】
本発明の前述のおよび他の特徴および利点が、以下の添付の図面と併せて以下の例示的な実施形態の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1−1】HCC827GR細胞はインビトロでゲフィチニブに耐性であり、MET増幅を含む。A.HCC827細胞株は、EGFR(E746〜A750欠失)変異を有しており、ゲフィチニブ感受性(IC50−4nM)であるが、ゲフィチニブの濃度を増加させながら増殖させることによってゲフィチニブ耐性となった。HCC827親細胞株ならびに2種のゲフィチニブ耐性クローンであるHCC827GR5およびHCC827GR6をともに、ゲフィチニブの濃度を増加させながらMTS生存アッセイに供した。B.ゲフィチニブ耐性HCC827GR5細胞は、ゲフィチニブ存在下でERBB3およびAktリン酸化を維持する。HCC827およびHCC827GR5細胞をゲフィチニブの量を増加させながら6時間曝露した。細胞を溶解し、規定の抗体でプローブした。HCC827GR5は、10μMのゲフィチニブが存在する場合でさえ、ERBB3およびAkt(および程度は小さいがEGFR)のリン酸化を維持する。C.HCC827GR5細胞は、ゲフィチニブ存在下で、ERBB3およびMETのリン酸化を維持する。未処理のおよび1μMのゲフィチニブで処理したHCC827およびHCC827GR5細胞の溶解産物を、42種の異なるホスホ受容体チロシンキナーゼ(RTK)に対する抗体を含有するホスホRTKアレイ(R&D systems)とハイブリダイズさせた。未処理のHCC827およびHCC827GR5細胞は大量のp−EGFR、p−ERBB2、p−ERBB3およびp−METを含有する。ゲフィチニブ処理後(右側パネル)、HCC827細胞ではほんの一部のp−EGFRが残存する。
【図1−2】HCC827GR細胞はインビトロでゲフィチニブに耐性であり、MET増幅を含む。D.HCC827GR細胞は、7番染色体に限局的な増幅を含有する。Human Mapping 250K Sty一塩基多型(SNP)アレイ(Affymetrix,Inc.)を使用してゲノムワイドなコピー数変化を生じさせ、前述のdChipプログラムを使用して解析した。GRクローンを親HCC827細胞株と比較する。右側の赤色の垂直線は親細胞株に対して設定される。見てわかるように、7番染色体長腕に限局的な増幅がある。E.HCC827GR細胞の増幅はMETを包含しているが、その既知のリガンドHGFまたはEGFRを包含していない。1Dのデータの拡大図。7番染色体の限局的な増幅は7g31.1〜7g33.3まで及び、METを含有するがHGFまたはEGFRを含有しない。
【図2−1】METおよびEGFRの同時阻害はHCC827GR細胞の成長を抑制し、ERBB3/PI3K/AKTシグナル伝達を下方制御する。A.HCC827GR5細胞を、ゲフィチニブもしくはPHA−665752単独で、または組み合わせて、濃度を増加させながら処理し、MTS生存アッセイ(方法)に供した。細胞は、ゲフィチニブおよびPHA−665752の組合せに曝露された場合にのみ顕著に成長を阻害された。B.ゲフィチニブ、PHA−665752のいずれかまたは両方の薬物を用いて処理されたHCC827ならびにHCC827GR6、GR7およびGR8細胞株のウェスタンブロット解析。細胞を1μMのゲフィチニブもしくは1μMのPHA−665752単独、または組合せの後に6時間処理した。細胞を溶解し、規定の抗体でプローブした。HCC827親細胞株の場合とは異なり、p−ERBB3およびp−Aktはゲフィチニブ存在下で維持される。親または耐性細胞株におけるMET単独阻害はp−ERBB3またはp−Aktに顕著な影響を及ぼさない。しかしながら、ゲフィチニブと組み合わせると、p−ERBB3、p−Aktおよびp−ERK1/2の顕著な阻害が起こる。C.ゲフィチニブおよびPHA−665752の組合せは、HCC827GR6、GR7およびGR8細胞におけるp85とErbB3の結合を妨げる。HCC827およびHCC827GR細胞を、1μMのゲフィチニブもしくは1μMのPHA−665752単独または組合せに6時間曝露させ、その後溶解した。溶解産物を抗p85抗体で免疫沈降し、この免疫沈降物を抗ホスホチロシン、抗ERBB−3、抗Gab1および抗p−85抗体を用いてプローブした。HCC827親細胞株において、ERBB3とp85の結合はゲフィチニブにより妨げられるが、HCC827GR細胞においてはゲフィチニブ存在下であってもこの相互作用は維持される。Gab1とp85の結合はHCC827GR細胞においてPHA−665752単独で妨害される一方、ゲフィチニブおよびPHA−665752の組合せのみがこれらの細胞株においてERBB3をp85から解離させる。
【図2−2】METおよびEGFRの同時阻害はHCC827GR細胞の成長を抑制し、ERBB3/PI3K/AKTシグナル伝達を下方制御する。D.対照shRNAまたはMETの異なる2つの領域に対するshRNAを含有するレンチウイルスコンストラクトをHCC827GR6細胞に感染させ(方法)、ゲフィチニブ存在下での成長をMTSアッセイにより検査した。METに対するshRNAを含有するHCC827GR6細胞はゲフィチニブ感受性を回復するが、対照shRNAに感染させたものは耐性のままである。E.ゲフィチニブは、MET shRNAを感染させたHCC827GR6細胞においてERBB3/PI3K/AKTシグナル伝達を下方制御する。対照shRNAまたはMETに対するshRNAを感染させたHCC827GR6細胞を1μMのゲフィチニブで6時間処理した。細胞を溶解し、規定の抗体でプローブした。対照shRNAを感染させたHCC827GR6細胞において、ゲフィチニブ処理はp−ERBB3またはp−AKTに影響を及ぼさない。対照的に、METの下方制御はHCC827GR6細胞においてゲフィチニブのp−ERBB3およびp−AKTを下方制御する能力を回復させる。
【図3−1】別のMET増幅細胞株においてMETはERBB3を活性化する。A.MET増幅細胞株はERBB3を利用してPI3KIAKTシグナル伝達を活性化する。MET増幅胃癌(SNU−638およびMKN−45)およびNSCLC(H1993)細胞、EGFR変異NSCLC(HCC827)およびERBB2増幅乳癌細胞(BT474)を、ゲフィチニブ(1μM)、PHA−665,752(1μM)、ラパチニブ(1μM)またはCL−387,785(1μM)で6時間処理した後、溶解した。溶解産物を抗p85抗体で免疫沈降し、この免疫沈降物を抗ホスホチロシン、抗ERBB−3および抗p−85抗体を用いてプローブした(*PTyrブロットに示す)。並行して、溶解産物をウェスタンブロット法により解析し、規定の抗体でプローブした。MET増幅細胞に見られるように、PHA−665,752のみがERBB3とp85の結合妨害ならびにERBB3およびAktのリン酸化の下方制御を引き起こした。対照として、EGFR変異HCC827細胞およびERBB2増幅BT474細胞はそれぞれ、EGFRおよびERBB2阻害剤の存在下においてp85とERBB3の結合の低下ならびにp−ERBB3およびp−AKTの下方制御を示す。PHA−665,752はこれらの細胞株のいずれにおいてもPI3シグナル伝達に影響を及ぼさない。
【図3−2】別のMET増幅細胞株においてMETはERBB3を活性化する。B.ERBB3ノックダウンはSNU−638細胞においてp−AKTの下方制御を引き起こす。スクランブル(SC)配列、ERBB3特異的配列、対照配列(CTRL)またはGFPを含有するレンチウイルスshRNAコンストラクトを、SNU638細胞に感染させた(方法)。感染から72時間後、細胞を溶解し、規定の抗体でプローブした。ERBB3特異的shRNAはp−AKTの下方制御を引き起こす。C.ERBB3shRNAはSNU−638細胞の成長を阻害する。SNU−638細胞の成長を、BのshRNAコンストラクトの感染から5日後、MTSアッセイにより検査した。成長はSCshRNAに標準化した。ERBB3shRNAの感染はSNU−638細胞の顕著な成長阻害を引き起こす。D.CHO細胞においてMETはERBB3を活性化する。CHO細胞を、GFP、ERBB3cDNA単独でまたMETcDNAと組み合わせてトランスフェクトした。細胞を、PHA−665,752(1PM)、ゲフィチニブ(3μM)、ラパチニブ(3μM)またはPP2(10μM)で6時間処理し、処理した細胞を溶解しp−ERBB3およびERBB3でプローブした。見てわかるように、ERBB3はMETの存在下でのみリン酸化され、このリン酸化はPHA−665,752により阻害されるが、ゲフィチニブ、ラパチニブまたはPP2では阻害されない。
【図3−3】別のMET増幅細胞株においてMETはERBB3を活性化する。E.ERBB3はMETの存在下でp85と共沈し、またPHA−665,752により阻害される。PHA−665,752(1μM)、ゲフィチニブ(3μM)またはラパチニブ(3μM)の存在下または非存在下で、GFP、ERBB3またはMET、およびERBB3を用いてトランスフェクトしたCHO細胞のERBB3を用いて免疫沈降を行った。得られたタンパク質を溶解し、規定の抗体でプローブした。見てわかるように、p85はMETの存在下でのみERBB3と共沈し、これはPHA−665,752により阻害されるが、ゲフィチニブまたはラパチニブでは阻害されない。F.CHO細胞のMETおよびERBB3共沈物。PHA−665,752(1μM)処理有りまたは無しで、GFP、MET単独、ERBB3単独またはMETおよびERBB3を用いてトランスフェクトしたCHO細胞を用いて、METを使用した免疫沈降を行った。得られた溶解産物をERBB3またはMETでプローブした。見てわかるように、METのみが両方のコンストラクトでトランスフェクトしたCHO細胞のERBB3を免疫沈降させる。
【図4】異種移植片およびNSCLC患者の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析。HCC827細胞およびHCC875GR5細胞異種移植片のパラフィン切片に対して、およびゲフィチニブ処理前および後の患者8の腫瘍標本に対して(図5)二重色FISH(CEP7(緑色)、1D7S522(赤色))を行った。HCC827GR5細胞およびゲフィチニブ処理後腫瘍標本においてMET増幅が明らかである。これらの画像の倍率は1000×である。
【図5】ゲフィチニブまたはエルロチニブに対する耐性を獲得したNSCLC患者における遺伝子変化の要約。EGFR変異を有する18人のNSCLC患者を、処理前および後の標本の対(n=8)または処理後の標本のみ(n=10)を用いて、EGFR変異、EGFR T790Mの存在およびMET増幅に関して定量PCRまたはFISHによって解析した。結果の列は、QPCRによって解析された患者のMETコピー数(標準偏差)およびFISHによって解析された患者のCEP7と比較してさらに>3のMET遺伝子座のコピーを有する細胞のパーセントを示す。MET増幅を有する腫瘍標本に星印を付けている。18人の患者のうち4人(22%)に、処理後腫瘍標本における明らかなMET増幅が見られ、1/4においてこの増幅はEGFR T790M同時変異を有する標本に起こる。
【図6】HCC827耐性細胞および親細胞株について、定量PCRによって測定されたMETコピー数のプロットを示す。結果は、HCC827親細胞株と比較してすべてのHCC827耐性細胞株においてMETが5〜10倍増幅されたことを示す。
【図7】親および耐性細胞をゲフィチニブ単独で、PHA−665,752単独で、または両薬物を組み合わせて処理する。細胞抽出物を免疫ブロットし、規定の抗体でタンパク質を検出した。HCC827GR細胞は、ゲフィチニブおよびMETキナーゼ阻害剤PHA−665,752の両方で処理した後のみ、アポトーシスを受ける。対照的に、切断された(89kDA)PARPの出現による基準としてアポトーシスを誘導するにはゲフィチニブ単独で十分である。
【図8】HCC827親細胞株と比較してHCC827GRクローンにおいて特異に過剰発現される上位20個の遺伝子が示されている。遺伝子の染色体位置および発現レベルの(6個のHCC827GRクローンの)平均倍率変化もまた示されている。
【図9】FISHにより分析した患者標本の破壊。各サンプルにおいて100個の細胞を計数し、CEP7と比較してさらに2個または3個より多いMETコピーを含有する細胞のパーセントを示す。
【図10】HGFおよびゲフィチニブで処理した細胞の生存曲線。左上パネル、時間に対する生存細胞パーセント。右上パネルは、肝細胞成長因子(HGF)、ゲフィチニブ(THI)、またはHGFおよびゲフィチニブの両方を用いて処理した細胞においてAktおよびリン酸化Aktを検出するウェスタンブロットを図示する。下パネルはHGFおよびゲフィチニブで処理したディッシュにおける生存細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
1.定義
本明細書で使用する場合、以下の用語および語句は、以下に示す意味を有する。他で定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0042】
用語「など」は、語句「それだけに限らないが、〜など」を意味するのに本明細書で使用し、これと互換的に使用する。
【0043】
単数形の「a」、「an」および「the」は、脈絡により他に明確に指示されていない限り、複数の参照を含む。
【0044】
用語「癌」は、本明細書で使用する場合、前癌性細胞と癌性細胞、および組織、ならびにすべての転移に対して、悪性であっても良性であっても、すべての腫瘍性の細胞成長ならびに増殖を指す。2つの一般的な癌の種類、すなわち良性と悪性が存在する。ほとんどすべての良性癌は被包性であり、非侵襲性である。対照的に、悪性癌は、ほとんど決して被包性ではなく、浸潤性、破壊性の成長によって隣接組織を浸潤する。この浸潤性成長に続いて、癌細胞が、原発癌と不連続な部位に移植する場合がある。最初の位置から遊走し、重要な器官を刺激する(それによって、転移性の病変を生じる)癌は、患部器官の機能劣化を通じて、最終的に対象の死に至る場合がある。転移は、原発癌から体の他の部分への癌細胞の内転移から生じる、原発癌の位置と異なる癌細胞の領域である。
【0045】
用語「含む」および「含むこと」は、開放性の意味、すなわち追加の要素を含むことができる意味を含めて使用する。
【0046】
用語「含めて」は、「それだけに限らないが、〜を含めて」を意味するのに使用する。「含めて」および「それだけに限らないが、〜を含めて」は、互換的に使用する。
【0047】
「患者」または「対象」は、当技術分野で既知の哺乳動物を指す。例示的な哺乳動物には、ヒト、霊長類、家畜動物(ウシ、ブタなどを含めて)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。
【0048】
本明細書で使用する場合、当業者に十分に理解されているように、「治療」は、臨床的結果を含めた有益な、または所望の結果を得るための手段である。有益な、または所望の臨床的結果として、それだけに限らないが、検出可能であっても、検出不可能であっても、1つまたは複数の症状または状態の軽減または寛解、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化していない)、疾患の蔓延の予防、疾患の経過の遅延または緩徐化、疾患状態の寛解または緩和、緩解(部分的または全体的)を挙げることができる。「治療」は、治療を受けていない場合に予期される生存時間と比較して、生存期間を延長することも意味することができる。
【0049】
2.EGFR TKI耐性の癌を治療するための方法
本明細書では、抗ErbB治療剤と抗MET治療剤の組合せを使用して、癌を治療し、癌にかかっている対象の平均余命を延長し、または1つもしくは複数の、癌に関連する症状を低減するための方法を提供する。例えば、抗ErbBl治療剤(ErbB1/EGFR/HER1)、抗ErbB2治療剤(ErbB2/Neu/Her2)、抗ERB3治療剤(ErbB3/Her3)、または抗ErbB4治療剤(ErbB4/Her4)を含めた任意の抗ErbB治療剤を、本明細書に記載される方法に従って使用することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、ErbB活性および/または発現レベルの上昇(例えば、ErbB活性化突然変異、ErbB遺伝子増幅、またはリガンド媒介ErbB活性化)ならびにMET活性および/または発現レベルの上昇(例えば、MET活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化など)に関連する癌に罹患している対象を治療するのに使用することができる。HGF媒介MET活性化は、HGF活性および/または発現レベルのレベルの上昇(例えば、HGF活性化突然変異またはHGF遺伝子増幅など)に関連する場合がある。
【0050】
例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法は、以下の種類の癌の1つまたは複数を治療するのに使用することができる:卵巣、膵臓、肺、脳、乳房、頭頸部、大腸、胃、膵臓、直腸、腎臓、肝臓、膀胱、前立腺、胃、甲状腺、下垂体、副腎性またはグリア芽細胞腫の癌。例示的な実施形態では、この方法は、肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)などを治療するのに使用することができる。
【0051】
癌に関連する場合があるErbB活性化突然変異の例として、例えば、点突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異、反転またはErbBタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増大させる遺伝子増幅が挙げられる。例示的な生物活性として、例えば、チロシンキナーゼ活性(ErbBl、ErbB2、またはErbB4)、タンパク質間相互作用の形成(例えば、受容体ホモまたはヘテロ二量体化、リガンド結合、基質への結合など)、またはErbB媒介シグナル伝達が挙げられる。突然変異は、ErbB遺伝子の任意の部分、またはErbB遺伝子に関連する調節領域に位置することができる。例示的なErbB1(EGFR)突然変異には、例えば、エクソン18、19、20または21における突然変異、キナーゼドメインにおける突然変異、G719A、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、S768I、L858P、E746−R748 del、R748−P753 del、M766−A767 Al ins、S768−V769 SVA ins、P772−H773 NS ins、2402G>C、2482G>A、2486T>C、2491G>C、2494G>C、2510C>T、2539G>A、2549G>T、2563C>T、2819T>C、2482−2490 del、2486−2503 del、2544−2545 ins GCCATA、2554−2555 ins CCAGCGTGG、または2562−2563 ins AACTCCが含まれる。ErbB1活性化突然変異の他の例は、当技術分野で既知である(例えば、米国特許公開第2005/0272083を参照されたい)。例示的なErbB2突然変異には、例えば、キナーゼドメインにおける突然変異、またはエクソン20挿入、例えば、G776insV_G/CおよびA775insYVMAなどが含まれる。例示的なErbB3およびErbB4突然変異として、例えば、キナーゼドメインにおける突然変異を挙げることができる。ヒトErbBl、ヒトErbB2、ヒトErbB3およびヒトErbB4を含めた様々なErbB配列についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、公的に入手可能であり、例えば、ncbi.nlm.nih.gov.でのワールドワイドウェブ上で見出すことができる。例えば、ヒトErbBl(EGFR)についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、GenBankアクセション番号NM_005228およびNP_005219に見出すことができ、ヒトErbB2についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、GenBankアクセション番号NM_004448およびNP_004439に見出すことができ、ヒトErbB3についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、GenBankアクセション番号NM_001982およびNP_001973に見出すことができ、ヒトErbB4についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、GenBankアクセション番号NM_005235およびNP_005226に見出すことができる。受容体ホモ−およびヘテロ−二量体を含めたErbB受容体、受容体リガンド、自己リン酸化部位、およびErbB媒介シグナル伝達に関与するシグナル伝達分子についての情報は、当技術分野で既知である(例えば、Hynes and Lane、Nature Reviews Cancer 5巻:341〜354頁(2005年)を参照されたい)。
【0052】
他の実施形態では、ErbB活性化突然変異は、ErbB配列自体の外側の突然変異であってもよく、これは、ErbBタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増大させる。例えば、ErbBリガンドを過剰発現させる突然変異は、ErbB活性を増大させることができ、したがって、ErbB活性化突然変異とみなされるであろう。同様に、ErbB発現に関与する転写因子を過剰発現させる突然変異は、ErbBタンパク質を過剰発現させ、ErbB活性を増大させることができ、したがって、やはりErbB活性化突然変異とみなされるであろう。そのような例は単に例示的であり、様々な他のErbB活性化突然変異は、本明細書に提供される開示に基づいて当業者によって企図することができる。
【0053】
例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法は、抗ErbB1療法、抗ErbB2療法、抗ErbB3療法、および/または抗ErbB4療法を含めた、1つまたは複数の抗ErbB療法を用いた療法に耐性を獲得した癌を治療するのに使用することができる。様々な抗ErbB治療剤は、当技術分野で既知であり、例えば、小分子治療剤、タンパク質治療剤、または核酸治療剤を含む。さらに、抗ErbB治療剤の例は、本明細書で以下に提供される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、ErbBキナーゼ阻害剤を用いた治療に耐性である癌を治療するのに使用することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、ErbB1(EGFR)キナーゼ阻害剤を用いた療法に耐性である癌を治療するのに使用することができる。例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法は、ゲフィチニブ、エルロチニブまたは両方を用いた治療に耐性である癌を治療するのに使用することができる。
【0054】
様々な質的および/または定量的な方法を、対象が抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性を発生させている、または耐性を発生させることに感受性であるかを判定するのに使用することができる。例えば、抗ErbB治療剤を服用しながら最初の改善を示した対象は、抗ErbB治療剤の有効性が小さくなり、またはもはや有効でなくなった徴候を示す場合がある。耐性と関連して低下または減少し得る、有効な抗ErbB治療剤の例示的な指標には、例えば、患者の健康の改善、腫瘍サイズの減少または縮小、腫瘍成長の停止または減速、および/または体内の他の部位への癌細胞の転移のないことが含まれる。抗ErbB治療剤に対する耐性に関連し得る症状として、例えば、患者の健康の低下または横ばい状態、腫瘍サイズの増大、腫瘍成長低下の停止または減速、および/または1つの部位から他の器官、組織、または細胞への体内での癌性細胞の蔓延が挙げられる。
【0055】
癌に関連する様々な症状は、抗ErbB療法に対する耐性を発生させた、または耐性を発生させることに感受性である対象を特定するのに使用することもできる。特に、そのような症状は、抗ErbB療法を用いて治療されている対象において、発症、悪化、または再発する場合がある。例示的な症状として、例えば、食欲不振症、認知機能障害、抑うつ症、呼吸困難、疲労、ホルモン撹乱、好中球減少、疼痛、末梢ニューロパチー、および性機能障害が挙げられる。癌に関連する症状は、癌の種類によって変化し得る。例えば、子宮頚癌に関連する症状には、例えば、異常出血、異常な大量の腟分泌物、通常の月経周期に関係していない骨盤痛、排尿の間の膀胱痛または疼痛、および規則的な月経期の間、性交、圧注、もしくは骨盤内診察後の出血が含まれる。肺癌に関連する症状として、例えば、持続性の咳、喀血、息切れ、喘鳴胸痛、食欲低下、試みや疲労を伴わない体重低下を挙げることができる。肝癌に対する症状として、例えば、食欲ならびに体重低下、特に、背中および肩に及ぶ場合のある、腹部の右上部分の腹痛、吐き気ならびに嘔吐、一般的な脱力感ならびに疲労、肝肥大、腹部膨満(腹水)、ならびに皮膚および白眼の黄変(黄疸)を挙げることができる。腫瘍学における当業者は、特定の癌の種類に関連する症状を容易に特定することができる。
【0056】
対象が、抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させたかどうかを判定するための他の手段には、例えば、以下のうちの1つまたは複数を検査することが含まれる:ErbBl、ErbB2、ErbB3、もしくはErbB4リン酸化、ホスファチジルイノシトール3’−キナーゼ(PI3K)媒介シグナル伝達、ErbB1、ErbB2、ErbB3、もしくはErbB4媒介シグナル伝達、抗ErbB治療剤に対する癌細胞の感受性、癌細胞の成長もしくは増殖、または癌細胞アポトーシス。例えば、対照と比較した場合の、ErbBリン酸化、PI3K媒介シグナル伝達、および/またはErbB媒介シグナル伝達の増大は、対象が、抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させた、または耐性を発生させることに感受性であることを示している場合がある。ErbBリン酸化、PI3K媒介シグナル伝達およびErbB媒介シグナル伝達を判定するための方法は、既知の技法を使用して決定することができ、本明細書でさらに説明される。
【0057】
さらに、対照と比較した場合の、抗ErbB治療剤に対する癌細胞の感受性の減少、癌細胞の成長もしくは増殖の増大、および/または癌細胞アポトーシスの減少も、対象が、抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させた、または耐性を発生させることに感受性であることを示している場合がある。本明細書でさらに説明される標準的な方法を使用して、癌細胞の感受性、成長、増殖またはアポトーシスを判定することが可能である。例えば、癌細胞の感受性、成長、増殖またはアポトーシスは、インサイチュまたはインビトロで判定することができる。インサイチュでの測定では、例えば、癌の成長または転移を検査することによって、対象における抗ErbB療法の効果を観察することができる。あるいは、対象由来の癌細胞の試料を取り出し、インビトロで試験することによって、例えば、対象由来の細胞の感受性、成長、増殖またはアポトーシスを判定することができる。インビトロ分析では、抗ErbB治療剤を用いてインサイチュで処理し、次いでインビトロでの分析のために対象から取り出した細胞の分析を行うことができ、または癌細胞をインビトロで抗ErbB療法と接触させることができる。癌細胞の成長、増殖およびアポトーシスを検査するための適当な方法を、以下にさらに説明する。
【0058】
様々な実施形態では、抗ErbB治療剤に対する耐性の1つまたは複数の測定値を対照と比較することが望ましい場合がある。例示的な対照として、例えば、治療前の同じ対象、治療の間のより早い時点での同じ対象、または療法に耐性であってもなくてもよい、同じ抗ErbB療法を受けている異なる対象における、健康、腫瘍サイズ、腫瘍成長、または転移の存在または速度が挙げられる。他の種類の適当な対照として、例えば、抗ErbB治療剤を用いた治療の間のより早い時点での同じ対象、抗ErbB治療剤を用いた治療の前の同じ対象、抗ErbB治療剤を用いた治療に応答性である対照の対象、既知の抗ErbB応答性を有する細胞株、抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性である対照の対象に由来する細胞の抗ErbB治療剤に対する感受性、成長、増殖もしくはアポトーシス、または所与の測定についての基準値が挙げられる。そのような対照は、所与の対象について上述したものと類似したインサイチュ測定またはインビトロ測定とすることができる。様々な実施形態では、対照は、治療前の同じ対象からの同じ組織由来の細胞、治療の間のより早期の同じ対象からの同じ組織由来の細胞、同じ対象由来の非腫瘍形成性細胞、他の対象由来の非腫瘍形成性細胞、集団または複数の対象由来の非腫瘍形成性細胞、または確立された細胞株を利用することができる。対照は、ハードコピーまたはデータベースにおける基準値または表とすることもでき、これは、関連情報、例えば、性別、癌の状態、任意の転移の存在、投与される任意の種類の治療、ErbB遺伝子中の活性化突然変異または遺伝子増幅の存在または非存在、MET遺伝子中の活性化突然変異または遺伝子増幅の存在または非存在、ErbBリン酸化のレベル、PI3Kシグナル伝達のレベルなどを場合により伴った1つまたは複数の個体から導き出すことができる。
【0059】
さらに他の実施形態では、抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させた対照の識別では、例えば、MET遺伝子の活性化突然変異、またはMET遺伝子増幅から生じる、MET発現レベルの上昇、またはMET活性の上昇を検出することができる。MET遺伝子の活性化突然変異は、例えば、点突然変異、欠失突然変異、挿入突然変異、反転またはMETタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増大させる遺伝子増幅を含めた任意の種類の突然変異とすることができる。例示的な生物活性として、例えば、チロシンキナーゼ活性、タンパク質間相互作用の形成(例えば、受容体ホモまたはヘテロ二量体化、リガンド結合、基質への結合など)、およびMET媒介シグナル伝達が挙げられる。突然変異は、MET遺伝子の任意の部分、またはこの遺伝子に関連する調節領域に位置することができる。例示的な突然変異には、例えば、METのキナーゼドメインにおける突然変異、または野生型METと比べて、以下の位置の任意の1つまたは複数でのアミノ酸変化をもたらす突然変異が含まれる:N375、I638、V13、V923、I316およびE168。MET突然変異または遺伝子増幅を検出するための方法は、当技術分野で認められた技法を伴い、これらは、本明細書でさらに説明される。他の実施形態では、MET活性化突然変異は、MET配列自体の外側の突然変異であってもよく、これは、METタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増大させる。例えば、METリガンドを過剰発現させる突然変異は、MET活性を増大させることができ、したがって、MET活性化突然変異とみなされるであろう。同様に、MET発現に関与する転写因子を過剰発現させる突然変異は、METを過剰発現させ、MET活性を増大させることができ、したがって、やはりMET活性化突然変異とみなされるであろう。そのような例は単に例示的であり、様々な他のMET活性化突然変異は、本明細書に提供される開示に基づいて当業者によって企図することができる。
【0060】
ある特定の実施形態では、MET活性のレベルの上昇は、HGF媒介MET活性化と関連することができる。HGF媒介MET活性化は、例えば、HGF活性化突然変異またはHGF遺伝子増幅と関連することができる。HGF媒介MET活性化、HGF活性化突然変異またはHGF遺伝子増幅を検出するための方法は、当技術分野で認められた技法を伴い、これらは、本明細書でさらに説明される。
【0061】
例示的な実施形態では、上記方法の組合せは、抗ErbB療法に対する耐性を発生させた、または耐性を発生させることに感受性である対象を識別するのに使用することができる。例えば、抗ErbB治療剤を用いた治療の過程の間、対象の健康、腫瘍サイズ、および/または癌の転移を、医師によってモニターすることができる。対象が、抗ErbB療法の有効性が低下していることを示す症状を示し始めた場合、二次スクリーニングを使用することによって、抗ErbB療法に耐性となってきている対象を識別することができる。例えば、対象をスクリーニングすることによって、ErbBリン酸化、PI3K媒介シグナル伝達、ErbB媒介シグナル伝達、抗ErbB治療剤に対する癌細胞の感受性、癌細胞の成長もしくは増殖、癌細胞アポトーシス、および/またはMET活性もしくは発現のレベルの上昇、例えば、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、もしくはHGF媒介MET活性化などの存在を検査することができる。例示的な実施形態では、抗ErbB療法を受けている対象は、対象の健康、腫瘍サイズ、および/または癌の転移に基づいて、耐性の徴候について治療過程の間モニターされる。次いで抗ErbB療法に耐性であるリスクの疑いのある対象は、試験されることによって、その対象がMET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化を有するかどうかを識別される。他の実施形態では、対象の健康、腫瘍サイズ、および/または癌の転移に関わらず、MET遺伝子の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化の存在について、抗ErbB療法を用いた治療過程の間、対象をモニターすることができる。さらに他の実施形態では、抗ErbB療法を用いた治療を受けている対象を、治療の間モニターすることによって、抗ErbB治療剤に対する癌細胞の感受性、癌細胞の成長もしくは増殖、および/または癌細胞アポトーシスを判定することができる。次いで抗ErbB治療剤に耐性であるリスクの疑いのある対象は、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化の存在について試験することができる。上述した組合せは単に例示的であり、すべての他の可能な組合せも本明細書で企図されており、本開示に基づけば当業者に明白となるであろう。
【0062】
様々な実施形態では、抗ErbB治療剤に対する耐性についてモニターされている対象は、抗ErbB治療剤を用いた治療の過程の間、1つまたは複数の時点で評価することができる。例示的な実施形態では、対象は、治療過程の間、規則的な間隔でモニターすることができる。例えば、対象は、それぞれ医師に診てもらう間、それぞれの抗ErbB治療剤の投薬などを施すとともに、少なくとも1日1回、1日おきに1回、1週間に1回、1週間おきに1回、1カ月に1回モニターすることができる。モニタリングは、対象による自己評価、医師による評価、実験室試験に基づく評価、およびこれらの様々な組合せを伴うことができる。
【0063】
抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させ、またはそのような耐性を発生させることに感受性となり、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅またはHGF媒介MET活性化を有する対象が特定された時点で、抗ErbB療法と抗MET療法の組合せがその患者に投与される。例示的な抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を本明細書でさらに説明する。例示的な実施形態では、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤は、以下の1つまたは複数からそれぞれ個々に選択される:小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤。例示的な実施形態では、抗ErbB治療剤は、抗EGFR治療剤、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412、EXEL−7647、HKI−272、セツキシマブ、パンチヌムマブ、もしくはトラスツズマブ、またはこれらの組合せなどであり、抗MET治療剤は、PHA−665,752、SU11274、SU5416、PF−02341066、XL−880、MGCD265、XL184、ARQ197、MP−470、SGX−523、JNJ38877605、AMG102、もしくはOA−5D5、またはこれらの組合せである。
【0064】
ある特定の実施形態では、抗MET治療剤との組合せの一部として投与される抗ErbB治療剤は、対象が耐性を発生させたのと同じ抗ErbB治療剤である。例えば、対象が、エルロチニブ(抗ErbB1治療剤)を用いて治療されており、次いでこの治療剤に対する耐性を発生させた場合、この対象は、将来、エルロチニブと、例えば、PHA−665752(抗MET治療剤)の組合せを用いて治療することができる。あるいは、抗ErbB治療剤は、対象が耐性を発生させた治療剤と異なっていてもよい。例えば、対象が、エルロチニブを用いて治療されており、次いでこの治療剤に対する耐性を発生させた場合、この対象は、将来、ゲフィチニブ(別の抗ErbB1治療剤)と、例えば、PHA−665752を用いて治療することができる。これらの組合せは単に例示的であり、多くの他の組合せは本明細書で企図されており、本開示に基づけば当業者に明白となるであろう。
【0065】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法では、抗ErbB治療剤と抗MET治療剤の組合せを投与する。抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を含む併用療法は、(1)少なくとも1つの抗ErbB治療剤および少なくとも1つの抗MET治療剤の同時製剤を含む医薬組成物、ならびに(2)抗ErbB治療剤および抗MET治療剤が同じ組成物中で製剤化されていない(しかし、同じキットまたはパッケージ、例えばブリスター包装または他の多容器(multi−chamber)パッケージなど;使用者によって分離することができる、接続された、別々に密閉された容器(例えば、フォイルポーチ(foil pouch));または治療剤が別々の容器中にあるキット内に存在することができる)、1つまたは複数の抗ErbB治療剤と、1つまたは複数の抗MET治療剤の同時投与を指すことができる。別々の製剤を使用する場合、治療剤は、同じ時間(同時に)、断続的に、または交互に投与することができ、様々な実施形態では、抗ErbB治療剤は、抗MET治療剤の前に、もしくは抗MET治療剤に続いて、または前述の様々な組合せで投与することができる。
【0066】
様々な実施形態では、本明細書に提供される方法では、例えば、ErbB遺伝子、MET遺伝子、および/またはHGF遺伝子の活性化突然変異または遺伝子増幅を識別するために、対象由来の生体試料の分析を行う。例えば、対象から採取した体液試料、細胞試料、または組織試料を含めた、任意の適当な対象由来の生体試料を、本方法に従って使用することができる。適当な体液として、それだけに限らないが、胸膜液試料、肺または気管支の洗浄液試料、滑液試料、腹膜液試料、骨髄穿刺液試料、リンパ液、脳脊髄液、腹水試料、羊膜液試料、痰試料、膀胱洗浄液、精液、尿、唾液、涙、血液、ならびにその成分血清および血漿などが挙げられる。例示的な実施形態では、生体試料は、対象における1つまたは複数の部位に由来する癌細胞を含む試料である。例えば、腫瘍生検または切除から得た生体試料を使用することができる。ある特定の実施形態では、対象内の1つを超える部位に由来する腫瘍試料を試験することが望ましい場合がある。対象が1つを超える部位で腫瘍を有する場合、それぞれの腫瘍部位で、ErbB遺伝子、MET遺伝子、および/またはHGF遺伝子の活性化突然変異または遺伝子増幅について試験することによって、腫瘍が、同じまたは異なる遺伝子修飾に関連するのかを判定することが望ましい場合がある。
【0067】
ある特定の実施形態では、抗ErbB/抗MET併用療法は、他の治療または治療剤、例えば、抗原、アジュバント、免疫調節剤、もしくは抗体を含む受動免疫療法などの他の免疫療法などとともに使用することができる。抗ErbB/抗MET併用療法は、非薬物治療、例えば、手術、放射線療法、または化学療法などとともに投与することもできる。他の療法は、抗ErbB/抗MET併用療法を用いた治療の前、同時、または後に投与することができる。抗ErbB/抗MET併用療法を、他の治療の前または後に投与することができるように、異なる治療の投与の間に、数時間、数日、および場合によって数週間の遅延が存在することもある。
【0068】
一実施形態では、抗ErbB/抗MET併用療法は、別の抗癌療法、特に、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤の投与を含まない別の抗癌療法とともに(すなわち、前、間、または後)に対象に投与される。例えば、抗ErbB/抗MET併用療法は、例えば以下のものなどの腫瘍学の当業者に既知の化学療法薬の任意の1つまたは複数と一緒に投与することができる(参考文献:Cancer, Principles & Practice of Oncology、DeVita, V. T.、Hellman, S.、Rosenberg, S. A.、6版、Lippincott−Raven、Philadelphia、2001年):アバレリクス、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アンチド、アリミデクス、アシミシン、アスパラギナーゼ、AZD2171(Recentin(商標))、Bacillus Calmette−Guerin/BCG(TheraCys(商標)、TICE(商標))、ベバシズマブ(Avastin(商標))、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ(Velcade(商標))、ブラタシン、ブセレリン、ブスルファン、カンポテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ(Sprycel(商標))、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ジスコデルモリド、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(商標))、ドキソルビシン、Abx−EGF、エポチロン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル、フィルグラスチム、フラボピリドール、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、フルベストラント、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、ゲニステイン、ゴセレリン、グアナコン(guanacone)、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ(Gleevac(商標))、インターフェロン、インターロイキン、イリノテカン、イブリツモマブ(Zevalin(商標))、イロノテカン(ironotecan)、イクサベピロン(BMS−247550)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ミトゾロミド、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル(Taxol(商標))、パミドロネート、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プレドニゾン、プロカルバジン、ラルチトレキセド(Tomudex(商標))、ラパマイシン、ランプトテシン(ramptothecin)、リツキシマブ(Rituxan(商標))、ロリニアスタチン、ソラフェニブ(Nexavar(商標)/Bayer BAY43−9006)、スクアモシン、スクアモタシン(squamotacin)、ストレプトゾシン、スラミン、リンゴ酸スニチニブ(Sutent(商標))、タモキシフェン、テムシロリムス(CCI−779)、テモゾロミド(Temodar(商標))、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ(Bexxar(商標))、トラスツズマブ、トレチノイン、VEGF Trap、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン、ゾレドロネート。
【0069】
抗ErbB/抗MET併用療法は、癌のための非薬物治療、例えば、癌塊を除去するための外科的手順、化学療法または放射線療法などとともに使用することもできる。非薬物療法は、抗ErbB/抗MET併用療法を用いた治療の前、同時、または後に投与することができる。本発明の薬剤を、他の治療の前または後に投与することができるように、異なる治療の投与の間に、数時間、数日、および場合によって数週間の遅延が存在することもある。
【0070】
一実施形態では、抗ErbB/抗MET併用療法は、外科的手順の間、例えば、腫瘍の除去または腫瘍生検の間などに投与することができる。癌を治療するための外科的方法には、腹腔内手術、例えば、右または左結腸半切除、S字の、亜全または全結腸切除および胃切除、根治的または部分的乳房切除、前立腺切除および子宮摘出などが含まれる。一実施形態では、抗ErbB/抗MET併用療法は、腫瘍の外科的除去の後、または間に、癌塊の範囲に局所的に投与することができる。
【0071】
さらに、抗ErbB/抗MET併用療法は、外部ビーム照射、強度変調放射線治療(IMRT)を含めた任意の形態の放射線療法、ならびに例えば、γナイフ、サイバーナイフ、ライナック、および組織内照射(例えば、インプラント放射性シードまたはGliaSiteバルーンなど)を含めた任意の形態の放射線手術と一緒に投与することができる。
【0072】
別の態様では、本発明は、細胞を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤と接触させることによって、癌細胞におけるErbBリン酸化を低減するための方法を提供する。例示的な実施形態では、癌細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、例えば、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化に関連するMET活性および/または発現のレベルの上昇を含む。本明細書に開示される方法は、ErbB1、ErbB2、ErbB3および/またはErbB4の1つまたは複数のリン酸化を低減するのに使用することができる。ErbBリン酸化を検査するための方法は、当技術分野で既知である。例えば、抗ホスホErbB抗体を使用することによって、細胞(例えば、免疫組織化学的技法)または細胞可溶化物中のリン酸化ErbBの存在および/または量を判定することができる。あるいは、細胞可溶化物は、SDS−PAGEゲル上を移動させ、ニトロセルロースにブロットし、次いで抗ErbB抗体でプローブすることによって、細胞中の1つまたは複数のリン酸化ErbBタンパク質の存在および/または量を検出することができる。さらに、抗ErbB(例えば、ErbB1、ErbB2、またはErbB4)抗体を使用することによって、細胞可溶化物からErbBタンパク質を免疫沈降することができ、次いでこのErbBタンパク質をキナーゼアッセイにおいて使用することによって、細胞中の活性な、リン酸化ErbBタンパク質の存在を検出することができる。ErbBタンパク質についての適当なキナーゼアッセイは、タンパク質基質のリン酸化を測定するための方法として当技術分野で公知である。さらに別の実施形態では、抗ErbBタンパク質の存在および/または量は、ホスホ受容体チロシンキナーゼ(RTK)アレイ(R&D systemsから市販されている)を使用して判定することができる。ErbB1、ホスホErbB1、EbB2、ホスホErbB2、ErbB3、ホスホErbB3、ErbB4およびホスホErbB4に特異的な抗体は市販されている(例えば、Cell Signaling Technology、Danvers、MAを参照されたい)。ある特定の実施形態では、癌細胞中のErbBリン酸化のレベルを、対照、例えば、抗ErbB治療剤、抗MET治療剤、もしくは両方と接触していない細胞、または異なる量の、治療剤の1つもしくは両方と接触した細胞、または所与のアッセイに対する期待値などの基準値と比較することが望ましい場合がある。
【0073】
別の態様では、本発明は、細胞を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤と接触させることによって、癌細胞におけるPI3K媒介シグナル伝達を低減するための方法を提供する。例示的な実施形態では、癌細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性および/または発現のレベルの上昇(例えば、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化に関連した)を含む。PI3K媒介シグナル伝達を検査するための方法は、当技術分野で既知である。例えば、米国特許公開第2005/0170439号には、ErbB受容体とPI3キナーゼの間に形成される結合複合体を判定するための方法が記載されている。あるいは、PI3K活性化に応答してリン酸化されるタンパク質(例えば、Aktなど)のリン酸化形態の存在または非存在は、基質に特異的な抗体を使用してアッセイすることができる。PKB/AKTの様々なリン酸化形態に特異的な抗体は市販されている(例えば、New England Biolabs(UK) Ltd of Hitchin、Hertfordshireを参照されたい)。他の適当な抗体は、当業者にわかるであろう。これらのタンパク質を測定するためのイムノアッセイは、多くの様々な、好都合な方法で実施することができ、これは当業者に公知である。あるいは、免疫組織化学的技法を使用することによって、癌細胞中のPKB/AKTのリン酸化形態を同定することができる。ある特定の実施形態では、癌細胞中のPI3K媒介シグナル伝達のレベルを、対照、例えば、抗ErbB治療剤、抗MET治療剤、もしくは両方と接触していない細胞、または異なる量の、治療剤の1つもしくは両方と接触した細胞、または所与のアッセイに対する期待値などの基準値と比較することが望ましい場合がある。
【0074】
別の態様では、本発明は、細胞を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤と接触させることによって、癌細胞におけるErbB媒介シグナル伝達を低減するための方法を提供する。例示的な実施形態では、癌細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、例えば、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化に関連するMET活性および/または発現のレベルの上昇を含む。本明細書に開示される方法を使用することによって、ErbB1、ErbB2、ErbB3および/またはErbB4の1つまたは複数によって媒介されるシグナル伝達を低減することができる。ErbB媒介シグナル伝達を検査するための方法は、当技術分野で既知である。例えば、ErbBタンパク質の基質に特異的な抗体を使用することによって、細胞(例えば、免疫組織化学的技法)または細胞由来の溶解産物(例えば、ウエスタンブロッティング法)中に存在するリン酸化基質の存在を特定し、またはその量を求めることができる。さらに、ErbB基質は、細胞可溶化物から免疫沈降させ、活性アッセイにおいて使用することによって、この基質がリン酸化され、したがってErbB受容体キナーゼによって活性化されており、それによってErbB媒介シグナル伝達を反映しているかどうかを判定することができる。ある特定の実施形態では、癌細胞中のErbB媒介シグナル伝達のレベルを、対照、例えば、抗ErbB治療剤、抗MET治療剤、もしくは両方と接触していない細胞、または異なる量の、治療剤の1つもしくは両方と接触した細胞、または所与のアッセイに対する期待値などの基準値と比較することが望ましい場合がある。
【0075】
別の態様では、本発明は、細胞を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤と接触させることによって、(i)抗ErbB治療剤に対する癌細胞の感受性を回復し、(ii)抗ErbB治療剤に対する癌細胞の耐性を低減し、かつ/または(iii)癌細胞における、獲得された抗ErbB治療剤耐性を治療するための方法を提供する。例示的な実施形態では、癌細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、例えば、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化に関連するMET活性および/または発現のレベルの上昇を含む。本明細書に開示される方法を使用することによって、以下のもの、すなわち、抗ErbB1治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤および/または抗ErbB4治療剤の1つまたは複数に対する癌細胞の感受性を回復し、耐性を低減し、かつ/または獲得された耐性を治療することができる。抗ErbB治療剤に対する細胞の感受性および/または耐性を検査するための方法は、当技術分野で既知である。例えば、細胞成長および/または増殖の量、ならびに/またはアポトーシスの量は、抗ErbB治療剤単独と比較した場合、抗ErbB/抗MET併用療法の存在下で求めることができる。癌細胞の細胞成長および/または増殖の減少、ならびに/またはアポトーシスの増大は、抗ErbB治療剤に対する感受性の増大、または耐性の低減を示す。細胞成長、増殖およびアポトーシスを検査するための方法は、当技術分野で既知であり、本明細書で以下にさらに説明する。
【0076】
別の態様では、本発明は、細胞を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤と接触させることによって、癌細胞の成長および/または増殖を低減し、または癌細胞のアポトーシスを増大させるための方法を提供する。例示的な実施形態では、癌細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、例えば、MET遺伝子中の活性化突然変異、MET遺伝子増幅、またはHGF媒介MET活性化に関連するMET活性および/または発現のレベルの上昇を含む。癌細胞の成長および/または増殖および/またはアポトーシスを検査するための方法は、当技術分野で公知である。細胞成長および/または増殖ならびに/またはアポトーシスを判定するための例示的な方法には、例えば、アラマーブルー、Brd U、MTT、トリパンブルー排除、H−チミジン取り込み、ならびにXTTアッセイが含まれる。細胞成長および/または増殖ならびに/またはアポトーシスを判定するためのキットは、様々な供給源から市販されている。ある特定の実施形態では、癌細胞の成長および/または増殖および/またはアポトーシスのレベルを、対照、例えば、抗ErbB治療剤、抗MET治療剤、もしくは両方と接触していない細胞、または異なる量の、治療剤の1つもしくは両方と接触した細胞、または所与のアッセイに対する期待値などの基準値と比較することが望ましい場合がある。
【0077】
3.抗ErbB治療剤および抗MET治療剤
本明細書に記載される様々な方法は、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を利用する。抗ErbB活性または抗MET活性を示す任意の種類の治療剤を、本明細書に記載される方法に従って使用することができる。抗ErbB活性を有する治療剤は、ErbBタンパク質の少なくとも1つの生物活性をアンタゴナイズ(例えば、低減または阻害)する任意のものである。例示的な生物活性として、例えば、チロシンキナーゼ活性(ErbB1、ErbB2またはErbB4について)、タンパク質間相互作用の形成(例えば、受容体ホモまたはヘテロ二量体化、リガンド結合、基質への結合など)、およびErbB媒介シグナル伝達が挙げられる。同様に、抗MET活性を有する治療剤は、METタンパク質の少なくとも1つの生物活性をアンタゴナイズ(例えば、低減または阻害)する任意のものである。例示的な生物活性として、例えば、チロシンキナーゼ活性、タンパク質間相互作用の形成(例えば、受容体ホモまたはヘテロ二量体化、リガンド結合、基質への結合など)、およびMET媒介シグナル伝達が挙げられる。例示的な抗ErbB治療剤および抗MET治療剤として、例えば、小分子治療剤、核酸治療剤(例えば、アンチセンス核酸、dsRNA、siRNA、または酵素的核酸など)、およびタンパク質治療剤(例えば、抗体など)が挙げられる。さらに、本明細書に記載される様々な方法は、抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させた癌の治療方法を伴う。この方法は、治療目的で、本明細書に記載される任意の抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させた癌を治療するために使用することができる。
【0078】
ある特定の実施形態では、抗ErbBまたは抗MET治療剤は小分子治療剤である。小分子治療剤には、ErbBまたはMETの少なくとも1つの生物活性をアンタゴナイズする任意の小分子が含まれる。例示的な小分子治療剤はキナーゼ阻害剤である。他の適当な小分子治療剤には、受容体二量体化またはリガンド結合をアンタゴナイズする小分子が含まれる。抗ErbB小分子治療剤および抗MET小分子治療剤の適当な例を以下に提供する。
【0079】
一実施形態では、抗ErbB治療剤または抗MET治療剤は、アンチセンス核酸とすることができる。「アンチセンス核酸」とは、RNA−RNA、RNA−DNAまたはRNA−PNA(タンパク質核酸)相互作用によって標的核酸に結合し、標的核酸の活性を変化させる非酵素的核酸化合物を意味する(概説については、SteinおよびCheng、1993年 Science 261巻、1004頁ならびにWoolfら、米国特許第5,849,902号を参照されたい)。一般に、アンチセンス分子は、このアンチセンス分子の1つの連続した配列に沿って、標的配列と相補性である。しかし、ある特定の実施形態では、アンチセンス分子は、ループを形成し、ループを形成する基質核酸に結合することができる。したがって、アンチセンス分子は、2つ(もしくはそれ以上)の連続していない基質配列と相補性であることができ、またはアンチセンス分子の2つ(またはそれ以上)の連続していない配列部分は、標的配列と相補性であることができ、あるいはその両方である。現在のアンチセンス戦略の概説については、Schmajukら、1999年、J. Biol. Chem.、274巻、21783〜21789頁、Delihasら、1997年、Nature、15巻、751〜753頁、Steinら、1997年、Antisense N. A. Drug Dev.、7巻、151頁、Crooke、2000年、Methods Enzymol.、313巻、3〜45頁、Crooke、1998年、Biotech. Genet. Eng. Rev.、15巻、121〜157頁、Crooke、1997年、Ad. Pharmacol.、40巻、1〜49頁を参照されたい。
【0080】
他の実施形態では、抗ErbB治療剤または抗MET治療剤は、siRNAとすることができる。用語「短鎖干渉RNA」、「siRNA」または「短鎖干渉核酸」は、細胞によって適切に処理される場合、RNAiまたは遺伝子サイレンシングを媒介することができる任意の核酸化合物を指す。例えば、siRNAは、自己相補性のセンスおよびアンチセンス領域を含む二本鎖ポリヌクレオチド分子とすることができ、アンチセンス領域は、標的核酸化合物(例えば、RTK)との相補性を含む。siRNAは、自己相補性のセンスおよびアンチセンス領域を有する一本鎖のヘアピンポリヌクレオチドとすることができ、アンチセンス領域は、標的核酸化合物との相補性を含む。siRNAは、2つ以上のループ構造および自己相補性のセンスおよびアンチセンス領域を含むステムを有する、環状の一本鎖ポリヌクレオチドとすることができ、アンチセンス領域は、標的核酸化合物との相補性を含み、環状のポリヌクレオチドは、インビボまたはインビトロで処理されることによって、RNAiを媒介することができる活性siRNAを生成することができる。siRNAは、標的核酸化合物との相補性を有する一本鎖ポリヌクレオチドも含むことができ、この一本鎖ポリヌクレオチドは、末端リン酸エステル基、例えば、5’−リン酸(例えば、Martinezら、2002年、Cell.、110巻、563〜574頁)、または5’,3’−二リン酸などをさらに含むことができる。
【0081】
本明細書で記述する場合、siRNAは、長さが約19〜30ヌクレオチド、または長さが21〜23ヌクレオチドとすることができる。siRNAは、ヌクレアーゼ複合体をリクルートし、特定の配列と一対になることによって、この複合体を標的mRNAに導くと理解されている。結果として、標的mRNAは、タンパク質複合体中のヌクレアーゼによって分解される。特定の実施形態では、21〜23ヌクレオチドのsiRNA分子は3’ヒドロキシル基を含む。ある特定の実施形態では、siRNAコンストラクトは、例えば、酵素ダイサーの存在下で、より長い二本鎖のRNAを処理することによって生成することができる。一実施形態では、Drosophilaインビトロ系が使用される。この実施形態では、dsRNAは、Drosophila胚に由来する可溶性抽出物と混合され、それによって組合せが生成される。この組合せは、dsRNAが処理されて約21〜約23ヌクレオチドのRNA分子になる条件下で維持される。siRNA分子は、当業者に既知のいくつかの技法を使用して精製することができる。例えば、ゲル電気泳動を使用することによって、siRNAを精製することができる。あるいは、非変性カラムクロマトグラフィーなどの非変性方法を使用することによって、siRNAを精製することができる。さらに、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、抗体を用いた親和性精製を使用することによって、siRNAを精製することができる。
【0082】
siRNAの生成は、化学合成法または組換え核酸技法によって実施することができる。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼは、インビボで転写を媒介することができ、またはクローン化RNAポリメラーゼは、インビトロでの転写のために使用することができる。本明細書で使用する場合、siRNA分子は、RNAのみを含有する分子に限定される必要はないが、DNA鎖、いくつかのDNAヌクレオチドを含有し、かつ/または化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを包含することができる。例えば、siRNAは、例えば、細胞ヌクレアーゼに対する感受性を低減し、バイオアベイラビリティーを改善し、製剤の特性を改善し、かつ/または他の薬物動態学的性質を変化させるために、リン酸−糖主鎖またはヌクレオシドに対する修飾を含むことができる。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合を修飾することによって、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも1つを含めることができる。RNA構造中の修飾を調整することによって、二本鎖RNA(dsRNA)に対する一般的な応答を回避しながら、特定の遺伝的阻害を可能にすることができる。同様に、塩基を修飾することによって、アデノシンデアミナーゼの活性を遮断することができる。dsRNAは、酵素的に、または部分的/全有機合成によって生成することができ、任意の修飾されたリボヌクレオチドを、インビトロ酵素的または有機合成によって導入することができる。RNA分子を化学的に修飾する方法は、dsRNAを修飾することにも適合させることができる(例えば、Heidenreichら(1997年)Nucleic Acids Res、25巻:776〜780頁;Wilsonら(1994年)J Mol Recog 7巻:89〜98頁;Chenら(1995年)Nucleic Acids Res 23巻:2661〜2668頁;Hirschbeinら(1997年)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7巻:55〜61頁を参照されたい)。単に例えば、siRNAの主鎖は、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、ホスホジチオエート(phosphodithioate)、キメラのメチルホスホネート−ホスホジエステル、ペプチド核酸、オリゴマーまたは糖修飾を含む5−プロピニル−ピリミジン(例えば、2’−置換リボヌクレオシド、a−配置)で修飾することができる。ある特定の場合では、本開示のdsRNAsは、2’−ヒドロキシ(2’−OH)含有ヌクレオチドを欠いている。
【0083】
ある特定の実施形態では、siRNA分子の少なくとも1つの鎖は、長さが約1〜約6ヌクレオチド、または長さが約2〜約4ヌクレオチド、または長さが約1〜3ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。ある特定の実施形態では、一方の鎖は3’オーバーハングを有し、他方の鎖は、平滑末端とするか、やはりオーバーハングを有することができる。オーバーハングの長さはそれぞれの鎖について、同じであっても、異なっていてもよい。siRNAの安定性をさらに高めるために、3’オーバーハングは、劣化に対して安定化させることができる。一実施形態では、RNAは、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含めることによって安定化する。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’−デオキシチミジンによるウリジンヌクレオチド3’オーバーハングの置換は許容されており、RNAiの効率に影響しない。2’ヒドロキシルが存在しないことにより、組織培養培地中でオーバーハングのヌクレアーゼ耐性が著しく増強され、インビボで有益となり得る。
【0084】
他の実施形態では、干渉RNAは、長い二本鎖RNAの形態とすることもできる。例えば、dsRNAの二本鎖の部分は、長さが少なくとも25、50、100、200、300もしくは400塩基、または長さが約400〜800塩基とすることができる。場合により、dsRNAは、例えば、細胞中にsiRNA配列を生成するために、細胞内で消化することができる。しかし、インビボで長い二本鎖RNAを使用することは必ずしも実用的ではないが、これはおそらく、配列非依存性のdsRNA応答によって生じる場合のある有害な効果のためである。そのような実施形態では、局所送達系および/またはインターフェロンもしくはPKRの効果を低減する作用剤の使用が好適である。
【0085】
他の実施形態では、siRNAは、ヘアピン構造(例えば、ヘアピンRNA)の形態とすることができる。ヘアピンRNAは、外因的に合成することができ、またはインビボで、RNAポリメラーゼIIIプロモーターから転写することによって形成することができる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのためにそのようなヘアピンRNAを作製または使用する例は、例えば、Paddisonら、Genes Dev、2002年、16巻:948〜58頁;McCaffreyら、Nature、2002年、418巻:38〜9頁;McManusら、RNA、2002年、8巻:842〜50頁;Yuら、Proc Nati Acad Sci USA、2002年、99巻:6047〜52頁に記載されている。そのようなヘアピンRNAは、細胞中または動物中で操作されることによって、所望の遺伝子の連続的で安定な抑制を確実にすることが好ましい。siRNAは、細胞中でヘアピンRNAを処理することによって生成することができることは、当技術分野で既知である。
【0086】
PCT出願WO01/77350には、真核細胞中で、同じ導入遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNA転写物の両方を生じさせるために、導入遺伝子を双方向転写するための例示的なベクターが記載されている。したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、以下の独特の特徴を有する組換えベクターを提供する:これは対抗する方向に、対象とするsiRNAについての導入遺伝子と隣接して配置された2つの重複転写ユニットを有するウイルスレプリコンを含み、この2つの重複転写ユニットにより、宿主細胞中で同じ導入遺伝子断片からセンスおよびアンチセンスRNA転写物の両方が生じる。
【0087】
ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤または抗MET治療剤は、酵素的核酸とすることができる。「酵素的核酸」とは、基質結合領域内で、指定された標的遺伝子との相補性を有し、標的核酸を特異的に切断することに活性である酵素活性も有する核酸を意味する。酵素的核酸は、分子間で核酸を切断することができ、それによって標的核酸を不活化すると理解されている。これらの相補性領域により、酵素的核酸の標的核酸への十分なハイブリダイゼーションが可能になり、したがって切断が可能になる。100パーセントの相補性(同一性)が好適であるが、50〜75%の低い相補性でも有用となり得る(例えば、WernerおよびUhlenbeck、1995年、Nucleic Acids Research、23巻、2092〜2096頁;Hammannら、1999年、Antisense and Nucleic Acid Drug Dev.、9巻、25〜31頁を参照されたい)。酵素的核酸は、塩基、糖、および/またはリン酸基の箇所で修飾することができる。本明細書で記述する場合、用語「酵素的核酸」は、語句、例えば、リボザイム、触媒的RNA、酵素的RNA、触媒的DNA、アプタザイムもしくはアプタマー結合リボザイム、調節可能リボザイム、触媒的オリゴヌクレオチド、ヌクレオザイム(nucleozyme)、DNAザイム、RNA酵素、エンドリボヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、ミニザイム、リードザイム、オリゴザイムまたはDNA酵素などと互換的に使用される。これらの専門用語のすべては、酵素活性を有する核酸を記述する。本明細書に記載される特異的な酵素的核酸は、限定的であることを意味するのでなく、当業者は、酵素的核酸において重要なのは、これは、1つまたは複数の標的核酸領域と相補性である特異的基質結合部位を有し、分子に核酸切断活性および/または核酸連結活性を付与するその基質結合部位内またはこの周囲にヌクレオチド配列を有することであることを認識するであろう(Cechら、米国特許第4,987,071号;Cechら、1988年、260 JAMA 3030)。一実施形態では、酵素的核酸は、mRNA転写物を触媒的に切断することによって、mRNAの翻訳を妨げるように設計されたリボザイムである(例えば、1990年10月4日に公開された、PCT国際公開WO90/11364、;Sarverら、1990年、Science 247巻:1222〜1225頁;および米国特許第5,093,246号を参照されたい)。別の実施形態では、酵素的核酸はDNA酵素である。DNA酵素を作製し、投与する方法は、例えば、米国特許第6,110,462号に見出すことができる。
【0088】
別の実施形態では、抗ErbB治療剤または抗MET治療剤は、抗体、例えば、ErbBタンパク質(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、もしくはErbB4)、METタンパク質、ErbBリガンド(例えば、EGF、TGFα、AR、BTC、HB−EPR、NRG1、NRG2、NRG3、もしくはNRG4)、またはMETリガンド(例えば、肝細胞成長因子(HGF))に結合する抗体などとすることができる。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、その抗原結合性断片を含むことが意図されている。抗体は、従来の技法を使用して断片化することができ、断片は、全抗体に対して適当であるのと同じ様式で、有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab’)断片は、ペプシンを用いて抗体を処理することによって生成することができる。得られたF(ab’)断片を処理することによって、ジスルフィド架橋を還元してFab’断片を作製することができる。抗体には、二重特異性分子およびキメラ分子、ならびに単鎖(scFv)抗体が含まれることがさらに意図されている。三量体抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および単鎖抗体も含まれる。すべてのこれらの修飾形態の抗体、ならびに抗体の断片は、用語「抗体」に含まれることが意図されている。
【0089】
抗体は、当技術分野で既知の方法によって誘発することができる。例えば、マウス、ハムスターまたはウサギなどの哺乳動物を、ErbBタンパク質、METタンパク質、ErbBリガンドまたはMETリガンドの免疫原性形態(例えば、抗体応答を誘発することができる抗原断片)で免役することができる。あるいは、免疫化は、ErbBタンパク質、METタンパク質、ErbBリガンドまたはMETリガンドをインビボで発現する核酸を使用して行うことができ、観察される免疫原性応答を生じる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技法には、担体への結合、または当技術分野で公知である他の技法が含まれる。例えば、本発明のポリペプチドのペプチジル部分を、アジュバントの存在下で施すことができる。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体価の検出によってモニターすることができる。標準的なELISAまたは他のイムノアッセイを、抗原としての免疫源とともに使用することによって、抗体のレベルを評価することができる。
【0090】
免疫化した後、本発明のポリペプチドと反応性の抗血清を得ることができ、必要に応じて、血清からポリクローナル抗体を単離することができる。モノクローナル抗体を生成するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫動物から収集し、標準的な体細胞融合手順により、骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させることによって、ハイブリドーマ細胞を得ることができる。そのような技法は、当技術分野で公知であり、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbarら、(1983年)Immunology Today、4巻:72頁)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV−ハイブリドーマ技法(Coleら、(1985年)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc. 77〜96頁)のようなハイブリドーマ技法(KohlerおよびMilstein、(1975年)Nature、256巻:495〜497頁によって最初に開発された)を含む。ハイブリドーマ細胞を免疫化学的にスクリーニングして、本発明のポリペプチドと特異的に反応性の抗体を生成することができ、モノクローナル抗体を単離することができる。
【0091】
ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、タンパク質ディスプレイ骨格(protein display scaffold)とすることができ(例えば、Hosse, R.J.ら、Protein Science、15巻:14〜27頁(2006年)を参照されたい)、これは、ErbBタンパク質(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、またはErbB4)、METタンパク質、ErbBリガンド(例えば、EGF、TGFα、AR、BTC、HB−EPR、NRG1、NRG2、NRG3、もしくはNRG4)、またはMETリガンド(例えば、肝細胞成長因子(HGF))に結合する。一実施形態では、タンパク質ディスプレイ骨格は、フィブロネクチンベース「アドレス可能な」治療剤結合分子(therapeutic binding molecule)である(例えば、PCT公開第WO00/34784号、同第WO01/64942号、同第WO02/032925号を参照されたい)。フィブロネクチンドメインIII(FnIII)ループは、有用な治療ツールを開発するために、ランダムな突然変異にかけ、標的結合、選択、およびさらなる突然変異の反復ラウンドの進化スキーム(evolutionary scheme)に向けることができる領域を含む。
【0092】
ある特定の実施形態では、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、ErbB受容体またはMET受容体とその対応するリガンドとの間の結合性を低減するポリペプチドとすることができる。一実施形態では、ポリペプチドは、可溶性のErbBまたはMETポリペプチド、特に、ErbBまたはMETの細胞外ドメイン、例えば、ErbBまたはMETタンパク質の任意の天然に存在する細胞外ドメインなどを含むポリペプチド、ならびにリガンド結合を保持する任意のその変異体(突然変異体、断片およびペプチド模倣体形態を含めて)とすることができる。
【0093】
ある特定の実施形態では、ErbBまたはMETリガンド結合ポリペプチドには、ペプチド模倣体が含まれる。ペプチド模倣体は、化学的に修飾されたペプチド、および天然に存在しないアミノ酸、ペプトイドなどを含むペプチド様分子を指す。ペプチド模倣体は、対象に投与されたとき、安定性の増強を含めて、ペプチドに対して様々な利点を供給する。ペプチド模倣体を同定するための方法は、当技術分野で公知であり、潜在的なペプチド模倣体のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。例えば、Cambridge Structural Databaseは、既知の結晶構造を有する300,000化合物を超える収集を含む(Allenら、Acta Crystallogr, Section B、35巻:2331頁(1979年))。標的分子の結晶構造が全く入手可能でない場合、構造は、例えば、プログラムCONCORD(Rusinkoら、J. Chem. Inf. Comput. Sci. 29巻:251頁(1989年))を使用して作製することができる。別のデータベース、the Available Chemicals Directory(Molecular Design Limited, Informations Systems;San Leandro Calif.)は、市販されている約100,000の化合物を含み、ErbBまたはMETリガンド結合ポリペプチドの潜在的なペプチド模倣体を同定するために検索することができる。
【0094】
ある特定の態様では、ErbBまたはMETリガンド結合ポリペプチドの機能性変異体または修飾形態には、ErbBまたはMETポリペプチドの少なくとも一部、および1つまたは複数の融合ドメインを有する融合タンパク質が含まれる。そのような融合ドメインの公知の例には、それだけに限らないが、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが含まれる。例示的な実施形態では、ErbBまたはMET−ポリペプチドは、インビボでErbBまたはMETポリペプチドを安定化させるドメイン(「スタビライザー」ドメイン)と融合される。「安定化する」とは、血清半減期を増大させる任意のことを意味し、これが、破壊の減少、腎臓によるクリアランスの減少、または他の薬物動態学的効果のためであるかどうかに関係ない。免疫グロブリンのFc部分との融合により、広範囲のタンパク質に望ましい薬物動態学的性質が付与されることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合も、望ましい性質を付与し得る。選択することができる他の種類の融合ドメインとして、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメイン、および機能ドメイン(追加の生物学的機能を付与する)が挙げられる。
【0095】
抗ErbB1(抗EGFR)治療剤の例は、当技術分野で既知である。例えば、小分子抗ErbB1(EGFR)治療剤として、EGFRキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ(IRESSA(商標);AstraZeneca、London)、エルロチニブ(TARCEVA(商標);Genentech、South San Francisco、CA)、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412またはHKI−272などが挙げられる。抗EGFRタンパク質治療剤として、例えば、抗EGFR抗体、例えば、セツキシマブ(ERBITUX(商標)、ImClone Systems Inc、New York、NYおよびBristol−Myers Squibb、Princeton、NJ)、パニツムマブ(VECTIBIX(商標)、Amgen、Thousand Oaks、CA)、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.およびAbgenix Inc.)、HR3(キューバ政府)、IgA抗体(University of Erlangen−Nuremberg)、TP−38(IVAX)などが挙げられる。
【0096】
抗ErbB2治療剤の例として、例えば、CP−724−714、CI−1033(カネルチニブ)、HERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)、OMNITARG(商標)(ペルツズマブ)、TAK−165、GW−572016(イオナファルニブ(Ionafarnib))、GW−282974、EKB−569、PI−166、dHER2(HER2ワクチン)、APC8024(HER2ワクチン)、抗HER/2neu二重特異性抗体、B7.her2IgG3、AS HER2三官能性二重特異性抗体、mAB AR−209およびmAB 2B−1が挙げられる。追加の抗ErbB2治療剤には、WO98/02434、WO99/35146、WO99/35132、WO98/02437、WO97/13760、WO95/19970、WO2001/98277、米国特許第5,587,458号、米国特許第5,877,305号、米国特許第6,465,449号、および同第6,284,764号に記載されているものが含まれる。
【0097】
抗ErbB3治療剤の例には、例えば、抗ErbB3抗体(例えば、米国特許公開第20040197332号を参照されたい)が含まれる。
【0098】
抗ErbB4治療剤の例には、例えば、抗ErbB4 siRNA(例えば、Maattaら、Mol. Biol. Cell 17巻:67〜79頁(2006年)、またはErbB4キナーゼ阻害剤、例えば、CI−1033、EKB−569、ラパチニブ、PF00299804、およびAV412などが含まれる。
【0099】
抗ErbB治療剤は、複数の標的を含む治療剤、例えば、GW572016、CI−1033、EKB−569、およびOmnitarg(商標)を含めた、pan ERBB受容体阻害剤なども包含する。
【0100】
例示的な抗MET治療剤として、例えば、METキナーゼ阻害剤、例えば、PHA−665752(Pfizer,Inc、La Jolla、CA)、PF−02341066(Pfizer,Inc、La Jolla、CA)、SU11274、SU5416、XL−880、MGCD265、XL184、ARQ197、MP−470、SGX−523、JNJ38877605、AMG102、およびOA−5D5などが挙げられる。
【0101】
4.ErbB修飾およびMET修飾を検出するための方法
様々な実施形態では、本明細書に記載される方法は、ErbB活性化突然変異、ErbB遺伝子増幅、リガンド誘発性ErbB活性化、MET活性化突然変異、MET遺伝子増幅、および/またはリガンド媒介MET活性化の検出を伴うことができる。ErbBおよびMET活性化突然変異の様々な例は、本明細書でさらに記載されており、ErbB配列およびMET配列自体の外側の突然変異を含み、これは、ErbBまたはMETタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増大させる。核酸(DNAまたはRNA)の分析、タンパク質産物の分析、および/またはタンパク質活性の分析を伴う方法を含めて、突然変異または遺伝子増幅を検出するために、任意の当技術分野で認められた技法を使用することができる。そのような検出方法は、質的および定量的検出方法の両方を包含する。例示的な方法を本明細書でさらに説明する。
【0102】
遺伝子突然変異
遺伝子突然変異は、核酸試料を、突然変異体配列と特異的にハイブリダイズすることができるプローブと接触させ、次いでプローブのハイブリダイゼーションを検出することによって検出することができる。プローブは一般に、放射性同位体(H、32P、33pなど)、蛍光剤(ローダミン、フルオレセイン、など)または発色剤(chromogenic agent)などで検出可能に標識されることによって、ハイブリダイゼーションの検出を促進する。当業者は、本明細書に提供された開示に基づいて、対象の突然変異を検出するのに適したプローブを容易に設計することができる。例えば、プローブは、アンチセンスオリゴマー、例えば、PNA、モルホリノ−ホスホラミデート、LNAまたは2’−アルコキシアルコキシとすることができ、長さを約8ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、約10〜約75、約15〜約50、または約20〜約30ヌクレオチドとすることができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のプローブは、固体支持体上に孤立させることができ、検出可能に標識された核酸試料は、支持体上でプローブとハイブリダイズすることができる。例えば、このプローブは、複数の固定化された配列を含むマイクロアレイの一部とすることができる。アレイハイブリダイゼーションおよび分析のための方法は、当業者に既知である。
【0103】
あるいは、遺伝子突然変異は、突然変異を含んでいると思われる核酸配列またはその一部を増幅し、増幅核酸の電気泳動移動度を、対応する野生型遺伝子またはその断片の電気泳動移動度と比較することによって、試料中で検出することができる。移動度の差は、増幅核酸配列中の突然変異の存在を示す。電気泳動移動度は、ポリアクリルアミドゲル上で求めることができる。この方法は、挿入および/または欠失突然変異の検出に特に有用である。
【0104】
突然変異の別の適当な検出方法では、酵素突然変異検出(EMD)(Del Titoら、Clinical Chemistry 44巻:731〜739頁、1998年)を使用する。EMDは、バクテリオファージリゾルベースT4エンドヌクレアーゼVIIを使用し、これは、点突然変異、挿入および欠失から生じる塩基対ミスマッチに起因する構造的な歪みを検出し、切断するまで、二本鎖DNAに沿って走査する。例えば、ゲル電気泳動による、リゾルベース切断によって形成された断片の検出は、突然変異の存在を示す。EMD法の利点は、PCR反応から直接アッセイされる、点突然変異、欠失、挿入を同定するための単一のプロトコルであり、試料精製の必要性を排除し、ハイブリダイゼーション時間を短縮し、信号対雑音比を増大させる。最大20倍過剰の正常DNAと、サイズが最大4kbの断片を含む混合試料を、この方法を使用してアッセイすることができる。しかし、EMD走査により、突然変異陽性試料において起こる特定の塩基変化は同定されず、必要であれば、突然変異の素性に対して追加の配列決定手順を必要とする。CEL I酵素も、米国特許第5,869,245号で実証されているように、リゾルベースT4エンドヌクレアーゼVIIと同様に使用することができる。
【0105】
点突然変異の検出は、当技術分野で公知である技法を使用して、分子クローニングおよびポリヌクレオチドの配列決定によって実現することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによって、生体試料、例えば、癌細胞などに由来するゲノムDNA標本から遺伝子配列を直接増幅することができる。次いで増幅された配列のDNA配列を求め、それから突然変異を同定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応は当技術分野で公知であり、例えば、Saikiら、Science 239巻:487頁、1988年;米国特許第4,683,203号;および米国特許第4,683,195号に記載されている。
【0106】
さらに、対立遺伝子特異的PCRも、突然変異を検出するのに使用することができる(RuanoおよびKidd、Nucleic Acids Research、17巻、8392頁、1989年)。この技法によれば、特定の配列の3’末端とハイブリダイズするプライマーが使用される。突然変異のために特定の配列が存在しない場合、増幅産物は産生されない。
【0107】
遺伝子の挿入および欠失は、クローニング、配列決定および増幅によっても検出することができる。さらに、制限断片長多型(RFLP)は、配列変化を記録するのに使用することができる。一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)分析も、塩基変化変異体(base change variant)を検出するのに使用することができる(例えば、Oritaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻、2766〜2770頁、1989年、およびGenomics、5巻、874〜879頁、1989年を参照されたい)。当技術分野で知られているような、挿入および欠失を検出するための他の技法は、本明細書に記載される方法に従って使用することができる。
【0108】
ミスマッチ検出(例えば、100%相補性でない二本鎖の検出)も、DNAまたはRNA配列中の点突然変異を検出するのに使用することができる(例えば、米国特許第5,459,039号、同第5,556,750号、同第5,679,522号、同第5,861,482号、同第5,922,539号、および同第6,008,031号を参照されたい)。
【0109】
ミスマッチ切断を伴うRNase保護も、点突然変異を含めた突然変異を検出するのに使用することができる(例えば、Winterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻、7575頁、1985年、およびMeyersら、Science、230巻、1242頁、1985年を参照されたい)。手短に言えば、この方法では、野生型配列と相補性である標識リボプローブを使用する。リボプローブおよび試料から単離されたmRNAまたはDNAは、一緒にアニール(ハイブリダイズ)され、引き続いて、二本鎖RNA構造におけるいくつかのミスマッチを検出することができる酵素RNase Aで消化される。RNase Aによってミスマッチが検出された場合、これは、ミスマッチの部位で切断し、それによってより短い断片を生成し、この断片は、ゲル電気泳動などの分離技術を使用して検出することができる。
【0110】
同様の様式で、DNAプローブを使用することによって、酵素的または化学的切断を通じてミスマッチを検出することができる。例えば、Cottonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、4397頁、1988年;およびShenkら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、72巻、989頁、1975年を参照されたい。あるいは、ミスマッチは、マッチ二本鎖と比べた、ミスマッチ二本鎖の電気泳動移動度のシフトによって検出することができる。例えば、Cariello、Human Genetics、42巻、726頁、1988年を参照されたい。リボプローブまたはDNAプローブとともに、突然変異を含んでいる場合のある細胞mRNAまたはDNAは、ハイブリダイゼーションの前にPCRを使用して増幅することができる。特に変化が、欠失および挿入などのグロス再配列(gross rearrangement)である場合、DNA配列の変化は、サザンハイブリダイゼーションを使用しても検出することができる。
【0111】
遺伝子増幅
増幅した標的遺伝子の存在は、標的遺伝子のコピー数、すなわち、標的タンパク質をコードする、細胞中のDNA配列の数を求めることによって評価することができる。一般に、正常な二倍体細胞は、2コピーの所与の常染色体遺伝子を有するが、コピー数は、遺伝子増幅または複製によって増加させることができる。特定の遺伝子のコピー数の評価方法は、当技術分野で公知であり、ハイブリダイゼーションおよび増幅に基づくアッセイを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子の増幅されたコピーの実際の数が求められる。あるいは、遺伝子増幅の質的な尺度を得ることができる。遺伝子増幅を検出するための様々な方法には、例えば、増幅に基づく方法、およびハイブリダイゼーションに基づく方法(サザンブロット法、FISH、CGHおよびマイクロアレイ技法など)が含まれ、本明細書でさらに説明する。
【0112】
増幅に基づく方法
遺伝子増幅を検出するための増幅に基づく方法は、増幅された配列のコピー数を測定するのに使用することができ、対象とする配列の増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、すなわちPCRを使用して)を伴う。定量的な増幅では、増幅産物の量は、最初の試料中の鋳型の量に比例する。適切な対照との比較により、所与の試料中の対象とする配列のコピー数の尺度が提供される。対照と比較した場合の、より高いレベルの増幅産物の存在は、配列が増幅されたことを示す。
【0113】
定量的増幅の方法は、当業者に公知である。例えば、定量的PCRでは、同じプライマーを使用して、既知量の制御配列を同時に増幅する。これにより内部標準が提供され、これは、PCR反応を較正するのに使用することができる。定量的なPCRのための詳細なプロトコルは、例えば、Innisら(1990年)PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications、Academic Press, Inc. N.Y.に提供されている。ErbBおよびMET遺伝子についての核酸配列は既知であり、これらの遺伝子の任意の部分を増幅するのに使用することができるプライマーを、当業者が選択することを可能にするのに十分である。
【0114】
リアルタイムPCRは、遺伝子コピーレベルまたはmRNA発現のレベルを求めるために使用することができる別の増幅技法である(例えば、Gibsonら、Genome Research 6巻:995〜1001頁、1996年;Heidら、Genome Research 6巻:986〜994頁、1996年を参照されたい)。リアルタイムPCRは、増幅の間のPCR産物蓄積のレベルを評価する。この技法により、複数の試料におけるmRNAレベルの定量的評価が可能になる。遺伝子コピーレベルについては、全ゲノムDNAが試料から単離される。mRNAレベルについては、mRNAが試料から抽出され、cDNAが標準的な技法を使用して調製される。リアルタイムPCRは、例えば、Perkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City、CA)7700プリズム計測器を使用して実施することができる。マッチングプライマーおよび蛍光プローブは、例えば、Perkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City、CA)によって提供されるプライマーエクスプレスプログラムを使用して、対象とする遺伝子について設計することができる。プライマーおよびプローブの至適濃度は、当業者によって最初に求めることができ、対照(例えば、β−アクチン)プライマーおよびプローブは、例えば、Perkin Elmer/Applied Biosystems(Foster City、CA)から市販で入手することができる。試料中の対象とする特定の核酸の量を定量化するために、検量線が対照を使用して作成される。検量線は、リアルタイムPCRで求められたCt値を使用して作成することができ、これは、アッセイで使用される、対象とする核酸の初期濃度に関係する。対象とする遺伝子の10〜10コピーの範囲の標準希釈は、一般に十分である。さらに、制御配列についての検量線が作成される。これにより、比較目的で、対照の量に対する、組織試料中の対象とする核酸の初期含量の標準化が可能になる。
【0115】
TaqMan(商標)プローブを使用するリアルタイム定量的PCRの方法は、当技術分野で公知である。リアルタイム定量的PCRについての詳細なプロトコルは、例えば、RNAについては、Gibsonら、1996年、A novel method for real time quantitative RT−PCR. Genome Res.、10巻:995〜1001頁;およびDNAについては、Heidら、1996年、Real time quantitative PCR. Genome Res.、10巻:986〜994頁に提供されている。TaqMan(商標)に基づくアッセイは、5’蛍光色素および3’クエンチ剤を含む蛍光性オリゴヌクレオチドプローブを使用する。このプローブは、PCR産物とハイブリダイズするが、3’末端の遮断剤のためにそれ自体で伸長することはできない。PCR産物が引き続くサイクルで増幅されるとき、ポリメラーゼ、例えば、AmpliTaq(商標)の5’ヌクレアーゼ活性により、TaqMan(商標)プローブが切断される。この切断により、5’蛍光色素と3’クエンチ剤が分離され、それによって増幅の関数として蛍光が増大する(例えば、perkin−elmer.comのワールドワイドウェブを参照されたい)。
【0116】
ハイブリダイゼーションに基づくアッセイ
ハイブリダイゼーションアッセイも、遺伝子コピー数を検出するのに使用することができる。ハイブリダイゼーションに基づくアッセイには、それだけに限らないが、サザンブロットまたはインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISH)などの従来の「直接プローブ」法、および比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)などの「比較プローブ」法が含まれる。この方法は、それだけに限らないが、以下に説明するように、基質結合(例えば、膜またはガラス)法またはアレイに基づく手法を含めた、多種多様な形式で使用することができる。
【0117】
遺伝子コピー数を評価するための一方法は、サザンブロット法を伴う。サザンブロットを行うための方法は、当業者に既知である(Current Protocols in Molecular Biology、19章、Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York、1995年、またはSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Press、NY、1989年を参照されたい)。そのようなアッセイでは、ゲノムDNA(一般に、電気泳動ゲル上で断片化および分離される)は、標的領域に特異的なプローブとハイブリダイズされる。標的領域についてのプローブからのハイブリダイゼーションシグナルの強度を、通常のゲノムDNA(例えば、同じまたは関連する細胞、組織、器官などの増幅されていない部分)の分析からの対照プローブシグナルと比較することにより、標的核酸の相対的なコピー数の推定値が提供される。対照より高い強度レベルは、配列が増幅されたことを示す。
【0118】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)も、遺伝子のコピー数を求めるのに使用することができる。FISHは、当業者に既知である(Angerer、1987年 Meth. Enzymol.、152巻:649頁を参照されたい)。一般的なインサイチュハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞または組織切片は、固体支持体、一般にガラススライドに固定される。核酸がプローブされる場合、細胞は、熱またはアルカリを用いて一般に変性される。次いで細胞を、適度な温度のハイブリダイゼーション溶液と接触させることによって、タンパク質をコードする核酸配列に特異的な標識プローブのアニーリングを可能にする。次いで標的(例えば、細胞)は、適切な信号対雑音比が得られるまで、所定のストリンジェンシーまたは漸増ストリンジェンシーで一般に洗浄される。そのような用途で使用されるプローブは、放射性同位体または蛍光レポーターで一般に標識される。好適なプローブは、ストリンジェントな条件下で、標的核酸(複数も)との特異的なハイブリダイゼーションを可能にするために、十分に長く、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。用途によっては、反復配列のハイブリダイゼーション能力を遮断することが必要である。したがって、いくつかの実施形態では、tRNA、ヒトゲノムDNA、またはCot−1 DNAを使用することによって、非特異的なハイブリダイゼーションを遮断する。
【0119】
比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)も、遺伝子コピー数を求めるのに使用することができる。比較ゲノムハイブリダイゼーション方法では、核酸の「試験」収集物(例えば、可能性がある腫瘍から)が、第1の標識で標識され、第2の収集物(例えば、正常細胞または正常組織から)が第2の標識で標識される。核酸のハイブリダイゼーションの比は、アレイ中で、それぞれファイバー(fiber)に結合している第1および第2の標識の比によって求められる。例えば、試験収集物中の遺伝子増幅による、2つの標識からのシグナルの比の差が検出され、この比により、使用された特定のプローブに対応して、遺伝子コピー数の尺度が提供される。DNAコピー数変化の細胞遺伝学的な表示は、CGHによって生成することができ、これは、差次的に標識された試験ゲノムDNAおよび基準ゲノムDNA由来の染色体の長さに沿った蛍光比を提供する。
【0120】
DNAコピー数は、マイクロアレイに基づくプラットフォームによっても分析することができる。様々なマイクロアレイ方法の詳細は、文献中に見出すことができる。例えば、米国特許第6,232,068号;Pollackら、Nat. Genet.、23巻(1号):41〜6頁、(1999年)、Pastinen(1997年) Genome Res. 7巻:606〜614頁;Jackson (1996年)Nature Biotechnology 14巻:1685頁;Chee(1995年)Science 274巻:610頁;WO96/17958、Pinkelら、(1998年)Nature Genetics 20巻:207〜211頁などを参照されたい。
【0121】
アレイを調製するのに使用されるDNAは、重要ではない。例えば、アレイは、ゲノムDNA、例えば、重複クローンを含むことができ、これは、所望の遺伝子を含むゲノムの一部、または遺伝子自体の高分解能走査を提供する。ゲノム核酸は、例えば、HAC、MAC、YAC、BAC、PAC、PI、コスミド、プラスミド、ゲノムクローンのAlu間(inter−Alu)PCR産物、ゲノムクローンの制限消化、cDNAクローン、増幅(例えば、PCR)産物などから得ることができる。アレイは、オリゴヌクレオチド合成技術を使用しても作製することができる。したがって、例えば、米国特許第5,143,854号、ならびにPCT特許公開第WO90/15070号および同第WO92/10092号には、高密度オリゴヌクレオチドアレイの光指向コンビナトリアル合成の使用が教示されている。
【0122】
マイクロアレイ法ともに使用するのに適したハイブリダイゼーションプロトコルは、例えば、Albertson(1984年)EMBO J. 3巻:1227〜1234頁;Pinkel(1988年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:9138〜9142頁;EPO公開第430,402号;Methods in Molecular Biology、33巻:In Situ Hybridization Protocols、Choo編、Humana Press、Totowa、N.J.(1994年)、Pinkelら(1998年)Nature Genetics 20巻:207〜211頁、またはKallioniemi(1992年)Proc. Natl. Acad Sci USA 89巻:5321〜5325頁(1992年)などに記載されている。
【0123】
ハイブリダイゼーションアッセイの感受性は、検出される標的核酸を増殖させる核酸増幅系を使用することによって増強することができる。そのような系の例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系およびリガーゼ連鎖反応(LCR)系が含まれる。最近当技術分野で記載された他の方法は、核酸配列ベース増幅(NASBAO、Cangene、Mississauga、Ontario)およびQβレプリカーゼ系である。
【0124】
発現レベル
ErbBおよび/またはMET活性化突然変異または遺伝子増幅の検出は、RNA発現レベルおよびタンパク質発現レベルを含めた、ErbBおよび/またはMET発現レベルを分析することによっても検出することができる。RNA発現レベルの分析は、1つもしくは複数の転写産物、例えば、hnRNA、mRNAなど、および/またはmRNAの1つもしくは複数のスプライス変異体の判定を伴うことができる。例えば、タンパク質、スプライスされたmRNA変異体から生じるタンパク質変異体、および翻訳後に修飾されたタンパク質を含めた、様々なタンパク質産物も測定することによって、発現レベルを判定することができる。
【0125】
RNA発現
RNA産物の発現レベルを測定する任意の適当な手段を、本明細書に記載される方法に従って使用することができる。例えば、この方法は、例えば、オリゴヌクレオチド、cDNA、DNA、RNA、PCR産物、合成DNA、合成RNA、または1つもしくは複数のErbBおよび/もしくはMET RNA産物に特異的にハイブリダイズする、天然に存在する修飾ヌクレオチドの他の組合せを含めた、1つまたは複数のErbBおよび/またはMET RNA産物に特異的にハイブリダイズする様々なポリヌクレオチドを利用することができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、アレイハイブリダイゼーション、RT−PCR、ヌクレアーゼ保護およびノーザンブロットを含めた、本明細書にさらに記載される、RNA発現を測定するための方法と組み合わせて使用することができる。
【0126】
ある特定の実施形態では、アレイハイブリダイゼーションを使用することによって、ErbBおよび/またはMET RNA発現のレベルを評価することができる。アレイハイブリダイゼーションでは、ErbBおよび/またはMET RNA発現産物とハイブリダイズすることができる、支持体に安定に付随した核酸メンバーが利用される。アレイに付着される核酸メンバーの長さは、8〜1000ヌクレオチドの範囲とすることができ、ErbBおよび/またはMET RNA産物に特異的であるように選択される。このアレイは、例えば、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、およびMET、ならびに前述の任意のリガンド、例えば、ErbBリガンド(例えば、EGF、TGFα、AR、BTC、HB−EPR、NRG1、NRG2、NRG3、またはNRG4)、またはMETリガンド(例えば、肝細胞成長因子(HGF))を含めた、ErbBおよび/またはMETに特異的な1つもしくは複数の核酸メンバー、またはその変異体(例えば、スプライス変異体)を含むことができる。核酸メンバーは、一本鎖もしくは二本鎖のRNAもしくはDNAとすることができ、かつ/またはオリゴヌクレオチド、もしくはcDNAから増幅されたPCR断片とすることができる。オリゴヌクレオチドは、長さが約10〜100、10〜50、20〜50、または20〜30ヌクレオチドであることが好ましい。ErbBおよび/またはMETの発現された領域の部分は、アレイ上でプローブとして利用することができる。より詳細には、ErbBおよび/もしくはMET遺伝子と相補性であるオリゴヌクレオチド、ならびにまたはErbBおよび/もしくはMET遺伝子に由来するcDNAは有用である。オリゴヌクレオチドベースのアレイについては、プローブとして有用である、対象とする遺伝子に対応するオリゴヌクレオチドの選択は、当技術分野でよく理解されている。より詳細には、標的核酸とのハイブリダイゼーションを可能にする領域を選択することが重要である。オリゴヌクレオチドのTm、GC含量率、二次構造の程度、および核酸の長さなどの要因は、重要な要因である。例えば、米国特許第6,551,784号を参照されたい。
【0127】
アレイは、特別に仕立てて構築するか、市販供給業者から購入することができる。アレイを構築するための様々な方法は、当技術分野で公知である。例えば、アレイフォーマットにおける、固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成に適用可能な方法および技法は、例えば、WO00/58516、米国特許第5,143,854号、同第5,242,974号、同第5,252,743号、同第5,324,633号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,424,186号、同第5,451,683号、同第5,482,867号、同第5,491,074号、同第5,527,681号、同第5,550,215号、同第5,571,639号、同第5,578,832号、同第5,593,839号、同第5,599,695号、同第5,624,711号、同第5,631,734号、同第5,795,716号、同第5,831,070号、同第5,837,832号、同第5,856,101号、同第5,858,659号、同第5,936,324号、同第5,968,740号、同第5,974,164号、同第5,981,185号、同第5,981,956号、同第6,025,601号、同第6,033,860号、同第6,040,193号、同第6,090,555号、同第6,136,269号、同第6,269,846号、および同第6,428,752号、ならびにZhouら、Nucleic Acids Res. 32巻:5409〜5417頁(2004年)に記載されている。
【0128】
例示的な実施形態では、構築および/または選択オリゴヌクレオチドは、マスクレスアレイシンセサイザー(MAS)を使用して、固体支持体上で合成することができる。マスクレスアレイシンセサイザーは、例えば、PCT出願第WO99/42813号および対応する米国特許第6,375,903号に記載されている。アレイを構築するための他の方法として、例えば、マスクを利用する光指向法(例えば、米国特許第5,143,854号、同第5,510,270号および同第5,527,681号に記載されているVLSIPS(商標)法)、フローチャネル法(例えば、米国特許第5,384,261号を参照されたい)、スポッティング法(例えば、米国特許第5,807,522号を参照されたい)、ピンベース法(pin−based method)(例えば、米国特許第5,288,514号を参照されたい)、および複数の支持体を利用する方法(例えば、米国特許第5,770,358号、同第5,639,603号、および同第5,541,061号を参照されたい)が挙げられる。
【0129】
ある特定の実施形態では、支持体の表面に安定に付随した核酸メンバーのアレイは、相補性の核酸メンバー/標的複合体のハイブリダイゼーションパターンを作製するのに十分なハイブリダイゼーション条件下で、標的核酸を含む試料と接触し、アレイ上の独特の位置における1つまたは複数の相補性の核酸メンバーは、標的核酸に特異的にハイブリダイズする。ハイブリダイズする標的核酸の素性は、アレイ上の核酸メンバーの位置を参照して求めることができる。
【0130】
ゲノムDNAに対応するオリゴヌクレオチドまたは核酸、ハウスキーピング遺伝子、ベクター配列、陰性および陽性対照遺伝子などを含む核酸メンバーを含めた対照核酸メンバーは、アレイ上に存在することができる。対照核酸メンバーは、較正または対照遺伝子であり、その機能は、対象とする特定の遺伝子が発現されるかどうかを伝えることではなく、むしろ発現のバックラウンドまたは基礎レベルなどの他の有用な情報を提供することである。
【0131】
アレイ上の他の対照核酸を、標的発現対照核酸およびミスマッチ対照ヌクレオチドとして使用することによって、プローブが向けられる標的以外の、試料中の核酸への非特異的結合またはクロスハイブリダイゼーションをモニターすることができる。したがって、ミスマッチプローブは、ハイブリダイゼーションが特異的であるか、特異的でないかを示す。例えば、標的が存在する場合、完全にマッチしたプローブは、ミスマッチしたプローブより常に鮮明であるはずである。さらに、すべての対照ミスマッチが存在する場合、ミスマッチプローブは、突然変異を検出するのに使用される。
【0132】
本明細書に提供されるアレイは、アレイが使用されるアッセイ条件下、特にハイスループット取り扱い条件下で、上に存在する付随した核酸に対して物理的な支持体および構造を提供するのに十分な基質を含むことができる。
【0133】
基質は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、管、球、ビーズ、容器、キャピラリー、詰め物、薄片、膜、プレート、スライド、チップなどとして存在する、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはこれらの任意の組合せとすることができる。基質は、好都合な形状、例えば円盤、正方形、球、円などを有することができる。基質は、平ら、すなわち平面であることが好ましいが、様々な代替の表面構成を採用することができる。基質は、重合ラングミュアーブロジェット膜、官能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SIN、変性ケイ素、または多種多様なゲルもしくはポリマー、例えば、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの任意の1つ、またはこれらの組合せとすることができる。他の基質材料は、本開示を考慮して、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0134】
ある特定の実施形態では、標的核酸試料は、生体試料から単離された、全mRNAまたはmRNAに対応する核酸試料(例えば、cDNA)を含むことができる。全mRNAは、例えば、酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム抽出法を使用して、所与の試料から単離することができ、polyA+mRNAは、オリゴdTカラムクロマトグラフィーまたは(dT)n磁気ビーズを使用して単離することができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2版)、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、(1989年)、またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F. Ausubelら編 Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York(1987年)を参照されたい。ある特定の実施形態では、全RNAは、TRlzol(商標)試薬(GIBCO/BRL、Invitrogen Life Technologies、カタログ番号15596)を使用して抽出することができる。RNAの純度および完全性は、260/280nmでの吸光度およびアガロースゲル電気泳動とその後の紫外光下での検査によって評価することができる。
【0135】
ある特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションの前に標的核酸試料を増幅することが望ましい場合がある。当業者は、いかなる増幅方法も使用され、定量的結果が望まれる場合、増幅核酸の相対度数について維持または制御する方法を使用するように注意しなければならないことを理解するであろう。定量的な増幅方法は、当業者に公知である。例えば、定量的PCRでは、同じプライマーを使用して、既知量の制御配列を同時に増幅する。これにより、PCR反応を較正するのに使用することができる内部標準が提供される。したがって高密度アレイは、増幅核酸の定量化のための内部標準に特異的なプローブを含むことができる。定量的PCRについての詳細なプロトコルは、PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications、Innisら、Academic Press, Inc. N.Y.、(1990年)に提供されている。
【0136】
ある特定の実施形態では、標的核酸試料のmRNAは、逆転写酵素ならびにオリゴdTおよびファージT7プロモーターをコードする配列からなるプライマーで逆転写されることによって、一本鎖のDNA鋳型を提供する。第2のDNA鎖は、DNAポリメラーゼを使用して重合される。二本鎖のcDNAの合成の後、T7 RNAポリメラーゼが加えられ、RNAがcDNA鋳型から転写される。それぞれ1つのcDNA鋳型からの転写の連続的なラウンドにより、RNAが増幅される。インビトロ転写の方法は、当業者に公知であり(例えば、Sambrook、上記を参照されたい)、この特定の方法は、Van Gelderら、1990年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87巻:1663〜1667頁に詳細に記載されており、この筆者らは、この方法によるインビトロ増幅により、様々なRNA転写物の相対度数が保存されることを実証している。さらに、Eberwineら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:3010〜3014頁は、インビトロ転写による2ラウンドの増幅を使用することによって、最初の出発材料の10倍を超える増幅を実現し、それによって生体試料が限られている場合でさえ発現をモニターすることを可能にするプロトコルを提供している。
【0137】
本明細書に記載される方法に従って使用するのに適した検出可能な標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物が含まれる。有用な標識として、標識ストレプトアビジンコンジュゲートを用いた染色のためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAで一般に使用される他のもの)、および熱量測定標識、例えば、コロイド金または色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、など)ビーズが挙げられる。そのような標識の使用を教示する特許には、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;および同第4,366,241号が含まれる。
【0138】
そのような標識の検出手段は、当業者に公知である。したがって、例えば、放射標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出することができ、蛍光マーカーは、光検出器を使用して発光を検出することによって検出することができる。酵素標識は、一般に、基質とともに酵素を提供し、その基質に対する酵素の作用によって生成した反応生成物を検出することによって検出され、熱量測定標識は、着色標識を単に可視化することによって検出される。
【0139】
標識は、当業者に公知の任意のいくつかの手段によって組み込むことができる。例えば、標識は、試料核酸の調製中に、増幅ステップの間に同時に組み込むことができる。したがって、例えば、標識プライマーまたは標識ヌクレオチドを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、標識増幅産物を提供することになる。さらに、標識ヌクレオチド(例えば、フルオレセイン標識UTPおよび/またはCTP)を使用した、上述したような転写増幅は、転写核酸中に標識を組み込む。
【0140】
あるいは、標識は、最初の核酸試料(例えば、mRNA、polyA mRNA、cDNA、など)、または増幅が完了した後の増幅産物に直接添加することができる。核酸に標識を付ける手段は、当業者に公知であり、例えば、ニックトランスレーションまたは核酸のキナージング(kinasing)による末端標識(例えば、標識RNAを用いて)、およびその後の試料核酸を標識(例えば、フルオロフォア)に結合する核酸リンカーの結合(連結)を含む。
【0141】
ある特定の実施形態では、蛍光修飾は、シアニン色素、例えば、Cy−3/Cy−5 dUTP、Cy−3/Cy−5 dCTP(Amersham Pharmacia)、またはアレクサ色素によるものである(Khanら、1998年、Cancer Res. 58巻:5009〜5013頁)。
【0142】
ある特定の実施形態では、例えば、対象(例えば、癌または別の過剰増殖障害を有するか、これらを有するリスクのある対象)に由来する標的核酸試料、および対照核酸試料(例えば、健康な個体)を含めた、2つの標的核酸試料をアレイに同時にハイブリダイズすることが望ましい場合がある。さらなる実施形態では、一方の標的核酸試料は、対象の腫瘍または他の癌性成長から得ることができ、第2の標的核酸試料は、同じ対象由来の健康な生体物質から得ることができる。比較のために使用される2つの標的試料は、区別可能な検出シグナルを生成する異なる蛍光色素で標識され、例えば、対照試料由来の標的は、Cy5で標識され、モニターまたは診断される対象由来の標的は、Cy3で標識される。異なって標識された標的試料は、同じマイクロアレイに同時にハイブリダイズされる。標識された標的は、当技術分野で既知の方法を使用して、例えば、エタノール精製またはカラム精製によって精製することができる。
【0143】
ある特定の実施形態では、標的核酸試料は、マイクロアレイから生じるシグナルを標準化するために、マイクロアレイ上の対照プローブとハイブリダイズする、1つまたは複数の対照分子を含む。標識された標準化標的は、例えば、上述したマイクロアレイ上にスポットされる対照オリゴヌクレオチドと完全に相補性である核酸配列とすることができる。ハイブリダイゼーション後に標準化対照から得たシグナルは、ハイブリダイゼーション条件、標識強度、読み効率(reading efficiency)および完全なハイブリダイゼーションのシグナルをアレイ間で変化させる場合のある他の要因の変化についての対照を提供する。アレイ中のすべての他のプローブから読まれるシグナル(例えば、蛍光強度)は、対照プローブからのシグナル(例えば、蛍光強度)によって除し、それによって測定値を標準化することができる。
【0144】
標準化標的は、試料中に存在する他の標的の平均長を反映するように選択することができ、これらは、様々な長さを網羅するように選択することができる。標準化対照(複数も)も、アレイ中の他のプローブの(平均)塩基組成を反映するように選択することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは数個のみの標準化プローブが使用され、これらは、満足にハイブリダイズし(すなわち、二次構造を全く有さず、自己ハイブリダイズしない)、任意の標的分子とマッチしないように選択される。標準化プローブは、アレイ中の任意の位置またはアレイ全体にわたって複数の位置で局在化することによって、ハイブリダイゼーション効率の空間的変化を制御することができる。例えば、標準化対照は、アレイの隅角部または縁部ならびに中間部に位置することができる。
【0145】
核酸のアレイへのハイブリダイゼーションでは、プローブまたは標的核酸メンバーおよびその相補性の標的が、相補性の塩基対合を通じて安定なハイブリッド二本鎖を形成することができる条件下で、アレイ上の変性プローブまたは標的核酸メンバーおよび標的核酸試料をインキュベートする。次いでハイブリッド二本鎖を形成しない核酸は、一般に、付けられた検出可能な標識の検出によって検出されるハイブリダイズした核酸を残して洗い流される。核酸は、温度を上昇させ、または核酸を含む緩衝液の塩濃度を減少させることによって変性されることが一般に認識されている。低いストリンジェンシー条件下で(例えば、低温および/または高濃度の塩)、アニールされた配列が完全に相補性でない場合でも、ハイブリッド二本鎖(例えば、DNA:DNA、RNA:RNA、またはRNA:DNA)は形成する。したがって、ハイブリダイゼーションの特異性は、より低いストリンジェンシーで低減される。逆に、より高いストリンジェンシー(例えば、高温またはより低濃度の塩)では、順調なハイブリダイゼーションには、ミスマッチがより少ないことが要求される。ハイブリダイゼーション条件を至適化する方法は、当業者に公知である(例えば、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、24巻:Hybridization With Nucleic acid Probes、P. Tijssen編 Elsevier、N.Y.、(1993年)を参照されたい)。
【0146】
ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイズされていない標識された、または標識されていない核酸は、洗浄によって支持体表面から除去され、それによって基質表面上にハイブリダイズした標識核酸のパターンが生成する。様々な洗浄液が、当業者に知られており、使用することができる。標識され、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドおよび/または核酸の得られたハイブリダイゼーションパターンは、様々方法で可視化または検出することができ、検出の特定の様式は、標的核酸試料の特定の標識に基づいて選択され、代表的な検出手段には、シンチレーション計数、オートラジオグラフィー、蛍光測定、熱量測定の測定、発光測定などが含まれる。
【0147】
ハイブリダイゼーション、洗浄ステップおよび/または引き続く処理の後、得られたハイブリダイゼーションパターンは検出される。ハイブリダイゼーションパターンを検出、または可視化することにおいて、標識の強度またはシグナル値は、検出されるだけでなく、定量化され、例えば、ハイブリダイズしたアレイ上の各スポットからのシグナルは測定され、既知数の末端標識標的核酸によって発せられるシグナルに対応する単位値と比較されることによって、ハイブリダイゼーションパターン中のアレイ上の特定のスポットにハイブリダイズした、各末端標識標的のコピー数のカウントまたは絶対値を得る。
【0148】
アレイハイブリダイゼーションから収集したデータを分析するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、ハイブリダイゼーションの検出が蛍光標識を伴う場合、データ分析は、収集したデータから、基質の位置の関数として蛍光強度を求めるステップ、異常値、すなわち、所定の統計的分布から逸脱しているデータを除去するステップ、および残りのデータから、試験核酸の相対的結合親和性を計算するステップを含むことができる。得られたデータは、付随したオリゴヌクレオチドおよび/または核酸と試験核酸の間の結合親和性によって変化する、各領域での強度を含む画像として表示される。
【0149】
ある特定の実施形態では、ErbBおよび/またはMET RNA産物の発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせた逆転写(RT)を使用して、試料に由来するRNA産物を増幅することによって測定することができる。ある特定の実施形態では、当業者に理解されるように、RTは定量的とすることができる。
【0150】
試料に由来する全RNA、またはmRNAは、鋳型として使用することができ、RTKの転写部分に特異的なプライマーは、逆転写を開始するのに使用される。RNAを逆転写してcDNAにする方法は公知であり、例えば、Sambrookら、1989年の上記に記載されている。プライマー設計は、市販のソフトウェア(例えば、Primer Designer 1.0、Scientific Softwareなど)または標準的で当技術分野で公知である方法を利用して実現することができる。プライマーの設計および選択を支援するのに使用することができるプライマーソフトウェアプログラムには、例えば、The Primer Questソフトウェアが含まれ、これは、以下のウェブサイトリンクを通じて入手可能である:biotools.idtdna.com/primerquest/。さらに、RTKのプライマー設計において使用するために、ヒトゲノムデータベースから配列情報を検索し、更新する場合、以下のウェブサイトリンクが有用であり:l) the NCBI LocusLink Homepage: ncbi.nlrm.nih.gov/LocusLink/のワールドワイドウェブ、および2) Ensemble Human Genome Browser:ensembl.org/Homo_sapiensのワールドワイドウェブ、適切なRTK情報、例えば、遺伝子または配列の記述、アクセションまたは配列ID、遺伝子記号、RefSeq #、および/またはUniGene #などを使用することが好ましい。
【0151】
本明細書に記載される方法に従って使用することができるプライマーを設計するための一般的な指針には、以下のことが含まれる。産物または単位複製配列の長さは、約100〜150塩基とすることができ、至適Tmは、約60℃、または約58〜62℃とすることができ、GC含量は、約50%、または約45〜55%とすることができる。さらに、1つまたは複数の以下のものなどのある特定の配列を回避することが望ましい場合がある:(i)同じプライマーの別の部分、またはプライマー−二量体形成を低減するための別のプライマーと相補性であるそれぞれのプライマーの3’末端での3つ以上の塩基のストリング(ii)別のプライマー配列と相補性であるプライマー内の配列、(iii)3’末端での3つ以上のGまたはCの連続、(iv)3塩基を超える単一塩基の繰り返し(v)G/G−およびA/Tリッチドメインの不均衡な分布、ならびに/または(vi)3’末端でのT。
【0152】
逆転写の産物は、PCRのための鋳型として引き続いて使用される。PCRは、熱安定性の、DNA依存性DNAポリメラーゼによって触媒される、複数のサイクルのDNA複製を使用することにより、対象とする標的配列を増幅することによって、特定の核酸配列を急速に増幅するための方法を提供する。PCRは、増幅される核酸、増幅される配列に隣接する2つの一本鎖のオリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、緩衝液および塩の存在が必要である。PCRの方法は、当技術分野で公知である。PCRは、Mullis and Faloona、1987年、Methods Enzymol.、155巻:335頁に記載されているように実施される。
【0153】
本質的に定量的であるQRT−PCRを実施することによっても、RTK遺伝子発現レベルの定量的尺度を提供することができる。QRT−PCRでは、逆転写およびPCRは、2ステップで実施することができ、またはPCRと組み合わせた逆転写は、同時に実施することができる。TaqMan(商標)(Perkin Elmer、Foster City、CA)などの市販のキットが存在する、これらの技法の1つは、転写物特異的なアンチセンスプローブを用いて実施される。このプローブは、PCR産物(例えば、遺伝子に由来する核酸断片)に特異的であり、クエンチャーおよびオリゴヌクレオチドの5’末端と複合体形成した蛍光レポータープローブを用いて調製される。異なる蛍光マーカーが異なるレポーターに付けられ、1つの反応で2つの産物の測定を可能にしている。Taq DNAポリメラーゼが活性化されると、これは、5’−〜−3’エキソヌクレアーゼ活性によって、鋳型に結合したプローブの蛍光レポーターを切断する。クエンチャーの非存在下で、レポーターはすぐに蛍光を発する。レポーターの色変化は、それぞれ特異的な産物の量に比例し、蛍光光度計によって測定される。したがって各色の量が測定され、PCR産物が定量化される。PCR反応は、96ウェルプレート中で実施され、その結果、多くの個体に由来する試料が同時に処理され、測定される。TaqMan(商標)系は、ゲル電気泳動を必要としないという追加の利点を有し、検量線とともに使用される場合、定量化を可能にする。
【0154】
PCR産物を定量的に検出するのに有用な第2の技法は、市販のQuantiTect SYBR Green PCR(Qiagen、Valencia Calif.)などの挿入色素を使用することである。RT−PCRは、蛍光標識としてSYBRグリーンを使用して実施され、これは、PCR段階の間にPCR産物中に組み込まれ、PCR産物の量に比例した蛍光を生成する。さらに、Molecular Beacons(商標)を含めた、mRNA発現産物を定量的に測定するための他の系が知られている。
【0155】
RNA発現を定量的に測定するための追加の技法には、それだけに限らないが、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、Qβレプリカーゼ(例えば、国際出願第PCT/US87/00880号を参照されたい)、等温増幅法(例えば、Walkerら(1992年)PNAS 89巻:382〜396号を参照されたい)、鎖置換増幅(SDA)、修復連鎖反応、非対称定量的PCR(例えば、米国特許公開第US200330134307A1号を参照されたい)、およびFujaら、2004年、Journal of Biotechnology 108巻:193〜205頁に記載されている多重化ミクロスフェアビーズアッセイが含まれる。
【0156】
遺伝子発現のレベルは、核酸配列増幅(NASBA)および3SRを含めた、転写ベース増幅系(TAS)を使用して、試料由来のRNAを増幅することによって測定することができる。例えば、Kwohら(1989年)PNAS USA 86巻:1173頁;国際公開第WO88/10315号;および米国特許第6,329,179号を参照されたい。NASBAでは、増幅のための核酸は、従来のフェノール/クロロホルム抽出、熱変性、溶解緩衝液を用いた処理、ならびにDNAおよびRNAの単離のためのミニスピンカラム、またはRNAの塩化グアニジニウム抽出を使用して調製することができる。これらの増幅技法では、標的特異的配列を有するプライマーをアニーリングする。重合の後、DNA/RNAハイブリッドは、RNase Hで消化され、一方二本鎖DNA分子は、再び熱変性される。いずれの場合でも、一本鎖のDNAは、第2の標的特異的プライマーを添加し、その後に重合することによって、完全に二本鎖にされる。次いで二本鎖DNA分子は、T7またはSP6などのポリメラーゼによって多数回転写される。等温サイクル反応(cyclic reaction)では、RNAは、逆転写されて二本鎖DNAになり、T7またはSP6などのポリメラーゼで一度転写される。得られた産物は、切断されていても、完全であっても、標的特異的配列を示す。
【0157】
増幅産物を分離するのに、いくつかの技法を使用することができる。例えば、増幅産物は、従来方法を使用して、アガロース、アガロース−アクリルアミドまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離することができる。Sambrookら、1989年を参照されたい。電気泳動を用いることなく、PCR産物を定量的に検出するためのいくつかの技法も使用することができる(例えば、PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications、Innisら、Academic Press, Inc. N.Y.、(1990年))を参照されたい。例えば、クロマトグラフィー技法を使用することによって、分離を行うことができる。使用することができる多くの種類のクロマトグラフィー、すなわち、吸着、分配、イオン交換および分子篩、HPLCが存在し、カラム、ペーパー、薄層、ガスクロマトグラフィーを含めた、これらを使用するための多くの特殊化された技法が存在する(Freifelder、Physical Biochemistry Applications to Biochemistry and Molecular Biology、2版、Wm. Freeman and Co.、New York、N.Y.、1982年)。
【0158】
対象とする核酸配列の増幅を確認するために、増幅産物は可視化されなければならない。1つの一般的な可視化方法では、臭化エチジウムを用いてゲルを染色し、UV光下で可視化する。あるいは、増幅産物が、放射測定的または蛍光定量的に標識されたヌクレオチドで一体的に標識されている場合、増幅産物は、分離した後に、X線フィルムに曝露するか、適切な刺激スペクトル下で可視化することができる。
【0159】
あるいは、可視化は、間接的に実現することができる。増幅産物を分離した後、標識された核酸プローブは、対象とする増幅核酸配列と接触させる。プローブは、発色団と結合し、放射標識し、または抗体もしくはビオチンなどの結合パートナーと結合することができ、結合対の他のメンバーは検出可能部分を担持する。
【0160】
さらに、検出は、サザンブロット法および標識プローブとのハイブリダイゼーションを使用して実施することができる。サザンブロット法が関与する技法は、当業者に公知であり、分子プロトコルについての多くの標準的な書籍において見出すことができる。Sambrookら、1989年、上記を参照されたい。簡単に言えば、増幅産物は、ゲル電気泳動によって分離される。次いでゲルは、ニトロセルロースなどの膜と接触し、核酸の移動および非共有結合が可能になる。引き続いて、この膜は、標的増幅産物とハイブリダイズすることができる、発色団結合プローブとともにインキュベートされる。検出は、膜のX線フィルムへの曝露またはイオン放出検出デバイスによる。
【0161】
ある特定の実施形態では、核酸分解酵素保護アッセイ(リボヌクレアーゼ保護アッセイおよびSiヌクレアーゼアッセイの両方を含めて)を使用することによって、ErbBおよび/またはMET RNA産物を検出し、定量化することができる。核酸分解酵素保護アッセイでは、アンチセンスプローブ(例えば、放射標識されたか、非同位体標識された)は、RNA試料と溶液中でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションの後、一本鎖の、ハイブリダイズしていないプローブおよびRNAは、ヌクレアーゼによって分解される。残りの保護された断片を分離するために、アクリルアミドゲルが使用される。一般に、溶液ハイブリダイゼーションは、最大約100μgの試料RNAに適応することができるが、ブロットハイブリダイゼーションは、約20〜30μgのRNA試料しか適応することができない。
【0162】
最も一般的な種類の核酸分解酵素保護アッセイであるリボヌクレアーゼ保護アッセイは、RNAプローブの使用を必要とする。オリゴヌクレオチドおよび他の一本鎖DNAプローブは、S1ヌクレアーゼを含むアッセイにおいてのみ使用することができる。一本鎖の、アンチセンスプローブは、一般に、ヌクレアーゼによるプローブ:標的ハイブリッドの切断を防止するために、標的RNAと完全に相同性でなければならない。
【0163】
ある特定の実施形態では、ノーザンブロットアッセイを使用することによって、RNA転写物のサイズを確認し、選択的にスプライスされたRNA転写物、ならびにErbBおよび/またはMET遺伝子のRNA産物の相対量を特定することができる。ノーザンブロットでは、RNA試料は、変性条件下のアガロースゲル中の電気泳動により、サイズによって最初に分離される。次いでRNAは、膜に移され、架橋され、標識プローブとハイブリダイズされる。ランダムに初回刺激された(random−primed)、ニックトランスレートされた、またはPCRで生成したDNAプローブ、インビトロで転写されたRNAプローブ、およびオリゴヌクレオチドを含めた非同位体、または高比放射能放射標識プローブを使用することができる。さらに、部分的な相同性しか含まない配列(例えば、異なる種に由来するcDNA、またはエクソンを含む場合のあるゲノムDNA断片)を、プローブとして使用することができる。標識プローブ、例えば、全長の、一本鎖DNA、またはそのDNA配列の断片を含む放射標識cDNAは、長さが少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100の連続したヌクレオチドまでの任意の長さとすることができる。プローブは、当業者に既知である、任意の多くの様々な方法によって標識することができる。これらの研究のために、最も一般に使用される標識は、放射性元素、酵素、紫外光に曝されると蛍光を発する化学物質などである。いくつかの蛍光物質が知られており、標識として利用することができる。これらには、それだけに限らないが、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルーおよびルシファーイエローが含まれる。特定の検出物質は、ヤギ中で調製され、イソチオシアネートによってフルオレセインと結合した抗ウサギ抗体である。同位元素の非限定例として、H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reが挙げられる。酵素標識も同様に有用であり、現在利用されている熱量測定、分光光度的、蛍光分光光度的、電流測定、または気体定量技法のいずれによっても検出することができる。酵素は、架橋分子、例えば、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒドなどとの反応によって、選択されたプローブに結合することができる。例えば、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼを含めた、当業者に既知の任意の酵素を利用することができる。米国特許第3,654,090号、同第3,850,752号、および同第4,016,043号は、代替の標識物質および方法の開示について例として参照される。
【0164】
タンパク質発現
活性化突然変異または遺伝子増幅は、ErbBおよび/またはMETタンパク質発現レベルを検査することによっても検出することができる。タンパク質発現レベルを測定するための任意の当技術分野で認められた技法は、例えば、ゲル電気泳動(2−Dゲル電気泳動を含めて)、質量分析法および抗体結合を含むことができる。生体試料中でタンパク質レベルをアッセイするための好適な方法には、抗体に基づく技法、例えば、イムノブロッティング(ウエスタンブロッティング)、免疫組織学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはタンパク質チップなどが含まれる。例えば、ErbBおよび/またはMET特異的モノクローナル抗体を、免疫吸着剤および酵素−標識プローブの両方として使用することによって、ErbBおよび/またはMETを検出および定量化することができる。試料中に存在するErbBおよび/またはMETの量は、線形回帰コンピューターアルゴリズムを使用して、標準試料中に存在する量を参照することによって計算することができる。別の実施形態では、ErbBおよび/またはMETは、ErbBおよび/またはMETタンパク質に特異的な抗体を使用して、生体試料から免疫沈降させることができる。次いで単離されたタンパク質は、SDS−PAGEゲルを実施し、標準的な手順を使用してブロットすることができる(例えば、ニトロセルロースまたは他の適当な物質に)。次いでブロットを抗ErbBおよび/または抗MET特異抗体でプローブすることによって、ErbBおよび/またはMETタンパク質の発現レベルを求めることができる。
【0165】
ゲル電気泳動、免疫沈降法および質量分析法は、標準的な技法、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989年)、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(1988年 Cold Spring Harbor Laboratory)、G. Suizdak、Mass Spectrometry for Biotechnology(Academic Press 1996年)、ならびに本明細書に引用される他の参考文献に記載されているものなどを使用して実施することができる。
【0166】
ErbBおよび/またはMETの単離および検出に適した抗体は、様々な供給源から市販で購入することができる。ErbBおよび/またはMETに特異的な抗体は、本明細書にさらに記載されている標準的な技法を使用して作製することもできる(例えば、Current Protocols in Immunology and Using Antibodies:A Laboratory Manualを参照されたい)。
【0167】
活性レベル
ErbBおよび/またはMET活性化突然変異または遺伝子増幅は、ErbBおよび/またはMET活性を測定することによっても検出することができる。ErbBおよび/またはMET活性を判定するための様々な方法は、当業者に既知であり、本明細書にさらに記載されている。ErbBおよび/またはMET活性を測定するための例示的な方法には、例えば、以下のうちの1つまたは複数を検査することが含まれる:ErbBおよび/もしくはMETリン酸化、ErbBおよび/もしくはMETキナーゼ活性、またはErbBおよび/もしくはMET媒介シグナル伝達。ErbBおよび/またはMET活性は、細胞可溶化物を使用して細胞に基づくアッセイにおいて、または精製された成分もしくは部分的に精製された成分を使用してインビトロで判定することができる。一実施形態では、ErbBおよび/またはMETリン酸化は、米国特許第6,197,599号に記載されている抗体アレイを使用して検査することができる。複数のリン酸化受容体チロシンキナーゼに結合する市販の抗体アレイには、RayBio(商標)Phosphorylation Antibody ArrayおよびR&D SystemのPhospho−RTK Arrayが含まれる。
【0168】
リガンド媒介活性化
ErbBおよび/またはMETのリガンド媒介活性化は、本明細書にさらに記載されている、様々な当技術分野で認められた技法を使用して判定することができる。例えば、リガンド媒介活性化は、リガンド遺伝子の遺伝子増幅を検出することによって、またはリガンド遺伝子中の活性化突然変異を検出することによって判定することができる。遺伝子増幅および遺伝子突然変異を検出するための様々な方法は、本明細書で上記に説明されている。代替の実施形態では、ErbBまたはMETのリガンド媒介活性化は、ErbBまたはMET活性のレベルを求めることによって分析することができ、ErbBまたはMET活性の増大は、リガンドの量の増加に関連する。ErbBおよびMET活性を判定するための方法は、本明細書で上記に説明されている。他の実施形態では、ErbBまたはMETのリガンド媒介活性化は、例えば、免疫組織化学的分析、ELISA、または活性アッセイを使用して、リガンドタンパク質発現または活性のレベルをアッセイすることによって判定することができる。ErbBリガンドは、当技術分野で既知であり、EGF、TGFα、AR、BTC、HB−EPR、NRG1、NRG2、NRG3、およびNRG4を含む。肝細胞成長因子すなわちHGFは、METについてのリガンドである。
【0169】
5.アッセイ、キットおよび細胞株
別の態様において、本発明は抗MET療法を特定する方法を提供する。一般に、本方法は細胞を1つまたは複数の抗ErbB治療剤および試験化合物、例えば、候補抗MET治療剤の組合せと接触させることを含む。例えば細胞は、抗ErbB治療剤に対して耐性を獲得した癌細胞であってもよい。加えて、細胞はMET遺伝子またはMET遺伝子増幅中に活性化突然変異を含んでもよい。抗MET治療剤としての試験化合物の有効性は、METタンパク質の1つまたは複数の生物活性の減少を検出することによって測定することができる。METタンパク質の生物活性減少の測定は、例えば、以下の細胞の過程の変化:ErbBリン酸化の減少、METリン酸化の減少、ErbB−MET結合の減少、PI3K活性の減少、AKTリン酸化の減少、細胞成長の減少、細胞増殖の減少またはアポトーシスの増加の1つまたは複数を検出することによって検査することができる。ある特定の実施形態では、結果を、試験化合物の非存在下で行った2回反復アッセイまたは既知の抗MET活性を有する試験化合物の存在下で行った2回反復アッセイなどの対照と比較することが望ましい場合がある。さらに別の実施形態において、対照はデータベース中の参照番号であってもよい。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、METタンパク質の生物活性を試験化合物の非存在下での生物活性と比較して少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍またはそれ以上減少させる試験化合物を特定するために使用してもよい。例示的なMET生物活性は、例えば、キナーゼ活性、タンパク質間相互作用(例えば、受容体ホモもしくはヘテロ二量体化、リガンド結合、または基質への結合など)、またはMET媒介シグナル伝達を含む。
【0170】
本明細書に記載のアッセイにおいて活性を試験する試験化合物は、化合物のライブラリーを含めて、タンパク質(翻訳後修飾されたタンパク質を含む)、ペプチド(化学的または酵素的に修飾されたペプチドを含む)、または小分子(炭水化物、ステロイド、脂質、アニオンまたはカチオン、薬物、有機小分子、オリゴヌクレオチド、抗体、および薬剤のタンパク質をコードする遺伝子またはアンチセンス分子を含む)を含むことができる。試験化合物は天然起源の(例えば、自然界にあるまたは自然界から単離された)ものであってもよく、または非天然起源の(例えば、合成の、化学合成されたまたは人工の)ものであってもよい。
【0171】
必要に応じて、試験化合物は、生物学的ライブラリー、空間的に位置指定可能な平行固相または液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、「1−ビーズ1−化合物」ライブラリー法、および選択的親和性クロマトグラフィーを使用した合成ライブラリー法を含むがこれらに限定されるものではない、当技術分野において既知の多くのコンビナトリアルライブラリー法のいずれかを使用して得ることができる。生物学的ライブラリーによるアプローチはポリペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチはポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用可能である。Lam、Anticancer Drug Des. 12巻、145頁、1997年を参照されたい。
【0172】
分子ライブラリーの合成方法は当技術分野においてよく知られている(例えば、DeWittら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90巻、6909頁、1993年;ErbらProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91巻、11422頁、1994年;Zuckermannら、J MedChem. 37巻、2678頁、1994年;Choら、Science 261巻、1303頁、1993年;Carellら、Angew. Chem. Int. Ed Engl. 33巻、2059頁、1994年;Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33巻、2061頁;Gallopら、J. Med Chem. 37巻、1233頁、1994年を参照されたい)。化合物のライブラリーは溶液中(例えば、Houghten、BioTechniques 13巻、412〜421頁、1992年を参照)に、またはビーズ(Lam、Nature 354巻、82〜84頁、1991年)、チップ(Fodor、Nature 364巻、555〜556頁、1993年)、細菌もしくは胞子(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad Sci. U.S.A. 89巻、1865〜1869頁、1992年)、またはファージ(Scott & Smith、Science 249巻、386〜390頁、1990年;Devlin、Science 249巻、404〜406頁、1990年);Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. 97巻、6378〜6382頁、1990年;Felici、J. Mol. Biol. 222巻、301〜310頁、1991年;およびLadner、米国特許第5,223,409号)上に提供することができる。
【0173】
試験化合物を、ハイスループットスクリーニングを使用してMET活性をアンタゴナイズする能力についてスクリーニングすることができる。ハイスループットスクリーニングを使用して、多数の試験化合物を迅速にスクリーニングできるように、多くの別個の化合物を並行して試験することができる。最も広範に確立されている技術では、96ウェルマイクロタイタープレートを利用する。プレートに加えて、多くの器具、材料、ピペッター、自動制御装置、プレートウォッシャー、およびプレートリーダーは96ウェルフォーマットに合うものが市販されている。
【0174】
あるいは、フリーフォーマットアッセイ、またはサンプル間に物理的障壁のないアッセイを使用することができる。フリーフォーマットを含むアッセイは例えば、Philadelphia、Pa.においてFirst Annual Conference of The Society for Biomolecular Screeningで報告されたJayawickremeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 19巻、1614〜18頁(1994年);Chelsky、「Strategies for Screening Combinatorial Libraries: Novel and Traditional Approaches」、(11月7日〜10日、1995年);およびSalmonら、Molecular Diversity 2巻、57〜63頁(1996年)に記載されている。別のハイスループットスクリーニング法は、Beutelら、米国特許第5,976,813号に記載されている。
【0175】
別の態様において、本発明は抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した細胞を産生する方法を提供する。本方法は、抗ErbB治療剤に感受性の細胞を、少なくとも1つの抗ErbB治療剤と接触させること、および抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得する細胞を特定することを含む。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法によって産生された細胞は、抗ErbB治療剤に対する耐性を付与するErbB遺伝子に変異を含有せず、例えば、異なる機構またはErbB配列ではない配列中の変異によって細胞は耐性を獲得している。細胞は、抗ErbB治療剤と少なくとも5日間、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、またはそれ以上接触させてもよい。細胞は、経時的に濃度を増加させて抗ErbB治療剤と接触させてもよい。例えば、所定の濃度の存在下で細胞成長が回復するにつれて濃度を増加させてもよく、この過程を繰り返してもよい。例えば、抗ErbB治療剤の濃度を約IC30〜約IC40、IC50、およびIC60、またはそれ以上まで経時的に増加させてもよい。抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した細胞を特定する種々の方法を使用してもよく、本明細書にさらに記載する。例えば、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した細胞の特定は、例えば、抗ErbB治療存在下において以下:細胞成長の増加、細胞増殖の増加、アポトーシスの減少、ErbBリン酸化の増加、METリン酸化の増加、ErbB−MET結合の増加、AKTリン酸化の増加、PI3キナーゼ媒介シグナル伝達の増加、ErbB媒介シグナル伝達の増加、MET媒介シグナル伝達の増加、MET活性化突然変異の存在、MET遺伝子増幅の存在、METの過剰発現、METリガンドの過剰発現などのうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、細胞の感受性を、例えば抗ErbB治療剤の非存在下で行った2回反復アッセイなどの対照と比較することが望ましい場合がある。さらに別の実施形態において、対照はデータベース中の参照番号であってもよい。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、抗ErbB治療剤に対する耐性が対照と比較して少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍またはそれ以上増加する細胞株を産生するために使用してもよい。
【0176】
種々の実施形態において、細胞が1つまたは複数の抗ErbB治療剤に対する耐性を発生させるように、細胞を1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の異なる抗ErbB治療剤と接触させることが望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、細胞を単一タイプの抗ErbB治療剤(例えば、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤)と接触させることが望ましい場合がある。あるいは、例えば、ErbBキナーゼ阻害剤とsiRNA、またはErbBキナーゼ阻害剤と抗ErbB抗体の組合せなど異なるクラスの抗ErbB治療剤の組合せを使用してもよい。ある特定の実施形態では、細胞が例えば抗ErbB1治療剤に対する耐性を発生させるように、細胞をErbB1、ErbB2、ErbB3、またはErbB4のうち1つのみを対象とする抗ErbB治療剤と接触させることが望ましい場合がある。別の実施形態において、細胞を異なるErbBタンパク質を標的とする抗ErbB治療剤の組合せと接触させることが望ましい場合がある。例えば、細胞が両タイプの治療剤に対する耐性を発生させるように、細胞を抗ErbB1(抗EGFR)治療剤および抗ErbB2治療剤と接触させることが望ましい場合がある。さらに別の実施形態において、本方法は、細胞を1つまたは複数の多特異的ErbB治療剤、例えば、2つ以上のErbBタンパク質を標的とする1つまたは複数のキナーゼ阻害剤と接触させることを含んでもよい。このような治療剤の例は本明細書中にさらに記載されている。
【0177】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって産生された細胞または細胞株を提供する。特に、抗ErbB2治療剤耐性を生じさせるErbB配列に変異を含有しない、抗ErbB2治療剤耐性を獲得した細胞を本明細書において提供する。
【0178】
別の態様において、本発明は研究目的、創薬、診断目的、治療経過のモニタリング、用量最適化などに役立つキットを提供する。
【0179】
一実施形態において、本発明は、抗ErbB治療剤に耐性の癌に罹患している患者を治療するためのキットを提供する。このようなキットは、MET活性化変異、MET遺伝子増幅、もしくはHGFに媒介されるMET活性化(前述)を検出するための少なくとも1つの構成要素、および抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤(前述)を含んでもよい。例えば、キットは抗ErbB治療剤、およびMET活性化変異、MET遺伝子増幅、またはHGFに媒介されるMET活性化を検出するための少なくとも1つの構成要素を含んでもよい。このようなキットは、治療に対する耐性を発生する患者を特定するための、抗ErbB治療剤で治療されている対象のモニタリングに役に立ち得る。別の実施形態では、キットはMET活性化変異、MET遺伝子増幅、またはHGFに媒介されるMET活性化を検出するための少なくとも1つの構成要素、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を含んでもよい。このようなキットは、治療に対する耐性を発生する患者を特定するための、抗ErbB治療剤で治療されている対象のモニタリングに役に立ち、抗ErbB治療に耐性であると発見された、およびMET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する対象のための改良された治療レジメンを提供する。このようなキットは例示に過ぎず、本明細書に提供された開示に基づいて多くの他のタイプのキットが当業者によって想定され得る。
【0180】
MET活性化突然変異または遺伝子増幅を検出するための構成要素は、突然変異または遺伝子増幅を検出するための本明細書に記載の種々の方法と併用して使用できる任意の構成要素であってよい。例示的な構成要素は、例えば、MET(またはホスホMET)、METリガンド、またはMETの基質に結合する抗体もしくはその抗原結合断片、METまたはMETリガンドを特異的に増幅するPCRプライマーセット、または支持体に接着された、METまたはMETリガンドをコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも断片を含む固体支持体(マイクロアレイチップなど)を含む。キットは、以下の1つまたは複数をさらに含有してもよい:検出標識、陽性対照、陰性対照、METタンパク質、キナーゼアッセイを行うための試薬、結合アッセイを行うための試薬、ErbB、METおよび/またはPI3キナーゼ媒介シグナル伝達を測定するための試薬、使用説明書、反応容器、緩衝液など。キットはまた、ErbB活性化突然変異または遺伝子増幅を検出するための構成要素を含んでもよい。
【0181】
ある特定の実施形態では、キットは、抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性の、ErbBおよびMET活性化突然変異または遺伝子増幅を有する癌細胞を含んでもよい。キットはまた、以下の1つまたは複数をさらに含有してもよい:検出標識、陽性対照、陰性対照、使用説明書、反応容器、緩衝液、抗ErbB治療剤、細胞の増殖、成長および/またはアポトーシスを測定するための試薬、キナーゼアッセイを行うための試薬、結合アッセイを行うための試薬、ErbB、METおよび/またはPI3キナーゼ媒介シグナル伝達を測定するための試薬など。このようなキットは、例えば、MET治療剤の特定、抗ErbBおよび抗MET治療剤の組合せの試験、薬剤投与または治療レジメンの最適化などに役に立ち得る。
【0182】
キットのそれぞれの構成要素は、反応に適した最終濃度を実現するために混合してもよい。さらに、これらの構成要素に加えて、キットは反応に適した条件を与える緩衝液を含んでもよい。抗体、基質、リガンド、キナーゼなどのタンパク質構成要素を安定剤と混合してもよい。例えば、キット構成要素は、凍結乾燥後のタンパク質変性を防止するために、約1%BSAおよび約1%ポリオール(例えば、スクロースまたはフルクトースなど)の存在下で保存および/または輸送してもよい。
【0183】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるキットはまた、ErbBおよび/またはMETタンパク質およびRNA産物の発現を測定するための構成要素を含んでもよい。このような構成要素は、例えば、(1)生体試料のRNAを精製するための試薬;(2)試験核酸を作製するためのプライマー;(3)dNTPおよび/またはrNTP(プレミックスまたは別個の)、場合により1つまたは複数の独自に標識されたdNTPおよび/またはrNTP(例えば、ビオチン化またはCy3またはCy5タグ付きdNTP)と一緒に;(4)蛍光色素の化学的に活性な誘導体などの合成後標識試薬;(5)逆転写酵素、DNAポリメラーゼなどの酵素;(6)種々の緩衝媒体、例えば、ハイブリダイゼーションおよび洗浄用緩衝液など;(7)スピンカラムなどのような標識化プローブ精製試薬および構成要素;(8)タンパク質精製試薬;および(9)シグナル生成および検出試薬、例えば、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート、化学蛍光または化学発光基質などの、タンパク質およびRNA産物の発現を測定するために必要な材料および試薬を含む。特定の実施形態において、キットは、対照として使用するための生体試料から単離された、前標識され、品質管理されたタンパク質およびまたはRNAを含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、キットはRT−PCR構成要素、またはハイブリダイゼーション構成要素を含んでもよい。例えば、キットは、核酸アレイ、タンパク質アレイ、抗体アレイ、ホスホタンパク質アレイ、ホスホ抗体アレイなどを含んでもよい。このようなキットを使用して、MET、ErbB、これらのリガンド、および/またはこれらの基質の発現レベルを測定することができる。
【0185】
6.医薬組成物
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象への1つまたは複数の抗ErbB治療剤および/または1つまたは複数の抗MET治療剤の投与を含んでもよい。抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、1つまたは複数の生理学的に許容可能な担体または賦形剤を使用して、従来の様式で処方することができる。例えば、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤、およびこれらの生理学的に許容可能な塩および溶媒和物を、例えば、注射(例えば、SubQ(皮下)、IM(筋肉内)、IP(腹腔内))、吸入もしくは吹送(口または鼻を通して)、または経口、口腔、舌下、経皮、経鼻、非経口もしくは直腸投与による投与用に処方してもよい。一実施形態では、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、標的細胞が存在する部位に、すなわち、特定の組織、器官、または体液(例えば、血液、脳脊髄液、腫瘍塊など)に局所的に投与することができる。
【0186】
抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、全身、および局所的または限局的投与を含む、種々の投与方法用に処方することができる。技術および処方は通常、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Meade Publishing Co.、Easton、PAで見ることができる。非経口投与には、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下を含む注射が好ましい。注射用に、化合物を溶液中に、好ましくは例えばハンクス液またはリンゲル液などの生理学的に適合性のある緩衝液中に処方することができる。加えて、化合物を固体形態に処方し、使用直前に再溶解または懸濁してもよい。凍結乾燥形態もまた含まれる。
【0187】
経口投与用に、医薬組成物は、結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウムなど);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたは二酸化ケイ素など);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプンなど);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)などの薬学的に許容可能な賦形剤を用いて従来の手段によって調製される、例えば、錠剤、薬用ドロップ、またはカプセルの形態をとることができる。錠剤は、当技術分野においてよく知られている方法によってコーティングしてもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形態をとることができ、または、使用前に水または他の適当なビヒクルと構成するための乾燥品として存在してもよい。このような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用脂など);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴムなど);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、オイルエステル、エチルアルコールまたは精留植物油など);および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤を用いて従来の手段によって調製することができる。製剤はまた、緩衝塩、香料、着色剤および甘味剤を適切なように含有してもよい。経口投与用の製剤は、活性化合物の放出を制御するように適切に処方してもよい。
【0188】
吸入による投与(例えば、肺送達)用には、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤を、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスなどの適当な推進剤の使用によって、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー状の形態で都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定できる。吸入器または吹送器で使用する、例えばゼラチンの、カプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末混合物およびラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤を含有して処方することができる。
【0189】
抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、注射、例えばボーラス注射または持続注入などによる非経口投与用に処方することができる。注射用の処方は、例えば、アンプルなどの単位剤形で、または防腐剤を添加した複数回投与容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中で懸濁剤、液剤または乳剤などの形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、使用前に適当なビヒクル、例えば、滅菌発熱物質除去水などと構成するための粉末形態であってもよい。
【0190】
加えて、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤はまた、デポー製剤として処方することもできる。このような長時間作用型の製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内に)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、適当なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容可能なオイル中の乳剤として)またはイオン交換樹脂と一緒に、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として処方することができる。放出制御処方はまたパッチも含む。
【0191】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物を、中枢神経系(CNS)への送達用に処方することができる(Begley、Pharmacology & Therapeutics 104巻:29〜45頁(2004年)に概説されている)。CNSへの薬物送達のための従来のアプローチは以下を含む:神経外科的戦略(例えば、脳内注射または脳室内注入など);BBBの内因性輸送経路の1つを活用するための薬剤の分子操作(例えば、それ自体はBBBを通過できない薬剤と組み合わせて、内皮細胞表面分子に対する親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質);薬剤の脂溶性を高めるように設計される薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤の脂質またはコレステロール担体へのコンジュゲーションなど);および(マンニトール溶液の頸動脈への注入またはアンジオテンシンペプチドなどの生物学的に活性な薬剤の使用の結果生じる)高浸透圧破壊によるBBB完全性の一時的破壊。
【0192】
一実施形態において、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤は、一般に局所的薬物投与に適する局所用担体を含有し、当技術分野において知られる任意のこのような材料を含む、局所製剤に組み込まれる。局所用担体は、例えば、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、オイル、溶液など所望の形態の組成物を提供するように選択してもよく、天然起源または合成起源の材料から構成されてもよい。選択した担体が局所製剤の活性薬剤または他の構成要素に悪影響を及ぼさないことが好ましい。本明細書で使用される適当な局所用担体の例は、水、アルコールおよび他の非毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ワックスなどを含む。
【0193】
医薬組成物(化粧品を含む)は、0.001〜10重量%または0.1%〜5重量%など約0.00001〜100重量%の1つまたは複数の本明細書に記載の抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤を含むことができる。ある特定の局所製剤では、活性薬剤は製剤の約0.25重量%〜75重量%、好ましくは製剤の約0.25重量%〜30重量%、より好ましくは製剤の約0.5重量%〜15重量%、および最も好ましくは製剤の約1.0重量%〜10重量%の量で存在する。
【0194】
目の疾患を、例えば、抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤の全身、局所的、眼内注射によって、または抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤を放出する持続放出デバイスの挿入によって、治療または予防することができる。抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤を、化合物が眼表面と十分な時間接触を維持し、化合物を眼の角膜および内部領域、例えば、前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜および強膜などに浸透させるように、薬学的に許容可能な眼用ビヒクルで送達することができる。薬学的に許容可能な眼用ビヒクルは、例えば、軟膏、植物油またはカプセル化材料であってもよい。あるいは、化合物を硝子体液または房水中に直接注射してもよい。さらに別法では、目の治療のために化合物を静脈内注入または注射など全身に投与することができる。
【0195】
核酸治療剤の送達方法は、当技術分野において知られている(例えば、Akhtarら、1992年、Trends Cell Bio.、2巻、139頁;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics、Akhtar編、1995年;Sullivanら、PCT公開第WO94/02595号を参照されたい)。これらのプロトコルは、実質的にいかなる核酸の送達にも利用することができる。イオントフォレシスによる、またはヒドロゲル、シクロデキストリンなどの別のビヒクルへの組み込みによるリポソームカプセル化、生物分解性ナノカプセル、および生体接着性ミクロスフェアを含むがこれらに限定されない当業者に知られている様々な方法によって、核酸を細胞に投与することができる。あるいは、直接注射によってまたは注入ポンプの使用によって核酸/ビヒクルの組合せを局所的に送達する。他の送達経路は、経口(錠剤またはピル形態)および/または髄腔内送達(Gold、1997年、Neuroscience、76巻、1153〜1158頁)を含むがこれらに限定されない。他のアプローチは、例えば、コンジュゲートおよび生物分解性ポリマーの使用による様々な輸送および搬送システムの使用を含む。薬物送達戦略についての包括的概説に関しては、Hoら、1999年、Curr. Opin. Mol. Ther.、1巻、336〜343頁およびJain、Drug Delivery Systems: Technologies and Commercial Opportunities、Decision Resources、1998年およびGroothuisら、1997年、J. NeuroVirol.、3巻、387〜400頁を参照されたい。核酸送達および投与のより詳細な説明は、Sullivanら、上記、Draperら、PCT公開第WO93/23569号、Beigelmanら、PCT公開第WO99/05094号およびKlimukら、PCT公開第WO99/04819号に提供されている。
【0196】
抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって判定することができる。LD50は集団の50%を致死させる用量である。ED50は集団の50%において治療的に有効な用量である。毒性および治療有効性の用量比(LD50/ED50)が治療指数である。大きい治療指数を示す抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤が好ましい。毒性の副作用を示す抗ErbB治療剤および/または抗MET治療剤を使用してもよいが、非感染細胞に対して予想される損傷を最小限にし、およびそれによって副作用を低減させるために、このような化合物を標的とする患部組織への薬物送達の設計には注意を払うべきである。
【0197】
細胞培養物アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトに使用するための用量範囲を処方する際に使用することができる。このような化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む血中濃度の範囲内にあってもよい。用量は、採用された剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化してもよい。任意の化合物について、治療的に有効な用量を、最初は細胞培養物アッセイから予測することができる。細胞培養物において測定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度を達成するために、用量を動物モデルにおいて処方してもよい。ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために、このような情報を使用することができる。血漿中の濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【実施例】
【0198】
以下に一般的に記述する本発明は、本発明のある特定の態様および実施形態を例示するためだけに含まれ、本発明を制限することを決して意図しない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0199】
(実施例1)
MET増幅はEGFRキナーゼ阻害剤耐性を引き起こす
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、標的キナーゼが遺伝子機構により活性化される、腫瘍の有効な抗癌治療として登場した。説得力のある臨床例として、慢性骨髄性白血病(CML、BCR−ABL転座)または消化管間質腫瘍(GIST、KITまたはPDGFRAの活性化突然変異)治療のためのイマチニブ、ならびに上皮成長因子受容体(EGFR)に活性化突然変異を保有する非小細胞肺癌(NSCLC)治療のためのEGFR TKIゲフィチニブおよびエルロチニブの使用が挙げられる(1〜4)。
【0200】
EGFRの体細胞変異は、白人のNSCLC腫瘍の10〜15%およびアジア人のNSCLC腫瘍の30〜40%に起こり、EGFRチロシンキナーゼドメインのエクソン18〜21に位置する。一連のオーバーラップしたエクソン19の欠失およびエクソン12のミスセンス変異(L858R)という2つのよくあるタイプの変異が、すべての既知のEGFR変異の85%を占める(5)。EGFR変異細胞株をゲフィチニブで処理すると、患者において観察される劇的な臨床反応と同様のアポトーシスを引き起こす(6)。しかしながら、EGFR変異NSCLCは最初EGFR阻害剤に反応するが、ゲフィチニブおよびエルロチニブで処置した患者の大多数において最終的にはこれらの薬剤に対する耐性を獲得する。このような患者の50%において、790番目のトレオニンのメチオニンへの置換(T790M)という、単一の二次変異が特定された(7、8)。しかしながら、残りの腫瘍における耐性獲得の機構は不明である。EGFR変異腫瘍がPI3K/Aktシグナル伝達を活性化するために特にERBB3を利用すること、およびゲフィチニブがEGFR変異NSCLCにおいてアポトーシスを誘導するためにはERBB3/PI3K/Aktシグナル伝達経路の下方制御が必要であることが示されている(9、10)。とりわけ、ERBB2増幅乳癌細胞においてERBB3リン酸化の持続がゲフィチニブ耐性を引き起こすこともまた示されている(11)。
【0201】
ゲフィチニブ耐性のさらなる機構を探求するために、ゲフィチニブ高感受性(IC50 10nM)EGFRエクソン19欠失(E746〜A750欠失)変異NSCLC細胞株、HCC827の耐性クローンを、ゲフィチニブ濃度を増加させながら細胞を6カ月曝露させることによって作製した。得られた細胞株HCC827GR(Geftinib Resistant(ゲフィチニブ耐性))および単一細胞から単離した6個のクローンは、インビトロでゲフィチニブ耐性であった(IC50>10μM。図1A)。親細胞株の場合とは異なり、GR細胞においてERBB3およびAktのリン酸化はゲフィチニブ存在下で維持された(図1B)。この観察結果はEGFRの二次変異によるものであったのかを確認するため、6個すべてのGRクローンのEGFRの全コード領域を配列決定したところ、既知のエクソン19の欠失変異が明らかになった。しかしながら、T790M変異は検出されなかった。加えて、1%の頻度でも遺伝子変異を検出可能な高感度酵素法(Surveyor(商標))を使用して、6個すべてのHCC827GRクローンのEGFRの全コード領域における変化を検査した(12)。HCC827親細胞株との差異は検出されなかった。さらに、T790M変異を保有するNSCLC細胞株の成長を阻害できる不可逆的阻害剤CL−387,785は、HCC827GR細胞株の成長を抑制しなかった(13)。
【0202】
別の受容体の異常活性化が、観察された耐性を仲介しているかどうかを確認するために、ホスホ受容体チロシンキナーゼ(RTK)アレイ(R&D systems)を使用して、HCC827およびHCC827GR5細胞の42個の異なるリン酸化RTKパネルに対するゲフィチニブの効果を比較した(図1C)。HCC827細胞株において、EGFR、ERBB3、ERBB2およびMETはすべてリン酸化されており、これは1μMのゲフィチニブ処理後に完全にまたは顕著に低下した。対照的にHCC827GR細胞において、ゲフィチニブ存在下であってもMETの顕著なリン酸化、ならびにERBB3およびEGFRの持続的なリン酸化が認められた(図1C)。耐性の背景にある機構をさらに探求するために、本発明者らはHCC827GR細胞株のゲノムワイドなコピー数解析を行い、Human Mapping 250K Sty一塩基多型(SNP)アレイを使用してそれらをHCC827親細胞と比較した(図1D)。耐性細胞株において、親細胞株には存在しなかった7番染色体長腕(7g31.1〜7g33.3を包含している)における著しい限局的な増幅が検出された。この領域はMET癌原遺伝子を含有する(図1E)。定量PCRを使用して、HCC827親細胞株と比較してすべてのHCC827耐性細胞株においてMETが5〜10倍増幅されたことを確認した(図6)。mRNA発現プロファイリングを使用して、本発明者らはさらにGRおよび親細胞株におけるmRNA発現プロファイルを比較した(図8)。GR細胞において最も特異に過剰発現された20個の配列のうち、MET自体は3回出現した。6個すべてのHCC827GRクローンのMETの全コード領域を配列決定したが、MET変異は検出されなかった。総合すると、これらの結果はMET増幅がMET発現の増加を引き起こし、これがHCC827GR細胞株におけるゲフィチニブ存在下でのMET、EGFRおよびERBB3のリン酸化、およびインビトロでのゲフィチニブ耐性に関連することを示唆する。
【0203】
METシグナル伝達の増加がゲフィチニブ耐性獲得を引き起こすかどうかを確認するため、MET阻害がHCC827GR細胞の成長を抑制するかどうかを調べた。HCC827GR細胞をMETチロシンキナーゼ阻害剤であるPHA−665,752に単独で、またはゲフィチニブと組み合わせて曝露させた(14)。HCC827GR5細胞はゲフィチニブおよびPHA−665,752単独の両方に耐性であったが、組み合わせると、両薬物の濃度>33nMで、顕著なアポトーシスを伴って(図7)85%を超える成長阻害が認められた(図2A)。他のすべてのHCC827GRクローンで同様の結果が観察された。次に、耐性細胞においてEGFRシグナル伝達に対するゲフィチニブおよびPHA−665,752の効果を調べた。HCC827GR細胞株において、親細胞の場合とは異なり、ゲフィチニブは単独でEGFRのリン酸化を低下させるが完全には阻害できず、p−ERBB3またはp−Aktに対する効果は最小であった。しかしながら、PHA−665,752と組み合わせると、HCC827GR細胞株におけるERBB3およびAktリン酸化は完全に抑制される。注目すべきは、ゲフィチニブ処理で観察された残りのEGFRリン酸化もまた、PHA−665,752の添加により除去され、前述のように残りのEGFRリン酸化がMETキナーゼ活性に起因していたことを示唆した(15)。HCC827GR細胞においてPI3KIAktが活性化された機構をより正確に定義するために、PI3Kのp85調節サブユニットを免疫沈降し、共沈したタンパク質を分析した。HCC827親細胞株において、2つの主要なホスホチロシンタンパク質、ErbB3および既知のMETアダプタータンパク質である成長因子受容体結合タンパク質2(Grb2)結合バインダー1(Gab1)がp85と共沈する(図2C)(16)。どちらの相互作用もゲフィチニブ存在下で妨害された。対照的に、ErbB3およびGab1はともに、HCC827GR細胞においてゲフィチニブ単独の存在下でp85とやはり共沈したが、これらの相互作用はゲフィチニブおよびPHA−665,752の両方の存在下で完全に妨害された(図2C)。これらの観察結果は細胞抽出物において観察されたホスホERBB3の消失と一致し、METがEGFRキナーゼ活性に関係なくERBB3活性化を誘発できることを示唆する。HCC827GR細胞をPHA−665,752単独で処理すると、Gab1のp85との結合を妨げるがp−Aktレベルに対する効果は最小であり(図2Bおよび2C)、その結果、これらのゲフィチニブ耐性細胞株においてGab1のPI3Kとの結合はAktリン酸化に必要ないことを示す。重要なことには、METの2つの異なる領域に対するショートヘアピン(sh)RNAを使用してMETを下方制御すると、HCC827GRのゲフィチニブに対する感受性もまた回復する(図2D)(17)。さらに、MET特異的shRNAは2つともMETをHCC827親細胞株に見られるレベル(図2B参照)まで下方制御し、これらの細胞株においてERBB3およびAktリン酸化の両方を下方制御するゲフィチニブの能力を回復させた。総合すると、これらの結果はMET増幅がERBB3リン酸化を維持することによってゲフィチニブ存在下でPI3KIAktシグナル伝達の持続的な活性化を引き起こすことを示唆する。
【0204】
MET増幅およびそのPHA−665,752に対するインビトロ感受性との関連が、胃癌細胞株において最近報告された(18)。したがって、MET増幅を有する他の細胞株もまたERBB3を利用してPI3K/Aktシグナル伝達を活性化するかどうかを確認した。HCC827GR細胞と同様に、H1993NSCLC細胞においてならびにSNU638およびMKN45胃癌細胞においてERBB3はp85と結合することがわかった。この結合はPHA−665,752によって妨害されたが、ゲフィチニブ、EGFR/ERBB2二重阻害剤ラパチニブによってまたはCL−387,785によって妨害されなかった(図3A)。したがって、METはEGFRおよびERBB2非依存的にERBB3リン酸化およびPI3Kとの結合を引き起こす。同様にERBB3およびAktリン酸化はPHA−665,752のみに阻害された(図3A)。加えて、ERBB3はSNU638細胞において、レンチウイルスを用いてこれらの細胞をERBB3特異的shRNAに感染させ、顕著なp−Aktの減少(図3B)および成長阻害(図3C)を引き起こすことによって下方制御された。これらの検討を総合すると、PI3K/Akt活性化の機構としてERBB3がMET依存的にチロシンリン酸化されるというHCC827GR細胞での観察結果は、他のMET増幅細胞において一般化可能であることが示唆される。
【0205】
そこで、METが直接ERBB3リン酸化を引き起こすことができるかどうかを確認した。検出可能なレベルのEGFR、ERBB2またはERBB3を通常発現しないチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、ERBB3を単独でまたはMETと組み合わせて発現させた。METおよびERBB3を共発現しているCHO細胞において顕著なERBB3リン酸化が認められ、これはPHA−665,752によって妨げられたが、高用量のゲフィチニブ、ラパチニブまたはSRCファミリーキナーゼ阻害剤PP2には妨げられなかった(図3D)。これらの細胞において、チロシンリン酸化ERBB3はMETキナーゼ依存的にp85と共免疫沈降した(図3E)。また、CHO細胞からのERBB3およびMETの共沈も観察された(図3Eおよび3F)。総合すると、これらの結果により、非ERBBまたはSRC依存的にMETがERBB3と結合でき、ERBB3リン酸化およびPI3Kとの結合を促進できることが示唆される。
【0206】
次に、ゲフィチニブ耐性を獲得したEGFR変異NSCLC患者においてMET増幅が起こり得るかどうかを調べた。全員が最初ゲフィチニブおよびエルロチニブに対して部分反応を得たが、その後ゲフィチニブまたはエルロチニブを受けている間に癌が成長した、18人の患者を分析した。MET遺伝子座の定量PCR(n=11、腫瘍由来DNAのみが入手可能だった場合)または蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH、n=7、腫瘍切片が入手可能だった場合)の両方を使用した。8人の患者において、ゲフィチニブ耐性の発生前後の腫瘍切片対が入手可能であったが、10人の患者においてはゲフィチニブおよびエルロチニブに対する臨床的耐性の後にのみ切片が入手可能であった(図5および図9)。サンプル対のある8人の患者のうち、MET増幅は2個の処置後の切片に検出されたが、処置前の切片には存在しなかった。患者1において、処置後切片のMET増幅は、HCC827GR細胞株に見られた増幅レベルと同様であった(図5および6)。加えて、処置後切片のみが入手可能であった別の2人の患者(患者12および13)においてもMET増幅が検出された。全体としてMET増幅はゲフィチニブ/エルロチニブ耐性腫瘍切片の4/18(22%)に検出された。重要なことには、EGFR T790M変異を有さない3個の切片において、およびEGFR T790M同時変異を有する1個の切片においてMET増幅が観察された。興味深いことに、患者12はEGFR T790MおよびMET増幅の両方を有していたが、それぞれの耐性様式は2つの異なる再発部位で別々に起こった。これらの結果は、ゲフィチニブ耐性を有するNSCLC患者においてMET増幅が検出可能であることを示唆する。さらに、多数の耐性機構が同じ患者において同時に起こり得る。
【0207】
方法
細胞培養および試薬
EGFR変異NSCLC細胞株HCC827(E746〜A750欠失)、H3255(L858R)およびH3255GRを本研究において使用し、広範に特徴づけた(3、30〜31、10)。American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から111993およびBT474細胞を入手した。SNU−638およびMKN−45胃癌細胞はWon Ki Kang博士(Samsung Medical Center、Seoul、Korea)から入手し、以前に特徴づけられている(18、32)。HCC827、H1993 SNU−638およびMKN−45細胞株は、10%FBS(MKN−45には20%)、100単位/mLペニシリン、100単位/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを添加したRPMI1640(Cellgro、Mediatech Inc.、Herndon、CA)中に維持した。113255およびH3255GRは、5%FBS、100単位/mLペニシリン、100単位/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを添加したACL−4培地(Life Technologies, Inc.、Rockville、MD)中に維持した。
【0208】
ゲフィチニブは商業的供給源から入手し、酢酸エチル抽出によって精製した。得られた生成物を液体クロマトグラフィーおよび質量分析法によって確認した。ラパチニブはAmerican Custom Chemical Corporation (San Diego、CA)から購入した。Cl−387,785はCalbiochemから購入した。PHA−665,752はPfizerのギフトであった。すべての薬物のストック溶液をDMSOで調製し、−20℃で保存した。
【0209】
細胞増殖および成長アッセイ
成長および成長阻害をMTSアッセイにより評価した。生存細胞の数を測定するための比色法であるこのアッセイは、細胞による3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)から、細胞培養培地に可溶で分光光度法により検出できるホルマザン生成物への生物還元に基づいており、以前に確立された方法に従って行った(3、31、10)。
【0210】
細胞は72時間処理に曝露させ、実験毎に使用した細胞数は経験的に測定し、事前に確立されている(31)。すべての実験点を6〜12個のウェルに設定し、すべての実験を少なくとも3回繰り返した。GraphPad Prismバージョン3.00for Windows(GraphPad Software、ワールドワイドウェブのgraphpad.com)を使用して、データを図で示した。非線形回帰モデルを使用してS字状の用量反応に曲線を適合させた。
【0211】
抗体およびウェスタンブロット法
以前に指定された条件下で増殖させた細胞を次の溶解緩衝液中で溶解した:20mM Tris、pH7.4/150mM NaCl/1%Nonidet P−40/10%グリセロール/1mM EDTA/1mM EGTA/5mMピロリン酸ナトリウム/50mM NaF/10nM(3−グリセロホスフェート/1mMバナジウム酸ナトリウム/0.5mM DTT/4μgロイペプチン/4μg/mlペプスタチン/4μg/mlアポタンパク質/1mM PMSF。細胞溶解後、溶解産物を16,000×gで5分間、4℃で遠心分離した。上清を次の手順に使用した。SDS/PAGE電気泳動による分離の後にウェスタンブロット解析を行い、ニトロセルロース膜に移した。抗体メーカーの推奨に従って免疫ブロット法を行った。高感度化学発光システム(New England Nuclear Life Science Products Inc.)を使用して抗体結合を検出した。
【0212】
抗ホスホAkt(Ser−473)、抗トータルAkt、抗EGFR、および抗ホスホErbB−3(Tyr−1289)抗体はCell Signaling Technologyから入手した。抗ErbB−3抗体はLab Visionから入手した。ホスホ特異的EGFR(pY1068)、MET(pY1234/1235)、トータルERK1/2、ホスホERK1/2(pT185/pY187)抗体はBiosource International Inc.から購入した。抗p85抗体はUpstate Biotechnologyから入手した。トータルMet(C−28)抗体はSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)から購入した。
【0213】
インビトロゲフィチニブ耐性HCC827の作製
耐性細胞株を作製するために、H3255を使用して本発明者らが以前に記載した方法と同様に、ゲフィチニブ濃度を増加させながらHCC827細胞を曝露させた(10)。細胞が未処理の親細胞と同様な増殖動態を回復したときに、ゲフィチニブ濃度を1〜100nMまで段階的に増加させた。100nMのゲフィチニブ中で増殖可能であった細胞を、最初の薬物曝露から6カ月後に得た。耐性クローンの出現を確認するため、細胞を薬物のない状態で少なくとも4日間増殖させた後に各濃度で増殖後、MTSアッセイを行った。耐性HCC827細胞はゲフィチニブ非存在下で17回継代され、MTSで確認されたように耐性を維持した。6個の個々のクローン(HCC827GR1、GR2、GR5、GR6、GR7およびGR8)を単離し、すべてがゲフィチニブ耐性であることを個別に確認した。HCC827細胞をゲフィチニブを用いずに維持し、そのゲフィチニブ感受性を5継代毎に検査した。期間中、親細胞株においてゲフィチニブ感受性に顕著な変化はなかった。
【0214】
SURVEYOR(商標)分析
HCC827GRクローンのEGFR全コード領域を、以前に記載された高感度遺伝子スキャニング法の改良法を使用して遺伝子変化について調べた(10、12)。EGFR全コード領域を包含する7個のオーバーラップしたcDNAセグメントを作製し、以前に記載されたように分析した(12)。PCRプライマーは要求に応じて入手可能である。
【0215】
細胞株のcDNA配列決定
Trizol(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して細胞株から全RNAを単離し、RNeasy(商標)ミニエリュートクリーンアップキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して精製した。SuperscriptIIReverse Transcriptase(Invitrogen Life technologies、Carlsbad、CA)を用いて、2μgの全RNAからcDNAを転写した。このcDNAをその後のEGFRおよびMETのPCR増幅の鋳型として使用した。PCR条件およびプライマーの詳細は以前に公表されている(3、17)。
【0216】
METshRNAコンストラクトおよびレンチウイルス感染
pLKO.1puroベクターでクローニングしたMETshRNAコンストラクトは、Harvard RNAiコンソーシアムから入手し、以前に特徴づけられている(10、17)。各コンストラクトは、METの異なる領域を標的とする21bpの配列、ヌクレオチド6個のヘアピン配列(CTCGAG)、および21bpの相補鎖配列を含有していた。緑色蛍光タンパク質(GFP)を含有するベクターを対照として使用した。特異的shRNA配列は要求に応じて入手可能である。レンチウイルス産生および感染は以前に記載されたように行った(10)。
【0217】
SNPおよび発現解析
HCC827およびHCC827GR細胞を、培地および前述の収集した全RNAを含有する血清中で、細胞を供給後6時間、60%コンフルエンスまで平板培養した。その後、RNA標本を処理し、AffymetrixHGU133Aマイクロアレイにハイブリダイズさせ、スキャンした。Affymetrix GeneChipソフトウェアを使用して各遺伝子の発現値を計算し、dChipソフトウェア(ワールドワイドウェブのbiosun1.harvard.edu/complab/dchip/)を使用してデータを解析した。
【0218】
DNeasy組織キット(Qiagen, Inc.、Valencia、CA)を使用してHCC827およびHCC827GR細胞からゲノムDNAを単離した。メーカーの使用説明書(Affymetrix Mapping 500K Assay Manual、ただし、MJ Researchサーモサイクラーを「Block」モードに設定し、すべての変性サイクルを92℃で行った)に従って、Human Mapping250K Sty一塩基多型(SNP)アレイ用にサンプルを処理し、各サンプルにつき4回のPCR反応を行い、120μgのPCR産物を断片化し、標識し、各アレイにハイブリダイズさせた。以前に確立された方法に従ってdChipソフトウェアを使用して、HCC827およびGRクローンの遺伝子コピー数の差異の比較を行った(33)。
【0219】
定量PCR
PRISM7500配列検出キット(Applied Biosystems)およびQuantiTectSYBR Green PCR Kit(Qiagen,Inc.、Valencia、CA)を使用した定量リアルタイムPCRを使用してMETの相対的コピー数を測定した。検量線法を使用して、コピー数が正常細胞および癌細胞間でほぼ同じLine−1反復エレメントである基準に対する細胞株および腫瘍DNAサンプル中のMET遺伝子コピー数を計算した(33)。正常なヒトゲノムDNAの連続希釈による検量線に基づいて定量した。すべての標本を3回反復して分析した。PCRプライマーは要求に応じて入手可能である。
【0220】
異種移植片
Animal Care and Use Committee of the Children’s Hospital Bostonによる承認を得たプロトコルに基づくInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の基準に従ってインビボ試験にヌードマウス(nu/nu、6〜8週齢、Charles River Laboratories)を使用し、世話をした。2%Isoflurane(Baxter)酸素混合物吸入を使用してマウスに麻酔をかけた。5×10個のHCC827またはHCC827GR5肺癌細胞の懸濁液(0.2mlのPBS中)を各マウスの脇腹の右下四半分に皮下接種した。週に2回、カリパスを使用して腫瘍を測定し、式(長さ×幅×0.52)を使用して体積を計算した。毎日、体重および全身状態についてマウスをモニターした。大きさの平均が1000mmに達したときに腫瘍を収集した。
【0221】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション
Vysis(Des Plaines、IL)から購入したD7S522プローブおよび7番染色体セントロメアプローブ(CEP7)を使用して蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を行った。キシレン中で脱パラフィンし、エタノール中で脱水することによって、異種移植片からまたは患者標本から作製した5ミクロン(5pm)の腫瘍切片を調製した。Tris塩基およびEDTA(TE)中に浸漬させ、リン酸緩衝液(PBS)中で洗浄し、Digest−All(Zymed)で消化することにより切片を消化した。ホルマリンを使用して切片を固定し、エタノール中で脱水した。切片およびプローブ(D7S522およびCEP7)の同時変性を完了し、切片を37度で2〜3晩ハイブリダイズさせた。Tween−20溶液と一緒にクエン酸ナトリウム緩衝液およびリン酸緩衝液を使用してハイブリダイゼーション後の洗浄を行い、DAPI対比染色の上にカバースリップを被せた。D7S522プローブはHCC827GR細胞の小さなアンプリコン中に含有される(図1F)。各腫瘍標本から100個の細胞を分析し、D7S522およびCEP7シグナルの数を定量した。細胞を、(1)CEP7と比較してD7S522のコピーがさらに<1、(2)CEP7と比較してD7S522のコピーがさらに>2、または(3)CEP7と比較してD7S522のコピーがさらに>3、に分類した。
【0222】
患者
Institutional Review Board Approved StudiesのもとでDana Farber Cancer Institute/Brigham and Women’s Hospital(Boston、MA)、愛知県がんセンター中央病院(名古屋、日本)、Chinese University(Hong Kong、China)から、およびBellaria Hospital(Bologna、Italy)から、ゲフィチニブおよびエルロチニブ治療患者の腫瘍切片を入手した。すべての患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。エクソン特異的増幅(エクソン18〜21)を使用して、その後サブクローニングおよび直接配列決定法によって、または変性HPLC(DHPLC)を併用したSurveyor(商標)エンドヌクレアーゼ、分画、および以前に公表された方法(12、7)を使用した配列決定の使用によって、各標本におけるEGFR変異の存在を確認した。EGFR T790M変異の検出は、DHPLCを併用したSurveyor(商標)エンドヌクレアーゼを使用して、またはCycleaveリアルタイムPCRアッセイ(10、32、12)を使用することによって行った。いずれの方法も1〜5%の対立遺伝子頻度でEGFR T790M変異を検出することができる。
【0223】
(実施例2)
MET誘導はEGFRキナーゼ阻害剤耐性を引き起こす
METのリガンドであるHGF(肝細胞成長因子)でHCC827細胞を処理することによって、MET活性を誘導した。EGFRキナーゼ阻害剤ゲフィチニブを同時投与した。図10の左上パネルは、ゲフィチニブ存在下でHCC827細胞を異なる濃度のHGF(2、10および50ng/ml)で処理し、MTS生存アッセイに供したときに作製した生存曲線を示す。50ng/mlのHGFによる処理は顕著に生存の改善を引き起こす。
【0224】
図10の右上パネルは、ゲフィチニブ存在下でHCC827細胞においてHGFがPI3K/AKT活性化を維持することを示す。HCC827細胞をゲフィチニブ単独でまたはHGFと一緒に6時間処理し、その後溶解した。溶解産物を規定の抗体を用いてウェスタンブロット分析により分析した。結果は、AKTタンパク質レベルは比較的一定であったが、ゲフィチニブ(TKI)処理によって起こったAKTリン酸化の減少はHGF処理によって少なくとも部分的に回復したことを示す。
【0225】
図10の下パネルは、HGFおよびゲフィチニブを同時投与した場合の細胞の生存を示す。50t0K細胞を10cmのペトリ皿に接種し、規定の条件で10日間処理した。ゲフィチニブは1μMで使用し、HGFは50、10、または2ng/mlで使用した。次いでプレートをクリスタルバイオレットで染色し、生存細胞を視覚化した。未処理のウェルは最多の生存細胞集団を示し、ゲフィチニブのみで処理した細胞は最多の細胞死を示した。ゲフィチニブ処理された細胞の生存は、HGF濃度の増加とともに増加した。
【0226】
総合すると、データは、HCC827細胞においてリガンドに誘導されるMET活性化がEGFR TKIに対する耐性を誘導することを示す。
【0227】
参考文献
【0228】
【化1】

均等物
本発明はとりわけ、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を使用する癌治療の方法を提供する。対象発明の特定の実施形態が論じられたが、上記の詳述は例示であって制限するものではない。本明細書の概説によって、本発明の多くの変形形態が当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、均等物および明細書の全範囲とともに、前述の変形形態とともに、特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきである。
【0229】
参照による組み込み
本明細書で述べられたすべての刊行物および特許は、以下に記載の項目を含めて、個々の刊行物または特許が具体的および個々に参照により組み込まれることを示すように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書中の任意の定義を含む本出願が支配する。
【0230】
The Institute for Genomic Research(TIGR)(www.tigr.org)および/またはNational Center for Biotechnology Information(NCBI)(ww.ncbi.nlm.nih.gov)により維持されているものなどの公開データベース中のエントリに関連するアクセション番号を参照する任意のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列もまた、参照によりその全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性である癌に罹患している対象を治療するための方法であって、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を該対象に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記癌が、肺癌、脳の癌、乳癌、頭頸部癌、大腸癌、卵巣癌、胃癌、または膵癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、EGFR、ErbB2、ErbB3、またはErbB4活性化突然変異または遺伝子増幅を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、EGFR活性化突然変異またはEGFR遺伝子増幅を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、以下の抗ErbB治療剤:抗EGFR治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤、または抗ErbB4治療剤の1つまたは複数を用いた治療に耐性である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、以下の抗ErbB治療剤:小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤の1つまたは複数を用いた治療に耐性である、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、抗ErbB抗体を用いた治療に耐性である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、ErbB遺伝子を標的にしたsiRNAを用いた治療に耐性である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、ErbBキナーゼ阻害剤を用いた治療に耐性である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が、EGFRキナーゼ阻害剤を用いた治療に耐性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、以下の抗EGFR治療剤:ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412、EXEL−7647、HKI−272、セツキシマブ、パンチヌムマブ、またはトラスツズマブの1つまたは複数を用いた治療に耐性である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
以下の抗ErbB治療剤:抗EGFR治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤、または抗ErbB4治療剤の1つまたは複数が前記対象に投与される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
以下の抗ErbB治療剤:小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤の1つまたは複数が前記対象に投与される、請求項1または14に記載の方法。
【請求項16】
以下の抗EGFR治療剤:ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、EXEL−7647、AV−412、HKI−272、セツキシマブ、パンチヌムマブ、またはトラスツズマブの1つまたは複数が前記対象に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
以下の抗MET治療剤:小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤の1つまたは複数が前記対象に投与される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
以下の抗MET治療剤:PHA−665,752、SU11274、SU5416、PF−02341066、XL−880、MGCD265、XL184、ARQ197、MP−470、SGX−523、JNJ38877605、AMG102、またはOA−5D5の1つまたは複数が前記対象に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗ErbB治療剤および前記抗MET治療剤が、前記対象に同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記抗ErbB治療剤および前記抗MET治療剤が、同時製剤として前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの追加の治療を前記対象に施すステップをさらに含む、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記追加の治療が、以下のうちの1つまたは複数である、請求項21に記載の方法:追加の治療剤の投与、照射、光ダイナミック療法、レーザー療法、または手術。
【請求項23】
前記対象が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、該対象は、抗ErbB治療剤を用いた治療に対する耐性を発生しており、該対象がMET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有するかどうかを判定するステップと、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する対象に、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を投与するステップとを含む方法。
【請求項26】
ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、
(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象をモニターすることによって、該対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を発生させるかどうかを判定するステップと、
(ii)該対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を発生させている場合、該対象の治療レジメンを修正することによって、該抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップと
を含む方法。
【請求項27】
ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、
(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象をモニターすることによって、該対象が阻害剤に対する耐性を発生させるかどうかを判定するステップと、
(ii)該対象を検査することによって、該対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有するかどうかを判定するステップと、
(iii)該対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する場合、該対象の治療レジメンを修正することによって、該抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップと
を含む方法。
【請求項28】
抗ErbB治療剤を評価するための方法であって、
(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象の集団をモニターすることによって、該治療剤に対する耐性を発生させる対象を特定するステップと、
(ii)該耐性の対象を検査することによって、該対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有するかどうかを判定するステップと、
(iii)該対象が、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を有する場合、該対象の治療レジメンを修正することによって、該抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップと
を含む方法。
【請求項29】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中のErbBリン酸化を低減するための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項30】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中のPI3K媒介シグナル伝達を低減するための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項31】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中のErbB媒介シグナル伝達を低減するための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項32】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞の、抗ErbB治療剤に対する感受性を回復させるための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項33】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞の成長または増殖を低減するための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項34】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞のアポトーシスを増大させるための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項35】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得しており、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞の、抗ErbB治療剤に対する耐性を低減するための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項36】
MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞中の、獲得された抗ErbB治療剤耐性を治療するための方法であって、該細胞を抗MET治療剤および抗ErbB治療剤と接触させるステップを含む方法。
【請求項37】
前記癌細胞が哺乳動物癌細胞である、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物癌細胞がヒト癌細胞である、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記癌細胞が細胞株である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記癌細胞が一次組織試料由来である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
前記癌細胞が、肺癌細胞、脳の癌細胞、乳癌細胞、頭頸部癌細胞、大腸癌細胞、卵巣癌細胞、胃癌細胞または膵癌細胞からなる群から選択される、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記癌細胞が任意のErbB誘導性癌である、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記癌細胞がErbB活性化突然変異を含む、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記ErbB活性化突然変異がEGFR活性化突然変異である、請求項44に記載の方法。
【請求項45】
前記癌細胞がErbB遺伝子増幅を含む、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記ErbB遺伝子増幅がEGFR遺伝子増幅である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ErbB遺伝子増幅が少なくとも2倍である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記MET増幅が少なくとも2倍である、請求項29〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記癌細胞が、抗ErbB治療剤に対する耐性の増大に関連するErbB遺伝子突然変異を含む、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
抗ErbB治療剤に対する耐性の増大に関連する前記ErbB遺伝子突然変異が、EGFRのT790M突然変異である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗ErbB治療剤が、抗EGFR治療剤、抗ErbB2治療剤、抗ErbB3治療剤、または抗ErbB4治療剤からなる群から選択される、請求項29〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記抗ErbB治療剤が、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤である、請求項29〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記抗ErbB治療剤が、抗体、アンチセンス分子、または小分子キナーゼ阻害剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗ErbB治療剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、PF00299804、CI−1033、EKB−569、BIBW2992、ZD6474、AV−412、HKI−272、EXEL−7647、セツキシマブ、パンチヌムマブ、またはトラスツズマブからなる群から選択されるEGFRキナーゼ阻害剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、およびトラスツズマブからなる群から選択される抗EGFR抗体である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記核酸治療剤がsiRNA分子である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記抗MET治療剤が、小分子治療剤、核酸治療剤、またはタンパク質治療剤である、請求項29〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記抗MET治療剤が、METに対する抗体、または肝細胞成長因子(HGF)に対する抗体である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記抗MET治療剤が、PHA−665,752、SU11274、SU5416、PF−02341066、XL−880、MGCD265、XL184、ARQ197、MP−470、SGX−523、JNJ38877605、AMG102、またはOA−5D5である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記核酸治療剤がsiRNA分子である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞を抗MET治療剤およびErbB治療剤と接触させる前記ステップが、少なくとも1つの追加の治療様式を含む治療レジメンの一部である、請求項29〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記少なくとも1つの追加の治療様式が、前記細胞を1つまたは複数の追加の治療剤と接触させること、照射、光ダイナミック療法、レーザー療法、および手術からなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
抗ErbB治療剤を用いて治療されており、該抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した癌に罹患している対象を、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を用いて治療するための候補として特定するための方法であって、該対象由来の癌細胞中のMET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を検出するステップを含む方法。
【請求項64】
抗MET治療剤を特定するための方法であって、抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得し、MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅を含む癌細胞を、抗ErbB治療剤および試験化合物と接触させるステップと、抗ErbB治療剤のみと接触させた同じ細胞中の細胞の過程と比較した、ErbBリン酸化の減少、METリン酸化の減少、ErbB−MET会合の減少、EGFRリン酸化の減少、AKTリン酸化の減少、細胞成長の減少、細胞増殖の減少、およびアポトーシスの増大からなる群から選択される該細胞の過程の変化を検出するステップとを含む方法。
【請求項65】
抗ErbB治療剤を用いて治療されており、該抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得するリスクのある対象を特定するための方法であって、該対象由来の癌細胞中のMET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅の存在を検出するステップを含み、該MET活性化突然変異またはMET遺伝子増幅の存在が、該耐性を獲得するリスクを示す方法。
【請求項66】
抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得した細胞を作製するための方法であって、抗ErbB治療剤に感受性である細胞を、少なくとも1つの抗ErbB治療剤と少なくとも4週間接触させるステップと、該抗ErbB治療剤に対する耐性を獲得する細胞を特定するステップとを含む方法。
【請求項67】
前記細胞が、前記抗ErbB治療剤に対する耐性を付与するErbB遺伝子中に突然変異を含まない、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
請求項66に記載の方法によって作製される細胞。
【請求項69】
抗ErbB治療剤を用いた治療に耐性である癌に罹患している対象を治療するための方法であって、該対象に、抗ErbB治療剤、およびMETのHGF媒介活性化を阻害する薬剤を投与するステップを含む方法。
【請求項70】
前記薬剤が、HGFがMETに結合するのを妨げる抗体である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体が抗HGF抗体である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記抗体が抗MET抗体である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記ErbBがErbB−3である、請求項25、26、27、または29に記載の方法。
【請求項74】
前記抗ErbB治療剤が抗ErbB3治療剤である、請求項1または25〜36に記載の方法。
【請求項75】
前記癌細胞の成長および/または生存がErbBによって促進される、請求項29〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、該対象は、抗ErbB治療剤を用いた治療に対する耐性を発生させており、該方法は、該対象のMETレベルおよび/または活性が上昇しているかどうかを判定するステップと、MET活性が上昇している対象に、抗ErbB治療剤および抗MET治療剤を投与するステップとを含む方法。
【請求項77】
ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、
(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象をモニターすることによって、該対象が、レベルおよび/またはMET活性の上昇を発生させるかどうかを判定するステップと、
(ii)該対象が、METレベルおよび/または活性の上昇を発生させている場合、該対象の治療レジメンを修正することによって、該抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップと
を含む方法。
【請求項78】
ErbB活性化突然変異またはErbB遺伝子増幅に関連する癌に罹患している対象を治療するための方法であって、
(i)抗ErbB治療剤を用いて治療されている対象をモニターすることによって、該対象が、阻害剤に対する耐性を発生させるかどうかを判定するステップと、
(ii)該対象を検査することによって、該対象のMETレベルおよび/または活性が上昇しているかどうかを判定するステップと、
(iii)該対象のMETレベルおよび/または活性が上昇している場合、該対象の治療レジメンを修正することによって、該抗ErbB治療剤に加えて抗MET治療剤を含めるステップと
を含む方法。
【請求項79】
前記MET活性の上昇が、MET遺伝子増幅、MET活性化突然変異、またはHGF媒介MET活性化に関連する、請求項76〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記HGF媒介MET活性化が、HGF発現レベルの上昇またはHGF活性の上昇に関連する、請求項76〜79のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
前記HGF媒介MET活性化が、HGF遺伝子増幅またはHGF活性化突然変異に関連する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記抗MET治療剤が、METのHGF媒介活性化を阻害する薬剤である、請求項76〜78のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
前記薬剤が、HGFがMETに結合するのを妨げる抗体である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記抗体が、抗HGF抗体または抗MET抗体である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
EGFRのエクソン19中の欠失およびMET遺伝子増幅を含む細胞株。

【図1−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図1−1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図7】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−523680(P2010−523680A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503084(P2010−503084)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/004804
【国際公開番号】WO2008/127710
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(592090692)ダナ ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (20)
【出願人】(307020338)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター, インコーポレイテッド (4)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】