説明

FBGひずみセンサ及びひずみ量計測システム

【課題】低コストで広い温度範囲に対応させることを実現したFBGひずみセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】ひずみ量計測システム10は、計測用FBG21が設けられた第1の光ファイバ11と基準波長反射用FBG22が設けられた第2の光ファイバ12とを備えており、第1の光ファイバ11と第2の光ファイバ12とは、被計測部Waに固定された計測用FBG21の反射光を、固定用治具部材Wbに固定された基準波長反射用FBG22に入射可能となるように接続されている。計測用FBG21と基準波長反射用FBG22とは同様の格子間隔に加工されており、被計測部Waと固定用治具部材Wbとは、同じ材料から形成されている。また、光源13は広帯域の光を計測用FBG21に入射し、計測機15は、基準波長反射用FBG22の反射光の総光量に基づいて被計測部Waのひずみ量を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被計測部のひずみ量を計測するためのFBGひずみセンサと、このようなFBGひずみセンサを備えたひずみ量計測システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば被計測部に生じるひずみや応力等の物理量を計測するためのセンサとして、FBG(ファイバブラッググレーティング)が設けられた光ファイバが利用される。FBGとは、光ファイバのコアの屈折率を所定の長さ周期(グレーティング周期)で変化させた回折格子であって、光ファイバへの入射光に対し、グレーティング周期に応じた特定の波長(ブラッグ波長)の光を反射し、残りの波長の光を透過するという特性を有している。被計測部から印加される物理量に応じてFBGが伸縮すると、それに伴ってグレーティング周期も変化する。ブラッグ波長は、グレーティング周期の変化量に対して線形に変化するため、ブラッグ波長の変化量に基づいてFBGに印加された物理量を計測することが可能となる。
【0003】
ここで、図5を用いて、一般的なガラス製のFBGひずみセンサを利用して被計測部のひずみ量を計測する方法について概略的に説明する。図5において符号100で示される放物線状の領域は、被計測部のひずみ量が印加される前におけるFBGの反射スペクトルを示している。また、符号200で示される直線状の領域は、単波長光源から光ファイバに入射される入射光のスペクトルを示しており、FBGは、この入射光を強度S10にて反射する。この状態からFBGを伸張させるひずみ量が印加されると、FBGの反射スペクトルは一点鎖線の領域110で示されるように長波長側にシフトし、反射光の強度がS10からS20へと変化する。すなわち、FBGに印加されたひずみ量が、反射強度S10、S20の差異に基づいて相対的に求められる。
【0004】
しかしながら、光ファイバはひずみ量の計測時における周囲温度に応じて熱膨張するものである。すなわち、FBGのブラッグ波長は計測対象となるひずみ量だけではなく、センサの周囲温度に応じても変化するものであり、一般的なガラス製のFBGの場合、50℃の温度範囲で反射スペクトルが0.6nmシフトする。つまり、温度の変化幅が大きい場所でFBGひずみセンサを用いる場合、図5の二点鎖線で示される領域120のように、FBGの反射スペクトルが入射光のスペクトル200から外れた位置までシフトしてしまうことがあり、この場合、FBGでの反射が起こらなくなってひずみ量の計測が不可能になるという問題が生じる。したがって、FBGひずみセンサでは計測時の温度に応じた温度補償を行うことが必要となり、例えば特許文献1には、入力光の波長を図5の破線で示される領域210のようにシフトさせることが可能な可変波長光源を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−222397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載されているような可変波長光源を用いれば、計測時の温度に応じて入射光の波長をシフトさせられるため、FBGひずみセンサを広い温度範囲に対応させることは可能となる。しかしながら、可変波長光源は、例えばLED等の単波長光源やASE光源等の広帯域光源と比較すると高価な機器であるため、FBGひずみセンサを含む計測系を低コストで構築することが困難であるという問題点を有していた。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、低コストで広い温度範囲に対応することを実現したFBGひずみセンサ及びひずみ量計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るFBGひずみセンサは、被計測部のひずみ量を計測するためのFBGひずみセンサであって、被計測部に固定される計測用FBGが設けられた第1の光ファイバと、計測用FBGと同様の格子間隔に加工された基準波長反射用FBGが設けられた第2の光ファイバとを備え、第1の光ファイバと第2の光ファイバとは、計測用FBGの反射光を、基準波長反射用FBGに入射可能となるように接続され、基準波長反射用FBGの反射光に基づいて、ひずみ量が計測されることを特徴とするものである。
【0009】
第1の光ファイバに設けられた計測用FBGの反射スペクトルは、被計測部のひずみ量と計測時の温度とに応じてシフトする。一方、第2の光ファイバに設けられた基準波長反射用FBGの反射スペクトルは、計測時の温度のみに応じてシフトする。計測用FBGと基準波長反射用FBGとは同様の格子間隔に加工されているため、温度に応じた反射スペクトルのシフト量は双方のFBGで同一となり、被計測部のひずみ量に応じた分だけシフト量に差異が生じる。計測用FBGの反射光を基準波長反射用FBGへの入射光として用いるため、基準波長反射用FBGの反射光のスペクトルは、双方のFBGの反射スペクトルが重なり合った部分となり、温度の影響が除外されたものとなる。すなわち、同様に加工されたFBGが設けられた一対の光ファイバを用意し、一方のFBGの反射光が他方のFBGへの入射光となるように接続すれば、温度の影響を除外することができるため、可変波長光源を用いることなく被計測部のひずみ量を計測することができる。したがって、FBGひずみセンサにおいて、低コストで広い温度範囲に対応させることが可能となる。
【0010】
被計測部と同一の材料から形成され、基準波長反射用FBGが固定される固定用治具部材をさらに備えてもよい。計測時の温度に応じて被計測部が熱膨張することによる影響を除外できるため、より正確にひずみ量を計測することが可能となる。尚、被計測部の材料が第1及び第2の光ファイバと同じ材料である場合、固定用治具部材を用いなくても正確なひずみ量の測定が可能である。
【0011】
また、この発明に係るひずみ量計測システムは、被計測部のひずみ量を計測するひずみ量計測システムであって、被計測部に固定される計測用FBGが設けられた第1の光ファイバと、計測用FBGと同様の格子間隔に加工された基準波長反射用FBGが設けられた第2の光ファイバと、第1の光ファイバに接続される光源と、第2の光ファイバに接続される計測機と、第1の光ファイバに設けられ、光源から出力された光を計測用FBGに導くとともに、計測用FBGの反射光を第2の光ファイバに導く第1の光サーキュレータと、第2の光ファイバに設けられ、第1の光サーキュレータから導かれた計測用FBGの反射光を基準波長反射用FBGに導くとともに、基準波長反射用FBGの反射光を計測機に導く第2の光サーキュレータとを備え、計測機は、基準波長反射用FBGの反射光に基づいて、ひずみ量を計測することを特徴とするものである。
【0012】
このようなひずみ量計測システムを用いた場合、上述のFBGひずみセンサと同様に、基準波長反射用FBGの反射光は温度の影響が除外されたものとなるため、ひずみ量計測システムにおいて、低コストで広い温度範囲に対応させることが可能となる。
【0013】
光源は、計測用FBG及び基準波長反射用FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有する広帯域の光を第1の光ファイバに入射してもよい。
また、計測機は、基準波長反射用FBGの反射光の総光量に基づいて、ひずみ量を計測してもよい。基準波長反射用FBGの反射光は被計測部のひずみ量が大きくなるにつれて暗くなるため、所定の波長における反射強度に基づいてひずみ量を計測する場合と比較して、より正確にひずみ量を計測することが可能となる。
さらに、被計測部と同一の材料から形成され、基準波長反射用FBGが固定される固定用治具部材をさらに備えてもよい。被計測部が熱膨張することによる影響を除外できるため、より正確にひずみ量を計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、FBGひずみセンサ及びひずみ量計測システムにおいて、低コストで広い温度範囲に対応させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係るFBGひずみセンサを備えたひずみ量計測システムの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態に係るFBGひずみセンサにおける計測用FBG及び基準波長反射用FBGの構成を示す概略図である。
【図3】実施の形態に係るFBGひずみセンサを用いて被計測部のひずみ量を計測する方法を説明するための図であり、(a)は計測用FBGへの入射光のスペクトルを示し、(b)は計測用FBGの反射スペクトルを示す。
【図4】実施の形態に係るFBGひずみセンサを用いて被計測部のひずみ量を計測する方法を説明するための図であり、(a)は基準波長反射用FBGの反射スペクトルを示し、(b)は基準波長反射用FBGの反射光のスペクトルを示す。
【図5】従来のFBGセンサを用いて被計測部のひずみ量を計測する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
図1に、この実施の形態に係るひずみ量計測システム10の構成を概略的に示す。
ひずみ量計測システム10は、被計測部Waのひずみ量を計測するためのものであって、被計測部Waに固定される計測用FBG21が設けられた第1の光ファイバ11と、固定用治具部材Wbに固定される基準波長反射用FBG22が設けられた第2の光ファイバ12とを備えている。尚、固定用治具部材Wbは被計測部Waと同じ材料から形成され、被計測部Waとは別体として設けられた部材である。第1の光ファイバ11の一端には光源13が接続されており、光源13と計測用FBG21との間に第1の光サーキュレータ14が設けられている。一方、第2の光ファイバ12の一端には計測機15が接続されており、計測機15と基準波長反射用FBG22との間に第2の光サーキュレータ16が設けられている。また、第1の光サーキュレータ14と第2の光サーキュレータ16とは、接続用光ファイバ17を介して接続されている。
【0017】
後に詳述するように、計測用FBG21及び基準波長反射用FBG22は、入射光に対してブラッグ波長と呼ばれる特定の波長の光を反射するとともに、残りの波長の光を透過するものである。また、第1の光サーキュレータ14は、光源13から出力されて第1の光ファイバ11内を伝播する光(矢印A1参照)を計測用FBG21に導くとともに(矢印A2参照)、計測用FBG21の反射光を接続用光ファイバ17に導くものである(矢印A3参照)。一方、第2の光サーキュレータ16は、第1の光サーキュレータ14によって接続用光ファイバ17に導かれた計測用FBG21の反射光を基準波長反射用FBG22に導くとともに(矢印A4参照)、基準波長反射用FBG22の反射光(矢印A5参照)を計測機15に導くものである(矢印A6参照)。
【0018】
次に、図2を用いて、計測用FBG21及び基準波長反射用FBG22の構成について詳細に説明する。尚、第1の光ファイバ11と第2の光ファイバ12とは、例えば石英ガラス等の同じ材料から形成されている。また、基準波長反射用FBG22は計測用FBG21と同様に加工されており、互いに共通の構成を有している。よって、図2において、基準波長反射用FBG22側の構成要素は括弧付きの符号にて示すものとする。
【0019】
図2に示すように、第1の光ファイバ11は、光源13(図1参照)から出力された入射光L1が伝播するコア11aと、コア11aの外周部を覆うクラッド11bとを有している。計測用FBG21は、コア11aの屈折率を軸方向に沿った所定の長さ周期(グレーティング周期)Λで変化させた回折格子であって、入射光L1に対し、ブラッグ波長の光を反射光L2として反射するとともに、残りの光を透過光L3として透過する。尚、一例として、計測用FBG21は、第1の光ファイバ11に紫外線等を照射することによって加工される。
【0020】
計測用FBG21のグレーティング周期Λは、ブラッグ波長を規定する要素の1つであり、計測用FBG21が伸縮してグレーティング周期Λが変化すると、グレーティング周期Λの変化量に応じてブラッグ波長も変化する。ここで、第1の光ファイバ11は、計測用FBG21が間に配置される二箇所に塗布された図示しない接着剤によって被計測部Waに固定されている。また、第1の光ファイバ11及び被計測部Waは、周囲温度に応じて熱膨張するものである。すなわち、被計測部Waのひずみ量の計測時において、計測用FBG21には、被計測部Waのひずみ量、被計測部Waの熱膨張量及び第1の光ファイバ11の熱膨張量が印加されるようになっており、これらによって計測用FBG21が伸縮すると、グレーティング周期Λが変化してブラッグ波長も変化するようになっている。
【0021】
第1の光ファイバ11と同様に、第2の光ファイバ12はコア12aとクラッド12bとを有しており、基準波長反射用FBG22は、コア12aの屈折率をグレーティング周期Λで変化させたものとして加工されている。尚、基準波長反射用FBG22における入射光L1は、第1の光サーキュレータ14及び第2の光サーキュレータ16(図1参照)によって導かれた計測用FBG21の反射光となる。また、第2の光ファイバ12は、基準波長反射用FBG22が間に配置される二箇所に塗布された図示しない接着剤によって固定用治具部材Wbに固定されている。
【0022】
ここで、上述したように、固定用治具部材Wbは被計測部Waと同じ材料から形成された部材である。また、第1の光ファイバ11及び第2の光ファイバ12も同じ材料から形成されている。さらに、基準波長反射用FBG22は計測用FBG21と同様に加工されたものである。すなわち、被計測部Waのひずみ量の測定時において、基準波長反射用FBG22には固定用治具部材Wbの熱膨張量及び第2の光ファイバ12の熱膨張量が印加されるが、これらはそれぞれ、被計測部Waの熱膨張量及び第1の光ファイバ11の熱膨張量と等しくなる。したがって、計測用FBG21のブラッグ波長のシフト量と基準波長反射用FBG22のシフト量との差異は、被計測部Waのひずみ量による計測用FBG21側のシフト量のみとなっている。
【0023】
図1に戻って、光源13は、計測用FBG21及び基準波長反射用FBG22の反射スペクトルを帯域幅に含む広帯域の光を出力可能であり、例えばASE光源等の広帯域光源が光源13として用いられる。また、計測機15は、基準波長反射用FBG22の反射光の総光量を検知可能な光検出部15aと、光検出部15aが検知した光の総光量から被計測部Waのひずみ量を算出する演算部15bとを有している。尚、光検出部15aとしては、例えばフォトダイードやフォトカプラ、あるいはCMOS等の光電気変換素子が用いられる。
【0024】
以上より、ひずみ量計測システム10は、同様に加工されたFBGが設けられた一対の光ファイバを並列に配置し、一方のFBGである計測用FBG21の反射光を他方のFBGである基準波長反射用FBG22への入射光として用いるとともに、この入射光に対する基準波長反射用FBG22の反射光に基づいて被計測部Waのひずみ量を計測するものである。ここで、図1において破線で囲まれた部分、すなわち、第1の光サーキュレータ14、第2の光サーキュレータ16、計測用FBG21及び基準波長反射用FBG22を含む部分が、ひずみ量計測システム10におけるFBGひずみセンサ20を構成する。
【0025】
次に、この実施の形態に係るひずみ量計測システム10を用いて被計測部Waのひずみ量を計測する方法について説明する。
まず、図1に示すように、計測用FBG21及び基準波長反射用FBG22が、図示しない接着剤によって被計測部Wa及び固定用治具部材Wbにそれぞれ固定され、次いで、光源13から出力された光が第1の光ファイバ11に入射される(矢印A1参照)。光源13からの入射光が計測用FBG21に入射されると(矢印A2参照)、計測用FBG21はブラッグ波長に応じた反射光を反射するとともに残りの光を透過する。
【0026】
ここで、光源13は、図3(a)に示されるように、帯域幅がλ0〜λnである広帯域のスペクトル50を有する光を出力している。また、図3(b)に示すように、計測用FBG21の反射スペクトルは被計測部Waから印加されたひずみ量により、波長λ1〜λ2の帯域幅を有する一点鎖線の領域60から波長λ1’〜λ2’の帯域幅を有する実線の領域61にシフトしている。尚、領域60で示される計測用FBG21の反射スペクトルは、ひずみ量の計測時における温度に応じて第1の光ファイバ11及び被計測部Waが熱膨張した分が反映されたものである。また、光源13から出力される広帯域の光は、その帯域幅に符号60、61で示される計測用FBG21の反射スペクトルを含んでいる。したがって、計測用FBG21は、光源13から入射された光に対し、符号61で示されるスペクトルを有する光を反射する。
【0027】
図1に戻って、計測用FBG21の反射光は、第1の光サーキュレータ14によって接続用光ファイバ17に導かれる(矢印A3参照)。また、接続用光ファイバ17に導かれた計測用FBG21の反射光は、第2の光サーキュレータ16によって基準波長反射用FBG22に導かれる(矢印A4参照)。基準波長反射用FBG22はブラッグ波長に応じた反射光を反射するとともに(矢印A5参照)、残りの光を透過する。ここで、計測用FBG21が固定されている被計測部Waと、基準波長反射用FBG22が固定されている固定用治具部材Wbとは同じ材料から形成されている。また、第1の光ファイバ11と基準波長反射用FBG22とは同じ材料から形成されており、且つ計測用FBG21と基準波長反射用FBG22とは同様に加工されている。
【0028】
したがって、図4(a)の符号70で示される実線の領域である基準波長反射用FBG22の反射スペクトル、すなわち、第2の光ファイバ12及び固定用治具部材Wbが熱膨張した分が反映された反射スペクトルは、被計測部Waのひずみ量が印加される前の計測用FBG21の反射スペクトル(図3(b)参照)と同一のものとなる。このような反射スペクトルを有する基準波長反射用FBG22に対し、符号61で示される一点鎖線の領域であるスペクトルを有する計測用FBG21の反射光が入射されるため、基準波長反射用FBG22の反射光のスペクトルは、図4(a)の斜線部で示された領域Rのように、これらのスペクトルが重なり合った部分となる。すなわち、図4(b)に示されるように波長λ1’〜λ2の帯域幅を有するスペクトル80の光が基準波長反射用FBG22の反射光となり、この反射光は、第1の光ファイバ11及び被計測部Waに対する周囲温度の影響が除外されたものとなる。
【0029】
再び図1に戻って、基準波長反射用FBG22の反射光は、第2の光サーキュレータ16によって計測機15の光検出部15aに導かれ、その総光量が検知される。また、演算部15bは、光検出部15aが検知した反射光の総光量に基づいて、被計測部Waのひずみ量を算出する。尚、図4から明らかであるように、基準波長反射用FBG22の反射光は、被計測部Waのひずみ量が大きくなるにつれて暗くなる。すなわち、図5を用いて従来技術によるひずみ量の計測方法を説明したように、単波長の入射光に対する反射強度に基づいてひずみ量を計測する場合、被計測部Waのひずみ量が大きくなればなるほど反射強度が小さくなって計測誤差も大きくなる。一方、本発明による計測機15の光検出部15aは、基準波長反射用FBG22の反射光を総光量で検知するため、反射光が暗くなることによる影響は単波長光に対する反射強度の場合よりも少なくなり、被計測部Waのひずみ量をより正確に求めることができる。
【0030】
以上のように、計測用FBG21が設けられた第1の光ファイバ11と、基準波長反射用FBG22が設けられた第2の光ファイバ12とを並列に配置し、計測用FBG21の反射光が基準波長反射用FBG22への入射光となるように、第1の光サーキュレータ14、第2の光サーキュレータ16及び接続用光ファイバ17を用いて接続したので、第1の光ファイバ11における熱膨張の影響を、第2の光ファイバ12の熱膨張による影響によって取り除くことができ、周囲温度に関わらず被計測部Waのひずみ量を計測することが可能となる。すなわち、同様に加工されたFBGが設けられた一対の光ファイバを用意し、一方のFBGの反射光が他方のFBGへの入射光となるように接続すれば、温度の影響を除外することができるため、可変波長光源を用いることなく被計測部のひずみ量を計測することができる。したがって、ひずみ量計測システム10及びFBGひずみセンサ20において、低コストで広い温度範囲に対応させることが可能となる。
【0031】
また、基準波長反射用FBG22を、被計測部Waと同じ材料で形成された固定用治具部材Wbに固定したので、被計測部Waにおける熱膨張の影響を、固定用治具部材Wbにおける熱膨張の影響によって取り除くことができ、より正確に被計測部Waのひずみ量を計測することが可能となる。
さらに、ひずみ量計測システム10において、計測機15は被計測部Waのひずみ量を算出するために基準波長反射用FBG22の反射光の総光量を用いるため、単波長の光に対する反射強度を用いてひずみ量を求める場合と比較して、より正確に被計測部Waのひずみ量を求めることが可能となる。
【0032】
上記の実施の形態において、第2の光ファイバ12が固定用治具部材Wbに固定され、基準波長反射用FBG22に固定用治具部材Wbの熱膨張量が印加されるように構成されたが、固定用治具部材Wbを用いることに限定するものではない。例えば、第1及び第2の光ファイバ11、12の材料と被計測部Waの材料とが同じである場合、これらの光ファイバ11、12の熱膨張量と被計測部Waの熱膨張量とは同一となるため、固定用治具部材Wbを省略しても被計測部Waのひずみ量を正確に計測することが可能である。また、固定用治具部材Wbに対し、基準波長反射用FBG22の設けられている部位が弛むように第2の光ファイバ12を固定することも可能である。
【0033】
また、上記の実施の形態に係るひずみ量計測システム10は、1つのFBGひずみセンサ20を備えるように構成されたが、図1に示されるFBGひずみセンサ20の下流側に複数のFBGひずみセンサを直列に接続し、多点でのひずみ量測定を行えるように構成することも可能である。この場合、計測用FBG及び基準波長反射用FBGのブラッグ波長は、各FBGひずみセンサにおいて互いに異なるように構成される。また、図4(b)に示されるように、本発明における基準波長反射用FBGの反射光のスペクトルは帯域幅が狭くなるため、出力する光の帯域幅が同一である光源に対し、従来技術と比較するとより多くのFBGひずみセンサを接続することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10 ひずみ量計測システム、11 第1の光ファイバ、12 第2の光ファイバ、13 光源、14 第1の光サーキュレータ、15 計測機、16 第2の光サーキュレータ、20 FBGひずみセンサ、21 計測用FBG、22 基準波長反射用FBG、Wa 被計測部、Wb 固定用治具部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測部のひずみ量を計測するためのFBGひずみセンサであって、
前記被計測部に固定される計測用FBGが設けられた第1の光ファイバと、
前記計測用FBGと同様の格子間隔に加工された基準波長反射用FBGが設けられた第2の光ファイバと
を備え、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとは、前記計測用FBGの反射光を、前記基準波長反射用FBGに入射可能となるように接続され、
前記基準波長反射用FBGの反射光に基づいて、前記ひずみ量が計測されることを特徴とするFBGひずみセンサ。
【請求項2】
前記被計測部と同一の材料から形成され、前記基準波長反射用FBGが固定される固定用治具部材をさらに備える請求項1に記載のFBGひずみセンサ。
【請求項3】
被計測部のひずみ量を計測するひずみ量計測システムであって、
前記被計測部に固定される計測用FBGが設けられた第1の光ファイバと、
前記計測用FBGと同様の格子間隔に加工された基準波長反射用FBGが設けられた第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバに接続される光源と、
前記第2の光ファイバに接続される計測機と、
前記第1の光ファイバに設けられ、前記光源から出力された光を前記計測用FBGに導くとともに、前記計測用FBGの反射光を前記第2の光ファイバに導く第1の光サーキュレータと、
前記第2の光ファイバに設けられ、前記第1の光サーキュレータから導かれた前記計測用FBGの反射光を前記基準波長反射用FBGに導くとともに、前記基準波長反射用FBGの反射光を前記計測機に導く第2の光サーキュレータと
を備え、
前記計測機は、前記基準波長反射用FBGの反射光に基づいて、前記ひずみ量を計測することを特徴とするひずみ量計測システム。
【請求項4】
前記光源は、前記計測用FBG及び前記基準波長反射用FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有する広帯域の光を前記第1の光ファイバに入射する請求項3に記載のひずみ量計測システム。
【請求項5】
前記計測機は、前記基準波長反射用FBGの反射光の総光量に基づいて、前記ひずみ量を計測する請求項3または4に記載のひずみ量計測システム。
【請求項6】
前記被計測部と同一の材料から形成され、前記基準波長反射用FBGが固定される固定用治具部材をさらに備える請求項3〜5のいずれか一項に記載のひずみ量計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83558(P2013−83558A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223889(P2011−223889)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】