FBGセンサの多点計測方法および多点計測装置
【課題】1本の伝送路で複数本の光ファイバを使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバのFBGセンサを計測可能なFBGセンサの多点計測方法および装置を提供する。
【解決手段】FBGセンサの多点計測装置において、コアに回折格子を形成した光ファイバ4と、広帯域波長光源9と、この光源からの光のうち、光ファイバ4に入射する光の時間を制御する光源側光変調器10と、この光変調器からの出射光を入射して、光ファイバ4の回折格子からの反射光を透過する時間を制御する検出側光変調器12と、この光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して光ファイバ4からの信号を分離する波長移動量算出器14と、この算出器の結果から被測定物の変形量を算出する温度・歪み算出器15と、この被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部16とを有する。
【解決手段】FBGセンサの多点計測装置において、コアに回折格子を形成した光ファイバ4と、広帯域波長光源9と、この光源からの光のうち、光ファイバ4に入射する光の時間を制御する光源側光変調器10と、この光変調器からの出射光を入射して、光ファイバ4の回折格子からの反射光を透過する時間を制御する検出側光変調器12と、この光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して光ファイバ4からの信号を分離する波長移動量算出器14と、この算出器の結果から被測定物の変形量を算出する温度・歪み算出器15と、この被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部16とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBGセンサの多点計測技術に関し、特に、被測定物の変形を検出するFBGセンサの多点計測方法および多点計測装置に関する。より詳細には、光反射波長が変化する複数のFBGセンサを直列に挿入した光ファイバを複数本備え、時分割で多重化することにより、ファイバ光路を切り替えることなく検出できるFBGセンサの多点計測方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバを用いて対象物の温度あるいは歪みを計測する手段として、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating、以下FBGと表記する)を用いるFBGセンサ方式が提案されている。FBGセンサは、光ファイバのコアに一定の間隔で、屈折率の高い部分と、低い部分を周期的に繰り返して回折格子を形成したものである。
【0003】
図13を用いて、一般的なFBGセンサの原理を説明する。(a)はFBGセンサに入力する光信号の波長分布を示し、(b)はFBGセンサの断面図を示す。(c)は入力した光信号のうちFBGセンサで反射されて出力された光信号の波長分布を示し、(d)は入力した光信号のうちFBGセンサを透過した光信号の波長分布を示す。光ファイバ500は、石英ガラスで形成された細い物質であるコア501を中心に配置し、その周囲を覆うグラッド502で構成されている。石英ガラスはもろいため、保護被膜503で周囲を被せる。コア501には、ピッチΛで長さLの範囲で周期的な回折格子505が形成されている。この回折格子505は、図示しない方法によって、光ファイバのコア501に紫外光(たとえば波長250nm前後)の干渉縞を照射することで、コア501の屈折率の変化を周期的に変化させることで形成可能である。この回折格子505が形成された部分をFBGセンサ5と称する。
【0004】
FBGセンサ5の反射光507の波長は、コア501の屈折率や回折格子505の周期を変化させる物理量によって変化することになる。例えば、FBGセンサ5に熱変化が生じると、コア501に温度変化による屈折率の変動が発生し、回折格子505の周期が変動するため、反射光507の波長がシフトすることになる。この温度によるシフト量は、1.5μmの波長帯域を使用した場合は、約10pm/℃となる。また、FBGセンサ5に歪みが生じると、コア501に伸び縮みが発生するため、回折格子505の周期が変動する。この歪みによるシフト量は、約1.2pm/μεとなる。
【0005】
FBGセンサを用いた多点歪み及び温度センサとして、例えば特許文献1に記載されている方法がある。本方式は、光ファイバに光反射波長が変化する複数のFBGセンサを光ファイバ内に直列に挿入し、この光ファイバの一端から光信号を入射し、FBGセンサからの反射光量をOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)で測定すると共に、光ファイバ中からの後方散乱光をOTDRで測定することで、光ファイバの長手方向に沿った温度分布を求める。そして、この温度分布に基づき、各FBGセンサの温度依存による反射光量変化分を補正し、この補正された反射光量から各FBGセンサの正確な歪みを求める方式である。OTDRとは、光ファイバに光パルスを入射して、後方散乱光の位置と強度を測定し、光ファイバ内の損失状態や場所を測定するものである。その距離分解能は、一般的に数十センチ程度である。複数本の光ファイバを使用する場合、切り替え用光スイッチを用いて切り替え、1台の測定器で行うことができる。なお、切り替え用光スイッチの能力に応じて光ファイバの本数を増やすことができるとしている。
【0006】
また、回転体に複数のFBGセンサを設置する方法として、例えば特許文献2に記載されたものがある。本方式は、回転体に設置したFBGセンサの光信号を外部に設置した受信部に非接触で伝送する方式である。光伝送する光軸は回転中心である場合、1本の伝送路しか伝送できないため、回転体内に設置するFBGセンサが複数本の場合は、切り替え用光スイッチを用いて光ファイバを切り替えて対応するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−141922号公報
【特許文献2】特開2003−123178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている測定方法では、OTDR方式であるため、距離分解能が数十センチ程度と悪く、近接した場所での計測が出来ないため、特定場所の計測が出来ない。また、複数本の光ファイバで計測する場合は、光スイッチで切り替える必要があるため、同時に複数個所の計測は不可能である。この方式で、複数個所を同時に計測する場合は、光ファイバと同数の計測器が必要となり、装置が大型化し、計測器の連携が必要となる。また、複数の計測器を使用することから、計測器毎の感度が異なるといった、信頼性の低下も考えられる。
【0009】
また、上述した特許文献2に記載されている測定方法では、回転系と固定系を分離しなければいけないため、光ファイバでの接続は出来ない。そのため、回転系と固定系の接続する伝送路は、必ず1系統であるため、複数本の光ファイバを接続できない。この特許文献2に記載されている方式では、複数本の光ファイバを使用する場合の手段として、回転系側に光スイッチを設け、測定場所に応じて光スイッチで切り替えて対応しようとしている。
【0010】
また、前記特許文献1および2に記載はないが、複数本の光ファイバを接続する方式として、光ファイバカプラを用いることが可能である。しかしながら、光ファイバカプラは単純に1本を複数本に分配する機能のみであるため、例えば同じ反射波長で作成したFBGセンサを有した光ファイバを複数本接続した場合、検出器には、複数本が重なった波長が検出されてしまう。そのため、特定の光ファイバを分離することが出来なくなり、正確な計測が出来なくなる。
【0011】
そこで、複数本の光ファイバのFBGセンサの反射波長を変えたものを使用すれば、波長の重なりは回避できる。しかし、検出器側では反射波長がすべて検出されてしまい、波長が合成される。そのため、FBGセンサに変化がない状態では、それぞれの光ファイバの波長は特定できるが、特定のFBGセンサに温度あるいは歪みが生じた場合、その部分の波長のみが変化するため、変化しないFBGセンサの波長と重なる、あるいは、その波長を追い越してしまい、正確な波長変化を捉えることが出来なくなる。
【0012】
そこで、本発明は上述の問題点を鑑みてなしたもので、その代表的な目的は、1本の伝送路で複数本の光ファイバを使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバのFBGセンサを計測可能なFBGセンサの多点計測方法および装置を提供するものである。
【0013】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
すなわち、代表的なFBGセンサの多点計測方法は、第1のコアに回折格子を形成し、第1の遅延時間を持つ第1の遅延用ファイバを有した第1の光ファイバと、第2のコアに回折格子を形成し、第2の遅延時間を持つ第2の遅延用ファイバを有した第2の光ファイバとを有して、光源からの光を第1の光変調器で変調し、前記第1の光変調器で変調された光を前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射し、前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を第2の光変調器で変調し、 前記第2の光変調器で変調された反射光を光電変換素子で光電変換し、前記光電変換素子で光電変換された信号から波長を算出し、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測することを特徴とする。
【0016】
また、代表的なFBGセンサの多点計測装置は、コアに回折格子を形成した光ファイバと、光を発射する光源と、前記光源から発射された光のうち、前記光ファイバに入射する光の時間を制御する第1の光変調器と、前記第1の光変調器からの出射光を前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの回折格子からの反射光を透過する時間を制御する第2の光変調器と、前記第2の光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して前記光ファイバからの信号を分離する波長移動量算出器と、前記波長移動量算出器の結果から、被測定物の変形量を算出する演算器と、前記演算器で算出した前記被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
すなわち、代表的な効果は、複数本の光ファイバからの光信号を光スイッチで切り替えることなく、1本の伝送路で伝達することができ、さらに計測器が1台で複数本の光ファイバの検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置の構成の一例を示す図である。
【図2】(a)〜(c)は図1に示した多点のFBGセンサの一例を説明するための図である。
【図3】(a)〜(c)は図1に示した多点のFBGセンサによる計測前と計測時の一例を説明するための図である。
【図4】図1に示した光変調器(光源側光変調器、検出側光変調器)の動作タイミングの一例を説明するための図である。
【図5】(a)〜(d)は図4のタイミングで検出した受光素子における光ファイバ別の検出強度分布の一例を説明するための図である。
【図6】(a),(b)は図1に示したFBGセンサから検出される検出波形の波長算出の一例を説明するための図である。
【図7】図1に示した表示部における表示画面の一例を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるFBGセンサを用いた多点計測装置の計測フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第1の適用例(発電機のロータの計測)として、発電機の一例を説明するための概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第2の適用例(発電機のステータの計測)として、発電機の一例を説明するための概略断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第3の適用例(発電機のロータとステータの両方の計測)として、発電機の一例を説明するための概略断面図である。
【図12】本発明の実施の形態5において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第4の適用例(原子力発電設備)として、原子力発電設備の一例を説明するための概略図である。
【図13】(a)〜(d)は一般的なFBGセンサの原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
[本発明の実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るFBGセンサの多点計測方法(一例として、()内に対応する構成要素の符号などを付記)は、第1のコアに回折格子を形成し、第1の遅延時間を持つ第1の遅延用ファイバを有した第1の光ファイバ(例えば4A)と、第2のコアに回折格子を形成し、第2の遅延時間を持つ第2の遅延用ファイバを有した第2の光ファイバ(例えば4B)とを有して、光源からの光を第1の光変調器で変調し(S1204)、前記第1の光変調器で変調された光を前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射し、前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を第2の光変調器で変調し(S1205)、 前記第2の光変調器で変調された反射光を光電変換素子で光電変換し、前記光電変換素子で光電変換された信号から波長を算出し(S1207〜S1209)、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測する(S1210)ことを特徴とする。
【0023】
より詳細には、FBGセンサの多点計測方法において、1本の光ファイバに反射波長を僅かに変えたFBGセンサを直列に数珠繋ぎで形成した。この光ファイバは、計測器からFBGセンサまでの長さが全て異なるものを複数本設置した。この複数本の光ファイバは、1本の出力となるように、光ファイバカプラで合成した。光源からの光を光源側光変調器により、光変調して特定のタイミングと時間を制御した光を出射するようにした。出射した光は、光サーキュレータを介し、光ファイバカプラに入射するようにした。光変調された光は、光ファイバカプラで各光ファイバに分配し、各光ファイバのFBGセンサで反射するようにした。各光ファイバの反射信号は、再び光ファイバカプラで合成され、光サーキュレータで検出器側に導光されるようにした。導光された光は、検出側光変調器で、光源側光変調器のタイミングと時間に同期したタイミングと時間により検出器の受光素子で受光するようにした。受光した光は、電気信号に変換され、各FBGセンサに対応した波長として出力できるようにした。出力した波長は、光源側の光変調器と検出側の光変調器のタイミングにより、特定の光ファイバからの反射光として判断し、その波長移動量から温度あるいは歪み量を算出するようにした。算出した温度あるいは歪み量を光ファイバ毎に処理し、被測定物の変化に関する情報を表示するようにした。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係るFBGセンサの多点計測装置(一例として、()内に対応する構成要素の符号などを付記)は、コアに回折格子を形成した光ファイバ(4)と、光を発射する光源(9)と、前記光源から発射された光のうち、前記光ファイバに入射する光の時間を制御する第1の光変調器(10)と、前記第1の光変調器からの出射光を前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの回折格子からの反射光を透過する時間を制御する第2の光変調器(12)と、前記第2の光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して前記光ファイバからの信号を分離する波長移動量算出器(14)と、前記波長移動量算出器の結果から、被測定物の変形量を算出する演算器(15)と、前記演算器で算出した前記被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部(16)とを有することを特徴とする。
【0025】
より詳細には、FBGセンサの多点計測装置において、広帯域波長の光源からの光を光変調器で変調する光源側の光変調手段と、反射波長を僅かに変えたFBGセンサを直列に形成し、計測器からFBGセンサまでの光路長を変えた光ファイバの計測手段と、FBGセンサからの反射光を光変調器で変調する検出側の光変調手段と、この検出側の光変調器を透過した光のみを受光する光検出手段と、この光検出手段で得られた信号を波長に変換し、光ファイバ毎に波長を分離する演算手段と、この演算手段で算出した波長変化を、被測定物の温度あるいは歪みに変換する変換手段と、この変換手段の結果を表示する表示手段と、この情報を出力する出力手段とを備えて構成した。
【0026】
上述した本発明の実施の形態の概要に基づいた各実施の形態を、以下において図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法について、図1〜図8を用いて説明する。
【0028】
<FBGセンサの多点計測装置の構成>
まず、図1を用いて、本実施の形態に係るFBGセンサの多点計測装置の構成について説明する。図1は、このFBGセンサの多点計測装置の構成の一例を示す図である。
【0029】
本実施の形態のFBGセンサの多点計測装置は、計測部1と、接続部2と、制御部3とで構成される。計測部1は、多点(多連)のFBGセンサ5と遅延用ファイバ6とを形成した複数本(図1では3本の例を図示)の光ファイバ4(4A、4B、4C)と、光ファイバカプラ7とで構成される。
【0030】
光ファイバ4Aは、回折格子のピッチを僅かに変化させ、反射波長が異なるように複数個(図1では7個の例を図示)を直列に形成したFBGセンサ5A〜5Gを有している。同様に、光ファイバ4B、4Cも、回折格子のピッチを僅かに変化させ、反射波長が異なるように複数個を直列に形成したFBGセンサを有している。
【0031】
ここで、図2および図3を用いて、前述した多点のFBGセンサ5について説明する。図2は、多点のFBGセンサ5の一例を説明するための図である。(a)は多点のFBGセンサ5の正面図を示し、(b)はFBGセンサ5に入力する入力光506の光信号の波長特性を示し、(c)は入力した光信号のうちFBGセンサ5で反射されて出力された反射光507の光信号の波長特性を示す。
【0032】
図2(a)に示すように、光ファイバ4(例えば4A(4B、4Cも同様))は、FBGセンサ5A〜5Gまで直列に形成されている。FBGセンサ5A〜5Gまでは、前述した図13で示したように、回折格子505のピッチΛを僅かずつ変化させて、反射波長が僅かずつ変化するように形成する。図2(b)において、横軸は波長、縦軸はFBGセンサへの入力光506の光信号の強度を示す。光ファイバ4Aに入力する入力光506の光信号は、波長λ1から波長λ2までの多波長の波長特性を有している。図2(c)において、横軸は波長、縦軸はFBGセンサからの反射光507の光信号の強度を示す。
【0033】
入力光506は、各FBGセンサの回折格子Λのピッチに対応した波長で反射し、反射光507が出力される。FBGセンサ5Aでは波長λA、FBGセンサ5Bでは波長λB、FBGセンサ5Cでは波長λC、FBGセンサ5Dでは波長λD、FBGセンサ5Eでは波長λE、FBGセンサ5Fでは波長λF、FBGセンサ5Gでは波長λGのようになる。このように、1本の光ファイバ4Aに波長を僅かに変えたFBGセンサ5A〜5Gを数珠繋ぎに複数個形成することで、それぞれに対応した波長変化を検出することが可能である。しかしながら、例えば、隣接した波長λAと波長λBの波長差は、前述したように温度あるいは歪み量で変化する波長差よりも広い波長としなければ、変化するFBGセンサ5A、5Bとして特定が出来ない。そこで、本実施の形態においては、多点のFBGセンサ5(5A〜5G)と遅延用ファイバ6(6A〜6C)とを形成した複数本の光ファイバ4(4A〜4C)などを使用することで、後述するように、この課題を解決している。
【0034】
図3は、多点のFBGセンサ5による計測前と計測時の一例を説明するための図である。(a)は多点のFBGセンサ5の正面図を示し、(b)は計測前(通常状態)の入力した光信号のうちFBGセンサ5で反射されて出力された反射光507の光信号の波長特性を示し、(c)は計測時(一部に温度あるいは歪みが生じた場合)の入力した光信号のうちFBGセンサ5で反射されて出力された反射光507の光信号の波長特性を示す。
【0035】
図3(a)において、例えば、FBGセンサ5Bの位置にT1の温度900が生じ、FBGセンサ5Gの位置にT2の温度901が生じたとする。図3(b)は計測前の反射特性であり、それぞれの波長中心は、波長λAから波長λGである。計測時においては、図3(c)のような結果となり、温度変化があるFBGセンサ5Bでは、波長λBが波長λB’となり、FBGセンサ5Gでは、波長λGが波長λG’のように変化する。そのほかのFBGセンサ5A、5C、5D、5E、5Fについての波長変化はない。温度T1においては、波長λB’―波長λBで波長の変化を求め、それに10pm/℃の温度特性で除算したものが温度変化量(T1=(λB’―λB)/10pm/℃)となる。温度T2においての温度変化量(T2=(λG’―λG)/10pm/℃)も同様である。
【0036】
前述した図1に戻り、さらに本実施の形態のFBGセンサの多点計測装置について説明する。図1において、光ファイバ4Aには、反射波長が異なるように7個を直列に形成したFBGセンサ5A〜5Gの制御部3側に、長さL1の遅延用ファイバ6Aを設ける。光ファイバ4Bは、同様にFBGセンサ5A〜5Gを有し、長さL2の遅延用ファイバ6Bを有している。光ファイバ4Cは、同様にFBGセンサ5A〜5Gを有し、長さL3の遅延用ファイバ6Cを有している。遅延用ファイバ6の長さは、光ファイバ4における光速度を考慮し、光ファイバ4Aと光ファイバ4Bが弁別可能な長さとする。また、それぞれの遅延用ファイバ6は、長さの差を均等にすれば、遅延時間が均等になるため、処理が簡単となる。当然、この長さを均等にしなくとも、同じ長さでなければ問題はない。
【0037】
本実施の形態では、3本の光ファイバ4を用いたときの説明を行う。なお、光ファイバ4のFBGセンサ5A〜5Gの反射波長はすべて同じでも、異なっていても構わない。また、FBGセンサ5の個数はもちろん7個に限定するものではなく、さらに光ファイバ4の本数も3本に限定するものではない。
【0038】
計測部1の光ファイバカプラ7は、1本の伝送路を複数の光ファイバ4に分配するものであり、光ファイバ4A、4B、4Cを分配側に接続することで1本の伝送路に統合することができる。
【0039】
接続部2は、接続部2と制御部3とを接続するための機構部であり、光伝送が可能なジョイント8で構成される。ジョイント8は、回転部8aと固定部8bで構成されている。例えば、計測部1が回転体内に設置される場合、ジョイント8の回転部8aは、計測部1と同時に回転できるように設置する。もちろん、計測部1が回転しない場合は、このジョイント8は接続不要となる構成で構わない。
【0040】
制御部3は、広帯域波長光源9、光源側光変調器10、光サーキュレータ11、検出側光変調器12、受光素子13、蓄積部13A、波長移動量算出器14、温度・歪み算出器15、表示部16、出力部17、計測条件設定部18、光変調器制御回路19を備えている。
【0041】
広帯域波長光源9は、光を発射する光源である。光源側光変調器10は、広帯域波長光源9から発射された光を、光変調して特定のタイミングと時間を制御した光として出射するための光変調器である。光サーキュレータ11は、光源側光変調器10から出射された光を光ファイバカプラ7に入射すると共に、光ファイバカプラ7で合成された各光ファイバ4からの反射光を検出側光変調器12に導光するためのサーキュレータである。
【0042】
検出側光変調器12は、光サーキュレータ11で導光された光を、光源側光変調器10のタイミングと時間に同期したタイミングと時間により制御した光として光変調するための光変調器である。受光素子13は、検出側光変調器12から受光した光を電気信号に変換するための光電変換素子である。蓄積部13Aは、受光素子13は変換された電気信号を蓄積するための蓄積手段である。
【0043】
波長移動量算出器14は、受光素子13で電気信号に変換され、蓄積部13Aに蓄積された信号を、各光ファイバ4毎に波長を分離し、各FBGセンサ5に対応した波長として出力できるようにするための演算手段である。温度・歪み算出器15は、波長移動量算出器14で算出された波長の移動量から温度あるいは歪み量を算出するための算出手段である。
【0044】
表示部16は、温度・歪み算出器15での算出後の歪み、温度の測定結果の他、測定場所、検出波形の表示、波形中心の表示などを行うための表示手段である。出力部17は、表示部16によって表示された画面、測定結果、測定条件などを外部メモリや紙などに出力するための出力手段である。計測条件設定部18は、表示部16、出力部17、光変調器制御回路19などに接続され、測定に必要な条件、測定結果の判定条件を設定するための設定手段である。光変調器制御回路19は、光源側光変調器10と検出側光変調器12のタイミングと時間を同期させるための制御手段である。
【0045】
<FBGセンサの多点計測装置の動作>
次に、前述の図1に示した構成を備えたFBGセンサの多点計測装置の動作について説明する。
【0046】
まず、広帯域波長光源9からの光を光源側光変調器10で光信号を変調し、透過した光を光サーキュレータ11で光ファイバカプラ7に伝送する。この広帯域波長光源9には、例えばASE(Amplified Spontaneous Emission)光源のような幅広い波長帯域を有するものを使用する。または、掃印光源を使用しても同様の効果が得られる。
【0047】
そして、光ファイバ4A〜4CのFBGセンサ5A〜5Gからの反射光は、再度、光ファイバカプラ7を透過して、光サーキュレータ11に戻り、検出側光変調器12に伝送される。さらに、検出側光変調器12を透過した光は、受光素子13で受光され、波長移動量算出器14にて各FBGセンサ5A〜5Gの中心波長を算出する。さらに、温度・歪み算出器15にて、各光ファイバ4A〜4Cの各FBGセンサ5A〜5Gの温度・歪みを算出し、表示部16にて結果を表示する。また、出力部17により、所望の結果を出力する。
【0048】
この際に、光源側光変調器10と検出側光変調器12は、光変調器制御回路19により、動作時間とタイミングを制御する。また、計測条件設定部18は、光ファイバ4A〜4Cの条件や、計測条件を入力し、光変調器制御回路19、表示部16、出力部17の制御を行う。また、受光素子13は、広帯域波長光源9にASE光源を用いた場合は、光の波長を測定できる分光器を用いる。また、広帯域波長光源9に掃印光源を用いた場合は、フォトダイオードのような光出力を電気出力に変換可能な素子を使用する。
【0049】
続いて、光ファイバ4A〜4Cにおける光の速度と、光ファイバ4A〜4Cの長さによる遅延時間の関係を説明する。式1は、光ファイバ4A〜4Cにおける光の速度である。
【0050】
光の速度=真空中光速度/光ファイバの屈折率・・・(式1)
ここで、真空中の光速度を299792458m/s、光ファイバ4A〜4Cの屈折率を1.45とすると、式1により、光ファイバ4A〜4Cにおける光の速度は、205337300m/sとなる。
【0051】
次に、光ファイバ4A〜4Cの長さによる遅延時間を、式2に示す。
【0052】
遅延時間=光ファイバの長さ×2/光ファイバにおける光の速度・・・(式2)
ここで、光ファイバ4A〜4Cの長さを20mとすると、式2より、遅延時間は194.8nsとなる。
【0053】
<光変調器の動作タイミング>
図4は、本実施の形態における光変調器(光源側光変調器10、検出側光変調器12)の動作タイミングの一例を説明するための図である。光源側光変調器10と検出側光変調器12の制御信号の一例を示す。ここで、図1に示した光ファイバ4Aの遅延用ファイバ6Aを20mとし、光ファイバ4Bの遅延用ファイバ6Bを40mとし、光ファイバ4Cの遅延用ファイバ6Cを60mとする。なお、FBGセンサ5の全長は全て同じとする。この遅延用ファイバ6Aの20mでの遅延時間は、194.8nsとなり、それぞれ加算される。この遅延時間の194.8nsを時間Tとする。
【0054】
まず、光変調器制御回路19により、光源側光変調器10に時間Tで広帯域波長光源9の光を透過し、時間4Tで再度、広帯域波長光源9の光を透過する信号20で制御を行う。また、光変調器制御回路19により、検出側光変調器12に時間TでFBGセンサ5からの反射光が透過するように3回制御する信号21で制御を行う。この変調回数は、光ファイバ4の本数であり、本実施の形態では、光ファイバ4は3本であるため、3回の制御とする。
【0055】
まず、最初にタイミング22で透過した光は遅延時間T、次のタイミング23で透過した光は遅延時間2T、次のタイミング24で透過した光は遅延時間3Tとなる。すなわち、この遅延時間Tは、遅延用ファイバの長さ20mに相当した時間であり、タイミング22、22aでは、光ファイバ4Aでの反射光を検出し、同様に、タイミング23、23aでは、光ファイバ4Bでの反射光を検出し、タイミング24、24aでは、光ファイバ4Cでの反射光を検出していることになる。光変調器制御回路19には、計測条件設定部18により光ファイバ4の条件、検出条件などの計測条件に則り、設定されるものである。このように、各光ファイバ4の遅延時間に応じた反射光からFBGセンサ5の反射波長を算出することにより、各光ファイバ4A〜4Cに作成した各FBGセンサ5A〜5Gが重なることなく検出が可能である。
【0056】
なお、光源側光変調器10と検出側光変調器12の制御は、変調器の遅れ時間を考慮して、遅延時間Tより若干短い時間で制御することが望ましい。また、光源側光変調器10と検出側光変調器12は、例えばAO素子、EO素子、半導体光増幅器のように、入射した光を透過、遮断する時間をnsオーダで制御できるものを使用すれば良い。
【0057】
<光ファイバ別の強度分布>
図5は、前述した図4のタイミングで検出した受光素子13における光ファイバ4別の検出強度分布の一例を説明するための図である。(a)は検出側光変調器12の動作信号を、(b)は光ファイバ4Aでの検出強度分布を、(c)は光ファイバ4Bでの検出強度分布を、(d)は光ファイバ4Cでの検出強度分布をそれぞれ示す。
【0058】
図5(a)において、検出側光変調器12の信号21は図4と同じである。受光素子13の検出信号は蓄積部13Aにより蓄積しているため、信号21に応じて検出信号を合成すれば、光ファイバ毎の強度分布が作成できる。図5(b)において、信号21のタイミング22とタイミング22aでの信号を合成すれば、光ファイバ4Aでの信号強度25になる。同様に、図5(c)において、信号21のタイミング23とタイミング23aでの信号を合成すれば、光ファイバ4Bでの信号強度26になる。図5(d)において、信号21のタイミング24とタイミング24aでの信号を合成すれば、光ファイバ4Cでの信号強度27になる。このように、検出側光変調器12のタイミングで受光素子13の受光タイミング毎に合成することで、各光ファイバ4A〜4Cの強度分布の作成が可能となる。
【0059】
<検出波形の波長算出>
図6は、FBGセンサ5から検出される検出波形の波長算出の一例を説明するための図である。(a)は受光素子13で検出したFBGセンサ5からの反射光の強度分布を、(b)は(a)の波形に微分処理した波形の強度分布をそれぞれ示す。
【0060】
図6(a)において、横軸は波長、縦軸はFBGセンサ5からの反射光を検出した反射光検出出力(強度)である。受光素子13で検出したFBGセンサ5からの反射光の検出波形は波形28となる。図6(b)において、横軸は波長、縦軸は微分した反射光検出出力(強度)である。検出波形28に微分処理を施すと微分波形29となる。この微分波形29の、ベースレベル30と微分波形29との交点31を算出することで、検出波形28の中心波長32を算出することが可能となる。図1に示した波長移動量算出器14において、波長の算出は、上述した方法で実行することが出来る。なお、検出波形28の波長を求めるためには、他の方法であっても問題はない。この中心波長32から測定点のFBGセンサ5の波長移動量を求めて、温度・歪み算出器15により、測定点の計測を行う。
【0061】
<表示部における表示画面>
図7は、表示部16における表示画面の一例を説明するための図である。表示画面300は、FBGセンサ5の全波形表示部301、この全波形表示部301の拡大表示部302、測定場所表示部303、条件設定部304、測定結果表示部305、測定結果グラフ表示部306を備えている。
【0062】
全波形表示部301では、枠307によって拡大する波形を選択可能である。拡大表示部302では、全波形表示部301で選択された枠307の波形を拡大する。この拡大表示部302では、枠308が設定可能であり、この枠308内で閾値310以上の波形を用いて図6に示した方式で波長を演算する。
【0063】
測定場所表示部303では、測定場所を表示可能である。なお、図7では、光ファイバの本数は4本の例を示している。条件設定部304は、測定の開始3041、測定の停止3042、光ファイバの切り替え3043、条件設定である閾値設定3044、演算範囲設定3045、遅延用ファイバ長さ3046が設定可能である。
【0064】
測定結果表示部305は、FBGセンサ5に対応する歪みと温度の計測結果を表示可能である。なお、図7では、FBGセンサ5の個数は10個の例を示している。この例では、No.2のFBGセンサの歪みが大きく、No.3のFBGセンサの温度が高くなっている。測定結果グラフ表示部306は、測定結果表示部305で表示した歪み、温度の測定結果を時間的にグラフ化して表示するものである。
【0065】
<FBGセンサを用いた多点計測装置の計測フロー>
図8は、本実施の形態におけるFBGセンサを用いた多点計測装置の計測フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【0066】
まず、FBGセンサ5(光ファイバ4)を被測定物にセットする(S1201)。次に、表示部16の表示画面300上で被測定物を計測するための検出条件のセットを行い(S1202)、計測を開始する(S1203)。
【0067】
計測が開始すると、以降はソフトウェアによるプログラム処理により自動的に実行される。まず、広帯域波長光源9からの照明光を光源側光変調器10で制御し(S1204)、照明光をFBGセンサ5に照射し、その反射光を検出側光変調器12で制御し(S1205)、受光素子13で反射光を検出する(S1206)。
【0068】
さらに、波長移動量算出器14において、順に、1本目の光ファイバの波長を算出し(S1207)、2本目の光ファイバの波長を算出し(S1208)、3本目の光ファイバの波長を算出し(S1209)、そして、温度・歪み算出器15で波長変化量から歪み量および温度を算出する(S1210)。
【0069】
そして、これらの算出した結果を表示部16の表示画面300上に表示し(S1211)、また、算出結果を必要に応じて出力部17で外部出力を行い(S1212)、測定を終了する。
【0070】
<本実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
FBGセンサの多点計測装置として、コアに回折格子を形成した光ファイバ4(4A〜4C)と、広帯域波長光源9と、この光源からの光のうち、光ファイバ4に入射する光の時間を制御する光源側光変調器10と、この光変調器からの出射光を入射して、光ファイバ4の回折格子からの反射光を透過する時間を制御する検出側光変調器12と、この光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して光ファイバ4からの信号を分離する波長移動量算出器14と、この算出器の結果から被測定物の変形量を算出する温度・歪み算出器15と、この被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部16などを有することで、1本の伝送路で複数本の光ファイバ4を使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバ4のFBGセンサ5を計測可能である。言い換えれば、複数本の光ファイバ4からの光信号を光スイッチで切り替えることなく、1本の伝送路で伝達することができ、さらに計測器が1台で複数本の光ファイバ4の検出が可能となる。これにより、被測定物の変形による温度あるいは歪みを検出することができる。
【0072】
より具体的には、光源側光変調器10により、広帯域波長光源9からの光の透過時間を制御して、各光ファイバ4に入射する時間を制限することができる。また、検出側光変調器12により、各光ファイバ4の回折格子からの反射光を、各光ファイバ4の各遅延用ファイバ6で生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限することができる。この結果、各光ファイバ4からの反射光を時間的に分離することができる。
【0073】
また、FBGセンサの多点計測方法として、広帯域波長光源9からの光を光源側光変調器10で変調し(S1204)、光ファイバ4(4A〜4C)の回折格子からの反射光を検出側光変調器12で変調し(S1205)、 検出側光変調器12で変調された反射光を光電変換した信号から波長を算出し(S1207〜S1209)、各光ファイバ4からの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測する(S1210)ことで、前述した多点計測装置と同様に、1本の伝送路で複数本の光ファイバ4を使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバ4のFBGセンサ5を計測可能である。言い換えれば、複数本の光ファイバ4からの光信号を光スイッチで切り替えることなく、1本の伝送路で伝達することができ、さらに計測器が1台で複数本の光ファイバ4の検出が可能となる。これにより、被測定物の変形による温度あるいは歪みを検出することができる。
【0074】
[実施の形態2]
次に、前述した実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の適用例について、本実施の形態2、さらに後述する実施の形態3〜5において順に説明する。
【0075】
本実施の形態では、第1の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、発電機のロータの計測に適用した場合を説明する。
【0076】
図9は、発電機の一例を説明するための概略断面図である。発電機101は、ロータ102、ステータ104、ハウジング105などから構成される。タービン100は、発電機101のロータ102に接続されている。ロータ102は、中心が中空構造103となっている。ステータ104は、ロータ102に対向配置されている。ロータ102とステータ104は、それぞれに導体(例えば銅線)で製作したコイルが図示しない方法で巻き付けられている。
【0077】
回転体であるロータ102には、前記実施の形態1で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4が固定されており、遅延用ファイバ6と光ファイバカプラ7はロータ102の中空構造103の部分に設置される。ジョイント8は、回転部8aはロータ102に固定され、固定部8bはハウジング105に固定されており、光ファイバ4はロータ102と同時に回転できる構造となっている。ジョイント8の固定部8bは、接続用光ファイバ106によって制御部3に接続される。
【0078】
FBGセンサ5、遅延用ファイバ6、光ファイバカプラ7、ジョイント8、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って温度または歪みが算出される。さらに、図2で説明したように、1本の光ファイバ4で複数個のFBGセンサ5を使用すれば、ロータ102の多点での計測が可能である。
【0079】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を発電機101のロータ102に適用した場合においては、発電機101の試験時、あるいは定常運転時における発電機内部の歪み、温度計測が運転しながら可能となる。さらに、光ファイバ4による計測であるため、磁界の影響が皆無なため、発電機101の性能を劣化することがない。
【0080】
[実施の形態3]
次に、本実施の形態では、第2の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、発電機のステータの計測に適用した場合を説明する。
【0081】
図10は、発電機の一例を説明するための概略断面図である。発電機101は、前述した図9と同様な構成である。静止系であるステータ104に、前記実施の形態1で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4が固定されている。ステータ104は静止系であるため、ジョイント8は不要であり、遅延用ファイバ6を介して光ファイバカプラ7から直接、接続用光ファイバ106で制御部3に接続される。
【0082】
FBGセンサ5、遅延用ファイバ6、光ファイバカプラ7、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って温度または歪みが算出される。さらに、図2で説明したように、1本の光ファイバ4で複数個のFBGセンサ5を使用すれば、ステータ104の多点での計測が可能である。
【0083】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を発電機101のステータ104に適用した場合においても、発電機101の試験時、あるいは定常運転時における発電機内部の歪み、温度計測が運転しながら可能となる。さらに、光ファイバ4による計測であるため、磁界の影響が皆無なため、発電機101の性能を劣化することがない。
【0084】
[実施の形態4]
次に、本実施の形態では、第3の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、発電機のロータとステータの両方の計測に適用した場合を説明する。
【0085】
図11は、発電機の一例を説明するための概略断面図である。発電機101は、前述した図9と図10と同様な構成である。まず、ロータ102には、図9で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4がジョイント8に接続されている。ステータ104には、図10で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4が光ファイバカプラ7に接続されている。さらに、ロータ102のジョイント8からの接続用光ファイバ107を光ファイバカプラ108に接続する。ステータ104側の光ファイバカプラ7の出力を光ファイバカプラ108に接続する。そして、光ファイバカプラ108の出力を接続用光ファイバ109により制御部3に接続する。
【0086】
FBGセンサ5、遅延用ファイバ6、光ファイバカプラ7、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って温度または歪みが算出される。さらに、図2で説明したように、1本の光ファイバ4で複数個のFBGセンサ5を使用すれば、ロータ102、ステータ104の多点での計測が可能である。
【0087】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を発電機101のロータ102とステータ104の両方に適用した場合においても、発電機101の試験時、あるいは定常運転時における発電機内部の歪み、温度計測が運転しながら可能となる。さらに、光ファイバ4による計測であるため、磁界の影響が皆無なため、発電機101の性能を劣化することがない。
【0088】
[実施の形態5]
次に、本実施の形態では、第4の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、原子力発電設備に適用した場合を説明する。
【0089】
図12は、原子力発電設備の一例を説明するための概略図である。原子力発電設備は、原子炉150、冷却装置151、タービン160、発電機161などから構成される。原子炉150によりタービン160を回転し、タービン160に接続した発電機161により発電可能である。原子炉150、タービン160、冷却装置151はそれぞれ冷却配管152で接続されている。
【0090】
冷却配管計測用の複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ153は、冷却配管152の周囲に巻き付けられている。設備計測用の複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ154は、原子炉150の建屋周辺に張り巡らし、同様にFBGセンサ5の部分を固定する。各FBGセンサ5を有した光ファイバ153、154は、光ファイバカプラ155に接続され、制御部3に接続される。
【0091】
FBGセンサ5、光ファイバカプラ155、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って歪み量及び温度が算出される。さらに、図9〜図11と同様に冷却配管計測用の光ファイバ153、設備計測用の光ファイバ154は複数個のFBGセンサ5を有したものを使用すると、多点で同時観察が可能となる。
【0092】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を原子力発電設備に適用した場合においては、原子炉150の建屋の変形や異常温度上昇などのヘルスモニター、冷却配管152の異常温度上昇、異常歪みが計測可能となり、設備全体の安全監視が可能となる効果も奏する。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のFBGセンサの多点計測技術は、光反射波長が変化する複数のFBGセンサを直列に挿入した光ファイバを複数本備え、時分割で多重化することにより、ファイバ光路を切り替えることなく検出できるFBGセンサの多点計測方法および装置に利用可能である。例えば、発電機のロータやステータ、原子力発電設備などに適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…計測部、2…接続部、3…制御部、
4(4A〜4C)…光ファイバ、5(5A〜5G)…FBGセンサ、6(6A〜6C)…遅延用ファイバ、7…光ファイバカプラ、
8…ジョイント、8a…回転部、8b…固定部、
9…広帯域波長光源、10…光源側光変調器、11…光サーキュレータ、12…検出側光変調器、13…受光素子、13A…蓄積部、14…波長移動量算出器、15…温度・歪み算出器、16…表示部、17…出力部、18…計測条件設定部、19…光変調器制御回路、
100…タービン、101…発電機、102…ロータ、103…中空構造、104…ステータ、105…ハウジング、106…接続用光ファイバ、107…接続用光ファイバ、108…光ファイバカプラ、109…接続用光ファイバ、
150…原子炉、151…冷却装置、152…冷却配管、153…光ファイバ、154…光ファイバ、155…光ファイバカプラ、160…タービン、161…発電機。
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBGセンサの多点計測技術に関し、特に、被測定物の変形を検出するFBGセンサの多点計測方法および多点計測装置に関する。より詳細には、光反射波長が変化する複数のFBGセンサを直列に挿入した光ファイバを複数本備え、時分割で多重化することにより、ファイバ光路を切り替えることなく検出できるFBGセンサの多点計測方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバを用いて対象物の温度あるいは歪みを計測する手段として、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating、以下FBGと表記する)を用いるFBGセンサ方式が提案されている。FBGセンサは、光ファイバのコアに一定の間隔で、屈折率の高い部分と、低い部分を周期的に繰り返して回折格子を形成したものである。
【0003】
図13を用いて、一般的なFBGセンサの原理を説明する。(a)はFBGセンサに入力する光信号の波長分布を示し、(b)はFBGセンサの断面図を示す。(c)は入力した光信号のうちFBGセンサで反射されて出力された光信号の波長分布を示し、(d)は入力した光信号のうちFBGセンサを透過した光信号の波長分布を示す。光ファイバ500は、石英ガラスで形成された細い物質であるコア501を中心に配置し、その周囲を覆うグラッド502で構成されている。石英ガラスはもろいため、保護被膜503で周囲を被せる。コア501には、ピッチΛで長さLの範囲で周期的な回折格子505が形成されている。この回折格子505は、図示しない方法によって、光ファイバのコア501に紫外光(たとえば波長250nm前後)の干渉縞を照射することで、コア501の屈折率の変化を周期的に変化させることで形成可能である。この回折格子505が形成された部分をFBGセンサ5と称する。
【0004】
FBGセンサ5の反射光507の波長は、コア501の屈折率や回折格子505の周期を変化させる物理量によって変化することになる。例えば、FBGセンサ5に熱変化が生じると、コア501に温度変化による屈折率の変動が発生し、回折格子505の周期が変動するため、反射光507の波長がシフトすることになる。この温度によるシフト量は、1.5μmの波長帯域を使用した場合は、約10pm/℃となる。また、FBGセンサ5に歪みが生じると、コア501に伸び縮みが発生するため、回折格子505の周期が変動する。この歪みによるシフト量は、約1.2pm/μεとなる。
【0005】
FBGセンサを用いた多点歪み及び温度センサとして、例えば特許文献1に記載されている方法がある。本方式は、光ファイバに光反射波長が変化する複数のFBGセンサを光ファイバ内に直列に挿入し、この光ファイバの一端から光信号を入射し、FBGセンサからの反射光量をOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)で測定すると共に、光ファイバ中からの後方散乱光をOTDRで測定することで、光ファイバの長手方向に沿った温度分布を求める。そして、この温度分布に基づき、各FBGセンサの温度依存による反射光量変化分を補正し、この補正された反射光量から各FBGセンサの正確な歪みを求める方式である。OTDRとは、光ファイバに光パルスを入射して、後方散乱光の位置と強度を測定し、光ファイバ内の損失状態や場所を測定するものである。その距離分解能は、一般的に数十センチ程度である。複数本の光ファイバを使用する場合、切り替え用光スイッチを用いて切り替え、1台の測定器で行うことができる。なお、切り替え用光スイッチの能力に応じて光ファイバの本数を増やすことができるとしている。
【0006】
また、回転体に複数のFBGセンサを設置する方法として、例えば特許文献2に記載されたものがある。本方式は、回転体に設置したFBGセンサの光信号を外部に設置した受信部に非接触で伝送する方式である。光伝送する光軸は回転中心である場合、1本の伝送路しか伝送できないため、回転体内に設置するFBGセンサが複数本の場合は、切り替え用光スイッチを用いて光ファイバを切り替えて対応するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−141922号公報
【特許文献2】特開2003−123178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている測定方法では、OTDR方式であるため、距離分解能が数十センチ程度と悪く、近接した場所での計測が出来ないため、特定場所の計測が出来ない。また、複数本の光ファイバで計測する場合は、光スイッチで切り替える必要があるため、同時に複数個所の計測は不可能である。この方式で、複数個所を同時に計測する場合は、光ファイバと同数の計測器が必要となり、装置が大型化し、計測器の連携が必要となる。また、複数の計測器を使用することから、計測器毎の感度が異なるといった、信頼性の低下も考えられる。
【0009】
また、上述した特許文献2に記載されている測定方法では、回転系と固定系を分離しなければいけないため、光ファイバでの接続は出来ない。そのため、回転系と固定系の接続する伝送路は、必ず1系統であるため、複数本の光ファイバを接続できない。この特許文献2に記載されている方式では、複数本の光ファイバを使用する場合の手段として、回転系側に光スイッチを設け、測定場所に応じて光スイッチで切り替えて対応しようとしている。
【0010】
また、前記特許文献1および2に記載はないが、複数本の光ファイバを接続する方式として、光ファイバカプラを用いることが可能である。しかしながら、光ファイバカプラは単純に1本を複数本に分配する機能のみであるため、例えば同じ反射波長で作成したFBGセンサを有した光ファイバを複数本接続した場合、検出器には、複数本が重なった波長が検出されてしまう。そのため、特定の光ファイバを分離することが出来なくなり、正確な計測が出来なくなる。
【0011】
そこで、複数本の光ファイバのFBGセンサの反射波長を変えたものを使用すれば、波長の重なりは回避できる。しかし、検出器側では反射波長がすべて検出されてしまい、波長が合成される。そのため、FBGセンサに変化がない状態では、それぞれの光ファイバの波長は特定できるが、特定のFBGセンサに温度あるいは歪みが生じた場合、その部分の波長のみが変化するため、変化しないFBGセンサの波長と重なる、あるいは、その波長を追い越してしまい、正確な波長変化を捉えることが出来なくなる。
【0012】
そこで、本発明は上述の問題点を鑑みてなしたもので、その代表的な目的は、1本の伝送路で複数本の光ファイバを使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバのFBGセンサを計測可能なFBGセンサの多点計測方法および装置を提供するものである。
【0013】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
すなわち、代表的なFBGセンサの多点計測方法は、第1のコアに回折格子を形成し、第1の遅延時間を持つ第1の遅延用ファイバを有した第1の光ファイバと、第2のコアに回折格子を形成し、第2の遅延時間を持つ第2の遅延用ファイバを有した第2の光ファイバとを有して、光源からの光を第1の光変調器で変調し、前記第1の光変調器で変調された光を前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射し、前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を第2の光変調器で変調し、 前記第2の光変調器で変調された反射光を光電変換素子で光電変換し、前記光電変換素子で光電変換された信号から波長を算出し、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測することを特徴とする。
【0016】
また、代表的なFBGセンサの多点計測装置は、コアに回折格子を形成した光ファイバと、光を発射する光源と、前記光源から発射された光のうち、前記光ファイバに入射する光の時間を制御する第1の光変調器と、前記第1の光変調器からの出射光を前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの回折格子からの反射光を透過する時間を制御する第2の光変調器と、前記第2の光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して前記光ファイバからの信号を分離する波長移動量算出器と、前記波長移動量算出器の結果から、被測定物の変形量を算出する演算器と、前記演算器で算出した前記被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
すなわち、代表的な効果は、複数本の光ファイバからの光信号を光スイッチで切り替えることなく、1本の伝送路で伝達することができ、さらに計測器が1台で複数本の光ファイバの検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置の構成の一例を示す図である。
【図2】(a)〜(c)は図1に示した多点のFBGセンサの一例を説明するための図である。
【図3】(a)〜(c)は図1に示した多点のFBGセンサによる計測前と計測時の一例を説明するための図である。
【図4】図1に示した光変調器(光源側光変調器、検出側光変調器)の動作タイミングの一例を説明するための図である。
【図5】(a)〜(d)は図4のタイミングで検出した受光素子における光ファイバ別の検出強度分布の一例を説明するための図である。
【図6】(a),(b)は図1に示したFBGセンサから検出される検出波形の波長算出の一例を説明するための図である。
【図7】図1に示した表示部における表示画面の一例を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるFBGセンサを用いた多点計測装置の計測フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第1の適用例(発電機のロータの計測)として、発電機の一例を説明するための概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第2の適用例(発電機のステータの計測)として、発電機の一例を説明するための概略断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第3の適用例(発電機のロータとステータの両方の計測)として、発電機の一例を説明するための概略断面図である。
【図12】本発明の実施の形態5において、実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の第4の適用例(原子力発電設備)として、原子力発電設備の一例を説明するための概略図である。
【図13】(a)〜(d)は一般的なFBGセンサの原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
[本発明の実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るFBGセンサの多点計測方法(一例として、()内に対応する構成要素の符号などを付記)は、第1のコアに回折格子を形成し、第1の遅延時間を持つ第1の遅延用ファイバを有した第1の光ファイバ(例えば4A)と、第2のコアに回折格子を形成し、第2の遅延時間を持つ第2の遅延用ファイバを有した第2の光ファイバ(例えば4B)とを有して、光源からの光を第1の光変調器で変調し(S1204)、前記第1の光変調器で変調された光を前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射し、前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を第2の光変調器で変調し(S1205)、 前記第2の光変調器で変調された反射光を光電変換素子で光電変換し、前記光電変換素子で光電変換された信号から波長を算出し(S1207〜S1209)、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測する(S1210)ことを特徴とする。
【0023】
より詳細には、FBGセンサの多点計測方法において、1本の光ファイバに反射波長を僅かに変えたFBGセンサを直列に数珠繋ぎで形成した。この光ファイバは、計測器からFBGセンサまでの長さが全て異なるものを複数本設置した。この複数本の光ファイバは、1本の出力となるように、光ファイバカプラで合成した。光源からの光を光源側光変調器により、光変調して特定のタイミングと時間を制御した光を出射するようにした。出射した光は、光サーキュレータを介し、光ファイバカプラに入射するようにした。光変調された光は、光ファイバカプラで各光ファイバに分配し、各光ファイバのFBGセンサで反射するようにした。各光ファイバの反射信号は、再び光ファイバカプラで合成され、光サーキュレータで検出器側に導光されるようにした。導光された光は、検出側光変調器で、光源側光変調器のタイミングと時間に同期したタイミングと時間により検出器の受光素子で受光するようにした。受光した光は、電気信号に変換され、各FBGセンサに対応した波長として出力できるようにした。出力した波長は、光源側の光変調器と検出側の光変調器のタイミングにより、特定の光ファイバからの反射光として判断し、その波長移動量から温度あるいは歪み量を算出するようにした。算出した温度あるいは歪み量を光ファイバ毎に処理し、被測定物の変化に関する情報を表示するようにした。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係るFBGセンサの多点計測装置(一例として、()内に対応する構成要素の符号などを付記)は、コアに回折格子を形成した光ファイバ(4)と、光を発射する光源(9)と、前記光源から発射された光のうち、前記光ファイバに入射する光の時間を制御する第1の光変調器(10)と、前記第1の光変調器からの出射光を前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの回折格子からの反射光を透過する時間を制御する第2の光変調器(12)と、前記第2の光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して前記光ファイバからの信号を分離する波長移動量算出器(14)と、前記波長移動量算出器の結果から、被測定物の変形量を算出する演算器(15)と、前記演算器で算出した前記被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部(16)とを有することを特徴とする。
【0025】
より詳細には、FBGセンサの多点計測装置において、広帯域波長の光源からの光を光変調器で変調する光源側の光変調手段と、反射波長を僅かに変えたFBGセンサを直列に形成し、計測器からFBGセンサまでの光路長を変えた光ファイバの計測手段と、FBGセンサからの反射光を光変調器で変調する検出側の光変調手段と、この検出側の光変調器を透過した光のみを受光する光検出手段と、この光検出手段で得られた信号を波長に変換し、光ファイバ毎に波長を分離する演算手段と、この演算手段で算出した波長変化を、被測定物の温度あるいは歪みに変換する変換手段と、この変換手段の結果を表示する表示手段と、この情報を出力する出力手段とを備えて構成した。
【0026】
上述した本発明の実施の形態の概要に基づいた各実施の形態を、以下において図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法について、図1〜図8を用いて説明する。
【0028】
<FBGセンサの多点計測装置の構成>
まず、図1を用いて、本実施の形態に係るFBGセンサの多点計測装置の構成について説明する。図1は、このFBGセンサの多点計測装置の構成の一例を示す図である。
【0029】
本実施の形態のFBGセンサの多点計測装置は、計測部1と、接続部2と、制御部3とで構成される。計測部1は、多点(多連)のFBGセンサ5と遅延用ファイバ6とを形成した複数本(図1では3本の例を図示)の光ファイバ4(4A、4B、4C)と、光ファイバカプラ7とで構成される。
【0030】
光ファイバ4Aは、回折格子のピッチを僅かに変化させ、反射波長が異なるように複数個(図1では7個の例を図示)を直列に形成したFBGセンサ5A〜5Gを有している。同様に、光ファイバ4B、4Cも、回折格子のピッチを僅かに変化させ、反射波長が異なるように複数個を直列に形成したFBGセンサを有している。
【0031】
ここで、図2および図3を用いて、前述した多点のFBGセンサ5について説明する。図2は、多点のFBGセンサ5の一例を説明するための図である。(a)は多点のFBGセンサ5の正面図を示し、(b)はFBGセンサ5に入力する入力光506の光信号の波長特性を示し、(c)は入力した光信号のうちFBGセンサ5で反射されて出力された反射光507の光信号の波長特性を示す。
【0032】
図2(a)に示すように、光ファイバ4(例えば4A(4B、4Cも同様))は、FBGセンサ5A〜5Gまで直列に形成されている。FBGセンサ5A〜5Gまでは、前述した図13で示したように、回折格子505のピッチΛを僅かずつ変化させて、反射波長が僅かずつ変化するように形成する。図2(b)において、横軸は波長、縦軸はFBGセンサへの入力光506の光信号の強度を示す。光ファイバ4Aに入力する入力光506の光信号は、波長λ1から波長λ2までの多波長の波長特性を有している。図2(c)において、横軸は波長、縦軸はFBGセンサからの反射光507の光信号の強度を示す。
【0033】
入力光506は、各FBGセンサの回折格子Λのピッチに対応した波長で反射し、反射光507が出力される。FBGセンサ5Aでは波長λA、FBGセンサ5Bでは波長λB、FBGセンサ5Cでは波長λC、FBGセンサ5Dでは波長λD、FBGセンサ5Eでは波長λE、FBGセンサ5Fでは波長λF、FBGセンサ5Gでは波長λGのようになる。このように、1本の光ファイバ4Aに波長を僅かに変えたFBGセンサ5A〜5Gを数珠繋ぎに複数個形成することで、それぞれに対応した波長変化を検出することが可能である。しかしながら、例えば、隣接した波長λAと波長λBの波長差は、前述したように温度あるいは歪み量で変化する波長差よりも広い波長としなければ、変化するFBGセンサ5A、5Bとして特定が出来ない。そこで、本実施の形態においては、多点のFBGセンサ5(5A〜5G)と遅延用ファイバ6(6A〜6C)とを形成した複数本の光ファイバ4(4A〜4C)などを使用することで、後述するように、この課題を解決している。
【0034】
図3は、多点のFBGセンサ5による計測前と計測時の一例を説明するための図である。(a)は多点のFBGセンサ5の正面図を示し、(b)は計測前(通常状態)の入力した光信号のうちFBGセンサ5で反射されて出力された反射光507の光信号の波長特性を示し、(c)は計測時(一部に温度あるいは歪みが生じた場合)の入力した光信号のうちFBGセンサ5で反射されて出力された反射光507の光信号の波長特性を示す。
【0035】
図3(a)において、例えば、FBGセンサ5Bの位置にT1の温度900が生じ、FBGセンサ5Gの位置にT2の温度901が生じたとする。図3(b)は計測前の反射特性であり、それぞれの波長中心は、波長λAから波長λGである。計測時においては、図3(c)のような結果となり、温度変化があるFBGセンサ5Bでは、波長λBが波長λB’となり、FBGセンサ5Gでは、波長λGが波長λG’のように変化する。そのほかのFBGセンサ5A、5C、5D、5E、5Fについての波長変化はない。温度T1においては、波長λB’―波長λBで波長の変化を求め、それに10pm/℃の温度特性で除算したものが温度変化量(T1=(λB’―λB)/10pm/℃)となる。温度T2においての温度変化量(T2=(λG’―λG)/10pm/℃)も同様である。
【0036】
前述した図1に戻り、さらに本実施の形態のFBGセンサの多点計測装置について説明する。図1において、光ファイバ4Aには、反射波長が異なるように7個を直列に形成したFBGセンサ5A〜5Gの制御部3側に、長さL1の遅延用ファイバ6Aを設ける。光ファイバ4Bは、同様にFBGセンサ5A〜5Gを有し、長さL2の遅延用ファイバ6Bを有している。光ファイバ4Cは、同様にFBGセンサ5A〜5Gを有し、長さL3の遅延用ファイバ6Cを有している。遅延用ファイバ6の長さは、光ファイバ4における光速度を考慮し、光ファイバ4Aと光ファイバ4Bが弁別可能な長さとする。また、それぞれの遅延用ファイバ6は、長さの差を均等にすれば、遅延時間が均等になるため、処理が簡単となる。当然、この長さを均等にしなくとも、同じ長さでなければ問題はない。
【0037】
本実施の形態では、3本の光ファイバ4を用いたときの説明を行う。なお、光ファイバ4のFBGセンサ5A〜5Gの反射波長はすべて同じでも、異なっていても構わない。また、FBGセンサ5の個数はもちろん7個に限定するものではなく、さらに光ファイバ4の本数も3本に限定するものではない。
【0038】
計測部1の光ファイバカプラ7は、1本の伝送路を複数の光ファイバ4に分配するものであり、光ファイバ4A、4B、4Cを分配側に接続することで1本の伝送路に統合することができる。
【0039】
接続部2は、接続部2と制御部3とを接続するための機構部であり、光伝送が可能なジョイント8で構成される。ジョイント8は、回転部8aと固定部8bで構成されている。例えば、計測部1が回転体内に設置される場合、ジョイント8の回転部8aは、計測部1と同時に回転できるように設置する。もちろん、計測部1が回転しない場合は、このジョイント8は接続不要となる構成で構わない。
【0040】
制御部3は、広帯域波長光源9、光源側光変調器10、光サーキュレータ11、検出側光変調器12、受光素子13、蓄積部13A、波長移動量算出器14、温度・歪み算出器15、表示部16、出力部17、計測条件設定部18、光変調器制御回路19を備えている。
【0041】
広帯域波長光源9は、光を発射する光源である。光源側光変調器10は、広帯域波長光源9から発射された光を、光変調して特定のタイミングと時間を制御した光として出射するための光変調器である。光サーキュレータ11は、光源側光変調器10から出射された光を光ファイバカプラ7に入射すると共に、光ファイバカプラ7で合成された各光ファイバ4からの反射光を検出側光変調器12に導光するためのサーキュレータである。
【0042】
検出側光変調器12は、光サーキュレータ11で導光された光を、光源側光変調器10のタイミングと時間に同期したタイミングと時間により制御した光として光変調するための光変調器である。受光素子13は、検出側光変調器12から受光した光を電気信号に変換するための光電変換素子である。蓄積部13Aは、受光素子13は変換された電気信号を蓄積するための蓄積手段である。
【0043】
波長移動量算出器14は、受光素子13で電気信号に変換され、蓄積部13Aに蓄積された信号を、各光ファイバ4毎に波長を分離し、各FBGセンサ5に対応した波長として出力できるようにするための演算手段である。温度・歪み算出器15は、波長移動量算出器14で算出された波長の移動量から温度あるいは歪み量を算出するための算出手段である。
【0044】
表示部16は、温度・歪み算出器15での算出後の歪み、温度の測定結果の他、測定場所、検出波形の表示、波形中心の表示などを行うための表示手段である。出力部17は、表示部16によって表示された画面、測定結果、測定条件などを外部メモリや紙などに出力するための出力手段である。計測条件設定部18は、表示部16、出力部17、光変調器制御回路19などに接続され、測定に必要な条件、測定結果の判定条件を設定するための設定手段である。光変調器制御回路19は、光源側光変調器10と検出側光変調器12のタイミングと時間を同期させるための制御手段である。
【0045】
<FBGセンサの多点計測装置の動作>
次に、前述の図1に示した構成を備えたFBGセンサの多点計測装置の動作について説明する。
【0046】
まず、広帯域波長光源9からの光を光源側光変調器10で光信号を変調し、透過した光を光サーキュレータ11で光ファイバカプラ7に伝送する。この広帯域波長光源9には、例えばASE(Amplified Spontaneous Emission)光源のような幅広い波長帯域を有するものを使用する。または、掃印光源を使用しても同様の効果が得られる。
【0047】
そして、光ファイバ4A〜4CのFBGセンサ5A〜5Gからの反射光は、再度、光ファイバカプラ7を透過して、光サーキュレータ11に戻り、検出側光変調器12に伝送される。さらに、検出側光変調器12を透過した光は、受光素子13で受光され、波長移動量算出器14にて各FBGセンサ5A〜5Gの中心波長を算出する。さらに、温度・歪み算出器15にて、各光ファイバ4A〜4Cの各FBGセンサ5A〜5Gの温度・歪みを算出し、表示部16にて結果を表示する。また、出力部17により、所望の結果を出力する。
【0048】
この際に、光源側光変調器10と検出側光変調器12は、光変調器制御回路19により、動作時間とタイミングを制御する。また、計測条件設定部18は、光ファイバ4A〜4Cの条件や、計測条件を入力し、光変調器制御回路19、表示部16、出力部17の制御を行う。また、受光素子13は、広帯域波長光源9にASE光源を用いた場合は、光の波長を測定できる分光器を用いる。また、広帯域波長光源9に掃印光源を用いた場合は、フォトダイオードのような光出力を電気出力に変換可能な素子を使用する。
【0049】
続いて、光ファイバ4A〜4Cにおける光の速度と、光ファイバ4A〜4Cの長さによる遅延時間の関係を説明する。式1は、光ファイバ4A〜4Cにおける光の速度である。
【0050】
光の速度=真空中光速度/光ファイバの屈折率・・・(式1)
ここで、真空中の光速度を299792458m/s、光ファイバ4A〜4Cの屈折率を1.45とすると、式1により、光ファイバ4A〜4Cにおける光の速度は、205337300m/sとなる。
【0051】
次に、光ファイバ4A〜4Cの長さによる遅延時間を、式2に示す。
【0052】
遅延時間=光ファイバの長さ×2/光ファイバにおける光の速度・・・(式2)
ここで、光ファイバ4A〜4Cの長さを20mとすると、式2より、遅延時間は194.8nsとなる。
【0053】
<光変調器の動作タイミング>
図4は、本実施の形態における光変調器(光源側光変調器10、検出側光変調器12)の動作タイミングの一例を説明するための図である。光源側光変調器10と検出側光変調器12の制御信号の一例を示す。ここで、図1に示した光ファイバ4Aの遅延用ファイバ6Aを20mとし、光ファイバ4Bの遅延用ファイバ6Bを40mとし、光ファイバ4Cの遅延用ファイバ6Cを60mとする。なお、FBGセンサ5の全長は全て同じとする。この遅延用ファイバ6Aの20mでの遅延時間は、194.8nsとなり、それぞれ加算される。この遅延時間の194.8nsを時間Tとする。
【0054】
まず、光変調器制御回路19により、光源側光変調器10に時間Tで広帯域波長光源9の光を透過し、時間4Tで再度、広帯域波長光源9の光を透過する信号20で制御を行う。また、光変調器制御回路19により、検出側光変調器12に時間TでFBGセンサ5からの反射光が透過するように3回制御する信号21で制御を行う。この変調回数は、光ファイバ4の本数であり、本実施の形態では、光ファイバ4は3本であるため、3回の制御とする。
【0055】
まず、最初にタイミング22で透過した光は遅延時間T、次のタイミング23で透過した光は遅延時間2T、次のタイミング24で透過した光は遅延時間3Tとなる。すなわち、この遅延時間Tは、遅延用ファイバの長さ20mに相当した時間であり、タイミング22、22aでは、光ファイバ4Aでの反射光を検出し、同様に、タイミング23、23aでは、光ファイバ4Bでの反射光を検出し、タイミング24、24aでは、光ファイバ4Cでの反射光を検出していることになる。光変調器制御回路19には、計測条件設定部18により光ファイバ4の条件、検出条件などの計測条件に則り、設定されるものである。このように、各光ファイバ4の遅延時間に応じた反射光からFBGセンサ5の反射波長を算出することにより、各光ファイバ4A〜4Cに作成した各FBGセンサ5A〜5Gが重なることなく検出が可能である。
【0056】
なお、光源側光変調器10と検出側光変調器12の制御は、変調器の遅れ時間を考慮して、遅延時間Tより若干短い時間で制御することが望ましい。また、光源側光変調器10と検出側光変調器12は、例えばAO素子、EO素子、半導体光増幅器のように、入射した光を透過、遮断する時間をnsオーダで制御できるものを使用すれば良い。
【0057】
<光ファイバ別の強度分布>
図5は、前述した図4のタイミングで検出した受光素子13における光ファイバ4別の検出強度分布の一例を説明するための図である。(a)は検出側光変調器12の動作信号を、(b)は光ファイバ4Aでの検出強度分布を、(c)は光ファイバ4Bでの検出強度分布を、(d)は光ファイバ4Cでの検出強度分布をそれぞれ示す。
【0058】
図5(a)において、検出側光変調器12の信号21は図4と同じである。受光素子13の検出信号は蓄積部13Aにより蓄積しているため、信号21に応じて検出信号を合成すれば、光ファイバ毎の強度分布が作成できる。図5(b)において、信号21のタイミング22とタイミング22aでの信号を合成すれば、光ファイバ4Aでの信号強度25になる。同様に、図5(c)において、信号21のタイミング23とタイミング23aでの信号を合成すれば、光ファイバ4Bでの信号強度26になる。図5(d)において、信号21のタイミング24とタイミング24aでの信号を合成すれば、光ファイバ4Cでの信号強度27になる。このように、検出側光変調器12のタイミングで受光素子13の受光タイミング毎に合成することで、各光ファイバ4A〜4Cの強度分布の作成が可能となる。
【0059】
<検出波形の波長算出>
図6は、FBGセンサ5から検出される検出波形の波長算出の一例を説明するための図である。(a)は受光素子13で検出したFBGセンサ5からの反射光の強度分布を、(b)は(a)の波形に微分処理した波形の強度分布をそれぞれ示す。
【0060】
図6(a)において、横軸は波長、縦軸はFBGセンサ5からの反射光を検出した反射光検出出力(強度)である。受光素子13で検出したFBGセンサ5からの反射光の検出波形は波形28となる。図6(b)において、横軸は波長、縦軸は微分した反射光検出出力(強度)である。検出波形28に微分処理を施すと微分波形29となる。この微分波形29の、ベースレベル30と微分波形29との交点31を算出することで、検出波形28の中心波長32を算出することが可能となる。図1に示した波長移動量算出器14において、波長の算出は、上述した方法で実行することが出来る。なお、検出波形28の波長を求めるためには、他の方法であっても問題はない。この中心波長32から測定点のFBGセンサ5の波長移動量を求めて、温度・歪み算出器15により、測定点の計測を行う。
【0061】
<表示部における表示画面>
図7は、表示部16における表示画面の一例を説明するための図である。表示画面300は、FBGセンサ5の全波形表示部301、この全波形表示部301の拡大表示部302、測定場所表示部303、条件設定部304、測定結果表示部305、測定結果グラフ表示部306を備えている。
【0062】
全波形表示部301では、枠307によって拡大する波形を選択可能である。拡大表示部302では、全波形表示部301で選択された枠307の波形を拡大する。この拡大表示部302では、枠308が設定可能であり、この枠308内で閾値310以上の波形を用いて図6に示した方式で波長を演算する。
【0063】
測定場所表示部303では、測定場所を表示可能である。なお、図7では、光ファイバの本数は4本の例を示している。条件設定部304は、測定の開始3041、測定の停止3042、光ファイバの切り替え3043、条件設定である閾値設定3044、演算範囲設定3045、遅延用ファイバ長さ3046が設定可能である。
【0064】
測定結果表示部305は、FBGセンサ5に対応する歪みと温度の計測結果を表示可能である。なお、図7では、FBGセンサ5の個数は10個の例を示している。この例では、No.2のFBGセンサの歪みが大きく、No.3のFBGセンサの温度が高くなっている。測定結果グラフ表示部306は、測定結果表示部305で表示した歪み、温度の測定結果を時間的にグラフ化して表示するものである。
【0065】
<FBGセンサを用いた多点計測装置の計測フロー>
図8は、本実施の形態におけるFBGセンサを用いた多点計測装置の計測フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【0066】
まず、FBGセンサ5(光ファイバ4)を被測定物にセットする(S1201)。次に、表示部16の表示画面300上で被測定物を計測するための検出条件のセットを行い(S1202)、計測を開始する(S1203)。
【0067】
計測が開始すると、以降はソフトウェアによるプログラム処理により自動的に実行される。まず、広帯域波長光源9からの照明光を光源側光変調器10で制御し(S1204)、照明光をFBGセンサ5に照射し、その反射光を検出側光変調器12で制御し(S1205)、受光素子13で反射光を検出する(S1206)。
【0068】
さらに、波長移動量算出器14において、順に、1本目の光ファイバの波長を算出し(S1207)、2本目の光ファイバの波長を算出し(S1208)、3本目の光ファイバの波長を算出し(S1209)、そして、温度・歪み算出器15で波長変化量から歪み量および温度を算出する(S1210)。
【0069】
そして、これらの算出した結果を表示部16の表示画面300上に表示し(S1211)、また、算出結果を必要に応じて出力部17で外部出力を行い(S1212)、測定を終了する。
【0070】
<本実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
FBGセンサの多点計測装置として、コアに回折格子を形成した光ファイバ4(4A〜4C)と、広帯域波長光源9と、この光源からの光のうち、光ファイバ4に入射する光の時間を制御する光源側光変調器10と、この光変調器からの出射光を入射して、光ファイバ4の回折格子からの反射光を透過する時間を制御する検出側光変調器12と、この光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して光ファイバ4からの信号を分離する波長移動量算出器14と、この算出器の結果から被測定物の変形量を算出する温度・歪み算出器15と、この被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部16などを有することで、1本の伝送路で複数本の光ファイバ4を使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバ4のFBGセンサ5を計測可能である。言い換えれば、複数本の光ファイバ4からの光信号を光スイッチで切り替えることなく、1本の伝送路で伝達することができ、さらに計測器が1台で複数本の光ファイバ4の検出が可能となる。これにより、被測定物の変形による温度あるいは歪みを検出することができる。
【0072】
より具体的には、光源側光変調器10により、広帯域波長光源9からの光の透過時間を制御して、各光ファイバ4に入射する時間を制限することができる。また、検出側光変調器12により、各光ファイバ4の回折格子からの反射光を、各光ファイバ4の各遅延用ファイバ6で生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限することができる。この結果、各光ファイバ4からの反射光を時間的に分離することができる。
【0073】
また、FBGセンサの多点計測方法として、広帯域波長光源9からの光を光源側光変調器10で変調し(S1204)、光ファイバ4(4A〜4C)の回折格子からの反射光を検出側光変調器12で変調し(S1205)、 検出側光変調器12で変調された反射光を光電変換した信号から波長を算出し(S1207〜S1209)、各光ファイバ4からの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測する(S1210)ことで、前述した多点計測装置と同様に、1本の伝送路で複数本の光ファイバ4を使用する状況においても、光スイッチを用いることなく、複数本の光ファイバ4のFBGセンサ5を計測可能である。言い換えれば、複数本の光ファイバ4からの光信号を光スイッチで切り替えることなく、1本の伝送路で伝達することができ、さらに計測器が1台で複数本の光ファイバ4の検出が可能となる。これにより、被測定物の変形による温度あるいは歪みを検出することができる。
【0074】
[実施の形態2]
次に、前述した実施の形態1に係るFBGセンサの多点計測装置および多点計測方法の適用例について、本実施の形態2、さらに後述する実施の形態3〜5において順に説明する。
【0075】
本実施の形態では、第1の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、発電機のロータの計測に適用した場合を説明する。
【0076】
図9は、発電機の一例を説明するための概略断面図である。発電機101は、ロータ102、ステータ104、ハウジング105などから構成される。タービン100は、発電機101のロータ102に接続されている。ロータ102は、中心が中空構造103となっている。ステータ104は、ロータ102に対向配置されている。ロータ102とステータ104は、それぞれに導体(例えば銅線)で製作したコイルが図示しない方法で巻き付けられている。
【0077】
回転体であるロータ102には、前記実施の形態1で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4が固定されており、遅延用ファイバ6と光ファイバカプラ7はロータ102の中空構造103の部分に設置される。ジョイント8は、回転部8aはロータ102に固定され、固定部8bはハウジング105に固定されており、光ファイバ4はロータ102と同時に回転できる構造となっている。ジョイント8の固定部8bは、接続用光ファイバ106によって制御部3に接続される。
【0078】
FBGセンサ5、遅延用ファイバ6、光ファイバカプラ7、ジョイント8、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って温度または歪みが算出される。さらに、図2で説明したように、1本の光ファイバ4で複数個のFBGセンサ5を使用すれば、ロータ102の多点での計測が可能である。
【0079】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を発電機101のロータ102に適用した場合においては、発電機101の試験時、あるいは定常運転時における発電機内部の歪み、温度計測が運転しながら可能となる。さらに、光ファイバ4による計測であるため、磁界の影響が皆無なため、発電機101の性能を劣化することがない。
【0080】
[実施の形態3]
次に、本実施の形態では、第2の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、発電機のステータの計測に適用した場合を説明する。
【0081】
図10は、発電機の一例を説明するための概略断面図である。発電機101は、前述した図9と同様な構成である。静止系であるステータ104に、前記実施の形態1で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4が固定されている。ステータ104は静止系であるため、ジョイント8は不要であり、遅延用ファイバ6を介して光ファイバカプラ7から直接、接続用光ファイバ106で制御部3に接続される。
【0082】
FBGセンサ5、遅延用ファイバ6、光ファイバカプラ7、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って温度または歪みが算出される。さらに、図2で説明したように、1本の光ファイバ4で複数個のFBGセンサ5を使用すれば、ステータ104の多点での計測が可能である。
【0083】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を発電機101のステータ104に適用した場合においても、発電機101の試験時、あるいは定常運転時における発電機内部の歪み、温度計測が運転しながら可能となる。さらに、光ファイバ4による計測であるため、磁界の影響が皆無なため、発電機101の性能を劣化することがない。
【0084】
[実施の形態4]
次に、本実施の形態では、第3の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、発電機のロータとステータの両方の計測に適用した場合を説明する。
【0085】
図11は、発電機の一例を説明するための概略断面図である。発電機101は、前述した図9と図10と同様な構成である。まず、ロータ102には、図9で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4がジョイント8に接続されている。ステータ104には、図10で説明した複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ4が光ファイバカプラ7に接続されている。さらに、ロータ102のジョイント8からの接続用光ファイバ107を光ファイバカプラ108に接続する。ステータ104側の光ファイバカプラ7の出力を光ファイバカプラ108に接続する。そして、光ファイバカプラ108の出力を接続用光ファイバ109により制御部3に接続する。
【0086】
FBGセンサ5、遅延用ファイバ6、光ファイバカプラ7、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って温度または歪みが算出される。さらに、図2で説明したように、1本の光ファイバ4で複数個のFBGセンサ5を使用すれば、ロータ102、ステータ104の多点での計測が可能である。
【0087】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を発電機101のロータ102とステータ104の両方に適用した場合においても、発電機101の試験時、あるいは定常運転時における発電機内部の歪み、温度計測が運転しながら可能となる。さらに、光ファイバ4による計測であるため、磁界の影響が皆無なため、発電機101の性能を劣化することがない。
【0088】
[実施の形態5]
次に、本実施の形態では、第4の適用例として、FBGセンサを用いた多点計測装置および多点計測方法を、原子力発電設備に適用した場合を説明する。
【0089】
図12は、原子力発電設備の一例を説明するための概略図である。原子力発電設備は、原子炉150、冷却装置151、タービン160、発電機161などから構成される。原子炉150によりタービン160を回転し、タービン160に接続した発電機161により発電可能である。原子炉150、タービン160、冷却装置151はそれぞれ冷却配管152で接続されている。
【0090】
冷却配管計測用の複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ153は、冷却配管152の周囲に巻き付けられている。設備計測用の複数個のFBGセンサ5を有した光ファイバ154は、原子炉150の建屋周辺に張り巡らし、同様にFBGセンサ5の部分を固定する。各FBGセンサ5を有した光ファイバ153、154は、光ファイバカプラ155に接続され、制御部3に接続される。
【0091】
FBGセンサ5、光ファイバカプラ155、制御部3の構成及び作用は、前記実施の形態1で説明したものと同様であり、図8で説明したようなフローに沿って歪み量及び温度が算出される。さらに、図9〜図11と同様に冷却配管計測用の光ファイバ153、設備計測用の光ファイバ154は複数個のFBGセンサ5を有したものを使用すると、多点で同時観察が可能となる。
【0092】
本実施の形態のように、FBGセンサの多点計測装置および多点計測方法を原子力発電設備に適用した場合においては、原子炉150の建屋の変形や異常温度上昇などのヘルスモニター、冷却配管152の異常温度上昇、異常歪みが計測可能となり、設備全体の安全監視が可能となる効果も奏する。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のFBGセンサの多点計測技術は、光反射波長が変化する複数のFBGセンサを直列に挿入した光ファイバを複数本備え、時分割で多重化することにより、ファイバ光路を切り替えることなく検出できるFBGセンサの多点計測方法および装置に利用可能である。例えば、発電機のロータやステータ、原子力発電設備などに適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…計測部、2…接続部、3…制御部、
4(4A〜4C)…光ファイバ、5(5A〜5G)…FBGセンサ、6(6A〜6C)…遅延用ファイバ、7…光ファイバカプラ、
8…ジョイント、8a…回転部、8b…固定部、
9…広帯域波長光源、10…光源側光変調器、11…光サーキュレータ、12…検出側光変調器、13…受光素子、13A…蓄積部、14…波長移動量算出器、15…温度・歪み算出器、16…表示部、17…出力部、18…計測条件設定部、19…光変調器制御回路、
100…タービン、101…発電機、102…ロータ、103…中空構造、104…ステータ、105…ハウジング、106…接続用光ファイバ、107…接続用光ファイバ、108…光ファイバカプラ、109…接続用光ファイバ、
150…原子炉、151…冷却装置、152…冷却配管、153…光ファイバ、154…光ファイバ、155…光ファイバカプラ、160…タービン、161…発電機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコアに回折格子を形成し、第1の遅延時間を持つ第1の遅延用ファイバを有した第1の光ファイバと、第2のコアに回折格子を形成し、第2の遅延時間を持つ第2の遅延用ファイバを有した第2の光ファイバとを有して、
光源からの光を第1の光変調器で変調し、
前記第1の光変調器で変調された光を前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射し、
前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を第2の光変調器で変調し、
前記第2の光変調器で変調された反射光を光電変換素子で光電変換し、
前記光電変換素子で光電変換された信号から波長を算出し、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記第1の光変調器により、前記光源からの光の透過時間を制御して、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射する時間を制限し、
前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を前記第2の光変調器により、前記第1の光ファイバの前記第1の遅延用ファイバで生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限し、前記第2の光ファイバの前記第2の遅延用ファイバで生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限して、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの反射光を時間的に分離することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとのそれぞれは、前記被測定物の変形により入射した光の反射波長が変化するFBGセンサを挿入して形成されていることを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを含めて、2本以上の光ファイバを有して、前記2本以上の光ファイバからの信号を時間的に分離することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記被測定物の変形として、温度あるいは歪みを計測することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項6】
コアに回折格子を形成した光ファイバと、
光を発射する光源と、
前記光源から発射された光のうち、前記光ファイバに入射する光の時間を制御する第1の光変調器と、
前記第1の光変調器からの出射光を前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの回折格子からの反射光を透過する時間を制御する第2の光変調器と、
前記第2の光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して前記光ファイバからの信号を分離する波長移動量算出器と、
前記波長移動量算出器の結果から、被測定物の変形量を算出する演算器と、
前記演算器で算出した前記被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部とを有することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記光ファイバとして、それぞれが異なる遅延時間を持つ遅延用ファイバを有した2本以上の光ファイバを有し、
前記第1の光変調器は、前記光源から発射された光の透過時間を制御して、前記2本以上の光ファイバに入射する時間を制限し、
前記第2の光変調器は、前記2本以上の光ファイバで生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限し、
前記波長移動量算出器は、前記2本以上の光ファイバからの信号を分離することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記2本以上の光ファイバのそれぞれは、前記被測定物の変形により入射した光の反射波長が変化するFBGセンサを挿入して形成されていることを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記演算器は、前記光ファイバから出射した反射光の波長の情報を用いて前記被測定物の変形量を算出することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記被測定物の変形量として、温度あるいは歪みの値を算出することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項1】
第1のコアに回折格子を形成し、第1の遅延時間を持つ第1の遅延用ファイバを有した第1の光ファイバと、第2のコアに回折格子を形成し、第2の遅延時間を持つ第2の遅延用ファイバを有した第2の光ファイバとを有して、
光源からの光を第1の光変調器で変調し、
前記第1の光変調器で変調された光を前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射し、
前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を第2の光変調器で変調し、
前記第2の光変調器で変調された反射光を光電変換素子で光電変換し、
前記光電変換素子で光電変換された信号から波長を算出し、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの信号を時間的に分離して、被測定物の変形を計測することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記第1の光変調器により、前記光源からの光の透過時間を制御して、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとに入射する時間を制限し、
前記第1の光ファイバの回折格子と前記第2の光ファイバの回折格子とからの反射光を前記第2の光変調器により、前記第1の光ファイバの前記第1の遅延用ファイバで生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限し、前記第2の光ファイバの前記第2の遅延用ファイバで生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限して、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとからの反射光を時間的に分離することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとのそれぞれは、前記被測定物の変形により入射した光の反射波長が変化するFBGセンサを挿入して形成されていることを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを含めて、2本以上の光ファイバを有して、前記2本以上の光ファイバからの信号を時間的に分離することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測方法において、
前記被測定物の変形として、温度あるいは歪みを計測することを特徴とするFBGセンサの多点計測方法。
【請求項6】
コアに回折格子を形成した光ファイバと、
光を発射する光源と、
前記光源から発射された光のうち、前記光ファイバに入射する光の時間を制御する第1の光変調器と、
前記第1の光変調器からの出射光を前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの回折格子からの反射光を透過する時間を制御する第2の光変調器と、
前記第2の光変調器からの反射光を検出して得られた信号を処理して前記光ファイバからの信号を分離する波長移動量算出器と、
前記波長移動量算出器の結果から、被測定物の変形量を算出する演算器と、
前記演算器で算出した前記被測定物の変形量に関する情報を表示する表示部とを有することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記光ファイバとして、それぞれが異なる遅延時間を持つ遅延用ファイバを有した2本以上の光ファイバを有し、
前記第1の光変調器は、前記光源から発射された光の透過時間を制御して、前記2本以上の光ファイバに入射する時間を制限し、
前記第2の光変調器は、前記2本以上の光ファイバで生じる遅延時間だけ光が透過するように時間を制限し、
前記波長移動量算出器は、前記2本以上の光ファイバからの信号を分離することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記2本以上の光ファイバのそれぞれは、前記被測定物の変形により入射した光の反射波長が変化するFBGセンサを挿入して形成されていることを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記演算器は、前記光ファイバから出射した反射光の波長の情報を用いて前記被測定物の変形量を算出することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のFBGセンサの多点計測装置において、
前記被測定物の変形量として、温度あるいは歪みの値を算出することを特徴とするFBGセンサの多点計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−113830(P2013−113830A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263252(P2011−263252)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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