説明

FGF受容体キナーゼ阻害剤のための組成物および方法

化合物、かかる化合物を含む医薬組成物、ならびに異常な、または脱調節のキナーゼ活性と関係する疾患または障害、特にキナーゼ、例えばAbl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70の異常な活性を伴う疾患または障害、の処置または予防のためのかかる化合物の使用方法がここに記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2006年5月15日出願の、米国仮特許出願番号第60/747,258号の利益を主張し、それは引用によりその内容全体を本明細書中に包含される。
【0002】
発明の分野
化合物、かかる化合物の作製方法、かかる化合物を含む医薬組成物および薬剤、ならびにキナーゼの異常な活性と関係する疾患または状態を処置または予防するための、かかる化合物の使用方法を記載する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
タンパク質キナーゼは、タンパク質の大きなファミリーを表し、それは種々の細胞過程の調節および細胞機能の制御の維持において中心的役割を果たす。これらのキナーゼの部分的、非限定的例には、受容体チロシンキナーゼ、例えば血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF−R)、幹細胞因子の受容体キナーゼ、c−kit、神経増殖因子受容体、trkB、および線維芽細胞増殖因子受容体、FGFR3;非受容体チロシンキナーゼ、例えばAblおよび融合キナーゼBCR−Abl、Fes、LckおよびSyk;ならびに、セリン/スレオニンキナーゼ、例えばb−RAF、MAPキナーゼ(例えば、MKK6)およびSAPK2β、が含まれる。異常なキナーゼ活性は、良性および悪性増殖性障害ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化に起因する疾患を含む、多くの疾患状態で観察されている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
化合物、かかる化合物を含む医薬組成物、および異常な、または脱調節のキナーゼ活性と関係する疾患または障害、特に、キナーゼ、例えばAbl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70の異様な活性を伴う疾患または障害を処置または予防するためのかかる化合物の使用方法がここに記載されている。
【0005】
異常な、または脱調節のキナーゼ活性と関係する疾患または障害、特にFGFRキナーゼの異常な活性を伴う疾患または障害を予防する低分子量化合物がここに記載されている。
【0006】
一局面は、式(I):
【化1】


[式中、
、R、R、およびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、−R’、−OR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−S(O)0−2R’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、−NHCOR’、脂肪族アミン、芳香族アミン、−R”’OR’、−R”’C(O)OR’、または−R”’C(O)NR’R”であり;
ここで、R’は、H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンであり;
ここで、R’、R”’またはR’とR”の組合せの何れかのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、所望によりヒドロキシで置換されたC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、ハロ−置換−C1−6アルキル、およびハロ−置換−C1−6アルコキシから独立して選択される1ないし3個のラジカルにより置換されていてよく;
【0007】
およびXは、
それぞれ独立して、CまたはNであり;
Aは、
所望により、かつ存在するとき、−H、−OH、アミノ、−NR、ハロゲンまたは所望により置換されていてよいC1−8アルキル(ここで、Rは、−H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;Rは、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはRおよびRは窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成する。)であり;
は、
S、OまたはNR(ここで、Rは、−H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、C3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキル、およびアシルからなる群から選択される。)であり;
、R、R、RおよびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、−OCO−C1−8アルキル、−COR、−COOR、−CONR、−N(R)COR、または−C1−6アルキル−NR(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC1−8アルコキシ、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、所望により置換されていてよいC3−10シクロアルキル、または所望により置換されていてよいC3−10シクロアルコキシである。)である。
ただし、R、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、C1−8アルコキシであり、かつR、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、−CONRである。]
で示される構造を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物である。
【0008】
さらなるまたは別の態様において、YはOまたはSである。さらなるまたは別の態様において、X=X=Nである。さらなるまたは別の態様において、XはNであり、XはCである。さらなるまたは別の態様において、X=X=Cである。X=X=Cのとき、さらなるまたは別の態様において、Aは、−H、−OH、アミノ、または所望により置換されていてよいC1−8アルキルである。
【0009】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、アミノ、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、または−NHCOR’(ここで、R’は、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルであり;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンである。)である。
【0010】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、
【化2】


からなる群から選択される。
【0011】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、−R’または−OR’(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−6アルキルである。
【0012】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは−Hである。
【0013】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは−Hである。
【0014】
さらなるまたは別の態様において、R、R、R、RおよびRのうち1つは、C1−8アルコキシであり、R、R、R、RおよびRのうち1つは、−CONR(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、−H、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、C2−8アルケニル、C3−10シクロアルキル、またはC3−10シクロアルコキシである。)である。さらなるまたは別の態様において、R、R、R、RおよびRは、
【化3】


からなる群から選択される。さらなるまたは別の態様において、RおよびRは、それぞれ独立して、−Hまたはハロゲンである。
【0015】
別の局面は、式(II):
【化4】


[式中、
およびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、−R’、−OR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−S(O)0−2R’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、−NHCOR’、脂肪族アミン、芳香族アミン、−R”’OR’、−R”’C(O)OR’、またはR”’C(O)NR’R”であり、
ここで、R’は、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレン、またはアリーレンであり;
ここで、R’、R”’またはR’とR”の組合せの何れかのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、所望によりヒドロキシで置換されていてよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、ハロ−置換−C1−6アルキル、およびハロ−置換−C1−6アルコキシから独立して選択される1ないし3個のラジカルにより置換されていてよく;
【0016】
およびXは、
それぞれ独立して、CまたはNであり;
Aは、
所望により、かつ存在するとき、−H、−OH、アミノ、−NR、ハロゲン、または所望により置換されていてよいC1−8アルキル(ここで、Rは、H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;Rは、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはRおよびRは、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成する。)であり;
およびYは、
それぞれ独立して、S、O、またはNR(ここで、Rは、−H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、C3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキル、およびアシルから選択される。)であり;
およびZは、
それぞれ独立して、SまたはOであり;
、R、およびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、−OCO−C1−8アルキル、−COR、−COOR、−CONR、−N(R)COR、または−C1−6アルキル−NR(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、または所望により置換されていてよいC3−10シクロアルキルである。)であり;
、RおよびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、または所望により置換されていてよいC1−8アルキルである。]
で示される構造を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物である。
【0017】
さらなるまたは別の態様において、ZはOである。さらなるまたは別の態様において、ZはOである。さらなるまたは別の態様において、YはOまたはSである。さらなるまたは別の態様において、YはOまたはSである。さらなるまたは別の態様において、X=X=Nである。さらなるまたは別の態様において、XはNである、XはCである。さらなるまたは別の態様において、X=X=Cである。X=X=Cのとき、さらなるまたは別の態様において、Aは、−H、−OH、アミノ、または所望により置換されていてよいC1−8アルキルである。
【0018】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、アミノ、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、または−NHCOR’(ここで、R’は、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレン、またはアリーレンである。)である。
【0019】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、
【化5】


からなる群から選択される。
【0020】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、−R’または−OR’(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−6アルキルである。
【0021】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、ハロゲン、C1−8アルキル、またはC1−8アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは−Hである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、ハロゲン、C1−8アルキル、またはC1−8アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは−Hである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−8アルキルである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−8アルキルである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−OH、ハロゲン、C1−8アルキルまたはC1−8アルコキシである。さらなるまたは別の態様において、Rは−Hである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−8アルキルである。さらなるまたは別の態様において、RおよびRは、それぞれ独立して、−Hまたはハロゲンである。
【0022】
別の局面は、式(III):
【化6】


[式中、
が、
−H、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミンであり、
ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンであり;
ここで、R’、R”’、またはR’とR”の組合せの何れかのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、所望によりヒドロキシで置換されていてよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、ハロ−置換−C1−6アルキル、およびハロ−置換−C1−6アルコキシから独立して選択される1ないし3個のラジカルにより置換されていてよく;
は、
−H、−OH、ハロゲン、所望により置換されていてよいC1−6アルキル、または所望により置換されていてよいC1−6アルコキシであり;
およびXは、
それぞれ独立して、CまたはNであり;
およびRは、
それぞれ独立して、−H、−CH、ハロゲンまたはアルコキシルであり;
は、
−Hまたは所望により置換されていてよいC1−6アルキルである。]
の構造を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物である。
【0023】
さらなるまたは別の態様において、式中X=X=Nである。さらなるまたは別の態様において、XはNであり、XはCである。さらなるまたは別の態様において、XはCHであり、X=Cである。
【0024】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、または−NHCOR’(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレン、またはアリーレンである。)である。
【0025】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択される。)である。さらなるまたは別の態様において、Rは、
【化7】


からなる群から選択される。
【0026】
さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−6アルキルである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−Hまたは−CHである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−Hまたは−CHである。さらなるまたは別の態様において、Rは、−HまたはC1−6アルキルである。さらなるまたは別の態様において、RおよびRは、それぞれ独立して、−Hまたはハロゲンである。
【0027】
さらなるまたは別の態様において、該化合物は、
【化8】


【化9】


からなる群から選択される。
【0028】
別の局面は、治療的有効量の式(I)、(II)または(III)の少なくとも1種の化合物、それらの各N−オキシドまたは他の薬学的に許容される誘導体、またはその個々の異性体および異性体の混合物を、少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤と混合して含む、医薬組成物である。
【0029】
別の局面は、キナーゼ活性の阻害が、疾患の病状および/または症状を阻止、阻害、または改善し得る、動物における疾患の処置方法であって、治療的有効量の式(I)、(II)または(III)の少なくとも1種の化合物、それらの各N−オキシドまたは他の薬学的に許容される誘導体、またはその個々の異性体および異性体の混合物を、該動物に投与することを含む、方法である。
【0030】
さらなるまたは別の態様において、該キナーゼは、Abl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70からなる群から選択される。さらなるまたは別の態様において、該キナーゼは、Abl、BCR−Abl、Bmx、c−Raf、Csk、Fes、FGFR、Flt3、Ikk、IR、JNK、Lck、Mkk、PKC、PKD、Rsk、SAPK、Syk、Trk、BTK、Src、EGFR、IGF、Mek、RosおよびTie2からなる群から選択される。
【0031】
別の局面は、キナーゼ活性が疾患の病状および/または症状の原因となる動物における疾患を処置するための薬剤の製造における、式(I)、(II)または(III)の化合物の使用である。
【0032】
さらなるまたは別の態様において、該キナーゼは、Abl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70からなる群から選択される。さらなるまたは別の態様において、該キナーゼは、Abl、BCR−Abl、Bmx、c−Raf、Csk、Fes、FGFR、Flt3、Ikk、IR、JNK、Lck、Mkk、PKC、PKD、Rsk、SAPK、Syk、Trk、BTK、Src、EGFR、IGF、Mek、Rosおよび/またはTie2からなる群から選択される。
【0033】
さらなるまたは別の態様において、該疾患は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病、純化した骨髄細胞の再移植、アテローム性動脈硬化症、血栓症、神経膠腫、肉腫、前立腺癌、結腸癌、乳癌、および卵巣癌、小細胞肺癌、乾癬、強皮症、線維症、化学療法剤処置後の幹細胞の保護、喘息、同種移植、組織拒絶反応、閉塞性細気管支炎(OB)、再狭窄、ウィルムス腫瘍、神経芽腫、乳腺上皮癌細胞、致死性異形成症、成長停止、骨の発達異常、骨髄腫型癌、高血圧、糖尿病性 網膜症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性血管新生、リウマチ性関節炎、小児血管腫、リウマチ性関節炎、他の自己免疫疾患、トロンビン誘導血小板凝集、免疫不全疾患、アレルギー、骨粗鬆症、骨関節症、神経変性疾患、肝臓虚血、心筋梗塞、鬱血性心不全、他の心臓疾患、HTLV−1仲介腫瘍形成、過形成、肺線維症、血管形成、狭窄、エンドトキシンショック、糸球体腎炎、遺伝性毒性損傷、慢性炎症、および他の炎症性疾患からなる群から選択される。
【0034】
別の局面は、式(I)、(II)または(III)に対応する化合物、それらの各N−オキシドまたは他の薬学的に許容される誘導体、例えばプロドラッグ誘導体、またはその個々の異性体および異性体の混合物を製造するための方法である。
【0035】
引用文献
他に特記しない限り、本明細書に記載される全ての文献および特許出願は、個々の文献または特許出願それぞれが、具体的かつ個別に引用により包含されることを意味するのと同程度に、引用により本明細書中に包含される。
【0036】
発明の詳しい説明
融合タンパク質BCR−Ablは、Abl癌原遺伝子とBcr遺伝子を融合する相互転座の結果である。次いで、BCR−Ablは、分裂促進的活性の増加を介してB細胞の形質転換を可能とする。この増加はアポトーシスに対する感受性の減少、ならびにCML前駆細胞の接着および帰巣の変換をもたらす。キナーゼ、特にAbl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3およびZAP−70の異常な活性と関係する疾患の処置のための化合物、組成物および方法が記載される。例えば、白血病およびBCR−Ablに関係する他の増殖障害はBcr−Ablの野生型および変異形態の阻害により処置できる。
【0037】
任意の化学用語
他に特記しない限り、明細書および特許請求の範囲を含む本明細書中で用いる下記の用語は、下記の定義を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる単数形“a”、“an”および“the”は、文脈中他に明確に記載されない限り、複数形を包含することが注意されるべきである。標準化学用語の定義は、Carey and Sundberg “ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4TH ED.” Vols. A (2000) and B (2001), Plenum Press, New Yorkを含む、引用文献中に見出され得る。他に特記しない限り、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術および薬理学の、当技術分野で常套の方法が用いられる。
【0038】
本明細書で用いる用語“アルケニル基”は、1個以上の二重結合をその中に有する炭化水素鎖を意味する。アルケニル基の二重結合は、別の不飽和基と非結合または結合していてよい。適当なアルケニル基には、(C−C)アルケニル基、例えばビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルが含まれるが、これらに限定されない。アルケニル部分は、分枝鎖、直鎖または環状(その場合、それは“シクロアルケニル”基としても公知である。)であり得、非置換または置換されていてよい。
【0039】
本明細書で用いる用語“アルコキシ”には、−O−(アルキル)(ここで、アルキルは、本明細書中で定義される。)が含まれる。一例として、C1−6アルコキシは、メトキシ、エトキシなどであるが、これらに限定されない。アルコキシ基は、非置換または置換されていてよい。
【0040】
本明細書で用いる用語“アルキル”は、1ないし10個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し、直鎖、分枝鎖、環状、飽和および/または不飽和特徴を包含し得る。本明細書中記載されるとき、“1ないし10”のような数値範囲は、所定の範囲の各整数を意味する;例えば、“1ないし10個の炭素原子”または“C1−10”または“(C−C10)”は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、(10個を含む)10個までの炭素原子であることを意味し、また、本定義が、示されていない数字での用語“アルキル”の出現を包含することも意味する。アルキル部分は、アルケンまたはアルキン部分を含まないことを意味する、“飽和アルキル”基であり得る。代表的な飽和アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびn−ヘキシル、ならびにより長鎖のアルキル基、例えばヘプチル、およびオクチルがあるが、これらに限定されない。アルキル部分はまた、少なくとも1個のアルケンまたはアルキン部分を含むことを意味する、“不飽和アルキル”部分であり得る。“アルケン”部分は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の炭素−炭素二重結合からなる基を意味し、“アルキン”部分は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合からなる基を意味する。代表的な不飽和アルキル基は、エテニル、プロペニル、ブテニルなどであるが、これらに限定されない。アルキル基は、非置換または置換されていてよい。置換アルキル基は、ハロゲン−置換アルキル基を含む、これらに限定されず、例えば、一例としてトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどである。
【0041】
本明細書で用いる用語“アルキルアミン”は、−N(アルキル)基(ここで、xおよびyは、基(x=1、y=1およびx=2、y=0)から選択される。)を意味する。x=2のとき、アルキル基は一体となって、環系を形成していてよく、さらに、x=2のとき、アルキル基は、同一または異なっていてよい。アルキルアミン基は、非置換または置換されていてよい。
【0042】
本明細書で用いる用語“アルキニル”基は、1個以上の三重結合をその中に有する炭化水素鎖を意味する。アルキニル基の三重結合は、別の不飽和基と非結合または結合していてよい。適当なアルキニル基には、(C−C)アルキニル基、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、および4−ブチル−2−ヘキシニルが含まれるが、これらに限定されない。アルキニル部分は、分枝鎖または直鎖であり得、非置換または置換されていてよい。
【0043】
本明細書で用いる用語“アミド”は、式C(O)NHRまたはNHC(O)R(ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロ環(環炭素を介して結合した)からなる群から選択される。)の化学部分を意味する。アミドは、本明細書に記載の化合物上のアミンまたはカルボキシル側鎖から形成され得る。かかるアミドを作製する方法および特定の基は、当業者に公知であり、参照文献、例えばGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999(引用により、その内容全体を本明細書に包含される。)中に容易に見出され得る。アミド基は、非置換または置換されていてよい。
【0044】
本明細書で用いる用語“芳香族”または“アリール”は、共役したpi電子系を有する少なくとも1個の環を有する閉環構造を意味し、炭素環式アリールおよびヘテロ環式アリール(または、“ヘテロアリール”または“ヘテロ芳香族性”)基の両方を含む。炭素環式またはヘテロ環式芳香族基は、5ないし20個の環原子を含み得る。該用語は、単環式または縮合多環式基(すなわち、隣接対の炭素原子を共有する環)を包含する。芳香族基は、非置換または置換されていてよい。
【0045】
本明細書で用いる用語“アリールオキシ”は、−O−アリール基であり、ここでアリールは、本明細書に記載の通りである。アリールオキシ基は、非置換または置換されていてよい。
【0046】
本明細書で用いる用語“結合”または“一重結合”は、大きな基の一部であってもよい、2個の原子間の共有結合を意味する。
【0047】
本明細書で用いる用語“炭素環式”または“シクロアルキル”は、1個以上の共有閉環構造を含み、環骨格を形成する原子が全て炭素原子である化合物を意味する。かかる基は、3ないし20個の環炭素原子を有し、飽和、部分的不飽和または完全不飽和の、炭素および水素原子を含む単環式、縮合二環式、スピロ環式、架橋多環式または多環式環である。炭素環式アルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが含まれるが、これらに限定されない。炭素環式芳香族基は、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニルおよびナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環式部分を含むが、これらに限定されず、例えば、一例としてジベンゾスベレノン、およびジベンゾスベロンである。炭素環式基は、非置換または置換されていてよい。
【0048】
本明細書で用いる用語“エステル”は、式COOR(ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロ環(環炭素を介して結合する)である。)の化学部分を意味する。本明細書に記載の化合物上のヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、エステル化され得る。かかるエステルを作製する方法および特定の基は、当業者に公知であり、参照文献、例えばGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999(引用により、その内容全体を本明細書に包含される。)中に容易に見出され得る。エステル基は、非置換または置換されていてよい。
【0049】
本明細書で用いる用語“ヘテロアルキル”、“ヘテロアルケニル”および“ヘテロアルキニル”は、所望により置換されていてよいアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分であり、炭素以外の原子、例えば酸素、窒素、硫黄、リンまたはそれらの組合せから選択される1個以上の骨格鎖原子を有する。“ヘテロアルキル”、“ヘテロアルケニル”および“ヘテロアルキニル”基は、非置換または置換されていてよい。
【0050】
本明細書で用いる用語“ヘテロアリール”、または別の“ヘテロ芳香族”は、窒素、酸素、硫黄から選択される1個以上の環ヘテロ原子を含むアリール基を意味する。一例として、N−含有ヘテロ芳香族性”または“ヘテロアリール”部分は、環の骨格原子の少なくとも1個が窒素原子である芳香族基を意味する。多環ヘテロアリール基は、縮合または非縮合であり得る。ヘテロアリール基は、非置換または置換されていてよい。
【0051】
本明細書で用いる用語“ヘテロ環式”は、環骨格が、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の原子を含む環構造を意味する。ヘテロ環式芳香族基の例には、アクリジニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾイミダゾリル、ベンズインダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、フラザニル、フロピリジニル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インドールiジニル、インドーリジニル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチルiジニル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチニル、チアントレニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル(phenathrolinyl)、フタラジニル(phthalazinyl)、フテリジニル(pteridinyl)、プリニル、プテリジニル、ピラジル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアジニル、(1,2,3,)−および(1,2,4)−トリアゾリルなどが含まれる芽、これらに限定されない。さらに、ヘテロ環式基は、非置換または置換されていてよい。非芳香族性ヘテロ環式基の例には、アゼピニル、アゼパン−2−オニル、アゼチジニル、ジアゼピニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、(ジオキサニル)、ジオキソラニル、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イル、ジチアニル、ジチオラニル、ホモピペリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、インドリニル、インドリル、モルホリニル、オキサゼピニル、オキセパニル、オキセタニル、オキシラニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペリジノニル、ピペラジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピロリニル、キノリジニル、チエタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、チアゼピニル、チエパニル、チオモルホリニル、チオラニル、チオキサニルなどが含まれるが、これらに限定されない。ヘテロ環式基は、縮合または非縮合であり得る。該基を示す用語はまた、全ての可能性のある互変異性体を含む。
【0052】
本明細書で用いる用語“ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。好ましいハロゲン基は、フルオロ、クロロおよびブロモである。
【0053】
用語“ハロアルキル”、“ハロアルケニル”、“ハロアルキニル”および“ハロアルコキシ”は、1個以上のハロゲン基またはそれらの組合せで置換されるアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシ構造である。
【0054】
本明細書で用いる用語“員環”は、何らかの環構造を包含し得る。本明細書で用いる用語“員”は、環を構成する骨格原子の数を示すことを意味する。故に、例えばシクロヘキシル、ピリジン、ピランおよびチオピランは6員環であり、シクロペンチル、ピロール、フランおよびチオフェンは5員環である。
【0055】
本明細書で用いる用語“部分”は、分子の特定の断片または官能基を意味する。化学部分はしばしば、分子中に包含されるか、または分子に結合する化学部分と見なされる。
【0056】
本明細書で用いる用語“保護基”は、いくつか、または全ての反応部分を遮断(block)する化学部分を意味し、該保護基が除去されるまで、かかる基(反応部分)の化学反応への参加を回避する。
【0057】
本明細書で用いる用語“反応剤”は、共有結合を作成するために用いられる求核または求電子剤を意味する。
【0058】
本明細書で用いる用語“スルホニル”は、所望により、別の部分、例えばアルキル基、アリール基、またはヘテロ環式基に結合していてよい硫黄原子の存在を意味する。アリールまたはアルキルスルホニル部分は、式−SOR’(式中、R’は、本明細書で定義のアルキルまたはアリールである。)を有し、メチルスルホニル、エチルスルホニルおよびフェニルスルホニル基であるが、これらに限定されない。スルホニル基は、非置換または置換されていてよい。フェニルスルホニルは、所望によりハロゲン、アルキルおよびアルコキシから独立して選択される1ないし3個の置換基で置換されていてよい。
【0059】
他に特記しない限り、置換基が“所望により置換されていてよい”と見なされるとき、置換基が、例えばアルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ(一置換および二置換アミノ基を含む)、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、カルボニル、炭素環、シアノ、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロ環、ヒドロキシ、イソシアナート、イソチオシアナート、メルカプト、ニトロ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、シリル、スルホニル、チオカルボニル、チオシアナート、トリハロメタンスルホニル、およびそれらの保護化合物から個々に、かつ独立して選択される1個以上の基で置換されていてよい基であることを意味する。上記置換基の保護化合物を形成し得る保護基は、当業者に公知であり、参照文献、例えばGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999(引用により、その内容全体を本明細書に包含される。)中に容易に見出され得る。
【0060】
任意の薬学用語
本明細書で用いる、製剤、組成物または成分についての用語“許容される”は、処置されるべき対象の一般的健康に持続的有害効果を有さないことを意味する。
【0061】
本明細書で用いる用語“アゴニスト”は、別の分子の活性または受容体部位の活性を増大する、化合物、薬物、酵素アクティベーター、またはホルモン調節剤のような分子を意味する。
【0062】
本明細書で用いる用語“アンタゴニスト”は、別の分子の作用または受容体部位の活性を減少または阻止する、化合物、薬物、酵素阻害剤、またはホルモン調節剤のような分子を意味する。
【0063】
本明細書で用いる用語“担体”は、化合物の細胞または組織への取り込みを促進する、比較的非毒性の化合物または薬剤を意味する。
【0064】
本明細書で用いる用語“共投与”などは、1名の患者への選択した治療剤の投与を包含することを意味し、該薬剤が、同一または異なる投与経路で、または同じもしくは異なる時間に、投与される処置レジメンを含むことを意図する。
【0065】
本明細書で用いる用語“有効量”または“治療的有効量”は、処置すべき疾患または状態の1種以上程度の症状を緩和し得る、投与される薬剤または化合物の十分量を意味する。その結果、兆候、症状、または疾患の原因の軽減および/または緩解し得るか、または生物系の何らかの他の望ましい変化がもたらされ得る。例えば、治療的使用のための“有効量”は、臨床的に有意な疾患の軽減を与えるのに要される、本明細書に記載の化合物を含む組成物の量である。個々の場合に適当な“有効量”は、用量漸増試験のような技術を用いて決定され得る。
【0066】
本明細書で用いる用語“増大する”または“増大”は、所望の効果の効力または持続時間を増加または延長することを意味する。故に、治療剤の効果を増大することに関して、用語“増大”は、系における他の治療剤の効果の効力または持続時間を増加または延長する能力を意味する。本明細書で用いる“増大有効量”は、所望の系において別の治療剤の効果を増大するのに十分な量を意味する。
【0067】
用語“キット”および“製品”は、同義に用いられる。
【0068】
本明細書で用いる用語“代謝物”は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の誘導体を意味する。
【0069】
本明細書で用いる用語“活性な代謝物”は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の生物学的に活性な誘導体を意味する。
【0070】
本明細書で用いる用語“代謝”は、特定の物質が生物により変換される過程(加水分解反応および酵素類により触媒される反応を含むが、これらに限定されない)の和を意味する。故に、酵素は、化合物の特定の構造変化体を産し得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化および完全反応を触媒し、ウリジン二リン酸グルクロン酸トランスフェラーゼは、活性なグルクロン酸分子の芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミンおよび遊離スルフヒドリル基への転換を触媒する。代謝のさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw−Hill (1996)から得られ得る。
【0071】
本明細書で用いる用語“調節”は、標的の活性を変えるために、一例として、標的の活性を増大するため、標的の活性を阻止するため、標的の活性を制限するため、または標的の活性を拡大するために、直接または間接的に標的と相互作用することを意味する。
【0072】
本明細書で用いる用語“調節剤”は、直接または間接的に標的と相互作用する分子を意味する。該相互作用には、アゴニストおよびアンタゴニストの相互作用が包含される。
【0073】
本明細書で用いる“薬学的に許容される”は、化合物の生物学的活性または特性を無効にせず、比較的非毒性の、担体または希釈剤のような物質を意味し、すなわち該物質は、望ましくない生物学的効果または組成物中に包含される何れかの成分との有害な相互作用をもたらすことなく個体に投与され得る。
【0074】
化合物の“薬学的に許容される誘導体”という語句は、その塩類、エステル類、エノールエーテル類、エノールエステル類、アセタール類、ケタール類、オルトエステル類、ヘミアセタール類、ヘミケタール類、酸類、塩基類、溶媒和物類、水和物類またはプロドラッグ類を含む。かかる誘導体は、かかる誘導体化について公知の方法を用いて当業者により容易に製造され得る。製造された化合物は、動物またはヒトに、実質的に毒性効果を有さずに投与され得、薬学的活性剤またはプロドラッグである。
【0075】
本明細書で用いる用語、化合物の“薬学的に許容される塩”は、薬学的に許容される塩を意味する。
【0076】
本明細書で用いる用語“薬学的組合せ剤”は、2個以上の活性成分の混合または組合せの結果得られる生成物を意味し、活性成分の固定および不定形組合せ剤の両方を含む。本明細書で用いる用語“固定形組合せ剤”は、活性成分、例えば式(I)、(II)または(III)の化合物、および共薬剤が、両方とも、単一体または単一投与量形態で同時に患者に投与されることを意味する。本明細書で用いる用語“不定形組合せ剤”は、活性成分、例えば式(I)、(II)または(III)の化合物、および共薬剤が、同時に、共に、または特定の間隔時間に制限されずに連続して、患者に個別に投与されることを意味し、かかる投与は、患者の体内に有効量の2個の化合物を提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば3個以上の活性成分の投与に適用される。
【0077】
本明細書で用いる用語“共投与”または“併用投与”などは、1名の患者に対する選択した複数の治療剤の投与を包含することを意味し、薬剤が、同じ投与経路で、または同時に投与されることを要しない処置レジメンを含むことを意図する。
【0078】
本明細書で用いる用語“医薬組成物”は、活性化合物と、他の化合物、例えば担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、濃化剤および/または賦形剤の混合物を意味する。
【0079】
本明細書で用いる“プロドラッグ”は、体内の代謝過程により薬剤または化合物が薬理学的活性形に変換される、薬剤または化合物を意味する。
【0080】
本明細書で用いる用語“対象”または“患者”には、哺乳動物および非哺乳動物が包含される。哺乳動物の例は、多数の哺乳動物クラス:ヒト、非ヒト霊長動物、例えばチンパンジー、ならびに他の類人猿およびサル種;家禽動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家畜動物、例えばウサギ、イヌ、およびネコ;齧歯動物を含む実験動物、例えばラット、マウスおよびモルモットなどを含むが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には、鳥類、魚類などが含まれるが、これらに限定されない。方法および組成物の一態様は本明細書に提供され、哺乳動物はヒトである。
【0081】
本明細書で用いる用語“処置する”、“処置し”または“処置”は、疾患または状態の症状を少なくとも部分的に緩解し、低減し、または改善すること、付加的症状を阻止すること、症状の代謝の根本的原因を改善または阻止すること、疾患または状態を阻止すること、例えば、疾患または状態の進行を停止すること、疾患または状態を軽減すること、疾患または状態の緩解をもたらすこと、疾患または状態により引き起こされる状態を軽減すること、または疾患または状態の症状を阻止することを含む。
【0082】
本明細書で用いる用語“バイオアベイラビリティ”は、物質またはその活性部分が、薬学的投与量形態で送達され、作用部位で、または全身循環中で利用可能になる速度および範囲を意味する。バイオアベイラビリティの増大は、物質またはその活性部分が、薬学的投与量形態で送達され、作用部位で、または全身循環中で利用可能になる速度および範囲を増大することを意味する。一例として、バイオアベイラビリティの増大は、他の物質または活性部分と比較したとき、該物質またはその活性部分の血中濃度の増加として示され得る。
【0083】
薬理学および有用性
本発明の化合物はタンパク質チロシンキナーゼの活性を調節し、そして、それ自体、タンパク質チロシンキナーゼ、特にAbl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70キナーゼが、疾患の病状および/または症状の原因となる、疾患または障害の処置のために有用である。
【0084】
アベルソンチロシンキナーゼ(すなわちAbl、c−Abl)は、細胞周期の制御、遺伝毒性ストレスに対する応答、およびインテグリンシグナル伝達を介した細胞環境に関する情報の伝達に関与する。全体として、Ablタンパク質は、種々の細胞外および細胞内供給源からのシグナルを統合する、ならびに細胞周期およびアポトーシスに関する決定に影響する細胞モジュールとしての複雑な役割を果たすと考えられる。アベルソンチロシンキナーゼは、チロシンキナーゼ活性の脱制御を伴うキメラ融合物(腫瘍性タンパク質)BCR−Ablまたはv−Ablのようなサブタイプ誘導体を含む。BCR−Ablは、95%の慢性骨髄性白血病(CML)および10%の急性リンパ性白血病の病因として重要である。STI−571(Gleevec)は、発癌性BCR−Ablチロシンキナーゼの阻害剤であり、慢性骨髄性白血病(CML)の処置に使用されている。しかしながら、CMLの急性転化段階にある患者は、BCR−Ablキナーゼ変異のためにSTI−571に耐性である。今日までに22種を超える変異が報告されており、最も一般的なものはG250E、E255V、T315I、F317LおよびM351Tである。
【0085】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、ablキナーゼ、とりわけv−ablキナーゼを阻害し得る。式(I)、(II)または(III)の化合物はまた、野生型BCR−Ablキナーゼおよび変異体BCR−Ablキナーゼを阻害し、故に、白血病(とりわけ、アポトーシス機能の作用がみられる慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病)のようなBcr−abl陽性癌および腫瘍疾患の処置に適当であり、また白血病性幹細胞のサブグループに対して効果を示し、これらの細胞の、該細胞除去(例えば、骨髄除去)後のインビトロでの精製および癌細胞を浄化した後の該細胞の再移植(例えば、純化した骨髄細胞の再移植)に可能性がある。
【0086】
PDGF(血小板由来増殖因子)は、非常に一般的に存在する増殖因子であり、それは正常な増殖およびまた発癌および血管平滑筋細胞の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症および血栓症においてみられるような病的細胞増殖の両方に重要な役割を有する。式(I)、(II)または(III)の化合物はPDGF受容体(PDGFR)活性を阻害でき、故に、神経膠腫、肉腫、前立腺癌、結腸癌、乳癌、および卵巣癌のような腫瘍疾患の処置に適当である。
【0087】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、例えば小細胞肺癌における腫瘍阻害物質としてだけでなく、アテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症のような非悪性増殖性障害の処置剤として、ならびに、例えば5−フルオロウラシルのような化学療法剤の血液毒性と闘うための化学療法剤処置後の幹細胞の保護のために、および喘息において使用できる。式(I)、(II)または(III)の化合物は、とりわけPDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置に使用できる。
【0088】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、移植、例えば、同種移植の結果として起こる障害、とりわけ組織拒絶反応、例えばとりわけ閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち同種肺移植の慢性拒絶の処置において有効な効果を示し得る。OBのない患者とは対照的に、OBを有する患者は、しばしば気管支肺胞洗浄液中の上昇したPDGF濃度を示す。
【0089】
式(I)、(II)または(III)の化合物はまた、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症のような、血管平滑筋細胞遊走および増殖(そこでは、PDGFおよびPDGF−Rがまたしばしば役割を有する)が関連する疾患においても有効であり得る。血管平滑筋細胞増殖または遊走に対するインビトロおよびインビボでのこれらの効果およびその結果は、式(I)、(II)または(III)の化合物の投与により、およびまたインビボでの機械的傷害後の血管内膜の肥厚に対するその効果の調査により証明できる。
【0090】
式(I)、(II)または(III)の化合物はまた、幹細胞因子(SCF、c−kitリガンドまたはスチール因子(steel factor)としても公知)の関与する細胞過程を阻止する、例えばSCF受容体(kit)自己リン酸化およびMAPKキナーゼ(マイトージェン活性化タンパク質キナーゼ)のSCF刺激による活性化を阻害する。MO7e細胞は、SCFに依存して増殖する、ヒト前巨核球白血病細胞株である。式(I)、(II)または(III)の化合物は、SCF受容体の自己リン酸化を阻害し得る。
【0091】
ニューロトロフィン受容体のtrkファミリー(trkA、trkB、trkC)は、神経および非神経組織の生存、増殖および分化を促進する。TrkBタンパク質は小腸および結腸における神経内分泌型細胞、膵臓のアルファ細胞、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージ、および表皮の顆粒層で発現される(Shibayama and Koizumi, Am J Pathol. 1996 Jun; 148(6):1807−18)。TrkBタンパク質の発現は、ウィルムス腫瘍および神経芽腫の望ましくない進行と関連している。TkrBは、さらに、癌性前立腺細胞で発現され、正常細胞では発現されない。trk受容体の下流のシグナル伝達経路はShc、活性化Ras、ERK−1およびERK−2遺伝子、およびPLC−ガンマ伝達経路を介したMAPK活性化のカスケードに関与する(Sugimoto et al., Jpn J Cancer Res. 2001 Feb; 92(2): 152−60)。
【0092】
キナーゼ、c−Srcは多くの受容体の発癌性シグナルを伝達する。例えば、腫瘍におけるEGFRまたはHER2/neuの過剰発現はc−srcの構成的活性化をもたらし、これは悪性細胞に特徴的であり、正常細胞では存在しない。他方、c−src発現を欠くマウスは、大理石骨病表現型を示し、c−srcの破骨細胞機能への重要な参加および関連障害への関与の可能性を示す。
【0093】
Tecファミリーキナーゼ、Bmx、非受容体タンパク質−チロシンキナーゼは乳腺上皮癌細胞の増殖を制御する。
【0094】
線維芽細胞増殖因子受容体3は骨成長に対する負の制御効果および軟骨細胞増殖阻害を発揮することが示される。致死性骨異形成症は、線維芽細胞増殖因子受容体3における異なる変異により特徴付けられ、1個の変異、TDII FGFR3は構成的チロシンキナーゼ活性を有し、それは転写因子Stat1を活性化し、細胞周期阻害因子の発現、増殖停止および骨の発達異常に至る(Su et al., Nature, 1997, 386, 288−292)。FGFR3はまた、多発性骨髄腫タイプの癌においてしばしば発現される。
【0095】
血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ(SGK)の活性は、イオンチャネル活性の混乱、特に、ナトリウムおよび/またはカリウムチャネル活性の混乱と関連し、式(I)、(II)または(III)の化合物は高血圧の処置に有用であり得る。
【0096】
Lin et al(1997)J. Clin. Invest. 100, 8: 2072−2078およびP. Lin(1998)PNAS 95, 8829−8834は、乳房腫瘍および黒色腫異種移植片モデルにおいてアデノウイルス感染中またはTie−2の細胞外ドメイン(Tek)の注入中に腫瘍増殖および血管新生が阻害され、また肺転移が減少することを示している。Tie2阻害剤は新血管新生が不適切に行われる状況(すなわち糖尿病性網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性新血管新生、リウマチ性関節炎、小児血管腫および癌)において使用できる。
【0097】
LckはT細胞シグナル伝達において役割を有する。Lck遺伝子を欠くマウスは、胸腺細胞を発育させる能力が乏しい。T細胞シグナル伝達の正のアクティベーターとしてのLckの機能は、Lck阻害剤がリウマチ性関節炎のような自己免疫性疾患の処置に有用であり得ることを示唆する。
【0098】
個別の遺伝子により各々コード化されるp38・MAPK(α、β、γ、δ)の多数の形態は、浸透ストレス、UV光およびサイトカイン仲介事象を含む様々な刺激に対する細胞応答に関係するキナーゼカスケードの一部をなす。これらの4つのp38の異性体は、細胞内シグナル伝達の異なる局面を調節すると考えられる。その活性化は、炎症性サイトカイン類様TNFαの合成および産生をもたらすシグナル伝達事象カスケードの一部である。P38の機能は、他のキナーゼおよび転写因子を含む下流基質をリン酸化する。p38キナーゼを阻害する薬剤は、TNFα、IL−6、IL−8およびIL−1βを含むが、これに限定されないサイトカインの産生を阻止することが示されている。末梢血単核球(PBMC)は、インビトロでリポ多糖類(LPS)により刺激したとき、炎症性サイトカインを発現および分泌することが示されている。P38阻害剤は、PBMCをLPSでの刺激前にかかる化合物で前処理するとき、前記効果を効率的に阻止する。P38阻害剤は、炎症性疾患の動物モデルにおいて有効である。多くの疾患状態の破壊作用は、炎症性サイトカインの過剰な産生によりもたらされる。p38阻害剤がこの過剰産生を調節する能力は、それらを疾患修飾薬として有用にする。
【0099】
p38の機能を阻害する分子は、骨吸収、炎症、ならびに他の免疫および炎症に基づく疾患の阻害に有効であることが示されている。故に、p38阻害剤の安全性および有効性は、例えばRAのようなp38シグナル伝達の調節剤により調節され得る消耗性疾患を処置する手段を提供し得る。故に、p38活性を阻害し得る式(I)、(II)または(III)の化合物は、炎症、骨関節症、リウマチ性関節炎、癌、自己免疫性疾患の処置、および他のサイトカイン仲介疾患の処置に有用である。
【0100】
JNKは他のMAPKと同様、癌、トロンビン誘発血小板凝集、免疫不全疾患、自己免疫性疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症および心臓疾患に対する細胞応答の仲介において役割を有すると見なされる。JNK経路活性化に関連する治療標的は、慢性骨髄性白血病(CML)、リウマチ性関節炎、喘息、骨関節症、虚血、癌および神経変性疾患を含む。肝臓疾患または肝臓虚血の事象と関連するJNK活性化の重要性の結果、式(I)、(II)または(III)の化合物はまた、種々の肝障害の処置にも有用であり得る。心筋梗塞または鬱血性心不全のような心血管疾患におけるJNKの役割も、JNKが心臓ストレスの種々の形態に対する肥大性応答を仲介するとして報告されている。JNKカスケードはまた、IL−2プロモーターの活性化を含むT細胞活性化において役割を有することが証明されている。故に、JNKの阻害剤は、病的免疫応答の変更に治療的価値を有し得る。種々の癌におけるJNK活性化の役割は確立されており、癌におけるJNK阻害剤の使用の可能性を示唆する。例えば、構成的に活性化されたJNKはHTLV−1仲介腫瘍形成と関連する[Oncogene 13: 135−42(1996)]。JNKはカポジ肉腫(KS)において役割を有し得る。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、IL−6およびTNFαのような、KS増殖に関与する他のサイトカインの他の増殖性効果もまたJNKにより仲介され得る。加えて、p210 BCR−ABL形質転換細胞におけるc−jun遺伝子の制御はJNK活性と一致し、慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるJNK阻害剤の役割を示唆する[Blood 92: 2450−60(1998)]。
【0101】
ある種の異常な増殖状態はraf発現と関連すると考えられており、故に、raf発現の阻害に応答すると考えられる。rafタンパク質の異常に高レベルの発現はまた、形質転換および異常な細胞増殖に関与する。これらの異常な増殖状態もまたraf発現の阻害に応答すると考えられる。例えば、c−rafタンパク質の発現は、全肺癌腫細胞株の60%が異常に高レベルのc−raf mRNAおよびタンパク質を発現すると報告されているため、異常細胞増殖において役割を有すると考えられる。異常増殖状態のさらなる例は、癌、腫瘍、過形成、肺線維症、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化症ならびに狭窄または血管形成術術後の再狭窄のような血管における平滑筋細胞増殖のような、過増殖性障害である。rafが一部である細胞シグナル伝達経路はまた、例えば組織移植片拒絶、エンドドキシンショック、および糸球体腎炎のようなT細胞増殖(T細胞活性化および増殖)により特徴付けられる炎症性障害に関与している。
【0102】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は、増殖シグナルに対する細胞応答を仲介する。Rasは、〜15%のヒト癌で発癌性形態に変異する。Rafファミリーはセリン/スレオニンタンパク質キナーゼに属し、3種のメンバー、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf(またはRaf−1)を含む。医薬標的としてのRafへの焦点は、Rasの下流エフェクターとしてのRafの関係に絞られている。しかしながら、近年のデータは、B−Rafが、Ras対立遺伝子の活性化の必要なく、ある種の腫瘍の形成において顕著な役割を有し得ることを示唆する(Nature 417, 949−954(2002年7月1日))。特に、B−Raf変異は、悪性黒色腫の大部分で検出されている。
【0103】
黒色腫に対する、とりわけ後期黒色腫に対する現在存在する医薬処置は、それらの効果により制限されている。式(I)、(II)または(III)の化合物はまたb−Rafキナーゼが関与する細胞過程を阻害し、ヒト癌、とりわけ黒色腫の処置に対する新しい治療機会を提供する。
【0104】
ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)は、c−jun転写因子の活性化およびc−junにより制御される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の最後から2番目の工程を代表する、タンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c−junは、遺伝毒性損傷により損傷されるDNAの修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与する。故に、細胞におけるSAPK活性を阻害する薬剤は、DNA修復を妨げ、細胞を、DNA損傷を誘発するかDNA合成を阻害して細胞のアポトーシスを誘発する、または細胞増殖を阻害する薬剤に感受性とする。
【0105】
マイトージェン−活性タンパク質キナーゼ(MAPK)は、種々の細胞外シグナルに応答して、転写因子、翻訳因子および他の標的分子を活性化する保存されたシグナル伝達経路のメンバーである。MAPKは配列Thr−X−Tyrを有する二重リン酸化モチーフの、マイトージェン−活性タンパク質キナーゼキナーゼ(MKK)によるリン酸化により活性化される。高等真核細胞において、MAPKシグナル伝達の生理学的役割は、増殖、発癌、発生および分化のような細胞事象と相関している。従って、シグナル伝達をこれらの経路を介して(特にMKK4およびMKK6を介して)制御する能力は、炎症性疾患、自己免疫性疾患および癌のようなMAPKシグナル伝達と関連するヒト疾患の処置および予防的治療の発展に至る。
【0106】
Sykは、マスト細胞脱顆粒および好酸球活性化に重要な役割を果たすチロシンキナーゼである。従って、Sykキナーゼは、様々なアレルギー性障害、特に喘息に関与する。Sykは、N末端のSH2ドメインを介してFcεR1受容体のリン酸化γ鎖に結合し、下流のシグナル伝達に必須であることが示されている。
【0107】
好酸球アポトーシスの阻害は、喘息における血中および組織好酸球の発生に重要な機序と見なされている。IL−5およびGM−CSFは喘息において上方制御され、好酸球アポトーシスの阻害により血中および組織好酸球をもたらすと考えられる。好酸球アポトーシスの阻害は、喘息における血中および組織好酸球の発生に重要な機序と見なされている。Sykキナーゼが、サイトカインによる好酸球アポトーシスの予防に必要であることが報告されている(Yousefi, et al., J. Exp. Med. 1996; 183: 1407)。
【0108】
ヒトリボソームS6タンパク質キナーゼのファミリーは少なくとも8種のメンバー(RSK1、RSK2、RSK3、RSK4、MSK1、MSK2、p70S6Kおよびp70S6 Kb)から成る。リボソームタンパク質S6タンパク質キナーゼは、重要な多面的(pleotropic)機能を有し、とりわけ、タンパク質生合成中のmRNA翻訳に重要な役割を有する(Eur. J. Biochem 2000 November; 267(21): 6321−30, Exp Cell Res. Nov. 25, 1999; 253 (1):100−9, Mol Cell Endocrinol. May 25, 1999;151(1−2):65−77)。S6リボソームタンパク質のp70S6によるリン酸化はまた、細胞運動性(Immunol. Cell Biol. 2000 August; 78(4): 447−51)および細胞増殖(Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 2000; 65: 101−27)の制御に関与しており、故に腫瘍転移、免疫応答および組織修復ならびに他の疾患状態に重要であり得る。
【0109】
Fesは、骨髄造血細胞で強く発現され、骨髄性白血球での分化および生存シグナル伝達経路の両方に関与する。CSKは、癌、特に結腸直腸癌および乳癌に関与する。
【0110】
形質転換増殖因子−β(TGFβ)は、例えば、細胞増殖および分化、胚発生および骨発生、細胞外マトリクス形成、造血、免疫および炎症性応答の多面的調節因子である、TGFβl、TGFβ2およびTGFβ3を含むタンパク質のスーパーファミリーを示す。TGFファミリーのメンバーは、細胞周期を制御し、増殖性応答を制御し、または細胞の外部へのシグナル伝達、細胞接着、遊走および細胞間伝達を仲介する細胞外マトリクスタンパク質と関係する遺伝子の発現を最終的にもたらす、細胞内シグナル伝達経路を開始する。その結果、TGF細胞内シグナル伝達経路を阻害し得る式(I)、(II)または(III)の化合物は、無制御のTGF活性と関係する腎臓障害を含む線維性増殖疾患、ならびにメサンギウム増殖性GN、免疫性GN、および半月体形成性GNのような糸球体腎炎(GN)を含む過剰線維症の処置に有用である。他の腎臓状態は、糖尿病性腎症、腎性間質性線維症、シクロスポリンを受容する移植患者における腎性線維症、およびHIV関連腎症である。コラーゲンによる血管障害は、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、またはレイノー症候群の発症と関係するものが含まれる。過剰なTGF活性による肺線維症には、成人呼吸窮迫症候群、COPD、特発性肺線維症、およびしばしば自己免疫性障害と関係する間質性肺線維症、例えば全身性エリテマトーデスおよび強皮症、化学物質との接触、またはアレルギーが含まれる。線維性増殖特性と関係する別の自己免疫性障害は、リウマチ性関節炎である。線維性増殖状態は、眼の外科手術と関係し得る。かかる方法は、増殖性硝子体網膜症に伴う網膜復位術、眼内レンズ挿入術による白内障摘出術、および緑内障後の排膿術を含む。
【0111】
上記の通り、かかる処置を必要とする患者における上記の疾患または障害の何れかの予防法または処置法であって、治療的有効量の式(I)、(II)または(III)の化合物の少なくとも1種、またはそれらの各々の薬学的に許容される誘導体を該対象に投与することを含む方法を記載する。上記の使用の何れかについて、必要な投与量は、投与方法、処置されるべき特定の状態、および所望の効果によって変化し得る。
【0112】
式(I)、(II)または(III)の化合物の製造方法
式(I)、(II)および(III)の化合物は、当業者に公知の標準的合成技術を用いるか、または当技術分野で公知の方法と本明細書に記載の方法を併用して合成され得る。さらに、本明細書に記載の溶媒、温度および他の反応条件は、当業者により変更可能である。
【0113】
式(I)、(II)および(III)の化合物の合成に用いた出発物質は、Aldrich Chemical Co. (Milwaukee, Wis.)、Sigma Chemical Co. (St. Louis, Mo.)のような供給源から入手可能であるか、または出発物質は合成され得る。本明細書に記載の化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えばMarch, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed., (Wiley 1992); Carey and Sundberg, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed., Vols. A and B (Plenum 2000, 2001), and Green and Wuts, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 3rd Ed., (Wiley 1999)(それらは全て、引用により本明細書中にその全内容を包含される)に記載のような、当業者に公知の技術および材料を用いて合成され得る。本明細書に記載の化合物の一般的製造法は、当分野で公知の反応から導かれ得、該反応は、当業者に理解される通り、本明細書に記載の式に見出される様々な部分の導入に適当な試薬および条件の使用により改変され得る。参考のために、下記の合成方法を利用可能である。
【0114】
求電子試薬と求核試薬の反応による共有結合の形成
本明細書に記載の化合物は、様々な求電子試薬または求核試薬を用いて修飾し、新しい官能基または置換基を形成し得る。表題“共有結合体およびその前駆体の例”の表1は、得られる共有結合体および前駆体官能基の選択例を列記し、利用可能な様々な求電子試薬および求核試薬の組合せの指針として用いられ得る。前駆体官能基は、求電子性基および求核性基として示される。
【0115】
【表1】

【表2】

【0116】
保護基の使用
記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基(ここで、これらは、最終生成物に望まれる。)を保護し、反応におけるそれらの望ましくない参加を避ける必要があり得る。保護基は、いくつか、または全ての反応部分の遮断に用いられ、保護基が除去されるまで、かかる基の化学反応への参加を阻止する。核保護基は異なる方法で除去され得ることが好ましい。完全に異なる反応条件下で切断される保護基は、異なる除去法の必要性を満たす。保護基は、酸、塩基、および水素化分解により除去され得る。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタールおよびt−ブチルジメチルシリルのような基は、酸に不安定であり、水素化分解により除去され得るCbz基、および塩基に不安定なFmoc基で保護されるアミノ基の存在下で、カルボキシおよびヒドロキシ反応部分の保護に用いられ得る。カルボン酸およびヒドロキシ反応部分は、t−ブチルカルバメートのような酸に不安定な基、または酸および塩基の両方に安定であるが加水分解で除去可能なカルバメートで遮断されるアミンの存在下で、例えばメチル、エチルおよびアセチルであるが、これらに限定されない塩基に不安定な基で遮断され得る。
【0117】
カルボン酸およびヒドロキシ反応部分はまた、加水分解で除去可能な保護基、例えばベンジル基で阻止され得、酸と水素結合し得るアミン基は、塩基に不安定な基、例えばFmocで遮断され得る。カルボン酸反応部分は、本明細書に例示の単純エステル化合物に変換されて保護され得るか、またはそれらは、酸化的に除去可能な保護基、例えば2,4−ジメトキシベンジルで遮断され得、共に存在するアミノ基は、フッ化物に不安定なカルボン酸シリルで遮断され得る。
【0118】
アリル遮断基は、酸−および塩基−保護基の存在下で、前者を安定化し、次いで金属またはpi−酸触媒により除去し得るため、有用である。例えば、アリル遮断カルボン酸は、酸に不安定なt−ブチルカルバメートまたは塩基に不安的な酸酢酸アミン保護基の存在下で、Pd−触媒反応により脱保護され得る。保護基のさらに別の形態は、化合物または中間体を結合し得る樹脂である。残基が該樹脂に結合する限り、官能基は遮断され、反応不可能である。該樹脂から放出されると、官能基は反応に利用可能である。
【0119】
典型的な遮断基/保護基は、下記から選択され得る。
【化10】

【0120】
他の保護基と、保護基の製造およびそれらの除去に利用可能な技術の詳しい記載は、引用によりその内容全体を本明細書中に包含される、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999、およびKocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994に記載される。
【0121】
反応スキームおよび式(I)、(II)または(III)の代表的化合物を、実施例に記載する。さらに、様々なタンパク質キナーゼ阻害剤の合成方法は、引用によりその全内容を本明細書中に包含される、WO2005/011597およびWO2005/034869に記載される。
【0122】
化合物のさらなる形態
式(I)、(II)または(III)の化合物は、親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンにより置換されるか;または、有機塩基と配位されるとき、薬学的に許容される塩として製造され得る。さらに、本発明の化合物の塩形態は、出発物質または中間体の塩を用いて製造され得る。
【0123】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、化合物の遊離塩基形と、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸など;ならびに、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、Q−トルエンスルホン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、アリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、およびムコン酸を含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される無機または有機酸を反応させて、薬学的に許容される酸付加塩(薬学的に許容される塩の形態である)として製造され得る。
【0124】
あるいは、式(I)、(II)、(III)の化合物は、化合物の遊離酸形態と、有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなど、および無機塩基、例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される無機または有機塩基を反応させて、薬学的に許容される塩基付加塩(薬学的に許容される塩の形態である)を製造され得る。
【0125】
薬学的に許容される塩の言及は、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体を含むと解されるべきである。溶媒和物は、化学量論または非化学量論量の溶媒を含み、薬学的に許容される溶媒、例えば水、エタノールなどを用いる結晶化法中に形成され得る。水和物は、溶媒が水であるとき形成され、アルコラートは、溶媒がアルコールであるとき形成される。式(I)、(II)または(III)の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法中に好都合に製造または形成され得る。例示の目的のみで、式(I)、(II)または(III)の化合物の水和物は、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはメタノールを含むが、これらに限定されない有機溶媒を用いて、水性/有機溶媒混合物から再結晶により好都合に製造され得る。さらに、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和物ならびに溶媒和物形態で存在し得る。一般的に、溶媒和物形態は、本明細書に記載の化合物および方法の目的に関して、非溶媒和物形態と同等と見なされる。
【0126】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、多形体としても公知の結晶形態を含む。多形体は、同じ元素組成の化合物の異なる結晶パッキング配置を含む。多形体は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形、光学および電気特性、安定性、ならびに溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、および貯蔵温度のような様々な因子が、単一の結晶形態を優位にし得る。
【0127】
非酸化形態の式(I)、(II)または(III)の化合物は、式(I)、(II)または(III)の化合物のN−オキシドから、例えば硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、リチウムボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物などを含むが、これらに限定されない還元剤と、例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなどを含むが、これらに限定されない適当な不活性有機溶媒中、0ないし80℃で処理することにより、製造できる。
【0128】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、プロドラッグとして製造され得る。プロドラッグは一般的に、対象に投与後に吸収される薬剤前駆体であり、代謝経路による変換のようないくつかの経路により、1つの活性体、または活性体種に変換される。いくつかのプロドラッグは、活性を低くし、および/または、薬剤に対する溶解性またはいくつかの他の特性を与える、プロドラッグ上に存在する化学基を有する。化学基が切断され、および/またはプロドラッグから改変されると、活性薬剤が生じる。プロドラッグはしばしば、いくつかの状況において、親薬剤よりも投与が容易であり得るために有用である。例えば、それらは、経口投与により生物学的に利用可能であり、親化合物は利用可能ではない。プロドラッグはまた、親薬剤よりも医薬組成物中に改善された溶解性を有し得る。プロドラッグの非限定的な例は、式(I)、(II)または(III)の化合物であり得、それは、細胞膜(そこでは、水への溶解性が移動に有害である。)を容易に通過するようにエステル(“プロドラッグ”)として投与されて、活性体であるカルボン酸へ代謝的に加水分解され、細胞中では、水への溶解性は有益である。プロドラッグのさらなる例は、ペプチドが代謝され活性部分を露呈する、酸性基と結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)であり得る。
【0129】
プロドラッグは、部位特異的組織への薬物の送達を増大した改善薬としての使用のために、可逆性の薬物誘導体として設計され得る。今日までのプロドラッグの設計は、水が主な溶媒である領域を標的とするために、治療化合物の有効な水溶性を増大させた。例えば、Fedorak et al., Am. J. Physiol., 269:G210−218 (1995); McLoed et al., Gastroenterol, 106:405−413 (1994); Hochhaus et al., Biomed. Chrom., 6:283−286 (1992); J. Larsen and H. Bundgaard, Int. J. Pharmaceutics, 37, 87 (1987); J. Larsen et al., Int. J. Pharmaceutics, 47, 103 (1988); Sinkula et al., J. Pharm. Sci., 64:181−210 (1975); T. Higuchi and V. Stella, Pro−drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series;および、Edward B. Roche, Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987(全て、引用によりその全内容は本明細書中に包含される。)を参照。
【0130】
さらに、式(I)、(II)または(III)の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に公知の方法により製造できる(例えば、さらなる詳細については、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照のこと)。例示のみを目的として、適当なプロドラッグは、式(I)、(II)または(III)の非誘導体化化合物を、例えば1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニル炭素塩などを含むが、これらに限定されない、適当なカルバミル化剤と反応させて製造できる。本明細書に記載の化合物のプロドラッグ形態(ここで、該プロドラッグはインビボで代謝されて、本明細書に記載の誘導体を生じる。)は、本発明の範囲内に包含される。実際に、本明細書に記載の化合物のいくつかは、別の誘導体または活性化合物のプロドラッグであり得る。
【0131】
式(I)、(II)または(III)の化合物の芳香環部分上の部位は、様々な代謝反応を受けやすく、故に、芳香環構造上に適当な置換基が挿入されやすく、例えば、一例として、ハロゲンは、この代謝経路で還元、最小化または除去され得る。
【0132】
本明細書に記載の化合物は、同位体(例えば、放射性同位体で)でか、または別の手段により、発色団もしくは蛍光部分、生物発光ラベル、または化学発光ラベルを用いて標識され得る。
【0133】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、1個以上のキラル中心を有し得、核中心は、RまたはS配置で存在し得る。本明細書に記載の化合物には、全てのジアステレオマー、エナンチオマー、およびエピマー形態、ならびに適当なそれらの混合物が含まれる。式(I)、(II)または(III)の化合物は、化合物のラセミ混合物を、光学活性な分離剤と反応させて、ジアステレオ異性体化合物の混合物を形成させ、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、その個々の立体異性体として製造できる。エナンチオマーの分離は、本明細書に記載の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて行い得るが、分離可能な複合体(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)が好ましい。ジアステレオマーは異なる物理特性(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの差異を利用して容易に分離できる。ジアステレオマーはキラルクロマトグラフィーにより、または好ましくは、溶解度の差異を利用した分離/分割技術により分離できる。光学的に純粋なエナンチオマーを、次いで分離剤と共に、ラセミ化をもたらさない何らかの実践的手段により回収する。化合物の立体異性体の、そのラセミ混合物からの分離に適用可能な技術のより詳細な記載は、引用によりその全内容を本明細書中に包含される、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolution”, John Wiley and Sons, Inc., 1981に見いだし得る。
【0134】
さらに、本明細書に記載の化合物および方法は、幾何異性体として存在し得る。本明細書に記載の化合物および方法には、全てのシス、トランス、シン、アンチ、entgegen(E)、およびzusammen(Z)異性体、ならびに適当なそれらの混合物が含まれる。ある状況において、化合物は互変異性体として存在し得る。本明細書に記載の式に包含される全ての互変異性体は、本明細書に記載の化合物および方法により提供される。本明細書に記載の化合物および方法のさらなる態様において、一回の予備的工程から得られるエナンチオマーおよび/またはジアステレオ異性体の混合物、組合せ、または相互変換体はまた、本明細書に記載の方法に有用であり得る。
【0135】
医薬組成物/製剤/投与
本明細書で用いる「医薬組成物」は、式(I)、(II)または(III)の化合物と他の化合物、例えば担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、濃化剤、および/または賦形剤との混合物を意味する。医薬組成物は、生物に対する該化合物の投与を容易にする。式(I)、(II)または(III)の化合物を含む医薬組成物は、何らかの常套的形態および当技術分野で公知の経路:静脈内、経口、経直腸、エアロゾル、非経腸、眼、肺、経皮、経膣、耳、鼻、および局所投与を含むが、これらに限定されない経路により、医薬組成物として治療的有効量で投与され得る。
【0136】
一般的に、式(I)、(II)または(III)の化合物は、通常の、かつ当技術分野で公知の許容される何らかの方法により、単剤で、または1個以上の治療剤と組合せて、治療的有効量で投与され得る。治療的有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力ならびに他の因子によって大きく変わり得る。いくつかの態様において、満足のいく結果は、体重1kg当たり約0.03ないし2.5mgの1日投与量で全身的に得られることが示される。大型哺乳動物、例えばヒトにおける指示される一日投与量は、約0.5mgないし約100mgの範囲であり、簡便には、例えば1日4回までの分割量でまたは徐放形態で投与する。経口投与のための適当な単位投与量形態は約1ないし50mg活性成分を含む。
【0137】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、医薬組成物として、任意の慣用の経路により、特に経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤またはカプセルの形態で、または非経腸的に、例えば注射可能溶液または懸濁液の形態で、局所的に、例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で、または鼻腔内にまたは坐薬形態で投与できる。遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(II)または(III)の化合物を少なくとも1個の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、混合、造粒またはコーティング法による慣用法で製造できる。例えば、経口組成物は、活性成分をa)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまた、c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン;要すれば、d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤と共に含む、錠剤またはゼラチンカプセルであり得る。注射可能組成物は、水性等張性溶液または懸濁液であってよく、そして坐薬は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造できる。本組成物は滅菌してよく、および/またはアジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含んでいてよい。加えて、それらはまた他の治療的に価値ある物質を含んでいてよい。
【0138】
全身投与よりも局所投与で、例えば、しばしばデポー剤または持続放出製剤で直接臓器に化合物を注射により投与し得る。さらに、例えば、臓器特異的抗体でコートしたリポソームで、標的薬物送達系に式(I)、(II)または(III)の化合物を含む医薬組成物を投与することができる。リポソームは、臓器に標的化され、選択的に取り込まれ得る。さらに、式(I)、(II)または(III)の化合物を含む医薬組成物は、迅速に放出される製剤の形態、持続放出製剤の形態、または中間の放出製剤の形態で提供され得る。
【0139】
経口投与のために、式(I)、(II)または(III)の化合物を、活性化合物と当技術分野でよく知られている薬学的に許容される担体または賦形剤を組み合わせて容易に製剤し得る。かかる担体は、処置すべき患者による経口摂取用に、本明細書に記載の化合物が、錠剤、粉末、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液などとして製剤されるのを可能とする。
【0140】
経口使用用の製剤は、1個以上の固体賦形剤と1個以上の本明細書に記載の化合物の混合により得られ、所望により得られた混合物を粉末化し、顆粒混合物を、要すれば錠剤または糖衣コアを得るために適当な助剤を添加後に加工してよい。適当な賦形剤は、特に、充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;または、他のもの、例えばポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)もしくはリン酸カルシウムである。要すれば、崩壊剤、例えば架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩が添加され得る。
【0141】
糖衣錠コアは、適当なコーティング剤と共に提供される。この目的に関して、濃縮した糖溶液を用いてよく、それは所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適当な有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてよい。染料または顔料は、異なる組合せの活性化合物用量を同定または特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてよい。
【0142】
経口使用され得る医薬品には、押し込み型ゼラチンカプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールでできた軟、密閉型カプセルが含まれる。該押し込み型カプセルは、活性成分と、充填剤、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプン、および/または滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、ならびに所望により安定化剤を混合して含み得る。軟カプセルにおいて、活性化合物は、適当な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール中に溶解または懸濁され得る。さらに、安定化剤が添加され得る。全ての経口投与用製剤は、かかる投与に適当な投与量であるべきである。
【0143】
口腔または舌下投与のため、該組成物は、常套法で錠剤、ロゼンジ、またはゲル形態に剤形化され得る。非経腸注射剤は、ボーラス注入または持続注入に関与し得る。式(I)、(II)または(III)の医薬組成物は、油性または水性ビヒークル中、滅菌懸濁液、溶液またはエマルジョンのような非経腸注射に適当な形態であり得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような剤形化剤を含み得る。非経腸投与用の製剤は、水溶性形態で活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射懸濁液として調製され得る。適当な脂溶性溶媒またはビヒークルは、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような懸濁液の粘性を増大する物質を含み得る。所望により、該懸濁液はまた、適当な安定化剤または化合物の溶解性を増大して高濃度溶液の製造を可能にする物質を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前、適当なビヒークル、例えば滅菌発熱物質不含有水で構成される粉末形態であり得る。
【0144】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、局所的に投与されてよく、様々な局所投与可能な組成物、例えば溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、香油、クリームまたは軟膏に剤形化され得る。かかる薬学的化合物は、溶解剤、安定化剤、張性増加剤(tonisity enhancing agent)、緩衝剤および防腐剤を含み得る。
【0145】
経皮適用に適する製剤は、有効量の式(I)、(II)または(III)の化合物の少なくとも1個と担体を含む。担体は、宿主の皮膚を介した通過を助けるための吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含み得る。例えば、経皮デバイスは裏打ち部材、化合物を所望により担体と共に含む貯蔵部、所望により化合物を宿主の皮膚へ長時間にわたり制御されかつ予定された速度で送達するための速度制御バリア、および該デバイスを皮膚に固定する手段を含む、バンデージの形態である。マトリクス経皮製剤も使用可能である。例えば、皮膚および眼への局所投与に適当な製剤は、好ましくは当分野で既知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。これらは可溶化剤、安定化剤、張性増強剤、緩衝剤および防腐剤を含み得る。
【0146】
式(I)、(II)または(III)の構造を有する化合物の経皮投与に適する製剤は、経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチを用いてよく、脂溶性エマルジョンまたは緩衝水溶液、ポリマーまたは粘着剤中溶解液および/または分散液であり得る。かかるパッチは、薬剤の連続、パルスまたは即時送達用に構成され得る。さらに、式(I)、(II)または(III)の化合物の経皮送達は、イオン泳動的(イオン導入)パッチなどの手段により達成され得る。さらに、経皮パッチは、式(I)、(II)または(III)の化合物の制御送達を提供し得る。吸収速度は、速度制御膜の使用によるか、またはポリマーマトリクスまたはゲル中に化合物を捕捉することにより遅延され得る。反対に、吸収増強剤は、吸収の増大に用いられ得る。吸収増大剤または担体は、皮膚を介する通過を補助するために吸収性の薬学的に許容される溶媒を含み得る。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を所望により担体と共に含む貯蔵部、所望により化合物を宿主の皮膚へ長時間にわたり制御されかつ予定された速度で送達するための速度制御バリア、および該デバイスを皮膚に固定する手段を含む、バンデージの形態である。
【0147】
吸入投与のため、式(I)、(II)または(III)の化合物は、エアロゾル、ミストまたは粉末として製剤され得る。式(I)、(II)または(III)の医薬組成物は、適当な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスの使用を含む、加圧パックまたはネブライザーとして示されるエアロゾルスプレー形態で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、該投与量単位は、一定量を送達するためのバルブを提供することにより決定され得る。例えば一例として、吸入または吹き入れ器(吸入器)中に使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末混合物およびラクトースまたはデンプンのような適当な粉末基剤を含んで製剤され得る。
【0148】
式(I)、(II)または(III)の化合物はまた、常用の坐薬基剤、例えばカカオバターまたは他のグリセリド、ならびに合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、PEGなどを含む、経直腸組成物、例えば浣腸剤、経直腸ゲル、経直腸泡状物、経直腸エアロゾル、坐薬、ゼリー状坐薬、または停留浣腸剤に製剤され得る。組成物の坐薬形態において、低融点ワックス、例えば限定されないが、脂肪酸グリセリドと所望によりカカオバターとの組合せ混合物が、迅速に融解する。
【0149】
本明細書に記載の処置法または使用法の実践において、本明細書に記載の治療的有効量の式(I)、(II)または(III)の化合物は、処置すべき疾患または状態を有する哺乳動物に医薬組成物として投与される。好ましくは、哺乳動物はヒトである。治療的有効量は、疾病の重篤度、対象の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力およびその他の因子に依存して、大幅に変化し得る。化合物は、単独または混合物の成分として1個以上の治療剤と組合せて使用され得る。
【0150】
医薬組成物は、賦形剤および活性化合物を薬学的使用され得る製剤に加工するのを容易にする助剤を含む、1個以上の生理的に許容される担体を好都合に用いて製剤され得る。適当な製剤は、選択した投与方法によって変わる。既知の技術、担体および賦形剤はいずれも、適当にかつ当技術分野で理解されるように使用され得る。式(I)、(II)または(III)の化合物を含む医薬組成物は、常套法により、例えば一例として、常套の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉末化、乳化、カプセル化、封入または圧縮法により製造され得る。
【0151】
該医薬組成物は、少なくとも1個の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、ならびに活性成分として本明細書に記載の式(I)、(II)または(III)の化合物の少なくとも1個を遊離酸もしくは遊離塩基の形態、または薬学的に許容される塩形態で含み得る。さらに、本明細書に記載の方法および医薬組成物は、N−オキシド、結晶形(多形としても公知)、ならびに同じタイプの活性を有するこれらの化合物の活性な代謝物の使用を含む。ある状況において、化合物は、互変異性体として存在し得る。全ての互変異性体は、本明細書に記載の化合物の範囲内に包含される。さらに、本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される溶媒、例えば水、エタノールなどを含む非溶媒和物ならびに溶媒和物形態で存在し得る。本明細書に記載の化合物の溶媒和物形態はまた、本明細書に開示されると見なされる。加えて、医薬組成物は、他の薬物または薬剤、担体、アジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧制御用の塩、および/または緩衝剤を含み得る。加えて、医薬組成物は他の治療的に有益な物質を含んでいてもよい。
【0152】
本明細書に記載の化合物を含む組成物の製造方法は、化合物と1個以上の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体を製剤して、固体、半固体または液体を形成することを含む。固体組成物は、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤および坐薬を含むが、これらに限定されない。液体組成物は、化合物が溶解される溶液、化合物を含むエマルジョン、また本明細書に記載の化合物を含むはリポソーム、ミセル、もしくはナノ粒子を含む溶液を含む。半固体組成物は、ゲル、懸濁液およびクリームであるが、これらに限定されない。組成物は、液体溶液もしくは懸濁液、使用前に液体の溶液もしくは懸濁液にするのに適する固体形態、またはエマルジョンであり得る。これらの組成物はまた、少量の無毒の、助剤、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝材などを含んでいてよい。
【0153】
本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;および、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999)(引用によりその内容全体を本明細書中に包含される。)に見出され得る。
【0154】
投与方法および処置方法
式(I)、(II)または(III)の化合物および/またはそれぞれのそれらの薬学的に許容される誘導体は、細胞増殖障害、特に腫瘍性障害の処置または制御に有用である。これらの化合物および該化合物を含む製剤は、特に固形腫瘍、例えば乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺腫瘍の処置または制御に有用である。故に、かかる処置を必要とする患者に、有効量の式(I)、(II)または(III)の化合物および/またはそれぞれのそれらの薬学的に許容される誘導体を投与することにより、かかる固形腫瘍を処置する方法も記載する。治療的有効量の決定は、当技術分野の範囲内である。
【0155】
式(I)、(II)または(III)の化合物は、キナーゼ活性が疾患の病状および/または症状の原因である疾患または状態の処置のための医薬の製造において使用され得る。加えて、本明細書に記載の疾患または状態の何れかの処置方法であって、かかる処置を必要とする患者における処置方法は、式(I)、(II)または(III)の化合物の少なくとも1個、またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物、もしくは他の薬学的に許容される誘導体を含む医薬組成物の治療的有効量を、該対象に投与することを含む。
【0156】
本明細書に記載の化合物(複数可)を含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。治療的適用において、組成物は、既に疾患または状態を有する患者に、疾患または状態の症状の治療または少なくとも部分的な停止に十分量で投与される。この使用に有効な量は、疾患または状態の重篤度および経過、薬歴、患者の健康状態、体重、および薬剤への応答、ならびに担当医の判断により変わり得る。常用の実験(用量漸増臨床実験を含むが、これに限定されない)によりかかる治療的有効量を決定することは、当業者の技術的範囲内であると見なされる。
【0157】
本明細書に記載の化合物(複数可)を含む組成物は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病、純化した骨髄細胞の再移植、アテローム性動脈硬化症、血栓症、神経膠腫、肉腫、前立腺癌、結腸癌、乳癌、および卵巣癌、小細胞肺癌、乾癬、強皮症、線維症、化学療法剤処置後の幹細胞の保護、喘息、同種移植、組織拒絶反応、閉塞性細気管支炎(OB)、再狭窄、ウィルムス腫瘍、神経芽腫、乳腺上皮癌細胞、致死性異形成症、成長停止、骨の発達異常、骨髄腫型癌、高血圧、糖尿病性網膜症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性血管新生、リウマチ性関節炎、小児血管腫、リウマチ性関節炎、他の自己免疫疾患、トロンビン誘導血小板凝集、免疫不全疾患、アレルギー、骨粗鬆症、骨関節症、神経変性疾患、肝臓虚血、心筋梗塞、鬱血性心不全、他の心臓疾患、HTLV−1仲介腫瘍形成、過形成、肺線維症、血管形成、狭窄、エンドトキシンショック、糸球体腎炎、遺伝性毒性損傷、慢性炎症、および他の炎症性疾患を含む芽、これらに限定されない疾患状態または病状の、かかる処置を必要とする患者における処置であって、該患者に有効量の本明細書に記載の化合物、またはその互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物または塩を投与することを含む方法に使用可能である。
【0158】
患者の状態が改善されない場合、医師の判断により、化合物の投与は、患者の疾患または状態の症状を緩解または他に制御もしくは限定するために、患者の生存期間中を含む慢性的、すなわち長期間投与され得る。患者の状態が改善される場合、医師の判断により、化合物の投与は、任意の期間連続して、または休薬して(すなわち、“休薬期間”)与えられ得る。
【0159】
患者の状態が改善されると、必要なとき持続用量が投与される。その後、投与量または投与回数、または両方が、症状の関数として、改善した疾患または状態が維持されるレベルに減少され得る。しかしながら、患者は、症状の再発により長期間の間欠的処置を必要とし得る。
【0160】
任意の例において、治療的有効量の本明細書に記載の化合物の少なくとも1個(または、その薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物、および他の薬学的に許容される誘導体)を別の治療剤と組合せて投与するのが適当であり得る。一例として、本明細書に記載の化合物のうち1個を受容することにより患者が経験する副作用の1つが、炎症であるとき、抗炎症剤を最初の治療剤と組み合わせて投与することが適当であり得る。または、一例として、本明細書に記載の化合物のうち1個の治療的効果は、アジュバントの投与により増大され得る(すなわち、アジュバント自体には、最小限の治療効果があるのみであり得るが、別の治療薬と組み合わせて、患者への総合的な治療効果が高められる。)。または、一例として、患者が経験する利点は、本明細書に記載の化合物のうち1個を、また治療的利点を有する別の治療剤(治療レジメンも含む)と共に投与することにより増大され得る。
【0161】
ある場合に、処置される疾患または状態に関わらず、患者が経験する総合的な利点は、単純に2個の治療剤の和であり得るか、または患者は相乗効果を経験し得る。例えば、相乗効果は、他の免疫調節剤または抗炎症性物質、例えばシクロスポリン、ラパマイシン、またはアスコマイシン、またはその免疫抑制類似体、例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシンまたは同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキセート、ブレキナル(brequinar)、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスペルグアリン、免疫抑制抗体、とりわけ白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58もしくはそのリガンドに対するモノクローナル抗体または他の免疫調節化合物、例えばCTLA41gと併用した時に起こり得る。式(I)、(II)または(III)の化合物を他の治療剤と組み合わせて投与するとき、併用投与化合物の投与量は、用いる併用剤のタイプ、用いる特定の薬剤、処置する状態などによって変化し得る。
【0162】
例えば、相乗効果はまた、式(I)、(II)または(III)の化合物と、低カルシウム血症、高血圧、鬱血性心不全、腎不全、特に慢性腎不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、X症候群、肥満、腎症、心筋梗塞後、冠血管心疾患、増大したコラーゲン形成症、線維症、ならびに高血圧および内皮機能不全後のリモデリングの処置にいて使用される他の物質との併用でもたらされ得る。そのような化合物の例には、オルリスタットのような抗肥満薬、血圧降下薬、強心薬および脂質降下薬、例えば、エタクリン酸、フロセミドおよびトルセミドのようなループ系利尿薬;ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリノドプリル(perinodopril)、キナプリル、ラミプリルおよびトランドレプリル(trandolepril)のようなアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;ジゴキシンのようなNa−K−ATPase膜ポンプの阻害剤;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;オマパトリラート、サムパトリラート(Sampatrilat)およびファシドトリルのようなACE/NEP阻害剤;カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタンのようなアンジオテンシンIIアンタゴニスト、特にバルサルタン;アセブトロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロパノロール、ソタロールおよびチモロールのようなβ−アドレナリン受容体阻害剤;ジゴキシン、ドブタミンおよびミルリノンのような強心薬;アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピンおよびベラパミルのようなカルシウムチャネル阻害剤;ならびに、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、ジェネリック・プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、フルバスタチン、ダルバスタチン(dalvastatin)、アトルバスタチン、ロスバスタチンおよびリバスタチン(rivastatin)のような3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素A還元酵素(HMG−CoA)阻害剤が含まれる。本発明の化合物を他の治療剤と合わせて投与するとき、共投与される化合物の投与量は、もちろん、用いる共薬剤の種類、用いる特定の薬剤、処置される状態などによって変わるだろう。加えて、1個以上の生物学的活性剤を共投与するとき、本発明の化合物は、生物学的活性剤(複数可)と同時に、または連続して投与され得る。連続して投与されるとき、担当医は、タンパク質を生物学的活性剤(複数可)と合わせて投与する適当な順序を決定し得る。
【0163】
ある場合において、複数の治療剤(そのうちの1個は、本明細書に記載の化合物のうち1個である。)を、任意の順にまたは同時に投与することができる。同時に投与するとき、複数の治療剤は、単一の統合した形態、または複数の形態で提供され得る(一例として、単一のピルまたは2個の別個のピル)。治療剤のうち1個は、複数用量で提供され得るか、両方共が複数用量で提供され得る。同時投与ではないとき、複数用量間の投与のタイミングは、1週間以上から4週間未満で変わり得る。加えて、併用する方法、組成物および製剤は、2剤のみの使用に限定されない;本発明者らは、複数の治療剤の組合せを意図する。
【0164】
加えて、式(I)、(II)または(III)の化合物はまた、患者に付加的または相乗的利益を与え得る方法と併用使用され得る。一例として、患者は、本明細書に記載の方法で治療的および/または予防的利点が見出されると期待され、ここで、式(I)、(II)または(III)の化合物を含む医薬組成物および/または他の治療剤との組合せ剤は、個体が、任意の疾患または状態と関係することが公知の変異遺伝子の保因者であるかどうかを決定するための一般的試験と併用される。
【0165】
式(I)、(II)または(III)の化合物および併用治療剤は、疾患または状態の発症前、発症中または発症後に投与され得、化合物を含む組成物を投与するタイミングは変化し得る。故に、例えば、化合物は予防剤として使用され得、疾患または状態の発生を予防するために状態または疾患になりやすい対象に継続的に投与され得る。化合物および組成物は、症状の発症中または発症後可能な限り迅速に対象に投与され得る。化合物の投与は、症状の発症の最初の48時間以内、好ましくは症状の発症の最初の48時間以内、より好ましくは症状の発症の最初の6時間以内、最も好ましくは症状の発症の最初の3時間以内に開始され得る。初回投与は、何らかの実践的経路、例えば静脈内注射、ボーラス注入、5分ないし約5時間かけての注入、ピル、カプセル、経皮パッチ、口腔送達など、またはそれらの組合せにより可能である。化合物は、好ましくは疾患または状態の発症が検出または疑われた後、可能な限り直ぐに、そして疾患の処置に必要な期間中、例えば1ヶ月ないし3ヶ月の間投与される。処置期間は、対象によって変わり得、その期間は、公知の基準を用いて決定され得る。例えば、該化合物を含む化合物または製剤は、少なくとも2週間、好ましくは約1ヶ月ないし約5年、より好ましくは約1ヶ月ないし約3年間投与され得る。
【0166】
本明細書に記載の医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適する単位投与量形態であり得る。単位投与量形態において、該製剤は、適当量の1個以上の化合物を含む単位用量に分割される。該単位投与量は、該製剤の分割量を含むパッケージ形態であり得る。非限定例は、パッケージングされた錠剤またはカプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末である。水性懸濁液組成物は、再密封不可能な容器に単回用量でパッケージングされ得る。あるいは、再密閉可能な容器の複数回用量が使用され得、その場合、典型的に組成物中に防腐剤が含まれる。一例として、非経腸注入用製剤は、アンプルを含むが、これに限定されない単位投与量形態、または防腐剤を添加した複数用量の容器で存在し得る。
【0167】
ある態様において、本明細書に記載の式(I)、(II)または(III)の化合物に適当な1日投与量は、体重1kgあたり約0.03ないし2.5mgである。大型哺乳動物、例えばヒトにおける指示される一日投与量は、約0.5mgないし約100mgの範囲であり、簡便には、例えば1日4回までの分割量でまたは徐放形態で投与する。経口投与のための適当な単位投与形態は約1ないし50mgの活性成分を含む。上記の範囲は、個々の処置レジメンに対する変数の数が大きく、これらの推奨値からのかなりのずれが珍しくないため、単なる表示である。かかる投与量は、用いた化合物の活性、処置すべき疾患または状態、投与方法、個々の対象の要求、処置される疾患または状態の重篤度、ならびに担当医の判断を含むが、これらに限定されない多数の可変因子により変わり得る。
【0168】
かかる治療レジメンの毒性および治療効果を、例えばLD50(集団の50%に致死の用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための手順を含むが、これらに限定されない、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性および治療効果の間の用量比は治療指標であり、そしてLD50/ED50比として表現することができる。大きな治療指標を呈する化合物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを、ヒトで使用するための投与量範囲を計算するのに用いることができる。かかる化合物の投与量は、最小毒性のED50を含む血中濃度範囲内である。該投与量は、用いた投与量形態および用いた投与方法によって、この範囲内で変化し得る。
【0169】
キット/製造説明書
本明細書に記載の治療適用における使用のため、キットおよび製造説明書も記載される。かかるキットは、媒体(carrier)、パッケージ、またはバイアル、チューブなどのような1個以上の容器を入手するために区分される容器を含み得、それぞれの該容器(複数可)は、本明細書に記載の方法で使用される個別の成分の1つを含む。適当な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジ、および試験チューブである。該容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な物質で形成され得る。
【0170】
例えば、該容器(複数可)は、本明細書に記載の1個以上の化合物を、所望により本明細書に記載の別の薬剤を含む組成物または組合せ剤として含み得る。該容器(複数可)は、所望により滅菌点検口を有していてよい(例えば、該容器は、皮下注射用針によるストッパー孔を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る。)。かかるキットは、所望により本明細書に記載の化合物またはラベルまたは本明細書に記載の方法におけるその使用に関する指示書を含んでいてよい。
【0171】
キットは、典型的に1個以上の付加的容器を含んでいてよく、それぞれが、本明細書に記載の化合物の使用のための商業的および使用者観点から望ましい1個以上の様々な材料(例えば、所望により濃縮形態の試薬、および/またはデバイス)を含む。かかる材料の非限定例には、緩衝剤、希釈剤、充填剤、針、シリンジ;媒体、パッケージ、容器、成分および/または使用指示を列記するバイアルおよび/またはチューブラベル、ならびに使用指示書を含む添付文書が含まれるが、これらに限定されない。1セットの指示書も典型的に包含され得る
【0172】
ラベルは、容器上または容器に付随して存在し得る。ラベルを形成する文書、数または他の文字が、容器自体に付着されるか、成形されるか、または描かれるとき、該ラベルは容器上にあり;ラベルは、容器内にある容器または媒体内に存在するとき、例えば添付文書として存在するとき、容器に付随し得る。ラベルは、その内容が特定の治療適用に使用すべきであることを示すのに使用され得る。該ラベルはまた、例えば本明細書に記載の方法において、内容物の使用に関する指示を示し得る。
【実施例】
【0173】
実施例
下記の実施例は、式(I)、(II)または(III)の化合物の製造方法ならびに有効性および安全性を試験する方法を説明する。これらの実施例は、説明のみを目的としており、本明細書に添付の特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書および特許請求の範囲に記載の方法は全て、本明細書の開示の観点から過度の実験をすることなく作製および実行可能である。変形が、本特許請求の概念、精神および範囲から逸脱しないで、本明細書に記載の方法、および工程または一連の工程に適用され得ることは、当業者に理解され得る。当業者に理解される、全てのかかる類似の物質および修飾は、添付の特許請求の範囲の精神、範囲および概念内であると見なされる。
【0174】
実施例1 6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒドの合成
6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒドの化学構造を下記に示し、スキーム1は、中間体化合物を製造するための種々の工程を説明する。
【化11】


6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒド
【0175】
【化12】

【0176】
実施例1a:4,6−ジヒドロキシ−ニコチン酸エチルエステルの製造
【化13】


4,6−ジヒドロキシ−ニコチン酸エチルエステル
【0177】
100mlフラスコ中、ジエチル1,3−アセトンジカルボキシレート(10.11g、50mmol)とオルトギ酸トリエチル(8.14g、55mmol)、および無水酢酸(10.20g、100mmol)を混合し、120℃まで1.5時間加熱する。粗生成物を、約90−100℃で真空下で蒸留し(150−200mmHg)、淡黄色油溶液を凝縮器中に集める。残渣を氷上に集め、30%アンモニア(4ml)と混合する。反応を氷浴中1時間継続し、次いで、2N HClを用いてpH<5まで酸性化する。溶媒を真空下で除去する。粗生成物を、EA/ヘキサン(1:1)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。最終生成物である4,6−ジヒドロキシ−ニコチン酸エチルエステルを2.85gの透明油状物として得る。
【0178】
実施例1b:4,6−ジクロロ−ニコチン酸エチルエステルの製造
【化14】


4,6−ジクロロ−ニコチン酸エチルエステル
【0179】
4,6−ジヒドロキシ−ニコチン酸エチルエステル(2.85g)を、100mlフラスコ中、純粋なPOCl25mlと混合し、110℃まで2時間加熱する。冷却後、大部分のPOClを真空下で除去する。粗暗色生成物を、少量の氷水混合物中に集め、飽和炭酸ナトリウム溶液で中和する。200mlの酢酸エチルを2〜3回用いて生成物を抽出する。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去後、粗生成物を、EA/ヘキサン(15:85)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。最終生成物である4,6−ジクロロ−ニコチン酸エチルエステルを3.05gの白色固体として得る。
【0180】
実施例1c:6−クロロ−4−エチルアミノ−ニコチン酸エチルエステルの製造
【化15】


6−クロロ−4−エチルアミノ−ニコチン酸エチルエステル
【0181】
4,6−ジクロロ−ニコチン酸エチルエステル(2.19g、10mmol)を、30mlのアセトニトリル中に溶解し、0℃まで冷却し、4mlのエチルアミン溶液(40%エチルアミン水溶液、50mmol)をゆっくり添加する。反応液を、0℃で30分間撹拌し、さらに2時間、RTまで温める。溶媒を真空下で除去し、粗生成物をEA/ヘキサン(30:70)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。最終生成物6−クロロ−4−エチルアミノ−ニコチン酸エチルエステルを、2.03gの白色固体として得る。
【0182】
実施例1d:(6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−イル)−メタノールの製造
【化16】


(6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−イル)−メタノール
【0183】
6−クロロ−4−エチルアミノ−ニコチン酸エチルエステル(2.03g、9.5mmol)を、30mlの無水THF中に溶解し、−78℃まで冷却する。20mlのLAH THF溶液(1M THF溶液、20mmol)をゆっくり添加し、−78℃にて3時間、反応を継続する。反応液をRTまでゆっくり温め、TLCにより出発物質が残っていないことを確認する。少量のMeOH/EA(1:1)混合物をゆっくり添加し、過剰量のLAHを分解する。粗生成物をセライトプラグを通して、EAにより2〜3回洗浄する。真空下で溶媒を除去後、粗生成物を、MeOH/DCM(5%:95%)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。最終生成物(6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−イル)−メタノールを1.40gの白色固体として得る。
【0184】
実施例1e:6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒドの製造
【化17】


6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒド
【0185】
(6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−イル)−メタノール(1.40g、8.1mmol)を、40mlのDCM中に溶解し、7.0gのMnO(81mmol)を添加する。反応液をRTで2時間撹拌する。次いで、反応溶液をセライトプラグを通して、EAにより洗浄する。溶媒を真空下で除去後、粗生成物を、EA/ヘキサン(3:7)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。最終生成物6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒドを1.30gの白色固体として得る。
【0186】
実施例2 3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの合成
3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの化学構造を下記に示し、スキーム2は、中間体化合物の製造するための種々の工程を説明する。
【化18】


3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル
【0187】
【化19】

【0188】
実施例2a:5−メトキシ−イソフタル酸モノメチルエステルの合成
【化20】


5−メトキシ−イソフタル酸モノメチルエステル
【0189】
5−メトキシ−イソフタル酸ジメチルエステル(5g、22.3mmol)およびNaOH(0.892g、22.3mmol)を、50mlのメタノール中で混合し、80℃で一晩還流する。反応混合物を室温まで冷却し、溶媒を回転蒸発により除去する。固体をHClで処理し、固体を濾過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、5−メトキシ−イソフタル酸モノメチルエステルを白色固体として得る(4.0g、85%)。
【0190】
実施例2b:3−ヒドロキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの製造
【化21】


3−ヒドロキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル
【0191】
5−メトキシ−イソフタル酸モノメチルエステル(4g、19mmol)を、25mlの乾燥THF中に溶解し、次いで25mlのTHF中1Nボランを室温で滴下する。反応液を室温で30分間撹拌する。溶媒を回転蒸発により除去する。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、3−ヒドロキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルを得る(2.9g、78%)。
【0192】
実施例2c:3−メタンスルホニルオキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの製造
【化22】


3−メタンスルホニルオキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル
【0193】
3−ヒドロキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(2.9g、14.8mmol)を、80mlの乾燥塩化メチレン中に溶解し、0℃まで冷却し、次いで1.2糖侶運TEAおよび1.15当量のMsClを添加する。反応液を氷上で30分間撹拌し、次いで、室温で2時間撹拌する。反応の完了後、80mlの10%NaHCO溶液を反応混合物に添加する。反応混合物を80mlの塩化メチレンで3回抽出する。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させる。粗生成物をさらなる精製なしに用いる。
【0194】
実施例2d:3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの製造
【化23】


3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル
【0195】
3−メタンスルホニルオキシメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(4g、14mmol)を、50mlのDMF中に溶解し、1.4gのKCNを0℃で添加する。反応駅を室温まで温め、一晩撹拌する。反応の完了後、120mlの水を添加し、反応混合物を100mlのエーテルで3回抽出する。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させる。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、最終生成物を得る(2.1g、71%);H NMR アセトン−d,δ 7.65 (s, 1H), 7.49(s, 1H), 7.25(s, 1H), 4.05(s, 2H), 3.91(m, 6H)。
【0196】
実施例3 3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5,N−ジメトキシ−ベンズアミドの合成
3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5,N−ジメトキシ−ベンズアミドを、実施例1の6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒドおよび実施例2の3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルを出発物質として用いて製造することができる。スキーム3は、中間体化合物を製造するための種々の工程を説明する。
【化24】


3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5,N−ジメトキシ−ベンズアミド
【0197】
【化25】

【0198】
実施例3a:3−(7−クロロ−1−エチル−2−イミノ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの製造
【化26】


3−(7−クロロ−1−エチル−2−イミノ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル
【0199】
6−クロロ−4−エチルアミノ−ピリジン−3−カルバルデヒド(370mg、2mmol)、3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(410mg、2mmol)およびKCO(0.9g、6mmol)を、10mlの乾燥DMF中で混合し、100℃で8時間撹拌する。反応混合物を70mlの水中に希釈し、80mlの酢酸エチルで3回抽出する。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させる。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサン中40%酢酸エチルで溶出して、3−(7−クロロ−1−エチル−2−イミノ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルを得る(550mg、74%)。
【0200】
実施例3b:3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸の製造
【化27】


3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸
【0201】
5mlの無水酢酸中、3−(7−クロロ−1−エチル−2−イミノ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(500mg、1.35mmol)を、120℃で2時間撹拌する。無水酢酸を回転蒸発により除去する。残渣を含むフラスコに5mlの6N HClを添加する。反応駅を80℃で8時間撹拌する。反応液を0℃まで冷却し、次いで任意の量(〜15ml)の1N NaOHを、沈殿が形成するまで添加する。固体を濾過により集め、水で洗浄し、乾燥させて、3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸を得る(420mg、87%)。
【0202】
実施例3c:3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸の製造
【化28】


3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸
【0203】
3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸(180mg、0.48mmol)、エチルアミン(1mlの70%水溶液)および1mlの2−メトキシエタノールを、密閉チューブに添加する。反応液を110℃で8時間撹拌する。溶媒を回転蒸発により除去する。残渣を5mlの0.1N HClで処理し、超音波で短時間分解する。固体を濾過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸を得る(140mg、76%)。
【0204】
実施例3d:3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5,N−ジメトキシ−ベンズアミドの製造
【化29】


3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5,N−ジメトキシ−ベンズアミド
【0205】
3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5−メトキシ−安息香酸(15mg、0.04mmol)、HATU(17mg、0.044mmol)、塩酸メトキシルアミン(10mg、0.12mmol)およびDIEA(42μl、0.24mmol)を、0.5mlのDMF中で混合する。反応液を室温で2時間撹拌する。溶媒を回転蒸発により除去する。粗生成物をRP−HPLCにより精製して、3−(1−エチル−7−エチルアミノ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−[1,6]ナフチリジン−3−イル)−5,N−ジメトキシ−ベンズアミドを淡黄色固体として得る(12mg、74%);1H NMR 400 MHz (DMSO−d6) δ 11.99(s, 1H), 8.70(s, 1H), 8.27(s, 1H), 7.82(s, 1H), 7.63(s, 1H), 7.47(s, 1H), 6.62(s, 1H), 4.38(q, 2H, J=7.2 Hz), 4.03(s, 3H), 3.92(s, 3H), 3.58(q, 2H, J=7.2 Hz), 3.37(s, 1H), 1.42(m, 6H); MS m/z 397.2 (M+1)。
【0206】
実施例4 N−エトキシ−3−[8−エチル−2−(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−5−メトキシ−ベンズアミドの合成
N−エトキシ−3−[8−エチル−2−(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−5−メトキシ−ベンズアミドを、実施例2の3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルおよび4−エチルアミノ−2−メチルスルファニル−ピリミジン−5−カルバルデヒドを出発物質として用いて製造できる。スキーム4は、中間体化合物を製造するための種々の工程を説明する。
【化30】


N−エトキシ−3−[8−エチル−2−(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−5−メトキシ−ベンズアミド
【0207】
【化31】

【0208】
実施例4a:3−(8−エチル−7−イミノ−2−メチルスルファニル−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルの製造
【化32】


3−(8−エチル−7−イミノ−2−メチルスルファニル−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル
【0209】
4−エチルアミノ−2−メチルスルファニル−ピリミジン−5−カルバルデヒド(524mg、2.65mmol)、3−シアノメチル−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(653mg、3.18mmol)およびKCO(0.917g、6.63mmol)を、10mlの乾燥DMF中で混合し、120℃で3時間撹拌する。反応混合物を70mlの水で希釈する。固体を濾過により集め、水で洗浄し、乾燥させて、3−(8−エチル−7−イミノ−2−メチルスルファニル−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステルを得る(706mg、70%);MS m/z 385.10(M+1)。
【0210】
実施例4b:3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸の製造
【化33】


3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸
【0211】
10mlの無水酢酸中、3−(8−エチル−7−イミノ−2−メチルスルファニル−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(577mg、1.50mmol)を105℃で1時間撹拌する。反応混合物を室温まで冷却し、10mlの6N HClを添加する。105℃で1時間攪拌後、反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈する。固体を濾過により集め、水で洗浄し、乾燥させて、3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸を得て、それをさらなる精製なしに次工程に用いる;MS m/z 372.10 (M+1)。
【0212】
実施例4c:N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化34】


N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド
【0213】
DIEAを、DMF(10ml)中、3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−安息香酸(256mg、0.69mmol)、HATU(288mg、0.757mmol)の溶液に、0℃で添加する。15分間撹拌後、塩酸エトキシルアミン(110mg、1.13mmol)を添加する。反応液を室温で1時間撹拌する。溶媒を回転蒸発により蒸発させ、飽和NaCO溶液を残渣に添加する。固体を濾過により集め、水で洗浄し、乾燥させて、N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メチルスルファニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミドを276mg(97%収率)得て、それをさらなる精製なしに次工程に用いる;MS m/z 415.14 (M+1)。
【0214】
実施例4d:N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メタンスルホニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化35】


N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メタンスルホニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド
【0215】
DCM(10ml)およびDMF(0.5ml)中、N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メタンスルホニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド(136.5mg、0.33mmol)の溶液を、0℃まで冷却する;mCPBA(190mg、0.847mmol)を少しずつ添加する。反応混合物を室温まで温める。一晩撹拌後、反応混合物をDCMで希釈し、20mlの5%Na溶液でクエンチする。有機層を分離させ、飽和NaCO溶液、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メタンスルホニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミドを123mg(84%)得て、それを次反応に用いる;MS m/z 447.1(M+1)。
【0216】
実施例4e:N−エトキシ−3−[8−エチル−2−(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化36】


N−エトキシ−3−[8−エチル−2−(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−5−メトキシ−ベンズアミド
【0217】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(0.5ml)中、N−エトキシ−3−(8−エチル−2−メタンスルホニル−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)−5−メトキシ−ベンズアミド(27mg、0.06mol)、モルホリン−4−イル−フェニルアミン(44mg、0.24mol)の混合物を、100℃で24時間加熱する。粗生成物をRP−HPLCにより精製して、N−エトキシ−3−[8−エチル−2−(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−5−メトキシ−ベンズアミドを遊離塩基として得る;1H NMR 400 MHz (DMSO−d6) δ 11.69 (s, 1H), 9.98 (s, 1H), 8.80(s, 1H), 8.08(s, 1H), 7.69 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.64(s, 1H), 7.45(s, 1H), 7.28(s, 1H), 6.96 (d, 2H, J=8.8 Hz), 4.40(q, 2H, J=6.8 Hz), 3.96 (q, 2H, J=6.8 Hz), 3.84 (s, 3H), 3.75 (m, 4H), 3.08 (m, 4H), 1.30(t, 3H, J=6.8 Hz), 1.24 (t, 3H, J=6.8 Hz); MS m/z 545.2 (M+1)。
【0218】
実施例5 3−(7−シクロプロピルアミノ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドの合成
3−(7−シクロプロピルアミノ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドを、5−ヒドロキシメチル−1H−ピリミジン−2,4−ジオンを出発物質として用いて製造することができる。スキーム5は、中間体化合物を製造するための種々の工程を説明する。
【化37】


3−(7−シクロプロピルアミノ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ
−5−メトキシ−ベンズアミド
【0219】
【化38】

【0220】
実施例5a:2,4−ジクロロ−5−クロロメチル−ピリミジンの製造
【化39】


2,4−ジクロロ−5−クロロメチル−ピリミジン
【0221】
5−ヒドロキシメチル−1H−ピリミジン−2,4−ジオン(20g、140.7mmol)を含むフラスコに、オキシ塩化リン(65.9ml、282.7mmol)およびトルエン(40ml)を添加する。混合物を氷水浴で冷却し、次いでN,N−ジイソプロピルエチルアミン(73.9ml、424.1mmol)を5分かけてゆっくり添加する。添加の完了後、冷却浴を取り除き、混合物を115℃で1時間加熱し、次いで125℃で5時間加熱する。TLC分析が反応の完了を示す。反応液を室温まで冷却後、混合物を、氷水浴を用いて、水(120ml)および酢酸エチル(90ml)の撹拌した二層混合物中に注意深く添加する。混合物を氷水浴で60分間撹拌後、混合物をトルエンで抽出する(4×60ml)。合わせた有機層を乾燥させ、ろ過し、次いで濃縮して、減圧下で乾燥させる。短いシリカゲルカラムを用いてさらに精製後、2,4−ジクロロ−5−クロロメチル−ピリミジンを白色固体として得る(23.06g、83%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 8.67 (s, 1H), 4.65 (s, 2H)。
【0222】
実施例5b:2,4−ジクロロ−5−ヨードメチル−ピリミジンの製造
【化40】


2,4−ジクロロ−5−ヨードメチル−ピリミジン
【0223】
アセトン(60ml)中、2,4−ジクロロ−5−クロロメチル−ピリミジン(10g、50.6mmol)、ヨウ化ナトリウム(7.69g、51.3mmol)の混合物を、室温で20分間撹拌し、次いで15分間還流する。反応液を室温まで冷却し、次いで固体を濾過して、アセトンで洗浄する。濾液を濃縮して、2,4−ジクロロ−5−ヨードメチル−ピリミジンを淡黄色固体として得る(14.6g、100%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 8.54 (s, 1H), 4.33 (s, 2H); MS m/z 288.9 (M+1)。
【0224】
実施例5c:N−エトキシ−3−メトキシ−5−ニトロ−ベンズアミドの製造
【化41】


N−エトキシ−3−メトキシ−5−ニトロ−ベンズアミド
【0225】
乾燥ジクロロメタン(70ml)中、3−メトキシ−5−ニトロ−安息香酸(2.957g、15mmol)の懸濁液に、塩化オキサリル(2.62ml、30mmol)を添加し、次いで1滴のDMFを添加する。混合物を室温で2時間撹拌し、透明溶液を得る。溶媒を除去する。残渣をジクロロメタン(70ml)中に溶解し、塩酸O−エチルヒドロキシルアミン(1.56g、16mmol)を添加する。混合物を氷水浴で冷却し、トリエチルアミン(6.27ml、45mmol)を添加する。反応混合物を室温まで温め、1時間以内に透明反応液を得る。反応液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチする。有機層を分離させ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによりEA/ヘキサン(50:50)を用いて精製して、白色固体を得る(3.42g、95%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 8.94 (br, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.85 (t, 1H, J=2.2 Hz), 7.67 (m, 1H), 4.13 (q, 2H, J=7.0 Hz), 3.93 (s, 3H), 1.35 (t, 3H, J=7.0 Hz); MS m/z 241.2 (M+1)。
【0226】
実施例5d:3−アミノ−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化42】


3−アミノ−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド
【0227】
メタノール(40ml)中、N−エトキシ−3−メトキシ−5−ニトロ−ベンズアミド(3.12g、13mmol)の溶液に、Pd/C(100mg)を添加する。この混合物を水素バルーンで満たす。反応の進行をTLCにより慎重にモニターする。反応の完了後、Pd/Cを濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、3−アミノ−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドを無色油状物として得る(2.46g、90%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 8.53 (br, 1H), 7.19 (s, 1H), 6.54 (m, 2H), 6.27 (m, 1H), 4.00 (q, 2H, J=7.0 Hz), 3.71 (s, 3H), 3.41 (s, 1H), 1.25 (t, 3H, J=7.0 Hz); MS m/z 211.2 (M+1)。
【0228】
実施例5e:3−[(2,4−ジクロロ−ピリミジン−5−イルメチル)−アミノ]−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化43】


3−[(2,4−ジクロロ−ピリミジン−5−イルメチル)−アミノ]−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド
【0229】
3−アミノ−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド(2.31g、11mmol)を、トルエン(35ml)およびアセトニトリル(5ml)を含むフラスコ中に添加し、次いで、水酸化ナトリウム(水1.6ml中440mg、11mmol)を添加する。次いで、トルエン(5ml)およびアセトニトリル(5ml)中、2,4−ジクロロ−5−ヨードメチル−ピリミジン(2.89g、10mmol)の溶液を、ゆっくり添加する。添加の完了後、反応混合物を室温で30分間撹拌する。減圧下で全ての溶媒を除去後、残渣を酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウム水溶液中に溶解する。有機層を分離させ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによりEA/ヘキサン(60:40)を用いて精製して、白色固体として得る(2.2g、59%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 8.90 (br, 1H), 8.60 (s, 1H), 6.77 (s, 1H), 6.71 (s, 1H), 6.33 (s, 1H), 4.48 (s, 2H), 4.07 (q, 2H, J=7.0 Hz), 3.77 (s, 3H), 1.30 (t, 3H, J=7.0 Hz); MS m/z 371.2 (M+1)。
【0230】
実施例5f:3−[(2−クロロ−4−エチルアミノ−ピリミジン−5−イルメチル)−アミノ]−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化44】


3−[(2−クロロ−4−エチルアミノ−ピリミジン−5−イルメチル)−アミノ]−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド
【0231】
THF(15ml)中、3−[(2,4−ジクロロ−ピリミジン−5−イルメチル)−アミノ]−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド(1.78g、4.8mmol)の溶液を、氷水浴で冷却し、次いでエチルアミン(水中70%1ml、18mmol)を添加する。反応混合物を0℃で1時間放置する。溶媒を減圧下で除去後、残渣を酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウム水溶液中に溶解する。有機層を分離させ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによりEA/ヘキサン(70:30)を用いて精製して、白色形態を得る(1.5g、82%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 9.59 (br, 1H), 7.78 (s, 1H), 6.70 (s, 1H), 6.66 (s, 1H), 6.38 (br, 1H), 6.30 (s, 1H), 4.07−4.03 (m, 4H), 3.75 (s, 3H), 3.51 (m, 2H), 1.28 (t, 3H, J=7.0 Hz), 1.21 (t, 3H, J=7.0 Hz); MS m/z 380.2 (M+1)。
【0232】
実施例5g:3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化45】


3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド
【0233】
THF(14ml)中、3−[(2−クロロ−4−エチルアミノ−ピリミジン−5−イルメチル)−アミノ]−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド(531mg、1.4mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.22ml、7mmol)の溶液を、氷水浴で冷却し、次いでクロロギ酸フェニル(0.2ml、1.6mmol)を添加する。反応液を室温まで1時間温める。次いで、NaHMDS(THF中1Mを2ml、2mmol)をゆっくり添加する。反応混合物を一晩撹拌する。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄する。有機層を分離させ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより酢酸エチルを用いて精製し、白色形態として得る(300mg、74%);MS m/z 406.2(M+1)。
【0234】
実施例5h:3−(7−シクロプロピルアミノ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドの製造
【化46】


3−(7−シクロプロピルアミノ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ
−5−メトキシ−ベンズアミド
【0235】
シクロプロピルアミン(0.2ml)中、3−(7−クロロ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミド(20.3mg、0.05mmol)の混合物を、70℃で加熱する。反応を5時間で完了する。最終化合物をLCMSにより精製して、3−(7−シクロプロピルアミノ−1−エチル−2−オキソ−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−N−エトキシ−5−メトキシ−ベンズアミドのTFA塩を白色形態として得る(21.6mg、80%);1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 11.51 (br, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.16 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.96 (m, 1H), 4.53 (s, 2H), 3.81 (q, 2H, J=7.0 Hz), 3.80 (br, 1H), 3.74 (q, 2H, J=7.0 Hz), 2.50 (m, 1H), 1.02 (t, 3H, J=7.0 Hz), 0.61 (m, 2H), 0.41 (m, 2H); MS m/z 427.2 (M+1)。
【0236】
実施例6 化合物類の製造
適当な出発物質を用いて、上記の実施例に記載の方法を繰り返して、下記の式(I)、(II)または(III)の化合物を得る(表1を参照)。
【表3】

【0237】
【表4】


【表5】

【0238】
【表6】


【表7】

【0239】
当業者には明らかであり得るが、式(I)、(II)または(III)に対応するX=CおよびX=Nを有する化合物は、本明細書に記載の通りに、異なる出発物質を用いて合成できる。
【0240】
実施例7−アッセイ
式(I)、(II)または(III)の化合物は、親32D細胞と比較して、BCR−Abl(32D p210)を発現する32D細胞の細胞増殖を選択的に阻害するそれらの能力を測定するためにアッセイされる。これらのBCR−Abl形質転換細胞の増殖を選択的に阻害する化合物は、野生型またはBcr abl変異体の何れかを発現するBa/F3細胞における抗増殖活性について試験される。加えて、化合物は、Abl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70キナーゼを阻害するそれらの能力を測定するためにアッセイされる。
【0241】
実施例8−BCR−Abl依存性細胞増殖の阻害(ハイスループット法)
用いたマウス細胞株は、BCR−Abl cDNA(32D−p210)で形質転換した32D造血前駆細胞株である。これらの細胞を、ペニシリン50μg/ml、ストレプトマイシン50μg/mlおよびL−グルタミン200mMを添加したRPMI/10%ウシ胎仔血清(RPMI/FCS)中で維持する。非形質転換32D細胞を、IL3源として15%のWEHIを添加した馴らし培地で同様に維持する。
【0242】
50μlの32Dまたは32D−p210細胞懸濁液を、Greiner 384ウェル・マイクロプレート(黒色)に、1ウェル当たり5000細胞の密度で播種する。50nlの試験化合物(DMSO保存溶液中1mM)を各ウェルに添加する(STI571は、陽性対照として包含される。)。細胞を、72時間、37℃、5%COでインキュベートする。10μlの60%アラマーブルー(商標)溶液(Trek Diagnostics Systems, Inc., Westlake, Ohio)を各ウェルに添加し、細胞をさらに24時間インキュベートする。蛍光強度(530nm励起、580nm放射)を、Acquest(商標)システム(Molecular Devices Corp. Sunnyvale, CA)を用いて定量する。
【0243】
実施例9−BCR−Abl依存性細胞増殖の阻害
32D−p210細胞を96ウェルTCプレートに1ウェル当り15000細胞の密度で播種する。試験化合物(Cmaxは40μM)の2倍連続希釈液の50μLを各ウェルに添加する(STI571は、陽性対照として包含される。)。細胞を37℃、5%CO中、48時間インキュベーション後、MTT(Promega, Madison WI)15μLを各ウェルに添加し、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmでの吸光度を分光学的に定量し、IC50値、50%阻害に必要な化合物濃度を用量応答曲線から決定する。
【0244】
実施例10−細胞周期分布に対する効果
32Dおよび32D−p210細胞を6ウェルTCプレートに1ウェル当り2.5×10細胞で播種し、培地5mLおよび試験化合物1または10μMを添加(STI571は、陽性対照として包含される。)。次に細胞を37℃、5%CO中、24時間または48時間インキュベートする。細胞懸濁液2mLをPBSで洗浄し、70%EtOHで1時間固定し、PBS/EDTA/RNaseAで30分間処理する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/mL)を添加し、蛍光強度をFACScalibur(商標)システム(BD Biosciences, Rockville, MD)上のフローサイトメトリーによって定量する。式(I)、(II)または(III)の化合物は、32D p210細胞にはアポトーシス効果を示すが、32D親細胞にはアポトーシスを誘導しない。
【0245】
実施例11−細胞性BCR−Abl自己リン酸化に対する効果
BCR−Abl自己リン酸化を、c−abl特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン抗体を用いてキャプチャーElisaで定量する。32D−p210細胞を96ウェルTCプレートに、培地50μL中、1ウェル当り2×10細胞で播種する。試験化合物(Cmaxは10μM)の2倍連続希釈液50μLを各ウェルに添加する(STI571は、陽性対照として包含される。)。細胞を37℃、5%CO中、90分間インキュベートする。次に細胞を、1時間氷上でプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む溶解緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM EGTAおよび1%NP−40)150μLで処理する。細胞溶解液50μLを96ウェルの予め抗abl特異的抗体でコーティングしたオプティプレートに添加し、ブロックする。該プレートを4℃で4時間インキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、アルカリホスファターゼ結合抗ホスホチロシン抗体50μLを添加し、プレートをさらに一晩4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、発光基質90μLを添加し、Acquest(商標)システム(Molecular Devices Corp.)を用いて、発光を定量する。BCR−Abl発現細胞の増殖を阻害する式(I)、(II)または(III)の化合物は、細胞性BCR−Abl自己リン酸化を用量依存的に阻害する。
【0246】
実施例12−Bcr−ablの変異型を発現する細胞の増殖に対する効果
式(I)、(II)または(III)の化合物を、野生型またはSTI571に対する耐性を与えるか、または感受性を減少させたBCR−Ablの変異体(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)の何れかを発現するBa/F3細胞に対する抗増殖効果について試験する。これらの化合物の変異BCR−Abl発現細胞および非形質転換細胞に対する抗増殖効果を、上記の通り(IL3欠失培地中)10、3.3、1.1および0.37μMで試験した。非形質転換細胞に対する毒性を欠失する化合物のIC50値は、上記の通りに得た用量応答曲線から決定する。
【0247】
実施例13−b−Raf
式(I)、(II)または(III)の化合物を、b−Rafの活性を阻害するその能力について試験する。このアッセイは、黒色壁で透明底の384−ウェルMaxiSorp(商標)プレート(NUNC, Rochester, NY)で行う。基質IκBαをDPBSで希釈し(1:750)、各ウェルに15μL添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、TBST(25mM トリス、pH8.0、150mM NaClおよび0.05%Tween20)でEMBLAプレート洗浄機(Molecular Devices)を用いて3回洗浄する。プレートをSuperblockブロッキング緩衝液(Pierce Biotechnology, Inc. Rockford IL;15μL/ウェル)によって室温で3時間ブロッキングし、TBSTで3回洗浄し、軽く水気をとり乾燥させる(pat-dried)。20mM ATP(10μL)含有アッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、次いで化合物100nLまたは500nLを各ウェルに添加する。B−Rafをアッセイ緩衝液(25μL当たり1μL)で希釈し、希b−Raf10μLを各ウェルに添加する(0.4μg/ウェル)。プレートを室温で2.5時間インキユベートする。キナーゼ反応は、プレートを6回TBSTで洗浄して停止させる。ホスホ−IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblockで希釈(1:10000)し、15μLを各ウェルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP結合ヤギ抗マウスIgGをSuperblockで希釈(1:1500)し、15μLを各ウェルに添加する。プレートを室温で1時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。Attophos AP基質15μLを各ウェルに添加し、プレートを室温で15分間インキュベートする。プレートはAcquest(商標)またはAnalyst GT(商標)(Molecular Devices Corp.)で蛍光強度Nanxin BBTアニオン(505ダイクロイックミラー)を用いて読みとられる。
【0248】
実施例14−FGFR3(酵素アッセイ)
精製FGFR3(Upstate)を用いるキナーゼ活性アッセイは、キナーゼ緩衝液(30mMトリス−HCl、pH7.5、15mM MgCl、4.5mM MnCl、15μM NaVOおよび50μg/mL BSA)中0.25μg/mL酵素、ならびに基質(ビオチン−ポリ−EY(Glu、Tyr)5μg/mL(CIS−US, Inc.)および3μM−ATP)を含む最終容量10μL中で行われる。2つの溶液を調製する:キナーゼ緩衝液中にFGFR3酵素を含む第一溶液5μLは、まず384型ProxiPlate(登録商標) (Perkin−Elmer)に分注し、次いでDMSOに溶解した化合物50nLを添加する;次にキナーゼ緩衝液中に基質(ポリ−EY)およびATPを含む第二溶液5μLを各ウェルに添加する。反応液を室温で1時間インキュベートし、30mMトリス−HCl、pH7.5、0.5M KF、50mM ETDA、0.2mg/mL BSA、15μg/mLストレプトアビジン−XL665(CIS−US, Inc.)および150ng/mLクリプテート結合抗ホスホチロシン抗体(CIS−US, Inc.)を含むHTRF検出混合液10μLを添加して反応を停止させる。ストレプトアビジン−ビオチン相互作用をさせるために1時間室温でインキュベート後、時間分解蛍光シグナルをAnalyst GT(商標) (Molecular Devices Corp.)で読み取る。IC50値は、12種の濃度(1:3希釈で50μM〜0.28nM)の各化合物の阻害パーセントの線形回帰分析によって計算する。
【0249】
実施例15−FGFR3(細胞アッセイ)
式(I)、(II)または(III)の化合物を、FGFR3細胞キナーゼ活性に依存する形質転換Ba/F3−TEL−FGFR3細胞増殖を阻害するその能力について試験する。Ba/F3−TEL−FGFR3は、10%ウシ胎仔血清添加RPMI1640を培養培地として用いる懸濁液で800,000細胞/mLまで培養する。細胞を培養培地50μL中5000細胞/ウェルで384−ウェルのフォーマットプレートに分注する。式(I)、(II)または(III)の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、希釈する。DMSOで12種の1:3倍連続希釈を行い、典型的には10mM〜0.05μMの範囲の濃度勾配を作製する。細胞を希釈化合物50nLと共に添加し、細胞培養用インキュベータ中で48時間培養する。増殖中の細胞により生じる還元雰囲気をモニターするために使用できるアラアーブルー(商標)(TREK Diagnostic Systems Inc.)を最終濃度10%で細胞に添加する。さらに4時間37℃細胞培養インキュベータでインキュベート後、還元アラアーブルー(商標)(530nm励起、580nm放射)からの蛍光シグナルをAnalyst GT(商標) (Molecular Devices Corp.)で定量する。IC50値は、12種の濃度における各化合物の阻害パーセントの線形回帰分析によって計算する。
【0250】
実施例16−FLT3(細胞アッセイ)およびその他
FLT3の細胞活性に対する式(I)、(II)または(III)の化合物の効果を、Ba/F3−TEL−FGFR3の代わりにBa/F3−FLT3−ITDを用いること以外、FGFR3細胞活性について上記の方法と同じ方法を用いて行う。同様に、Ba/F3−TEL−ALK、Ba/F3−TEL−BMX、Ba/F3−TEL−EphB、Ba/F3−TEL−JAK2、Ba/F3−TEL−InsR、Ba/F3−TEL−LckB、Ba/F3−TEL−KitQ、Ba/F3−TEL−FGFR1、Ba/F3−TEL−SRC、またはBa/F3−TEL−PDGRを含むが、これらに限定されない他の細胞株を、細胞アッセイに用いることができる。
【0251】
実施例17−Upstate Kinase Profile(商標)−放射酵素フィルター結合アッセイ
式(I)、(II)または(III)の化合物を、キナーゼ集団(キナーゼの一部の非限定的リストには、Abl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70が包含される。)の個々のメンバーを阻害するその能力について評価する。該化合物をこの一般的プロトコールに従い最終濃度10μMでデュプリケートで試験する。キナーゼ緩衝液の組成および基質はUpstate Kinase Profile(商標) (Upstate Group LLC, Charlottesville, VA)集団に含まれる異なるキナーゼによって変化することに注意すべきである。キナーゼ緩衝液(2.5μL、10×、要するとき、MnCl含有)、活性キナーゼ(0.001−0.01単位;2.5μL)、キナーゼ緩衝液中特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5−500μMまたは0.01mg/mL)、およびキナーゼ緩衝液(50mM;5μL)をエッペンドルフ中、氷上で混合する。Mg/ATP混合物(10μL;67.5(または33.75)mM MgCl、450(または225)mM ATPおよび1μCi/μL[γ−32P] ATP(3000Ci/mmol))を添加し、反応液を約30℃で約10分間インキュベートする。反応混合物をP81(ホスホセルロース、正荷電ペプチド基質用)またはWhatman 1番(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質用)の四角ペーパー2cm×2cmにスポット(20μL)する。アッセイ用紙を0.75%リン酸で4回各5分間洗浄し、アセトンで1回5分間洗浄する。アッセイ用紙をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカクテル5mLを添加し、ペプチド基質への32P導入(cpm)をBeckmanシンチレーションカウンターで定量する。各反応について阻害割合を計算する。
【0252】
遊離形または薬学的に許容される誘導体形態の式(I)、(II)または(III)の化合物は、例えば本明細書に記載するインビトロ試験により示される通り、価値ある薬理学的特性を示し得る。例えば式(I)、(II)または(III)の化合物は、好ましくは、野生型BCR−AblならびにG250E、E255V、T315I、F317LおよびM351T BCR−Abl変異体に対して、1×10−10〜1×10−5Mの範囲、好ましくは50nM未満のIC50を示す。式(I)、(II)または(III)の化合物は10mM濃度で、好ましくは、Abl、BCR−Abl、Bmx、c−Raf、Csk、Fes、FGFR、Flt3、Ikk、IR、JNK、Lck、Mkk、PKC、PKD、Rsk、SAPK、Syk、Trk、BTK、Src、EGFR、IGF、Mek、RosおよびTie2キナーゼに対して、50%以上、好ましくは約70%以上の阻害割合を示す。
【0253】
本明細書に記載の実施例および態様は例示の目的のみのものであり、それらに照らして様々な修飾または変形が当業者に示唆され得、これが本出願および添付の特許請求の範囲内に包含されることが理解される。本明細書に引用する文献、特許および特許出願は全て、全ての目的に関して引用により本明細書中に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


[式中、
、R、R、およびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、−R’、−OR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−S(O)0−2R’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、−NHCOR’、脂肪族アミン、芳香族アミン、−R”’OR’、−R”’C(O)OR’、または−R”’C(O)NR’R”であり;
ここで、R’は、H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンであり;
ここで、R’、R”’またはR’とR”の組合せの何れかのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、所望によりヒドロキシで置換されたC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、ハロ−置換−C1−6アルキル、およびハロ−置換−C1−6アルコキシから独立して選択される1ないし3個のラジカルにより置換されていてよく;
およびXは、
それぞれ独立して、CまたはNであり;
Aは、
所望により、かつ存在するとき、−H、−OH、アミノ、−NR、ハロゲンまたは所望により置換されていてよいC1−8アルキル(ここで、Rは、−H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;Rは、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはRおよびRは窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成する。)であり;
は、
S、OまたはNR(ここで、Rは、−H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、C3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキル、およびアシルからなる群から選択される。)であり;
、R、R、RおよびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、−OCO−C1−8アルキル、−COR、−COOR、−CONR、−N(R)COR、または−C1−6アルキル−NR(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC1−8アルコキシ、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、所望により置換されていてよいC3−10シクロアルキル、または所望により置換されていてよいC3−10シクロアルコキシである。)である。
ただし、R、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、C1−8アルコキシであり、かつR、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、−CONRである。]
で示される構造を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項2】
がOまたはSである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
=X=Nである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
がNであり、XがCである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
=X=Cである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Aが、−H、−OH、アミノ、または所望により置換されていてよいC1−8アルキルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
が、−H、−OH、アミノ、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、または−NHCOR’(ここで、R’は、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンである。)である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
が、
【化2】


からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
が、−R’または−OR’(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
が、−H、−OH、C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
が、−HまたはC1−6アルキルである、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
が、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
が−Hである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
が、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
が−Hである、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
、R、R、R、およびRのうち1つが、C1−8アルコキシであり、R、R、R、R、およびRのうち1つが、−CONR(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、−H、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、C2−8アルケニル、C3−10シクロアルキル、またはC3−10シクロアルコキシである。)である、請求項1記載の化合物。
【請求項21】
、R、R、R、およびRのうち1つが、
【化3】


からなる群から選択される、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
式(II):
【化4】


[式中、
およびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、−R’、−OR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−S(O)0−2R’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、−NHCOR’、脂肪族アミン、芳香族アミン、−R”’OR’、−R”’C(O)OR’、またはR”’C(O)NR’R”であり、
ここで、R’は、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレン、またはアリーレンであり;
ここで、R’、R”’またはR’とR”の組合せの何れかのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、所望によりヒドロキシで置換されていてよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、ハロ−置換−C1−6アルキル、およびハロ−置換−C1−6アルコキシから独立して選択される1ないし3個のラジカルにより置換されていてよく;
およびXは、
それぞれ独立して、CまたはNであり;
Aは、
所望により、かつ存在するとき、−H、−OH、アミノ、−NR、ハロゲン、または所望により置換されていてよいC1−8アルキル(ここで、Rは、H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;Rは、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはRおよびRは、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成する。)であり;
およびYは、
それぞれ独立して、S、O、またはNR(ここで、Rは、−H、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C3−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、C3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキル、およびアシルから選択される。)であり;
およびZは、
それぞれ独立して、SまたはOであり;
、R、およびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、アミノ、ハロゲン、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、−OCO−C1−8アルキル、−COR、−COOR、−CONR、−N(R)COR、または−C1−6アルキル−NR(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、または所望により置換されていてよいC3−10シクロアルキルである。)であり;
、RおよびRは、
それぞれ独立して、−H、−OH、または所望により置換されていてよいC1−8アルキルである。]
で示される構造を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項23】
がOである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
がOである、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
がOまたはSである、請求項22記載の化合物。
【請求項26】
がOまたはSである、請求項22記載の化合物。
【請求項27】
=X=Nである、請求項22記載の化合物。
【請求項28】
がNであり、XがCである、請求項22記載の化合物。
【請求項29】
=X=Cである、請求項22記載の化合物。
【請求項30】
Aが、−H、−OH、アミノ、または所望により置換されていてよいC1−8アルキルである、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
が、−H、−OH、アミノ、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、または−NHCOR’(ここで、R’は、−H、所望により置換されていてよいC1−8アルキル、所望により置換されていてよいC2−8アルケニル、C5−12アリール−C0−6アルキル、C5−12ヘテロアリール−C0−6アルキル、C3−12シクロアルキル−C0−6アルキル、およびC3−12ヘテロシクロアルキル−C0−6アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンである。)である、請求項22記載の化合物。
【請求項32】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
が、
【化5】


からなる群から選択される、請求項22記載の化合物。
【請求項34】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルからなる群から選択される。)である、請求項22記載の化合物。
【請求項35】
が、−R’または−OR’(ここで、R’は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択される。)である、請求項34記載の化合物。
【請求項36】
が、−H、−OH、C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシである、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
が、−HまたはC1−6アルキルである、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
が、−H、−OH、ハロゲン、C1−8アルキル、またはC1−8アルコキシである、請求項22記載の化合物。
【請求項39】
が−Hである、請求項38記載の化合物。
【請求項40】
が、−H、−OH、ハロゲン、C1−8アルキル、またはC1−8アルコキシである、請求項22記載の化合物。
【請求項41】
が−Hである、請求項40記載の化合物。
【請求項42】
が、−HまたはC1−8アルキルである、請求項22記載の化合物。
【請求項43】
が、−HまたはC1−8アルキルである、請求項22記載の化合物。
【請求項44】
が、−H、−OH、ハロゲン、C1−8アルキルまたはC1−8アルコキシである、請求項22記載の化合物。
【請求項45】
が−Hである、請求項44記載の化合物。
【請求項46】
が、−HまたはC1−8アルキルである、請求項22記載の化合物。
【請求項47】
式(III):
【化6】


[式中、
が、
−H、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミンであり、
ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンであり;
ここで、R’、R”’、またはR’とR”の組合せの何れかのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、所望によりヒドロキシで置換されていてよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、ハロ−置換−C1−6アルキル、およびハロ−置換−C1−6アルコキシから独立して選択される1ないし3個のラジカルにより置換されていてよく;
は、
−H、−OH、ハロゲン、所望により置換されていてよいC1−6アルキル、または所望により置換されていてよいC1−6アルコキシであり;
およびXは、
それぞれ独立して、CまたはNであり;
およびRは、
それぞれ独立して、−H、−CH、ハロゲンまたはアルコキシルであり;
は、
−Hまたは所望により置換されていてよいC1−6アルキルである。]
に対応する、請求項22記載の化合物、およびその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項48】
=X=Nである、請求項47記載の化合物。
【請求項49】
がNであり、XがCである、請求項47記載の化合物。
【請求項50】
がCHであり、X=Cである、請求項47記載の化合物。
【請求項51】
が、−H、−R’、−OR’、−NR’R”、−NR”’NR’R”、または−NHCOR’(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択され;R”は、−HまたはC1−8アルキルであるか、またはR’およびR”は、窒素原子と一体となって、C3−10ヘテロシクロアルキルもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;R”’は、結合、C1−6アルキレンまたはアリーレンである。)である、請求項47記載の化合物。
【請求項52】
が、−H、−R’、−OR’、−NHCOR’、脂肪族アミン、または芳香族アミン(ここで、R’は、−H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C7−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−10シクロアルキル−C0−4アルキル、およびC3−10ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択される。)である、請求項47記載の化合物。
【請求項53】
が、
【化7】


からなる群から選択される、請求項47記載の化合物。
【請求項54】
が−HまたはC1−6アルキルである、請求項47記載の化合物。
【請求項55】
が−Hまたは−CHである、請求項47記載の化合物。
【請求項56】
が−Hまたは−CHである、請求項47記載の化合物。
【請求項57】
が−HまたはC1−6アルキルである、請求項47記載の化合物。
【請求項58】
下記の化合物
【化8】


【化9】


からなる群から選択される、請求項47記載の化合物。
【請求項59】
治療的有効量の式(I)、(II)または(III)の少なくとも1種の化合物、それらの各N−オキシドまたは他の薬学的に許容される誘導体、またはその個々の異性体および異性体の混合物を、少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤と混合して含む、医薬組成物。
【請求項60】
キナーゼ活性の阻害が、疾患の病状および/または症状を阻止、阻害、または改善し得る、動物における疾患の処置方法であって、治療的有効量の式(I)、(II)または(III)の少なくとも1種の化合物、それらの各N−オキシドまたは他の薬学的に許容される誘導体、またはその個々の異性体および異性体の混合物を該動物に投与することを含む、方法。
【請求項61】
該キナーゼが、Abl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70からなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項62】
該キナーゼが、Abl、BCR−Abl、Bmx、c−Raf、Csk、Fes、FGFR、Flt3、Ikk、IR、JNK、Lck、Mkk、PKC、PKD、Rsk、SAPK、Syk、Trk、BTK、Src、EGFR、IGF、Mek、RosおよびTie2からなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項63】
キナーゼ活性が疾患の病状および/または症状の原因となる動物における疾患の処置のための医薬の製造における、式(I)、(II)、または(III)の化合物の使用。
【請求項64】
該キナーゼが、Abl、ALK、AMPK、オーロラ、Axl、Bcr−Abl、BIK、Bmx、BRK、BTK、c−Kit、CSK、cSrc、CDK1、CHK2、CK1、CK2、CaMKII、CaMKIV、DYRK2、EGFR、EphB1、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、Flt1、Flt3、FMS、Fyn、GSK3β、IGF−1R、IKKα、IKKβ、IR、IRAK4、ITK、JAK2、JAK3、JNK1α1、JNK2α、KDR、Lck、LYN、MAPK1、MAPKAP−K2、MEK1、MET、MKK4、MKK6、MST2、NEK2、NLK、p70S6K、PAK2、PDGFR、PDGFRα、PDK1、Pim−2、Plk3、PKA、PKBα、PKCα、PKCθ、PKD2、c−Raf、RET、ROCK−I、ROCK−II、Ron、Ros、Rsk1、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK、SIK、Syk、Tie2、TrkB、WNK3、およびZAP−70からなる群から選択される、請求項61記載の使用。
【請求項65】
該キナーゼが、Abl、BCR−Abl、Bmx、c−Raf、Csk、Fes、FGFR、Flt3、Ikk、IR、JNK、Lck、Mkk、PKC、PKD、Rsk、SAPK、Syk、Trk、BTK、Src、EGFR、IGF、Mek、Rosおよび/またはTie2からなる群から選択される、請求項61記載の使用。
【請求項66】
該疾患が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病、純化した骨髄細胞の再移植、アテローム性動脈硬化症、血栓症、神経膠腫、肉腫、前立腺癌、結腸癌、乳癌、および卵巣癌、小細胞肺癌、乾癬、強皮症、線維症、化学療法剤処置後の幹細胞の保護、喘息、同種移植、組織拒絶反応、閉塞性細気管支炎(OB)、再狭窄、ウィルムス腫瘍、神経芽腫、乳腺上皮癌細胞、致死性異形成症、成長停止、骨の発達異常、骨髄腫型癌、高血圧、糖尿病性網膜症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性血管新生、リウマチ性関節炎、小児血管腫、リウマチ性関節炎、他の自己免疫性疾患、トロンビン誘導性血小板凝集、免疫不全疾患、アレルギー、骨粗鬆症、骨関節症、神経変性疾患、肝臓虚血、心筋梗塞、鬱血性心不全、他の心臓疾患、HTLV−1仲介腫瘍形成、過形成、肺線維症、血管形成、狭窄、エンドトキシンショック、糸球体腎炎、遺伝性毒性損傷(genotoxic insult)、慢性炎症、ならびに他の炎症性疾患からなる群から選択される、請求項61記載の使用。
【請求項67】
式(I)、(II)または(III)の化合物、それらの各N−オキシドまたはプロドラッグ誘導体のような他の薬学的に許容される誘導体、またはその個々の異性体および異性体の混合物の製造方法。
【請求項68】
およびRが、それぞれ独立して、−Hまたはハロゲンである、請求項1記載の化合物。
【請求項69】
およびRが、それぞれ独立して、−Hまたはハロゲンである、請求項22記載の化合物。
【請求項70】
およびRが、それぞれ独立して、−Hまたはハロゲンである、請求項47記載の化合物。

【公表番号】特表2009−537520(P2009−537520A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510944(P2009−510944)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/008699
【国際公開番号】WO2007/136465
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】