説明

FGF18の投与方法

【課題】軟骨形成ポリペプチドの関節内供給のための新規な組成物の提供。
【解決手段】線維芽細胞成長因子18(FGF18)及びヒアルロン酸を含んで成る医薬的に許容できる混合物を含んで成る、軟骨形成ポリペプチドの関節内供給のための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞成長因子18(FGF18)及び負に荷電されたキャリヤーを含んで成る医薬的に許容できる混合物を含んで成る、軟骨形成ポリペプチドの関節内供給のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーは、一般的に広範囲の細胞型のためのマイトジェンとして作用する、少なくとも23種の明確なメンバーからなる(Basilico など. , Adv. Cancer Res. 59: 115-165,1992 及び Fernig など., Prog. Growth Factor Res. 5 (4) : 353-377,1994)。FGF18は、FGF8及びFGF17に最も密接して関連するFGFファミリーのメンバーとして同定された。FGF18に関連する活性は、間葉系細胞、特に心筋細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞の刺激を包含した(アメリカ特許第6,352,971号)。FGF18は、FGFR4、及びFGFR3及びFGFR2の“III c”スプライス変異体を結合し、そして活性化する。FGFR3は骨成長において役割を演じる。
【0003】
FGFR3(-1-)のためのマウス製造されたホモ接合ヌル細胞は、生後の骨格異常をもたらした(Colvin など. , Nature Genet. 12: 309-397,1996 及び Deng など., Cell 84: 911-921,1996)。変異体表現型は、正常なマウスにおいて、FGFR-3が骨の成長プレート領域における軟骨細胞の調節において役割を演じることを示唆する(Goldfarb, Cytokine and Growth Factor Rev. 7 (4) : 311-325,1996)。FGF受容体突然変異はまた、ヒト軟骨形成不全及び頭蓋骨癒合症候群においても見出されている(Ornitz and Marie, Genes and Development 16: 1446-1465,2002)。
【0004】
骨再造形は、組織質量及び骨格構造が維持される力学的過程である。この過程は、骨吸収と骨形成との間のバランスであり、ここでそれらの2種の細胞が主要プレーヤーであると思われる。それらの細胞は、骨芽細胞及び破骨細胞である。骨芽細胞が基質を合成し、そして沈着し、新しい骨になる。骨芽細胞及び破骨細胞の活性は、多くの因子(全身性及び局部)、例えば成長因子により調節される。
【0005】
骨吸収が骨形成を超える場合、骨の正味の損失がもたらされ、そして骨折傾向が高められる。低められた骨形成は、年齢及び一定の病理学的状態に関連している。アメリカ合衆国のみにおいて、オステオポローシスに寄与する約1.5百万件の骨折が毎年、存在する。患者の生命の特性に対するそれらの骨折の影響は莫大である。アメリカ合衆国におけるヘルスケアーシステムへの関連する費用は、毎年、50〜100億ドルであると推定される(長期ケアーの費用は除く)。
【0006】
骨再造形に影響を及ぼす成長因子についての他の治療用途は、例えば骨折を治療するために骨芽細胞の増殖、及び骨折修復の観点として示されている、間葉細胞増殖の刺激及び膜内骨の合成を必要とする損傷の処理を包含する(Joyce など. 36th Annual Meeting, Orthopaedic Research Society, February 5-8,1990. New Orleans, LA)。
【0007】
外傷又は疾病のいずれかにより引き起こされる損傷された関節軟骨の置換は、外科医にとっての主要挑戦であり、そして利用できる処理は、予測できず、そして制限された時間のみの間、効果的であると思われる。軟骨損傷のための実質的にすべての現在利用できる処理は、苦痛の緩和に集中し、損傷された組織の再生についてはほとんどか又はまったく強調されていない。従って、若い患者の大部分は、処理を要求しないか、又はできるだけ長い間、処理を遅延するよう助言されている。処理が必要とされる場合、標準の方法は、全体的な関節の置換、又は小骨折、すなわち軟骨細胞による繊維軟骨沈着を刺激するために肋軟骨下骨の侵入を包含する方法である。
【0008】
繊維軟骨の沈着は関節軟骨の機能的同等物ではないが、それは、関節軟骨の置換においてほとんど好結果をもたらさなかったので、現在、最良の利用できる処理である。研究されている関節軟骨の沈着を刺激する次の2種のアプローチが存在する:軟骨細胞活性のインビボでの刺激、及び軟骨細胞及び移植のためのそれらの前躯体のエクスビボでの拡張(Jackson など. , Arthroscopy: The J. of Arthroscopic and Related Surg. 12 : 732-738, 1996)。さらに、弾性軟骨の再生又は修復は、耳及び鼻の損傷及び欠損の処理のために価値がある。軟骨細胞の増殖、分化を刺激するか、又は軟骨生成を誘発するそれらの軟骨細胞に対する特異性を有するいずれかの成長因子が、関節軟骨の維持、修復又は置換のための価値がある。
【発明の概要】
【0009】
タンパク質の投与は一般的に、タンパク質分解性変性又は凝集に対する耐性を高めることにより、活性タンパク質の半減期又は生物学的活性を延長する配合物を必要とする。タンパク質治療組成物の供給はまた、治療作用のための部位が好ましくは、身体における特定の位置に制限される場合、困難である。本発明は、投与するのに容易であり、且つ効果的であるFGF18の配合物、及び本明細書における教授から当業者に明らかである他の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の特定の記載:
本発明を詳細に記載する前、次の用語を定義することで本発明の理解を助けることができる:
“親和性標識”とは、第2ポリペプチドの精製又は検出を提供し、又は基質への第2ポリペプチドの結合のための部位を供給するために、第2ポリペプチドに結合され得るポリペプチドセグメントを示すために本明細書において使用される。主に、抗体又は、他の特異的結合剤が利用できるいずれかのペプチド又はタンパク質が親和性標識として使用され得る。
【0011】
親和性標識は、ポリ−ヒスチジン系、すなわちプロテインA (Nilsson など., EMBO J. 4: 1075, 1985; Nilsson など., Methods Enzymol. 198: 3, 1991), グルタチオンS トランスフェラーゼ(Smits and Johnson, Gene 67; 31, 1988), Glu-Glu親和性標識 (Grussenmeyerなど., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 7952-4, 1985), 物質P、すなわちFlagTM ペプチド(Hoppなど., Biotechnology 6: 1204-1210, 1988)、ストレプタビジン結合ペプチド、又は他の抗原性エピトープ又は結合ドメインを包含する。一般的に、Ford など., Protein Expression and Purification 2:95-107, 1991を参照のこと。親和性標識をコードするDNAは、商品供給者(例えばPharmacia Biotech, Piscataway, NJ; Eastman Kodak, New Heven, CT; New England Biolabs, Beverly, MA)から入手できる。
【0012】
用語“対立遺伝子変異体”とは、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の複数の遺伝子の二者択一形のいずれかを示すために、本明細書において使用される。対立遺伝子変異は、突然変異を通して天然では生じ、そして集団内の表現型多型現象をもたらすことができる。遺伝子突然変異は、サイレントであり(コードされたポリペプチドにおいて変化がない)、又は変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。用語、対立遺伝子変異体はまた、遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードされるタンパク質を示すために本明細書において使用される。
【0013】
用語“アミノ−末端”及び“カルボキシル−末端”とは、ポリペプチド内の位置を示すために本明細書において使用される。その情況が可能である場合、それらの用語は、接近性又は相対的位置を示すためにポリペプチドの特定の配列又は一部に関して使用される。例えば、ポリペプチド内の対象配列のカルボキシル末端側に位置する一定の配列は、その対象配列のカルボキシル末端に隣接して位置するが、しかし完全なポリペプチドのカルボキシル末端では必ずしも必要ではない。
【0014】
用語“ヒアルロン酸”とは、ヒアルロン酸のエステル、ヒアルロン酸の塩、又は用語ヒアルロンナンを包含するヒアルロン酸の誘導体を包含するよう、本明細書においては使用される。この表示はまた、低及び高分子量形のヒアルロンナン及び架橋されたヒアルロンナン又はヒランも包含する。そのようなヒアルロンナンの例は、Synvisc (E) (Genzyme Corp. Cambridge, MA), ORTHOVISC (E) (Anika Therapeutics, Woburn, MA), and HYALGAN (D (Sanofi- Synthelabo Inc., Malvern, PA)である。
【0015】
用語“単離された”とは、ポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドがその天然の遺伝的環境から除去され、そして従って、他の無関係な又は所望しないコード配列を有さず、そして遺伝子的に構築されたタンパク質生成システム内での使用のために適切な形で存在することを示す。そのような単離された分子は、それらの天然の環境から分離され、そしてcDNA及びゲノム クローンを含む分子である。本発明の単離されたDNA分子は、通常関係しない他の遺伝子を含まないが、しかし天然において存在する5’及び3’ 未翻訳領域、例えばプロモーター及びターミネーターを含むことができる。関連する領域の同定は、当業者に明らかであろう(例えば、Dynan and Tijan, Nature 316: 774―78, 1985を参照のこと)。
【0016】
“単離された”ポリペプチド又はタンパク質は、その生来の環境以外の条件、例えば血液及び動物組織とは別の条件下で見出されるポリペプチド又はタンパク質である。好ましい形においては、単離されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物起源の他のポリペプチドを実質的に含まない。高く精製された形、すなわち95%以上の純度、より好ましくは99%以上の純度でポリペプチドを供給することが好ましい。この情況下で使用される場合、用語“単離された”とは、他の物理的形、例えばダイマー形又は他のグリコシル化された又は誘導体化された形での同じポリペプチドの存在を排除しない。
【0017】
用語“オルト体(orthology)”とは、異なった種からのポリペプチド又はタンパク質の機能的相対物である、1つの種から得られるポリペプチド又はタンパク質を示す。オルト体間の配列の差異は、特定化の結果である。
【0018】
“ポリヌクレオチド”は、5’末端から3’末端に読み取られるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドは、RNA及びDNAを包含し、そして天然源から単離され、インビトロで合成され、又は天然及び合成分子の組み合わせから調製され得る。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(略語“bp”)、ヌクレオチド(“nt”)、又はキロ塩基(“kb”)として表される。ここで、後者の2つの用語は、一本鎖又は二本鎖であるポリヌクレオチドを記載する。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全体の長さを示すために使用され、そして用語、“塩基対”に等しいことが理解されるであろう。二本鎖ポリヌクレオチドの二本の鎖は長さにおいてわずかに異なり、そしてその末端が酵素分解の結果として異なることは、当業者により理解されており;従って、二本鎖ポリヌクレオチド分子内のすべてのヌクレオチドは一対に成り得ない。そのような不対の末端は、一般的に、20ntを越えないであろう。
【0019】
“ポリペプチド”は、天然において生成されても又は合成的に生成されてもいずれにせよ、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基のポリマーである。約10個以下のアミノ酸残基のポリペプチドが、通常“ポリペプチド”として言及される。
用語“プロモーター”とは、RNA ポリメラーゼの結合及び転写の開始を提供するDNA配列を含む遺伝子の部分を示すために本明細書において使用される。プロモーター配列は通常、遺伝子の5’ 非コード領域に見出されるが、しかし必ずしもそうではない。
【0020】
用語“タンパク質”は、1又は複数のポリペプチド鎖を含んで成る高分子である。タンパク質はまた、非ペプチド成分、例えば炭水化物基を含むことができる。炭水化物及び他の非ペプチド置換基は、タンパク質が生成される細胞により付加され、そして細胞型により変化するであろう。タンパク質は、それらのアミノ酸主鎖により本明細書において定義され;置換基、例えば炭水化物基は一般的に、特定されないが、しかしそれにもかかわらず、存在することができる。
【0021】
用語“受容体”は、生物活性分子(すなわち“リガンド”)に結合し、そして細胞上のリガンドの効果を仲介する細胞関連タンパク質を示す。膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、及び典型的には、シグナルトランスダクションに関与する細胞内エフェクタードメインを含んで成る多ペプチド構造により特徴づけられる。受容体へのリガンドの結合は、細胞におけるエフェクタードメインと他の分子との間の相互作用を引き起こす受容体におけるコンホメーション変化をもたらす。この相互作用は、細胞の代謝の変更を誘導する。
【0022】
受容体−リガンド相互作用に連結される代謝現象は、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、AMP生成の上昇、細胞カルシュウムの代謝、膜脂質の代謝、細胞付着、イノシトール脂質の加水分解、及びリン脂質の加水分解を包含する。一般的に、受容体は、膜結合され、シトソール性又は核性であり;モノマー(例えば甲状腺刺激ホルモン受容体、β−アドレナリン性受容体)、又はマルチマー(例えばPDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL−3受容体、GM―CSF受容体、G−CSF受容体、エリトロポイエチン受容体及びIL―6受容体)であり得る。
【0023】
用語“分泌シグナル配列”とは、それが合成される細胞の分泌路を通してより大きなポリペプチドを、より大きなポリペプチドの成分として方向ずけるポリペプチド(“分泌ペプチド”)をコードするDNA配列を示す。前記のより大きなポリペプチドは、分泌路を通しての移動の間、分泌ペプチドを除去するために通常分解される。
不正確な分析方法(例えば、ゲル電気泳動)により決定されるポリマーの分子量及び長さは、おおよその値であることが理解されるであろう。そのような値が“約”X又は“おおよそ”Xとして表される場合、その言及されたXの値は、正確には±10%であることが理解されるであろう。
【0024】
本明細書に引用されるすべての文献はそれらのすべてを引用により組み込まれる。
本発明は、FGF18ポリペプチド又はタンパク質、及び負に荷電されたキャリヤー、例えばヒアルロン酸の組成物が滑膜関節に投与される場合、FGF18の刺激効果が増強される発見に一部、基づかれている。従って、本発明は、間葉細胞、特に軟骨細胞の増殖を刺激するための、FGF18ポリペプチド又はタンパク質、及び負に荷電されたキャリヤー、特にヒアルロン酸の組成物に向けられる。前記組成物は、滑液を含む関節に関節内投与される。
【0025】
FGF18 cDNAのヌクレオチド配列は、配列番号1で記載され、そしてその推定されるアミノ酸配列は、配列番号2で記載される。FGF18は本来、zFGF5で示され、そして引用により本明細書に組み込まれるアメリカ特許第6,352,971号及び第5,989,866号に十分に記載されている。FGF18ポリペプチド(配列番号1)をコードするcDNAの分析は、180個のアミノ酸(配列番号2の残基28〜207)の成熟ポリペプチドを含んで成る207個のアミノ酸(配列番号2)をコードする読み取り枠を示した。
【0026】
配列番号3で示されるようなマウスFGF18ポリヌクレオチド及び配列番号4で示されるような対応するアミノ酸配列は、ヒトオルト体の相同性に対して高い程度の相同性を有することが見出された。アミノ酸レベルで、マウス及びヒトポリペプチドは、3個のアミノ酸変化を伴って、約98%同一である。当業者は、配列番号1又は3、及び配列番号2及び4に開示される配列が、それぞれ、ヒト及びマウスFGF18遺伝子及びポリペプチドの単一の対立遺伝子を表し、そして対立遺伝子変動及び他のスプライシングの発生が予測されることを認識するであろう。
【0027】
FGFファミリーのメンバーは、ヘパリン結合ドメインにより特徴づけられる。FGF18についての推定上のヘパリン結合ドメインは、配列番号2及び4のアミノ酸残基148(Gly)〜アミノ酸残基169(Gln)の領域において同定されている。受容体−介在性シグナル化は、細胞表面ヘパリンスルフェートプロテオグリカンにより複合体化されるFGFリガンドの結合に基づいて開始されることが仮定される。aFGF及びbFGFは、種々の長さの2つのイントロンにより分離される3種のエキソンから成る。FGF-8は、5個のエキソンから成り、それらの最初の3個はaFGF及びbFGFの第1エキソンに対応する。すべての既知FGFファミリーメンバーは、単一のポリペプチドを形成するためにスプライスされる。
【0028】
FGF18のリガンド−受容体複合体の分析は、FGF18がFGFR4に対する、及びFGFR3及びFGFR 2の“III c”スプライス変異体に対する特異性を有することを示している。FGFR3−III c及びFGFR2−III cは、軟骨組織の軟骨細胞内に同定されており、そして特に、両受容体は、ヒト関節軟骨内に見出されている。FGFR3及びFGFR2は、哺乳類の成長プレートにおいて見出され、そして軟骨細胞及び膜内骨の形成において重要な役割を演じる。特に、FGFR2及びFGFR3は、軟骨細胞及び膜内骨の成長において重要な役割を演じ、FGFR2が最初に濃縮間葉において発現され、そしてFGFR3発現は、軟骨細胞が分化し、そして増殖するにつれて、開始される。
【0029】
頭骨の成長において、FGFR3は硬膜及び骨膜において見出され、ところがFGFR2は縫合を分離する骨原性前部での骨前躯体細胞において発現される。FGFR2はまた、海綿質においても発現される(Omitz and Marie, 前記、2002)。これまでに、FGF18は、軟骨細胞及び骨芽細胞の分化状態及び投与の形の両者に依存して、それらの細胞型のための増殖剤であることが示されている(アメリカ特許第6,352,971号及び第5,989,866号;Ellsworth など. Osteoarthritis and Cartilage, 10: 308-320,2002 ; Shimoaka など. , J. Bio. Chem. 277 (9) 7493-500,2002を参照のこと)。
【0030】
変形性関節症は、関節の痛みを引き起こし、硫酸化されたプロテオグリカン、ヒアルロン酸(HA)及びタイプIIコラーゲンを包含する細胞外マトリックスの生成における欠損により引き起こされると思われる。HAは、交互に存在する(1−3)グルクロニド及び(1−4)グルコカミン結合を有する、天然の高粘度のムコ多糖である。本発明の処理方法及び組成物への使用に関しては、いずれのHA源でも適切であるが、しかしながら、組み換え的に生成されたHA(すなわち、細菌、酵母又は哺乳類細胞培養において生成されるタンパク質)は、組成物の純度を確保するために、動物又はヒト組織源からの単離よりも好ましい。
【0031】
結合組織においては、HAは結合及び保護剤として機能する。HA画分及びHAの塩は、損傷された骨関節及び変形性関節症の処理のために使用されて来た(アメリカ特許第5,925,626号;第5,631,241号及びEP0,939,086号を参照のこと)。HAはまた、粘手術(viscosuregery)及び粘補充(viscoupplementation)において、及び眼の手術における助力として使用される。
【0032】
HAは、主要治療剤として及び処理のために有用な治療組成物の成分としてHAを用いて、種々の状態の治療処理のための成分として使用されて来た。他により行われる実験においては、HA骨格は、患者の膝中に自己由来の軟骨細胞を移植するために使用され、そしてデータは、症状及び機能改善がもたらされることを示す。Raynauld など. (Osteoarthritis and Cartilage, 10 (7) : 506-517,2002)は、一次及び二次結果についての臨床学的有効性が適切な医療単独よりも改良される、適切な医療に関してHA配合物を用いての結果を記載する。一般的に、一次結果は、痛みの測定であるWestern Ontario and McMaster (WOMAC)変形性関節症指数の変化として測定される。二次結果の測定は、生命の機能的無能性及びその自己報告された性質を包含する。治療結果が疾病改良剤を包含する場合、関節形態学は、入手できる一次結果でもある(Hochberg など. , J. of Rhematolog. 24 (4) : 792-794, 1997)。
【0033】
アメリカ特許第4,636,524号は、HAのみの及び他の親水性ポリマーと混合され、そして種々の物質又は共有結合された低分子量物質を含む、HAの架橋されたゲル、それらを調製するための方法を開示する。それらの生成物は、化粧配合物を包含する多くの用途において、及び薬剤供給システムとして有用である。HAは、ヒト身体中に導入される場合、いずれの免疫又は他の種類の応答も引き起こされないことにおいて、生物学的耐性のポリマーであることが知られており、すなわち架橋されたHAゲルは種々の医学的用途のために使用され得る。他のポリマー又は低分子量物質により改良された、架橋されたゲルは、薬剤供給装置として使用され得る。
【0034】
カナダ特許第1,240,929号は、外傷への暴露を受けやすいヒト及び動物細胞層及び組織を保護するためのコントロイチン硫酸化合物及びヒアルロネートの組み合わせを教授する。
アメリカ特許第4,851,521号及びヨーロッパ特許出願第0.265,116号は両者とも、HA画分及びHAの架橋されたエステルを記載する。アメリカ特許第4,851,521号は、局部使用のための眼科用医薬のための、及び例えば坐剤において経皮的吸収の効果のために全身性効果のための坐剤において、活性成分として及びビークルとして医薬製剤中に組み込まれるHAのエステルを記載する。
【0035】
アメリカ特許第6,221,854号及び第5,942,499C1号(Reexam 4806)は、骨の処理のためへのHA及び塩基性FGF(FGF-2)の使用を記載する。この特許は、所望する骨増殖の正常位又は骨内部位中に投与される注射用混合物を教授する。
【0036】
対照的に、本発明のFGF18ポリペプチド及びHA組成物は、末端的に分化された細胞に通常関連する特殊化された細胞機能を誘発できる軟骨細胞、特に分化された軟骨細胞の増殖を刺激するための方法を提供する。FGF18及びHAの組成物が関節軟骨に局部投与される場合、細胞の増殖及びグルコサミノグリカンの同時合成が、FGF18のみ又はHAのみにより見られる結果よりも高められた。それらの結果は、FGF18ポリペプチド及びHAの組成物が軟骨組織、例えば形成性関節症、リウマチ様関節炎又は外傷性損傷により損傷される関節の維持又は修復において治療役割を演じることができる。
【0037】
FGF18は、インビボ及びインビトロで軟骨沈着を高めることが示されている。ヒアリン軟骨、弾性軟骨及び線維軟骨の生成は、治療剤として、及び生物学的マトリックスのための成分として価値がある。FGF18及びHA組成物は、年齢関連の表面原線維性のためである骨膜関節における関節軟骨欠損、変形性関節症のための軟骨変性、及び外傷又は疾病のための病巣の軟骨及び骨軟骨欠損の処理において有用であろう。FGF18及びHA組成物はまた、骨軟骨炎疾患及び変性関節疾患により引き起こされる関節疾患のためにも有用であろう。再構成及び形成手術の分野においては、FGF18及びHA組成物は、自原又は同種異系の軟骨拡張及び集中的な組織欠損の再構のための移行のために、有用であろう。細胞の拡張及び弾性軟骨生成のための誘発は、耳及び鼻組織の生成及び修復のために有用であろう。
【0038】
FGF18生成物は、単独で、又はタンパク質の延長された開放のための適切なキャリヤーにより複合化され、関節の滑液中への直接的な注射により又は欠損中に直接的に適用され得る。しかしながら、FGF18ポリペプチド及びHAが滑膜関節に直接的に供給される場合、軟骨細胞増殖を刺激する組成物の効果は、FGF18ポリペプチド又はHAのみのその効果を卓越した。
【0039】
FGF18はまた、自原又は同種異系の軟骨細胞移植のために培養物における軟骨細胞集団を拡張するために使用され、そして次に、FGF18ポリペプチド及びFA組成物の投与から成る同時処理により投与され得る。それらの方法においては、例えば軟骨細胞は、損傷された関節の損傷を受けていないマイナーな負荷−担持の領域から関節鏡検査的に収穫され、そして移植の前、細胞の数を高めるためにFGF18組成物の存在下で培養され得る。次に、拡張された培養物は、FGF18ポリペプチド及びHA組成物と共に混合され、そして関節空間に、又は欠損中に直接的に配置されるであろう。
【0040】
FGF18及びHA組成物は、軟膏を形成し、そして/又は移植された軟骨細胞又はそれらの前躯体細胞を適切な位置に維持するのを助ける細胞含む骨膜又は軟骨膜移植片と組合して使用され得る。FGF18及びHA組成物は、関節の洗浄、骨髄の刺激、磨耗関節形成、肋軟骨下の穴開け、又は肋軟骨下骨の微小破骨に関する軟骨損傷を修復するために使用され得る。さらに、FGF18及びFA生成物の投与による軟骨の増殖の後、追加の手術処理が、新しく形成された軟骨表面を適切に輪郭を付けるために必要である。
【0041】
本発明の組成物は、外傷性損傷又は軟骨疾患により損傷された軟骨組織における軟骨細胞増殖及び軟骨生成を刺激するための方法を提供する。関節をなす表面、例えば棘、肩、肘、手首、指の関節、股関節部、膝、足根関節、及び足の指の関節を示す組織が処理のために特に重要である。処理のために有益である疾病の例は、変形性関節炎、リウマチ様関節炎、他の自己免疫疾患、又は骨軟骨炎疾患を包含する。さらに、軟骨奇形がしばしば、ヒトにおける小人症の形で見られ、このことは、FGF18がそれらの患者において有用であることを示唆する。
【0042】
FGF18及びHA組成物は、関節の滑膜空間、組織近く中への直接的な注射により、又は軟骨欠損中に直接的に、生理学的条件下で負の電荷を示すキャリヤーと組合して適用され得る。FGF18は9.0以上の等電点を有するので、生理学的pHで、FGF18は正の実効電荷を示す。従って、多くの負の電荷を有するキャリヤー分子は、FGF18を結合し、そしてその活性を高めることができる。そのようなキャリヤーは、低分子量ヒアルロナン、高分子量ヒアルロナン、硫酸化されたプロテオグリカン、B−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、ヒドロキシアパタイト、アルギネート微小球、キトサン及びメチルセルロースを包含する。
【0043】
医薬使用に関しては、本発明の生成物は、従来の方法に従って、関節内投与のために配合される。投与量レジメは、種々の患者の変数(例えば、体重、年齢、性別)、及び臨床学的表示(例えば、外傷の程度、外傷の部位、等)用いて決定されるであろう。一般的に、医薬製剤は、医薬的に許容できるビークル、例えば塩溶液、緩衝溶液、水中、5%デキストロース、又は同様のものと共にFGF18タンパク質を含むであろう。さらに、製剤は、バイアル表面上でのタンパク質損失、延長された半減期、等を防ぐために、1又は複数の賦形剤、保存剤、溶解剤、緩衝剤、アルブミンを含むことができる。
【0044】
FGF18及びHAは、別々に、又は単一の組成物として組み合して投与され得る。従って、製剤は、単一の製剤として、又は複合成分キットとして提供され得る。配合方法は、当業界において良く知られており、そして例えば引用により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro, ed. , Mack Publishing Co. , Easton PA,-1990に開示される。用量の決定は、当業者のレベルの範囲内である。前記タンパク質は、急性処理のために、1週又はそれ以下の間、しばしば1〜3日間、投与されるか、又は慢性処理においては、数ヶ月又は数年間、使用され得る。
【0045】
他の態様においては、FGF18及びHA医薬組成物は、タンパク質の持効性のための配合物を含んで成る。持効性配合物は一般的に、組成物が閉じ込められるか又は溶解される、マトリックスにおける生物適合性溶液、ゲル、ペースト及びパテを含んで成るモノリシック供給装置を包含する。そのような持効性組成物からの開放は、マトリックスを通しての拡散、及び/又はマトリックス浸蝕により生じる。医薬組成物が膜を通して拡散するレザバーシステムもまた使用され得る。
【0046】
医薬的に許容できる混合物におけるFGF18及びHAの投与は、本発明の方法の軟骨形成ペプチドを供給するために十分であるが、追加の薬物がその混合物に組み合わされる臨床学的情況が存在し得る。臨床的に示され得る他の薬物の例は、抗−炎症性薬物、例えば非特異的及び特異的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、非ステロイド性及びステロイド性抗−炎症性薬物を包含する。
【0047】
本発明において使用され得る非特異的COXインヒビターのいつくかは、サリチル酸及び誘導体、例えばアスピリン又はスルファサラジン、パラ−アミノフェノール誘導体、例えばアセトアミノフェン、インドール及びインデン酢酸、例えばインドメタシン又はスルインダック、アリールプロピオン酸、例えばイブプロフェン、ナプロキセン又はオキサプロジン、アントラニル酸、例えばメフェナム酸、エノール酸、例えばオキシカム、又はアルカノノエ(alkanonoe)、例えばナブメントンを包含する。特異的COX−2インヒビターは、ジアリール−置換されたフアノノエ(Refecoxib)、ジアリール−置換されたピラゾール(Celecoxib)、インドール酢酸(Etodolac)及びスルホナイルド(Nimesulide)である。
【0048】
さらに、ステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾン、トリアムンノロン又はメチルプレドニゾンは、使用され得る薬物である。本発明のために適切な他の型の薬物は、腫瘍壊死因子ファミリーのインヒビター、例えばEnbrel又はTACI-Ig 、IL-1アンタゴニスト、例えばKinaret、IL-18及びIL-15のアンタゴニスト、及び免疫抑制薬物、例えばシクロスポリンである。さらに、FGF18は、CC(MCP-1, RANTES, MIP-lα, 及び MIP-lβ)及びCXC(IL-8及びGRO-α)ケモカインファミリーのインヒビターと共に投与され得る。
【実施例】
【0049】
本発明はさらに、次の非制限的例により例示される。
例1:FGF18関節内注入
FGF18を、凍結乾燥し、そしてPBS又は0.5%ヒアルロンナン(0.2μmの無菌濾過された)のいずれかにおいて適切な濃度で再構成した。5μlの最終体積で含まれる、PBS又は0.5%ヒアルロンナンのいずれかに溶解された、FGF18、ビークル(PBS)、ヒアルロナン又はFGF18の適切な組み合わせの単一用量を、生後10週の雌のc57/B16マウスの左後膝関節(膝)の関節内空間中に注入した。グループ当たり7匹の動物が存在した。すべての投与は、イソフルラン麻酔下で行われ、そして100μlのブプレノルフィンが無痛法のために、回収に基づいて投与された。動物を、投与後2週間で殺害し、そして組織を通常の組織学のために採取した。
【0050】
次の投与のグループが使用された:
グループ 処理
1 処理なし
2 PBS
3 PBS中、5μgのFGF18
4 PBS中、0.5μgのFGF18
5 PBS中、0.05μgのFGF18
6 ヒアルロナン0.5%
7 ヒアルロナン0.5%+5.0μgのFGF18
8 ヒアルロナン0.5%+0.5μgのFGF18
9 ヒアルロナン0.5%+0.05μgのFGF18
10 擬似注射
【0051】
軟骨形成における用量−依存性上昇が、0.5%ヒアルロナンに含まれるFGF18の注入の2週間後に観察された。有効用量は、0.5及び5μgのFGF18であった。軟骨細胞増殖の決定的証拠が、0.5%ヒアルロナン中、5.0μgのFGF18により処理された7匹の動物の7匹に、及び0.5%ヒアルロナン中、0.5μgのFGF18により処理された7匹のマウスの3匹に見出された。軟骨形成の上昇は、軟骨膜の領域におけ関節の縁に確かめられ、そして関節表面を包含するようには思われなかった。軟骨細胞増殖は、他のグループのいずれにおいてもほとんどか又はまったく見出されなかった。
【0052】
重要なことには、PBSもヒアルロナンも単独では、軟骨細胞増殖に対していずれの明らかな効果も有さなかった。FGF18がキャリヤーの不在下で注入される場合、軟骨増殖に対して明らかな効果は存在しなかった。これまでに行われたそれらの観察と組合して、それらの観察は、軟骨膜における前躯体細胞は、FGF18のための一次標的物である。関節軟骨細胞に対する効果の欠失は、FGF18がインヒドロで一次ヒト及びブタ関節軟骨細胞の増殖及びプロテオグリカン合成を刺激するので、損なわれていない関節表面へのタンパク質の侵入の失敗のためであり得る。
【0053】
さらに、FGF18は、ヒアルロナンの存在及び不在下で増殖プレートの閉鎖及びミネラリゼーションを誘発し:閉鎖は、PBS中、5.0μgのFGF18により処理された4匹のマウスの2匹に、PBS中、0.5μgのFGF18により処理された6匹のマウスの2匹に、及びPBS中、0.05μgのFGF18により処理された7匹のマウスの1匹に見出された。この効果は、ヒアルロナンの存在下でより卓越し、そして閉鎖は、0.5%ヒアルロナン中、5.0μgのFGF18により処理された7匹のマウスの7匹に、及び0.5%ヒアルロナン中、0.5μgのFGF18により処理された7匹のマウスの5匹に見出された。それらのデータは、ヒアルロナンがFGF18の活性を増強する結論を補強する。
【0054】
炎症は、ヒアルロナンと組合してのFGF18の最高用量で、最少であり、そしてわずかに観察された。軟骨変性は観察されず、これは、bFGFが軟骨に対して同化及び異化効果を有することが報告されているので、重要な点である。
最後に、FGF18の有意な全身性効果が、遠隔の軟骨部位又は他の組織でヒアルロナンと共に5μgのFGF18を受けた動物において観察されなかった。しかしながら、骨端のいくらかの集中的閉鎖が、HAのみを受けた1匹の動物、及び5μgのFGFのみを受けた1匹の動物に置いて観察された。それらの観察の有意性は、この時点で明確ではない。
【0055】
例2:変形性関節症モデルの処理
FGF18が変形性関節症(OA)の設定に置いて、軟骨組織を生成するか、又は軟骨変性を逆転するかどうかを評価するために、OAを、ラットの膝関節において半月板裂け目をつけることにより誘発した。このモデルにおいては、半月板への損傷は、自発的変形性関節炎において生じる変化を模倣する進行性軟骨変性及び骨増殖体形成を誘発する。
【0056】
FGF18を、ヒアルロナンキャリヤーに溶解し、そして関節内注射により、手術された膝に適用した。軟骨変性の修復を、3週間後、評価した。個々のラット(n=グループ当たり10匹のラット)の内側の側副靭帯を、横断し、そして内側半月板を十分な厚さで切断し、完全な引き裂きを行った。手術の3週間後、ラットはビークル(0.5%ヒアルロナン)、又はE. コリ由来の組み換えヒトFGF18(0.1、1.0又は5.0μg)を含むビークルの週当たり2度の3週間の関節内注入を受けた。最後の注射の4日後、膝関節を収穫し、緩衝されたホルマリン中に集め、脱灰し、そして組織学のためにパラフィンに埋封した。膝関節の前部断片を、トルイジンブルーにより染色し、軟骨組織の形成を評価した。個々の膝の脛骨プラトーの像を、Optimas像分析システムを用いて捕獲した。
【0057】
右膝の複数の断片を、顕微鏡を用いて分析し、そして軟骨変性(軟骨細胞/マトリックス損失及び原線維性)及び軟骨瘤形成について主観的に評点を付けた。領域(中央脛骨プラトーの1/3外部、中心及び内部)への重症度の傾向が、脛骨変性の全体的な重症度を表すために要約された。変性により影響される脛骨プライマーの全体的な程度のマイクロメーター測定、軟骨の厚さの50%以上拡張した脛骨病変の幅(脛骨軟骨変性幅)、病変の深さ(深さ比率)、最高到達点までの中央脛骨軟骨の厚さ、及び軟骨瘤のサイズ及び数を評価した。組織病理学的パラメーターの統計学的分析を、両側スチューデントt−検定を用いて、又は分散の分析により、グループ平均を比較することにより行った。すべての注射及び評点の計算は、処理グループに隠された調査者により行われた。
【0058】
このラットOAモデルにおいては、軟骨の変性は、脛骨プラトーの外部2/3上で最も激しく、そして半月板損傷の後、3週間で最大レベルに達した。FGF18を、それが損傷された軟骨の修復を誘発するかどうかを決定するために、手術に続いて3〜6週目で投与した。分析は、FGF18が軟骨肥大及び損傷された領域の周囲での新規軟骨の過増殖、並びに外側区画における正常軟骨において用量−依存性上昇を誘発したことを示した。
【0059】
特に、最高用量のFGF18(5μg)が、脛骨プラトーの外部1/3についての軟骨変性評点における57%の低下(p<0.05)(表1)、重要な脛骨軟骨変性の幅における57%の低下(p<0.05)(表2)、及びいずれかのマトリックス変化のために幅の比率における46%の低下(p<0.05)(表3)を、修復組織による軟骨欠損の充填の結果としてもたらした。さらに、FGF18は、それぞれ、ビークル又は5.0μgのFGF18により処理されたラットにおいて、243±21〜319±77μmの中央脛骨軟骨厚さの用量−依存性上昇をもたらした(表4)。
【0060】
修復組織の形態学は、プロテオグリカン沈着を有する線維性〜線維軟骨の範囲であった。修復組織は、縁領域に起因し、そして変性された及び時々、損なわれていない表面を通して拡張するように思えた。近くのすべての領域において、修復組織は、残る正常な軟骨の縁と十分に統合するように思えた。修復組織の形態学はヒアリン軟骨とは異なっているが、欠損を効果的に満たし、そして実質的に変性変化が存在しないように見えた。FGF18−処理された動物に比較して、ビークルにみにより処理されたラットは、肋軟骨下骨の侵食が骨髄幹細胞の流入を可能にしたまれな場合を除いて、軟骨修復の徴候を示さなかった。FGF18−介在性軟骨形成の他に、他の変化は、FGF8−処理された関節において示された。例えば、1又は5μgの用量のFGF18での中央脛骨軟骨瘤測定が50%上昇した(表5)。
【0061】
それらのデータは、ヒアルロナンキャリヤー中、FGF18の局部供給が軟骨形成を高め、そして変形性関節症のラットモデルにおいて軟骨変性評点を低めることができることを示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
前述から、本発明の特定の態様が例示目的のために記載されて来たが、種々の修飾が本発明の範囲内で行われ得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞成長因子18(FGF18)及びヒアルロン酸を含んで成る医薬的に許容できる混合物を含んで成る、軟骨形成ポリペプチドの関節内供給のための組成物。
【請求項2】
負に荷電されたキャリヤーをさらに含んで成る請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記キャリヤーが、低分子量ヒアルロナン、高分子量ヒアルロナン、硫酸化されたプロテオグリカン、B−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、ヒドロキシアパタイト、アルギネート微小球、キトサン及びメチルセルロースから成る群から選択される請求項2記載の組成物。
【請求項4】
持効性配合物である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記持効性配合物が、溶液、ゲル、ペースト又はパテから成る群から選択されたマトリックスを含んで成る請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記持効性配合物が、レザバーシステムを含んで成る請求項4記載の組成物。
【請求項7】
関節内投与の前、FGF18の存在下で培養された軟骨細胞をさらに含んで成る請求項1記載の組成物。
【請求項8】
抗−炎症薬剤をさらに含んで成る請求項1記載の組成物。
【請求項9】
FGF18及びヒアルロン酸を含んで成る医薬的に許容できる混合物を、滑膜腔中に投与する段階を含んで成る、軟骨細胞増殖の必要な哺乳類の関節においてその軟骨細胞増殖を増強するための方法。
【請求項10】
前記投与が注射を包含する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記投与が手術による移植を包含する請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記混合物がさらに、低分子量ヒアルロナン、高分子量ヒアルロナン、硫酸化されたプロテオグリカン、B−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、ヒドロキシアパタイト、アルギネート微小球、キトサン及びメチルセルロースから成る群から選択された負に荷電されたキャリヤーを含んで成る請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が、持効性配合物である請求項9の記載の方法。
【請求項14】
前記持効性配合物が、溶液、ゲル、ペースト又はパテから成る群から選択されたマトリックスを含んで成る請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記持効性配合物が、レザバーシステムを含んで成る請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、抗−炎症薬剤をさらに含んで成る請求項9記載の方法。
【請求項17】
新規軟骨組織の増殖を可能にし、そしてその新規軟骨表面を手術的に輪郭をつける段階をさらに含んで成る請求項9記載の方法。
【請求項18】
FGF18及びヒアルロン酸を含んで成る医薬的に許容できる混合物を、滑膜腔中に投与する段階を含んで成る、哺乳類の関節炎を処理するための方法。
【請求項19】
前記投与が注射を包含する請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記投与が手術による移植を包含する請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記混合物がさらに、低分子量ヒアルロナン、高分子量ヒアルロナン、硫酸化されたプロテオグリカン、B−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、ヒドロキシアパタイト、アルギネート微小球、キトサン及びメチルセルロースから成る群から選択された負に荷電されたキャリヤーを含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記混合物が、持効性配合物である請求項18の記載の方法。
【請求項23】
前記持効性配合物が、溶液、ゲル、ペースト又はパテから成る群から選択されたマトリックスを含んで成る請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記持効性配合物が、レザバーシステムを含んで成る請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が、抗−炎症薬剤をさらに含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項26】
新規軟骨組織の増殖を可能にし、そしてその新規軟骨表面を手術的に輪郭をつける段階をさらに含んで成る請求項18記載の方法。

【公開番号】特開2011−79861(P2011−79861A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−286537(P2010−286537)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2004−543362(P2004−543362)の分割
【原出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】