説明

FGF21突然変異体及びその使用

本発明は、FGF21突然変異ポリペプチドをコードする核酸分子、FGF21突然変異ポリペプチド、FGF21突然変異ポリペプチドを含む医薬組成物及び、このような核酸、ポリペプチド又は医薬組成物を用いて代謝性疾患を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年6月4日提出の米国特許仮出願第61/058,861号、2008年6月4日提出の米国特許仮出願第61/058,919号、米国特許仮出願第61/058,919号、2009年3月27日提出の米国特許仮出願第61/164,364号及び2009年5月5日提出の米国特許仮出願第61/175,736号(これらはそれぞれ、その全体において本明細書中に組み込まれる。)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、FGF21突然変異ポリペプチドをコードする核酸分子、FGF21突然変異ポリペプチド、FGF21突然変異ポリペプチドを含む医薬組成物及びこのような核酸、ポリペプチド又は医薬組成物を用いて代謝性疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
FGF21は、FGF19、FGF21及びFGF23を含む繊維芽細胞増殖因子(FGF)のサブファミリーに属する分泌性ポリペプチドである(Itohら、2004、Trend Genet.20:563−69)。FGF21は、ヘパリン非依存性であり、グルコース、脂質及びエネルギー代謝の制御におけるホルモンとして機能するという点で、非定型のFGFである。
【0004】
FGF21は、肝臓分泌因子として肝臓cDNAライブラリから単離された。これは、肝臓及び膵臓で非常に多く発現され、肝臓で主に発現される唯一のFGFファミリーのメンバーである。FGF21を過剰発現するトランスジェニックマウスは、成長速度が遅く、血漿グルコース及びトリグリセリド値が低く、加齢に伴う2型糖尿病、膵島過形成及び肥満がないという代謝表現型を示す。
げっ歯類及び霊長類モデルにおける組み換えFGF21タンパク質の医薬投与の結果、血漿グルコース値が正常となり、トリグリセリド及びコレステロール値が低下し、耐糖能、インスリン感受性が改善する。さらに、FGF21は、エネルギー消費、身体活動度及び新陳代謝率の向上により、体重及び体脂肪を減少させる。実験的研究から、ヒトにおける2型糖尿病、肥満、脂質異常症及びその他の代謝状態又は疾患の治療のためのFGF21の医薬投与が支持される。
【0005】
ヒトFGF21のインビボでの半減期は短い。マウスにおいて、ヒトFGF21の半減期は1時間から2時間であり、カニクイザルにおいて、半減期は2.5時間から3時間である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Itoh他、Trend Genet.20、2004年、p.563−69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2型糖尿病の治療における治療薬としての使用のためのFGF21タンパク質を開発することにおいて、半減期を延長させることが望ましい。半減期が延長されたFGF21タンパク質により、タンパク質を投与されている患者の投与頻度を少なくすることができる。このようなタンパク質を本明細書中で述べる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、位置45のアラニン残基、位置86のロイシン残基、位置98のロイシン残基、位置111のアラニン残基、位置129のアラニン残基、位置170のグリシン残基、位置171のプロリン残基又は位置172のセリン残基に対する何らかのアミノ酸の置換及びそれらの組み合わせをさらに含む、単離ポリペプチドを提供する。ある実施形態において、本単離ポリペプチドは、位置98のロイシン残基、171のプロリン残基又は、位置98のロイシン残基及び位置171のプロリン残基の両方に対する何らかのアミノ酸の置換を含む。別の実施形態において、本単離ポリペプチドは、位置98のロイシン残基及び位置171のプロリン残基の両方に対する何らかのアミノ酸の置換を含む。
【0009】
本開示はまた、(a)(i)位置19の、グルタミン、イソロイシンもしくはリジン残基;(ii)位置20の、ヒスチジン、ロイシンもしくはフェニルアラニン残基;(iii)位置21の、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシンもしくはバリン残基;(iv)位置22の、イソロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;(v)位置150の、アラニンもしくはアルギニン残基;(vi)位置151の、アラニンもしくはバリン残基;(vii)位置152の、ヒスチジン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;(viii)位置170の、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、プロリンもしくはセリン残基;(ix)位置171の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファンもしくはチロシン残基;(x)位置172の、ロイシンもしくはスレオニン残基;又は(xi)位置173の、アルギニンもしくはグルタミン酸残基である、少なくとも1つのアミノ酸置換;及び(b)(i)位置26の、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;(ii)位置45の、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;(iii)位置52のスレオニン残基;(iv)位置58の、システイン、グルタミン酸、グリシンもしくはセリン残基;(v)位置60の、アラニン、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;(vi)位置78の、アラニン、アルギニン、システインもしくはヒスチジン残基;(vii)位置86の、システインもしくはスレオニン残基;(viii)位置88の、アラニン、アルギニン、グルタミン酸、リジンもしくはセリン残基;(ix)位置98の、アルギニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;(x)位置99の、アルギニン、アスパラギン酸、システインもしくはグルタミン酸残基;(xi)位置111の、リジンもしくはスレオニン残基;(xii)位置129の、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンもしくはリジン残基;又は(xiii)位置134の、アルギニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジンもしくはチロシン残基である、少なくとも1つのアミノ酸置換;及びそれらの組み合わせを有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドも提供する。ある実施形態において、位置98の残基はアルギニンであり、位置171の残基はプロリンであり、別の実施形態において、本ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み得る(しかし、この場合、(a)(i)−(xi)及び(b)(i)−(xiii)の少なくとも1つのアミノ酸置換はさらに修飾されない。)。
【0010】
本開示は、さらに、(a)位置19の、グルタミン、リジンもしくはイソロイシン残基;(b)位置20の、ヒスチジン、ロイシンもしくはフェニルアラニン残基;(c)位置21の、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシンもしくはバリン残基;(d)位置22の、イソロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;(e)位置150の、アラニンもしくはアルギニン残基;(f)位置151の、アラニンもしくはバリン残基;(g)位置152の、ヒスチジン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;(h)位置170の、アラニン、アスパラギン酸、システインもしくはプロリン残基;(i)位置171の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファンもしくはチロシン残基;(j)位置172のロイシン残基;又は(k)位置173の、アルギニンもしくはグルタミン酸残基;及びそれらの組み合わせである少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドを提供する。ある実施形態において、位置171の残基はプロリンであり、別の実施形態において、本ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み得る(しかし、この場合、(a)−(k)の少なくとも1つのアミノ酸置換はさらに修飾されない。)。
【0011】
本開示は、(a)位置26の、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;(b)位置45の、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;(c)位置52のスレオニン残基;(d)位置58の、グルタミン酸、グリシンもしくはセリン残基;(e)位置60の、アラニン、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;(f)位置78の、アラニン、アルギニンもしくはヒスチジン残基;(g)位置88のアラニン残基;(h)位置98の、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;(i)位置99の、アルギニン、アスパラギン酸、システインもしくはグルタミン酸残基;(j)位置111の、リジンもしくはスレオニン残基;(k)位置129の、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンもしくはリジン残基;又は(l)位置134の、アルギニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジンもしくはチロシン残基;及びそれらの組み合わせである少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドをさらに提供する。ある実施形態において、位置98の残基はアルギニンであり、別の実施形態において、本ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み得る(しかし、この場合、(a)−(l)の少なくとも1つのアミノ酸置換はさらに修飾されない。)。
【0012】
様々な実施形態において、本明細書中で開示されるポリペプチドは、(a)位置179の、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、セリンもしくはグリシン;(b)位置180の、グルタミン酸、グリシン、プロリンもしくはセリン;又は(c)位置181の、リジン、グリシン、スレオニン、アラニン、ロイシンもしくはプロリンである、少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含み得、本ポリペプチドのC末端に融合される1から10個のアミノ酸残基をさらに含み得、何らかのアミノ酸(例えばグリシン、プロリン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の残基)であり得る。
【0013】
様々な実施形態において、本明細書中で開示されるポリペプチドは、(a)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);(b)12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);又は(c)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮及び12個を超えないカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。)を含み得る。
【0014】
ある実施形態において、本明細書中で開示されるポリペプチドは、PEGなどの1以上のポリマーに共有結合され得る。その他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、場合によってはGGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)などのリンカーを介して、異種アミノ酸配列に融合され得る。この異種アミノ酸配列は、配列番号13のアミノ酸配列などの、IgG定常ドメイン又はその断片であり得る。本明細書中で開示されるこのような融合ポリペプチドは、マルチマーも形成し得る。
【0015】
本開示はまた、本明細書中で開示されるポリペプチドと、医薬的に許容可能な製剤用物質と、を含む医薬組成物も提供する。このような医薬組成物は、代謝性疾患を治療するための方法において使用され得、本方法は、代謝性疾患を治療することを必要とするヒト患者に本発明の医薬組成物を投与することを含む。治療され得る代謝性疾患には、糖尿病及び肥満が含まれる。
【0016】
本明細書中で開示されるポリペプチドをコードする単離核酸分子ならびにこのような核酸分子を含むベクター及びこのような核酸分子を含む宿主細胞も提供される。
【0017】
配列番号4のポリペプチドの短縮型も開示される。様々な実施形態において、本ポリペプチドは、(a)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);(b)12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);又は(c)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮及び12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。)を含み得る。
【0018】
本開示は、さらに、(a)IgG定常ドメイン;(b)IgG定常ドメインに融合されたリンカー配列;及び(c)リンカー配列に融合され、配列番号4のアミノ酸配列を含むFGF21突然変異体(ここで、アルギニン残基が位置98のロイシン残基に対して置換され、グリシン残基が位置171のプロリン残基に対して置換されている。)を含み得る単離融合タンパク質を提供する。ある実施形態において、リンカー配列は、GGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)を含み、別のものにおいて、IgG定常ドメインは配列番号13を含み得る。別の実施形態において、リンカー配列は、GGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)を含み、IgG定常ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態において、リンカーのN末端がIgG定常ドメインのC末端に融合され、FGF21突然変異体のN末端がリンカーのC末端に融合される。開示される融合タンパク質はマルチマーを形成し得る。
【0019】
本融合タンパク質の様々な実施形態において、FGF21突然変異体成分は、(a)位置179の、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、セリンもしくはグリシン;(b)位置180の、グルタミン酸、グリシン、プロリンもしくはセリン;又は(c)位置181の、リジン、グリシン、スレオニン、アラニン、ロイシンもしくはプロリンである、少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得、FGF21突然変異体のC末端に融合される1から10個のアミノ酸残基をさらに含み得、1から10個のアミノ酸残基は、何らかのアミノ酸、例えば、グリシン、プロリン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の残基であり得る。
【0020】
本融合タンパク質のさらにその他の実施形態において、FGF21突然変異成分は、(a)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);(b)12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);又は(c)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮及び12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。)を含み得る。別の実施形態において、融合タンパク質のFGF21突然変異成分は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み得る(しかし、アルギニン及びグリシン残基はさらに修飾されない。)。
【0021】
本開示はまた、本明細書中で開示される融合タンパク質と、医薬的に許容可能な製剤用物質と、を含む、医薬組成物も提供する。このような医薬組成物は、代謝性疾患を治療するための方法において使用することができ、本方法は、代謝性疾患を治療することを必要とするヒト患者に本発明の医薬組成物を投与することを含む。治療され得る代謝性疾患には糖尿病及び肥満が含まれる。
【0022】
本明細書中で開示される融合タンパク質をコードする単離核酸分子ならびにこのような核酸分子を含むベクター及びこのような核酸分子を含む宿主細胞もまた提供される。
【0023】
次の、ある種の実施形態及び特許請求の範囲のより詳細な説明から、本発明の具体的な実施形態が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】FGF21短縮突然変異体7−181及び8−181(図1A)及びFGF21短縮突然変異体1−172、1−171、1−169及び1−164(図1B)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図1B】FGF21短縮突然変異体7−181及び8−181(図1A)及びFGF21短縮突然変異体1−172、1−171、1−169及び1−164(図1B)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図2】ヒトFGF21対照及びFGF21短縮突然変異体3−181、4−181、5−181、7−181、8−181、1−180、1−178、1−177、1−176、1−175、1−174、1−173、1−172、9−181及び1−149において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示す。
【図3】PBS(黒いバー)、ヒトFGF21対照(白色のバー)又はFGF21短縮突然変異体8−181(灰色のバー)及び9−181(点描付きのバー)を注射したマウスで測定した血糖値を示す。
【図4】PBS(黒丸)、Fc−FGF21対照(WT)(白丸)又はアミノ酸残基5−181(黒三角)もしくは7−181(白三角)を含む短縮型Fc−FGF21融合タンパク質を注射したマウスにおいて測定した血糖値の%変化を示す。
【図5】PBS(黒丸)、FGF21−Fc対照(WT)(白丸)、残基1−175を含む短縮型FGF21−Fc融合タンパク質(黒三角)又はアミノ酸残基1−171を含む短縮型Fc−FGF21タンパク質(白三角)を注射したマウスで測定した血糖値の%変化を示す。
【図6A】ヒトFc(5)FGF21対照試料(図6A)及び、注射から6時間後(試料D6;図6B)、24時間後(試料D24;図6C)及び48時間後(試料D48;図6D)にマウスから採取したFc(5)FGF21の試料の、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)の結果を示す。
【図6B】ヒトFc(5)FGF21対照試料(図6A)及び、注射から6時間後(試料D6;図6B)、24時間後(試料D24;図6C)及び48時間後(試料D48;図6D)にマウスから採取したFc(5)FGF21の試料の、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)の結果を示す。
【図6C】ヒトFc(5)FGF21対照試料(図6A)及び、注射から6時間後(試料D6;図6B)、24時間後(試料D24;図6C)及び48時間後(試料D48;図6D)にマウスから採取したFc(5)FGF21の試料の、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)の結果を示す。
【図6D】ヒトFc(5)FGF21対照試料(図6A)及び、注射から6時間後(試料D6;図6B)、24時間後(試料D24;図6C)及び48時間後(試料D48;図6D)にマウスから採取したFc(5)FGF21の試料の、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)の結果を示す。
【図7A】哺乳動物由来ヒトFGF21(3)Fc対照試料(図7A)及び、注射から6時間後(試料E6;図7B)、24時間後(試料E24;図7C)及び48時間後(試料E48;図7D)にマウスから採取したFGF21(3)FcのLC−MS分析の結果を示す。
【図7B】哺乳動物由来ヒトFGF21(3)Fc対照試料(図7A)及び、注射から6時間後(試料E6;図7B)、24時間後(試料E24;図7C)及び48時間後(試料E48;図7D)にマウスから採取したFGF21(3)FcのLC−MS分析の結果を示す。
【図7C】哺乳動物由来ヒトFGF21(3)Fc対照試料(図7A)及び、注射から6時間後(試料E6;図7B)、24時間後(試料E24;図7C)及び48時間後(試料E48;図7D)にマウスから採取したFGF21(3)FcのLC−MS分析の結果を示す。
【図7D】哺乳動物由来ヒトFGF21(3)Fc対照試料(図7A)及び、注射から6時間後(試料E6;図7B)、24時間後(試料E24;図7C)及び48時間後(試料E48;図7D)にマウスから採取したFGF21(3)FcのLC−MS分析の結果を示す。
【図8A】Fc(15)FGF21対照試料(図8A)及び、注射から6時間後(図8B)、24時間後(図8C)及び48時間後(図8D)にマウスから採取したFc(15)FGF21の試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図8B】Fc(15)FGF21対照試料(図8A)及び、注射から6時間後(図8B)、24時間後(図8C)及び48時間後(図8D)にマウスから採取したFc(15)FGF21の試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図8C】Fc(15)FGF21対照試料(図8A)及び、注射から6時間後(図8B)、24時間後(図8C)及び48時間後(図8D)にマウスから採取したFc(15)FGF21の試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図8D】Fc(15)FGF21対照試料(図8A)及び、注射から6時間後(図8B)、24時間後(図8C)及び48時間後(図8D)にマウスから採取したFc(15)FGF21の試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図9A】FGF21(15)Fc対照試料(図9A)及び、注射から6時間後(図9B)、24時間後(図9C)及び48時間後(図9D)にマウスから採取したFGF21(15)Fcの試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図9B】FGF21(15)Fc対照試料(図9A)及び、注射から6時間後(図9B)、24時間後(図9C)及び48時間後(図9D)にマウスから採取したFGF21(15)Fcの試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図9C】FGF21(15)Fc対照試料(図9A)及び、注射から6時間後(図9B)、24時間後(図9C)及び48時間後(図9D)にマウスから採取したFGF21(15)Fcの試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図9D】FGF21(15)Fc対照試料(図9A)及び、注射から6時間後(図9B)、24時間後(図9C)及び48時間後(図9D)にマウスから採取したFGF21(15)Fcの試料のLC−MS分析の結果を示す。
【図10A】マウスに注射した、Fc(15)FGF21(図10A、配列番号24)及びFGF21(15)Fc(図10B、配列番号25)融合タンパク質のLC−MS分析により同定される切断部位を示す。
【図10B】マウスに注射した、Fc(15)FGF21(図10A、配列番号24)及びFGF21(15)Fc(図10B、配列番号25)融合タンパク質のLC−MS分析により同定される切断部位を示す。
【図11】PBS(黒色のバー)、Fc(15)FGF21(白色のバー)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E(灰色のバー)、Fc(15)FGF21 P171A(点描付きのバー)、Fc(15)FGF21 S172L(白地の斜線模様のバー)、Fc(15)FGF21 G170E/P171A/S172L(黒地の水平線模様のバー)又はFc(15)FGF21 G151A(白地の斜線模様のバー)を注射したマウスで測定した血糖値を示す。
【図12】PBS(黒丸)、Fc(15)FGF21(白丸)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E(黒三角)、Fc(15)FGF21 P171A(白三角)、Fc(15)FGF21 S172L(黒菱型)、Fc(15)FGF21 G170E/P171A/S172L(白菱型)又はFc(15)FGF21 G151A(黒四角)を注射したマウスにおいて測定した血糖値の%変化を示す。
【図13】PBS(黒色のバー)、Fc(15)FGF21(白色のバー)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 P150A/G151A/I152V(灰色のバー)、Fc(15)FGF21 G170E(白地の斜線模様のバー)、Fc(15)FGF21 G170E/P171A(灰色地の斜線模様のバー)又はFc(15)FGF21 G170E/S172L(白地の斜線模様のバー)を注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。
【図14】PBS(黒四角)、Fc(15)FGF21(白四角)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 P150A/G151A/I152V(黒逆三角形)、Fc(15)FGF21 G170E(白逆三角形)、Fc(15)FGF21 G170E/P171A(黒丸)又はFc(15)FGF21 G170E/S172L(白丸)を注射したマウスにおいて測定した血糖値の%変化を示す。
【図15】PBS(黒色のバー)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E(白色のバー)、Fc(15)FGF21 G170A(灰色のバー)、Fc(15)FGF21 G170C(白地の斜線模様のバー)、Fc(15)FGF21 G170D(灰色及び白色のバー)、Fc(15)FGF21 G170N(黒地の斜線模様のバー)又はFc(15)FGF21 G170S(白地の斜線模様のバー)を注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。
【図16】PBS(黒丸)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E(白丸)、Fc(15)FGF21 G170A(黒三角)、Fc(15)FGF21 G170C(白三角)、Fc(15)FGF21 G170D(黒菱型)、Fc(15)FGF21 G170N(白菱型)又はFc(15)FGF21 G170S(黒逆三角)を注射したマウスにおいて測定した血糖値の%変化を示す。
【図17】PBS(黒色のバー)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E(白色のバー)、Fc(15)FGF21 P171E(灰色のバー)、Fc(15)FGF21 P171H(黒地の斜線模様のバー)、Fc(15)FGF21 P171Q(白地の斜線模様のバー)、Fc(15)FGF21 P171T(点描付きのバー)又はFc(15)FGF21 P171Y(灰色地の斜線模様のバー)を注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。
【図18】PBS(黒丸)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E(白丸)、Fc(15)FGF21 P171E(黒三角)、Fc(15)FGF21 P171H(白三角)、Fc(15)FGF21 P171Q(黒菱型)、Fc(15)FGF21 P171T(白菱型)又はFc(15)FGF21 P171Y(黒四角)を注射したマウスにおいて測定した血糖値の%変化を示す。
【図19A】Fc(15)FGF21対照試料(図19A)及び、注射から6時間後(図19B)、24時間後(図19C)及び48時間後(図19D)にマウスから採取された試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図19B】Fc(15)FGF21対照試料(図19A)及び、注射から6時間後(図19B)、24時間後(図19C)及び48時間後(図19D)にマウスから採取された試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図19C】Fc(15)FGF21対照試料(図19A)及び、注射から6時間後(図19B)、24時間後(図19C)及び48時間後(図19D)にマウスから採取された試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図19D】Fc(15)FGF21対照試料(図19A)及び、注射から6時間後(図19B)、24時間後(図19C)及び48時間後(図19D)にマウスから採取された試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図20A】Fc(15)FGF21 G170E対照試料(図20A)及び、注射から6時間後(図20B)、24時間後(図20C)及び48時間後(図20D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 G170Eの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図20B】Fc(15)FGF21 G170E対照試料(図20A)及び、注射から6時間後(図20B)、24時間後(図20C)及び48時間後(図20D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 G170Eの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図20C】Fc(15)FGF21 G170E対照試料(図20A)及び、注射から6時間後(図20B)、24時間後(図20C)及び48時間後(図20D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 G170Eの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図20D】Fc(15)FGF21 G170E対照試料(図20A)及び、注射から6時間後(図20B)、24時間後(図20C)及び48時間後(図20D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 G170Eの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図21A】Fc(15)FGF21 P171A対照試料(図21A)及び、注射から6時間後(図21B)、24時間後(図21C)及び48時間後(図21D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 P171Aの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図21B】Fc(15)FGF21 P171A対照試料(図21A)及び、注射から6時間後(図21B)、24時間後(図21C)及び48時間後(図21D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 P171Aの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図21C】Fc(15)FGF21 P171A対照試料(図21A)及び、注射から6時間後(図21B)、24時間後(図21C)及び48時間後(図21D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 P171Aの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図21D】Fc(15)FGF21 P171A対照試料(図21A)及び、注射から6時間後(図21B)、24時間後(図21C)及び48時間後(図21D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 P171Aの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図22A】Fc(15)FGF21 S172L対照試料(図22A)及び、注射から6時間後(図22B)、24時間後(図22C)及び48時間後(図22D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 S172Lの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図22B】Fc(15)FGF21 S172L対照試料(図22A)及び、注射から6時間後(図22B)、24時間後(図22C)及び48時間後(図22D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 S172Lの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図22C】Fc(15)FGF21 S172L対照試料(図22A)及び、注射から6時間後(図22B)、24時間後(図22C)及び48時間後(図22D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 S172Lの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図22D】Fc(15)FGF21 S172L対照試料(図22A)及び、注射から6時間後(図22B)、24時間後(図22C)及び48時間後(図22D)にマウスから採取された、Fc(15)FGF21 S172Lの試料の、LC−MS分析の結果を示す。
【図23A】マウスに注射した、Fc(15)FGF21(図23A、配列番号24)、Fc(15)FGF21 G170E(図23B、配列番号26)、Fc(15)FGF21 P171A(図23C、配列番号27)及びFc(15)FGF21 S172L(図23D、配列番号28)融合タンパク質のLC−MS分析により同定された切断部位を示す。
【図23B】マウスに注射した、Fc(15)FGF21(図23A、配列番号24)、Fc(15)FGF21 G170E(図23B、配列番号26)、Fc(15)FGF21 P171A(図23C、配列番号27)及びFc(15)FGF21 S172L(図23D、配列番号28)融合タンパク質のLC−MS分析により同定された切断部位を示す。
【図23C】マウスに注射した、Fc(15)FGF21(図23A、配列番号24)、Fc(15)FGF21 G170E(図23B、配列番号26)、Fc(15)FGF21 P171A(図23C、配列番号27)及びFc(15)FGF21 S172L(図23D、配列番号28)融合タンパク質のLC−MS分析により同定された切断部位を示す。
【図23D】マウスに注射した、Fc(15)FGF21(図23A、配列番号24)、Fc(15)FGF21 G170E(図23B、配列番号26)、Fc(15)FGF21 P171A(図23C、配列番号27)及びFc(15)FGF21 S172L(図23D、配列番号28)融合タンパク質のLC−MS分析により同定された切断部位を示す。
【図24A】FGF21突然変異体FGF21 L99R、FGF21 L99D及びFGF21 A111T(図24A);FGF21突然変異体FGF21 A129D、FGF21 A129Q及びFGF21 A134K(図24B);及びFGF21突然変異体FGF21 A134Y、FGF21 A134E及びFGF21 A129K(図24C)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図24B】FGF21突然変異体FGF21 L99R、FGF21 L99D及びFGF21 A111T(図24A);FGF21突然変異体FGF21 A129D、FGF21 A129Q及びFGF21 A134K(図24B);及びFGF21突然変異体FGF21 A134Y、FGF21 A134E及びFGF21 A129K(図24C)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図24C】FGF21突然変異体FGF21 L99R、FGF21 L99D及びFGF21 A111T(図24A);FGF21突然変異体FGF21 A129D、FGF21 A129Q及びFGF21 A134K(図24B);及びFGF21突然変異体FGF21 A134Y、FGF21 A134E及びFGF21 A129K(図24C)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図25A】Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171G、Fc−FGF21 P171S及びFc−FGF21 P171T(図25A);Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171Y、Fc−FGF21 P171W及びFc−FGF21 P171C(図25B);Fc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 A45K/G170E及びFGF21 A45K(図25C);及びFc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 P171E及びFc(15)FGF21 A45K/G170E(図25D)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図25B】Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171G、Fc−FGF21 P171S及びFc−FGF21 P171T(図25A);Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171Y、Fc−FGF21 P171W及びFc−FGF21 P171C(図25B);Fc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 A45K/G170E及びFGF21 A45K(図25C);及びFc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 P171E及びFc(15)FGF21 A45K/G170E(図25D)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図25C】Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171G、Fc−FGF21 P171S及びFc−FGF21 P171T(図25A);Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171Y、Fc−FGF21 P171W及びFc−FGF21 P171C(図25B);Fc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 A45K/G170E及びFGF21 A45K(図25C);及びFc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 P171E及びFc(15)FGF21 A45K/G170E(図25D)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図25D】Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171G、Fc−FGF21 P171S及びFc−FGF21 P171T(図25A);Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171Y、Fc−FGF21 P171W及びFc−FGF21 P171C(図25B);Fc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 A45K/G170E及びFGF21 A45K(図25C);及びFc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 P171E及びFc(15)FGF21 A45K/G170E(図25D)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示し、各パネルは、ヒトFGF21対照に対して得られた結果を示す。
【図26A】野生型成熟FGF21及び様々なFGF21突然変異体に対する時間の関数としての凝集を表し;図26Aは、1、2及び4日間にわたり4℃で65mg/mLタンパク質を温置した後の、FGF21対照(WT、黒菱型)及びFGF21 A45K(黒丸)に対する%凝集の変化を示し、図26Bは、1、6及び10日間にわたり4℃で65mg/mLタンパク質を温置した後の、FGF21対照(WT)及びFGF21 P78C、P78R、L86T、L86R、L98C、L98R、A111T、A129D、A129Q、A129K、A134K、A134Y及びA134E(全てプロット上で標識)に対する%凝集の変化を示す。
【図26B】野生型成熟FGF21及び様々なFGF21突然変異体に対する時間の関数としての凝集を表し;図26Aは、1、2及び4日間にわたり4℃で65mg/mLタンパク質を温置した後の、FGF21対照(WT、黒菱型)及びFGF21 A45K(黒丸)に対する%凝集の変化を示し、図26Bは、1、6及び10日間にわたり4℃で65mg/mLタンパク質を温置した後の、FGF21対照(WT)及びFGF21 P78C、P78R、L86T、L86R、L98C、L98R、A111T、A129D、A129Q、A129K、A134K、A134Y及びA134E(全てプロット上で標識)に対する%凝集の変化を示す。
【図27】ヒトFGF21対照及びFGF21突然変異体FGF21 A45K、FGF21 L52T及びFGF21 L58Eにおいて行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示す。
【図28A】1、4及び8日間にわたり4℃で温置した後の、Fc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 6−181/G170E(黒菱型)、Fc(15)FGF21 A45K/G170E(白四角)、Fc(15)FGF21 P171E(黒三角)、Fc(15)FGF21 P171A(x印)、Fc(15)FGF21 G170E(白三角)及びFGF21対照(黒丸)に対する凝集レベルの変化を示すプロットであり、図28Bは、温置の結果も示す棒グラフである。
【図28B】1、4及び8日間にわたり4℃で温置した後の、Fc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 6−181/G170E(黒菱型)、Fc(15)FGF21 A45K/G170E(白四角)、Fc(15)FGF21 P171E(黒三角)、Fc(15)FGF21 P171A(x印)、Fc(15)FGF21 G170E(白三角)及びFGF21対照(黒丸)に対する凝集レベルの変化を示すプロットであり、図28Bは、温置の結果も示す棒グラフである。
【図29】PBS(ビヒクル)(黒丸)又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 A45K/G170E(白丸)、Fc(15)FGF21 A45K/P171G(黒三角)又はFc(15)FGF21 L98R/P171G(白三角)を注射したマウスで測定した血糖値を示す。
【図30】ヒトFGF21(黒丸、黒線)、Fc−FGF21(白丸、黒線)及びFc−FGF21 L98R/P171G(黒三角、点線)において行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示すプロットである。
【図31A】FGF21(黒丸、黒線)、Fc−FGF21(白丸、黒線)及びFc−FGF21 L98R/P171G(黒三角、点線)に対して、室温(図31A)及び4℃(図31B)で9日後に観察される%高分子量凝集体を示すプロットである。
【図31B】FGF21(黒丸、黒線)、Fc−FGF21(白丸、黒線)及びFc−FGF21 L98R/P171G(黒三角、点線)に対して、室温(図31A)及び4℃(図31B)で9日後に観察される%高分子量凝集体を示すプロットである。
【図32】168時間にわたる様々な点でのFc−FGF21 L98R/P171Gにおける、観察される変化を示す一連のMALDI質量分析トレースである。
【図33】PBSビヒクル対照(白丸)、野生型成熟FGF21(黒四角)及びFGF21突然変異体L98R、P171G(黒逆三角);L98R、P171G、182P(白菱型)及びL98R、P171G、182G(黒丸)のそれぞれに対する、ob/obマウスでの血糖値の%変化を示すプロットである。
【図34】PBSビヒクル対照(黒丸)及びFGF21突然変異体L98R、P171G(黒三角);L98R、P171G、182G、183G(白三角)、L98R、P171G、182G(黒菱型)及びL98R、P171G、182P(白菱型)のそれぞれに対する、ob/obマウスでの血糖値の%変化を示すプロットである。
【図35】PBSビヒクル対照(白丸)及びFGF21突然変異体L98R、P171G(黒四角);L98R、P171G、Y179S(白三角)、L98R、P171G、Y179A(黒逆三角)、L98R、P171G、180S(白菱型)及びL98R、P171G、A180G(黒丸)のそれぞれに対する、ob/obマウスでの血糖値の%変化を示すプロットである。
【図36】PBSビヒクル対照(黒丸)及びFGF21突然変異体L98R、P171G(白四角);L98R、P171G、Y179F(黒三角)及びL98R、P171G、A180E(白菱型)のそれぞれに対する、ob/obマウスでの血糖値の%変化を示すプロットである。
【図37】アカゲザルで行われた6週間の用量漸増実験に対する研究計画を図示するダイアグラムであり、この図面において、網掛けの印は、絶食状態での採血を示し、点描のある印は給餌状態での採血を示した。
【図38A】アカゲザルがOGTTプロファイル、OGTT AUC及び体重においてどのように無作為化されたかを示す一連のプロットであり、図38Aは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT1におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、点線は群Cに相当し、図38Bは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT2におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、黒線は群Cに相当し、図38Cは、AUCに関して示されるOGTT1及び2に対するベースライングルコース値を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当し、図38Dは、ベースライン体重を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当する。
【図38B】アカゲザルがOGTTプロファイル、OGTT AUC及び体重においてどのように無作為化されたかを示す一連のプロットであり、図38Aは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT1におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、点線は群Cに相当し、図38Bは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT2におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、黒線は群Cに相当し、図38Cは、AUCに関して示されるOGTT1及び2に対するベースライングルコース値を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当し、図38Dは、ベースライン体重を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当する。
【図38C】アカゲザルがOGTTプロファイル、OGTT AUC及び体重においてどのように無作為化されたかを示す一連のプロットであり、図38Aは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT1におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、点線は群Cに相当し、図38Bは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT2におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、黒線は群Cに相当し、図38Cは、AUCに関して示されるOGTT1及び2に対するベースライングルコース値を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当し、図38Dは、ベースライン体重を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当する。
【図38D】アカゲザルがOGTTプロファイル、OGTT AUC及び体重においてどのように無作為化されたかを示す一連のプロットであり、図38Aは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT1におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、点線は群Cに相当し、図38Bは、化合物又はビヒクルが各群に割り当てられる前の、OGTT2におけるベースライングルコース値を示し、黒四角は群Aに相当し、黒丸、黒線は、群Bに相当し、白丸、黒線は群Cに相当し、図38Cは、AUCに関して示されるOGTT1及び2に対するベースライングルコース値を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当し、図38Dは、ベースライン体重を示し、点描付きのバーは群Aに相当し、網掛けのバーは群Bに相当し、白色のバーは群Cに相当する。
【図39】アカゲザルでの体重における、ビヒクル、FGF21及びFc−FGF21(RG)の影響を示すプロットであり;網掛けのバー1及び2は、低用量での第1及び2週に相当し、白色のバー3及び4は、中程度の用量での第3及び4週に相当し、黒色のバー5及び6は、高用量での第5及び6週に相当し、点描付きのバー7、8及び9は、休薬期間中の第7−9週に相当する。
【図40】アカゲザルでの空腹時インスリン値における、ビヒクル、FGF21及びFc−FGF21(RG)のベースラインに対する空腹時インスリンの%変化を示すプロットであり、網掛けのバー1及び2は低用量での第1及び2週に相当し、白色のバー3及び4は、中程度の用量での第3及び4週に相当し、黒色のバー5及び6は高用量での第5及び6週に相当し、点描付きのバー7及び8は薬期間中の第7及び8週に相当する。
【図41】この試験の第5及び6週の間に得られたアカゲザルの給餌状態でのインスリン値における、高用量でもたらされる、ビヒクル、FGF21及びFc−FGF21(RG)の影響を示すプロットであり、黒色のバーは第5週に相当し、網掛けのバーは第6週に相当する。
【図42】Fc−FGF21(RG)での2週間の高用量治療の終了時に行ったOGTT5のグルコースプロファイルを示すプロットであり、黒丸、黒線は、ビヒクルに相当し、白四角、点線は、FGF21に相当し、黒三角、黒線は、Fc−FGF21(RG)に相当する。
【図43】Fc−FGF21(RG)での2週間の高用量治療の終了時に行ったOGTT5のインスリンプロファイルを示すプロットであり、黒丸、黒線は、ビヒクルに相当し、白四角、点線は、FGF21に相当し、黒三角、黒線は、Fc−FGF21(RG)に相当する。
【図44】アカゲザルの各投与期間(低、中及び高用量)の終了時に測定した、グルコースOGTT AUC1−3を示すプロットであり、白色のバーは、OGTT3中のグルコース測定値から計算したAUC3に相当し、黒色のバーは、OGTT4中のグルコース測定値から計算したAUC4に相当し、網掛けのバーは、OGTT5中のグルコース測定値から計算したAUC5に相当する。
【図45】アカゲザルの各群からの空腹時血漿トリグリセリド値のベースラインからの%変化におけるビヒクル、FGF21及びFc−FGF21(RG)の影響を示すグラフであり;網掛けのバー1及び2は、低用量での第1及び2週に相当し、白色のバー3及び4は、中程度の用量での第3及び4週に相当し、黒色のバー5及び6は、高用量での第5及び6週に相当し、点描付きのバー7、8及び9は、薬期間中の第7−9週に相当する。
【図46】ビヒクル、高用量のFGF21又はFc−FGF21(RG)での治療の第5及び6週の間に測定した場合の、アカゲザルの各群からの給餌状態での血漿トリグリセリド値を示すグラフであり、網掛けのバーは第5週に相当し、黒色のバーは第6週に相当する。
【図47】各注射からおよそ21時間後に得た試料による、投与前及び5、12、19及び26日に測定した、個々のサルのFGF21レベルを示すプロットである。
【図48】各注射からおよそ5日後に得た試料による、投与前及び5、12、19及び26日に測定した、個々のサルのFc−FGF21(RG)レベルを示すプロットである。
【図49】低、中及び高用量のそれぞれの投与後に行われた3回のOGTTから測定されたFGF21及びFc−FGF21(RG)レベルの平均濃度を示すプロットであり;網掛けのバーは低用量でのOGTT3に相当し、黒色のバーは中程度の用量でのOGTT4に相当し、白色のバーは高用量でのOGTT5に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中で開示される方法及び標準的な分子生物学的方法を用いて、半減期延長及び/又は凝集低下などの特性が強化されているヒトFGF21タンパク質を調製することができる。場合によっては、野生型FGF21配列のN末端又はC末端に抗体又はその一部を融合させることにより、半減期をさらに延長させることができる。タンパク質にアミノ酸置換を導入することにより、野生型FGF21タンパク質の半減期をさらに延長させるか又は凝集を低下させることも可能である。このような修飾タンパク質は、本明細書中で、突然変異体又はFGF21突然変異体と呼ばれ、本発明の実施形態を形成する。
【0026】
実施例におけるものを含む、本明細書中で使用される組み換え核酸法は、全般的に、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)又はCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausbelら編、Green Publishers Inc.及びWiley and Sons 1994)(両者ともあらゆる目的に対して参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載されているものである。
【0027】
1.一般的定義
「単離核酸分子」という用語は、(1)全体的な核酸が起源細胞から単離される際に、一緒に天然に見出される、タンパク質、脂質、炭水化物又はその他の物質の少なくとも約50%から分離されているか、(2)「単離核酸分子」が天然で連結されるポリヌクレオチドの全て又は一部に連結されていないか、(3)それが天然では連結されないポリヌクレオチドに操作可能に連結されているか又は(4)より大きいポリヌクレオチド配列の一部としては天然に生じない、本発明の核酸分子を指す。好ましくは、本発明の単離核酸分子は、実質的に、あらゆるその他の夾雑核酸分子又は、ポリペプチド産生又はその治療、診断、予防又は研究用途でのその使用を妨害する、その天然の環境で見出されるその他の夾雑物を含まない。
【0028】
「ベクター」という用語は、宿主細胞にコード情報を移すために使用される何らかの分子(例えば、核酸、プラスミド又はウイルス)を指すために使用される。
【0029】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に適切であり、挿入された異種核酸配列の発現を支配及び/又は調節する核酸配列を含有するベクターを指す。発現には、以下に限定されないが、遺伝子移入、翻訳及びRNAスプライシング(イントロンが存在する場合)などのプロセスが含まれる。
【0030】
「操作可能に連結される」という用語は、そのように記載されるフランキング配列がそれらの通常の機能を発揮するように構成されるか又は組み立てられる、フランキング配列の配置を指すために本明細書中で使用される。従って、コード配列に操作可能に連結されるフランキング配列は、コード配列の、複製、遺伝子移入及び/又は翻訳をもたらすことが可能であり得る。例えば、コード配列は、プロモーターがコード配列の遺伝子移入を支配できる場合、プロモーターに操作可能に連結される。フランキング配列は、それが正確に機能する限り、コード配列に隣接している必要はない。従って、例えば、介在する、非翻訳であるが転写される配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在し得、それでもなお、プロモーター配列は、コード配列に「操作可能に連結される」とみなされ得る。
【0031】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換されているか又は核酸配列で形質転換され、次いで関心のある選択された遺伝子を発現させることが可能である、細胞を指すために使用される。この用語には、その子孫が形態的に又は遺伝子構成について元の親と同一であるにしてもないにしても、選択された遺伝子が存在する限り、親細胞の子孫が含まれる。
【0032】
「単離ポリペプチド」という用語は、(1)起源細胞から単離される際に、それが天然に一緒に見出される、ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物又はその他の物質の少なくとも約50%から分離されているか、(2)「単離核酸分子」が天然で連結されるポリペプチドの全て又は一部に(共有又は非共有結合により)連結されていないか、(3)天然では連結されないポリペプチドに(共有又は非共有結合により)操作可能に連結されているか又は(4)天然では生じない、本発明のポリペプチドを指す。好ましくは、本単離ポリペプチドは、実質的に、あらゆるその他の夾雑ポリペプチド又は、その治療、診断、予防又は研究での使用を妨害する、その天然の環境で見出されるその他の夾雑物を含まない。
【0033】
「天然の」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などの生体物質と関連して使用される場合、天然で見出され、人により操作されていない物質を指す。同様に、「非天然の」とは、本明細書中で使用される場合、天然で見出されないか又は人により構造的に修飾もしくは合成された物質を指す。ヌクレオチドと関連して使用される場合、「天然の」という用語は、塩基アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)及びウラシル(U)を指す。アミノ酸と関連して使用される場合、「天然の」という用語は、20個のアミノ酸、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)及びチロシン(Y)を指す。
【0034】
「FGF21ポリペプチド」という用語は、ヒトにおいて発現される天然の野生型ポリペプチドを指す。この開示の目的に対して、「FGF21ポリペプチド」という用語は、何らかの全長FGF21ポリペプチド、例えば、配列番号2(209個のアミノ酸残基からなり、配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされる。);ポリペプチドの何らかの成熟型、例えば、配列番号4(181個のアミノ酸残基からなり、配列番号3のヌクレオチド配列によりコードされ、全長FGF21ポリペプチドのアミノ末端(即ち、シグナルペプチドを構成する。)の28個のアミノ酸残基が除去されている。)及びそれらの変異体を指すために交換可能に使用され得る。
【0035】
「FGF21ポリペプチド突然変異体」及び「FGF21突然変異体」という用語は、天然のFGF21アミノ酸配列が修飾されている、FGF21ポリペプチド変異体を指す。このような修飾には、以下に限定されないが、非天然のアミノ酸類似体での置換を含む1以上のアミノ酸置換及び短縮が含まれる。従って、FGF21ポリペプチド突然変異体には、以下に限定されないが、本明細書中に記載のような、部位特異的FGF21突然変異体、短縮型FGF21ポリペプチド、タンパク質分解耐性FGF21突然変異体、凝集性低下FGF21突然変異体、FGF21組み合わせ突然変異体及びFGF21融合タンパク質が含まれる。本発明のFGF21突然変異体の具体的な短縮及びアミノ酸置換を識別するために、短縮されるか又は突然変異されたアミノ酸残基の付番は、成熟型181残基FGF21ポリペプチドのものに対応する。
【0036】
本発明のその他の実施形態において、FGF21ポリペプチド突然変異体は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約85%同一であるアミノ酸配列を含むが、この場合、FGF21ポリペプチド突然変異体に対して所望の特性、例えば、タンパク質分解耐性、半減期延長又は凝集性低下特性及びそれらの組み合わせを与える特異的な残基はさらに修飾されていない。言い換えると、タンパク質分解耐性、凝集性低下又はその他の特性をもたらすために修飾されたFGF21突然変異配列における残基を除き、FGF21突然変異配列中の全てのその他のアミノ酸残基の約15%が修飾され得る。例えば、FGF21突然変異体Q173Eにおいて、位置173のグルタミンに対して置換されたグルタミン酸残基を除き、全アミノ酸残基の最大で15%が修飾され得る。さらにその他の実施形態において、FGF21ポリペプチド突然変異体は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約90%又は約95、96、97、98又は99%同一であるアミノ酸配列を含むが、この場合、FGF21ポリペプチド突然変異体のタンパク質分解耐性又は凝集性低下特性をもたらす特異的な残基はさらに修飾されていない。このようなFGF21ポリペプチド突然変異体は、野生型FGF21ポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持する。
【0037】
本発明はまた、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約85%同一であるアミノ酸配列を含むが、FGF21ポリペプチド突然変異体に対して所望の特性、例えば、タンパク質分解耐性、半減期延長又は凝集性低下特性及びそれらの組み合わせを与える特異的な残基がさらに修飾されていない、FGF21ポリペプチド突然変異体をコードする核酸分子も包含する。言い換えると、タンパク質分解耐性、凝集性低下又はその他の特性をもたらすために修飾されたFGF21突然変異配列における残基をコードするヌクレオチドを除き、FGF21突然変異配列中の全てのその他のヌクレオチドの約15%が修飾され得る。例えば、FGF21突然変異体Q173Eにおいて、位置173のグルタミンに対して置換されたグルタミン酸残基をコードするヌクレオチドを除き、全ヌクレオチドの最大で15%が修飾され得る。本発明は、さらに、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約90%又は約95、96、97、98又は99%同一であるアミノ酸配列を含むが、FGF21ポリペプチド突然変異体のタンパク質分解耐性又は凝集性低下特性をもたらす特異的な残基がさらに修飾されていない、FGF21ポリペプチド突然変異体をコードする核酸分子を包含する。このようなFGF21突然変異体は、野生型FGF21ポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持する。
【0038】
本発明はまた、配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含むが、コードされるFGF21ポリペプチド突然変異体のタンパク質分解耐性、凝集性低下特性又はその他の特性をもたらすアミノ酸残基をコードするヌクレオチドがさらに修飾されていない、核酸分子も包含する。言い換えると、タンパク質分解耐性、凝集性低下又はその他の特性もたらすために修飾されたFGF21突然変異配列における残基を除き、FGF21突然変異配列中の全てのその他のアミノ酸残基の約15%が修飾され得る。例えば、FGF21突然変異体Q173Eにおいて、位置173のグルタミンに対して置換されたグルタミン酸残基を除き、全アミノ酸残基の最大で15%が修飾され得る。本発明は、さらに、配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも約90%又は約95、96、97、98又は99%同一であるヌクレオチド配列を含むが、コードされるFGF21ポリペプチド突然変異体のタンパク質分解耐性又は凝集性低下特性をもたらすアミノ酸残基をコードするヌクレオチドがさらに修飾されていない、核酸分子を包含する。このような核酸分子は、野生型FGF21ポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持するFGF21突然変異ポリペプチドをコードする。
【0039】
「生物学的活性のあるFGF21ポリペプチド突然変異体」という用語は、FGF21ポリペプチド突然変異体に導入された修飾のタイプ又は数に関係なく、血糖、インスリン、トリグリセリド又はコレステロール低下能;体重減少能;及び耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性向上能など、野生型FGF21ポリペプチドの活性を保持する本明細書中に記載の何らかのFGF21ポリペプチド突然変異体を指す。野生型FGF21ポリペプチドと比較して、FGF21活性のレベルがある程度低下したFGF21ポリペプチド突然変異体は、それでもなお、生物学的活性のあるFGF21ポリペプチド突然変異体とみなされ得る。
【0040】
「有効量」及び「治療的有効量」という用語はそれぞれ、血糖、インスリン、トリグリセリド又はコレステロール低下能;体重減少能;及び耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性向上能など、野生型FGF21ポリペプチドの1以上の生物学的活性の観察可能なレベルを維持するために使用されるFGF21ポリペプチド突然変異体の量を指す。
【0041】
「医薬的に許容可能な担体」又は「生理学的に許容可能な担体」とは、本明細書中で使用される場合、FGF21ポリペプチド突然変異体の送達を遂行又は促進するために適切な1以上の製剤用物質を指す。
【0042】
「抗原」という用語は、抗体により結合可能であり、さらに、抗原のエピトープに結合可能である抗体を作製するために動物において使用可能である、分子又は分子の一部を指す。抗原は、1以上のエピトープを有し得る。
【0043】
「ネイティブFc」という用語は、単量体であれ、マルチマー形態であれ、全抗体の消化の結果得られるか又はその他の手段により作製される非抗原結合断片の配列を含む、分子又は配列を指し、ヒンジ領域を含有し得る。ネイティブFcの元の免疫グロブリン源は、好ましくは、ヒト起源のものであり、何らかの免疫グロブリンであり得るが、IgG1及びIgG2が好ましい。ネイティブFc分子は、共有(即ちジスルフィド結合)及び非共有結合により二量体又はマルチマー形態に連結され得る単量体ポリペプチドから構成される。ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA及びIgE)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1及びIgGA2)に依存して、1から4の範囲である。ネイティブFcの一例は、IgGのパパイン消化の結果得られるジスルフィド結合二量体である(Ellisonら、1982、Nucleic Acids Res.10:4071−9)。「ネイティブFc」という用語は、本明細書中で使用される場合、単量体、二量体及びマルチマー形態に対する総称である。Fcポリペプチド配列の例は配列番号13で与えられる。
【0044】
「Fc変異体」という用語は、ネイティブFcから修飾されるが、依然としてサルベージ受容体、FcRn(新生児Fc受容体)に対する結合部位を含む分子又は配列を指す。国際公開WO97/34631及びWO96/32478は、代表的なFc変異体ならびにサルベージ受容体との相互作用を述べ、参照により本明細書によって組み込まれる。従って、「Fc変異体」という用語は、非ヒトネイティブFcからヒト化される分子又は配列を含み得る。さらに、ネイティブFcは、本発明のFGF21突然変異体の融合分子に必要ではない構造的特性又は生物学的活性をもたらすので除去され得る領域を含む。従って、「Fc変異体」という用語は、1以上のネイティブFc部位又は残基を欠くか又は1以上のFc部位又は残基が修飾されており、(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択される宿主細胞との不適合性、(3)選択される宿主細胞での発現時のN末端の不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合又は(7)抗体依存性細胞毒性(ADCC)に影響を与えるか又はこれらに関与する、分子又は配列を含む。Fc変異体を本明細書中、下記でさらに詳述する。
【0045】
「Fcドメイン」という用語は、上記で定義されるような、ネイティブFc及びFc変異体及び配列を包含する。Fc変異体及びネイティブFc分子と同様に、「Fcドメイン」という用語は、全抗体から消化されたものであれ又はその他の手段により作製されたものであれ、単量体又はマルチマー形態の分子を含む。本発明のある実施形態において、Fcドメインは、例えばFcドメインとFGF21配列との間の共有結合を介して、FGF21又はFGF21突然変異体(FGF21の短縮型又はFGF21突然変異体を含む。)に融合され得る。このような融合タンパク質は、Fcドメインの結合を介してマルチマーを形成し得、これらの融合タンパク質及びそれらのマルチマーの両者とも本発明の態様である。
【0046】
2.部位特異的FGF21突然変異体
「部位特異的FGF21突然変異体」又は「置換FGF21突然変異体」という用語は、天然のFGF21ポリペプチド配列のアミノ酸配列(例えば、配列番号2及び4及びその変異体)とは異なるアミノ酸配列を有するFGF21突然変異ポリペプチドを指す。部位特異的FGF21突然変異体は、FGF21ポリペプチドの特定の位置に、保存的又は非保存的の何れかのアミノ酸置換を導入することにより、及び天然もしくは非天然のアミノ酸を用いて、作製することができる。
【0047】
「保存アミノ酸置換」は、その位置のアミノ酸残基の極性又は電荷に殆ど又は全く影響がないような、非ネイティブ残基(即ち、野生型FGF21ポリペプチド配列のある一定の位置で見出されない残基)でのネイティブアミノ酸残基(即ち、野生型FGF21ポリペプチド配列のある一定の位置で見出される残基)の置換を含み得る。保存的アミノ酸置換は、生体系での合成によるものではなく化学的ペプチド合成により一般に組み込まれる非天然のアミノ酸残基も包含する。これらは、ペプチド模倣物及びアミノ酸部分のその他の反転型(reversed form)又は逆転型(inverted form)を含む。
【0048】
天然の残基は、共通の側鎖の特性に基づきクラスに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0049】
保存的置換には、これらのクラスのうち1つのメンバーの、同じクラスの別のメンバーに対する交換が含まれ得る。非保存置換には、これらのクラスのうち1つのメンバーの、別のクラスからのメンバーに対する交換が含まれ得る。
【0050】
所望のアミノ酸置換(保存的であるか又は非保存的であるか)は、置換が所望されるような時に当業者により決定され得る。アミノ酸置換の代表的(であるが限定的でない)一覧を表1で示す。
【0051】
【表1】

【0052】
3.短縮FGF21ポリペプチド
本発明のある実施形態は、成熟FGF21ポリペプチドの短縮型に関する。本発明のこの実施形態は、成熟FGF21ポリペプチドの非短縮型に対して同様である、いくつかの例においてはそれを上回る、活性を提供することが可能である短縮FGF21ポリペプチドを同定するための取り組みから得られた。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「短縮FGF21ポリペプチド」という用語は、アミノ酸残基がFGF21ポリペプチドのアミノ末端(又はN末端)から除去されているか、アミノ酸残基がFGF21ポリペプチドのカルボキシル末端(又はC末端)から除去されているか又はアミノ酸残基がFGF21ポリペプチドのアミノ末端及びカルボキシル末端の両方から除去されている、FGF21ポリペプチドを指す。本明細書中の実施例3及び6に記載のように本明細書中で開示される様々な短縮型を調製した。
【0054】
実施例4に記載のようなインビトロELK−ルシフェラーゼアッセイを用いて、N末端が短縮されたFGF21ポリペプチド及びC末端が短縮されたFGF21ポリペプチドの活性をアッセイすることができる。短縮FGF21ポリペプチドの活性を調べるために使用することができるインビトロアッセイの具体的な詳細は実施例4で見出すことができる。
【0055】
本発明の短縮FGF21ポリペプチドの活性は、実施例5及び7で示されるようなob/obマウスなど、インビボアッセイで評価することもできる。一般に、短縮FGF21ポリペプチドのインビボ活性を評価するために、試験動物にその短縮FGF21ポリペプチドを腹腔内投与し得る。所望の温置時間(例えば1時間以上)後、血液試料を採取し、血糖値を測定することができる。短縮FGF21ポリペプチドの活性を調べるために使用することができるインビボアッセイの具体的な詳細は実施例5及び7で見出すことができる。
【0056】
a.N末端短縮
本発明のある実施形態において、N末端短縮は、成熟FGF21ポリペプチドのN末端からの1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸残基を含む。例えば、実施例5及び図3で示されるように、9アミノ酸残基未満のN末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチドは、成熟FGF21ポリペプチドの、個体における血糖低下能を保持する。従って、特定の実施形態において、本発明は、1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸残基のN末端短縮がある、成熟FGF21ポリペプチド又はFGF21ポリペプチド突然変異体の短縮型を包含する。
【0057】
b.C末端短縮
本発明のある実施形態において、C末端短縮は、成熟FGF21ポリペプチドのC末端からの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個のアミノ酸残基を含む。例えば、実施例4及び図1Bで示されるように、13アミノ酸残基未満のC末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチドは、インビトロELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて、野生型FGF21の効力の少なくとも50%の効力を示し、このことから、これらのFGF21突然変異体は、成熟FGF21ポリペプチドの、個体中での血糖低下能を保持する。従って、特定の実施形態において、本発明は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個のアミノ酸残基のC末端短縮がある、成熟FGF21ポリペプチド又はFGF21ポリペプチド突然変異体の短縮型を包含する。
【0058】
c.N末端及びC末端短縮
本発明のある実施形態において、短縮FGF21ポリペプチドは、N末端及びC末端短縮の組み合わせを有し得る。N末端及びC末端短縮の組み合わせを有する短縮FGF21ポリペプチドは、N末端又はC末端短縮の何れかのみがある対応する短縮FGF21ポリペプチドと共通の活性を有する。言い換えると、9アミノ酸残基未満のN末端短縮及び13アミノ酸残基未満のC末端短縮の両方がある短縮FGF21ポリペプチドは、9アミノ酸残基未満のN末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチド又は13アミノ酸残基未満のC末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチドと同様であるか又はより高い血糖低下能を保持する。従って、特定の実施形態において、本発明は、1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸残基のN末端短縮及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個のアミノ酸残基のC末端短縮の両方を有する、成熟FGF21ポリペプチド又はFGF21ポリペプチド突然変異体の短縮型を包含する。
【0059】
本発明の全てのFGF21突然変異体と同様に、短縮FGF21ポリペプチドは、場合によっては、アミノ末端メチオニン残基を含み得、これは、定方向突然変異により又は細菌発現プロセスの結果として導入され得る。
【0060】
本発明の短縮FGF21ポリペプチドは、実施例3及び6に記載のように調製され得る。標準的な分子生物学的技術に精通している当業者は、本開示と組み合わせて、本発明の短縮FGF21ポリペプチドを作製し、使用するためにその知識を使用することができる。標準的技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に対して使用することができる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、上記(これは、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)を参照。酵素反応及び精製技術は、製造者の説明書に従い、当技術分野で一般的に遂行されるように又は本明細書中に記載のように行われ得る。別段の定義がない限り、本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医薬化学に関連して利用される命名法及びこれらの実験室での手順及び技術は、周知のものであり、当技術分野で一般的に使用される。化学合成;化学分析;医薬調製、製剤及び送達;及び患者の治療に対して標準的技術を使用することができる。
【0061】
本発明の短縮FGF21ポリペプチドはまた、短縮FGF21ポリペプチドにさらなる特性を付与し得る別の物体に融合させることができる。本発明のある実施形態において、短縮FGF21ポリペプチドをFc配列に融合させることができる。このような融合は、公知の分子生物学的方法及び/又は本明細書中で提供される指針を用いて遂行され得る。このような融合ポリペプチドの利点、ならびにこのような融合ポリペプチドを作製するための方法を本明細書中でさらに詳しく考察する。
【0062】
4.タンパク質分解耐性FGF21突然変異体
実施例8に記載のように、成熟FGF21は、インビボ分解を受けることが分かり、これは、最終的には、タンパク質分解性攻撃から生じることが突き止められた。成熟FGF21のインビボ分解により、有効半減期が短縮されることが分かり、これは、分子の治療可能性に悪影響を与え得る。従って、タンパク質分解に耐性を示すFGF21突然変異体を同定するために直接的な実験(directed study)を行った。この実験の結果として、特にタンパク質分解を受けやすいと判定された成熟FGF21ポリペプチドにおける部位には、位置4−5、20−21、151−152及び171−172のアミノ酸残基の間のペプチド結合が含まれる。
【0063】
タンパク質の活性に許容できない程度まで影響を及ぼすことなく、観察されるタンパク質分解効果を消去する特定の置換を同定するために、幅広いが集中的であり直接的な実験を行った。表8及び11は、調製し、試験した突然変異体のいくつかに脚光を当てる。例えば実施例13及び14に記載のように、全てのFGF21突然変異体が、理想的プロファイルを示した訳ではなく;いくつかの突然変異体は、FGF21活性を減弱させるが、タンパク質分解耐性をもたらした。その他の突然変異体は、FGF21活性を保持したが、タンパク質分解耐性をもたらさなかった。例えば、FGF21 P171Gを含むいくつかの突然変異体は、野生型FGF21と同レベルの活性を保持し、一方で、タンパク質分解性分解に対する耐性も示した。
【0064】
所望のタンパク質分解耐性FGF21突然変異体を同定するためのある選択基準は、FGF21突然変異の活性が、基本的に野生型FGF21の活性と同じであるか又はそれより大きいということであった。従って、本発明の別の実施形態は、タンパク質分解に耐性があり、基本的に野生型FGF21と同じであるか又はそれより大きい活性を依然として保持する、FGF21突然変異体に関する。場合によってはあまり所望されないが、タンパク質分解に耐性があるが、ある程度の活性低下を示すFGF21突然変異体は、本発明の別の実施形態を形成する。場合により、タンパク質分解の程度を維持することが所望され得、結果として、ある程度のタンパク質分解が起こるFGF21突然変異体も、本発明の別の実施形態を形成する。
【0065】
本発明の全てのFGF21突然変異体と同様に、本発明のタンパク質分解耐性のあるFGF21突然変異体は、本明細書中に記載のように調製することができる。当業者、例えば、標準的分子生物学技術に精通している者は、本開示と組み合わせて、本発明のタンパク質分解耐性のあるFGF21突然変異体を作製し、使用するためにその知識を使用することができる。標準的技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に対して使用することができる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、上記を参照(これは、あらゆる目的に対して参照により本明細書中に組み込まれる。)。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般に遂行されるように又は本明細書中に記載のように、製造者の説明書に従い行われ得る。具体的な定義がない限り、本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医薬化学と関連して利用される命名法及びこれらの実験室での手順及び技術は、周知のものであり、当技術分野で一般的に使用される。化学合成;化学分析;医薬調製、製剤及び送達;及び患者の治療に対して標準的技術を使用することができる。
【0066】
本発明のタンパク質分解耐性のFGF21突然変異体は、タンパク質分解耐性のあるFGF21突然変異体にさらなる特性をもたらし得る別のものと融合され得る。本発明のある実施形態において、タンパク質分解耐性のあるFGF21突然変異体は、IgG Fc配列、例えば、配列番号13と融合され得る。このような融合は、公知の分子生物学的方法及び/又は本明細書中で提供される指針を用いて遂行され得る。このような融合ポリペプチドの利点、ならびにこのような融合ポリペプチドを作製するための方法は公知であり、本明細書中でさらに詳しく考察する。
【0067】
5.凝集性低下FGF21突然変異体
実施例15に記載のように、野生型FGF21ポリペプチドのある特性は、その凝集傾向である。約5mg/mLを超える濃度では、凝集速度は室温において高い。本明細書中で示され、記載されるように、野生型FGF21ポリペプチドに対する凝集速度は、濃度及び温度の両方に依存する。
【0068】
治療製剤に関連してなど、これらの濃度で野生型FGF21を用いて作業する場合、凝集が課題であることが判明し得る。従って、FGF21凝集の低下を示すFGF21突然変異体を同定するために、直接的試験(directed study)を行った。次に、結果として得られたFGF21突然変異体を、様々な濃度での凝集傾向について試験した。
【0069】
野生型FGF21の観察される凝集的影響をなくすか又は軽減するが、一方で許容できない程度までタンパク質の活性に影響を与えない特定の置換を同定するために、幅広いが集中的で直接的な試験(directed study)を行った。適切な凝集性低下突然変異体を同定するためのアプローチを実施例15に記載する。表16は、調製し、試験した突然変異体のいくつかに脚光を当てる。例えば、実施例17で記載されるように、FGF21突然変異体の全てが理想的プロファイルを示した訳ではなかった。FGF21 L58Eなどのいくつかの突然変異体は、FGF21活性を低下させ、さらに試験しなかった。FGF21 A134Eなどのその他の突然変異体は、FGF21活性を保持したが、凝集特性低下は示さなかった。FGF21 L98Rなどのいくつかの突然変異体は、FGF21活性を保持し、また凝集性低下も示した。ある突然変異体、FGF21 A45Kは、驚くべきことに、FGF21活性が向上し、一方で凝集特性低下も示した。
【0070】
所望の凝集性低下FGF21突然変異体を同定するためのある選択基準は、基本的にFGF21突然変異体の活性が、基本的に野生型FGF21の活性と同じであるか又はそれより大きいということであった。従って、本発明の別の実施形態は、野生型FGF21と同等であるか又はそれより大きいFGF21活性を依然として保持しながら、凝集特性低下を示すFGF21突然変異体に関する。場合によってはあまり所望されないが、凝集特性が低下しているが、ある程度のFGF21活性低下を示すFGF21突然変異体は、本発明の別の実施形態を形成する。場合により、凝集度を維持することが所望され得、結果として、ある程度の凝集が起こるFGF21突然変異体も、本発明の別の実施形態を形成する。
【0071】
本発明の全てのFGF21突然変異体と同様に、本発明の凝集性低下FGF21突然変異体は、本明細書中に記載のように調製され得る。標準的分子生物学的技術に精通している当業者は、本開示と組み合わせて、本発明の凝集性低下FGF21突然変異体を作製し、使用するためにその知識を使用することができる。標準的技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に対して使用することができる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、上記を参照(これは、あらゆる目的に対して参照により本明細書中に組み込まれる。)。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般に遂行されるように又は本明細書中に記載のように、製造者の説明書に従い行われ得る。具体的な定義がない限り、本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医薬化学と関連して利用される命名法及びこれらの実験室での手順及び技術は、周知のものであり、当技術分野で一般的に使用される。標準的技術は、化学合成;化学分析;医薬調製、製剤及び送達;及び患者の治療に対して使用され得る。
【0072】
本発明の凝集性低下FGF21突然変異体は、凝集性低下FGF21突然変異体にさらなる特性をもたらし得る別のものに融合され得る。本発明のある実施形態において、凝集性低下FGF21突然変異体は、IgG Fc配列、例えば、配列番号13に融合され得る。このような融合は、公知の分子生物学的方法及び/又は本明細書中で提供される指針を用いて遂行され得る。このような融合ポリペプチドの利点、ならびにこのような融合ポリペプチドを作製するための方法を本明細書中でさらに詳しく考察する。
【0073】
6.FGF21組み合わせ突然変異体
本明細書中に記載のように、野生型FGF21配列は、FGF21が治療用分子として使用される場合、重大な課題をもたらし得るいくつかの特性を有する。これらの課題の中でも、タンパク質の分解に対する感受性及び高濃度でのその凝集傾向が挙げられる。これらの各課題を克服するFGF21ポリペプチドを同定するための多大な努力の後、野生型FGF21の活性と同等であるか又はそれより大きい活性レベルを維持しながら、タンパク質分解耐性をもたらすアミノ酸置換及び凝集性低下特性をもたらすアミノ酸置換が、単一のポリペプチド配列で付加的又は相乗的に組み合わせられ得るか否かを調べるために、直接的試験(directed study)を行った。ある一定のポリペプチドにおける複数の突然変異の導入が、ときにタンパク質の発現、活性及び続く製造に悪影響を与え得ることが当技術分野で知られているので、これは相当に困難な課題であった。
【0074】
驚くべきことに、例えば、実施例19及び20で示されるように、製薬学的特性が向上したFGF21突然変異体を作製するために、いくつかのFGF21突然変異体の所望の特性が実際に相加的又は相乗的に組み合わせられ得ることが分かった。タンパク質分解に対する耐性があるFGF突然変異体は、凝集速度が低下しており、これは、本明細書中で開示される野生型FGF21と同等であるか又はそれより大きい活性を以前として保持する。
【0075】
所望のFGF21組み合わせ突然変異体を同定するためのある選択基準は、FGF21突然変異の活性が、野生型FGF21の活性と同等であるか又はそれより大きいことであった。従って、本発明の別の実施形態は、タンパク質分解耐性があり、野生型FGF21と同等であるか又はそれより大きいFGF21活性を以前として保持しながら、凝集特性が低下しているFGF21突然変異体に関する。場合によってはあまり所望されないが、タンパク質分解耐性があり、凝集性が低下しているが、ある程度のFGF21活性低下を示すFGF21突然変異体は、本発明の別の実施形態を形成する。場合により、タンパク質分解度及び/又は凝集度を維持することが所望され得、結果として、ある程度のタンパク質分解及び/又は凝集が起こるFGF21突然変異体も、本発明の別の実施形態を形成する。
【0076】
本発明の全てのFGF21突然変異体と同様に、本発明のFGF21組み合わせ突然変異体は、本明細書中に記載のように調製することができる。標準的分子生物学的技術に精通している当業者は、本開示と組み合わせて、本発明のFGF21組み合わせ突然変異体を作製し、使用するためにその知識を使用することができる。標準的技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に対して使用することができる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、上記を参照(これは、あらゆる目的に対して参照により本明細書中に組み込まれる。)。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般に遂行されるように又は本明細書中に記載のように、製造者の説明書に従い行われ得る。具体的な定義がない限り、本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医薬化学と関連して利用される命名法及びこれらの実験室での手順及び技術は、周知のものであり、当技術分野で一般的に使用される。化学合成;化学分析;医薬調製、製剤及び送達;及び患者の治療に対して標準的技術を使用することができる。
【0077】
本発明のFGF21組み合わせ突然変異体は、FGF21組み合わせ突然変異体にさらなる特性をもたらし得る別のものと融合することができる。本発明のある実施形態において、FGF21組み合わせ突然変異体は、IgG Fc配列、例えば、配列番号13に融合され得る。このような融合は、公知の分子生物学的方法及び/又は本明細書中で提供される指針を用いて遂行され得る。このような融合ポリペプチドの利点、ならびにこのような融合ポリペプチドを作製するための方法を本明細書中でさらに詳しく考察する。
【0078】
7.FGF21融合タンパク質
本明細書中で使用される場合、「FGF21融合ポリペプチド」又は「FGF21融合タンパク質」という用語は、本明細書中に記載の何らかのFGF21ポリペプチド突然変異体のN末端又はC末端での1以上のアミノ酸残基(異種タンパク質又はペプチドなど)の融合を指す。
【0079】
異種ペプチド及びポリペプチドには、以下に限定されないが、FGF21ポリペプチド突然変異体の検出及び/又は単離を可能にするエピトープ;膜貫通受容体タンパク質又はその一部、例えば、細胞外ドメイン又は膜貫通及び細胞内ドメインなど;膜貫通受容体タンパク質に結合するリガンド又はその一部;触媒的に活性のある酵素又はその一部;オリゴマー化を促進するポリペプチド又はペプチド、例えばロイシンジッパードメインなど;安定性を向上させる、ポリペプチド又はペプチド、例えば免疫グロブリン定常領域など;機能的もしくは非機能的抗体又はその重もしくは軽鎖など;及び本発明のFGF21ポリペプチド突然変異体とは異なる、治療活性などの活性を有するポリペプチドが含まれる。また、ヒト血清アルブミン(HSA)に融合されたFGF21突然変異体も本発明に包含される。
【0080】
FGF21融合タンパク質は、FGF21ポリペプチド突然変異体のN末端又はC末端の何れかに異種配列を融合することにより作製され得る。本明細書中に記載のように、異種配列は、アミノ酸配列又は非アミノ酸含有ポリマーであり得る。異種配列は、FGF21ポリペプチド突然変異体に直接又はリンカーもしくはアダプター分子を介して融合され得る。リンカー又はアダプター分子は、1以上のアミノ酸残基(又は−マー)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8又は9残基(又は−マー)、好ましくは10から50アミノ酸残基(又は−マー)、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45又は50残基(又は−マー)及びより好ましくは15から35アミノ酸残基(又は−マー)であり得る。リンカー又はアダプター分子はまた、融合部分の分離を可能にするために、DNA制限エンドヌクレアーゼに対するか又はプロテアーゼに対する切断部位とともに設計することもできる。
【0081】
a.Fc融合物
本発明のある実施形態において、FGF21ポリペプチド突然変異体は、ヒトIgGのFc領域の1以上のドメインに融合される。抗体は、2つの機能的に独立した部分、抗原に結合する、「Fab」として知られる可変ドメインと、補体活性化及び食細胞による攻撃などのエフェクター機能に関与する「Fc」として知られる定常ドメインと、を含む。Fcは、血清半減期が長く、一方でFabは短命である(Caponら、1989、Nature 337:525−31)。治療用タンパク質と一緒に連結される場合、Fcドメインは、半減期を延長させ得るか又はFc受容体結合、プロテインA結合、補体結合及びおそらくは胎盤移行などの機能を組み込み得る(Caponら、1989)。
【0082】
インビボでの薬理学的分析から、ヒトFGF21の半減期は、急速なクリアランス及びインビボでの分解のためにマウスにおいて約1時間と短いことが示された。従って、FGF21の半減期を延長させるために、Fc配列をFGF21ポリペプチドのN又はC末端に融合させた。野生型FGF21へのFc領域の融合、特に野生型FGF21のN末端へ融合されるFcによって、予想通りに半減期は延長されなかったが、しかし、これにより、インビボでのFGF21のタンパク質分解性分解の研究及びこのような分解に耐性があったFGF21突然変異体の同定につながった。このような突然変異体は、例えば実施例8及び11に記載されており、この半減期は野生型FGF21よりも長い。これら及びその他のFGF21融合タンパク質は、本発明の実施形態を形成する。
【0083】
本開示を通じて、Fc−FGF21は、Fc配列がFGF21のN末端に融合されている融合タンパク質を指す。同様に、本開示を通じて、FGF21−Fcは、Fc配列がFGF21のC末端に融合されている融合タンパク質を指す。
【0084】
結果的に得られるFGF21融合タンパク質は、例えば、プロテインAアフィニティーカラムの使用により、精製することができる。Fc領域に融合されたペプチド及びタンパク質は、未融合のものよりもインビボで半減期が実質的に長くなることが分かった。また、Fc領域への融合により、融合ポリペプチドの二量体化/マルチマー化が可能となる。Fc領域は、天然のFc領域であり得るか又は、治療的な質、循環時間又は凝集低下など、ある種の質を向上させるために改変され得る。
【0085】
抗体の「Fc」ドメインとの融合によるタンパク質治療薬の有用な修飾は国際公開WO00/024782(その全体において参照により本明細書によって組み込まれる。)で詳細に考察されている。この文書は、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン又はFc領域などの「ビヒクル」への連結を考察する。
【0086】
b.融合タンパク質リンカー
本発明の融合タンパク質を形成させる場合、必要ではないが、リンカーを使用することができる。存在する場合、リンカーは主にスペーサーとして使用されるので、リンカーの化学構造は重要ではないことがある。このリンカーは、ペプチド結合により一緒に連結されるアミノ酸から構成され得る。本発明のある実施形態において、このリンカーは、ペプチド結合により連結される1から20個のアミノ酸から構成され、この場合、このアミノ酸は、20種類の天然アミノ酸から選択される。様々な実施形態において、1から20個のアミノ酸は、アミノ酸、グリシン、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン及びリジンから選択される。ある実施形態において、リンカーは、グリシン及びアラニンなどの立体障害のないアミノ酸から主に構成される。ある実施形態において、リンカーは、ポリグリシン((Gly)(配列番号29)及び(Gly)(配列番号30)など)、ポリアラニン、グリシン及びアラニンの組み合わせ(ポリ(Gly−Ala)など)又はグリシン及びセリンの組み合わせ(ポリ(Gly−Ser)など)である。その他の適切なリンカーには、(Gly)−Ser−(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号23)、(Gly)−Ser−(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号31)、(Gly)−Lys−(Gly)(配列番号32)、(Gly)−Asn−Gly−Ser−(Gly)(配列番号33)、(Gly)−Cys−(Gly)(配列番号34)及びGly−Pro−Asn−Gly−Gly(配列番号35)が含まれる。15個のアミノ酸残基のリンカーが、FGF21融合タンパク質に対して特に良好に役立つことが分かったが、その一方で、本発明は、あらゆる長さ又は組成のリンカーを企図する。
【0087】
本明細書中に記載のリンカーは典型例であり、それよりかなり長い、及びその他の残基を含むリンカーが本発明により企図される。非ペプチドリンカーもまた、本発明により企図される。例えば、−NH−(CH−C(O)−(ここで、s=2から20である。)などのアルキルリンカーが使用され得る。これらのアルキルリンカーは、以下に限定されないが、低級アルキル(例えば、C1−C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH又はフェニルを含む、何らかの立体障害とならない基によりさらに置換され得る。典型的な非ペプチドリンカーは、ポリエチレングリコールリンカーであり、このリンカーの分子量は、100から5000kD、例えば100から500kDである。
【0088】
8.化学的に修飾されたFGF21突然変異体
本明細書中に記載のFGF21の短縮型を含む、本明細書中に記載のFGF21ポリペプチド突然変異体の化学的修飾形態は、本明細書中に記載の開示を前提として、当業者により調製され得る。このような化学的修飾FGF21突然変異体は、化学的修飾FGF21突然変異体が、FGF21突然変異体に天然に結合される分子のタイプ又は場所の何れかにおいて、非修飾FGF21突然変異体とは異なるように改変される。化学的修飾FGF21突然変異体は、1以上の天然に結合される化学基の欠失により形成される分子を含み得る。
【0089】
ある実施形態において、本発明のFGF21ポリペプチド突然変異体は、1以上のポリマーの共有結合により修飾され得る。例えば、選択されるポリマーは、一般に、それが結合されるタンパク質が生理的環境などの水性環境中で沈殿しないように、水溶性である。ポリマーの混合物は適切なポリマーの範囲内に含まれる。好ましくは、最終生成調製物の治療的使用のために、そのポリマーは医薬的に許容可能であろう。本発明のFGF21ポリペプチド突然変異体に結合された非水溶性ポリマーも本発明の態様を形成する。
【0090】
典型的なポリマーはそれぞれ、あらゆる分子量のものであり得、分岐又は非分岐型であり得る。このポリマーはそれぞれ、一般に、約2kDaから約100kDaの間の平均分子量を有する(「約」という用語は、水溶性ポリマーの調製物中で、ある分子は言及された分子量よりも大きく、ある分子はそれより小さいことを示す。)。各ポリマーの平均分子量は、好ましくは、約5kDaから約50kDaの間、より好ましくは約12kDaから約40kDaの間、及び最も好ましくは約20kDaから約35kDaの間である。
【0091】
適切な水溶性ポリマー又はそれらの混合物には、以下に限定されないが、N−結合型又はO結合型炭水化物、糖、リン酸、ポリエチレングリコール(PEG)(モノ−(C−C10)、アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコールを含む、タンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態を含む。)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン(例えば約6kDの低分子量のデキストランなど)、セルロース又はその他の炭水化物に基づくポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)及びポリビニルアルコールが含まれる。共有結合したFGF21ポリペプチド突然変異体マルチマーを調製するために使用することができる二官能性架橋分子も本発明に包含される。ポリシアル酸に共有結合したFGF21突然変異体も本発明に包含される。
【0092】
本発明のある実施形態において、FGF21突然変異体は、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを含む、1以上の水溶性ポリマーを含むように共有結合により又は化学的に修飾される。例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;及び同第4,179,337号参照。本発明のある実施形態において、FGF21突然変異体は、以下に限定されないが、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、別の炭水化物に基づくポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール又はこのようなポリマーの混合物を含む、1以上のポリマーを含む。
【0093】
本発明のある実施形態において、FGF21突然変異体は、PEGサブユニットによって共有結合により修飾される。ある実施形態において、1以上の水溶性ポリマーが、FGF21突然変異体の1以上の具体的な位置(例えばN末端)に結合される。ある実施形態において、1以上の水溶性ポリマーが、FGF21突然変異体の1以上の側鎖に無作為に結合される。ある実施形態において、FGF21突然変異体の治療能を向上させるために、PEGが使用される。ある種のこのような方法は、例えば米国特許第6,133,426号(あらゆる目的のために参照により本明細書によって組み込まれる。)で考察される。
【0094】
本発明の実施形態において、ポリマーがPEGである場合、このPEG基は、何らかの都合の良い分子量のものであり得、直線状又は分岐状であり得る。PEG基の平均分子量は、好ましくは約2kDから約100kDa及びより好ましくは約5kDaから約50kDaの範囲、例えば、10、20、30、40又は50kDaである。このPEG基は、一般に、FGF21突然変異体上の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ又はエステル基)に対する、PEG部分上の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール又はエステル基)を通じたアシル化又は還元的アルキル化を介して、FGF21突然変異体に結合される。
【0095】
本発明のFGF21突然変異体を含むポリペプチドのPEG付加は、具体的に、当技術分野で公知のPEG付加反応の何れかを用いて遂行することができる。このような反応は、例えば、次の文献:Francisら、1992、Focus on Growth Factors 3:4−10;欧州特許第0 154 316号及び同第0 401 384号;及び米国特許第4,179,337号に記載されている。例えば、PEG付加は、本明細書中に記載のような反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)を用いて、アシル化反応又はアルキル化反応を介して行うことができる。アシル化反応の場合、選択されたポリマーは、1個の反応性エステル基を有するはずである。還元的アルキル化の場合、選択されたポリマーは、1個の反応性アルデヒド基を有するはずである。反応性アルデヒドは、例えば、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド(これは耐水性である。)又モノC−C10アルコキシもしくはそのアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5,252,714号参照)。
【0096】
本発明のある実施形態において、ポリペプチドへのPEG基の結合のための有用なストラテジーは、溶液中での抱合体結合(conjugate linkage)の形成を通じて、他方のPEGに対して互いに反応性がある特別な官能性をそれぞれが有する、ペプチド及びPEG部分を組み合わせることを含む。このペプチドは、従来からの固相合成により容易に調製することができる。このペプチドは、特定の部位で適切な官能基で「予め活性化」されている。PEG部分と反応させる前に、前駆体を精製し、完全に特性評価する。PEGでのペプチドの結合は通常、水相で行われ、逆相分析的HPLCにより容易に監視することができる。PEG付加ペプチドは、分取HPLCにより容易に精製し、分析的HPLC、アミノ酸分析及びレーザー脱離質量分析により特性評価することができる。
【0097】
多糖ポリマーは、タンパク質修飾のために使用することができる水溶性ポリマーの別のタイプである。従って、多糖ポリマーに融合された本発明のFGF21突然変異体は、本発明の実施形態を形成する。デキストランは、α1−6結合により主に連結されるグルコースの個々のサブユニットから構成される多糖ポリマーである。デキストランそれ自身は、多くの分子量範囲で入手可能であり、約1kDから約70kDの分子量で容易に入手可能である。デキストランは、それ単独での又は別のビヒクル(例えばFC)と組み合わせた、ビヒクルとしての使用に適切な水溶性ポリマーである。例えば、国際公開WO96/11953参照。治療用又は診断用免疫グロブリンに結合されたデキストランの使用が報告されている。例えば、欧州特許公開第0 315 456(参照により本明細書によって組み込まれる。)参照。本発明は、約1kDから約20kDのデキストランの使用も包含する。
【0098】
一般に、化学修飾は、活性化ポリマー分子とタンパク質を反応させるために使用される何らかの適切な条件下で行うことができる。化学的修飾ポリペプチドを調製するための方法は、一般に、(a)FGF21ポリペプチド突然変異体が1以上のポリマー分子に結合されるようになる条件下で、活性化ポリマー分子(ポリマー分子の反応性エステル又はアルデヒド誘導体など)とポリペプチドを反応させ、(b)反応産物を得る、段階を含む。最適反応条件は、既知のパラメーター及び所望の結果に基づき決定される。例えば、ポリマー分子のタンパク質に対する比が大きいほど、結合されるポリマー分子の割合が高くなる。本発明のある実施形態において、化学的修飾FGF21突然変異体は、アミノ末端に1個のポリマー分子部分を有し得る(例えば、米国特許第5,234,784号参照)。
【0099】
本発明の別の実施形態において、FGF21ポリペプチド突然変異体をビオチンに化学的にカップリングすることができる。次に、ビオチン/FGF21ポリペプチド突然変異体をアビジンに結合させ、その結果として、アビジン、四価アビジン/ビオチン/FGF21ポリペプチド突然変異体が得られる。FGF21ポリペプチド突然変異体をジニトロフェノール(DNP)又はトリニトロフェノール(TNP)に共有結合によりカップリングすることもでき、得られた複合体を抗−DNP又は抗−TNP−IgMで沈降させ、10価の10マー複合体を形成させる。
【0100】
一般に、本化学的修飾FGF21突然変異体の投与により改善させるか又は調整することができる状態には、FGF21ポリペプチド突然変異体に対して本明細書中に記載されるものが含まれる。しかし、本明細書中で開示される化学的修飾FGF21突然変異体は、非修飾FGF21突然変異体と比較した場合、さらなる活性を有し得、生物活性又はその他の特性(半減期の短縮又は延長など)の低下又は向上があり得る。
【0101】
9.FGF21突然変異体の治療組成物及びその投与
FGF21突然変異体を含む治療組成物は本発明の範囲内であり、特性の向上を示すいくつかの突然変異FGF21配列の識別を踏まえて、具体的に企図される。このようなFGF21突然変異体医薬組成物は、投与方式との適合性のために選択された医薬的に又は生理学的に許容可能な製剤用物質と合わせて、FGF21ポリペプチド突然変異体の治療的有効量を含み得る。
【0102】
許容可能な製剤用物質は、好ましくは、使用される投与量及び濃度で受容者に対して無毒性である。
【0103】
本医薬組成物は、例えば、本組成物の、pH、浸透圧、粘性、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着又は浸透を、修飾、維持又は保存するための製剤用物質を含有し得る。適切な製剤用物質には、以下に限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど)、抗菌剤、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤(ホウ酸、重炭酸、Tris−HCl、クエン酸、リン酸又はその他の有機酸など)、増量剤(マンニトール又はグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど)、充填剤、単糖類、二糖類及びその他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど)、着色料、香味料及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、保存料(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど)、縣濁剤、界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート20又はポリソルベート80などのポリソルベート;トライトン;トロメタミン;レシチン;コレステロール又はチロキサパルなど)、安定性促進剤(スクロース又はソルビトールなど)、等張性促進剤(ハロゲン化アルカリ金属−好ましくは塩化ナトリウム又はカリウム−又はマンニトールソルビトールなど)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤及び/又は医薬アジュバント(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Company 1990)及びその改訂版(あらゆる目的に対して参照により本明細書中に組み込まれる。)参照)。
【0104】
最適な医薬組成物は、例えば、意図する投与経路、送達方式及び所望の投与量に依存して、熟練者により決定される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記参照。)。このような組成物は、FGF21ポリペプチド突然変異体の、物理学的状態、安定性、インビボ放出速度及びインビボクリアランス速度に影響を与え得る。
【0105】
医薬組成物中の主要なビヒクル又は担体は、実際は、水性又は非水性であり得る。例えば、注射用の適切なビヒクル又は担体は、水、生理的食塩水又は人工脳脊髄液であり得、おそらく、非経口投与用の組成物中で一般的なその他の材料が追加され得る。中性緩衝食塩水又は血清アルブミンと混合された食塩水は、さらなる典型的ビヒクルである。その他の典型的医薬組成物は、pH約7.0−8.5のTris緩衝液又はpH約4.0−5.5の酢酸緩衝液を含み、これはさらに、ソルビトール又は適切な代替物を含み得る。本発明のある実施形態において、FGF21ポリペプチド突然変異体組成物は、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態で、最適な製剤用物質(Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記)と所望の純度を有する選択された組成物を混合することによって保存用に調製され得る。さらに、FGF21ポリペプチド突然変異体産物は、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて、凍結乾燥物として処方され得る。
【0106】
非経口送達のために、FGF21ポリペプチド突然変異体医薬組成物を選択することができる。あるいは、本組成物を吸入のために又は消化管を通じた送達(経口など)のために選択することができる。このような医薬的に許容可能な組成物の調製は当技術分野の技術の範囲内である。
【0107】
製剤成分は、投与部位に対して許容可能である濃度で存在する。例えば、生理的pHに又は僅かに低いpH、通常は約5から約8のpH範囲内に組成物を維持するために、緩衝液を使用する。
【0108】
非経口投与が企図される場合、本発明での使用のための治療用組成物は、医薬的に許容可能なビヒクル中で所望のFGF21ポリペプチド突然変異体を含む、発熱物質不含の非経口投与に対して許容可能な水溶液の形態であり得る。非経口注射のための特に適切なビヒクルは、無菌の蒸留水であり、この中で、FGF21ポリペプチド突然変異体が、的確に保存される、無菌、等張溶液として処方される。さらに別の調製は、デポー注射を介して送達され得る産物の制御又は持続性放出を可能とする、注射用ミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー性化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸など)、ビーズ又はリポソームなどの物質との、所望の分子の処方を含み得る。ヒアルロン酸を使用することもでき、これは、循環中の持続時間を延長させる効果を有し得る。所望の分子の導入のためのその他の適切な手段には、移植可能な薬物送達装置が含まれる。
【0109】
ある実施形態において、医薬組成物を吸入用に処方することができる。例えば、FGF21ポリペプチド突然変異体は、吸入用の乾燥粉末として処方することができる。エアロゾル送達用の推進剤とともにFGF21ポリペプチド突然変異体吸入溶液を処方することもできる。また別の実施形態において、溶液を霧状化できる。肺投与は、化学修飾タンパク質の肺送達について記載する国際公開WO94/20069にさらに記載されている。
【0110】
ある一定の製剤を経口投与することができることも企図される。本発明のある実施形態において、この方式で投与されるFGF21ポリペプチド突然変異体は、錠剤及びカプセルなどの固体投与形態の調合において通常使用される担体とともに又これらを使用せずに、処方することができる。例えば、バイオアベイラビリティーが最大となり、全身送達前の分解(pre−systemic degradation)が最小となる胃腸管中の時点で、処方物の活性部分を放出するように、カプセルを設計することができる。FGF21ポリペプチド突然変異体の吸収を促進するために、さらなる物質が含まれ得る。希釈剤、香味料、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、縣濁化剤、錠剤崩壊剤及び結合剤も使用できる。
【0111】
別の医薬組成物は、錠剤の製造に適切である無毒性賦形剤との混合物中で、FGF21ポリペプチド突然変異体の有効量を含み得る。滅菌水又は別の適切なビヒクル中で錠剤を溶解させることにより、単位用量形態で、溶液を調製することができる。適切な賦形剤には、以下に限定されないが、不活性希釈剤(炭酸カルシウム、炭酸もしくは重炭酸ナトリウム、ラクトース又はリン酸カルシウムなど)又は結合剤(デンプン、ゼラチン又はアカシアなど)又は潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクなど)が含まれる。さらなるFGF21ポリペプチド突然変異体医薬組成物は、持続性又は制御送達製剤中にFGF21ポリペプチド突然変異体を含む製剤を含め、当業者にとって明らかである。リポソーム担体、生体内分解性微粒子又は多孔性ビーズ及びデポー注射など、様々なその他の持続性又は制御送達手段を処方するための技術も当業者にとって公知である(例えば、国際公開WO93/15722(これは、医薬組成物の送達のための多孔性ポリマー性微粒子の制御放出を記載)及びWischke&Schwendeman、2008、Int.J.Pharm.364:298−327及びFreiberg & Zhu、2004、Int.J.Pharm.282:1−18(これらは、ミクロスフェア/微粒子調製及び使用について考察)参照)。
【0112】
持続性放出製剤のさらなる例には、造形品の形態の半透性ポリマーマトリクス、例えばフィルム又はマイクロカプセルが含まれる。持続性放出マトリクスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号及び欧州特許第0 058 481号)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidmanら、1983、Biopolymers 22:547−56)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langerら、1981、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277及びLanger、1982、Chem.Tech.12:98−105)、エチレンビニルアセテート(Langerら、上記)又はポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第0 133 988)を含み得る。持続性放出組成物は、リポソームも含み得る(これは、当技術分野で公知のいくつかの方法の何れかにより調製され得る。)。例えば、Epsteinら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688−92;及び欧州特許第0 036 676号、同第0 088 046号及び同第0 143 949号参照。
【0113】
インビボ投与で使用しようとするFGF21ポリペプチド突然変異体医薬組成物は、一般に、無菌でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通じたろ過により行い得る。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を用いた滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前又は後に行い得る。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態で又は溶液中で保存され得る。さらに、非経口組成物は、通常、無菌のアクセスポートがある容器(例えば、皮下注射用注射針により穿孔可能なストッパーがある、静脈溶液バッグ又はバイアル)に入れられる。
【0114】
医薬組成物を処方したら、溶液、縣濁液、ゲル、エマルジョン、固形物として又は無水もしくは凍結乾燥粉末として、これを無菌バイアル中で保存することができる。このような処方物は、即時使用形態で又は投与前に再構成を必要とする形態(例えば凍結乾燥)で保存することができる。
【0115】
具体的な実施形態において、本発明は、単回投与単位を調製するためのキットに関する。本キットは、それぞれ、乾燥タンパク質を有する第一の容器及び水性の処方物を有する第二の容器の両方を含有し得る。単腔型及び多室型のプレフィルドシリンジ(例えば液体シリンジ及びリオシリンジ(lyosyringe))を含有するキットも本発明の範囲内に含まれる。
【0116】
治療で使用しようとするFGF21ポリペプチド突然変異体医薬組成物の有効量は、例えば治療内容及び目的に依存する。従って、当業者にとって当然のことながら、治療のための適切な投与量レベルは、送達される分子、FGF21ポリペプチド突然変異体が使用される適応症、投与経路及び患者の体格(体重、身体表面又は器官の大きさ)及び状態(年齢及び全身的健康)に一部依存して変動する。従って、臨床家は、最適な治療効果を得るために、投与量を滴定し、投与経路を変更することができる。
典型的投与量は、上述の因子に依存して、約0.1μg/kgから約100mg/kg以上の範囲であり得る。その他の実施形態において、投与量は、0.1μg/kgから約100mg/kg;又は1μg/kgから約100mg/kg;又は5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、約100mg/kgまでの範囲であり得る。さらにその他の実施形態において、投与量は、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、2000μg/kg、3000μg/kg、4000μg/kg、5000μg/kg、6000μg/kg、7000μg/kg、8000μg/kg、9000μg/kg又は10mg/kgであり得る。
【0117】
投与頻度は、使用される処方物でのFGF21ポリペプチド突然変異体の薬物動態学的パラメーターに依存する。通常、臨床家は、投与量が所望の効果を達成するまで、組成物を投与する。従って、単回投与として、長期にわたる2回以上の投与(所望分子の同じ量を含有しても又はしなくてもよい。)として、又は移植デバイスもしくはカテーテルを介した連続的点滴として、本組成物を投与することができる。適切な投与量のさらなる改善は、当業者により日常的になされ、当業者により日常的に行われる業務の領域の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量−反応データの使用を通じて確定され得る。
【0118】
医薬組成物の投与経路は、例えば、経口による;静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内又は病巣内経路による注射を通じた;(注射もされ得る)持続性放出系による;又は移植装置による、公知の方法に従う。必要に応じて、ボーラス注射により又は連続的に点滴により又は移植装置により、組成物を投与することができる。
【0119】
あるいは又はさらに、本組成物は、所望の分子が吸収されているか又は封入されている、膜、スポンジ又はその他の適切な材料の移植を介して局所的に投与することができる。移植装置を使用する場合、何れかの適切な組織又は器官にこの装置を移植することができ、所望の分子の送達は、拡散、徐放性ボーラス又は連続的投与を介するものであり得る。
【0120】
10.FGF21ポリペプチド突然変異体の治療での使用
代謝性疾患を含む(しかし、これに限定されない。)、多くの疾患、障害又は状態を、治療、診断、改善又は予防するために、FGF21ポリペプチド突然変異体を使用することができる。ある実施形態において、治療しようとする代謝性疾患は、糖尿病、例えば2型糖尿病である。別の実施形態において、この代謝性疾患は肥満である。その他の実施形態は、脂質異常症;高血圧;脂肪肝、例えば非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)など;心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症など;及び加齢などの、代謝状態又は疾患を含む。
【0121】
適用において、糖尿病又は肥満などの疾患又は状態は、治療的有効用量の量で治療を必要とする患者に本明細書中に記載のようなFGF21ポリペプチド突然変異体を投与することにより治療され得る。この投与は、IV注射、腹腔内注射、筋肉内注射又は錠剤もしくは液体製剤の形態での経口投与によるなど、本明細書中に記載のように行うことができる。殆どの状況において、所望の投与量は、本明細書中に記載のように、臨床家により決定され得、これはFGF21突然変異ポリペプチドの治療的有効量に相当し得る。当業者にとって当然のことながら、FGF21突然変異ポリペプチドの治療的有効量は、とりわけ、投与スケジュール、投与される抗原の単位用量、核酸分子又はポリペプチドがその他の治療薬と組み合わせて投与されるか否か、免疫状態及び受容者の健康に依存する。「治療的有効量」という用語は、本明細書中で使用される場合、研究者、医師又はその他の臨床家により求められている、組織系、動物又はヒトにおける、生物学的又は医学的反応(治療される疾患又は障害の症状の改善を含む。)を誘発するFGF21突然変異ポリペプチドの量を意味する。
【0122】
11.抗体
本発明のFGF21突然変異ポリペプチドに特異的に結合するが、野生型FGF21ポリペプチドに特異的に結合しない、抗体及び抗体断片が企図され、これは本発明の範囲内である。この抗体は、単一特異的ポリクローナルを含むポリクローナル;モノクローナル(MAb);組み換え;キメラ;ヒト化、例えば相補性決定領域(CDR)移植など;ヒト;1本鎖;及び/又は二特異性;ならびにその、断片;変異体;又はその化学的修飾分子であり得る。抗体断片には、FGF21突然変異ポリペプチド上のエピトープに特異的に結合する抗体の一部が含まれる。このような断片の例には、全長抗体の酵素切断により生成するFab及びF(ab’)断片が含まれる。その他の結合断片には、抗体可変領域をコードする核酸配列を含有する組み換えプラスミドの発現などの組み換えDNA技術により作製されるものが含まれる。
【0123】
FGF21突然変異ポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、一般に、FGF21突然変異ポリペプチド及びアジュバントの複数回の皮下又は腹腔内注射によって、動物(例えば、ウサギ又はマウス)において産生される。キーホールリンペットへモシアニン、血清、アルブミン、ウシサイログロブリン又はダイズトリプシン阻害剤など、免疫付与しようとする種において免疫原性である担体タンパク質にFGF21突然変異ポリペプチドを結合させることは有用であり得る。また、免疫反応を促進するために、ミョウバンなどの凝集剤も使用される。免疫付与後、動物から採血し、抗FGF21突然変異体抗体力価について血清をアッセイする。
【0124】
培養において継続的細胞株による抗体分子の作製をもたらす何らかの方法を用いて、FGF21突然変異ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を作製することができる。モノクローナル抗体を調製するための適切な方法の例には、Kohlerら、1975、Nature 256:495−97のハイブリドーマ法及びヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor、1984、J.Immunol.133:3001;Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications 51−63(Marcel Dekker、Inc.、1987)が含まれる。また、FGF21突然変異ポリペプチドとの反応性があるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も本発明により提供される。
【0125】
本発明のモノクローナル抗体は、治療薬としての使用のために修飾され得る。ある実施形態において、このモノクローナル抗体は、重(H)及び/又は軽(L)鎖の一部が、特定の種由来であるか又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同であり、一方で、鎖の残りの部分が、別の種由来であるか又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である、「キメラ」抗体である。また、このような抗体の断片も、これらが所望の生物学的活性を示す限り、含まれる。例えば、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851−55参照。
【0126】
別の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,585,089号及び同第5,693,762号参照。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである起源からそれに導入される1以上のアミノ酸残基を有する。
【0127】
例えば、ヒト抗体の対応領域に対してげっ歯類相補性決定領域の少なくとも一部を置換することにより、当技術分野に記載の方法を用いてヒト化を行うことができる(例えば、Jonesら、1986、Nature 321:522−25;Riechmannら、1998、Nature 332:323−27;Verhoeyenら、1988、Science 239:1534−36参照)。
【0128】
本発明のFGF21突然変異ポリペプチドに結合されるヒト抗体も本発明により包含される。内因性の免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を用いて、場合によっては担体に結合される、FGF21突然変異体抗原(即ち少なくとも6連続アミノ酸を有する。)での免疫付与により、このような抗体が作製される。例えば、Jakobovitsら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:2551−55;Jakobovitsら、1993、Nature 362:255−58;Bruggermannら、1993、Year in Immuno.7:33参照。ある方法において、このようなトランスジェニック動物は、その中で重及び軽免疫グロブリン鎖をコードする内在性の遺伝子座を不能にし、ヒト重及び軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座をそのゲノムに挿入することにより作製される。所望の免疫系の改変全てを有する動物を得るために、次に、一部改変動物、即ち完全に改変されていない動物を、異種交配する。免疫原を投与される場合、これらのトランスジェニック動物は、これらの抗原に対して免疫特異的である可変領域を含む、(例えばマウスではなく)ヒトアミノ酸配列のある抗体を産生する。例えば、国際公開WO96/33735及びWO94/02602参照。さらなる方法は、米国特許第5,545,807号、国際公開WO91/10741及びWO90/04036及び欧州特許第0 546 073に記載されている。ヒト抗体はまた、本明細書中に記載のように、宿主細胞での組み換えDNAの発現によるか又はハイブリドーマ細胞における発現によって作製することもできる。
【0129】
代替的実施形態において、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリから作製することもできる(例えば、Hoogenboomら、1991、J.Mol.Biol.227:381;Marksら、1991、J.Mol.Biol.222:581参照)。これらのプロセスは、糸状バクテリオファージの表面上での抗体レパートリーの提示及び続く、最適の抗原へのそれらの結合によるファージの選択を通じて、免疫選択を模倣する。あるこのような技術は、国際公開WO99/10494に記載されている(これは、このようなアプローチを用いた、MPL−及びmsk−受容体に対する高親和性及び機能的アゴニスト性抗体の単離について記載。)。
【0130】
キメラ、CDRグラフト及びヒト化抗体は、一般に、組み換え法により作製される。抗体をコードする核酸を宿主細胞に導入し、本明細書中に記載の材料及び手順を用いて発現させる。ある実施形態において、抗体は、CHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において産生される。モノクローナル(例えばヒト)抗体は、宿主細胞における組み換えDNAの発現によって又は本明細書中に記載のようなハイブリドーマ細胞における発現によって作製することができる。
【0131】
FGF21突然変異ポリペプチドの検出及び定量のために、競合的結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ及び免疫沈降アッセイ(例えば、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる、Sola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques 147−158(CRC Press、Inc.、1987)参照)などの何らかの公知のアッセイ法において本発明の抗FGF21突然変異抗体を使用することができる。本抗体は、使用されている本アッセイ法に適切である親和性で、FGF21突然変異ポリペプチドに結合する。
【0132】
診断的適用の場合、ある種の実施形態において、検出可能部分で抗FGF21突然変異体抗体を標識することができる。検出可能部分は、直接又は間接的に検出可能なシグナルを生成させることが可能である何れかのものであり得る。例えば、検出可能部分は、放射性同位体、例えば、H、14C、32P、35S、125I、99Tc、111In又は67Gaなど;蛍光又は化学発光化合物、例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリンなど;又は酵素、例えばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼなど(Bayerら、1990、Meth.Enz.184:138−63)であり得る。
【0133】
競合的結合アッセイは、標識された標準物質(例えば、FGF21突然変異ポリペプチド又は免疫学的反応性があるその一部)の、抗FGF21突然変異体抗体の限定量との結合に対する、試験試料検体(例えばFGF21突然変異ポリペプチド)との競合能に依存する。試験試料中のFGF21突然変異ポリペプチドの量は、抗体に結合する標準物質の量と反比例する。結合する標準物質の量を決定することを促進するために、抗体に結合した標準物質及び検体を、都合よく、未結合のままである標準物質及び検体から分離することができるように、この抗体は、通常、競合前又は後に不溶化される。
【0134】
サンドイッチアッセイは、一般に、それぞれが検出及び/又は定量しようとするタンパク質の、異なる免疫原部分又はエピトープに結合可能である、2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料検体は、一般に、固体支持体上に固定化される第一の抗体と結合し、その後、第二の抗体は検体に結合し、従って不溶性の3部構成の複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号参照。二次抗体は、それ自身、検出可能部分で標識され得るか(直接サンドイッチアッセイ)又は検出可能部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を用いて測定され得る(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つのタイプは、酵素免疫吸着測定法アッセイ(ELISA)であり、この場合に検出可能部分は酵素である。
【0135】
本発明の抗FGF21突然変異体抗体はまた、インビボ画像解析に対しても有用である。検出可能部分で標識される抗体は、動物に対して、好ましくは血流及びアッセイされる宿主において標識される抗体の存在及び場所に、投与することができる。本抗体は、核磁気共鳴、放射線又は当技術分野で公知のその他の検出手段の何れによるものであれ、動物において検出可能である何らかの部分で標識され得る。
【0136】
本発明のFGF21突然変異体抗体は、治療薬として使用され得る。これらの治療薬は、一般に、それらが、それぞれ、FGF21突然変異ポリペプチドの生物学的活性の少なくとも1つを促進するか又は低下させるという点において、アゴニスト又はアンタゴニストである。ある実施形態において、本発明のアンタゴニスト抗体は、FGF21突然変異ポリペプチドに特異的に結合可能である、及び、インビボ又はインビトロでFGF21突然変異ポリペプチドの機能的活性を阻害又は減弱可能である、抗体又はその結合断片である。ある実施形態において、本アンタゴニスト抗体は、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約80%、FGF21突然変異ポリペプチドの機能的活性を阻害する。別の実施形態において、本抗FGF21突然変異抗体は、FGF21突然変異ポリペプチドとFGF受容体との間での相互作用を妨害可能であり、それにより、インビトロ又はインビボでFGF21突然変異ポリペプチド活性を阻害又は抑制する。アゴニスト及びアンタゴニスト抗FGF21突然変異抗体は、当技術分野で周知のアッセイをスクリーニングすることにより同定される。
【0137】
本発明はまた、FGF21突然変異体抗体と、生体試料中でFGF21突然変異ポリペプチドレベルを検出するために有用なその他の試薬と、を含むキットに関する。
【0138】
このような試薬は、検出可能標識、ブロッキング血清、陽性及び陰性対照試料及び検出試薬を含み得る。
【0139】
(実施例)
続く実施例は、本発明の具体的な実施形態及びその様々な使用の実例である。これらは、単に説明を目的として記されるものであり、何ら本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0140】
FGF21発現コンストラクトの調製
成熟FGF21配列の5’及び3’末端に対応するヌクレオチド配列を有するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって、成熟FGF21ポリペプチドをコードする核酸配列を得た。表2は、成熟FGF21配列を増幅するために使用したプライマーを列挙する。
【0141】
【表2】

【0142】
FGF21発現コンストラクトを調製するために使用したプライマーにより、適切な発現ベクター(例えば、pET30(Novagen/EMD Biosciences;San Diego、CA)又はpAMG33(Amgen;Thousand Oaks、CA))への配列の直接的クローニングのための制限エンドヌクレアーゼ部位が組み込まれた。発現ベクターpAMG33は、低コピー数R−100複製起点、修飾されたlacプロモーター及びカナマイシン−耐性遺伝子を含有する。発現ベクターpET30は、pBR322由来複製起点、誘導性T7プロモーター及びカナマイシン−耐性遺伝子を含有する。pAMG33からの発現がより高いことが分かった一方で、pET30はより信頼性の高いクローニングベクターであることが分かった。従って、本願で記載されるコンストラクトの殆どは最初にpET30において作製し、効力についてスクリーニングした。さらなる増幅のために、次に、選択配列をpAMG33に遺伝子移入した。
【0143】
40.65μL dHO、5μL PfuUltra II反応緩衝液(10x)、1.25μL dNTPミックス(40mM−4x10mM)、0.1μLテンプレート(100ng/mL)、1μLプライマー1(10μM)、1μLプライマー2(10μM)及び1μL PfuUltra II fusion HS DNAポリメラーゼ(Stratagene;La Jolla、CA)を含有する反応混合物中でFGF21配列を増幅させた。95℃で2分間加熱し、次に、95℃で20秒間、60℃で20秒間(1サイクルごとに追加的に1℃ずつ低下させる。)及び72℃で15秒間/キロベース(所望の産物)を10回繰り返し、続いて94℃で20秒間、55℃で20秒間及び72℃で15秒間/キロベース(所望の産物)を20サイクル繰り返し、続いて、72℃で3分間加熱することによって、増幅反応を行った。増幅産物を制限エンドヌクレアーゼ、NdeI、DpnI及びEcoRIで消化し、適切なベクターに連結し、次いでコンピーテント細胞に形質転換した。
【実施例2】
【0144】
細菌からのFGF21タンパク質の精製
続く実施例において、野生型FGF21ポリペプチド、短縮FGF21ポリペプチド、FGF21突然変異体及びFGF21融合タンパク質を含む様々なFGF21タンパク質を細菌発現系で発現させた。下記で述べる発現後、別段の断りがない限り、この実施例に記載のとおりにFGF21タンパク質を精製した。
【0145】
野生型FGF21ポリペプチドを精製するために、pH8.5のTris緩衝液中のグアニジン塩酸塩及びDTTを含有する可溶化緩衝液中で、細菌の封入体、二重洗浄封入体(DWIB)からの短縮FGF21ポリペプチド及びFGF21突然変異体を可溶化し、次いで、室温で1時間混合し、pH9.5の、尿素、アルギニン、システイン及びシスタミン塩酸塩を含有するリフォールディング緩衝液に可溶化混合液を添加し、次いで、5℃で24時間混合した(例えば、Clarke、1998、Curr.Opin.Biotechnol.9:157−63;Mannallら、2007、Biotechnol.Bioeng.97:1523−34;Rudolphら、1997、「Folding Proteins」、「Protein Function:A Practical Approach(Creighton編、New York、IRL Press)57−99;及びIshibashiら、2005、Protein Expr.Purif.42:1−6参照)。
【0146】
可溶化及びリフォールディング後、0.45ミクロンフィルターを通じて混合液をろ過した。次に、20psiの膜間圧(TMP)で10kD分子量カットオフPall Omegaカセットを用いて、リフォールディングプールをおよそ10倍濃縮し、20psiのTMPで、20mM Tris、pH8.0の3カラム体積を用いてダイアフィルトレーション処理した。
【0147】
次に、QセファロースHPレジンを用いた陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーに、透明化試料をかけた。pH8.0で5℃にて、20mM Tris中0から250mM NaClの直線的塩濃度勾配を実行した。SDS−PAGEによりピーク分画を分析し、プールした。
【0148】
次に、フェニルセファロースHPレジンを用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に、AEX溶出プールをかけた。pH8.0及び周囲温度で、0.7Mから0M硫酸アンモニウムの直線的な減少勾配を用いて、タンパク質を溶出した。ピーク分画をSDS−PAGE(Laemmli、1970、Nature 227:680−85)により分析し、プールした。
【0149】
20psiのTMPで7mg/mLになるまで、10kD分子量カットオフPall Omega 0.2mカセットでHICプールを濃縮した。20psiのTMPで、10mM KPO、5%ソルビトール、pH8.0 5カラム体積で濃縮液をダイアフィルトレーション処理し、回収した濃縮液を5mg/mLに希釈した。最終的に、Pall mini−Kleenpac 0.2μM Posidyne膜を通じて溶液をろ過した。
【0150】
細菌封入体からFGF21融合タンパク質及びFGF21融合突然変異タンパク質を精製するために、pH8.5のTris緩衝液中でグアニジン塩酸塩及びDTTを含有する可溶化緩衝液中で、二重洗浄封入体(DWIB)を可溶化し、次いで、室温で1時間混合し、pH9.5の、尿素、アルギニン、システイン及びシスタミン塩酸塩を含有するリフォールディング緩衝液に可溶化混合液を添加し、次いで5℃で24時間混合した(例えば、Clarke、1998、Curr.Opin.Biotechnol.9:157−63;Mannallら、2007、Biotechnol.Bioeng.97:1523−34;Rudolphら、1997、「Folding Proteins」、「Protein Function:A Practical Approach(Creighton編、New York、IRL Press)57−99;及びIshibashiら、2005、Protein Expr.Purif.42:1−6参照)。
【0151】
可溶化及びリフォールディング後、10kD透析チューブを用いて、20mM Tris、pH8.0の5体積に対して、混合液を透析した。50%酢酸を用いて、透析したリフォールディング液のpHを5.0に調整し、次いで、4Kで30分間にわたり遠心により透明化した。
【0152】
次に、QセファロースHPレジンを用いた陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーに、透明化試料をかけた。pH8.0で5℃にて、20mM Tris中0から250mM NaClの直線的塩濃度勾配を実行した。SDS−PAGE(Laemmli、1970、Nature 227:680−85)によりピーク分画を分析し、プールした。
【0153】
次に、フェニルセファロースHPレジンを用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に、AEX溶出プールをかけた。pH8.0及び周囲温度で、0.6Mから0M硫酸アンモニウムの直線的に減少する勾配を用いて、タンパク質を溶出した。ピーク分画をSDS−PAGEにより分析し、プールした。
【0154】
HIC段階後、次に、10mM Tris、2.2%スクロース、3.3%ソルビトール、pH8.5 60体積でプールを透析した。jumbosepを用いて、透析プールを5mg/mLに濃縮した。最終的に、Pall mini−Kleenpac 0.2μM Posidyne膜を通じてこの溶液をろ過した。
【実施例3】
【0155】
短縮FGF21タンパク質の調製及び発現
下記のような野生型FGF21発現ベクターのPCR増幅によって、表3で列挙される短縮FGF21タンパク質をコードするコンストラクトを調製した(野生型FGF21発現ベクターのコンストラクトは実施例1で記載する。)。
【0156】
【表3】

【0157】
欠失させようとするコドン(単数又は複数)の上流及び下流の領域と相同である配列を有するプライマーを用いて、短縮FGF21タンパク質コンストラクトを調製した(結果として短縮)。このような増幅反応で使用されるプライマーはまた、増幅された産物の再環状化を可能とするための重複配列のおよそ15ヌクレオチドも与えた(即ち、ここで、ベクター全体は所望の突然変異を有する。)。
【0158】
表4で示されるプライマーを用いて、成熟FGF21配列の位置1のヒスチジン残基を欠くFGF21タンパク質(即ち、2−181短縮突然変異体)をコードする代表的な短縮FGF21コンストラクトを調製した。
【0159】
【表4】

【0160】
表4で示されるプライマーにより、下記で示されるようにヒスチジン残基が欠失するようになるが、ここで、上の配列(配列番号10)は、N末端メチオニンを含む成熟FGF21ポリペプチドの一部であり、第二の配列はセンスプライマー(配列番号7)であり、第三及び第四の配列(配列番号11及び12)はFGF21発現コンストラクトの一部であり、第五の配列はアンチセンスプライマー(配列番号9)である:
【0161】
【化1】

【0162】
実施例1に記載のPCR条件を基本的に用いて、短縮FGF21タンパク質コンストラクトを調製した。制限エンドヌクレアーゼDpnIで増幅産物を消化し、次いで、コンピーテント細胞に形質転換した。ポリメラーゼにより生じたエラーがないことを確認するために、得られたクローンの配列決定を行った。
【0163】
特定の短縮FGF21タンパク質をコードするコンストラクトでコンピーテントBL21(DE3)又はBL21 Star(Invitrogen;Carlsbad、CA)細胞を形質転換することによって、短縮FGF21タンパク質を発現させた。通気を制限して、40μg/mLカナマイシンを追加したTB培地中で形質転換体を一晩増殖させ、翌朝、空気を供給し、短い回復時間の後、0.4mM IPTG中で誘導した。誘導から18−20時間後、FGF21突然変異体を遠心により回収した。
【実施例4】
【0164】
短縮FGF21タンパク質のインビトロ活性
ELK−ルシフェラーゼインビトロアッセイにおいて野生型FGF21活性を保持する短縮FGF21タンパク質を同定するために実験を行った。表5は、N末端、C末端又はN末端及びC末端の両方に短縮があるFGF21タンパク質に対して得られた結果をまとめる。組み換えヒト293T腎臓細胞系を用いてELK−ルシフェラーゼアッセイを行った(293T細胞はβ−klotho及びルシフェラーゼレポーターコンストラクトを過剰発現する。)。これらのコンストラクトはまた、GAL4−ELK1及び5xUAS−Luc、Gal4結合部位の5個のタンデムコピーを含有するプロモーターにより支配されるルシフェラーゼレポーターをコードする配列も含有する。β−klothoは、そのFGF受容体の活性化及び細胞内シグナル伝達の誘導(これにより、同様に、Erk及びELKリン酸化が導かれる。)のためにFGF21により必要とされる共受容体である。ルシフェラーゼ活性は、リン酸化されたErk/ELK1のレベルにより制御され、FGF21活性を間接的に監視し定量するために使用される。
【0165】
6時間にわたり、野生型FGF21又はFGF21突然変異ポリペプチドの様々な濃度の存在下で293T細胞を培養し、次いでルシフェラーゼ活性について細胞溶解物をアッセイすることによって、ELK−ルシフェラーゼアッセイを行った。図1A−1Bは、FGF21短縮突然変異体7−181及び8−181(図1A)及びFGF21短縮突然変異体1−172、1−171、1−169及び1−164(図1B)で行ったELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示す。FGF21短縮突然変異体3−181、4−181、5−181、7−181、8−181、1−180、1−178、1−177、1−176、1−175、1−174、1−173、1−172、9−181及び1−149のそれぞれに対してELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて得られた発光を図2で示す。
【0166】
野生型FGF21標準物質とFGF21突然変異ポリペプチドを比較し、野生型FGF21の効力の少なくとも50%の効力を示す突然変異体を、FGF21活性を喪失しなかったものとみなし、表5で「+」とした。
【0167】
【表5】

【0168】
まとめると、表5で与えられる結果から、14以上のアミノ酸残基のC末端欠失(即ち、アミノ酸残基1−167からなるC末端短縮FGF21タンパク質及びより短いタンパク質)は、FGF21の活性を喪失することが示される。さらに、表5から、7以上のアミノ酸残基のN末端欠失(即ち、アミノ酸残基8−181からなるN末端短縮FGF21タンパク質及びより短いタンパク質)は、FGF21の活性を喪失することが示される。驚くことではないが、8から14残基のN末端短縮及び12又は32残基のC末端短縮の両方がある短縮FGF21タンパク質は、ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて活性を喪失していることが分かった。
【0169】
表5で与えられるデータと一致して、7アミノ酸残基未満のN末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチドは、本発明の実施形態を構成する。同様に、13アミノ酸残基未満のC末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチドは、本発明の実施形態を構成する。
【実施例5】
【0170】
短縮FGF21タンパク質のインビボ活性
FGF21は、血糖、インスリン、トリグリセリド又はコレステロール値低下能;体重減少能;又は耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性向上能を含む、多くの生物学的活性を保持する。短縮FGF21ポリペプチドをインスリン抵抗性ob/obマウスに導入し、特定の短縮FGF21ポリペプチドの血糖低下能を測定することによって、インビボFGF21活性について短縮FGF21ポリペプチドをさらに分析した。試験しようとする短縮FGF21ポリペプチドを8週齢ob/obマウス(Jackson Laboratory)に腹腔内注射し、1回の注射後、様々な時点で(例えば、注射から、0、6、24、72、120及び168時間後)血液試料を得た。OneTouch Glucometer(LifeScan、Inc.Milpitas、CA)で血糖値を測定し、血糖のベースライン値(即ち、時間0のもの)に対する血糖の%変化としてその結果を表した。
【0171】
ある実験の結果を図3で提供するが、これは、FGF21短縮突然変異体8−181及び9−181を注射したマウスにおいて検出された血糖の量を示す。この実験から、アミノ酸残基8−181を含む短縮FGF21融合タンパク質はインビボで血糖低下活性を示し、また一方で注射から3及び6時間後に、その活性は野生型FGF21の活性より僅かに低いが、アミノ酸残基9−181を含む短縮FGF21融合タンパク質はこのような活性を示さないことが明らかとなった。従って、短縮FGF21ポリペプチドのインビボ分析により、成熟FGF21のN末端からの7個以下のアミノ酸の欠失によって分子の生物学的活性は破壊されないことが示唆された(インビトロ分析で比較した場合。これは、成熟FGF21のN末端からの7個のアミノ酸が欠失すると活性が破壊されることを示唆する。)。
【0172】
インビトロ及びインビボアッセイでの特定のN末端短縮FGF21ポリペプチド(例えばFGF21 8−181)により得られた異なる結果は、効果的なシグナル伝達におけるβ−klotho及びFGF受容体とのFGF21の相互作用により説明することができる。特に、FGF21は、共受容体β−klotho及びFGF受容体(FGFR)を含む二重受容体複合体を活性化し、チロシンキナーゼを含むシグナル伝達カスケードを開始させる。FGF21のN末端は、FGFRの結合及び活性化に関与し、一方でFGF21のC末端はβ−klotho相互作用に必要とされることが分かっている(Yieら、2009 FEBS Lett.583:19−24)。共受容体β−klothoが過剰発現され、FGFRが正常レベルで発現されている293腎臓細胞において、ELK−ルシフェラーゼインビトロアッセイを行う。FGFRの量は、β−klothoの量に対して低く、従って、293細胞でのβ−klothoのFGFRに対する比は、非生理的であり、これは、受容体複合体形成、最終的にはリガンド結合及びFGFRの活性化に影響を与え得る。293インビトロ系は、N末端短縮FGF21ポリペプチドに対してより脆弱であると思われ、従って、FGF21 8−181などの試験N末端短縮突然変異体の一部に対して活性喪失という結果を引き起こしている可能性がある。従って、特定のN末端短縮FGF21突然変異体が野生型FGF21活性を保持したか否かを調べる上で、インビボアッセイでのそのFGF21突然変異体の活性は解決の手がかりをもたらすものであると考えられた。従って、8個未満のアミノ酸残基のN末端短縮がある短縮FGF21ポリペプチドは本発明により包含される。
【実施例6】
【0173】
短縮FGF21融合タンパク質の調製及び発現
Fc配列にタンパク質を融合させることによってタンパク質の半減期を延長させることができるので、短縮FGF21ポリペプチドを含む融合タンパク質を調製し、分析した。SOEing(重複伸長による遺伝子スプライシング)PCRにより増幅されたFGF21配列から、表6で列挙する短縮FGF21融合タンパク質を調製した。
ヒト免疫グロブリンIgG1遺伝子のFc部(配列番号13)がFGF21タンパク質のN末端又はC末端の何れかに融合されるように、FGF21融合タンパク質を調製した。
【0174】
【表6】

【0175】
特に、基本的に実施例1に記載の反応条件を用いて、一連の3回の増幅反応において、FGF21融合タンパク質コンストラクト(短縮FGF21融合タンパク質をコードするものを含む。)を調製した。第一の反応において、NdeIクローニング部位、Fc領域及びリンカー配列を含有する配列を生成させるために、プライマー対を設計した。第二の反応において、リンカーの重複部分、FGF21コード配列の一部及びEcoRIクローニング部位を含有する配列を生成させるために、プライマー対を設計した。最後に、第三の反応において、最初の2つの反応の生成物を連結する目的でプライマー対を設計した。Fc−FGF21 1−181の構築のためのプライマーの代表的なセットを表7で列挙する。
【0176】
【表7】

【0177】
制限エンドヌクレアーゼ、NdeI及びEcoRIで最終反応生成物を消化し、pET30ベクターに結合させ、次いでコンピーテント細胞に形質転換した。ポリメラーゼにより生じたエラーがないことを確認するために、得られたクローンの配列決定を行った。
【実施例7】
【0178】
短縮FGF21融合タンパク質のインビボ活性
Fc配列に融合された短縮FGF21配列を含む融合タンパク質を作製し、インビボ活性についてアッセイした。1つの連続配列を形成するために、IgG1 Fc分子を短縮FGF21タンパク質のN末端又はC末端の何れかに融合させることにより、短縮FGF21融合タンパク質を調製した。N末端融合物とC末端融合物とを区別するために、Fc分子がFGF21タンパク質のN末端に融合されたFGF21融合タンパク質をFc−FGF21と呼び、Fc分子がFGF21タンパク質のC末端に融合されたFGF21融合タンパク質をFGF21−Fcと呼ぶ。
【0179】
FGF21は、血糖、インスリン、トリグリセリド又はコレステロール値低下能;体重減少能;又は耐糖能、エネルギー消費又はインスリン感受性向上能を含む、多くの生物学的活性を保持する。インビボでのFGF21活性を評価するために、FGF21ポリペプチド、FGF21突然変異ポリペプチド及びFGF21融合ポリペプチドをインスリン抵抗性ob/obマウスに導入し、特定のFGF21タンパク質の血糖値低下能を測定した。試験しようとするFGF21ポリペプチド、FGF21突然変異ポリペプチド又はFGF21融合ポリペプチドを8週齢ob/obマウス(Jackson Laboratory)に腹腔内注射し、1回の注射後、様々な時点で(例えば、注射から、0、6、24、72、120及び168時間後)血液試料を得た。OneTouch Glucometer(LifeScan、Inc.Milpitas、CA)で血糖値を測定し、血糖のベースライン値(即ち時間0のもの)に対する血糖の%変化としてその結果を表した。
【0180】
ある実験の結果を図4で提供するが、これは、PBS対照、アミノ酸残基1−181を含む野生型Fc−FGF21対照又はアミノ酸残基5−181もしくは7−181を含む短縮Fc−FGF21融合タンパク質を注射したマウスにおいて観察された血糖値の%変化を示す。この実験から、アミノ酸残基5−181又は7−181を含む短縮Fc−FGF21融合タンパク質が、注射から6時間後に、野生型Fc−FGF21の活性と同様の血糖低下活性を示すことが分かった。このようにして、短縮FGF21ポリペプチドのインビボ分析から、成熟FGF21のN末端からの6個以下のアミノ酸の欠失は分子の生物学的活性に影響を与えないことが示された。しかし、インビボ分析からまた、短縮FGF21ポリペプチドの血糖低下能が低下し、血糖値がベースラインに戻るのは注射から24時間後であることが示された(野生型FGF21で同様の結果が得られた。)。短いインビボ活性が、実施例8に記載のように、FGF21のタンパク質分解性分解の結果であることが分かった。
【0181】
別の実験の結果を図5で提供するが、これは、PBS対照、アミノ酸残基1−181を含む野生型FGF21−Fc対照、残基1−175を含む短縮FGF21−Fc融合タンパク質又はアミノ酸残基1−171を含む短縮Fc−FGF21タンパク質を注射したマウスにおいて観察される血糖値の%変化を示す。この実験から、アミノ酸残基1−181を含む野生型FGF21−Fcが、持続的なグルコース低下活性(その結果、注射後24時間から120時間の時間にわたり、およそ30%、血糖値が低下する。)を有することが分かった。アミノ酸残基1−171を含む短縮Fc−FGF21タンパク質では、遅発性の血糖低下活性が注射から72時間後でのみ明らかとなった。しかし、観察される活性は野生型FGF21−Fcの活性と同じである。残基1−175を含む短縮FGF21−Fc融合タンパク質は、血糖を低下させることにおいてインビボで活性ではない。
【0182】
まとめると、本明細書中に記載の短縮実験から、N末端短縮がある短縮FGF21融合タンパク質は、野生型FGF21融合タンパク質と同様の血糖低下活性を示し、さらに、Fc分子が短縮FGF21タンパク質のN末端に融合されている短縮FGF21融合タンパク質は、Fc分子が短縮FGF21タンパク質のC末端に融合されている融合タンパク質よりも高い活性を示すことが分かった。
【実施例8】
【0183】
FGF21の実際のインビボ分解
FGF21分解は、最初に、実施例7に記載のように、FGF21 Fc融合タンパク質コンストラクトにより見られた。インビボ薬物動態学的分析から、ヒトFGF21の半減期は、急速なクリアランス及びインビボ分解のために、マウスにおいて約1時間という短い時間であることが示された。従って、FGF21の半減期を延長させるために、Fc配列をFGF21ポリペプチドのN−又はC末端に融合させた。しかし、Fc配列がFGF21ポリペプチドのN−又はC末端に融合された融合タンパク質(及び特にFc−FGF21融合物、即ち、Fc配列が成熟FGF21のN末端に融合されているもの)は、予想されたインビボでの効力を示さず、それどころか、ob/obマウスにおいて24時間以上、血糖低下活性を維持しないことが分かったので、Fc領域の融合によって、半減期の問題は完全に解決されなかった。図4に記載のように、Fc−FGF21融合タンパク質は、注射から6時間後、約30-40%、血糖値を低下させ、一方で、血糖値は、24時間でベースライン値に戻った。
【0184】
野生型FGF21のタンパク質分解性分解を続いて調べ、Fc−FGF21融合タンパク質でのインビボ活性の急速な喪失は、FGF21のインビボ分解の結果であることが分かった。タンパク質分解性分解により、インビボで分子の生物学的活性が低下し、従って有効な半減期がより短くなるが、このような分解はその分子の治療での使用に悪影響を与える。従って、FGF21Fc融合タンパク質の分解が見られたことから、インビボでのFGF21のタンパク質分解性分解の研究及びこのような分解に対して耐性があるFGF21突然変異体の同定に至った。
【0185】
分解の部位を調べるために、雄C57B6マウスに注射後様々な時間点で得られた野生型ヒトFGF21及びFGF21 Fc融合タンパク質において、LC−MS分析及びエドマン配列解析を行った。エドマン配列解析は、タンパク質のN末端又はC末端が分解を受けたか否かの確認に役立った。Fc配列がヒトFGF21のN末端に融合されている場合、分解は、融合分子のヒトFGF21部分の、アミノ酸残基151と152との間及びアミノ酸残基171と172との間のペプチド結合で起こることが分かった(上記の残基の付番は、成熟FGF21配列に基づいており、融合タンパク質のFc部分を含まない。)。171−172での分解が最初に起こり、続いて151−152での分解が起こることが分かった。171−172での分解は、律速段階であると思われ、分子の半減期に関与する。Fc配列がFGF21のC末端に融合された場合、分解は、アミノ酸残基4と5との間及びアミノ酸残基20と21との間のペプチド結合で起こることが分かった。これらの実験の結果として、Fc配列が、分解から、Fc配列に隣接するFGF21配列の部分を保護すると思われることが明らかになった。野生型FGF21及びFc−FGF21融合タンパク質のインビボ分解の分析をカニクイザルにおいてさらに行った。これらの研究から、アミノ酸残基171−172でのFGF21の切断部位がサルにおいて分解の主要な部位であり、この分解部位がマウスと霊長類との間で保存されていることが確認された。
【実施例9】
【0186】
FGF21タンパク質分解耐性突然変異体の同定
主要なタンパク質分解活性の部位である野生型FGF21配列の位置を実験的に調べることにより、適切なFGF21突然変異体を同定し、特異的なアミノ酸置換をこれらの部位に導入した。アミノ酸置換は、(実施例8に記載のような)その他の種とのFGF21配列保存及びその他のアミノ酸残基との生化学的保存に基づいた。野生型FGF21タンパク質に導入されたか又は導入することができるアミノ酸置換の一覧を表8で与えるが、表8は単なる例示であり、その他の置換を行うことができる。表8で与えられる位置の番号は、181アミノ酸残基からなる成熟FGF21タンパク質での残基の位置に対応する。
【0187】
【表8】

【実施例10】
【0188】
Fc−FGF21及びFGF21−Fc分解のインビボ分析
融合タンパク質をマウスに注射し、様々な時間点でマウスから採血し、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)により血清を分析することによって、インビボでのFGF21Fc融合タンパク質の安定性を調べた。特に、(実施例2に記載のようにE.コリで発現させ、精製した)Fc(5)FGF21又は(標準的手順に従い、哺乳動物細胞で発現させ、精製した)FGF21(3)Fc 10mg/kgをマウスに腹腔内注射した。注射から6、24及び48時間後にマウスから採血し(表9)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics)で前処理したEDTAチューブに回収した。12,000gで10分間、試料を遠心することによって、血漿を分離した。抗ヒト−Fcアガロースレジンを用いて、血液からFGF21タンパク質をアフィニティー精製した。
【0189】
【表9】

【0190】
LC−MSによりアフィニティー精製試料を分析する前に、参照物質としてFc−FGF21及びFGF21−Fcタンパク質標準物質を分析した。タンパク質標準物質は、トリス[2−カルボキシエチル]ホスフィン(TCEP)で還元したか又は還元しなかった。LCQ Classicイオントラップ質量分析装置にカラム流出液を噴霧し、ACEシアノ0.3mmx30cmカラムを用いて、LC−MSにより、還元及び非還元標準物質を分析した。還元試料のノイズ除去スペクトルがより明瞭であったので、LC−MS分析前にアフィニティー精製試料を還元した。
【0191】
還元Fc(5)FGF21標準物質及び試料D6、D24及びD48に対する実測質量を図6A−6Dで示す。還元FGF21(3)Fc標準物質及び試料E6、E24及びE48に対する実測質量を図7A−7Dで示す。LC−MSにより測定されたようなタンパク質及び断片のN末端を確認するために、標準物質及び試料溶出物のうちいくつかをエドマン配列解析にかけた。標準物質及び試料のLC−MS分析の結果を表10で示す。
【0192】
【表10】

【0193】
表10で示されるように、アフィニティー精製試料全てが、僅か循環6時間後に、ある程度の分解を示した。循環24時間後、Fc−FGF21の主要な産物は、アミノ酸残基1−404からなる断片であり、これはD及びE試料の両方で見られた。しかし、E試料において、FGF21−Fcの主要な産物は、アミノ酸残基5−410からなる断片であった。両方の試験融合タンパク質について、融合タンパク質のFGF21部分は、そのタンパク質のFc部分よりも分解され易かった。
【実施例11】
【0194】
タンパク質分解耐性FGF21突然変異体及び融合タンパク質の調製及び発現
下記のような野生型FGF21発現ベクターのPCR増幅によって、表11で列挙されるFGF21突然変異体をコードするコンストラクトを調製した(野生型FGF21発現ベクターの構築は実施例1に記載する。)。これらの実験の目標は、タンパク質分解に耐性があり、半減期がより長いFGF21突然変異体を作製することであった。
【0195】
【表11】




【0196】
突然変異を導入しようとするコドン(単数又は複数)の上流及び下流領域と相同である配列を有するプライマーを用いて、FGF21突然変異コンストラクトを調製した。このような増幅反応で使用したプライマーはまた、増幅産物の再環状化を可能とするための、重複配列のおよそ15ヌクレオチドも与えた(即ち、ここでベクター全体は、所望の突然変異体を有する。)。
【0197】
表12で示されるプライマーを用いて、ネイティブグリシン残基の代わりに位置170にグルタミン酸残基を有するFGF21突然変異体をコードする典型的なFGF21突然変異コンストラクト(即ちG170E突然変異体)を調製した。
【0198】
【表12】

【0199】
表12で示されるプライマーにより、下記で示されるような、グルタミン酸残基でのグリシン残基の置換が可能になる(ここで、上の配列は、センスプライマー(配列番号18)であり、第二及び第三の配列(配列番号20及び22)は、FGF21発現コンストラクトの一部であり、第四の配列はアンチセンスプライマー(配列番号21):
【0200】
【化2】

である。
【0201】
基本的に実施例1に記載のPCR条件を用いて、FGF21突然変異体コンストラクトを調製した。制限エンドヌクレアーゼDpnIで増幅産物を消化し、次いで、コンピーテント細胞に形質転換した。ポリメラーゼにより生じたエラーがないことを確認するために、結果として得られるクローンの配列決定を行った。本明細書中、例えば実施例6に記載のように、Fc−FGF21及びFGF21−Fc融合タンパク質を作製した。
【0202】
特定の突然変異体をコードするコンストラクトを用いてコンピーテントBL21(DE3)又はBL21Star(Invitrogen;Carlsbad、CA)細胞を形質転換することによって、FGF21突然変異体を発現させた。40μg/mLカナマイシンを追加したTB培地中で通気を制限して、形質転換体を一晩増殖させ、翌日通気し、短時間の回復時間の後、0.4mM IPTG中で誘導した。誘導から18−20時間後、遠心することによって、FGF21突然変異ポリペプチドを回収した。
【0203】
FGF21突然変異体をまた、予想される免疫原性についても分析した。タンパク質に対する免疫反応は、抗原プロセシング及び主要組織適合性複合体(MHC)クラスII結合部位での提示により促進される。この相互作用は、タンパク質を認識する抗体の成熟におけるT細胞ヘルプに必要とされる。MHCクラスII分子の結合部位の特徴が分かっているので、タンパク質が、一連の共通のヒト対立遺伝子に結合し得る特異的配列を有するか否かを予想することが可能である。直線状のアミノ酸ペプチド配列が免疫寛容性を破壊する可能性があるか否かを判断するために、参考文献及びMHCクラスII結晶構造に基づき、コンピュータアルゴリズムを作成した。点突然変異、特にFGF21突然変異体が殆どのヒトにおいて抗原特異的T細胞を増加させるか否かを調べるために、TEPITOPEコンピュータプログラムを使用した。各FGF21突然変異体の直線状タンパク質配列の分析に基づき、免疫原性を促進することが予想される突然変異体はなかった。
【実施例12】
【0204】
FGF21分解におけるリンカー配列の影響
Fc配列とFGF21配列との間のより長いアミノ酸リンカーの存在が、FGF21分解に影響を与えるか否かを調べるために、Fc領域が、配列GGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)を有する15アミノ酸のリンカーによりFGF21配列から分離されたFGF21融合タンパク質をマウスに注射し、様々な時間点でそのマウスから採血し、LC−MSにより血清を分析した。特に、23mg/kgのFc(15)FGF21又はFGF21(15)Fc(E.コリから取得)をマウスに注射し、6、24及び48時間で採血し、抗ヒト−Fcアガロースレジンを用いて採取血液をアフィニティー精製した。
【0205】
LC−MSにより精製試料を分析する前に、Fc(15)FGF21及びFGF21(15)Fcタンパク質標準物質を参照物質として分析した。タンパク質標準物質は、TCEPで還元したか又は還元しなかった。LCQ Classicイオントラップ質量分析装置にカラム流出液を噴霧して、ACEシアノ0.3mmx30cmカラムを用いて、LC−MSにより、還元及び非還元標準物質の両方を分析した。還元試料のノイズ除去スペクトルがより明瞭であったので、LC−MS分析前にアフィニティー精製試料を還元した。
【0206】
還元Fc(15)FGF21標準物質及び様々な時間点で採取した対応するアフィニティー精製試料に対する実測質量を図8A−8Dで示す。還元FGF21(15)Fc標準物質及び様々な時間点で採取された対応するアフィニティー精製試料に対する実測質量を図9A−9Dで示す。タンパク質のN末端を確認し、LC−MSにより観察された断片が何であるか予想することを促進するために、標準物質及び試料溶出物のうちいくつかをエドマン配列解析にかけた。標準物質及び試料のLC−MS分析の結果及び予想される断片の指標を表13で示す。
【0207】
【表13】

【0208】
表13で示されるように、アフィニティー精製試料は全て、循環の僅か6時間後にある程度の分解を示した。循環の24時間後、Fc(15)FGF21の主要な産物は、アミノ酸残基1−414(試料の85%)及び1−394(試料の15%)からなる断片であり、FGF21(15)Fcの主要な産物は、アミノ酸残基1−423(試料の40%)、6−423(試料の35%)及び22−423(試料の25%)からなる断片であった。Fc(15)FGF21及びFGF21(15)Fcタンパク質に対する、同定される切断点をそれぞれ図10A及び10Bで示す。
【実施例13】
【0209】
注射から1−7日後の、タンパク質分解耐性Fc(15)FGF21突然変異体のインビボ活性
本明細書中に記載のように、FGF21Fc融合タンパク質のタンパク質分解性切断は、Fc配列の位置に依存し、融合タンパク質のFc末端は、融合タンパク質のFGF21末端よりも安定であった(即ち、Fc−FGF21融合タンパク質のN末端部分及びFGF21−Fc融合タンパク質のC末端部分がより安定であることが分かった。)。例えば、FGF21−Fcの位置5及び21及びFc−FGF21の位置151及び171で切断が特定された。
【0210】
これらの観察の結果として、タンパク質分解耐性FGF21突然変異体を同定するために、試験を行った。Fc−FGF21のLC−MS分析から、インビボタンパク質分解性分解が、最初にアミノ酸残基171−172の間で起こり、続いてアミノ酸残基151−152の間で分解が起こることが明らかとなる。位置171でタンパク質分解性分解を阻止することによって、位置151での切断が妨げられ得、効果的にその分子の半減期が延長される。しかし、位置151での切断が妨げられている、タンパク質分解耐性のある突然変異体は、プロテアーゼ攻撃を受けやすい位置171の残基を依然として保持し得、それにより、結果として、共受容体β−klotho(これは、リガンド受容体親和性及びインビトロ及びインビボ能力の決定因子である。)の結合に関与することが知られている、最後の10アミノ酸がない分子が生じる。従って、成熟FGF21の位置171の周囲のアミノ酸残基の突然変異誘発は、分子の、インビボ安定性、効能及び効力を向上させるためにより重要であると思われる。
【0211】
FGF21突然変異体をob/obマウスに腹腔内注射し、注射から0、0.25、1、3、5及び7日後に、注射したマウスから採血し、次いで試料中の血糖値を測定することにより、特定のタンパク質分解耐性Fc(15)FGF21突然変異体のインビボ活性をアッセイした。ある実験の結果を図11で示すが、これは、PBS対照、Fc(15)FGF21対照又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 P171A、Fc(15)FGF21 S172L、Fc(15)FGF21 G170E/P171A/S172L又はFc(15)FGF21 G151Aを注射したマウスで測定した血糖値を示す。図12は、この実験で測定した場合の、血糖値の%変化を示す。この実験から、Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 P171A、Fc(15)FGF21 S172L及びFc(15)FGF21 G170E/P171A/S172L突然変異体が、最長で5日間、持続的な血糖低下活性を示すことが明らかとなるが、これは、野生型Fc−FGF21の活性を上回る。Fc(15)FGF21 G151A突然変異体では、野生型Fc−FGF21融合タンパク質と比較した場合、血糖低下活性の持続時間の延長は不十分なものであった。驚くべきことに、Fc(15)−FGF21 S172L突然変異体は、タンパク質分解耐性突然変異体ではなく、従って、野生型Fc(15)−FGF21ポリペプチドと同様の分解プロファイルを有するにもかかわらず、この突然変異体は、野生型Fc(15)−FGF21ポリペプチドと比較した場合、インビボでの効力が向上したことが分かった。
【0212】
別の実験の結果を図13で示すが、これは、PBS対照、Fc(15)FGF21対照又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 P150A/G151A/I152V、Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 G170E/P171A又はFc(15)FGF21 G170E/S172Lを注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。図14は、この実験において測定した場合の、血糖値の%変化を示す。上述の実験でのように、野生型Fc−FGF21融合タンパク質及びFc(15)FGF21 P150A/G151A/I152V突然変異体は、持続性の血糖低下活性を示さないが、おそらくこれは、171部位での分解が依然として生じ得るからであり、これらのタンパク質を注射した動物における血糖値は注射後24時間でベースラインに戻った。しかし、Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 G170E/P171A又はFc(15)FGF21 G170E/S172Lは、注射後最長で5日、最大血糖低下活性を示し、これは、野生型Fc−FGF21融合タンパク質及びFc(15)FGF21 P150A/G151A/I152V突然変異体を上回る。
【0213】
別の実験の結果を図15で示すが、これは、PBS対照又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 G170A、Fc(15)FGF21 G170C、Fc(15)FGF21 G170D、Fc(15)FGF21 G170N又はFc(15)FGF21 G170Sを注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。図16は、この実験で測定した場合の、血糖値の%変化を示す。この実験で試験したFGF21突然変異体は全て、注射後最長で5日間、持続性の血糖低下活性を示した。
【0214】
別の実験の結果を図17で示すが、これは、PBS又はFc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 P171E、Fc(15)FGF21 P171H、Fc(15)FGF21 P171Q、Fc(15)FGF21 P171T又はFc(15)FGF21 P171Yを注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。図18は、この実験で測定した場合の、血糖値の%変化を示す。この実験で試験したFGF21突然変異体は全て、野生型Fc−FGF21と比較した場合、血糖低下活性が向上していた。
【実施例14】
【0215】
注射から6から120時間後の、タンパク質分解耐性Fc(15)FGF21突然変異体のインビボ分解
FGF21突然変異体をマウスに注射し、様々な時間点でマウスから採血し、LC−MSにより血清を分析することによって、選択したFGF21突然変異体のインビボ安定性を分析した。特に、注射前にそれぞれ10mM HClおよそ180μL中で希釈したFc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 P171A又はFc(15)FGF21 S172L突然変異体(実施例2に記載のようにE.コリから取得)の何れかをマウスに注射し、6、24、48、72及び120時間で採血した。抗ヒト−Fcアガロースレジンカラムを使用して、採取血液から、FGF21タンパク質をアフィニティー精製した。10mM HClを使用して、カラムから試料を溶出させた。FGF21コンストラクトは全て、FGF21タンパク質のアミノ末端にFc領域及び15アミノ酸のリンカーを含む。野生型FGF21対照もマウスに注射した。
【0216】
LC−MSによりアフィニティー精製試料を分析する前に、未処理野生型FGF21及び未処理FGF21突然変異体を参照物質として分析した。全ての標準物質及び時間点試料をTCEPで還元し、次いで、LCQ Classicイオントラップ質量分析装置にカラム流出液を噴霧して、ACEシアノ0.3mm x30cmカラムを用いて、LC−MSにより分析した。酢酸アンモニウムでアフィニティー精製試料を希釈し、TCEPで還元し、次いで上述のようにLC−MSにより分析した。
【0217】
注射から0、6、24及び48時間後の野生型Fc(15)FGF21の実測質量をそれぞれ図19A−19Dで示す。注射から0、6、24及び48時間後のFc(15)FGF21 G170Eに対する実測質量をそれぞれ図20A−20Dで示す。注射から0、6、24及び48時間後のFc(15)FGF21 P171Aに対する実測質量をそれぞれ図21A−21Dで示す。注射から0、6、24及び48時間後のFc(15)FGF21 S172Lに対する実測質量をそれぞれ図22A−22Dで示す。
【0218】
72及び120時間に採取した試料は全て、残りのFc(15)FGF21融合タンパク質よりも遥かに多いフィブリノーゲンの高分子量(非還元SDS−PAGEにより、>200kD)の成分を含有することが分かった。その他の標準物質及び試料のLC−MS分析の結果を表14で示す。
【0219】
【表14】


【0220】
表14で示されるように、野生型Fc(15)FGF21及びS172L突然変異体の分解は循環24時間後の時点で同様であると思われ、融合タンパク質の主要な産物は、アミノ酸残基1−414からなる断片であった。Fc(15)FGF21 G170E及びFc(15)FGF21 P171A突然変異体の分解産物もまた、循環24時間後に採取された試料が、70−80%の無傷のタンパク質(アミノ酸1−424)及びアミノ酸残基1−421からなる断片20−30%を含有するという点で同様であると思われる。48時間後でさえも、Fc(15)FGF21 G170E及びFc(15)FGF21 P171A突然変異体は依然として、無傷のタンパク質を保持し、一方で、アミノ酸残基1−421からなる断片量の増加を示した。Fc−FGF21コンストラクトの以前の分析で観察されたように、融合タンパク質のFGF21部分の分解が検出され、Fc部分は安定なままであることが分かった。野生型、Fc(15)FGF21 G170E、Fc(15)FGF21 P171A及びFc(15)FGF21 S172Lに対して同定された切断部位をそれぞれ図23A−23Dで示す。
【実施例15】
【0221】
凝集性低下FGF21突然変異体の同定
野生型FGF21のある特性は、その凝集傾向である。2つの仮説に基づき、凝集性低下FGF21突然変異体を同定した。第一の仮説は、FGF21に関して、凝集(又は二量体化)が、親水性の水性の溶媒環境に露出されている疎水性残基により引き起こされる、疎水性相互作用及びFGF21分子間のファンデルワールス相互作用により惹起される、ということである。第二の仮説は、凝集性を低下させる点突然変異の変異体を作製するために、FGF21活性を損なうことなく、これらの露出された疎水性残基が置換され得る、ということである。
【0222】
FGF21における露出された疎水性残基を同定するために、系統的理論的タンパク質工学的方法(systematic rational protein engineering approach)を使用した。露出した疎水性残基を同定するために使用することができるFGF21の既知のX線又はNMR構造がなかったので、MOE(Molecular Operating Environment;Chemical Computing Group;Montreal、Quebec、Canada)モデリングソフトウェアを用いてFGF21の3Dホモロジーモデルを作成するために、Protein Databank(PDB)から得たFGF19(IPWA)の高解像度(1.3Å)X線結晶構造を使用した。PDBに寄託されたタンパク質の中でも、FGF19はアミノ酸配列相同性に関してFGF21と最も近縁のタンパク質であるので、テンプレートとしてFGF19を選択した。
【0223】
MOEを使用した次の方法により、溶媒露出度を計算した。表面積の第一の尺度(SA1)は、Åでの残基の露出表面積として定義する。特定のアミノ酸残基がタンパク質の一次配列で複数回出現する一方で、残基の各出現は、とりわけ、タンパク質表面に対する残基の近接性、残基の側鎖の配向及び隣接アミノ酸残基の空間的位置の相違ゆえに、異なる表面積を有し得る。従って、表面積の第二の尺度(SA2)がもたらされ、このとき、関心のある残基が、その残基に隣接するか又は近接する残基と一緒に、タンパク質構造から抽出される。これらの空間的に近接する残基の側鎖を除去するために、これらの空間的に近接する残基をコンピュータ上でグリシンに変異させ、次いで、関心のある残基に対するSA2を計算する(その特定の立体構造におけるその残基に対する可能な総表面積の尺度を与える。)SA2に対するSA1の比(SA1/SA2)から、実際に露出されるその残基に対する予想表面積のパーセンテージを計測し得る。
【0224】
さらなる分析のために溶媒に非常によく露出されているいくつかの疎水性残基を選択し、選択した残基をその他の天然のアミノ酸残基で置換するために、これらの残基に対してコンピュータ上で点突然変異を生成させた。FGF21モデル及び、CUPSATウェブサイトで提供される説明書に従い、相互交流型ウェブ利用プログラムCUPSAT(Cologne University Protein Stability Analysis Tools)を用いて、様々な置換の結果起こるタンパク質温度安定性の変化を計算した。Parthibanら、2006、Nucleic Acids Res.34:W239−42;Parthibanら、2007、BMC Struct.Biol.7:54参照。凝集性が低下した点突然変異体の設計において、著しく不安定化するか又は疎水性である突然変異を除外した。親水性及び/又はイオン性の特性を向上させる、安定化(又は、稀に若干不安定化する)置換を凝集性低下FGF21突然変異体の候補とみなした。
【0225】
この合理的タンパク質工学アプローチを通じて得られたデータのまとめを表15で示すが、これはまた、タンパク質凝集性が低下し、安定性が向上していると予想される代表的FGF21突然変異体も列挙する。
【0226】
【表15】


【実施例16】
【0227】
凝集性低下FGF21突然変異体及び融合タンパク質の調製及び発現
実施例11に記載のような野生型FGF21発現ベクターのPCR増幅によって、表16で列挙されるFGF21突然変異体をコードするコンストラクトを調製した(野生型FGF21発現ベクターの構築は実施例1に記載。)。本明細書中、例えば実施例6に記載のように、融合タンパク質を作製した。
【0228】
【表16】


【0229】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、野生型FGF21、短縮FGF21ポリペプチド、FGF21突然変異体及びFGF21融合タンパク質を含む、様々なFGF21タンパク質の凝集をアッセイした。様々な時間点に対して、分析しようとする試料を4℃、室温又は37℃で温置し、次いでSEC分析にかけた。SECカラムを備えたBeckman HPLCシステムにおいて実験を行った。野生型FGF21に対して、移動相として2%イソプロピルアルコールを含有する2xPBSとともに、TOSOHAAS TSK−Gel G2000 SECカラムを使用した。FGF21 Fc融合タンパク質及びFGF21突然変異ポリペプチドに対して、移動相として2xPBSとともに、TOSOHAAS TSK−Gel G3000 SECカラムを使用した。
【実施例17】
【0230】
凝集性低下FGF21突然変異体のインビトロ活性
ELK−ルシフェラーゼインビトロアッセイにおいて野生型FGF21活性を保持する凝集性低下突然変異体を同定するために、実験を行った。実施例4に記載のように、ELK−ルシフェラーゼアッセイを行った。図24A−24Cは、FGF21突然変異体FGF21 L99R、FGF21 L99D及びFGF21 A111T(図24A);FGF21突然変異体FGF21 A129D、FGF21 A129Q及びFGF21 A134K(図24B);及びFGF21突然変異体FGF21 A134Y、FGF21 A134E及びFGF21 A129K(図24C)において行ったELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示す。これらの実験の結果から、凝集性低下突然変異体のうち一部は、ELK−ルシフェラーゼアッセイでアッセイした場合にFGF21活性に悪影響を与えなかったことが明らかになる。
【実施例18】
【0231】
より長い半減期及びより低い凝集レベルを示すFc(15)FGF21組み合わせ突然変異体の調製及び発現
タンパク質分解性分解を阻止することにより、凝集性を低下させることならびに半減期を延長させることが示される突然変異を含有する、多くのFGF21組み合わせ突然変異体を調製し、IgG1Fc分子と結合させた。これらのFGF21突然変異体は、基本的に実施例11に記載のように調製した。
【実施例19】
【0232】
より長い半減期及びより低い凝集レベルを示すFc(15)FGF21突然変異体のインビトロ試験
ELK−ルシフェラーゼインビトロアッセイにおいて野生型FGF21活性を保持するFGF21組み合わせ突然変異体を同定するために、実験を行った。ELK−ルシフェラーゼアッセイは実施例4に記載のように行った。
【0233】
図25A−25Dは、Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171G、Fc−FGF21 P171S及びFc−FGF21 P171T(図25A);Fc−FGF21突然変異体Fc−FGF21 P171Y、Fc−FGF21 P171W及びFc−FGF21 P171C(図25B);Fc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 A45K/G170E及びFGF21 A45K(図25C);及びFc(15)FGF21、Fc(15)FGF21 P171E及びFc(15)FGF21 A45K/G170E(図25D)において行ったELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示す。これらの実験の結果から、安定性又は安定性及び溶解性の両方をを向上させるための突然変異は、野生型Fc−FGF21と比較した場合に、インビトロ活性を損なわなかったことが明らかになる。興味深いことに、FGF21 A45K突然変異体は、野生型Fc−FGF21と比較して効能の向上を示した。
【0234】
図26Aは、4℃での1、2及び4日間にわたる、65mg/mLタンパク質の温置後の、FGF21対照(WT)及びFGF21 A45Kに対する%凝集の変化を示す。このデータから、A45K突然変異によって、野生型タンパク質と比較して、タンパク質の凝集性が低下することが示唆された。
【0235】
図26Bは、4℃での1、6及び10日間にわたる、65mg/mLタンパク質の温置後の、FGF21対照(WT)及びFGF21 P78C、P78R、L86T、L86R、L98C、L98R、A111T、A129D、A129Q、A129K、A134K、A134Y及びA134Eについての%凝集変化を示す。このデータから、L86R、L98C、L98R、A111T、A129Q及びA129Kにより、野生型タンパク質と比較して、タンパク質の凝集性が低下することが示唆された。
【0236】
図27は、ヒトFGF21対照及びFGF21突然変異体FGF21 A45K、FGF21 L52T及びFGF21 L58Eにおいて行われたELK−ルシフェラーゼ活性アッセイの結果を示す。この実験から、FGF21 A45K突然変異体が、野生型FGF21の効力を完全に保持し、野生型FGF21よりもさらに大きい効能を示すことが明らかになる。しかし、FGF21 L52T及びFGF21 L58E突然変異体は、野生型FGF21と比較した場合、効能及び効力の低下を示す。
【0237】
図28A−28Bは、1、4及び8日間にわたり4℃で温置した後の、Fc(15)FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 6−181/G170E、Fc(15)FGF21 A45K/G170E、Fc(15)FGF21 P171E、Fc(15)FGF21 P171A、Fc(15)FGF21 G170E及びFGF21対照についての凝集レベルの変化を示す。この実験から、8日間にわたり、Fc(15)FGF21 A45K/G170E突然変異体が、Fc(15)FGF21 G170E又はFc(15)FGF21 P171E突然変異体よりも低い凝集性を示したが、全ての3種類の突然変異体が、Fc(15)FGF21対照よりも低い凝集性を示したことが明らかになる。表17は、4℃又は室温での0、2、3、4又は7日間にわたる温置後の、Fc−FGF21対照及びFc−FGF21 A45K/G170E突然変異体に対して得られた%凝集性を示す。
【0238】
【表17】

【実施例20】
【0239】
Fc−FGF21融合組み合わせ突然変異体の調製及び発現
上述のように、特異的な短縮及びアミノ酸置換の導入を通じて、FGF21の安定性及び溶解性を調整することができる。さらに、このような修飾FGF21タンパク質をヒト免疫グロブリンIgG1遺伝子のFc部分と融合させることによって、FGF21安定性をさらに促進することができる。さらに、上記修飾の組み合わせを導入することによって、安定性及び溶解性の両方が向上したFGF21分子を作製することができる。上述の技術を用いて、表18で列挙されるFGF21組み合わせ突然変異体をコードする核酸配列を調製した。
【0240】
【表18】

【0241】
図29は、Fc(15)FGF21組み合わせ突然変異体Fc(15)FGF21 A45K/G170E、Fc(15)FGF21 A45K/P171G又はFc(15)FGF21 L98R/P171Gを注射したマウスにおいて測定した血糖値を示す。
【0242】
別の実験において、FGF21突然変異体Fc(15)FGF21 L98R/P171Gを野生型成熟FGF21及びFc−FGF21と並行して試験した。ある実験において、6時間にわたり、FGF21、Fc−FGF21又はFc−FGF21 L98R/P171Gの様々な濃度の存在下で、組み換え293T細胞株を培養した。次に、ルシフェラーゼ活性について細胞溶解液をアッセイした。図30で示されるように、Fc−FGF21 L98R/P171Gは、Fc−FGF21と同様の活性を有し、このことから、2つの点突然変異の導入によって、分子のインビトロ活性が変化しなかったことが示唆された。
【0243】
さらに別の実験において、FGF21及びFc−FGF21と並行して、2種類の異なる温度、即ち室温及び4℃で、9日間にわたり、65mg/mLのFc−FGF21 L98R/P171Gの安定性を評価した。温置時間後、次に、様々な温度での時間プロファイルに対する凝集性を調べるために、SEC−HPLCで細胞溶解液を分析した。図31A及び31Bで示されるデータから、Fc−FGF21 L98R/P171Gにおいて、室温(図31Aの、黒三角、点線)及び4℃(図31Bの、黒三角、点線)で、凝集形成速度が顕著に低下したことが示された。
【実施例21】
【0244】
C末端突然変異を含むタンパク質分解耐性FGF21突然変異体
組み合わせ突然変異体のインビボ安定性も試験した。具体的には、マウス及びカニクイザルにおいて、Fc−FGF21 L98R/P171Gのインビボ安定性をFc−FGF21の安定性と比較した。その結果は、両種において同様であることが分かった。カニクイザルの実験において、Fc−FGF21 L98R/P171G及びFc−FGF21を23.5mg/kgでIV注射し、投与後840時間までの時間点で血清及び血漿の一定分量を回収した。168時間までの時間点を分析した。抗Fc試薬を用いて時間点試料をアフィニティー精製し、次いでMALDI質量分析を用いて分析した。この結果は、この2つの分析間でよく相関した。
【0245】
免疫親和性MALDIを用いて生成されたデータを分析して、P171部位での切断は、P171からP171Gの突然変異の結果として、Fc−FGF21 L98R/P171G分子において解消されると思われた。しかし、Fc−FGF21 L98R/P171Gに対して、3個以下のC末端残基の喪失の結果として生じる小さくゆっくりとした分解が観察された(図32)。アミノ酸残基171と172との間のより切断が起こりやすい切断部位を図20及び21で示されるように妨害した後、その他のFGF21突然変異体によっても、この3個のC末端残基での小さな切断が観察された。この3個のC末端残基切断は、連続した残基ごとのカルボキシペプチダーゼによるか又はアミノ酸残基179−180及び180−181で非特異的切断を伴うアミノ酸残基178及び179での特異的プロテアーゼ攻撃による分子のC末端からの切断の停止に相当し得る。C末端での2−3個のアミノ酸の喪失により、β−klotho結合が減少し得、最終的にはその分子の効能及びインビボ活性が低下し得る。例えば、Yieら、2009、FEBS Lett.583:19−24参照。C末端のカルボキシペプチダーゼ分解(と思われるもの)に対処するために、様々なFGF21突然変異ポリペプチドにアミノ酸残基「キャップ」を付加する影響を試験した。表19で与えられるものを含む様々なコンストラクトを作製し、本明細書中に記載の技術を用いてアッセイした。表19は、インビトロELKルシフェラーゼアッセイの結果をまとめる。
【0246】
適切なアミノ酸キャップは、1から15アミノ酸長の間、例えば1、2、3、4、5、10又は15アミノ酸長であり得る。例えば、単一プロリン残基及び単一グリシン残基、2個のグリシン残基、5個のグリシン残基ならびにその他の組み合わせなど、キャップとして、アミノ酸の何らかの数及びタイプを使用することができる。キャップのさらなる例は、本実施例及び表19で示す。
【0247】
さらに、アミノ酸残基178及び179におけるプロテアーゼ攻撃(と思われるもの)に対処するために、位置179、180及び181のアミノ酸残基の突然変異を試験した。再び、表19で与えられるものを含む、様々なコンストラクトを作製し、本明細書中に記載の技術を用いてアッセイした。これらの部位でのキャップ及び突然変異の組み合わせの影響も調べた。表19は、作製し、インビトロELK−ルシフェラーゼアッセイで試験した(本明細書中に記載のように行った。)、代表的なコンストラクトをまとめる。本明細書中で使用される専門用語と一致して、hFcはヒトFc配列(即ち、配列番号13)を意味し、L15は、15残基を有するリンカー(即ち、配列番号23)を指す。
【0248】
【表19】


【0249】
図33は、PBS対照、野生型ネイティブFGF21、Fc−FGF21(L98R、P171G)及び、プロリン又はグリシン残基の何れかがC末端に付加された2種類のキャップ付き分子、即ちFc−FGF21(L98R、P171G、182P)及びFc−FGF21(L98R、P171G、182G)を注射した糖尿病db/dbマウス(C57B6バックグラウンド)で観察された血糖値の%変化を示す。本実施例において、野生型又は突然変異体FGF21ポリペプチドのC末端に残基を付加した場合、この残基は、得られたタンパク質におけるその位置で言及する。従って、「182G」は、成熟181残基野生型又は突然変異タンパク質のC末端にグリシン残基が付加されたことを指す。図33は、ネイティブFGF21が6時間にわたり血糖値を低下させ、一方で、試験した全ての3種類のFc−FGF21突然変異体が、少なくとも120時間にわたり、持続性の血糖低下活性を示したことを示す。融合分子のFGF21成分のC末端にプロリン残基の付加を含む分子であるFc−FGF21(L98R、P171G、182P)は、最も効能が大きいと思われ、その結果、Fc−FGF21(L98R、P171G)及びFc−FGF21(L98R、P171G、182G)と比較して、最低血糖値が得られた。
【0250】
続く実験において、Fc−FGF21(L98R、P171G、182G)及びFc−FGF21(L98R、P171G、182P)のインビボ活性を試験し、C末端に2個のグリシン付加を含むキャップ付き分子、即ちFc−FGF21(L98R、P171G、182G 183G)のインビボ活性と比較した。図34は、その実験の結果を示す。図34は、PBS対照、Fc−FGF21(L98R、P171G)、Fc−FGF21(L98R、P171G、182G 183G)、Fc−FGF21(L98R、P171G、182G)及びFc−FGF21(L98R、P171G、182P)を注射したob/obマウスで観察された血糖値の%変化を示す。
【0251】
図34で示されるように、試験した分子は全て、PBS対照と比較して、持続性のグルコース低下活性を示した。この実験により、C末端にプロリン付加のあるFc−FGF21(L98R、P171G、182P)のグルコース低下効力が、プロリンキャップなしの分子、例えばFc−FGF21(L98R、P171G)と比較して、若干向上したという以前の結果(図33)が確認された。しかし、C末端での2個のグリシン残基の付加、例えばFc−FGF21(L98R、P171G、182G 183G)は、分子のインビボ効能を低下させ、インビボでのグルコース低下効果の持続時間を短縮するようであった。
【0252】
図35は、PBS対照又はFGF21突然変異ポリペプチドFc−FGF21(L98R、P171G)、Fc−FGF21(L98R、P171G、Y179S)、Fc−FGF21(L98R、P171G、Y179A)、Fc−FGF21(L98R、P171G、A180S)及びFc−FGF21(L98R、P171G、A180G)を注射した糖尿病db/dbマウス(C57B6バックグラウンド)で観察された血糖値の%変化を示す。全ての突然変異体が、同様の作用持続時間で同様のグルコース低下活性を示した。
【0253】
図36は、ビヒクル対照、Fc−FGF21(L98R、P171G)、Fc−FGF21(L98R、P171G、Y179F)及びFc−FGF21(L98R、P171G、A180E)を注射した糖尿病db/dbマウス(C57B6バックグラウンド)で観察された血糖値の%変化を示す。Fc−FGF21(L98R、P171G)と比較して、Fc−FGF21(L98R、P171G、Y179F)は、血糖低下において効力が低かった。しかし、Fc−FGF21(L98R、P171G、A180E)(位置180のアミノ酸のアラニンがグルタミン酸に変異)は、Fc−FGF21(L98R、P171G)よりも効力が高く、Fc−FGF21(L98R、P171G)と比較して、血糖値をさらに20%低下させた。これらのデータから、A180E突然変異により、インビボでのC末端分解が減少し得、それにより、その分子のインビボ効能及び効力が向上することが示唆される。
【実施例22】
【0254】
アカゲザルの試験
本明細書中に記載の方法を用いて、Fc−リンカー−FGF21コンストラクトを作製した。このコンストラクトは、(Gly)−Ser−(Gly)−Ser−(Gly)−Serリンカー配列(配列番号23)にC末端で融合されたIgG1 Fc配列(配列番号13)を含み、次にこれを成熟FGF21配列(配列番号4)のN末端にC末端で融合させ、これに2つの突然変異L98R及びP171Gを導入した。次に、本明細書中に記載のとおり、このコンストラクトを発現させ、精製し、タンパク質の二量体形態として単離した(この各単量体は、各単量体のFc領域間の分子間ジスルフィド結合を介して連結された。)。この分子は、本実施例で「Fc−FGF21(RG)」と呼び、配列番号36のアミノ酸配列を有し、配列番号37によりコードされる。この実施例において、FGF21は、FGF21の成熟型、即ち配列番号4を指す。
【0255】
22.1 試験計画
BMI>35の非糖尿病雄アカゲザルに、Fc−FGF21(RG)コンストラクトを長期にわたり皮下(「SC」)投与した。成熟FGF21(即ち配列番号4)又はビヒクル対照の何れかでサルのその他の2つの群(1群あたりn=10)を処置した。
【0256】
何らかの試験化合物の投与前に42日間動物を順応させ、次いで10の群に分け、図37で図示されるように、盲検で試験化合物又は対照物の複数回SC注射を行った。簡潔に述べると、各動物に化合物又はビヒクルを1日1回注射した。FGF21を毎日投与し、一方で、Fc−FGF21(RG)を週に1回投与した。図37で示されるように、Fc−FGF21(RG)及びFGF21用量を2週間ごとに漸増させた。この実験を通じて、体重及び摂餌を監視した。CROに対して処置が分からないようにした。
【0257】
処置開始前に、2回の経口耐糖能試験(OGTT)を行った。曲線下面積(AUC)及び体重に基づく動物の分布が同様である3つの同等の群に動物を振り分けるために、OGTT1を使用した。第一のOGTT(OGTT1)の群の振り分けを確認するために、第二のOGTT(OGTT2)の結果を使用した。1回の試験(OGTT1)と次の試験(OGTT2)のOGTTプロファイルが一致しなかったサルは除外した。OGTT1及び2の結果を図38A及び38Bで示し、AUC測定は図38Cで示す。ベースライン体重は図38D、表20で示す。
【0258】
低、中及び高用量の各用量処置の終了時に2週間ごとにOGTT3、4及び5を行った。絶食動物から毎週血液試料を回収し、グルコース、インスリン、トリグリセリド値ならびに試験化合物レベルを測定するために使用した。3週間の休薬期間中も、血液試料を毎週回収した。
【0259】
ベースラインOGTT1及びOGTT2は、正常動物で見られるような予想グルコースプロファイルを示し、30分で血漿グルコースが最大となり、3種類の異なる群に対する安定したAUCが明らかになった。
【0260】
血漿化学に対する空腹時ベースライン値を表20で示す。治療開始前に回収した血液試料において、血漿化学測定を行った。
【0261】
【表20】

【0262】
3種類の異なる用量レベルを選択し、FGF21及びFc−FGF21(RG)に対して、それぞれ、低用量は、0.1及び0.3mg/kgであり、中程度の用量は、0.3及び1mg/kgであり、高用量は、1及び5mg/kgであった。マウスにおいて観察された用量反応に基づき、用量レベルを選択し、投与計画は、ヒトにおける予測注射頻度に基づいた。低及び中程度の用量に対してFGF21の等モル用量を使用し、Fc−FGF21(RG)高用量を5mg/kgに上昇させた(即ち、3mg/kgの代わり(これは、1mg/kg FGF21用量に対して等モルであった。))。
【0263】
22.2 体重における試験化合物の影響
この実験において、毎週測定される体重における試験化合物の影響を調べるために、アカゲザルの異なる3つの群において、ベースラインからの%体重変化を毎週計算した。休薬期間の3週間の間も体重を測定した。表20には、各群に対するベースライン体重値が含まれる。
【0264】
試験中、試験化合物の投与前後を通して、体重を追跡した。ビヒクル動物のベースラインからの体重%変化は、経時的に上昇し、一方で、Fc−FGF21(RG)及びFGF21で処置した動物の体重は、図39で示されるように、一連の6週間の処置期間にわたり、用量依存的に減少した。以前にげっ歯類で観察されたように(Xuら、Diabetes 58(1):250−9(2009))、FGF21での処置により、統計学的に有意に体重が減少した。Fc−FGF21(RG)は、FGF21(それぞれ図48及び図47)よりも露出が大きく、これにより、Fc−FGF21(RG)がFGF21よりも顕著な体重減少を示したという所見に対する考えられる理由が示される。
【0265】
22.3.インスリン値における試験化合物の影響
一晩絶食させた後又は午後の食事の後に回収した血液試料中のインスリン値を測定した。
【0266】
ビヒクル、FGF21又はFc−FGF21(RG)の何れかで処置したアカゲザルにおいて、及び3週間の休薬期間中に、毎週、アカゲザルの空腹時血漿インスリン値を測定した。最後のFc−FGF21(RG)注射からおよそ5日後及び最後のFGF21注射からおよそ21時間後に、空腹時血液試料を採取した。
【0267】
高用量処置中、ビヒクル又はFGF21の何れかでの処置の第5及び第6週の間、給餌状態での血漿インスリン値をアカゲザルで測定した。Fc−FGF21(RG)注射からおよそ3日後及び最後のFGF21注射からおよそ2時間後に、給餌状態での血液試料を採取した。図40は、全9週間の試験にわたる、空腹時インスリン値における、ビヒクル、FGF21及びFc−FGF21(RG)の影響を示し、図41は、第5及び6週の間に採取した試料から測定した、給餌状態でのインスリン値を示す。
【0268】
まとめると、2種類の最大用量で、FGF21及びFc−FGF21(RG)の両方が、統計学的に有意に空腹時及び給餌状態での血漿インスリン値を低下させた。グルコース値上昇が観察されることなく、FGF21及びFc−FGF21(RG)処置動物のインスリン値が低下したという所見から、インスリン感受性向上が示唆される。
【0269】
22.4 OGTT(グルコース及びインスリン)における試験化合物の影響
処置開始後、3回のOGTT(OGTT3、4及び5)を行った。、ビヒクル、FGF21又はFc−FGF21(RG)で6週間にわたり処置した動物において(高用量漸増計画の最後の2週間に相当)、OGTT5グルコース及びインスリン値プロファイルを測定した。最後のFc−FGF21(RG)注射からおよそ7日後及び最後のFGF21注射からおよそ21時間後に、OGTT5を遂行した。OGTT5グルコース及びインスリンプロファイルをそれぞれ図42及び図43で示す。図42で示されるように、Fc−FGF21(RG)で処置した動物は、最大用量でのみ、最後の測定時間点で、ビヒクル処置動物と比較して、グルコースクリアランスが向上していた。最後の投与の終了時に、Fc−FGF21(RG)は、グルコースクリアランスの最強の改善を示した。FGF21ではグルコースクリアランスの向上が見られなかった。Fc−FGF21(RG)は、FGF21よりも露出が大きく(それぞれ図48及び図47)、これにより、Fc−FGF21(RG)がFGF21よりもグルコースクリアランスにおいて顕著な効果を示したという所見に対する可能な説明が与えられる。OGTT5中のインスリン値は、ビヒクルで処置した動物と比較して、Fc−FGF21(RG)で処置した動物において測定した最後の時間点で統計学的に有意に低下した。
【0270】
図44で示されるように、アカゲザルの3つの異なる群における、低、中及び高用量のそれぞれの終了時に行った3回のOGTT(OGTT3、4及び5)に対して、ベースラインからのグルコースAUC%変化を計算した。最後のFc−FGF21(RG)注射からおよそ7日後及び最後のFGF21注射から21時間後にOGTT5を行い、Fc−FGF21(RG)が、統計学的に有意にAUC5を低下させたことが分かった。各群に対するベースラインOGTT値を図38Cで示す。
【0271】
OGTTを行った日に空腹時血漿グルコース値を測定した。3つの動物群中で測定した空腹時血漿グルコース値において、統計学的有意差は見られなかった。
【0272】
22.5 トリグリセリド値における試験化合物の影響
ビヒクル、FGF21又はFc−FGF21(RG)の何れかで処置したアカゲザルで、及び3週間の休薬期間中に、毎週、アカゲザルにおいて、空腹時血漿トリグリセリド値の%変化を計算した。最後のFc−FGF21(RG)注射からおよそ5日後及び最後のFGF21注射からおよそ21時間後に、空腹時血液試料を採取した。処置開始後、毎週、トリグリセリド値を測定し、ベースラインからの%変化を図45で示し、空腹時ベースライン値を表20で示す。
【0273】
図45示されるように、Fc−FGF21(RG)又はFGF21の何れかで処置した動物は、トリグリセリド値の用量依存的低下を示し、Fc−FGF21(RG)は、FGF21と比較して、最大の低下効果を有した。
【0274】
図46は、ビヒクル又はFc−FGF21(RG)又はFGF21での治療の第5及び6週の間の、給餌状態でのアカゲザルから得た試料中の血漿トリグリセリド値を示す。Fc−FGF21(RG)注射からおよそ3日後及び最後のFGF21注射からおよそ2時間後に、給餌状態での血液試料を採取した。FGF21及びFc−FGF21(RG)で処置した動物における給餌状態での血漿トリグリセリド値は、ビヒクルで処置した動物のトリグリセリド値と比較して、統計学的に有意に低下した(図46)。
【0275】
22.6 試験化合物の濃度
試験期間を通じておよそ等モル用量レベルで投与した試験化合物の曝露を評価した。投与前及び最後の注射からおよそ5日後に、Fc−FGF21(RG)の濃度を測定した。投与前及び第5、12、19及び26日に、FGF21レベルを測定した。最後の注射からおよそ21時間後に、血液試料を採取した。
【0276】
各サルにおける試験化合物の個々の濃度を図47及び48で示す。図47で示されるように、FGF21処置群の動物の大多数の濃度が定量限界に満たなかった。図48は、Fc−FGF21(RG)処置群の動物では、各投与フェーズ中(同じ用量強度で2回の週用量)、Fc−FGF21(RG)のレベルが検出可能であったことを示す。各投与フェーズからの平均濃度は、Fc−FGF21(RG)に対して0.3から5mg/kgに、ほぼ用量と比例して上昇した。両化合物に対して、各用量漸増フェーズ内での第一及び第二の週用量後に一定濃度であることにより実証されるように、僅かな蓄積がある。治療のない期間(休薬期間)中、Fc−FGF21(RG)レベルは、およそ第47日(最終投与から12日後)まで検出可能であり、その後は、定量(LLOQ)の下限に満たなかった。
【0277】
各OGTT中、試験化合物の曝露も監視した。低及び中程度用量のFGF21処置後、OGTT3及び4中、FGF21は検出可能ではなかった。しかし、高用量処置後、OGTT5中に、測定可能なレベルが観察された。図49で示されるように、第三から第五のOGTTにわたり、漸増用量レベルで、Fc−FGF21(RG)レベルの用量比例的上昇が観察された。
【0278】
化合物レベルデータから、用量漸増方式で、各化合物、即ちFGF21及びFc−FGF21(RG)の予想される量に動物が曝露されたことが確認される。測定されたFGF21の量は大幅な変動が観察されたが、これは、最後の投与からおよそ21時間後に試料採取が行われ、FGF21の半減期がおよそ1時間であることを考慮すると、予想される結果であった。
【0279】
22.7 結論
FGF21は、最高用量で、空腹時及び給餌状態での血漿トリグリセリド及びインスリン値を低下させ、体重を減少させた。Fc−FGF21(RG)は、最高用量で、OGTTを改善し、インスリン値を低下させ、用量依存的に空腹時及び給餌状態での血漿トリグリセリド値を低下させ、体重を減少させる。FGF21及びFc−FGF21(RG)の両者とも、非糖尿病アカゲザルにおいて多くの代謝パラメーターを低下させた。インスリン及びトリグリセリド値の低下は、給餌状態において、循環化合物レベルが同様の範囲である場合、FGF21とFc−FGF21(RG)との間で同一であった。その特性の向上ゆえに、Fc−FGF21(RG)は、測定したパラメーターの殆どにおいてFGF21を上回り、週に1回投与を行い、代謝パラメーターにおける効力を観察することができた。
【0280】
様々な実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者は変更及び改変に気付き得ることを理解されたい。
【0281】
従って、添付の特許請求の範囲は、主張されるような本発明の範囲内に入る全てのかかる同等の変更物を包含するものとする。さらに、本明細書中で使用されるセクション見出しは、単に構成を目的とするものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0282】
本願で引用される参考文献は全て、本明細書中に参照により明確に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4のアミノ酸配列を含み、位置45のアラニン残基、位置86のロイシン残基、位置98のロイシン残基、位置111のアラニン残基、位置129のアラニン残基、位置170のグリシン残基、位置171のプロリン残基又は位置172のセリン残基に対する何らかのアミノ酸の置換及びそれらの組み合わせをさらに含む、単離ポリペプチド。
【請求項2】
位置98のロイシン残基、171のプロリン残基又は、位置98のロイシン残基及び位置171のプロリン残基の両方に対する何らかのアミノ酸の置換を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
位置98のロイシン残基及び位置171のプロリン残基の両方に対する何らかのアミノ酸の置換を含む、請求項2に記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
(a)(i)位置19の、グルタミン、イソロイシンもしくはリジン残基;
(ii)位置20の、ヒスチジン、ロイシンもしくはフェニルアラニン残基;
(iii)位置21の、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシンもしくはバリン残基;
(iv)位置22の、イソロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;
(v)位置150の、アラニンもしくはアルギニン残基;
(vi)位置151の、アラニンもしくはバリン残基;
(vii)位置152の、ヒスチジン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;
(viii)位置170の、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、プロリンもしくはセリン残基;
(ix)位置171の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファンもしくはチロシン残基;
(x)位置172の、ロイシンもしくはスレオニン残基;又は
(xi)位置173の、アルギニンもしくはグルタミン酸残基、
である、少なくとも1つのアミノ酸置換;及び
(b)(i)位置26の、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;
(ii)位置45の、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;
(iii)位置52のスレオニン残基;
(iv)位置58の、システイン、グルタミン酸、グリシンもしくはセリン残基;
(v)位置60の、アラニン、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;
(vi)位置78の、アラニン、アルギニン、システインもしくはヒスチジン残基;
(vii)位置86の、システインもしくはスレオニン残基;
(viii)位置88の、アラニン、アルギニン、グルタミン酸、リジンもしくはセリン残基;
(ix)位置98の、アルギニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;
(x)位置99の、アルギニン、アスパラギン酸、システインもしくはグルタミン酸残基;
(xi)位置111の、リジンもしくはスレオニン残基;
(xii)位置129の、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンもしくはリジン残基;又は
(xiii)位置134の、アルギニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジンもしくはチロシン残基
である、少なくとも1つのアミノ酸置換;
及びそれらの組み合わせを有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項5】
位置98の残基がアルギニンであり、位置171の残基がプロリンである、請求項4に記載の単離ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、しかし、請求項4(a)(i)−(xi)及び4(b)(i)−(xiii)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換がさらに修飾されない、請求項4に記載の単離ポリペプチド。
【請求項7】
(a)位置19の、グルタミン、リジンもしくはイソロイシン残基;
(b)位置20の、ヒスチジン、ロイシンもしくはフェニルアラニン残基;
(c)位置21の、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシンもしくはバリン残基;
(d)位置22の、イソロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;
(e)位置150の、アラニンもしくはアルギニン残基;
(f)位置151の、アラニンもしくはバリン残基;
(g)位置152の、ヒスチジン、ロイシン、フェニルアラニンもしくはバリン残基;
(h)位置170の、アラニン、アスパラギン酸、システインもしくはプロリン残基;
(i)位置171の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファンもしくはチロシン残基;
(j)位置172のロイシン残基;又は
(k)位置173の、アルギニンもしくはグルタミン酸残基;
である、少なくとも1つのアミノ酸置換
及びそれらの組み合わせを有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項8】
位置171の残基がプロリンである、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
【請求項9】
配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、しかし、請求項7(a)−(k)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換がさらに修飾されない、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
【請求項10】
(a)位置26の、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;
(b)位置45の、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;
(c)位置52のスレオニン残基;
(d)位置58の、グルタミン酸、グリシンもしくはセリン残基;
(e)位置60の、アラニン、アルギニン、グルタミン酸もしくはリジン残基;
(f)位置78の、アラニン、アルギニンもしくはヒスチジン残基;
(g)位置88の、アラニン残基;
(h)位置98の、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、リジンもしくはスレオニン残基;
(i)位置99の、アルギニン、アスパラギン酸、システインもしくはグルタミン酸残基;
(j)位置111の、リジンもしくはスレオニン残基;
(k)位置129の、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンもしくはリジン残基;又は
(l)位置134の、アルギニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジンもしくはチロシン残基;
である少なくとも1つのアミノ酸置換
及びそれらの組み合わせを有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項11】
位置98の残基がアルギニンである、請求項10に記載の単離ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、しかし、請求項10(a)−(l)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換がさらに修飾されない、請求項10に記載の単離ポリペプチド。
【請求項13】
(a)位置179の、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、セリンもしくはグリシン;
(b)位置180の、グルタミン酸、グリシン、プロリンもしくはセリン;又は
(c)位置181の、リジン、グリシン、スレオニン、アラニン、ロイシンもしくはプロリン
である少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項1、4、7又は10の何れかに記載の単離ポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドのC末端に融合された1から10個のアミノ酸残基をさらに含む、請求項1、4、7又は10の何れかに記載の単離ポリペプチド。
【請求項15】
1から10個のアミノ酸残基が、グリシン、プロリン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の単離ポリペプチド。
【請求項16】
(a)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);
(b)12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);又は
(c)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮及び12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。)
を含む、請求項1、4、7又は10の何れかに記載の単離ポリペプチド。
【請求項17】
1以上のポリマーに共有結合される、請求項1、4、7又は10の何れかに記載の単離ポリペプチド。
【請求項18】
ポリマーがPEGである、請求項17に記載の単離ポリペプチド。
【請求項19】
異種アミノ酸配列に融合される、請求項1、4、7又は10の何れかに記載の単離ポリペプチドを含む、融合ポリペプチド。
【請求項20】
リンカーを介して異種アミノ酸配列に融合される、請求項19に記載の融合ポリペプチド。
【請求項21】
リンカーが、GGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)を含む、請求項20に記載の融合ポリペプチド。
【請求項22】
異種アミノ酸配列が、IgG定常ドメイン又はその断片である、請求項20に記載の融合ポリペプチド。
【請求項23】
IgG定常ドメインが、配列番号13のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
請求項23に記載の融合ポリペプチドの2以上のコピーを含むマルチマー。
【請求項25】
請求項1、4、7又は10の何れかに記載の単離ポリペプチドと、医薬的に許容可能な製剤用物質と、を含む、医薬組成物。
【請求項26】
代謝性疾患を治療することを必要とするヒト患者に請求項25に記載の医薬組成物を投与することを含む、代謝性疾患を治療するための方法。
【請求項27】
代謝性疾患が糖尿病である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
代謝性疾患が肥満である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
請求項1、4、7又は10の何れか1項に記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項31】
請求項29に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項32】
(a)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);
(b)12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);又は
(c)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮及び12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。)
を含む、配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項33】
(a)IgG定常ドメイン;
(b)IgG定常ドメインに融合されたリンカー配列;及び
(c)リンカー配列に融合され、配列番号4のアミノ酸配列を含むFGF21突然変異体(アルギニン残基が位置98のロイシン残基に対して置換されており、グリシン残基が位置171のプロリン残基に対して置換されている。)
を含む、単離融合タンパク質。
【請求項34】
リンカー配列が、GGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)を含む、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項35】
IgG定常ドメインが配列番号13を含む、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項36】
リンカー配列がGGGGGSGGGSGGGGS(配列番号23)を含み、IgG定常ドメインが配列番号13のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項37】
リンカーのN末端がIgG定常ドメインのC末端に融合され、FGF21突然変異体のN末端がリンカーのC末端に融合される、請求項36に記載の単離融合タンパク質。
【請求項38】
請求項33に記載の融合タンパク質の2以上を含む、マルチマー。
【請求項39】
FGF21突然変異体が、
(a)位置179の、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、セリンもしくはグリシン;
(b)位置180の、グルタミン酸、グリシン、プロリンもしくはセリン;又は
(c)位置181の、リジン、グリシン、スレオニン、アラニン、ロイシンもしくはプロリン
である少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項40】
FGF21突然変異体が、FGF21突然変異体のC末端に融合された1から10個のアミノ酸残基をさらに含む、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項41】
1から10個のアミノ酸残基が、グリシン、プロリン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40に記載の単離融合タンパク質。
【請求項42】
FGF21突然変異体が、
(a)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);
(b)12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。);又は
(c)8個を超えないアミノ酸残基のアミノ末端短縮及び12個を超えないアミノ酸残基のカルボキシル末端短縮(ポリペプチドは哺乳動物において血糖を低下させることができる。)
を含む、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項43】
FGF21突然変異体が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、しかし、位置98のアルギニン及び位置171のグリシンがさらに修飾されない、請求項33に記載の単離融合タンパク質。
【請求項44】
請求項33又は請求項38に記載の単離融合タンパク質と、医薬的に許容可能な製剤用物質とを含む、医薬組成物。
【請求項45】
代謝性疾患を治療することを必要とするヒト患者に請求項44に記載の医薬組成物を投与することを含む、代謝性疾患を治療するための方法。
【請求項46】
代謝性疾患が糖尿病である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
代謝性疾患が肥満である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
請求項33に記載の融合タンパク質をコードする、単離核酸。
【請求項49】
請求項48に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項50】
請求項48に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38A】
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【図38B】
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【図38C】
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【図38D】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公表番号】特表2011−523561(P2011−523561A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512611(P2011−512611)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/046113
【国際公開番号】WO2009/149171
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】