説明

FISCHER−FINK型合成および続くアシル化による4,5−ジアルキル−3−アシル−ピロール−2−カルボン酸誘導体の製造

【課題】プロテアーゼ阻害剤の合成に有用な化合物の製造方法の提供。
【解決手段】ケトーエノール型の化合物とβーケトーαーオキシムーカルボン酸エステル型の化合物を亜鉛、水、および所望によりさらなる好適な溶媒の存在下で反応させる、式I−a


のピロールキャップ基前駆体の改善された合成法。〔式中、R、RはC1−12脂肪族、C3−12アルキル−環状脂肪族、C3−12アルキル−アリール、C3−12アルキル−ヘテロアリール、またはC3−12アルキル−ヘテロアリール、またはC12アルキル−環状脂肪族である〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性な化合物、とりわけプロテアーゼ阻害剤の合成に有用な化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(“HCV”)による感染は、切実なヒト医療の問題である。HCVは非A型、非B型肝炎のほとんどの症例の原因となる要因であると認識されており、世界中で3%のヒト血清有病率であると見積もられている[A. Alberti et al., “Natural History of Hepatitis C, ” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 17-24 (1999)]。米国だけでおそらく400万人近くの個体が感染しているであろう[M.J. Alter et al., “The Epidemiology of Viral Hepatitis in the United States, Gastroenterol. Clin. North Am., 23, pp. 437-455 (1994); M. J. Alter “Hepatitis C Virus Infection in the United States, ” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 88-91 (1999)]。
【0003】
現在のところ、満足な抗HCV薬剤または処置は全く存在しない。最近まで、HCV感染への確立された治療はインターフェロン処置のみであった。しかしながら、インターフェロンは重大な副作用を有し[M. A. Wlaker et al., “Hepatitis C Virus: An Overview of Current Approaches and Progress, ” DDT, 4, pp. 518-29 (1999); D. Moradpour et al., “Current and Evolving Therapies for Hepatitis C, ” Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 11, pp. 1199-1202 (1999); H. L. A. Janssen et al. “Suicide Associated with Alfa-Interferon Therapy for Cronic Viral Hepatitis, ” J. Hepatol., 21, pp. 241-243 (1994); P.F. Renault et al., “Side Effects of Alpha Interferon, ” Seminars in Liver Disease, 9, pp. 273-277. (1989)]、そして症例の一部(〜25%)においてのみ長期の改善が生じる[O. Weiland, “Interferon Therapy in Chronic Hepatitis C Virus Infection”, FEMS Microbiol. Rev., 14, pp. 279-288 (1994)]。インターフェロンのペグ化された形態(PEG−Intron(登録商標)およびPegasys(登録商標))およびリバビリンとペグ化インターフェロンの組合せ治療(Rebetrol(登録商標))の近年の導入は、緩解率においてわずかな改善のみに、そして副作用の部分的軽減のみに終わっている。さらに、有効な抗HCVワクチンの見込みは不明のままである。
【0004】
HCV非構造(NS)タンパク質は、ウイルスの複製の本質的な触媒機構を提供すると推測されている。HCV NS3セリンプロテアーゼおよびその関連するコファクターであるNS4Aは、全てのウイルス酵素のプロセッシングを助け、したがってウイルスの複製に必須であると見なされている。このプロセッシングは、ウイルスタンパク質のプロセッシングを阻害し、ヒトの強力な抗ウイルス剤であるウイルス酵素プロセッシングHIVプロテアーゼ阻害剤にも含まれる、ヒト免疫不全ウイルスアスパルチルプロテアーゼによって行われるものと類似しているようである。このことは、ウイルスのライフサイクルのこの段階の中断によって、治療上活性な薬剤をもたらすことを示す。結果として、これはまた、薬剤の発見に魅力的な標的である。
【0005】
プロテアーゼ阻害剤および多くの他の化合物は、N末端キャップ基を含む。当該N末端キャップ、または保護基は、HCVプロテアーゼ阻害剤に限られない。あらゆる生物学的に活性なペプチジル化合物は、N末端キャップ基を有し得る。同様に、多くの非ペプチジル(とりわけペプチジル模倣)化合物は、N末端キャップ基の同等物を含む。さらに、任意の化合物における1級または2級アミンはキャップ基で誘導化され得る。したがって、N末端キャップ基は広く使用されている。したがって、N末端キャップ基(保護基と呼ぶこともある)および当該基を作成する方法の必要が存在する。
【0006】
とりわけ有用なピロールベースのキャップ基は記載された(WO 03/087092)。このキャップ基は比較的複雑である。比較的複雑なキャップ基の欠点は、それらが容易には商業的に入手できないことおよび/または合成が難しいことである。知られているとおり、カルボン酸は前記キャップ基の便利な前駆体である。不運なことに、これらの特定の有用なキャップ基に対応するカルボン酸前駆体を合成するための、安全で、効果的で、および/または大規模な方法は存在しない(D.T. Kozhich et al., Zh. Organ. Khimii, 16 pp, 849-855-750 (1980); UDC 547, 745; 312; A. J. Robinson et al., J. Org. Chem. 66, pp. 4148-4152 (2001); H. Falk et al. Monatsh. Chemie, 104, pp. 925-923 (1973)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ピロールベースのキャップ基のこれらのカルボン酸前駆体への効果的な合成経路に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ピロールキャップ基の改善された合成に関する。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明はカルボン酸置換ピロールの改善された合成を提供する。有利には、この合成は大規模な合成に適用される。本発明は、前記キャップ基をより容易に利用可能とする。
【0010】
一つの態様(A)において、本発明は化合物
【化1】

〔式中、Rは独立してアルキル基から選択される〕
を製造するための方法であって、
a)式II−B
【化2】

〔式中、各Rは独立してアルキル基から選択される〕
の化合物と式III−B
【化3】

の化合物をNaOt−Bu(t−ブトキシドナトリウム)、適当な溶媒(たとえばTHF)の存在下で、適当な温度で反応させて、式IV−B
【化4】

の化合物を得ることを含んでなる方法を提供する。
【0011】
上記反応の任意の態様における適当な反応温度は、約20℃以下である。一つの態様において、ブタノンの溶液および適用な溶媒(たとえばTHF)は、約−5℃〜約15℃(好ましくは約0℃〜約10℃;あるいは約5℃〜約10℃)へと冷却される。一つの態様において、前記反応物を、一晩、約20℃〜約28℃(好ましくは約22℃〜約26℃)にて撹拌する。
【0012】
他の態様において、本発明は化合物
【化5】

〔式中、各Rは独立してアルキル基から選択される〕
を製造するための方法であって、式IV−B
【化6】

〔式中、各Rは独立してアルキル基から選択される〕
の化合物と、式VI−B
【化7】

〔式中、RおよびRは各々独立してアルキル基から選択される〕
の化合物を、亜鉛、酢酸、水およびジオキサン(または他の適当な溶媒)の存在下で反応させて、式VI−B
【化8】

の化合物を得ることを含んでなる方法を提供する。
【0013】
具体的な態様において、Rはメチルである。
【0014】
他の具体的な態様において、Rはメチルである。
【0015】
一つの態様において、式IV−Bの化合物、式VI−Bの化合物、水、ジオキサン(または適当な他の溶媒)、および酢酸を、約50℃〜約65℃にて反応させる。より具体的な態様において、反応混合物を約58℃〜約60℃にて撹拌する。
【0016】
一つの態様において、亜鉛を加え(好ましくは少しずつ)、続いて上記加熱工程を行う。この反応混合物を、次いで、約75℃〜約85℃にて撹拌する。より具体的な態様において、前記混合物を約80℃〜85℃、より具体的には約80℃〜82℃にて撹拌する。
【0017】
一つの態様において、前記反応混合物をt−ブチルメチルエーテルで(約25℃〜約28℃にて)抽出する。
【0018】
有利には、この態様において、塩基(たとえば酢酸ナトリウム)は加えない。
【0019】
本発明の態様において、Rは好ましくはC−1〜C−6アルキル基(その中の任意の整数を含む)である。より具体的な態様において、各Rは独立して、C−1、C−2、またはC−3アルキル基である。
【0020】
他の態様(B)において、本発明は式I−a
【化9】

の化合物の製造方法であって、式IV−a
【化10】

〔式中、RはC1−12脂肪族、C3−12アルキル−環状脂肪族、C3−12アルキル−アリール、C3−12アルキル−ヘテロアリール、またはC3−12アルキル−環状脂肪族である〕
の化合物の水溶液を、式V−a
【化11】

〔式中、RおよびRは各々独立してC1−6脂肪族である〕
の化合物と、亜鉛、水、および所望によりさらなる好適な溶媒の存在下で混合して、式VI
【化12】

の化合物を形成することを含んでなる方法を提供する。
【0021】
本発明者らは式IVの化合物を水溶液中で使用することが有利であると発見した。水性条件では、ナトリウムが加水分解される(すなわち、解離してアルデヒドを形成する)ことが理解されるべきである。ナトリウム塩は扱いが容易であり、そして貯蔵に安定である。しかし、製造方法において使用するには厄介であり得る。塩の水溶液を予め形成する本発明の方法は、標準の方法の改善である。
【0022】
本発明の他の態様は、式VI−a
【化13】

の化合物の製造方法であって、式IV−a
【化14】

〔式中、RはC1−12脂肪族、C3−12アルキル−環状脂肪族、C3−12アルキル−アリール、C3−12アルキル−ヘテロアリール、またはC3−12アルキル−環状脂肪族である〕
の化合物の水溶液を、式V−a
【化15】

〔式中、RおよびRは各々独立してC1−6脂肪族である〕
の化合物と、亜鉛および好適な溶媒の存在下で混合して、式VIの化合物を形成することを含んでなる方法を提供する。
【0023】
さらに他の態様は、式I−a
【化16】

の化合物の製造方法であって、
A)式IV−a
【化17】

〔式中、RはC1−12脂肪族、C3−12アルキル−環状脂肪族、C3−12アルキル−アリール、C3−12アルキル−ヘテロアリール、またはC3−12アルキル−環状脂肪族である〕
の化合物の水溶液を、式V−a
【化18】

〔式中、RおよびRは各々独立してC1−6脂肪族である〕
の化合物と、亜鉛ならびに水および所望により他の好適な溶媒(好ましくは極性有機溶媒、より好ましくはジオキサン、THFまたは他の極性溶媒)を含む溶媒の存在下で反応させて、式VI
【化19】

の化合物を形成すること:
B)式VIの化合物を好適なアシル化剤でアシル化し、式VII
【化20】

の化合物を形成すること:
C)式VIIの化合物を、好適な加水分解条件下(金属ヒドロキシドについての酸性または塩基性加水分解を含む(金属、HSO(水溶液)、HCl(水溶液)の例については下記参照))で加水分解して、式I
【化21】

の化合物を形成することを含んでなる方法を提供する。
【0024】
アルキルアリールおよびアルキルヘテロアリールにおける(とりわけRにおける)本発明のある態様において、当該アリールおよびヘテロアリールは、前記アルキルが分子の残りと結合している位置に対して、アルファまたはベータではない。好ましくは、当該アリールおよびヘテロアリールは少なくとも前記結合からガンマ位、またはより遠位である。脂肪族基は好ましくはアルキルである。C1−12基の好ましい形態は、C1−6基である。“アルキル”および“脂肪族”なる用語は、本明細書で使用されるとき、直鎖または分枝鎖状のアルキル基を意味する。
【0025】
ある態様において、前記方法はさらに、式VIの化合物を好適なアシル化条件下で反応させて、式IX
【化22】

の化合物を得ることを含む。
【0026】
ある態様において、式VIの化合物をR−XまたはRC(=O)−O−C(=O)Rと反応させて、式IX
〔式中、
Xは好適な脱離基であり;
はC1−12脂肪族、アリール、ヘテロアリール、C1−12脂肪族−環状脂肪族、C1−12脂肪族−アリール、C1−12脂肪族−ヘテロアリール、またはC1−12脂肪族−環状脂肪族である〕
の化合物を形成する。当該反応の条件が広範なR基を許容することは理解されるべきである。
【0027】
ある態様において、前記アシル化条件は:
化合物をAlClおよびRC(=O)−O−C(=O)Rと加熱して、式IXの化合物を形成することを含む。
【0028】
ある態様において、前記アシル化条件は:
化合物をAlClおよびAcOと還流ジクロロメタン中で加熱して、Rがメチルである式IXの化合物を形成することを含む。
【0029】
ある態様において、前記方法はさらに、式IXの化合物を好適な加水分解条件下で反応させて、式Iの化合物を得ることを含む。
【0030】
ある態様において、前記加水分解条件は:
好適な塩基、好適な溶媒、および20〜100℃の反応温度を含む。
【0031】
ある態様において、前記工程の塩基はM(OH)(式中、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択される金属であり、nは1〜2である)であり、および/または前記溶媒はアルコール溶媒である。好ましい塩基にはKOHが含まれ、溶媒はEtOHであり、そして温度はエタノールの還流温度である。
【0032】
ある態様において、式IVの化合物、式Vの化合物、および好適な酸を水および好適な体積の有機溶媒中で反応させて、反応混合物を溶液中に保つ。前記有機溶媒は好ましくは反応物を溶液中に保つために選択される。
【0033】
ある態様において、式IVの化合物、式Vの化合物、および酢酸を好適な体積の水およびジオキサン中で反応させて、反応の内部温度を約50℃〜約80℃に維持する。酢酸のみでは、前記反応は発熱しすぎる。100℃を越える反応温度は分解物が生じ得るので好ましくない。好ましくは、前記反応を80℃以下に維持する。
【0034】
ある態様において、式IVの化合物、式Vの化合物、水、ジオキサン、および酢酸を約50℃〜約65℃にて撹拌する。他の好ましい温度は、約58℃〜約60℃である。
【0035】
ある態様において、前記方法は亜鉛を加える工程を含む。これらの反応についての好ましい温度には、約75℃〜約85℃が含まれる。他の温度は約80℃〜約85℃;約80℃〜82℃である。
【0036】
本発明の好ましい方法において、亜鉛を少しずつ加える。当該反応は発熱性であり、したがって亜鉛を少しずつ加えることは温度の維持を助け、そして安全でもある。
【0037】
アルキルアリールおよびアルキルヘテロアリールにおける(とりわけRにおける)本発明のある態様において、アリールおよびヘテロアリールは、前記アルキルが分子の残りと結合している位置に対して、アルファまたはベータではない。好ましくは、当該アリールおよびヘテロアリールは少なくとも前記結合からガンマ位、またはより遠位である。脂肪族基は好ましくはアルキルである。C1−12基の好ましい形態は、C1−6基である。
【0038】
他の態様において、Rは独立してC1−6アルキルであり、好ましくは各Rは独立してC1−3アルキルである。最も好ましくは、各Rはメチルである。
【0039】
他の態様において、RおよびRは各々独立してメチルであり、そしてRはエチルである。
【0040】
他の態様において、RはC1−6アルキルである。好ましくはRはメチルである。
【0041】
他の態様において、RおよびRは独立してメチルである。
【0042】
他の態様において、R、R、およびRは独立してメチルであり、そしてRはエチルである。
【0043】
上記一般的な態様の各々(すなわち、IV、IV−A、またはIV−Bの製造、またはおよびVII、VII−A、またはVII−Bの製造)を、式I、I−A、またはI−Bの化合物を製造するための方法において、別々に、または一緒に、使用することができる。式I、I−AまたはI−Bのサンプル製造は、当業者に既知のもの、WO 03/087092のものおよび/または本明細書実施例1〜5に記載のもののような、個々の反応であろう。
【0044】
有利には、実施例1〜5に記載の方法を行い、そして式I、I−A、またはI−Bの化合物の大規模な生産に適用可能であることを発見した。したがって、本発明の一つの態様は、実施例1もしくは実施例3に単独で、または実施例1および/または実施例3に実施例2、実施例4、または実施例5のいずれか1以上との組合せて記載されたとおりである。
【0045】
本発明の具体的な態様は、本明細書の実施例のものである。
【0046】
本発明の方法は遊離アミン、遊離カルボン酸、および非置換カルボニル基を用いて記載されているが、これらの基の各々は所望により誘導体化または保護される(たとえば、T.W. Greene & P.G.M. WUTS, “Protective Group in Organic Synthesis”, 3rd Ed., John Wiley & Sons, Inc., New York (1999)参照)。
【0047】
具体的な態様において、本発明は化合物
【化23】

を製造するための方法を提供する。
【0048】
本発明によって製造されるカルボン酸はキャップ基として使用され得るが、当業者は前記酸についての他の使用を予想することができる。本明細書において提供される方法を含む任意のかかる使用は、本発明の一部である。
【0049】
下記スキーム1は本発明の具体的な態様であり、式中、R、R、およびRはメチルであり、そしてRはエチルである。変換体Iの各々
スキーム1:
【化24】

【0050】
一般的な合成方法論:
本発明において使用される方法は、他に記載が無い限り、当業者に既知の一般的な方法に従い得る。あるいは、本明細書に記載の態様を除き、本明細書の一般的な方法によって例示されたとおり、スキーム1のものと同等な他の方法、および下記製造例を、ピロールカルボン酸の様々な部分を合成するために使用することができる。有機化学の一般的な原則は、“Organic Chemistry”, Thomas Sorrel, University Science Books, Sausalito: 1999、および“March's Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001; Green &Wuts, “Protective Group in Organic Synthesis”, 3rd Ed., John Wiley & Sons (1999) およびこの本の他の版に記載されている;引用によりこれらの全ての内容を本明細書の一部とする。
【0051】
本発明をより十分理解するために、下記製造例および試験例を記す。これらの例は説明の目的のみであり、本発明の技術的範囲をいなかる方法においても限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0052】
実施例1
【化25】

材料
【表1】

【0053】
方法
工程1:機械的攪拌機、温度計、および添加用漏斗を取り付けた12Lの三首丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、1.0kgのブタノンを加える。
工程2:ブタノンに、1.6Lのテトラヒドロフランを加える。
工程3:溶液を5℃〜10℃へと冷却する。
工程4:冷却した溶液に、1.54kgのエチルホルメートを加える。
工程5:混合物に、5.3Lのテトラヒドロフラン中30重量%のt−ブトキシドナトリウムを加える(注1)。
工程6:混合物を一晩、22℃〜26℃にて撹拌する(注2)。
工程7:吸引濾過によって沈殿を集める。
工程8:濾過ケーキを〜2.0Lのテトラヒドロフランで濯ぐ。
工程9:濾過ケーキを1〜2時間、真空吸引する。
工程10:濾過ケーキを高真空下で、16〜20時間乾燥させる。
【0054】
結果
重量:1.5kg
純度%(w/w)または%(AUC):注3参照
モル収率または面積収率:80%
【0055】
方法の有効性
最大体積工程−9.5L
最小体積工程−9.5L
【0056】

注1−テトラヒドロフラン中30重量%のt−ブトキシドナトリウムの添加を、2時間かけて行い、温度が20℃を越えないようにした。
注2−反応の進行をモニターする分析方法は未だ開発されていないが、H NMR、または赤外線スペクトルによってブタノンの消費を追跡することができた。
注3−純度は通常H NMRによって確認し、90〜95%の所望の化合物である(〜9.0ppmでの生成物のビニルプロトンを、不所望の位置異性体であるケトアルデヒドナトリウム塩に由来すると考えられる〜8.4ppmでのシングレットに対して積分できる)。Karl Fisher分析によって測定されるとおり、原料も4〜5%の水を含む。
【0057】
実施例2
【化26】

材料
【表2】

【0058】
詳細な方法
工程1:10%炭酸カリウム水溶液の製造:300gの炭酸カリウムを2.7Lの水に溶解させる。
工程2:飽和塩化ナトリウム水溶液の製造:529gの塩化ナトリウムを1.4Lの水に溶解させる。
工程3:亜硝酸ナトリウム水溶液の製造:557gの亜硝酸ナトリウムを1.0Lの水に溶解させる。
工程4:エチルアセト酢酸/氷酢酸溶液の製造:1.0kgのエチルアセト酢酸を2.0Lの氷酢酸に溶解させる。
工程5:機械的攪拌機、温度計、および添加用漏斗を備えた3.0Lの三首丸底フラスコに、エチルアセトアセテート/氷酢酸溶液を加える。
工程6:溶液を3℃〜6℃へと冷却する。
工程7:エチルアセト酢酸/氷酢酸溶液に、亜硝酸ナトリウム水溶液を加える(注1)。
工程8:反応混合物を環境温度で撹拌し、そして反応の進行をH NMRでモニターする(注2)。
工程9:反応混合物を3.0Lの水で希釈する。
工程10:希釈した反応混合物を、3.5Lのtert−ブチルメチルエーテルで抽出する。
工程11:層を分離させる。
工程12:有機層を2.0Lの10%炭酸カリウム水溶液で抽出する(注3)。
工程13:層を分離させる。
工程14:有機層を1.0Lの10%炭酸カリウム水溶液で抽出する。
工程15:層を分離させる。
工程16:有機層を2.0Lの飽和塩化ナトリウムで洗浄する。
工程17:層を分離させる。
工程18:有機層を濃縮して緑色の油状物とする。
【0059】
結果
重量:1.2kg
純度%(w/w)または%(AUC):95%AUC
モル収率または面積収率:92%
【0060】
分析
方法: HPLC:Zorbax SB Phenyl;5um、4.6mm i.d.×250mm、90% H2O/10% CH3CN/0.1%TFAから10%水、15分、10μL注入、1.0mL/分、実行時間=20分、カラム温度=50℃、λ=214nm。
【0061】
リテンションタイム
【表3】

【0062】
方法の有効性
最大体積工程−11L
最小体積工程−4.5L
【0063】

注1−亜硝酸ナトリウムの添加を、90分かけて行い、温度が25℃を越えないようにした。
注2−1〜2時間の反応時間は典型であり、そしてエチルアセトアセテートのメチレンプロトンがなくなったとき、反応は完了する。
サンプル製造−2.0mLの反応アリコートを2.0mLの水で希釈し、そして3.0mLのEtOAcで抽出する。層を分離させ、有機層を濃縮し、そしてCDClで希釈する。
注3−過剰な気体発生を避けるため、塩基は注意して加えるべきである。
【0064】
実施例3
【化27】

材料
【表4】

【0065】
詳細な方法
工程1:IV−A水溶液の製造:619gのIV−Aを1.5Lの水に溶解させる。
工程2:機械的攪拌機、熱電温度計/加熱マントル装置、および添加用漏斗を備えた22Lの三首丸底フラスコに、697gのVI−Aを加える。
工程3:VI−Aに1.4Lのジオキサンを加える。
工程4:溶液に、3.4Lの水を加える。
工程5:溶液に、763gの酢酸を加える。
工程6:混合物に、IV−A水溶液を加える。
工程7:混合物を58℃〜60℃へと加熱する。
工程8:混合物に亜鉛を加える(注1)
工程9:混合物を80℃〜82℃にて撹拌し、そしてHPLCで反応の完了をモニターする(注2および3)。
工程10:混合物を25℃〜28℃へと冷却する。
工程11:混合物を5.0Lのtert−ブチルメチルエーテルで抽出する。
工程12:2層の混合物を、通常のWhatman濾紙で濾過する(注4)。
工程13:層を分離させる。
工程14:有機層を2.5mLの水で洗浄する。
工程15:層を分離させる。
工程16:有機層を500gの硫酸マグネシウムで乾燥させる(注5)。
工程17:濾過によって硫酸マグネシウムを除去する。
工程18:濾液を濃縮して濃褐色の固体とする。
工程19:固体を真空下で、40℃にて、16時間乾燥させる。
【0066】
結果
重量:512kg
純度%(w/w)または%(AUC):77%AUC(HPLC)
モル収率または面積収率:54%
【0067】
分析
プロセス制御で
HPLC:Zorbax SB Phenyl、4.6×250mm i.d.、5μm、90% 水/10% CHCN/0.1% TFAから10%水、15分、流速=1.0mL/分、10μL注入、1.0mL/分、カラム温度=50℃、λ=214nm。
サンプル製造:3滴の反応混合物を1.0mLの1:1水/CHCNに溶解させた。
リテンションタイム
【表5】

【0068】
方法の有効性
最大体積工程−14L(工程11)
最小体積工程−9.0L(工程6)
【0069】

注1−亜鉛を10〜15%ずつ、90分にわたり加える。各部の添加は7℃〜10℃の温度上昇を伴う。次の添加の前に、温度を70℃に冷水浴で調節する。
注2−混合物はこの温度で還流してもしなくてもよいが、しかし、還流温度はおそらく82℃〜85℃である。
注3−反応は一般的にはこの30分の撹拌時間の後に完了している。
注4−濾過時間は無機沈殿の量に依存し、そして60分が必要な場合もある。
注5−この規模では、乾燥剤はおそらく溶媒をジクロロエタン(次の反応の溶媒)に変えることにより置き換え得る。
【0070】
実施例4
【化28】

材料
【表6】

【0071】
詳細な方法
工程1:飽和塩化ナトリウム溶液の製造:220gの塩化ナトリウムを580mLの水に溶解させる。
工程2:無水酢酸/ジクロロメタン溶液の製造:408gの無水酢酸を220mLのジクロロメタンに溶解させる。
工程3:VII−A/ジクロロメタン溶液の製造:223gのVII−Aを1.1Lのジクロロメタンに溶解させる。
工程4:水冷コンデンサー、添加用漏斗、および熱電温度計を備えた12Lの三首丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、1.0kgの塩化アルミニウムを加える。
工程5:塩化アルミニウムに880mLのジクロロメタンを加える。
工程6:塩化アルミニウム/ジクロロメタン懸濁液を、氷水浴で5℃〜10℃へと冷却する。
工程7:無水酢酸/ジクロロメタン溶液を塩化アルミニウム懸濁液に加える(注1)。
工程8:塩化アルミニウム/無水酢酸複合体を、30分撹拌する(注2)。
工程9:VII−A/ジクロロメタン溶液を塩化アルミニウム/無水酢酸複合体に加える(注3および注4)。
工程10:12L丸底フラスコを加熱マントルに設置する。
工程11:反応混合物を還流温度(34℃〜37℃)に加熱し、そしてHPLCによりVII−Aの消費をモニターする(注5および6)。
工程12:反応混合物を冷水浴で24℃〜26℃へと冷却する。
工程13:黒色混合物を10Lのカーボイへと移す。
工程14:4.4Lの水を12Lの容器に加える。
工程15:水を氷水浴で5℃〜10℃へと冷却する。
工程16:VIII−A混合物を水で急冷する(注7)。
工程17:層を分離させる(注8)。
工程18:水層を800mLのジクロロメタンで洗浄する。
工程19:層を分離させる。
工程20:有機層を合一する。
工程21:合一した有機層を800mLの飽和塩化ナトリウムで洗浄する。
工程22:層を分離させる。
工程23:減圧でロータリーエバポレーターを使用して、有機層を濃縮し、黒色固体とする。
【0072】
結果
重量:223g
純度%(w/w)または%(AUC):80%AUC
モル収率または面積収率:64%補正収率
【0073】
分析
方法(HPLC)−Zorbax SB Phenyl、5um、4.6mm i.d.×250mm長;90% 水/10% アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸から90%アセトニトリル、15分、実行時間=20分、注入量=10μL、流速=1.0mL/分、カラム温度=50℃、波長=214nm。
リテンションタイム
【表7】

【0074】
方法の有効性
最大体積工程−8.2L
最小体積工程−1.9L
【0075】

注1−添加を、25〜30分にわたり滴下して行い、温度が27℃を越えないようにした。
注2−混合物は均一であり、そして明緑色であるべきである。
注3−添加を、25〜30分にわたり滴下して行い、温度が30℃を越えないようにした。
注4−混合物は均一であり、黒色である。
注5−1〜2時間の反応時間が典型である。
注6−サンプル製造:3滴の反応混合物を1.0mLの50%アセトニトリル水溶液に溶解させた。方法(HPLC):下記分析の項参照。
注7−急冷は、〜2時間にわたり滴下して行い、温度が27℃を越えないようにした。
注8−2層混合物は黒色であり、そして界面は明確ではないかもしれない。界面が明確でないとき、重量または体積による有機層の除去が必要である。
【0076】
実施例5
【化29】

材料
【表8】

【0077】
詳細な方法
工程1:10%水酸化カリウム水溶液の製造:100gの水酸化カリウムを900mLの水に溶解させる(注1)。
工程2:2N塩酸水溶液の製造:150gの濃塩酸を750mLの水に溶解させる(注2)。
工程3:2.0Lの三首丸底フラスコに75gのVIII−Aを加える。
工程4:VIII−Aに1.0Lの10%水酸化カリウム水溶液を加える。
工程5:混成溶液に75mLのエチルアルコールを加える。
工程6:混合物を65℃〜70℃に加熱し、そして反応の進行をHPLCでモニターする(注3および注4)。
工程7:混合物を20℃〜25℃へと冷却する。
工程8:混合物に900mLの2N塩酸を加える(注5)。
工程9:沈殿混合物を15℃〜20℃へと冷却し、そしてその温度で30分保つ。
工程10:吸引濾過により沈殿を集め、そして濾過ケーキを吸引して1時間乾燥させる。
工程11:濾過ケーキを325mLのエチルアルコールに溶解させる。
工程12:混成混合物を55℃〜60℃にて30〜35分加熱する。
工程13:混合物を20℃〜25℃へと冷却させ、次いで5℃〜10℃にて一晩保つ(注6)。
工程14:吸引濾過により褐色沈殿を集める。
工程15:I−aを高真空下で、環境温度で、一定重量まで乾燥させる(注7)。
【0078】
注:
注1:水酸化カリウムの溶解は発熱性であり、溶液を冷却しながら製造するべきである。
注2:水への濃塩酸の溶解は発熱性であり、溶液を冷却しながら製造するべきである。
注3:30〜60分の反応時間は典型であり、そして出発物質が消費されたとき反応は完了する。
注4:HPLC法:Zorbax SB Phenyl、5um、4.6mm i.d.×250mm長;90% HO/10% CHCN/0.1% TFAから10%HO/90%CHCN/0.1%TFA、15分、実行時間=20分、10μL注入、1.0mL/分流速、カラム温度=50℃、λ=214nm。
VIII−Aのリテンションタイム=10.9分
I−aのリテンションタイム=9.7分
強度の低い特定されていない不純物も検出される。
サンプル製造:〜1.0mLのCHCN/2〜3滴の水中の2滴の反応混合物。
注5:2N塩酸の添加を20〜25分かけて行った。温度が30℃を越えないようにした。一般的pH試験紙で溶液pH〜2.0〜4.0。過剰な酸性化がゴム生成と粗生成物の低い量的回収の原因となるはずである。
注6:5℃〜10℃での固定は必須ではないであろうが、測定のためにとどめた。
注7:I−aをHPLC(注4の方法参照)で分析し、98%〜100%の純度であるとアッセイされた(面積比パーセント)。
【0079】
本明細書に記載の全ての文献を、参照により本明細書の一部とする。
【0080】
本明細書に記載の全ての文献を、参照により本明細書の一部とする。また、米国仮出願60/515,283を出典明示により本明細書の一部とする。
【0081】
態様AまたはBについて記載された任意の態様(好ましい態様を含む)を、他の態様に適用する。
【0082】
我々は多くの本発明の態様を記載したが、我々の基本的な例を変更して本発明の方法を利用する他の態様を得ることができるということは明らかである。したがって、本発明の技術的範囲は上記実施例によって表される具体的な態様ではなく、特許請求の範囲に定義されるべきであるとこは認められよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I−a
【化1】

の化合物の製造方法であって:式IV−a
【化2】

〔式中、RはC1−12脂肪族、C3−12アルキル−環状脂肪族、C3−12アルキル−アリール、C3−12アルキル−ヘテロアリール、またはC3−12アルキル−環状脂肪族である〕
の化合物の水溶液を、式V−a
【化3】

〔式中、RおよびRは各々独立してC1−6脂肪族である〕
の化合物と、亜鉛、水、および所望によりさらなる好適な溶媒の存在下で混合して、式VI
【化4】

の化合物を形成させることを含んでなる方法。

【公開番号】特開2011−231117(P2011−231117A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131818(P2011−131818)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2006−538556(P2006−538556)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】