説明

FMCWレーダ装置用信号処理装置、FMCWレーダ装置用信号処理方法、FMCWレーダ装置

【課題】受信波から干渉を検出するFMCWレーダ装置、FMCWレーダ信号解析方法を提供する。
【解決手段】FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理装置であって、1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式を用いるレーダ装置の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理装置、FMCWレーダ装置用信号処理方法、FMCWレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のFMCWレーダ装置における周波数変化の一例を示すタイミングチャートである。この図の(a)及び(b)のそれぞれにおける横軸は時間を示し、縦軸は周波数を示す。また、この図の(a)は、送信波の搬送波周波数(送信周波数)及び受信波の搬送波周波数(受信周波数)の時間変化を示す。ここで、実線は、送信周波数の時間変化を示し、破線は、受信周波数の時間変化を示す。また、この図の(b)は、ビート信号の周波数(ビート周波数)の時間変化を示す。tはFMの1周期時間、Δfは周波数偏移幅、fbはビート信号周波数、fmは変調周波数(=1/t)である。
【0003】
一般にFMCWレーダ装置は、三角波状にFM変調をかけた電波を送信波として送信し、ターゲットからの反射波である受信波を受信する。三角波状の変調のため、送信波と反射波の時間差Δt(=遅延時間)が周波数差fbになって計測される。時間差はターゲットとの距離により変化するため、送信波と受信波をミキシングすることにより差分のビート信号を取り出し、ビート信号を周波数解析することでターゲットの周波数差を検出し、周波数差から距離を算出する。
【0004】
この例において、送信周波数及び受信周波数が増加する区間(アップビート区間)においてビート周波数はfuになり、送信周波数及び受信周波数が減少する区間(ダウンビート区間)においてビート周波数はfdになる。fuとfdは、互いに極性が反転した周波数になっているが、実際には折り返して同じ周波数として得られる。また、検知したターゲットに速度があった場合にはfuとfdにドップラー周波数分の差が出る。アップビート区間及びダウンビート区間のビート信号がそれぞれ別にA/D(Analog/Digital)変換され、周波数解析が行われる。周波数解析は、一般的にFFT(Fast Fourier Transform)を用いる。
【0005】
図8は、FMCWレーダ装置における距離Rと各パラメータの関係式である。図9は、FMCWレーダ装置における距離分解能ΔRの算出式である。ここで、cは光速、Rはターゲットまでの距離である。
【0006】
上述した距離Rと各パラメータの関係式には送信周波数が含まれていないため、ビート周波数および距離Rは送信周波数に依存しないことが分かる。また、上述した距離分解能ΔRの算出式から分解能を高めるにはΔfを広げる必要があることがわかる。
【0007】
また、FFTによるビート周波数の解析範囲はA/D変換のサンプリング周波数の半分までである。サンプリング周波数が同じとすると周波数分解能が高めるためにはサンプルデータ数が多くしてFFTのポイント数を多くする必要がある。
【0008】
なお、従来技術として、他のレーダ装置との干渉の発生を検出するFMCWレーダ装置がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−300550号公報
【特許文献2】特開2006−220624号公報
【特許文献3】特開2002−168947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
FMCWレーダ装置が至近距離を検知する場合や高分解能化を図る場合、送信周波数の周波数偏移幅を広帯域化することが必要となる。その場合、類似システム等の干渉源が近傍周波数であれば干渉を受けやすくなってしまう。そのため、干渉事象および与干渉波の検出を行う必要がある。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、受信波から干渉を検出するFMCWレーダ装置、FMCWレーダ信号解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理装置であって、1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、前記取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、前記第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部とを備える。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、受信波から干渉を検出することができる。
【0012】
また、前記第1変換部は、M点のFFTにより第1データの周波数領域への変換を行っても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、高速に受信波から干渉を検出することができる。また、更に、前記判定部により前記異常データが存在すると判定された場合、前記異常データに対応する第1データの値を所定の第3データの値に置き換え、K個の第1データを取得された順に連結して(M×K)サンプルの第4データを生成する生成部と、前記生成部により生成された第4データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第5データとする第2変換部と、前記第2変換部により変換された第5データに基づいて、前記FMCWレーダ装置から障害物までの距離に関する情報を算出する算出部とを備えても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、干渉の影響を除去して距離を算出することができる。
【0013】
また、前記第2変換部は、(M×K)点のFFTにより第4データの周波数領域への変換を行っても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、高速に距離を算出することができる。また、K及びMは、2の累乗であっても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、高速に距離を算出することができる。また、前記判定部は、それぞれの第2データの性質を算出し、他の複数の第2データと異なる性質を有する第2データを異常データとしても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、干渉の影響を受けた部分を検出することができる。また、前記第2データの性質は、該第2データのパワーのピークの位置であっても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、周波数領域のデータを用いて干渉の影響を受けた部分を検出することができる。また、前記第3データの値は、全て0であっても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、干渉の影響を除去することができる。また、前記算出部は、前記第5データのパワーのピークの位置を算出し、該ピークの位置に基づいて、ビート信号の周波数を算出しても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、周波数領域のデータからビート信号の周波数を算出することができる。また、前記算出部は、前記ビート信号の周波数に基づいて、前記FMCWレーダ装置から障害物までの距離を算出しても良い。これにより、FMCWレーダ装置用信号処理装置は、距離を高精度に算出することができる。
【0014】
また、本発明の一態様は、FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理方法であって、1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得し、取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとし、変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行うことを実行する。
【0015】
また、本発明の一態様は、FM変調波である送信波を生成して送信する送信部と、前記送信部により送信された前記送信波の反射波を受信して受信波とする受信部と、前記送信部により送信された前記送信波と前記受信部により受信された受信波とのビート信号を生成し、該ビート信号のサンプリングを行うビート信号生成部と、1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、前記取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、前記第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部とを備える。
【0016】
また、本発明の構成要素、または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明に含む。
【発明の効果】
【0017】
開示のFMCWレーダ装置、FMCWレーダ信号解析方法によれば、受信波から干渉を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本実施の形態に係るFMCWレーダ装置の構成について以下に説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るFMCWレーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。このFMCWレーダ装置は、送信アンテナ11、送信AMP12、方向性結合器13、VCO(Voltage Controlled Oscillator)14、変調回路15、受信アンテナ21、受信AMP22、ミキサ23、IF(Intermediate Frequency)−AMP24、復調回路25、A/D変換部26、信号処理部27を有する。信号処理部27は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサとメモリを有し、プログラムを実行する。
【0021】
本実施の形態に係るFMCWレーダ装置の動作について以下に説明する。
【0022】
変調回路15は、上述した三角波状の送信周波数を示す変調信号を生成し、変調信号に相当する電圧信号として出力する。VCO14は、変調回路15により出力された電圧信号からFM変調を施した送信波を生成する。方向性結合器13は、VCO14により出力された送信波を送信AMP112とミキサ23へ分配する。送信AMP12は、送信波を増幅する。送信アンテナ11は、送信波を無線送信する。
【0023】
送信波は、障害物により反射される。受信アンテナ21は、障害物による反射波を受信して受信波とする。受信AMP22は、受信波を増幅する。ミキサ23は、受信AMP22により出力された受信波と方向性結合器13により出力された送信波とのミキシングを行ってビート信号を得る。IF−AMP24は、ミキサ23により出力されたビート信号を増幅する。復調回路25は、ビート信号のフィルタリングを行って不要な周波数の信号を除去する。A/D変換部26は、復調回路25により出力されたビート信号のA/D変換を行う。信号処理部27は、A/D変換部26により出力されたビート信号を用いて距離検出処理を行う。
【0024】
信号処理部27による距離検出処理について以下に説明する。
【0025】
図2は、本実施の形態に係るターゲット検出処理の一例を示すフローチャートである。アップビート区間中又はダウンビート区間中にA/D変換部26により出力される長さNのサンプルデータを区間データとする。また、区間データを所定の部分数Kに分割した長さMのサンプルデータを部分データとする。つまり、N=K×Mである。まず、信号処理部27は、K個の部分データを順次取得し、部分データの番号である部分番号i(i=0,1,・・・K−1)を付してメモリに格納する(S12)。
【0026】
次に、信号処理部27は、各部分データについてMポイントのFFTを行い、各FFT結果を部分FFTデータとしてメモリに格納する(S13)。次に、信号処理部27は、部分FFTデータの比較により干渉を検出し、干渉のある部分FFTデータを特定してその部分番号を干渉部分番号とする干渉検出処理を行う(S14)。
【0027】
次に、信号処理部27は、干渉部分番号の部分データである干渉部分データを全て0に置き換える(S32)。次に、信号処理部27は、全ての部分データを部分番号順に連結して長さNの区間データを再構成する(S33)。次に、信号処理部27は、再構成された区間データについてNポイントのFFTを行い、FFT結果を区間FFTデータとしてメモリに格納する(S34)。
【0028】
次に、信号処理部27は、区間FFTデータにおける各サンプルのパワーの中からピークを検出し、検出されたピークのサンプル番号を区間ピークサンプル番号としてメモリに格納する(S35)。次に、信号処理部27は、区間ピークサンプル番号によりターゲットのビート周波数を算出し(S36)、ターゲットのビート周波数と送信周波数の変化の傾きとによりFMCWレーダ装置から障害物までの距離を算出し(S37)、このフローは終了する。
【0029】
ここで、FFTのポイント数は、2の累乗であることが望ましい。つまり、K,M,Nは、それぞれ2の累乗であることが望ましい。
【0030】
なお、信号処理部27が全ての部分データを部分番号順に連結する際、全ての部分データに窓関数を掛けてから連結することにより、部分データ間の不連続を回避しても良い。
【0031】
図3は、本実施の形態に係る干渉検出処理の一例を示すフローチャートである。まず、信号処理部27は、各部分FFTデータにおける各サンプルのパワーの中からピークを検出し、検出されたピークのサンプル番号を部分ピークサンプル番号s(i)としてメモリに格納する(S44)。次に、信号処理部27は、i=2に設定する(S45)。次に、信号処理部27は、i<Kであるか否かの判定を行う(S51)。
【0032】
i<Kである場合(S51,Yes)、信号処理部27は、s(i−2),s(i−1),s(i)を取得する(S52)。次に、信号処理部27は、s(i−2)とs(i−1)の差の絶対値であるピーク間距離d0、s(i−1)とs(i)の差の絶対値であるピーク間距離d1、s(i)とs(i−2)の差の絶対値であるピーク間距離d2をそれぞれ算出する(S53)。次に、信号処理部27は、全てのピーク間距離d0,d1,d2が所定の誤差閾値以下であるか否かの判定を行う(S54)。
【0033】
全てのピーク間距離が誤差閾値以下である場合(S54,Yes)、iを1だけ増加させて(S57)、処理S51へ移行する。
【0034】
ピーク間距離の中に誤差閾値を超えたものがある場合(S54,No)、信号処理部27は、s(i−2),s(i−1),s(i)の値の中で他の2つの値とのピーク間距離が最も大きいものを選択して干渉部分ピークサンプル番号とし、その部分番号を干渉部分番号とし、干渉部分番号と干渉部分ピークサンプル番号をメモリへ格納し(S55)、処理S57へ移行する。また、干渉部分番号の部分FFTデータを異常データと呼ぶ。
【0035】
i<Kでない場合(S51,No)、信号処理部27は、干渉部分ピークサンプル番号に対応するビート周波数である与干渉ビート周波数を算出し、与干渉ビート周波数とその時点の送信周波数とから与干渉波の周波数である与干渉周波数を算出し、与干渉周波数をメモリへ格納し(S59)、このフローは終了する。
【0036】
なお、干渉検出処理において、信号処理部27は、複数の部分FFTデータの性質を算出し、他の複数の部分FFTデータの性質と異なる性質を有する部分FFTデータを異常データとしても良い。部分FFTデータの性質は、例えば上述の干渉検出処理の例における部分ピークサンプル番号に対応する。
【0037】
また、干渉検出処理において、信号処理部27は、部分FFTデータにおけるフロアノイズの劣化やスパイク上のノイズの発生等の異常を検出することにより、異常が検出された部分FFTデータを異常データとしても良い。また、干渉検出処理において、信号処理部27は、複数の部分FFTデータ同士で全てのサンプルの差分の総和を算出し、この値が所定の閾値より大きい部分FFTデータの異常データとしても良い。また、干渉検出処理において、信号処理部27は、干渉検出の対象の部分FFTデータとその直前の部分FFTデータとの比較を行い、両者が類似していない場合、対象の部分FFTデータを異常データとしても良い。
【0038】
図4は、本実施の形態に係る距離検出処理の一例を示すタイミングチャートである。この図の(a)は、ビート周波数の時間変化を表す。ここで、横軸は時間を示し、縦軸はビート周波数を示す。また、この図の(b)は、部分データを示す。また、この図の(c)は、部分FFTデータとその中で検出された干渉部分FFTデータとを示す。また、この図の(d)は、干渉部分FFTデータに対応する部分データが0で置き換えられた部分データを示す。また、この図の(e)は、再構成された区間データを示す。
【0039】
上述した距離Rと各パラメータの関係式に示されるように、ターゲットまでの距離に相当するビート周波数は送信周波数に依存しない。また、図4に示されるように、信号処理部27がアップビート区間中又はダウンビート区間中に取得された区間データを同じ長さの部分データに分割すれば、個々の部分データから得られるターゲットのビート周波数は同じである。
【0040】
また、それぞれの部分データは搬送波周波数が異なるデータである。近傍の周波数からの干渉波は、搬送波周波数との差分がビート周波数となって現れるため、干渉波のビート周波数は、搬送波周波数に依存する。信号処理部27は、この現象の差を用いて干渉を検出する。
【0041】
本実施の形態によれば、信号処理部27が1次FFT(S13)を行い、干渉検出処理により干渉を受けたと判定された部分データを0に置き換えることにより、干渉の影響を除去することができる。また、信号処理部27が再構成された区間データを用いて2次FFT(S34)を行うことにより、2次FFTのポイント数(サンプルデータ長)が多くして送信周波数の周波数偏移幅を広くしても干渉の影響を避けることができ、高分解能でターゲットのビート周波数及び距離を算出することができる。
【0042】
本実施の形態のFMCWレーダ装置における送信波をミリ波として、ミリ波レーダ装置に適用した応用例について説明する。
【0043】
図5は、本実施の形態に係るミリ波レーダ装置の第1の応用例を示す概念図である。この図は、車両31が壁32へ接近する場合で、且つ車両31と壁32の間に子供33が存在する場合を示す。この例において、本実施の形態に係るミリ波レーダ装置は、車両31に搭載され、車両31の後方に向けて送信波を送信する。本実施の形態に係るミリ波レーダ装置は、従来のミリ波レーダ装置より遥かに近い極近距離ターゲット(数10cm以下)を検出できるため、従来のミリ波レーダ装置では困難であった壁32と子供33を分離して検出すること可能となる。また、本実施の形態に係るミリ波レーダ装置は更に、壁32の他に障害物を検出した場合に、「後方の壁の手前に何かあります。」のような警告の音声を出力して運転手に知らせても良い。この例のように、本実施の形態に係るミリ波レーダ装置は、車両31の後方の高度な安全確保を実現することができる。
【0044】
図6は、本実施の形態に係るミリ波レーダ装置を用いた第2の応用例を示す概念図である。この図は、渋滞中の道路を車両が走行する場合を示す。この例において、本実施の形態に係るミリ波レーダ装置は、車両41に搭載され、前方又は後側方に送信波を送信する。本実施の形態に係るミリ波レーダ装置は、従来のミリ波レーダ装置より遥かに近い極近距離ターゲット(数10cm以下)を検出できるため、従来のミリ波レーダ装置では困難であった渋滞時のきめ細かい車間距離制御を実現することが可能となる。
【0045】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【0046】
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理装置であって、
1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、
前記取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、
前記第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部と、
を備えるFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記2)
前記第1変換部は、M点のFFTにより第1データの周波数領域への変換を行う、
付記1に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記3)
更に、
前記判定部により前記異常データが存在すると判定された場合、前記異常データに対応する第1データの値を所定の第3データの値に置き換え、K個の第1データを取得された順に連結して(M×K)サンプルの第4データを生成する生成部と、
前記生成部により生成された第4データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第5データとする第2変換部と、
前記第2変換部により変換された第5データに基づいて、前記FMCWレーダ装置から障害物までの距離に関する情報を算出する算出部と、
を備える、
付記1に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記4)
前記第2変換部は、(M×K)点のFFTにより第4データの周波数領域への変換を行う、
付記3に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記5)
K及びMは、2の累乗である、
付記2に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記6)
前記判定部は、それぞれの第2データの性質を算出し、他の複数の第2データと異なる性質を有する第2データを異常データとする、
付記1に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記7)
前記第2データの性質は、該第2データのパワーのピークの位置である、
付記6に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記8)
前記第3データの値は、全て0である、
付記3に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記9)
前記算出部は、前記第5データのパワーのピークの位置を算出し、該ピークの位置に基づいて、ビート信号の周波数を算出する、
付記3に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記10)
前記算出部は、前記ビート信号の周波数に基づいて、前記FMCWレーダ装置から障害物までの距離を算出する、
付記9に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
(付記11)
FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理方法であって、
1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得し、
取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとし、
変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う、
ことを実行するFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記12)
前記第1データの周波数領域への変換は、M点のFFTである、
付記11に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記13)
更に、
前記異常データが存在すると判定された場合、前記異常データに対応する第1データの値を所定の第3データの値に置き換え、K個の第1データを取得された順に連結して(M×K)サンプルの第4データを生成し、
生成された第4データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第5データとし、
変換された第5データに基づいて、前記FMCWレーダ装置から障害物までの距離に関する情報を算出する、
ことを実行する、
付記11に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記14)
前記第4データの周波数領域への変換は、(M×K)点のFFTである、
付記13に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記15)
K及びMは、2の累乗である、
付記12に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記16)
それぞれの第2データの性質を算出し、他の複数の第2データと異なる性質を有する第2データを異常データとする、
付記11に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記17)
前記第2データの性質は、該第2データのパワーのピークの位置である、
付記16に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記18)
前記第3データの値は、全て0である、
付記13に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記19)
前記第5データのパワーのピークの位置を算出し、該ピークの位置に基づいて、ビート信号の周波数を算出する、
付記13に記載のFMCWレーダ装置用信号処理方法。
(付記20)
FM変調波である送信波を生成して送信する送信部と、
前記送信部により送信された前記送信波の反射波を受信して受信波とする受信部と、
前記送信部により送信された前記送信波と前記受信部により受信された受信波とのビート信号を生成し、該ビート信号のサンプリングを行うビート信号生成部と、
1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、
前記取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、
前記第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部と、
を備えるFMCWレーダ装置。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施の形態に係るFMCWレーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るターゲット検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】本実施の形態に係る干渉検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係る距離検出処理の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】本実施の形態に係るミリ波レーダ装置の第1の応用例を示す概念図である。
【図6】本実施の形態に係るミリ波レーダ装置の第2の応用例を示す概念図である。
【図7】従来のFMCWレーダ装置における周波数変化の一例を示すタイミングチャートである。
【図8】FMCWレーダ装置における距離Rと各パラメータの関係式である。
【図9】FMCWレーダ装置における距離分解能ΔRの算出式である。
【符号の説明】
【0048】
11 送信アンテナ、12 送信AMP、13 方向性結合器、14 VCO、15 変調回路、21 受信アンテナ、22 受信AMP、23 ミキサ、24 IF−AMP、25 復調回路、26 A/D変換部、27 信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理装置であって、
1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、
前記取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、
前記第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部と、
を備えるFMCWレーダ装置用信号処理装置。
【請求項2】
前記第1変換部は、M点のFFTにより第1データの周波数領域への変換を行う、
請求項1に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
【請求項3】
更に、
前記判定部により前記異常データが存在すると判定された場合、前記異常データに対応する第1データの値を所定の第3データの値に置き換え、K個の第1データを取得された順に連結して(M×K)サンプルの第4データを生成する生成部と、
前記生成部により生成された第4データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第5データとする第2変換部と、
前記第2変換部により変換された第5データに基づいて、前記FMCWレーダ装置から障害物までの距離に関する情報を算出する算出部と、
を備える、
請求項1又は請求項2に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
【請求項4】
前記第2変換部は、(M×K)点のFFTにより第4データの周波数領域への変換を行う、
請求項3に記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、それぞれの第2データの性質を算出し、他の複数の第2データと異なる性質を有する第2データを異常データとする、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のFMCWレーダ装置用信号処理装置。
【請求項6】
FMCWレーダ装置における送信波と受信波とのビート信号の信号処理を行うFMCWレーダ装置用信号処理方法であって、
1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得し、
取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとし、
変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う、
ことを実行するFMCWレーダ装置用信号処理方法。
【請求項7】
FM変調波である送信波を生成して送信する送信部と、
前記送信部により送信された前記送信波の反射波を受信して受信波とする受信部と、
前記送信部により送信された前記送信波と前記受信部により受信された受信波とのビート信号を生成し、該ビート信号のサンプリングを行うビート信号生成部と、
1つのアップビート区間又は1つのダウンビート区間であるサンプリング期間内にサンプリングされたビート信号である長さMサンプルの第1データを、該サンプリング期間内にK個連続して取得する取得部と、
前記取得部により取得された第1データの周波数領域への変換を行い、該変換の結果を第2データとする第1変換部と、
前記第1変換部により変換されたK個の第2データの中に、異常な第2データである異常データが存在する否かの判定を行う判定部と、
を備えるFMCWレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−14488(P2010−14488A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173685(P2008−173685)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】