説明

FMS植物工場

【課題】低エネルギーコストで高品質の野菜を栽培することを可能にした植物工場を提供する。
【解決手段】植物栽培ハウス内に設けられた生育室5に設置された植物栽培棚6での植物栽培に使用する電力、熱および光のエネルギを生育室5に入力させて植物を栽培する植物工場において、生育室5への電力、熱および光のエネルギの入力を最適に管理する入力エネルギ制御装置35と、生育室5で消費する消費エネルギを最適に管理する消費エネルギ制御装置40と、生育室5で栽培する植物の種類に応じた最適育成環境のデータを格納するデータバンクを有し、該データバンクのデータに基づいて、植物栽培棚6における光・温度・湿度・肥料・CO2をコントロールする植物育成管理装置50と、入力エネルギ制御装置35、消費エネルギ制御装置40および植物育成管理装置50を総合的に制御する統合マネージメント装置37を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培ハウスで野菜等の植物を栽培する植物工場に関し、特に、植物栽培用のエネルギの入力および消費の管理および植物育成環境の管理を自動化し、各種野菜を高品質、低コスト、低公害で生産するようにした植物工場に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小松菜、ほうれん草、みつば等の葉菜、トマトを植物栽培ハウス内で一貫的に栽培する植物工場が実用化されている。このような植物工場では、植物栽培ハウス内の光、温度、湿度などの状態を、植物の栽培に適した雰囲気に管理するとともに、発芽した植物の根に種々の養分を含んだ養液により、土壌を用いずに水耕栽培で植物を栽培する方式を採用している(例えば特許文献1を参照)。光は、光合成に必要とされ、植物栽培ハウスの生育室の屋根部分に透明な材料を用いて、太陽光を取り入れる方法と、あるいは蛍光灯などの人工光源を利用する方法、若しくは両方を併用する方法が知られている。なお、太陽光は、夏場などで生育室の温度が高くなり過ぎ、対応に苦慮している。
【0003】
このような完全人工光源型の植物工場においては、雰囲気を管理した閉鎖空間の生育室内で植物を生育するので、気象や病害虫などの影響を受けずに、商品である植物を需要者に安定して供給することができ、また、土壌を用いないので、植物に付着物がなく、出荷に際して水洗浄を実施する必要がなく、さらに、雰囲気、培養液、光を管理することにより、生育期間を調整することができるので、市場に合わせて野菜を効率よく収穫できる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−9676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の植物工場では、植物栽培ハウス内の生育室の光、温度、湿度、養液等を個々に管理することは行われているが、生育室に取り込む電力や太陽光等の入力エネルギ、生育室で消費する消費エネルギ、及び生育室の光、温度、湿度、養液等の植物育成環境の設定など、植物工場としての総合的なマネージメントは実用化されていない。そのため、従来の植物工場では、電力などのエネルギコストが高く、生産コストが高くなるとともに、無農薬、低硝酸の高品質の野菜を無公害で栽培することが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、低エネルギーコストで無農薬、低硝酸の高品質の野菜を無公害で栽培することを可能にした植物工場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の植物工場は、植物栽培ハウス内に設けられた生育室に設置された植物栽培棚での植物栽培に使用する電力、熱および光のエネルギを前記生育室に入力させて植物を栽培する植物工場において、前記生育室への電力、熱および光のエネルギの入力を最適に管理する入力エネルギ制御装置と、前記生育室で消費する消費エネルギを最適に管理する消費エネルギ制御装置と、前記生育室で栽培する植物の種類に応じた最適育成環境のデータを格納するデータバンクを有し、該データバンクのデータに基づいて、前記植物栽培棚における光・温度・湿度・肥料・CO2をコントロールする植物育成管理装置と、前記入力エネルギ制御装置、前記消費エネルギ制御装置および前記植物育成管理装置を総合的に制御する統合マネージメント装置と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の植物工場は、前記生育室に入力する電力は、商用電力、太陽光発電および風力発電を含み、これらの電力を電力変換器を介して前記生育室への電力、熱および光のエネルギの入力として取り込み、該電力変換器を前記入力エネルギ制御装置により制御することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の植物工場は、前記植物栽培ハウスの屋根および側窓に、太陽光を前記生育室に取り入れるルーバが設けられ、前記消費エネルギ制御装置により該ルーバを制御して生育室への入光量を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の植物工場は、赤色および青色を選択して通過させるプリズムを備えた集光部および自動追尾部を有する採光装置を備え、該採光装置から反射鏡を介して前記生育室に太陽光を取り入れることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の植物工場は、赤色および青色を選択して通過させるプリズムを備えた集光部および自動追尾部を有する採光装置を備え、該採光装置から光ファイバを介して前記生育室に太陽光を取り入れることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の植物工場は、前記生育室の温度調整に利用する熱エネルギとして地中熱エネルギを利用するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の植物工場は、前記植物栽培棚から排出される排液を貯蔵する排液槽と、
該排液槽に貯蔵された排液が供給され、排液をろ過し、ナノサイズのハイドロタルサイト様物質(NLDH)による処理およびゼオライト処理により陰イオンおよび陽イオン除去処理を行う排液処理装置と、
該排液処理装置で処理された処理液に肥料を添加した養液を貯蔵し前記植物栽培棚にこの養液を供給する養液槽とを備え、前記植物栽培棚からの排出液を養液に変えて前記植物栽培棚に供給する液の循環クローズドシステムを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の植物工場は、前記消費エネルギ制御装置は、前記循環クローズドシステムのラインのポンプ、前記生育室にミストを噴射する高圧水装置、前記植物栽培ハウスの屋根に設けたルーバ、および前記植物栽培棚の移動装置の全て又はこれらのいずれかを選択的に制御することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の植物工場は、前記植物育成管理装置には、前記生育室に設けられたCO2濃度・温度・湿度・照度を検出するセンサからの検出信号、および前記植物栽培棚からの排液のラインに設けられた、排液の導電率、pH、硝酸イオン濃度を検出するセンサの検出信号をそれぞれ入力し、これらの検出信号基づいて前記植物栽培棚の人工照明および前記植物栽培棚への養液供給を制御するものであることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の植物工場は、前記植物栽培棚からの排液ラインに排液の導電率、pH、硝酸イオン濃度のいずれかを含む成分を検出するセンサを設け、前記養液槽から前記植物栽培棚への養液供給ラインに開閉弁を設け、前記植物育成管理装置は、前記センサからの検出信号に基づいて前記開閉弁を制御し、病原菌等の異常が発生した植物栽培棚の開閉弁を閉じてその循環クローズドシステムを隔離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生育室への入力エネルギ、生育室での消費エネルギ、および植物育成環境を総合的にマネージメントすることにより、低エネルギコストで高品質の野菜を栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の植物工場のシステム構成図である。
【図2】排液処理装置の具体例を示す構成図である。
【図3】植物栽培棚および循環クローズドシステムの具体例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る植物工場の実施形態を説明する。
図1は、本発明の植物工場のシステム構成図である。図1において、植物栽培ハウス1は、床上2に建てられた外壁3および外壁3の上部に設けられた屋根4を備え、内部に閉鎖空間である生育室5が形成され、生育室5の下部にはエアシャワー室9が設けられている。
【0020】
生育室5には、複数段(図示の例では3段)の植物栽培棚6が設けられている。植物栽培棚6には、育苗部から生育部に栽培植物を移動させる移動機構(後述するベルトコンベヤ)を備え、移動機構は移動機構制御装置7により制御されるようになっている。
【0021】
各々の植物栽培棚6には、以下の養液循環手段が設けられている。植物栽培棚6から排出される排液は排液槽8に貯蔵されるようになっている。排液槽8に貯蔵された排液はポンプ10を介して排液処理装置11に供給され、排液処理装置11からポンプ12を介して養液槽13に処理液が供給され、養液槽13からポンプ14を介して各々の植物栽培棚6に養液が供給されるようになっている。
【0022】
図2は、排液処理装置11の具体例を示している。排液処理装置11は、ろ過器60と、NLDH槽61と、ゼオライト槽62を備えている。NLDH槽60には、網63の上部にナノサイズハイドロタルサイト様物質(以下、NLDHと称す)のカセット64が収容され、ゼオライト槽62には、網65の上部にゼオライトのカセット66が収容されている。排液は、ろ過器で塵等の汚れが除去された後、NLDH槽61で排液中の陰イオン、特に肥料に含まれる硝酸イオン濃度を吸着除去する。
【0023】
NLDHの構造式はMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで、層状の結晶構造を有し、構造の主骨格[Mg6Al2(OH)16]はシート状の金属水酸化物であり、無機の陰イオンを吸着する物質の代表格である。主骨格が複水酸化物なので層状複水酸化物(英語名のLayered Double Hydroxideを略してよくLDHと表される)とよばれる。種々の化合物があるので、一般的にハイドロタルサイ様物質(化合物)とよばれる。排液処理装置11に使用するナノサイズハイドロタルサイト様物質は、結晶子がナノサイズであることからNLDHと称される。このようなNLDHは、特許第4621102号に開示されている合成方法により製造されたもので、通常のLDHに対して熱結晶子が小さいことから反応性が早く、陰イオン、特に硝酸イオン濃度に対する選択性が高く、硝酸イオン濃度を吸着除去する効果が大きい。
【0024】
NLDH槽61で処理された処理水は、ゼオライト槽66に供給される。ゼオライトは、規則的な中空の孔をもつ多孔質の剛直な陰イオン性の骨格からなる結晶性のアルミノケイ酸塩であり、天然に産出するもの、合成したものなど非常に多くの種類があり、それぞれの特性がある。特に、吸着性、イオン交換性、分子篩などの機能を持ち、潅水中の不要重金属を吸着する。農業に関しては陽イオンを吸着する性質を利用して、アンモニウムイオンを吸着・放出する保肥剤としての効用がある。
【0025】
なお、排液の陰イオンあるいは陽イオンの含有量に応じて開閉弁67を制御し、NLDH槽61あるいはゼオライト槽66に処理液を通して養液槽13に供給したり、NLDH槽61あるいはゼオライト槽66に通さずに直接養液槽13に供給するように制御することができる。
【0026】
排液処理装置11を出た処理液は、養液槽13に供給され、養液槽13には肥料槽15から肥料が供給されて処理液と混合され、植物栽培棚6に養液が供給される。
【0027】
以上のように、植物栽培棚6、排液槽8、排液処理装置11、養液槽13を液が循環する循環クローズドシステムが構成され、これにより、排液を外に廃棄することなく有効利用することができる。
【0028】
各々の植物栽培棚6の上方には、ランプ、LEDなどの人工光源16が設けられている。各々の人工光源16は照明コントローラ17により照度が調整されるようになっている。
【0029】
屋根4の頂部4aは、太陽光を取り入れるように透明材で構成されている。頂部4aの裏面には入光量調整用のルーバ18が設けられている。なお、太陽光は冬場では外壁3からも入光するので、外壁3にもルーバを設けることが好ましい。ルーバ18は駆動モータ19により駆動されて入光量が調整されるようになっている。
【0030】
屋根4の上方には、太陽光20を追尾して集光する追尾集光型の採光装置21が設置されている。採光装置21は、集光部21aと自動追尾部21bを備えている。集光部21aは、集光レンズおよび太陽光のうち発熱しない赤色、青色を選択して通過させるプリズム(図示せず)を内部に備えている。自動追尾部21bは採光部21aを太陽光20に追尾させて効率よく集光させるものである。採光装置21を通過した太陽光は第1の反射鏡22で反射され、生育室5内に設けた第2の反射鏡23で反射されて植物栽培棚6に向けて太陽光を照射するようになっている。
【0031】
太陽光を植物栽培棚6に取り入れる別の手段として、採光装置21の集光部21aから光ファイバ(図示せず)で太陽光を直接植物栽培棚6に導くようにしてもよい。なお、採光装置21による太陽光の取り入れは、上記人工光源16の補光として用いられる。
【0032】
生育室5の上方にはミスト状の高圧水を噴射して生育室5内の塵埃を吸着除去する高圧噴霧ノズル24が設けられている。高圧噴霧ノズル24には高圧水タンク25より高圧水が供給されるようになっている。
【0033】
生育室5内には、エアコンディショナ用のファンコイルユニット26が設けられ、生育室5外にはファンコイルユニット26と配管27で接続されたヒートポンプ式熱交換ユニット28が設置され、ヒートポンプ式熱交換ユニット28には地中熱交換ユニット29から地熱水が供給されるようになっている。
【0034】
生育室5に入力する電力は、電力会社から送電される商用電力(系統電力)30、太陽光発電31および風力発電32で構成され、これらの電力は電線80を介して電力変換器38に入力され、ここでアナログ信号に変換されて分電盤81に送られ、分電盤81から植物工場の各種機器に送電され、植物工場の消費電力として使用される。余剰電力は電力変換器38から蓄電池39に供給され、ここで蓄電しておき、必要に応じて統合マネージメント装置37の指令に基づいて蓄電池39の電力を使用するようになっている。電力変換器38は、植物工場の全体のシステムをマネージメントするコンピュータ36を備えた統合マネージメント装置37により制御されるようになっている。
【0035】
入力エネルギ制御装置35は、商用電力30、太陽光発電31および風力発電32の中から、所要の電力を最も低コストで得られるように制御する。例えば、日照が良好な時は太陽光発電31、風力が大きい時は風力発電32、夜間では商用電力30の夜間電力を各々選択し、余剰電力は蓄電池39に蓄える。
【0036】
入力エネルギ制御装置35には、第2の反射鏡23から植物栽培棚6に向けて照射する照射光を検知する光検知器48の信号、および地中熱変換ユニット29からの地熱エネルギ信号も入力される。入力エネルギ制御装置35としては、例えば、スマートコントローラが好適に使用される。入力エネルギ制御装置35は、統合マネージメント装置37により制御されるようになっている。
【0037】
以上のように、入力エネルギ制御装置35により、各種発電により得られる電力、太陽光及び地熱エネルギを効率よく取り入れることにより、エネルギコストを低減させることができる。
【0038】
消費エネルギ制御装置40は、信号線41により統合マネージメント装置37との間で信号の送受信を行うようになっている。統合マネージメント装置37からの指令に基づいて、消費エネルギ制御装置40から信号線42を介してルーバ18の駆動モータ19に指令が送信され、太陽光の入光量を調整するようになっている。
【0039】
また、消費エネルギ制御装置40から信号線43を介して排液槽8、廃液処理装置11、および養液槽13の各々のポンプ10、12、14を駆動し、排液槽8から廃液処理装置11に排液が供給され、排液処理装置11内に設けられているろ過器でごみなどの汚れが除去され浄化される。さらに、排液処理装置11に充填したNLDHにより、排液中の硝酸イオンを吸着除去し、ゼオライトにより陽イオンを吸着除去し、硝酸イオン濃度および陽イオン濃度が低減された液体が養液槽13に供給される。養液槽13には、肥料槽15から流量制御弁44を介して肥料が充填される。流量制御弁44は後述する植物育成管理装置50からの信号に基づいて動作する。
【0040】
また、消費エネルギ制御装置40から信号線45を介して高圧水装置14を制御し、高圧噴霧ノズル24からミストを噴射し、室内環境を浄化する。
さらに、消費エネルギ制御装置40により、植物栽培棚6の移動装置7を制御し、植物の栽培に合わせて植物を移動させるようになっている(後述の図3)。消費エネルギ制御装置40としては、例えば、スマートコントローラが好適に使用される。
【0041】
以上のように、消費エネルギ制御装置40により、生育室5で使用する、循環クローズドシステム、太陽光、生育室噴霧等の消費エネルギを最適に制御することにより、消費エネルギコストを最小限に抑制することができる。なお、消費エネルギ制御装置40は、生育室5で使用するこれらの機器の全てを制御してもよいし、これらを選択的に制御するようにしてもよい。
【0042】
植物育成管理装置50は、栽培する植物の種類に応じた最適育成環境(光・温度・湿度・肥料・CO2等)のデータを格納したデータバンクの機能を有しており、統合マネージメント装置37との送受信により、生育室5内の環境設定を行うものである。
【0043】
生育室5内のCO2濃度・温度・湿度・照度を検出するセンサ51が設けられ、植物育成管理装置50には、このセンサ51の検出出力を入力させる。植物栽培棚6からの排液ライン52には、センサ53が設けられ、排液の導電率(EC)、pH、硝酸イオン濃度等をセンサ53で検出し、植物育成管理装置50に入力させる。
【0044】
植物育成管理装置50から照明コントローラ17に指令が送信され、植物栽培棚6の照明を最適に調整する。また、植物育成管理装置50からの信号に基づいて、肥料槽15の流量制御弁44を制御し、養液槽15への肥料の供給量を制御する。また、植物育成管理装置50からの信号に基づいて、流量制御弁54を制御し、植物栽培棚620への養液の供給をコントロールする。植物育成管理装置50としては、例えば、スマートコントローラが好適に使用される。
【0045】
このように、植物育成管理装置50は、格納されている最適育成環境のデータと、生育室5内の環境検出信号により植物栽培棚6での栽培環境を最適に制御することができる。また、灌水クローズドシステムにより、排液、養液の循環が循環クローズドシステムにより行われので、植物工場から出る産業公害の発生を完全に防止することができる。
【0046】
図3は、植物栽培棚6および循環クローズドシステムの具体例を示している。
植物栽培棚6は、育苗部6A、第1生育部6B、および第2生育部6Cを備え、各々にベルトコンベヤ56を備えている。植物栽培棚6の側方下部には発芽器70を備えており、発芽器70から育苗部6Aのベルトコンベヤ56上に植え付け作業がなされる。
【0047】
育苗部6A、第1生育部6B、および第2生育部Cの各々から、排液が排液ライン71を介して排液槽8に導かれ、排液槽8から排液処理装置11に導かれる。排液ライン71には排液処理装置11でろ過、ナノサイズのハイドロタルサイト様物質(NLDH)による処理、ゼオライト処理がなされた処理液が養液槽13に供給され、養液槽13から給液ライン72および開閉弁73を介して育苗部6A、第1生育部6B、第2生育部6Cの各々に養液が供給される。
【0048】
排液ライン71には、育苗部6A、第1生育部6B、および第2生育部Cの各々に対応する開閉弁73が設けられ、排液ライン71にも、育苗部6A、第1生育部6B、および第2生育部Cの各々に対応する開閉弁74が設けられ、これらの開閉弁73、74は、植物育成管理装置50により制御されるようになっている。センサ53により排液の導電率(EC)、pH、硝酸イオン濃度等を検出し、異常が発生した植物栽培棚の開閉弁73又は74を閉じることにより、循環クローズドシステムを停止し、他の循環クローズドシステムに悪影響を及ぼさないように隔離する。
【0049】
以上のように、本発明の植物工場は、電力、熱および光の入力エネルギ、生育室5で消費する消費エネルギを最適に管理することにより、エネルギーコストを最小限に削減するとともに、生育室5で栽培する植物の種類に応じて光・温度・湿度・肥料・CO2等、野菜の育成環境を最適に管理することができるので、低エネルギーコストで野菜を栽培することができるとともに、排液処理装置11でナノサイズのハイドロタルサイト様物質(NLDH)による処理およびゼオライト処理を行うことにより、硝酸イオン濃度や重金属等の有害物質を除去し、硝酸態窒素の少ない安全な野菜を製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
5 生育室
6 植物栽培棚
7 移動機構制御装置
8 排液槽
11 排液処理装置
13 養液槽
16 人工光源
17 照明コントローラ
18 ルーバ
21 採光装置
24 高圧噴霧ノズル
28 ヒートポンプ式熱交換ユニット
30 商用電力
31 太陽光発電
32 風力発電
35 入力エネルギ制御装置
37 統合マネージメント装置
39 蓄電池
40 消費エネルギ制御装置
50 植物育成管理装置
60 ろ過器
61 NLDH槽
62 ゼオライト槽





【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培ハウス内に設けられた生育室に設置された植物栽培棚での植物栽培に使用する電力、熱および光のエネルギを前記生育室に入力させて植物を栽培する植物工場において、
前記生育室への電力、熱および光のエネルギの入力を最適に管理する入力エネルギ制御装置と、前記生育室で消費する消費エネルギを最適に管理する消費エネルギ制御装置と、
前記生育室で栽培する植物の種類に応じた最適育成環境のデータを格納するデータバンクを有し、該データバンクのデータに基づいて、前記植物栽培棚における光・温度・湿度・肥料・CO2をコントロールする植物育成管理装置と、
前記入力エネルギ制御装置、前記消費エネルギ制御装置および前記植物育成管理装置を総合的に制御する統合マネージメント装置と、を備えたことを特徴とする植物工場。
【請求項2】
前記生育室に入力する電力は、商用電力、太陽光発電および風力発電を含み、これらの電力を電力変換器を介して前記生育室への電力、熱および光のエネルギの入力として取り込み、該電力変換器を前記入力エネルギ制御装置により制御することを特徴とする請求項1記載の植物工場。
【請求項3】
前記植物栽培ハウスの屋根および側窓に、太陽光を前記生育室に取り入れるルーバが設けられ、前記消費エネルギ制御装置により該ルーバを制御して生育室への入光量を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の植物工場。
【請求項4】
赤色および青色を選択して通過させるプリズムを備えた集光部および自動追尾部を有する採光装置を備え、該採光装置から反射鏡を介して前記生育室に太陽光を取り入れることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の植物工場。
【請求項5】
赤色および青色を選択して通過させるプリズムを備えた集光部および自動追尾部を有する採光装置を備え、該採光装置から光ファイバを介して前記生育室に太陽光を取り入れることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の植物工場。
【請求項6】
前記生育室の温度調整に利用する熱エネルギとして地中熱エネルギを利用するようにしたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の植物工場。
【請求項7】
前記植物栽培棚から排出される排液を貯蔵する排液槽と、
該排液槽に貯蔵された排液が供給され、排液をろ過し、ナノサイズのハイドロタルサイト様物質(NLDH)による処理およびゼオライト処理により陰イオンおよび陽イオン除去処理を行う排液処理装置と、
該排液処理装置で処理された処理液に肥料を添加した養液を貯蔵し前記植物栽培棚にこの養液を供給する養液槽とを備え、前記植物栽培棚からの排出液を養液に変えて前記植物栽培棚に供給する液の循環クローズドシステムを備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の植物工場。
【請求項8】
前記消費エネルギ制御装置は、前記循環クローズドシステムのラインのポンプ、前記生育室にミストを噴射する高圧水装置、前記植物栽培ハウスの屋根に設けたルーバ、および前記植物栽培棚の移動装置の全て又はこれらを選択的に制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の植物工場。
【請求項9】
前記植物育成管理装置には、前記生育室に設けられたCO2濃度・温度・湿度・照度を検出するセンサからの検出信号、および前記植物栽培棚からの排液のラインに設けられた、排液の導電率、pH、硝酸イオン濃度を検出するセンサの検出信号をそれぞれ入力し、これらの検出信号基づいて前記植物栽培棚の人工照明および前記植物栽培棚への養液供給を制御するものであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の植物工場。
【請求項10】
前記植物栽培棚からの排液ラインに排液の導電率、pH、硝酸イオン濃度のいずれかを含む成分を検出するセンサを設け、前記養液槽から前記植物栽培棚への養液供給ラインに開閉弁を設け、前記植物育成管理装置は、前記センサからの検出信号に基づいて前記開閉弁を制御し、病原菌等の異常が発生した植物栽培棚の開閉弁を閉じてその循環クローズドシステムを隔離することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の植物工場。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−231721(P2012−231721A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101874(P2011−101874)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(511107979)株式会社コンカレント (2)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】