説明

FOXP3ペプチドワクチン

本発明は、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74のアミノ酸配列を含むFoxp3ペプチド、および1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸が置換または付加された前述のアミノ酸配列を含み、かつ細胞障害性T細胞誘導能を有するFoxp3ペプチドを提供し、また、これらのFoxp3ペプチドを含む、調節性T細胞を調節するための薬物も提供する。本発明のFoxp3ペプチドは、ワクチンとして使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年1月3日に出願された米国特許仮出願第60/878,615号および2007年3月22日に出願された米国特許仮出願第60/896,472号の恩典を主張し、それぞれの開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、生物科学の分野、より具体的には癌療法の分野に関する。特に、本発明は、癌ワクチンとして極めて有効であるFoxp3ペプチド、ならびに腫瘍を治療および予防するための薬物に関する。
【背景技術】
【0003】
CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)が、MHCクラスI分子上に提示される腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープペプチドを認識し、次いで腫瘍細胞を殺傷することが実証されている。TAAの最初の例としてMAGEファミリーが発見されて以来、他の多くのTAAが免疫学的アプローチを用いて発見されており(Boon T, Int J Cancer 54: 177-80, 1993; Boon T et al., J Exp Med 183: 725-9, 1996; van der Bruggen P et al., Science 254: 1643-7, 1991; Brichard V et al., J Exp Med 178: 489-95, 1993; Kawakami Y et al., J Exp Med 180: 347-52, 1994)、これらのうちいくつかは、現在、免疫療法の標的として臨床開発の過程にある。
【0004】
強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する新規のTAAを同定することにより、様々なタイプの癌におけるペプチドワクチン接種戦略の臨床応用のさらなる発展が保証される(Harris CC, J Natl Cancer Inst 88: 1442-5, 1996; Butterfield LH et al., Cancer Res 59: 3134-42, 1999; Vissers JLM et al., Cancer Res 59: 5554-9, 1999; Van der Burg SH et al., J Immunol 156: 3308-14, 1996; Tanaka F et al., Cancer Res 57: 4465-8, 1997; Fujie T et al., Int J Cancer 80: 169-72, 1999; Kikuchi M et al., Int J Cancer 81: 459-66, 1999; Oiso M et al., Int J Cancer 81: 387-94, 1999)。
【0005】
様々な種類の抗原特異的な免疫療法が実施されているが、明らかな腫瘍退縮という点では、これまでのところ低い臨床的有効性しか得られていない(Rosenberg SA et al., Nat Med 10:909-15, 2004)。主な原因の1つは、進行期癌の患者に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及び末梢血リンパ球(PBL)の不良な免疫応答である(Miescher S et al., J Immunol 136: 1899-907, 1986)。腫瘍によって誘導されるこの免疫抑制は、腫瘍抗原に対する不良な応答(Young RC et al., Am J Med 52: 63-8, 1972)、T細胞の不十分な増殖(Alexander JP et al., Cancer Res 53: 1380-7, 1993)、サイトカイン産生の減少(Horiguchi S et al., Cancer Res 59: 2950-6, 1999)、ならびにT細胞およびナチュラルキラー細胞の不完全なシグナル伝達(Kono K et al., Clin Cancer Res 11: 1825-8, 1996, Kiessling R et al., Cancer Immunol Immunother 48: 353-62, 1999)が原因である。
【0006】
免疫療法の臨床的有効性を改善するには、腫瘍によって誘導される免疫抑制因子の影響を克服することが重要である。免疫寛容および自己免疫からの保護は、胸腺における自己反応性T細胞のクローン除去を含む中枢および末梢の機序、ならびに末梢における、自己抗原と遭遇した際のアネルギーの誘導によって与えられる。最近、CD4マーカーおよびCD25マーカーの同時発現を特徴とする調節性T細胞(T-reg)が、機能的に独特なT細胞集団であり、免疫ホメオスタシスを維持するように機能することが明らかにされた(Sakaguchi S et al., J Immunol. 155: 1151-64, 1995, Dieckmann D et al., J Exp Med 193: 1303-10, 2001)。T-reg細胞は、様々なタイプの免疫応答を抑制する主要なプレーヤーの内の1つである(Miescher S et al., J Immunol 136: 1899-907, 1986; Young RC et al., Am J Med 52: 63-72, 1972; Alexander JP et al., Cancer Res 53: 1380-7, 1997; Horiguchi S et al., Cancer Res 59: 2950-6, 1999; Kono K et al., Clin Cancer Res 11: 1825-8, 1996; Kiessling R et al., Cancer Immunol Immunother 48: 353-62, 1999)。
【0007】
T-regの生成および機能のために極めて重要である分子相互作用およびシグナル伝達経路はまだ完全に解明されていないが、T-regは、それらの発達および調節特性を制御する、Foxp3遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_014009;SEQ ID NO 1)によってコードされるフォークヘッド転写因子scurfin(Foxp3; SEQ ID NO 2)を必要とする(Fontenot JD et al., Nat Immunol 4: 330-6, 2003, Hori S et al., Science 299: 1057-61, 2003, Khattri R et al., Nat Immunol 4: 304-6, 2003)。さらに、Foxp3 mRNAをトランスフェクトした樹状細胞をマウスにワクチン接種すると、Foxp3に特異的なCTL応答が誘発された(Smita N et al., Cancer Res. Jan 1;67(1):371-80, 2007)。
【0008】
したがって、Foxp3は癌免疫療法の標的として役立ち、さらに、Foxp3によってコードされるタンパク質の部分ペプチドは、CTLによって認識される抗原として役立つ。
【発明の概要】
【0009】
免疫療法の臨床的有効性を改善するには、腫瘍によって誘導される免疫抑制因子を克服することが重要である。T-regは、様々なタイプの免疫応答を抑制する主要なプレーヤーの内の1つであることが見出されている。したがって、T-regに誘導される免疫抑制を克服するために、Foxp3を発現するT-regを標的とするワクチンを開発することが非常に重要である。
【0010】
本発明は、少なくとも部分的に、対応するFoxp3ペプチドまたはエピトープに特異的な細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘発するエピトープペプチドをFoxp3遺伝子産物から同定することに基づいている。Foxp3に由来するHLA-A*24結合候補ペプチドおよびHLA-A*02結合候補ペプチドを用いて、健常な提供者の末梢血単核細胞(PBMC)を刺激した。これらのペプチドが、Foxp3を発現するT-regに対する強力かつ特異的な免疫応答を誘導することができる、HLA-A24拘束性エピトープペプチドまたはHLA-A02拘束性エピトープペプチドであることが実証された。
【0011】
したがって、本発明は、本発明のFoxp3ポリペプチドを投与する段階を含む、免疫抑制を調節するための方法を提供する。例えば、細胞障害性Tリンパ球の抗免疫抑制(すなわち、免疫抑制を元に戻すか、または相殺すること)は、Foxp3ポリペプチドの投与によって誘導される。したがって、本発明は、Foxp3ポリペプチド、およびFoxp3ポリペプチドを含む免疫抑制を調節するための薬学的物質を投与する段階を含む、抗免疫抑制を誘導するための方法を提供する。
【0012】
1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるペプチドを提供する。
【0013】
別の局面において、本発明は、細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、以下の群より選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるペプチドを提供する:
(a)SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、17、67、または74;および
(b)1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸が置換または付加されている、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、17、67、または74。
【0014】
さらなる局面において、本発明は、細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、以下の群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する:
(a)SEQ ID NO: 15〜19、22、24、27〜30、または37、および
(b)1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸が置換または付加されている、SEQ ID NO: 15〜19、22、24、27〜30、または37。
【0015】
これらの態様に関して、ある態様において、N末端から2番目のアミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンである。ある態様において、C末端アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンである。ある態様において、N末端から2番目のアミノ酸は、ロイシンまたはメチオニンである。ある態様において、C末端アミノ酸はバリンまたはロイシンである。例えば、置換ペプチドは、SEQ ID NO: 95、97、または98のアミノ酸配列を含む。
【0016】
本発明はさらに、本発明のFoxp3ペプチドまたは本発明のFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチド、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物も提供する。ある態様において、組成物は、ワクチンとして投与するために製剤化される。
【0017】
組成物は、本発明の1種のペプチドまたは複数の異なるFoxp3ペプチドを含んでよい。これらの組成物は、T-reg細胞を阻害するため、例えば、T-reg細胞の増殖を阻害するか、またはT-reg細胞の機能を抑制するために有用である。
【0018】
ある態様において、組成物は、HLA抗原がHLA-A24である対象においてT-reg細胞を阻害する免疫応答を誘発する1種または複数種のFoxp3ペプチドを含む。ある態様において、組成物は、HLA抗原がHLA-A02である対象においてT-reg細胞を阻害する免疫応答を誘発する1種または複数種のFoxp3ペプチドを含む。
【0019】
別の局面において、本発明は、本発明のFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。ある態様において、組成物は、複数の本発明のFoxp3ペプチドをコードする複数の(すなわち、2つまたはそれ以上の)ポリヌクレオチドを含む。ある態様において、組成物は、複数の本発明のFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0020】
ある態様において、組成物は、癌細胞に対する細胞障害性T細胞を誘導する能力を有する別のペプチドまたは他のペプチドをコードする別のポリヌクレオチドを含む。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、HLA抗原と本発明のFoxp3ペプチドとを含む複合体をその表面に提示するエキソソームを提供する。ある態様において、HLA抗原は、HLA-A24、HLA-A2402、HLA-A02、およびHLA-A0201からなる群より選択される。
【0022】
関連する局面において、本発明は、Foxp3ペプチドまたはFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを個体に投与することによって、癌を治療する(例えば、腫瘍細胞の増殖を減少させて、腫瘍細胞死を促進する)ための方法を提供する。
【0023】
別の局面において、本発明は、本発明のFoxp3ペプチドまたはFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与することによって、高い細胞障害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導する方法を提供する。
【0024】
別の局面において、本発明は、本発明のFoxp3ペプチドまたはFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与することによって、細胞障害性T細胞を誘導する方法を提供する。
【0025】
関連する局面において、本発明は、本発明のFoxp3ペプチドによって誘導される、単離された細胞障害性T細胞を提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、HLA抗原と本発明のFoxp3ペプチドとで形成された複合体を含む抗原提示細胞を提供する。ある態様において、抗原提示細胞は単離される。
【0027】
さらなる局面において、本発明は、対象においてT-reg細胞を調節する方法であって、本発明のFoxp3ペプチドもしくはこのペプチドの免疫学的に活性な断片、またはこのペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0028】
治療方法を実施する際、対象または患者はヒトであってよい。前述の発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも、例示的な態様のものであり、本発明も本発明の他の代替の態様も限定しないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】Foxp3に由来するペプチドを用いて誘導したCTLに対するIFN-γ ELISPOTアッセイ法の結果を示す写真を表す。図1Aにおいて、Foxp3-A24-9-363(SEQ ID NO 3)で刺激したウェル番号2番および7番、Foxp3-A24-9-366(SEQ ID NO 7)で刺激したウェル番号1番および6番、Foxp3-A24-9-190(SEQ ID NO 9)で刺激したウェル番号5番、およびFoxp3-A24-10-87(SEQ ID NO 67)で刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A24-10-60(SEQ ID NO 74)で刺激したウェルのCTLが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図1Bにおいて、Foxp3-A24-9-207(SEQ ID NO 4)で刺激したウェル番号4番、Foxp3-A24-9-332(SEQ ID NO 5)で刺激したウェル番号6番、Foxp3-A24-9-337(SEQ ID NO 8)で刺激したウェル番号6番、およびFoxp3-A24-10-114(SEQ ID NO 12)で刺激したウェル番号1番のCTLが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。
【図2】Foxp3に由来するペプチドを用いて誘導したCTLに対するIFN-γ ELISPOTアッセイ法の結果を示す写真を表す。図2Aにおいて、Foxp3-A2-9-390(SEQ ID NO 15)で刺激したウェル番号2番、Foxp3-A2-9-69(SEQ ID NO 16)で刺激したウェル番号2番、Foxp3-A2-9-252(SEQ ID NO 17)で刺激したウェル番号6番、Foxp3-A2-10-359(SEQ ID NO 22)で刺激したウェル番号4番、Foxp3-A2-263(SEQ ID NO 24)で刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A2-10-94(SEQ ID NO 27)で刺激したウェル番号2番および5番のCTLが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図2Bにおいて、Foxp3-A2-10-233(SEQ ID NO 28)で刺激したウェルのすべて、Foxp3-A2-10-152(SEQ ID NO 29)で刺激したウェル番号6番および7番、Foxp3-A2-10-77(SEQ ID NO 30)で刺激したウェル番号5番、およびFoxp3-A2-10-246(SEQ ID NO 37)で刺激したウェル番号1番、ならびにFoxp3-A2-10-94(SEQ ID NO 27)で刺激したウェルのCTLが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図2Cにおいて、Foxp3-A2-9-390(SEQ ID NO 15)で刺激したウェル番号1番、2番、4番、5番、7番、9番、11番、および12番、Foxp3-A2-9-304(SEQ ID NO 19)で刺激したウェル番号5番および11番、Foxp3-A2-9-68(SEQ ID NO 7)で刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A2-9-252(SEQ ID NO 17)で刺激したウェル番号12番のCTLが、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。
【図3】陽性ウェル中の細胞を増殖(expand)させ、IFN-γELISAアッセイ法を実施したことを示す。図3A、B、およびCにおいて、Foxp3-A02-9-390(SEQ ID NO: 15)で刺激したCTL株(黒抜きのひし形)は、対照(黒抜きの四角形)と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Dにおいて、Foxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)で刺激したCTL株(黒抜きのひし形)は、対照(黒抜きの四角形)と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Eにおいて、Foxp3-A24-10-60(SEQ ID NO: 74)で刺激したCTL株(黒抜きのひし形)は、対照(黒抜きの四角形)と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Fにおいて、Foxp3-A02-10-94(SEQ ID NO: 27)で刺激したCTL株(黒抜きのひし形)は、対照(黒抜きの四角形)と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Gにおいて、Foxp3-A24-10-87(SEQ ID NO: 67)で刺激したCTL株(黒抜きのひし形)は、対照(黒抜きの四角形)と比較して強力なIFN-γ産生を示した。
【図4】Foxp3およびHLA-A*02またはHLA-A*24を内因的に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性を示す。図4AおよびBにおいて、Foxp3-A02-9-390(SEQ ID NO: 15)およびFoxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)を用いて産生させたCTL株は、Foxp3およびHLA-A02の両方をトランスフェクトされた293Tに対して高い特異的CTL活性を示した。その一方で、これは、対照に対しては有意な特異的CTL活性を示さなかった。図4Cにおいて、Foxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)を用いて産生させたCTL株は、Foxp3およびHLA-A24の両方をトランスフェクトされた293Tに対して高い特異的CTL活性を示した。その一方で、これは、対照に対しては有意な特異的CTL活性を示さなかった。
【図5】Foxp3-252_hペプチドおよびFoxp3-252_mペプチドの免疫原性のインビボ解析を示す。IFAを結合させたペプチドまたはIFAのみを、0日目および7日目にBALB/cマウスに皮下注射した。14日目に、ワクチン接種したマウスの脾細胞を回収し、応答細胞(responder cell)として使用した。対応するペプチドでパルスしたRLmale1細胞(白抜きの四角形)、またはペプチド無しのRLmale1細胞(黒抜きの四角形)1×104個を、IFN-γELISPOTアッセイ法のための刺激細胞(stimulator cell)として使用した。Foxp3-252_h(A)およびFoxp3-252_m(B)を用いたワクチン接種を5匹のマウス(M1〜M5)に実施し、各アッセイ法における対照として、ペプチド無しのIFA注射を3匹のマウス(N1〜N3)に実施した。
【図6】Foxp3エピトープペプチドを用いたワクチン接種のインビボでの抗腫瘍効果を示す。4T1乳癌細胞株1×105個を0日目にBALB/cマウスに注射した。Foxp3-252_hと結合させたIFA(白抜きの円)、Foxp3-252_mと結合させたIFA(黒抜きの四角形)、ペプチド無しのIFA(黒抜きの三角形)を3日目および10日目に注射した。通常の腫瘍増殖の対照として、ワクチン接種無しのマウス(x)もこのアッセイ法において準備した。腫瘍増殖抑制の有意な差が、Foxp3エピトープペプチドをワクチン接種した場合において観察された。*はP<0.01、**はP<0.005である。
【図7】HLA分子に対するFoxp3-9-252置換物の親和性に関するアッセイ法を示す。図7Aにおいて、Foxp3-9-252-WTを用いて誘導されたCTLは、HLA-A2分子上にFoxp3-9-252-9Vペプチドを提示する細胞を認識する。Foxp3-9-252-WTペプチドを用いて誘導したCTL株を応答細胞として、およびFoxp3-9-252-WTペプチドまたはFoxp3-9-252-9VペプチドでパルスしたT2細胞を刺激細胞としてそれぞれ用いて、IFN-γELISPOTアッセイ法を実施した。ペプチドパルスを施さなかったT2細胞を対照として調製した。図7Bにおいて、Foxp3-9-252-9VおよびFoxp3-9-252-WTは、HLA-A2分子に対して同等の親和性を示す。Foxp3-9-252-WTペプチドを用いて誘導したCTL株を応答細胞として(1×105細胞/ウェル)、およびFoxp3-9-252-WTペプチド(黒抜きの円)、Foxp3-9-252-9Vペプチド(白抜きの円)、またはHIV-A02ペプチド(黒抜きの三角形)でパルスしたT2細胞を刺激細胞として(1×104細胞/ウェル)用いて、IFN-γELISAアッセイ法を実施した。各ペプチドの種類およびペプチド濃度で、刺激細胞のペプチドパルスを37℃で2時間実施した。図7Cにおいて、CTLは、HLA-A2分子を標的とするFoxp3-9-252置換物による刺激によって誘導され得る。HLA-A2分子を標的とするすべての置換ペプチドに対するCTLは、「材料および方法」において説明する方法で作製した。Foxp3-9-252-3Mで刺激したウェル番号3および7、Foxp3-9-252-3Lで刺激したウェル番号7、ならびにFoxp3-9-252-9Vで刺激したウェル番号8の細胞が、対照と比較してIFN-γ産生を示した。図7Dにおいて、Foxp3-9-252-9Vを用いて作製したCTLは、Foxp3-9-252-WTペプチドでコーティングされた刺激細胞を認識する。Foxp3-9-252-9Vペプチドを用いて誘導したCTL株を応答細胞として使用した。Foxp3-9-252-9Vペプチド(黒抜きの円)またはFoxp3-9-252-WTペプチド(白抜きの円)と共にインキュベートしたT2細胞、およびペプチド無しで(白抜きの四角)インキュベートしたT2細胞を、このアッセイ法において刺激細胞として使用した(1×104細胞/ウェル)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書において使用される「a」、「an」、および「the」という単語は、特記されない限り、「少なくとも1つ」を意味する。
【0031】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、修飾残基、または対応する天然アミノ酸の人工の化学的模倣体などの非天然の残基であるアミノ酸ポリマー、および天然のアミノ酸ポリマーに適用される。
【0032】
本明細書において使用される「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコードされているアミノ酸、ならびに細胞において翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造(α炭素が、水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合されている)を有するが、修飾されたR基または修飾されたバックボーンを有する化合物を意味する(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)。「アミノ酸模倣体」という語句は、異なる構造を有するが、一般的なアミノ酸と同様の機能を有する化学化合物を意味する。
【0033】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨される、一般に公知の3文字の記号または1文字の記号によって呼ばれる。
【0034】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、特記されない限り、本明細書において互換的に使用され、かつアミノ酸と同様に、一般に認められている1文字のコードによって呼ばれる。
【0035】
他に規定されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。
【0036】
II. ペプチド
Foxp3に由来するペプチドが細胞障害性T細胞(CTL)によって認識される抗原として機能することを実証するために、本発明において、Foxp3の部分配列であるペプチドが、世界中で一般的なHLA対立遺伝子であるHLA-A24またはHLA-A02によって拘束される抗原エピトープであるかどうかを解析した(Date Y et al., Tissue Antigens 47: 93-101, 1996; Kondo A et al., J Immunol 155: 4307-12, 1995; Kubo RT et al., J Immunol 152: 3913-24, 1994)。Foxp3の部分配列であるHLA-A24結合ペプチドおよびHLA-A02結合ペプチドの候補を、HLA-A24およびHLA-A02に対するそれらの結合親和性に関する情報を用いて同定した。これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によってT細胞をインビトロで刺激した後、
Foxp3-A24-9-363 (SEQ ID NO 3)、
Foxp3-A24-9-366 (SEQ ID NO 7)、
Foxp3-A24-9-190 (SEQ ID NO 9)、
Foxp3-A24-9-207 (SEQ ID NO 4)、
Foxp3-A24-9-332 (SEQ ID NO 5)、
Foxp3-A24-9-337 (SEQ ID NO 8)、
Foxp3-A24-10-114 (SEQ ID NO 12)、
Foxp3-A2-9-390 (SEQ ID NO 15)、
Foxp3-A2-9-69 (SEQ ID NO 16)、
Foxp3-A2-9-252 (SEQ ID NO 17)、
Foxp3-A2-10-359 (SEQ ID NO 22)、
Foxp3-A2-10-263 (SEQ ID NO 24)、
Foxp3-A2-10-94 (SEQ ID NO 27)、
Foxp3-A2-10-233 (SEQ ID NO 28)、
Foxp3-A2-10-152 (SEQ ID NO 29)、
Foxp3-A2-10-77 (SEQ ID NO 30)、
Foxp3-A2-10-246 (SEQ ID NO 37)、
Foxp3-A2-9-68 (SEQ ID NO 18)、
Foxp3-A2-9-304 (SEQ ID NO 19)、
Foxp3-A24-10-87 (SEQ ID NO 67) 、および
Foxp3-A24-10-60 (SEQ ID NO 74)
を用いて、CTLを成功裡に樹立した。
【0037】
これらの樹立したCTLは、ペプチドパルスした標的細胞に対して強力な特異的CTL活性を示した。これらの結果は、Foxp3がCTLによって認識される抗原であり、かつ
Foxp3-A24-9-363 (SEQ ID NO 3)、
Foxp3-A24-9-366 (SEQ ID NO 7)、
Foxp3-A24-9-190 (SEQ ID NO 9)、
Foxp3-A24-9-207 (SEQ ID NO 4)、
Foxp3-A24-9-332 (SEQ ID NO 5)、
Foxp3-A24-9-337 (SEQ ID NO 8)、
Foxp3-A24-10-114 (SEQ ID NO 12)、
Foxp3-A2-9-390 (SEQ ID NO 15)、
Foxp3-A2-9-69 (SEQ ID NO 16)、
Foxp3-A2-9-252 (SEQ ID NO 17)、
Foxp3-A2-10-359 (SEQ ID NO 22)、
Foxp3-A2-10-263 (SEQ ID NO 24)、
Foxp3-A2-10-94 (SEQ ID NO 27)、
Foxp3-A2-10-233 (SEQ ID NO 28)、
Foxp3-A2-10-152 (SEQ ID NO 29)、
Foxp3-A2-10-77 (SEQ ID NO 30)、
Foxp3-A2-10-246 (SEQ ID NO 37)、
Foxp3-A2-9-68 (SEQ ID NO 18)、
Foxp3-A2-9-304 (SEQ ID NO 19)、
Foxp3-A24-10-87 (SEQ ID NO 67) 、および
Foxp3-A24-10-60 (SEQ ID NO 74)
が、HLA-A24およびHLA-A2によって拘束されるエピトープペプチドであるという結論と一致している。Foxp3は大半の癌患者で発現され、腫瘍に起因する免疫抑制因子によって誘導される免疫抑制と関連しているため、Foxp3は、癌に対する抗原特異的な免疫療法の臨床的有効性を高めるための免疫療法の好適な標的である。
【0038】
したがって、本発明は、ノナペプチド(9個のアミノ酸残基からなるペプチド)およびデカペプチド(10個のアミノ酸残基からなるペプチド)を提供する。本発明のFoxp3ペプチドは、HLA分子に結合し、細胞障害性Tリンパ球(CTL)の細胞障害活性を誘導する。より具体的には、本発明は、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74の群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0039】
一般に、Parker KC. et al, J Immunol. 1994 Jan 1;152(1):163-75に記載されているもののような、インターネットで現在利用可能なソフトウェアプログラムを用いて、様々なペプチドとHLA抗原との間の結合親和性をインシリコで算出することができる。HLA抗原との結合親和性は、例えば、Parker KC. et al, J Immunol. 1994 Jan 1;152(1):163-75.; Nukaya I. et al, Int J Cancer. 1999 Jan 5;80(1):92-7.; Kuzushima K, et al.( (2001) Blood.;98(6):1872-81.; Journal of Immunological Methods, 1995, 185: 181-190.; Protein Science, 2000, 9: 1838-1846)に記載されているようにしてインビトロで測定することができる。
【0040】
さらに、本発明のFoxp3ペプチドは、Foxp3ペプチドがそのCTL誘導能を保持する限りにおいて、付加的なアミノ酸残基に隣接されてよい。CTL誘導能を有するこのようなペプチドは、約40アミノ酸未満、例えば約20アミノ酸未満、例えば約15アミノ酸未満であってよい。SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、および74の群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドに隣接するアミノ酸配列は限定されず、そのペプチドのCTL誘導能を阻害しない限り、任意の種類のアミノ酸から構成されてよい。したがって、本発明はまた、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、および74の群より選択されるアミノ酸配列を含む、CTL誘導能を有するペプチドも提供する。
【0041】
一般に、タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸の改変は、そのタンパク質の機能に影響しないか、またはある場合においては、元のタンパク質の所望の機能を増強しさえすることが公知である。実際に、改変ペプチド(すなわち、元の参照配列に対して1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸残基を置換または付加することによって改変したアミノ酸配列から構成されるペプチド)は、元のペプチドの生物活性を保持していることが公知である(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 81: 5662-6, 1984; ZollerおよびSmith, Nucleic Acids Res 10: 6487-500, 1982; Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 79: 6409-13, 1982)。したがって、本発明の1つの態様によれば、CTL誘導能を有する本発明のペプチドは、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74のアミノ酸配列を含み、1つまたは複数のアミノ酸が付加および/または置換されているアミノ酸から構成されてよい。
【0042】
1つのアミノ酸または低比率のアミノ酸を変更する、アミノ酸配列に対する個々の付加または置換が、元のアミノ酸側鎖の特性を結果として保存することを、当業者は認識すると考えられる。したがって、これは、タンパク質の変更により、同様の機能を有するタンパク質が生じる「保存的置換」または「保存的改変」と呼ばれる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。アミノ酸側鎖の特性の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、ならびに以下の官能基または特徴を共通して有する側鎖:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基を含む側鎖(S、T、Y);硫黄原子を含む側鎖(C、M);カルボン酸およびアミドを含む側鎖(D、N、E、Q);塩基を含む側鎖(R、K、H);および芳香族を含む側鎖(H、F、Y、W)である。さらに、以下の8つのグループは、互いに保存的置換であるアミノ酸をそれぞれ含む。
(1)アラニン(A)、グリシン(G);
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リシン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
(7)セリン(S)、トレオニン(T);および
(8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0043】
このような保存的に改変されたペプチドもまた、本発明のペプチドであるとみなされる。しかしながら、本発明のペプチドはそれらに限定されず、ペプチドがCTL誘導能を保持する限りにおいて、非保存的改変も含み得る。さらに、改変ペプチドは、Foxp3の多型変異体、種間ホモログ、および対立遺伝子のCTL誘導性ペプチドを除外しない。
【0044】
必要なCTL誘導能(すなわちCTL活性化)を引き続き維持しつつ、ごく少数(例えば、1つ、2つ、もしくはいくつか)または低比率のアミノ酸残基を改変(付加または置換)することができる。本明細書において、「いくつかの」という用語は、5つもしくはそれ以下、または例えば、3つもしくはそれ以下を意味する。改変されるアミノ残基のパーセンテージは、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、および74のアミノ酸配列全体の20%またはそれ以下、例えば15%、または10%もしくはそれ以下、例えば、1〜5%であってよい。同定された配列全体に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のアミノ酸配列同一性を有するFoxp3ペプチドが、本発明によって企図される。配列同一性は、当技術分野において公知である任意のアルゴリズム、例えば、米国国立生物工学情報センター(ワールドワイドウェブのncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)を通じて利用可能なBLASTを用いて測定することができる。
【0045】
本発明のペプチド
Foxp3-A24-9-363 (SEQ ID NO 3)、
Foxp3-A24-9-366 (SEQ ID NO 7)、
Foxp3-A24-9-190 (SEQ ID NO 9)、
Foxp3-A24-9-207 (SEQ ID NO 4)、
Foxp3-A24-9-332 (SEQ ID NO 5)、
Foxp3-A24-9-337 (SEQ ID NO 8)、
Foxp3-A24-10-114 (SEQ ID NO 12)、
Foxp3-A2-9-390 (SEQ ID NO 15)、
Foxp3-A2-9-69 (SEQ ID NO 16)、
Foxp3-A2-9-252 (SEQ ID NO 17)、
Foxp3-A2-10-359 (SEQ ID NO 22)、
Foxp3-A2-10-263 (SEQ ID NO 24)、
Foxp3-A2-10-94 (SEQ ID NO 27)、
Foxp3-A2-10-233 (SEQ ID NO 28)、
Foxp3-A2-10-152 (SEQ ID NO 29)、
Foxp3-A2-10-77 (SEQ ID NO 30)、
Foxp3-A2-10-246 (SEQ ID NO 37)、
Foxp3-A2-9-68 (SEQ ID NO 18)、
Foxp3-A2-9-304 (SEQ ID NO 19)、
Foxp3-A24-10-87 (SEQ ID NO 67) 、および
Foxp3-A24-10-60 (SEQ ID NO 74)
の相同性(すなわち配列同一性)解析により、これらが、他のいかなる公知のヒト遺伝子産物に由来するペプチドとも有意な相同性を有していないことが示された。このため、免疫療法に使用された場合に未知のまたは不要な免疫応答を起こす可能性が低くなる。
【0046】
免疫療法において使用された場合に、本発明のペプチドは、HLA抗原との複合体として、細胞またはエキソソームの表面に提示されると考えられる。したがって、CTL誘導能に加えて、HLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドが選択される。さらに、アミノ酸残基の置換および付加などによってこれらのペプチドを改変して、より高い結合親和性を実現することもできる。天然にディスプレイされるペプチドに加えて、HLA抗原への結合によってディスプレイされるペプチドの配列の規則性(すなわち一貫性)は既知であるため(J Immunol 152: 3913, 1994; Immunogenetics 41: 178, 1995; J Immunol 155: 4307, 1994)、このような規則性に基づいた改変を、本発明の免疫原性ペプチドに対して実施することができる。例えば、高いHLA-A24結合親和性を示すペプチドは、N末端から2番目のアミノ酸をフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンで置換されてよく、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンで置換されたペプチドもまた使用される。これに対して、N末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンで置換され、かつC末端アミノ酸がバリンまたはロイシンで置換されているペプチドは、高いHLA-A02結合親和性を有するペプチドとして使用され得る。置換は、末端アミノ酸でだけではなく、ペプチドの潜在的なTCR認識位置でも実施される。Zaremba et al.は、CAP1ペプチド中のアミノ酸置換物が、元と同等か、または元より優れている場合があることを実証した(Cancer Res. 57, 4570-4577, 1997)。例えば、置換ペプチドは、SEQ ID NO: 95、97、または98のアミノ酸配列を含む。さらに、1つまたは2つのアミノ酸が、これらのペプチドのN末端および/またはC末端に付加されてもよい。高いHLA抗原結合親和性を有するこのような改変ペプチドもまた、本発明に含まれる。
【0047】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能を有する内因性タンパク質または外因性タンパク質のアミノ酸配列の一部分と同一である場合、自己免疫障害または特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用が誘導される場合がある。したがって、ペプチド配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況を回避、低減、または最小化するために、利用可能なデータベースを用いてホモロジー検索を実施してよい。目的ペプチドと1つまたは2つのアミノ酸が異なる他のペプチドが存在しないことがホモロジー検索から明らかになる場合、副作用の危険をまったく伴わずに、HLA抗原との結合親和性を高め、かつ/またはCTL誘導能を高めるために目的ペプチドを改変することができる。
【0048】
前述のような、HLA抗原に対して高い結合親和性を有するペプチドは、極めて有効である。高い結合親和性の存在に応じて指標として選択される候補ペプチドはまた、CTL誘導能の実際の存在に関して検査することもできる。本明細書において、「CTL誘導能」という語句は、抗原提示細胞上に提示された場合に、ペプチドがCTLを誘導する能力を示す。さらに、「CTL誘導能」は、ペプチドがCTL活性化、CTL増殖を誘導する能力、およびIFN-γ産生を増加させる能力を含む。
【0049】
CTL誘導能の確認は、ヒトMHC抗原を有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)、すなわちより具体的には、ヒト末梢血単核白血球に由来する樹状細胞を誘導し、かつペプチドで刺激した後に、CD8陽性細胞と混合し、次いで、標的細胞に対するCTLによって産生および放出されたIFN-γを測定することによって遂行することができる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, Krishnan R, Longmate J, Auge C, Low L, Primus J, Diamond DJ, Hum Immunol 61(8): 764-79, 2000 Aug, Related Articles, Books, Linkout Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H) responseに記載されているもの)を使用することができる。例えば、標的細胞を51Crなどで放射性標識することができ、標的細胞から放出された放射能から細胞障害活性を算出することができる。あるいは、固定化したペプチドを有する抗原提示細胞の存在下でCTLによって産生および放出されたIFN-γを測定すること、および抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻止帯を可視化することによって検査することもできる。
【0050】
前述のようにペプチドのCTL誘導能を検査した結果、HLA抗原に対して高い結合親和性を有するペプチドが必ずしも高い誘導能を有するわけではなかった。さらに、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74によって示されるアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるノナペプチドまたはデカペプチドが、特に高いCTL誘導能、およびHLA抗原に対する高い結合親和性を示した。
【0051】
本発明のペプチドの前述の改変に加えて、本発明のペプチドは、それらがCTL誘導能を保持する限りにおいて、他の物質にさらに連結されてもよい。使用可能な物質には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成のポリマーなどが含まれる。ペプチドは、改変が本明細書において説明されるペプチドの生物活性を消失させない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの改変を含んでよい。これらの種類の改変は、付加的な機能(例えば、ターゲティング機能および送達機能)を与えるためか、またはポリペプチドを安定させるために実施してよい。
【0052】
例えば、ポリペプチドのインビボでの安定性を高めるために、特に有用である様々なD-アミノ酸、アミノ酸模倣体、または非天然アミノ酸を導入することが当技術分野において公知である。この概念はまた、本発明のポリペプチドに採用することができる。ポリペプチドの安定性は、いくつかの方法で分析することができる。例えば、ペプチダーゼならびにヒト血漿およびヒト血清など様々な生物学的媒体が、安定性を試験するために使用されている(例えば、Verhoef et al., Eur J Drug Metab Pharmacokin 11: 291-302, 1986を参照されたい)。
【0053】
III. ペプチドの調製
本発明のペプチドは、周知の技術を用いて調製することができる。例えば、これらのペプチドは、組換えDNA技術または化学合成によって合成的に調製することができる。本発明のペプチドは、個別に、または2つもしくはそれ以上のペプチド(例えば、2つもしくはそれ以上のFoxp3ペプチド、またはFoxp3ペプチドおよび非Foxp3ペプチド)を含むより長いポリペプチドとして合成することができる。これらのペプチドは単離することができる、すなわち、天然に存在する他の宿主細胞タンパク質およびそれらの断片を実質的に含まないように精製する、例えば、少なくとも約70%、80%、または90%精製することができる。
【0054】
本発明のペプチドは、選択されたアミノ酸配列に基づく化学合成を通じて得ることができる。例えば、合成に採用することができる従来のペプチド合成方法には、以下が含まれる:
(i)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(ii)The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
(iii)ペプチド合成(日本語)、丸善、1975;
(iv)ペプチド合成の基礎と実験(日本語)丸善、1985;
(v)続・医薬品の開発(日本語)、第14巻(ペプチド合成)、広川書店、1991;
(vi)WO99/67288;ならびに
(vii)Barany G.およびMerrifield R.B., Peptides Vol. 2, 「Solid Phase Peptide Synthesis」, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
【0055】
あるいは、本発明のペプチドは、ペプチドを作製するための任意の公知の遺伝子工学方法を採用することによって得ることもできる(例えば、Morrison J. (1977) J. Bacteriology 132: 349-51; Clark-CurtissおよびCurtiss (1983) Methods in Enzymology (Wu et al.編) 101: 347-62)。例えば、最初に、目的ペプチドをコードしているポリヌクレオチドを発現可能な形態で(例えば、プロモーター配列に対応する調節配列の下流に)含む適切なベクターを調製し、適切な宿主細胞中に形質転換する。次いで、その宿主細胞を培養して、関心対象のペプチドを産生させる。ペプチドはまた、インビトロの翻訳システムを採用してインビトロで作製することもできる。
【0056】
IV. ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の前述のペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。これらには、天然に存在するFoxp3遺伝子に由来するポリヌクレオチドおよび保存的に改変されたそのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。本明細書において、「保存的に改変されたヌクレオチド配列」という語句は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする配列を意味する。遺伝コードには縮重があるため、多数の機能的に同一な核酸は、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはいずれも、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されているすべての位置において、そのコドンを、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載した対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸変種は、保存的に改変された変種の1種である、「サイレント変種」である。あるペプチドをコードする本明細書における核酸配列はすべて、その核酸の存在し得るすべてのサイレント変種も説明する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGG以外)を改変して、機能的に同一な分子を得ることができることを理解すると考えられる。したがって、あるペプチドをコードする核酸の各サイレント変種は、開示される各配列において暗黙のうちに説明される。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、およびそれらの誘導体から構成され得る。DNAは、A、T、C、およびGなどの塩基から適切に構成される。TはRNA中ではUに置き換えられる。
【0058】
本発明のFoxp3ポリヌクレオチドは、間に挟まれた介在するアミノ酸配列の有無を問わず、複数の本発明のFoxp3ペプチドをコードすることができる。例えば、介在するアミノ酸配列は、ポリヌクレオチドまたは翻訳されたペプチドの切断部位(例えば、酵素認識配列)を提供することができる。さらに、ポリヌクレオチドは、本発明のペプチドをコードするコード配列に対する任意の付加的な配列を含んでよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ペプチドの発現のために必要とされる調節配列を含む組換えポリヌクレオチドであってよい。一般に、このような組換えポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いた従来の組換え技術を通じてポリヌクレオチドを操作することによって調製することができる。
【0059】
組換え技術および化学合成技術はいずれも、本発明のポリヌクレオチドを作製するために使用することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、コンピテント細胞にトランスフェクトされた場合に発現され得る適切なベクター中に挿入することによって作製することができる。あるいは、PCR技術または適切な宿主での発現によって、ポリヌクレオチドを増幅させてもよい(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989を参照されたい)。あるいは、Beaucage S.L.およびIyer R.P., Tetrahedron 48: 2223-311, 1992; Matthes et al., EMBO J 3: 801-5, 1984に記載されているようにして、固相技術を用いてポリヌクレオチドを合成することもできる。
【0060】
V. 薬学的物質
Foxp3は、免疫ホメオスタシスを維持するように機能する調節T(T-reg)細胞の分子として同定されているため、Foxp3ペプチドまたは本発明のFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、T-reg細胞を調節するために使用することができる。したがって、本発明は、T-reg細胞を調節するための薬学的物質であって、本発明の1種もしくは複数種のペプチド、またはそれらのペプチドをコードするポリヌクレオチドを活性成分として含む薬学的物質を提供する。
【0061】
本明細書において、T-reg細胞を「調節する」とは、例えば、T-reg細胞の増殖を阻害するか、または機能を抑制することによって、インビボでのT-reg細胞の状態を改変することを示す。T-reg細胞は、様々なタイプの免疫応答を抑制する主要なプレーヤーの内の1つであると考えられており、「T-reg細胞の機能を抑制する」とは、本明細書において、T-reg細胞が免疫応答を抑制する能力を減少させることを意味する。特に、T-reg細胞は、末梢性寛容と呼ばれるように末梢で作用する(Miescher S et al., J Immunol 136: 1899-907, 1986; Young RC et al., Am J Med 52: 63-72, 1972; Alexander JP et al., Cancer Res 53: 1380-7, 1997; Horiguchi S et al., Cancer Res 59: 2950-6, 1999; Kono K et al., Clin Cancer Res 11: 1825-8, 1996; Kiessling R et al., Cancer Immunol Immunother 48: 353-62, 1999; Fontenot JD et al., Nat Immunol 4: 330-6, 2003, Hori S et al., Science 299: 1057-61, 2003; Khattri R et al., Nat Immunol 4: 304-6, 2003)。T-reg細胞は、例えば癌患者において免疫抑制効果を提供する。したがって、T-reg細胞において過剰発現される本発明のFoxp3ペプチド、またはFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、癌を治療するための薬学的物質(例えばワクチン)として使用することができる。
【0062】
本発明において、「ワクチン」(免疫原性組成物とも呼ばれる)という語句は、動物に接種されると、抗腫瘍免疫またはT-regを調節する免疫を誘導する機能を有する物質を意味する。
【0063】
本発明の薬学的物質は、ヒトやマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーを含む任意の哺乳動物、、特に商業的に重要な動物または家畜動物を含み、しかしこれらに限定されることのない対象における癌の治療および/または予防のために使用することができる。
【0064】
本発明によれば、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、Foxp3を発現するT-reg細胞に対する強力かつ特異的な免疫応答を誘導することができる、HLA-A24拘束性エピトープペプチドまたはHLA-A02拘束性エピトープペプチドである。したがって、本発明の薬学的物質は、HLA抗原がHLA-A24またはHLA-A02のいずれかである対象に投与することが企図される。
【0065】
本発明の薬学的物質によって治療できる癌は、限定されないが、Foxp3が対象において発現されるすべての種類の癌が含まれる。例示的な癌には、乳癌、AML、膀胱癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、CML、結腸直腸癌、子宮内膜症、食道癌、胃癌、びまん性胃癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、小細胞肺癌、軟部組織腫瘍、および精巣腫瘍が含まれる。
【0066】
必要な場合には、Foxp3ペプチドまたはFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドのいずれかから構成された本発明の薬学的物質は、他の治療的物質が関心対象のペプチドのT-reg細胞調節効果を阻害しない限りにおいて、任意で他の治療的物質を活性成分として含んでよい。例えば、製剤は、抗炎症物質、鎮痛剤、および化学療法剤などを含んでよい。医薬それ自体に他の治療的物質を含めることに加えて、本発明の医薬はまた、1種または複数種の他の薬理学的物質と逐次的または同時に投与してもよい。医薬および薬理学的物質の量は、例えば、どのようなタイプの薬理学的物質が使用されるか、治療される疾患、ならびに投与のスケジュールおよび経路に依存する。
【0067】
具体的に本明細書において言及した成分の他に、本発明の薬学的物質は、該当する製剤のタイプを考慮して、当技術分野において慣例的な他の作用物質を含み得ることが、理解されるべきである。
【0068】
本発明の1つの態様において、本発明の薬学的物質は、治療しようとする疾患、例えば癌の病理学的状態を治療するのに有用な材料を含む製品およびキット中に含まれてよい。製品は、本発明の薬学的物質のうちのいずれかの容器をラベルと共に含んでよい。適切な容器には、瓶、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されてよい。容器上のラベルは、その作用物質が疾患の1種または複数種の状態を治療または予防するために使用されることを示すべきである。ラベルはまた、投与に関する指示などを示してもよい。
【0069】
前述の容器の他に、本発明の薬学的物質を含むキットは、任意で、薬学的に許容される希釈剤を収容する第2の容器をさらに含んでもよい。キットはさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用に関する指示が書かれた添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料も含んでよい。
【0070】
薬学的組成物は、所望の場合、活性成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含むことができるパックまたはディスペンサー器具に入れて提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックのような金属またはプラスチックホイルを含んでよい。パックまたはディスペンサー器具には、投与のための取扱説明書を添付することができる。
【0071】
(1)ペプチドを活性成分として含む薬学的物質
本発明のペプチドは、必要な場合には、従来の製剤方法によって製剤化された薬学的物質として直接投与することができる。このような場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常使用される担体、賦形剤などを、特に制限無く適切に含めることができる。このような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、および培養液などである。さらに、薬学的物質は、必要に応じて、安定化剤、懸濁剤、保存剤、および界面活性剤などを含んでよい。本発明の薬学的物質は、癌を治療および/または予防するために、特にT-reg細胞を調節するために使用することができる。
【0072】
本発明のペプチドは、インビボでCTLを誘導するために、2種またはそれ以上の本発明のFoxp3ペプチドを含む組合せとして調製することができる。Foxp3ペプチドは、カクテル中に含まれてよく、または標準的な技術を用いて互いに結合されてもよい。例えば、Foxp3ペプチドは、単一のポリペプチド配列として発現させることができる。組合せ中のペプチドは、同じまたは異なってよい。本発明のFoxp3ペプチドを投与することによって、これらのペプチドは抗原提示細胞のHLA抗原上に高密度で提示され、次いで、ディスプレイされたペプチドとHLA抗原とで形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、対象から樹状細胞を取り出し、本発明のペプチドによって刺激することによって、本発明のFoxp3ペプチドを細胞表面に固定化した抗原提示細胞を得、Foxp3ペプチドを負荷した樹状細胞を対象に再投与することによって対象においてCTLを誘導し、結果として、標的細胞に対する攻撃性を高めることができる。
【0073】
本発明のFoxp3ペプチドを活性成分として含む、T-reg細胞を調節するための薬学的物質は、細胞性免疫が有効に確立されるようにアジュバントを任意で含んでよく、または他の活性成分と共に投与されてよく、かつ顆粒剤に製剤化することによって投与することができる。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と一緒に(または連続的に)投与された場合に、該タンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を意味する。適用できるアジュバントには、文献(Clin Microbiol Rev 7: 277-89, 1994)に記載されているものが含まれる。例示的なアジュバントには、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン、コレラ毒素、およびサルモネラ毒素などが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
さらに、リポソーム製剤、Foxp3ペプチドが直径数mcmのビーズに結合されている顆粒状の製剤、および脂質がペプチドに結合されている製剤を適宜使用することができる。
【0075】
ある態様において、本発明の薬学的物質は、細胞障害性Tリンパ球をプライミングする成分を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLをプライミングすることができる作用物質と同定されている。例えば、パルミチン酸残基をリシン残基のε-アミノ基およびα-アミノ基に結合させ、次いで本発明のペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセルもしくは粒子中に入れて直接投与するか、リポソーム中に組み入れて投与するか、またはアジュバント中に乳化して投与することができる。CTL応答の脂質プライミングの別の例として、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)などの大腸菌(E. coli)リポタンパク質は、適切なペプチドに共有結合される場合、CTLをプライミングするのに使用することができる(例えば、Deres et al., Nature 342: 561, 1989を参照されたい)。
【0076】
投与方法は、経口、皮内、皮下、または静脈注射などであってよく、全身投与または標的とされる部位の近傍への局所投与が使用される。投与は、単回投与によって実施しても、または複数回投与によって追加免疫してもよい。本発明のペプチドの用量は、治療すべき疾患、患者の年齢、体重、および投与方法などに応じて適切に調整することができ、通常0.001mg〜1000mg、例えば、0.001mg〜1000mg、例えば、0.1mg〜10mgであり、数日毎に1回〜数ヶ月毎に1回投与することができる。当業者は、適切な用量を適切に選択することができる。
【0077】
(2)ポリヌクレオチドを活性成分として含む薬学的物質
本発明の薬学的物質はまた、本明細書において開示するFoxp3ペプチドをコードする核酸を発現可能な形態で含んでよい。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、ポリヌクレオチドが、細胞中に導入された場合に、抗腫瘍免疫を誘導するポリペプチドとしてインビボで発現されることを意味する。1つの態様において、関心対象のポリヌクレオチドの核酸配列は、標的細胞におけるポリヌクレオチドの発現のために必要な調節エレメントを含む。ポリヌクレオチドは、標的細胞のゲノム中に安定に挿入されるように装備され得る(例えば、相同組換えカセットベクターの説明について、Thomas KRおよびCapecchi MR, Cell 51: 503-12, 1987を参照されたい)。例えば、Wolff et al., Science 247: 1465-8, 1990;米国特許第5,580,859号;同第5,589,466号;同第5,804,566号;同第5,739,118号;同第5,736,524号;同第5,679,647号;およびWO98/04720を参照されたい。DNAに基づく送達技術の例には、「裸DNA」、促進された(ブピビカイン、ポリマー、ペプチドを媒介とした)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子を媒介とした(「遺伝子銃」)または圧力による送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0078】
本発明のペプチドはまた、ウイルスベクターまたは細菌ベクターによって発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニアまたは鶏痘などの弱毒化したウイルス宿主が含まれる。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させるためのベクターとしてワクシニアウイルスを使用することを含む。宿主中に導入すると、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を誘発する。免疫化プロトコルにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin))である。BCGベクターは、Stover et al., Nature 351: 456-60, 1991に記載されている。治療的投与または免疫化のために有用な多種多様の他のベクター、例えば、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、ならびに無毒化した炭疽毒素ベクターなどが明らかであろう。例えば、Shata et al., Mol Med Today 6: 66-71, 2000; Shedlock et al. J Leukoc Biol 68: 793-806, 2000; Hipp et al., In Vivo 14: 571-85, 2000を参照されたい。
【0079】
患者へのポリヌクレオチドの送達は、直接(この場合、患者は、ポリヌクレオチドを担持するベクターに直接曝露される)または間接(この場合、細胞が、最初にインビトロで関心対象のポリヌクレオチドで形質転換され、次いで患者に移植される)のいずれかであってよい。これら2つのアプローチは、それぞれインビボ遺伝子療法またはエクスビボ遺伝子療法として公知である。
【0080】
遺伝子療法の方法の一般的総説については、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 12: 488-505, 1993; WuおよびWu, Biotherapy 3: 87-95, 1991; Tolstoshev, Ann Rev Pharmacol Toxicol 33: 573-96, 1993; Mulligan, Science 260: 926-32, 1993; MorganおよびAnderson, Ann Rev Biochem 62: 191-217, 1993; Trends in Biotechnology 11(5): 155-215, 1993を参照されたい。使用され得る、組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、Ausubel et al.編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY, 1993; およびKrieger, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY, 1990に記載されている。
【0081】
投与方法は、経口、皮内、皮下、または静脈注射などであってよく、全身投与または標的とされる部位の近傍への局所投与が使用される。投与は、単回投与によって実施しても、または複数回投与によって追加免疫してもよい。適切な担体中、または本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換された細胞中のポリヌクレオチドの用量は、治療すべき疾患、患者の年齢、体重、および投与方法などに応じて適切に調整することができ、通常0.001mg〜1000mg、例えば、0.001mg〜1000mg、例えば、0.1mg〜10mgであり、数日毎に1回〜数ヶ月毎に1回投与することができる。当業者は、適切な用量を適切に選択することができる。
【0082】
(3)エキソソーム
あるいは、本発明は、本発明のペプチドとHLA抗原とで形成された複合体を表面に提示する、エキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、国際公報の公開された日本語訳である特表平11-510507号および特表2000-512161号において詳細に説明されている方法を用いることによって調製することができ、かつ治療および/または予防の標的である対象から得られる抗原提示細胞を用いて調製することができる。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、ワクチンとして接種することができる。
【0083】
使用するHLA抗原のタイプは、治療および/または予防を必要とする対象のHLA抗原のタイプと一致しなければならない。例えば、日本人の場合、HLA-A24、特にHLA-A2402が多くの場合適切である。
【0084】
HLA抗原に関して、日本人および白人において高発現されるA-24タイプまたはA-02タイプの使用は、有効な結果を得るために有利であり、A-2402およびA-0201を含むサブタイプの使用は有用である。典型的には、臨床において、治療を必要とする患者のHLA抗原のタイプを前もって調査し、これにより、この抗原に対して高いレベルの結合親和性を有するか、または抗原提示による細胞障害性T細胞(CTL)誘導能を有するペプチドを適切に選択することが可能になる。さらに、高い結合親和性およびCTL誘導能を示すペプチドを得るために、天然に存在するFoxp3の部分ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸の置換または付加を実施することができる。
【0085】
(4)抗原提示細胞
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとで形成された複合体を表面に提示する抗原提示細胞(APC)も提供する。本発明のペプチドまたは本発明のペプチドをコードするヌクレオチドを接触させることによって得られるAPCは、治療および/または予防の標的である対象から調製することができ、かつそれら自体で、または本発明のペプチドを含む他の薬物、エキソソーム、もしくは細胞障害性T細胞と組み合わせてワクチンとして投与することができる。
【0086】
APCは、いかなる種類の細胞にも限定されず、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞、および活性化T細胞が含まれ、これらはすべて、リンパ球によって認識されるように、細胞表面にタンパク質性の抗原を提示することが公知である。DCは、APCのうちで最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCであるため、DCは、本発明のAPCとして特に有用である。
【0087】
例えば、APCは、末梢血単球から樹状細胞を誘導し、次いでそれらをインビトロ、エクスビボ、またはインビボで本発明のペプチドと接触させる(それらで刺激する)ことによって得ることができる。本発明のペプチドを対象に投与すると、本発明のペプチドが固定化されたAPCが、対象の体内で誘導される。 「APCを誘導する」とは、細胞を本発明のペプチドまたは本発明のペプチドをコードするヌクレオチドと接触させて(それらで刺激して)、HLA抗原と本発明のペプチドとで形成された複合体を細胞表面に提示させることを含む。あるいは、本発明のペプチドをAPCに固定化した後、APCをワクチンとして対象に投与することもできる。例えば、エクスビボでの投与は、以下の段階を含み得る:
a:対象からAPCを採取する段階;および
b:段階aのAPCをペプチドと接触させる段階。
段階bによって得られたAPCは、ワクチンとして対象に投与することができる。
【0088】
本発明のある局面によれば、APCは、高レベルのCTL誘導能を有する。高レベルの細胞障害性T細胞誘導能を有するこのようなAPCは、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をインビトロでAPCに移入する段階を含む方法によって調製することができる。導入される遺伝子は、DNAまたはRNAの形態であってよい。導入の方法については、特に限定されず、当分野で慣例的に実施される様々な方法、例えば、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法などを使用することができる。より具体的には、Cancer Res 56: 5672-7, 1996; J Immunol 161: 5607-13, 1998; J Exp Med 184: 465-72, 1996;国際公報の公開された日本語訳である特表2000-509281号に記載されているようにして実施することができる。遺伝子をAPC中に移入することにより、遺伝子は細胞中で転写および翻訳などを経、次いで、得られたタンパク質がMHCクラスIまたはクラスIIによって処理され、提示経路を経て部分ペプチドの提示へ進む。
【0089】
(5)細胞障害性T細胞
本発明のFoxp3ペプチドのいずれかに対して誘導される細胞障害性T細胞は、T-reg細胞を標的とする免疫系をインビボで強化すると予想され、したがって、ペプチドと同様に、ワクチンとして使用することができる。したがって、本発明は、本発明のペプチドのいずれかによって誘導される、単離された細胞障害性T細胞を提供する。
【0090】
このような細胞障害性T細胞は、(1)本発明のペプチドを対象に投与すること、または(2)対象に由来するAPC、およびCD8陽性細胞、もしくは末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させる(それらで刺激する)ことによって得ることができる。
【0091】
本発明のペプチドを提示するAPCからの刺激によって誘導された細胞障害性T細胞は、治療および/または予防の標的である対象に由来してよく、それら自体で、または本発明のペプチドを含む他の薬物もしくは効果を調節するためのエキソソームと組み合わせて投与することができる。得られた細胞障害性T細胞は、本発明のペプチド、例えば誘導のために使用されたものと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、Foxp3を内因的に発現する細胞、またはFoxp3遺伝子をトランスフェクトされた細胞であってよく、これらのペプチドによる刺激が原因で細胞表面に本発明のペプチドを提示する細胞もまた、攻撃の標的となることができる。
【0092】
(6)TCR
本発明はまた、T細胞受容体(TCR)のサブユニットを形成することができるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、およびそれを使用する方法も提供する。TCRサブユニットは、本発明のペプチドを提示する細胞に対してT細胞への特異性を与えるTCRを形成する能力を有する。当技術分野において公知の方法を用いることによって、本発明の1種または複数種のペプチドを用いて誘導したCTLのTCRサブユニットとしてα鎖およびβ鎖の核酸を同定することができる(WO2007/032255およびMorgan et al., J Immunol, 171, 3288 (2003))。誘導体TCRは、好ましくは、Foxp3ペプチドをディスプレイする標的細胞に高い結合力で結合し、任意で、Foxp3ペプチドを提示する標的細胞のインビボおよびインビトロでの効果的な殺傷を媒介する。
【0093】
TCRサブユニットをコードする核酸は、適切なベクター、例えばレトロウイルスベクター中に組み入れることができる。これらのベクターは、当技術分野において周知である。これらの核酸またはそれらを含むベクターは、好ましくは患者に由来するT細胞中に有用に移入することができる。有利には、本発明は、患者自身のT細胞(または別の哺乳動物のT細胞)の迅速な改変を可能にして、T-reg細胞を良好に殺傷する特性を有する改変T細胞を迅速かつ容易に産生するすぐに使える(off-the-shelf)組成物を提供する。
【0094】
また、本発明は、本発明のFoxp3ペプチドと結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸を用いて形質導入することによって調製されるCTLも提供する。形質導入されたCTLは、インビボでT-reg細胞にホミング(foming)することができ、かつ周知の培養法によってインビトロで増殖される(例えば、Kawakami et al., J Immunol., 142, 3452-3461 (1989))。本発明のT細胞は、療法または保護を必要とする患者において癌を治療または予防するのに有用な免疫原性組成物を形成させるために使用することができる(WO2006/031221)。
【0095】
VI. Foxp3ペプチドを使用する方法
本発明のFoxp3ペプチドおよびFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、APCおよびCTLを誘導するために使用することができる。Foxp3ペプチドおよびポリヌクレオチドは、化合物がそれらのCTL誘導能を阻害しない限りにおいて、他の任意の化合物と組み合わせて使用することができる。したがって、前述の本発明の薬学的物質のうちの任意のものは、後述する本発明の方法のために使用することができる。
【0096】
(1)抗原提示細胞(APC)を誘導する方法
したがって、本発明は、本発明のペプチドまたはそれらのペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いてAPCを誘導する方法を提供する。APCの誘導は、「V-(4)抗原提示細胞」の項目で前述したようにして実施することができる。本発明はまた、高レベルの細胞障害性T細胞誘導能を有するAPCを誘導するための方法も提供し、この誘導は、前記「V-(4)抗原提示細胞」の項目で考察する。あるいは、本発明によれば、抗原提示細胞を含む薬学的組成物を製造するための、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、もしくは74のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるFoxp3ペプチド、またはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。さらに、本発明はまた、抗原提示細胞を誘導するための、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、もしくは74のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるFoxp3ペプチド、またはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0097】
(2)細胞障害性T細胞を誘導する方法
さらに、本発明は、本発明のFoxp3ペプチドまたはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いてCTLを誘導するための方法も提供する。本発明のFoxp3ペプチドが対象に投与されると、CTLが対象の体内で誘導され、T-reg細胞を標的とする免疫系の強度が高められる。あるいは、これらをエクスビボの治療方法で使用することもでき、その場合、対象に由来するAPCおよびCD8陽性細胞または末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させ(それらで刺激し)、CTLを誘導した後、それらの細胞を対象に戻す。例えば、この方法は、以下の段階を含んでよい:
a:対象からAPCを採取する段階;
b:段階aのAPCをペプチドと接触させる段階;
c:段階bのAPCをCD8+T細胞と混合し、かつ細胞障害性T細胞を誘導するために同時培養する段階;および
d:段階cの同時培養物からCD8+T細胞を採取する段階。
段階dによって得られた細胞障害活性を有するCD8+T細胞は、ワクチンとして対象に投与することができる。上記の段階cでCD8+T細胞と混合されるべきAPCは、「V-(4)抗原提示細胞」の項目で詳細に前述したようにして、本発明のペプチドをコードする遺伝子をAPC中に移入することによっても調製することができるが、それらに限定されるわけではなく、本発明のペプチドをT細胞に対して有効に提示する任意のAPCまたはエキソソームを本方法のために使用することができる。あるいは、本発明によれば、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、もしくは74のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるFoxp3ペプチド、またはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、CTLを含む薬学的組成物を製造するために使用する。さらに、本発明はまた、CTLを誘導するための、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、もしくは74のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるFoxp3ペプチド、またはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0098】
(3)免疫抑制の調節
前述のとおり、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、APC、およびCTLは、T-reg細胞を調節する(すなわち抑制する)ためのワクチンとして使用され得る。T-regは、様々なタイプの免疫応答、特にCTL細胞障害活性を抑制する主要なプレーヤーの内の1つであるとみなされているため、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、APC、およびCTLの能力は、特にCTL細胞障害活性における免疫抑制の相殺のためにもそれらが使用され得ることを示唆する。したがって、本発明は、T-reg細胞を調節する方法、および免疫抑制を調節する(すなわち相殺する)方法であって、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、APC、またはCTLを、それを必要とする対象に投与する段階を含む方法を提供する。さらに、本発明はまた、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、もしくは74のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるFoxp3ペプチド、またはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドの、免疫抑制を調節するための免疫原性組成物を製造するための使用も提供する。あるいは、本発明はまた、免疫抑制を調節するための、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、もしくは74のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるFoxp3ペプチド、またはそれらのFoxp3ペプチドをコードするポリヌクレオチドにも関する。
【0099】
本明細書において、免疫抑制を調節するとは、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、APC、またはCTLの投与がインビボで任意の種類の変化を引き起こすことを示す。ある態様において、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、APC、およびCTLによって引き起こされる変化は、免疫抑制状態のレベルの低下(免疫抑制の抑制または相殺)、すなわち抗免疫抑制の誘導である。したがって、本発明はまた、抗免疫抑制を誘導する方法であって、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、エキソソーム、APC、またはCTLを、それを必要とする対象に投与する段階を含む方法を提供する。一般に、抗免疫抑制は、以下の免疫応答を含む:
-Foxp3を発現するT-regに対する細胞障害性リンパ球の誘導、
-Foxp3を発現するT-regを認識する抗体の誘導、および
-抗T-regサイトカイン産生の誘導。
【0100】
したがって、ある種のタンパク質が、動物に接種された際にこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのタンパク質は、抗免疫抑制を誘導する効果を有すると判定される。タンパク質による抗免疫抑制の誘導は、そのタンパク質に対する、インビボまたはインビトロでの宿主の免疫系の応答を観察することによって検出することができる。
【0101】
例えば、細胞障害性Tリンパ球の誘導(すなわち活性化)を検出するための方法が周知である。具体的には、生体に侵入する外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によって、T細胞およびB細胞に対して提示されることが公知である。APCによって提示される抗原に抗原特異的な様式で応答するT細胞は、抗原による刺激により細胞障害性T細胞(または細胞障害性Tリンパ球;CTL)に分化し、次いで増殖する(これは、T細胞の活性化と呼ばれる)。したがって、ある種のペプチドによるCTL誘導は、APCによってそのペプチドをT細胞に提示し、かつCTLの誘導(すなわち、増殖、INF-γ産生、および細胞障害活性)を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、CD4+T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+T細胞はまた、抗腫瘍免疫において重要であるため、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0102】
樹状細胞(DC)をAPCとして用いてCTLを誘導する作用を評価するための方法は、当技術分野において周知である。この方法によれば、試験ペプチドを最初にDCと接触させ、次いでこのDCをT細胞と接触させる。DCと接触させた後に、関心対象のペプチドを発現する(すなわちHLA分子上に提示する)細胞に対する細胞障害性効果を有するT細胞が検出される場合、その試験ペプチドが、細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することが示される。T-regに対するCTLの活性は、例えば、51Crで標識された腫瘍細胞の溶解を指標として用いて、検出することができる。あるいは、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いてT-regの損傷の程度を評価する方法もまた周知であり、本発明において使用することができる。
【0103】
DC以外では、末梢血単核細胞(PBMC)をAPCとして使用してもよい。CTLの誘導は、GM-CSFおよびIL-4の存在下でPBMCを培養することによって亢進されることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることも示された。
【0104】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された試験ペプチドは、DC活性化効果およびそれに続くCTL誘導活性を有するペプチドである。したがって、腫瘍細胞に対するCTLを誘導するFoxp3ペプチドは、T-regに対するワクチンとして有用である。さらに、Foxp3ペプチドとの接触によってT-regに対するCTLを誘導する能力を獲得したAPCもまた、T-regに対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるペプチド抗原の提示によって細胞障害性を獲得したCTLもまた、T-regに対するワクチンとして使用され得る。APCおよびCTLによる免疫を用いたこのようなT-regの調節方法は、細胞免疫療法と呼ばれ、本発明に包含される。
【0105】
一般に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを使用する場合、CTL誘導の効率は、異なる構造を有する複数のペプチドを組合せ、かつそれらをDCと接触させることによって上昇することが公知である。したがって、DCをタンパク質断片で刺激する場合、複数のタイプの断片の混合物を使用することが有利である。
【0106】
あるいは、あるペプチドによる抗免疫抑制の誘導は、T-regに対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することもできる。例えば、あるペプチドに対する抗体が、そのペプチドで免疫化された個体、例えば、ヒト患者、実験動物において誘導される場合、かつT-reg細胞がこれらの抗体によって抑制される場合、そのペプチドは、抗免疫抑制を誘導する能力を有すると判定することができる。
【0107】
抗免疫抑制は、本発明のワクチンを投与することによって誘導され、この誘導により、免疫抑制の解除が可能になる。このような効果は、統計学的に有意であり得る。例えば、観察においては、T-regに対するワクチンの調節効果が、ワクチン投与を伴わない対照と比較される場合、5%またはそれ以下の有意水準である。例えば、スチューデントのt検定、マン・ホイットニーU検定、またはANOVAを、統計学的解析のために使用することができる。
【0108】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを使用する場合、T-regは、例えば、エクスビボの方法によって調節する(すなわち抑制する)ことができる。より具体的には、治療または予防を受ける対象のPBMCを採取し、それらの細胞をポリペプチドとエクスビボで接触させ、APCまたはCTLを誘導した後に、それらの細胞を対象に投与することができる。APCは、ポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMC中に導入することによっても、誘導することができる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、クローニングした後に投与することができる。標的細胞を障害する活性が高い細胞をクローニングし増殖させることによって、細胞免疫療法をより有効に実施することができる。さらに、この様式で単離されたAPCおよびCTLは、それらの細胞が由来する個体に対してだけでなく、他の個体の同様のタイプの疾患に対する細胞免疫療法のためにも使用され得る。
【0109】
他に規定されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において説明されるものと同様または等価な方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を後述する。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0110】
以下の実施例は、本発明を例示し、かつ当業者がそれらを作製および使用するのを補助するために提供される。これらの実施例は、他の方法で本発明の範囲を限定することを決して意図しない。
【0111】
実施例
材料および方法
細胞株
A24LCL細胞(HLA-A24/24)、T2細胞(HLA-A02/02)、ヒトBリンパ芽球様細胞、293T、およびCOS7をATCCから購入した。
【0112】
Foxp3に由来するペプチドの候補選択
HLA-A*2402分子およびHLA-A*0201分子に結合する、Foxp3由来の9量体および10量体のペプチドを、結合予測ソフトウェア「BIMAS」(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)によって予測した。これらのアルゴリズムは、Parker KC, et al.((1994) J Immunol.;152(1):163-75.)およびKuzushima K, et al.((2001) Blood.;98(6):1872-81.)によって説明された。これらのペプチドは、標準的な固相合成方法に従ってSigma(Sapporo, Japan)によって合成され、逆相HPLCによって精製した。これらのペプチドの純度(>90%)および同一性は、それぞれ分析用HPLCおよび質量分析解析によって決定した。ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)中に20mg/mlで溶解し、-80℃で保存した。
【0113】
インビトロCTL誘導
単球由来樹状細胞(DC)を抗原提示細胞(APC)として使用して、HLA上に提示されたペプチドに対するCTL応答を誘導した。別の文献(Horiguchi S. et al. Cancer Res. 59:2950-6)に記載されているようにして、DCをインビトロで作製した。具体的には、Ficoll-Plaque(Pharmacia)溶液を用いて正常なボランティア(HLA-A*2402および/またはHLA-A*0201)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、単球の割合を高めるように、プラスチック製の組織培養皿(Becton Dickinson)への接着によって分離した。単球の豊富な集団を、2%の加熱不活性化した自己血清(AS)を含むAIM-V培地(Invitrogen)中、1000U/mlのGM-CSF(R&D System)および1000U/mlのIL-4(R&D System)の存在下で培養した。7日間培養した後、サイトカインを用いて作製したDCを、AIM-V培地中、3mcg/mlのβ2-ミクログロブリンの存在下で、20℃で4時間、20mcg/mlの合成したペプチドでパルスした。次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをマイトマイシンC(MMC)で不活性化し(30mcg/ml、30分間)、かつ、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いたポジティブ選択によって得た自己CD8+T細胞と1:20の比で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に配置(set up)した。各ウェルは、ペプチドパルスしたDC 1.5×104個、CD8+T細胞3×105個、および10ng/mlのIL-7(R&D System)を0.5mlのAIM-V/2%AS中に含んだ。3日後、これらの培養物に、最終濃度が20IU/mlになるまでIL-2(CHIRON)を添加した。7日目および14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに再刺激した。前述したものと同じ手順によって、DCを毎回調製した。21日目の3回目のペプチド刺激の後、ペプチドパルスしたA24LCL細胞またはT2細胞に対するCTL活性を試験した。
【0114】
CTL増殖手順
Riddell, et al. (Walter et al., N Engl J Med 333(16): 1038-44, 1995; Riddell et al., Nat Med 2(2): 216-23, 1996 Feb)によって報告されているものと同様の方法を用いて、CTLを培養液中で増殖させた。合計5×104個のCTLを、40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下で、MMCで不活性化した2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株と共に、25mlのAIM-V/5%AS中に再懸濁した。培養開始後1日目に、120IU/mlのIL-2を培養物に添加した。5日目、8日目、および11日目に、30IU/mlのIL-2を含む新鮮なAIM-V/5%ASを培養物に供給した。
【0115】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を検査するために、IFN-γELISPOTアッセイ法およびIFN-γELISAを実施した。手短に言えば、ペプチドパルスしたA24-LCL、T2細胞(1×104個/ウェル)、またはFoxp3およびHLA分子を内因的に発現する細胞を刺激細胞として調製した。48ウェルで培養したCTL株を応答細胞として使用した。製造手順のもとで、IFN-γELISPOTアッセイ法およびIFN-γELISAを実施した。
【0116】
BALB/cマウスにおけるエピトープペプチドの免疫原性
ペプチド特異的CTLをプライミングするために、マウス1匹当たり50mclのHLA-A24拘束性ペプチドおよび50mclのIFAを含む100mclのワクチン混合物を用いて免疫化を実施した。ワクチンは、0日目に初回の免疫化としてマウスの右側腹部に皮下注射し、7日目に2回目として左側腹部に皮下注射した。14日目に、ワクチン接種したマウスに由来する脾細胞を応答細胞として使用し、ペプチドパルスしたRLmale1細胞またはペプチドパルスしていないRLmale1細胞をIFN-γELISPOTアッセイ法用の刺激細胞として使用した。
【0117】
インビボでの抗腫瘍効果
4T1細胞(マウス1匹当たり1×105個)を、0日目にBALB/cマウスの右側腹部に皮下注射した。hFoxp3-252(KLSAMQAHL: SEQ ID NO: 17)IFA結合ペプチドまたはmFoxp3-252(KLGAMQAHL: SEQ ID NO: 88)IFA結合ペプチドを用いて、3日目および10日目にワクチン接種を実施した。
【0118】
HLA分子に対するFoxp3-9-252置換物の親和性に関するアッセイ法
IFN-γELISAアッセイ法を実施して、HLA-A2分子に対する置換ペプチドの親和性を検査した。Foxp3-9-252-WT(KLSAMQAHL: SEQ ID NO: 17)ペプチドを用いて誘導したCTLを応答細胞として使用し、かつ、Foxp3-9-252-WTペプチド、Foxp3-9-252-9V(KLSAMQAHV: SEQ ID NO: 95)ペプチド、およびHIV-A02(SLYNTYATL)ペプチドと共に37℃で2時間インキュベーションすることによって、T2細胞を刺激細胞として調製した。広範囲の濃度(10〜10-4mcg/ml)の各ペプチドを用いて、T2細胞に対するペプチドパルスを実施した。
【0119】
結果
Foxp3に由来するHLA-A24結合ペプチドおよびHLA-A2結合ペプチドの予測
表1、2、および3は、Foxp3タンパク質のHLA-A*2402結合ペプチドまたはHLA-A*0201結合ペプチドを、予測される高い結合親和性のスコア順に示す。合計で、潜在的なHLA-A24結合活性を有する60種のペプチドおよび潜在的なHLA-A2結合活性を有する26種のペプチドが選択された。
【0120】
(表1)Foxp3に由来する、HLA-A2402に結合する9量体ペプチド

開始位置は、Foxp3のN末端から数えたアミノ酸の番号を示す。結合スコアは、「材料および方法」において説明した「BIMAS」に由来する。
【0121】
(表2)Foxp3に由来する、HLA-A2402に結合する10量体ペプチド

開始位置は、Foxp3のN末端から数えたアミノ酸の番号を示す。結合スコアは、「材料および方法」において説明した「BIMAS」に由来する。
【0122】
(表3)Foxp3に由来する、HLA-A0201に結合するペプチド

開始位置は、Foxp3のN末端から数えたアミノ酸の番号を示す。結合スコアは、「材料および方法」において説明した「BIMAS」に由来する。
【0123】
HLA-A2402によって拘束される予測ペプチドを用いたT細胞の刺激
Foxp3タンパク質由来のペプチドに対するCTLを、前記「材料および方法」において説明した方法に従って作製した。IFN-γELISPOTアッセイ法によって検出可能な特異的CTL活性を示す、結果として生じるCTLを、図1Aおよび図1Bに示す。図1Aにおいて、Foxp3-A24-9-363で刺激したウェル番号2番および7番、Foxp3-A24-9-366で刺激したウェル番号1番および6番、Foxp3-A24-9-190で刺激したウェル番号5番、Foxp3-A24-10-87で刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A24-10-60で刺激したウェルの細胞が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図1Bにおいて、Foxp3-A24-9-207で刺激したウェル番号4番、Foxp3-A24-9-332で刺激したウェル番号6番、Foxp3-A24-9-337で刺激したウェル番号6番、およびFoxp3-A24-10-114で刺激したウェル番号1番の細胞が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。
【0124】
HLA-A0201によって拘束される予測ペプチドを用いたT細胞の刺激
IFN-γELISPOTアッセイ法によって実施した場合に検出可能な特異的CTL活性を示す、結果として生じるCTLを、図2A、図2B、および図2Cに示す。図2Aにおいて、Foxp3-A2-9-390で刺激したウェル番号2番、Foxp3-A2-9-69で刺激したウェル番号2番、Foxp3-A2-9-252で刺激したウェル番号6番、Foxp3-A2-10-359で刺激したウェル番号4番、Foxp3-A2-263で刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A2-10-94で刺激したウェル番号2番および5番の細胞が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図2Bにおいて、Foxp3-A2-10-233で刺激したウェルのすべて、Foxp3-A2-10-152で刺激したウェル番号6番および7番、Foxp3-A2-10-77で刺激したウェル番号5番、Foxp3-A2-10-246で刺激したウェル番号1番、ならびにFoxp3-A2-10-94で刺激したウェルの細胞が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図2Cにおいて、Foxp3-A2-9-390で刺激したウェル番号1番、2番、4番、5番、7番、9番、11番、および12番、Foxp3-A2-9-304で刺激したウェル番号5番および11番、Foxp3-A2-9-68で刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A2-9-252で刺激したウェル番号12番の細胞が、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。
【0125】
Foxp3特異的ぺプチドによるCTL株の樹立
陽性のウェル中のこれらの細胞を増殖させ、IFN-γELISAアッセイ法を実施した。図3A、B、およびCにおいて、Foxp3-A02-9-390(SEQ ID NO: 15)で刺激したCTL株は、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Dにおいて、Foxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)で刺激したCTL株は、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Eにおいて、Foxp3-A24-10-60(SEQ ID NO: 75)で刺激したCTL株は、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Fにおいて、Foxp3-A02-10-94(SEQ ID NO: 27)で刺激したCTL株は、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。図3Gにおいて、Foxp3-A24-10-87(SEQ ID NO: 68)で刺激したCTL株は、対照と比較して強力なIFN-γ産生を示した。
【0126】
Foxp3およびHLA-A*2402またはHLA-A*0201を内因的に発現する標的細胞に対する特異的CTL活性
これらのペプチドに対して産生させ樹立したCTLクローンを、Foxp3およびHLA-A*24またはHLA-A*02を内因的に発現する標的細胞を認識する能力に関して検査した。Foxp3およびHLA-A*24またはHLA-A*02を内因的に発現する標的細胞の特異的モデルである、完全長のFoxp3遺伝子およびHLA-A*24分子またはHLA-A*02分子の両方をトランスフェクトされた293Tに対する特異的CTL活性を、Foxp3-A02-9-390(SEQ ID NO: 15)およびFoxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)を用いて産生させたCTL株をエフェクター細胞として用いて試験した。図4Aおよび4Bにおいて、Foxp3-A02-9-390(SEQ ID NO: 15)およびFoxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)を用いて産生させたCTL株は、Foxp3およびHLA-A02の両方をトランスフェクトされた293Tに対して高い特異的CTL活性を示した。図4Cにおいて、Foxp3-A02-9-252(SEQ ID NO: 17)を用いて産生させたCTL株は、Foxp3およびHLA-A24の両方をトランスフェクトされた293Tに対して高い特異的CTL活性を示した。その一方で、これは、対照に対しては有意な特異的CTL活性を示さなかった。Foxp3-A02-9-390およびFoxp3-A02-9-252が、HLA-A02分子および/またはHLA-A24分子と共に標的細胞表面に天然に発現され、CTLを認識することが明確に実証された。さらに、これらのペプチドは、Foxp3を発現するT-regを標的とするワクチンに利用できるエピトープペプチドであった。
【0127】
BALB/cマウスにおけるFoxp3-A24-9-252ペプチドの免疫原性
BALB/cマウスについてのFoxp3-9-252ペプチドの免疫原性を評価するために、ヒトFoxp3-9-252ペプチド(Foxp3-252_h;KLSAMQAHL)およびマウスFoxp3-9-252ペプチド(Foxp3-252_m;KLGAMQAHL)(SEQ ID NO: 89)を用いた免疫化をそれぞれ実施した。2回目のペプチド注射後、ペプチドに特異的なCTL活性をIFN-γELISPOTアッセイ法によって測定した(図5)。
【0128】
ペプチドをワクチン接種したマウスから採取した脾細胞から、対応するペプチドでパルスした刺激細胞と同時培養したウェルにおいて強力なIFN-γ産生が検出され、対照ウェルではIFN-γ産生は示されなかった。図6Aにおいて、Foxp3-252_hペプチドに特異的なCTL応答は、マウス5匹中3匹(M3、M4、およびM5)から検出されたが、IFAのみをワクチン接種された対照マウス(N1〜N3)では検出されなかった。図6Bにおいて、Foxp3-252_mペプチドに特異的なCTL応答は、マウス5匹中1匹(M1)から検出されたが、IFAのみをワクチン接種された対照マウス(N1〜N3)では検出されなかった。これらのデータから、Foxp3-252_hペプチドまたはFoxp3-252_mペプチドそれぞれのペプチドワクチン接種が、ペプチドパルスされた標的細胞に対するCTLをインビボで誘導し得ることが示された。
【0129】
Foxp3エピトープペプチドのワクチン接種の抗腫瘍効果
Foxp3を標的とするペプチドワクチン接種による抗腫瘍効果を検査するために、4T1腫瘍細胞およびBALB/cマウスを用いることで、インビボでの治療的設定を試みた。0日目に4T1乳癌細胞をBALB/cマウスに皮下注射し、次いで、腫瘍接種後3日目および10日目にこれらのマウスに対してワクチン接種を実施した。結果として、腫瘍増殖は、対照としてのマウスにおける増殖と比較して、Foxp3-252_hペプチドまたはFoxp3-252_mペプチドをワクチン接種したBALB/cマウスにおいて明らかに減少した(図6)。統計学的解析を考慮すると、これは、Foxp3エピトープペプチドを用いてワクチン接種したマウスにおける腫瘍増殖の抑制の有意な差を示した。
【0130】
Foxp3エピトープペプチドのアミノ酸置換
前述の結果において、Foxp3-9-252ペプチド(SEQ ID NO 17)は、HLA-A*2402およびHLA-A*0201の両方によって拘束されるエピトープペプチドとして同定される。Foxp3-9-252ペプチドの免疫原性を高めるために、1つまたは数個のアミノ酸置換を選択して、天然のFoxp3-9-252ペプチドであるFoxp3-9-252-WT(KLSAMQAHL)(SEQ ID NO 17)よりも高い、HLA-A*2402分子またはHLA-A*0201分子に対する結合親和性を実現した。Foxp3-9-252(SEQ ID NO 17)におけるアミノ酸置換の結合スコアは、BIMASソフトウェアから導き出す。表4は、Foxp3-9-252に由来する置換ペプチドのアミノ酸配列ならびにHLA-A*2402分子およびHLA-A*0201分子に対する結合スコアを示す。ペプチドの結合スコアは、BIMASソフトウェアから導き出す。HLA-A24分子またはHLA-A2分子に対する結合親和性が野生型よりも高いと予測される6種または9種の置換物、合計15種のペプチドを合成した(表4)。
【0131】
(表4)HLA-A*2402分子またはHLA-A*0201分子に対する、Foxp3-9-252(SEQ ID NO 17)のアミノ酸置換物の結合スコア

【0132】
次に、本発明者らは、これらの置換物を用いてペプチドパルスした刺激細胞が、Foxp3-9-252-WTペプチドを用いて作製したCTLによって認識されるかどうかを検査した。その結果、Foxp3-9-252-WTペプチドによって誘導したCTLは、Foxp3-9-252-WTペプチドをパルスしたT2細胞と同様に、Foxp3-9-252-9V(KLSAMQAHV)(SEQ ID NO 95)でパルスしたT2細胞に対してIFN-γを産生した(図7A)。ペプチドパルスをしなかった刺激細胞に対して、CTLからのIFN-γ産生は検出されなかったため、Foxp3-9-252-WTペプチドを用いて作製したCTLは、Foxp3-9-252-WTだけでなくHLA-A2分子上のFoxp3-9-252-9Vペプチドの提示を認識できることが示された。
【0133】
さらに、Foxp3-9-252-9Vペプチドの方がFoxp3-9-252-WTペプチドよりもHLA-A2分子に対してより高い親和性を有するかどうかを評価するために、広範囲の濃度(10〜10-4mcg/ml)のこれらのペプチドでパルスした刺激細胞を用いてCTL活性を測定した。結果として、同等のIFN-γが、Foxp3-9-252-WTペプチドまたはFoxp3-9-252-9Vペプチドでそれぞれパルスした刺激細胞と同時培養したCTLから産生された(図7B)。これらのデータから、HLA-A*0201分子上のFoxp3-9-252-9Vペプチドの提示が、Foxp3-9-252-WTペプチドを用いて樹立したCTLによって認識され得ることが示された。
【0134】
一方で、本発明者らは、Foxp3-9-252-9Vペプチドを含む、HLA-A*0201に拘束されるすべての置換物を用いてCTLの誘導を試みた。結果として、CTLは、Foxp3-9-252-3Mペプチド(KLMAMQAHL)(SEQ ID NO 97)、Foxp3-9-252-3Lペプチド(KLLAMQAHL)(SEQ ID NO 98)、またはFoxp3-9-252-9Vペプチドを用いた刺激によって誘導された(図7C)。Foxp3-A02-9-252-3Mで刺激したウェル番号3番および7番、Foxp3-A02-9-252-3Lで刺激したウェル番号7番、ならびにFoxp3-A02-9-252-9Vで刺激したウェル番号8番中の細胞が、対照と比べてペプチド依存性のIFN-γ産生を示した。Foxp3-9-252-9Vを用いた刺激によって誘導されるCTL株をインビトロでの増殖によって樹立した後、Foxp3-9-252-WTペプチドまたはFoxp3-9-252-9Vペプチドでパルスした刺激細胞を用いることによって、CTL活性を測定した。その結果として、Foxp3-9-252-9Vを用いた刺激によって誘導されたCTLは、Foxp3-9-252-9Vペプチドでパルスしたものと同じく、Foxp3-9-252-WTペプチドでパルスした刺激細胞を認識した(図7D)。これらの結果から、Foxp3-9-252-9VペプチドがFoxp3-9-252-WTペプチドと同様にFoxp3特異的CTLを誘導し得ることが強く示された。
【0135】
抗原ペプチドの相同性解析
FOXp3-A24-9-363 (SEQ ID NO 3)、
FOXp3-A24-9-366 (SEQ ID NO 7)、
FOXp3-A24-9-190 (SEQ ID NO 9)、
FOXp3-A24-9-207 (SEQ ID NO 4)、
FOXp3-A24-9-332 (SEQ ID NO 5)、
FOXp3-A24-9-337 (SEQ ID NO 8)、
FOXp3-A24-10-114 (SEQ ID NO 12)、
FOXp3-A2-9-390 (SEQ ID NO 15)、
FOXp3-A2-9-69 (SEQ ID NO 16)、
FOXp3-A2-9-252 (SEQ ID NO 17)、
FOXp3-A2-10-359 (SEQ ID NO 22)、
FOXp3-A2-10-263 (SEQ ID NO 24)、
FOXp3-A2-10-94 (SEQ ID NO 27)、
FOXp3-A2-10-233 (SEQ ID NO 28)、
FOXp3-A2-10-152 (SEQ ID NO 29)、
FOXp3-A2-10-77 (SEQ ID NO 30)、
FOXp3-A2-10-246 (SEQ ID NO 37)、
FOXp3-A2-9-68 (SEQ ID NO 18)、
FOXp3-A2-9-304 (SEQ ID NO 19)、
Foxp3-A24-10-87 (SEQ ID NO 67) 、および
Foxp3-A24-10-60 (SEQ ID NO 74)
を用いて刺激したCTLは、有意かつ特異的なCTL活性を示した。
【0136】
このことは、
FOXp3-A24-9-363 (SEQ ID NO 3)、
FOXp3-A24-9-366 (SEQ ID NO 7)、
FOXp3-A24-9-190 (SEQ ID NO 9)、
FOXp3-A24-9-207 (SEQ ID NO 4)、
FOXp3-A24-9-332 (SEQ ID NO 5)、
FOXp3-A24-9-337 (SEQ ID NO 8)、
FOXp3-A24-10-114 (SEQ ID NO 12)、
FOXp3-A2-9-390 (SEQ ID NO 15)、
FOXp3-A2-9-69 (SEQ ID NO 16)、
FOXp3-A2-9-252 (SEQ ID NO 17)、
FOXp3-A2-10-359 (SEQ ID NO 22)、
FOXp3-A2-10-263 (SEQ ID NO 24)、
FOXp3-A2-10-94 (SEQ ID NO 27)、
FOXp3-A2-10-233 (SEQ ID NO 28)、
FOXp3-A2-10-152 (SEQ ID NO 29)、
FOXp3-A2-10-77 (SEQ ID NO 30)、
FOXp3-A2-10-246 (SEQ ID NO 37)、
FOXp3-A2-9-68 (SEQ ID NO 18)、
FOXp3-A2-9-304 (SEQ ID NO 19)、
Foxp3-A24-10-87 (SEQ ID NO 67) 、および
Foxp3-A24-10-60 (SEQ ID NO 74)
の配列が、ヒト免疫系を感作することが公知である他の分子に由来するペプチドと相同であることを意味する可能性がある。この可能性を排除するために、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を使用して、これらのペプチド配列をクエリーとして用いて相同性解析を実施し、有意な相同性を有する配列は無いことを明らかにした。
【0137】
これらの結果から、
FOXp3-A24-9-363 (SEQ ID NO 3)、
FOXp3-A24-9-366 (SEQ ID NO 7)、
FOXp3-A24-9-190 (SEQ ID NO 9)、
FOXp3-A24-9-207 (SEQ ID NO 4)、
FOXp3-A24-9-332 (SEQ ID NO 5)、
FOXp3-A24-9-337 (SEQ ID NO 8)、
FOXp3-A24-10-114 (SEQ ID NO 12)、
FOXp3-A2-9-390 (SEQ ID NO 15)、
FOXp3-A2-9-69 (SEQ ID NO 16)、
FOXp3-A2-9-252 (SEQ ID NO 17)、
FOXp3-A2-10-359 (SEQ ID NO 22)、
FOXp3-A2-10-263 (SEQ ID NO 24)、
FOXp3-A2-10-94 (SEQ ID NO 27)、
FOXp3-A2-10-233 (SEQ ID NO 28)、
FOXp3-A2-10-152 (SEQ ID NO 29)、
FOXp3-A2-10-77 (SEQ ID NO 30)、
FOXp3-A2-10-246 (SEQ ID NO 37)、
FOXp3-A2-9-68 (SEQ ID NO 18)、
FOXp3-A2-9-304 (SEQ ID NO 19)、
Foxp3-A24-10-87 (SEQ ID NO 67) 、および
Foxp3-A24-10-60 (SEQ ID NO 74)
の配列が独特であり、本発明者らの知る限りでは、任意の無関係の分子に対して意図されない免疫学的応答を生じさせる可能性はほぼないことが示される。
【0138】
結論として、Foxp3は、T-reg細胞を標的とする際に有用な抗原であり、これらのエピトープペプチドを用いたワクチンは、免疫療法のために有用であり得る。
【0139】
考察
図6のデータから、hFoxp3-252ペプチドおよびmFoxp3-252ペプチドそれぞれのワクチン接種は、インビボでエピトープ特異的CTLを誘導し得る。このことから、両方のFoxp3エピトープペプチドが、Foxp3および対応する主要組織適合性複合体分子を発現した標的細胞に対するCTLを誘導し得ることが示された。言い換えると、これらのCTLが、調節性Tリンパ球(T-reg)を認識し得ることが示唆される。この仮説を評価するために、これらのFoxp3エピトープペプチドを用いたワクチン接種のインビボでの抗腫瘍効果を、BALB/cマウスを用いることによって検査した。これにより、hFoxp3-252ペプチドおよびmFoxp3-252ペプチドをそれぞれワクチン接種したマウスにおいて明らかに抗腫瘍効果が示された。これらの結果から、任意のTAAエピトープペプチドを用いたワクチン接種を行わなくても、局所的な腫瘍微小環境中のT-regを抑制することによって腫瘍増殖を阻害し得ることが強く示された。本発明者らは、腫瘍細胞に対するCTLは、腫瘍が身体内部に存在する場合に誘導されるが、T-regは、腫瘍細胞に由来するいくつかの免疫抑制因子によっても誘導され、かつ抗腫瘍エフェクター細胞の機能を阻害すると考える。Foxp3エピトープペプチドを用いたワクチン接種は、T-regの殺傷または抑制によって免疫抑制状況を解除し得るため、TAAエピトープペプチドワクチン接種も、強力なアジュバントを用いた免疫系全体の刺激も行うことなく、抗腫瘍効果が示された。
【0140】
なお、図5および図6において、hFoxp3-252ペプチド(KLSAMQAHL)(SEQ ID NO 17)のワクチン接種は、mFoxp3-252ペプチド(KLGAMQAHL)(SEQ ID NO 88)より優れたCTLおよび抗腫瘍効果を誘導することができた。これらの結果から、hFoxp3-252ペプチドのワクチン接種は、mFoxp3-252ペプチドのワクチン接種と比較して効果的に免疫学的寛容を回避し得ると考えられた。言い換えると、hFoxp3-252のアミノ酸配列は、mFoxp3-252のアミノ酸配列と3番目が異なるため、hFoxp3-252ペプチドはインビボで「自己抗原ではない」とみなされ、T-regに対するCTLを効果的に誘導し得る。
【0141】
結論として、Foxp3は、癌免疫療法のための新規な標的として役立ち得ることが示される。さらに、これらの結果は、Foxp3エピトープペプチドを用いたワクチン接種がT-regの機能を抑制し得、多くのタイプの癌細胞に対する癌免疫療法に利用可能であろうことを強く裏付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、15〜19、22、24、27〜30、37、67、または74のアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
以下の群より選択されるアミノ酸配列を含む、細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチド:
(a)SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、17、67、または74;および
(b)1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸が置換または付加されている、SEQ ID NO: 3〜5、7〜9、12、17、67、または74。
【請求項3】
N末端から2番目のアミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、またはトリプトファンである、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
C末端アミノ酸が、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、またはメチオニンである、請求項2または3記載のペプチド。
【請求項5】
以下の群より選択されるアミノ酸配列を含む、細胞障害性T細胞誘導能を有するペプチド:
(a)SEQ ID NO: 15〜19、22、24、27〜30、または37;および
(b)1つ、2つ、またはいくつかのアミノ酸が置換または付加されている、SEQ ID NO: 15〜19、22、24、27〜30、または37。
【請求項6】
N末端から2番目のアミノ酸が、ロイシンまたはメチオニンである、請求項5記載のペプチド。
【請求項7】
C末端アミノ酸がバリンまたはロイシンである、請求項5または6記載のペプチド。
【請求項8】
置換ペプチドが、SEQ ID NO: 95、97、または98のアミノ酸配列を含む、請求項2または5記載のペプチド。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項記載の1種もしくは複数種のペプチド、または該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、T-reg細胞を調節するための薬学的物質。
【請求項10】
T-reg細胞の増殖を阻害することが意図される、請求項9記載の薬学的物質。
【請求項11】
HLA抗原がHLA-A24である対象に投与することが意図される、請求項9記載の薬学的物質。
【請求項12】
HLA抗原がHLA-A02である対象に投与することが意図される、請求項9記載の薬学的物質。
【請求項13】
T-reg細胞の機能を抑制することが意図される、請求項9記載の薬学的物質。
【請求項14】
癌を治療することが意図される、請求項9記載の薬学的物質。
【請求項15】
ワクチンである、請求項14記載の薬学的物質。
【請求項16】
請求項2、5記載のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドに加えて、癌細胞に対する細胞障害性T細胞を誘導する能力を有する別のペプチドまたは該他のペプチドをコードする別のポリヌクレオチドを含む、請求項15記載の薬学的物質。
【請求項17】
HLA抗原および請求項2または5記載のペプチドを含む複合体をその表面に提示するエキソソーム。
【請求項18】
HLA抗原がHLA-A24である、請求項14記載のエキソソーム。
【請求項19】
HLA抗原がHLA-A2402である、請求項14記載のエキソソーム。
【請求項20】
HLA抗原がHLA-A02である、請求項14記載のエキソソーム。
【請求項21】
HLA抗原がHLA-A0201である、請求項14記載のエキソソーム。
【請求項22】
請求項2、5記載のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与することによって、高い細胞障害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導する方法。
【請求項23】
請求項2、5記載のペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与することによって、細胞障害性T細胞を誘導する方法。
【請求項24】
高い細胞障害性T細胞誘導能を有する請求項19記載の抗原提示細胞を誘導する方法であって、請求項2または5記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞に移入する段階を含む、方法。
【請求項25】
請求項2記載のペプチドによって誘導される、単離された細胞障害性T細胞。
【請求項26】
HLA抗原と請求項2または5記載のペプチドとで形成された複合体を含む、抗原提示細胞。
【請求項27】
請求項21記載の方法によって誘導される、請求項25記載の抗原提示細胞。
【請求項28】
対象においてT-reg細胞を調節する方法であって、請求項2記載のペプチドもしくは該ペプチドの免疫学的に活性な断片、または該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを該対象に投与する段階を含む、方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A−D】
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【図3E−G】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【公表番号】特表2010−514669(P2010−514669A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524039(P2009−524039)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/JP2007/001466
【国際公開番号】WO2008/081581
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】