説明

FRPサンドイッチパネル構造体

【課題】機器類を十分な据付精度や信頼性でもって据え付けることができ、しかも船舶の船穀材等に適用することができるFRPサンドイッチパネル構造体を提供する。
【解決手段】FRPサンドイッチパネル構造体100は、芯材11と、芯材11の一方の面13に形成された凹部12に埋め込まれた埋込金属板20と、芯材11の一方の面13および埋込金属板20を覆う一方のFRP表皮材14と、芯材11の他方の面15を覆う他方のFRP表皮材16と、がVARTM法(真空補助樹脂含浸)によって一体的に成形されたFRPサンドイッチパネル10に、埋込金属板20に固定されたスタッドボルト21によって、一方のFRP表皮材14の上に、機器類50を据え付けるため据付金属板30が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFRP(繊維強化プラスチック)サンドイッチパネル構造体、特に、機器類が据え付けられるのに好適なFRPサンドイッチパネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FRPサンドイッチパネル構造体は、船舶の船穀材、化学プラント等の構造体または建築パネル材等に一般的に数多く使用されている。
例えば、船舶に例を挙げるならば当該FRPサンドイッチパネル構造体で形成された船穀材に、船舶主機関、発電機、ポンプその他の機器(本発明において「機器類」と総称する)を据付けると、当該機器類の自重またはFRPサンドイッチパネル構造体自体の変形(自重、浮力による外力)のため機器類の据付精度や信頼性が低下していた。そのため、FRPサンドイッチパネル構造体に、機械備え付け用のライナー(チヨックファースト等)を使用する発明が開示されている。
【0003】
たとえば、FRP部材に形成された貫通孔にフランジ付きナットを挿入し、該ナットにフランジ付きボルトを螺合して、それぞれのフランジによってFRP部材を挾持する一体物を形成し、さらに、該一体物に形成された貫通孔に部品(機器類に同じ)を固定するためのボルトを挿入する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、FRP構造物に形成された貫通孔の周囲に肉盛部を設け、該肉盛部に固定金具をねじによって設置し、前記貫通孔を貫通するボルトによって、固定金具と一体になった取付け材を金属構造物(機器類に相等する)に取り付ける発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−329336号公報(第6−7頁、図1)
【特許文献2】特開2008−151329号公報(第4−6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(あ)しかしながら特許文献1に開示された発明は、FRPサンドイッチパネルに貫通孔を形成するため、FRPサンドイッチパネルの強度や剛性の低下を招くと共に、機器類の設置位置が限定されるという問題があった。
(い)フランジの面積が比較的小さいため、機器類の自重によってFRP部材が変形し、十分な据付精度や信頼性が得られないという問題があった。
(う)据付精度が、FRP部材に形成された貫通孔の加工精度によって決まるため、この加工精度が十分でない場合、これに対応したフランジ付きナットおよびフランジ付きボルトを新たに用意する必要があり、費用と時間とが増大するという問題があった。
【0006】
(え)また、特許文献2に開示された発明は、肉盛部に雌ネジを設置し、これに螺合する雄ネジでもって固定金具を設置するものであるため、雌ネジの設置精度が十分でない場合、これに対応した固定金具やこれと一体になった取付け材を新たに用意する必要があり、費用と時間とが増大するという問題があった。
(お)さらに、特許文献1および特許文献2に開示された発明は、たとえば、船舶の船穀材(底板)等には適用することができないという問題があった。
【0007】
本発明は前記問題を解決するものであって、機器類を十分な据付精度や信頼性でもって据え付けることができ、しかも船舶の船穀材(底板)等に適用することができるFRPサンドイッチパネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るFRPサンドイッチパネル構造体は、
(1)芯材と、
該芯材の一方の面に形成された凹部に埋め込まれた埋込金属板と、
前記芯材の一方の面および前記埋込金属板を覆う一方のFRP表皮材と、
前記芯材の他方の面を覆う他方のFRP表皮材と、
前記一方のFRP表皮材に載置され、前記一方の表皮材を貫通する連結手段によって前記埋込金属板に連結された据付金属板と、有する。
【0009】
(2)前記(1)において、前記芯材、前記埋込金属板、前記一方のFRP表皮材および前記他方のFRP表皮材が、VARTM法(真空補助樹脂含浸)によって一体的に成形されてなることを特徴とする。
(3)前記(1)または(2)において、前記連結手段が、前記埋込金属板に固定されたスタッドボルトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(i)本発明によれば、FRPサンドイッチパネルに貫通孔を形成することなく、機器類を広い面積を有する据付金属板と、これに連結された埋込金属板によって支持することができるため、機器類を十分な据付精度や信頼性でもって据え付けることができる。
(ii)また、据付金属板はFRPサンドイッチパネルから取り外して機械加工を施すこと、あるいは、機械加工を施した後に、FRPサンドイッチパネルに取り付けることができるから、追加の機械加工による精度向上や、修理あるいは取り替えによって設計変更への対応性あるいは保全性が向上する。
【0011】
(iii)FRPサンドイッチパネルに貫通孔を形成する必要がないから、船舶の船穀材(底板)等に適用することができる。
(iv)さらに、VARTM法(真空補助樹脂含浸)によって一体的に成形されるため、サンドイッチパネルの信頼性が向上する。
(v)さらに、埋込金属板にスタッドボルトを固定しておけば、据付金属板の取り付けが容易になる。
なお、本発明において、便宜上、据付金属板が取り付けられる前の状態を「FRPサンドイッチパネル」と、据付金属板が取り付けられた状態を「FRPサンドイッチパネル構造体」と称している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るFRPサンドイッチパネル構造体を説明するものであって、FRPサンドイッチパネルとFRPサンドイッチパネル構造体を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示すFRPサンドイッチパネル構造体の使用状況を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2は本発明の実施の形態に係るFRPサンドイッチパネル構造体を説明するものであって、図1の(a)はFRPサンドイッチパネルを模式的に示す断面図、図1の(b)はFRPサンドイッチパネル構造体を模式的に示す断面図、図2は使用状況を模式的に示す断面である。なお、各図において同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0014】
図1の(a)において、FRPサンドイッチパネル構造体100は、芯材11と、芯材11の一方の面13に形成された凹部12に埋め込まれた埋込金属板20と、芯材11の一方の面13および埋込金属板20を覆う一方のFRP表皮材14と、芯材11の他方の面15を覆う他方のFRP表皮材16と、を有している。
このとき、芯材11、埋込金属板20、一方のFRP表皮材14および他方のFRP表皮材16が、VARTM法(真空補助樹脂含浸)によって一体的に成形、FRPサンドイッチパネル10が形成されている。
そして、 埋込金属板20にはスタッドボルト21が固定され、スタッドボルト21は一方のFRP表皮材14を貫通している。
【0015】
図1の(b)において、FRPサンドイッチパネル10の一方のFRP表皮材14に、据付金属板30が載置され、スタッドボルト21に螺合する取付ナット22によって固定され、FRPサンドイッチパネル構造体100が形成されている。
据付金属板30にはスタッドボルト21が貫通するボルト貫通孔31と、機器類を据え付けるための据付用雌ネジ32と、が形成されている。このとき、据付金属板30の機器類を据え付けるための据付面33は機械加工され、所定の平面度が保証されている。
【0016】
図2において、FRPサンドイッチパネル構造体100に機器類50が据え付けられている。すなわち、据付用ボルト40が据付用雌ネジ32に螺合し、機器類50の底面51が据付金属板30の据付面33に押し付けられている。
なお、据付金属板30の据付面33は、FRPサンドイッチパネル構造体100の完成後に、予め機械加工した状態で施工現場に搬入してもよいし、施工現場において、機器類50の芯出しや座面計測しながら機械加工してもよい。
【0017】
したがって、機器類50を広い面積を有する据付金属板30と、これに連結された埋込金属板20とによって支持するため、機器類50を十分な据付精度や信頼性でもって据え付けることができる。
また、FRPサンドイッチパネルは、埋込金属板20が芯材11中に埋め込まれた状態で成型されるため、変形が抑えられ、強度アップが図られる。
また、据付金属板30は、FRPサンドイッチパネル10から取り外して機械加工を施すことができるため、精度向上のための追加の機械加工が容易である。したがって、据付金属板30のみの修理や取り替えが可能となり、設計変更への対応性や保全性が向上する。
また、予め、据付金属板30を機械加工することができるため、施工現場における加工工数を減らすことができ、工期短縮に寄与する。
さらに、VARTM法(真空補助樹脂含浸)によって一体的に成形されるため、サンドイッチパネル10の信頼性が向上する。
さらに、埋込金属板20にスタッドボルト21が固定されるため、据付金属板30の設置や交換が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、機器類を十分な据付精度や信頼性でもって据え付けることができるから、FRPサンドイッチパネルにより構成される船穀材、プラント構造物の構成部材、建築用のパネル材等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 FRPサンドイッチパネル
11 芯材
12 凹部
13 一方の面
14 一方の表皮材
15 他方の面
16 他方の表皮材
20 埋込金属板
21 スタッドボルト
22 取付ナット
30 据付金属板
31 ボルト貫通孔
32 据付用雌ネジ
33 据付面
40 据付用ボルト
50 機器類
51 底面
100 FRPサンドイッチパネル構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、
該芯材の一方の面に形成された凹部に埋め込まれた埋込金属板と、
前記芯材の一方の面および前記埋込金属板を覆う一方のFRP表皮材と、
前記芯材の他方の面を覆う他方のFRP表皮材と、
前記一方のFRP表皮材に載置され、前記一方の表皮材を貫通する連結手段によって前記埋込金属板に連結された据付用金属板と、
有するFRPサンドイッチパネル構造体。
【請求項2】
前記芯材、前記埋込金属板、前記一方のFRP表皮材および前記他方のFRP表皮材が、VARTM法(真空補助樹脂含浸)によって一体的に成形されてなることを特徴とする請求項1記載のFRPサンドイッチパネル構造体。
【請求項3】
前記連結手段が、前記埋込金属板に固定されたスタッドボルトであることを特徴とする請求項1または2記載のFRPサンドイッチパネル構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261472(P2010−261472A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110483(P2009−110483)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】