説明

FRPサンドイッチパネル

【課題】FRP製の船舶、建築材、プラント等の構造体を形成する際の防撓性の高いFRPサンドイッチパネルの防撓構造を提供するものである。
【解決手段】FRPサンドイッチパネル10は、剪断剛性の異なる第1パネル心材3と第2パネル心材4を横方向に併設し、その両表面をそれぞれ覆う第1FRPパネル表皮材1および第2FRPパネル表皮材2によってサンドイッチし、さらに、剪断剛性が高い方の第2パネル心材4の上部に矩形または台形状の防撓心材5を設け、防撓心材5および第2FRPパネル表皮材2の表面にFRP防撓表皮材6を設置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFRPサンドイッチパネル、特に、船舶、建築材、プラント機器等の構造材に用いるFRP(繊維強化プラスチック)サンドイッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に用いるFRPサンドイッチパネルは、通常、軽量のプラスチックフォームやバルサ材を心材にして、その両面にGFRPやCFRP等の表皮材が設置されている。
そして、心材を過剰に厚くすることなく、剛性や強度を高めるため、FRPサンドイッチパネルの短辺に、所定の間隔を空けて互いに平行な防撓材(スティフナー)が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−264880号公報(第2−3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の技術は、FRPサンドイッチパネルを形成する心材の「剪断剛性」が低いため、FRPサンドイッチパネルの曲げ変形において、防撓材が設置された側の表皮材(以下「上表皮材」と称す)は構造部材として機能する(引っ張り力や圧縮力が生じる)ものの、防撓材が設置されていない側の表皮材(以下「下表皮材」と称す)は構造部材として機能しない(引っ張り力や圧縮力が生じない)という問題があった。
すなわち、防撓材が曲がることによって上表皮材は伸ばされたり、あるいは縮められたりするものの、上表皮材の変形が下表皮材に伝播しない。
また、FRPサンドイッチパネルを形成する心材の「剪断剛性」を高めたのでは、軽量であることを特徴としていたFRPサンドイッチパネルが、かえって重くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑み、FRPサンドイッチパネルの重量増加を抑えて、剛性や強度を高めることができるFRPサンドイッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るはFRPサンドイッチパネルは以下の構成を有する。
(1)所定の剪断剛性を有する第1パネル心材と、
該第1パネル心材の剪断剛性よりも高い剪断剛性を有する第2パネル心材と、
前記第1パネル心材と前記第2パネル心材とが交互に配置されて形成された板状体の両面に、それぞれ設置された一対のFRPパネル表皮材と、
該一対のFRP表皮材の一方のFRPパネル表皮材の表面で前記第2パネル心材に相当する位置に設置された、断面矩形または断面台形の棒状の防撓心材と、
該防撓心材の表面、および該防撓心材の設置範囲を除く前記一方のFRP表皮材の表面の一部または全部に、設置されたFRP防撓表皮材と、を有する。
【0007】
(2)前記(1)において、前記第2パネル心材の幅が、前記防撓心材の幅の1〜4倍であることを特徴とする。
(3)前記(1)または(2)において、前記防撓心材の頂部に、曲げ剛性を高めるための強化層が設けられることを特徴とする。
【0008】
(4)前記(1)乃至(3)の何れかにおいて、前記FRP防撓表皮が複数枚であって、前記防撓心材の少なくとも一方の側面を覆うFRP防撓表皮と、前記防撓心材の少なくとも他方の側面を覆うFRP防撓表皮とが、前記防撓心材の頂部において重なることを特徴とする。
(5)前記(1)乃至(4)の何れかにおいて、前記第1パネル心材、前記第2パネル心材および前記防撓心材が木材またはプラスチック材であって、真空補助樹脂含浸されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
発明に係るFRPサンドイッチパネルは以下の効果を奏する。
(i)一方のFRPパネル表皮材(以下「上表皮材」と称す)の表面で第2パネル心材に相当する位置に断面矩形状または断面台形状の棒状の防撓心材が設置されるから、防撓心材が曲がることによって生じる上表皮材の変形が、比較的剪断剛性の高い第2パネルによって、防撓心材が設置されていない他方のFRPパネル表皮材(以下「下表皮材」と称す)に伝達され、下表皮材が構造部材として機能することになる。
【0010】
(ii)第2パネル心材の幅が防撓心材の幅の1〜4倍であるから、上表皮材の変形が、効果的に下表皮材に伝達される。好ましくは、2〜3倍程度にしておけば、重量増加を抑えて確実に上表皮材の変形を下表皮材に伝達させることができる。
(iii)防撓心材の頂部に曲げ剛性を高めるための強化層が設けられるから、補剛効果が増大する。
(iv)防撓心材の一方の側面を覆うFRP防撓表皮と他方の側面を覆うFRP防撓表皮とが防撓心材の頂部において重なるから、補剛効果が増大する。
(v)第1パネル心材、第2パネル心材および防撓心材が木材またはプラスチック材であって、真空補助樹脂含浸されてなるから、強度および剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係るFRPサンドイッチパネルの断面図。
【図2】図1に示すFRPサンドイッチパネルの作用効果を模式的に説明する荷重条件を示す側面図および変形後の一部を示す側面図。
【図3】図1に示すFRPサンドイッチパネルの断面性能を説明する計算モデルを示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態2に係るFRPサンドイッチパネルの断面図。
【図5】本発明の実施の形態3に係るFRPサンドイッチパネルの断面図。
【図6】本発明の実施の形態4に係るFRPサンドイッチパネルの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係るFRPサンドイッチパネルの断面図である。図1において、FRPサンドイッチパネルの防撓構造10は、横方向に併設された第1パネル心材3および第2パネル心材4と、これらの両面にそれぞれ設置された第1FRPパネル表皮材1および第2FRPパネル表皮材2と、防撓心材5と、を有している。
【0013】
第1FRPパネル表皮材1および第2FRPパネル表皮材2はGFRPシート(ガラス繊維強化プラスチックシート)またはCFRPシート(カーボン繊維強化プラスチックシート)を複数枚重ねて形成され、その厚さは、設定したパネル心材厚さに、設計圧力と、サンドイッチ構造の周囲の固定条件を加味して計算される曲げ応力(第1FRPパネル表皮材1および第2FRPパネル表皮材2自体は引張応力ないし圧縮応力が発生する)とから計算される。
【0014】
第1パネル心材3および第2パネル心材4は、横方向に併設され、両面をそれぞれ第1FRPパネル表皮材1および第2FRPパネル表皮材2によって挟まれ、所謂サンドイッチ状態のFRPサンドイッチパネル10が形成されている。
第1パネル心材3および第2パネル心材4の厚さは、サンドイッチパネルの外形寸法と設計圧力により発生する大きさから計算される剪断応力によって決定され、バルサ材またはプラスチックが用いられる。
特に、防撓心材5が設置される第2パネル心材4は、第1パネル心材3より密度の高い剪断剛性の高いパネル心材を用いる。
【0015】
FRPサンドイッチパネル10は、例えば平らな成形定盤の上に積層設置されたドライ状態のFRP強化布と心材全体をフィルムで覆って周囲をシールし真空に近い状態で樹脂を含浸させるVARTM(真空補助樹脂含浸)成形を適用することにより製造効率の高いFRPサンドイッチパネル10が製造されるものである。
【0016】
防撓心材5は、剪断剛性が第1パネル心材3より高い第2パネル心材4の上面に配置され、断面が矩形または台形状となっている。すなわち、防撓心材5および第2パネル心材4等によって防撓部が形成される。
防撓心材5はVARTM(真空補助樹脂含浸)によって一気に成形するか、あるいは、手積み成形によって成形される。
さらに、FRP防撓表皮材6が防撓心材5上部を覆って接着され、FRPサンドイッチパネルとの一体化が図られている。
【0017】
図2は本発明の実施の形態1に係るFRPサンドイッチパネルの作用効果を模式的に説明するものであって、図2の(a)は荷重条件を示す側面図、図2の(b)は荷重条件を示す正面図、図2の(c)は変形後の一部を示す側面図、図2の(d)は比較材の変形後の一部を示す側面図である。
図2の(a)および(b)において、FRPサンドイッチパネル10は防撓心材5の頂部が伸ばされるように、一様分布荷重が負荷されている。
【0018】
図2の(c)において、FRPサンドイッチパネル10は、第2パネル心材4が所定の剪断剛性を有するから、第2FRPパネル表皮材2の防撓心材5が接合している範囲の変形が第1FRPパネル表皮材1に伝達されている。すなわち、分布荷重が負荷される前に、矩形であった第2パネル心材4は台形(扇形)状に変形し、同様に、防撓心材5も台形(扇形)状に変形している。
【0019】
図2の(d)において、第2パネル心材4の剪断剛性が低い(第1パネル心材3の剪断剛性程度)比較材90の場合、第2パネル心材4が台形(扇形)状に変形した際、第2FRPパネル表皮材2の防撓心材5が接合している範囲は変形(短縮している)するものの、第2パネル心材4は、矩形のままほとんど変形しない。すなわち、第1FRPパネル表皮材1は構造部材として力を負担していないから、比較材90の剛性向上に寄与していない。
【0020】
図3は本発明の実施の形態1に係るFRPサンドイッチパネルの断面性能を説明するものであって、図3の(a)は計算モデルを示す断面図、図3の(b)は比較材の計算モデルを示す断面図である。
図3の(a)において、FRPサンドイッチパネル10は、厚さ40mmで、幅100mmの2枚の第1パネル心材3が、幅200mmの第2パネル心材4を挟んで板状に接続され、両面に厚さ8mmの第1FRPパネル表皮材1および第2FRPパネル表皮材2が設置されている。そして、防撓心材5は、底辺100mm、上辺80mm、高さ100mmの台形で、厚さ4mmのFRP防撓表皮材6によって覆われている。
一方、図3の(a)に示す比較材90は、厚さ40mmで、幅400mmの第1パネル心材3に、防撓心材5が設置されている。このとき、第1FRPパネル表皮材1は断面係数等の計算においては「無いもの」としている。なお、第1パネル心材3の幅400mmは「設計有効幅」に相等する。
【0021】
【表1】

【0022】
表1において、本発明のFRPサンドイッチパネル10は、曲げ剛性に対して、第1FRPパネル表皮材1が寄与するため、断面係数は2.18倍、断面二次モーメントは2.78倍に増大している。
【0023】
[実施の形態2]
図4は本発明の実施の形態2に係るFRPサンドイッチパネルの断面図である。図4において、FRPサンドイッチパネル20は、防撓心材5の頂部に一方向強化層7がインサートされ、FRP防撓表皮材6で一体成形されている。したがって、防撓心材5の高さを増加させる必要がないから、FRPサンドイッチパネル20の全体厚さ(高さ)を薄く(小さく)することができる。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0024】
[実施の形態3]
図5は本発明の実施の形態3に係るFRPサンドイッチパネルの断面図である。図5において、FRPサンドイッチパネル30は、防撓心材5に防撓補強層8が形成されている。
防撓補強層8は、防撓心材5の頂部におけるFRP防撓表皮材6の厚さが、防撓心材5のウェブ部におけるFRP防撓表皮材6(以下、「FRP防撓表皮材6a、6b」と称す)の厚さより厚く形成されている。
すなわち、FRP防撓表皮材6a、6bを用いて、防撓心材5の一方の斜面側を覆うFRP防撓表皮材6aを形成する複数枚のシートと、防撓心材5の他方の斜面側を覆うFRP防撓表皮材6bを形成する複数枚のシートと、を頂部において重なるように成形している。このため、補剛効果が増している。
【0025】
[実施の形態4]
図6は本発明の実施の形態4に係るFRPサンドイッチパネルの断面図である。図6において、FRPサンドイッチパネルの防撓構造40は、FRPサンドイッチパネルの防撓構造10(実施の形態1)において、第2FRPパネル表皮材2と防撓表皮材6とが一体化したものである。すなわち、たとえば、第1FRPパネル表皮材1が10枚のFRPシートから形成されるとき、第2FRPパネル表皮材2を5枚のFRPシートによって形成し、その上に防撓心材5を設置し、防撓心材5の表面(頂部および両側面)および第2FRPパネル表皮材2の表面にFRPシートを8枚設置して、防撓表皮材6を形成する。すなわち、防撓心材5を除く上面には、合計13枚のFRPシートを重ねた、第2パネル表皮材2と防撓表皮材6との一体化した層が形成される。
このとき、一定幅のFRPシート(強化布に相等する)を用いることができるから、材料の種類を増やすことなく、材料歩留まりが向上すると共に、積層作業が簡単になって成形効率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、船舶、建築材、プラント機器の構造材の他に、圧力容器や化学プラント等、他各種用途に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 第1FRPパネル表皮材
2 第2FRPパネル表皮材
3 第1パネル心材
4 第2パネル心材
5 防撓心材
6 FRP防撓表皮材
6a FRP防撓表皮材
6b FRP防撓表皮材
7 一方向強化層
8 防撓補強層
10 防撓材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の剪断剛性を有する第1パネル心材と、
該第1パネル心材の剪断剛性よりも高い剪断剛性を有する第2パネル心材と、
前記第1パネル心材と前記第2パネル心材とが交互に配置されて形成された板状体の両面に、それぞれ設置された一対のFRPパネル表皮材と、
該一対のFRP表皮材の一方のFRPパネル表皮材の表面で前記第2パネル心材に相当する位置に設置された、断面矩形または断面台形の棒状の防撓心材と、
該防撓心材の表面、および該防撓心材の設置範囲を除く前記一方のFRP表皮材の表面の一部または全部に、設置されたFRP防撓表皮材と、
を有するFRPサンドイッチパネル。
【請求項2】
前記第2パネル心材の幅が、前記防撓心材の幅の1〜4倍であることを特徴とする請求項1記載のFRPサンドイッチパネル。
【請求項3】
前記防撓心材の頂部に、曲げ剛性を高めるための強化層が設けられることを特徴とする請求項1または2記載のFRPサンドイッチパネル。
【請求項4】
前記FRP防撓表皮が複数枚であって、一方の前記FRP防撓表皮と他方の前記FRP防撓表皮とが、前記防撓心材の頂部において重なることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のFRPサンドイッチパネル。
【請求項5】
前記第1パネル心材、前記第2パネル心材および前記防撓心材が木材またはプラスチック材であって、真空補助樹脂含浸されてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のFRPサンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−208180(P2010−208180A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57615(P2009−57615)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】