説明

FRP成形体からなる手摺部品または手摺及びその製造方法

【課題】 加圧式ハンドレイアップ法による低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺とその製造方法を提供すること。
【解決手段】 エルボー管2より一回り小さいPVCパイプから芯材2Aを作製し、ガラス繊維クロス2aを巻き、その上から(硬化剤及び硬化促進剤入り)熱硬化性樹脂2bを全面に塗布し、成形体2Cが所定の太さになるまで繰り返す。上型10Aと下型10Bからなる鋼鉄製の圧縮型10の内面に離型剤を塗布した後、ゲルコート剤を塗布して加熱硬化させておき、成形体2Cを下型10B内に押し込んで上型10Aを被せて、全ての突出部12A,12Bをボルト13・ナット14で止め、成形体2Cの全体を均一に圧縮して積層体2Bを硬化させた後、圧縮型10から完成したエルボー管2を取外す。チーズ管、直管も同様に製造し、これらを組み合わせてFRP成形体からなる手摺が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低価格で美観及び強度に優れたハンドレイアップ法によるFRP(繊維強化プラスティック)成形体からなる管理橋や鉄橋等の橋の手摺や操作台の手摺またはその部品及びその製造方法に関するものである。なお、本明細書・特許請求の範囲・要約書においては、橋等の手摺・欄干・高欄・柵等を含めて「手摺」というものとする。
【背景技術】
【0002】
高強度のFRP成形体の成形方法としては、ガラス繊維クロス等の繊維材料と熱硬化性樹脂とを交互に型に入れながら作業者が塗布ロールで手作業によって積層していくハンドレイアップ法、特許文献1に記載されている繊維マットに樹脂を含浸させながら型と加熱炉の間を通して加熱硬化させていく連続成形法、特許文献2に記載されている金型とプレスを用いて繊維マットを金型に合わせて切ってセットし、その上に樹脂を流して加圧する加熱加圧成形法等、様々な成形法がある。
【0003】
一方、河川等の水路を開閉する水門の扉体が近年FRP成形体で作製されるようになってきている。前記連続成形法では複雑な桁材で補強されている扉体の成形は困難であり、また、設備費が大きくコスト高になってしまう。前記加熱加圧成形法によれば複雑な桁材のついた扉体も成形可能であり、均一な品質の製品が何個も得られるが、水門の扉体は設置される水路の幅や深さによって大きさ、形状が一つ一つ異なる様々なものが要求される。加熱加圧成形法では、1個の扉体を作るのにも1個の高価な金型を用意しなければならず、実質的に実施は不可能である。
【0004】
これに対して、ハンドレイアップ法は型材が安価で成形品の大きさに制限がない。したがって大きさ・形状の異なる様々な水門の扉体の多品種少量生産に適している。そこで本発明者は、特許文献3において、製品強度の点で劣るというハンドレイアップ法の欠点を補うために加熱・加圧式のハンドレイアップ法によるFRP成形体の製造方法について、開示している。この製造方法によるFRP成形体は強度が極めて高いので、様々な長さ・高さ・形状のものがあり強度の要求される橋等の手摺や操作台の手摺にも、加熱・加圧式ハンドレイアップ法によるFRP成形体が応用できるものと考えられる。
【特許文献1】特開平8−25395号公報
【特許文献2】特開2000−176953号公報
【特許文献3】特開2004−42610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常丸パイプや角パイプを組み合わせて製造される手摺においては、上記特許文献3に開示されたようなスキンプレート、桁材、ガセットプレート、戸当り、踏み板のような中実な部材と異なり、高い圧力を掛けるのが容易でない。そこで、これまでは加熱加圧式ハンドレイアップ法によるFRP成形体からなる手摺を製造することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、加熱加圧式ハンドレイアップ法によって、高強度で軽く運搬・施工が容易なFRP成形体からなる手摺及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品は、FRP成形体からなる手摺部品において、前記手摺部品の中空の芯材に、繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返し、また、前記部品用の圧縮型の内面に離型剤を塗布し、前記圧縮型の内面の離型剤の上からゲルコートを塗布して、前記ゲルコートを加熱して硬化させ、前記成形体を前記圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させたものである。
【0008】
請求項2の発明にかかるFRP成形体からなる手摺は、前記請求項1に記載のFRP成形体からなる手摺部品の前記中空の芯材の内径とほぼ同じ外径を有するFRP成形体からなる直管状の接続部材の表面に接着剤を塗布して、接続する前記FRP成形体からなる手摺部品の双方に挿入して接続し、前記手摺の形状に組み立てて、前記接続部を表面処理して覆い隠してなるものである。
【0009】
請求項3の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品またはFRP成形体からなる手摺は、請求項1または請求項2の構成において、前記FRP成形体からなる手摺部品はL字形部品(エルボー管)、T字形部品(チーズ管)、I字形部品(直管)であるものである。
【0010】
請求項4の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品またはFRP成形体からなる手摺は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記中空の芯材は硬質ポリ塩化ビニル製のパイプを加工してなるものである。
【0011】
請求項5の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品は、FRP成形体からなる手摺部品において、高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材を、前記板材を組み合わせてなる正方形の断面の内接円より外径が大きくより長い高強度の材料からなる丸パイプの上に挟むように被せて固定してなる断面略正方形状の内型に離型剤を塗布して、前記内型に繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返し、前記成形体の4面にそれぞれ圧力を加えるための高強度の材料からなる外型の内面に離型剤を塗布して、さらにその上からゲルコートを塗布して加熱して硬化させておき、前記成形体を前記外型の中に入れて前記成形体の4面に圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させて、硬化したFRP成形体を前記内型ごと前記外型から取出して、前記内型を構成する前記丸パイプを抜き出し、前記1対の断面L形状の板材を内側に寄せることによって前記硬化したFRP成形体の内面から離型してなるものである。
【0012】
請求項6の発明にかかるFRP成形体からなる手摺は、前記請求項5に記載のFRP成形体からなる角パイプ形状の手摺部品を接続して前記手摺の形状に形成し、接続部を表面処理して覆い隠してなるものである。
【0013】
請求項7の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法は、手摺の各部を構成する手摺部品の中空の芯材を作製する工程と、前記中空の芯材に繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返す工程と、前記手摺部品用の圧縮型の内面に離型剤を塗布し、前記圧縮型の内面の離型剤の上からゲルコートを塗布して、前記ゲルコートを加熱して硬化させる工程と、前記成形体を前記圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させる工程と、硬化した前記成形体を前記圧縮型から取出す工程とを具備するものである。
【0014】
請求項8の発明にかかるFRP成形体からなる手摺の製造方法は、前記請求項7に記載の手摺の各部を構成するFRP成形体からなる手摺部品の前記中空の芯材の内径とほぼ同じ外径を有するFRP成形体からなる直管状の接続部材を作製する工程と、前記接続部材の表面に接着剤を塗布して、接続する前記FRP成形体からなる手摺部品の双方に挿入して接続し、前記手摺の形状に組み立てる工程と、前記接続部を表面処理して覆い隠す工程とを具備するものである。
【0015】
請求項9の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法またはFRP成形体からなる手摺の製造方法は、請求項7または請求項8の構成において、前記FRP成形体からなる手摺部品はL字形部品(エルボー管)、T字形部品(チーズ管)、I字形部品(直管)であるものである。
【0016】
請求項10の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法またはFRP成形体からなる手摺の製造方法は、請求項7乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記中空の芯材は硬質ポリ塩化ビニル製のパイプを加工してなるものである。
【0017】
請求項11の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法は、高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材を、前記板材を組み合わせてなる正方形の断面の内接円より外径が大きく長い高強度の材料からなる丸パイプの上に挟むように被せて固定して断面略正方形状の内型を構成する工程と、前記1対の断面L形状の板材の外側に離型剤を塗布する工程と、前記内型に繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返す工程と、前記成形体の4面にそれぞれ圧力を加えるための高強度の材料からなる外型の内面に離型剤を塗布して、さらにその上からゲルコートを塗布して加熱して硬化させる工程と、前記成形体を前記外型の中に入れて前記成形体の4面に圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させる工程と、硬化したFRP成形体を前記内型ごと前記外型から取出す工程と、前記硬化したFRP成形体から前記内型を構成する前記丸パイプを抜き出し、前記1対の断面L形状の板材を内側に寄せることによって前記硬化したFRP成形体の内面から離型して抜き出す工程とを具備するものである。
【0018】
請求項12の発明にかかるFRP成形体からなる手摺の製造方法は、前記請求項5または請求項11に記載のFRP成形体からなる角パイプ形状の手摺部品を接続して前記手摺の形状に形成する工程と、接続部を表面処理して覆い隠す工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品は、手摺の各部を構成する部品の中空の芯材を用意して、この中空の芯材に繊維クロス等を巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維クロス等の上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返し、部品用の圧縮型の内面に離型剤を塗布し、圧縮型の内面の離型剤の上からゲルコートを塗布して、ゲルコートを加熱して硬化させ、成形体を圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して成形体を硬化させてなるものである。
【0020】
このように、手摺の各部を構成する部品の中空の芯材に繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)クロス等を巻き付けて熱硬化性樹脂を塗布する手順を繰り返して、ハンドレイアップ法による積層体を芯材の周囲に形成し、圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えながら硬化させることによって、表面がゲルコート層で覆われた強度の高いFRP成形体からなる手摺の各部を構成する部品ができる。
【0021】
なお、中空の芯材は全て手摺中に残ることになるが、プラスティック製のパイプ等の軽くて腐食せず安価な材料から芯材を構成することによって、FRP成形体からなる手摺の特長である軽さを損なうことなく、耐用年数も長く、またコストアップにもならない手摺とすることができる。
【0022】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品となる。
【0023】
請求項2の発明にかかるFRP成形体からなる手摺は、請求項1に記載のFRP成形体からなる手摺部品の中空の芯材の内径とほぼ同じ外径を有するFRP成形体からなる直管状の接続部材の表面に接着剤を塗布して、接続するFRP成形体からなる手摺部品の双方に挿入して接続し、手摺の形状に組み立てて、接続部を表面処理して覆い隠してなるものである。
【0024】
即ち、後は、これらの手摺部品をFRP成形体からなる直管状の接続部材の表面に接着剤を塗布して中空の芯材中に挿入して接続することによって、所定の手摺の形状に組み立てて、部品同士の接続部に表れる線をパテ等を摺り込んで覆い隠し、見栄えを良くすることによって、強度の高いFRP成形体からなる手摺が完成する。
【0025】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺となる。
【0026】
請求項3の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品または手摺は、手摺の各部を構成する部品がL字形部品(エルボー管)、T字形部品(チーズ管)、I字形部品(直管)である。即ち、手摺の両端のコーナー部分にはエルボー管を用い、縦の中仕切りまたは横の中仕切りを構成する部分にはチーズ管を用い、その他の直線部分には直管を用いて手摺を構成するものである。ここで、手摺の高さ及び幅は直管の長さを変化させることによって自由に設定することができる。このように、必要最小限の部品で手摺を構成することによって、圧縮型の種類も必要最小限で済み、コストダウンすることができる。
【0027】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品または手摺となる。
【0028】
請求項4の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品または手摺は、中空の芯材は硬質ポリ塩化ビニル製のパイプを加工してなるものである。硬質ポリ塩化ビニルは、機械的強度、耐薬品性に優れ、パイプを始めとする様々な用途に用いられている汎用プラスティックである。したがって、必要な外径及び厚さのパイプを安価に入手することができ、パイプを切って接着することによってエルボー管やチーズ管を形成することも容易である。さらに、腐食しないため、完成したFRP成形体からなる手摺の中に残されても、手摺の寿命に影響を及ぼすことがない。
【0029】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品または手摺となる。
【0030】
請求項5の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品は、高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材を、板材を組み合わせてなる正方形の断面の内接円より外径が大きくより長い高強度の材料からなる丸パイプの上に挟むように被せて固定してなる断面略正方形状の内型に離型剤を塗布して、内型に繊維クロス等を巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維クロス等の上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返し、成形体の4面にそれぞれ圧力を加えるための高強度の材料からなる外型の内面に離型剤を塗布して、さらにその上からゲルコートを塗布して加熱して硬化させておき、成形体を外型の中に入れて成形体の4面に圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して成形体を硬化させて、硬化したFRP成形体を内型ごと外型から取出して、内型を構成する丸パイプを抜き出し、1対の断面L形状の板材を内側に寄せることによって硬化したFRP成形体の内面から離型してなるものである。
【0031】
手摺の断面形状として、丸パイプでなく角パイプが要求される場合もあり、かかる場合には、例えば請求項4の発明のように硬質ポリ塩化ビニルパイプを中芯とすることは、角パイプの需要が少なく入手が困難で高価であることから、実用的でない。
【0032】
そこで、高強度の材料からなる丸パイプを高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材で挟むようにして固定して、外周の断面形状が略正方形の内型を形成し、断面L形状の板材の外面に離型剤を塗布して繊維クロス等を巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維クロス等の上から塗布ロールによって塗布する手順とを、積層体が所定の厚さになるまで繰返して、高強度の材料からなる外型の内面に離型剤・ゲルコートを塗布してゲルコートを加熱硬化させ、積層体が形成された内型を外型内にセットして積層体の4面から加圧しながら、熱硬化性樹脂を硬化させる。これによって、表面がゲルコート層で覆われた強度の高いFRP成形体からなる角パイプ部品ができる。
【0033】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品となる。
【0034】
請求項6の発明にかかるFRP成形体からなる手摺は、請求項5に記載のFRP成形体からなる角パイプ形状の手摺部品を接続して前記手摺の形状に形成し、接続部を表面処理して覆い隠してなるものである。
【0035】
即ち、強度の高いFRP成形体からなる角パイプ部品を複数個製造し、所定の手摺の形状に組み立てて接着固定すれば、強度の高いFRP成形体からなる手摺となる。接続部はパテ等を摺り込んで見えなくして見栄えを良くする。角パイプ部品は表面が平面であるため、別の角パイプ部品の端面を突き合わせて接着することができ、また長くしたい場合には、請求項2の発明のように一回り小さい短い角パイプ部品を製造して繋ぎ合わせれば良い。
【0036】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺となる。
【0037】
請求項7の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法は、手摺の各部を構成する手摺部品の中空の芯材を作製する工程と、中空の芯材に繊維クロス等を巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維クロス等の上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返す工程と、手摺部品用の圧縮型の内面に離型剤を塗布し、圧縮型の内面の離型剤の上からゲルコートを塗布して、ゲルコートを加熱して硬化させる工程と、成形体を圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して成形体を硬化させる工程と、硬化した成形体を圧縮型から取出す工程とを具備するものである。
【0038】
このように、手摺の各部を構成する部品の中空の芯材に繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)クロス等を巻き付けて熱硬化性樹脂を塗布する手順を繰り返して、ハンドレイアップ法による積層体を芯材の周囲に形成し、圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えながら硬化させることによって、表面がゲルコート層で覆われた強度の高いFRP成形体からなる手摺の各部を構成する部品ができる。
【0039】
なお、中空の芯材は全て手摺部品中に残ることになるが、プラスティック製のパイプ等の軽くて腐食せず安価な材料から芯材を構成することによって、FRP成形体からなる手摺の特長である軽さを損なうことなく、耐用年数も長く、またコストアップにもならない手摺部品の製造方法とすることができる。
【0040】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品の製造方法となる。
【0041】
請求項8の発明にかかるFRP成形体からなる手摺の製造方法は、請求項7に記載の手摺の各部を構成するFRP成形体からなる手摺部品の中空の芯材の内径とほぼ同じ外径を有するFRP成形体からなる直管状の接続部材を作製する工程と、接続部材の表面に接着剤を塗布して、接続するFRP成形体からなる手摺部品の双方に挿入して接続し、手摺の形状に組み立てる工程と、接続部を表面処理して覆い隠す工程とを具備するものである。
【0042】
即ち、これらの部品をFRP成形体からなる直管状の接続部材の表面に接着剤を塗布して中空の芯材中に挿入して接続することによって、所定の手摺の形状に組み立てて、部品同士の接続部に表れる線をパテ等を摺り込んで覆い隠し、見栄えを良くすることによって、強度の高いFRP成形体からなる手摺が製造される。
【0043】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺の製造方法となる。
【0044】
請求項9の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法またはFRP成形体からなる手摺の製造方法は、FRP成形体からなる手摺部品はL字形部品(エルボー管)、T字形部品(チーズ管)、I字形部品(直管)であるものである。即ち、手摺の両端のコーナー部分にはエルボー管を用い、縦の中仕切りまたは横の中仕切りを構成する部分にはチーズ管を用い、その他の直線部分には直管を用いて手摺を製造するものである。ここで、手摺の高さ及び幅は直管の長さを変化させることによって自由に設定することができる。このように、必要最小限の部品で手摺を製造することによって、圧縮型の種類も必要最小限で済み、コストダウンすることができる。
【0045】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品または手摺の製造方法となる。
【0046】
請求項10の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法またはFRP成形体からなる手摺の製造方法は、中空の芯材は硬質ポリ塩化ビニル製のパイプを加工してなるものである。硬質ポリ塩化ビニルは、機械的強度、耐薬品性に優れ、パイプを始めとする様々な用途に用いられている汎用プラスティックである。したがって、必要な外径及び厚さのパイプを安価に入手することができ、パイプを切って接着することによってエルボー管やチーズ管を形成することも容易である。さらに、腐食しないため、完成したFRP成形体からなる手摺の中に残されても、手摺の寿命に影響を及ぼすことがない。
【0047】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品または手摺の製造方法となる。
【0048】
請求項11の発明にかかるFRP成形体からなる手摺部品の製造方法は、高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材を、板材を組み合わせてなる正方形の断面の内接円より外径が大きく長い高強度の材料からなる丸パイプの上に挟むように被せて固定して断面略正方形状の内型を構成する工程と、1対の断面L形状の板材の外側に離型剤を塗布する工程と、内型に繊維クロス等を巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維クロス等の上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返す工程と、成形体の4面にそれぞれ圧力を加えるための高強度の材料からなる外型の内面に離型剤を塗布して、さらにその上からゲルコートを塗布して加熱して硬化させる工程と、成形体を外型の中に入れて成形体の4面に圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して成形体を硬化させる工程と、硬化したFRP成形体を内型ごと外型から取出す工程と、硬化したFRP成形体から内型を構成する丸パイプを抜き出し、1対の断面L形状の板材を内側に寄せることによって硬化したFRP成形体の内面から離型して抜き出す工程とを具備するものである。
【0049】
手摺の断面形状として、丸パイプでなく角パイプが要求される場合もあり、かかる場合には、例えば請求項10の発明のように硬質ポリ塩化ビニルパイプを中芯とすることは、角パイプの需要が少なく入手が困難で高価であることから、実用的でない。
【0050】
そこで、高強度の材料からなる丸パイプを高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材で挟むようにして固定して、外周の断面形状が略正方形の内型を形成し、断面L形状の板材の外面に離型剤を塗布して繊維クロス等を巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維クロス等の上から塗布ロールによって塗布する手順とを、積層体が所定の厚さになるまで繰返して、高強度の材料からなる外型の内面に離型剤・ゲルコートを塗布してゲルコートを加熱硬化させ、積層体が形成された内型を外型内にセットして積層体の4面から加圧しながら、熱硬化性樹脂を硬化させる。これによって、表面がゲルコート層で覆われた強度の高いFRP成形体からなる角パイプ部品が製造できる。
【0051】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺部品の製造方法となる。
【0052】
請求項12の発明にかかるFRP成形体からなる手摺の製造方法は、FRP成形体からなる角パイプ形状の手摺部品を接続して手摺の形状に形成する工程と、接続部を表面処理して覆い隠す工程とを具備するものである。即ち、強度の高いFRP成形体からなる角パイプ部品を複数個製造し、所定の手摺の形状に組み立てて接着固定すれば、強度の高いFRP成形体からなる手摺が製造できる。接続部はパテ等を摺り込んで見えなくして見栄えを良くする。角パイプ部品は表面が平面であるため、別の角パイプ部品の端面を突き合わせて接着することができ、また長くしたい場合には、請求項8の発明のように一回り小さい短い角パイプ部品を製造して繋ぎ合わせれば良い。
【0053】
このようにして、加熱加圧式ハンドレイアップ法による、低コストで耐候性が高く高強度で軽く運搬・施工が容易で耐用年数も長いFRP成形体からなる手摺の製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0055】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺部品及び手摺及びその製造方法について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0056】
図1は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺の全体構成を示す正面図である。図2(a),(b),(c),(d)は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺のL字形部品(エルボー管)の製造方法を示す説明図である。図3(a),(b),(c)は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺のT字形部品(チーズ管)の製造方法を示す説明図である。図4(a),(b)は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺のL字形部品とT字形部品の接続方法を示す説明図である。
【0057】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺1は、中空の断面円筒形のL字形部品(エルボー管)2、T字形部品(チーズ管)3、I字形部品(直管)4,5を破線で示される接続部6で繋ぎ合わせて、接続部6の凹部をパテで埋めて見えないようにしたものである。手摺1の幅は、直管4の長さを長くするとともに中間の2本の横棒を形成している各1対のチーズ管3の間に直管を挟むことによって、自由に長くすることができる。
【0058】
次に、各部品の製造方法について説明する。まず、L字形部品(エルボー管)2の製造方法について、図2を参照して説明する。図2(a)に示されるように、エルボー管2の外径より一回り小さい硬質ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」ともいう。)のパイプを斜めに切ったものを2本直角に繋ぎ合わせて、エルボー管2より一回り小さいエルボー管2の芯材2Aとする。このPVC製芯材2A全体にガラス繊維クロス(ロービングクロス)2aを巻き、その上から(硬化剤及び硬化促進剤入り)熱硬化性樹脂2bを全面に塗布し、さらにその上からまたガラス繊維クロス2aを巻き、その上から熱硬化性樹脂2bを全面に塗布し、これを成形体2Cが所定の太さになるまで繰り返す。
【0059】
本実施の形態1においては、熱硬化性樹脂2bとして不飽和ポリエステル樹脂を用いているが、エポキシ樹脂を始めとして他の熱硬化性樹脂を用いることもできる。また、図2(a)はガラス繊維クロス2aと熱硬化性樹脂2bを交互に積層していく様子を示すためにずらして図示したものであり、実際にはPVC製芯材2A全体にガラス繊維クロス2aと熱硬化性樹脂2bが交互に積層されて、積層体2Bが形成される。
【0060】
この作業とは別に、図2(b)に示されるように上型10Aと下型10Bからなる鋼鉄製の圧縮型10の用意をする。上型10A及び下型10Bは、エルボー管2の外径と同じ内径を有する上型本体11A及び下型本体11Bに、ボルトを通してナットで締め付けるための貫通孔を有する複数の突出部12A,12Bを溶接してなるものである。これら上型10A及び下型10Bの内面に離型剤を塗布した後、ゲルコート剤を塗布して加熱硬化させておく。
【0061】
そして、想像線で示されるように、成形体2Cを下型10B内に押し込んで、図2(c)に示されるように上型10Aを被せて、全ての突出部12A,12Bにボルト13を通してナット14で止め、内部の成形体2Cの全体が均一に圧縮されるように、全てのボルト13・ナット14を少しずつ締め付けて、上型10Aと下型10Bがぴったり合わさるようにする。この状態で、圧縮型10ごと内部の成形体2Cを加熱する。加熱には、ジェットヒータの熱風を当てても良いし、専用の加熱ケースに入れてより高温(約140℃まで)に加熱しても良い。また、急がない場合には、特に加熱せず一晩常温で放置しておいても、熱硬化性樹脂2bには硬化剤及び硬化促進剤が混入されているため、成形体2Cの積層体2Bは完全に硬化する。
【0062】
このようにして、高温あるいは常温で積層体2Bを硬化させた後、全てのボルト13・ナット14を外して、上型10A及び下型10Bから完成したエルボー管2を取外す。上型10A及び下型10Bの内面には離型剤が塗布されているため、スムーズに離型することができる。こうして、図2(d)に示されるように表面をゲルコート被膜で覆われたFRP成形体からなる表面が非常に平滑なエルボー管2が得られる。なお、PVC製芯材2Aはエルボー管2の中に残ることになるが、PVC製芯材2Aは極めて軽量なのでFRP成形体の軽いという特長を損ねることはなく、また安価なのでコストアップにもならない。そして、エルボー管2の強度は硬化した積層体2Bによるので、PVC製芯材2Aと積層体2Bが密着していなくても全く問題はない。
【0063】
次に、T字形部品(チーズ管)3の製造方法について、図3を参照して説明する。図3(a)に示されるように、チーズ管3の外径より一回り小さいPVCパイプを2本T字形に繋ぎ合わせて、チーズ管3より一回り小さいチーズ管3の芯材3Aとする。このPVC製芯材3A全体にガラス繊維クロス3aを巻き、その上から(硬化剤及び硬化促進剤入り)熱硬化性樹脂3bを全面に塗布し、さらにその上からまたガラス繊維クロス3aを巻き、その上から熱硬化性樹脂3bを全面に塗布し、これを成形体3Cが所定の太さになるまで繰り返す。
【0064】
ここでも、熱硬化性樹脂3bとして不飽和ポリエステル樹脂を用いているが、エポキシ樹脂を始めとして他の熱硬化性樹脂を用いることもできる。また、図3(a)はガラス繊維クロス3aと熱硬化性樹脂3bを交互に積層していく様子を示すためにずらして図示したものであり、実際にはPVC製芯材3A全体にガラス繊維クロス3aと熱硬化性樹脂3bが交互に積層されて、積層体3Bが形成される。
【0065】
この作業とは別に、図3(b)に示されるように上型15Aと下型15Bからなる鋼鉄製の圧縮型15の用意をする。上型15A及び下型15Bは、チーズ管3の外径と同じ内径を有する上型本体16A及び下型本体16Bに、ボルトを通してナットで締め付けるための貫通孔を有する複数の突出部12A,12Bを溶接してなるものである。これら上型15A及び下型15Bの内面に離型剤を塗布した後、ゲルコート剤を塗布して加熱硬化させておく。
【0066】
そして、想像線で示されるように、成形体3Cを下型15B内に押し込んで、上型15Aを被せて、全ての突出部12A,12Bにボルト13を通してナット14で止め、内部の成形体3Cの全体が均一に圧縮されるように、全てのボルト13・ナット14を少しずつ締め付けて、上型15Aと下型15Bがぴったり合わさるように固定する。この状態で、圧縮型15ごと内部の成形体3Cを加熱し、若しくは常温で長時間放置して積層体3Bを完全に硬化させる。
【0067】
このようにして、高温あるいは常温で積層体3Bを硬化させた後、全てのボルト13・ナット14を外して、上型15A及び下型15Bから完成したチーズ管3を取外す。上型15A及び下型15Bの内面には離型剤が塗布されているため、スムーズに離型することができる。こうして、図3(c)に示されるように表面をゲルコート被膜で覆われたFRP成形体からなる表面が非常に平滑なチーズ管3が得られる。なお、PVC製芯材3Aはチーズ管3の中に残ることになるが、PVC製芯材3Aは極めて軽量なのでFRP成形体の軽いという特長を損ねることはなく、また安価なのでコストアップにもならない。そして、チーズ管3の強度は硬化した積層体3Bによるので、PVC製芯材3Aと積層体3Bが密着していなくても全く問題はない。
【0068】
同様にして、直管4,5も一回り小さいPVCパイプを所定の長さに切って芯材とし、芯材全体にガラス繊維クロスと熱硬化性樹脂を交互に積層して積層体を形成し、一方、直管4,5の外径と同じ内径を有する上型本体及び下型本体に、ボルトを通してナットで締め付けるための貫通孔を有する複数の突出部を溶接してなる上型及び下型の内面に離型剤を塗布した後、ゲルコート剤を塗布して加熱硬化させる。そして、成形体を下型に押し込んで上型を被せ、全ての突出部にボルトを通してナットで止め、内部の成形体の全体が均一に圧縮されるように、全てのボルト・ナットを少しずつ締め付けて、上型と下型がぴったり合わさるように固定する。この状態で、圧縮型ごと内部の成形体を加熱し、若しくは常温で長時間放置して積層体を完全に硬化させる。
【0069】
このようにして、高温あるいは常温で積層体を硬化させた後、全てのボルト・ナットを外して、上型及び下型から完成した直管4,5を取外す。上型及び下型の内面には離型剤が塗布されているため、スムーズに離型することができる。こうして、表面をゲルコート被膜で覆われた表面が非常に平滑なFRP成形体からなる直管4,5が得られる。
【0070】
このようにして、手摺1の部品となるFRP成形体からなるエルボー管2、チーズ管3、直管4,5が製造される。次に、これらの部品を接続する方法について、エルボー管2とチーズ管3との接続を例として、図4を参照して説明する。
【0071】
まず、図4(a)に示されるように、エルボー管2とチーズ管3を接続するための接続部材9を作製する。この接続部材9もFRP成形体からなる直管であるが、上述したエルボー管2、チーズ管3、直管4,5と異なるのは、圧縮型によって圧縮されていないことである。即ち、接続部材9より一回り小さいPVCパイプにガラス繊維クロスと熱硬化性樹脂を交互に積層して積層体を形成し、それをそのまま硬化させたものである。これによって、接続部材9の表面は上述したエルボー管2、チーズ管3、直管4,5のように平滑にはならず、凹凸が生ずるため、接続力を大きくする抵抗が働く。
【0072】
かかる接続部材9の表面に接着剤を塗布して、エルボー管2の内孔(即ち、PVC製芯材2Aの内孔)及びチーズ管3の内孔(即ち、PVC製芯材3Aの内孔)に挿入し、エルボー管2の端面2Dとチーズ管3の端面3Dを密着させる。ここで、エルボー管2の端面2D及びチーズ管3の端面3Dにも接着剤を塗布しておく。こうして、図4(b)に示されるように、接続部6においてエルボー管2とチーズ管3が接続される。なお、上述したように、この接続部6にはパテを埋め込んで見えないようにして、意匠性を向上させる。
【0073】
他のエルボー管2、チーズ管3、直管4,5の接続部6も同様にして接続部材9を用いて接続することによって、図1に示される手摺1が完成する。
【0074】
このようにして、圧縮型10,15を用いて成形体2C,3C(積層体2B,3B)を圧縮することによって、所定の強度と意匠的に優れた平滑な外観を有するエルボー管2、チーズ管3、直管4,5を作製することができ、これらを接続することによって所定の強度と意匠的に優れた平滑な外観を有するFRP成形体からなる手摺1を製造することができる。
【0075】
本実施の形態1においては、中空の芯材として硬質ポリ塩化ビニル製パイプを加工したものを用いた例について説明したが、他のある程度強度のあるプラスティック製のパイプ等を用いても良い。
【0076】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺部品及び手摺及びその製造方法について、図5乃至図9を参照して説明する。
【0077】
図5は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺の全体構成を示す斜視図である。図6(a)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺を製造するための内型の構造を示す正面図、(b)は斜視図である。図7(a)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺の製造工程を示す正面図、(b)は斜視図である。図8(a)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺を製造するための外型の構造を示す正面図、(b)は斜視図である。図9(a),(b),(c)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺を製造するための内型を示すFRP成形体から抜き取る手順を示す説明図である。
【0078】
図5に示されるように、使用場所や施工者の好みによって、実施の形態1で説明したような丸パイプで構成される手摺1ではなく、角パイプで構成される手摺20が要求される場合もある。しかしながら、硬質ポリ塩化ビニル(PVC)の角パイプは、余り用途がないため入手することが困難であり、実施の形態1で説明したような製造方法は実用的でない。そこで、本実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺20の製造方法においては、図5に示されるように、FRP成形体からなる角パイプ21を別の方法で製造して、これらの角パイプ21を接続部24で繋ぎ合わせて、さらに補強のために下部をFRP製のアングル22で支持して、また補強と装飾を兼ねたFRP成形体からなる丸パイプ23を取付けることによって、FRP成形体からなる手摺20を製造している。
【0079】
これらのFRP成形体からなる角パイプ21の製造方法について、図6乃至図9を参照して説明する。角パイプ21は、FRP成形体から抜き取り可能な内型及び外型を用いて形成される。図6に示される角パイプ21の内型25は、鋼鉄製の丸パイプ27とその外側に固定される1対のL形鋼板26と、これらを固定する2組のボルト28・ナット29によって構成されている。丸パイプ27の外径とL形鋼板26の厚さは、丸パイプ27の外側にL形鋼板26を密着させて固定したときに、L形鋼板26の外面が角パイプ21の内部寸法になるように設定されている。
【0080】
なお、鋼鉄製の丸パイプ27は、1対のL形鋼板26を組み合わせてできる正方形の断面の内接円の直径よりも大きい外径を有している。これによって、丸パイプ27を引き抜いたときに、1対のL形鋼板26の間に隙間ができ、FRP成形体からなる角パイプ21の内面から離型させることができて、かつ1対のL形鋼板26を角パイプ21から容易に引き抜くことができる。
【0081】
1対のL形鋼板26の両端近傍には貫通孔が穿設されており、これらと対応する鋼鉄製の丸パイプ27の2箇所にも丸パイプ27を貫通する貫通孔が穿設されていて、これらの貫通孔の位置を合わせて図6(b)に示されるようにボルト28を差し込み、ナット29で締め付けることによって、図6(a)に示されるように内型25が組み立てられる。
【0082】
次に、図7に示されるように、この内型25を芯としてFRPの積層が行われる。即ち、内型25のL形鋼板26の表面に離型剤を塗布して、まずガラス繊維クロス(ロービングクロス)を巻き、その上から(硬化剤及び硬化促進剤入り)熱硬化性樹脂を全面に塗布し、さらにその上からまたガラス繊維クロスを巻き、その上から熱硬化性樹脂を全面に塗布し、これを所定回数、即ち積層体21Aに所定枚数のロービングクロスが巻き付けられるまで繰り返す。
【0083】
一方、図8に示される外型30の用意をしておく。この外型30は、鋼鉄製の定盤31に3つの支持枠32が固定されて、それぞれの支持枠32に各1個の上部押圧ロッド33と各1対の側部押圧ロッド34が設けられている。これらの上部押圧ロッド33及び側部押圧ロッド34は、右回り(時計回り)に回すことによって前進して側面のコの字形プレート35及び上面の上部プレート36に押圧力を加える。これらのコの字形プレート35の内側面、上部プレート36の下面、及び上部プレート36の下方に当る定盤31の表面に離型剤を塗布した後、その上からゲルコートを塗布して、定盤31に内蔵された加熱ヒータで加熱して硬化させておく。
【0084】
そして、図7に示される積層体21Aが形成された内型25を、図8に想像線で示されるように、1対のコの字形プレート35と上部プレート36の間の定盤31上に載置し、定盤31に内蔵された加熱ヒータで徐々に加熱しながら、上部押圧ロッド33及び側部押圧ロッド34を右回り(時計回り)に回してコの字形プレート35及び上部プレート36に押圧力を加えることによって、積層体21Aを加圧する。所定時間、所定の圧力と温度を積層体21Aに加えたら、外型30を放冷して、積層体21Aの温度がある程度まで下がったら、上部押圧ロッド33及び側部押圧ロッド34を左回り(反時計回り)に回して押圧力を解除し、積層体21Aとともに内型25を定盤31から降ろしてさらに放冷する。
【0085】
積層体21A(完成した角パイプ21)がほぼ常温まで冷えたら、図9(a)に示されるように、まず2組のボルト28・ナット29をはずして、次に図9(b)に示されるように、鋼鉄製の丸パイプ27を引き抜く。これによって、1対のL形鋼板26の間に隙間ができるので1対のL形鋼板26を角パイプ21の内壁から離すことができ、図9(c)に示されるように、1対のL形鋼板26を角パイプ21の中から引き抜くことができる。このようにして、FRP成形体からなる角パイプ21が完成し、複数の角パイプ21を組み合わせることによって、図5に示されるような手摺20を製造することができる。
【0086】
角パイプ21は表面が平面であるため、別の角パイプ21の端面を突き合わせて強力に接着することができ、また長くしたい場合には、一回り小さい短いFRP成形体からなる角パイプを製造して繋ぎ合わせれば良い。
【0087】
本実施の形態2においては、高強度の材料として鋼鉄を用いたが、ステンレス鋼やその他の金属、アルミナ・窒化ケイ素・炭化ケイ素等の高強度セラミックス、等を用いることもできる。
【0088】
上記各実施の形態においては、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を用いた場合について説明したが、エポキシ樹脂を始めとして他の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0089】
また、上記各実施の形態においては、繊維としてガラス繊維クロスを用いた例について説明したが、ガラス繊維マット、ガラス繊維ヤーン、ガラス繊維フレーク等を共に、或いは代わりに用いることもでき、またガラス繊維に限られず、炭素繊維や、ガラス繊維と炭素繊維を交互に用いたり、ガラス繊維と炭素繊維を混合して用いたりしても良い。
【0090】
本発明を実施するに際しては、FRP成形体からなる手摺のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、またFRP成形体からなる手摺の製造方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺の全体構成を示す正面図である。
【図2】図2(a),(b),(c),(d)は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺のL字形部品(エルボー管)の製造方法を示す説明図である。
【図3】図3(a),(b),(c)は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺のT字形部品(チーズ管)の製造方法を示す説明図である。
【図4】図4(a),(b)は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体からなる手摺のL字形部品とT字形部品の接続方法を示す説明図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺の全体構成を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺を製造するための内型の構造を示す正面図、(b)は斜視図である。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺の製造工程を示す正面図、(b)は斜視図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺を製造するための外型の構造を示す正面図、(b)は斜視図である。
【図9】図9(a),(b),(c)は本発明の実施の形態2にかかるFRP成形体からなる手摺を製造するための内型を示すFRP成形体から抜き取る手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0092】
1,20 手摺
2 L字形部品
2A,3A 芯材
2B,3B,21A 積層体
2C,3C 成形体
3 T字形部品
4,5 I字形部品
6,24 接続部
9 接続部材
10,15 圧縮型
21 角パイプ
25 内型
26 L形鋼板
27 丸パイプ
30 外型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRP成形体からなる手摺部品において、
前記手摺部品の中空の芯材に、繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返し、また、前記部品用の圧縮型の内面に離型剤を塗布し、前記圧縮型の内面の離型剤の上からゲルコートを塗布して、前記ゲルコートを加熱して硬化させ、前記成形体を前記圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させたことを特徴とするFRP成形体からなる手摺部品。
【請求項2】
前記請求項1に記載のFRP成形体からなる手摺部品の前記中空の芯材の内径とほぼ同じ外径を有するFRP成形体からなる直管状の接続部材の表面に接着剤を塗布して、接続する前記FRP成形体からなる手摺部品の双方に挿入して接続し、前記手摺の形状に組み立てて、前記接続部を表面処理して覆い隠してなることを特徴とするFRP成形体からなる手摺。
【請求項3】
前記FRP成形体からなる手摺部品はL字形部品(エルボー管)、T字形部品(チーズ管)、I字形部品(直管)であることを特徴とする請求項1に記載のFRP成形体からなる手摺部品または請求項2に記載のFRP成形体からなる手摺。
【請求項4】
前記中空の芯材は硬質ポリ塩化ビニル製のパイプを加工してなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のFRP成形体からなる手摺部品またはFRP成形体からなる手摺。
【請求項5】
FRP成形体からなる手摺部品において、
高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材を、前記板材を組み合わせてなる正方形の断面の内接円より外径が大きくより長い高強度の材料からなる丸パイプの上に挟むように被せて固定してなる断面略正方形状の内型に離型剤を塗布して、前記内型に繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返し、前記成形体の4面にそれぞれ圧力を加えるための高強度の材料からなる外型の内面に離型剤を塗布して、さらにその上からゲルコートを塗布して加熱して硬化させておき、前記成形体を前記外型の中に入れて前記成形体の4面に圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させて、硬化したFRP成形体を前記内型ごと前記外型から取出して、前記内型を構成する前記丸パイプを抜き出し、前記1対の断面L形状の板材を内側に寄せることによって前記硬化したFRP成形体の内面から離型してなることを特徴とするFRP成形体からなる手摺部品。
【請求項6】
前記請求項5に記載のFRP成形体からなる角パイプ形状の手摺部品を接続して前記手摺の形状に形成し、接続部を表面処理して覆い隠してなることを特徴とするFRP成形体からなる手摺。
【請求項7】
手摺の各部を構成する手摺部品の中空の芯材を作製する工程と、
前記中空の芯材に繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返す工程と、
前記手摺部品用の圧縮型の内面に離型剤を塗布し、前記圧縮型の内面の離型剤の上からゲルコートを塗布して、前記ゲルコートを加熱して硬化させる工程と、
前記成形体を前記圧縮型に押し込んで周囲から圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させる工程と、
硬化した前記成形体を前記圧縮型から取出す工程と
を具備することを特徴とするFRP成形体からなる手摺部品の製造方法。
【請求項8】
前記請求項7に記載の手摺の各部を構成するFRP成形体からなる手摺部品の前記中空の芯材の内径とほぼ同じ外径を有するFRP成形体からなる直管状の接続部材を作製する工程と、
前記接続部材の表面に接着剤を塗布して、接続する前記FRP成形体からなる手摺部品の双方に挿入して接続し、前記手摺の形状に組み立てる工程と、
前記接続部を表面処理して覆い隠す工程と
を具備することを特徴とするFRP成形体からなる手摺の製造方法。
【請求項9】
前記FRP成形体からなる手摺部品はL字形部品(エルボー管)、T字形部品(チーズ管)、I字形部品(直管)であることを特徴とする請求項7に記載のFRP成形体からなる手摺部品の製造方法または請求項8に記載のFRP成形体からなる手摺の製造方法。
【請求項10】
前記中空の芯材は硬質ポリ塩化ビニル製のパイプを加工してなるものであることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1つに記載のFRP成形体からなる手摺部品の製造方法またはFRP成形体からなる手摺の製造方法。
【請求項11】
高強度の材料からなる1対の断面L形状の板材を、前記板材を組み合わせてなる正方形の断面の内接円より外径が大きく長い高強度の材料からなる丸パイプの上に挟むように被せて固定して断面略正方形状の内型を構成する工程と、
前記1対の断面L形状の板材の外側に離型剤を塗布する工程と、
前記内型に繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークを巻き付ける手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維クロス及び/または繊維マット及び/または繊維ヤーン及び/または繊維フレークの上から塗布ロールによって塗布する手順とを成形体が所定の太さになるまで繰り返す工程と、
前記成形体の4面にそれぞれ圧力を加えるための高強度の材料からなる外型の内面に離型剤を塗布して、さらにその上からゲルコートを塗布して加熱して硬化させる工程と、
前記成形体を前記外型の中に入れて前記成形体の4面に圧力を加えた状態で常温以上の温度で加熱して前記成形体を硬化させる工程と、
硬化したFRP成形体を前記内型ごと前記外型から取出す工程と、
前記硬化したFRP成形体から前記内型を構成する前記丸パイプを抜き出し、前記1対の断面L形状の板材を内側に寄せることによって前記硬化したFRP成形体の内面から離型して抜き出す工程と
を具備することを特徴とするFRP成形体からなる手摺部品の製造方法。
【請求項12】
前記請求項5または請求項11に記載のFRP成形体からなる角パイプ形状の手摺部品を接続して前記手摺の形状に形成する工程と、
接続部を表面処理して覆い隠す工程と
を具備することを特徴とするFRP成形体からなる手摺の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−124971(P2006−124971A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312009(P2004−312009)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(397056112)株式会社ヒビ (5)
【Fターム(参考)】