説明

FRP構造体、並びにFRP構造体の製造装置及び製造方法

【課題】FRPを用いる構造体は、ガソリンスタンドの地下油タンクや消防用の地下水槽などの構造物に利用されているが、剛性や外圧座屈強さが要求される。他方、FRP、熱可塑性プラスチック等からなる樹脂成形物の廃材を有効活用すべきとする要請が高まっている。廃FRPを有効利用しつつ、安価で高剛性のFRP構造体を得ることを目的とする。
【解決手段】FRP構造体1において、外側強化層4と内側強化層2との間の中間層3とを備えるサンドイッチ構造11とし、このサンイッチ構造では、外側強化層4により構造体1に必要な剛性、引張応力、曲げ応力等を確保し、複数の樹脂層を備える中間層により構造体に必要な圧縮・せん断強さを確保する。中間層内の樹脂層は、50重量%以上の高含有率で樹脂成形物(FRP廃材、熱可塑性プラスチック廃材など)の粉砕物又は粉体が配合され、必要な圧縮・せん断強度を有する構造を維持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外強化層間の中間層が、樹脂成形物の粉砕物及び粉体が50重量%以上の高含有率で配合されて形成された樹脂層から成るサンドイッチ構造の繊維強化プラスチック(FRP)構造体、並びにその製造方法及び製造装置に関する。このFRP構造体の中間層は、例えばFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材から形成することができ、廃材再利用に好適である。
【0002】
尚、本発明に係るFRP構造体の形状は、円筒形に限定されず、平板、曲面板などでも構わない。また、本発明に係るFRP構造体は高剛性を要求される用途に好適であり、FRP製地下タンク又はそれを構成する部材などに活用できるが、これに限定されない。また、「構造体」とは、有形の物体を広く意味する。
【背景技術】
【0003】
サンドイッチ構造のFRP構造体は一般によく知られているが、内側及び外側の強化層の間に配置する中間層を、樹脂モルタルで形成した例として、特公平4−163148号(文献1)がある。文献1には、(1)上下層の樹脂モルタル層を挟んでプラスチック強化帯状体からなる中間強化層を形成し、これにより強度を高めること、(2)FRP構造体の形成過程で、複数回にわたり、特に中間強化層を形成するたびに硬化炉で熱処理すること、が開示されている。
【0004】
尚、樹脂モルタルとは、文献1の定義によれば、砂粒に液状樹脂を配合して混練したものであるが、文献1と同一出願人による特開2001−260129号(文献2)や特開2002−273798号(文献3)によれば、より厳密に、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に珪砂等の骨材、顔料、硬化剤、内部離型剤等の添加剤、充填剤を加えて均一に分散するように混練したものと定義されている。従って、文献1におけるFRP構造体を製造するためには、(3)樹脂モルタルを製造するための混練作業が必要であることが分かる。
【0005】
また、FRP、特にFRP廃材を含有する樹脂成形物の粉砕物や粉体などをFRP構造体に再利用する又は廃棄される量を減少させる試みも増えている。例えば、文献2では樹脂成形物の粉砕物や粉体を、また文献3ではセルロースフィルム破砕物を、それぞれ樹脂モルタルに混入している。また、特開2002−160326号(文献4)では、FRPの充填剤として樹脂成形物の研削粉又は切断粉を用いている。
【0006】
文献2から文献4に開示されているFRP構造体の製造方法は、(a)FRPと樹脂モルタルを積層する過程で、複数回にわたり熱硬化処理を行う点、(b)骨材、顔料、硬化剤、添加剤、充填剤を加えて均一に分散するように混練することで樹脂モルタルを製造する作業が必要である点において文献1のそれと共通する。
【0007】
【特許文献1】特公平4−163148号公報
【特許文献2】特開2001−260129号公報
【特許文献3】特開2002−273798号公報
【特許文献4】特開2002−160326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
文献2では、“この粉砕物又は粉末を樹脂モルタル層に混入する割合は、樹脂モルタル層に対して、1〜20%重量%がよく、20重量%をより多いと、樹脂モルタル等に均一に拡散しない場合や、後の硬化工程で硬化が不十分になる場合がある”と記載されており、実施例においても1〜20重量%の混入割合しか開示されていない。文献2には、“樹脂モルタルの骨材として珪砂の代わりに用いられる”場合もある旨記載されているが、樹脂モルタルの骨材として珪砂の代わりに樹脂成形物の粉砕物又は粉末を用いたものは、もはや樹脂モルタルとは言わないし、文献2の実施例に記載の珪砂の重量%を考慮すると、50重量%超の含有率で樹脂モルタルに混入することを意味しており、20重量%超を否定している文献2自体に矛盾する。よって、文献2には、FRPの粉砕物又は粉末を20重量%超の含有率で樹脂モルタル層に混入する技術的事項とは無関係であると考えるのが妥当である。
【0009】
文献3では、“セルロースフィルム破砕物を樹脂モルタル層に混入する割合は、樹脂モルタル層に対して、1〜20%重量%がよく、20重量%をより多いと、樹脂モルタル等に均一に拡散しない場合や、FRP複合成形体又はFRP成形体の物性の悪化に繋がる場合がある”と記載されており、実施例においても20重量%未満の混入割合しか開示されていない。文献3には、“樹脂モルタルの骨材として珪砂の代わりに用いられる”場合もある旨記載されているが、樹脂モルタルの骨材として珪砂の代わりに樹脂成形物の粉砕物又は粉末を用いたものは、もはや樹脂モルタルとは言わないし、文献3の実施例に記載の珪砂の重量%を考慮すると、60重量%超の含有率で樹脂モルタルに混入することを意味しており、20重量%超を否定している文献3自体に矛盾する。よって、文献3には、セルロースフィルム破砕物を20重量%超の含有率で樹脂モルタル層に混入する技術的事項とは無関係であると考えるのが妥当である。
【0010】
文献4では、不飽和ポリエステル樹脂との熱硬化性樹脂と充填剤の混合物をガラス繊維に含浸させたFRPと、樹脂モルタルとを積層してFRP複合成形体を構成している。ここで、“FRPの充填剤として樹脂成形物の研削粉又は切断粉を使用する場合、FRPを構成する熱硬化性樹脂に対して1〜50重量%がよく、50重量%より多いと、FRPに均一に拡散しない場合や、後の硬化工程で硬化が不十分になる場合がある”と記載されている。樹脂成形物の研削粉又は切断粉を使用するのが樹脂モルタル層ではなく、強化層であるFRP層である点が文献2及び3とは異なる。また、FRPに対する重量%ではなく、熱硬化性樹脂に対する重量%であるので、“熱硬化性樹脂に対して1〜50重量%”ということは、FRP層に対して50重量%をかなり下回ることは必定である。
【0011】
結局、文献2から文献4を通じて、FRP構造体を構成する層に対して50重量%以上の高い含有率でFRP(特にFRP廃材)の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配合し形成されたものについて開示はなく、むしろ技術的には否定的な記載がなされている。よって、これらの文献に開示されている技術的思想による場合、FRP構造体を構成する層に対して50重量%以上の高い含有率でFRPの樹脂成形物の粉砕物又は粉体を混入して形成することは不可能であり、特に、より多くのFRP廃材を再利用する又はFRP廃材の廃棄量をより減少させることはできない。
【0012】
尚、文献1には、中間層である樹脂モルタル層に中間強化層を設けてFRP構造体の強度を高めるという技術的思想は開示されているが、そもそも、FRP構造体を構成する層に対してFRP(特にFRP廃材)の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配合することとは無関係である。
【0013】
更に、文献1から文献4に開示されているFRP構造体を製造する際には、樹脂モルタル層やFRP層を構成する原料ともいえる混合物を製造するための混練作業が不可欠となる。混練は、成形に先立って樹脂、硬化剤、充填材、増量材などを攪拌し均一に混ぜ合わせることを目的としている。混練が不適当な場合、たとえば樹脂や硬化剤の粘度の設定如何では攪拌が不十分となり均一化できない場合には、未硬化が起こり易くなる。この未硬化の問題は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配合したうえで混練を行う必要がある場合には特に顕在化し易い。配合物の追加により、混練による均一化が難しくなるためである。それ故、文献2から文献4では、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の混入割合に上限を設けている。しかし、このままでは、FRP(特にFRP廃材)の樹脂成形物の粉砕物又は粉体をより多く配合することはできない。
【0014】
また、混練から成形までの工程はバッチ処理であり、混練から成形までの時間を短く、一定にすることは容易ではない。そこで、成形前においては樹脂が常温で硬化する時間を相対的に長くし、成形後においては硬化炉で熱処理を施すことにより短時間で硬化させるようにして混練から成形までの時間を極力調整可能なものにしている。これが文献1から文献4に開示されたFRP構造体の製造技術において、複数回の成形の過程で、成形を行うたびに硬化炉により急速に熱硬化させる理由の一つである。この結果、複数個の硬化炉が必要になり、その分製造工程や製造装置が複雑化するに至っている。この意味から、混練工程や熱処理工程を極力少なくすることが可能なFRP構造体の製造技術が望まれてている。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、FRP(特にFRP廃材)の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を高含有率で配合されて形成されるFRP構造体を提供し、このFRP構造体を実現するために好適な、複雑さを排した製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様に係るFRP構造体は、外側強化層と内側強化層と、外側強化層と内側強化層の間に配置する中間層とを備えるサンドイッチ構造を備えるFRP構造体であって、当該中間層は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成される樹脂層であるものである。
【0017】
尚、本発明の第1の態様における「サンドイッチ構造」とは、内外側強化層により中間層が、本発明が予定する作用効果を奏する程度に強固に挟み込まれた状態にある構造を意味する。
【0018】
また、「50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成される樹脂層」とは、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の重量を分子とし、対象となる樹脂層を形成する物質の重量の総和を分母とし、この分数に100を掛けた値が、50以上になるものを意味している。この場合、樹脂成形物の粉砕物又は粉体及び樹脂と硬化剤以外のもの(例えば添加剤や樹脂テープ)の重量は相当小さい。それ故、対象となる樹脂層を形成するために配合される樹脂成形物の粉砕物又は粉体の重量%は、その樹脂層において、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の重量を分子とし、樹脂成形物の粉砕物又は粉体及び樹脂と硬化剤の各重量の総和を分母とし、この分数に100を掛けた値に近似できる。本発明においては、この近似値をもって樹脂成形物の粉砕物又は粉体の「50重量%以上」を規定している。
【0019】
本発明の第2の態様に係るFRP構造体は、一つ又は複数の樹脂層を備え、少なくとも一つの樹脂層は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成され、更に樹脂テープで覆われて配置しているものである。
【0020】
本発明の第3の態様に係るFRP構造体は、外側強化層と内側強化層と、外側強化層と内側強化層の間に配置する中間層とを備えるサンドイッチ構造を備えるFRP構造体であって、当該中間層はその厚み方向において一つ又は複数の樹脂層を備え、少なくとも一つの樹脂層は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成され、更に樹脂テープで覆われて前記中間層内に配置しているものである。
【0021】
尚、本発明の第2及び第3の態様における「サンドイッチ構造」の意味及び「50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成され[る樹脂層]」の意味は、第1の態様におけるものと同様である。
【0022】
本発明の第4の態様に係るFRP構造体は、第1乃至第3の何れかの態様に係るFRP構造体であって、樹脂成形物が、FRP又は熱可塑性プラスチックの廃材であるものである。
【0023】
本発明の第5の態様に係るFRP構造体は、第1乃至第4の何れかの態様に係るFRP構造体であって、樹脂成形物の粉砕物又は粉体が、最大粒径10mm以下の粒度に調整されているものである。
【0024】
尚、本発明の第1から第5の態様に係るFRP構造体は、各層を形成後、樹脂を硬化させて出来上がる構造体を主として意味しているが、各層を形成後、樹脂の硬化が進行中のものを排除するものではない。
【0025】
本発明の第6の態様に係るFRP構造体の製造方法は、内側強化層を配置する工程と、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する工程と、外側強化層を配置する工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する工程と、外側強化層を形成する工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程とを有するものである。
【0026】
本発明の第7の態様に係るFRP構造体の製造方法は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する第1の工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する第2の工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上に樹脂テープを配置して、その粉砕物又は粉体を樹脂テープで覆う第3の工程と、第1から第3までの一連の工程を1回又は複数回繰り返えした後、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程とを有するものである。
【0027】
本発明の第8の態様に係るFRP構造体の製造方法は、内側強化層を配置する第1の工程と、内側強化層の上部に樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する第2の工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する第3の工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上に樹脂テープを配置して、その粉砕物又は粉体を樹脂テープで覆う第4の工程と、第2から第4までの一連の工程を1回又は複数回繰り返えした後、最外の樹脂テープの上部に外側強化層を配置する工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程とを有するものである。
【0028】
本発明の第9の態様に係るFRP構造体の製造方法は、第6乃至第8の何れかの態様に係る製造方法であって、内側強化層と外側強化層との間の中間層が、樹脂成形物の粉砕物又は粉体が50重量%以上の含有率で配合されて形成される樹脂層を備えるものである。
【0029】
尚、「樹脂成形物の粉砕物又は粉体が50重量%以上の含有率で配合されて形成される樹脂層」の意味は、態様1における「50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成される樹脂層」のそれと同様である。
【0030】
本発明の第10の態様に係るFRP構造体の製造方法は、第6乃至第9の何れかの態様に係る製造方法であって、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する前に予め樹脂及び硬化剤を供給する工程を更に有するものである。
【0031】
本発明の第11の態様に係るFRP構造体の製造方法は、第6乃至第10の何れかの態様に係る製造方法であって、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程が、常温硬化により又は熱処理を施すことによりこれを行う工程であるものである。
【0032】
尚、本発明の第6から第11の態様に係る製造方法において、「樹脂及び硬化剤を供給する」ことには、樹脂成形物の粉砕物又は粉体(第9の態様の場合は樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配置する下地)に対し、樹脂及び硬化剤を均一に供給すること、特に「散布」や「塗布」することが含まれる。
【0033】
本発明の第12の態様に係るFRP構造体の製造装置は、物体を回転させる回転手段と、その物体上に樹脂成形物の粉砕物又は粉体を供給する第1の供給手段と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する第2の供給手段と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を覆うように樹脂テープを供給する第3の供給手段とを備え、回転する物体に巻き込まれる樹脂テープにより、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体をその物体上に強く固定するものである。尚、この場合における「物体」とは、断面が円又は円環状のものを主として想定しているが、本発明が実現可能である限り、その他の断面形状でも構わない。また、この「物体」は、円筒状、円柱状又はタンク状のFRP構造体を製造する多くの場合に使用される芯金(マンドレル)を主として想定しているが、これに限らない。更に、この「物体」は、内側強化層が形成済みのものでも構わない。
【0034】
本発明の第13の態様に係るFRP構造体の製造装置は、第12の態様に係る製造装置であって、樹脂成形物の粉砕物又は粉体が、最大粒径10mm以下の粒度に調整されたFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材であるものである。
【0035】
本発明の第14の態様に係るFRP構造体の製造装置は、第12又は第13の態様に係る製造装置であって、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを排出する第1の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを所定の分布状態になるように排出する第2の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を第2の塊状化抑制手段に搬送する搬送手段とを更に備え、前記第1の供給手段は、第2の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を供給するものである。
【0036】
尚、第14の態様における装置の特徴部分を上位概念で抽出した場合、例えば「樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを排出する第1の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを所定の分布状態になるように排出する第2の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を第2の塊状化抑制手段に搬送する搬送手段とを備える粉砕物調整装置」と表現することができる。これを便宜的に、本発明の第14Aの態様という。
【0037】
本発明の第15の態様に係るFRP構造体の製造装置は、第12乃至第14の何れかの態様に係る製造装置であって、第2の供給手段が、前記第1の供給手段により樹脂成形物の粉砕物又は粉体が供給される下地に対し、予め樹脂及び硬化剤を供給する手段を兼ねるものである。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、FRP(特にFRP廃材)の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を高含有率で配合されて形成されるFRP構造体を提供し、このFRP構造体を実現するために好適な、複雑さを排した製造方法及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
1.本発明の原理・作用の説明
本発明の第1の態様によれば、50重量%以上もの高い割合の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配合して中間層を形成することができ、このような中間層を擁しながらも、当該中間層の硬化に加えて、内外側強化層による挟み込みにより、必要な強度も確保されたFRP構造体を実現することができる。尚、「強度」とは、剛性、引張応力、曲げ応力、圧縮応力、せん断応力のうちの少なくとも一つの観点からの強度の意味であり、この意味は、別段の記載がない限り、本発明において共通する。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、複数の樹脂層のうち少なくとも一つを50重量%以上もの高い割合の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配合して形成することができ、このような樹脂層を擁しながらも、当該樹脂層の硬化及び樹脂テープにより覆うことにより(更には残りの樹脂層の硬化も手伝って)、必要な強度も確保されたFRP構造体を実現することができる。尚、樹脂テープでより多くの樹脂層を覆うことが、FRP構造体において必要な強度を確保するためには望ましく、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の配合量を増やしたFRP構造体を実現するためには望ましい。
【0041】
本発明の第3の態様によれば、中間層がその厚み方向において備える複数の樹脂層のうち少なくとも一つを、50重量%以上もの高い割合の樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配合して形成することができ、このような樹脂層を擁しながらも、当該樹脂層の硬化及び樹脂テープにより覆うことにより(更には残りの樹脂層の硬化も手伝って)、並びに当該中間層の内外側強化層による挟み込みにより、必要な強度も確保されたFRP構造体を実現することができる。尚、樹脂テープでより多くの樹脂層を覆うことが、FRP構造体において必要な強度を確保するためには望ましく、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の配合量を増やしたFRP構造体を実現するためには望ましい。
【0042】
本発明の第4の態様によれば、第1乃至第3の何れかの態様に係るFRP構造体において、より多くのFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材を再利用したものを実現することができる。
【0043】
本発明の第5の態様によれば、第1乃至第4の何れかの態様に係るFRP構造体における中間層や複数の樹脂層に配合される樹脂成形物の粉砕物又は粉体が適度の大きさに調整が施されるため、これにより形成される各層の均質性(強度のバラツキが少ないこと、樹脂及び硬化剤の分散や浸透の程度、或いは樹脂硬化の程度又は均一性にバラツキが少ないことを含む)が確保されたものを実現することができる。
【0044】
本発明の第6の態様によれば、外側強化層と内側強化層との間の中間層が樹脂層であるFRP構造体を製造することができる。
【0045】
本発明の第7の態様によれば、一つ又は複数の樹脂層を備え、少なくとも一つの樹脂層が樹脂テープにより覆われて配置しているFRP構造体を製造することができる。
【0046】
本発明の第8の態様によれば、外側強化層と内側強化層との間の中間層が樹脂層であってテープで被覆されているFRP構造体、及びその中間層が一つ又は複数の樹脂層からなり少なくとも一つの樹脂層が樹脂テープにより覆われて配置しているFRP構造体を製造することができる。
【0047】
尚、本発明の第6乃至第8の態様に係るFRP構造体の製造方法においては、事前に配置しておいた樹脂成形物の粉砕物又は粉体に対して樹脂及び硬化剤を直接供給し、これにより樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を均一に混ぜ合わせたのと同等の結果が得られるため、混練作業は行わないで済む。尚、樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を散布すると、より均一に混ぜ合わさった状態を実現できる。
【0048】
本発明の第9の態様によれば、樹脂成形物の粉砕物又は粉体が50重量%以上配合されて樹脂層が形成されるので、第1乃至第3の態様に係るFRP構造体を製造することができる。この場合、樹脂成形物の粉砕物又は粉体がFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材である場合(本発明の第9Aの態様)及び10mm以下の最大粒径に調整されている場合(本発明の第9Bの態様)には、それぞれ、本発明の第4及び第5の態様に係るFRP構造体を製造することができる。
【0049】
本発明の第9の態様により製造できる第2及び第3の態様に係るFRP構造体は、すべての樹脂層が樹脂テープで覆われている形態のものになるのが、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上に樹脂テープを配置して、その粉砕物又は粉体を樹脂テープで覆う工程とからなる一連の工程を複数回繰り返えす際に、樹脂成形物の粉砕物又は粉体をテープで覆う工程を適宜又は製造者の任意の判断により実施しないことにより、複数の樹脂層の少なくとも一つが樹脂テープで覆われているFRP構造体を製造することができる。この場合においても、樹脂成形物の粉砕物又は粉体がFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材である場合及び最大粒径10mm以下の粒度に調整されている場合には、それぞれ、本発明の第4及び第5の態様に係るFRP構造体を製造することができる。
【0050】
本発明の第10の態様によれば、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する時間的な前後において樹脂及び硬化剤をこれに供給することになるので、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上下の位置から樹脂及び硬化剤がこれに入り込むことになる。これにより、樹脂成形物の粉砕物又は粉体への樹脂及び硬化剤の混合により均一化することができ、混連作業は更に不要になる。尚、樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を散布すると、より均一に混ぜ合わさった状態を実現できる点は、第6乃至第8の態様による場合と同様である。
【0051】
本発明の第6乃至10の態様に係るFRP構造体の製造方法においては、成形完了後に成形された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を一度に硬化させる。この工程は、硬化炉で熱処理する工程であっても、常温硬化による工程であっても構わないが、複数個の硬化炉は不要である。これが本発明の第11の態様に係る製造方法である。
【0052】
本発明の第12の態様によれば、物体が1回転する過程で、まず、第1の供給手段により樹脂成形物の粉砕物又は粉体が供給されて当該物体上に配置され、次いで第2の供給手段により当該粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤が供給され均一に混合し、更に第3の供給手段により樹脂テープを供給されて、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体がこれにより覆われる。この結果、物体が回転する度に樹脂層を形成すること、ひいては回転数に応じた積層数の樹脂層を形成することができる。また、混練作業は必要ない。
【0053】
この場合、樹脂テープは、回転する物体に巻き込まれるように供給されるので、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を下地との間で包み込む又は挟み込むような形態となる。これにより、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体が、物体の回転方向に向かって滑落する可能性を低減することができ、且つ、下地に強く固定された状態を実現することができる。
【0054】
本発明に係る第12の態様によれば、第7の態様に係るFRP構造体の製造方法を実現でき、樹脂テープを供給する第3の供給手段を適宜又は製造者の任意の判断により動作と非動作を切り替えることにより、複数の樹脂層の少なくとも一つが樹脂テープで覆われているFRP構造体を製造することができる。この場合、特に、第1の供給手段により樹脂成形物の粉砕物又は粉体を50重量%以上もの高い割合で配合すると、第2の態様に係るFRP構造体を製造することができる。また、回転する物体に既に内側強化層が形成されている場合には、第12の態様に係る製造装置により製造されたFRP構造体の上に別の手段により外面強化層を形成すれば、第3の態様に係るFRP構造体を製造することができる。更に、樹脂成形物の粉砕物又は粉体がFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材であれば、第4の態様に係るFRP構造体を製造することができる。
【0055】
本発明の第13の態様によれば、第12の態様に係る製造装置において、第1の供給手段により供給される樹脂成形物の粉砕物又は粉体が適度の大きさであるため、これにより形成される各層の均質性(強度のバラツキが少ないこと、樹脂及び硬化剤の分散や浸透の程度、或いは樹脂硬化の程度又は均一性にバラツキが少ないことを含む)を確保することができる。
【0056】
本発明の第14の態様によれば、(1)粒度調整された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を所定の分布状態で配置することができるので、各層の均質性を確保することがより容易になる。また、(2)二つの塊状化抑制手段における性能・機能の違いや位置関係に起因する問題(後述)を、第1の塊状化抑制手段により処理され排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を第2の塊状化抑制手段に搬送する搬送手段を介在させることにより、解消又は極小化することができる。尚、「所定の分布状態」とは、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の排出量が、その排出される領域において所定の分布を持つように制御又は調整された状態を意味する。例えば、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の単位時間当たりの排出量が、その排出される領域において当該領域の単位面積当たり一定又は概ね一定(排出される領域の一定方向に着目すれば、単位時間当たりの排出量が、その方向上の対象範囲のどの位置においても一定又は概ね一定)になるように制御又は調整された状態を意味する。また、「塊状化を抑制[する]」とは、塊状化したもの又はその兆候のあるものを予め解す操作を行うことを意味する。樹脂成形物の粉砕物又は粉体、特に粒度が調整された後のものは塊状になり易いので、塊状化を抑制する作業が必要である。そして塊状化を十分抑制できれば、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の量的制御(時間の経過に伴う量の制御を含む。以下、同様とする。)も容易になり、結果として所定の分布状態になるように制御又は調整することも容易になる。
【0057】
本発明の第14Aの態様においても、この(2)と同様のことが言える。即ち、第1の塊状化抑制手段によれば樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制ことができるが、所定の分布状態で樹脂成形物の粉砕物又は粉体を排出し、これを樹脂層の成形に供することでその樹脂層の均質性を確保するためには、塊状化を十分に抑制しなければならない。しかし、第1の塊状化抑制手段の性能・機能、運転条件、規模或いは投入される樹脂成形物の粉砕物や粉体の性質・性状等によっては、これを十分に行うことができるとは限らない。そこで、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を更に抑制することにより所定の分布状態で排出することを可能にする第2の塊状化抑制手段が必要になってくる。この場合、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制する量は第1及び第2の塊状化抑制手段において同一に設定するのが通常であるとはいえ、第1の塊状化抑制手段が有する樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制する機能が十分でないため(換言すれば、当該粉砕物又は粉体の量的制御が十分でないため)、第2の塊状化抑制手段への樹脂成形物の粉砕物又は粉体の投入量にばらつきが生じ、第2の塊状化抑制手段に負荷変動(特に過負荷)が生じ、ひいては第2の塊状化抑制手段により樹脂成形物の粉砕物又は粉体を所定の分布状態で配置することに支障を来たし得る。そこで、両手段間に搬送手段を介在させて、両手段間で一種の緩衝機構として作用させる。即ち、両手段間に配置する搬送手段の運転(特に状況に応じて又は定期的若しくは非定期的に搬送速度を変更する運転)を通じて、第1の塊状化抑制手段により処理された粉砕物又は粉体が、そのまま第2の塊状化抑制手段に挿入されないようにする。これにより、第2の塊状化抑制手段に生じる負荷変動を回避し、粒度調整された粉砕物又は粉体を所定の分布状態で配置することをより円滑且つ安定に行うことができる。
【0058】
また、第1の塊状化抑制手段により処理された粉砕物又は粉体が直接的に第2の塊状化抑制手段に挿入される配置関係(特に上下に配置する関係)にある場合、粉砕物又は粉体の長期にわたる衝突により第2の塊状化抑制手段を構成する部材の短命化を招来し兼ねない。そこで、保守管理が相対的に容易な第2の塊状化抑制手段の前段に、保守管理が相対的に容易な搬送手段を配置することにより、第1の塊状化抑制手段により処理された粉砕物又は粉体が直接的に第2の塊状化抑制手段に挿入される事態を回避する。即ち、第1の塊状化抑制手段により排出される粉砕物又は粉体の運動エネルギーを、保守管理が相対的に容易な搬送手段には及ぶが、保守管理が相対的に容易でない第2の塊状化抑制手段に直接及ばないようにすることで、第2の塊状化抑制手段の構成部材が短命化することを抑止し、保守管理を容易化する。
【0059】
尚、例えば、第1の塊状化抑制手段が処理した粉砕物又は粉体の排出口と、第2の塊状化抑制手段が処理する粉砕物又は粉体の挿入口との鉛直方向の距離(L)が大きいと、第1の塊状化抑制手段から排出される粉砕物又は粉体の持つ位置エネルギーは大きくなるので、粉砕物又は粉体の長期にわたる衝突により第2の塊状化抑制手段を構成する部材の短命化を招来し兼ねない。このような場合には、この鉛直方向の距離が実質的に小さくなるように搬送手段を配置するのが望ましい。具体的には、第1の塊状化抑制手段が処理した粉砕物又は粉体の排出口とその排出口直下の搬送手段との鉛直方向の距離(L1)と第2の塊状化抑制手段が処理する粉砕物又は粉体の挿入口とその挿入口に挿入される粉砕物又は粉体が載る搬送手段の位置との鉛直方向の距離(L2)との和(L1+L2)がLよりも小さい場合、特にL2がLよりも小さい場合には、上記の位置エネルギーは小さくなり、望ましい。このような位置関係を実現するには、例えば、粉砕物又は粉体を略水平に搬送する搬送手段を採用すればよい。搬送手段の鉛直方向の厚み相当分だけL1やL2は、当初のLよりも小さくなるからである。水平方向に搬送成分を有する搬送手段の場合には、二つの塊状化抑制手段の物理的干渉を回避又は抑制でき、FRP構造体の製造装置全体の設計や組み立ての自由度が増し、その実際の設計や組み立てを容易化できる副次的な長所もあり、好適である。
【0060】
本発明の第14Aの態様を第12又は第13の態様に適用したのが第14の態様であるため、上記の第14Aの態様に関する説明は、そのまま第14の態様による作用(効果)に当てはまる。また、第14の態様によれば、適度の大きさの粉砕物又は粉体を第1の供給手段から安定的に供給することができるので、FRP構造体の製造装置の定常運転に支障を与えることなく、また、各層の均質性(強度のバラツキが少ないこと、樹脂及び硬化剤の分散や浸透の程度、或いは樹脂硬化の程度又は均一性にバラツキが少ないことを含む)が高水準に維持したまで、FRP構造体を安定的に製造することができる。
本発明の第15の態様に係るFRP構造体の製造装置は、第10の態様に係る製造方法を具体的に実現するものである。本発明の第15の態様によれば、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を下地上に配置する時間的な前後において樹脂及び硬化剤をこれに供給することになるので、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上下の位置から樹脂及び硬化剤がこれに入り込むことになる。これにより、樹脂成形物の粉砕物又は粉体への樹脂及び硬化剤の混合により均一化することができる。当然、混連作業は更に不要になる。
【0061】
樹脂成形物の粉砕物又は粉体を下地上に配置するのは第1の供給手段であり、その上下に樹脂及び硬化剤を供給するのはいずれも第2の供給手段である。物体が回転している過程において、まず、下地となる物体表面に第2の供給手段により樹脂及び硬化剤を供給する。第2の供給手段を動作させて物体を少なくとも1回転させれば下地上には樹脂及び硬化剤が配置する。次いで、樹脂及び硬化剤が配置した状態の下地に対して、第1の供給手段により樹脂成形物の粉砕物又は粉体を供給し、樹脂及び硬化剤が配置した下地の上にこれを配置してゆく。この粉砕物又は粉体に対し、同じ第2の供給手段により樹脂及び硬化剤を供給する。
【0062】
第2の供給手段は樹脂及び硬化剤を供給する動作を継続して行っている途中で第1の供給手段が粉砕物又は粉体を供給することになるので、粉砕物又は粉体の上下に樹脂及び硬化剤が配置することになる。しかも、回転する物体に巻き込まれるように第3の供給手段から移動する樹脂テープにより、このような状態にある粉砕物又は粉体が覆われ、締め付けるように強く固定される。この結果、粉砕物又は粉体への樹脂及び硬化剤の浸透とそれによる均一混合が促進し、各層の均質性を確保することができる。
【0063】
粉砕物又は粉体の上下に樹脂及び硬化剤を供給する手段が共通の第2の供給手段でり、しかも断続動作をする必要がないことは、製造装置や製造工程の簡素化に寄与するものである。この第2の供給手段が樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を散布する手段であれば、より均一に混ぜ合わさった状態を実現できる点は、第10の態様の場合と同様である。
【0064】
2.本発明の実施例の説明
以下においては、共通の構成要素につき共通の番号を付して各図の説明を行う。
【0065】
2.1 FRP構造体
図1は、本発明に係る第1の実施例であるFRP構造体の一部断面を模式的に示す。この図において、1はFRP構造体、2は内側強化層、3は中間層、4は外側強化層であり、内側強化層2、中間層3及び外側強化層4によりサンドイッチ構造11を構成する。
【0066】
内側強化層2及び外側強化層4は繊維強化プラスチック(FRP)からなる層である。ただし、内外側強化層2、4は中間層3を上下から強く固定するものであるので、この機能さえ果たすことができるのならば、素材はFRPでなくても構わない。
【0067】
中間層3は樹脂層6又はこれを含む層である。樹脂層6は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体7、及び樹脂と硬化剤が配合されて形成され、更に顔料、粘度調整用の充填剤その他の添加剤が任意に配合されて形成される。当該樹脂は、樹脂層6を形成する際の樹脂含浸の必要性を考えると液状のものが好適であり、具体的には不飽和ポリエステル樹脂に代表される液状の熱硬化性樹脂が望ましい。
【0068】
樹脂層6は、内部に中間強化層(図示せず)を備えて、その結果、内側強化層2と中間強化層及び中間強化層と外側強化層4の間に樹脂層6が形成されるような形態をとっても構わない。更に、樹脂層6は、例えばポリエステル樹脂からなるテープ(図示せず)により覆われていても構わず、かかる樹脂テープにより覆われた複数の樹脂層が積層されて形成されていても構わない。
【0069】
図1に示すFRP構造体は、内側強化層2、中間層3、外側強化層4の順に積層し、中間層3を内外側強化層2、4により強く挟み込み、固定し、これに硬化処理を施すことにより製造することができるが、その形状が平板状である場合又は比較的小物である場合に好適である。
【0070】
図2は、本発明に係る第2の実施例であるFRP構造体の一部断面を模式的に示す。この図に示すFRP構造体では、複数の樹脂層6のそれぞれが樹脂テープ(又は樹脂シート)5で覆われている。各樹脂層6は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体7が配合されて形成されている。樹脂層6は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体、及び樹脂と硬化剤が配合されて形成されるが、顔料、粘度調整用の充填剤その他の添加剤が配合されていても構わない。樹脂層6を形成するために配合される樹脂は、これを形成する際の樹脂含浸の必要性を考えると液状のものが好適であり、具体的には不飽和ポリエステル樹脂に代表される液状の熱硬化性樹脂が望ましい。樹脂テープ5は、ポリエステル樹脂が好適であるが、これに限定されない。樹脂テープ5は、各樹脂層6を強く固定するように配置するのが好ましいので、この目的に適した素材を選択すればよい。樹脂層6に硬化処理を施した後は、樹脂テープ6とその近傍の樹脂層6とは強固に一体化し、樹脂テープ6のみを剥離することが困難な、一定の厚みを持って構成された層の如き様相を呈するに至る。
【0071】
図2に示すFRP構造体は、何らかの基材(図示しないが、図1に示す内側強化層2でもよい)上に、樹脂層とこれを覆う樹脂シートを交互に積層した後、これに硬化処理を施すことにより製造することができるが、その形状には特に限定はない。従って、平板、円筒、曲面板などのFRP構造体において、また、図1に示したFRP構造体の中間層3において、これを採用することができる。
【0072】
図3は、本発明に係る第3の実施例であるFRP構造体の一部断面を模式的に示す。図中の番号の意味は、図1及び図2に示す番号のそれと同じである。この図に示すFRP構造体の基本構造は、図2に示すものの変形であり、図2に示したFRP構造体の場合と同様に、複数の樹脂層6とこれを覆う樹脂テープ(または樹脂シート)の積層構造を採る。しかし、複数の樹脂層6のそれぞれが樹脂テープ(又は樹脂シート)5で覆われ、これが稠密に折り重なり、隣接する樹脂層間の間隙や各樹脂層の端部を埋めて覆うように積層している点が図2に示したFRP構造体の場合にはない特徴である。
【0073】
各樹脂層6は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成されている。樹脂層6は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7、及び樹脂と硬化剤が配合されて形成されるが、顔料、粘度調整用の充填剤その他の添加剤が配合されていても構わない。樹脂層6を形成するために配合される樹脂は、これを形成する際の樹脂含浸の必要性を考えると液状のものが好適であり、具体的には不飽和ポリエステル樹脂に代表される液状の熱硬化性樹脂が望ましい。
【0074】
樹脂テープ5は、ポリエステル樹脂が好適であるが、これに限定されない。樹脂テープ5は、樹脂層6を覆う必要上、当該樹脂層6よりも大きな幅を有する。この結果、隣接する樹脂層(図3では斜め下方に配置する樹脂層)を覆う樹脂テープ5を更に部分的に覆うように配置する。これにより、各樹脂層6の周囲が隙間なく樹脂テープ5により覆われる。かかる樹脂テープ5は、各樹脂層6を強く固定するように配置するのが好ましく、以上のような状態が、結果として、各樹脂層6がこれを覆う樹脂テープ6とともに稠密に折り重なる特徴的な積層状態の実現に寄与する。また、樹脂層6に硬化処理を施した後は、樹脂テープ6とその近傍の樹脂層6とが強固に一体化し、一定の厚みを持って構成された層の如き様相を呈するに至るので、このような積層状態は、FRP構造体のより高い強度の確保・維持のために重要である。
【0075】
本発明の第1乃至第3の態様に係るものにそれぞれ該当する図1乃至図3に示すFRP構造体においては、その樹脂層6が、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体7が配合されて形成される。このため、当該樹脂成形物として、FRP、熱可塑性プラスチック等からなるものを採用すると、より多くの廃材の再利用が可能になり、廃棄量を低減することができる(本発明の第4の態様)。また、後述のとおり、樹脂層6においては、当該樹脂成形物の粉砕物又は粉体が最大粒径10mm以下の粒度に調整されていると、これが50重量%以上という高い含有率で配合されていても、形成される樹脂層の均質性が確保され、層間剥離が生じ難く、外観的にも異常を生じない健全なFRP構造体になる(本発明の第5の態様)。
【0076】
2.2 FRP構造体の製造方法
(1)製造方法1
図4は、本発明の第1の態様に係るFRP構造体の製造方法に関するプロセスフローの一例であり、本発明の第6の態様に係る製造方法の実施例に相当する。
【0077】
このフローでは、まず、基材を準備して配置し、この上に離型シートを配置し、更に保護層を形成する。次いで保護層の上にFRP層を成形する。形成したFRP層の上に液状樹脂及び硬化剤を塗布し、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を堆積し、そこに液状樹脂及び硬化剤を塗布する。
【0078】
引き続き堆積層の上にFRP層、保護層を順に形成し、離型シートを配置した後、その上に別の基材を配置する。この結果、一組の基材の間に、離型シート、保護層、FRP層が対になって配置し、中央に樹脂が含浸した樹脂成形物の粉砕物又は粉体の堆積層が配置することになる。
【0079】
このようなFRP構造体に圧縮力を印加しつつ硬化処理を施し、堆積層を硬化させる。この硬化処理は、常温硬化によるもので構わないが、FRP構造体に圧縮力を印加しつつ硬化させることから、加熱炉により加速的に行うものの方が好適である。
【0080】
尚、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積層が樹脂層6又は中間層3に、また、一対のFRP層は、内外側強化層2、4に相当する。また、基材の配置とは、例えば、型となるものを準備し、これを所定位置に配置することを意味しており、図4に示すプロセスフローにおいて使用する型としては、硬化処理を施すことで所望の形状のFRP構造体を実現することができる上型と下型(一組の型)であって、その硬化処理の過程で圧縮力を印加し易い工夫が施されたものが好適である。
【0081】
この図に示す製造方法により製造されるFRP構造体では、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積層に上下両側から樹脂が硬化剤とともに十分含浸するので、後述する従来の製造方法(図5)では不可欠な混練作業を省略することができ、硬化処理の回数を減らすこともできる。また、樹脂成形物として、FRP、熱可塑性プラスチック等からなるものを採用すると、より多くの廃材の再利用が可能になり、廃棄量を低減することができる。更に、当該樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の粒度を最大粒径基準で10mm以下に調整しておけば、これが50重量%以上という高い含有率で配合されていても、形成される樹脂層の均質性が確保され、層間剥離が生じ難く、外観的にも異常を生じない健全なFRP構造体になる。
【0082】
(2)製造方法2
図5は、芯金(マンドレル)を用いて樹脂モルタル層を備えるFRP構造体を製造する場合における従来のプロセスフロー図であり、先述の文献1乃至3に係るFRP構造体の製造方法もこの図に描かれたプロセスフローを基礎としている。
【0083】
従来のフローでは、まず芯金(マンドレル)を準備し、これに離型シートを巻き付け、保護層を形成し、FRPを巻き付けて積層し、その後加熱炉を通して硬化処理を施す。硬化したFRP層上にFRP、樹脂モルタル及びFRPの順に巻き付けて積層し、保護層を形成した後、加熱炉を通して硬化処理を施す。
【0084】
図5に示す樹脂モルタルの準備フローは、文献1乃至3に係るFRP構造体の製造方法における樹脂モルタルの製造フローを示す。これらの文献には、各文献に係るFRP構造体に適用される樹脂モルタルの製造方法についてまでは具体的な記載がない。しかし、通常の樹脂モルタルの製造方法に基づけば、かなりの確度で類推できる。それが、図4に示すフローである。樹脂モルタルの準備フローにおいては、まず、樹脂モルタルの原材料となる物質を混練機に入れて混練する。その原材料は、骨材である珪砂、及びその一部置換物である樹脂成形物の粉砕物又は粉体、及び樹脂と硬化剤、更に必要に応じて混入されるガラス短繊維、顔料、添加剤、充填材など(図示せず)である。混練して出来上がる中間製品としてのバルクモールディングコンパウンド(BMC)を加圧成形機にて成形し、樹脂モルタルにし、これを、温度調節された環境で貯蔵し、FRP構造体の製造に供する。
【0085】
このような従来のプロセスフローによれば、樹脂モルタルを樹脂モルタルの組成物を事前に混練した後成形し、貯蔵するとともに、FRP構造体の製造過程における樹脂モルタル層を形成する度に加熱炉により硬化処置を施すことにより、FRP構造体の製造工程のタイミングと整合させている。しかし、この結果、混練や貯蔵が必要な樹脂モルタルの準備作業が必要になり、少なくとも硬化処理が2回、従って、通常の施設であれば加熱炉が2台必要になる。
【0086】
他方、図6は、本発明に係る製造方法のプロセスフローの一例であり、本発明の第7及び第8の態様に係る製造方法の実施例に相当し、詳しくは次の通りである。即ち、まず芯金(マンドレル)を準備し、これに離型シートを巻き付け、保護層を形成し、FRPを積層する(第8の態様に係る第1の工程に相当する)。このFRP層が内側強化層2に相当する。ここまでは、図5に示すフローと同じである。
【0087】
次いで、硬化剤とともに液状樹脂を供給し、その上に樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を供給して堆積し(第7の態様に係る第1の工程、第8の態様に係る第2の工程に相当する)、更にその上に硬化剤とともに液状樹脂を供給し(第7の態様に係る第2の工程、第8の態様に係る第3の工程に相当する)、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積物に含浸させ、その上から樹脂テープ5を巻き付ける(第7の態様に係る第3の工程、第8の態様に係る第4の工程に相当する)。樹脂テープ5としては例えばポリエステル樹脂からなるものが好適である。樹脂テープ5は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積物を強く固定するように巻き付ける。
【0088】
樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積物の形成、樹脂の含浸及び樹脂テープ5の巻き付けまでの一連の工程を、所定長さ、所定肉厚になるまで連続的に繰り返えす。通常は、2〜4回ぐらい繰り返えすが、この繰り返し数は、FRP構造体の要求されるFRP構造体の形態や用途などによって異なり、1回で足りる場合もあれば、5回以上の場合もある。樹脂テープ5で覆うことにより、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積物を樹脂層6として成形する。樹脂層6は樹脂テープ5とともに中間層3を構成する。尚、中間層3又は樹脂層6の強度を高める場合には、樹脂テープ5の巻き付け強度(張力)を大きくし、一般論であるが巻き付け回数を多くすれば足りるが、樹脂層6を成形する過程で、FRPの中間強化層を形成する工程を挿入し、中間強化層の上下に樹脂層6が配置するようにして構造を強化してもよい。
【0089】
その後、樹脂層6の上にFRPを積層し、保護層を設けた後、硬化処理を施す。樹脂層の上に成形されるFRP層が外側強化層4に相当し、内外側強化層2、4に相当するFRP層とその間に存する樹脂層を備える中間層3とによりサンドイッチ構造11が構成される。
【0090】
図6に示すフローにおいて、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を50重量%以上という高い含有率で配合して樹脂層6を形成すると、本発明の第2及び第3の態様に係るFRP構造体を実現することができる。特に、当該樹脂成形物として、FRP、熱可塑性プラスチック等からなるものを採用すると(本発明の第9Aの態様)、第4の態様に係る構造体を実現することができ、これにより、より多くの廃材の再利用が可能になり、廃棄量を低減することができる。また、樹脂層6においては、当該樹脂成形物の粉砕物又は粉体7が最大粒径10mm以下の粒度に調整されていると(本発明の第9Bの態様)、第5の態様に係る構造体を実現することができ、各層6の均質化の程度が増すので、後述のとおり、層間剥離が生じ難く、外観的にも異常を生じない健全な構造体を製造することができる。
【0091】
図6に示すフローでは、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積物に液状樹脂と硬化剤を散布、塗布その他の態様で供給することでその堆積物への樹脂含浸を行うので、混練作業は必要でなく、図5に示した従来フローにおけるような準備フロー及びこれを実現するための機器、設備等が無用になる。
【0092】
樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の堆積物を形成する後に液状樹脂と硬化剤を供給するだけで当該堆積物に十分樹脂が含浸するのならば、事前に液状樹脂と硬化剤を供給しておく必要はない。しかし、樹脂含浸を徹底するためには事前に供給しておくことが望ましい。特に、たとえ堆積層がより厚くとも、層間剥離が生じ難く、外観的にも異常を生じない健全な構造体を確実に製造するためには、当該堆積物への樹脂含浸の徹底は不可欠であり、従って、液状樹脂と硬化剤を事前に供給することがより望ましい(本発明の第10の態様)。
【0093】
また、硬化処理による樹脂層6の硬化はいわゆる常温硬化であってもよいし、加熱炉により加速的に行うものであっても構わない(本発明の第11の態様)。いずれの硬化処理の場合であれ、従来のプロセスフローよりも少ない加熱炉数又は硬化処理数になり、より簡素なフローになる。
【0094】
2.3 FRP構造体の製造装置
(1)実施例の概説
図7は、本発明に係るFRP構造体の製造装置の実施例に関し、その実施例の構成ブロック図を示す。また、図8は、その実施例の要部の構成図である。両図において付してある共通の数字は、共通の構成要素を意味している。
【0095】
この実施例は、図示しない回転機構により自転する芯金(マンドレル)80を成形型とし、これを下地にして円筒形状又は管状のFRP構造体を製造するためのものである。この芯金80上に樹脂層6を成形する前に、離型シート、保護層、内側強化層2を必要に応じて予め形成しておく。回転する芯金80上に、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7、液状樹脂と硬化剤、及び樹脂テープ5を、それぞれ第1の供給手段81、第2の供給手段82及び第3の供給手段83により供給する。第2の供給手段82は、調合器で調合された樹脂と硬化剤をポンプにより芯金80上に散布する手段であり、これにより第1の供給手段81により芯金80上に供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体7に樹脂と硬化剤を供給する。第3の供給手段から供給される樹脂テープ5は、芯金80の回転方向に引き込まれるように移動する。この移動の過程において、樹脂テープ5の張力は調整され、樹脂と硬化剤が散布された樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を樹脂テープ5が強く覆い込む状態となるので、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7が芯金80上から落下することを防止でき、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を強く固定する。
【0096】
芯金80上への樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の供給量(特に樹脂層6の厚さ)及び粒度は、主として第1の供給手段81により調整される。その調整には、芯金80の回転速度、第2の供給手段82による樹脂及び硬化剤の供給量などが考慮される。
【0097】
また、FRP、熱可塑性プラスチック等からなる樹脂成形物の廃材の粉砕物又は粉体を活用して本発明に係るFRP構造体を製造する場合には、図7に示すように、廃材処理施設70において当該廃材71を粉砕機72による粉砕処理とフィルター73による分別処理を必要回数繰り返し、ある程度の粒度にした後、これを本発明における樹脂成形物の廃材の粉砕物又は粉体として使用に供することになる。
【0098】
(2)粉砕物調整装置
図7及び図8に示す実施例では、第1の供給手段81により供給される樹脂成形物の粉砕物又は粉体の制御性(所定の分布状態を実現するための調整し易さと安定供給度)を高めるために、別途、粉砕物調整装置を設けている(本発明の第14Aの態様)。このような要請は、最大粒径10mm以下の粒度に調整し、これをもって樹脂層の均質性を確保する本発明の特定の態様(本発明の第13の態様を含む)において格別に高い。
【0099】
粉砕物調整装置は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを排出する第1の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段により処理された粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを所定の分布状態になるように排出する第2の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段により調整された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を第2の塊状化抑制手段に搬送する搬送手段とを基本構成とする。これを本発明に係るFRP構造体の製造装置に適用すると、第2の塊状化抑制手段により処理された粉砕物又は粉体を第1の供給手段81により、芯金80上に供給する構成となり、本発明に好適なものとなる。
【0100】
尤も、粉砕物調整装置は、本発明に用途限定されるものではない。粉砕物調整装置について限定する意図なくより図7及び図8に照らして具体的に説明すると、サークルフィーダー812が第1の塊状化抑制手段に、バイブレーションフィーダー814が第2の塊状化抑制手段に、ベルトコンベアー813が搬送手段に相当し、サークルフィーダー812により樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、その粉砕物又は粉体をベルトコンベアー813によりバイブレーションフィーダー814まで搬送し、更にバイブレーションフィーダー814により更に塊状化を抑制し、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を最終的に所定の分布状態になるように排出するものである。この所定の分布状態とは、芯金の長軸方向において樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の量が制御されて下地上に配置している状態を意味する。
【0101】
尚、サークルフィーダー812とは、容器内部に設けた回転駆動する羽根により樹脂成形物の粉砕物又は粉体を回転羽根により掻き回し、その羽根の回転軸から羽根先端に向かう方向に移動させ、これを外部に排出する装置である。事前に篩機能を有する間隙又は孔を通すことで所定粒度(以下)の粉砕物又は粉体のみを選択的に外部に排出するのが普通であるが、これに限定されない。サークルフィーダー812によれば、樹脂成形物の粉砕物又は粉体、特にホッパー(タンク)811に格納されている粒度調整済みのものが投入された場合、当該粉砕物又は粉体の塊(だま)を解し、塊状化を抑制することができる。羽根の回転数が高くなるほど、この抑制効果は顕著であり、粉砕物又は粉体のばらつきも小さくでき、従ってその量的制御も容易になる(ただし、羽根の回転数が高くするにせよ、処理時間との関係上、そこには自ずと限界があり、塊状化を十分抑制できないままとなり得る)。
【0102】
また、バイブレーションフィーダー814とは、容器内部又は容器に設けた振動機構により樹脂成形物の粉砕物又は粉体を振動させ、その粉砕物又は粉体の塊(だま)を解し、塊状化を抑制した後、これを外部に排出する装置である。樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化が抑制される結果、そのばらつきも小さくでき、量的制御が容易になり、従って所定の分布状態になるように樹脂成形物の粉砕物又は粉体を下地上に配置することも容易化できる。
【0103】
サークルフィーダー812が有する樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制する機能が十分でないため(換言すれば、当該粉砕物又は粉体の量的制御が十分でないため)、バイブレーションフィーダー814への樹脂成形物の粉砕物又は粉体の投入量にばらつきが生じ、バイブレーションフィーダー814に負荷変動(特に過負荷)が生じ、ひいては樹脂成形物の粉砕物又は粉体を所定の分布状態になるように下地上に配置することに支障を来たすことになる。そこで、両フィーダー間にベルトコンベアー813を介在させて、両フィーダー間で一種の緩衝機構として作用させる。即ち、ベルトコンベアー813の運転(特に状況に応じて又は定期的若しくは非定期的に搬送速度を変更する運転)を通じて、サークルフィーダー812により処理された粉砕物又は粉体が、そのままバイブレーションフィーダー814に挿入されないようにする。これにより、バイブレーションフィーダー814に生じる負荷変動を回避し、粒度調整された粉砕物又は粉体を所定の分布状態で配置することをより円滑且つ安定に行うことができる。また、このような構成にすると、サークルフィーダー812により処理された粉砕物又は粉体が、直接的にバイブレーションフィーダー814に挿入されず、ベルトコンベアー813が物理的に介在することになるので、バイブレーションフィーダー814を構成する部材の短命化を抑制することができ、装置全体としての保守管理が相対的に容易になる。更に、水平方向に搬送成分を有するように配置したベルトコンベアー813を介在させることには、二つのフィーダー間の物理的干渉を回避又は抑制し、FRP構造体の製造装置全体の設計や組み立ての自由度を増やし、その現実の設計や組み立てを容易化できるという副次的な長所もある。
【0104】
従って、本発明に係るFRP構造体の製造装置に上記の粉砕物調整装置を付加することは、本発明の技術的価値の増大に直結する。
【0105】
(3)実施例の動作
図9は、本発明に係る製造装置の実施例要部の動作説明図である。
【0106】
まず、FRPの粉砕物又は粉体を芯金(マンドレル)上に供給する(動作I)。
尚、図9及び本発明についての説明において、「芯金上」又は「芯金80上」とは、芯金80に直接的に接触していない場合も含む。例えば、芯金80に内側強化層2が既に形成されている場合や樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を覆う樹脂テープ5が既に配置済みの場合には、芯金80上に既に形成されているそれらの層の上(これも「芯金上」であることには違いない)を意味する。
【0107】
次に、芯金上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の上に樹脂と硬化剤を第2の供給手段の一部を構成するノズルから供給する。これにより、FRPの粉砕物又は粉体に樹脂や硬化剤を含浸させる(動作II)。尚、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を供給する前に予め樹脂及び硬化剤を供給しておき、その後FRPの粉砕物又は粉体7を供給し、そこに更に樹脂及び硬化剤を供給すれば、樹脂や硬化剤がより含浸し易くなる。
【0108】
更に、樹脂や硬化剤を含浸したFRP粉砕物又は粉体7を樹脂テープ5で覆うように芯金上に強く巻き付ける(動作III)。これにより芯金の傾斜部においてFRP粉砕物又は粉体7は脱落せず、また、芯金上又は下地上に強く固定される。
【0109】
必要に応じて、動作Iに戻って一連の動作を繰り返す。この場合、芯金80の回転を継続させつつ第2の供給手段による樹脂と硬化剤の供給を連続的に行うと、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を供給する前の樹脂及び硬化剤を供給と、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を供給した後の樹脂及び硬化剤を供給とを連続的に行うことができ、これにより樹脂が十分に含浸した樹脂層、従って均質な各層を連続的に成形することが可能になる。尚、動作Iから動作IIIまでの一連の動作を複数回繰り返す場合には、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を供給する前の樹脂及び硬化剤を供給は、樹脂テープ5を下地として、そこに樹脂及び硬化剤を供給することになる。
【0110】
2.4 FRP構造体の健全性
(1)表1は、本発明に係るFRP構造体の実施例をより具体的に掲げたものであり、詳しくは、下記の製造条件で製造した円管状のFRP構造体であって、用途に応じた強度を既に有しているものについて、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の含有率又は配合率という観点から、より微視的に、層間剥離の生じ易さ及び外観的な異常の有無というより製品としての健全性(○:層間剥離、外観異常ともになし、△:層間剥離又は外観異常がある場合あり、×:層間剥離又は外観異常あり)を調べ、これを取りまとめたものである。尚、表中の「樹脂等」とは、樹脂及び硬化剤の意味であり、「粉砕物」とは、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の意味である。「粉砕物の重量%」は、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7、及び樹脂と硬化剤の(単位面積当たりの)総重量を分母とし、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の(単位面積当たりの)重量を分子として100を乗じた値である。「○/△」とは、「製作例によっては○の場合もあれば、△の場合もあった」の意味である。
【0111】
【表1】

【0112】
(2)製造条件
マンドレル口径(直径):2400mm、移動台車送り量:150mm、樹脂:不飽和ポリエステル(液状)、硬化剤:当業者が通常使用するもの(市販品)、樹脂及び硬化剤の供給幅:400mm、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7の供給幅:150mm、樹脂テープ5の材質:ポリエステル樹脂、樹脂テープ5の幅:200mm、樹脂テープ5のラップ長さ:50mm。尚、樹脂成形物としてFRP廃材を使用し、樹脂層6を3回積層とし、樹脂成形物の粉砕物又は粉体7を形成する前後において樹脂及び硬化剤を散布した。
【0113】
内外側強化層2、4の厚さの合計は、約6mm(それぞれ約3mm)とし、最終的に常温硬化処理を施した。
【0114】
(3)この表から、次のことが分かる。
(1)樹脂成形物の粉砕物又は粉体が50重量%以上という高い含有率であっても、健全なFRP構造体を製造することができる。
(2)粉砕物又は粉体の粒度が小さいほど、健全なFRP構造体を製造し易くなる。特に、最大10mmの粒径に設定することが望ましい。
(3)ただし、樹脂成形物の粉砕物又は粉体の含有率が79重量%を超えると、粉砕物又は粉体の粒度が大きいまま(最大粒径が10mm超)であると健全な構造体を製造することは難しくなってくる。ただし、その最大粒径を10mm以下(あるいは更に小さく)設定すると健全な構造体を製造することができるようになる。
【0115】
以上の知見から、本発明において好適な樹脂成形物の粉砕物又は粉体の範囲は、50重量%以上、79重量%以下であり、またその好適な最大粒径は10mm以下であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係るFRP構造体の実施例の一部断面を示す模式図
【図2】本発明に係るFRP構造体の他の実施例の一部断面を示す模式図
【図3】本発明に係るFRP構造体の他の実施例の一部断面を示す模式図
【図4】本発明に係る製造方法の実施例のプロセスフロー図
【図5】従来の製造方法のプロセスフロー図
【図6】本発明に係る製造方法の実施例のプロセスフロー図
【図7】本発明に係るFRP構造体の製造装置の構成ブロック図
【図8】本発明に係るFRP構造体の製造装置要部の構成図
【図9】本発明に係るFRP構造体の製造装置要部の動作説明図
【符号の説明】
【0117】
1 FRP構造体
2 内側強化層
3 中間層
4 外側強化層
5 樹脂テープ
6 樹脂層
7 樹脂成形物の粉砕物又は粉体
11 サンドイッチ構造
70 廃材処理施設
71 廃材
72 粉砕機
73 フィルター
80 芯金
81 第1の供給手段
82 第2の供給手段
83 第3の供給手段
811 ホッパー
812 サークルフィーダー
813 ベルトコンベアー
814 バイブレーションフィーダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側強化層と内側強化層と、外側強化層と内側強化層の間に配置する中間層とを備えるサンドイッチ構造を備え、前記中間層は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成される樹脂層であることを特徴とするFRP構造体。
【請求項2】
一つ又は複数の樹脂層を備え、少なくとも一つの樹脂層は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成され、更に樹脂テープで覆われて配置していることを特徴とするFRP構造体。
【請求項3】
外側強化層と内側強化層と、外側強化層と内側強化層の間に配置する中間層とを備えるサンドイッチ構造を備え、前記中間層はその厚み方向において一つ又は複数の樹脂層を備え、少なくとも一つの樹脂層は、50重量%以上の樹脂成形物の粉砕物又は粉体が配合されて形成され、更に樹脂テープで覆われて前記中間層内に配置していることを特徴とするFRP構造体。
【請求項4】
前記樹脂成形物は、FRP又は熱可塑性プラスチックの廃材であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のFRP構造体。
【請求項5】
前記樹脂成形物の粉砕物又は粉体は、の最大粒径10mm以下の粒度に調整されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のFRP構造体。
【請求項6】
内側強化層を配置する工程と、樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する工程と、外側強化層を配置する工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程とを有することを特徴とするFRP構造体の製造方法。
【請求項7】
樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する第1の工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する第2の工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上に樹脂テープを配置して、その粉砕物又は粉体を樹脂テープで覆う第3の工程と、第1から第3までの一連の工程を1回又は複数回繰り返えした後、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程とを有することを特徴とするFRP構造体の製造方法。
【請求項8】
内側強化層を配置する第1の工程と、内側強化層の上部に樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する第2の工程と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する第3の工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の上に樹脂テープを配置して、その粉砕物又は粉体を樹脂テープで覆う第4の工程と、第2から第4までの一連の工程を1回又は複数回繰り返えした後、最外の樹脂テープの上部に外側強化層を配置する工程と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程とを有することを特徴とするFRP構造体の製造方法。
【請求項9】
前記内側強化層と前記外側強化層との間の中間層が、前記樹脂成形物の粉砕物又は粉体が50重量%以上の含有率で配合されて形成される樹脂層を備えることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項10】
樹脂成形物の粉砕物又は粉体を配置する前に予め樹脂及び硬化剤を供給する工程を更に有することを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項11】
樹脂及び硬化剤が散布された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を硬化させる工程は、常温硬化により又は熱処理を施すことによりこれを行う工程であることを特徴とする請求項6乃至10の何れかに記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項12】
物体を回転させる回転手段と、その物体上に樹脂成形物の粉砕物又は粉体を供給する第1の供給手段と、その樹脂成形物の粉砕物又は粉体に樹脂及び硬化剤を供給する第2の供給手段と、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を覆うように樹脂テープを供給する第3の供給手段とを備え、回転する物体に巻き込まれる樹脂テープにより、樹脂及び硬化剤が供給された樹脂成形物の粉砕物又は粉体をその物体上に強く固定することを特徴とするFRP構造体の製造装置。
【請求項13】
前記樹脂成形物の粉砕物又は粉体は、最大粒径10mm以下の粒度に調整されたFRP又は熱可塑性プラスチックの廃材であることを特徴とする請求項12記載のFRP構造体の製造装置。
【請求項14】
樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを排出する第1の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体の塊状化を抑制し、これを所定の分布状態になるように排出する第2の塊状化抑制手段と、第1の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を第2の塊状化抑制手段に搬送する搬送手段とを更に備え、前記第1の供給手段は、第2の塊状化抑制手段から排出された樹脂成形物の粉砕物又は粉体を供給することを特徴とする請求項12又は13に記載のFRP構造体の製造装置。
【請求項15】
前記第2の供給手段は、前記第1の供給手段により樹脂成形物の粉砕物又は粉体が供給される下地に対し、予め樹脂及び硬化剤を供給する手段であることを特徴とする請求項12乃至14の何れかに記載のFRP構造体の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−51602(P2006−51602A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215480(P2004−215480)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(591054244)富士化工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】