説明

FRP管状体

【課題】FRP製ロボットハンドの曲げ剛性向上と機械加工性の向上との両立を可能とするFRP管状体を提供する。
【解決手段】繊維強化プラスチックからなる管状体において、外表面が、管軸方向に対し−5〜+5°の範囲内で一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]と、織物および/または不織布を強化繊維として厚みが0.01〜0.2mmの範囲内のFRP層[B]とからなり、外表面の全面積に占める[A]の面積が30〜98%の範囲内であり、かつ管状体を形成するFRPの厚み方向への貫通穴の外周がFRP層[B]に接していることを特徴とするFRP管状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックからなる管状体において、軽量、高剛性で機械加工性に優れ、ガラス基板搬送用の大型ロボットハンドのフォーク構造として好適なFRP管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの大型化に伴い、ガラス基板サイズも大型化が進んでいる。これら大型ガラス基板をパネル製造工程間で搬送するロボットハンドとしては大型化とともに、より高速で搬送するための軽量化や、多段で高集積にガラス基板を配置するカセットからガラス基板を出し入れするための低たわみ化(高剛性化)が求められている。
【0003】
このため、従来から適用されている鉄、ステンレス、アルミなどの金属に代わり、軽量・高剛性のロボットハンド用材料の検討が進んでいる。最近では、繊維強化プラスチック(以下、FRPと略す)が使用され、その中でも特に、比弾性に優れた炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPと略す)が大型ロボットハンド用材料の主流となっている。さらに、ロボットハンドの一部として用いられるフォーク構造は、複数からなる細長い柱状構造で、吸着パッドなどを介して直接ガラス基板を支持するために用いられ、特に大きな曲げ剛性が求められており、CFRPが必要不可欠となっている。
【0004】
当初CFRP製ロボットフォークは、CFRPシートを多層に積層した板状構造を用いることが多かったが、曲げ剛性向上と軽量化のさらなる要求から、板状構造に代わり中空管状構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、CFRP製ロボットフォークの曲げ剛性を効果的に発現するためには、荷重による曲げモーメントがかかる方向に炭素繊維を集中的に配向させることが有効であるが、一方向のみに炭素繊維を配向させたCFRP層は、他部品接合のためにロボットフォークの外表面に必要となる穴加工などの際には、炭素繊維の毛羽立ちやささくれの原因となり易く、一般的には炭素繊維織物を用いたCFRP層を外表面に配置することが提案されたり、示唆されたりしている(例えば、前記特許文献1の他、特許文献2、3参照)。本提案によって機械加工性の向上は図れるものの、一方向のみに炭素繊維を配向したCFRP層と比較すると高剛性化への寄与が小さな炭素繊維織物からなるCFRP層を最外層に配置することによる曲げ剛性の損失に対しては十分な検討がなされているとはいえず、曲げ剛性向上と機械加工性向上の両立が課題となっている。
【特許文献1】特開2002−292591号公報
【特許文献2】特開2004−338270号公報
【特許文献3】特開2005−305569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、かかる従来技術で十分に検討が行われていなかった、FRP製ロボットハンドの曲げ剛性向上と機械加工性の向上との両立を可能とするFRP管状体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するため、本発明のFRP管状体は次の構成を有する。すなわち、
(1)繊維強化プラスチックからなる管状体において、外表面が、管軸方向に対し−5〜+5°の範囲内で一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]と、織物および/または不織布を強化繊維として厚みが0.01〜0.2mmの範囲内のFRP層[B]とからなり、外表面の全面積に占めるCFRP層[A]の面積が30〜98%の範囲内であり、かつ管状体を形成するFRPの厚み方向への貫通穴の外周がFRP層[B]に接していることを特徴とするFRP管状体。
【0007】
(2)管状体の外表面に配置される前記[B]のFRP層を構成する強化繊維の織物および/または不織布に無機繊維を含むことを特徴とする前記(1)に記載のFRP管状体。
【0008】
(3)管状体の外表面に配置される前記[B]のFRP層を構成する強化繊維からなる織物および/または不織布に破断伸度が2〜25%の範囲内の有機繊維を含むことを特徴とする前記(1)または(2)に記載のFRP管状体。
【0009】
(4)管状体の外表面に配置される前記[B]のFRP層のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のFRP管状体。
【0010】
(5)管状体の内表面に織物および/または不織布を強化繊維とするFRP層[C]が配置されてなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のFRP管状体。
【0011】
(6)管状体の全長と、前記管状体の管軸に垂直な断面の最大外周長との比(FRP管状体の全長/管状体の管軸に垂直な断面の最大外周長)が、10〜30の範囲内であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のFRP管状体。
【0012】
(7)管状体が片持ち梁状に片端を固定されて、その固定端からもう一方の端部の範囲内において管軸に垂直方向の荷重が付加されることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のFRP管状体。
【0013】
(8)ガラス基板搬送用ロボットハンドのフォークの一部として使用されることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のFRP管状体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のFRP管状体によれば、軽量かつ大型のロボットハンドに好適なFRP管状体の曲げ剛性向上と機械加工性向上の両立が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、管状体の外表面において、機械加工が必要な部分に必要最低限の厚みと面積で易加工性のFRP層を配置し、それ以外の外表面には、曲げ剛性の向上に大きく寄与するように、曲げモーメントがかかる方向に炭素繊維を集中的に配向したCFRP層を配置することで、曲げ剛性向上と機械加工性確保との両立を可能とするFRP管状体に到達した。
【0016】
以下、本発明の好ましい実施態様例を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施態様に係るFRP管状体の斜視図である。図1に示すように、本発明において、FRP管状体1は、外表面が、管軸方向に対し−5〜+5°の範囲内で一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]2が、外表面の全面積に対して30〜98%の範囲内で配置される。
【0018】
ここで外表面とは、FRP管状体1を管軸に垂直な断面で見た場合に、外周が管軸方向に連続してなる面である。一方、内表面は、FRP管状体1を管軸に垂直な断面で見た場合に、内周が管軸方向に連続してなる面である。
【0019】
外表面において、管軸方向に対し−5〜+5°の範囲内で一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層2を配置することで、管軸方向の曲げモーメントに対して、高い曲げ剛性を確保することが可能である。曲げモーメント方向に平行な断面で見た場合に、引張応力と圧縮応力が最大となる位置、ここでは中立軸から最も離れた外表面に、高弾性材料を所望の方向に配置することで、軽量化を図りながら効率的に高い曲げ剛性を確保できるという利点がある。かつ外表面の全面積に占めるCFRP層[A]2の面積が30〜98%の範囲内とすることで、高剛性確保の効果を安定的に実現することが可能である。これは30%未満であると、十分な曲げ剛性が確保できず、98%より大きいと、後述する機械加工性の低下に繋がるためである。機械加工性を低下させずに、高い曲げ剛性を確保するために、さらに好ましくは、50〜98%の範囲内であり、またさらに好ましくは、75〜98%の範囲内である。
【0020】
このように、高い曲げ剛性を確保するための炭素繊維を強化繊維するCFRP層[A]2は、炭素繊維にマトリクス樹脂を含浸して成形してなるものである。炭素繊維としては、例えばポリアクリルニトリル(PAN)系、ピッチ系、セルロース系、炭化水素による気相成長系などのものを用いることができ、これらを2種類以上併用してもよい。中でも、600〜860GPaの範囲内の高弾性率を備えた炭素繊維を比較的安価に製造することが可能なピッチ系炭素繊維や、ピッチ系ほど高弾性ではないが、弾性率と価格のバランスに優れるPAN系炭素繊維が本発明には適している。
【0021】
また、本発明では、外表面に織物および/または不織布を強化繊維としてマトリクス樹脂を含浸して成形してなる厚みが0.01〜0.2mmの範囲内のFRP層[B]3も配置され、FRP管状体1を形成するFRPの厚み方向への貫通穴4の全外周が上記FRP層[B]3に接していることが重要である。一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]2とは異なり、織物および/または不織布を強化繊維とするFRP層[B]3を、貫通穴などの外表面の機械加工が必要の位置に配置することで、機械加工時に発生する炭素繊維の毛羽立ちやささくれを防止することが可能となる。
【0022】
また、FRP層[B]3の厚みを0.01〜0.2mmの範囲内とすることで、高い曲げ剛性確保と機械加工性向上の両立を図ることが可能となる。0.01mmより薄い場合には、FRP層[B]3が切削抵抗に対する強度を備えることができず、機械加工時に発生する毛羽立ちやささくれを十分に防止することが困難となる。また、0.2mmより厚い場合には、曲げ剛性の低下を招くようになる。このような観点から、FRP層[B]3の厚みは、0.05〜0.15mmであることが、さらに好ましい。
【0023】
上記機械加工性向上の理由から、機械加工などによって形成されるFRP管状体1の外表面の貫通穴4の全外周がFRP層[B]3に接していることで、貫通穴4のいずれの場所でも、炭素繊維の毛羽立ちやささくれを防止することが可能となる。
【0024】
この場合のFRP層[B]3は、図1に示すように、複数の貫通穴4が配置される場合に、各貫通穴4に対応した不連続のFRP層3を配置してもよいし、また、図2に示すように、複数の貫通穴4を内包するように連続したFRP層[B]3を配置してもよい。前者の場合には、高い曲げ剛性の確保がより効果的に達成できるが、FRP層[B]3の配置の位置決めに注意と手間を要する。一方、後者の場合には、高い曲げ剛性の確保の面では、前者よりも若干劣るものの、FRP層[B]3の配置は容易であるという利点がある。
【0025】
FRP層[B]3を構成する強化繊維の織物および/または不織布には、無機繊維を含むことが好ましいが、これは機械加工時の切削面において、強化繊維が軟化したり、溶融したり、大きく伸びて引きちぎられたりすることが少なく、均一な破断面が得られやすいという利点がある。無機繊維としては、具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、単価ケイ素繊維などが使用できる。
【0026】
また、FRP層[B]3を構成する強化繊維の織物および/または不織布には、有機繊維を使用することもできるが、この場合には、均一な破断面が得られやすいという上記と同様の理由から、破断伸度が2〜25%の範囲内の有機繊維を含むことが好ましい。有機繊維としては、具体的には、有機高弾性率繊維(例えば、米国デュポン(株)製のポリアラミド繊維“ケブラー(登録商標)”)や、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維や、有機天然繊維などを使用することができる。
【0027】
一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]2と、織物および/または不織布を強化繊維とするFRP層[B]3とを形成するマトリクス樹脂としては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネート樹脂などを挙げることができ、特にエポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂とすることで、機械加工時の工具の摩擦熱による軟化、溶融を防止することが可能となるため、機械加工性の向上が図れる。
【0028】
管状体の内表面には、外表面と同様に、織物および/または不織布を強化繊維とするFRP層[C]が配置されることも好ましい。これは機械加工時に発生しやすい毛羽立ちやささくれを、外表面だけでなく内表面でも防止することが可能となるとともに、柱状の芯体の外周面にFRP層[C]を配置し、その外側にCFRP層[A]2やFRP層[B]3などを配置して硬化させた後に芯体を抜き取って管状体を得る公知の製造方法において、芯体を滑らかに抜き取ることが可能となり、FRP管状体1の内表面と芯体の破壊を防止することが可能となる。このFRP層[C]としては、前記したFRP層[B]3と同様の強化繊維の織物および/または不織布にマトリクス樹脂を含浸して成形してなるものが適用できる。
【0029】
FRP管状体1の全長と、上記管状体1の管軸に垂直な断面の最大外周長との比(FRP管状体1の全長/管状体1の管軸に垂直な断面の最大外周長)は、10〜30の範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、12〜20の範囲内である。上記範囲となるような細長いFRP管状体では、曲げ剛性の向上を図るための設計自由度は必ずしも高いとは言えないため、本発明の手段により高い曲げ剛性を確保することの必要性が最も高まる。
【0030】
また、FRP管状体1が片持ち梁状に片端を固定されて、該固定端からもう一方の端部の範囲内において管軸に垂直方向の荷重が付加される構造が好ましい。このような構造の場合には、FRP管状体1は荷重に対して片端のみで支持されることから、一定の長さと断面形状を備えたFRP管状体1としては、力学的に過酷な荷重条件となるため、本発明の手段により高い曲げ剛性を確保することの必要性が最も高まる。
【0031】
さらに、FRP管状体1は、ガラス基板搬送用ロボットハンドのフォークの一部として使用されることが好ましい。ロボットハンドのフォークでは、片持ち梁状に固定されて、該固定端からもう一方の端部の範囲内において管軸に垂直方向の荷重が付加されることが多いために、高い曲げ剛性が特に求められることと、他部品との接合箇所を備えることが多いために、機械加工性の向上が求められることから、本発明の適用には最も適している。
【0032】
本発明のFRP管状体1の断面形状は、円形、矩形など、いかなる形状のものであってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。なお、本実施例において、炭素繊維の引張弾性率、繊維強化プラスチックにおける炭素繊維含有率、有機繊維の破断伸度、FRP管状体のFRP層の厚み、たわみ量、機械加工性は、次のようにして測定した。
【0034】
(a)炭素繊維の引張弾性率
JIS R 7601(1986年)の炭素繊維試験方法の樹脂含浸繊維束試験方法に準じて、強化繊維の引張弾性率を測定した。試験片長は200mmとし、試験回数は5回で、その平均値を採用した。
【0035】
(b)繊維強化プラスチックの炭素繊維含有率
JIS K 7071(1988年)の炭素繊維及びエポキシ樹脂からなるプリプレグの試験方法に準じて、繊維強化プラスチックの炭素繊維重量含有率を測定した。試験片の寸法は100mm×100mmとし、試験回数は3回でその平均値を採用した。
【0036】
(c)有機繊維の破断伸度
JIS L 1095(1999年)の一般紡績糸試験方法の付属書3(規定)繊維製品−パッケージからの糸−単糸の引張強さ及び切断時の伸びの測定に準じて、有機繊維の破断伸度を測定した。試験回数は5回で、その平均値を採用した。
【0037】
(d)FRP層の厚み
FRP管状体の管軸に垂直な断面が露わになるように、ダイヤモンドカッターで切断し、計10箇所の断面をデジタルマイクロスコープで100倍に拡大観察して、FRP層の厚みをデジタル画像上で測定した。なお、本実施例では、デジタルマイクロスコープとして、(株)キーエンス製VHX−500を用いた。
【0038】
(e)FRP管状体のたわみ量
FRP管状体の片端の長さ100mm部分に対し、貫通穴を配置した面を上向きにして、定盤上に強固に固定した状態で、スパン1100mmの片持ち梁状の支持構造を形成し、もう一方の端部に5kgの錘をぶら下げた際のFRP管状体先端下部の鉛直下向きの変位量を測定した。
【0039】
(f)機械加工性
FRP管状体に機械加工で貫通穴を配置した際の外表面の毛羽立ちやささくれの発生程度を測定した。
【0040】
〈実施例1〉
引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維(東レ(株)製”トレカ(登録商標)”T300B−1K)をストランド密度が縦糸、横糸ともに22.5本/25mmとなるような平織組織の織物に、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付120g/m、炭素繊維含有率56重量%のクロスプリプレグを用意した。このクロスプリプレグの1層あたりの厚みは、0.12mmである。
【0041】
また、引張弾性率が230GPaの連続炭素繊維(東レ(株)製”トレカ(登録商標)”T700S−12K)を一方向にシート状に引き揃え、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維目付300g/m、炭素繊維含有率63重量%の一方向プリプレグを用意した。この一方向プリプレグの1層あたりの厚みは0.31mmである。
【0042】
これらプリプレグを積層、硬化させて、長さ1200mm、管軸に垂直な断面の高さ20mm、幅30mm、厚み2mmのFRP製の矩形断面管状成形物を得た。
【0043】
このときの積層構成は、管状成形物の最内層がクロスプリプレグからなる1層を織物の縦糸、横糸が、管軸と平行、垂直となるように配置し、その外側に一方向プリプレグの炭素繊維が管軸と平行となるようにして6層連続で配置されている。さらに、矩形断面管状成形物を形成する4面の中で、幅方向を形成する1面上の外表面のみに、成形物の長さ1200mmを5等分するような位置で、長さ50mm、幅20mmのクロスプリプレグ1層が計4ヶ所配置されている。
【0044】
ここで得た矩形断面管状積層物に対して、外表面に配されたそれぞれのクロスプリプレグの中心位置において、NCルータに取り付けた直径6mmの超鋼エンドミルを1600rpmで回転させて、長さ12mm、幅12mmの貫通穴加工をして図1のようなFRP管状体を得た。
【0045】
得られたFRP管状体について、構造や性能などを測定した結果を表1に示す。たわみ量、機械加工性の測定結果から、本FRP管状体は、高い曲げ剛性を確保しながら、機械加工性に優れる特徴を備えている。
【0046】
〈実施例2〉
実施例1の外表面に配置した計4ヶ所のクロスプリプレグ1層の代わりに、破断伸度10%のポリエチレンテレフタレートからなる繊維目付130gの不織布に、繊維含有率56重量%となるようにエポキシ樹脂を含浸した厚み0.12mmの不織布プリプレグ1層を使用した以外は、実施例1と同様にして図1に示すようなFRP管状体を得た。
得られたFRP管状体について、構造や性能などを測定した結果を表1に示す。たわみ量、機械加工性の測定結果から、本FRP管状体は、高い曲げ剛性を確保しながら、機械加工性に優れる特徴を備えている。
【0047】
〈実施例3〉
実施例1の外表面に配置した計4ヶ所のクロスプリプレグ1層の代わりに、長さ1200mm、幅20mmのクロスプリプレグ1層を使用した以外は、実施例1と同様にして図2に示すようなFRP管状体を得た。ここで、外表面に配置された計4ヶ所の貫通穴は、実施例1と同様の形状、位置である。
得られたFRP管状体について、構造や性能などを測定した結果を表1に示す。たわみ量、機械加工性の測定結果から、本FRP管状体は、高い曲げ剛性を確保しながら、機械加工性に優れる特徴を備えている。
【0048】
〈比較例1〉
実施例1の外表面に配置した計4ヶ所のクロスプリプレグ1層の代わりに、破断伸度10%のポリエチレンテレフタレートからなる繊維目付4gの不織布に、繊維含有率56重量%となるようにエポキシ樹脂を含浸した厚み0.004mmの不織布プリプレグ1層を使用した以外は、実施例1と同様にして図1に示すようなFRP管状体を得た。
得られたFRP管状体について、構造や性能などを測定した結果を表1に示す。たわみ量、機械加工性の測定結果から、本FRP管状体は、高い曲げ剛性を確保するが、機械加工性については向上が見られない。
【0049】
〈比較例2〉
実施例1の外表面に配置した計4ヶ所のクロスプリプレグ1層を全く配置しないこと以外は、実施例1と同様にして図3に示すようなFRP管状体を得た。比較例2の外表面は、全面が一方向プリプレグからなるFRP層にて形成されている。ここで、外表面に配置された計4ヶ所の貫通穴は、実施例1と同様の形状、位置である。
得られたFRP管状体について、構造や性能などを測定した結果を表1に示す。たわみ量、機械加工性の測定結果から、本FRP管状体は、高い曲げ剛性を確保するが、機械加工性については全く向上が見られない。
【0050】
〈比較例3〉
実施例1の外表面に配置した計4ヶ所のクロスプリプレグ1層の代わりに、外表面全てをクロスプリプレグ3層として、かつ実施例1の連続で配置した一方向プリプレグ6層を5層にした以外は、実施例1と同様にして図4に示すようなFRP管状体を得た。比較例3の外表面は、全面がクロスプリプレグからなるFRP層にて形成されている。ここで、外表面に配置された計4ヶ所の貫通穴は、実施例1と同様の形状、位置である。
得られたFRP管状体について、構造や性能などを測定した結果を表1に示す。たわみ量、機械加工性の測定結果から、本FRP管状体は、機械加工性に優れるが、曲げ剛性が著しく低下している。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ガラス基板搬送用のロボットハンドのフォークに用いられるFRP管状体に限らず、軽量かつ高剛性が求められ、優れた機械加工性が必要とされる、建築部材や移動機器部材などに広く応用することができるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施態様に係るFRP管状体の斜視図である。
【図2】本発明の他の一実施態様に係るFRP管状体の斜視図である。
【図3】比較例2で得られるFRP管状体の斜視図である。
【図4】比較例3で得られるFRP管状体の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1:FRP管状体
2:一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]
3:織物および/または不織布を強化繊維とするFRP層[B]
4:貫通穴
5:FRP管状体の全長
6:管軸に垂直な断面の最大外周長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックからなる管状体において、外表面が、管軸方向に対し−5〜+5°の範囲内で一方向に引き揃えられた炭素繊維を強化繊維とするCFRP層[A]と、織物および/または不織布を強化繊維として厚みが0.01〜0.2mmの範囲内のFRP層[B]とからなり、外表面の全面積に占めるCFRP層[A]の面積が30〜98%の範囲内であり、かつ管状体を形成するFRPの厚み方向への貫通穴の外周がFRP層[B]に接していることを特徴とするFRP管状体。
【請求項2】
管状体の外表面に配置される前記[B]のFRP層を構成する強化繊維の織物および/または不織布に無機繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載のFRP管状体。
【請求項3】
管状体の外表面に配置される前記[B]のFRP層を構成する強化繊維からなる織物および/または不織布に破断伸度が2〜25%の範囲内の有機繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のFRP管状体。
【請求項4】
管状体の外表面に配置される前記[B]のFRP層のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のFRP管状体。
【請求項5】
管状体の内表面に織物および/または不織布を強化繊維とするFRP層[C]が配置されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のFRP管状体。
【請求項6】
管状体の全長と、前記管状体の管軸に垂直な断面の最大外周長との比(FRP管状体の全長/管状体の管軸に垂直な断面の最大外周長)が、10〜30の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のFRP管状体。
【請求項7】
管状体が片持ち梁状に片端を固定されて、その固定端からもう一方の端部の範囲内において管軸に垂直方向の荷重が付加されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のFRP管状体。
【請求項8】
ガラス基板搬送用ロボットハンドのフォークの一部として使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のFRP管状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−207463(P2008−207463A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46697(P2007−46697)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】