説明

FRP製引抜き構造部材およびその製造方法

【課題】各層の強化繊維の配向が所定の形態に維持され、構造部材全体として、目標とする力学特性を安定して発現可能なFRP製引抜き構造部材とその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂含浸強化繊維シート層を複数層積層してダイを通し、所定形態の積層体を引き抜くことにより製造される構造部材であって、積層体は、少なくとも、強化繊維が実質的に引抜き方向にのみ配向された第1の強化繊維シート層と、引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層を含み、かつ、積層体の最表層から8番目の層位置までに存在する第2の強化繊維シート層が、その基材の表面上にマット成分を含む薄層が基材と一体的に保持された強化繊維シート層に構成されていることを特徴とするFRP製引抜き構造部材、およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP製引抜き構造部材およびその製造方法に関し、とくに、強化繊維の配向を安定化し均一な所望の力学特性を発揮可能なFRP製引抜き構造部材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の横断面形状を備えたFRP製引抜き構造部材は、通常、樹脂含浸強化繊維シート層を複数層所定の順序で積層して所定形状を有するダイを通し、ダイから所定の横断面形状の積層体を引き抜くことにより製造される。このようなFRP製構造部材の引抜き成形においては、従来、成形のし易さ、品質の安定性の面から、主に強化繊維が引抜き方向に一方向に配向されたロービング材と、これを取り巻くマット状のシート材を用いて、これらを積層する形態が採用されていた。しかし、このように成形されるFRP製引抜き材を構造部材として用いる場合には、とくに十分な強度を有する接合構造を実現できることを考慮する必要がある。
【0003】
構造部材の接合構造としては、一般的にボルト等による機械式接合が採用されることが多いが、上記のような主として一方向基材を用いた積層構造では、とくにボルト穴等の設置が求められる機械式接合において、応力集中や締結応力に耐え得るだけの十分に高い強度が得られにくい。そのため、強化繊維が引抜き方向以外の方向に配向された基材を組み合わせて積層し、それによって、とくに構造部材の接合部に対しても十分に高い強度を付与できるようにする設計上の配慮が要求される。例えば、引抜き方向を0°方向とする場合、±45°層や90°方向の強化繊維を有する層などを積層することが要求される。このような±45°層や90°方向の強化繊維を有する層などは、例えば織物層、とくに互いに異なる複数の方向に糸条を織成した多軸布帛層として準備することが可能である。
【0004】
上記のような強化繊維が引抜き方向以外の方向に配向された基材層の積層においては、例えばハンドレイアップやRTM(resin Transfer Molding)成形方法の場合には、成形に際して強化繊維を意図した所望の方向に配向させることは比較的容易に行うことはできるが、本発明のような引抜き成形の場合には、積層体をダイ中に通す際に、積層体がダイの内面から抵抗を受け、その抵抗によって、とくに0°方向以外の強化繊維に蛇行やヨレが生じやすく、また、0°方向の一方向基材では強化繊維の配置に偏りが生じやすい。このような強化繊維に蛇行やヨレ、強化繊維の配置の偏りが生じると、強化繊維配向の不安定化に伴う力学特性(剛性や強度、接合強度など)のばらつき、換言すれば、局部的な力学特性の低下が生じ、望ましい構造部材の強度、とくに接合部における高い強度は期待できなくなるおそれがある。
【0005】
FRP製構造部材の引抜き成形に関して、特許文献1には、多軸布帛とロービング束とマットの層を組み合わせて積層した構成が示されているが、この特許文献1に開示されている構成では、引抜き時に起こる多軸布帛の強化繊維蛇行を防ぐために、その周囲のマット層を高目付で配置する必要があり、強度向上への寄与が極めて低いマット層の占める割合が高くなるため、その分、構造部材全体の強度低下を招くおそれがある。また、引抜き時のダイ内面の抵抗がロービング束に影響を及ぼし、ロービング束の配置に偏りが生じやすくなって、部材の品質にばらつきが生じやすくなるという問題もある。
【0006】
また、特許文献2には、各種の強化繊維配向層を積層したFRP製構造部材が開示されているが、基本的に予め形成したプリプレグの積層構成であるため、上記のようなFRP製構造部材の引抜き成形に関する問題については全く考慮されていない。
【特許文献1】特開2003−11242号公報
【特許文献2】特開2004−60406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、強化繊維シート材の積層構成を有するFRP製構造部材の引抜き成形における前述のような問題点に着目し、各層の強化繊維の配向が所定の形態に維持され、構造部材全体として、目標とする力学特性、とくに目標とする接合部の強度を安定して発現可能なFRP製引抜き構造部材、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るFRP製引抜き構造部材は、樹脂含浸強化繊維シート層を複数層積層してダイを通し、所定形態の積層体を引き抜くことにより製造されるFRP製引抜き構造部材であって、前記積層体は、少なくとも、強化繊維が実質的に引抜き方向にのみ配向された第1の強化繊維シート層と、引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層を含み、かつ、積層体の最表層から8番目の層位置までに存在する前記第2の強化繊維シート層が、前記引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維の基材の表面上にマット成分を含む薄層が前記基材と一体的に保持された強化繊維シート層に構成されていることを特徴とするものからなる。マット成分を含む薄層としては、例えば、チョップドストランドマットあるいはチョップドストランドを用いることができる。
【0009】
このような本発明に係るFRP製引抜き構造部材においては、マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層のマット成分が、引抜き成形時に積層体がダイ内面から受ける抵抗力を緩和し、積層体の各層が、強化繊維の配向を乱すような力を受けることが抑制され、大きな強化繊維の配向の乱れの発生が防止される。つまり、引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層は、引抜き時にとくにダイ内面から抵抗を受けやすいので、この抵抗を受けやすい箇所に位置する第2の強化繊維シート層を、上記のように強化繊維の基材の表面上にマット成分を含む薄層が基材と一体的に保持された強化繊維シート層に構成したものである。上記力は、ダイ内面の抵抗に起因するものであるから、ダイ内面からの抵抗の積層体内部側に向けての伝達経路を遮断あるいは伝達される抵抗力を大きく緩和すればよいことになり、その役目を、第2の強化繊維シート層の基材の表面上に一体的に保持されたマット成分を含む層に担わせることになる。マット成分は、繊維がランダムに配置されたものであるから、自身の内部では応力を伝達する機能は基本的に持たず、薄層であっても、ダイ内面からの抵抗の伝達経路の遮断あるいは伝達される抵抗力の大幅な緩和が可能である。本発明では、このようなマット成分を含む層が第2の強化繊維シート層の基材の表面上に一体的に保持されるので、マット成分を含む層が薄層であっても、ダイ内面側からの抵抗力の伝達を効率よく阻止でき、優れた抵抗の伝達遮断あるいは伝達される抵抗力の大幅な緩和性能が得られることになる。ダイ内面側からの抵抗の大幅な緩和により、積層体内層側の強化繊維の配向の乱れが効果的に抑制される。マット成分を含む層が薄層でよいことにより、上記のようなダイ内面からの抵抗緩和効果は発揮できるもののそれ自体によっては構造部材の強度向上機能等は期待できないマット成分の量を極力少量に抑えつつ、優れた強化繊維の乱れ発生防止効果を発揮させることが可能になる。
【0010】
そして、積層体を形成するために積層された層の中でも、とくに上記マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層が積層体の最表層に近い位置に配置されている場合に、この第2の強化繊維シート層による上記強化繊維の配向の乱れの発生の抑制効果がより確実に得られる。そこで、本発明では、多数の試験の結果、積層体の最表層から8番目の層位置までに範囲内に、このマット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層が配置されていると、とくにそれよりも内層側への上記ダイ内面から受ける抵抗力の影響を顕著に緩和できることが判明したので、最表層から8番目までの第2の強化繊維シート層に、本発明によるマット成分を含む薄層の一体化構成を適用することとした。ただし、本発明では、最表層から8番目までの第2の強化繊維シート層の少なくとも1層が、本発明に係るマット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層の構成とされている限り、本発明に含まれるものとする。したがって、例えば、最表層から4番目までの第2の強化繊維シート層の少なくとも1層が、本発明に係る構成を有する第2の強化繊維シート層に構成されている場合も、本発明に含まれる。一般に、引抜き成形により製造されるFRP製構造部材は、8層よりも相当多い積層数とされることが多いので、通常、最表層から8番目までの層の範囲内に、必然的に引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層が含まれることとなるので、その範囲内に対して本発明に係る構成を適用すればよい。このようにダイ内面からの抵抗が大幅に効率よく緩和される結果、強化繊維の配向の乱れ、とくに引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維の蛇行やヨレの発生が抑えられ、局部的な力学特性の低下が防止された、全体にわたって均一に目標とする力学特性を発現可能なFRP製引抜き構造部材が得られる。
【0011】
本発明においては、とくに、上記マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層が、第1の強化繊維シート層よりも積層体の表層側に配置されていることが好ましい。このような積層構成を有することにより、マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層による上記ダイ内面からの抵抗の緩和効果が、とくにそれよりも内層に向けて効率よく発揮され、内層側に位置する第1の強化繊維シート層における強化繊維に偏り等の配向の乱れが発生することが抑制される。
【0012】
上記マット成分を含む薄層は、例えばステッチにより上記第2の強化繊維シート層の基材に一体的に保持させることが可能である。ステッチによる保持により、マット成分を含む層が薄層であっても、確実に所定位置に所定の基材表面範囲全体にわたって固定保持されることになる。
【0013】
本発明においては、上記第1の強化繊維シート層としては、引抜き方向に引き揃えられた強化繊維糸条と、引抜き方向と交差する方向に延び前記強化繊維糸条を保持する補助糸とから形成された一方向織物からなる構成を採用できる。一方向織物構成としておくことにより、取扱いが容易になるとともに、積層の際にも所定の繊維配向を維持しやすくなる。この場合、上記一方向織物のシート幅方向端部に、上記補助糸を用いて耳止めが施されていることが好ましい。耳止めが施されていると、引抜き時にも、引抜き方向に配向されている強化繊維糸条に偏りが生じにくくなり、均一な力学特性を有するFRP製引抜き構造部材が一層得られやすくなる。
【0014】
また、上記第2の強化繊維シート層としては、強化繊維糸条が互いに異なる方向に延びるように織成された多軸布帛からなる構成を採用できる。例えば、引抜き方向を0°方向とした場合、±45°配向の二軸織物や、0°/90°配向の二軸織物、さらにはその他の二軸織物や3軸織物、4軸織物等の採用が可能である。このような多軸布帛を積層しておくことで、とくに、FRP製引抜き構造部材の機械式接合部の強度を向上できる。
【0015】
また、上記第2の強化繊維シート層における上記マット成分を含む薄層の重量比としては、例えば、上記強化繊維の基材に対して5〜30重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜20重量%の範囲が望ましい。このような範囲内に設定することにより、マット成分の量を抑えつつ、前述のような優れた強化繊維の乱れ発生防止効果を維持することが可能になる。
【0016】
また、本発明に係るFRP製引抜き構造部材においては、少なくとも上記第1の強化繊維シート層の強化繊維が炭素繊維からなることが好ましい。第1の強化繊維シート層は、強化繊維が引抜き方向に配向されており、FRP製構造部材における曲げ強度等の主要力学特性を担う層であるから、高い力学特性を発現可能な炭素繊維を強化繊維として用いることが好ましい。また、このような主要力学特性を担うための炭素繊維は、一般に他の強化繊維に比べ、剛直性が高いので、とくに一方向性基材の場合、偏荷重等によって分布や配向に偏りが生じやすいので、そのような炭素繊維からなる第1の強化繊維シート層を含む場合、本発明による上記のような優れた強化繊維の乱れ発生防止効果は特に有効である。ただし、他の強化繊維、例えばガラス繊維やアラミド繊維を使用することも、勿論可能である。
【0017】
FRP製引抜き構造部材における上記積層体全体としてみた場合にあっても、高い力学特性を発現可能な炭素繊維が含まれていることが好ましく、積層体として体積比で20〜50%の炭素繊維を含んでいることが好ましい。他の繊維種も含まれている場合、より好ましくは体積比で25〜45%の炭素繊維を含んでいる構成が、コストと強度特性の両面からのバランスが良い。
【0018】
本発明に係るFRP製引抜き構造部材の製造方法は、樹脂含浸強化繊維シート層を複数層積層してダイを通し、所定形態の積層体を引き抜くことによりFRP製引抜き構造部材を製造する方法であって、前記積層体を、少なくとも、強化繊維が実質的に引抜き方向にのみ配向された第1の強化繊維シート層と、引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層を含む形態に形成し、かつ、前記第2の強化繊維シート層が積層体の最表層から8番目の層位置までに存在する場合に、その範囲内に存在する前記第2の強化繊維シート層を、予め、前記引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維の基材の表面上にマット成分を含む薄層が前記基材と一体的に保持された強化繊維シート層として構成しておくことを特徴とする方法からなる。
【0019】
この本発明に係るFRP製引抜き構造部材の製造方法においても、上記マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層を、第1の強化繊維シート層よりも積層体の表層側に配置することが好ましい。
【0020】
また、上記マット成分を含む薄層は、ステッチにより上記第2の強化繊維シート層の基材に一体的に保持させることができる。
【0021】
また、上記第1の強化繊維シート層として、引抜き方向に引き揃えられた強化繊維糸条と、引抜き方向と交差する方向に延び前記強化繊維糸条を保持する補助糸とから形成された一方向織物を用いることができる。この場合、一方向織物のシート幅方向端部に、上記補助糸を用いて耳止めを施しておくことが好ましい。
【0022】
また、上記第2の強化繊維シート層として、強化繊維糸条が互いに異なる方向に延びるように織成された多軸布帛を用いることができる。
【0023】
また、上記第2の強化繊維シート層における上記マット成分を含む薄層の重量比を前記強化繊維の基材に対して5〜30重量%の範囲、より好ましくは10〜20重量%の範囲に設定することが望ましい。
【0024】
また、少なくとも上記第1の強化繊維シート層の強化繊維として炭素繊維を用いることが好ましい。
【0025】
また、上記積層体全体としても、体積比で20〜50%の炭素繊維を含ませることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るFRP製引抜き構造部材およびその製造方法によれば、簡単な構成の第2の強化繊維シート層を表層から所定の範囲内に積層しておくだけで、内部の強化繊維の配向の乱れを防止して、接合部を含む構造部材全体として、目標とする高い力学特性を安定して発現可能なFRP製引抜き構造部材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明の一実施態様に係るFRP製引抜き構造部材およびその製造方法を示している。図1は、引抜き成形の形態例を示しており、強化繊維を含む各強化繊維シート1、2、3、・・・が巻き出され、液状の樹脂を収容した樹脂バス11中を通過されることにより各強化繊維シート1、2、3、・・・に樹脂が含浸され、樹脂含浸強化繊維シートが所定の枚数だけ複数層積層されて、所定の横断面形状を有するダイ12(金型)中に通される。ダイ12からは、ダイ12の横断面形状に対応する所定形態の積層体13が引抜き成形品として引抜き方向14に引き抜かれ、目標とするFRP製引抜き構造部材が製造される。
【0028】
図2は、ダイ12から引抜き成形されたFRP製引抜き構造部材としての積層体13を示しており、本実施態様では、積層される強化繊維シート層として、最表層としての第1層1が表面カバー層としてのマット層からなり、第2層2が、±45°に配向された強化繊維糸条からなる多軸布帛の基材2aの表面上にマット成分を含む薄層2bとしてチョップドストランドマットあるいはチョップドストランドからなる薄層がステッチにより保持された、本発明で言う第2の強化繊維シート層からなり(±45°強化繊維シート層)、第3層3が、0°方向(引抜き方向)と90°方向(引抜き方向と直交する方向)に配向された強化繊維糸条からなる多軸布帛の基材3aの表面上にマット成分を含む薄層3bとしてチョップドストランドマットあるいはチョップドストランドからなる薄層がステッチにより保持された、本発明で言う第2の強化繊維シート層からなる(0°/90°強化繊維シート層)。そして、第3層3の内側に、強化繊維糸条が0°方向(引抜き方向)に配向され、シート幅方向端部が耳止めされた一方向織物からなる、本発明で言う第1の強化繊維シート層4が配置されている。この第1の強化繊維シート層4の内側にも複数の強化繊維シート層が配置され、全体として積層体13を構成している。
【0029】
このように、積層体13の最表層から8番目までの第2の強化繊維シート層2、3として、マット成分を含む薄層2b、3bがステッチにより保持されていることにより、前述の如く、引抜き時にダイ12の内面からの抵抗力が内層に及ぶことが大幅に緩和され、第2の強化繊維シート層2、3自体の強化繊維の蛇行やヨレ等の乱れの発生が防止されるとともに、それらの内層側に位置する第1の強化繊維シート層4へのダイ12の内面からの抵抗力の影響が大幅に緩和され、第1の強化繊維シート層4における強化繊維の偏り等の発生も防止される。その結果、引抜き成形されたFRP製構造部材は、局部的な強度低下等を発生させることなく、全体にわたって優れた力学特性を発現することが可能になる。とくに、FRP製構造部材が機械式接合部を有する場合にあっても、その接合部の高い強度が保証される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るFRP製引抜き構造部材およびその製造方法は、第1、第2の強化繊維シート層の積層構成を有し、引抜き成形されるあらゆるFRP製構造部材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施態様に係るFRP製引抜き構造部材の製造方法を示す概略構成図である。
【図2】図1の方法により製造されるFRP製引抜き構造部材の表層側の積層例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1層(最表層)
2 第2の強化繊維シート層としての第2層
2a 第2層の多軸布帛の基材
2b マット成分を含む薄層
3 第2の強化繊維シート層としての第3層
3a 第3層の多軸布帛の基材
3b マット成分を含む薄層
4 第1の強化繊維シート層
11 樹脂バス
12 ダイ
13 積層体
14 引抜き方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含浸強化繊維シート層を複数層積層してダイを通し、所定形態の積層体を引き抜くことにより製造されるFRP製引抜き構造部材であって、前記積層体は、少なくとも、強化繊維が実質的に引抜き方向にのみ配向された第1の強化繊維シート層と、引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層を含み、かつ、積層体の最表層から8番目の層位置までに存在する前記第2の強化繊維シート層が、前記引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維の基材の表面上にマット成分を含む薄層が前記基材と一体的に保持された強化繊維シート層に構成されていることを特徴とするFRP製引抜き構造部材。
【請求項2】
前記マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層が、第1の強化繊維シート層よりも積層体の表層側に配置されている、請求項1に記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項3】
前記マット成分を含む薄層がステッチにより前記第2の強化繊維シート層の基材に一体的に保持されている、請求項1または2に記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項4】
前記第1の強化繊維シート層が、引抜き方向に引き揃えられた強化繊維糸条と、引抜き方向と交差する方向に延び前記強化繊維糸条を保持する補助糸とから形成された一方向織物からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項5】
前記一方向織物のシート幅方向端部に、前記補助糸を用いて耳止めが施されている、請求項4に記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項6】
前記第2の強化繊維シート層が、強化繊維糸条が互いに異なる方向に延びるように織成された多軸布帛からなる、請求項1〜5のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項7】
前記第2の強化繊維シート層における前記マット成分を含む薄層の重量比が前記強化繊維の基材に対して5〜30重量%の範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項8】
少なくとも前記第1の強化繊維シート層の強化繊維が炭素繊維からなる、請求項1〜7のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項9】
前記積層体が体積比で20〜50%の炭素繊維を含んでいる、請求項1〜8のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材。
【請求項10】
樹脂含浸強化繊維シート層を複数層積層してダイを通し、所定形態の積層体を引き抜くことによりFRP製引抜き構造部材を製造する方法であって、前記積層体を、少なくとも、強化繊維が実質的に引抜き方向にのみ配向された第1の強化繊維シート層と、引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維を有する第2の強化繊維シート層を含む形態に形成し、かつ、前記第2の強化繊維シート層が積層体の最表層から8番目の層位置までに存在する場合に、その範囲内に存在する前記第2の強化繊維シート層を、予め、前記引抜き方向以外の方向に配向された強化繊維の基材の表面上にマット成分を含む薄層が前記基材と一体的に保持された強化繊維シート層として構成しておくことを特徴とするFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項11】
前記マット成分を含む薄層が一体的に保持された第2の強化繊維シート層を、第1の強化繊維シート層よりも積層体の表層側に配置する、請求項10に記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項12】
前記マット成分を含む薄層をステッチにより前記第2の強化繊維シート層の基材に一体的に保持させる、請求項10または11に記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項13】
前記第1の強化繊維シート層として、引抜き方向に引き揃えられた強化繊維糸条と、引抜き方向と交差する方向に延び前記強化繊維糸条を保持する補助糸とから形成された一方向織物を用いる、請求項10〜12のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項14】
前記一方向織物のシート幅方向端部に、前記補助糸を用いて耳止めを施しておく、請求項13に記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項15】
前記第2の強化繊維シート層として、強化繊維糸条が互いに異なる方向に延びるように織成された多軸布帛を用いる、請求項10〜14のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項16】
前記第2の強化繊維シート層における前記マット成分を含む薄層の重量比を前記強化繊維の基材に対して5〜30重量%の範囲に設定する、請求項10〜15のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項17】
少なくとも前記第1の強化繊維シート層の強化繊維として炭素繊維を用いる、請求項10〜16のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。
【請求項18】
前記積層体に体積比で20〜50%の炭素繊維を含ませる、請求項10〜17のいずれかに記載のFRP製引抜き構造部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−125660(P2010−125660A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301344(P2008−301344)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(304011902)福井ファイバーテック株式会社 (5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】