説明

FTMS変数を最適化するための方法、システム、および装置

特定の典型的な実施形態は、FTMSを自動的に最適化する方法を提供する。本方法は、複数の潜在的アクティビティを含んでいてよく、それらの一部は自動的に、繰り返して、および/または枝分かれさせて実施することができ、そしてそれらの一部は引き続いて行われる。各試料が実質的に類似の分子数を有する複数のFTMS試料各々について、FTMSスペクトル出力信号に関する合成振幅を入手できる。FTMS変数を繰り返し変化させ、合成振幅の関数である最適化パラメータの値が実質的に収束するまで合成振幅を再入手することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、その全体が参照して本明細書に組み込まれる2002年8月29日に出願された係属中の米国仮出願第60/406,857号(出願人書類整理番号第03P04172US号)に対する優先権を主張する。
【0002】
「フーリエ変換型イオンサイクロトロン共鳴質量分析の方法および装置」と題する米国特許第3,937,955号(Comisarow)は、申立てによると次のように「気体試料は真空チェンバ内に封入され、イオン化されたイオンサイクロトロン共鳴セル内に導入される。磁場はイオンを円軌道へ拘束する。イオン−分子反応を発生させるために適合する任意の遅延時間をおいた後、磁場に対して直角に配置されるパルス化された広帯域励振電場がイオンに印加される。印加電場の周波数が種々のイオンの共鳴周波数に達するにつれて、それらのイオンは電場からエネルギーを吸収し、スパイラル路からより大きな半径軌道へ加速する。励起運動は検知されて時間領域内でデジタル化される。デジタル化の結果は、分析のために周波数領域内へフーリエ変換される。所望の場合は、連続的なパルス化された広帯域励振電場を印加することができ、結果として生じる運動における変化はフーリエ変換の前に逐次的方法で検知、デジタル化、そして蓄積することができる」と、記載している。要約書を参照されたい。
【0003】
「フーリエ変換型質量分析計」と題する米国特許第5,264,697号(Nakagawa)は、申立てによると、「本発明は、既知の成分から構成されるガス試料中の特定成分を分析するために適合するフーリエ変換型質量分析計であって、高真空セルに印加される高周波数電場が高真空セルに印加される静磁場の長周期変動に起因する偏差を示すことを防止するのに適したフーリエ変換型質量分析計に関しており、この質量分析計は印加された磁場の長周期変動が特定成分のイオンサイクロトロン共鳴周波数における偏差として検出され、高周波数電場を形成する高周波数がイオンサイクロトロン共鳴周波数の変動にしたがって変動することを特徴とする」と記載している。要約書を参照されたい。
【0004】
「線形多重極イオントラップにおけるフーリエ変換型質量分析(FTMS)のための方法および装置」と題する米国特許出願第20020190205号(Park)は、申立てによると、「それによりでイオン源からイオンを選択して多重極分析システムを経てイオンが誘導検出により捕捉されて分析される方法へ移動させることができる手段および方法」について記載している。高圧で発生させられたイオンは、ポンプおよびキャピラリーシステムによって多重極機器内へ移動させられる。多重極機器は、両側に2つの捕捉区域を備える1つの分析区域から構成される。適当な電圧が印加されると、捕捉区域はイオンを分析領域内に捕捉する。これらのイオンは、次に2組の検出電極によって検出される」と、記載している。要約書を参照されたい。
概括
【0005】
特定の典型的な実施形態は、FTMSを自動的に最適化する方法を提供する。本方法は、複数の潜在的アクティビティを含んでいてよく、それらの一部は自動的に、繰り返して、および/または枝分かれさせて実施することができ、そしてそれらの一部は引き続いて行われる。各試料が実質的に類似の分子数を有する複数のFTMS試料各々について、FTMSスペクトル出力信号に関する合成振幅を入手できる。FTMS変数を繰り返し変化させ、合成振幅の関数である最適化パラメータの値が実質的に収束するまで合成振幅を再入手することができる。
【0006】
特定の典型的な実施形態は、FTMSを用いて反復定量解析を実施する方法を提供する。本方法は、複数の潜在的アクティビティを含む可能性があるが、それらの一部は自動的に、繰り返して、および/または枝分かれさせて実施することができ、そしてそれらの一部は引き続いて行われる。少なくとも1つの所定の試料供給源から試料を入手してFTMSへ供給することができる。FTMSのための少なくとも1つの変数を最適化できる。FTMSから複数の出力を取得できる。試料の少なくとも1つの主要なイオン成分の同一性を確定できる。少なくとも1つの主要なイオン成分の量を決定できる。
【0007】
考えられる極めて多数の実施形態は以下の詳細な説明および添付の図面によりより明瞭に理解できる。
【0008】
質量分析法は、質量分光測定法とも呼ばれており、分子の質量測定を可能にする機器的アプローチである。ほぼ全ての質量分析計には、真空システム、試料導入機器、イオン源、質量分析器、およびイオン検出器が含まれる。質量分析計は、分子イオンをイオン化し、分離し、そして測定することによってそれらの質量電荷比(m/z)および/またはイオンの「分子量」(時には単純にイオンの「質量」と呼ぶ)にしたがって化合物の分子量を決定する。イオンは、イオン源内で電荷の消失または取得のどちらか(例、電子の放出、プロトン化、または脱プロトン化)を誘導することにより生成される。イオンは気相内で生成すると質量分析器内に導かれ、質量にしたがって分離され、その後で検出できる。イオン化、イオンの分離および検出の結果は質量スペクトルであり、分子量あるいは構造的情報さえ提供できる。
【0009】
質量分析計は、無機、有機、および生物有機化学物質の分析における広範囲の用途において有用である。多くの例には、地質学的試料の年代決定、ペプチドおよびタンパク質の配列、非共有結合複合体および免疫学的分子についての研究、DNA塩基配列決定、無傷ウイルスの解析;薬物検査および新薬発見;石油、化学薬品、および医薬品産業におけるプロセス監視、表面分析、並びに未知の物質の構造的同定が含まれる。
【0010】
特定の典型的な実施形態には、フーリエ変換型イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)技術(本明細書では「フーリエ変換型質量分析法」または「FTMS」とも呼ぶ)を使用してイオンの分子量を決定できる質量分析計が含まれる。
【0011】
低圧にある気相イオンが均一な静磁場に曝される場合は、結果として生じるイオンの挙動は磁場に関連するイオン速度の大きさおよび方向によって決定できる。イオンが静止している場合、またはイオンが印加磁場に平行な速度しか有していない場合、イオンと磁場の間に相互作用は発生しない。
【0012】
印加磁場に垂直なイオン速度の成分がある場合は、イオンには速度成分および印加磁場の両方に垂直な力がかかる。この力は、結果としてイオンサイクロトロン運動と呼ばれる環状イオン軌道を発生させる。イオンに任意の他の力が作用しない場合、この運動の角周波数は以下の方程式1に示すように、イオン電荷、イオン質量、および磁場の強さの単純な関数である。
ω=qB/m
式中:ω=角周波数(ラジアン/秒)
q=イオン電荷(クーロン)
B=磁場の強さ(テスラ)
m=イオン質量(キログラム)
【0013】
FTMSは、方程式1に示した基本的関係を利用して、振幅の大きなサイクロトロン運動を誘起し、次いでその運動の周波数を決定することによってイオン質量を決定することができる。
【0014】
分析対象のイオンは、垂直方向(半径方向)の速度および分散が最小になるようにして、最初に磁場内へ導入することができる。磁場により誘起されるサイクロトロン運動によってイオンは半径方向に閉じこめられる可能性がある。しかし磁場の軸に平行なイオンの運動は通常、1対の「捕捉」電極によって制約される。これらの電極は通常、磁軸に垂直な方向に向いていて最初のイオン群の軸方向の拡がりの両端上に位置する一対の平行プレートから構成される。これらの捕捉電極は、イオンの電荷と同じ符号であって電極対間にイオンを軸方向に閉じ込めるために十分な大きさの電位に維持できる。
【0015】
捕捉されたイオンは、次に磁場に垂直な、分析対象のイオンのサイクロトロン周波数で振動する電場へ曝すことができる。このような電場は通常、磁軸に平行に向いていて最初のイオン群の半径方向の拡がりの両側に位置する第2の対の平行プレート状「励起」電極に適当な電位差を加えることにより発生させられる。
【0016】
2以上の分子量のイオンを分析しなければならない場合は、振動磁場の周波数は適当な周波数範囲にわたって掃引されてよい、あるいは個々の周波数成分の適当な混合から構成されてよい。振動磁場の周波数が所与のイオン質量のサイクロトロン周波数に適合すると、その質量のイオンは全部が電場による共鳴加速を受け、それらのサイクロトロン運動の半径が増加する。
【0017】
この共鳴加速中、イオンの最初の半径方向の分散は本質的に変化しない。励起イオンは新しいサイクロトロン軌道の円周上において群形成状態を維持し、分散が新しいサイクロトロン半径に比べて小さいものである限りそれらの運動は互いに同相またはコーヒーレントである傾向がある。最初のイオン群が2以上の分子量のイオンより構成される場合、加速プロセスは各々がその各サイクロトロン周波数で軌道を回る同一質量のイオン束を多数生じさせることができる。
【0018】
加速は、サイクロトロン軌道の半径がイオンを1または2以上の検出電極に十分接近させ、結果として電極上に検出可能な映像電荷が誘導されるまで継続することができる。通常、これらの「検出」電極は、最初のイオン群の半径方向の拡がりの両側にあり励起電極および捕捉電極の両方に垂直な第3の対の平行プレート電極より構成される。そこで、イオンの捕捉、励起および検出用としての3対の平行プレート電極は互いに垂直であり、協働して捕捉イオンセルと呼ばれる密閉箱のような構造を形成することができる。例えば円筒形セルを含む他のセルデザインも考えられる。
【0019】
図1は、励起電極1010、捕捉電極1020、および検出電極1030を含む捕捉イオンセル1000の典型的な実施形態の概略図である。
【0020】
セル内のコーヒーレントなサイクロトロン運動により同一質量の各イオン束が交互に検出電極1030に接近したり遠ざかったりすると、検出電極上の映像電荷がそれに対応して増減する。検出電極1030が外部の増幅回路(図示しない)の一部である場合、交番する映像電荷により外部の回路に正弦波電流が流れる。この電流の振幅は軌道運動するイオン束の全電荷に比例するので、存在するイオン数を表示する。この電流は増幅してデジタル化することができ、周波数のデータはフーリエ変換などの時間から周波数への変換手段によって取り出すことができ、これは高速フーリエ変換アルゴリズムなどを用いてコンピュータによって提供できる。最後に、結果として得られる周波数スペクトルは、式1の関係を用いて質量スペクトルに変換することができる。
【0021】
本明細書で用いる用語「イオン」は、1個以上の電子を獲得したり失ったりすることによって、または1個以上の陽子を獲得したり失ったりすることによって正味電荷を獲得した1つの原子または原子群を意味する。イオンは、電流、紫外線や特定の他の放射線、および/または高温の作用下でガスの分子を破壊する方法を含む数多くの方法で生成できる。
【0022】
本明細書で用いる用語「種」は、イオン、分子、または原子などの物質の組成同一性を意味する。例えば、通常の空気試料中の1,000個の分子について、それらの分子中約781個の分子種は窒素もしくはN2であり、それらの分子中約209個の分子種は酸素もしくはO2であり、および/またはそれらの分子中約9個の分子種はアルゴンもしくはArであると予想できよう。
【0023】
本明細書で用いる用語「イオン成分」は、イオン種を意味する。
【0024】
本明細書で用いる用語「合成」は、測定の組み合わせを意味する。例えば、1つのボードの長さが2フィートであり、別のボードの長さが3フィートである場合、各ボードの長さが重み係数1を有すると仮定すると、端部と端部を接触させて置いたそれら2つのボードの合成長さは5フィートとなる。合成は直線状の組み合わせである必要はない。
【0025】
本明細書で用いる用語「質量スペクトル」は、独立変数として分子量またはその関数(例、質量電荷比(m/z)、イオン質量など)を有するプロットを意味する。従属変数は、通常はイオンの存在量、相対存在量、強度、濃度、数、分子数、原子数、カウント数/ミリボルト、カウント数などの量的尺度である。例えば、イオンとの関連において、質量スペクトルは通常独立変数として質量電荷比(m/z)を表すが、このときmはイオン種の質量、zはイオン種の電荷であり、そして従属変数は最も一般的には各分子イオンおよび/またはそのフラグメントイオンの存在度である。
【0026】
本明細書で用いる用語「量」は、他に特別に記載しない限り、あらゆる量的尺度を意味する。例えば、特定種のイオンの量は、存在度、相対存在度、強度、濃度、および/またはカウント数などであってよい。
【0027】
本明細書で用いる用語「相対存在度」は、イオンとの関連において、特定のm/z比のイオンが検出される回数を意味する。例えば、相対存在度の指定は、最も豊富なイオン種に100%の相対存在度を割り当てることによって入手できる。その他全てのイオン種は、最も豊富なイオン種に対するパーセンテージで表すことができる。
【0028】
本明細書で用いる用語「主要なイオン成分」は、考察中の全てのイオン種の中で最も豊富なイオン種を意味する。
【0029】
本明細書で用いる用語「排出する」は、特定イオン種のイオンを検出不能にすることを意味する。例えば、排出は、現在明らかに主要なイオン種の全てのイオンをFTMSセルの検出領域から検出を防止するのに十分な速度で物理的に取り除くことによって発生させることができる。排出は、豊富ではない種のイオンをより容易に検出できるので有用である。
【0030】
質量スペクトルを用いると、試料中に存在するイオン種を同定することができる。例えば、質量スペクトルは、試料が窒素、酸素、二酸化炭素、およびアルゴンのイオンを含有することを明らかにできる。さらに、十分に再現性の質量スペクトルを用いると、試料中に存在する各イオン種のイオンの相対数を定量することができる。
【0031】
試料中のイオン種およびそれらの量が分かれば、試料の分析、プロセス監視、および/またはプロセス制御のために極めて有用である。その他の用途には、医薬品の品質管理;香料・芳香剤工業における精密なプロセス監視;香料と臭気の化学;生化学;タンパク質、ペプチドおよびDNAの分析;バイオポリマーのシーケンシング;タンパク質の質量フィンガープリント法;遺伝性代謝疾患の研究;ウイルスの同定;薬物代謝;呼吸ガスの分析;コンビナトリアル化学;環境に関する試験;水の分析;土壌改善試験;地球化学;地質年代学;化石の研究;石油探査;石油化学製造;大気化学;宇宙探査;有害な化学物質および/または生物学的物質の持ち込みについての公共空間の監視;爆発性物質および/または輸出入禁止品の検出;および/または科学捜査などを含むことができる。
【0032】
図2は、FTMSシステム2000を一般的に遂行するための典型的実施例のブロック図である。このFTMSシステム2000は、上述した分析順序などの本明細書に記載した特定の方法および/またはプロセスを実施するための様々なサブシステムを含んでいてよい。図1の捕捉イオンセル1000などの捕捉イオンセル2100は、適当なポンプ機器2210によって排気できるチェンバ2220より構成される真空システム2200内に含まれてよい。このチェンバは、捕捉イオンセル2100の拡がりにわたって均一な静磁場を印加できる磁石構造2300内に置かれてよい。磁石構造2300は図2では1テスラのSmCO5汎用磁石などの永久磁石として示したが、磁場を発生させるために超伝導磁石を用いることもできる。
【0033】
ポンプ機器2210は、真空チェンバ2220の一体部分であるイオンポンプであってよい。このようなイオンポンプは捕捉イオンセル2100が使用する磁石構造2300からの同一磁場を使用することができ、約6.5kVで作動でき、および/または真空チェンバ2220内で約10-10Torrという低真空を維持できる。真空チェンバ2220は自動的に約60℃で維持できる、および/または約220℃までのユーザ選択可能な温度へ加熱することができる。
【0034】
分析対象の試料は、例えばガスクロマトグラフィーカラムおよび/またはリークバルブ、例えば制御エネルギー閉鎖バルブおよび/またはパルス式サンプリングバルブなどを備えるパルス式質量分析計リークバルブなどから構成されてよい気相試料導入機器2400によって真空チェンバ2220内に導入できる。バルブが用いられる場合、吸込み条件には約20Torr〜約30psiaの圧力、約25℃〜約160℃のユーザ選択可能な温度、約1ミクロンに至るまでの濾過、および/または約0.5mL/分〜約200mL/分の流量を含むことができる。
【0035】
試料導入システム2400は、多数の潜在的試料源2410から、ユーザが調整可能、または自動的に調整可能な約2ピコリットル〜約200ピコリットルの量を有する試料を自動的に選択して導入できる。バルブ振動中にバルブを通って導入される気体の量は約10%以下の標準偏差で実質的にガウス分布している可能性があるので、各試料は実質的に類似の分子数を有する可能性がある。サンプリングされた分子は、セル2100、光子源、化学イオン化器、負イオン化器を通過するゲート電子ビーム、電子衝撃イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックスによるレーザー脱離/イオン化(MALDI)、大気圧化学イオン化(APCI)、高速原子衝撃(FAB)、および/または誘導結合プラズマ(ICP)などのイオン化の手段2520によって捕捉イオンセル2100内で荷電イオンへ自動的に変換され得る。あるいは、試料分子はイオン化のための何らかの手段を含む多数の技術のいずれか1つによって真空チェンバ2220の外部で作製され、次に磁場軸に沿ってチェンバ2220内に注入され、イオンセル2100に捕捉されてもよい。注入前に、イオンは四極子イオンガイドおよび/またはRF四極子イオンガイドなどのイオンガイドにぶつかってもよい。
【0036】
イオンセル2100の内側に入ると、結果として生じるサイクロトロン運動は「正確な」質量イオンの各パケットについて時間領域測定によって自動的に測定できる。測定されたイオンは、試料中の分子の代用物として役立つことができる。フーリエ変換などの様々な変換法のいずれかを適用すると、測定データを時間領域から周波数領域へ自動的に転換できる。周波数は既知の非線形反比例関係によって質量と関連しているので、自動的に極めて正確な質量値を決定することができる。
【0037】
様々な電子回路を用いると上記の装置などのFTMSシステムの作動または機能を自動的に監視する、記録する、および/または制御することができ、Windows(登録商標) NT/2000プラットホームなどのコンピュータを使用するデータシステムなどの情報機器2700によって制御できる、および/またはその情報機器2700上で実行できる電子パッケージ2600内に含めることができる。情報機器2700を利用すると、さらに様々な上記の変換法などの、取得された信号データの処理、操作、表示、および/または通信を自動的に実行できる。ネットワーク2800(例、公衆ネットワーク、民間ネットワーク、回路交換ネットワーク、パケット交換ネットワーク、仮想ネットワーク、無線ネットワーク、電話回路ネットワーク、携帯電話ネットワーク、ケーブル・ネットワーク、DSLネットワーク、衛星通信ネットワーク、マイクロ波通信ネットワーク、AC電力ネットワーク、イーサネット(登録商標)・ネットワーク、ModBusネットワーク、OPCネットワーク、LANネットワーク、WANネットワーク、インタネット・ネットワーク、イントラネット・ネットワーク、ワイヤレス・ネットワーク、Wi−Fiネットワーク、Blue Toothネットワーク、Airportネットワーク、802.11aネットワーク、802.11bネットワーク、802.11gネットワークなど)を介して、1つ以上の遠隔情報機器2900は情報機器2700および/または電子パッケージ2600を安全に監視する、制御する、および/またはそれらと通信することができる。
【0038】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、データをデータベース、スプレッドシートファイル、プリンタ、アナログ式出力機器などへ自動的に記録できる。FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、特定イオンの検出、成分の濃度および/または強度の所定レベルを上回る、または下回る変化、失敗した分析などの特定イベントが発生すると自動的に警報する、および/または通知することができる。
【0039】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、多種多様な入口、直接挿入用プローブ、膜導入質量分析計(MIMS)プローブ、および/または熱重量分析および/またはトラップ&パージ装置などの発生気体分析(EGA)機器と連動させることができる。
【0040】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、第1試料流れから第2試料流れへ自動的に切り替え、第1試料流れからの試料を分析している間に第2試料流れからの試料を導入することができる。したがって、約64までの試料流れを多重運搬および/または制御することができる。これによりもしかすると、特に第1試料流れのパージングが相当に長いプロセスである場合は、総合測定速度を実質的に改良できる。
【0041】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、極小量の試料に基づく完全分析を自動的に提供できる。例えば、FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、例えば約6.0001、12.47、54.94312、914.356などを含むそれらの間の全ての数値を含む、そして例えば約2〜約12、約6〜約497などのそれらの間の全サブレンジを含む約2〜約1,000m/zの質量範囲を自動的に測定できる。
【0042】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、小数点以下第3位までの、または1m/zの約1/1000までの少なくとも3つの有効数字で自動的に質量を決定できる。
【0043】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、それらの間の全ての数値およびサブレンジを含む約100m/z〜約120m/zで測定した場合に、約1〜約20,000のそれらの間の全ての値およびそれらの間のサブレンジを含む質量測定分解度を自動的に提供できる。
【0044】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、例えば約0.2、0.51、0.8、1、2.2、5、10、25.6ppmなどを含むそれらの間の全ての値を含み、例えば約1〜約10ppm、約100ppm〜約1%、約1%〜約100%などのそれらの間の全てのサブレンジを含む濃度測定値を自動的に提供できる。
【0045】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、約28m/zで測定した場合に、それらの間の全ての値およびサブレンジを含む約±0.0002m/z〜約±0.001m/zの質量精度を自動的に提供できる。
【0046】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、約28m/zで測定した場合に、それらの間の全ての値およびサブレンジを含む約0.001m/z(約35ppm)〜約0.0025m/z(約90ppm)の質量精度を自動的に提供できる。
【0047】
FTMSシステム2000の特定の典型的な実施形態は、それらの間の全ての値およびサブレンジを含む約1〜約3桁の直線性を自動的に提供できる。
【0048】
図3は、図2の情報機器2700、2900を表す情報機器3000の典型的な実施形態のブロック図である。情報機器3000は、1つ又はそれ以上のネットワーク・インターフェース3100、1つ又はそれ以上のプロセッサ3200、指示3400を含む1つ又はそれ以上のメモリ3300、および/または1つ又はそれ以上の入出力(I/O)機器3500などの周知の成分を含んでいてよい。
【0049】
本明細書で用いる用語「情報機器」は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバー、ミニコンピュータ、メインフレーム、スーパーコンピュータ、コンピュータ端末、ラップトップ、ウェアラブルコンピュータ、および/またはパーソナルデジタルアシスタント(PDA)などの汎用および/または専用コンピュータ、モバイル端末、ブルートゥース機器、コミュニケータ、「スマート」ホン(例、Handspring Treo様機器)、メッセージ通信サービス(例、Blackberry)レシーバー、携帯無線呼出し器、ファクシミリ、携帯電話、伝統的電話、電話機器、プログラム式マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラおよび/または周辺集積回路素子、ASICもしくは他の集積回路、個別素子回路などのハードウェア電子論理回路、および/またはPLD、PLA、FPGA、もしくはPALなどのプログラム可能論理機器などの情報を処理できる機器を意味する。一般に、本明細書に記載した方法、構造、および/またはグラフィカル・ユーザ・インタフェースの少なくとも一部分を実行できる有限状態機械が装備された機器は情報機器として使用できる。情報機器は、1つ又はそれ以上のネットワーク・インタフェース、1つ又はそれ以上のプロセッサ、指示を含む1つ又はそれ以上のメモリ、および/または1つ又はそれ以上の入出力(I/O)機器、1つ又はそれ以上のユーザ・インターフェースなどの周知の成分を含んでいてよい。
【0050】
本明細書で用いる用語「ネットワーク・インタフェース」は、情報機器をネットワークへつなぐことのできる機器、システム、またはサブシステムを意味する。例えば、ネットワーク・インタフェースは電話、携帯電話、携帯電話用モデム、電話データモデム、ファックスモデム、ワイヤレストランシーバー、イーサネット(登録商標)カード、ケーブルモデム、デジタル加入者電話回線インタフェース、ブリッジ、ハブ、ルータ、またはその他の類似機器であってよい。
【0051】
本明細書で用いる用語「プロセッサ」は、機械読取り可能な指示を処理するための機器を意味する。プロセッサは、中央処理装置、ローカルプロセッサ、リモートプロセッサ、パラレルプロセッサ、および/または分散型プロセッサなどであってよい。プロセッサは、例えばカリフォルニア州サンタクララ所在のIntel Corporation社製のマイクロプロセッサのPentium(登録商標) IIIシリーズなどの汎用マイクロプロセッサであってよい。また別の実施形態では、プロセッサは、そのハードウェアおよび/またはファームウェア内で本明細書に開示した実施形態の少なくとも一部を実行するために設計されているASIC(Application Specific Integrated Circuit:大規模特定用途集積回路)またはFPGA(Field Programmable Gate Array:フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)であってよい。
【0052】
本明細書で用いる用語「メモリ機器」はデータ記憶のできるハードウェア素子を意味する。メモリ機器は、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)、ROM(読出専用メモリ)、フラッシュメモリ、磁気媒体、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光媒体、光ディスク、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)、および/またはレイドアレイなどを含んでいてよい。
【0053】
本明細書で用いる用語「ファームウェア」は、読取り専用メモリ(ROM)内に記憶された機械読取り可能な指示を意味する。ROMはPROMおよびEPROMを含んでいてよい。
【0054】
本明細書で用いる用語「I/O機器」は、情報機器へ入力できる、および/または情報機器から出力できる機器を意味する。I/O機器は、例えば聴覚、視覚、触覚(温度、圧力、疼痛、触感などを含む)、嗅覚、および/または味覚指向機器などの五感指向の入力および/または出力機器であってよく、例えばもしかするとそれにI/O機器を取り付けられる、または接続できるポートを含むモニタ、ディスプレイ、キーボード、キーパッド、タッチパッド、ポインティング機器、マイクロホン、スピーカ、ビデオカメラ、カメラ、スキャナ、および/またはプリンタが含まれる。
【0055】
本明細書で用いる用語「ユーザ・インターフェース」は、ユーザへ情報を提供する、および/またはユーザからの情報を要求する機器を意味する。グラフィカル・ユーザ・インターフェースには、例えばウィンドウ、タイトルバー、パネル、シート、タブ、ドロア、マトリクス、テーブル、フォーム、カレンダー、アウトライン表示、フレーム、ダイアログボックス、スタティックテキスト、テキストボックス、リスト、ピックリスト、ポップアップリスト、プルダウンリスト、メニュー、ツールバー、ドック、チェックボックス、ラジオボタン、ハイパーリンク、ブラウザ、イメージ、アイコン、ボタン、コントロール、ダイアル、スライダ、スクロールバー、カーソル、ステータスバー、ステッパ、および/またはプログレスインジケータなどの1つ以上の素子を含んでいてよい。音声ユーザ・インターフェースは、ボリュームコントロール、ピッチコントロール、スピードコントロール、ボイスセレクタなどを含んでいてよい。
【0056】
特定の典型的な実施形態では、FTMSシステム2000(図2に示されている)の情報機器3000のユーザ・インタフェースは、パラメータ調整、パラメータ観察、および/または質量スペクトルのアクセスおよび/または比較を提供できる。特定の典型的な実施形態では、ユーザ・インタフェースは、重要な分析および/または作動パラメータの生の作動状態ウィンドウ;もしかすると最初の時間領域測定に追加して、現在および/または前回の質量スペクトルの同時表示;2成分トレンドプロットの並列比較;実行中のプロセス計装作動の制御;および/または複数のFTMSシステムの制御を提供できる。
【0057】
図4は、例えばガスパルスと一緒にFTMSのセル内に存在するイオン数;プレート電圧をトラップするイオン化段階;プレート電圧をトラップする検出段階;および/またはFTMSセル内のイオン位置などを決定できるイオン化電流束またはビーム電流密度などの1つ以上のFTMS変数を自動的かつ実質的に最適化する方法の典型的な実施形態4000のフローチャートである。
【0058】
最適化の前に、いくつかの予備アクティビティが行われることがある。例えば、方法4000のアクティビティ4100では、自動FTMS最適化システムは作動変数もしくはプログラミング変数などの変数を初期化できる。
【0059】
アクティビティ4200では、本システムはそれにより実質的に一定量(例、分子数)のガスがFTMSセル内に導入される試料バルブ設定(例、電圧)、および選択された開始時イオン化電流束に関するユーザ入力を要求する、および/または受入れることができる。これら2種のパラメータ、バルブの電圧および電流束が一緒になるとセル内で生成された初期電荷数を決定できる。アクティビティ4300では、本システムはデータ取得スキャンを含む時系列の作動イベント(イベントテーブルまたはスケジュールにしたがって)を作製してローディングすることができる。
【0060】
アクティビティ4400では、本システムはシステムを安定化させる、すなわち安定性作動状態に達することを可能にする十分な数のデータ取得を実行できる。取得されるデータには測定された振幅および時間を有する電流信号が含まれ、このデータはフーリエ変換により振幅および周波数のデータセットへ変換でき、さらに典型的には線形補正曲線を適用することによって、振幅および質量関数(例、分子量、質量電荷比(m/z)など)のデータセットへ変換できる。試料中に存在する各イオン種は、イオン種の分子量およびセルに印加される磁場に依存する特徴的な周波数およびセル内に存在する特定イオン種の量に依存する振幅を発生させる。そこで、振幅が周波数に対してプロットされると、各々が特定イオン種を表す複数の振幅ピークが発生する。これらの振幅ピーク、または質量補正振幅ピークの数値は、例えば加算によるように数学的に結合されて合成振幅に達することができる。合成振幅は、1つ以上の周波数領域振幅または構成イオン種の質量補正振幅へ重み係数を適用することによって形成できる。そこで、3種の最も主要なイオン種の振幅へそのうちの1つの重み係数が適用され、残りのイオン種の振幅にはゼロの重み係数が適用されると、合成振幅は3種の最も主要なイオン種の合計振幅を表す。
【0061】
アクティビティ4500では、本システムは、例えばユーザ入力、最適化反復ループカウント数、および/または予めプログラムされたパラメータに基づいて実質的に最適化するFTMS変数を選択できる。本システムは、選択されたFTMS変数に対する初期値も選択できる。
【0062】
アクティビティ4600では、本システムは出力信号の例えば振幅、時間、周波数および/または質量関数などのFTMS出力データ、並びに例えば出力信号の合成振幅、またはその合成振幅内の分散などの最適化パラメータを取得できる。このデータ取得は、所定(例えば、ユーザが選択した、またはシステムが選択した)数の反復を繰り返すことができ、各取得はユーザが特定したスペクトル取得数を含み、各データ取得は振幅および周波数または質量のデータの両方を含んでいる。
【0063】
アクティビティ4700では、本システムはFTMS変数の値を変化させることができる。
【0064】
アクティビティ4600および4700は、アクティビティ4800で最適化パラメータがFTMS変数の値内の最近の変化の結果として実質的に収束し、それによってFTMS変数に対して実質的に最適の値が見いだされたことを表示したと本システムが決定できるまで繰り返すことができる。
【0065】
アクティビティ4900では、FTMS変数、その値、最適化パラメータ、および/またはその数値などの結果は、例えばファイル、メモリ機器、I/O機器、制御システム、および/またはユーザ・インタフェースなどへ出力できる。これらの出力の結果は、他の方法のために利用できる。次に本システムは、アクティビティ4500から4900を繰り返して全FTMS変数を最適化することができる。
【0066】
多数のFTMS変数を最適化できる。例えば、イオン化電流束は、イオン化電流束の数値をイオン化電流束への変化が実質的に線形である範囲内で実質的に最大化することによって、すなわち最大線形反応性イオン化電流束を見いだすことによって実質的に最適化できる。そこで実際には、線形反応性イオン化電流束が最適化すべきFTMS変数である。
【0067】
例えば、イオン化電流束を2倍にした後、そして2倍にする前に合成振幅を比較するとFTMSセルが実質的に非線形で反応するかどうかを決定することができ、非線形で反応する場合はセル中に存在するイオンが多すぎることを意味する。これは、例えば1.832、1.85、1.9、1.977などのそれらの間の全ての値、および例えば約1.88〜約1.93などの全てのサブレンジを含む約1.8〜約1.999未満の、または例えば約2.003、2.05、2.1、2.177などのそれらの間の全ての数値、および例えば約2.07〜約2.12などのそれらの間の全てのサブレンジを含む約2.001を超え約2.2までを含む係数の総信号電流または合成振幅における変化によって表示できる。これを言い換えると、最適化パラメータにおける変化がイオン化電流束の変化のそれらの間の全ての数値およびサブレンジを含む約90%〜約99.95%未満または約100.05%を超え約110%までであるときに非線形性を表示できる。
【0068】
セル内に存在するイオン数が多すぎる場合は、本システムは、例えば0.25、0.333、0.4481、0.5、0.667などのそれらの間の全ての値および例えば約0.42〜約0.60などのそれらの間の全てのサブレンジを含む約20%〜約80%の係数によってイオン化電流束を縮小させ、その後に実験を続けることができる。さもなければ、本システムは、例えば1.55、2、2.4973などのそれらの間の全ての値、および例えば約1.92〜約2.1などのそれらの間の全てのサブレンジを含む約1.2%〜約3%の係数によってイオン化電流束を増大させ、そして再度線形性をチェックすることができる。このパターンは、最適化パラメータが実質的に収束し(例えば、実質的に線形性が維持される最大値に達する)、それにより実質的に最適なイオン化電流束値が見いだされたことが表示されるまで必要に応じて繰り返すことができる。
【0069】
本システムは、実験のイオン化段階中に捕捉プレート上の電圧最適化を試みることができる。特定の典型的な実施形態では、本システムはこれを行うためにいくつかのサブアクティビティを実行できる。例えば、本システムはユーザが選択した初期値から電圧を低下させ、多数の合成振幅を収集することができる。同様に、本システムは以前の電圧値に関連する合成振幅と現在の電圧値に関連する合成振幅との間の分散などの最適化パラメータを比較できる。さらに、本システムは測定されたスペクトル数にわたって考察された最適化パラメータが拡散しているか、または収束しているか(例えば、増加しているか、または減少しているか)を決定し、最適化パラメータ(例、最小分散)の収束に基づいて、電圧に対して実質的な最適値が見いだされるまで電圧を調整し続けるために適した措置を講じることができる。
【0070】
本システムは、実質的に最適化パラメータを収束する(例えば、総計された平均合成スペクトル振幅分散を最小限に抑える)ために実験の検出期中に存在する捕捉電圧へ類似のアルゴリズムを適用し、それによってこの電圧に対する実質的に最適な数値を決定することができる。
【0071】
本システムは、最適化パラメータを実質的に収束させる(例、総信号電流の強度(合成振幅)を実質的に最大化する)ことによりセル内での検出前に固定検出プレートに比較したイオンの位置を実質的に最適化できる。
【0072】
例えば試料導入と検出との間の時間遅延、サンプリングバルブによってFTMS内に導入されるガスパルスのサイズ、個々の取得間の待機時間、および/または測定されたFTMS変数の関数などの、他のFTMS変数の実質的最適化が可能で想定されていることに留意されたい。さらに、選択された群のFTMS変数を最適化するための最適なシーケンスを決定して利用することができる。
【0073】
さらに、本明細書に記載した最適化パラメータは合成振幅自体または合成振幅中の分散のどちらかを含むが、合成振幅の関数であってよい他の統計指向性の最適化パラメータが可能で想定されている。例えば、少なくとも以下の最適化パラメータが考えられる。3種の最も富裕な種の平均振幅の合成値、主要な種の振幅の分散、平均合成振幅、合成振幅のモード、合成振幅の分散のモード、最大合成振幅の分散、最小合成振幅の分散、時間重み合成振幅の分散、二次中心モーメント、偏り補正分散、共分散、相関、二乗平均の平方根、平均偏差、試料分散、分散分布、標準偏差、最大合成振幅の標準偏差、最小合成振幅の標準偏差、時間重み合成振幅の標準偏差および/または大きさなど。
【0074】
そこで、FTMS変数の値は、最適化すべきFTMS変数の値を繰り返し変化させることによって、例えばそれらの最適化パラメータに結び付いた値および/または範囲(例、実質的に極または絶対最小値、最大値、漸近値、および/または変曲点など)を収束目標上に実質的に収束させることによって実質的に最適化できる。収束目標は、事前に決定できる、または実行中に見いだすことができる。
【0075】
例えば、最適化は、FTMS変数が変化すると、合成振幅における分散が約2%以内に、または他の所定範囲内に減少したときに発生すると考えることができる。また別の例として、FTMS変数の最適化は、FTMS変数の値を繰り返し変化させた場合に結果として生じる合成振幅が特定の、実行中に決定されたFTMS変数の値で実質的に最大化された場合に発生すると考えることができる。また別の例として、FTMS変数の最適化は、FTMS変数の値を繰り返し変化させた場合に結果として生じる合成振幅の平均値が実質的に最小化されたときに発生すると考えることができる。
【0076】
図5は、FTMSを用いて試料を自動的に分析する方法の典型的な実施形態5000のフローチャートである。方法5000によって、FTMSシステムは定量的FTMS実験においてダイナミックレンジを自動的に交換することができる。すなわち、FTMSシステムはその範囲を各々が所定の桁数(例、2桁)をカバーする複数実験(例、3回の実験)に分割することによって、より広い範囲(例、100%〜PPM(6桁))をカバーするために非最適化FTMSシステムのダイナミックレンジを3桁拡大することができる。
【0077】
例えば、実験1は約1%〜約100%で存在するアドレス成分(すなわち、イオン種)を取り扱うことができ、実験2は約100PPM〜約10,000PPMで存在するアドレス成分を取り扱うことができ、そして実験3は約1PPM〜約100PPMで存在するアドレス成分を取り扱うことができる。
【0078】
各実験が設計されて個別に実質的に(例えば上記の方法4000の自動FTMS最適化プロセスによってなど)最適化された後に、結果を方法5000の自動FTMS分析プロセスへ移すことができ、そして結合分析方法を作り出すことができる。方法5000を実行すると、オペレータがほとんど、または全く介入せずにそのシステムが分析できる範囲にわたり完全な定量的分析を作り出すことができる。
【0079】
方法5000を実行するためには、分析前にいくつかの予備アクティビティが行われてよい。例えば、方法5000のアクティビティ5100では、自動FTMS分析システムは作動変数もしくはプログラミング変数などの変数を初期化できる。アクティビティ5200では、本システムはユーザから分析サイクル数および各サイクルに対して収集すべきスペクトル数を入手できる。
【0080】
アクティビティ5300では、方法4000などの自動FTMS最適化プロセスを用いて、本システムはイオン化電流束などのいずれかの数のFTMS変数を実質的に最適化し、FTMS変数をそれらの最適値に設定し、および/または対応するバルブ電圧値を決定し、そしてその電圧値に対するバルブを設定することができる。
【0081】
アクティビティ5400では、本システムはデータ獲得スキャンを含む時限作動イベント(例、少なくとも1つのイベントテーブルまたはスケジュール)のリストを作製してローディングすることができ、前記リストは適切な分析パラメータ、FTMS変数、合成振幅を決定するための係数、最適化パラメータ、収束値および/または範囲、成分、校正、ロック質量などを含む。
【0082】
アクティビティ5500では、本システムはユーザが選択した数のスペクトルを収集することにより1つの実験についてのデータを取得できるが、このとき各々はユーザが選択した数の反復から構成され、各データ取得は振幅および周波数の両方のデータを含むスペクトルデータへ変換可能な時系列データを含む。
【0083】
アクティビティ5600では、本システムはさらにまたスペクトルデータを入手するために収集されたデータセットを処理できる;主要なイオン種に結び付いた定性的データ(例、試料のイオン成分の同一性、試料の同一性、試料の化学構造など)を同定できる;主要なイオン種と結び付いた定量的データ(例、試料中のイオン種の分画、濃度、存在度、相対存在度、および/または相対パーセンテージなど)を決定できる;および/またはそれらの主要なイオン種を排出するために必要な排出電圧を決定できる。
【0084】
FTMSシステムの特定の典型的な実施形態では、排出はこれらのイオンをそれらの共鳴周波数でセルの検出プレート内へ、および/または検出プレートを超えて回転するのを引き起こすのに十分励起することによって発生させることができる。主要なイオン種が排出されるとそれらは検出されない。このため、セルにはより多くの主要ではないイオンを含む実質的により多くのイオンをローディングでき、それにより見かけの濃度を増大させ、それらの主要ではないイオンの実際の検出可能性を増加させることができる。
【0085】
アクティビティ5700では、本システムは取得かつ処理したデータを、ファイル、メモリ機器、I/O機器、制御システム、および/またはユーザ・インタフェースへ出力できるので、それらを他の方法のために利用することができる。
【0086】
アクティビティ5800では、本システムは、その間にイオン化電流束が次のレベル設定点に設定され、そしてバルブが次のバルブ電圧に設定され、以前の1回以上の実験において主要であると決定された全てのイオン種を排出するために必要とされる排出電圧が設定されるアクティビティ5300および5400を最初に実行し、そして次にアクティビティ5500から5700を実行することによって、全実験が完了されるまで次の実験の各々を順々に実行できる。
【0087】
アクティビティ5900では、本システムは多数回の実験を所定時間、所定繰り返し回数について連続的に、および/または所定の変化および/または量が検出されるまで繰り返すことによって、検出されたイオン種の量における変化または非変化について監視することができる。各繰り返しの前に、主要なイオン種およびそれらの関連する排出電圧の同一性をクリアすることができるので、繰り返し間のキャリオーバは発生しない。
【0088】
図6は、強度対時間の典型的なプロット図6000である。プロット図6000は、開発中の独自のパイロットプラント操業からのサンプリングに基づいたFTMS分析システムの典型的な実施形態によって生成された実際のリアルタイムデータを示している。本システムは試料に対して4種の成分を検出したが、これにはパイロットプラントにおいて作り出された予想外の1種の物質が含まれた。パイロットプラントの所有者はFTMS分析システムを用いるまでこの物質を認識していなかった。
【0089】
図7は、強度対スキャン数の典型的なプロット図7000である。プロット図7000は、空気を含有するFTMS試料へ方法4000の最適化アクティビティが及ぼす実際の影響をグラフ表示しているスキャン期間7100から7800を含む。方法4000のアクティビティは、プロットされた各成分、つまりアルゴン、窒素、および酸素について同時に完了されることに留意されたい。
【0090】
プロット図7000に図示したスキャン期間は、以下の表1に示した方法4000の最適化アクティビティの特定の実施形態に対応する。
【表1】

【0091】
図8は、強度対質量電荷比(m/z)の典型的なプロット図8000である。プロット図8000上に示したデータは、時間領域から周波数領域に変換され、次に質量領域へ変換されたFTMSシステム出力からもたらされた。例示した質量の範囲は、約16.99〜約17.06m/zである。例示した範囲内には2つのピーク8100および8200が含まれており、ピーク8100は水分またはヒドロキシルイオン(OH)の質量に対応する約17.0027m/zで発生し、ピーク8200はアンモニアイオン(NH3)の質量に対応する約17.0265m/zで発生している。
【0092】
図9は、発酵槽上部空間の実際試料についての強度対質量電荷比(m/z)の数枚のプロット図を特徴とする典型的なグラフィカル・ユーザ・インタフェース9000である。プロット図9100は、主要な成分がN2、CO2、およびアルゴンである最初のプロット図を示している。プロット図9200は、主要な成分が実質的に排出された後のプロット図を示している。そこで図9は、分析のイオン化期中にイオンを選択的に排出することにより、特定の主要な成分の強度のピークを取り除いて低濃度の成分に関連する弱いピークの感受性を強化することが可能であることを図示している。
【0093】
FTMSシステムおよび方法の典型的な実施形態は、特定の生成物を生成(「調理」)するために用いられたバイオテクノロジー企業の発酵槽によって発生した排ガスを連続的に分析および監視するためのオンサイトの現場デモンストレーションで利用された。この特定のデモンストレーションは、1,000リットル未満(<250ガロン)のサイズを備えるパイロット規模の発酵槽で実施された。使用されたコンパクトな可動式高分解能FTMSシステムはパイロット施設へ運ばれ、測定は分析器を質量校正せずに開始された。
【0094】
発酵排ガスの測定および監視は、呼吸比(RQ)または発酵ブロスの代謝を決定するための有効な方法であると決定された。発酵速度および分析頻度に依存して、このデモンストレーションは、この実施形態を用いると栄養素の比率を制御し、反応の程度を許容および/または評価し、および/または望ましくない化合物の可能性のある存在を立証することによって、プロセス制御を改良し、プロセス収率を改良し、および/または発酵速度をスピードアップできることを証明した。
【0095】
例えば、発酵槽についての多数の測定値はN2、O2、CO2および他の数種の単純なガスについては単純に見えるが、発酵中にはもっと様々な成分が実際的に発生して発酵槽上部空間内で検出できることが確認された。さらにまた、個々の成分は所与の時間で最高の収率を得るために最適な作動パラメータを確立するために役立つ手掛かりとして使用できることが確認された。
【0096】
表2は、1回の分析につき1分未満(共追加データポイントに付き1秒間)の頻度で実施された分析に基づいて、発酵槽上部空間内で検出された成分を表している。表から明らかなように、スペクトル内には質量数10〜60の範囲内の極めて多数のイオンフラグメントが存在する。その範囲では、10本の二重線およびほぼ同一である3つの質量を備える1本の三重線(同重線)さえ存在する。
【表2】

【0097】
これらの二重線および三重線の多くがいかに近接して発生するかに留意されたい。例えば、窒素およびCH2成分に対する二重線は0.016m/z未満の質量範囲にわたり、O、NH2、およびCH4フラグメントに対する三重線は0.0363m/z未満の質量範囲にわたる。種々の発酵槽上部空間成分の同一性および/または濃度が分かることは、プロセス制御を改良し、発酵速度を設定し、発酵期間を減少させ、さらに収率を増大させるために有用であった。
【0098】
標的化合物について調査する場合は、そのような精度は擬陽性を回避するのに役立つはずである。そのような精度があれば、ガスクロマトグラフィーによる分離を不要にできる。
【0099】
さらに表2を観察すると、観察質量、測定質量および理論質量の間にわずかな偏りがあるのは注目すべきことである。しかし、この偏りは数学的に質量範囲と一致している。そこでプロットすると、これらの質量の偏りは、図10に示した発酵槽質量補正の典型的なプロット図10000に示したように、多項式ラインに沿って精密に適合する。
【0100】
ここで行われた質量補正は、事後に実施された。3または4種の既知成分の周波数測定を用いて存在する他の質量についての単純な線形当てはめが確定され、それによって成分の正確な同定が可能になった。
【0101】
質量補正の必要は、ロック質量を用いることで回避できよう。FTMSシステムは、測定の精度に影響を及ぼす可能性がある変数について補正するために複数のロック質量さえ利用する能力を含むことができる。周波数および温度における変動は、二重ロック質量が解決できる補正の2種である。
【0102】
イオン対を分解するコンセプトに目を向けると、表3はFTMSシステムの特定の実施形態について特定の二重線を用いて可能な分解能を示している実験データを提供している。
【表3】

【0103】
各イオン種の同一性を堅固かつ正確に確立できるので、振幅を用いると各イオン種に対して存在するイオンの相対量および/または実際量を正確に確定することができる。例えば、図11は濃度対時間の典型的なプロット図11000である。プロット図11000は、触媒の状態調節中にホスゲンを産生した反応についてFTMSシステムによってサンプリングした実際のデータに由来した。FTMSシステムはさらにまた、高度に毒性のホスゲンの全てがリアクターから除去される時点を決定するためのリアクターの運転停止を監視するためにも用いられた。FTMSシステムの特定の典型的な実施形態は、任意の量の尺度(存在度、相対存在度、濃度、相対濃度、パ―セント、相対パーセント、ppk、ppm、ppb、重量および/またはカウント数など)対任意の適切な独立変数(時間、分子量、m/z比、分子種、イオン種など)のプロット図を提供できる。
【0104】
特定の典型的実験は、FTMSシステムの特定の典型的な実施形態の様々な定量的特徴を示している。例えば、FTMSシステムの特定の典型的な実施形態は、高度に反応性の三フッ化窒素(「NF3」)ガス混合物などから安定性の定量的情報を生成することができる。特定の典型的な実施形態は、従来型のEIイオン化フィラメントを用いた場合でさえ長期間にわたり安定性定量的データを生成することができる。特定の典型的な実施形態では、約5%の濃度における相対的変化を瞬時に容易に検出できる。特定の典型的な実施形態は、約50を超える信号対雑音比について、それらの間の全ての数値およびサブレンジを含む約1%〜約5%の相対標準偏差(「RSD」)を伴って、少なくとも1桁にわたり濃度において線形である定量的データを生成する。特定の典型的な実施形態は、単一の既知試料を用いた毎日の校正に基づいて安定性定量的データを生成し続けることができる。
【0105】
典型的な実施形態を用いて、NF3を様々な濃度で分析した。これらの実験によって、以下を含む特定の質問が回答された。
A.分析を実行したときにFTMSシステムはどの程度安定性だったか。
B.FTMSシステムによって再現性で検出できた変化の量は。
C.FTMSシステムはどのくらいの頻度で校正を必要とするであろうか。
【0106】
実験を実施するために2本のガスボンベを用いた。1本は既知の20%NF3混合ガスを含んでおり、2本目は純窒素であった。2つの質量流量制御装置を利用した。制御装置1の最大範囲は5,000sccm(標準cm3/分)であり、制御装置2の最大範囲は100sccmであった。2つの制御装置の流量範囲には大きな差があったため、希釈N2ガス流量を調整するのではなくNF3流量を変化させることによりNF3濃度を操作することを決定した。流量制御装置は定格容量である2%を下回ると不正確であることが多いので、N2に対しては150sccm(定格容量の3%)の流量で制御装置1を用いた。NF3混合ガスに対しては制御装置2を用いた。制御装置2の流量は50sccm〜3.9sccmに調整した。これは試料中の5.0%〜0.5%のNF3濃度に一致する。
【0107】
2種のガスを流量制御装置へ接続し、制御装置1は室温に置いた。制御装置2は約75℃の温度で維持した。ガス混合機器の出口は、FTMSサンプリングバルブのための外側バルクヘッド接続部へ取り付けた。試料ガスはバルブを通過し、出口バルクヘッド接続部から排出された。試料は次に1/8インチTeflon(テフロン(登録商標))製チューブを通って出口隔壁から作業フードまで流れ、作業フードから排気された。
【0108】
5.0%のNF3濃度は初期2時間にわたり維持した。その後NF3濃度を1時間にわたり4.5%へ、1時間にわたり4.0%へ、次に1時間にわたり3.0%へ、1時間にわたり2.0%へ、さらに1時間にわたり1.0%へ、次に1時間にわたり0.5%へ、そして30分間にわたり5.0%へ調整した。このデータを用いて検量線を構築した。次に表2に示したようにNF3についての多数の無作為流量を選択した。これらの流量を各々10分間維持した。このデータを用いて測定NF3濃度を計算し、予測NF3濃度と比較した。最後にNF3濃度を5.0%へリセットし、追加の約8時間にわたりデータを収集した。
【0109】
FTMSシステムの特定の典型的な実施形態は、多数の相違するタイプのデータファイルを作製する能力を有する。実験では、5つのデータファイルが自動的に作製された。1つのファイルは、このケースではNF3に対する質量51.9998および70.9982である要求された定量化ピークに対する生ピーク高さを記録したピーク測定ファイルであった。第2のファイルは、コンマ区切りのテキストファイル内に他の関連パラメータを記録した。これらのパラメータにはイオンポンプ電流示度によって測定された試料圧、52および71ピークの質量位置、並びにバルブおよびセンサの温度が含まれた。第3のタイプのファイルは、処理された各スペクトルについてのピーク検出質量スペクトルを記録した。第4のファイルタイプは、実験終了時の機器状態ウィンドウの状態を保存した。最後のファイルは、これによりピーク形およびポンプ反応を検査することができる最後の試料導入ピークのASCII表示であった。これらのファイルは全て、新しいデータポイントが取得されると30秒毎に更新された。これらのファイルは全部、データを取得するために使用された実験方法に対応してワークステーションのデータサブディレクトリに保存された。
実験に基づいて、以下の表4は、分析を実施したときの実験的FTMSシステムの安定性を示している、したがって第1の質問に対応している。
【表4】

【0110】
図12は、この場合には検量線として表4のデータをプロットしている強度対濃度の典型的なプロット図12000であり、強度はNF3の濃度(%)に依存する。
【0111】
最初の実験データの一部は、典型的なFTMSシステムが安定性に達するまで約1時間を要し、その後その安定性が10時間にわたり維持されることを示している。さらに7時間の終了時には、FTMSシステムの感受性はランが開始された時点の4%以内であった。
【0112】
第2の質問に対応するために、実験中に収集されたデータは、1%〜5%のNF3絶対濃度において10%の相対変化を容易に検出できることを示している。さらに、極めて一貫性の入手された標準偏差およびRSDについての試験は、99%信頼レベルで5%相対濃度変化を検出可能であることを証明した。FTMSシステムの特定の典型的な実施形態は導入された分子数に基づいて作動する可能性があるので、これらの同様の検出値は20%濃度標的に適用できる。そのレベルでは、19%〜20%の差を容易に検出できる。利用されたFTMSシステムの反応は試料流量および分析速度(この場合は1分当たり2ポイント)にのみ依存してほぼ即時であった。これは、強度対スキャン数の典型的なプロット図13000である図13に示した。
【0113】
10分間隔で一連の既知の濃度をランすることで実験方法の有用性について急速チェックを実施した。このデータは図13のプロット上でスキャン900から1050の間に生じ、表5にも要約した。
【表5】

【0114】
第3の質問に答えて、分析の安定性によって証明されるように、約5%のRSDは単一の既知試料を毎日校正することにより維持した。典型的な実験的FTMSシステムに試料を曝露させた約2週間中の日々の感受性変動は15%以上変化しなかった。
【0115】
そこでNF3実験中に収集したデータは、FTMSシステムの特定の典型的な実施形態が実質的に安定性の定量的情報を生成できることを証明した。
【0116】
特定の典型的FTMSシステムでは、定性および定量のどちらも自動的に提供できる。例えば、窒素中に約25ppmでブタンを含む既知の試料を用いると、43.0548m/zでの基本ピーク並びに他のフラグメントピークを各ピークの相対強度と一緒に決定することができ、したがって質量および強度の収集によって特徴付けられるブタンパターンを生成することができる。同様に、強度データをブタンの他の濃度について収集すると、実質的に線形の検量線を作製することができる。そのような検量線は特定の既知の試料温度、試料バルブを越えて測定される特定の既知の圧力差(例、試料入口圧とイオンセルとの間の差圧)、およびイオン化電流束の線形範囲内での典型的FTMSシステムの作動に基づいていてよい。
【0117】
この質量および強度データは、収集して例えばデータベースに保存することができる。特定の典型的FTMSシステムでは、広範囲の既知の試料についてのそのような質量および強度データのデータベースによって、未知の試料を自動的に同定(すなわち定性)並びに定量することができる。例えば、極めて多数の種を含有する試料でさえ、未知の試料が、ブタンのピーク(その基本ピークおよびフラグメントピークを含む)と実質的に同一パターンを有するピークを示す場合は、特定の典型的な実施形態は未知の試料中のそのパターンをブタンに一致すると認識し、それによりその試料中にブタンが存在することを高度の所定確度で予測できる。ブタンについて強度対濃度データから作製された検量線を利用すると、未知の試料中に存在するブタンの量を所定信頼区間内で推定できる。未知の試料が、検量線が作製された時点と相違する温度または相違する圧力で収集された場合は、理想気体の法則を用いて新規の検量線を推定できる。
【0118】
特定の典型的FTMSシステムでは、種からは相当に独立して、そして以前に生成された検量線またはデータにアクセスしたりそれらを必要としたりせずに、半定量的測定を自動的に実施できる。例えば、表6に示したように、各々が窒素の個別試料中に25ppmの濃度で存在していた様々な相違する軽いガスについては、典型的FTMSシステムは類似の強度信号および信号/雑音比を生成した。そこで、検量線またはデータを利用せずに未知の試料を同定して少なくとも半定量的に決定することができる。
【表6】

【0119】
上記の詳細な説明および特定の典型的な実施形態の図面を読むことにより、当業者にはまた別の実施形態が容易に明らかになるであろう。多数の変形、修飾およびその他の実施形態が可能であり、したがってそのような変形、修飾、および実施形態は全て添付の請求項の精神および範囲に含まれると見なされると理解すべきである。例えば、本特許出願の任意の部分(例、名称、技術分野、背景技術、詳細な説明、要約、図面、表など)の内容とは無関係に、明確に規定されない限り、任意の特定の記載もしくは例示したアクティビティまたは素子、そのようなアクティビティの任意の特定順序、またはそのような素子の任意の特定の相互関係はいずれの請求項にも含まれているとは要求されていない。さらに、アクティビティは繰り返すことができ、アクティビティは多数の実体によって実施することができ、および/または素子は複製することができる。さらに、アクティビティもしくは素子を削除したり、アクティビティの順序を変化させたり、および/または素子の相互関係を変化させることができる。したがって、本明細書の説明および図面は本質的に例示であって限定的ではないと見なすべきである。さらに、本明細書に数または数値範囲が記載された場合、他に明確に規定しない限り、その数または範囲は近似値である。本明細書に数値範囲が記載された場合は、他に明確に規定しない限り、その範囲にはそれらの間の全ての数およびその間の全てのサブレンジが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】捕捉イオンセルの典型的な実施形態の概略図である。
【図2】一般的FTMSシステムの典型的な実施形態のブロック図である。
【図3】情報機器の典型的な実施形態のブロック図である。
【図4】FTMS変数を最適化する方法の典型的な実施形態のフローチャートである。
【図5】FTMSを用いて試料を分析する方法の典型的な実施形態のフローチャートである。
【図6】強度対時間の典型的なプロット図である。
【図7】強度対スキャン数の典型的なプロット図である。
【図8】強度対質量電荷比の典型的なプロット図である。
【図9】強度対質量電荷比の実際試料についてのプロット図である。
【図10】発酵槽質量補正の典型的なプロット図である。
【図11】濃度対時間の典型的なプロット図である。
【図12】強度対濃度の典型的なプロット図である。
【図13】強度対スキャン数の典型的なプロット図である。
【符号の説明】
【0121】
1000 イオンセル
1010 励起電極
1020 捕捉電極
1030 検出電極
2000 FTMSシステム
2100 捕捉イオンセル
2210 ポンプ機器
2200 真空システム
2220 真空チェンバ
2300 磁石構造
2400 試料導入システム
2410 潜在的試料源
2520 イオン化手段
2600 電子パッケージ
2700 情報機器
2800 ネットワーク
2900 遠隔情報機器
3000 情報機器
3100 ネットワーク・インタフェース
3200 プロセッサ
3300 メモリ
3400 指示
3500 入出力機器
4100〜4900 アクティビティ
5100〜5900 アクティビティ
7100〜7800 スキャン期間
8100、8200 ピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FTMS変数を自動的に最適化するための方法であって、
各々が実質的に類似の分子数を有する複数のFTMS試料に対して、繰り返しかつ自動的に、
複数のデータセットを入手するステップであって、複数のデータセットからの各データセットが、FTMSセルの少なくとも1つの捕捉プレートへ捕捉プレート電圧を印加するステップと、FTMSスペクトル出力信号の合成振幅を測定するステップとによって入手されるステップと、複数のデータセットについて、合成振幅についての分散を決定するステップと、分散が実質的に最小化されるまでFTMS変数を変化させるステップと含むFTMS変数を自動的に最適化するための方法。
【請求項2】
FTMS変数を自動的に最適化するための方法であって、
各々が実質的に類似の分子数を有する複数のFTMS試料に対して、繰り返しかつ自動的に、
複数のデータセットを入手するステップであって、複数のデータセットからの各データセットが、FTMSセルの少なくとも1つの捕捉プレートへ捕捉プレート電圧を印加するステップと、FTMSスペクトル出力信号の合成振幅を測定するステップとによって入手されるステップと、合成振幅が実質的に最小化されるまでFTMS変数を変化させるステップとを含むFTMS変数を自動的に最適化するための方法。
【請求項3】
複数のアクティビティを含む方法であって、自動的にかつ繰り返して、
FTMS試料に印加するイオン化電流束を変化させるステップと、最大線形反応性イオン化電流束が見いだされるまで、FTMSスペクトル出力信号の合成振幅が前記変化するアクティビティに反応してほぼ線形に変化するかどうかを決定するステップとを含む複数のアクティビティを含む方法。
【請求項4】
FTMS変数を自動的に最適化するための方法であって、自動的にかつ繰り返して、
各試料が実質的に類似の分子数を有する複数のFTMS試料の各々についてのFTMSスペクトル出力信号に関する合成振幅を入手するステップと、合成振幅の関数である最適化パラメータの値を決定するステップと、最適化パラメータの値が収束目標に実質的に収束するまでFTMS変数を変化させるステップとを含むFTMS変数を自動的に最適化するための方法。
【請求項5】
複数のFTMS試料のカウント数を受入れるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
複数のFTMS試料のカウント数のユーザが選択した同定を受入れるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項7】
合成振幅を計算するための1つ又はそれ以上の係数を入手するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項8】
最適化パラメータを入手するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項9】
収束目標を入手するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項10】
各試料中に存在する複数のイオン種の各々について、前記イオン種のカウント数を決定するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項11】
各試料中に存在する複数のイオン種の各々について、前記イオン種の量を決定するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項12】
各試料中に存在する複数のイオン種の各々について、前記イオン種の相対量を決定するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項13】
実質的に類似の分子数の量を受入れるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項14】
各FTMS試料について実質的に類似の分子数に対応するユーザが選択したバルブ設定を受入れるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項15】
ユーザが選択した開始時イオン化電流束を受入れるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項16】
複数のFTMS試料から1つのFTMS試料をFTMSセル内に導入するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項17】
FTMSセルの少なくとも1つの捕捉プレートへ捕捉プレート電圧を印加するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項18】
FTMSセル内で生成された初期電荷数を決定するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項19】
FTMSセル内で生成された初期電荷数を測定するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項20】
FTMS出力信号を取得するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項21】
FTMS時間領域出力信号をFTMSスペクトル出力信号へ変換するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項22】
合成振幅を測定するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項23】
合成振幅を計算するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項24】
合成振幅を生成するために複数のイオン固有のFTMSスペクトル振幅の各々を結合するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項25】
合成振幅を生成するために複数のイオン固有のFTMSスペクトル振幅の各々を合計するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項26】
最適化パラメータの数値を計算するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項27】
最適化パラメータのための第1数値を最適化パラメータの第2数値と比較するステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項28】
FTMS変数を増大させるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項29】
FTMS変数を縮小させるステップをさらに含む請求項4記載の方法。
【請求項30】
FTMS変数がイオン化電流束である請求項4記載の方法。
【請求項31】
FTMS変数が捕捉プレート電圧である請求項4記載の方法。
【請求項32】
FTMS変数がイオン化段階捕捉プレート電圧である請求項4記載の方法。
【請求項33】
FTMS変数が検出段階捕捉プレート電圧である請求項4記載の方法。
【請求項34】
FTMS変数がFTMSセル内のイオン位置である請求項4記載の方法。
【請求項35】
FTMS変数がFTMSセル内の予備検出イオン位置である請求項4記載の方法。
【請求項36】
最適化パラメータが合成振幅である請求項4記載の方法。
【請求項37】
最適化パラメータが合成振幅の分散である請求項4記載の方法。
【請求項38】
最適化パラメータが合成振幅の関数である請求項4記載の方法。
【請求項39】
アクティビティについての指示を含む機械読取り可能な媒体であって、
自動的にかつ繰り返して、
各試料が実質的に類似の分子数を有する複数のFTMS試料の各々に対応するFTMSスペクトル出力信号に関する合成振幅を入手するステップと、合成振幅の関数である最適化パラメータの数値を決定するステップと、最適化パラメータの数値が収束目標に実質的に収束するまでFTMS変数を変化させるステップとを含むアクティビティについての指示を含む機械読取り可能な媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2006−516349(P2006−516349A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−531528(P2004−531528)
【出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/026785
【国際公開番号】WO2004/021394
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(500524637)シーメンス エナジー アンド オートメーション インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】