説明

FTO(2−オキソグルタル酸依存性オキシゲナーゼ)活性のアッセイ方法

本発明は、オキシゲナーゼ活性のアッセイ方法を提供し、該方法は、FTOのオキシゲナーゼ活性をモニターすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FTOタンパク質の活性をモニターするためのアッセイ、特にFTOタンパク質の阻害剤、活性化剤及び基質を同定するためのアッセイに関する。本発明はまた、体重増加、体重減少並びに体重増加及び体重減少に関連する疾患の処置又は予防に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満は、いくつかの種類の癌、心臓病及び2型糖尿病を含む病気のリスク範囲の増大に関係している。近年、ヒト16番染色体に位置するFTO遺伝子の特定のアリルの存在が、肥満及び2型糖尿病に関係していることが報告されている。特に、2型糖尿病の患者は、体重の増加と関係している、特定のFTOバリアント(rs9939609 Aアリル)が増加している可能性があることが見出された(Frayling et al.Science(2007)316:889−894)。39,000人を超える個体を含む後の解析は、FTOアリルが、体重と関連することを明らかにした。2型糖尿病に関連するFTOバリアントを1コピー有する個体は、そのバージョンのコピーを持たない個体に比較して、肥満であるリスクが30%増加しており、病気に関連したバリアントのコピーを持たない個体よりも、平均して1.2kgを超えて重かった。2コピーのバリアントを有する個体(解析した個体の約16%)は、肥満であるリスクが70%増加しており、病気に関連したバリアントのコピーを持たない個体よりも、平均して3kg重かった。非常に一般的である肥満についてのリスクアリルを同定した先行研究はないことから、この研究は重要である。さらなる研究は、同様の結果を示している(Dina et al.Nat Genet(2007)39:724−726;Scott et al.Science(2007)316:1341−1345)。
【0003】
FTOのマウスオーソログであるFatso(Fto)は、fused toes変異マウスにおいて欠失している遺伝子である(Peters et al.Mann Genome(2002)13:186−188;van der Hoeven et al.Development(1994)120:1601−2607,Grotewold&Ruther,Dev Biol(2002)251:129−141;Anselme et al.Dev Biol(2007)304:208−220)。明確にするために、FTOに対する後の引用は、ヒトFTO、非ヒトホモログ及び/又は臨床的に観察される任意の多型を含む。
【0004】
FTO配列の多型は肥満に連関しているが、生化学的、細胞的及び生理的なレベルにおけるそのタンパク質産物の機能については、未だ報告がない。
【0005】
FTOと肥満との関係を、体重増加に関連する病気(糖尿病、心臓病、癌、骨粗しょう症及び高血圧(hypertenstion)など)の処置のために活用可能にするためには、FTOの構造及びその生化学的、細胞的及び生理的な役割についての知識が必要である。
【0006】
2−オキソグルタル酸(2−OG)及び第一鉄依存性オキシゲナーゼは、ヒドロキシル化、不飽和化及び酸化的閉環反応を含む幅広い範囲の反応を触媒する酵素のスーパーファミリーである(Hausinger(2004),Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.39,21−68;Ryle&Hausinger(2002)Curr.Opin.Chem.Biol.6,193−201;及びSchofield et al.(1999)Journal of Inorganic Biochemistry 74,49−49)。基質の酸化は、2−OGのコハク酸及び二酸化炭素への変換と共役している。少なくともある場合には、酸素の結合に続く、2−OGの酸化的脱カルボキシル化により、コハク酸、CO及び鉄中心における鉄種[Fe(IV)=O]が生じる。次いで、この高度に反応性の高い中間体は、第一基質中の不活性型のC−H結合を酸化(例えば、ヒトタンパク質のプロリルもしくはアスパラギニル残基の酸化)し得るか、又は、Nメチル化型のタンパク質もしくは核酸のメチル基の酸化などの他の酸化反応をもたらし得る。中間体としての証拠は、基質−アナログ研究、モデル化合物及び分光解析から得る。
【0007】
酸素の結合を引き起こすのに必要な、共基質及び第一基質の連続的結合は、第一基質非存在下において、反応性のある酸化種の生成を制限するのにおそらく重要である。第一基質非共役様式におけるこのような種の生成は、自己酸化を介して2−OG及び関連するオキシゲナーゼを不活性化し得、時に断片化を導く。典型的には、非共役型の2−OGのターンオーバーは、飽和濃度の第一基質存在下におけるその共役型のターンオーバーの速度のおよそ5%にて起こるが、それより遅い速度又はより速い速度でも起こり得る。
【0008】
プロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼ、低酸素症誘導因子であるプロリルヒドロキシラーゼ及びアントシアニジンシンセターゼを含む、いくつかの2−OG依存性オキシゲナーゼは、十分な触媒活性のために、アスコルビン酸塩を必要とする。アスコルビン酸塩は、Fe3+又は他の高価な鉄形態をFe2+(溶液中に遊離しているか又は活性部位のいずれか)まで還元することによって活性を刺激し得るが、アスコルビン酸塩によるオキシゲナーゼ活性の刺激は、他の機構(例えば、非共役型のサイクルの完了を促進することによって)により起こり得る。第一基質非存在下にてプロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼによって触媒される非共役型の反応サイクルについて、2−OGのコハク酸への酸化は、アスコルビン酸塩と化学量論的に共役していることが示された。さらに、アスコルビン酸塩の活性が、細胞内の2−OGオキシゲナーゼ活性(例えば、低酸素症誘導因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼの機能において)を刺激することが示され、ヒト食生活におけるアスコルビン酸塩の欠乏が、低下したプロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼ活性に起因した病気である壊血症を導いている。
【0009】
いくつかの酵素についての研究が、ある基質アナログ及び変異体もまた、非共役型の2−OGのターンオーバーを刺激し得ることを示している。アスコルビン酸塩そのもの以外の還元剤(アスコルビン酸塩誘導体を含む)が、非共役型のターンオーバー反応における還元剤として機能し得るという文献もまた公知である(Zhang et al.(1995)Biochem.J.307(Pt1),77−85及びMyllyla et al.(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.83,441−8)。
【0010】
転写因子ヒドロキシラーゼ(例えば、低酸素症誘導因子プロリル及びアスパラギニルヒドロキシラーゼ、メチル化した核酸デメチラーゼ、メチル化したリシルデメチラーゼ、プロコラーゲンプロリル及びリシルヒドロキシラーゼ、フィタノイル(phytanoyl)CoAヒドロキシラーゼ、Mina53、NO66並びにアルギニルヒドロキシラーゼ(ホスファチジルセリン受容体(Jmjd6))を含む、多くの2−OGオキシゲナーゼが、現在の治療的な興味である。メチルリシルデメチラーゼは、好ましい基質としてメチル化したヒストンを使用してよく、好ましい基質として、全てのトリ、ジ、又はモノがメチル化したリジン残基のうち任意のものを使用してよい。
【0011】
ヒストンを含む、核酸及び核酸関連酸性タンパク質のメチル化は、エピジェニックな遺伝のための機構であることが公知である。核酸のメチル化もまた、遺伝子の活性及び発現に影響し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の概要
本発明者らは、2−オキソグルタル酸(2−OG)依存性オキシゲナーゼとしてFTOを同定し、FTOが2−OG依存性オキシゲナーゼであることを初めて示した。本発明者らは、リコンビナントFTOの精製に成功し、精製したリコンビナントFTOが、2−OG依存性オキシゲナーゼとして機能し、かつ公知の2−OGオキシゲナーゼ阻害剤により阻害され得ることを示した。
【0013】
したがって、本発明は、FTO活性をアッセイするための方法を提供し、該方法は、FTOポリペプチドのオキシゲナーゼ活性をモニターすることを含む。
【0014】
本発明の方法において、酸素及び/もしくは2−オキソ酸(2−OGなど)が共基質として使用されてよく、並びに/又は、鉄が共因子として使用されてよい。オキシゲナーゼ活性についてのアッセイは、還元剤(アスコルビン酸塩もしくはそのアナログ、チオール又はホスフィンなど)の存在下にて、モニターされてよい。1つの実施態様において、FTOオキシゲナーゼ活性は、ペプチド又は核酸基質などの基質存在下にて測定される。
【0015】
本発明の方法において使用されるFTOポリペプチドは、リコンビナントポリペプチドであってよい。1つの実施態様において、FTOポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも40%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。配列番号1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも40%の同一性を有するアミノ酸は、配列番号2から11のうち任意の1つに示されるアミノ酸配列であってよい。あるいは、配列番号1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも40%の同一性を有する酸性配列は、ヒトFTOの天然に生じるバリアント又はヒト以外の種由来のFTOホモログであってよい。
【0016】
1つの好ましい実施態様において、本発明は、FTOポリペプチドを試験剤と接触させること;試験剤存在中にてオキシゲナーゼ活性をモニターすること;及び試験剤がFTO活性の阻害剤又は活性化剤であるかどうかを決定すること、を含む方法を提供する。
【0017】
試験剤は、FTO以外の2−OGオキシゲナーゼの公知の阻害剤、又はこのような阻害剤のアナログもしくはバリアントであってよい。
【0018】
FTO以外の2−OGオキシゲナーゼは、例えば、プロリル、リシル、アルギニル又はアスパラギニルデメチラーゼ、プロコラーゲンプロリルもしくはリシルヒドロキシラーゼ、低酸素症誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ、メチル化したリシルデメチラーゼ(ヒストンデメチラーゼを含む)、アスパラギニルヒドロキシラーゼ、ホスファチジルセリン受容体(Jmjd6)、AlkBもしくはヒトAlkBホモログ及び/又はジベレリンC−20オキシダーゼであってよい。公知の2−OG阻害剤は、N−オキサリルアミノ酸(N−オキサリルグリシンもしくはそれらの誘導体など)、グリシンもしくはアラニン誘導体、2−オキソ酸アナログ、フラボノイド又はフラボノイド誘導体(ゲニステインなど)であってよい。
【0019】
FTOの阻害剤又は活性化剤を同定するための本発明の方法において、試験剤は、FTO活性部位において2−OGもしくはFTO基質と競合してよく、及び/又はFTO活性部位において金属と結合してよい。試験剤は、例えば、金属イオンを含んでよい。
【0020】
1つの実施態様において、試験剤は還元剤であり、還元剤は、FTO以外の2−OGオキシゲナーゼの既報の活性化剤であってよい。例えば、試験剤は、アスコルビン酸塩もしくはアスコルビン酸塩アナログ又はチオール(ジチオスレイトールのメンバーなど)もしくはホスフィン化学ファミリーの還元剤であってよい。
【0021】
本発明の方法において使用したFTOポリペプチドの基質は、核酸、核酸誘導体又はアナログであってよい。例えば、基質は、メチル化した核酸であってよい。メチル化した核酸は、体重調節に関する遺伝子(agouti遺伝子もしくはニューロペプチドY遺伝子、レプチン遺伝子、プロオピオメラノコルチン遺伝子、オレキシン遺伝子、ガラニン遺伝子、PYY遺伝子、コレシストキニン遺伝子、グルカゴン関連ペプチド−1遺伝子又はインシュリン遺伝子など)と関連してよい。
【0022】
1つの実施態様において、本発明は、FTOの基質を同定する方法を提供し、該方法は、FTOポリペプチドを試験基質と接触させること;オキシゲナーゼ活性をモニターすること;試験基質がFTOの基質かどうかを決定すること、を含む。試験基質は、ヒト核酸配列(3−メチルチミン塩基、1−メチルアデニン塩基又は3−メチルシトシン塩基を含む核酸配列など)であってよい。あるいは、試験基質は、メチル化したタンパク質又はペプチドであってよい。基質の同定に先だって、FTOと基質との間の相互作用を安定化させることによって、FTO基質の同定を可能にするために、FTO阻害剤が使用されてよい。
【0023】
1つの局面において、本発明は、FTOを選択的に阻害もしくは活性化する、又はFTO以外の酵素を活性化もしくは阻害するが、FTOを活性化もしくは阻害しないような、阻害剤又は活性化剤を同定する方法を提供し、該方法は、試験剤の存在中にてFTO活性をモニターすること、及びFTO以外の酵素を使用する方法を繰り返すこと、及び試験剤がFTO又は他の酵素を選択的に阻害又は活性化するかどうかを決定することを含む。
【0024】
本発明の1つの実施態様において、FTO以外の酵素は、典型的には2−OGオキシゲナーゼ(プロリル、アスパラギニルもしくはリシルヒドロキシラーゼなどの低酸素症誘導因子ヒドロキシラーゼ、コラーゲンもしくはプロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼ、AlkBホモログなどの核酸デメチラーゼ、又はトリ、ジもしくはモノメチルリジン、アルギニン、アスパラギンもしくはプロリン残基デメチラーゼなどのタンパク質デメチラーゼ)である。タンパク質デメチラーゼは、メチル化したヒストン又はそれらの断片をヒドロキシル化してよい。
【0025】
さらなる実施態様において、本発明は、以下を提供する:
−FTO活性を調節するための、2−OGオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤の使用;
−体重増加もしくは体重減少を処置もしくは予防する方法、又は体重増加もしくは体重減少に関連する病気を処置もしくは予防する方法における使用のための、FTOオキシゲナーゼ活性の調節剤;
−体重増加又は体重減少を処置又は予防することを必要とする個体における体重増加又は体重減少を処置又は予防する方法であって、該方法が、FTOオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤の治療上有効量を個体に投与することを含む方法;及び
−体重増加又は体重減少を処置又は予防することを必要とする個体における体重増加又は体重減少に関連する病気を処置又は予防する方法であって、該方法が、FTOオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤の治療上有効量を個体に投与することを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1−1】図1は、FTOホモログ配列のclustalWアライメントを示す。ヒト gi|122937263、チンパンジー gi|114662524(99%)、マカク gi|109128525(93%)、イヌ gi|73950384(91%)、ウシ gi|119910109(88%)、フクロネズミ gi|126296336(65%)、マウス gi|18490097(87%)、マウス2 gi|6753916(87%)、ラット gi|89337260(87%)、サカナ gi|125821796(48%)、カエル gi|62859671(52%)[は、ヒトFTOとの同一性を示す]。
【図1−2】図1は、FTOホモログ配列のclustalWアライメントを示す。ヒト gi|122937263、チンパンジー gi|114662524(99%)、マカク gi|109128525(93%)、イヌ gi|73950384(91%)、ウシ gi|119910109(88%)、フクロネズミ gi|126296336(65%)、マウス gi|18490097(87%)、マウス2 gi|6753916(87%)、ラット gi|89337260(87%)、サカナ gi|125821796(48%)、カエル gi|62859671(52%)[は、ヒトFTOとの同一性を示す]。
【図2】図2は、ABH3(図5)との、その配列及び2次構造アライメントに基づくFTOのホモロジーモデルである。
【図3】図3は、FTO及びABH3についての、配列及び2次構造アライメント(FTOについて予測した2次構造)を示す。ローマ数字は、8つのコアDSBH鎖を示す。DSBHドメインに続いてC末端へリックスドメインがある。
【図4】図4は、FTOの酵素活性を決定するための2−OGターンオーバーアッセイの結果を示す。11.5μM FTO、144μM 20G、16μM 14C−20G、80μM (NHFe(II)(SO、4μM アスコルビン酸塩及び1mM DTT、並びに(NHFe(II)(SO、アスコルビン酸塩及びDTTのうち1つがアッセイから欠如しているものを使用して、アッセイを行った。アッセイはまた、N−オキサリルグリシン(NOG)の存在下にても、行った。
【図5】図5は、リコンビナントFTOを有する、オリゴヌクレオチドの脱メチル化についての質量分析(MS)解析の結果を示す。示したデータは、TTX TTT TTT TTT TTT(T=チミン、X−メチル化した塩基)について4つの荷電状態についてである。+FTO=FTOと、適切な共因子及び共基質とともにインキュベーション。3MeT=3−メチルチミン;1MeA=1−メチルアデニン;3MeC=3−メチルシトシン。
【図6】図6は、FTOの2−OG依存性DNAデメチラーゼ活性を試験した実験結果を示す:(a)1−meAの脱メチル化は、2−OG脱カルボキシル化アッセイにおいてFTOに依存する;(b)3−meT基質に対するFTO活性の共因子/共基質依存性をLC−MSにて示す。示したデータは、ss−DNAにおける3−meTに対するチミンの比率を表す。酸素コントロール反応は、<1% O雰囲気下にて行った;(c)FTOにより触媒される1−meAの阻害。
【図7−1】図7は、FTOによる一本鎖DNA基質の脱メチル化についての質量分析解析の結果を示す。FTO、共因子及び共基質とともに5’−TT(メチル化した塩基)TTTTTTTTTTTT−3’の形態の合成15merオリゴヌクレオチドのインキュベーションについてのLC−MSデータ;脱メチル化した基質についての予測されたピーク位置を点線で示す。反応物のピークよりも大きな質量にあるより小さなピークは、メチル化したオリゴヌクレオチドのNa及びK付加物からおそらく生じている。m/z=質量対荷電比、ダルトン単位で示す;(b)FTO反応の化学量論;(c)メチル化したポリ(dA)及びポリ(dT)からのホルムアルデヒドの放出。FTO及びABH3について、[14C]でメチル化したポリ(dA)又は[14C]でメチル化したポリ(dT)(全c.p.m.は各々1000又は800)とともに37℃にて15分間インキューベーションすることによるデメチラーゼ活性を、アッセイした。エタノール可溶性[14C]−ホルムアルデヒドの放出をモニターした。FTO−○−、−●−;ABH3−△−、−▲−;[14C]でメチル化したポリ(dA)−○−、−△−;[14C]でメチル化したポリ(dT)−●−、−▲−。2−OGなしでは、有意な活性は検出されなかった。
【図7−2】図7は、FTOによる一本鎖DNA基質の脱メチル化についての質量分析解析の結果を示す。FTO、共因子及び共基質とともに5’−TT(メチル化した塩基)TTTTTTTTTTTT−3’の形態の合成15merオリゴヌクレオチドのインキュベーションについてのLC−MSデータ;脱メチル化した基質についての予測されたピーク位置を点線で示す。反応物のピークよりも大きな質量にあるより小さなピークは、メチル化したオリゴヌクレオチドのNa及びK付加物からおそらく生じている。m/z=質量対荷電比、ダルトン単位で示す;(b)FTO反応の化学量論;(c)メチル化したポリ(dA)及びポリ(dT)からのホルムアルデヒドの放出。FTO及びABH3について、[14C]でメチル化したポリ(dA)又は[14C]でメチル化したポリ(dT)(全c.p.m.は各々1000又は800)とともに37℃にて15分間インキューベーションすることによるデメチラーゼ活性を、アッセイした。エタノール可溶性[14C]−ホルムアルデヒドの放出をモニターした。FTO−○−、−●−;ABH3−△−、−▲−;[14C]でメチル化したポリ(dA)−○−、−△−;[14C]でメチル化したポリ(dT)−●−、−▲−。2−OGなしでは、有意な活性は検出されなかった。
【図8】図8は、非共役型の2−OGターンオーバー実験の結果を示す:(a)アッセイは、2−OGターンオーバー法を使用した;メチル化したDNA基質を添加しなかった。実験の準備及び手順は実施例に説明するとおりである。示した値は、2つの独立した実験の平均値であり、100%は、[14C]−COの130,000カウントに相当する;(b)阻害剤存在中における非共役型の2−OGターンオーバーの減少。DMSO=ジメチルスルホキシド。N−オキサリルグリシンはFe(II)をキレートし得るが、N−オキサリル−D−フェニルアラニン(10)(2−OG依存性アスパラギン−ヒドロキシラーゼの阻害剤)は、N−オキサリルグリシンと同様にFe(II)キレート活性を有するがFTO活性は阻害しないことから、そのFTO阻害効果については十分に説明されない。示した値は、2つの独立した実験の平均値であり、100%は、[14C]−COの130,000カウントに相当する;(c)使用した阻害剤の構造。化合物1は、潜在的な2−OGオキシゲナーゼ阻害剤として先に同定されており、Franklin et al.,2001,Biochem J.353:333、並びに標準的な合成方法論を使用して合成されている(Banerji et al.,2005,Chem Comm.43:5438)。
【0027】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒトFTOのアミノ酸配列である(gi|122937263)。
配列番号2は、ヒトFTOと99%配列同一性を有するチンパンジーFTOのアミノ酸配列である(gi|114662524)。
配列番号3は、ヒトFTOと93%配列同一性を有するマカクFTOのアミノ酸配列である(gi|109128525)。
配列番号4は、ヒトFTOと91%配列同一性を有するイヌFTOのアミノ酸配列である(gi|73950384)。
配列番号5は、ヒトFTOと88%配列同一性を有するウシFTOのアミノ酸配列である(gi|119910109)。
配列番号6は、ヒトFTOと65%配列同一性を有するフクロネズミFTOのアミノ酸配列である(gi|126296336)。
配列番号7は、ヒトFTOと87%配列同一性を有するマウスFTOのアミノ酸配列である(gi|18490097)。
配列番号8は、ヒトFTOと87%配列同一性を有するマウスFTOのアミノ酸配列である(gi|6753916)。
配列番号9は、ヒトFTOと87%配列同一性を有するラットFTOのアミノ酸配列である(gi|89337260)。
配列番号10は、ヒトFTOと48%配列同一性を有するサカナFTOのアミノ酸配列である(gi|125821796)。
配列番号11は、ヒトFTOと52%配列同一性を有するカエルFTOのアミノ酸配列である(gi|62859671)。
配列番号12は、ヒトABH3のアミノ酸配列である(gi|21040275)。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明者らは、リコンビナントFTOを精製し、2−オキソグルタル酸(2−OG)依存性オキシゲナーゼとしてFTOを同定した。したがって、本発明は、FTO活性のアッセイ方法を提供し、該方法は、FTOポリペプチドのオキシゲナーゼ活性をモニターすることを含む。本発明はまた、FTOオキシゲナーゼ活性の調節剤及びFTOによって酸化される基質を同定するためのアッセイ法におけるFTOポリペプチドの使用も提供する。
【0029】
本発明者らは、FTOが、ヒトDNAデメチラーゼ、ABH3(1−メチルアデニン及び3−メチルシトシン核酸塩基に対するデメチラーゼとして公知の活性を有する)と特に高い配列類似性を有するFe(II)及び2−OG依存性オキシゲナーゼのホモログであることを見出した。本発明における使用のためのFTOポリペプチドは、典型的にFe2+に結合する。それゆえ、本発明の1つの局面において、FTO活性のアッセイ方法における共因子として、鉄が使用される。
【0030】
本発明にしたがう使用のためのFTOポリペプチドは、典型的に2−OG及び酸素をコハク酸及び二酸化炭素へと変換する能力を有している。したがって、本発明の1つの局面において、FTO活性のアッセイ方法は、共基質として酸素及び/又は2−OGを使用する。
【0031】
FTOポリペプチドは、配列番号1に示した配列、又は2本鎖ベータへリックス(DSBH)ドメインにおいて配列番号1と少なくとも40%配列同一性を有するアミノ酸配列(例えば、少なくとも45%配列同一性)、又は配列番号1のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%又は約60%)、典型的には70%又は80%を超えるか、より典型的には約90%又は95%(約99%など)を超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0032】
配列同一性は、任意の適切なアルゴリズムを使用して計算されてよい。例えば、UWGCGパッケージは、ホモロジーを推測するために使用され得るBESTFITプログラム(例えば、その初期設定にて使用される)を提供する(Devereux et al.(1984)Nucleic Acids Research 12,p387−395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、ホモロジーを推測したり、又は配列を並べるのに使用され得(典型的に、それらの初期設定において)、例えば、Latched(1993)J.Mol.Evol 36:290−300又はLatched et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10に説明されている。
【0033】
FTOポリペプチドは、任意の天然に生ずるFTO遺伝子によってコードされるポリペプチドであってよい。天然に生ずるFTO遺伝子は、配列番号1にて示された配列を含んでよく、又は配列番号1のバリアントであってよい。このようなバリアントは、ポリペプチドが2−OGオキシゲナーゼ活性を保持する限り、アリルバリアント、及びタンパク質配列内の単一アミノ酸又はアミノ酸群の欠失、修飾又は付加を含んでよい。ポリペプチドはまた、特にポリペプチドの活性が細胞を基準としたアッセイを使用してモニターされる場合には、好ましくは核局在シグナルも有する。核局在シグナルは、FTOの核局在シグナル配列又は他のペプチド由来の核局在シグナル配列であってよい。
【0034】
FTOポリペプチドは、非ヒト種由来のFTOホモログ(FTOの、チンパンジー(配列番号2)、マカク(配列番号3)、イヌ(配列番号4)、ウシ(配列番号5)、フクロネズミ(配列番号6)、マウス(配列番号7又は8)、ラット(配列番号9)、サカナ(配列番号10)、カエルホモログ(配列番号11)、又は他の生物(緑藻類など)由来のホモログであってよい。FTOホモログは、天然に生ずるタンパク質であってよい。FTOポリペプチドは、自然には起こらないが、天然に生ずるFTO配列に比較すると単一アミノ酸又はアミノ酸群の欠失、修飾又は付加を含むようなアミノ酸配列を有してよい。例えば、FTOポリペプチドは、配列番号1から11の任意の1つと、少なくとも約40%(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%など)配列同一性を有してよい。
【0035】
配列番号1から11の任意の1つのアミノ酸置換は、例えば、約1、2又は3個から約10、20又は30個まで置換されてよい。保存的な置換は、例えば、以下の表にしたがってなされてよい。同一ブロック中の第2カラムのアミノ酸、及び好ましくは同一ライン中の第3カラムのアミノ酸は、互いに置換されてよい。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明の視野内にあるバリアントポリペプチドは、任意の適切な方法、例えば、遺伝子シャッフリング技術によって生成されてよい。
【0038】
本発明はまた、本発明のポリペプチドの活性部分、断片、誘導体及び機能的な模倣体の使用も含む。ポリペプチドの「活性部分」とは、該全長ポリペプチドよりは短いが、2−OGオキシゲナーゼ活性を保持しているペプチドを意味する。FTOの活性断片は、以下により詳細に説明する2−OGオキシゲナーゼ活性についてモニターすることによって、典型的に同定されてよい。このような活性断片は、融合タンパク質の一部(例えば、異なるもの(すなわちヘテロなリガンド)に対する結合部分を含む)として、含まれてよい。
【0039】
断片は、少なくとも約50アミノ酸又は約60、70、80、100、150、200、400もしくは500アミノ酸までを有してよい。排他的ではないが、特に、本発明のこの局面は、タンパク質が完全なFTOタンパク質配列の断片である状況を包含しており、2−OGをコハク酸及び二酸化炭素に変換することができる触媒領域を表してよい。ヒト、チンパンジー、マカク、イヌ、ウシ、フクロネズミ、マウス、ラット、サカナ及びカエルのFTO触媒コアは、配列番号1から11に示される。1つの実施態様において、断片は、触媒コアと、触媒コアのN末端に隣接して存在するヌクレオチド認識位とを含んでよい。
【0040】
断片は、配列番号1に示すアミノ酸配列の約アミノ酸1から約505までの任意の領域(アミノ酸2、3、4、5又は10からアミノ酸495、500、501、502、503又は504までなど)を含んでよい。有用な断片は、N末端が切断された断片(すなわち、配列番号1に示すアミノ酸配列の残基30から505又は60から505を含む断片などのN末端欠失を含む断片)、及びN末端及びC末端切断の両方を含む断片(配列番号1に示すアミノ酸配列の残基30から33又は60から330を含む断片など)を含む。他の適切な断片は、例えば、FTOアミノ酸配列と、1以上の公知の2−OG依存性オキシゲナーゼのアミノ酸配列とを比較し、どの領域が触媒活性を有する領域と相同でないかを同定することによって、容易に同定され得る。触媒活性を有する領域は、典型的には活性断片中に含まれる。このような断片は、キメラ分子を構築するために使用され得る。
【0041】
配列番号1におけるアミノ酸配列カラムに対して、少なくとも約60%(少なくとも約70%、80%、90%、95%、99%又は100%など)の配列同一性を有する任意のFTOポリペプチド断片(例えば、配列番号2から11のうち任意の1つの断片を含む、上に記載した、任意の天然に生ずる又は遺伝的に操作した配列の断片)であって、オキシゲナーゼ活性を有する該断片もまた、本発明のアッセイにおいて使用されてもよく、本明細書中にて使用する用語「FTOポリペプチド」に包含される。
【0042】
FTOポリペプチドは、合成的に作製されてよい。ポリペプチドは、化学的又は生化学的に修飾(例えば、翻訳後修飾)されてよい。例えば、グリコシル化されてよく、修飾されたアミノ酸残基を含んでよい。ポリペプチドはまた、精製を補助するための、ヒスチジン残基(典型的に6個)、もしくは他の配列タグ(マルトース結合タンパク質タグ又はインテイン(intein)タグなど)の付加,又は核もしくはミトコンドリアへの移行を促進するための核局在配列の付加、及びもしくはヒドロキシル化もしくはリン酸化を含む翻訳後修飾によって修飾されてもよい。本発明のポリペプチドは、GST又は他の適切な融合ポリペプチドであってよい。FTOポリペプチドはまた、細胞又はオルガネラ内部において可視化するために、又はタンパク質もしくはFTOを発現している細胞の精製を助けるために、蛍光タグ(グリーン蛍光タンパク質など)の付加によって修飾されてもよい。このような修飾されたポリペプチドは、用語「FTOポリペプチド」の範囲内にある。
【0043】
本発明のポリペプチドは、部分的に精製した形態又は実質的に単離した形態にて存在してよい。ポリペプチドの意図された使用を妨害せずに、実質的に単離されたと見なされる場合には、ポリペプチドは担体又は希釈剤と混合されてよい。ポリペプチドはまた、実質的に精製した形態であってもよく、この場合には、一般に、タンパク質、ポリヌクレオチド、細胞又は調製物の乾燥重量の、少なくとも約90%、例えば、少なくとも約95%、98%又は99%を含むであろう。
【0044】
本発明のポリペプチドは、2−OG依存性オキシゲナーゼ活性のアッセイにおいて、例えば、調節剤(ヒドロキシラーゼ活性の阻害剤又は活性化剤など)を同定するために、使用されてよい。阻害剤は、選択的な阻害剤又は活性化剤であってよい。
【0045】
FTOポリペプチドは、第一基質(すなわち、2−OG基質でない)非存在下にて、2−OGオキシゲナーゼ活性のアッセイにおいて使用されてよい。FTOポリペプチドはまた、1以上の適切な基質存在中にてオキシゲナーゼ活性を決定するために使用されてよい。さらに、本発明は、FTO基質の同定方法を提供する。
【0046】
本発明の方法にて使用するFTOは、リコンビナントFTO又は天然に生ずるFTOであってよい。好ましくは、リコンビナントFTOは、大量のタンパク質(>1mg)を必要とする目的のためにFTOが必要とされる場合(生物物理学的アッセイ又はハイスループット解析など)に特に使用される。リコンビナントFTOは、FTOをコードするヌクレオチド配列を含む標準的な発現ベクターを使用して生成されてよい。このような発現ベクターは、分子生物学分野において日常的に構築されており、例えば、プラスミドDNA並びに適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー及び他のエレメント(例えば、必要であれば、ポリアデニル化シグナルなど)の使用を含んでよく、タンパク質発現を可能にするために、これらは正しい方向に配置される。他の適切なベクターは、当業者には明らかであろう。この件に関するさらなる例としては、Sambrook et al.1989を引用する。
【0047】
本発明の方法は、本明細書中において定義したFTOポリペプチドを発現するために改変された細胞を利用してよい。FTOはまた、細胞抽出物又は部分的にもしくは実質的に精製した形態において、存在してもよい。
【0048】
精製したFTOを得る方法
本発明者らは、改変した発現及び精製法を使用して、リコンビナントFTOを可溶かつ活性のある形態にて発現させることが可能であることを見出した。本発明者らはまた、精製したリコンビナントFTOが2−OG依存性オキシゲナーゼであることも示した。したがって、本発明は、精製したFTOを得る方法及び精製したFTOのオキシゲナーゼ活性をアッセイする方法を提供する。
【0049】
精製したFTOポリペプチドは、FTOポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを、宿主細胞に導入することによって得られてよい。
【0050】
発現ベクターは、当該分野にて日常的に構築されており、例えば、プラスミドDNA並びに適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー及び他のエレメント(例えば、必要であれば、ポリアデニル化シグナルなど)の使用を含んでよく、タンパク質の十分な発現を可能にするために、これらは正しい方向に配置される。適切なベクターは、当業者には非常に容易に明らかであろう。プロモーター配列は、選択したアッセイフォーマットに依存して、誘導可能なプロモーター又は構成プロモーターであってよい。プロモーターは、組織特異的であってよい。したがって、ベクター中のコード配列は、コード配列の発現を提供するように、該エレメントに機能的に連結される(典型的には細胞内)。用語「機能的に連結される」は、説明した構成要素が、意図された様式にて機能することを可能にするような関係にあるように、並べることを指す。
【0051】
ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス又はバキュロウイルスベクターであってよい。ベクターは、典型的には細菌細胞(E.coliなど)において使用されるように適合される。ベクターは、複製開始点を有していてよい。ベクターは、1以上の選択マーカー遺伝子(例えば、細菌プラスミドの場合には、アンピシリン耐性遺伝子、又は真菌ベクターについては耐性遺伝子)を含んでよい。ベクターは、宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞、真菌宿主細胞、昆虫宿主細胞、哺乳類(例えば、ヒト宿主細胞)又はバキュロウイルス宿主細胞)を形質導入又は形質転換するために使用されてよい。細菌宿主細胞は、好ましくはE.coli株(例えば、BL21(DE3))である。
【0052】
精製したFTOポリペプチドの作製方法が本発明によって提供される。該方法は典型的にはFTOポリペプチドをコードする発現ベクターを含む宿主細胞を培養すること、及び細胞からFTOポリペプチドを単離することを含む。宿主細胞は、典型的には、例えば、約15℃から約37℃の温度にて培養されてよい。ポリペプチドは、細胞を溶解すること、及び溶解緩衝液からタンパク質を抽出することによって、単離されてよい。溶解緩衝液は典型的には、約250mMから約700mMの塩(例えばNaCl)(約400mMから約600mMなど、例えば、500mM)を含む。本発明にしたがうFTOポリペプチドの作製方法は、本発明にしたがうポリヌクレオチド又はベクターを、宿主細胞に導入することをさらに含んでよい。FTOポリペプチドは、細胞培養物を溶解して得られる可溶性画分中に含まれる。ポリペプチドは、例えばアフィニティー精製(切断された2−OG依存性オキシゲナーゼに融合したアフィニティータグを介してなど)によって、可溶性画分からさらに精製されてよい。
【0053】
宿主細胞にポリペプチド及びベクターを導入する方法は当該分野において周知であり、制限なしに、エレクトロポレーション及び熱ショック技術を含む。次いで、切断されたポリペプチドの発現は、適切な温度にて宿主細胞を培養することによって得られてよい。リコンビナントFTOを発現する細胞は、リコンビナントFTOの発現を誘導するために、好ましくは約15℃と約30℃の間(例えば、約20℃又は約28℃)に維持される。宿主細胞が細菌(E.coliなど)の場合には、細胞は、2TY培地において培養されてよい。インキュベーションの時間(もしくは増殖時間)をとおして、又はインキュベーション時間の最後の段階のいずれかにおいて、IPTGが培養培地に添加されてよい。
【0054】
高い塩含量を含む溶解緩衝液は、典型的には、細胞培養培地を除去するために細胞を遠心分離した後に、細胞を溶解するために使用される。緩衝液は典型的には、約250mmolの塩(例えばNaCl)から約700mmolの塩(例えば、約400から約600mmol NaCl(約500mmol NaClなど))を含む。抽出緩衝液は、界面活性剤(Triton X−100及び/もしくはSDS(典型的に1%)、並びに/又はリゾチームなど)を含んでよい。グリセロールは、典型的に約5%から約20%(約10%など)の濃度にて、溶解緩衝液中に存在してよい。溶解緩衝液は典型的に、約7.5を超えるpH(例えば、約7.6から約8.1、約7.8から約8.0、より好ましくは約7.9)を有している。溶解緩衝液は、細胞の超音波処理に適切であってよい。トリスは溶解緩衝液中に、例えば、約10mmolから約100mmol(約20mmolなど)の濃度にて存在してよい。
【0055】
溶解後、細胞は遠心分離されて良い。遠心分離後、上清は可溶性画分を表す。可溶性画分に存在するタンパク質濃度は、使用した抽出緩衝液の量に依存する。FTOは、精製されるに十分な量にて、可溶性画分中に存在する。これは、SDS PAGEによって決定され得る。SDS PAGEによって切断された酵素を検出することが可能であれば、精製のために十分な酵素が存在しているということである。
【0056】
本発明のFTOポリペプチドは、当該分野にて公知の標準的な技術によって精製されてよい。例えば、ポリペプチドがHisタグを含む場合には、製造業者の指示書(例えば、Novagen)にしたがってhis結合樹脂を使用して、又はイオン交換クロマトグラフィーなどの他の手段によって、精製してよい。精製手順は、以下の工程を含んでよい。本発明のリコンビナントポリペプチドを発現する細胞をペレットにして、適切な緩衝液中に再懸濁し、次いで細胞を破壊するために超音波処理してよい。細胞の破片は遠心分離によって可溶性物質から分離し、可溶性画分をhis結合カラム上に載せる。結合緩衝液及び洗浄緩衝液にてカラムを洗浄した後に、結合したタンパク質は溶出緩衝液を使用してカラムから溶出する。結合、洗浄及び溶出緩衝液は各々典型的には0.5M NaClを含む。さらに塩を追加する必要はない。次いで溶出したタンパク質を濃縮して、トロンビンとともに(典型的には1Umg−1の濃度にて、4℃にて16時間にて)インキュベートする。消化したタンパク質はゲルろ過カラムを使用して分離し、カラムから溶出するFTOは、一般に少なくとも90%、又は少なくとも95%純粋である。本明細書中に説明した様々なアッセイにおいて使用するために、精製したタンパク質は脱塩してよい。
【0057】
アッセイ
我々のデータは、FTOが、2−OGのコハク酸及び二酸化炭素への変換を触媒することを示している。この新たに発見したFTO活性は、初めてFTO活性の阻害剤又は刺激剤/活性化剤を同定するアッセイが行われ得ることを意味している。FTOの2−OGオキシゲナーゼ活性をブロック又は活性化すれば、体重を調節する結果となるであろう。任意の適切なアッセイが、FTOオキシゲナーゼ活性、特に2−OGオキシゲナーゼ活性の調節剤を同定するために行われ得る。適切なアッセイについての多くの異なる例を、以下に説明する。1つの実施態様において、本明細書中に説明するように、アッセイはヒトFTOポリペプチドを利用する。FTOポリペプチドは、例えば、細胞抽出物として、又はこのような抽出物から関連ポリペプチドを精製することによって、精製又は未精製の形態のいずれかにて提供されてよい。あるいは、関連構成要素は、リコンビナント発現技術を使用して発現され得、及びアッセイにて使用するために精製され得る。あるいは、構成要素は、細胞に基づくアッセイにて使用するために、細胞にてリコンビナントに発現されてよい。
【0058】
アッセイ方法
FTOポリペプチドは、オキシゲナーゼ活性(2−OGオキシゲナーゼ活性など)アッセイにおいて使用されてよい。これらのポリペプチドもまた、FTOオキシゲナーゼ活性を調節する(阻害する又は活性化するなど)薬剤を同定するアッセイにおいて有用である。該方法は、1以上の共基質及び任意に第一基質の存在中にて、FTOポリペプチドと試験物質(潜在的な阻害剤など)とを接触させることを含む。試験物質及びFTOポリペプチドは、典型的にはオキシゲナーゼ活性に適切な条件下にて接触される。適切な共基質は、酸素(例えば、二酸素)、及び2−オキソ酸(2−OGなど)を含む。好ましくは、共基質は2−OGである。酸素又は2−オキソ酸に加えて、還元剤(アスコルビン酸塩など)もまた、共基質として使用されてもよい。アッセイの構成要素は、試験物質非存在下にて、酵素が共基質に作用するような条件下にて接触されて、共基質修飾の程度を決定する。あるいは、第一基質の酸化がモニターされてよい。触媒的なターンオーバー非存在下にて、FTOに対する結合を検出するアッセイがまた、使用されてよい。このようなアッセイは、クロマトグラフィー、NMR、MS又は蛍光分光法などの技術を用いてよい。共基質は、FTOによって修飾(例えば、2−OG)又は消費(例えば、酸素又はアスコルビン酸塩)されてよい。脱メチル化活性は、ホルムアルデヒドの放出を測定することによってモニターされてよく、ホルムアルデヒドの放出を測定する適切な方法は、当該分野にて公知である。このような方法は、例えば、Kleeberg and Klinger(1982)J.Pharmacol.Methods 8:19−31,Trewick et al.(2002)Nature 419:174−178及びTsukada et al.(2006)Nature 439:811−816に記載されている。アッセイはまた、活性の増加についてのアッセイによって、2−OG依存性オキシゲナーゼの活性を増加させる物質を検出するために使用されてもよい。適切なアッセイは、他の2−OG依存性オキシゲナーゼについての分野において説明されている。
【0059】
本発明のこのようなアッセイは、オキシゲナーゼ活性の阻害剤を同定するために使用されてよく、次いで、試験物質非存在下を含む、オキシゲナーゼとしてFTOが活性である条件下において、好ましくは行われる。試験物質存在下におけるFTOオキシゲナーゼ活性は、試験物質がFTOオキシゲナーゼ活性の阻害剤であるかどうかを決定するために、試験物質非存在下におけるFTOオキシゲナーゼ活性と比較される。あるいは、アッセイを、FTOオキシゲナーゼ活性の促進剤を探すために(例えば、試験物質非存在下にて行ったアッセイと比較して、共基質の変換及び/又は基質のヒドロキシル化の増加について探すことによって)使用されてよい。アッセイはまた、オキシゲナーゼ活性が減少するか又は存在しない条件下(低酸素条件下など)にて行われてもよく、このような条件下にて、活性の存在又は増加した活性がモニターされ得る。
【0060】
本発明のアッセイはまた、FTO特異的で、かつ他の2−OGオキシゲナーゼ(例えば、プロコラーゲンヒドロキシラーゼ、ヒトABH(AlkBと相同)、メチルリジンデメチラーゼ、低酸素症誘導因子(HIF)アスパラギニル又はプロリルヒドロキシラーゼなど)に対しては活性がないか又は活性が低いような、阻害剤又は活性化剤を同定するために使用されてもよい。反対に言えば、本発明のアッセイは、FTOを阻害しない、1以上の2−OG依存性オキシゲナーゼ(例えば、HIFアスパラギニル又はプロリルヒドロキシラーゼなど)に特異的な阻害剤又は活性化剤を同定するために使用されてよい。
【0061】
本発明のアッセイはまた、特定の基質又は基質内の残基にて、FTO活性に特異的である阻害剤又は活性化剤を同定するために使用されてもよい。
【0062】
医薬的適用において、例えば、単一の酵素又は酵素群のオキシゲナーゼ活性を調節することは、しばしば有利である。それゆえ、本発明のアッセイは、第2の2−OG依存性オキシゲナーゼ(リシル、プロリル、アスパラギニル及びアルギニルデメチラーゼ、HIFヒドロキシラーゼ(FIH、PHD1、PHD2及びPHD3を含む)、AlkB、ABH1、ABH2、ABH3、プロコラーゲンプロリル及びリシルヒドロキシラーゼ、ホスファチジルセリン受容体(Jmjd6)、Mina53及び(SMARTデータベースにしたがうJmjドメインタンパク質(リシルデメチラーゼを含むがこれに限定しない)として同定された)2−OGオキシゲナーゼを含むがこれに限定しない)に関連するFTO活性を選択的に調節する薬剤を同定するために使用されてよい。
【0063】
このような選択的スクリーニングは、FTOの選択的な阻害剤又は他の酵素の選択的な阻害剤(すなわち、他の酵素の活性に対してよりもFTO活性に対してより強力な阻害剤である阻害剤、又は他の酵素の活性に対してよりもFTO活性に対してより弱い阻害剤である阻害剤)を同定するために使用されてよい。阻害剤が、FTO活性の選択的な阻害剤である場合、他の酵素の活性に対しては何の効果も有さなくてよいか、又は低い阻害レベルのみ(他の酵素の活性に対して約50%未満の阻害)を示してよい。阻害剤が、FTOではない酵素の活性の選択的な阻害剤である場合、FTO活性に対して何の効果も有さなくてよいか、又は低い阻害レベルのみ(FTO活性に対して約50%未満の阻害)を示してよい。
【0064】
選択スクリーニングは、精製した酵素、部分的に精製した酵素(粗細胞溶解物など)又は細胞内にて行われてよい。
【0065】
本発明は、変化(すなわち、増加又は減少)した2−OG依存性オキシゲナーゼ活性(FTOオキシゲナーゼ活性など)に関連した状態の処置のための医薬の製造における選択的な阻害剤の使用を提供する。
【0066】
試験されている1以上の酵素の第一基質が未知である場合に、選択的な阻害剤を同定するために、本発明の方法を使用することもまた可能である。この実施態様において、一般に、未知の基質を有する酵素を阻害することが望まれないような1以上の酵素であろう。オキシゲナーゼ活性に対する試験剤の効果は、基質非存在下にて、オキシゲナーゼによる2−OGのターンオーバー速度に対して、試験剤が影響を及ぼす(例えば、阻害又は刺激する)か否かを決定することによって、決定されてよい。
【0067】
本発明のアッセイは、FTOによってヒドロキシル化又はそうでなければ酸化される基質を使用してよい。特に、このような基質は、FTO 2−OGオキシゲナーゼ活性の調節剤の活性についてモニターするためのアッセイにおいて使用されてよい。基質は、ペプチド又は核酸基質であってよい。核酸基質は、DNA又はRNAであってよい。オリゴヌクレオチド基質が使用されてよい。DNAは好ましくは核DNAであるが、ミトコンドリアDNAであってもよい。好ましくは、核酸基質は、1以上の残基がメチル化されている。
【0068】
典型的には配列番号1のアミノ酸配列又はバリアントを有するFTOとともに、FTOによって、ヒドロキシル化又はより一般的には酸化される任意の適切な基質が使用されてよい。2−OG依存性オキシゲナーゼの基質のうちいくつかは、当該分野にて周知である。基質は、天然に生ずるタンパク質又はリコンビナントもしくは合成タンパク質又は核酸であってよい。FTOによる酸化部位を含む、天然に生ずる基質タンパク質又は核酸の断片及びバリアントが、本発明のアッセイにおける基質として使用されてよい。
【0069】
FTO又は別のオキシゲナーゼの選択的な阻害剤を同定するためのアッセイにおいて、異なる基質が、FTO及び他のオキシゲナーゼ(単数又は複数)について使用されてよい。
【0070】
本発明の方法は、FTOの2−OG依存性オキシゲナーゼ活性の新規の基質を検出するために使用されてよい。このようなアッセイにおいて、試験基質が使用され、ヒドロキシラーゼ活性の検出は、試験基質のヒドロキシル化が生じたこと、したがって、試験基質がFTOの基質であるということを示している。このようなアッセイは、単離された構成要素、半精製した抽出物又は全細胞にて行われてよい。
【0071】
試験基質は、核酸、核酸誘導体もしくはアナログ(メチル化した核酸など)であってよく、又はタンパク質もしくはペプチド(メチル化タンパク質もしくはペプチドなど)であってよい。メチル化した核酸、タンパク質又はペプチドは、体重調節に関わる遺伝子、タンパク質又はペプチドと関連してよい。例えば、核酸は、遺伝子又は遺伝子から転写されたmRNAの一部であってよく、ペプチド又はタンパク質は、遺伝子によってコードされてよい。体重調節に関わる遺伝子及びペプチドの例としては、agouti遺伝子及びagouti関連ペプチド並びにニューロペプチドY遺伝子及びニューロペプチドY関連ペプチド遺伝子並びに以下のペプチド及びペプチドをコードする遺伝子が挙げられる:レプチン、プロオピオメラノコルチン、オレキシン、ガラニン、PYY、コレシストキニン、グルカゴン関連ペプチド−1及びインシュリン。
【0072】
2−OGアナログ(N−オキサリルグリシン)及び遷移金属(亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルト及びニッケルなど)などを含むがこれに限定しないFTO活性の阻害剤は、FTOと基質との相互作用を安定化し、次いでFTOに結合する基質又は結合パートナーを同定することによって、FTO基質の同定を可能にするために使用されてよい。標準的な方法が、基質又は結合パートナーを同定するために使用されてよい。使用されてよい技術の例には、プロテオミクス分野において使用される質量分析又は抗体又は他の標準的な試薬及び方法論が含まれる。あるいは結合アッセイ又は細胞を基準としたアッセイが使用されてよい。
【0073】
調節物のモニター方法
本発明の任意のスクリーニング又はアッセイ方法の詳細なフォーマットは、日常的な技術及び知識を使用して、当業者によって改変されてよい。当業者は、適切なコントロール実験を付加的に用いる必要性について十分認識している。本発明のアッセイは、適切な基質のヒドロキシル化をモニターすること、基質及び共基質の利用をモニターすること、酵素とその基質との間の予期される産物の生成をモニターすることを含んでよい。本発明のアッセイ方法はまた、システム内の構成要素間の直接的な相互作用についてのスクリーニングを含んでもよい。あるいは、基質が介する下流効果をモニターするアッセイ(適切なレポーター構築物を使用する基質を介する転写など)が行われてよいし、又は基質によって直接的又は間接的に制御されるべきことが公知の遺伝子の上方制御もしくは遺伝子の発現パターンの変化についてモニターすることによってアッセイが行われてよい。
【0074】
直接的又は間接的のいずれかで、オキシゲナーゼ活性を決定する様々な方法が、当該分野で公知である。FTOの2−OG依存性オキシゲナーゼ活性を決定する任意の適切な方法(基質もしくは共基質の利用、ペプチド/核酸のヒドロキシル化/脱メチル化などの産物の出現又はヒドロキシル化/脱メチル化した産物もしくはヒドロキシル化していない産物によって介される下流効果によってなど)が、使用されてよい。
【0075】
基質、酵素及び潜在的な阻害剤化合物は、阻害剤非存在下にて基質のヒドロキシル化/脱メチル化を提供する条件下にて一緒にインキュベートされてよく、阻害剤の効果は、基質のヒドロキシル化/脱メチル化を決定することによって決定されてよい。これは、任意の適切な手段によって遂行されてよい。小さなポリペプチド又はポリヌクレオチド基質が回収されて、物理的解析(質量分析器、ラジオグラフィーもしくはクロマトグラフィーなど)又は機能解析を行ってよい。このような方法は当該分野にて公知のものであり、日常的な技術及び知識を使用して行われてよい。例えば、実施例に説明するLC−MSアッセイが使用されてよい。決定は定量的又は定性的であってよい。どちらの場合でも、特に後者の場合には、定性的な決定は、適切なコントロール(例えば、潜在的な阻害剤なしでインキュベートした基質)と比較して行われてよい。
【0076】
別の実施態様において、基質によって介されるプロモーターがレポーター遺伝子に機能的に連結して提供されるようなレポーター構築物が、提供されてよい。任意の適切なレポーター遺伝子(例えば、比色分析、蛍光定量、蛍光共鳴又は分光分析アッセイにおいて使用されてよい酵素など)が、使用され得る。
【0077】
本明細書中にて説明するアッセイ方法において、典型的にはFTO及び基質は、共基質(酸素及び/又は2−オキソ酸(2−OG及び/又は二酸素など))の存在下にて接触される。ヒドロキシラーゼ/デメチラーゼ活性は、1以上の共基質(酸素、2−OG及び/又はアスコルビン酸塩など)のターンオーバーを決定することによって、決定されてよい。これは、反応産物(ヒドロキシル化した基質又はコハク酸など)の存在及び/又は量を決定することによって得られてよい。産物の量は、基質の量に対して相対的に決定されてよい。例えば、このような実施態様において、基質はポリペプチドであってよく、例えば、測定される産物は、ヒドロキシル化/脱メチル化したポリペプチド又は核酸であってよい。例えば、ヒドロキシル化/脱メチル化の程度は、反応において生成したヒドロキシル化/脱メチル化したポリペプチド/核酸、コハク酸、二酸化炭素、もしくはホルムアルデヒドの量を測定することによって決定されてよく、又は2−OGもしくは二酸素の減少量を測定することによって決定されてよい。これらの各々のモニター方法は、科学文献(例えば、Myllyharju et al.(1991)EMBO J.16(6):1173−1180又はCunliffe et al.(1986)Biochem.J.240:617−619)において公知である。
【0078】
未使用の2−OGは、定量され試験ポリペプチドのヒドロキシル化の程度を示すために使用され得る指示的なクロモフォア又はフルオロフォアを与える化学試薬(例えば、ヒドラジン誘導体及びortho−フェニレンジアミン誘導体が例として挙げられるが、これらに限定しない)によって誘導されてよい。溶解型の酸素電極(例えば、「クラーク(Clarke)型」電極又は蛍光クエンチを使用する電極が例として挙げられるが、これらに限定しない)は、アッセイ混合物中の酸素消費を追跡するために使用されてよく、これは、上記と類似の様式にて試験ポリペプチドのヒドロキシル化の程度を示すために使用され得る。
【0079】
ortho−フェニレンジアミン(OPD)と2−OGのα−ケト酸モチーフとの反応の蛍光産物は、3−(2−カルボキシエチル)−2(1H)−キノキサリノンである。この蛍光産物は、例えば、Molecular Devices、Tecan、BMG Labtechnologies、Jasco及びPerkin Elmerによって製造されるような標準的な装置によって容易に検出され得、蛍光産物の生成が、ハイスループットスクリーニングにおいて使用され得ることを示す大きな前例である。
【0080】
蛍光産物は一般に、約300nmから約400nm、好ましくは約335から約345nm、最も好ましくは約340nmの励起フィルターセットにて検出される。発光フィルターは一般に、約400から約450nm、好ましくは約415から約425nm、最も好ましくは約420nmである。
【0081】
このアッセイ手順は、それ自身をハイスループットフォーマット(マルチウェルプレートフォーマット、例えば96、384、又は1536ウェルプレートフォーマットなど)へと導く。
【0082】
さらに、蛍光産物の性質は、使用する誘導体化試薬の性質を改変することによって調節され得る。例えば、方法の感度は、1,2−ジメトキシ−4,5−ジアミノベンゼン、又は1,2−メチレンジオキシ−4,5−ジアミノベンゼンのいずれかを使用して増大されてよい。
【0083】
本発明の任意のスクリーニング又はアッセイ方法の詳細なフォーマットは、日常的な技術及び知識を使用して、当業者によって改変されてよい。当業者は、適切なコントロール実験を付加的に用いる必要性について十分認識している。活性は、OPD又は他の芳香族ジアミン(1,2−ジメトキシ−4,5−ジアミノベンゼン又は1,2−メチレンジオキシ−4,5−ジアミノベンゼンなど)とともに、2−OGの誘導体化によって測定され、このような誘導体は、OPD(Muhling et al.Journal of Chromatography B(2003)383−392,Nakamura et al.Chem.Pharm Bull.(1987)687−692)の使用と比較して増大した感度を与える。
【0084】
アッセイは、オキシダーゼによる基質のヒドロキシル化/酸化に適切な条件下にて行われる。したがって、2−OGがアッセイ中に存在する。アッセイ混合物はまた、鉄、好ましくは第一鉄も含んでよい。
【0085】
他の構成要素が、アッセイ混合物に添加されてよい。例えば、還元剤(アスコルビン酸塩、チオール(ジチオスレイトール(DDT)など)、β−メルカプトエタノール、N−アセチルシステイン又はフェノールなど)が、酵素の構造の維持を助けるためにアッセイに添加されてよく、及び/又はカタラーゼが、生成され得る任意のHを破壊するために添加されてよい。しかし、アッセイは、還元剤又はカタラーゼ非存在下にて機能するであろう。
【0086】
アッセイは、典型的には約25℃から約40℃の温度、例えば、約30℃から約39℃、又は約35℃から約38℃もしくは約37℃の温度にて行われる。アッセイ混合物のpHは、典型的には約pH7から約pH9、例えば、約pH7.5から約pH8の間である。適切な緩衝液(トリス又はHEPESなど)が、アッセイ混合物のpHを維持するために使用されてよい。
【0087】
典型的には、アッセイは、正常酸素圧条件下にて行われる。ヒドロキシル化/酸化を増強する薬剤によるオキシゲナーゼ活性の調節を検出するために、アッセイはまた、ヒドロキシル化又は酸化が減少しているか又は存在しない条件下にて(低酸素条件など)行われてもよい。
【0088】
あるいは、終点の決定は、ポリペプチド又は核酸基質に由来した基質又は基質断片(合成及びリコンビナントペプチド又は核酸を含む)の、検出可能な産物への変換に基づかれてよい。基質は、アッセイを促進するために改変されてよく、改変された基質が、ハイスループットスクリーニングを迅速に行い得、ハイスループットスクリーニングに適切であってよい。
【0089】
例えば、本明細書中に例示したような逆相HPLC(C−4オクタデシルシランカラム)は、出発時の合成ペプチド基質を産物から分離するために使用されてよい。このアッセイの改変又はオキシゲナーゼ活性のための変法アッセイは、当該分野にて周知の、例えば、質量分析、分光、及び/又は蛍光技術を用いてよい(Masimirembwa C.et al.Combinatorial Chemistry&High Throughput Screening(2001)4(3)245−263,Owicki J.(2000)J.Biomol.Screen.5(5)297−305,Gershkovich A et al.(1996)J.Biochem.&Biophys.Meths.33(3)135−162,Kraaft G.et al.(1994)Meths.Enzymol.241 70−86)。蛍光技術は、分光又は蛍光アッセイを行うか又は最適化するために、このような方法にて改変された基質バージョンを用いてよい。
【0090】
ポリペプチド又は他の基質の、ヒドロキシル化及び非ヒドロキシル化又は脱メチル化された形態間を識別する分子の結合は、当業者が入手可能な任意の技術を使用して評価されてよく、これは適切な標識の存在の決定を含んでよい。
【0091】
本発明のアッセイ方法はまた、インビボアッセイ又は動物(哺乳類(ヒトを含む)又は昆虫)由来の生体外の細胞にて行うアッセイの形態を取ってもよい。アッセイは、関連ポリペプチド又はペプチドが、細胞に導入された1以上のベクターから発現されている細胞株(酵母もしくは細菌株、又は昆虫もしくは哺乳類細胞株など)において行われてよい。あるいは、アッセイは、内在性のFTOを発現しているか、又はFTOが過剰発現している哺乳類細胞にて行われてよい。
【0092】
本発明の細胞に基づくアッセイにおいて使用するFTOポリペプチドは、好ましくは核局在シグナルを含む。
【0093】
試験化合物
本明細書中にて説明するアッセイ方法を使用してスクリーニングされてよい薬剤は、薬物スクリーニングプログラムにて使用する、天然又は合成化学化合物であってよい。いくつかの明らかにされた又は明らかにされていない構成要素を含む植物、微生物又は他の生命体の抽出物もまた、使用されてもよい。
【0094】
組み合わせライブラリー技術(固相合成及び平行した合成方法論を含む)は、潜在的な膨大数の異なる物質を、相互作用を調節する能力について効率的に試験する方法を提供し得る。このようなライブラリー及びその使用は、天然産物、小分子及びペプチド、その他の全ての様式について、当該分野にて公知である。ペプチドライブラリーの使用は、ある状況において好ましくてよい。様々な市販の化合物ライブラリーもまた、入手可能である。阻害の主要な構造を同定し得る、これらのライブラリーをスクリーニングするためのコンピューターによる方法(プロセスは、バーチャルスクリーニングと呼ばれることもある)がある。
【0095】
潜在的な阻害剤化合物(すなわち、アンタゴニスト)は、ポリペプチド、小分子(市販のライブラリー(組み合わせライブラリーなどを含む)由来の分子など)であってよい。使用されてよい小分子化合物は、2−OGアナログ、又は基質アナログを含み、これは酵素の作用を阻害する。使用されてよい小分子化合物、及び他の化合物型は、全ての公知の2−OGオキシゲナーゼ阻害剤(HIFヒドロキシラーゼ(例えば、WO02/074981及びWO03/080566を参照)及びプロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼを阻害することがすでに公知のものなど)を含む。
【0096】
潜在的な促進剤は、広く様々な源、特に市販の小化合物ライブラリーからスクリーニングされてよい。酸素を含む化合物は、スクリーニングされるべき候補化合物(例えば、2−OGアナログ)に含まれてよい。肥満(Cooke and Bloom,Nature Reviews Drug Discovery 2006)及び2型糖尿病を処置するために現在使用される任意の薬剤は、FTO活性に影響して、候補薬剤として使用されてよい。
【0097】
TCAサイクル中間体(フマル酸など)を含む天然に生ずる化合物が、2−OGオキシゲナーゼの公知の阻害剤であるから、可能であれば生理的に関連性のある様式(フマル酸はWarburg効果の結果、上方制御されることが公知の、ある種の癌を含む)にて、FTOを阻害してもよい。
【0098】
基質のヒドロキシル化/酸化を増加させる、増強させる、刺激させる、破壊させる、減少させる、妨害させる又は完全にもしくは部分的に排除し、それによって活性を調節してもよい試験化合物は、本明細書中に説明するアッセイ方法を使用して同定されるか、及び/又は得られてよい。
【0099】
ヒドロキシル化/酸化を増加させる又は増強させる薬剤(すなわちアゴニスト)(例えば、プロリル又はアスパラギニルヒドロキシル化)は、ポジティブに機能する試験剤非存在下にてヒドロキシル化/酸化を制限するか又は妨げる条件下にて、同定及び/又は得られてよい。このような薬剤は、FTOのオキシゲナーゼ活性を増強させる、増加させる、増進させる又は刺激させるために使用されてよい。
【0100】
様々な局面において、本発明は、本発明のスクリーニング方法によって、FTOオキシゲナーゼ活性の調節剤であることが同定される薬剤又は化合物(例えば、FTO活性を阻害する又は減少させる、増加させる又は増強させる物質)を提供する。
【0101】
試験剤は、FTO活性部位にて2−OG又はFTO基質と競合してよく、及び/又はFTO活性部位にて金属と結合してよい。試験剤は、マンガン、コバルト、亜鉛又はニッケルイオンなどの金属イオンを含んでよいが、これらに限定しない。あるいは阻害方法は、アロステリックな相互作用を介してよい。
【0102】
試験剤は、還元剤であってよい。還元剤は典型的には2−OGオキシゲナーゼ活性の活性化剤として、典型的にはインビトロにて機能する。オキシゲナーゼ活性の活性化剤は、インビトロ又はインビボのいずれかにて、FTOポリペプチドのオキシゲナーゼ活性を増加させる任意の種でよい。使用されてよい還元剤としては、アスコルビン酸塩及びアスコルビン酸塩アナログ並びにチオール化学ファミリーの還元剤(ジチオスレイトールなど)又はホスフィン(例えば、トリスカルボキシエチルホスフィン)の還元剤が挙げられる。
【0103】
調節剤の同定に続いて、物質が精製され及び/又はさらに調査され(例えば、改変される)及び/又は製造されてよい。調節剤は、ペプチド的又は非ペプチド的な模倣体を得るために(例えば、当業者に周知及び本明細書中に記載した方法によって)使用されてよい。調節剤は、本明細書中に説明するように、例えば選択性を増大させるために、改変されてよい。以下に記載するように治療的な状況にて使用されてよい。
【0104】
治療的な処置のために、調節剤は単独で、又は任意の他の治療的に活性のある物質又は処置と組み合わせて、使用されてよい。
【0105】
酸性化合物は、塩(ナトリウム塩など)の形態にて存在し得る。化合物はまた、誘導体(ジメチルエステル、ジエチルエステル、モノエチルエステル又はジもしくはモノアミドなど)の形態にて存在してもよい。例えば、生命体の細胞内において酵素の阻害が必要である場合などの、ある例において、これらの誘導体が好ましくてもよい。
【0106】
2−OGオキシゲナーゼを調節する化合物は、本発明の薬剤として、例えば、本明細書中に説明する体重疾患の処置において、有用であってよく、本発明のアッセイにおける試験物質として使用されてよい。試験化合物は、FTO以外の2−OGオキシゲナーゼの阻害剤として機能することが公知であってよい。例えば、試験剤は、プロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼ、低酸素症誘導因子、プロリル及びアスパラギニルヒドロキシラーゼ、コラーゲンプロリルヒドロキシラーゼ、ジベレリンC−20オキシダーゼ、核酸デメチラーゼ(AlkB又はヒトAlkBホモログなど)、タンパク質デメチラーゼ(トリ、ジ、モノメチルリジン又はアルギニン残基デメチラーゼなど)、(代謝又は制御に含まれる)ヒト又は動物の他の2OGオキシゲナーゼ、又は植物2−OGヒドロキシラーゼの阻害剤であってよい。多くの2−OGオキシゲナーゼ阻害剤は、ヒトプロリルヒドロキシラーゼとして特に公知である。N−オキサログリシン及びその誘導体が、適切な例である。グリシン又はアラニン誘導体及び2−オキソ酸アナログもまた使用されてよい。
【0107】
2−OGオキシゲナーゼ、及びこのような化合物ファミリーを調節する化合物は当該分野にて公知であり、例えば、Aoyagi et al.(2002)Hepatology Research 23(1):1−6,Aoyagi et al.(2003)Free Radical Biology and Medicine 35:410 Suppl.1,Philipp et al.(2002)Circulation 106(19):1344 Suppl.S,Ivan et al.(2002)PNAS USA 99(21):13459−13464,Nwogu et al.(2001)Circulation 104(18):2216−2221,Myllyharju and Kivirikko(2001)Ann Med 33(1):7−21,Ohta et al.(1984)Chemical and Pharm Bulletin 32(11):4350−4359,Franklin et al.(2001)Biochem J.353:333−338,Franklin(1997)Int J.Biochem Cell Biol 29(1):79−89,Dowell et al.(1993)Eur J Med Chem 28(6):513−516,Baader et al.(1994)Biochem J.300:525−530,Baader et al. (1994)Eur J Clin Chem and Clin Biol 32(7):515−520,Bickel et al.(1998)Hepatology 28(2):404−411,Bickel et al.(1991)J.Hepatology 13:S26−S34 Suppl.3,US 6,200,974,US 5,916,898,米国特許出願2003−0176317,2003−0153503及び2004−0053977,WO 02/074981,WO 03/080566,WO 04/035812,Cunliffe et al.(1992)J.Med.Chem.35:2652−2658,Higashide et al.(1995)J.Antibiotics 38:285−295,Cunliffe et al.(1986)Biochem.J.239(2):311−315,Franklin et al.(1989)Biochem.J.261(l):127−130,Friedman et al.(2000)PNAS USA 97(9):4736−4741,Wu et al.(1999)J.Am.Chem.Soc.121(3):587−588,DE−A−3818850,Wang et al.(2001)Biochemistry US:15676−15683並びにLerner et al.(2001)Angew Chem.Int.Edit.40:4040−4041である。
【0108】
適切な試験化合物が、WO03/080566及びWO02/074981に開示されている。他の適切な化合物は、Fibrogen社のHIFヒドロキシラーゼの阻害剤を含む。Fibrogen社のHIFヒドロキシラーゼの阻害剤は、米国特許出願公報に開示されている:20070042937、20060276477、20060270699、20060258702、20060258660、20060251638、20060183695、20060178317及び20060178316。
【0109】
他の適切な試験化合物は、式(I)の化合物を含み:
【0110】
【化1】

【0111】
ここで
−Yは−OR’及び−NR’R’’から選択され、ここでR’は水素、又は非置換のC1−4アルキルであり、R’’は水素、ヒドロキシ又は非置換のC1−4アルキルであり;
−Yは−C−、−S−及び−S(O)−から選択され;
−Zは−C(O)−及び−NR’’から選択され、ここでR’’は水素、ヒドロキシ又は非置換のC1−4アルキルから選択され;
−Zは水素及び非置換のC1−4アルキルから選択され;かつ
−Rは、天然に生ずるアミノ酸の側鎖である。
【0112】
好ましくは、Yは−C−であり、Yは−OH又は−NHである。最も好ましくは、Yは−C−であり、Yは−OHである。
【0113】
好ましくは、Zは−C(O)−又は−NR’’−であり、ここでR’’は水素、メチル又はエチルである。より好ましくは、Zは−C(O)−又は−NH−である。好ましくは、Zは水素、メチル又はエチルであり、より好ましくは、水素である。最も好ましくは、Zは−C(O)−であり、Zは水素、メチル又はエチルである。
【0114】
好ましくは、Rは、アラニン、バリン、ロイシン又はフェニルアラニンの側鎖である。好ましくは、Rは、バリン、ロイシン又はフェニルアラニンの側鎖である。より好ましくはRはフェニルアラニン、すなわち−CHPhの側鎖である。
【0115】
これらの化合物のL−立体異性体又はD−立体異性体が使用されてよい。
【0116】
式(I)の試験化合物を得るために使用する例示的な合成スキームを以下のスキーム1に示す。ここで、式(I)の化合物を生成するために、アミノ酸をオキサリルクロリドと反応させる。同様の一般的な反応が他のアミノ酸でも起こることは明らかであるが、このスキームにおいて、使用するアミノ酸はフェニルアラニンである。第1反応により、本発明の保護された化合物(ジメチルエステル形態)が生じる。二酸形態は、水酸化ナトリウム水との反応により、容易に生成する。
【0117】
【化2】

【0118】
Xが−O−もしくは−S−であるか、又はZが−CO−CO−OH以外である化合物は、Mole et al.(2003)Bioorg.Med.Chem.Lett.13,2677−2680及びCunliffe et al.J.Med.Chem.(1992)35 2652−2658に説明されるように合成されてよい。
【0119】
クレブスサイクルの中間体(コハク酸及びフマル酸など)は、FTOデメチラーゼ活性の阻害剤として機能する。それゆえ、コハク酸及びフマル酸アナログは、FTO活性を阻害するために使用されてよい。
【0120】
治療的適用
FTOのオキシゲナーゼ活性に影響を与える能力を有することが見出されている化合物、物質又は薬剤は、記載するように多くの状況において、治療性及び他の潜在性を有している。特に、FTO活性の調節剤は、体重増加又は体重減少に関連する病気の処置又は予防において使用されてよい。調節剤は、過体重の患者における体重増加を防ぎ又は逆行させてよい。調節剤は、低体重の患者において、体重減少を防ぐか又は体重増加を促進してよい。調節剤はまた、体重増加を防ぐために、正常な健康的な範囲(典型的に、肥満指数が約19から約25)内に体重を有する個体(例えば、FTO遺伝子のアリルバリアント(アリルバリアントは肥満に関連する)を有する個体)に対して投与されてもよい。この実施態様において、調節剤は、体重増加及び関連した病気又は疾患を防ぐために使用される。
【0121】
FTO活性の調節剤を投与することによって処置し又は防ぎ得る体重増加に関連する病気及び疾患としては、肥満(肥満指数が30以上)、癌(特に結腸癌、前立腺癌、直腸の癌、乳癌及び子宮内膜癌)、心臓病(心臓発作及びうっ血性心不全を含む)、高血圧、高コレステロールレベル、インシュリン耐性、2型糖尿病、胆石、睡眠時無呼吸、変形性関節症、痛風、脂質異常症、ピックウィック症候群及び不妊症が挙げられる。
【0122】
FTO活性の調節剤を投与することによって処置し又は防ぎ得る体重減少に関連する疾患としては、拒食症、過食症、低栄養、骨粗しょう症、不妊症、低下した免疫能力、AIDS又は抗癌剤投与中の患者における体重減少が挙げられる。
【0123】
FTO活性の調節剤はまた、癌の処置又は予防において使用されてもよい。これは、FTOのDNA修復能力のためである。
【0124】
治療的な処置のために、FTO調節剤は、任意の他の活性のある物質(例えば、体重コントロール、糖尿病、及び心臓病における処置)と組み合わせて使用されてよい。
【0125】
オキシゲナーゼ活性を調節する能力を有するとして、1以上の1次スクリーニング(例えば、無細胞システムにて)を使用して同定される薬剤は、1以上の2次スクリーニングを使用してさらに評価されてよい。
【0126】
一般に、本発明にしたがう調節剤である、薬剤、化合物又は物質は、単離した及び/又は精製した形態(すなわち、実質的に純粋)にて提供される。少なくとも活性成分が約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%で組成物中に存在することを含んでよい。しかし、任意のこのような組成物は、不活性担体物質又は他の薬学的及び生理的に受容可能な賦形剤(活性のある薬剤の正しい送達、放出及び/又は安定化に必要なものなど)を含んでよい。以下に示すように、本発明にしたがう組成物は、開示した調節剤化合物に加えて、治療に使用する1以上の他の分子(体重コントロール、糖尿病、及び心臓病における処置など)を含んでよい。
【0127】
本発明のアッセイによって得られる産物
本発明は、本発明のアッセイ方法によって得られる化合物、及び該化合物を含む組成物(化合物が薬学的に受容可能な担体又は希釈剤と混合している薬学組成物など)をさらに提供する。適切な担体又は希釈剤の例としては、例えば、「Harrison’s Principles of Internal Medicine」が挙げられる。担体は液体(例えば、食塩水、エタノール、グリセロール及びそれらの混合物)、又は固体(例えば、錠剤又は半固体形態(デポー製剤としてゲル製剤化したなど)又は経皮投与可能なビヒクル(経皮パッチなど)の形態にて)であってよい。
【0128】
本発明は、FTOオキシゲナーゼ活性を妨害する薬剤を患者に投与することを含む処置方法をさらに提供する。このような薬剤は、FTOオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤を含んでよい。
【0129】
治療的な/予防的な目的は、減少もしくは準最適なもしくは増加したFTOレベルもしくは活性に関連した状態の処置、又は正常なFTOレベルを有するが、FTOオキシゲナーゼ活性の増加又は減少などの活性調節が望ましいような状態の処置に関連してよい。例えば、FTO活性は、望ましくない体重減少又は増加に関連する疾患の処置において調節されてよい。
【0130】
薬剤の治療上有効量が、典型的には、それを必要とする被験体に投与される。治療上有効量は、状態の症状を改善するか、又は状態によって被験体に生じている苦痛を減じるような量である。体重増加又は体重増加(肥満など)に関連する疾患を処置又は予防するための治療上有効量は、典型的には、体重増加を減少させる量、例えば、患者の体重を維持する又は体重減少を誘導する量である。あるいは、治療上有効量は、体重減少を誘導する量であってよい。体重減少又は体重減少に関連する疾患(拒食症など)を処置又は予防するための治療上有効量は、典型的には、体重減少を減少させる量、例えば、患者の体重を維持する又は体重増加を誘導する量である。
【0131】
薬学組成物
したがって、様々なさらなる局面において、本発明は、このような目的のための薬学組成物、医薬、薬物又は他の組成物、(2−OG依存性オキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤を含む)本明細書中に説明した1以上の薬剤、化合物又は物質を含む該組成物、医学的処置方法におけるこのような組成物の使用、このような組成物を患者に投与することを含む方法(例えば、上に説明した医学的状態の処置(予防的処置を含んでよい))、任意のこのような目的のために投与する組成物、医薬又は薬物の製造におけるこのような薬剤化合物又は物質の使用(例えば、本明細書中に説明する状態の処置)、及び、このような薬剤、化合物又は物質を、薬学的に受容可能な賦形剤、ビヒクル又は担体、及び任意の他の原料と混合することを含む薬学組成物の作製方法を提供する。
【0132】
1つの実施態様において、薬学組成物を提供する方法は、典型的には以下を含んでよい:
(a)本発明のアッセイ方法による薬剤の同定;及び
(b)このように同定した薬剤と薬学的に受容可能な賦形剤との製剤化。
【0133】
本発明の薬学組成物は、本発明にしたがう薬剤、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター又は抗体及び薬学的に受容可能な賦形剤を含んでよい。
【0134】
本発明の医学的処置方法において使用する薬剤が何であれ、投与は好ましくは、「予防的に効果的な量」又は「治療上有効量」(場合によっては、予防は治療と考えられてもよい)であり、個体に利益を示すにはこれで十分である。実際の投与量並びに投与の速度及び時間的経過は、処置されるものの性質及び重症度に依存するであろう。処置の処方(例えば、用量の決定など)は、一般開業医及び他の医学的な医師の責任の範囲内である。
【0135】
薬剤又は組成物は、単独で又は他の処置と組み合わせて投与されてよく、同時又は連続であるかのいずれかについては、処置されるべき状態(例えば、上に説明するとおり)に依存する。
【0136】
本発明にしたがう薬学組成物及び本発明にしたがう使用のための薬学組成物は、活性成分に加えて、薬学的に受容可能な賦形剤、担体、緩衝液、安定剤又は当業者に周知の他の物質を含んでよい。特に、薬学的に受容可能な賦形剤を含んでよい。このような物質は、非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨害すべきではない。担体又は他の物質の詳細な性質は、投与経路に依存し、投与経路は、経口、又は注射(例えば、皮膚注射、皮下注射又は静脈注射)によるものであってよい。
【0137】
経口投与のための薬学組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤又は液体の形態であってよい。錠剤は、ゼラチン又はアジュバントなどの固体担体を含んでよい。液体の薬学組成物は一般に、水、石油、動物もしくは植物油、ミネラルオイル又は合成油などの液体担体を含む。生理的食塩水溶液、デキストロースもしくは他の糖溶液又はグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど)が含まれてよい。
【0138】
静脈、皮膚もしくは皮下注射、又は疼痛部位への注射のためには、活性成分は、ピロゲンを含まずに、適切なpH、等張性及び安定性を有する、非経口にて受容可能な水溶液の形態であろう。関連する当業者は、例えば、等張ビヒクル(ナトリウムクロリド注射、リンゲル液注射、乳酸リンゲル液注射など)を使用する適切な溶液を十分調製可能である。保存剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が、必要に応じて含まれてよい。
【0139】
リポソーム、特にカチオン性リポソームが、担体製剤化において使用されてよい。上に述べる技術及びプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.(ed),1980に見出し得る。
【0140】
物質又は組成物は、特定の部位に局在する様式にて投与されるか、又は特定の細胞又は組織を標的する様式にて(例えば、動脈内ステントに基づく送達を使用して)送達されてよい。
【0141】
標的療法は、抗体又は細胞特異的リガンドなどの標的システムの使用によって、活性のある物質をより特異的にある細胞型に送達するために使用されてよい。様々な理由(例えば、薬剤が受け入れがたいほど毒性である場合、又はそうでなければ高すぎる用量が必要である場合、又はそうでなければ標的細胞に進入することができない場合)のために、標的が望まれてよい。
【0142】
さらなる実施態様において、本発明は、増加又は減少したFTOオキシゲナーゼレベル又は活性と関連する状態の処置のための医薬の製造における、本発明の薬剤の使用を提供する。状態は、例えば、体重減少又は増加に関連する病気を含んでよい。
【0143】
本明細書中に挙げた全ての文献は、引用によって本明細書中に取り込まれている。
【0144】
以下の実施例は、発明を例示する。
【実施例1】
【0145】
実施例1:2−OGオキシゲナーゼとしての解析のためのFTOの選択
既報のABH3結晶構造(Sundheim et al.(2006)EMBO J.25(14)3389−3397)に基づいて、MODELLER8V2にてFTOのホモロジーモデルを構築するために、2次構造予測(JPRED)と保存配列との組み合わせを使用して、FatsoとABH3の配列アライメントを、作製した。次いで、比較のために、FTOモデルをABH3及びE.coli由来のAlkB DNAデメチラーゼ(Yu et al.(2006)Nature,439,879−884)と重ね合わせた。配列アライメント、2次構造予測及び構造モデルは、これら3つのタンパク質間の強い類似性を示している。DSBHの足場はFTO中に明らかに存在し、個々の活性部位Fe(II)及び2OG結合残基が厳密に保存されている(例えば、His231 FTO、His191 ABH3、His131 AlkB;Asp233 FTO、Asp193 ABH3、Asp133 AlkB;His307 FTO、His257 ABH3、His187 AlkB;Arg316 FTO、Arg269 ABH3、Arg204 AlkB)。さらに、触媒機構に含まれる残基(すなわち、Arg322 FTO、Arg275 ABH3及びArg210 AlkB;Leu213 FTO及びヒドロキシル化したLeu177 ABH3)及びDNA塩基認識に含まれることが予測される芳香族残基(Tyr108 FTO及びTyr143 ABH3)が存在している。
【0146】
したがって、FTO配列を、AlkBホモログ(ABH)及び他の公知の2−オキソグルタル酸依存性オキシゲナーゼ(これらのうちいくつかは、メチル化した核酸配列の脱メチル化を触媒し、2本鎖ベータへリックス(DSBH)モチーフ及び少なくとも1つのC末端へリックスドメインを有することが見出されている)のホモログとして検出した。
【0147】
DSBHモチーフは、2−OG依存性オキシゲナーゼに特徴的であるが、2−OG依存性オキシゲナーゼではない多くのタンパク質もまた、DSBHモチーフを含む。このようなタンパク質は、JmjCファミリー(全てが2−OG依存性オキシゲナーゼであるわけではない)(Clissold&Ponting(2001)Trends Biochem.Sci.26:7−9)を含むが、これに限定しない。DSBHモチーフはまた、機能的に多様性のあるcupinスーパーファミリー(Dunwell et al.(2004)Phytochemistry 65:7−17)にも、特徴的である。ヒトタンパク質pirin(Pang et al.(2004)J.Biol.Chem.279:1491−1498)もまたDSBHモチーフを含むが、これは2−OG依存性オキシゲナーゼではない。DSBHモチーフを含む2−OG依存性オキシゲナーゼの1つが、FIHである。FTOのアリルバリアントは、以前から体重増加に関係しているが、FTOは、2−OG依存性オキシゲナーゼとして見なされていなかったし、DSBH構造モチーフも含むとも見なされていなかった。
【0148】
FTOのC末端へリックスドメインは、2OGオキシゲナーゼと関連することは公知でない。
【0149】
AlkBに代表される2−OGオキシゲナーゼのサブファミリー内に存在する他の特徴と同様に、FTOが2−OG鉄依存性オキシゲナーゼに特徴的なFe(II)及び塩基性残基(ここではアルギニン)と結合するために使用する保存された2−His−1−カルボン酸の表面トリアドを提示していることも、配列解析で示した。
【実施例2】
【0150】
実施例2:FTOのクローニング
マウスftoの全長をコードするcDNA配列を、以下のPCR反応にて、制限酵素部位の突出部を有する、市販の合成オリゴヌクレオチドプライマー(Sigma−Genosys)mfto1f(配列:5’−GCTAGCATGAAGCGCGTCCAGACC−3’)及びmfto1r(配列:5’−GAATTCCTAGGATCTTGCTTCCAGCAG−3’)を使用して、Imageクローン IMGCLO4237261から増幅した:
条件:
鋳型DNA 150ng
mfto1f(10μM) 1μl
mfto1r(10μM) 1μl
MgCl(50mM) 1μl
dNTP(各10mM) 1μl(New England Biolabs)
10x ポリメラーゼ緩衝液 5μl
Pfu Turbo DNAポリメラーゼ 1μl (ポリメラーゼ緩衝液はStratageneから)
O 全量が50μlになるまで添加
【0151】
【表2】

【0152】
完了したPCR反応液をQIAquick PCR精製キット(QIAGEN)にて精製し、サンプルをTAE緩衝液とともに1%アガロースゲル上にて泳動した。PCR産物を、NheI及びEcoRI(どちらもNew England Biolabs)で、37℃にて一晩反応して消化した:
DNA 1μg
NheI(10000ユニット/ml) 2μl
EcoRI(20000ユニット/ml)2μl
10xEcoRI緩衝液 5μl
100xBSA 0.5μl
O 全量が50μlになるまで添加
【0153】
次いで、反応混合物を、TAE緩衝液中で1%アガロースゲル上にて泳動し、消化したPCR産物に相当するバンドを切り出して、QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN)にてゲルからDNAを抽出した。
【0154】
抽出したDNAを、同様に制限処理して精製したpET−28aベクター(Novagen)中に、一晩氷上にてT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用してライゲーションした:
ベクター 50ng
PCR産物 42ng
10xT4緩衝液 2μl
T4 DNAリガーゼ(400000ユニット/ml) 0.5μl
O 全量が20μlになるまで添加
【0155】
製造業者の指示書にしたがって、50μlのE.coli XL10 Gold(登録商標)細胞(Stratagene)を、この反応混合物4μlで形質転換した。細胞を、25μg/mlカナマイシンを含むLBプレート上にて37℃で一晩増殖させた。
【0156】
次の日、8コロニーをプレートからピックアップし、それぞれ25μg/mlカナマイシンを含む5mlの2YT培地に再懸濁し、環境条件の振とう器にて37℃で一晩インキュベートした。
【0157】
次の日、QIAprep Spin Miniprepキット(QIAGEN)を使用して、これらの液体培養からプラスミドを単離し、サンプルをEcoRI及びNheIにて、37℃で3時間、コントロールの制限消化した:
少量調製したDNA 3μl
NheI(10000ユニット/ml) 1μl
EcoRI(20000ユニット/ml) 1μl
10xEcoRI緩衝液 2μl
100xBSA 0.2μl
O 全量が20μlになるまで添加
【0158】
サンプルを1%アガロースゲルで解析し、mfto挿入物を含むことが分かった。1つのサンプルについて、外注のシーケンス配列決定を行い(Geneservice)、所望の挿入物を含むことが分かった。このプラスミドを、mfto−pET−28aと呼ぶ。
【実施例3】
【0159】
実施例3:FTOの発現及び精製
製造業者の指示書にしたがって、E.coli BL21−Gold(DE3)(Stratagene)をMfto−pET−28aで形質転換し、上記のようにカナマイシンを含むLBプレート上で増殖させた。発現試行により、37℃、28℃及び21℃にて中程度の可溶性発現が見られ、温度が下がると不溶性物質の量が減少した。
【0160】
発現させるために、形質転換プレートからシングルコロニーをピックアップし、100mlの2YT+カナマイシン培地に再懸濁し、環境条件の振とう器にて37℃にて一晩増殖させた。翌日、6mlの各一晩培養液を、12倍量の600mlの2YT+カナマイシンに接種して、培養物がOD600が1.0に到達するまで環境条件の振とう器にて37℃で増殖させた。この段階にて、培養物を21℃に1時間シフトした後に、IPTGを最終濃度0.25mMになるようにそれぞれに添加した。21℃にて9時間インキュベーションを続けた後、細胞を遠心分離によって回収し(全部で60g)、−80℃にて保存した。
【0161】
細胞ペレットを、細胞1グラムあたりスパチュラ先端量のDNAseIを含む、5mlの10mM HEPES pH7.5、0.5M NaCl、10mM イミダゾール、1mM MgCl中に再懸濁した。30mgフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF、プロテアーゼ阻害剤)を添加して、細胞を氷上にて超音波処理によって溶解させた。破片を除去するために遠心分離した後(Beckman AvantiTM J−25遠心分離機、JA25.50ローター、22000rpm、20分、4℃)、上清をデカンテーションし、0.45μm Omniporeフィルター(Millipore)でろ過して、10mlのHis−Bind(登録商標)カラム(Novagen)に流速0.5ml/分にて載せた。カラムを、2ml/分にて、250mlの10mM HEPES pH7.5、0.5M NaCl、40mM イミダゾールで洗浄し、次に2.5ml/分にて、100mlの25mM HEPES pH7.5、0.5M NaCl、40mM イミダゾール、5mM ATP二カリウム塩で洗浄した:この工程で、HisタグとFTOタンパク質間のペプチドリンカーに結合しているE.coliのシャペロンを除去しなければならない。最初の洗浄緩衝液100mlにてもう一度洗浄した後、結合したタンパク質を、2.5ml/分にて、35mlの10mM HEPES pH7.5、0.5M NaCl、500mM イミダゾールを使用して、等張溶出にて溶出した。
【0162】
FTOを含む画分(SDS_PAGE解析によると、>90%純粋)を、Amicon−15 5000分画分子量限外ろ過装置を使用して、最終量3mlまで濃縮し、10mM HEPES pH7.5、0.05M NaCl、1mM DTTにて平衡化した300mlのSuperdex S200ゲルろ過カラム上に載せた。ゲルろ過工程は、溶出量が70mlにて回収を開始して、10ml画分にて、3ml/分で行った。
【実施例4】
【0163】
実施例4:精製したFTOでの2−オキソグルタル酸脱カルボキシル化アッセイ
2−OGターンオーバーアッセイを使用して酵素活性について、FTOを試験した(Kivirikko and Myllyla(1982)Methods in Enzymology 82:4412−4421)。特定の試薬(Fe2+、アスコルビン酸塩又はDTT)が入っておらず、0.5mMの濃度のN−オキサリル−グリシン(NOG)、一般的なFe2+−2OG−ジオキシゲナーゼ阻害剤が存在する様々な緩衝液にて、全ての必要な共因子とともにFTOをインキュベートした。Fe2+((NHFe(II)(SOの形態にて添加)及び2OGに加えて、ジチオスレイトール(DTT)及びアスコルビン酸ナトリウム塩を反応混合物に添加した:DTTは、Fe2+の維持を補助する還元剤である。
【0164】
アッセイの構成要素:
11.5μM FTO
144μM 2OG
16μM 14C−2OG
80μM (NHFe(II)(SO
1mM DTT
4mM アスコルビン酸塩
【0165】
これを、50mM トリス、pH7.5にて、全量が100μlになるまで希釈した。全ての試薬を混合して、5mlのプラスチックのスクリューキャップ付チューブにピペットで入れ、FTOは別にチューブに添加した。200μlのハイアミンヒドロキシド(Hyamine hydroxide)(Fisher Scientific、CO捕獲剤)を含む500μlのエッペンドルフチューブを各チューブに添加して、チューブをゴムのセプタムにて閉めた。環境条件の振とう器にて37℃で30分インキュベーションした後、200μlのメタノールを内容物に添加し、チューブを30分間氷上において反応をクエンチさせた。ハイアミンヒドロキシドを含むエッペンドルフチューブを、シンチレーションバイアルに移し、5mlのOptiPhase液体シンチレーションカクテル(Fisher Scientific)と混合して、Beckman LS6500多目的シンチレーションカウンターを使用して14Cの全カウントを定量した。
【0166】
最初のアッセイの結果を、以下の表1に示す(総カウント−出発時の2−OGの全カウント及び図4にて)。結果から、FTOの2−OGターンオーバー活性は、共因子Fe(II)により刺激されて、N−オキサリルグリシン(多くの2−OGオキシゲナーゼの阻害剤)により阻害されることが明らかとなった。活性はまた、アスコルビン酸塩(他の2−OGオキシゲナーゼに関しては、天然基質の代替として機能し得る)の添加によってもまた刺激される。
【0167】
[1−14C]−2OGから[14C]−二酸化炭素への変換をモニターする、FTOでの2OG非共役ターンオーバーアッセイから、FTOが2OGの脱カルボキシル化を触媒すること、反応は、アスコルビン酸塩及びFeSO4により刺激されることが明らかとなった(図8a)。2OGターンオーバーは、公知の2OGオキシゲナーゼ阻害剤(図8b)及びFe(II)及びアスコルビン酸塩の非存在により阻害された。
【0168】
【表3】

【実施例5】
【0169】
実施例5:FTO阻害剤を検出するための2−OGオキシゲナーゼアッセイの使用
実施例4に説明した方法を使用して、様々な2−OGオキシゲナーゼ阻害剤を、FTOオキシゲナーゼ活性の活性を阻害する能力について、スクリーニングした。試験した阻害剤は以下の通りである:
NOG=N−オキサリルグリシン
NOFD=N−オキサリル D−フェニルアラニン
P−2−4−CD−ピリジン−2,4−ジカルボン酸
P−2−4−CD−ピリジン−2,5−ジカルボン酸
化合物41及び化合物16は、以下に説明する構造を有する。
【0170】
【化3】

【実施例6】
【0171】
実施例6:脱メチル化アッセイ
実施例2に説明する方法を使用するが、未標識の2OGのみを使用して、様々な潜在的な基質を、FTOによる脱メチル化についてスクリーニングした。結果を図5及び6に示す。結果は、使用したアッセイ条件下にて、FTOが3−メチルチミン及び3−メチルシトシン残基の脱メチル化(3メチルチミン残基を好む)を触媒することを示している。
【0172】
合成1本鎖1−メチルアデニン(1−meA)がメチル化したオリゴヌクレオチド、Lys−9がメチル化したヒストンH3、低酸素症誘導因子−1α(HIF−1α)サブユニット断片、IκBα及び補酵素A誘導体を含む、潜在的なFTO基質をスクリーニングした。1−meAがメチル化したオリゴヌクレオチドのみが、有意に2OGのターンオーバーを刺激した(図6a)。この活性は、N−オキサリルグリシン、フマル酸及びコハク酸(これらは2OG非共役ターンオーバーアッセイにおける阻害剤でもある)によって阻害した(図6c)。
【0173】
DNA脱メチル化を直接モニターするLC−MSアッセイを使用して(放射性標識した(共)基質又は共役アッセイの必要はない)、我々は、FTOがFe(II)及び2OG依存的なDNAの脱メチル化を触媒することを示した。この活性を、他の2OGオキシゲナーゼについて観察したように、アスコルビン酸塩が刺激した(図6b)。反応を低酸素条件下にて行った場合、ターンオーバーの有意な減少を観察した。コハク酸の生成について、1H NMR(400MHz)解析により証明し、ホルムアルデヒドの生成についてはペンタフルオロフェニルヒドラジンでの誘導化により確認した。
【0174】
付与されているFe(II)結合及び2OG 5−カルボン酸結合残基の予測された役割を試験するために、His−304及びArg−313のアラニン置換変異体を構築した。His−304変異体は、2OGターンオーバーの有意な減少を示し、一方でArg−313変異体は活性がなくなった(図6b)。
【0175】
1箇所がメチル化された1本鎖オリゴヌクレオチド(ss−DNA)を使用して、FTO活性についてさらに調査した:1−メチルアデニン(1−meA)、1−メチルグアニン(1−meG)、3−メチルシトシン(3−meC)及び3−メチルチミン(3−meT)(図7b)。pH7.5でのアッセイ条件下にて、ss−DNAでは、FTOは、1−meA又は3−meCよりも3−meTに対する好みを示し;1−meGはFTO基質ではないことが分かった(図7a)。先行する報告と一致して、我々は、ABH2及びABH3のリコンビナント形態は、ss−DNA基質では、3−meC及び1−meA及び3−meTに対する好みを示し、我々の条件下では3−meTの脱メチル化は非常に低いレベルしか見られないことを見出した。3−meT基質をFTOが好むことは、メチル化したポリ(dA)及びポリ(dT)からのホルムアルデヒドの放出を測定するアッセイにおいても観察した(図7c)。
【実施例7】
【0176】
実施例7:FTOの局在
FTOはDNA脱メチル化を触媒するので、核に局在するであろうと予測された。実際に、共焦点像により、YFPそのものは細胞質のみに存在する一方で、黄色蛍光タンパク質を付加したFTO(YFP−FTO)は、核に濃縮することが分かった。興味深いことに、FTOは、ABH3よりもさらにずっと効果的に核に局在した。
【0177】
2OGオキシゲナーゼが触媒する翻訳後のヒドロキシル化は、低酸素反応における転写制御の中心であり、2OGオキシゲナーゼはヒストン脱メチル化を触媒する。FTOの触媒活性は、核酸の脱メチル化による代謝に含まれる遺伝子の転写を、同様に制御してよい。あるいは、FTO(ABH2を提案する)は、核酸修復酵素として機能し得る可能性がある:遺伝的修復プロセスの崩壊が肥満及びメタボリック症候群を導くという証拠がある。生理的pHにおける上記で使用したアッセイ条件下にて、同定したFTOの好ましい基質は、DNAの3−メチルチミン(メチル化試薬にDNAをさらすと生成する、マイナーであるが安定な損傷である)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FTO活性のアッセイ方法であって、該方法がFTOポリペプチドのオキシゲナーゼ活性をモニターすることを含む、方法。
【請求項2】
酸素が共基質として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鉄が共因子として使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2−オキソ酸が共基質として使用される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2−オキソグルタル酸が共基質として使用される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オキシゲナーゼ活性が還元剤存在下にてモニターされる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤がアスコルビン酸塩もしくはそのアナログ、チオール又はホスフィンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オキシゲナーゼ活性が基質存在下にて測定される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基質がペプチド又は核酸基質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記FTOポリペプチドがリコンビナントポリペプチドである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記FTOポリペプチドが、以下を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;及び
(b)全長にわたって、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項12】
全長にわたって、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有する前記アミノ酸配列が、ヒトFTO又はヒト以外の種由来のFTOホモログの、天然に生じるバリアントである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
全長にわたって、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を有する前記アミノ酸が、配列番号2から11のうちいずれか1つに示されるアミノ酸配列である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
さらに以下の工程を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法:
(i)FTOポリペプチドを試験剤と接触させる工程;
(ii)該試験剤存在下にてオキシゲナーゼ活性をモニターする工程;かつ
(iii)該試験剤がFTO活性の阻害剤又は活性化剤であるかどうかを決定する工程。
【請求項15】
前記試験剤が、FTO以外の2−OGオキシゲナーゼの既報の阻害剤であるか、又はこのような阻害剤のアナログもしくはバリアントである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2−OGオキシゲナーゼが、プロコラーゲンプロリルもしくはリシルヒドロキシラーゼ、低酸素症誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ、メチル化したリシルデメチラーゼ(ヒストンデメチラーゼを含む)、アスパラギニルヒドロキシラーゼ、ホスファチジルセリン受容体(Jmjd6)、AlkBもしくはヒトAlkBホモログ及び/又はジベレリンC−20オキシダーゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記阻害剤が、N−オキサリルグリシンもしくはそれらの誘導体などのN−オキサリルアミノ酸、グリシンもしくはアラニン誘導体、2−オキソ酸アナログ、フラボノイド又はゲニステインなどのフラボノイド誘導体である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記試験剤が、2−OGもしくはFTO基質とFTO活性部位において競合し、及び/又はFTO活性部位において金属と結合する、請求項14から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記試験剤が金属イオンを含む、請求項14から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記試験剤が還元剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記還元剤が、FTO以外の2−OGオキシゲナーゼの既報の活性化剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記還元剤が、アスコルビン酸塩もしくはアスコルビン酸塩アナログ又はジチオスレイトールなどのチオール還元剤又はホスフィン化学ファミリーの還元剤である、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
FTO以外の酵素を使用して前記方法工程を繰り返す工程、かつ前記試験剤がFTO又は他の酵素を選択的に阻害又は活性化するかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項14から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記FTO以外の酵素が、2−OGオキシゲナーゼである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記2−OGオキシゲナーゼが、プロリルもしくはアスパラギニルヒドロキシラーゼなどの低酸素症誘導因子ヒドロキシラーゼ、コラーゲンもしくはプロコラーゲンプロリルヒドロキシラーゼ、AlkBホモログなどの核酸デメチラーゼ、又はトリ、ジもしくはモノメチルリシンもしくはアルギニン残基デメチラーゼなどのタンパク質デメチラーゼである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質デメチラーゼが、メチル化したヒストン又はそれらの断片をヒドロキシル化する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記基質が、核酸、核酸誘導体又はアナログである、請求項8から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記基質が、メチル化した核酸、誘導体又はアナログである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記メチル化した核酸配列が、agouti遺伝子又はニューロペプチドY遺伝子などの、体重調節に関する遺伝子と関連している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
以下の工程をさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法:
(i)FTOポリペプチドを試験基質と接触させる工程;
(ii)オキシゲナーゼ活性をモニターする工程;かつ
(iii)該試験基質がFTOの基質であるかどうかを決定する工程。
【請求項31】
前記試験基質が、ヒト核酸配列である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記核酸配列が、3−メチルチミン塩基、1−メチルアデニン塩基又は3−メチルシトシン塩基を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記基質が、メチル化したタンパク質又はペプチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
FTO阻害剤が、基質の同定に先だって、FTOと基質との間の相互作用を安定化させることによって、前記FTO基質の同定を可能にするために使用される、請求項30から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
FTO活性を調節するための、2−OGオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤の使用。
【請求項36】
体重増加もしくは体重減少を処置もしくは予防する方法、又は体重増加もしくは体重減少に関連する疾患を処置もしくは予防する方法における使用のための、FTOオキシゲナーゼ活性の調節剤。
【請求項37】
前記調節剤が、請求項15から22のいずれか1項に定義する阻害剤又は活性化剤である、請求項36に記載の調節剤。
【請求項38】
前記調節剤が、請求項23から26のいずれか1項にしたがう方法によって同定可能な、選択的なFTOオキシゲナーゼ活性である、請求項36に記載の調節剤。
【請求項39】
体重増加又は体重減少を処置又は予防することを必要とする個体における体重増加又は体重減少を処置又は予防する方法であって、該方法が、FTOオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤の治療上有効量を個体に投与することを含む、方法。
【請求項40】
体重増加又は体重減少に関連する疾患を処置又は予防することを必要とする個体における体重増加又は体重減少に関連する疾患を処置又は予防する方法であって、該方法が、FTOオキシゲナーゼ活性の阻害剤又は活性化剤の治療上有効量を個体に投与することを含む、方法。
【請求項41】
体重増加に関連する前記疾患が、肥満、癌、心臓病、高血圧、高コレステロールレベル、インシュリン耐性、糖尿病、胆石、睡眠時無呼吸、変形性関節症、痛風、脂質異常症、ピックウィック症候群及び/又は不妊症であり、体重減少に関連する前記疾患が、拒食症、過食症、低栄養、骨粗しょう症、不妊症及び/又は低下した免疫能力である、請求項40に記載の方法、又は請求項36から38のいずれか1項に記載の調節剤。
【請求項42】
体重増加に関連する前記疾患が、肥満又は糖尿病である、請求項41に記載の方法又は調節剤。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−530235(P2010−530235A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512768(P2010−512768)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002119
【国際公開番号】WO2008/155556
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(507316457)アイシス イノベーション リミテッド (4)
【Fターム(参考)】