説明

FVIIおよびFVIIaの変種

【課題】様々な凝固関連障害の治療のための、新規のポリペプチド変種の提供。
【解決手段】一本鎖糖タンパク質として分泌されるビタミンK依存的血漿タンパク質であるFVII、及び活性型であるはFVIIaに関して、196位、237位または341位の位置で少なくとも1つのアミノ酸の改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、196位、237位および341位からなる群より選択される位置で少なくとも1つのアミノ酸の改変を含む、新規のFVIIまたはFVIIaの変種に関する。本発明はまた、治療において、特に様々な凝固関連障害の治療のために、そのようなポリペプチド変種を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血液凝固は、最終的にフィブリン凝血が起こる様々な血液成分(または因子)の複雑な相互作用からなるプロセスである。一般的に、「凝固カスケード」と呼ばれる事象に関与する血液成分は、プロ酵素またはチモーゲン、すなわち、活性化因子の作用によって活性型に変換される酵素的に不活性なタンパク質である。これらの凝固因子の1つは第VII因子(FVII)である。
【0003】
FVIIは、肝臓において合成され、血液中に分子量53 kDaの一本鎖糖タンパク質として分泌されるビタミンK依存的血漿タンパク質である(BrozeおよびMajerus、J. Biol. Chem. 1980;255:1242〜1247(非特許文献1))。FVIIチモーゲンは、単一の部位R152-I153でのタンパク質溶解切断によって活性型(FVIIa)に変換され、それによって単一のジスルフィド結合によって結合された二つの鎖が得られる。組織因子(TF)と複合体を形成したFVIIaである、FVIIa複合体はFIXとFXの両方をその活性型に変換することができ、その後迅速なトロンビン形成およびフィブリン形成に至る反応が起こる(OsterudおよびRapaport、Proc Natl Acad Sci USA 1977;74:5260〜5264(非特許文献2))。
【0004】
FVIIは、ビタミンK依存的カルボキシル化を含む翻訳後改変を受け、それによって分子のN末端領域においてγ-カルボキシグルタミン酸残基10個が得られる。したがって、配列番号:2に示される残基番号6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位は、FVII活性にとって重要なGlaドメインにおけるγカルボキシグルタミン酸残基である。他の翻訳後改変には、145位および322位での天然に存在する二つのN-グリコシル化部位での、ならびに52位および60位での天然に存在する二つのO-グリコシル化部位でのそれぞれ糖部分の結合が含まれる。
【0005】
ヒトFVII(hFVII)をコードする遺伝子は、第13染色体のq34-qter9にマッピングされている(de Grouchyら、Hum Genet. 1984;66:230〜233(非特許文献3))。これはエキソン9個を含み、12.8 Kbに及ぶ(O"Haraら、Proc Natl Acad Sci USA 1987;84:5158〜5162(非特許文献4))。FVIIの遺伝子構築およびタンパク質構造は、他のビタミンK依存的前凝固タンパク質と類似であり、エキソン1aおよび1bはシグナル配列をコードし;エキソン2はポリペプチドおよびGlaドメイン;エキソン3は短い疎水性領域;エキソン4および5は上皮細胞増殖因子様ドメイン;およびエキソン6〜8はセリンプロテアーゼ触媒ドメインをコードする(Yoshitakeら、Biochemistry 1985;24:3736〜3750(非特許文献5))。
【0006】
hFVIIa(Pikeら、Proc Natl Acad Sci USA、1999;96:8925〜30(非特許文献6)、およびKemball-Cookら、J. Struct. Biol. 1999;127:213〜223(非特許文献7))、X線結晶学的方法を用いて可溶性組織因子と複合体を形成したhFVIIa(Bannerら、Nature 1996;380:41(非特許文献8)、およびZhangら、J. Mol. Biol.、 1999;285:2089(非特許文献9))、およびhFVIIのより小さい断片(Muranyiら、Biochemistry、 1998;37:10605(非特許文献10)およびKaoら、Biochemistry、 1999;38:7097(非特許文献11))の実験的三次元構造に関する報告がある。
【0007】
FVIIのいくつかのタンパク質工学による変種が報告されている(DickinsonおよびRuf、J Biol Chem、1997;272:19875〜19879(非特許文献12)、Kemball-Cookら、J Biol Chem、 1998;273:8516〜8521(非特許文献13)、Bharadwajら、J Biol Chem、1996;271:30685〜30691(非特許文献14)、Rufら、Biochemistry、1999;38:1957〜1966(非特許文献15))。
【0008】
BHKまたは他の哺乳類細胞におけるFVIIの発現(国際公開公報第92/15686号(特許文献1)、国際公開公報第91/11514号(特許文献2)、および国際公開公報第88/10295号(特許文献3))ならびに真核細胞におけるFVIIおよびkex2エンドプロテアーゼの同時発現(国際公開公報第00/28065号(特許文献4))に関する報告が存在する。
【0009】
組み換え型ヒトFVIIa(rhFVIIa)の市販の調製物は、商品名NovoSeven(登録商標)として販売されている。NovoSeven(登録商標)は、血友病AまたはB患者における出血事例の治療に適応されている。NovoSeven(登録商標)は、市販されている出血事例の有効かつ信頼できる治療のための唯一のrhFVIIaである。
【0010】
152位のアルギニンおよび/または153位のイソロイシンが改変されているFVIIの不活性型が、国際公開公報第91/11514号(特許文献2)において報告されている。これらのアミノ酸は活性化部位に存在する。国際公開公報第96/12800号(特許文献5)は、セリンプロテアーゼ阻害剤によるFVIIaの不活化を記述している。α-アミノ基I153位でのFVIIaのカルバミル化による不活化は、Petersenら、Eur. J. Biochem、1999;261:124〜129(非特許文献16)によって記述されている。不活性型は、TFとの結合および凝固活性の阻害に関してhFVIIまたはhFVIIaと競合することができる。FVIIaの不活性型は、心筋梗塞または血栓症発作のリスクがある敗血症患者のような高凝固状態にある患者を治療するために用いることが示唆されている。
【0011】
国際公開公報第98/32466号(特許文献6)は、多くの他のタンパク質の中でも、FVIIをPEG化(すなわち、1つまたは複数のポリエチレングリコール分子への結合)してもよいことを示唆しているが、この点に関してさらに如何なる情報も含んでいない。
【0012】
国際公開公報第01/58935号(特許文献7)は、誘導されたグリコシル化またはPEG化手段によって、特に増加した半減期を有するFVII分子またはFVIIa分子を開発するための新規の方法を開示している。
【0013】
国際公開公報第03/093465号(特許文献8)は、Glaドメインにおいてある特定の改変を有し、かつGlaドメインの外側に導入される1つまたは複数のN-グリコシル化部位を有する、FVIIまたはFVIIaの変種を開示している。
【0014】
循環rhFVIIaの半減期が2.3時間であることが「Summary Basis for Approval for NovoSeven(登録商標)」、FDA参照番号96-0597(非特許文献17)に報告されている。比較的高用量で頻繁な投与は、望ましい治療的または予防的効果に達し、かつそれを維持するために必要である。結果として、充分な用量調節を得ることは困難であり、頻繁な静脈内投与の必要性は、患者の生活様式を制限する。
【0015】
通常の止血において、凝血促進システムは、一旦凝血が形成されると、凝血を溶解させる止血反応およびフィブリン溶解性システムの終結に関与する抗凝血システムと均衡がとられる。抗凝血システムには、例えば、組織因子経路阻害剤(Tissue Factor Pathway Inhibitor:TFPI)、抗トロンビンIII(AT-III)、ヘパリン補因子II(HC-II)、およびタンパク質C経路などの幾つかのプロテアーゼ阻害剤が含まれる。
【0016】
TFPIは、可逆性のFXaの活性部位特異的阻害剤であり、これはFXa依存性の様式で、FVIIa-TFを阻害することによって凝血を調節する。TFPI-FXa複合体は、FVIIa-TF複合体に結合して、その結果、TF-FVIIa-TFPI-FXa複合体を形成する。
【0017】
TFPIのインビボの関連性は、血友病出血モデルにおいて抗TFPI抗体を中和する止血効果を示す実験により支持される(Erhardtsen et al. Blood Coagul Fibrinolysis 1995; 6:388-394(非特許文献18))。さらに、生化学的再構成実験において、TFPIは、開始期を延長し、かつ増殖期のトロンビン産出率を減少させることが示される(van"t Veer and Mann; J. Biol. Chem. 1997; 272: 4367-4377(非特許文献19))。
【0018】
本発明の目的は、hFVIIaまたはrhFVIIaと比較して、凝血活性が増加したFVIIまたはFVIIaの変種を提供することである。これは、TFPIへの親和性が変更されたFVIIまたはFVIIaの変種を介して得られること意図される。
【0019】
現在のrhFVIIa治療におけるもう1つの問題は、タンパク質分解に関する分子の相対的不安定性である。タンパク質分解は、凍結乾燥産物と比較して調製物を溶液で得る際の主要な障害である。安定な溶液製剤を得る長所は、患者の取り扱いの容易さ、および緊急の場合に、おそらく生命を救うことになりうるより速やかな作用である。主要なタンパク質分解部位での部位特異的変異誘発によってタンパク質分解を予防する試みは、国際公開公報第88/10295号(特許文献3)に開示されている。
【0020】
したがって、本発明のさらなる目的は、上記の改善された特性に加えて、タンパク質分解に対してより安定である、すなわちタンパク質分解に対する感受性が減少したFVII/FVIIa変種を提供することである。
【0021】
循環中の半減期がより長い分子は、必要な投与回数が減少するであろう。現在のFVIIa産物と頻回注射との関係、および同時に増強される治療効果と共により最適な治療的FVIIaレベルを得る可能性を考慮すると、改善されたFVII-またはFVIIa-様分子が明らかに必要である。タンパク質の循環中の半減期を増加させる1つの方法は、タンパク質の腎クリアランスを確実に低下させることである。これは、タンパク質に腎クリアランスの低下を付与することができる化学物質にタンパク質を結合させることによって行ってもよい。さらに、タンパク質に対して化学物質を結合させる、またはタンパク質分解に露出されるアミノ酸を置換することによって、タンパク質分解に至るタンパク質分解酵素との接触が有効に遮断される可能性がある。ポリエチレングリコール(PEG)は、治療タンパク質産物の調製において用いられているそのような1つの化学部分である。
【0022】
したがって、本発明のなおさらなる目的は、上記の改善された特性に加えて、増加した機能的インビボ半減期および/または増加した血清半減期を有するFVII/FVIIa変種を提供することである。
【0023】
本明細書において開示された改善されたFVII/FVIIa変種によって、これらの目的は取り扱われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開公報第92/15686号
【特許文献2】国際公開公報第91/11514号
【特許文献3】国際公開公報第88/10295号
【特許文献4】国際公開公報第00/28065号
【特許文献5】国際公開公報第96/12800号
【特許文献6】国際公開公報第98/32466号
【特許文献7】国際公開公報第01/58935号
【特許文献8】国際公開公報第03/093465号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】BrozeおよびMajerus、J. Biol. Chem. 1980;255:1242〜1247
【非特許文献2】OsterudおよびRapaport、Proc Natl Acad Sci USA 1977;74:5260〜5264
【非特許文献3】de Grouchyら、Hum Genet. 1984;66:230〜233
【非特許文献4】O"Haraら、Proc Natl Acad Sci USA 1987;84:5158〜5162
【非特許文献5】Yoshitakeら、Biochemistry 1985;24:3736〜3750
【非特許文献6】Pikeら、Proc Natl Acad Sci USA、1999;96:8925〜30
【非特許文献7】Kemball-Cookら、J. Struct. Biol. 1999;127:213〜223
【非特許文献8】Bannerら、Nature 1996;380:41
【非特許文献9】Zhangら、J. Mol. Biol.、 1999;285:2089
【非特許文献10】Muranyiら、Biochemistry、 1998;37:10605
【非特許文献11】Kaoら、Biochemistry、 1999;38:7097
【非特許文献12】DickinsonおよびRuf、J Biol Chem、1997;272:19875〜19879
【非特許文献13】Kemball-Cookら、J Biol Chem、 1998;273:8516〜8521
【非特許文献14】Bharadwajら、J Biol Chem、1996;271:30685〜30691
【非特許文献15】Rufら、Biochemistry、1999;38:1957〜1966
【非特許文献16】Petersenら、Eur. J. Biochem、1999;261:124〜129
【非特許文献17】「Summary Basis for Approval for NovoSeven(登録商標)」、FDA参照番号96-0597
【非特許文献18】Erhardtsen et al. Blood Coagul Fibrinolysis 1995; 6:388-394
【非特許文献19】van"t Veer and Mann; J. Biol. Chem. 1997; 272: 4367-4377
【発明の概要】
【0026】
発明の簡単な開示
本発明は、196位、237位および341位からなる群より選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸の改変を含む、改善された組換えFVIIまたはFVIIaの変種を提供するものである。これらのアミノ酸の改変により、FVIIaとTFPIとの結合が変更される。上記で示したように、生じた分子は、NovoSeven(登録商標)のような市販のrhFVIIaと比較して、1つまたは複数の改善された特性を有する。
【0027】
興味深い態様において、FVIIまたはFVIIaの変種は、静脈内投与された場合、得られた変種が増強されたリン脂質膜結合親和性を有し、増加した機能的なインビボ半減期を有し、増加した血漿半減期を有し、および/または増加した曲線下面積(AUCiv)を有するようにさらに改変されている。そのような変種を用いた治療は、低用量、制御されない出血におけるより迅速な行動、任意でより長時間の注射間隔のような、市販のrhFVIIa化合物より1つまたは複数の利点を提供することを意図する。
【0028】
したがって、第1の局面において、本発明は、hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、196位、237位および341位からなる群より選択される位置で少なくとも1つのアミノ酸の改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種に関する。
【0029】
本発明のもう1つの局面は、本発明の変種をコードするヌクレオチド配列に関する。
【0030】
さらなる局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0031】
なおさらなる局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列または本発明の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0032】
さらにさらなる局面において、本発明は、本発明の変種と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。
【0033】
本発明のさらにもう1つの局面は、医薬品として用いられる、本発明の変種または本発明の薬学的組成物に関する。
【0034】
本発明のさらなる局面は、添付の特許請求の範囲だけでなく、下記の記載の内容からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】「全血アッセイ法」でアッセイした場合の、[G237GAA]rhFVIIaの凝血時間対濃度を示す。比較のために、rhFVIIaの結果を含む。● rhFVIIa□ [G237GAA]rhFVIIa
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な開示
定義
本出願および本発明の文脈において、以下の定義を適用する。
【0037】
「結合型(または互換的に「結合型ポリペプチド変種」)」とは、1つまたは複数のポリペプチドを、ポリマー分子、親油性化合物、糖部分または有機誘導体化物質のような1つまたは複数の非ポリペプチド部分に共有結合させることによって形成された不均一な(組成の意味においてまたはキメラ)分子を示すと解釈される。好ましくは、結合型は、適切な濃度および条件で可溶性である、すなわち血液のような生理的液体において可溶性である。本発明の結合型ポリペプチド変種の例には、グリコシル化および/またはPEG化ポリペプチドが含まれる。
【0038】
「共有結合」または「共有結合した」という用語は、ポリペプチド変種および非ポリペプチド部分が、互いに直接共有結合しているか、または架橋、スペーサー、もしくは連結部分または複数の部分のような、介在する部分もしくは複数の部分を通して、間接的に共有結合していることを意味する。
【0039】
本明細書において使用される場合、「非ポリペプチド部分」という用語は、本発明のポリペプチド変種の結合基と結合することができる分子を意味する。そのような分子の好ましい例には、ポリマー分子、糖部分、親油性化合物または有機誘導体化物質、特に糖部分が含まれる。本発明のポリペプチド変種の意味において用いられる場合、非ポリペプチド部分は、ポリペプチド変種の結合基を通してポリペプチド変種のポリペプチド部分に結合すると理解されよう。先に説明したように、非ポリペプチド部分は、結合基に直接共有結合してもよく、または架橋スペーサーもしくはリンカー部分もしくは複数のリンカー部分のような介在部分もしくは複数の介在部分を通して結合基に間接的に共有結合してもよい。
【0040】
「ポリマー分子」は、単量体がいずれもアミノ酸残基ではなく、ポリマーがヒトアルブミンまたは他の豊富な血漿タンパク質である場合を除く、二つまたはそれ以上の単量体の共有結合によって形成された分子である。「ポリマー」は、「ポリマー分子」という用語と互換的に用いてもよい。この用語はまた、インビトログリコシル化によって結合された糖質分子、すなわち、選択的にクロスリンク剤を用いて糖質分子をポリペプチド変種の結合基に共有結合させることを含む、通常インビトロで行われる合成グリコシル化を含むと解釈される。インビトログリコシル化は、後に詳細に考察する。
【0041】
「糖部分」は、インビボグリコシル化によって(グリコシル化ポリペプチド変種の形でポリペプチド変種結合型を産生するために)ポリペプチド変種に結合することができる、1つまたは複数の単糖類残基を含む糖質含有分子を示すと解釈される。「インビボグリコシル化」という用語は、すなわちポリペプチド変種の発現のために用いられるグリコシル化細胞における翻訳後プロセシングの際に、例えばN-結合およびO-結合グリコシル化によって、インビボで起こる糖部分の任意の結合を意味すると解釈される。正確なオリゴ糖構造は、当該グリコシル化生物に依存するところが大きい。
【0042】
「N-グリコシル化部位」は、配列N-X-S/T/Cを有し、式中Xはプロリンを除く任意のアミノ酸残基、Nはアスパラギン、およびS/T/Cはセリン、トレオニン、またはシステインのいずれか、好ましくはセリンまたはトレオニンであり、最も好ましくはトレオニンである。好ましくは、アスパラギン残基に対して+3位のアミノ酸残基は、プロリン残基ではない。
【0043】
「O-グリコシル化部位」は、セリンまたはトレオニン残基のOH-基である。
【0044】
「結合基」という用語は、ポリペプチド変種の官能基、特にポリマー分子、親油性分子、糖部分または有機誘導体化物質のような非ポリペプチド部分を結合させることができるそのアミノ酸残基または糖質部分の官能基を示すと解釈される。有用な結合基およびそのマッチする非ポリペプチド残基は、下記の表から明らかであると思われる。
【0045】

【0046】
インビボN-グリコシル化の場合、「結合基」という用語は、N-グリコシル化部位を構成するアミノ酸残基を示すために従来とは異なる意味で用いられる(配列N-X-S/T/C、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸残基、Nはアスパラギン、およびS/T/Cはセリン、トレオニン、またはシステイン、好ましくはセリンまたはトレオニン、および最も好ましくはトレオニン)。N-グリコシル化部位のアスパラギン残基は、それに対して糖部分がグリコシル化の際に結合する部位であるが、そのような結合は、N-グリコシル化部位の他のアミノ酸残基が存在しなければ、起こり得ない。したがって、非ポリペプチド部分が糖部分であって、結合がインビボN-グリコシル化によって得られる場合、ポリペプチド変種のアミノ酸配列の改変に関連して用いられる「非ポリペプチド部分に対する結合基を含むアミノ酸残基」という用語は、機能的インビボN-グリコシル化部位がアミノ酸配列に導入されるかまたはその配列から除去されるように、インビボN-グリコシル化部位を構成する1つまたは複数のアミノ酸残基を変化させるという意味であると理解すべきである。
【0047】
本出願において、アミノ酸名および原子名(例えば、CA、CB、CD、CG、SG、NZ、N、O、C等)は、IUPAC命名法(「IUPAC Nomenclature and Symbolism for Amino Acids and Peptides(residue names, atoms etc.)」、Eur. J. Biochem. 138:9〜37(1984)と共に、Eur. J. Biochem. 152:1(1985)の修正版)に基づいてタンパク質データバンク(PDB)(www.pdb.org )によって定義される通りに用いられる。
【0048】
「アミノ酸残基」という用語は、任意の天然または合成アミノ酸残基を含むと解釈され、かつ本来は20個の天然に存在するアミノ酸、すなわちアラニン(AlaまたはA)、システイン(CysまたはC)、アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはE)、フェニルアラニン(PheまたはF)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、リジン(LysまたはK)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、アスパラギン(AsnまたはN)、プロリン(ProまたはP)、グルタミン(GlnまたはQ)、アルギニン(ArgまたはR)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、バリン(ValまたはV)、トリプトファン(TrpまたはW)、およびチロシン(TyrまたはY)残基からなる群より選択されるアミノ酸からなる群に含まれるアミノ酸残基を示すと解釈される。
【0049】
アミノ酸の位置を同定するために用いられる用語を以下に説明する:G124は、配列番号:2に示すアミノ酸配列において124位がグリシン残基で占められていることを示す。G124Rは、124位のグリシン残基がアルギニン残基に置換されていることを示す。もう1つの置換は、「/」で示され、例えばN145S/Tは、145位のアスパラギンがセリンまたはトレオニンのいずれかに置換されているアミノ酸配列を意味する。多数の置換は「+」で示し、例えばK143N+N145S/Tは、143位のリジン残基のアスパラギン残基への置換および145位のアスパラギン残基のセリンまたはトレオニン残基への置換を含むアミノ酸配列を意味する。G124の後のアラニン残基の挿入のような、さらなるアミノ酸残基の挿入は、G124GAで示される。G124の後で二つのさらなるアラニン残基が挿入される場合、G124GAA等によって示される。本明細書において用いる場合、「X位に挿入」または「X位での挿入」という用語は、アミノ酸残基がアミノ酸残基XとX+1とのあいだに挿入されることを意味する。アミノ酸残基の欠失は、星印で示される。例えば、124位のグリシン残基の欠失は、G124*によって示される。特に明記していない限り、本明細書において行ったアミノ酸残基の番号付けは、hFVII/hFVIIaのアミノ酸配列(配列番号:2)に対してなされている。
【0050】
特異的変異に関連して用いられる「異なる」という用語は、明記されたアミノ酸の差とは別にさらなる差が存在することを認めることを意図する。例えば、196位、237位、および341位での明記された改変に加えて、FVIIまたはFVIIaポリペプチド変種は他の置換を含んでもよい。そのようなさらなる改変または差の例には、N-および/またはC-末端での1つまたはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、アミノ酸残基1〜10個)の切断、またはN-および/またはC-末端での1つまたはそれ以上の余分の残基の付加、例えばN-末端でのメチオニン残基の付加、またはC-末端近傍もしくはC-末端でのシステインの付加と共に「保存的アミノ酸置換」、すなわち類似の特徴を有するアミノ酸、例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、および芳香族アミノ酸の群内で行われる置換が含まれてもよい。
【0051】
そのような保存的置換の例を以下の表に示す。
【0052】

【0053】
さらなる改変のさらに他の例には、機能的インビボ半減期の増加、血清半減期の増加、AUCivの増加を生じる改変が含まれる。そのような改変の特定の例を下記で論じる。その上、本発明のポリペプチド変種は、リン脂質膜結合親和性の増強を生じるさらなる改変を含んでもよい。そのような改変の特定の例もさらに下記に示す。
【0054】
「変種」または「ポリペプチド変種」(hFVIIまたはhFVIIaにおいて)という用語は、配列番号:2に由来の1つまたは複数のアミノ酸残基、通常1〜15個のアミノ酸残基(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個または15個のアミノ酸残基)、例えば1〜10個、1〜8個、1〜6個、1〜5個、1〜4個または1〜3個のアミノ酸残基、例えば1個または2個のアミノ酸残基において異なるポリペプチドを含むことが意図される。本明細書の文脈において、「改変」という用語は、挿入、欠失、置換およびそれらの組み合わせを含む。本発明によるポリペプチド変種が、196位、237位および/または314位の少なくとも1つの位置で改変されることが理解されると思われる。
【0055】
「ヌクレオチド配列」という用語は、2つまたはそれ以上のヌクレオチド分子の連続したストレッチを示すことが意図される。ヌクレオチド配列は、ゲノム起源、cDNA起源、RNA起源、半合成起源、合成起源、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0056】
「細胞」、「宿主細胞」、「細胞系」および「細胞培養物」は、本明細書において互換的に用いられ、このような全ての用語には、細胞の増殖および培養に起因する子孫が含まれることを理解すべきである。
【0057】
「形質転換」および「トランスフェクション」は、細胞にDNAを導入する工程を意味するよう、互換的に使用される。
【0058】
「機能的に結合される」とは、酵素的ライゲーションまたは他の手段により、配列の通常の機能を実行することが可能なように互いに相対的な構造において、2つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を共有結合することを意味する。一般的に、「機能的に結合される」とは、連結されたヌクレオチド配列が、連続しており、分泌リーダーである場合には、連続しかつリーディングフェーズ内にあることを意味する。
【0059】
「変異」および「置換」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0060】
本発明の文脈において、「改変」または「アミノ酸改変」という用語は、アミノ酸側鎖の交換、アミノ酸残基の置換、アミノ酸残基の欠失、およびアミノ酸残基の挿入を含むことが意図される。
【0061】
「導入する」という用語は、特に既存のアミノ酸残基の置換による、またはさらなるアミノ酸残基の挿入によるアミノ酸残基の導入を意味する。
【0062】
「除去する」という用語は、特に除去されるアミノ酸残基をもう1つのアミノ酸残基で置換することによる、または除去されるアミノ酸残基を欠失(置換せずに)することによるアミノ酸残基の除去を意味する。
【0063】
「FVII」または「FVIIポリペプチド」という用語は、一本鎖形状で提供されるFVII分子を意味する。
【0064】
「FVIIa」または「FVIIaポリペプチド」という用語は、活性化された二本鎖形状で提供されるFVIIa分子を意味する。FVIIaのアミノ酸配列を記載するために配列番号:2のアミノ酸配列を用いる場合、一本鎖形状のR152とI153の間のペプチド結合が切断されていること、および鎖の一方が1〜152位のアミノ酸残基を含み、他方の鎖が153〜406位のアミノ酸残基を含むことが理解されると思われる。
【0065】
「rFVII」および「rFVIIa」という用語は、組換え技術によって産生されたFVIIおよびFVIIaポリペプチドを意味する。
【0066】
「hFVII」および「hFVIIa」という用語はそれぞれ、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型FVIIおよびFVIIaを意味する。
【0067】
「rhFVII」および「rhFVIIa」という用語は、組換え手段によって産生された配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型FVIIおよびFVIIaを意味する。rhFVIIaの例は、NovoSeven(登録商標)である。
【0068】
「TF」という用語は、組織因子を意味する。
【0069】
「TFPI」という用語は、組織因子経路阻害剤を意味する。
【0070】
「FX」という用語は、X因子を意味する。
【0071】
「Glaドメイン」という用語は、N末端から数えて初めの約45個のアミノ酸残基に関して使用される。
【0072】
「プロテアーゼドメイン」という用語は、N末端から数えて153位〜406位の残基に関して使用される。
【0073】
「触媒部位」という用語は、ポリペプチド変種のS344、D242およびH193からなる触媒三構造を意味するために使用される。
【0074】
「アミド溶解活性」という用語は、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ」において測定された活性を意味すると意図される。「アミド溶解活性」を示すために、本発明の変種はその活性化型で、本明細書に記述の「アミド溶解活性」においてアッセイした場合に、rhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも10%を有しなければならない。本発明の好ましい態様において、変種はその活性化型において、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ」においてアッセイした場合にrhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも30%、例えば少なくとも40%のような、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも60%、例えば少なくとも70%のような、少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも90%のような、少なくとも80%を有する。興味深い態様において、変種はその活性化型において、rhFVIIaのアミド溶解活性の75〜125%のアミド溶解活性のような、rhFVIIaと実質的に同じアミド溶解活性を有する。
【0075】
「凝血活性」という用語は、本明細書に記述の「全血アッセイ」において測定された活性を意味するために用いられる。「全血アッセイ」において測定される活性は、凝血形成を得るために必要な時間であると理解されるであろう。したがって、より短い凝血時間は、より速い凝血活性に対応する。
【0076】
「凝血活性の増加」という用語は、比較可能な条件で決定した場合および本明細書に記述の「全血アッセイ」において測定した場合に、ポリペプチド変種の凝血時間が、rhFVIIaによって得られた活性と比較して統計学的に有意に短縮していることを示すために用いられる。
【0077】
所定の物質に関連して用いられる「免疫原性」という用語は、物質の免疫系からの反応の誘導能を示すことを意図する。免疫応答は、細胞性または抗体媒介反応であってもよい(例えば、免疫原性の詳しい定義に関しては、Roitt:Essential Immunology(第8版、Blackwell)を参照されたい)。通常、抗体の反応性の減少は、免疫原性の減少の指標となると思われる。免疫原性の減少は、例えばインビボまたはインビトロでの当技術分野で既知の任意の適した方法を用いることによって決定してもよい。
【0078】
「機能的インビボ半減期」という用語は、その通常の意味において用いられ、すなわちポリペプチド変種の生物活性の50%が生体/標的臓器になお存在している時間、またはポリペプチド変種のアミド溶解活性もしくは凝固活性が最初の値の50%である時間である。
【0079】
機能的なインビボ半減期を決定するための代用として、「血清半減期」、すなわち排泄される前にポリペプチド変種の50%が血漿または血流において循環している時間を決定してもよい。血清半減期の決定はしばしば機能的インビボ半減期を決定するより単純であり、血清半減期の程度は通常、機能的インビボ半減期の程度の良好な指標である。または、血清半減期に対する用語には、「血漿半減期」、「循環中半減期」、「血清クリアランス」、「血漿クリアランス」、および「クリアランス半減期」が含まれる。ポリペプチド変種は、細網内皮系(RES)、腎臓、脾臓、または肝臓の1つまたは複数の作用によって、組織因子、SEC受容体、もしくは他の受容体媒介排泄によって、または特異的もしくは非特異的タンパク質分解によって排泄される。通常、クリアランスは、大きさ(糸球体濾過速度のカットオフに関して)、電荷、結合した炭化水素鎖、およびタンパク質の細胞受容体の存在に依存する。保持される機能性は通常、前凝固、タンパク質溶解、または受容体結合活性から選択される。機能的インビボ半減期および血清半減期は、当技術分野で既知の任意の適した方法によって決定してもよい。
【0080】
機能的インビボ半減期または血清半減期に関して用いられる場合の「増加した」という用語は、ポリペプチド変種の関連する半減期が、同等の条件で決定した場合にrhFVIIaのような参照分子の半減期と比較して統計学的に有意に増加していることを示すために用いられる(典型的には、ラット、ウサギ、ブタ、またはサルなどの実験動物において決定される)。
【0081】
「AUCiv」または「静脈内投与した場合の曲線下面積」は、その通常の意味において、すなわちポリペプチド変種が静脈内投与されている場合、特にラットに静脈内投与されている場合の、血清-時間曲線における活性下面積として用いられる。実験的活性-時間点が決定された後、AUCivは、GraphPad Prism 3.01のようなコンピュータープログラムによって計算することが都合がよい可能性がある。
【0082】
「タンパク質分解に対する感受性の低下」という用語は主に、比較できる条件下で決定した場合に、ポリペプチド変種が、rhFVIIaと比較してタンパク質分解に対する感受性が低下していることを意味すると解釈される。好ましくは、タンパク質分解は、少なくとも25%(例えば、25〜50%、25〜75%、または25〜100%)のような少なくとも10%(例えば、10〜25%または10〜50%)、より好ましくは少なくとも50%(例えば、50〜75%、または50〜100%)のような少なくとも35%、さらにより好ましくは、少なくとも75%(例えば、75〜100%)のような少なくとも60%、または少なくとも90%減少する。最も好ましくはタンパク質分解は少なくとも99%減少する。
【0083】
「腎クリアランス」という用語は、腎臓によって、例えば糸球体濾過、尿細管排泄または尿細管細胞における分解によって起こる任意のクリアランスを示すためにその通常の意味において用いられる。腎クリアランスは、大きさ(直径)、流体力学容積、対称性、形状/硬度、および電荷を含むポリペプチドの物理的特徴に依存する。分子量約67 kDaは、腎クリアランスに関するカットオフ値であると見なされる。腎クリアランスは、任意の適したアッセイ法、例えば確立されたインビボアッセイ法によって確立してもよい。典型的に、腎クリアランスは、標識された(例えば、放射標識または蛍光標識)ポリペプチドを患者に投与すること、および患者から採取した尿中の標識活性を測定することによって決定される。腎クリアランスの低下は、比較できる条件下で対応する参照ポリペプチド、例えばrhFVIIaと比較して決定される。好ましくは、ポリペプチド変種の腎クリアランス率は、rhFVIIaと比較して、少なくとも50%、例えば少なくとも75%または少なくとも90%減少する。
【0084】
本発明のポリペプチド変種
最も広い局面において、本発明は、hFVIIまたはhFVIIa、好ましくはhFVIIaと比較して、196位、237位および341位からなる群より選択される位置で少なくとも1つのアミノ酸の改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種に関する。この変種は、典型的には、これらの位置の1つで改変を含むと考えられるが、これらの位置の2つ、すなわち196+237、196+341もしくは237+341、または3つ全ての位置で改変を含んでもよい。
【0085】
以下の項では、上記の位置での好ましい改変を提供する。
【0086】
196位
本発明の1つの態様において、本発明は、hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、196位の位置で少なくとも1つの改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種に関する。
【0087】
本発明の好ましい態様において、196位の改変は、特にD196NまたはD196Kの置換である。
【0088】
変種は一般的に、1〜10個のアミノ酸改変(例えば、置換)、例えば1〜5個のアミノ酸改変(例えば、置換)、または1〜3個のアミノ酸改変(例えば、置換)のような、全部で1〜15個のアミノ酸改変(例えば、置換)を含むと考えられる。
【0089】
例えば、変種は、以下の「Glaドメインにおける改変」と題する項で説明されるように、Glaドメインで行われる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/または以下の「さらなる糖部分の導入」と題する項で説明されるように、インビボN-グリコシル化部位を導入させる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/または内因性の活性を増加させることが可能な少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/またはTF結合親和性を増加させる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよい。後者の改変の例は、「他の改変」と題する項で以下に記載される。
【0090】
237位
本発明のさらなる態様において、本発明は、hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、237位の位置で少なくとも1つの改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種に関する。
【0091】
本発明の好ましい態様において、237位の改変は、特にG237Lの置換である。
【0092】
変種は一般的に、1〜10個のアミノ酸改変(例えば、置換)、例えば1〜5個のアミノ酸改変(例えば、置換)、または1〜3個のアミノ酸改変(例えば、置換)のような、全部で1〜15個のアミノ酸改変(例えば、置換)を含むと考えられる。
【0093】
例えば、変種は、以下の「Glaドメインにおける改変」と題する項で説明されるように、Glaドメインで行われる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/または以下の「さらなる糖部分の導入」と題する項で説明されるように、インビボN-グリコシル化部位を導入させる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/または内因性の活性を増加させることが可能な少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/またはTF結合親和性を増加させる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよい。後者の改変の例は、「他の改変」と題する項で以下に記載される。
【0094】
本発明のさらに別の態様において、237位の改変は挿入である。興味深い態様において、挿入は、G237GXX、G237GXXXおよびG237GXXXXからなる群より選択され、ここでXは任意のアミノ酸残基である。好ましくは、Xは、Ala、Val、Leu、Ile、Gly、SerおよびThrからなる群より選択され、特にAlaである。好ましい挿入の特定の例には、G237GAA、G237GAAAおよびG237GAAAAが含まれる。最も好ましくは、挿入はG237GAAである。
【0095】
341位
さらなる態様において、本発明は、hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、341位の位置で少なくとも1つの改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種に関する。
【0096】
本発明の好ましい態様において、341位の改変は、K341NまたはK341Q、特にK341Qの置換である。
【0097】
変種は一般的に、1〜10個のアミノ酸改変(例えば、置換)、例えば1〜5個のアミノ酸改変(例えば、置換)、または1〜3個のアミノ酸改変(例えば、置換)のような、全部で1〜15個のアミノ酸改変(例えば、置換)を含むと考えられる。
【0098】
例えば、変種は、以下の「Glaドメインにおける改変」と題する項で説明されるように、Glaドメインで行われる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/または以下の「さらなる糖部分の導入」と題する項で説明されるように、インビボN-グリコシル化部位を導入させる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/または内因性の活性を増加させることが可能な少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよく、および/またはTF結合親和性を増加させる少なくとも1つのさらなるアミノ酸改変を含んでもよい。後者の改変の例は、「他の改変」と題する項で以下に記載される。
【0099】
本発明の変種の特性
開示された変種は、TFPIに対して親和性が変更されていてもよく、これは、本明細書に記載されるBIAcore(登録商標)アッセイ法を用いて評価されてもよい。BIAcore(登録商標)アッセイ法を使用すると、平衡解離定数KD(KD = kd/kaであり、式中、kaは結合速度定数、kdは解離速度定数である)のような、様々な動力学的結合定数を評価することが可能である。より高いKD値が、TFPIに対する親和性の減少に対応することが理解されると思われる。
【0100】
本発明の変種は、hFVIIaまたはrhFVIIaと比較して、凝血活性が増加(または凝血時間が減少)している。本発明の好ましい態様において、変種が凝血形成に達する時間(t)と、hFVIIaまたはrhFVIIaが凝血形成に達する時間(twt)の比は、本明細書において記載される「全血アッセイ法」においてアッセイされる場合、最大で0.9である。より好ましくは、本明細書に記載される「全血アッセイ法」においてアッセイされる場合、この比(t変種/twt)は、0.7のような最大で0.75であり、さらに好ましくは、この比(t変種/twt)は最大で00.6であり、最も好ましくは、この比(t変種/twt)は最大で0.5である。
【0101】
さらなる改変
上記のように、本発明のFVIIまたはFVIIaの変種は、FVIIまたはFVIIaの分子に対してさらに有利な特性を与えることを目的としたさらなる改変(例えば、少なくとも1つのさらなるアミノ酸の置換)を含んでもよい。
【0102】
FVIIまたはFVIIaのポリペプチドの構造および機能の過度の破壊を避けるため、本発明のFVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種は、典型的に、配列番号:2と95%を超える同一性;より好ましくは、配列番号:2と97%を超える同一性のような、配列番号:2と96%を超える同一性;さらにより好ましくは、配列番号:2と99%を超える同一性のような、配列番号:2と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有すると考えられる。アミノ酸配列の相同性/同一性は、例えばClustalWプログラム、バージョン1.8、1999年6月を使用して、デフォルトパラメータを使用して整列化された配列から都合良く決定され(Thompson et al.、1994、ClustalW: Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting、position-specific gap penalties and weight matrix choice、Nucleic Acids Res.、22: 4673-4680)、またはGENEDOCバージョン2.5(Nicholas et al.、1997 GeneDoc: Analysis and Visualization of Genetic Variation、EMBNEW.NEWS 4:14; Nicholas、K.B. and Nicholas H.B. Jr. 1997 GeneDoc: Analysis and Visualization of Genetic Variation)を使用することによって、PFAMファミリーデータベースバージョン4.0(http://pfam.wustl.edu/)(Nucleic Acids Res. 1999 Jan 1; 27(1):260-2)から、都合良く決定される。
【0103】
Glaドメインにおける改変
本発明の興味深い態様において、少なくとも1つのさらなるアミノ酸の改変は、Glaドメイン、すなわち、FVII分子またはFVIIa分子のN末端から数えて初めの約45個のアミノ酸残基において行われる。6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位の残基は改変されないことが好ましい。
【0104】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、凝結活性の増加は、活性化された血小板の表面上に存在するリン脂質膜に対するFVIIa分子の結合親和性を増強することによって達成される可能性がある、と現在は考えられている。この増強された親和性により、他の凝固因子、特にFXに非常に近接している活性化FVIIaポリペプチドの局在濃度が高まると考えられる。したがって、単に活性化FVIIポリペプチド対FXのモル比が高くなるため、FX対FXaの活性化比が高くなると考えられる。その後、FXの増加した活性化比は、より大量の活性化トロンビンをもたらし、したがって、フィブリンのより高い割合の架橋結合に至る。
【0105】
したがって、本発明のこの局面による好ましい態様において、ポリペプチド変種は、活性化型であり、rhFVIIaポリペプチドと比較して、増強されたリン脂質膜結合親和性を有している。リン脂質膜結合親和性は、K. NagataおよびH. Handa(Ads.)Real-Time Analysis of Biomolecular Interactions、Springer-Verlag、Tokyo、2000、「Lipid-Protein Interactions」と題する第6章に記載されるBIAcore(登録商標)アッセイ法のような、当技術分野において公知の方法によって測定されてもよい。
【0106】
増加した膜結合親和性を引き起こすFVII Glaドメインにおける多くの改変は、当技術分野において記載されている(例えば、国際公開公報第99/20767号および国際公開公報第00/66753号を参照されたい)。Glaドメインにおいて改変される特に興味深い位置は、P10、K32、D33、A34の位置、およびA3とF4の間のアミノ酸残基の挿入である。したがって、本発明の好ましい態様において、変種は、上記の1つまたは複数の改変に加えて、P10、K32、D33およびA34、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される位置での置換、ならびにA3とF4の間の挿入を含む。特に好ましい位置は、P10およびK32である。
【0107】
好ましくは、32位の位置で行われる置換はK32Eであり、10位の位置で行われる置換はP10Qであり、33位の位置で行われる置換はD33Fであり、34位の位置で行われる置換はA34Eであり、好ましくは、A3とF4の間の挿入はA3AYである。本発明の興味深い態様において、変種は、少なくとも1つの以下のさらなる改変を含む:A3AY、P10Q、K32E、D33F、A34Eまたはそれらの組み合わせ。最も好ましくは、変種は、以下のさらなる改変の1つを含む:K32E、P10Q+K32E、A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E。
【0108】
非ポリペプチド部分の導入
他の態様において、FVIIまたはFVIIaの変種は、得られたポリペプチド変種が、増加した機能的なインビボ半減期を有し、および/または増加した血漿半減期を有し、および/または静脈内投与、特にラットで静脈内投与された場合、増加した曲線下面積(AUCiv)を有し、および/または増加した生物学的利用能を有し、および/またはタンパク質分解性に対する減少した感受性を有するように、さらに改変される。本発明のこの局面によるポリペプチド変種を用いた治療は、低用量、および任意でより長時間の注射間隔のような、現在利用可能なrFVIIa化合物に対して多くの利点を提供しうる。関連するアミノ酸置換の多くの例は、国際公開公報第01/58935号において提供される。
【0109】
国際公開公報第01/58935号に開示された変種は、改善されたFVII分子またはFVIIa分子を開発するための一般的な新たな方法の結果である。この方法を、非ポリペプチド部分をFVII/FVIIa変種に結合する際に、本発明のFVIIまたはFVIIaの変種のために使用してもよい。より具体的には、本発明のFVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種において非ポリペプチド部分に対する結合基を含むアミノ酸残基を除去および/または導入することにより、選択した非ポリペプチド部分への結合に対してより感受性のある分子を作製するためにポリペプチド変種を特異的に適合させること、結合パターンを最適化すること(例えば、FVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種の表面上の非ポリペプチド部分の最適な分布および数を保証にすること、ならびに結合が意図される結合基のみが分子に存在することを保証すること)、ならびにそれによって、活性を有し、さらに、今日利用可能なFVII分子およびFVIIa分子と比較して、1つまたは複数の改善された特徴を有する新規の結合分子を得ることが可能である。例えば、選択した非ポリペプチドに対する結合基を含むアミノ酸残基の総数が、最適化されたレベルまで増加または減少している場合、典型的には、結合体の腎クリアランスは、結合によって達成された分子の形状、大きさおよび/または電荷の変更のために有意に減少している。
【0110】
したがって、本発明の局面による興味深いポリペプチド変種は、本明細書の別の箇所に記載されるように、非ポリペプチド部分に対する結合基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基が、FVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種において導入または除去されたポリペプチドである。
【0111】
本発明の興味深い態様において、FVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種の複数のアミノ酸残基は、変更され、例えばこの変更は、選択した非ポリペプチド部分に対する結合基を含むアミノ酸残基の除去および導入を含む。アミノ酸残基の除去および/または導入に加えて、ポリペプチド変種は、非ポリペプチド部分に対する結合基を含むアミノ酸残基の導入および/または除去に関連していない他の置換またはグリコシル化を含んでもよい。また、ポリペプチド変種は、例えばポリペプチドの触媒部位を阻害するためのセリンプロテイナーゼ阻害剤に結合されてもよい。
【0112】
非ポリペプチド部分に対する結合基を含むアミノ酸残基は、それが除去または導入されているかに関わらず、選択した非ポリペプチド部分の性質に基づいて選択され、ほとんどの場合、ポリペプチド変種と非ポリペプチド部分との間で結合が達成される方法に基づいて選択される。例えば、非ポリペプチド部分が、ポリエチレングリコールまたはポリアルキレンオキサイドに由来する分子のようなポリマー分子である場合、結合基を含むアミノ酸残基は、リジン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、およびチロシンからなる群より選択されてもよく、好ましくは、リジン、システイン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸からなる群より選択されてもよく、より好ましくはリジンおよびシステインからなる群より選択されてもよく、特にシステインであってよい。
【0113】
非ポリペプチド部分に対する結合基が、FVIIもしくはFVIIaのポリペプチド変種に導入されるか、またはFVIIもしくはFVIIaのポリペプチド変種から除去される場合には、改変されるアミノ酸残基の位置は、好ましくはFVIIまたはFVIIaのポリペプチドの表面に位置し、より好ましくは、その側鎖の25%より多くが表面に露出しているアミノ酸残基で占められ(国際公開公報第01/58935号および本明細書の実施例1に定義されるように)、さらに好ましくは、その側鎖の50%より多くが表面に露出しているアミノ酸残基で占められる(国際公開公報第01/58935号および本明細書の実施例1に定義されるように)。
【0114】
さらに、この位置は、好ましくは組織因子結合部位、Glaドメイン、活性部位領域および/または活性部位結合裂の隆起の外部に位置するFVII分子の一部から選択される。これらの部位/領域は、本明細書の実施例1で同定されている。
【0115】
本発明のポリペプチド変種は、1〜10個の非ポリペプチド部分、典型的には、1〜8個または2〜8個の非ポリペプチド部分、好ましくは、例えば1個、2個または3個の非ペプチド部分などの、1〜4個または1〜3個の非ポリペプチド部分のような、1〜5個または2〜5個の非ポリペプチド部分、特に、mPEGのようなPEGまたは糖部分を含んでもよい。
【0116】
非ポリペプチド部分の導入に関するさらなる詳細は、参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号に見出すことができる。
【0117】
さらなる糖部分の導入
本発明の興味深い態様において、非ポリペプチド部分は、糖部分であり、すなわち、本発明のポリペプチド変種は、本明細書の別の箇所に記載される1つまたは複数の改変に加えて、導入されたグリコシル化部位に共有結合する少なくとも1つの糖部分を含む。好ましくは、グリコシル化部位は、インビボグリコシル化部位、特にインビボN-グリコシル化部位であり、これは置換によって導入されている。好ましくは、グリコシル化部位は、Glaドメイン、組織因子結合部位、活性部位領域、および活性部位結合裂の隆起の外部に存在する位置に導入されている。
【0118】
本発明の文脈において用いる場合、「天然に存在するグリコシル化部位」という用語は、N145、N322、S52およびS60の位置でのグリコシル化部位を含む。同様に、「天然に存在するインビボO-グリコシル化部位」という用語には、S52およびS60の位置が含まれ、「天然に存在するインビボN-グリコシル化部位」という用語には、N145およびN322の位置が含まれる。
【0119】
したがって、本発明の非常に興味深い態様において、非ポリペプチド部分は、糖部分であり、導入された結合基はグリコシル化部位、好ましくは、インビボO-グリコシル化部位またはインビボN-グリコシル化部位のようなインビボグリコシル化部位、特にインビボN-グリコシル化部位である。典型的に、1〜10個のグリコシル化部位、特にインビボN-グリコシル化部位は、好ましくは1〜8個、1〜6個、1〜4個または1〜3個のグリコシル化部位が導入されている。特に、1個、2個または3個のインビボN-グリコシル化部位が、好ましくは置換によって導入されている。
【0120】
FVIIまたはFVIIポリペプチド変種が1つまたは複数のグリコシル化部位を含む、ポリペプチド変種を調製するために、ポリペプチド変種は、グリコシル化部位で糖(オリゴ糖)部分を結合することができる宿主細胞において発現されなければならないと理解されると考えられる。グリコシル化宿主細胞の例は、以下の「糖部分へのカップリング」と題する項においてさらに示される。
【0121】
グリコシル化部位が導入されてもよい位置の例には、その側鎖の少なくとも50%が表面に露出している(本明細書の実施例1に定義されるように)アミノ酸残基を含む位置のような、その側鎖の少なくとも25%が表面に露出している(本明細書の実施例1に定義されるように)アミノ酸残基を有するアミノ酸残基を含む位置が含まれるが、これらに限定されることはない。「その側鎖の少なくとも25%(または少なくとも50%)が表面に露出している」という用語をインビボN-グリコシル化部位の導入に関連して用いる場合、この用語は、糖部分が実際に結合する位置でのアミノ酸側鎖の表面到達性を意味する、と理解されるべきである。多くの場合、糖部分が実際に結合するアスパラギン残基に対して+2の位置にセリン残基またはトレオニン残基を導入する必要があり(もちろん、この位置がセリン残基またはトレオニン残基によって既に占有されていない場合)、セリン残基またはトレオニン残基が導入されるこれらの位置は埋もれ、すなわち表面に露出するのはその側鎖の25%(または50%)未満となる。
【0122】
インビボN-グリコシル化部位を作製するこのような置換の特定の例には、

およびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換が含まれる。本発明の好ましい態様において、インビボN-グリコシル化部位は、

およびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換を行うことにより、より好ましくは、T106N、A175T、I205T、V253N、T267N+S269Tおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換、特にI205Tである置換を行うことにより作製される。
【0123】
本発明の1つの態様において、1つのインビボN-グリコシル化部位は、置換により導入されている。本発明の他の態様において、2つのインビボN-グリコシル化部位のような、少なくとも2つのインビボN-グリコシル化部位が、置換により導入されている。2つのインビボN-グリコシル化部位を作製する置換の特定の例には、

が含まれる。
【0124】
本発明のなおさらなる態様において、3つのインビボN-グリコシル化部位のような、少なくとも3つのインビボN-グリコシル化部位が、置換により導入されている。3つのインビボN-グリコシル化部位を作製する置換の特定の例には、I205T+V253N+T267N+S269TおよびT106N+I205T+V253Nが含まれる。
【0125】
糖部分に加えて、この項に記載される本発明の局面によるポリペプチド変種は、付加的な非ポリペプチド部分、特に本出願で記載されたような、FVIIまたはFVIIaの変種に存在する1つまたは複数の結合基に結合したポリマー分子を含んでもよい。
【0126】
この項において特定される任意のアミノ酸の変化、特に置換は、特定のアミノ酸の変化を開示している本明細書の他の項において特定される任意のアミノ酸の変化、特に置換と組み合わせることができると理解される。例えば、少なくとも1つのグリコシル化部位を導入および/または除去された、この項で開示している任意のグリコシル化ポリペプチド変種は、PEGのようなポリマー分子、または任意の他の非ポリペプチド部分とさらに結合されてもよい。
【0127】
グリコシル化部位の導入に関するさらなる情報は、参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号および国際公開公報第03/093465号に見出すことができる。
【0128】
結合基としてシステインを有する非ポリペプチド部分の導入
本発明のさらに興味深い態様において、非ポリペプチド部分は結合基としてシステインを有し、すなわち、本発明のポリペプチド変種は、上記の1つまたは複数の改変に加えて、導入されたシステインに共有結合した少なくとも1つの非ポリペプチド部分を含むものである。好ましくは、システイン残基は、置換によって導入される。好ましくは、システイン残基は、TF結合部位、Glaドメイン、活性部位領域、および活性部位結合裂の隆起の外部に存在する位置に導入される。
【0129】
FVII/FVIIaは、Glaドメインの外部に位置する22個のシステイン残基を含み、およびジスルフィド架橋は以下のシステイン残基の間で確立されている:C50とC61、C55とC70、C72とC81、C91とC102、C98とC112、C114とC127、C135とC262、C159とC164、C178とC194、C310とC329、およびC340とC368。
【0130】
したがって、本発明の興味深い態様において、FVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種において、少なくとも1つのシステイン残基が、好ましくは置換によって導入されている。典型的には、1〜10個のシステイン残基が導入されており、好ましくは1〜8個、1〜6個、1〜4個または1〜3個のシステイン残基が導入されている。特に、1個、2個または3個のシステイン残基が、好ましくは置換により導入されている。
【0131】
システイン残基が導入される可能性のある位置の例には、側鎖の少なくとも50%が表面に露出しているアミノ酸残基を含む部位(本明細書の実施例1に定義されるように)のような、側鎖の少なくとも25%が表面に露出しているアミノ酸残基を有するアミノ酸残基を含む位置(本明細書の実施例1に定義されるように)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0132】
本発明の興味深い態様において、システイン残基は、C末端の近傍またはC末端に導入される。例えば、システイン残基は、400〜406位において、置換または挿入のいずれかにより導入されてもよい。置換の特定の例には、L400C、L401C、R402C、A403C、P404C、F405CおよびP406C、特にP406Cが含まれる。挿入の特定の例には、L400LC、L401LC、R402RC、A403AC、P404PC、F405FCおよびP406PC、特にP406PCが含まれる。
【0133】
本発明の局面による非ポリペプチド部分は、所定の結合方法を使用する場合に、結合基としてシステインを有する任意の分子であってよいが、非ポリペプチド部分は、ポリマー分子であることが好ましい。ポリマー分子は、「ポリマー分子との結合」と題する項で説明される任意の分子であってよいが、好ましくは、直鎖状もしくは分枝状ポリエチレングリコール、または他のポリアルキレンオキサイドからなる群より選択される。特に興味深い態様において、ポリマー分子は、VS-PEGのようなPEGである。
【0134】
ポリペプチド変種とポリマーの結合は、例えば国際公開公報第01/58935号に記載されるような、任意の適した方法において達成され得る。
【0135】
FVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種が、1つの結合可能なシステイン残基のみを含む場合、この残基は、好ましくは約5 kDa、約10 kDa、約12 kDa、約15 kDaまたは約20 kDaの分子量ような、約5 kDaから約20 kDa、例えば約10 kDaから約20 kDaの分子量を有する非ポリペプチド部分と、直接的または低分子ポリマーを介して間接的に結合する(国際公開公報第99/55377号に記載される)。FVIIまたはFVIIaのポリペプチド変種に、2つまたはそれ以上の結合可能なシステイン残基が含まれる場合、通常、各非ポリペプチド部分は、約5 kDaまたは約10 kDaのような、約5 kDa〜約10 kDaの分子量を有する。
【0136】
この項において特定される任意のアミノ酸の変化、特に置換は、本明細書の他の項に特定される任意のアミノ酸の改変と組み合わせることができることが、理解されると思われる。
【0137】
他の改変
本発明のさらなる態様において、FVIIまたはFVIIaの変種は、上記の項に記載した改変に加えて、例えば国際公開公報第02/22776号に記載されるような、ポリペプチドの内因性の活性を増加させる既知の変異も含む。
【0138】
好ましい置換の例には、V158D、E296D、M298Q、L305VおよびK337Aからなる群より選択される置換が含まれる。より好ましくは、置換は、

からなる群より選択される。
【0139】
さらに、変種は、TF結合親和性を増加する改変を含んでもよい。そのような改変の例には、

およびそれらの組み合わせ、特にL65Q、F71Y、K62E、S43Qおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換が含まれる。
【0140】
既に上記したように、変種は、保存的アミノ酸置換も含んでもよい。
【0141】
非ポリペプチド部分
上記でさらに示されるように、本発明のポリペプチド変種の非ポリペプチド部分は、好ましくはポリマー分子、親油性化合物、糖部分(インビボグリコシル化を介して)および有機誘導体化物質からなる群より選択される。これらの物質は全て、ポリペプチド変種に所望の特性、特に機能的インビボ半減期の増加および/または血漿半減期の増加を付与する可能性がある。
【0142】
ポリペプチド変種は通常、1つの型の非ポリペプチド部分のみに結合するが、2つまたはそれ以上の異なる型の非ポリペプチド部分、例えばポリマー分子と糖部分、親油性基と糖部分、有機誘導体化物質と糖部分、親油性基とポリマー分子等に結合してもよい。2つまたはそれ以上の異なる非ポリペプチド部分との結合は、同時または連続的に行われ得る。非ポリペプチド部分との結合に関するさらなる情報は、参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号および国際公開公報第03/093465号に見出される。
【0143】
本発明の結合型ポリペプチド変種の調製方法
一般的に、本発明による結合型ポリペプチド変種は、ポリペプチドの発現のために行われる条件下で適切な宿主細胞を培養する工程、およびポリペプチド変種を回収する工程によって生産してもよく、ここで、
a)ポリペプチド変種は少なくとも1つのN-またはO-グリコシル化部位を含み、かつ宿主細胞はインビボグリコシル化を行うことができる真核宿主細胞であり、および/または
b)ポリペプチド変種は、インビトロで非ポリペプチド部分との結合を受ける。
FVIIの結合型変種の調製に関するさらなる情報は、例えば、国際公開公報第01/58935号および国際公開公報第03/093465号を参照されたい。
【0144】
ポリマー分子との結合
ポリペプチド変種にカップリングされるポリマー分子は、天然または合成ホモポリマーまたはヘテロポリマーのような任意の適したポリマー分子であってもよく、典型的に分子量約500〜20,000 Daのような、分子量の範囲が約300〜100,000 Da、より好ましくは約500〜15,000 Daの範囲、さらにより好ましくは約3〜10 kDaの範囲のような約2〜12 kDaの範囲の分子である。本明細書において特定の分子量に関連して「約」という用語を用いる場合、「約」という用語は、通常、おおよその平均分子量を示し、所定のポリマー調製物において特定の分子量の分布が存在するという事実を反映する。
【0145】
ホモポリマーの例には、ポリオール(すなわち、ポリ-OH)、ポリアミン(すなわち、ポリ-NH2)、およびポリカルボン酸(すなわちポリ-COOH)が含まれる。ヘテロポリマーは、ヒドロキシル基およびアミン基のような異なるカップリング基を含むポリマーである。
【0146】
適したポリマー分子の例には、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のようなポリアルキレングリコール(PAG)を含むポリアルキレンオキシド(PAO)、分枝状PEG、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリ-(ビニルピロリドン)、ポリエチレン-コ無水マレイン酸、ポリスチレン-コ無水マレイン酸、カルボキシメチルデキストランを含むデキストラン、または免疫原性を減少させる、ならびに/または機能的インビボ半減期および/もしくは血清半減期を増加させるために適した他の任意の生体ポリマーからなる群より選択されるポリマーが含まれる。ポリマー分子のもう1つの例は、ヒトアルブミンまたはもう1つの大量に存在する血漿タンパク質である。一般的に、ポリアルキレングリコールに由来するポリマーは生体適合性、非毒性、非抗原性、非免疫原性であり、様々な水溶性特性を有し、生きている生物から容易に排泄される。
【0147】
PEGは、例えばデキストランのような多糖類と比較すると、クロスリンクすることができる反応基がごく少数であることから、好ましいポリマー分子である。特に、一官能基PEG、例えばメトキシポリエチレングリコール(mPEG)は、そのカップリング化学が比較的単純(1つの反応基のみがポリペプチド上の結合基を結合するために使用できる)であることから重要である。その結果、クロスリンクのリスクが消失すると、得られた結合型ポリペプチド変種はより均一となり、ポリマー分子とポリペプチド変種との反応はより容易に制御される。
【0148】
1つ(または複数)のポリマー分子をポリペプチド変種に共有結合させるために、ポリマー分子のヒドロキシル末端基は、活性型、すなわち反応官能基(その例には一級アミノ基、ヒドラジド(HZ)、チオール、コハク酸塩(SUC)、スクシニミジルスクシネート(SS)、スクシニミジルスクシンアミド(SSA)、スクシニミジルプロピオネート(SPA)、スクシニミジルカルボキシメチレート(SCM)、ベンゾトリアゾールカーボネート(BTC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、アルデヒド、ニトロフェニルカーボネート(NPC)、およびトレシレート(TRES)が含まれる)と共に提供されなければならない。適した活性化ポリマー分子は市販されており、例えばNektar Therapeutics、Huntsville、AL、USAまたはPolyMASC Pharmaceuticals plc、UKから入手可能である。本発明の使用のための活性化された直鎖状または分枝状ポリマー分子の特定の例は、参照として本明細書に組み入れられるNektar Molecule Engineering Catalog 2003(Nektar Therapeutics)に記載されている。
【0149】
特に興味深い態様において、PEG化は、導入されたシステイン残基にPEG基を結合させることによって達成される。システイン残基とのカップリングのために特に好ましい活性化PEGポリマーの特定の例には、以下の直線状PEGが含まれる。ビニルスルホン-PEG(VS-PEG)、好ましくはビニルスルホン-mPEG(VS-mPEG);マレイミド-PEG(MAL-PEG)、好ましくはマレイミド-mPEG(MAL-mPEG)、およびオルトピリジル-ジスルフィド-PEG(OPSS-PEG)、好ましくはオルトピリジル-ジスルフィド-mPEG(OPSS-mPEG)。典型的にそのようなPEGまたはmPEGポリマーは、大きさが約5 kDa、約10 kDa、約12 kDa、または約20 kDaであると思われる。
【0150】
他の態様において、適したPEG分子は、N末端に結合されていてもよい。
【0151】
FVIIのPEG化に使用され得る方法およびポリマーの詳細な情報は、参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第01/58935号に見出される。
【0152】
糖部分へのカップリング
本発明のポリペプチド変種のインビボグリコシル化を達成するために、ポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列は、グリコシル化した真核生物発現宿主に挿入されなければならない。発現宿主細胞は、真菌(糸状真菌または酵母)、昆虫もしくは動物細胞から、または形質転換植物細胞から選択され得る。1つの態様において、宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞もしくはHEK細胞(例えばHEK 293細胞)のような哺乳類細胞、またはSF9細胞のような昆虫細胞、またはS.セレビジエもしくはピチア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、または後に記載される任意の宿主細胞である。FVIIおよびFVIIaのインビボグリコシル化のさらなる情報は、参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号および国際公開公報第03/093465号に見出される。
【0153】
本発明のポリペプチド変種を調製する方法
グリコシル化型であってもよい、本発明のポリペプチド変種は、当技術分野で周知の任意の適した方法によって産生してもよい。そのような方法には、ポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列を構築する段階、および適した形質転換またはトランスフェクトした宿主において配列を発現させる段階が含まれる。好ましくは宿主細胞は、哺乳類細胞のようなγカルボキシル化宿主細胞である。しかし、本発明のポリペプチド変種は、あまり効率的ではないが、化学合成もしくは化学合成の組み合わせ、または化学合成と組み換えDNA技術の組み合わせによって産生してもよい。
【0154】
本発明のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列は、hFVIIをコードするヌクレオチド配列を単離または合成すること、次に、1つ(または複数)の関連するアミノ酸残基の導入(すなわち挿入または置換)または除去(すなわち欠失または置換)を行うためにヌクレオチド配列を変化させることによって構築してもよい。
【0155】
ヌクレオチド配列は、通常の方法に従って部位特異的変異誘発によって簡便に改変される。または、ヌクレオチド配列は、化学合成によって、例えばオリゴヌクレオチドが所望のポリペプチド変種のアミノ酸配列に基づいてデザインされるオリゴヌクレオチドシンセサイザーを用いて、好ましくは組み換え型ポリペプチド変種が産生される宿主において都合がよいコドンを選択することによって、調製される。例えば、所望のポリペプチド変種の一部をコードするいくつかの小さいオリゴヌクレオチドを合成して、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、ライゲーション、またはライゲーション連鎖反応(LCR)(Barany、Proc Natl Acad Sci USA 88:189〜193、1991)によって構築してもよい。個々のオリゴヌクレオチドは典型的に、相補的構築のために5"または3"オーバーハングを含む。
【0156】
一旦構築されると(合成、部位特異的突然変異、または他の方法による)、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は組換えベクターに挿入され、望ましい形質転換宿主細胞において、FVIIの発現のために必要な制御配列に機能的に結合されている。
【0157】
当業者は、ポリペプチドを発現するための適したベクター、発現制御配列、および宿主を選択することができると思われる。
【0158】
組換えベクターは、自律的に複製するベクター、すなわちその複製が染色体の複製に依存しない染色体外実体として存在するベクター、例えばプラスミドであってもよい。または、ベクターは、宿主細胞に導入した場合、宿主細胞のゲノムに組み入れられ、それが組み入れられている1つまたは複数の染色体と共に複製されるベクターである。
【0159】
ベクターは好ましくは、その中で本発明のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の転写にとって必要なさらなるセグメントに機能的に結合している発現ベクターである。ベクターは、典型的にプラスミドまたはウイルスDNAに由来する。本明細書において言及した宿主細胞における発現に適した多くの発現ベクターが市販されているか、または文献に記述されている。FVIIを発現するための適したベクターに関する詳細な情報は、参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号に見出され得る。
【0160】
「制御配列」という用語は、本明細書において、本発明のポリペプチド変種の発現にとって必要または有利な全ての成分が含まれると定義される。各制御配列は、ポリペプチド変種をコードする核酸配列に対して先天的または外来配列であってもよい。そのような制御配列には、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、エンハンサーまたは上流活性化配列、シグナルペプチド配列、および転写ターミネーターが含まれるが、これらに限定されることはない。少なくとも制御配列には、プロモーターが含まれる。本発明において、様々な発現制御配列が使用されてもよく、例えば、参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号に開示された任意の制御配列を使用してもよい。
【0161】
ポリペプチド変種をコードする本発明のヌクレオチド配列は、それが部位特異的突然変異、合成、PCRまたはその他の方法により調製されたかに関わらず、任意で、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。シグナルペプチドは、ポリペプチド変種が発現される細胞から分泌される場合に存在する。そのようなシグナルペプチドは、存在する場合、ポリペプチド変種の発現に関して選択された細胞によって認識されるペプチドでなければならない。シグナルペプチドは、ポリペプチドに対して同種(すなわち、hFVIIに通常会合する)もしくは異種(すなわち、hFVIIとは異なる他の起源から発生する)であってよく、または宿主細胞に対して同種もしくは異種、すなわち宿主細胞から通常発現するシグナルペプチドもしくは宿主細胞から通常発現しないシグナルペプチドであってよい。適したシグナルペプチドのさらなる情報は、国際公開公報第01/58935号を参照されたい。
【0162】
細菌(しかし、あまり好ましくない)、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳類、もしくは他の適切な動物の細胞または細胞系、およびトランスジェニック動物または植物を含む、任意の適した宿主を、ポリペプチド変種を産生するために使用してもよい。哺乳類細胞が好ましい。細菌宿主細胞の例には、バチルス属(例えば、B.ブレビスもしくは枯草菌)、またはストレプトミセス属のようなグラム陽性細菌;または大腸菌株のようなグラム陰性細菌が含まれる。適した糸状真菌宿主細胞の例には、アスペルギルス属(例えばA.オリゼー、A.ニガーもしくはA.ニデュランス);フザリウム属;またはトリコデルマ属の株が含まれる。適切な酵母宿主細胞の例には、サッカロミセス属(例えば、S.セレビジエ);分裂酵母;クリヴェロミセス属(Kluyveromyces);ピチア属(例えばP.パストリス(P. pastoris)もしくはP.メタノリカ(P. methanolica));ハンゼヌラ属(例えばH.ポリモルファ(H. Polymorpha));またはヤロウィア属(Yarrowia)の株が含まれる。適した昆虫宿主細胞の例には、スポドプテラ・フルギペルタ(Spodoptera frugiperda)(Sf9もしくはSf21)またはトリコプルシオア・ニ(Trichoplusioa ni)細胞(ハイファイブ(High Five))(米国特許第5,077,214号)のような、鱗翅目細胞系が含まれる。適した哺乳類宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えばCHO-K1; ATCC CCL-61)、ミドリザル細胞系(COS)(例えばCOS 1(ATCC CRL-1650)、COS 7(ATCC CRL-1651)); マウス細胞(例えばNS/O);胎仔ハムスター腎臓(BHK)細胞系(例えばATCC CRL-1632またはATCC CCL-10);およびヒト細胞(例えばHEK 293(ATCC CRL-1573))が含まれる。さらなる適した細胞系は、当技術分野に公知であり、American Type Culture Collection、Rockville、Marylandのような、公共の寄託所から入手可能である。また、CHO細胞のような哺乳類細胞は、ポリペプチド変種の改善されたグリコシル化を提供するために、例えば米国特許第5,047,335号に記載されるような、シアリルトランスフェラーゼ、例えば1,6-シアリルトランスフェラーゼを発現するように改変されてもよい。
【0163】
上記細胞型に外因性DNAを導入する方法、ならびにFVII変種の発現、産生および精製に関するその他の情報は、本明細書に参照として組み入れられる国際公開公報第01/58935号に見出される。
【0164】
本発明の薬学的組成物およびその使用
さらなる局面において、本発明は、本発明のポリペプチド変種および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物、特に薬学的組成物に関する。
【0165】
本発明によるポリペプチド変種および薬学的組成物を、薬剤として使用してもよい。
【0166】
高い凝固効率のために、本発明のポリペプチド変種、または本発明の薬学的組成物は、外傷患者、血小板減少症患者、抗凝固治療を受けている患者、静脈瘤出血または他の上部消化管出血を有する肝硬変患者、正位肝臓移植または肝切除を受ける患者(輸血を伴わない手術を可能にする)、または血友病患者における、制御できない出血事象の治療に特に有用である。
【0167】
外傷は、外因性物質によって引き起こされる生きている組織への損傷として定義される。これは米国における死因の第4位であり、経済に対しても大きな財政的負担となっている。
【0168】
外傷は、鈍的外傷または貫通性外傷のいずれかに分類される。鈍的外傷によって、内部圧迫、臓器損傷、および内出血が起こり、貫通性外傷(物質が体を貫通して組織、血管および臓器を破壊した結果として)によって外部出血が起こる。
【0169】
外傷は、例えば、交通事故、銃による損傷、墜落、機械の事故、および刺し傷などの多くの事象によって引き起こされる可能性がある。
【0170】
肝硬変は、慢性アルコール中毒、慢性ウイルス性肝炎(B型、C型、およびD型)および自己免疫性肝炎を含む直接的な肝損傷に加え、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、および胆管閉鎖を含む胆管損傷による間接的な損傷によって引き起こされる可能性がある。あまり一般的でない肝硬変の原因には、嚢胞性線維症、α-1-アンチトリプシン欠損症、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、ガラクトース血症、および糖原病のような遺伝性疾患による直接的な肝損傷が含まれる。移植は、末期肝硬変患者を治療するための重要な介入である。
【0171】
したがって、さらなる局面において、本発明は、凝血形成が望ましい疾患または障害の治療のために薬剤を製造するために本発明のポリペプチド変種に関する。本発明のなおさらなる局面は、本発明のポリペプチド変種または薬学的組成物の有効量をそれを必要とする哺乳類に投与することを含む、凝血形成が望ましい疾患または障害を有する哺乳類を治療する方法に関する。
【0172】
凝血形成の増加が望ましい疾患/障害の例には、脳出血を含む出血および、外傷のような制御されない激しい出血のある患者が含まれるが、これらに限定されない。さらなる例には、移植を受ける患者、切除を受ける患者、および静脈瘤出血を有する患者が含まれる。本発明のポリペプチドが凝血形成の増加に有効であると意図される、他の広範にわたる疾患/障害は、血友病、例えば、フォンウィルブランド病、血友病A、血友病Bおよび血友病Cである。
【0173】
本発明のポリペプチド変種は治療的有効量で、通常、NovoSeven(登録商標)のようなrhFVIIを用いた治療において用いられる用量とほぼ平行な用量でまたはより低い用量で患者に投与される。本明細書における「治療的有効量」とは、それが投与される病態に関連して望ましい作用を生じるために十分な用量を意味する。正確な用量は、状況に依存し、既知の技術を用いて当業者によって確認可能となると思われる。通常、用量は、治療される病態または適応の重症度または拡大を予防または弱めることができなければならない。本発明のポリペプチド変種または組成物の有効量は、中でも疾患、用量、投与スケジュールに依存し、ポリペプチド変種もしくは組成物が単独で投与されるのか、または他の治療物質と共に投与されるのかに関わらず、組成物の血漿半減期、および患者の全身健康に依存することは当業者には明らかであると思われる。
【0174】
本発明のポリペプチド変種は好ましくは、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物において投与される。「薬学的に許容される」とは、それが投与される患者において如何なる望ましくない作用も引き起こさない担体または賦形剤を意味する。そのような薬学的に許容される担体および賦形剤は当技術分野で周知である(例えば、「Remington"s Pharmaceutical Sciences」、第18版、A.R. Gennaro編、マック出版社[1990];「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」、S. FrokjaerおよびL. Hovgaard編、Taylor およびFrancis[2000];および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3版、A. Kibbe編、Pharmaceutical Press[2000]を参照されたい)。
【0175】
本発明のポリペプチド変種は、「そのまま」および/またはその塩の形で用いることができる。適した塩には、ナトリウム、カリウム、およびマグネシウムのようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と共に、例えば亜鉛塩が含まれるがこれらに限定されない。これらの塩または複合体は、結晶および/または非晶系構造として存在してもよい。
【0176】
本発明の薬学的組成物は単独または他の治療物質と共に投与してもよい。これらの物質は、同じ薬学的組成物の一部として組み入れてもよく、または本発明のポリペプチド変種とは個別に、同時にまたはもう1つの治療スケジュールに従って投与してもよい。さらに、本発明のポリペプチド変種または薬学的組成物は、他の治療に対する補助剤として用いてもよい。
【0177】
本発明の目的に関して「患者」には、ヒトおよび他の哺乳類の両方が含まれる。したがって、方法はヒトの治療および獣医学応用の両方に適用可能である。
【0178】
本発明のポリペプチド変種を含む薬学的組成物は、多様な剤形、例えば液体、ゲル、凍結乾燥、または圧縮個体の形で製剤化してもよい。好ましい剤形は治療される特定の適応に依存し、当業者に明らかであると思われる。
【0179】
特に、本発明のポリペプチド変種を含む薬学的組成物は、凍結乾燥または安定な可溶性型で調製してもよい。ポリペプチド変種は、当業者に公知の多様な方法によって凍結乾燥してもよい。ポリペプチド変種は、本明細書に記述のようにタンパク質分解部位の除去または保護による安定な溶解型であってもよい。安定な溶解調製物を得る長所は、患者がより容易に取り扱いできる点にあり、緊急の場合には、生命を救うようになりうるより迅速な作用である。好ましい剤形は、治療される特定の適応に依存し、当業者に明らかであると思われる。
【0180】
本発明の製剤の投与は、経口、皮下、静脈内、脳内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内、眼内、または他の任意の許容される方法を含むがこれらに限定されない多様な方法で行うことができる。製剤は、注入によって連続的に投与することができるが、ポンプまたは埋め込みのような当技術分野で周知の技術を用いるボーラス注射が許容される。場合によっては、製剤は溶液またはスプレーとして直接適用してもよい。
【0181】
非経口投与
薬学的組成物の好ましい例は、非経口投与のためにデザインされた溶液、特に好ましくは水溶液である。多くの場合において、薬学的溶液製剤は、直ちに使用するために適用な液体型で提供されるが、そのような非経口製剤はまた凍結または凍結乾燥型で提供してもよい。前者の場合、組成物は使用前に融解しなければならない。凍結乾燥調製物は一般的にその液体対応物より安定であることが当業者によって認識されていることから、後者の型は、組成物に含まれる活性化合物の安定性を広く多様な保存条件で増強するために用いられる。そのような凍結乾燥調製物は、注射用滅菌水または滅菌生理食塩液のような1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤を加えることによって使用前に溶解する。
【0182】
非経口投与の場合、それらは適当であれば、所望の程度の純度を有するポリペプチド変種を、当技術分野で典型的に用いられる(その全てが「賦形剤」と呼ばれる)1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤、例えば緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤、非イオン性界面活性剤、または洗浄剤、抗酸化剤、および/または他の雑多な添加剤と混合することによって凍結乾燥製剤または水溶液として保存するために調製される。
【0183】
FVII変種の投与に適した非経口製剤および徐放性製剤に関する詳細な情報は、本明細書に参照として組み入れられている国際公開公報第01/58935号および国際公開公報第03/093465号に見出すことができる。
【0184】
本発明は、以下の非制限的な実施例においてさらに記載される。
【0185】
材料と方法
活性部位領域
活性部位領域を、触媒三構造(残基H193、D242、S344)における任意の原子から10Å以内に、少なくとも1つの原子を有する任意の残基として定義する。
【0186】
タンパク質分解に対する感受性低下の測定
タンパク質分解は、タンパク質分解が自己タンパク質分解である、米国特許第5,580,560号、実施例5に記載されるアッセイ法を用いて測定することができる。
【0187】
さらに、タンパク質溶解の減少は、放射標識試料を用いて、血液試料を採取してこれらにSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーを行うことによって、rhFVIIaと本発明のポリペプチド変種とのタンパク質分解を比較するインビボモデルにおいて試験することができる。
【0188】
タンパク質分解を決定するために用いられるアッセイ法によらず、「タンパク質分解の減少」は、クーマシー染色SDS-PAGEゲルのゲルスキャニング、HPLCによって測定されるように、または下記の組織因子比依存的活性アッセイ法を用いて野生型と比較して保存された触媒活性によって測定されるように、rhFVIIaによって得られた分解と比較した切断の測定可能な減少を意味すると解釈される。
【0189】
ポリペプチド変種の分子量の測定
ポリペプチド変種の分子量は、SDS-PAGE、ゲル濾過、ウェスタンブロット、マトリクス支援レーザー脱離質量分析、または平衡遠心、例えばLaemmli, U.K.、Nature Vol 227(1970)、pp.680〜85によるSDS-PAGEによって決定される。
【0190】
TFPI阻害の測定
TFPIによるFVII阻害をChang et al. Biochemistry 1999、38: 10940-10948に記載のアミド溶解アッセイ法においてモニターすることができる。
【0191】
TFPI親和性の測定
TFPIに結合する変種の能力を、Dickinson et al. Proc Natl Acad Sci. USA 1996、93:
14379-14384;Roberge et al. Biochemistry 2001、40: 9522-9531;およびRuf et al. Biochemistry 1999、38(7): 1957-1966に記載される3つのBIAcore(登録商標)アッセイ法のうち1つまたは複数の方法を用いて評価する。
【0192】
TF非依存的第X因子活性化アッセイ
本アッセイは、Nelsestuenら、J. Biol. Chem. 2001、276:39285〜39381の39826頁に詳細に記述されている。
【0193】
簡単に説明すると、アッセイされる分子(hFVII、rhFVIIa、またはその活性化型での本発明のポリペプチド変種)を、BSAを含むTris緩衝液において、リン脂質源(好ましくは、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを8:2で)および再脂質添加された第X因子と混合する。明記されたインキュベーション期間の後、過剰量のEDTAを加えて反応を停止させる。次に、第Xa因子の濃度を、発色基質(S-2222、クロモゲニックス(Chromogenix))を添加した後の405 nmでの吸光度の変化から測定する。バックグラウンドからの補正後、rhFVIIa(awt)の組織因子非依存的活性を、10分後の吸光度の変化として決定し、本発明のポリペプチド変種の組織因子非依存的活性(a変種)を、10分後の吸光度の変化として決定する。その活性化型のポリペプチド変種の活性と、rhFVIIaの活性との比をa変種/awtとして定義する。
【0194】
凝血アッセイ
FVIIaおよびその変種の凝血活性を一段階アッセイにおいて測定し、凝血時間をトロンボトラックIV凝固計(Medinor)において記録した。第VII因子枯渇ヒト血漿(American Diagnostica)を再構築して、室温で15〜20分平衡化した。次に、血漿50 μlを凝固計のカップに移した。
【0195】
FVIIaおよびその変種をグリオキサリン緩衝液(5.7 mMバルビツレート、4.3 mMクエン酸ナトリウム、117 mM NaCl、1 mg/ml BSA、pH 7.35)において希釈した。試料50 μlをカップに加えて、37℃で2分間インキュベートした。
【0196】
Technoplastin His(Medinor)を水に溶解して、CaCl2を最終濃度4.5 mMで加えた。混合液を37℃で15〜20分間平衡化した。Technoplastin His100 μlを加えて反応を開始した。
【0197】
TFの非存在下で凝血活性を測定するために、Technoplastin Hisを加えない同じアッセイを用いた。PRISMソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0198】
全血アッセイ
FVIIaおよびその変種の凝血アッセイを一段階アッセイにおいて測定し、凝血時間をトロンボトラックIV凝固計(Medinor)において記録した。FVIIaまたはその変種100 μlを、10 mMグリシルグリシン、50 mM NaCl、37.5 mM CaCl2、pH 7.35を含む緩衝液において希釈して、反応カップに移した。10%0.13 Mクエン酸ナトリウムを抗凝固剤として含む血液50 μlを加えて凝血反応を開始した。エクセルまたはPRISMソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0199】
アミド溶解アッセイ
変種が小さいペプチド基質を切断できるか否かは、発色基質S-2288(D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド)を用いて測定することができる。FVIIaをアッセイ緩衝液(50 mM Na-Hepes、pH 7.5、150 mM NaCl、5 mM CaCl2、0.1%BSA、1 U/mlヘパリン)において約10〜90
nMに希釈した。さらに、可溶性TF(sTF)をアッセイ緩衝液において50〜450 nMに希釈する。アッセイ緩衝液120 μlをFVIIa試料20 μlおよびsTF 20 μlと混合する。室温で軽く振とうさせながら5分間インキュベートしてから37℃で10分間インキュベートした後、S-2288基質を1 mMとなるように加えて反応を開始させ、405 nmでの吸光度をいくつかの時点で決定する。
【0200】
ELISAアッセイ
FVII/FVIIa(または変種)濃度をELISAによって決定する。マイクロタイタープレートのウェルを、プロテアーゼドメインに対する抗体の2 μg/mlのPBS溶液を用いてコーティングした(100 μl/ウェル)。R.T(室温)で一晩コーティングした後、ウェルをTHT緩衝液(100 mM NaCl、50 mM Tris-塩酸、pH 7.2、0.05% Tween20)によって4回洗浄した。その後、1%カゼイン(100 mM NaCl、50 mM Tris-塩酸、pH 7.2を用いて2.5%保存液を希釈)200 μlをブロッキングのためにウェルに加える。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを空にして、試料100 μl(任意で希釈緩衝液(THT+0.1%カゼイン)において希釈)を加える。室温で1時間さらにインキュベーションした後、THT緩衝液でウェルを4回洗浄し、EGF様ドメインに対する100 μlのビオチン標識抗体(1 μg/ml)を添加する。さらに室温で1時間インキュベーションした後、THT緩衝液で4回洗浄し、100 μlのストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(DAKO A/S、Glostrup、Denmark、10000倍希釈)を添加する。さらに室温で1時間インキュベーションした後、THT緩衝液で4回洗浄し、100 μlのTMB(3,3",5,5"-テトラメチルベンジジン、Kem-en-Tech A/S、Denmark)を添加する。暗室で室温で30分間インキュベーションした後、100 μlの1 M H2SO4を添加し、OD450nmを測定する。rhFVIIa(NovoSeven(登録商標))を用いて標準曲線を作製する。
【0201】
あるいは、FVII/FVIIaまたは変種を、プロテアーゼドメインよりむしろGlaドメインを介して定量化することができる。このELISAの条件において、ウェルをEGF様ドメインに対する抗体で一晩コーティングして、検出のために、カルシウム依存ビオチン標識抗Glaドメインモノクローナル抗体を使用する(2 μg/ml、1ウェル当たり100 μl)。この状件において、THTおよび希釈緩衝液に5 mM CaCl2を添加する。
【実施例】
【0202】
実施例1
Banner et al.、J Mol Biol、1996; 285:2089による可溶性組織因子との複合体におけるhFVIIaのX線構造を、本実施例のために使用する。参考文献における残基の番号付けは、配列に従っていないことに注意されたい。本明細書において本発明者らは、配列番号:2に従う連続番号を用いた。6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位の位置でのγ-カルボキシグルタミン酸は、本明細書において全てGlu(三文字略語)またはE(一文字略語)と命名する。残基143〜152位の残基は、構造には存在しない。この実施例の計算に関するさらなる情報は、国際公開公報第01/58935号を参照されたい。
【0203】
表面の露出
部分的なASA計算を行った結果、それらの側鎖の25%より多くが表面に露出していることが決定された以下の残基が得られた:

【0204】
以下の残基は、それらの側鎖の50%より多くが表面に露出していることが決定された:

【0205】
組織因子結合部位
hFVII中の以下の残基が複合体中のASAを変更することを、ASA計算を使用して決定した。これらの残基を組織因子結合部位を構成するものとして定義した:

【0206】
活性部位領域
活性部位領域を、触媒三構造(残基H193、D242、S344)における任意の原子から、距離10Å以内の少なくとも1つの原子を有する任意の残基として定義する:

【0207】
活性部位結合裂の隆起
活性部位結合裂領域の隆起を、N173、A175、K199、N200、N203、D289、R290、G291、A292、P321およびT370として、FVIIa構造1FAK.pdbの視覚的検査によって定義した。
【0208】
実施例2
哺乳類細胞におけるhFVII発現の発現カセットの設計
hFVIIをコードする完全長cDNAの短い形態を、その天然の短いシグナルペプチド(Hagen
et al.、1986. Proc Natl Acad Sci USA 83:2412)と共に含む、配列番号:1に示されるDNA配列を、哺乳類細胞で高レベルの発現を促進するために合成した。第1に、ATG開始コドンコンテクストを、ATG開始コドン上流のコンセンサス配列と完全に一致するように、Kozakコンセンサス配列(Kozak, M. J Mol Biol 1987 Aug 20;196(4):947-50)に従って変更した。第2に、天然cDNAのオープンリーディングフレームを、高レベルで発現するヒト遺伝子で頻繁に使用されるコドンにコドンの使用を偏らせることによって変更した。さらに、有効な翻訳の停止を促進するために、二つの翻訳停止コドンをオープンリーディングフレームの末端に挿入した。完全な合成および発現最適化hFVII遺伝子を、70量体DNAオリゴヌクレオチドから構築し、最終的に、標準的なPCR技術を用いて5"および3"末端でそれぞれ、BamHI部位およびHindIII部位を挿入するエンドプライマーを用いて増幅し、以下の配列(配列番号:3)を得た:

【0209】
hFVIIの発現カセットを含む生成されたPCR産物をクローニングするためのベクターを、pCINeo(Promega)からのイントロンのクローニングによって調製した。pCI-Neoからの合成イントロンを、標準的なPCR条件およびプライマー:

を用いて増幅し、332 bpのPCR断片を得た。この断片をNheIおよびBamHIで切断した後、pCDNA3.1/HygR(Invitrogenから入手)にクローニングして、PF#34を得た。
【0210】
hFVIIの発現カセットをPF#34のBamHI部位とHindIII部位の間にクローニングして、プラスミドPF#226を得た。
【0211】
実施例3
本発明のポリペプチド変種をコードする発現ベクターの構築
置換されたコドンを有する変種FVIIオープンリーディングフレームを有する構築物を作製するために、配列突出伸長(Sequence overhang extension:SOE)PCRを使用した。SOE-PCRにおいて、初めに、FVIIオープンリーディングフレームのN末端部分とC末端部分の両方を別々に一次PCRで増幅した。
【0212】
D196のコドンからN196のコドンに変更するために、一次PCRに対して、以下のプライマーを対で使用した:

【0213】
その後、一次PCR産物を組み合わせて、ターミナルプライマー(CB499およびCB256)を加え、望ましいD196N変種の変異断片をコードする完全長の二次産物を作製した。このPCR産物をXbaIおよびXhoIで切断し、発現ベクターPF226のFVIIコード領域の等価の断片を置換するために使用し、結果として、D196N変種をコードする発現ベクターpB0014を得た。
【0214】
341位の変種の構築物を除き、D196Nと同様の方法で構築物を作製した。341位の変種の構築物は、エンドプライマー:

を用いて作製され、XhoIおよびHindIIIの間にディレクショナルクローニングされた。置換変種のためのSOE-PCR反応において使用されるセントラルプライマーは以下のものであった:

挿入変種のための、セントラルプライマーは以下のものであった:

【0215】
実施例4
CHO K1細胞におけるFVIIまたはFVII変種の発現
CHO K1細胞系(ATCC # CCL-61)を、MEMα、10% FCS(Gibco/BRL Cat # 10091)、P/Sおよび5 μg/mlのフィロキノンを用いたT-25フラスコ中に50%コンフルエントで播種して、コンフルエントとなるまで増殖させる。コンフルエントな単層細胞に、リポフェクトアミン2000物質(Life Technologies)を製造者の指示に従って使用して、5 μgの上記関連プラスミドをトランスフェクトさせる。トランスフェクションの24時間後、試料を採取して、例えばhFVIIのEGF1ドメインを認識するELISAなどを用いて、この試料を定量する。この時点で、安定したトランスフェクタントのプールを作製する目的で、関連した選択(例えば、ハイグロマイシンB)を細胞に適用してもよい。CHO K1細胞、およびプラスミド上の選択マーカーとしてハイグロマイシンB耐性遺伝子を使用する場合には、通常これは一週間以内に達成される。
【0216】
実施例5
ポリペプチド変種を安定して発現するCHO-K1細胞の作製
CHO-K1トランスフェクタントプールのバイアルを融解して、細胞を、25 mlのMEMα、10%FCS、フィロキノン(5 μg/ml)、100 U/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシンを含む175 cm2組織フラスコに播種して、24時間増殖させる。細胞を回収して、希釈し、細胞密度1/2個〜1個/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレートに播種する。1週間増殖させた後、20〜100個の細胞のコロニーがウェルに存在し、1個のコロニーのみを含むウェルを標識する。さらに2週間後、1個のコロニーのみを含む全てのウェルにおける培地を、200 μlの新鮮な培地に交換する。24時間後、培地試料を採取して、例えばELISAによって分析する。高産生クローンを選択し、これをFVIIまたはその変種を大規模に産生させるために用いる。
【0217】
実施例6
ポリペプチド変種の精製および結果として生じた活性化
FVIIおよびFVII変種は以下のように精製する。技法は4℃で行う。大規模産生から回収した培養培地を、Millipore TFFシステムを用いて、30 kDaカットオフペリコンメンブレンを用いて限外濾過する。培地を濃縮した後、クエン酸塩を5 mMとなるように加えて、pHを8.6に調節する。必要であれば、伝導率を10 mS/cm未満に低下させる。その後、試料を、50 mM NaCl、10 mM Tris、pH 8.6によって平衡化したQ-セファロースカラムに適用する。100 mM NaCl、10 mM Tris、pH 8.6によってカラムを洗浄してから150 mM NaCl、10 mM Tris、pH 8.6によって洗浄した後、FVIIを10 mM Tris、25 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 8.6を用いて溶出する。
【0218】
第二のクロマトグラフィー段階に関して、モノクローナルカルシウム依存的抗Glaドメイン抗体をCNBr活性化セファロースFFに対して共役させることによってアフィニティカラムを調製する。樹脂1 mlあたり抗体約5.5 mgを共役させる。カラムを10 mM Tris、100 mM
NaCl、35 mM CaCl2、pH 7.5によって平衡化する。NaClは、濃度100 mM NaClとなるように試料に加えて、pHを7.4〜7.6に調節する。試料のO/N適用後、カラムを100 mM NaCl、35
mM CaCl2、10 mM Tris、pH 7.5によって洗浄して、FVIIタンパク質を100 mM NaCl、50 mMクエン酸塩、75 mM Tris、pH 7.5によって溶出する。
【0219】
第三のクロマトグラフィーに関して、試料の伝導率を必要であれば10 mS/cm未満に低下させて、pHを8.6に調節する。次に、試料をQ-セファロースカラム(50 mM NaCl、10 mM Tris、pH 8.6によって平衡化した)に、有効な活性化を得るためにゲル1 mlあたりタンパク質約3〜5 mgの密度で適用する。適用後、カラムを50 mM NaCl、10 mM Tris、pH 8.6によって3〜4カラム容積(cv)/時間の流速で約4時間洗浄する。FVIIタンパク質を、40 cvで500 mM NaCl、10 mM Tris、pH 8.6の0〜100%の勾配を用いて溶出した。FVII含有分画をプールする。
【0220】
最終クロマトグラフィー段階に関して、伝導率を10 mS/cm未満に低下させる。その後、試料をQ-セファロースカラム(140 mM NaCl、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって平衡化した)に、ゲル1 mlあたりタンパク質約3〜5 mgの濃度で適用する。次に、カラムを140 mM NaCl、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって洗浄して、FVIIを140 mM NaCl、15
mM CaCl2、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって溶出する。溶出液を10 mM CaCl2となるように希釈して、pHを6.8〜7.2に調節する。最後に、Tween80を0.01%となるように加えて、-80℃で保存するためにpHを5.5に調節する。
【0221】
実施例7
実験結果
本発明の変種を「全血アッセイ法」に付したところ、変種はrhFVIIaと比較して、凝血活性の有意な増加(凝血時間の減少)を示すことが判明した。実験結果を以下の表1にまとめる。さらに、結果を添付の図1に示す。これは、rhFVIIaに対するG237GAA変種の、凝血時間対濃度を示す。
【0222】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、196位、237位および341位からなる群より選択される位置で少なくとも1つのアミノ酸の改変を含む、FVIIまたはFVIIaの変種。
【請求項2】
hFVIIaの変種である、請求項1記載の変種。
【請求項3】
hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、196位の位置で改変を含む、請求項1または2記載の変種。
【請求項4】
改変が置換である、請求項3記載の変種。
【請求項5】
置換がD196KまたはD196Nである、請求項4記載の変種。
【請求項6】
hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、237位の位置で改変を含む、請求項1または2記載の変種。
【請求項7】
改変が置換である、請求項6記載の変種。
【請求項8】
置換がG237Lである、請求項7記載の変種。
【請求項9】
改変が挿入である、請求項6記載の変種。
【請求項10】
挿入が、G237GXX、G237GXXXおよびG237GXXXXからなる群より選択され、Xが任意のアミノ酸残基である、請求項9記載の変種。
【請求項11】
Xが、Ala、Val、Leu、Ile、Gly、SerおよびThrからなる群より選択される、請求項10記載の変種。
【請求項12】
XがAlaである、請求項11記載の変種。
【請求項13】
挿入がG237GAAである、請求項12記載の変種。
【請求項14】
hFVIIまたはhFVIIa(配列番号:2)と比較して、341位の位置で改変を含む、請求項1または2記載の変種。
【請求項15】
改変が置換である、請求項14記載の変種。
【請求項16】
置換がK341Qである、請求項15記載の変種。
【請求項17】
1〜10個のさらなるアミノ酸の改変を含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の変種。
【請求項18】
さらなる改変が置換である、請求項17記載の変種。
【請求項19】
さらなるアミノ酸の置換の少なくとも1つがGlaドメインで行われる、請求項17または18記載の変種。
【請求項20】
P10、K32、D33およびA34からなる群より選択される位置で少なくとも1つのさらなる置換、ならびにA3とF4の間への挿入を含む、請求項19記載の変種。
【請求項21】
K32の位置でさらなる置換を含む、請求項20記載の変種。
【請求項22】
さらなる置換がK32Eである、請求項21記載の変種。
【請求項23】
P10の位置でさらなる置換を含む、請求項19〜22のいずれか一項記載の変種。
【請求項24】
さらなる置換がP10Qである、請求項23記載の変種。
【請求項25】
P10+K32+D33+A34でさらなる置換、およびA3とF4の間へのアミノ酸残基の挿入を含む、請求項19〜24記載の変種。
【請求項26】
A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34Eの改変を含む、請求項25記載の変種。
【請求項27】
改変が、6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位の残基で行われない、請求項19〜26のいずれか一項記載の変種。
【請求項28】
非ポリペプチド部分への結合基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基が、導入または除去されている、請求項1〜27のいずれか一項記載の変種。
【請求項29】
非ポリペプチド部分への結合基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基が導入されている、請求項28記載の変種。
【請求項30】
少なくとも1つの非ポリペプチド部分が、少なくとも1つの結合基に共有結合している、請求項29記載の変種。
【請求項31】
結合基がグリコシル化部位である、請求項30記載の変種。
【請求項32】
非ポリペプチド部分が糖部分である、請求項31記載の変種。
【請求項33】
導入されたグリコシル化部位がインビボグリコシル化部位である、請求項31または32記載の変種。
【請求項34】
インビボグリコシル化部位がインビボO-グリコシル化部位である、請求項33記載の変種。
【請求項35】
インビボグリコシル化部位がインビボN-グリコシル化部位である、請求項33記載の変種。
【請求項36】
インビボN-グリコシル化部位が、(本明細書の実施例1に記載されるように)その側鎖の少なくとも25%が表面に露出しているアミノ酸残基を含む位置に導入される、請求項35記載の変種。
【請求項37】
インビボN-グリコシル化部位が、(本明細書の実施例1に記載されるように)その側鎖の少なくとも50%が表面に露出しているアミノ酸残基を含む位置に導入される、請求項36記載の変種。
【請求項38】
インビボN-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される少なくとも1つの置換によって導入される、請求項35〜37のいずれか一項記載の変種。
【請求項39】
インビボN-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される少なくとも1つの置換によって導入される、請求項38記載の変種。
【請求項40】
インビボN-グリコシル化部位が、T106N、A175T、I205T、V253NおよびT267N+S269Tからなる群より選択される少なくとも1つの置換によって導入される、請求項39記載の変種。
【請求項41】
1つのインビボN-グリコシル化部位が置換により導入される、請求項35〜40のいずれか一項記載の変種。
【請求項42】
2つまたはそれ以上のインビボN-グリコシル化部位が置換により導入される、請求項35〜40のいずれか一項記載の変種。
【請求項43】
2つのインビボN-グリコシル化部位が置換により導入される、請求項42記載の変種。
【請求項44】
インビボN-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入される、請求項42または43記載の変種。
【請求項45】
インビボN-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入される、請求項44記載の変種。
【請求項46】
インビボN-グリコシル化部位が、T106N+I205T、T106N+V253NおよびI205T+T267N+S269Tからなる群より選択される置換によって導入される、請求項45記載の変種。
【請求項47】
3つまたはそれ以上のインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入される、請求項35〜40のいずれか一項記載の変種。
【請求項48】
3つのインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入される、請求項47記載の変種。
【請求項49】
インビボN-グリコシル化部位が、I205T+V253N+T267N+S269TおよびT106N+I205T+V253Nからなる群より選択される置換によって導入される、請求項47または48記載の変種。
【請求項50】
157位、158位、296位、298位、305位、334位、336位、337位および374位からなる群より選択される位置で少なくとも1つの改変をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の変種。
【請求項51】
改変が、V158D、E296D、M298Q、L305VおよびK337Aからなる群より選択される少なくとも1つの置換である、請求項50記載の変種。
【請求項52】
置換が、

からなる群より選択される、請求項51記載の変種。
【請求項53】

からなる群より選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の変種。
【請求項54】
活性化型である、前記請求項のいずれか一項記載の変種。
【請求項55】
請求項1〜54のいずれか一項記載の変種をコードするヌクレオチド配列。
【請求項56】
請求項55に記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項57】
請求項55記載のヌクレオチド配列、または請求項56記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項58】
インビボでグリコシル化を行うことができるγカルボキシル化細胞である、請求項57記載の宿主細胞。
【請求項59】
請求項1〜54のいずれか一項記載の変種、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、組成物。
【請求項60】
薬剤として使用するための、請求項1〜54のいずれか一項記載の変種。
【請求項61】
凝血形成が望ましい疾患または障害の治療用の薬剤を製造するための、請求項1〜54のいずれか一項記載の変種の使用。
【請求項62】
疾患または障害が、脳出血を含む出血;外傷のような制御できない激しい出血;移植または切除を受ける患者の出血;静脈瘤出血;および血友病からなる群より選択される、請求項61記載の使用。
【請求項63】
疾患または障害が外傷である、請求項62記載の使用。
【請求項64】
疾患または障害が血友病である、請求項62記載の使用。
【請求項65】
請求項1〜54のいずれか一項に記載の変種、または請求項59記載の組成物の有効量を、それを必要とする哺乳類に投与する段階を含む、凝血形成が望ましい疾患または障害を有する哺乳類を治療する方法。
【請求項66】
疾患または障害が、脳出血を含む出血;外傷のような制御できない激しい出血;移植または切除を受ける患者の出血;静脈瘤出血;および血友病からなる群より選択される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
疾患または障害が外傷である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
疾患または障害が血友病である、請求項66記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−95641(P2012−95641A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160400(P2011−160400)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2006−504332(P2006−504332)の分割
【原出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【出願人】(509011776)バイエル ヘルスケア エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】