説明

Gタンパク質共役受容体(GPCR)に対する抗体

本発明は、Gタンパク質共役受容体のエピトープに対する抗体であって、前記抗体は前記受容体の細胞外N末端領域に結合し、前記抗体とGタンパク質共役受容体との結合により、細胞内への受容体インターナリゼーションが誘導される抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、特に代謝型グルタミン酸受容体に対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
GPCRは、公知の最大の受容体スーパーファミリーの1つである。これらの受容体は、生物学的に重要であり、これらの受容体の機能不全は、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、小人病、色覚異常、網膜色素変性、および喘息等の疾患を招く。GPCRはまた、鬱病、統合失調症、不眠症、高血圧、不安、ストレス、腎不全、ならびにいくつかのその他の心血管障害、代謝障害、神経障害、腫瘍障害(oncology disorder)、および免疫異常にも関与している(F. HornおよびG. Vriend, J. Mol. 25 Med., 76: 464-468(1998)(非特許文献1))。GPCRはまた、HIV感染においても役割を果たすことが示されている(Y. Fengら, Science, 272: 872-877(1996)(非特許文献2))。GPCRの構造は、ループで繋がった7回膜貫通ヘリックスからなる。N末端は常に細胞外にあり、C末端は細胞内にある。GPCRはシグナル伝達に関与する。シグナルは、細胞外N末端側で受け取られる。シグナルは、内因性リガンド、化学物質または光であり得る。その後、このシグナルは膜を介して細胞質側に伝達され、そこでヘテロ三量体Gタンパク質が活性化され、次にこれが反応を引き起こす(F. Hornら, Recept. and Chann., 5:305-314(1998)(非特許文献3))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】F. HornおよびG. Vriend, J. Mol. 25 Med., 76: 464-468(1998)
【非特許文献2】Y. Fengら, Science, 272: 872-877(1996)
【非特許文献3】F. Hornら, Recept. and Chann., 5:305-314(1998)
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、Gタンパク質共役受容体のエピトープに対する抗体であって、その抗体が、前記受容体の細胞外N末端領域に結合し、その抗体とGタンパク質共役受容体との結合によって、細胞において受容体のインターナリゼーションが誘導される抗体を提供することである。
【0005】
好ましい態様では、前記抗体は、クラスCのGPCR受容体、好ましくは代謝型グルタミン酸受容体、特に代謝型グルタミン酸受容体mGluR7に対するものである。
【0006】
さらなる態様では、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0007】
さらに好ましい態様では、抗体により誘導される受容体のインターナリゼーションは、受容体に関連するGタンパク質仲介型シグナル経路の活性化に依存せず、好ましくは受容体に関連するGi共役型cAMPシグナル経路の活性化に依存しない。さらに好ましい態様では、抗体により誘導される受容体のインターナリゼーションは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル経路に関与する。
【0008】
さらなる態様では、抗体は、関心対象のGタンパク質共役受容体を発現している全細胞、好ましくはmGluR7を発現している全細胞で、適切な動物を免疫化することによって作製されている。
【0009】
さらに好ましい態様では、抗体は、2007年8月8日にDSMZ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)に寄託し、受託番号DSM ACC2855を付与されたハイブリドーマ細胞株mGluR7-CHO-1/28によって作製される。
【0010】
第2の目的において、本発明は、Gタンパク質共役受容体シグナル経路のモジュレーションに関与する疾患の治療用薬剤を製造するための、本発明の抗体の使用に関する。疾患は、神経障害または糖尿病であることが好ましい。
【0011】
さらなる態様では、本発明の抗体は、活性化合物の細胞内送達のための手段として使用される。活性化合物は、抗体に共有結合していることが好ましい。「活性化合物」は、任意の適切な分子であり得、DNA、RNA、siRNA、タンパク質、ペプチド、または薬学的に活性な物質(例えば、毒素、抗生物質、抗病原性因子、抗原、抗体、抗体フラグメント、免疫調整剤、酵素、もしくは治療薬)が挙げられる。本発明の抗体は、GPCRに結合することにより活性化合物の標的化された細胞内送達を可能にするため、活性化合物の細胞内送達に適している。
【0012】
第3の目的において、本発明は、Gタンパク質共役受容体のリガンドのスクリーニング方法に関する。前記方法は、以下の工程を含む:
a)Gタンパク質共役受容体を発現している細胞またはGタンパク質共役受容体を含む細胞調製物を、スクリーニングする化合物および本発明の抗体と接触させる工程;ならびに
b)前記Gタンパク質共役受容体との抗体相互作用を測定する工程であって、ここで、抗体の結合またはインターナリゼーションのレベルが、リガンド/Gタンパク質共役受容体相互作用の指標となる、工程。
【0013】
好ましい態様では、細胞はGタンパク質共役受容体を安定して発現する。
【0014】
さらに好ましい態様では、Gタンパク質共役受容体は、代謝型グルタミン酸受容体、好ましくはmGluR7である。
【0015】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、抗体または抗体フラグメントを包含し、Fv、Fab、F(ab’)2、一本鎖抗体等の抗体フラグメントが挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
さらなる目的では、本発明は、本発明の抗体、および前記抗体に共有結合した活性化合物を含むコンジュゲートを提供する。
【0017】
好ましい態様では、活性化合物は毒素またはsiRNA分子、好ましくはsiRNA分子である。
【0018】
本発明の抗体を、siRNA分子の末端基に共有結合させることによってA-X-Yの形態のsiRNA-抗体コンジュゲートを調製する方法であって、前記方法は:所定のsiRNA分子を選択する工程;および、siRNA分子を本発明の抗体と共有結合させる工程を含み、ここで、Aが本発明の抗体、Xがリンカー仲介型共有結合、およびYがsiRNA分子である。
【0019】
siRNA-抗体コンジュゲートの調製方法は、siRNAの官能基を活性化する工程、および活性化された官能基を抗体に共有結合させる工程を含み得る。活性化させる官能基として、アミン基、チオール基、リン酸基、またはそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。一部の態様では、siRNAの官能基を活性化する物質は、1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピル-オキシルスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネート、またはそれらの組合せを含む。本発明のsiRNA抗体コンジュゲートの別の調製方法については、Handbook of Cell Penetrating Peptides, 第18章, 第二版, 2006年4月, Ulo Langel編を参照できる。
【0020】
更なる目的において、本発明は、本発明の抗体またはコンジュゲート、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
より良い投与のために、前記組成物は、上記活性成分に加えて、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。このような担体の例として、食塩水、滅菌水、リンガー溶液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン(水溶)溶液、グリセロール、エタノール、およびそれらの混合物が挙げられる。必要であれば、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤等の代表的な添加物を添加してもよい。さらに、前記組成物は、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤等の添加物をさらに添加することにより、水溶液、懸濁液、乳剤等の形態で注射用に薬学的に作製できる。
【0022】
本発明の薬学的組成物は、静脈内投与、筋内投与、動脈内投与、髄内投与、髄腔内投与、心臓内投与、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、舌下投与、および局所投与を含む、様々な投与経路を介して身体と接触させることができる。
【0023】
このような臨床投与のために、本発明の薬学的組成物は、従来の技術を用いて十分な製品として調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1AからIは、IgGおよびFab1に誘導されるmGluR7のインターナリゼーションの比較を示す。
【図2】IgGおよびFab1フラグメントそれぞれに誘導されるmGluR7のインターナリゼーションについて、定量化された表面染色および細胞質スポットの強度を示す。
【図3】IgGおよびFabに誘導されるmGluR7のインターナリゼーションの動態を示す。
【図4】IgG誘導型mGluR7インターナリゼーションに対する百日咳毒素の影響を示す:4A:細胞表面染色における平均画素強度。4B:細胞質面積当たりの細胞質スポットにおける画素強度。
【図5】IgGに共有結合した場合の蛍光siRNAの同時インターナリゼーションを示す。図5A〜DはsiRNA-Cy5で標識化された一次抗体でのもの、図5E〜Hは、siRNA-Cy5と混合した一次抗体でのもの。
【図6】IgG(黒丸)およびFAB(黒三角)フラグメントの濃度-応答曲線を示す。細胞は、3μMフォルスコリン、L-AP4のEC80、および様々な濃度のIgGまたはFABで刺激した。cAMPの細胞含量を測定し、3μMフォルスコリンのみで処置した細胞に対するcAMP含量の%として表した。全ての測定は、3回行い、値は平均±SEを表す。
【図7】野生型またはキメラ型のmGlu6受容体またはmGlu7受容体を一時的に発現している生存CHO細胞の免疫染色を示す。細胞は、IgG-Alexa488で染色した。mGlu7受容体のN末端ドメインを有する受容体のみがIgGによって認識され、IgGがmGlu7受容体のN末端ドメインに結合することを示唆した。露光時間を秒数で示した代表的な40倍拡大画像を図示している。
【図8A】mGlu7受容体を発現しているCHO細胞のThr202/Tyr204にあるp44/42 MAPKのレベルに対するIgGの影響を示す。p44/42 MAPKレベルは、PathScan(登録商標)サンドウィッチELISAキットを製造元の指示書に従って用いて決定した。p44/42 MAPKレベルのIgG誘導型の上昇は一時的であり、処置の5分後に最大レベルに到達し、その後急速に低下する。
【図8B】IgGの用量を増やせば、mGlu7受容体を発現しているCHO細胞の処置の5分後に飽和レベルのp44/42 MAPKを誘導することを示す。IgG がp44/42 MAPK活性を誘引する作用強度は、図4に示すようにフォルスコリン活性のL-AP4誘導型阻害を阻害する作用強度の大きさと桁が等しい。
【図8C】mGlu7受容体を発現しているCHO細胞を処置した後のIgG誘導型のp44/42 MAPK活性レベルの特異性を示す。IgGと比較した場合、抗6xHis IgG、オルトステリックmGlu7アゴニストL-AP4、およびアロステリックmGlu7アゴニストAMN082は、p44/42 MAPK活性の上昇を引き起こさない。p44/42 MAPK活性の有効性は、陽性対照PMAで得られるレベルに匹敵した。
【図8D】陽性対照PMAで得られる活性と比較した場合における、非トランスフェクトCHO細胞をIgGで処置した後のp44/42 MAPK活性の不在を示し、IgGのmGlu7特異的活性を示唆する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実験
実施例1:抗体を用いた膜から細胞質への受容体の転移の定量
サンプル調製
1日目:ラットmGluR7受容体を安定して発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞を、実験の24時間前に播種した:
【0026】
トリプシン/EDTAで細胞を脱着させた。培養培地を添加し、10 mlピペットに10〜20回通して細胞を再懸濁させた。細胞濃度を決定し、細胞懸濁液を適切な濃度まで希釈した。96ウェルプレートで行う実験のために、細胞を100μl培地中で25000細胞/ウェルで播種した。細胞を37℃にて、加湿細胞培養インキュベーター内で5%CO2と共にインキュベートして、細胞をウェルに付着させた。
【0027】
2日目:I-緩衝液を調製した(1×HBSS、20 mM Hepes、0.1% BSA、三重蒸留水で調製、pH未調整)。Hoechst 33258およびTrueBlue塩化物溶液を、37℃の温かいI-緩衝液で調製した。以下の溶液添加の間、ウェル内では37℃の温度を維持した。細胞培養培地を、静かに吸引した。各ウェルに、100μlのHoechstおよびTrueblue溶液を添加し、加湿インキュベーター内で37℃にて30分間プレートをインキュベートした。
【0028】
抗体/Fab1溶液を調製し、37℃にて5分間平衡化した。細胞を、37℃にて予め平衡化した100μl/ウェルのI-緩衝液で注意深くかつすばやく1回洗浄した。その後、60μl/ウェルの抗体溶液をウェルに添加し、プレートを温度37℃にて30分間インキュベートした。
【0029】
Alexa532ヤギ-抗-マウス二次抗体の1:400溶液を、氷冷PBSで調製した。室温にて100μl/ウェルのPBSでウェルを3回洗浄した。プレートを氷浴に移し、氷冷抗体溶液を60μl/ウェルでウェルに添加し、プレートを60分間インキュベートした。ウェルを、100μl/ウェルの氷冷PBSで3回洗浄した。温度-20℃のメタノールを150μl/ウェルでウェルに添加し、プレートを氷上で10分間インキュベートした。ウェルを100μl/ウェルのPBSで室温にて洗浄し、100μl/ウェルのホルムアルデヒド溶液をウェルに添加し、プレートを室温にて15分間インキュベートした。ウェルを、室温にてPBSで1回洗浄した。0.25%Triton X-100溶液で室温にて5分間インキュベートすることで、細胞膜を透過化させた。ウェルをPBSで1回洗浄し、PBSに希釈したヤギ血清の10%vol/vol溶液で30分間インキュベートした。ヤギ血清を、PBSに希釈して新たに調製したAlexa647ヤギ-抗-マウス二次抗体の1:400溶液に置き換えた。細胞を室温にて30分間インキュベートし、100μl/ウェルのPBSで室温にて注意深くかつ素早く3回洗浄した。次いで、100μl/ウェルの4%ホルムアルデヒドを添加し、ウェルを15分間室温にてインキュベートした。溶液を150μl PBS/ウェルで置き換えた。
【0030】
細胞内レベルの免疫染色の定量
抗体(IgGまたはFab1フラグメント)のインターナリゼーションを、Evotec Technologies(ハンブルグ、ドイツ)製のOpera QEHS HCSリーダーを用いて定量した。この装置は倒立共焦点蛍光顕微鏡を備え、透明底マイクロタイタープレート中で調製したサンプルから自動的に画像取得を行うように設定する。リーダーには、画像分析用のソフトウェア“Accapella”を組み込み、これにより画像分析法(スクリプト)が作成でき、所定の種類のオブジェクトの位置を識別する。
【0031】
本実施例の定量に使用したスクリプトは、細胞表面上、および(細胞表面免疫染色とは共局在化しないスポット様構造として認識される)細胞内画分に局在する免疫染色それぞれの強度を同定するように開発した。分析は、DNA特異的蛍光色素分子、無傷の同種細胞染料TrueBlue、および異なる蛍光色素分子がコンジュゲートした2つの二次抗体で染色されたサンプルの3つの並行取得した画像に基づいた。各画像からオブジェクトを同定する。DNA染色およびTrueblue染色に特異的な最初の画像に基づき、より明るいhoechst染色から核の数、位置、大きさ、および形を、そしてTrueblue染色から細胞質の輪郭を決定した。Alexa532二次抗体に選択的な二番目の画像から、細胞表面の免疫染色の面積を決定し、強度を定量した。三番目の画像から、細胞の細胞質中のスポット様構造を同定し、蛍光強度を定量した。
【0032】
IgGおよびFab1フラグメントで誘導されるmGluR7インターナリゼーションの比較
図1は、67 nM一次抗体、fab1フラグメント、または緩衝液と37℃にてインキュベートした後、プロトコールに記載したように、洗浄し、氷に移して、二次染色および固定を行ったラット-mGluR7発現細胞の画像を示す。各列は、ウェル中の同じ視野から並行して取得した画像を含む。パネルA〜Cは33 nM一次抗体でのもの、パネルD〜Fは67 nM fab1フラグメントでのもの、およびパネルG〜Iは一次抗体もfab1フラグメントも無しのものである。パネルA、DおよびGは、trueblueおよびhoechst染色について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ405 nm、ロングパス650フィルタに反射し、ショートパス568フィルタ、およびバンドパス455/70フィルタを透過した発光。パネルB、EおよびHは、Alexa532二次抗体での細胞表面染色について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ532 nm、LP650に反射し、LP568およびBP586/40を透過した発光。パネルC、FおよびIは、膜透過化後のAlexa647二次抗体での全細胞染色について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ635nm、LP650を透過し、BP690/50を透過した発光。黒から白に至る画素強度グレースケールのレンジを、各画像の左下端に示す。
【0033】
無傷のIgGおよびFab1フラグメントは、mGluR7発現CHO細胞と37℃でインキュベートした場合に、異なる挙動をとる。IgGは大部分がインターナリゼーションされ、Fab1フラグメントはほぼ細胞表面にだけ局在する。
【0034】
図2は、IgGおよびFab1フラグメントのそれぞれについて定量化した表面染色および細胞質スポット強度を示す。パネルA:細胞表面染色における平均画素強度。パネルB:細胞質面積当たりの細胞質スポットにおける画素強度。
【0035】
IgGおよびFabフラグメントに誘導されるmGluR7インターナリゼーションの動態
以下の改変を施したプロトコールに従って、実験を行った:細胞を一次抗体またはFabフラグメントと37℃にて最大60分間インキュベートし、氷に移し、溶液を一次抗体またはFabフラグメントの新鮮な氷冷溶液と1時間置き換えた後に、二次抗体で染色した。細胞質のTrueblueおよびhoechst染色を、ホルムアルデヒド固定化後の染色工程と置き換え、その際、サンプルを3μM Hoechstおよび2μg/ml CellmaskBlue含有PBSと15分間室温にてインキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで室温にて15分間二次固定化を行った。
【0036】
図3は、IgGおよびFabの結合および取込みの動態を示す。黒丸:22 nM IgG、白丸:33 nM Fab。曲線は、それぞれ三重で行った2つの異なる実験の平均±標準偏差である。パネルA:細胞表面染色における平均画素強度。パネルB:細胞質面積当たりの細胞質スポットにおける画素強度。IgGは、細胞内スポット様構造における蓄積の上昇を示し、最初の20〜30分後に横ばいになった。対照的に、Fabフラグメントについては、非常にわずかな上昇しか検出されなかった。
【0037】
IgG誘導型インターナリゼーションに対する百日咳毒素の影響
実験当日、抗体とのインキュベーションの5時間前に、百日咳毒素含有PBSの20倍希釈液(最終濃度500 ng/ml)をウェルに添加するという改変を施したプロトコールに従って、実験を行った。
【0038】
図4は、異なる濃度のIgGでの用量応答曲線を示す。黒丸:百日咳毒素で処置した細胞、白丸:百日咳毒素無し。各点は、3つのウェルの平均、±標準偏差である。パネルA:細胞表面染色における平均画素強度。パネルB:細胞質面積当たりの細胞質スポットにおける画素強度。百日咳毒素での前処置は、mGluR7のIgG誘導型インターナリゼーションに影響を及ぼさない。つまり、IgG誘導型受容体インターナリゼーションは、受容体のcAMPシグナルカスケードに依存しない。
【0039】
siRNAの抗体仲介型細胞取込み
以下の改変を施したプロトコールに従って、実験を行った:細胞を、siRNA-Cy5(モル比1〜0.3)にコンジュゲートした67 nm一次抗体、または67 nM一次抗体と20 nM siRNA-Cy5の混合物と、37℃にて40分間インキュベートした。細胞表面一次免疫染色の検出のために使用した二次抗体をAlexa488で標識化し、全細胞一次免疫染色の検出に使用する二次抗体をAlexa532で標識化した。細胞質のTrueblueおよびhoechst染色を、ホルムアルデヒド固定化後の染色工程と置き換え、その際、サンプルを3μM Hoechstおよび2μg/ml CellmaskBlue含有PBSと室温にて15分間インキュベートした後、4%ホルムアルデヒドで室温にて15分間二次固定化を行った。
【0040】
図5は、上述したように、染色および固定化の前に、siRNA-Cy5にコンジュゲートした一次抗体、または一次抗体とsiRNA-Cy5との混合物と37℃にてインキュベートしたラット-mGluR7発現細胞の画像を示す。各列は、ウェル中の同じ視野から並行に取得した画像を含む。パネルA〜DはsiRNA-Cy5で標識化した一次抗体でのもの、パネルE〜HはsiRNA-Cy5と混合した一次抗体でのものである。
【0041】
パネルAおよびEは、trueblueおよびhoechst染色について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ405 nmで励起、ロングパス650フィルタに反射し、ショートパス568フィルタおよびバンドパス455/70フィルタを透過した発光。
【0042】
パネルBおよびFは、Cy5について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ635 nmで励起、LP650フィルタを通過し、BP690/50を透過した発光。
【0043】
パネルCおよびGは、Alexa532二次抗体を用いた一次抗体の全細胞染色について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ532 nmで励起、LP650およびショートパス568に反射し、BP586/40を透過した発光。
【0044】
パネルDおよびHは、膜透過化後のAlexa488二次抗体を用いた一次抗体の細胞表面特異的染色について選択的なフィルタ設定で取得した画像を示す:レーザ488 nmで励起、LP650に反射し、ショートパス568フィルタおよびバンドパス532/60フィルタを透過した発光。
【0045】
黒から白に至る画素強度グレースケールのレンジを、各画像の下部に示す。
【0046】
IgGは、siRNAの細胞取込みを仲介できる。siRNA-Cy5に共有結合したIgGを、mGluR7発現CHO細胞と37℃にてインキュベートした場合、IgGおよびsiRNA-Cy5の両方がインターナリゼーションされ、細胞内画分に共局在化する。IgGとsiRNAとの共有結合が無い場合、IgGのみがインターナリゼーションされる。
【0047】
実施例2:ラットmGlu7発現細胞株の作製
ラットmGlu7a受容体スプライス変異体のcDNA(Genbank:D16817)を、真核発現ベクターpcDNA3.1(+)に挿入した。このプラスミドを、5 cAMP応答性エレメント(CRE)の制御下にルシフェラーゼレポーター遺伝子を持ち、ジヒドロ葉酸還元酵素活性を欠くCHO細胞(CHO-dhfr-)に、リポフェクタミンプラスを製造元の指示書に従って用いてトランスフェクトした。限界希釈によりクローンを単離し、レポーター遺伝子アッセイにおける活性により同定した。細胞を、1μMフォルスコリンおよび0.5 mM L-AP4を含むアッセイ緩衝液で刺激した。4時間後、上清を溶菌緩衝液と交換し、ルシフェラーゼ活性を測定した。応答は、低下無しから約83%の低下にわたった。フォルスコリン仲介型ルシフェラーゼ活性の最大阻害を示すクローン細胞株を選択し、少なくとも20代継代まで一貫して良好な応答を示したものを同定した。
【0048】
全細胞免疫化のために、リポフェクタミンプラスを用いて、mGlu7の発現プラスミドで、再度、安定した細胞株を一時的にトランスフェクトし、免疫化のために液体窒素中で冷凍した。
【0049】
実施例3:全細胞免疫化
mGluR7を安定発現しているトランスフェクトCHO細胞を用い、その生存細胞を繰返し注射することによって、スイスアルビノマウスの免疫化を行った。動物が、mGluR7に対して特異的な免疫応答を示したら、速やかに脾臓細胞を取り出し、G. KohlerおよびC. Milstein (1975) “Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity” Nature 256:495-497に従って、Ag8細胞に融合させた。
【0050】
実施例4:cAMPアッセイ
ラットmGluR7受容体を安定して発現している細胞を、実験の17〜24時間前に、平らな透明底を有する黒い96ウェルプレート(Corning Costar #3904)の7.5%透析ウシ胎仔血清を有する培養培地に播種し、5%CO2および37℃にて加湿インキュベーター内でインキュベートする。培養培地を1 mM IBMXを有するクレブス・リンガー重炭酸緩衝液と交換し、30℃にて30分間インキュベートした。0.3 mM L-AP4および3μMフォルスコリンを添加する15分前に、化合物を最終アッセイ容量100μlまで添加し、30℃にて30分間インキュベートした。50μl溶菌試薬および50μl検出溶液を添加してアッセイを停止し、室温にて2時間振とうさせた。
【0051】
時間分解エネルギー転移(Time-resolved energy transfer)を、励起源としてND:YAGレーザを備えたplate::vision TRFリーダー(Evotec Technologies GmbH, ハンブルグ ドイツ)で測定する。355 nmでの励起、ならびに100 nsの遅延および100 nsのゲートでの発光において、730(帯域幅30 nm)または645 nm(帯域幅75 nm)でそれぞれ合計露出時間10秒でプレートを2回測定する。730 nmで測定したシグナルは、ルテニウムバックグラウンド、Alexaの直接励起、および対照用緩衝液(buffer control)のために、修正する必要がある。FRETシグナルは以下の通りに計算する:FRET=T730-Alexa730-P(T645-B645)(式中、P=Ru730-B730/Ru645-B645)、ここでT730は730 nMで測定されるテストウェルであり、T645は645 nmで測定されるテストウェルであり、B730およびB645はそれぞれ730 nmおよび645 nmにおける対照用緩衝液である。10μMから0.13 nM cAMPにわたる標準曲線の関数から、cAMP含量を測定する。
【0052】
図6は、IgG(黒丸)およびFAB(黒三角)フラグメントの濃度-応答曲線を示す。細胞を、3μMフォルスコリン、L-AP4のEC80、および様々な濃度のIgGまたはFABで刺激した。cAMPの細胞含量を測定し、3μMフォルスコリンのみで処置した細胞に対するcAMP含量の%として表した。全ての測定は、三重で行い、値は平均値±SEを表す。オルトステリックmGlu7アゴニズトL-AP4の活性は、IgGの添加によって完全に阻害されている。IC50は、2.4 nMと計算される。FABは、アゴニストL-AP4に対して部分的に拮抗しており(IC50:486 nM)、L-AP4活性に強く拮抗するためにはIgGの二価結合状態が必要であることを示唆している。
【0053】
実施例5:キメラ受容体の構築
キメラmGlu6およびmGlu7受容体をコードするcDNAを、交差(cross-over)PCRを用いて構築した。mGlu6/7受容体構築物は、膜貫通領域全体を含む、ラットmGluR6のN末端細胞外領域およびラットmGluR7a受容体の残りのC末端部分由来の565のアミノ酸を含む;mGluR7/6構築物は本質的に、アミノ酸576に融合点のある逆方向(reverse)キメラである。cDNAをpcDNA3.1にクローニングし、リポフェクタミンプラスを用いてCHO-dhfr-細胞に一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をポリ-D−リシンで覆われたカバースリップ上の培養培地に載せ、翌日染色した。24ウェルプレート中で培養した細胞を氷上に移し、IgGまたはIgG-Alexa488を添加し(1:100)、DMEM中で30分間インキュベートし、ウサギ抗マウスFITC抗体(1:100)を添加(1:100)する前にDMEMで2回洗浄し、氷上のまま30分間インキュベートし、先と同じ洗浄工程を2回行った後、グリセロール/PBS(1:1)を載せた。
【0054】
図7は、表示されるように野生型またはキメラ型のmGlu6またはmGlu7受容体を一時的に発現している生存CHO細胞の免疫染色を示す。細胞は、IgG-Alexa488で染色した。mGlu7受容体のN末端ドメインを有する受容体のみが、IgGによって認識され、IgGがmGlu7受容体のN末端ドメインに結合することを示唆した。図に示すのは代表的な40倍拡大画像であり、露光時間は秒数で示した。
【0055】
実施例6:IgG誘導型p44/42MAPK活性
ラットmGluR7受容体を安定して発現している細胞を、6ウェルプレートに入った培養培地に播種する。翌日、培地を2 ml栄養飢餓培地(0.1%脂肪酸非含有BSAを有するOpti-MEM)と交換する。翌日、150μl栄養飢餓培地中、表示の時間だけ37℃にて化合物で細胞を刺激する。それ以外は細胞は5分間刺激した。細胞を氷冷PBSで洗浄し、1 mMβ-グリセロリン酸、1 mM EDTA、1 mM EGTA、1μg/mlロイペプチン、150 mM塩化ナトリウム、2.5 mMリン酸ナトリウム、20 mM Tris-CI、1 mM PMSFおよび1% Triton X-100を含む150μl緩衝液で溶解し、擦り取り、氷上で超音波分解する。遠心分離後、PathScan(登録商標)サンドウィッチELISAキットを製造元の指示書に従って用いて、p44/42MAPK活性について、上清を分析する。EnVisionリーダー(Perkin Elmer)を用いて、吸光度(450 nM)を読み取る。
【0056】
図8Aは、mGlu7受容体を発現しているCHO細胞のThr202/Tyr204にあるp44/42 MAPKのレベルに対するIgGの影響を示す。p44/42 MAPKレベルは、PathScan(登録商標)サンドウィッチELISAキットを製造元の指示書に従って用いて決定した。p44/42 MAPKレベルのIgG誘導型の上昇は一時的であり、処置の5分後に最大レベルに到達し、その後急速に低下した。
【0057】
図8Bは、IgGの用量を増やせば、mGlu7受容体を発現しているCHO細胞の処置の5分後に飽和レベルのp44/42 MAPKを誘導することを示す。IgG がp44/42 MAPK 活性を誘引する作用強度は、図4に示すフォルスコリン活性のL-AP4誘導型阻害を阻害する作用強度の大きさと桁が等しい。
【0058】
図8Cは、mGlu7受容体を発現しているCHO細胞の処置後のp44/42 MAPK活性のIgG誘導型レベルの特異性を示す。IgGとは対照的に、抗6xHis IgG、オルトステリックmGlu7アゴニストL-AP4、およびアロステリックmGlu7アゴニストAMN082は、p44/42 MAPK活性の上昇を引き起こさない。p44/42 MAPK活性の有効性は、陽性対照PMAで得られるレベルに匹敵した。
【0059】
図8Dは、陽性対照PMAで得られる活性と比較した、非トランスフェクトCHO細胞のIgG処置後のp44/42 MAPK活性の不在を示し、IgGのmGlu7特異的活性を示唆する。
【0060】
実施例7:siRNA調製
オリゴリボヌクレオチド合成
ホスホロアミダイト(phosphoramidite)技術に従い、固相上で、ABI 394合成器(Applied Biosystems)を用いて、10μmolスケールでオリゴリボヌクレオチドを合成した。RNA配列情報については表1を参照のこと。合成は、制御多孔性ガラス(CPG、520Å、75μmol/gの充填量、Prime Synthesis, Aston, PA, 米国より入手)からなる固体支持体上で行った。通常のRNAホスホロアミダイト、2’-O-メチルホスホロアミダイト、ならびに補助試薬は、Proligo(ハンブルグ、ドイツ)から購入した。具体的には、以下のアミダイトを使用した:(5’-O-ジメトキシトリチル-N6-(ベンゾイル)-2’-O-t-ブチルジメチルシリル-アデノシン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-(アセチル)-2’-O-t-ブチルジメチルシリル-シチジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト)、(5’-O-ジメトキシトリチル-N2-(イソブチリル)-2’-O -t-ブチルジメチルシリル-グアノシン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、および5’-O-ジメトキシトリチル-2’-O-t-ブチルジメチルシリル-ウリジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト。2’-O -メチルホスホロアミダイトは、N4-(t-ブチルフェノキシアセチル)保護された2’-O-メチル-シチジン以外は、通常のRNAアミダイトと同じ保護基を担持していた。全てのアミダイトを、無水アセトニトリル(100 mM)に溶解し、分子ふるい(3Å)を添加した。オリゴマーの3’側にスルフヒドリルリンカーを作製するために、Glen Research(Sterling, ヴァージニア, 米国)の1-O-ジメトキシトリチル-ヘキシル-ジスルフィド、1’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイトリンカーを使用した。合成サイクルを全く改変することなく、Cy5蛍光染料を、対応するホスホロアミダイト(GE Healthcare, ミュンヘン、ドイツから入手)を用いて5'側に付着させた。5-エチルチオテトラゾール(ETT、500 mMでアセトニトリルに含有される)を活性化溶液として使用した。結合時間は6分であった。ホスホロチオエート結合を導入するために、3-エトキシ-1,2,4-ジチアゾリン-5-オン(EDITH、Link Technologies, ラナークシャイア, スコットランドから入手)含有無水アセトニトリルの100 mM溶液を使用した。
【0061】
支持体結合オリゴマーの切断および脱保護
固相合成の終了化の後、乾燥固体支持体を15 mL試験管に移し、メチルアミン含有メタノール(2M、Aldrich)で45℃にて180分間処置した。遠心分離の後、上清を新しい15 mL試験管に移し、1200μL N-メチルピロリジン-2-オン(NMP、Fluka, Buchs, スイス)でCPGを洗浄した。洗浄はメタノールメチルアミン溶液と組み合せ、450μLトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(triethylamine trihydrofluoride)(TEA-3HF、Alfa Aesar, カールスルーエ, ドイツ)を添加した。この混合液を150分間65℃にした。室温まで冷却した後、0.75 mL NMPおよび1.5 mLのエトキシトリメチルシラン(Fluka, Buchs, スイス)を添加した。10分後、沈殿したオリゴリボヌクレオチドを遠心分離により回収し、上清を捨て、1 mL緩衝液A(以下参照)中で固体を再構成した。
【0062】
オリゴリボヌクレオチドの精製
粗オリゴマーを、XTerra Prep MS C8 10x 50 mmカラム(Waters, Eschborn, ドイツ)をAKTA Explorer系(GE Healthcare)上で用いてRP HPLCで精製した。緩衝液Aは100 mM トリエチルアンモニウムアセテート(triethylammonium acetate)(Biosolve, Valkenswaard, オランダ)であり、緩衝液Bは50%アセトニトリル含有緩衝液Aを含んでいた。5 mL/分の流速を採用した。260、280および643 nmでのUVトレースを記録した。58カラム容量(CV)以内で5%Bから60%Bの勾配を採用した。適当な画分をプールし、3M NaOAc(pH=5.2)および70%エタノールで沈殿させた。
【0063】
最後に、精製したオリゴマーを、Sephadex G-25(GE Healthcare)を含むカラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより脱塩した。UV光度計(Beckman Coulter, Krefeld, ドイツ)で260 nmにおける吸光測定により溶液の濃度を決定した。アニーリングまでは、個々の鎖を、冷凍溶液として-20℃にて保存した。
【0064】
siRNAを作製するためのオリゴリボヌクレオチドのアニーリング
等モルのRNA溶液を組み合わせて、相補鎖をアニーリングした。混合液を凍結乾燥させ、適当容量のアニーリング緩衝液(100 mM NaCl, 20 mMリン酸ナトリウム、pH6.8)で再構成して、所望の濃度を得た。この溶液を、95℃の水浴に入れ、これを3時間以内に室温まで冷した。
【0065】
siRNA配列情報
センス鎖(5’--3’):

アンチセンス鎖(5’--3’):

小文字:2’OMeヌクレオチド;s:ホスホロチオエート結合;dT:デオキシチミジン
【0066】
実施例8:抗体-siRNAコンジュゲート調製
抗体のマレイミド活性:モノクローナル抗体mGluR7-CHO-1/28を、10倍モル過剰量のSMCC(スルホスクシンイミジル4-[Nマレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート)と反応させ、その後、脱塩により過剰量(未反応)の試薬を除去した。
【0067】
siRNA活性:単一デオキシチミジンに対してC6SSC6-リンカーを有するCy5標識siRNAを、TCEP(Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィン)で還元し、ジスルフィド結合を選択的に還元した。
【0068】
次に、スルフヒドリル含有siRNAを添加して、モノクローナル抗体に既に付着しているマレイミド基と反応させる。その後、siRNA上の未反応の遊離スルフヒドリルを、NEM(N-エチルマレイミド)を用いてブロックし、最終生産物を、Superdex 200 HR 10/30カラム上で、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0069】
最終的な標識比を、ナノドロップ(IgG吸着は280 nm、Cy5は646 nm、消衰係数Cy5:250’000)で決定する。
【0070】
プラスチック製品、溶液、および試薬
アッセイプレート Costar96ウェル専用光学プレート、カタログ番号3614
10x HBSS GIBCOカタログ番号14065-049
Hepes 1M溶液、GIBCOカタログ番号15630-056
BSA ウシ血清アルブミン画分V、Sigma、カタログ番号A-3059
Hoechst33258 Sigma#B-2261(ビスベンズイミド)、10 mMまでDMSOに溶解
TrueBlue塩化物 分子プローブ、カタログ番号T1323、2 mMまで1:2MeOH:DMSOに溶解
CellMask Blue DMSO中に5mg/ml、Invitrogenカタログ番号H34558
ホルムアルデヒド 4%、36.5%ストック(Fluka、カタログ番号47629)からPBSに希釈
ヤギ抗マウスAlexa488抗体:1μg/μl溶液、Invitrogenカタログ番号A11029
ヤギ抗マウスAlexa532抗体:1μg/μl溶液、Invitrogenカタログ番号A11200A
ヤギ抗マウスAlexa647抗体:1μg/μl溶液、Invitrogenカタログ番号A21235A
TritonX-100: Flukaカタログ番号93426、PBSに4%vol/volまで希釈
ヤギ血清: Sigmaカタログ番号G9023
百日咳毒素: Sigmaカタログ番号P-2980。ストック:50%グリセロール、0.5M NaCl、50 mM Tris-グリシン中に0.2 mg/ml
クレブス・リンガー Sigma# K-4002
L-AP4 Tocris# 0103
フォルスコリン Sigma# F3917
IBMX Sigma
溶菌試薬 Tris、NaCl、1.5%Triton X100、2.5%NP40、10%NaN3
検出溶液 20μM mAb Alexa700-cAMP 1:1、および48μMルテニウム-2-AHA-cAMP
培養培地 DMEM(Invitrogen番号31331)、1xHT補助剤、10%FCS
Opti-MEM Invitrogen# 11058-021
リポフェクタミンプラス Invitorogen
pcDNA3.1(+) Invitrogen
CHO-dhfr- ATCC番号CRL-9096
アッセイ緩衝液、 5 mM KCL、154 mM NaCl、2.3 mM CaCl2、5 mM NaHCO3、1 mM MgCl2、5.5 mMグルコース、5 mM Hepes、10μM IBMX、pH7.4
溶菌緩衝液 25 mM Tris、0.4 mM DTT、0.4 mM CDTA、0.2%グリセロール、0.2% TritonX-100、pH7.8
PMA ホルボール12-ミリスチン酸塩(myristate)13-酢酸塩(Sigma# P8139)
AMN082 ジベンズヒドリルエタン-1,2-ジアミンジヒドロクロライド、自家合成
PathScan(登録商標) サンドウィッチELISAキット#7315、細胞シグナリング、Beverly、MA
遊離脂肪酸BSA Sigma# A-6003-25G
【0071】
ここまで本発明の好ましい態様を示しかつ記載してきたが、本発明はこれに限定されず、以下の請求の範囲の範囲内で様々に具現かつ実施され得ることがはっきりと理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gタンパク質共役受容体のエピトープに対する抗体であって、該抗体は該受容体の細胞外N末端領域に結合し、該抗体とGタンパク質共役受容体との結合により細胞内への受容体インターナリゼーションが誘導される、抗体。
【請求項2】
前記受容体が、クラスCのGPCRに属し、好ましくは代謝型グルタミン酸受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
代謝型グルタミン酸受容体がmGluR7である、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体誘導型受容体インターナリゼーションが、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル経路に関する、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体である、請求項1〜4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
IgGである、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
ハイブリドーマ細胞株mGluR7-CHO-1/28から作製される、請求項1〜6のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体誘導型受容体インターナリゼーションが、前記受容体に関連するGタンパク質仲介型シグナル経路の活性化、好ましくは前記受容体に関連するGi共役型cAMPシグナル経路の活性化に依存しない、請求項1〜7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
薬剤としての、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体、および前記抗体に共有結合した活性化合物を含む、コンジュゲート。
【請求項11】
前記活性化合物が毒素またはsiRNA分子、好ましくはsiRNA分子である、請求項10記載のコンジュゲート。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体、または請求項10もしくは11記載のコンジュゲート、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
活性化合物を細胞内送達するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体、または請求項10もしくは11記載のコンジュゲートの使用。
【請求項14】
前記活性化合物が、前記抗体に共有結合している毒素またはsiRNA分子である、請求項13記載の使用。
【請求項15】
Gタンパク質共役受容体シグナル経路のモジュレーションに関与する疾患の治療用薬剤を製造するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項16】
前記疾患が、神経障害または糖尿病である、請求項15記載の使用。
【請求項17】
Gタンパク質共役受容体のリガンドのスクリーニング方法であって、以下の工程を含む方法:
Gタンパク質共役受容体を発現している細胞またはGタンパク質共役受容体を含む細胞調製物を、スクリーニングする化合物および請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体と接触させる工程;ならびに
前記Gタンパク質共役受容体との抗体相互作用を測定する工程であって、ここで、抗体の結合またはインターナリゼーションのレベルが、リガンド/Gタンパク質共役受容体相互作用の指標となる、工程。
【請求項18】
Gタンパク質共役受容体を安定して発現している細胞を使用する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記Gタンパク質共役受容体が代謝型グルタミン酸受容体、好ましくはmGluR7である、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
本明細書、特に上記実施例に関連して実質的に記載されている、化合物、方法および使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公表番号】特表2010−527921(P2010−527921A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507829(P2010−507829)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003689
【国際公開番号】WO2008/138536
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】