Gタンパク質共役型受容体に関連する物質および方法
本発明の発明者らは、Gタンパク質共役型受容体55(GPR55)は、ヒトの高悪性度の乳癌細胞において高度に発現しており、その発現レベルは、これらの細胞の侵襲性および転移能(例えば、骨への転移)と相関している可能性があることを示す。本発明の様々な態様で、乳癌の転移特性に関連する診断手段またはバイオマーカーが開示される。本発明はまた、乳癌の進行および拡散を阻害するための、この受容体を標的とする薬理作用物質に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、内在性カンナビノイドGタンパク質共役型受容体55(GPR55)およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカンナビノイド受容体(CB1およびCB2)の薬理作用論は十分確立されている。
【0003】
しかし、近年、CB1およびCB2受容体と相反する薬理学的特性を有する、推定上の新規なカンナビノイド受容体についての証拠が現れている。
【0004】
GPR55は、これまでは、オーファンGPCRだった。ヒトGPR55の発現は、後に、回腸、脾臓、扁桃腺、精巣、ならびに乳房組織および脂肪組織において見出され、GlaxoSmithKlineによって出願された特許で示された。GPR55との、CB1およびCB2の配列相同性は、それぞれ、たった13.5%および14.4%であることが見出された(非特許文献1;特許文献1;非特許文献2)。
【0005】
1つの最近の研究(非特許文献3)は、GPR55が、CBx作動薬または非定型カンナビノイドの血管拡張作用を媒介するという仮説の検証を追究した。当該研究は、GPR55は、非定型カンナビノイドによって活性化されるが、その血管拡張効果を媒介しないことを示した。
【0006】
別の最近の研究(非特許文献2)は、GPR55共役タンパク質をG13として同定し、低分子GTPアーゼrhoA、rac1およびcdc42の下流の活性化を見出した。著者らは、GPR55は、当該文献に記載された非CB1/CB2受容体のうちの1つについての候補であると結論付けた。
【0007】
特許文献2(Glaxo Group Limited)は、GPR55活性の修飾因子の同定に関する。修飾因子についてのいくつかのアッセイが論じられている。
【0008】
特許文献3(Astrazeneca UK Limited)は、GPR55活性のカンナビノイド−リガンド型修飾因子の同定に関する。修飾因子についてのいくつかのアッセイが論じらていれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第0,113,814号明細書
【特許文献2】国際公開第01/86305号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/07844号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sawzdargo M.、Nguyen T.、Lee D.K.、Lynch K.R.、Cheng R.、Heng H.H.Q.、George S.R.、O’Dowd B.F.、(1999).Identification and cloning of three novel human G protein−coupled receptor genes GPR52, ΨGPR53 and GPR55: GPR55 is extensively expressed in human brain.Molecular Brain Research、64、193−198
【非特許文献2】Ryberg E.、Larsson N.、Sjoegren S.、Hjorth S.、Hermansson N−O.、Leonova J.、Elebring T.、Nilsson K.、Drmota T.、Greasley P.J.、(2007).The orphan receptor GPR55 is a novel cannabinoid receptor.British Journal of Pharmacology、152、1092−1 1011
【非特許文献3】Johns D.G.、Behm D.J.、Walker D.J.、Ao Z.、Shapland E.M.、Daniels D.A.、Riddick M.、Dowell S.、Staton P.C.、Green P.、Bao W.、Aiyar N.、Yue T−L.、Brown A.J.、Morrison A.D.、Douglas S.A.、(2007). The novel endocannabinoid receptor GPR55 is activated by atypical cannabinoids but does not mediate their vasodilator effects.British Journal of Pharmacology、152、825−831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の発明者らは、GRP55がヒトの高悪性度の乳癌細胞中で発現し、その発現レベルは、これらの細胞の侵襲性および転移能と相関している可能性があることを発見した。
【0012】
転移は、原発性腫瘍(original or primary tumor)から離れた二次部位(secondary sites)への、悪性腫瘍の拡散である。原発性腫瘍の転移能を早い段階で知ることは、臨床医に、治療およびアジュバント治療における使用についての、重要な情報を与えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の様々な態様では、GPR55発現は、乳癌の転移特性に関連する診断手段またはバイオマーカーとして使用されてもよい。
【0014】
発明者らは、さらに、高悪性度の乳腺細胞の遊走は、この受容体を標的とする薬理作用物質によって改変される可能性があることを発見した。
【0015】
従って、本発明のさらなる態様は、乳癌の進行および拡散を阻害するための、当該受容体の治療標的に関する。
【0016】
乳癌の転移がどのように骨に向けられる可能性があるかについてのモデルもまた、本願明細書で開示される。この観点(骨への転移)における評価および介入は、本発明のさらなる態様の基礎を形成する。
【0017】
従って、1つの態様では、本発明は、患者から得た生物学的試料における乳癌細胞の転移能の予測、または、転移の予後の判定についての方法を提供し、当該方法は、当該細胞中のGPR55発現のレベルを評価する工程を含む。
【0018】
当該方法は、原発性腫瘍の試料(前外科的生検または術中生検(intrasurgical biopsy))を得る工程が先行していてもよい。
【0019】
より詳細に記載される通り、「発現」のレベルは、GPR55の核酸またはタンパク質のレベルのいずれかから検出されてよい。例えば、タンパク質は、細胞膜、小胞体またはゴルジ体中で、(直接結合または活性によって)検出されてもよく、または、核酸は、GPR55をコードするmRNAから、直接的または間接的に(例えば、そのmRNAに由来するcDNAを介して)検出されてもよい。
【0020】
好ましい実施態様では、当該評価は、イムノアッセイベースの試験であってもよい。例えば、標識された抗体は、イムノアッセイにおいて、細胞または細胞膜中のGPR55レベルを評価するために使用されてもよい。しかし、当該技術分野で周知の他の方法として、蛍光顕微鏡観察、ウエスタンブロット解析、m−RNAのノーザンブロット解析およびスロットブロット解析、mRNAの酵素増幅および解析、蛍光標識細胞分取等の使用も含んでいてもよい。
【0021】
1つの実施態様では、当該方法は、
(a)癌患者から得られた生物学的試料を、GPR55またはGPR55 mRNAに特異的に結合する結合剤と接触させる工程と、
(b)当該結合剤に結合したGPR55またはGPR55 mRNAの量を検出する工程と、
(c)GPR55またはGPR55 mRNAの量を所定のカットオフ値と任意に比較し、それによって当該癌細胞の転移能を判定する工程と、を含んでいてもよい。
【0022】
1つの態様では、
(a)癌患者から得られた生物学的試料を、GPR55に特異的に結合する結合剤と接触させる工程と、
(b)当該結合剤に結合したGPR55の量を検出する工程と、
(c)GPR55の量を所定のカットオフ値と任意に比較し、それによって当該癌細胞の転移能を判定する工程と、を含む方法が提供される。
【0023】
当該結合剤は、GPR55タンパク質の細胞外領域に特異的に結合してもよい。好ましくは、当該薬剤は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、および抗体のエピトープ結合断片から選択される抗体である。当該薬剤は、例えば、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、および生物発光標識で検出可能に標識されてもよい。
【0024】
別の態様では、当該方法は、個体の試料に存在する核酸分子を含む試験試料を得てから、当該試験試料中のGPR55 mRNAの量を定量し、当該試験試料中のGPR55 mRNAの量を、所定の値と任意に比較する工程を含んでいてもよい。
【0025】
試験試料中のGPR55 mRNAの量を定量する工程は、試験試料を、ストリンジェントな条件下で当該GPR55 mRNAにハイブリダイズする核酸分子に曝露する工程を含んでいてもよい。例えば、当該方法は、約30ヌクレオチドまたはそれ以上の長さのプローブを0.5M NaHPO4/7% SDS/1mM EDTA中で、65℃で使用してもよい。当該ストリンジェントな条件は、0.1% SDS/0.1×SSC中で、68℃で洗浄する工程を含んでいてもよい。
【0026】
さらに好ましくは、当該試験試料中のGPR55 mRNAの量を定量する工程には、mRNAの特異的な増幅、次いで、例えば、下記実施例に記載されたRT−qPCR解析を介した増幅産物の定量化を伴う。
【0027】
使用される、発現を評価するための方法が何であれ、定量された量は、好ましくは、細胞中のリファレンス遺伝子またはタンパク質と比較されて標準化される。このような遺伝子の選択は、当業者によって決定されてもよい。下記実施例で使用されたリファレンス遺伝子は、GAPDHである。Rybergら(2007)は、rb36B4を使用した。
【0028】
GPR55の(好ましくは標準化された)発現レベルは、対照(例えば、ヒト転移性細胞株、およびヒト非転移性細胞株)と比較されてもよい。様々な細胞株が下記実施例中で試験された。
【0029】
GPR55の発現は、CB1およびCB2と関連する可能性がある。下記の通り、CB1およびCB2の発現は、単一の細胞株に限られるが、その結果はまた、当該癌細胞株の相対的な病原力と、GPR55発現の相対的レベルとの間の相関を示した。
【0030】
本発明の方法は、乳癌の診断および、(例えば、TNMシステムまたはAJCCシステムによる)病期分類の従来の方法、ならびにHER2の存在についての試験と組み合わせて使用されてもよい。
【0031】
別の態様では、乳癌細胞の転移能の予測、または、生物学的試料中の転移の予後の判定の方法は、例えば、GPR55発現が所定の値を超える場合に、患者における乳癌のリスク、または、特に、転移のリスクもしくは可能性を診断するために使用されてもよい。
【0032】
別の態様では、当該方法は、例えば、GPR55発現が所定の値を超える場合に、化合物による治療、またはアジュバント治療についての個体の選択のために使用されてもよい。
【0033】
本発明の他の態様では、GPR55およびその発現は、特定の治療法および併用化学療法を選択し、またはモニターするためのバイオマーカーとして使用されてもよい。
【0034】
従って、1つの態様では、本発明は、患者における乳癌の進行をモニターするための方法であって、
(a)第1の時点で当該患者から得られた生物学的試料におけるGPR55発現のレベルを評価する工程と、
(b)引き続く時点で当該患者から得られた生物学的試料を使用して工程(a)を繰り返す工程と、
(c)工程(b)において検出されたGPR55発現のレベルを、工程(a)において検出された量と比較し、それによって、当該患者における癌の進行をモニターする工程と、を含む方法を提供する。
【0035】
例えば、発現レベルが徐々に増加する場合は、癌が進行しており、一方、発現レベルが一定のままであるか、または時間と共に減少する場合は、癌は進行していない可能性があるものとして特定される。
【0036】
好ましい実施態様では、当該方法は、下記のように実施される:
(a)所定時間内に第1の時点で患者から得られた生物学的試料と、GPR55に特異的に結合する結合剤とを接触させ、
(b)当該試料中において、当該結合剤と結合したポリペプチドの量を検出し、
(c)引き続く時点で当該患者から得られた生物学的試料を使用して、工程(a)および(b)を繰り返し、
(d)工程(c)において検出されたポリペプチドの量と、工程(b)において検出された量とを比較し、それによって、当該患者における癌の進行をモニターする。当該ポリペプチドの量が所定時間で増加している場合は癌は進行しており、一方、当該ポリペプチドの量が一定のままであるか、または時間と共に減少している場合は癌は進行していない。
【0037】
当該方法は、所定期間を通じて、患者における転移のリスクをモニターするために使用されてもよい。
【0038】
当該方法はまた、治療処置を継続するべきかどうかを決定するために使用されてもよく、または、患者が受けている転移の抗癌治療の有効性をモニターするために使用されてもよい。
【0039】
本願明細書に記載された診断方法、予後診断方法、および他の方法は、検査キットの使用によって実施されてもよく、このようなキットは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0040】
従って、本発明は、例えば、試料中のGPR55 mRNAの存在または量を測定するための、上記の診断方法、または予後診断方法の全てを評価または援助するための検査キットを提供する。当該キットは、
(a)GPR55のヌクレオチド配列の少なくとも30の近接するヌクレオチドを含む核酸分子と、
(b)試料中のGPR55 mRNAへの核酸分子の結合を検出するための手段と、を含む。
【0041】
当該核酸は、ノーザンブロットもしくは他のブロット解析によってmRNAを直接的に解析するもの、または酵素増幅およびmRNAの解析において使用できるもの(例えば、プライマー)であってもよい。
【0042】
他の態様では、検査キットは、
(a)GPR55に選択的に結合する抗体と、
(b)GPR55への抗体の結合を検出するための手段と、を含んでいてもよい。
【0043】
いずれの場合であっても、当該キットは、ヒト転移性細胞株、およびヒト非転移性細胞株からなる群から選択される細胞を含む対照試料を含んでいてもよい。
【0044】
当該抗体は、蛍光顕微鏡観察、ウエスタンブロット解析、蛍光標識細胞分取、または全ての他のイムノアッセイにおいて有用なものであってもよい。
【0045】
本願明細書における開示を踏まえると、GPR55の阻害は、乳癌の治療において有用である可能性があることを見出すことができる。
【0046】
従って、本発明のさらなる態様は、患者における乳癌の治療方法における使用のためのGPR55阻害剤を含む組成物を提供する。当該患者は、上記のように特定された者であってもよい。
【0047】
本発明はまた、患者における乳癌の治療方法を提供し、当該方法は、腫瘍とGPR55阻害剤とを接触させる工程を含む。
【0048】
本発明はまた、乳癌の治療のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用を提供する。
【0049】
「患者」は、哺乳類、好ましくはヒトである。
【0050】
「GPR55阻害剤」は、いくつかの方法によって、その効果を達成できる。例えば、このような薬剤は、
(a)例えばsiRNAまたは本願明細書に記載された他の方法を介し、容易に入手できる配列情報を使用してGPR55の発現を減少させることができ、
(b)受容体に直接的に拮抗でき、または受容体の脱感作もしくは受容体の分解を増加させることができ(例示的な拮抗薬は本願明細書に記載される)、
(c)GPR55と、その内在性リガンド(例えば、実施例に記載のリガンド)との間の相互作用を(好ましくは、GPR55に直接的に結合することによって)減少させることができ、
(d)例えば、Gタンパク質の共役を遮断することにより、GPR55に媒介された細胞内シグナルを減少させることができ、かつ/または、
(e)内在性リガンド結合について内在性のGPR55と競合することができる。
【0051】
好ましい阻害剤は、GPR55に対して産生された中和抗体であってもよい。このような抗体の使用は、本発明の1つの特徴を示す。
【0052】
他の阻害剤としては、天然または合成の拮抗薬(例えば、カンナビジオール)が挙げられる。
【0053】
非天然型阻害剤が好ましい可能性がある。例えば、拮抗薬は、GPR55結合親和性を維持しつつ、高度に特異的な結合および治療用途のために最適化されてもよい。本発明の阻害剤は、その自然環境から、実質的に純粋もしくは均一な形態で、または、元々の種に由来する他の生物学的物質を含まずに、もしくは実質的に含まずに単離および/または精製されて提供されてもよい。本願明細書で使用される場合、用語「単離される」とは、これらの可能性の全てを含む。
【0054】
さらに、このような阻害剤の薬剤的に許容できる活性誘導体、およびその使用は、本発明の範囲内である。このような誘導体の例としては、塩、溶媒和化合物、アミド、エステル、エーテル、N−オキシド、化学的に保護された形態、およびそのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
好ましくは、当該GPR55阻害剤は特異的なGPR55阻害剤である。
【0056】
特異的なGPR55阻害剤は、例えば、CB1受容体またはCB2受容体に対するよりも大きな阻害能で、GPR55受容体を優先的に標的とするものである。
【0057】
本願明細書で使用される用語「治療(treatment)」または「治療(therapy)」とは、患者における乳癌の重症度の軽減が意図されるGPR55阻害剤の全ての投与を指し、疾病の発症のリスクを有する個体、またはその個体における疾病の発症を示す症状を有する個体における疾病の治癒、当該疾病の症状の軽減、および疾病の発症の予防または抑止が意図される治療を含む。
【0058】
好ましい治療は、原発性乳癌の転移を最小限にするもの等であってもよく、すなわち、本発明の方法、使用および組成物は、乳癌の転移の治療および/または予防のために適用されてもよい。
【0059】
下記の通り、相対的に高いGPR55の発現を有する細胞株において、内在性カンナビノイド、アナンダミド(AEA)等の推定上のGPR55作動薬は、走化性因子として作用した。遊走は、GPR55拮抗薬であるCBDによる前処理によって阻害されることを見出した。
【0060】
従って、本発明は、乳癌の転移を阻害する方法を提供し、当該方法は、腫瘍または当該腫瘍に由来する転移と、GPR55阻害剤とを接触させる工程を含む。乳癌の転移を阻害するためのGPR55阻害剤の使用、および、この目的のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用もまた、提供される。
【0061】
別の好ましい治療は、骨への原発性乳癌の転移を最小限にするもの等であってもよく、すなわち本発明の方法、使用および組成物は、転移性腫瘍細胞の走化作用/骨への遊走の治療および/または予防のために適用されてもよい。
【0062】
乳癌の転移は、骨組織中に位置することがある。本願明細書中のデータは、内在性カンナビノイドが骨中で産生され、これらが骨への腫瘍細胞の転移についての走化性因子として作用できることを示す。これは、高悪性度の転移性乳癌において上方制御されるGPR55受容体の活性化を介すると考えられる。
【0063】
従って、本発明は、骨への乳癌の転移を阻害する方法を提供し、当該方法は、腫瘍または当該腫瘍に由来する転移と、GPR55阻害剤とを接触させる工程を含む。乳癌の骨への転移を阻害するためのGPR55阻害剤の使用、および、この目的のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用もまた提供される。
【0064】
本発明は、さらなる態様において、上記の全ての治療方法および阻害方法(例えば、乳癌の転移の阻害および/または転移性腫瘍細胞の走化作用もしくは骨への遊走の阻害)において使用できる物質についてのスクリーニング方法を提供し、当該方法は、一般的に、GPR55受容体への当該物質の結合、またはGPR55の発現を阻害するその能力を評価する工程を含む。
【0065】
好ましい態様では、当該方法は、
(i)GPR55を含む細胞または膜を、試験化合物に所定の時間の間曝露する工程と、
(ii)GPR55の活性または発現を検出する工程と、
(iii)当該化合物で処理された細胞または膜中のGPR55の活性または発現と、当該化合物で処理されていない対照細胞もしくは対照膜中で見出された活性または発現とを比較する工程と、を含んでいてもよく、
本発明の方法および治療における使用について有効性を有する化合物は、当該対照に対して、GPR55の活性を低下させ、またはGPR55の発現を低下させる。
【0066】
1つの実施態様では、上記の全ての治療方法および阻害方法において使用できる物質を産生する方法は、
(i)上記スクリーニング方法の使用により物質を同定する工程と、
(ii)当該物質を産生する工程と、を含む。
【0067】
本発明の方法、使用および組成物の他の好ましい態様または実施態様は、これから論じられる。
【0068】
本願明細書で開示される、または本願明細書で開示される方法を使用して同定されるGPR55阻害剤は、上記の本発明の医薬品および他の使用のための組成物中に存在してもよく、または当該組成物中に処方されてもよい。
【0069】
本発明の医薬組成物は、活性な化合物(すなわち、GPR55阻害剤)に加えて、薬剤的に許容できる賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者に周知の他の物質を含んでいてもよい。このような物質は、無毒性でなければならず、有効成分の有効性を妨げてはならない。当該担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存するだろう。
【0070】
従って、本発明のさらなる態様は、上記治療のための薬物を作製する方法を提供し、当該方法は、GPR55阻害剤の使用、例えば、このような阻害剤を、薬剤的に許容できる成分と混合することによって、投与に適した医薬組成物を産生する工程を含む。
【0071】
GPR55阻害剤は、単独または他の治療と組み合わせて、同時にまたは経時的に投与されてもよい。
【0072】
骨への乳癌の転移を阻害するための本発明の方法は、例えば、エストロゲンレベルを低下させる医薬による治療と組み合わせて使用されてもよい。
【0073】
例えば、ハーセプチンの使用と同様に、増加したレベルのGPR55発現について陽性であると検査された患者は、従来の化学療法、例えば、ドキソルビシンおよびシクロホスファミドによる治療によって、パクリタキセルおよびGPR55阻害剤(および、当該患者がHER−2陽性である場合は、任意にトラスツズマブ)の後に、またはこれらの前に処置されてもよい。
【0074】
疾病の再発および進行を防ぐための手術後の乳癌についてのアジュバント治療は、本発明に特に包含され、すなわち、GPR55阻害剤は、治療において使用されてもよく、当該治療は、外科的介入(例えば、乳房切除)を含む。当該外科的介入は、当該GPR55阻害剤の使用に先行し、または当該使用に続き、それ自体は、請求項に係る発明の一部を形成しなくてもよい。
【0075】
従って、ホルモン療法、化学療法、放射線療法、または温熱療法と組み合わせた併用療法もまた包含され、任意に外科的介入と組み合わせたものが含まれる。乳癌のための他の治療は当該技術分野で周知であり、それらの使用自体は本発明の一部を形成するものではない。それでも、GPR55発現の阻害と組み合わせたこのような治療の使用は、本発明の一部を形成する。
【0076】
本発明の関連する態様によれば、GPR55阻害剤、またはこれを含む組成物は、個体に投与されることが意図される。これは、全身性または局所性であってもよい。投与は、好ましくは、「治療的有効量」での投与であり、これは、患者に、例えば乳癌の減少、寛解、または退縮という有益性を示すのに十分なものである。
【0077】
従って、本発明のさらなる態様では、上記治療方法は、治療が必要な患者に、有効量のGPR55阻害剤を投与する工程を含んでいてもよい。
【0078】
投与される実際の(有効な)量、ならびに投与の速度および時間経過については、特定の被験者(例えば、ヒト患者または動物モデル)における疾病の重症度、および当該被験者の全体の症状を考慮し、最終的には医師の裁量である。適した用量の範囲は、典型的に、0.01〜20mg/kg/日、好ましくは、0.1〜10mg/kg/日の範囲である。
【0079】
本発明の阻害剤としてのGPR55に対して産生された抗体の使用は、25mg〜5000mgを、注射可能な形態で、週1回、週2回または週3回の量(または乳癌の重症度に応じてより多くの回数)でのその抗体の投与を伴ってもよい。あるいは、徐放デバイスを使用し、患者に最適な用量を与えてもよく、その場合は反復投与の必要をなくせる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】乳癌細胞株中でのGPR55の相対的な発現。T47DおよびLNCapについては、n=1であるため、統計検定は行うことができず、S.E.Mを算出できなかった。全ての他の細胞株について、n=3である。MDA−MB231については、これらの値を100%として設定したため、エラーバーを示していない。ns=有意でない。*=MDA−MB231と比較して、P<0.05。統計解析は、Friedman 一元配置ANOVA、およびDunns post検定によって行った。
【図2】NB1に対する、乳癌細胞株中のCB1の発現。n/d=CB1 cDNAは検出されなかった。NB1については、これを100%と設定したため、S.E.Mは示していない。
【図3】希釈されていないHL60 cDNA中のCB2 cDNAの濃度に対する、乳癌および前立腺癌の細胞株中のCB2発現。n/d=CB2 cDNAが検出されなかった。
【図4】平均DMSO媒体の遊走に対する、血清飢餓腫瘍細胞へのFBSの化学誘引物質の効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。**=P<0.01、対応ノンパラメトリックt検定を使用して検定した。同じ培養フラスコおよび継代数からの細胞を含む全てのウェルでの、1つのボイデンチャンバーアッセイから得られた結果。
【図5】対照に対する、細胞遊走へのFBSおよびO−1602の効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、3つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。**=P<0.01、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。FBS対O−1602は、有意ではなかった(図示していない)。
【図6】媒体対照と比較した、腫瘍細胞の遊走に対するFBSおよびJWH015の効果を測定するために使用したボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、3つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。***=P<0.001、**=P<0.01、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。FBS対JWH015、有意差なし(図示していない)。
【図7】媒体対照と比較した、腫瘍細胞の遊走に対するFBSおよびアナンダミド(AEA)の効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、3つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。***=P<0.001、**=P<0.01、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。FBS対AEA、有意でない(図示していない)。
【図8】媒体対照と比較した、腫瘍細胞の遊走に対するFBSおよびCBDの効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、2つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。*=P<0.05、ns=有意でない、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。
【図9】ボイデンチャンバー遊走アッセイ。CBD(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ遊走したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3〜4)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図10】Cultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ。CBD(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ浸潤したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3)を示す。*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図11】ボイデンチャンバー遊走アッセイ。LPI(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ遊走したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3〜4)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図12】ボイデンチャンバー遊走アッセイ。CBD(1μM)と組み合わせたLPI(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ遊走したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3〜4)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図13】GPR55の低い自然レベルの発現を示す(図1に示される)MCF7細胞を用いたCultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ。GPR55を形質移入されたMCF7細胞がFBSへ浸潤した一方、空ベクターを形質移入された細胞は浸潤しなかったことを示すヒストグラム。CBDは、GPR55過剰発現細胞中で、FBSに誘導される浸潤を有意に減弱した。
【図14】GPR55の低い自然レベルの発現を示す(図1に示される)MCF7細胞を用いたボイデンチャンバー遊走アッセイ。GPR55を過剰発現するMCF7細胞もまた、FBSへ遊走した一方、空ベクターを形質移入された細胞は遊走しなかった。GPR55過剰発現細胞において、FBSに誘導された遊走は、1μM LPIとのプレインキュベーションによって有意に促進され、GPR55に対するsiRNAを使用すると完全に消滅した。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=2)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図15】ヒト M−CSF−依存性マクロファージを、RANKLの存在下で7日間培養し、次いで、2−AGまたはアナンダミドで、さらに5日間処理した。媒体(0.1% DMSO)対照±SEMの%として表わされた、破骨細胞の培養液中のF−アクチンリング数(n=4〜7の実験、それぞれ5回繰り返した)。**対照と比較したP<0.01、ANOVAおよびDunnettの多重比較検定。
【図16】ヒト破骨細胞のLPS処理後の、2−AG(A)およびアナンダミド(B)のレベル。細胞をPBS中で洗い、90分間、200μg/ml LPSで処理した。値は、3人の別々の提供者からの、平均値±SEMを示す。対照およびLPS処理細胞中の2−AGのレベルには、有意差がなかった(Studentの対応t検定)。アナンダミドのレベルは、2つの対照試料において検出不可能であり、これは統計解析を妨げた。(C)PTHで処理されたMG−63細胞中の2−AGレベル。細胞を、40nMまたは100nMのPTHにおいて示された時間で処理した。当該結果は、対照の%として表わされ、平均値±SEMである(n=2〜4の実験、それぞれについて2回測定した)。**対照と比較したP<0.01、ANOVAおよびDunnettの多重比較検定。
【発明を実施するための形態】
【0081】
(定義および詳細な方法)
本発明の他の態様および、本願明細書で使用される定義について、これからさらに詳細に論じられる。
【0082】
(GPR55受容体の核酸)
hGPR55は、EMBL受入番号BC032694である。参照の便宜のため、複写物が本願明細書に添付される。
【0083】
(GPR55 mRNAおよび発現の評価)
GPR55の発現の評価方法は、例えば、Ryberg(2007)の記載、または下記実施例に記載されたような、当該技術分野における従来の方法であってもよい。
【0084】
(GPR55受容体の作動薬および拮抗薬)
GPR55受容体に対して作動薬として作用する幅広い範囲のカンナビノイドが公知である。これらは、AEA等の内在性カンナビノイドおよびTHC等の大麻の成分を含む。O−1602およびCP55940等の自然に存在するカンナビノイドの合成誘導体もまた、作動薬として作用することが見出された。
【0085】
カンナビジオール(CBD)もまた大麻の成分であり、GPR55拮抗薬として同定された。
【0086】
表1は、これらの化合物のうちのいくつか、およびその効果の概略を示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(新規なGPR55阻害剤の同定)
新規な薬物の同定を導く医薬品の研究は、リード化合物が見出される前および後でさえも、非常に多数の候補物質のスクリーニングを伴う可能性があることが周知である。
【0089】
特に、結合アッセイ、拮抗薬の効力、およびGPR55のGタンパク質の共役に対する「遮断薬」の活性は、(本願明細書に記載される新規な方法および応用における使用のために)、例えば、Ryberg(2007)によって記載された従来の方法によって評価され、与えることができる。化合物はまた、ERKリン酸化アッセイ(Okaら、2008)を使用して同定できる。例示的な方法は、下記の通りである。
【0090】
(放射性リガンド結合アッセイ)
放射性リガンド結合は、5mgの膜タンパク質を、50nM [3H]−(−−)−シス−3−[2−ヒドロキシ−4−(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]−トランス−4−(3−ヒドロキシプロピル)シクロヘキサノール(CP55940)(Tocris、米国、ミズーリ州、エリスビル)、[3H]−SR141716(アマシャム、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)、または[3H]−R(ρ)−[2,3−ジ−ヒドロ−5−メチル−3−[(モルフォリニル)メチル]ピロロ[1,2,3−de]−1,4−ベンゾ−オキサジニル]−(1−ナフタレニル)−メタノン−メシル酸塩(WIN55,212−2)(アマシャム)、十分量のバッファー(50mM トリス−HCl、5mM MgCl2、50mM NaCl、pH 7.4、0.1% ウシ血清アルブミン(BSA))を含む96ウェルプレートの各ウェルに加え、各ウェルの総容積を200μlにすることによって開始する。非特異的結合を、10μM CP55940(Tocris)、SR141716およびWIN55,212−2(Tocris)の存在下で定量した。当該膜を、30℃で90分間インキュベーションし、次いで、氷冷した洗浄バッファー(50mM トリス−HCl、5mM MgCl2、50mM NaCl、pH 7.4)を加えることによって反応を停止し、次いで、Printed Filtermat B ガラス繊維フィルター(Wallac、フィンランド、トゥルク)(0.05% ポリエチレンイミン(PEI)処理した)に通し、Micro 96 Harvester(Skatron Instruments、ノルウェー、リール)を使用して真空下で急速濾過した。当該フィルターを30分間、50℃で乾燥し、次いで、パラフィンシンチラントパッドを当該フィルター上で融解させ、結合放射活性を1450 Microbeta Trilux(Wallac)シンチレーションカウンタを使用して定量した。
【0091】
([35S]−GTPgS結合アッセイ)
[35S]−グアノシン50−[g−35S]−三リン酸(GTPgS)結合アッセイを、0.01% BSA(脂肪酸を含まない)(シグマ、米国、ミズーリ州、セントルイス)、10mM グアノシン50−二リン酸塩(GDP)(シグマ)、100mM ジチオスレイトール(DTT)(シグマ)および0.53nM [35S]−GTPgS(アマシャム)と共に0.025μg/μlの膜タンパク質を含む膜バッファー(100mM NaCl、5mM、1mM EDTA、50mM HEPES、pH 7.4)中で、最終量を200μlとし、30℃で、45分間行った。非特異的結合を、20μMの未標識のGTPgS(シグマ)の存在下で定量した。当該反応を、氷冷した洗浄バッファー(50mM トリス−HCl、5mM MgCl2、50mM NaCl、pH 7.4)を加えることによって停止し、次いで、真空下で、Wallac GF/B ガラス繊維フィルターに通して、セルハーベスター(Skatron)を使用して、急速濾過した。当該フィルターを、30分間、50℃で乾燥させ、次いで、パラフィンシンチラントパッドを当該フィルター上で融解させ、結合放射活性を、microbeta シンチレーションカウンタ(Wallac)を使用して定量した。拮抗薬の効力を、実験の当日に実験的に定量されたCP55940のEC80濃度に対して定めた。データを、式 y=A+((B−A)/1+((C/x)^D)))および推測されるEC50(Aは、非特異的結合量、Bは全結合量、CはIC50、Dは傾き)を使用して適合させた。
【0092】
([35S]−GTPgS結合アッセイにおけるペプチドおよび抗体の遮断)
[35S]−GTPgS結合アッセイを、上記のように、G−タンパク質サブユニットGα13、GαiおよびGαsについてのペプチドまたは抗体を含む、または含まない膜のさらなるプレインキュベーションと共に、15分間、30℃で行った(Santa Cruz Biotechnology、米国、カリフォルニア州、サンタクルーズ)。データを対応t検定を使用して分析した(**Po0.05;***Po0.01)。
【0093】
この態様および他の態様において、物質(推定上の拮抗薬)は、例えば、現在当該技術分野で周知のもの等(例えば、Newton(1997)Expert Opinion Therapeutic Patents、7(10):1183−1194を参照)のコンビナトリアルライブラリーの生成物として与えられてもよい。
【0094】
基本的に、本願明細書に記載されたスクリーニング方法は、当該技術分野で周知のもの等の高処理スクリーニング系と同様に使用されてもよく、結合パートナーに基づく。例えば、国際公開第200011216号パンフレット(Bristol−Myers Squibb)を参照。これは、特異的な核酸またはアミノ酸の配列が入手可能な分子標的を調節する可能性がある試験化合物の評価のための、迅速な、高処理スクリーニングを可能にする。国際公開第200016231号パンフレット(Navicyte)には、吸収等の1つ以上の生物学的利用率の特性による化合物ライブラリーのスクリーニング方法(このようなスクリーニングは、受容体結合ベースのスクリーニングに加えて、またはその代替法として使用されてもよい)について記載されている。米国特許第6027873号明細書(Genencor Intl.)には、分析のために試料を保持する方法、およびその装置が開示されている。米国特許第6007690号明細書(Aclara Biosciences)には、高処理スクリーニング系および他の用途において使用されてもよい集積マイクロ流体デバイスが記載されている。他の高処理スクリーニング系は、例えば、独国特許出願公開第19835071号明細書(Carl Zeiss;F Hoffman−La Roche)、国際公開第200003805号パンフレット(CombiChem)および国際公開第200002899号パンフレット(Biocept)に記載されている。
【0095】
本発明における使用のための新規な化合物(特に、GPR55拮抗薬)はまた、模倣薬の設計のために使用されてもよい。これは、活性な化合物の合成が困難または高価である場合、または当該化合物が特定の投与方法に適していない場合に望ましい可能性がある。所定の標的特性を有する化合物からの模倣薬の設計において共通して採用されるいくつかの工程がある。最初に、標的特性の特定において重大な、かつ/または重要な化合物の特定の部分が特定される。当該化合物の活性な領域を構成するこれらの部分または残基は、その「ファルマコフォア」として公知である。一旦ファルマコフォアが見出されると、その構造は、その物性(例えば立体化学、結合、大きさ、および/または電荷)に従い、様々な情報源、例えば、分光学的技術、X線回折のデータおよびNMRからのデータを使用してモデリングされる。三次元構造が特定されてもよい。計算解析、類似性マッピング(これは、原子間の結合ではなく、ファルマコフォアの電荷および/またはボリュームをモデリングする)および他の技術を、このモデリング工程において使用できる。次いで、ファルマコフォアを模倣する化学基を移植できる鋳型分子が選択される。当該鋳型分子およびこれに移植された化学基は、模倣薬を容易に合成できるように簡便に選択でき、薬理学的に許容できる傾向にあり、in vivoでは分解しない一方、リード化合物の生物学的活性を保持する。
【0096】
本発明のスクリーニング方法は、GPR55を自然に発現しやすい細胞を利用してもよい。
【0097】
GPR55を自然に発現しにくい細胞を使用することも可能である。ただし、このような細胞は、GPR55をコードする発現ベクターで形質転換される。このような細胞は、本発明の使用において好ましい試験細胞を示す。これは、動物細胞または原核細胞でさえも、ヒト GPR55を発現し、従って、ヒト乳癌の治療における使用のための候補薬物の有効性を試験するための良い細胞モデルとなるように形質転換される可能性があるためである。
【0098】
国際公開第01/86305号パンフレット(Glaxo Group Limited)は、GPR55活性の修飾因子の同定に関する。国際公開第2004/07844号パンフレット(Astrazeneca UK Limited)は、GPR55活性のカンナビノイド−リガンド型修飾因子の同定に関する。修飾因子についてのいくつかのアッセイは、これらの文書に記載され、これらの文書の開示は、阻害剤の提供または試験に関連する限り、本願明細書に特に組み込まれる。
【0099】
一般的に言えば、当業者は、ベクターを構築し、スクリーニングを容易にするために、細胞または細胞株中のGPR55の組み換え遺伝子発現のための手順を設計することが十分にでき、様々な同定方法の実施態様における、このような細胞および細胞株の使用は、本発明の1つの態様を形成する。適したベクターは、プロモーター配列、転写終結コドンの断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適切な他の配列等の、適切な制御配列を含むように選択または構築できる。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:第2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press or Current Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら 編集、John Wiley & Sons、1992を参照。
【0100】
本願明細書に記載されたスクリーニング方法はまた、GPR55を含む細胞膜、または単離された可溶性GPR55の使用に基づいていてもよい。このような膜は、好ましくは、上記の細胞に由来する。
【0101】
本発明のスクリーニング方法における使用のための細胞は、当該方法がin vivoベースの試験である場合、実験動物(例えば、マウスまたはラット)内に含まれていてもよい。あるいは、当該細胞は、(ex vivoベースの試験における)組織試料中にあってもよく、または、当該細胞は、培養液中で培養されてもよい。このような細胞は、機能的なGPR55を発現しなければならず、または、これを発現するように誘導されてもよいことが理解されるだろう。
【0102】
本発明の組成物は、いずれかの適した経路および投与手段のために処方されてもよい。薬剤的に許容できる担体、または希釈剤としては、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下等)または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内等)投与に適した処方中で使用されるものが挙げられる。当該処方は、便宜に単位投与形態中にあってもよく、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。このような方法は、有効成分と、1つ以上の副成分を構成する担体とを結合させる工程を含む。一般的に、当該処方は、有効成分と、液状担体または細かく割られた固形担体または両方とを、均一に、かつ密接に結合させ、次いで、必要であれば、その生成物を成形することによって調製される。
【0103】
固形組成物のために、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム等の従来の無毒性固形担体を使用してもよい。活性な化合物(デキサメタゾン結合の阻害剤)を、例えば、ポリアルキレングリコール、アセチル化されたトリグリセリド等を担体として使用して、座剤として処方してもよい。液体の薬剤的に投与可能な組成物は、例えば、上記の活性な化合物、および担体(例えば、水、生理食塩水、水溶性のブドウ糖、グリセロール、エタノール等)中に、任意の配合剤(pharmaceutical adjuvant)を溶解、分散等し、それによって、溶液または懸濁液を形成することによって調製される。
【0104】
このような投与形態を調製する実際の方法は、当業者に公知、または明白である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、第15版、1975を参照)。投与される組成物または処方は、いずれの場合においても、治療されている患者の症状を軽減するのに効果的な量の活性な化合物を含む。
【0105】
無毒性担体で調整した0.25〜95%の範囲の有効成分を含む投与形態または組成物を調製してもよい。
【0106】
経口投与のために、薬剤的に許容できる無毒性の組成物は、いずれかの通常使用される賦形剤(例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム等)の取り込みによって形成される。このような組成物は、溶剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、徐放製剤等の形態をとる。このような組成物は、1%〜95%、さらに好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%の有効成分を含んでいてもよい。
【0107】
非経口投与は、一般的に、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射によって特徴付けられる。注射剤は、従来の形態(溶液または懸濁液のいずれかとして)、注射前に液体中の溶液もしくは懸濁液にするのに適した固形形態、または乳剤として調製できる。適した賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等である。
【0108】
近年、非経口投与のために考案されたアプローチは、一定レベルの投与量が維持される、徐放製剤または持続放出製剤の埋め込みを使用する。例えば、米国特許第3,710,795号明細書を参照。
【0109】
このような非経口組成物(parental composition)に含まれる活性な化合物の割合は、その特定の性質、および当該化合物の活性および患者の要求に高度に依存する。しかし、溶液中の0.1%〜10%の有効成分の割合が使用でき、組成物が、上記の割合に引き続いて希釈される固形物である場合はさらに高くなるだろう。好ましくは、当該組成物は、溶液中に0.2〜2%の活性薬剤を含む。
【0110】
静脈内、皮膚または皮下の注射について、有効成分は、パイロジェンを含まず、適したpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容できる水溶液の形態であるだろう。当業者は、例えば、等張の媒体(塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、乳酸リンゲル注射剤等)を使用して、適した溶液を十分に調製できる。保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加剤は、必要であれば含まれていてもよい。
【0111】
上記阻害方法は、例えば、研究目的、または他の理由のために、原則として、in vitroで行われてもよい。
【0112】
所望であれば、投与される医薬組成物はまた、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラート、オレイン酸トリエタノールアミン等)の少量の無毒性補助物質を含んでいてもよい。
【0113】
本願明細書に記載される通り、GPR55および特に細胞外領域に特異的な抗体は、診断上および予後診断上の有用性を有し、当該技術分野で公知の方法によって得られ、または与えられてもよい。
【0114】
本発明の抗体は、動物に抗原を注入することによって、ポリクローナル血清として産生してもよい。好ましいポリクローナル抗体は、当該技術分野で公知の技術を使用して、抗原を動物(例えば、ウサギ)に接種することによって産生されてもよい。当該抗原は、(グリコシル化された形態またはグリコシル化されていない形態の)全GPR55タンパク質、またはその断片であってもよい。
【0115】
あるいは当該抗体は、モノクローナルであり、マウスにおいて産生されていてもよい。従来のハイブリドーマ技術が、抗体を産生するために使用されてもよい。本発明のモノクローナル抗体を産生するために使用される抗原は、(グリコシル化された形態またはグリコシル化されていない形態の)全GPR55タンパク質またはその断片であってもよい。
【0116】
当該抗体は、γ−免疫グロブリン(IgG)であることが好ましい。
【0117】
抗体の可変部が、抗体の特異性を定め、そのため、この領域は、本発明の抗体の機能的誘導体において保存されなければならないことが理解されるだろう。可変領域を超えた領域(C領域)は、配列において相対的に一定である。本発明の抗体の特徴部は、VH領域およびVL領域であることが理解されるだろう。CH領域およびCL領域の正確な性質は、全体的に見ると、本発明にとって重要ではないことがさらに理解されるだろう。実際は、本発明の好ましい抗体は、非常に異なるCH領域およびCL領域を有していてもよい。さらに、下記でより完全に論じられる通り、好ましい抗体の機能的誘導体は、C領域を含まない可変領域を含んでいてもよい(例えば、scFV抗体)。
【0118】
抗体の誘導体は、ポリクローナル混合物中のモノクローナル抗体または特異的な抗体と75%の配列同一性、さらに好ましくは90%の配列同一性を有していてもよく、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。ほとんどの配列の変異性が、フレームワーク領域(FRs)中で生じていてもよい一方で、抗体のCDRsの配列、およびその機能的誘導体はほとんど保存されていることが理解されるだろう。
【0119】
本発明の第7の態様のいくつかの好ましい実施態様は、可変領域および定常領域の両方を有する分子に関連する。しかし、定常部を全く含まず抗体の可変部を基本的に含む抗体断片(例えば、scFV抗体)もまた、本発明に包含されることが理解されるだろう。
【0120】
1つの種中で生じた抗体は、異なる種を治療するために使用される場合、いくつかの重大な欠陥を有することが知られる。例えば、マウスの抗体がヒトにおいて使用される場合、当該抗体は、血清中で短い循環半減期を有する傾向にあり、治療されている患者によって、異種タンパク質として認識される。これは、不必要なヒト抗マウス(またはラット)抗体反応の発生をもたらす。これは、特に、抗体の頻繁な投与が要求される場合に、その排除を促進し、その治療効果を遮断し、過敏反応を誘導する可能性があるため、厄介である。従って、ヒト治療における使用のための好ましい抗体(非ヒト由来の抗体である場合)はヒト化される。
【0121】
モノクローナル抗体は、非ヒトmAbsの産生を通常伴うハイブリドーマ技術によって産生される。当該技術によって、ほぼ全ての特異性を有するげっ歯類のモノクローナル抗体を産生できる。従って、本発明の好ましい実施態様では、このような技術を、GPR55に対するモノクローナル抗体を開発するために使用してもよい。このような抗体は、治療的に有用であるが、このような抗体は、(上記の通り)ヒトにおける理想的な治療薬ではないことが理解されるだろう。理想的には、ヒト モノクローナル抗体は、医薬用途において好ましい選択であるだろう。しかし、従来の細胞融合技術を使用したヒトmAbsの産生は、現在まであまりうまくいっていない。ヒト化の問題は、非ヒト(例えば、げっ歯類)mAbs由来のV領域配列、およびヒト抗体由来のC領域(理想的には、V領域由来のFRs)配列を使用する抗体の設計によって、少なくとも部分的に取り組まれる可能性がある。得られる「設計された」mAbsは、その由来であるげっ歯類のmAbsよりも、ヒトにおいて免疫原性が少なく、そのため、臨床使用について、より適している。
【0122】
ヒト化された抗体は、キメラのモノクローナル抗体であってもよく、これは、組み換えDNA技術を使用して、げっ歯類の免疫グロブリンの定常部が、ヒト抗体の定常部に置き換えられる。次いで、キメラのH鎖およびL鎖の遺伝子は、完全にグリコシル化された抗体を産生するために、適した制御因子を含む発現ベクターにクローニングされ、哺乳類細胞に導入されてもよい。この工程において適切なヒトH鎖のC領域遺伝子を選択することによって、抗体の生物学的活性は、あらかじめ定められる可能性がある。このようなキメラ抗体は、エフェクター機能を活性化する能力を、特定の医薬用途について、目的に合わせることができ、当該キメラ抗体が誘導する抗グロブリン反応を低下させる点で、非ヒトのモノクローナル抗体よりも優れている。
【0123】
このようなキメラ分子は、本発明の乳癌の治療にとって好ましい薬剤である。RT−PCRは、ヒト領域を有するmAbのキメラ体を構築するためにクローニングされ使用される好ましいmAbsから、VHおよびVLの遺伝子を単離するために使用してもよい。
【0124】
抗体のさらなるヒト化は、CDRグラフト、または抗体の再形成を伴ってもよい。このような抗体は、げっ歯類のmAbの重鎖および軽鎖のCDRs(これは当該抗体の抗原結合部位を形成する)を、ヒト抗体の対応するフレームワーク領域に移植することによって産生される。
【0125】
本発明のタンパク質およびペプチド薬剤(例えば、GPR55阻害剤)は、いくつかの方法(標的部位でのプロテアーゼ活性等)によって分解にさらされてもよい。このような分解は、その生物学的利用率を制限し、従って、治療有効性を制限する可能性がある。生物学的構成において改善された安定性を有するペプチド誘導体を設計および産生できる、いくつかの十分に確立された技術がある。このようなペプチド誘導体は、プロテアーゼを媒介した分解に対する増加した抵抗性の結果として、改善された生物学的利用率を有していてもよい。好ましくは、本発明の使用に適した誘導体は、その由来であるタンパク質またはペプチドよりも、さらにプロテアーゼ耐性がある。ペプチド誘導体、およびその由来であるタンパク質またはペプチドのプロテアーゼ抵抗性は、周知のタンパク質分解アッセイの方法によって評価されてもよい。次いで、ペプチド誘導体およびペプチドについてのプロテアーゼ抵抗性の相対値は、比較されてもよい。
【0126】
本発明のタンパク質およびペプチドのペプトイド誘導体は、本発明の第1の態様の受容体の構造、または本発明の第4、5または6の態様の薬剤の知識から、容易に設計できる。市販のソフトウェアを、よく確立された手順に従って、ペプトイド誘導体を開発するために使用してもよい。
【0127】
レトロペプトイド(この中で、全てのアミノ酸が、ペプトイド残基によって、逆転した順序で置き換えられる)もまた、本発明のタンパク質またはペプチドを模倣できる。レトロペプトイドは、1つのペプトイド残基を含む、ペプチドまたはペプトイド−ペプチドのハイブリッドと比較して、リガンド結合溝中で逆方向に結合していることが予想される。結果として、当該ペプトイド残基の側鎖は、元々のペプチドにおける側鎖と同じ方向を向くことができる。
【0128】
本発明のペプチドまたはタンパク質の修飾された形態のさらなる実施態様は、D−アミノ酸の形態を含む。この場合、アミノ酸残基の順序は反転する。L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸を使用したペプチドの調製は、通常の代謝過程による、このような誘導体のいずれかの不必要な分解を大きく減少させ、その投与頻度と共に、投与に必要な誘導体の量を減少させる。
【0129】
上記の通り、異なる態様では、当該方法における使用のための阻害剤は、GPR55の発現を減少させる核酸である可能性がある。これは、転写レベルまたは翻訳レベルで作用する可能性がある。
【0130】
1つの実施態様では、これは、内在性のGPR55転写物に結合するアンチセンスDNAまたはRNAの分子であってもよい。このようなアンチセンス分子は、GPR55発現を減少させ、それによって、GPR55に媒介された活性を減少させる。
【0131】
siRNAもまた、本発明の薬剤として使用されてもよい。siRNAは、mRNAの配列特異的な破壊をもたらし、遺伝子発現の標的とされたノックアウトを可能にするRNA干渉(RNAi)として知られる、遺伝子発現抑制機構の一部を形成する。遺伝子発現抑制において使用されるsiRNAは、典型的に各3’末端で2−ヌクレオチドオーバーハングを有する、21のヌクレオチド長の二本鎖RNAを含む可能性がある。あるいは、ヘアピンループによって結合されたセンス配列およびアンチセンス配列を使用した、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を使用してもよい。siRNAおよびshRNAの両方は、化学的に合成し、細胞に一過性のRNAiを導入することができ、または、遺伝子発現の長期間の阻害のためのプロモーターから内在的に発現させることができる。本発明の薬剤としての使用のためのsiRNA分子は、10〜50のヌクレオチドの二本鎖RNAの片方を含んでいてもよい。好ましくは、本発明の薬剤としての使用のためのsiRNAは、18〜30のヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、本発明の薬剤としての使用のためのsiRNAは、21〜25のヌクレオチドを含む。最も好ましくは、本発明の薬剤としての使用のためのsiRNAは、21のヌクレオチドを含む。
【0132】
GPR55についてプレデザインされたsiRNAは、アプライドバイオシステムズ(米国、カリフォルニア州 94404、フォスターシティー、850 リンカーン センター ドライブ)から、現在は、Silencer(登録商標)Select si RNAs(IDs s17760−s17762)という商品名で市販されている。
【0133】
従って、当該ベクターは、当該技術分野で公知の方法(例えば、本願明細書において引用された参考文献のいずれかに記載された方法;当該参考文献は、参照により、本願明細書に特に組み込まれる)のいずれかによってsiRNAを、細胞に導入するのに適した、GPR55をコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0134】
1つの実施態様では、当該ベクターは、センスおよびアンチセンスの方向の両方の本発明の核酸配列を含んでいてもよく、その場合は、RNAとして発現した場合、センスおよびアンチセンスの区画は、結合して二本鎖RNAを形成するだろう。これは、例えば、細胞中でプロセシングされてsiRNAを産生する可能性がある長い二本鎖RNA(例えば、23ヌクレオチド超)であってもよい(例えば、Myers(2003)Nature Biotechnology 21:324〜328を参照)。
【0135】
従って、GPR55の、20〜25bp、さらに好ましくは21〜23bpを含む二本鎖siRNAの使用は、例えば、任意に、分解を防ぐために保護された形態で、合成的に産生され、本発明の1つの態様を形成する。あるいは、siRNAは、ベクターから、(回収および使用のために)in vitroで、またはin vivoで産生されてもよい。
【0136】
本願明細書におけるいずれの副題も、便宜のみのために含まれ、多少なりとも開示内容を制限するものとして解釈されるものではない。
【0137】
本発明については、これから、下記の非限定的な図および実施例への参照と共に、さらに記載される。本発明の他の実施態様は、これらを踏まえて、当業者が思い付くだろう。
【0138】
本願明細書で引用された全ての参考文献の開示は、当業者によって本発明を実施するために使用される限り、相互参照によって本願明細書に特に組み込まれる。
【実施例】
【0139】
下記の方法を、本願明細書における実施例の実行において使用した。
【0140】
(細胞培養)
MDA−MB231:これは、高転移性ヒト乳癌細胞株である。in vitroでは、MDA−MB−231細胞株は、浸潤性の表現型を有する。
【0141】
MCF7:このヒト乳腺癌細胞株は、MDA−MB231よりも、少ない浸潤性の表現型を有する。
【0142】
T47D:ヒト乳管癌。この細胞株は、コラーゲン線維芽細胞マトリックスを透過できないこと、およびボイデンチャンバーによる化学浸潤(chemoinvasion)および走化性のアッセイにおいて活性が低いことから、in vitroで非浸潤性であると考えられている。
【0143】
上記の細胞株の詳細は、テキサス大学 MD アンダーソン癌センターの「breast cancer cell line database」(テキサス大学 MD アンダーソン癌センター;1515 Holcombe Blvd、Houston、TX 77030;http://www.mdanderson.org/departments/cancerbiology/)において見出すことができる。
【0144】
細胞培養物を、それらのそれぞれの培地中に維持した。ただし、MDA−MB231は、5% CO2、37℃でインキュベーションした。MDA−MB231細胞を、37℃で、CO2を含まない恒温器でインキュベーションした。
【0145】
細胞を、20mLのそれらのそれぞれの培地を含む200mlの培養フラスコ中で、コンフルエントまで培養した。コンフルエンスに達した際に、細胞培養物を5mLのPBSで洗浄し、5mLの非酵素的細胞解離溶液を使用して、フラスコ表面から解離させた。5mLのそれらのそれぞれの培地を加え、細胞懸濁液の一部を、20mlの培地を含む新しい200mlの細胞培養フラスコに移した。
【0146】
RNA抽出手順における使用のため、トリゾールを細胞可溶化物に加え、トリゾール可溶化液を、−80℃で、後の使用のために凍結した。
【0147】
(RNA抽出)
凍結したトリゾール可溶化液を、氷上で解凍し、ゲノムDNAを、当該可溶化液を、19Gの針に、数回、粘性がなくなるまで通すことによって剪断した。0.2mlのクロロホルムを加え、当該溶液を、室温で5分間インキュベーションし、核小体タンパク質複合体を分離させた。
【0148】
当該溶液を12000rpm、4℃で15分間、遠心分離し、水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。0.5mLのイソプロパノールを加えた後、当該溶液を、室温で10分間インキュベーションし、RNAを沈殿させた。次いで、当該溶液を、12000rpm、4℃で10分間、遠心分離し、水相を移し、目に見える白色のRNAペレットを放置した。
【0149】
当該RNAペレットを、1mLの75% エタノールを加えることによって洗浄し、ボルテックスし、次いで、12000rpm、4℃で5分間、遠心分離した。水相を移し、当該試料を風乾させた。当該RNA試料を、100μlのH2O中で希釈した。
【0150】
(RNA精製)
RNA精製を、キアゲン RNeasy minikitを使用して行った。
【0151】
350μlのRLTバッファーを各100μlのRNA試料水溶液に加え、混合した。250μlの無水エタノールを各RNA試料に加え、ピペッティングによって混合した。各試料を、RNeasy minicolumnに移し、12000rpm、室温で15秒間、遠心分離した。各カラムを、新しい回収チューブに移した。500μlのRPEバッファーを、各RNeasy columnに加え、次いで、12000rpm、室温で15秒間、遠心分離した。500μlのRPEバッファーを再度加え、当該カラムを、12000rpm、室温で、2分間、遠心分離した。回収チューブを空にし、当該カラムを12000rpm、室温で、2分間、再度遠心分離し、エタノールを完全に除去した。
【0152】
RNeasy columnを、1.5ml 回収チューブに移し、30μl H2Oを各カラムに加えた。当該試料を、H2Oと共に、室温で2分間インキュベーションし、その後、12000rpm、室温で1分間、遠心分離した。RNeasy columnを、新しい1.5ml 回収チューブに移し、第2の30μl H2Oを加え、2分間、室温でインキュベーションした。次いで、当該カラムを、12000rpm、室温で1分間、遠心分離したが、第1のH2O遠心工程に対して、鉛直軸上に180度回転させた。これは、RNeasy column表面上に不均等に分布したRNAが失われないようにするためである。
【0153】
第1および第2のH2Oインキュベーションならびに遠心からの、3μlの一定分量のRNA試料を、NanoDrop(登録商標)分光光度計における使用のために調製した。
【0154】
(NanoDrop(登録商標)分光測定)
NanoDrop(登録商標)ND−1000 UV−Vis 分光光度計およびソフトウェアを、1回分の精製された各RNA試料についてのRNA濃度、および260/230nmの吸光度比を測定するために使用した。
【0155】
分光光度計を、DEPC処理水の「ブランク」で較正した。次いで、試料を、NanoDrop(登録商標)分光光度計に個々に入れ、吸光度を測定し、記録した。RNA濃度値を、NanoDrop(登録商標)ソフトウェアによって算出した。
【0156】
各細胞株について最も高いRNA濃度を与えた試料を、cDNAの作製のために使用し、他の試料は捨てた。精製されたRNA試料を、少量ずつ分注し、−80℃で、後の使用のために凍結した。
【0157】
(逆転写)
2μgのRNAを得るために必要な各RNA試料溶液の量を、NanoDrop(登録商標)分光光度計を使用して定めた濃度値を使用して算出した。この量を、0.5mlのDEPC処理され、オートクレーブされたチューブに移し、後に作成する逆転写していない対照試料のためにこれを2回行った。次いで、これらの試料を、DEPC処理水中で希釈し、総量11μlにした。1μlのランダムプライマー(濃度 2μg/μl)を各RNA試料に加え、パルスボルテックスした。
【0158】
次いで、各試料を10分間、70℃で、サーモサイクラーにかけた。当該試料を3分間、氷上で冷却し、次いで、パルスし、反応物をペレットにした。4μlの5×反応バッファー、1μlの10mM dNTP混合物、および2μlの0.1M DTTを、各試料に加えた。1μlの逆転写酵素を、各細胞株のRNA試料のうちの1つに加え、各細胞株についての別のRNA試料を逆転写酵素を含まない対照にした。当該試料を混合し、10分間、室温でインキュベーションした。当該試料を、42℃で、50分間、次いで95℃で、5分間サーモサイクラーにかけた。80μlのDEPC処理水を、各反応試料に加えた。
【0159】
(RT−qPCR解析)
プローブ反応溶液を、使用された各PCRウェル中に下記の量の物質を含むように混合した。1μlの目的の遺伝子(GPR55、CB1またはCB2)のTaqMan(登録商標)プローブ、1μlのVIC標識GAPDH プローブ、10μlのプローブ混合物および5μlのH2O。
【0160】
GPR55発現HEK293細胞、CB1発現NB1細胞、またはCB2発現H60細胞からのcDNAを、1、10、100、1000、10000および10000の係数で希釈し、これらの目的遺伝子についての標準曲線を作成した。
【0161】
3μlの標準曲線の希釈物を反応混合物を含むウェルに加え、これを2回行った。各細胞株からの3μlのcDNAを、個々の反応ウェルに加え、これを3回行い、各細胞株について3μlの逆転写していないRNA試料を、反応ウェルに加え、これを3回行い、対照にした。
【0162】
プローブ反応混合物のみを含みcDNA溶液を含まない2つのブランクのウェルもまた、対照として作製した。プラスチックフィルムをPCRプレートのウェルを覆うために使用し、当該プレートを1分間、反応混合物をスピンダウンするために遠心分離した。Roche LightCycler(登録商標)480、およびDual Colour Hydrolysis Probe Assay templateを有するソフトウェアを、qPCR解析のため、かつ、相対的なGAPDHおよび目的の遺伝子(GOI)の発現を定量するために使用した。二重鎖cDNAの変性を、95℃の温度で行い、cDNA二本鎖のアニーリングを60℃で行った。変性およびアニーリングを、それぞれ、10秒および30秒のサイクルで、計40サイクル行った。GOIおよびGAPDHの発現についての標準曲線を、cDNAの異なる希釈係数の蛍光についての所定の閾値に達するのに必要な増幅サイクル数から作成した。次いで、この標準曲線を、各癌細胞株についての試験試料中のGOIおよびGAPDHのcDNAの任意の濃度を算出するために使用した。
【0163】
3回分の試験試料についての目的の遺伝子およびGAPDHの平均濃度を算出した。次いで、目的の遺伝子の濃度を、それらの値をその対応するGAPDH濃度値で割ることによって、標準化した。
【0164】
GPR55について、発現ついての、これらの標準化された濃度値を、MDA−MB231に対して表わした(この細胞株が最も高いレベルのGPR55発現を有することが見出されたためである)。
【0165】
(ボイデンチャンバー細胞遊走)
全ての走化性アッセイに使用された細胞をそれらのそれぞれの無血清培地に漬け、実験の前に19時間インキュベーションした。血清飢餓細胞を5ml PBSで洗浄し、その培養プレートから、5mLの非酵素的細胞解離溶液を使用して解離した。細胞の解離後、5mLの各無血清培地を加え、細胞懸濁液を汎用容器(universal container)に移し、2000rpmで5分間遠心分離した。上清液を捨て、残った細胞ペレットを、2mLの無血清培地中に再懸濁した。
【0166】
10μlの得られた細胞懸濁液を血球計算器に移し、1mLの懸濁液あたりの細胞数を、計測した細胞数から算出した。無血清培地を、細胞懸濁液に、当該懸濁液を1×106細胞/mlの細胞数にするために必要な量加えた。
【0167】
(手順 I−細胞遊走に対するGPR55リガンドの濃度勾配の効果)
10% FBS(0.01% DMSO媒体を含む)、0.01% DMSO媒体対照および1μMの試験薬物(0.01% DMSO媒体中のO−1602)の溶液を調製した。全ての希釈は、試験された細胞型についての適切な無血清培地中で行った。実施された各アッセイについて、ボイデンチャンバーの24の中央のウェルを使用した。下部チャンバーのウェルに、26μlの溶液を入れ、やや正のメニスカスを形成した。8μmの孔直径のポリカーボネートフィルターで、下部のウェルを覆い、ボイデンチャンバーのシリコンガスケットも定位置に置いた。次いで、上部チャンバーを定位置に固定し、45μlの細胞懸濁液を24の上部のウェルのそれぞれに加えた。次いで、ボイデンチャンバーを37℃(細胞型に応じて、CO2を含む、または含まない)で4時間インキュベーションした。
【0168】
この手順において、各化合物の濃度勾配の化学誘引効果を、化合物についての化学誘引効果を示す、上部のウェルから当該フィルターの下側への細胞遊走によって試験した。
【0169】
(手順 II 細胞遊走へのCBDまたはLPIによる細胞の前処理の効果)
1×106細胞/mlの細胞懸濁液を2回分調製し、適量の0.1% DMSOおよび1μM CBDまたはLPI(共に0.1% DMSO媒体を含む)を1回分ずつに加え、細胞懸濁液の濃度を0.01% DMSOおよび1μM 試験化合物(0.01% DMSO媒体を含む)にした。当該細胞懸濁液を、各化合物と共に、30分間、37℃、5% CO2中でインキュベーションした。
【0170】
このように、実施されたアッセイでは、10% FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体への0.01% DMSO媒体で処理された細胞の遊走、ならびに1μMまたは100nMのCBD(10% FBSおよび0.01% DMSOを含む)への1μMまたは100nMのCBD処理された細胞の遊走を試験した。当該ボイデンチャンバーを、37℃、5% CO2で、4時間、インキュベーションした。
【0171】
(遊走細胞の固定および染色)
インキュベーション後、当該ボイデンチャンバーを解体し、フィルターを取り外し、70% エタノールを含むペトリ皿に、遊走細胞側を上に向けて、7分間置いた。次いで、当該フィルターを、蒸留水を含むペトリ皿に2分間、遊走細胞側を上に向け、移した。次いで、非遊走細胞側のフィルターにワイパーブレードを引き、全ての非遊走細胞を除き、当該フィルターを風乾させた。
【0172】
次いで、当該フィルターの遊走細胞側を固定し、DiffQuik(登録商標)染色セットを使用して染色した。次いで、当該フィルターを、外科用メスを使用して、2片に切り、2列の柱状(column)にした。各フィルター片を、キシレンおよびp−キシレン−ビス−ピリジニウムブロマイドを使用して、顕微鏡スライド上に載せた。
【0173】
(遊走細胞の計測)
遊走細胞を、Leitz顕微鏡を使用して計測した。個々のウェルおよびその境界を10倍の対物レンズを使用して視覚化し、次いで、細胞を40倍の対物レンズを使用して計測した。各遊走ウェル内の3つの重複していない40倍の視野のうちの4分の1において見出された細胞を計測した。計測された各ウェル中で同一の視野を選択した。各視野内の細胞の全量を、4分の1において見出された細胞数に4を掛けることによって算出した。次いで、4つの視野のそれぞれについての細胞数を合計し、この数字を各個々のウェル内で遊走した細胞数についての測定値として使用した。
【0174】
各個々の薬物型について行われた全てのアッセイについての結果を、0.01% DMSO媒体対照のウェル中で遊走した平均細胞数を算出することによって貯えた。次いで、各個々のウェルについての細胞数を、媒体の平均の割合として表わした。
【0175】
(Cultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ)
細胞を80%のコンフルエンスまで培養し、次いで、アッセイ開始前に一晩血清飢餓に置いた。氷上で、0.5×BME原液を、5×原液から、コニカルチューブ中で調製し、反転させて混合した。100μlのBME原液を24ウェルプレートの各ウェルへ分注し、当該チャンバーを37℃で一晩インキュベーションした。翌朝、細胞を播種し、1×洗浄バッファーを使用して1度洗浄し、計測し、5×105細胞/mlの密度に再懸濁した。次いで、上部チャンバーを慎重に吸引し、チャンバーを乾かさないように注意し、ウェルあたり100μlの細胞を当該上部チャンバーに加えた。次いで、ウェルあたり500μlの(化学誘引物質を含む、または含まない)培地を、当該チャンバーの下部のウェルに加えた。次いで、当該チャンバーを組み立て、37℃で、加湿された環境で、24時間インキュベーションした。翌日、上部チャンバーを注意深く吸引し、100μlの1×洗浄バッファーで洗浄し、下部のウェルを500μlの洗浄バッファーで洗浄した。12μlのカルセインAM溶液を12mLの細胞解離液に加え、500μlのこの溶液を下部チャンバーに加えた。次いで、チャンバーを再度組み立て、37℃で1時間インキュベーションした。次いで、上部チャンバーを取り外し、溶解したカルセインAMを485nmの励起波長、520nmの発光波長で判定した。
【0176】
(組織培養および一過性の細胞形質移入)
MDA−MD−231細胞を、10% ウシ胎児血清(FBS)および2mM L−グルタミンを補充したLeibovitz培地中で維持し、37℃で、CO2を含まない環境でインキュベーションした。MCF7細胞を、10% FBSおよび2mM L−グルタミンを補充したDMEM中で維持し、37℃、5% CO2でインキュベーションした。
【0177】
MCF7細胞を、GPR55もしくは空ベクタープラスミド、GPR55もしくは陰性対照siRNA、またはこれらの組み合わせで、Amaxa Nucleofector II(溶液Vを使用)での電気穿孔により、それぞれプログラム X−013またはP−020で、これらの細胞株について推奨される手順に従い、形質移入した。下記の細胞走化性アッセイを進める前に、細胞を、形質移入後に24時間インキュベーションした。GPR55発現のノックダウンのため、GPR55に対する一連の4つの二本鎖siRNAを使用した(ON−TARGET plus siRNA、Dharmacon社製、カタログ番号:LQ−005581−00)。
【0178】
(実施例1 細胞株中の受容体の発現レベル)
異なる細胞株中のGPR55、CB1またはCB2の濃度を、上記方法で記載したように、RT−qPCRを使用して定め、次いで、それらの値を、それらのそれぞれのGAPDH濃度で割ることによって、標準化した。MDA−MB231細胞株は、最も高いレベルのGPR55発現を有することを見出し、このレベルを100%として定め、他の細胞株中の発現のレベルを、これに対して算出した。相対的なGPR55発現についての結果を、図1に示す。
【0179】
GPR55発現を、乳癌細胞株中で見出した。MCF7中のGPR55の発現は、MDA−MB231よりも、統計的に低かった。
【0180】
CB1の発現は、MCF7細胞株中のみで見出され、他の癌細胞株のいずれにおいても、CB1のcDNAは検出されなかった。MCF7中の発現もまた、希釈されていない神経芽細胞腫(NB1)cDNAについての発現と比較して、相対的に低いことが見出された。
【0181】
CB2の発現は、T47D細胞株中のみで見出され、他の癌細胞株では検出されなかった。
【0182】
下記の表2は、異なる癌細胞株中で見出される異なるカンナビノイド受容体GPR55、CB1およびCB2についての、相対的な発現レベル(平均値±S.E.M)の概略を示す。
【0183】
【表2】
【0184】
従って、従来のカンナビノイド受容体(CB1およびCB2)の発現は、乳癌および前立腺癌の細胞株中ではほとんど検出不可能であることが見出された。CB1の発現は、NB1細胞株に対して0.6%の発現を有していたMCF7乳癌細胞株中でのみ見出された。AEAが、MCF7細胞株中の細胞増殖を阻害することが以前に示された。
【0185】
全ての他の癌細胞株(MDA−MB231、MDA−MB231サブクローン、T47DおよびLNCap)について、RT−qPCRは、CB1発現を全く検出しなかった。
【0186】
CB2の発現は、T47D乳癌細胞株中のみで見出され、HL60細胞株に対して、2%の発現を有していた。他の細胞株(MDA−MB231、MDA−MB231 サブクローン、MCF7およびLNCap)のいずれにおいても、CB2の発現は検出されなかった。これは、MDA−MB231細胞株およびMCF7細胞株中でCB2の発現が検出されなかったMcKallipら(2005)による研究と一致している。
【0187】
新規なカンナビノイド受容体GPR55の発現は、細胞株全体でより制限された発現を有するCB1およびCB2受容体と対照的に、より広い範囲の癌細胞において見出された。MDA−MB231、MDA−MB231 サブクローンおよびT47D細胞は、最も高いレベルのGPR55発現を有することが見出され、MCF7細胞は、より制限されたレベルの発現を示した。しかし、CB1およびCB2と対照的に、GPR55 cDNAの増幅による蛍光は、全ての癌細胞株中のGPR55についての所定の交点に達した。これは、GPR55発現が、癌細胞株中のCB1およびCB2よりも相対的に高い可能性があることを示唆する。
【0188】
当該結果は、癌細胞株の病原力と、GPR55のその相対的な発現との間の相関を示す。MDA−MB231細胞は、in vitroでの比較において、非常に浸潤性であり、一方、T47D細胞およびMCF7細胞は、相対的に非浸潤性であると以前に同定された(Breast Cancer Cell Line Database、M.D.アンダーソン癌センターのウェブサイト;Sommersら、1994)。
【0189】
本願明細書に記載される新規な発見は、染色体2q上のGPR55遺伝子の位置と一致し、この位置は、乳癌細胞中で不安定であるとして以前に同定された領域である(Millerら、2003)。
【0190】
さらに、少なくとも70の遺伝子中の変化した遺伝子発現の「サイン」は、原発転移性癌細胞のDNAマイクロアレイ解析によって以前に同定され、これらの遺伝子のうち58が上方制御されることが見出された(van’t Veerら、2002)。さらに、in vivoでの研究では、MDA−MB231細胞がマウスに注入され、骨に特異的に転移する細胞が単離され、発現の変化が、これらの70の予後不良の遺伝子のうち46で見出された(Minnら、2005)。興味深いことに、MDA−MB231細胞中のこれらのサイン遺伝子(signature gene)の1つであり、GPR55の下流で活性化されるCdc42は、上方制御されることが示された(Minnら、2005)。
【0191】
最後に、G12およびG13は、共にヘテロ三量体Gタンパク質のG12ファミリーに属し(RioboおよびManning、2005)、癌細胞および異常増殖の発生についての重要な形質転換因子であることが以前に見出された(RadhikaおよびDhanasekaran、2001)。近年では、乳癌細胞中のこれらのGタンパク質のα−サブユニットの発現は、in vitroでその侵襲性を増加させることが示された。G12の阻害はまた、in vivoで乳癌細胞の転移のレベルを減少させることが示され、興味深いことに、増加したG12の発現が生検によって採取された初期段階のヒト乳癌細胞中で見出された。G12の活性化はまた、乳癌細胞中でRho GTPアーゼの活性化を導くことが見出された(Kellyら、2006)。最近の研究(Rybergら、2007)は、GPR55共役タンパク質をG13として同定した。
【0192】
要約すると、発明者らは、CB1およびCB2の発現は単一の細胞株に限られた一方、GPR55発現は、試験された全ての癌細胞株において見出されたことを示した。当該結果はまた、癌細胞株の相対的な病原力と、GPR55発現の相対的レベルとの相関を示した。
【0193】
(実施例2:ボイデンチャンバーアッセイにおけるMDA−MB231サブクローンの走化作用の刺激)
(FBS対媒体)
血清飢餓細胞を使用し、FBS(0.01% DMSOを含む)の化学誘引物質の効果を、その0.01% DMSO媒体対照に対して試験し、これをまた、後に、試験カンナビノイド化合物のための媒体として使用した。このアッセイの結果を図4に示す。
【0194】
図4は、腫瘍細胞の遊走が、10% FBS(0.01% DMSOを含む)を含むウェルにおいて有意に増加し、平均遊走数は、0.01% DMSO媒体対照単独の存在下で認められたもののほぼ4倍であることを示す。
【0195】
(O−1602)
図5は、推定上のGPR55作動薬であるO−1602(0.01% DMSO中で調製した)と共に行ったボイデンチャンバー走化性アッセイの結果を示す。FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。
【0196】
1μMの推定上のGPR55作動薬O−1602は、媒体対照と比較して細胞遊走を有意に増加させ、細胞株に対して化学誘引物質の特性を有することが見出された。
【0197】
(JWH015)
図6は、FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSOをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した、血清飢餓細胞に対するGPR55作動薬JWH015(0.01% DMSOを含む)の化学誘引物質の効果を示す。
【0198】
提案されたGPR55作動薬JWH015は、対照と比較して細胞数が有意に増加し、細胞遊走に対する陽性の効果を有することが見出された。
【0199】
(AEA)
図7は、血清飢餓細胞の遊走への内在性カンナビノイドAEA(0.01% DMSOを含む)の効果を示す。FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体を、それぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。
【0200】
内在性カンナビノイドのリガンドAEAもまた、対照と比較して細胞数が有意に増加し、細胞遊走に対する陽性の効果を有することを見出した。FBSの結果は、全ての以前の遊走アッセイにおいて見出されたものと一致した。
【0201】
(実施例3:ボイデンチャンバー走化性アッセイおよび浸潤アッセイにおける、CBDによるMDA−MB231の走化作用の阻害)
図8は、血清飢餓細胞の遊走に対するCBD(0.01% DMSOを含む)の効果を示す。FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体をそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。CBDは、腫瘍細胞の遊走に対して効果がなく、対照と比較して、遊走細胞数における有意差がないことを見出した。
【0202】
MDA−MB231細胞を、GPR55拮抗薬であるCBD(1μM、0.01% DMSOを含む)または0.01% DMSO媒体と共にプレインキュベーションし、FBSの濃度勾配への遊走に対する効果を、3つの個々のボイデンチャンバー遊走アッセイを使用して測定した。1μM CBD(0.01% DMSOを含む)もまた、10% FBS(0.01% DMSOを含む)と共にCBD処理された細胞の遊走ウェル中に入れ、CBDの濃度勾配が存在しないようにした。従って、FBSに誘導された遊走に対する効果は、CBDプレインキュベーションによるものだろう。図9は、CBDが、FBSへの腫瘍細胞の走化作用を有意に阻害することを表わす結果を示す。
【0203】
CBD(1μM)プレインキュベーションもまた、FBSへの腫瘍細胞の浸潤に対する阻害効果を有することを見出した(図10)。FBSの浸潤促進効果は、CBDによる前処理によって有意に減弱された。
【0204】
(実施例4:ボイデンチャンバー走化性アッセイにおける、LPIによるMDA−MB231の走化作用の増強)
MDA−MB231細胞を、GPR55作動薬であるLPI(1μM、0.01% DMSOを含む)または0.01% DMSO媒体と共にプレインキュベーションし、FBSの濃度勾配への遊走に対する効果を、3つの個々のボイデンチャンバー遊走アッセイを使用して測定した。1μM LPI(0.01% DMSOを含む)も、10% FBS(0.01% DMSOを含む)と共にLPI処理細胞の遊走ウェルに入れ、LPIの濃度勾配が存在しないようにした。従って、FBSに誘導された遊走への効果は、LPIのプレインキュベーションによるものだろう。図11は、LPIが、FBSへの腫瘍細胞の走化作用を有意に増加させることを表わす結果を示す。LPIの効果は、GPR55拮抗薬であるCBDと共にインキュベーションすることによって阻害される(図12)。
【0205】
(実施例5:GPR55の過剰発現は、MCF7細胞中の浸潤性の表現型を誘導し、腫瘍細胞の浸潤および遊走へのCBDおよびLPlの効果は、GPR55によって媒介される)
MCF7細胞は、非常に低いレベルのGPR55の自然発現を呈した(図1)。空ベクターを形質移入されたMCF7細胞は、Cultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ(図13)において、FBSへ遊走しなかった。対照的に、一過性にGPR55を過剰発現するMCF7細胞においては、FBSへの細胞の有意な浸潤があった(図13)。GPR55拮抗薬である、CBDは、対照(空ベクターを形質移入された)MCF7細胞の基礎の浸潤への効果がなかった。しかし、CBDは、GPR55を過剰発現するMCF7細胞中のFBSに誘導された浸潤を有意に阻害した(図13)。これらの結果は、CBDによる腫瘍細胞の浸潤の阻害は、GPR55によって媒介されることを示す。
【0206】
同様に、ボイデンチャンバー走化性アッセイにおいて、ベクターを形質移入されたMCF7細胞は、FBSへ遊走せず、LPIによって影響されなかった(図14)。しかし、GPR55を一過性に過剰発現するMCF7細胞において(図14)、LPIは、MDA−MB−231細胞中で認められたのと同様の様式でFBSに誘導された遊走を促進する。さらに、LPIへのGPR55を発現するMCF7細胞の遊走は、GPR55に対するsiRNAによって完全に阻害され、LPIによる細胞遊走の刺激は、GPR55によって媒介されることを確かめた。
【0207】
(概略)
1.乳癌細胞株MDA−MB−231は、GPR55を発現し、MCF7細胞は、この受容体を有意に低いレベルで発現する。
2.推定上のGPR55作動薬O−1602、AEA、およびJWH015は、全て、GPR55を発現する腫瘍細胞の遊走を促進することが見出された。
3.GPR55拮抗薬であるCBD(1μM)による、MDA−MB−231細胞の30分間の前処理は、遊走を消滅させ、FBSへの当該細胞の浸潤を減弱させることが見出された。対照的に、GPR55作動薬であるLPI(1μM)による、MDA−MB−231細胞の30分間の前処理は、FBSへの細胞の遊走を増加させることが見出された。細胞の生存率を評価するためのalamarBlue(登録商標)アッセイにおいて、CBDは、最大10μMの濃度での4時間の処理(遊走アッセイ)、または1μMでの24時間の処理(浸潤アッセイ)を行ったこれらの細胞への細胞傷害作用を有さなかったことに注意されたい。
4.MCF7細胞は、低いレベルのGPR55の自然発現を呈し、非浸潤性である。GPR55の過剰発現は、MCF7細胞中の浸潤性の表現型を誘導し、腫瘍細胞の浸潤および遊走へのCBDならびにLPIの効果は、GPR55によって媒介される。
【0208】
(実施例6 骨細胞中の内在性カンナビノイド産生)
(内在性カンナビノイド2−AGおよびアナンダミドは、細胞極性およびヒト破骨細胞による再吸収を刺激する)
10nMおよび100nMの2−AGによるヒト破骨細胞の処理は、細胞極性、すなわち、F−アクチンリング数(図11)および吸収活性における有意な増加をもたらしたが、この刺激効果は、より高濃度(1μM)では失われた。10nM〜1μMのアナンダミドによる破骨細胞の培養液の処理は、F−アクチンリング数に有意な変化をもたらさなかったが(データは示していない)、再吸収を有意に刺激した(図11)。
【0209】
(内在性カンナビノイドは、ヒトの骨芽細胞および破骨細胞によって産生される)
2−AGおよびアナンダミドの基礎レベルを、ヒトの骨芽細胞様細胞株、マクロファージ、および破骨細胞中で定量した。2−AGは、MG−63(0.11±0.02nmol/mg タンパク質)骨芽細胞様細胞、TE85(0.28±0.03nmol/mg タンパク質)骨芽細胞様細胞、ヒト マクロファージ(0.43±0.14nmol/mg タンパク質)、およびヒト破骨細胞(0.11±0.02nmol/mg タンパク質)中で検出され、マクロファージよりも破骨細胞において有意に低いレベルだった。アナンダミドは、MG−63細胞(0.12±0.01pmol/mg タンパク質)およびヒト破骨細胞(0.13±0.02pmol/mg タンパク質、6人の提供者のうちの4人)中で検出されたが、TE85骨芽細胞様細胞またはヒト マクロファージ中では検出されなかった。
【0210】
LPSによる処理は、3人の別々の提供者に由来するヒト破骨細胞において検出された2−AGのレベル(0.06±0.01から0.0.9±0.01nmol/mg タンパク質、0.24±0.08から0.20±0.02nmol/mg タンパク質、0.19±0.04から0.12±0.04nmol/mg タンパク質、図12A)を変化させなかったが、検出されたアナンダミドの量を大きく増加させた(0.06±0.01から0.14±0.03pmol/mg タンパク質、検出不可能から0.15±0.09pmol/mg タンパク質、または0.22±0.07pmol/mg タンパク質、図12B)。PTHによるMG−63細胞の長い処理は、検出された2−AGのレベルの有意な増加をもたらし(図12C)、検出されたアナンダミドのレベル(データは示していない)は変化しなかった。
【0211】
乳癌の転移は、しばしば骨組織に位置している。データは、内在性カンナビノイドが、骨中で産生され、これらは、腫瘍細胞の遊走に伴うPTH受容体の活性化に反応して産生されることを示す。さらに、内在性カンナビノイドは、腫瘍細胞への走化性因子として作用し、従って、高悪性度の転移性乳癌で上方制御されるGPR55受容体の活性化を介して、骨への腫瘍細胞の転移に関係する要因として作用する可能性がある。
【0212】
(参考文献)
Breast Cancer Cell Line Database、テキサス大学、M.D.アンダーソン癌センターのウェブサイト
http://www.mdanderson.org/departments/cancerbiology/dlndex.cfm?pn=31062032−BOEB−11D4−80FB00508B603A14(2008年4月7日に利用した)
【0213】
発明者;Brown A.、Wise A.
出願人;GlaxoSmithKline(2003)。米国特許第0,113,814号明細書
Brown A.J.,(2007). Novel cannabinoid receptors.British Journal of Pharmacology、152、567−575
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【0228】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、内在性カンナビノイドGタンパク質共役型受容体55(GPR55)およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカンナビノイド受容体(CB1およびCB2)の薬理作用論は十分確立されている。
【0003】
しかし、近年、CB1およびCB2受容体と相反する薬理学的特性を有する、推定上の新規なカンナビノイド受容体についての証拠が現れている。
【0004】
GPR55は、これまでは、オーファンGPCRだった。ヒトGPR55の発現は、後に、回腸、脾臓、扁桃腺、精巣、ならびに乳房組織および脂肪組織において見出され、GlaxoSmithKlineによって出願された特許で示された。GPR55との、CB1およびCB2の配列相同性は、それぞれ、たった13.5%および14.4%であることが見出された(非特許文献1;特許文献1;非特許文献2)。
【0005】
1つの最近の研究(非特許文献3)は、GPR55が、CBx作動薬または非定型カンナビノイドの血管拡張作用を媒介するという仮説の検証を追究した。当該研究は、GPR55は、非定型カンナビノイドによって活性化されるが、その血管拡張効果を媒介しないことを示した。
【0006】
別の最近の研究(非特許文献2)は、GPR55共役タンパク質をG13として同定し、低分子GTPアーゼrhoA、rac1およびcdc42の下流の活性化を見出した。著者らは、GPR55は、当該文献に記載された非CB1/CB2受容体のうちの1つについての候補であると結論付けた。
【0007】
特許文献2(Glaxo Group Limited)は、GPR55活性の修飾因子の同定に関する。修飾因子についてのいくつかのアッセイが論じられている。
【0008】
特許文献3(Astrazeneca UK Limited)は、GPR55活性のカンナビノイド−リガンド型修飾因子の同定に関する。修飾因子についてのいくつかのアッセイが論じらていれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第0,113,814号明細書
【特許文献2】国際公開第01/86305号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/07844号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sawzdargo M.、Nguyen T.、Lee D.K.、Lynch K.R.、Cheng R.、Heng H.H.Q.、George S.R.、O’Dowd B.F.、(1999).Identification and cloning of three novel human G protein−coupled receptor genes GPR52, ΨGPR53 and GPR55: GPR55 is extensively expressed in human brain.Molecular Brain Research、64、193−198
【非特許文献2】Ryberg E.、Larsson N.、Sjoegren S.、Hjorth S.、Hermansson N−O.、Leonova J.、Elebring T.、Nilsson K.、Drmota T.、Greasley P.J.、(2007).The orphan receptor GPR55 is a novel cannabinoid receptor.British Journal of Pharmacology、152、1092−1 1011
【非特許文献3】Johns D.G.、Behm D.J.、Walker D.J.、Ao Z.、Shapland E.M.、Daniels D.A.、Riddick M.、Dowell S.、Staton P.C.、Green P.、Bao W.、Aiyar N.、Yue T−L.、Brown A.J.、Morrison A.D.、Douglas S.A.、(2007). The novel endocannabinoid receptor GPR55 is activated by atypical cannabinoids but does not mediate their vasodilator effects.British Journal of Pharmacology、152、825−831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の発明者らは、GRP55がヒトの高悪性度の乳癌細胞中で発現し、その発現レベルは、これらの細胞の侵襲性および転移能と相関している可能性があることを発見した。
【0012】
転移は、原発性腫瘍(original or primary tumor)から離れた二次部位(secondary sites)への、悪性腫瘍の拡散である。原発性腫瘍の転移能を早い段階で知ることは、臨床医に、治療およびアジュバント治療における使用についての、重要な情報を与えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の様々な態様では、GPR55発現は、乳癌の転移特性に関連する診断手段またはバイオマーカーとして使用されてもよい。
【0014】
発明者らは、さらに、高悪性度の乳腺細胞の遊走は、この受容体を標的とする薬理作用物質によって改変される可能性があることを発見した。
【0015】
従って、本発明のさらなる態様は、乳癌の進行および拡散を阻害するための、当該受容体の治療標的に関する。
【0016】
乳癌の転移がどのように骨に向けられる可能性があるかについてのモデルもまた、本願明細書で開示される。この観点(骨への転移)における評価および介入は、本発明のさらなる態様の基礎を形成する。
【0017】
従って、1つの態様では、本発明は、患者から得た生物学的試料における乳癌細胞の転移能の予測、または、転移の予後の判定についての方法を提供し、当該方法は、当該細胞中のGPR55発現のレベルを評価する工程を含む。
【0018】
当該方法は、原発性腫瘍の試料(前外科的生検または術中生検(intrasurgical biopsy))を得る工程が先行していてもよい。
【0019】
より詳細に記載される通り、「発現」のレベルは、GPR55の核酸またはタンパク質のレベルのいずれかから検出されてよい。例えば、タンパク質は、細胞膜、小胞体またはゴルジ体中で、(直接結合または活性によって)検出されてもよく、または、核酸は、GPR55をコードするmRNAから、直接的または間接的に(例えば、そのmRNAに由来するcDNAを介して)検出されてもよい。
【0020】
好ましい実施態様では、当該評価は、イムノアッセイベースの試験であってもよい。例えば、標識された抗体は、イムノアッセイにおいて、細胞または細胞膜中のGPR55レベルを評価するために使用されてもよい。しかし、当該技術分野で周知の他の方法として、蛍光顕微鏡観察、ウエスタンブロット解析、m−RNAのノーザンブロット解析およびスロットブロット解析、mRNAの酵素増幅および解析、蛍光標識細胞分取等の使用も含んでいてもよい。
【0021】
1つの実施態様では、当該方法は、
(a)癌患者から得られた生物学的試料を、GPR55またはGPR55 mRNAに特異的に結合する結合剤と接触させる工程と、
(b)当該結合剤に結合したGPR55またはGPR55 mRNAの量を検出する工程と、
(c)GPR55またはGPR55 mRNAの量を所定のカットオフ値と任意に比較し、それによって当該癌細胞の転移能を判定する工程と、を含んでいてもよい。
【0022】
1つの態様では、
(a)癌患者から得られた生物学的試料を、GPR55に特異的に結合する結合剤と接触させる工程と、
(b)当該結合剤に結合したGPR55の量を検出する工程と、
(c)GPR55の量を所定のカットオフ値と任意に比較し、それによって当該癌細胞の転移能を判定する工程と、を含む方法が提供される。
【0023】
当該結合剤は、GPR55タンパク質の細胞外領域に特異的に結合してもよい。好ましくは、当該薬剤は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、および抗体のエピトープ結合断片から選択される抗体である。当該薬剤は、例えば、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、および生物発光標識で検出可能に標識されてもよい。
【0024】
別の態様では、当該方法は、個体の試料に存在する核酸分子を含む試験試料を得てから、当該試験試料中のGPR55 mRNAの量を定量し、当該試験試料中のGPR55 mRNAの量を、所定の値と任意に比較する工程を含んでいてもよい。
【0025】
試験試料中のGPR55 mRNAの量を定量する工程は、試験試料を、ストリンジェントな条件下で当該GPR55 mRNAにハイブリダイズする核酸分子に曝露する工程を含んでいてもよい。例えば、当該方法は、約30ヌクレオチドまたはそれ以上の長さのプローブを0.5M NaHPO4/7% SDS/1mM EDTA中で、65℃で使用してもよい。当該ストリンジェントな条件は、0.1% SDS/0.1×SSC中で、68℃で洗浄する工程を含んでいてもよい。
【0026】
さらに好ましくは、当該試験試料中のGPR55 mRNAの量を定量する工程には、mRNAの特異的な増幅、次いで、例えば、下記実施例に記載されたRT−qPCR解析を介した増幅産物の定量化を伴う。
【0027】
使用される、発現を評価するための方法が何であれ、定量された量は、好ましくは、細胞中のリファレンス遺伝子またはタンパク質と比較されて標準化される。このような遺伝子の選択は、当業者によって決定されてもよい。下記実施例で使用されたリファレンス遺伝子は、GAPDHである。Rybergら(2007)は、rb36B4を使用した。
【0028】
GPR55の(好ましくは標準化された)発現レベルは、対照(例えば、ヒト転移性細胞株、およびヒト非転移性細胞株)と比較されてもよい。様々な細胞株が下記実施例中で試験された。
【0029】
GPR55の発現は、CB1およびCB2と関連する可能性がある。下記の通り、CB1およびCB2の発現は、単一の細胞株に限られるが、その結果はまた、当該癌細胞株の相対的な病原力と、GPR55発現の相対的レベルとの間の相関を示した。
【0030】
本発明の方法は、乳癌の診断および、(例えば、TNMシステムまたはAJCCシステムによる)病期分類の従来の方法、ならびにHER2の存在についての試験と組み合わせて使用されてもよい。
【0031】
別の態様では、乳癌細胞の転移能の予測、または、生物学的試料中の転移の予後の判定の方法は、例えば、GPR55発現が所定の値を超える場合に、患者における乳癌のリスク、または、特に、転移のリスクもしくは可能性を診断するために使用されてもよい。
【0032】
別の態様では、当該方法は、例えば、GPR55発現が所定の値を超える場合に、化合物による治療、またはアジュバント治療についての個体の選択のために使用されてもよい。
【0033】
本発明の他の態様では、GPR55およびその発現は、特定の治療法および併用化学療法を選択し、またはモニターするためのバイオマーカーとして使用されてもよい。
【0034】
従って、1つの態様では、本発明は、患者における乳癌の進行をモニターするための方法であって、
(a)第1の時点で当該患者から得られた生物学的試料におけるGPR55発現のレベルを評価する工程と、
(b)引き続く時点で当該患者から得られた生物学的試料を使用して工程(a)を繰り返す工程と、
(c)工程(b)において検出されたGPR55発現のレベルを、工程(a)において検出された量と比較し、それによって、当該患者における癌の進行をモニターする工程と、を含む方法を提供する。
【0035】
例えば、発現レベルが徐々に増加する場合は、癌が進行しており、一方、発現レベルが一定のままであるか、または時間と共に減少する場合は、癌は進行していない可能性があるものとして特定される。
【0036】
好ましい実施態様では、当該方法は、下記のように実施される:
(a)所定時間内に第1の時点で患者から得られた生物学的試料と、GPR55に特異的に結合する結合剤とを接触させ、
(b)当該試料中において、当該結合剤と結合したポリペプチドの量を検出し、
(c)引き続く時点で当該患者から得られた生物学的試料を使用して、工程(a)および(b)を繰り返し、
(d)工程(c)において検出されたポリペプチドの量と、工程(b)において検出された量とを比較し、それによって、当該患者における癌の進行をモニターする。当該ポリペプチドの量が所定時間で増加している場合は癌は進行しており、一方、当該ポリペプチドの量が一定のままであるか、または時間と共に減少している場合は癌は進行していない。
【0037】
当該方法は、所定期間を通じて、患者における転移のリスクをモニターするために使用されてもよい。
【0038】
当該方法はまた、治療処置を継続するべきかどうかを決定するために使用されてもよく、または、患者が受けている転移の抗癌治療の有効性をモニターするために使用されてもよい。
【0039】
本願明細書に記載された診断方法、予後診断方法、および他の方法は、検査キットの使用によって実施されてもよく、このようなキットは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0040】
従って、本発明は、例えば、試料中のGPR55 mRNAの存在または量を測定するための、上記の診断方法、または予後診断方法の全てを評価または援助するための検査キットを提供する。当該キットは、
(a)GPR55のヌクレオチド配列の少なくとも30の近接するヌクレオチドを含む核酸分子と、
(b)試料中のGPR55 mRNAへの核酸分子の結合を検出するための手段と、を含む。
【0041】
当該核酸は、ノーザンブロットもしくは他のブロット解析によってmRNAを直接的に解析するもの、または酵素増幅およびmRNAの解析において使用できるもの(例えば、プライマー)であってもよい。
【0042】
他の態様では、検査キットは、
(a)GPR55に選択的に結合する抗体と、
(b)GPR55への抗体の結合を検出するための手段と、を含んでいてもよい。
【0043】
いずれの場合であっても、当該キットは、ヒト転移性細胞株、およびヒト非転移性細胞株からなる群から選択される細胞を含む対照試料を含んでいてもよい。
【0044】
当該抗体は、蛍光顕微鏡観察、ウエスタンブロット解析、蛍光標識細胞分取、または全ての他のイムノアッセイにおいて有用なものであってもよい。
【0045】
本願明細書における開示を踏まえると、GPR55の阻害は、乳癌の治療において有用である可能性があることを見出すことができる。
【0046】
従って、本発明のさらなる態様は、患者における乳癌の治療方法における使用のためのGPR55阻害剤を含む組成物を提供する。当該患者は、上記のように特定された者であってもよい。
【0047】
本発明はまた、患者における乳癌の治療方法を提供し、当該方法は、腫瘍とGPR55阻害剤とを接触させる工程を含む。
【0048】
本発明はまた、乳癌の治療のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用を提供する。
【0049】
「患者」は、哺乳類、好ましくはヒトである。
【0050】
「GPR55阻害剤」は、いくつかの方法によって、その効果を達成できる。例えば、このような薬剤は、
(a)例えばsiRNAまたは本願明細書に記載された他の方法を介し、容易に入手できる配列情報を使用してGPR55の発現を減少させることができ、
(b)受容体に直接的に拮抗でき、または受容体の脱感作もしくは受容体の分解を増加させることができ(例示的な拮抗薬は本願明細書に記載される)、
(c)GPR55と、その内在性リガンド(例えば、実施例に記載のリガンド)との間の相互作用を(好ましくは、GPR55に直接的に結合することによって)減少させることができ、
(d)例えば、Gタンパク質の共役を遮断することにより、GPR55に媒介された細胞内シグナルを減少させることができ、かつ/または、
(e)内在性リガンド結合について内在性のGPR55と競合することができる。
【0051】
好ましい阻害剤は、GPR55に対して産生された中和抗体であってもよい。このような抗体の使用は、本発明の1つの特徴を示す。
【0052】
他の阻害剤としては、天然または合成の拮抗薬(例えば、カンナビジオール)が挙げられる。
【0053】
非天然型阻害剤が好ましい可能性がある。例えば、拮抗薬は、GPR55結合親和性を維持しつつ、高度に特異的な結合および治療用途のために最適化されてもよい。本発明の阻害剤は、その自然環境から、実質的に純粋もしくは均一な形態で、または、元々の種に由来する他の生物学的物質を含まずに、もしくは実質的に含まずに単離および/または精製されて提供されてもよい。本願明細書で使用される場合、用語「単離される」とは、これらの可能性の全てを含む。
【0054】
さらに、このような阻害剤の薬剤的に許容できる活性誘導体、およびその使用は、本発明の範囲内である。このような誘導体の例としては、塩、溶媒和化合物、アミド、エステル、エーテル、N−オキシド、化学的に保護された形態、およびそのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
好ましくは、当該GPR55阻害剤は特異的なGPR55阻害剤である。
【0056】
特異的なGPR55阻害剤は、例えば、CB1受容体またはCB2受容体に対するよりも大きな阻害能で、GPR55受容体を優先的に標的とするものである。
【0057】
本願明細書で使用される用語「治療(treatment)」または「治療(therapy)」とは、患者における乳癌の重症度の軽減が意図されるGPR55阻害剤の全ての投与を指し、疾病の発症のリスクを有する個体、またはその個体における疾病の発症を示す症状を有する個体における疾病の治癒、当該疾病の症状の軽減、および疾病の発症の予防または抑止が意図される治療を含む。
【0058】
好ましい治療は、原発性乳癌の転移を最小限にするもの等であってもよく、すなわち、本発明の方法、使用および組成物は、乳癌の転移の治療および/または予防のために適用されてもよい。
【0059】
下記の通り、相対的に高いGPR55の発現を有する細胞株において、内在性カンナビノイド、アナンダミド(AEA)等の推定上のGPR55作動薬は、走化性因子として作用した。遊走は、GPR55拮抗薬であるCBDによる前処理によって阻害されることを見出した。
【0060】
従って、本発明は、乳癌の転移を阻害する方法を提供し、当該方法は、腫瘍または当該腫瘍に由来する転移と、GPR55阻害剤とを接触させる工程を含む。乳癌の転移を阻害するためのGPR55阻害剤の使用、および、この目的のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用もまた、提供される。
【0061】
別の好ましい治療は、骨への原発性乳癌の転移を最小限にするもの等であってもよく、すなわち本発明の方法、使用および組成物は、転移性腫瘍細胞の走化作用/骨への遊走の治療および/または予防のために適用されてもよい。
【0062】
乳癌の転移は、骨組織中に位置することがある。本願明細書中のデータは、内在性カンナビノイドが骨中で産生され、これらが骨への腫瘍細胞の転移についての走化性因子として作用できることを示す。これは、高悪性度の転移性乳癌において上方制御されるGPR55受容体の活性化を介すると考えられる。
【0063】
従って、本発明は、骨への乳癌の転移を阻害する方法を提供し、当該方法は、腫瘍または当該腫瘍に由来する転移と、GPR55阻害剤とを接触させる工程を含む。乳癌の骨への転移を阻害するためのGPR55阻害剤の使用、および、この目的のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用もまた提供される。
【0064】
本発明は、さらなる態様において、上記の全ての治療方法および阻害方法(例えば、乳癌の転移の阻害および/または転移性腫瘍細胞の走化作用もしくは骨への遊走の阻害)において使用できる物質についてのスクリーニング方法を提供し、当該方法は、一般的に、GPR55受容体への当該物質の結合、またはGPR55の発現を阻害するその能力を評価する工程を含む。
【0065】
好ましい態様では、当該方法は、
(i)GPR55を含む細胞または膜を、試験化合物に所定の時間の間曝露する工程と、
(ii)GPR55の活性または発現を検出する工程と、
(iii)当該化合物で処理された細胞または膜中のGPR55の活性または発現と、当該化合物で処理されていない対照細胞もしくは対照膜中で見出された活性または発現とを比較する工程と、を含んでいてもよく、
本発明の方法および治療における使用について有効性を有する化合物は、当該対照に対して、GPR55の活性を低下させ、またはGPR55の発現を低下させる。
【0066】
1つの実施態様では、上記の全ての治療方法および阻害方法において使用できる物質を産生する方法は、
(i)上記スクリーニング方法の使用により物質を同定する工程と、
(ii)当該物質を産生する工程と、を含む。
【0067】
本発明の方法、使用および組成物の他の好ましい態様または実施態様は、これから論じられる。
【0068】
本願明細書で開示される、または本願明細書で開示される方法を使用して同定されるGPR55阻害剤は、上記の本発明の医薬品および他の使用のための組成物中に存在してもよく、または当該組成物中に処方されてもよい。
【0069】
本発明の医薬組成物は、活性な化合物(すなわち、GPR55阻害剤)に加えて、薬剤的に許容できる賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者に周知の他の物質を含んでいてもよい。このような物質は、無毒性でなければならず、有効成分の有効性を妨げてはならない。当該担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存するだろう。
【0070】
従って、本発明のさらなる態様は、上記治療のための薬物を作製する方法を提供し、当該方法は、GPR55阻害剤の使用、例えば、このような阻害剤を、薬剤的に許容できる成分と混合することによって、投与に適した医薬組成物を産生する工程を含む。
【0071】
GPR55阻害剤は、単独または他の治療と組み合わせて、同時にまたは経時的に投与されてもよい。
【0072】
骨への乳癌の転移を阻害するための本発明の方法は、例えば、エストロゲンレベルを低下させる医薬による治療と組み合わせて使用されてもよい。
【0073】
例えば、ハーセプチンの使用と同様に、増加したレベルのGPR55発現について陽性であると検査された患者は、従来の化学療法、例えば、ドキソルビシンおよびシクロホスファミドによる治療によって、パクリタキセルおよびGPR55阻害剤(および、当該患者がHER−2陽性である場合は、任意にトラスツズマブ)の後に、またはこれらの前に処置されてもよい。
【0074】
疾病の再発および進行を防ぐための手術後の乳癌についてのアジュバント治療は、本発明に特に包含され、すなわち、GPR55阻害剤は、治療において使用されてもよく、当該治療は、外科的介入(例えば、乳房切除)を含む。当該外科的介入は、当該GPR55阻害剤の使用に先行し、または当該使用に続き、それ自体は、請求項に係る発明の一部を形成しなくてもよい。
【0075】
従って、ホルモン療法、化学療法、放射線療法、または温熱療法と組み合わせた併用療法もまた包含され、任意に外科的介入と組み合わせたものが含まれる。乳癌のための他の治療は当該技術分野で周知であり、それらの使用自体は本発明の一部を形成するものではない。それでも、GPR55発現の阻害と組み合わせたこのような治療の使用は、本発明の一部を形成する。
【0076】
本発明の関連する態様によれば、GPR55阻害剤、またはこれを含む組成物は、個体に投与されることが意図される。これは、全身性または局所性であってもよい。投与は、好ましくは、「治療的有効量」での投与であり、これは、患者に、例えば乳癌の減少、寛解、または退縮という有益性を示すのに十分なものである。
【0077】
従って、本発明のさらなる態様では、上記治療方法は、治療が必要な患者に、有効量のGPR55阻害剤を投与する工程を含んでいてもよい。
【0078】
投与される実際の(有効な)量、ならびに投与の速度および時間経過については、特定の被験者(例えば、ヒト患者または動物モデル)における疾病の重症度、および当該被験者の全体の症状を考慮し、最終的には医師の裁量である。適した用量の範囲は、典型的に、0.01〜20mg/kg/日、好ましくは、0.1〜10mg/kg/日の範囲である。
【0079】
本発明の阻害剤としてのGPR55に対して産生された抗体の使用は、25mg〜5000mgを、注射可能な形態で、週1回、週2回または週3回の量(または乳癌の重症度に応じてより多くの回数)でのその抗体の投与を伴ってもよい。あるいは、徐放デバイスを使用し、患者に最適な用量を与えてもよく、その場合は反復投与の必要をなくせる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】乳癌細胞株中でのGPR55の相対的な発現。T47DおよびLNCapについては、n=1であるため、統計検定は行うことができず、S.E.Mを算出できなかった。全ての他の細胞株について、n=3である。MDA−MB231については、これらの値を100%として設定したため、エラーバーを示していない。ns=有意でない。*=MDA−MB231と比較して、P<0.05。統計解析は、Friedman 一元配置ANOVA、およびDunns post検定によって行った。
【図2】NB1に対する、乳癌細胞株中のCB1の発現。n/d=CB1 cDNAは検出されなかった。NB1については、これを100%と設定したため、S.E.Mは示していない。
【図3】希釈されていないHL60 cDNA中のCB2 cDNAの濃度に対する、乳癌および前立腺癌の細胞株中のCB2発現。n/d=CB2 cDNAが検出されなかった。
【図4】平均DMSO媒体の遊走に対する、血清飢餓腫瘍細胞へのFBSの化学誘引物質の効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。**=P<0.01、対応ノンパラメトリックt検定を使用して検定した。同じ培養フラスコおよび継代数からの細胞を含む全てのウェルでの、1つのボイデンチャンバーアッセイから得られた結果。
【図5】対照に対する、細胞遊走へのFBSおよびO−1602の効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、3つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。**=P<0.01、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。FBS対O−1602は、有意ではなかった(図示していない)。
【図6】媒体対照と比較した、腫瘍細胞の遊走に対するFBSおよびJWH015の効果を測定するために使用したボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、3つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。***=P<0.001、**=P<0.01、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。FBS対JWH015、有意差なし(図示していない)。
【図7】媒体対照と比較した、腫瘍細胞の遊走に対するFBSおよびアナンダミド(AEA)の効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、3つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。***=P<0.001、**=P<0.01、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。FBS対AEA、有意でない(図示していない)。
【図8】媒体対照と比較した、腫瘍細胞の遊走に対するFBSおよびCBDの効果を測定するために使用されたボイデンチャンバーアッセイ。全ての0.01% DMSO媒体のウェルからの平均細胞遊走数に対して表わされた、2つの個々のボイデンチャンバーアッセイから貯えられた結果。個々のアッセイでは、異なる継代数の細胞を使用した。*=P<0.05、ns=有意でない、DMSO対照との比較、Freidman 一元配置ANOVAおよびDunns post検定。
【図9】ボイデンチャンバー遊走アッセイ。CBD(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ遊走したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3〜4)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図10】Cultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ。CBD(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ浸潤したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3)を示す。*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図11】ボイデンチャンバー遊走アッセイ。LPI(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ遊走したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3〜4)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図12】ボイデンチャンバー遊走アッセイ。CBD(1μM)と組み合わせたLPI(1μM)とのプレインキュベーション後の、FBSへ遊走したMDA−MB−231細胞数を示すヒストグラム。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=3〜4)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図13】GPR55の低い自然レベルの発現を示す(図1に示される)MCF7細胞を用いたCultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ。GPR55を形質移入されたMCF7細胞がFBSへ浸潤した一方、空ベクターを形質移入された細胞は浸潤しなかったことを示すヒストグラム。CBDは、GPR55過剰発現細胞中で、FBSに誘導される浸潤を有意に減弱した。
【図14】GPR55の低い自然レベルの発現を示す(図1に示される)MCF7細胞を用いたボイデンチャンバー遊走アッセイ。GPR55を過剰発現するMCF7細胞もまた、FBSへ遊走した一方、空ベクターを形質移入された細胞は遊走しなかった。GPR55過剰発現細胞において、FBSに誘導された遊走は、1μM LPIとのプレインキュベーションによって有意に促進され、GPR55に対するsiRNAを使用すると完全に消滅した。当該データは、平均値+/−S.E.M.(n=2)を示す。*、P<0.05;***、P<0.001、一元配置ANOVAの後にNewman−Keuls 多重比較検定。
【図15】ヒト M−CSF−依存性マクロファージを、RANKLの存在下で7日間培養し、次いで、2−AGまたはアナンダミドで、さらに5日間処理した。媒体(0.1% DMSO)対照±SEMの%として表わされた、破骨細胞の培養液中のF−アクチンリング数(n=4〜7の実験、それぞれ5回繰り返した)。**対照と比較したP<0.01、ANOVAおよびDunnettの多重比較検定。
【図16】ヒト破骨細胞のLPS処理後の、2−AG(A)およびアナンダミド(B)のレベル。細胞をPBS中で洗い、90分間、200μg/ml LPSで処理した。値は、3人の別々の提供者からの、平均値±SEMを示す。対照およびLPS処理細胞中の2−AGのレベルには、有意差がなかった(Studentの対応t検定)。アナンダミドのレベルは、2つの対照試料において検出不可能であり、これは統計解析を妨げた。(C)PTHで処理されたMG−63細胞中の2−AGレベル。細胞を、40nMまたは100nMのPTHにおいて示された時間で処理した。当該結果は、対照の%として表わされ、平均値±SEMである(n=2〜4の実験、それぞれについて2回測定した)。**対照と比較したP<0.01、ANOVAおよびDunnettの多重比較検定。
【発明を実施するための形態】
【0081】
(定義および詳細な方法)
本発明の他の態様および、本願明細書で使用される定義について、これからさらに詳細に論じられる。
【0082】
(GPR55受容体の核酸)
hGPR55は、EMBL受入番号BC032694である。参照の便宜のため、複写物が本願明細書に添付される。
【0083】
(GPR55 mRNAおよび発現の評価)
GPR55の発現の評価方法は、例えば、Ryberg(2007)の記載、または下記実施例に記載されたような、当該技術分野における従来の方法であってもよい。
【0084】
(GPR55受容体の作動薬および拮抗薬)
GPR55受容体に対して作動薬として作用する幅広い範囲のカンナビノイドが公知である。これらは、AEA等の内在性カンナビノイドおよびTHC等の大麻の成分を含む。O−1602およびCP55940等の自然に存在するカンナビノイドの合成誘導体もまた、作動薬として作用することが見出された。
【0085】
カンナビジオール(CBD)もまた大麻の成分であり、GPR55拮抗薬として同定された。
【0086】
表1は、これらの化合物のうちのいくつか、およびその効果の概略を示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(新規なGPR55阻害剤の同定)
新規な薬物の同定を導く医薬品の研究は、リード化合物が見出される前および後でさえも、非常に多数の候補物質のスクリーニングを伴う可能性があることが周知である。
【0089】
特に、結合アッセイ、拮抗薬の効力、およびGPR55のGタンパク質の共役に対する「遮断薬」の活性は、(本願明細書に記載される新規な方法および応用における使用のために)、例えば、Ryberg(2007)によって記載された従来の方法によって評価され、与えることができる。化合物はまた、ERKリン酸化アッセイ(Okaら、2008)を使用して同定できる。例示的な方法は、下記の通りである。
【0090】
(放射性リガンド結合アッセイ)
放射性リガンド結合は、5mgの膜タンパク質を、50nM [3H]−(−−)−シス−3−[2−ヒドロキシ−4−(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]−トランス−4−(3−ヒドロキシプロピル)シクロヘキサノール(CP55940)(Tocris、米国、ミズーリ州、エリスビル)、[3H]−SR141716(アマシャム、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)、または[3H]−R(ρ)−[2,3−ジ−ヒドロ−5−メチル−3−[(モルフォリニル)メチル]ピロロ[1,2,3−de]−1,4−ベンゾ−オキサジニル]−(1−ナフタレニル)−メタノン−メシル酸塩(WIN55,212−2)(アマシャム)、十分量のバッファー(50mM トリス−HCl、5mM MgCl2、50mM NaCl、pH 7.4、0.1% ウシ血清アルブミン(BSA))を含む96ウェルプレートの各ウェルに加え、各ウェルの総容積を200μlにすることによって開始する。非特異的結合を、10μM CP55940(Tocris)、SR141716およびWIN55,212−2(Tocris)の存在下で定量した。当該膜を、30℃で90分間インキュベーションし、次いで、氷冷した洗浄バッファー(50mM トリス−HCl、5mM MgCl2、50mM NaCl、pH 7.4)を加えることによって反応を停止し、次いで、Printed Filtermat B ガラス繊維フィルター(Wallac、フィンランド、トゥルク)(0.05% ポリエチレンイミン(PEI)処理した)に通し、Micro 96 Harvester(Skatron Instruments、ノルウェー、リール)を使用して真空下で急速濾過した。当該フィルターを30分間、50℃で乾燥し、次いで、パラフィンシンチラントパッドを当該フィルター上で融解させ、結合放射活性を1450 Microbeta Trilux(Wallac)シンチレーションカウンタを使用して定量した。
【0091】
([35S]−GTPgS結合アッセイ)
[35S]−グアノシン50−[g−35S]−三リン酸(GTPgS)結合アッセイを、0.01% BSA(脂肪酸を含まない)(シグマ、米国、ミズーリ州、セントルイス)、10mM グアノシン50−二リン酸塩(GDP)(シグマ)、100mM ジチオスレイトール(DTT)(シグマ)および0.53nM [35S]−GTPgS(アマシャム)と共に0.025μg/μlの膜タンパク質を含む膜バッファー(100mM NaCl、5mM、1mM EDTA、50mM HEPES、pH 7.4)中で、最終量を200μlとし、30℃で、45分間行った。非特異的結合を、20μMの未標識のGTPgS(シグマ)の存在下で定量した。当該反応を、氷冷した洗浄バッファー(50mM トリス−HCl、5mM MgCl2、50mM NaCl、pH 7.4)を加えることによって停止し、次いで、真空下で、Wallac GF/B ガラス繊維フィルターに通して、セルハーベスター(Skatron)を使用して、急速濾過した。当該フィルターを、30分間、50℃で乾燥させ、次いで、パラフィンシンチラントパッドを当該フィルター上で融解させ、結合放射活性を、microbeta シンチレーションカウンタ(Wallac)を使用して定量した。拮抗薬の効力を、実験の当日に実験的に定量されたCP55940のEC80濃度に対して定めた。データを、式 y=A+((B−A)/1+((C/x)^D)))および推測されるEC50(Aは、非特異的結合量、Bは全結合量、CはIC50、Dは傾き)を使用して適合させた。
【0092】
([35S]−GTPgS結合アッセイにおけるペプチドおよび抗体の遮断)
[35S]−GTPgS結合アッセイを、上記のように、G−タンパク質サブユニットGα13、GαiおよびGαsについてのペプチドまたは抗体を含む、または含まない膜のさらなるプレインキュベーションと共に、15分間、30℃で行った(Santa Cruz Biotechnology、米国、カリフォルニア州、サンタクルーズ)。データを対応t検定を使用して分析した(**Po0.05;***Po0.01)。
【0093】
この態様および他の態様において、物質(推定上の拮抗薬)は、例えば、現在当該技術分野で周知のもの等(例えば、Newton(1997)Expert Opinion Therapeutic Patents、7(10):1183−1194を参照)のコンビナトリアルライブラリーの生成物として与えられてもよい。
【0094】
基本的に、本願明細書に記載されたスクリーニング方法は、当該技術分野で周知のもの等の高処理スクリーニング系と同様に使用されてもよく、結合パートナーに基づく。例えば、国際公開第200011216号パンフレット(Bristol−Myers Squibb)を参照。これは、特異的な核酸またはアミノ酸の配列が入手可能な分子標的を調節する可能性がある試験化合物の評価のための、迅速な、高処理スクリーニングを可能にする。国際公開第200016231号パンフレット(Navicyte)には、吸収等の1つ以上の生物学的利用率の特性による化合物ライブラリーのスクリーニング方法(このようなスクリーニングは、受容体結合ベースのスクリーニングに加えて、またはその代替法として使用されてもよい)について記載されている。米国特許第6027873号明細書(Genencor Intl.)には、分析のために試料を保持する方法、およびその装置が開示されている。米国特許第6007690号明細書(Aclara Biosciences)には、高処理スクリーニング系および他の用途において使用されてもよい集積マイクロ流体デバイスが記載されている。他の高処理スクリーニング系は、例えば、独国特許出願公開第19835071号明細書(Carl Zeiss;F Hoffman−La Roche)、国際公開第200003805号パンフレット(CombiChem)および国際公開第200002899号パンフレット(Biocept)に記載されている。
【0095】
本発明における使用のための新規な化合物(特に、GPR55拮抗薬)はまた、模倣薬の設計のために使用されてもよい。これは、活性な化合物の合成が困難または高価である場合、または当該化合物が特定の投与方法に適していない場合に望ましい可能性がある。所定の標的特性を有する化合物からの模倣薬の設計において共通して採用されるいくつかの工程がある。最初に、標的特性の特定において重大な、かつ/または重要な化合物の特定の部分が特定される。当該化合物の活性な領域を構成するこれらの部分または残基は、その「ファルマコフォア」として公知である。一旦ファルマコフォアが見出されると、その構造は、その物性(例えば立体化学、結合、大きさ、および/または電荷)に従い、様々な情報源、例えば、分光学的技術、X線回折のデータおよびNMRからのデータを使用してモデリングされる。三次元構造が特定されてもよい。計算解析、類似性マッピング(これは、原子間の結合ではなく、ファルマコフォアの電荷および/またはボリュームをモデリングする)および他の技術を、このモデリング工程において使用できる。次いで、ファルマコフォアを模倣する化学基を移植できる鋳型分子が選択される。当該鋳型分子およびこれに移植された化学基は、模倣薬を容易に合成できるように簡便に選択でき、薬理学的に許容できる傾向にあり、in vivoでは分解しない一方、リード化合物の生物学的活性を保持する。
【0096】
本発明のスクリーニング方法は、GPR55を自然に発現しやすい細胞を利用してもよい。
【0097】
GPR55を自然に発現しにくい細胞を使用することも可能である。ただし、このような細胞は、GPR55をコードする発現ベクターで形質転換される。このような細胞は、本発明の使用において好ましい試験細胞を示す。これは、動物細胞または原核細胞でさえも、ヒト GPR55を発現し、従って、ヒト乳癌の治療における使用のための候補薬物の有効性を試験するための良い細胞モデルとなるように形質転換される可能性があるためである。
【0098】
国際公開第01/86305号パンフレット(Glaxo Group Limited)は、GPR55活性の修飾因子の同定に関する。国際公開第2004/07844号パンフレット(Astrazeneca UK Limited)は、GPR55活性のカンナビノイド−リガンド型修飾因子の同定に関する。修飾因子についてのいくつかのアッセイは、これらの文書に記載され、これらの文書の開示は、阻害剤の提供または試験に関連する限り、本願明細書に特に組み込まれる。
【0099】
一般的に言えば、当業者は、ベクターを構築し、スクリーニングを容易にするために、細胞または細胞株中のGPR55の組み換え遺伝子発現のための手順を設計することが十分にでき、様々な同定方法の実施態様における、このような細胞および細胞株の使用は、本発明の1つの態様を形成する。適したベクターは、プロモーター配列、転写終結コドンの断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適切な他の配列等の、適切な制御配列を含むように選択または構築できる。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:第2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press or Current Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら 編集、John Wiley & Sons、1992を参照。
【0100】
本願明細書に記載されたスクリーニング方法はまた、GPR55を含む細胞膜、または単離された可溶性GPR55の使用に基づいていてもよい。このような膜は、好ましくは、上記の細胞に由来する。
【0101】
本発明のスクリーニング方法における使用のための細胞は、当該方法がin vivoベースの試験である場合、実験動物(例えば、マウスまたはラット)内に含まれていてもよい。あるいは、当該細胞は、(ex vivoベースの試験における)組織試料中にあってもよく、または、当該細胞は、培養液中で培養されてもよい。このような細胞は、機能的なGPR55を発現しなければならず、または、これを発現するように誘導されてもよいことが理解されるだろう。
【0102】
本発明の組成物は、いずれかの適した経路および投与手段のために処方されてもよい。薬剤的に許容できる担体、または希釈剤としては、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下等)または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内等)投与に適した処方中で使用されるものが挙げられる。当該処方は、便宜に単位投与形態中にあってもよく、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。このような方法は、有効成分と、1つ以上の副成分を構成する担体とを結合させる工程を含む。一般的に、当該処方は、有効成分と、液状担体または細かく割られた固形担体または両方とを、均一に、かつ密接に結合させ、次いで、必要であれば、その生成物を成形することによって調製される。
【0103】
固形組成物のために、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム等の従来の無毒性固形担体を使用してもよい。活性な化合物(デキサメタゾン結合の阻害剤)を、例えば、ポリアルキレングリコール、アセチル化されたトリグリセリド等を担体として使用して、座剤として処方してもよい。液体の薬剤的に投与可能な組成物は、例えば、上記の活性な化合物、および担体(例えば、水、生理食塩水、水溶性のブドウ糖、グリセロール、エタノール等)中に、任意の配合剤(pharmaceutical adjuvant)を溶解、分散等し、それによって、溶液または懸濁液を形成することによって調製される。
【0104】
このような投与形態を調製する実際の方法は、当業者に公知、または明白である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、第15版、1975を参照)。投与される組成物または処方は、いずれの場合においても、治療されている患者の症状を軽減するのに効果的な量の活性な化合物を含む。
【0105】
無毒性担体で調整した0.25〜95%の範囲の有効成分を含む投与形態または組成物を調製してもよい。
【0106】
経口投与のために、薬剤的に許容できる無毒性の組成物は、いずれかの通常使用される賦形剤(例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム等)の取り込みによって形成される。このような組成物は、溶剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、徐放製剤等の形態をとる。このような組成物は、1%〜95%、さらに好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%の有効成分を含んでいてもよい。
【0107】
非経口投与は、一般的に、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射によって特徴付けられる。注射剤は、従来の形態(溶液または懸濁液のいずれかとして)、注射前に液体中の溶液もしくは懸濁液にするのに適した固形形態、または乳剤として調製できる。適した賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等である。
【0108】
近年、非経口投与のために考案されたアプローチは、一定レベルの投与量が維持される、徐放製剤または持続放出製剤の埋め込みを使用する。例えば、米国特許第3,710,795号明細書を参照。
【0109】
このような非経口組成物(parental composition)に含まれる活性な化合物の割合は、その特定の性質、および当該化合物の活性および患者の要求に高度に依存する。しかし、溶液中の0.1%〜10%の有効成分の割合が使用でき、組成物が、上記の割合に引き続いて希釈される固形物である場合はさらに高くなるだろう。好ましくは、当該組成物は、溶液中に0.2〜2%の活性薬剤を含む。
【0110】
静脈内、皮膚または皮下の注射について、有効成分は、パイロジェンを含まず、適したpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容できる水溶液の形態であるだろう。当業者は、例えば、等張の媒体(塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、乳酸リンゲル注射剤等)を使用して、適した溶液を十分に調製できる。保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加剤は、必要であれば含まれていてもよい。
【0111】
上記阻害方法は、例えば、研究目的、または他の理由のために、原則として、in vitroで行われてもよい。
【0112】
所望であれば、投与される医薬組成物はまた、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラート、オレイン酸トリエタノールアミン等)の少量の無毒性補助物質を含んでいてもよい。
【0113】
本願明細書に記載される通り、GPR55および特に細胞外領域に特異的な抗体は、診断上および予後診断上の有用性を有し、当該技術分野で公知の方法によって得られ、または与えられてもよい。
【0114】
本発明の抗体は、動物に抗原を注入することによって、ポリクローナル血清として産生してもよい。好ましいポリクローナル抗体は、当該技術分野で公知の技術を使用して、抗原を動物(例えば、ウサギ)に接種することによって産生されてもよい。当該抗原は、(グリコシル化された形態またはグリコシル化されていない形態の)全GPR55タンパク質、またはその断片であってもよい。
【0115】
あるいは当該抗体は、モノクローナルであり、マウスにおいて産生されていてもよい。従来のハイブリドーマ技術が、抗体を産生するために使用されてもよい。本発明のモノクローナル抗体を産生するために使用される抗原は、(グリコシル化された形態またはグリコシル化されていない形態の)全GPR55タンパク質またはその断片であってもよい。
【0116】
当該抗体は、γ−免疫グロブリン(IgG)であることが好ましい。
【0117】
抗体の可変部が、抗体の特異性を定め、そのため、この領域は、本発明の抗体の機能的誘導体において保存されなければならないことが理解されるだろう。可変領域を超えた領域(C領域)は、配列において相対的に一定である。本発明の抗体の特徴部は、VH領域およびVL領域であることが理解されるだろう。CH領域およびCL領域の正確な性質は、全体的に見ると、本発明にとって重要ではないことがさらに理解されるだろう。実際は、本発明の好ましい抗体は、非常に異なるCH領域およびCL領域を有していてもよい。さらに、下記でより完全に論じられる通り、好ましい抗体の機能的誘導体は、C領域を含まない可変領域を含んでいてもよい(例えば、scFV抗体)。
【0118】
抗体の誘導体は、ポリクローナル混合物中のモノクローナル抗体または特異的な抗体と75%の配列同一性、さらに好ましくは90%の配列同一性を有していてもよく、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。ほとんどの配列の変異性が、フレームワーク領域(FRs)中で生じていてもよい一方で、抗体のCDRsの配列、およびその機能的誘導体はほとんど保存されていることが理解されるだろう。
【0119】
本発明の第7の態様のいくつかの好ましい実施態様は、可変領域および定常領域の両方を有する分子に関連する。しかし、定常部を全く含まず抗体の可変部を基本的に含む抗体断片(例えば、scFV抗体)もまた、本発明に包含されることが理解されるだろう。
【0120】
1つの種中で生じた抗体は、異なる種を治療するために使用される場合、いくつかの重大な欠陥を有することが知られる。例えば、マウスの抗体がヒトにおいて使用される場合、当該抗体は、血清中で短い循環半減期を有する傾向にあり、治療されている患者によって、異種タンパク質として認識される。これは、不必要なヒト抗マウス(またはラット)抗体反応の発生をもたらす。これは、特に、抗体の頻繁な投与が要求される場合に、その排除を促進し、その治療効果を遮断し、過敏反応を誘導する可能性があるため、厄介である。従って、ヒト治療における使用のための好ましい抗体(非ヒト由来の抗体である場合)はヒト化される。
【0121】
モノクローナル抗体は、非ヒトmAbsの産生を通常伴うハイブリドーマ技術によって産生される。当該技術によって、ほぼ全ての特異性を有するげっ歯類のモノクローナル抗体を産生できる。従って、本発明の好ましい実施態様では、このような技術を、GPR55に対するモノクローナル抗体を開発するために使用してもよい。このような抗体は、治療的に有用であるが、このような抗体は、(上記の通り)ヒトにおける理想的な治療薬ではないことが理解されるだろう。理想的には、ヒト モノクローナル抗体は、医薬用途において好ましい選択であるだろう。しかし、従来の細胞融合技術を使用したヒトmAbsの産生は、現在まであまりうまくいっていない。ヒト化の問題は、非ヒト(例えば、げっ歯類)mAbs由来のV領域配列、およびヒト抗体由来のC領域(理想的には、V領域由来のFRs)配列を使用する抗体の設計によって、少なくとも部分的に取り組まれる可能性がある。得られる「設計された」mAbsは、その由来であるげっ歯類のmAbsよりも、ヒトにおいて免疫原性が少なく、そのため、臨床使用について、より適している。
【0122】
ヒト化された抗体は、キメラのモノクローナル抗体であってもよく、これは、組み換えDNA技術を使用して、げっ歯類の免疫グロブリンの定常部が、ヒト抗体の定常部に置き換えられる。次いで、キメラのH鎖およびL鎖の遺伝子は、完全にグリコシル化された抗体を産生するために、適した制御因子を含む発現ベクターにクローニングされ、哺乳類細胞に導入されてもよい。この工程において適切なヒトH鎖のC領域遺伝子を選択することによって、抗体の生物学的活性は、あらかじめ定められる可能性がある。このようなキメラ抗体は、エフェクター機能を活性化する能力を、特定の医薬用途について、目的に合わせることができ、当該キメラ抗体が誘導する抗グロブリン反応を低下させる点で、非ヒトのモノクローナル抗体よりも優れている。
【0123】
このようなキメラ分子は、本発明の乳癌の治療にとって好ましい薬剤である。RT−PCRは、ヒト領域を有するmAbのキメラ体を構築するためにクローニングされ使用される好ましいmAbsから、VHおよびVLの遺伝子を単離するために使用してもよい。
【0124】
抗体のさらなるヒト化は、CDRグラフト、または抗体の再形成を伴ってもよい。このような抗体は、げっ歯類のmAbの重鎖および軽鎖のCDRs(これは当該抗体の抗原結合部位を形成する)を、ヒト抗体の対応するフレームワーク領域に移植することによって産生される。
【0125】
本発明のタンパク質およびペプチド薬剤(例えば、GPR55阻害剤)は、いくつかの方法(標的部位でのプロテアーゼ活性等)によって分解にさらされてもよい。このような分解は、その生物学的利用率を制限し、従って、治療有効性を制限する可能性がある。生物学的構成において改善された安定性を有するペプチド誘導体を設計および産生できる、いくつかの十分に確立された技術がある。このようなペプチド誘導体は、プロテアーゼを媒介した分解に対する増加した抵抗性の結果として、改善された生物学的利用率を有していてもよい。好ましくは、本発明の使用に適した誘導体は、その由来であるタンパク質またはペプチドよりも、さらにプロテアーゼ耐性がある。ペプチド誘導体、およびその由来であるタンパク質またはペプチドのプロテアーゼ抵抗性は、周知のタンパク質分解アッセイの方法によって評価されてもよい。次いで、ペプチド誘導体およびペプチドについてのプロテアーゼ抵抗性の相対値は、比較されてもよい。
【0126】
本発明のタンパク質およびペプチドのペプトイド誘導体は、本発明の第1の態様の受容体の構造、または本発明の第4、5または6の態様の薬剤の知識から、容易に設計できる。市販のソフトウェアを、よく確立された手順に従って、ペプトイド誘導体を開発するために使用してもよい。
【0127】
レトロペプトイド(この中で、全てのアミノ酸が、ペプトイド残基によって、逆転した順序で置き換えられる)もまた、本発明のタンパク質またはペプチドを模倣できる。レトロペプトイドは、1つのペプトイド残基を含む、ペプチドまたはペプトイド−ペプチドのハイブリッドと比較して、リガンド結合溝中で逆方向に結合していることが予想される。結果として、当該ペプトイド残基の側鎖は、元々のペプチドにおける側鎖と同じ方向を向くことができる。
【0128】
本発明のペプチドまたはタンパク質の修飾された形態のさらなる実施態様は、D−アミノ酸の形態を含む。この場合、アミノ酸残基の順序は反転する。L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸を使用したペプチドの調製は、通常の代謝過程による、このような誘導体のいずれかの不必要な分解を大きく減少させ、その投与頻度と共に、投与に必要な誘導体の量を減少させる。
【0129】
上記の通り、異なる態様では、当該方法における使用のための阻害剤は、GPR55の発現を減少させる核酸である可能性がある。これは、転写レベルまたは翻訳レベルで作用する可能性がある。
【0130】
1つの実施態様では、これは、内在性のGPR55転写物に結合するアンチセンスDNAまたはRNAの分子であってもよい。このようなアンチセンス分子は、GPR55発現を減少させ、それによって、GPR55に媒介された活性を減少させる。
【0131】
siRNAもまた、本発明の薬剤として使用されてもよい。siRNAは、mRNAの配列特異的な破壊をもたらし、遺伝子発現の標的とされたノックアウトを可能にするRNA干渉(RNAi)として知られる、遺伝子発現抑制機構の一部を形成する。遺伝子発現抑制において使用されるsiRNAは、典型的に各3’末端で2−ヌクレオチドオーバーハングを有する、21のヌクレオチド長の二本鎖RNAを含む可能性がある。あるいは、ヘアピンループによって結合されたセンス配列およびアンチセンス配列を使用した、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を使用してもよい。siRNAおよびshRNAの両方は、化学的に合成し、細胞に一過性のRNAiを導入することができ、または、遺伝子発現の長期間の阻害のためのプロモーターから内在的に発現させることができる。本発明の薬剤としての使用のためのsiRNA分子は、10〜50のヌクレオチドの二本鎖RNAの片方を含んでいてもよい。好ましくは、本発明の薬剤としての使用のためのsiRNAは、18〜30のヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、本発明の薬剤としての使用のためのsiRNAは、21〜25のヌクレオチドを含む。最も好ましくは、本発明の薬剤としての使用のためのsiRNAは、21のヌクレオチドを含む。
【0132】
GPR55についてプレデザインされたsiRNAは、アプライドバイオシステムズ(米国、カリフォルニア州 94404、フォスターシティー、850 リンカーン センター ドライブ)から、現在は、Silencer(登録商標)Select si RNAs(IDs s17760−s17762)という商品名で市販されている。
【0133】
従って、当該ベクターは、当該技術分野で公知の方法(例えば、本願明細書において引用された参考文献のいずれかに記載された方法;当該参考文献は、参照により、本願明細書に特に組み込まれる)のいずれかによってsiRNAを、細胞に導入するのに適した、GPR55をコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0134】
1つの実施態様では、当該ベクターは、センスおよびアンチセンスの方向の両方の本発明の核酸配列を含んでいてもよく、その場合は、RNAとして発現した場合、センスおよびアンチセンスの区画は、結合して二本鎖RNAを形成するだろう。これは、例えば、細胞中でプロセシングされてsiRNAを産生する可能性がある長い二本鎖RNA(例えば、23ヌクレオチド超)であってもよい(例えば、Myers(2003)Nature Biotechnology 21:324〜328を参照)。
【0135】
従って、GPR55の、20〜25bp、さらに好ましくは21〜23bpを含む二本鎖siRNAの使用は、例えば、任意に、分解を防ぐために保護された形態で、合成的に産生され、本発明の1つの態様を形成する。あるいは、siRNAは、ベクターから、(回収および使用のために)in vitroで、またはin vivoで産生されてもよい。
【0136】
本願明細書におけるいずれの副題も、便宜のみのために含まれ、多少なりとも開示内容を制限するものとして解釈されるものではない。
【0137】
本発明については、これから、下記の非限定的な図および実施例への参照と共に、さらに記載される。本発明の他の実施態様は、これらを踏まえて、当業者が思い付くだろう。
【0138】
本願明細書で引用された全ての参考文献の開示は、当業者によって本発明を実施するために使用される限り、相互参照によって本願明細書に特に組み込まれる。
【実施例】
【0139】
下記の方法を、本願明細書における実施例の実行において使用した。
【0140】
(細胞培養)
MDA−MB231:これは、高転移性ヒト乳癌細胞株である。in vitroでは、MDA−MB−231細胞株は、浸潤性の表現型を有する。
【0141】
MCF7:このヒト乳腺癌細胞株は、MDA−MB231よりも、少ない浸潤性の表現型を有する。
【0142】
T47D:ヒト乳管癌。この細胞株は、コラーゲン線維芽細胞マトリックスを透過できないこと、およびボイデンチャンバーによる化学浸潤(chemoinvasion)および走化性のアッセイにおいて活性が低いことから、in vitroで非浸潤性であると考えられている。
【0143】
上記の細胞株の詳細は、テキサス大学 MD アンダーソン癌センターの「breast cancer cell line database」(テキサス大学 MD アンダーソン癌センター;1515 Holcombe Blvd、Houston、TX 77030;http://www.mdanderson.org/departments/cancerbiology/)において見出すことができる。
【0144】
細胞培養物を、それらのそれぞれの培地中に維持した。ただし、MDA−MB231は、5% CO2、37℃でインキュベーションした。MDA−MB231細胞を、37℃で、CO2を含まない恒温器でインキュベーションした。
【0145】
細胞を、20mLのそれらのそれぞれの培地を含む200mlの培養フラスコ中で、コンフルエントまで培養した。コンフルエンスに達した際に、細胞培養物を5mLのPBSで洗浄し、5mLの非酵素的細胞解離溶液を使用して、フラスコ表面から解離させた。5mLのそれらのそれぞれの培地を加え、細胞懸濁液の一部を、20mlの培地を含む新しい200mlの細胞培養フラスコに移した。
【0146】
RNA抽出手順における使用のため、トリゾールを細胞可溶化物に加え、トリゾール可溶化液を、−80℃で、後の使用のために凍結した。
【0147】
(RNA抽出)
凍結したトリゾール可溶化液を、氷上で解凍し、ゲノムDNAを、当該可溶化液を、19Gの針に、数回、粘性がなくなるまで通すことによって剪断した。0.2mlのクロロホルムを加え、当該溶液を、室温で5分間インキュベーションし、核小体タンパク質複合体を分離させた。
【0148】
当該溶液を12000rpm、4℃で15分間、遠心分離し、水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。0.5mLのイソプロパノールを加えた後、当該溶液を、室温で10分間インキュベーションし、RNAを沈殿させた。次いで、当該溶液を、12000rpm、4℃で10分間、遠心分離し、水相を移し、目に見える白色のRNAペレットを放置した。
【0149】
当該RNAペレットを、1mLの75% エタノールを加えることによって洗浄し、ボルテックスし、次いで、12000rpm、4℃で5分間、遠心分離した。水相を移し、当該試料を風乾させた。当該RNA試料を、100μlのH2O中で希釈した。
【0150】
(RNA精製)
RNA精製を、キアゲン RNeasy minikitを使用して行った。
【0151】
350μlのRLTバッファーを各100μlのRNA試料水溶液に加え、混合した。250μlの無水エタノールを各RNA試料に加え、ピペッティングによって混合した。各試料を、RNeasy minicolumnに移し、12000rpm、室温で15秒間、遠心分離した。各カラムを、新しい回収チューブに移した。500μlのRPEバッファーを、各RNeasy columnに加え、次いで、12000rpm、室温で15秒間、遠心分離した。500μlのRPEバッファーを再度加え、当該カラムを、12000rpm、室温で、2分間、遠心分離した。回収チューブを空にし、当該カラムを12000rpm、室温で、2分間、再度遠心分離し、エタノールを完全に除去した。
【0152】
RNeasy columnを、1.5ml 回収チューブに移し、30μl H2Oを各カラムに加えた。当該試料を、H2Oと共に、室温で2分間インキュベーションし、その後、12000rpm、室温で1分間、遠心分離した。RNeasy columnを、新しい1.5ml 回収チューブに移し、第2の30μl H2Oを加え、2分間、室温でインキュベーションした。次いで、当該カラムを、12000rpm、室温で1分間、遠心分離したが、第1のH2O遠心工程に対して、鉛直軸上に180度回転させた。これは、RNeasy column表面上に不均等に分布したRNAが失われないようにするためである。
【0153】
第1および第2のH2Oインキュベーションならびに遠心からの、3μlの一定分量のRNA試料を、NanoDrop(登録商標)分光光度計における使用のために調製した。
【0154】
(NanoDrop(登録商標)分光測定)
NanoDrop(登録商標)ND−1000 UV−Vis 分光光度計およびソフトウェアを、1回分の精製された各RNA試料についてのRNA濃度、および260/230nmの吸光度比を測定するために使用した。
【0155】
分光光度計を、DEPC処理水の「ブランク」で較正した。次いで、試料を、NanoDrop(登録商標)分光光度計に個々に入れ、吸光度を測定し、記録した。RNA濃度値を、NanoDrop(登録商標)ソフトウェアによって算出した。
【0156】
各細胞株について最も高いRNA濃度を与えた試料を、cDNAの作製のために使用し、他の試料は捨てた。精製されたRNA試料を、少量ずつ分注し、−80℃で、後の使用のために凍結した。
【0157】
(逆転写)
2μgのRNAを得るために必要な各RNA試料溶液の量を、NanoDrop(登録商標)分光光度計を使用して定めた濃度値を使用して算出した。この量を、0.5mlのDEPC処理され、オートクレーブされたチューブに移し、後に作成する逆転写していない対照試料のためにこれを2回行った。次いで、これらの試料を、DEPC処理水中で希釈し、総量11μlにした。1μlのランダムプライマー(濃度 2μg/μl)を各RNA試料に加え、パルスボルテックスした。
【0158】
次いで、各試料を10分間、70℃で、サーモサイクラーにかけた。当該試料を3分間、氷上で冷却し、次いで、パルスし、反応物をペレットにした。4μlの5×反応バッファー、1μlの10mM dNTP混合物、および2μlの0.1M DTTを、各試料に加えた。1μlの逆転写酵素を、各細胞株のRNA試料のうちの1つに加え、各細胞株についての別のRNA試料を逆転写酵素を含まない対照にした。当該試料を混合し、10分間、室温でインキュベーションした。当該試料を、42℃で、50分間、次いで95℃で、5分間サーモサイクラーにかけた。80μlのDEPC処理水を、各反応試料に加えた。
【0159】
(RT−qPCR解析)
プローブ反応溶液を、使用された各PCRウェル中に下記の量の物質を含むように混合した。1μlの目的の遺伝子(GPR55、CB1またはCB2)のTaqMan(登録商標)プローブ、1μlのVIC標識GAPDH プローブ、10μlのプローブ混合物および5μlのH2O。
【0160】
GPR55発現HEK293細胞、CB1発現NB1細胞、またはCB2発現H60細胞からのcDNAを、1、10、100、1000、10000および10000の係数で希釈し、これらの目的遺伝子についての標準曲線を作成した。
【0161】
3μlの標準曲線の希釈物を反応混合物を含むウェルに加え、これを2回行った。各細胞株からの3μlのcDNAを、個々の反応ウェルに加え、これを3回行い、各細胞株について3μlの逆転写していないRNA試料を、反応ウェルに加え、これを3回行い、対照にした。
【0162】
プローブ反応混合物のみを含みcDNA溶液を含まない2つのブランクのウェルもまた、対照として作製した。プラスチックフィルムをPCRプレートのウェルを覆うために使用し、当該プレートを1分間、反応混合物をスピンダウンするために遠心分離した。Roche LightCycler(登録商標)480、およびDual Colour Hydrolysis Probe Assay templateを有するソフトウェアを、qPCR解析のため、かつ、相対的なGAPDHおよび目的の遺伝子(GOI)の発現を定量するために使用した。二重鎖cDNAの変性を、95℃の温度で行い、cDNA二本鎖のアニーリングを60℃で行った。変性およびアニーリングを、それぞれ、10秒および30秒のサイクルで、計40サイクル行った。GOIおよびGAPDHの発現についての標準曲線を、cDNAの異なる希釈係数の蛍光についての所定の閾値に達するのに必要な増幅サイクル数から作成した。次いで、この標準曲線を、各癌細胞株についての試験試料中のGOIおよびGAPDHのcDNAの任意の濃度を算出するために使用した。
【0163】
3回分の試験試料についての目的の遺伝子およびGAPDHの平均濃度を算出した。次いで、目的の遺伝子の濃度を、それらの値をその対応するGAPDH濃度値で割ることによって、標準化した。
【0164】
GPR55について、発現ついての、これらの標準化された濃度値を、MDA−MB231に対して表わした(この細胞株が最も高いレベルのGPR55発現を有することが見出されたためである)。
【0165】
(ボイデンチャンバー細胞遊走)
全ての走化性アッセイに使用された細胞をそれらのそれぞれの無血清培地に漬け、実験の前に19時間インキュベーションした。血清飢餓細胞を5ml PBSで洗浄し、その培養プレートから、5mLの非酵素的細胞解離溶液を使用して解離した。細胞の解離後、5mLの各無血清培地を加え、細胞懸濁液を汎用容器(universal container)に移し、2000rpmで5分間遠心分離した。上清液を捨て、残った細胞ペレットを、2mLの無血清培地中に再懸濁した。
【0166】
10μlの得られた細胞懸濁液を血球計算器に移し、1mLの懸濁液あたりの細胞数を、計測した細胞数から算出した。無血清培地を、細胞懸濁液に、当該懸濁液を1×106細胞/mlの細胞数にするために必要な量加えた。
【0167】
(手順 I−細胞遊走に対するGPR55リガンドの濃度勾配の効果)
10% FBS(0.01% DMSO媒体を含む)、0.01% DMSO媒体対照および1μMの試験薬物(0.01% DMSO媒体中のO−1602)の溶液を調製した。全ての希釈は、試験された細胞型についての適切な無血清培地中で行った。実施された各アッセイについて、ボイデンチャンバーの24の中央のウェルを使用した。下部チャンバーのウェルに、26μlの溶液を入れ、やや正のメニスカスを形成した。8μmの孔直径のポリカーボネートフィルターで、下部のウェルを覆い、ボイデンチャンバーのシリコンガスケットも定位置に置いた。次いで、上部チャンバーを定位置に固定し、45μlの細胞懸濁液を24の上部のウェルのそれぞれに加えた。次いで、ボイデンチャンバーを37℃(細胞型に応じて、CO2を含む、または含まない)で4時間インキュベーションした。
【0168】
この手順において、各化合物の濃度勾配の化学誘引効果を、化合物についての化学誘引効果を示す、上部のウェルから当該フィルターの下側への細胞遊走によって試験した。
【0169】
(手順 II 細胞遊走へのCBDまたはLPIによる細胞の前処理の効果)
1×106細胞/mlの細胞懸濁液を2回分調製し、適量の0.1% DMSOおよび1μM CBDまたはLPI(共に0.1% DMSO媒体を含む)を1回分ずつに加え、細胞懸濁液の濃度を0.01% DMSOおよび1μM 試験化合物(0.01% DMSO媒体を含む)にした。当該細胞懸濁液を、各化合物と共に、30分間、37℃、5% CO2中でインキュベーションした。
【0170】
このように、実施されたアッセイでは、10% FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体への0.01% DMSO媒体で処理された細胞の遊走、ならびに1μMまたは100nMのCBD(10% FBSおよび0.01% DMSOを含む)への1μMまたは100nMのCBD処理された細胞の遊走を試験した。当該ボイデンチャンバーを、37℃、5% CO2で、4時間、インキュベーションした。
【0171】
(遊走細胞の固定および染色)
インキュベーション後、当該ボイデンチャンバーを解体し、フィルターを取り外し、70% エタノールを含むペトリ皿に、遊走細胞側を上に向けて、7分間置いた。次いで、当該フィルターを、蒸留水を含むペトリ皿に2分間、遊走細胞側を上に向け、移した。次いで、非遊走細胞側のフィルターにワイパーブレードを引き、全ての非遊走細胞を除き、当該フィルターを風乾させた。
【0172】
次いで、当該フィルターの遊走細胞側を固定し、DiffQuik(登録商標)染色セットを使用して染色した。次いで、当該フィルターを、外科用メスを使用して、2片に切り、2列の柱状(column)にした。各フィルター片を、キシレンおよびp−キシレン−ビス−ピリジニウムブロマイドを使用して、顕微鏡スライド上に載せた。
【0173】
(遊走細胞の計測)
遊走細胞を、Leitz顕微鏡を使用して計測した。個々のウェルおよびその境界を10倍の対物レンズを使用して視覚化し、次いで、細胞を40倍の対物レンズを使用して計測した。各遊走ウェル内の3つの重複していない40倍の視野のうちの4分の1において見出された細胞を計測した。計測された各ウェル中で同一の視野を選択した。各視野内の細胞の全量を、4分の1において見出された細胞数に4を掛けることによって算出した。次いで、4つの視野のそれぞれについての細胞数を合計し、この数字を各個々のウェル内で遊走した細胞数についての測定値として使用した。
【0174】
各個々の薬物型について行われた全てのアッセイについての結果を、0.01% DMSO媒体対照のウェル中で遊走した平均細胞数を算出することによって貯えた。次いで、各個々のウェルについての細胞数を、媒体の平均の割合として表わした。
【0175】
(Cultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ)
細胞を80%のコンフルエンスまで培養し、次いで、アッセイ開始前に一晩血清飢餓に置いた。氷上で、0.5×BME原液を、5×原液から、コニカルチューブ中で調製し、反転させて混合した。100μlのBME原液を24ウェルプレートの各ウェルへ分注し、当該チャンバーを37℃で一晩インキュベーションした。翌朝、細胞を播種し、1×洗浄バッファーを使用して1度洗浄し、計測し、5×105細胞/mlの密度に再懸濁した。次いで、上部チャンバーを慎重に吸引し、チャンバーを乾かさないように注意し、ウェルあたり100μlの細胞を当該上部チャンバーに加えた。次いで、ウェルあたり500μlの(化学誘引物質を含む、または含まない)培地を、当該チャンバーの下部のウェルに加えた。次いで、当該チャンバーを組み立て、37℃で、加湿された環境で、24時間インキュベーションした。翌日、上部チャンバーを注意深く吸引し、100μlの1×洗浄バッファーで洗浄し、下部のウェルを500μlの洗浄バッファーで洗浄した。12μlのカルセインAM溶液を12mLの細胞解離液に加え、500μlのこの溶液を下部チャンバーに加えた。次いで、チャンバーを再度組み立て、37℃で1時間インキュベーションした。次いで、上部チャンバーを取り外し、溶解したカルセインAMを485nmの励起波長、520nmの発光波長で判定した。
【0176】
(組織培養および一過性の細胞形質移入)
MDA−MD−231細胞を、10% ウシ胎児血清(FBS)および2mM L−グルタミンを補充したLeibovitz培地中で維持し、37℃で、CO2を含まない環境でインキュベーションした。MCF7細胞を、10% FBSおよび2mM L−グルタミンを補充したDMEM中で維持し、37℃、5% CO2でインキュベーションした。
【0177】
MCF7細胞を、GPR55もしくは空ベクタープラスミド、GPR55もしくは陰性対照siRNA、またはこれらの組み合わせで、Amaxa Nucleofector II(溶液Vを使用)での電気穿孔により、それぞれプログラム X−013またはP−020で、これらの細胞株について推奨される手順に従い、形質移入した。下記の細胞走化性アッセイを進める前に、細胞を、形質移入後に24時間インキュベーションした。GPR55発現のノックダウンのため、GPR55に対する一連の4つの二本鎖siRNAを使用した(ON−TARGET plus siRNA、Dharmacon社製、カタログ番号:LQ−005581−00)。
【0178】
(実施例1 細胞株中の受容体の発現レベル)
異なる細胞株中のGPR55、CB1またはCB2の濃度を、上記方法で記載したように、RT−qPCRを使用して定め、次いで、それらの値を、それらのそれぞれのGAPDH濃度で割ることによって、標準化した。MDA−MB231細胞株は、最も高いレベルのGPR55発現を有することを見出し、このレベルを100%として定め、他の細胞株中の発現のレベルを、これに対して算出した。相対的なGPR55発現についての結果を、図1に示す。
【0179】
GPR55発現を、乳癌細胞株中で見出した。MCF7中のGPR55の発現は、MDA−MB231よりも、統計的に低かった。
【0180】
CB1の発現は、MCF7細胞株中のみで見出され、他の癌細胞株のいずれにおいても、CB1のcDNAは検出されなかった。MCF7中の発現もまた、希釈されていない神経芽細胞腫(NB1)cDNAについての発現と比較して、相対的に低いことが見出された。
【0181】
CB2の発現は、T47D細胞株中のみで見出され、他の癌細胞株では検出されなかった。
【0182】
下記の表2は、異なる癌細胞株中で見出される異なるカンナビノイド受容体GPR55、CB1およびCB2についての、相対的な発現レベル(平均値±S.E.M)の概略を示す。
【0183】
【表2】
【0184】
従って、従来のカンナビノイド受容体(CB1およびCB2)の発現は、乳癌および前立腺癌の細胞株中ではほとんど検出不可能であることが見出された。CB1の発現は、NB1細胞株に対して0.6%の発現を有していたMCF7乳癌細胞株中でのみ見出された。AEAが、MCF7細胞株中の細胞増殖を阻害することが以前に示された。
【0185】
全ての他の癌細胞株(MDA−MB231、MDA−MB231サブクローン、T47DおよびLNCap)について、RT−qPCRは、CB1発現を全く検出しなかった。
【0186】
CB2の発現は、T47D乳癌細胞株中のみで見出され、HL60細胞株に対して、2%の発現を有していた。他の細胞株(MDA−MB231、MDA−MB231 サブクローン、MCF7およびLNCap)のいずれにおいても、CB2の発現は検出されなかった。これは、MDA−MB231細胞株およびMCF7細胞株中でCB2の発現が検出されなかったMcKallipら(2005)による研究と一致している。
【0187】
新規なカンナビノイド受容体GPR55の発現は、細胞株全体でより制限された発現を有するCB1およびCB2受容体と対照的に、より広い範囲の癌細胞において見出された。MDA−MB231、MDA−MB231 サブクローンおよびT47D細胞は、最も高いレベルのGPR55発現を有することが見出され、MCF7細胞は、より制限されたレベルの発現を示した。しかし、CB1およびCB2と対照的に、GPR55 cDNAの増幅による蛍光は、全ての癌細胞株中のGPR55についての所定の交点に達した。これは、GPR55発現が、癌細胞株中のCB1およびCB2よりも相対的に高い可能性があることを示唆する。
【0188】
当該結果は、癌細胞株の病原力と、GPR55のその相対的な発現との間の相関を示す。MDA−MB231細胞は、in vitroでの比較において、非常に浸潤性であり、一方、T47D細胞およびMCF7細胞は、相対的に非浸潤性であると以前に同定された(Breast Cancer Cell Line Database、M.D.アンダーソン癌センターのウェブサイト;Sommersら、1994)。
【0189】
本願明細書に記載される新規な発見は、染色体2q上のGPR55遺伝子の位置と一致し、この位置は、乳癌細胞中で不安定であるとして以前に同定された領域である(Millerら、2003)。
【0190】
さらに、少なくとも70の遺伝子中の変化した遺伝子発現の「サイン」は、原発転移性癌細胞のDNAマイクロアレイ解析によって以前に同定され、これらの遺伝子のうち58が上方制御されることが見出された(van’t Veerら、2002)。さらに、in vivoでの研究では、MDA−MB231細胞がマウスに注入され、骨に特異的に転移する細胞が単離され、発現の変化が、これらの70の予後不良の遺伝子のうち46で見出された(Minnら、2005)。興味深いことに、MDA−MB231細胞中のこれらのサイン遺伝子(signature gene)の1つであり、GPR55の下流で活性化されるCdc42は、上方制御されることが示された(Minnら、2005)。
【0191】
最後に、G12およびG13は、共にヘテロ三量体Gタンパク質のG12ファミリーに属し(RioboおよびManning、2005)、癌細胞および異常増殖の発生についての重要な形質転換因子であることが以前に見出された(RadhikaおよびDhanasekaran、2001)。近年では、乳癌細胞中のこれらのGタンパク質のα−サブユニットの発現は、in vitroでその侵襲性を増加させることが示された。G12の阻害はまた、in vivoで乳癌細胞の転移のレベルを減少させることが示され、興味深いことに、増加したG12の発現が生検によって採取された初期段階のヒト乳癌細胞中で見出された。G12の活性化はまた、乳癌細胞中でRho GTPアーゼの活性化を導くことが見出された(Kellyら、2006)。最近の研究(Rybergら、2007)は、GPR55共役タンパク質をG13として同定した。
【0192】
要約すると、発明者らは、CB1およびCB2の発現は単一の細胞株に限られた一方、GPR55発現は、試験された全ての癌細胞株において見出されたことを示した。当該結果はまた、癌細胞株の相対的な病原力と、GPR55発現の相対的レベルとの相関を示した。
【0193】
(実施例2:ボイデンチャンバーアッセイにおけるMDA−MB231サブクローンの走化作用の刺激)
(FBS対媒体)
血清飢餓細胞を使用し、FBS(0.01% DMSOを含む)の化学誘引物質の効果を、その0.01% DMSO媒体対照に対して試験し、これをまた、後に、試験カンナビノイド化合物のための媒体として使用した。このアッセイの結果を図4に示す。
【0194】
図4は、腫瘍細胞の遊走が、10% FBS(0.01% DMSOを含む)を含むウェルにおいて有意に増加し、平均遊走数は、0.01% DMSO媒体対照単独の存在下で認められたもののほぼ4倍であることを示す。
【0195】
(O−1602)
図5は、推定上のGPR55作動薬であるO−1602(0.01% DMSO中で調製した)と共に行ったボイデンチャンバー走化性アッセイの結果を示す。FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。
【0196】
1μMの推定上のGPR55作動薬O−1602は、媒体対照と比較して細胞遊走を有意に増加させ、細胞株に対して化学誘引物質の特性を有することが見出された。
【0197】
(JWH015)
図6は、FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSOをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した、血清飢餓細胞に対するGPR55作動薬JWH015(0.01% DMSOを含む)の化学誘引物質の効果を示す。
【0198】
提案されたGPR55作動薬JWH015は、対照と比較して細胞数が有意に増加し、細胞遊走に対する陽性の効果を有することが見出された。
【0199】
(AEA)
図7は、血清飢餓細胞の遊走への内在性カンナビノイドAEA(0.01% DMSOを含む)の効果を示す。FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体を、それぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。
【0200】
内在性カンナビノイドのリガンドAEAもまた、対照と比較して細胞数が有意に増加し、細胞遊走に対する陽性の効果を有することを見出した。FBSの結果は、全ての以前の遊走アッセイにおいて見出されたものと一致した。
【0201】
(実施例3:ボイデンチャンバー走化性アッセイおよび浸潤アッセイにおける、CBDによるMDA−MB231の走化作用の阻害)
図8は、血清飢餓細胞の遊走に対するCBD(0.01% DMSOを含む)の効果を示す。FBS(0.01% DMSOを含む)および0.01% DMSO媒体をそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。CBDは、腫瘍細胞の遊走に対して効果がなく、対照と比較して、遊走細胞数における有意差がないことを見出した。
【0202】
MDA−MB231細胞を、GPR55拮抗薬であるCBD(1μM、0.01% DMSOを含む)または0.01% DMSO媒体と共にプレインキュベーションし、FBSの濃度勾配への遊走に対する効果を、3つの個々のボイデンチャンバー遊走アッセイを使用して測定した。1μM CBD(0.01% DMSOを含む)もまた、10% FBS(0.01% DMSOを含む)と共にCBD処理された細胞の遊走ウェル中に入れ、CBDの濃度勾配が存在しないようにした。従って、FBSに誘導された遊走に対する効果は、CBDプレインキュベーションによるものだろう。図9は、CBDが、FBSへの腫瘍細胞の走化作用を有意に阻害することを表わす結果を示す。
【0203】
CBD(1μM)プレインキュベーションもまた、FBSへの腫瘍細胞の浸潤に対する阻害効果を有することを見出した(図10)。FBSの浸潤促進効果は、CBDによる前処理によって有意に減弱された。
【0204】
(実施例4:ボイデンチャンバー走化性アッセイにおける、LPIによるMDA−MB231の走化作用の増強)
MDA−MB231細胞を、GPR55作動薬であるLPI(1μM、0.01% DMSOを含む)または0.01% DMSO媒体と共にプレインキュベーションし、FBSの濃度勾配への遊走に対する効果を、3つの個々のボイデンチャンバー遊走アッセイを使用して測定した。1μM LPI(0.01% DMSOを含む)も、10% FBS(0.01% DMSOを含む)と共にLPI処理細胞の遊走ウェルに入れ、LPIの濃度勾配が存在しないようにした。従って、FBSに誘導された遊走への効果は、LPIのプレインキュベーションによるものだろう。図11は、LPIが、FBSへの腫瘍細胞の走化作用を有意に増加させることを表わす結果を示す。LPIの効果は、GPR55拮抗薬であるCBDと共にインキュベーションすることによって阻害される(図12)。
【0205】
(実施例5:GPR55の過剰発現は、MCF7細胞中の浸潤性の表現型を誘導し、腫瘍細胞の浸潤および遊走へのCBDおよびLPlの効果は、GPR55によって媒介される)
MCF7細胞は、非常に低いレベルのGPR55の自然発現を呈した(図1)。空ベクターを形質移入されたMCF7細胞は、Cultrex(登録商標)細胞浸潤アッセイ(図13)において、FBSへ遊走しなかった。対照的に、一過性にGPR55を過剰発現するMCF7細胞においては、FBSへの細胞の有意な浸潤があった(図13)。GPR55拮抗薬である、CBDは、対照(空ベクターを形質移入された)MCF7細胞の基礎の浸潤への効果がなかった。しかし、CBDは、GPR55を過剰発現するMCF7細胞中のFBSに誘導された浸潤を有意に阻害した(図13)。これらの結果は、CBDによる腫瘍細胞の浸潤の阻害は、GPR55によって媒介されることを示す。
【0206】
同様に、ボイデンチャンバー走化性アッセイにおいて、ベクターを形質移入されたMCF7細胞は、FBSへ遊走せず、LPIによって影響されなかった(図14)。しかし、GPR55を一過性に過剰発現するMCF7細胞において(図14)、LPIは、MDA−MB−231細胞中で認められたのと同様の様式でFBSに誘導された遊走を促進する。さらに、LPIへのGPR55を発現するMCF7細胞の遊走は、GPR55に対するsiRNAによって完全に阻害され、LPIによる細胞遊走の刺激は、GPR55によって媒介されることを確かめた。
【0207】
(概略)
1.乳癌細胞株MDA−MB−231は、GPR55を発現し、MCF7細胞は、この受容体を有意に低いレベルで発現する。
2.推定上のGPR55作動薬O−1602、AEA、およびJWH015は、全て、GPR55を発現する腫瘍細胞の遊走を促進することが見出された。
3.GPR55拮抗薬であるCBD(1μM)による、MDA−MB−231細胞の30分間の前処理は、遊走を消滅させ、FBSへの当該細胞の浸潤を減弱させることが見出された。対照的に、GPR55作動薬であるLPI(1μM)による、MDA−MB−231細胞の30分間の前処理は、FBSへの細胞の遊走を増加させることが見出された。細胞の生存率を評価するためのalamarBlue(登録商標)アッセイにおいて、CBDは、最大10μMの濃度での4時間の処理(遊走アッセイ)、または1μMでの24時間の処理(浸潤アッセイ)を行ったこれらの細胞への細胞傷害作用を有さなかったことに注意されたい。
4.MCF7細胞は、低いレベルのGPR55の自然発現を呈し、非浸潤性である。GPR55の過剰発現は、MCF7細胞中の浸潤性の表現型を誘導し、腫瘍細胞の浸潤および遊走へのCBDならびにLPIの効果は、GPR55によって媒介される。
【0208】
(実施例6 骨細胞中の内在性カンナビノイド産生)
(内在性カンナビノイド2−AGおよびアナンダミドは、細胞極性およびヒト破骨細胞による再吸収を刺激する)
10nMおよび100nMの2−AGによるヒト破骨細胞の処理は、細胞極性、すなわち、F−アクチンリング数(図11)および吸収活性における有意な増加をもたらしたが、この刺激効果は、より高濃度(1μM)では失われた。10nM〜1μMのアナンダミドによる破骨細胞の培養液の処理は、F−アクチンリング数に有意な変化をもたらさなかったが(データは示していない)、再吸収を有意に刺激した(図11)。
【0209】
(内在性カンナビノイドは、ヒトの骨芽細胞および破骨細胞によって産生される)
2−AGおよびアナンダミドの基礎レベルを、ヒトの骨芽細胞様細胞株、マクロファージ、および破骨細胞中で定量した。2−AGは、MG−63(0.11±0.02nmol/mg タンパク質)骨芽細胞様細胞、TE85(0.28±0.03nmol/mg タンパク質)骨芽細胞様細胞、ヒト マクロファージ(0.43±0.14nmol/mg タンパク質)、およびヒト破骨細胞(0.11±0.02nmol/mg タンパク質)中で検出され、マクロファージよりも破骨細胞において有意に低いレベルだった。アナンダミドは、MG−63細胞(0.12±0.01pmol/mg タンパク質)およびヒト破骨細胞(0.13±0.02pmol/mg タンパク質、6人の提供者のうちの4人)中で検出されたが、TE85骨芽細胞様細胞またはヒト マクロファージ中では検出されなかった。
【0210】
LPSによる処理は、3人の別々の提供者に由来するヒト破骨細胞において検出された2−AGのレベル(0.06±0.01から0.0.9±0.01nmol/mg タンパク質、0.24±0.08から0.20±0.02nmol/mg タンパク質、0.19±0.04から0.12±0.04nmol/mg タンパク質、図12A)を変化させなかったが、検出されたアナンダミドの量を大きく増加させた(0.06±0.01から0.14±0.03pmol/mg タンパク質、検出不可能から0.15±0.09pmol/mg タンパク質、または0.22±0.07pmol/mg タンパク質、図12B)。PTHによるMG−63細胞の長い処理は、検出された2−AGのレベルの有意な増加をもたらし(図12C)、検出されたアナンダミドのレベル(データは示していない)は変化しなかった。
【0211】
乳癌の転移は、しばしば骨組織に位置している。データは、内在性カンナビノイドが、骨中で産生され、これらは、腫瘍細胞の遊走に伴うPTH受容体の活性化に反応して産生されることを示す。さらに、内在性カンナビノイドは、腫瘍細胞への走化性因子として作用し、従って、高悪性度の転移性乳癌で上方制御されるGPR55受容体の活性化を介して、骨への腫瘍細胞の転移に関係する要因として作用する可能性がある。
【0212】
(参考文献)
Breast Cancer Cell Line Database、テキサス大学、M.D.アンダーソン癌センターのウェブサイト
http://www.mdanderson.org/departments/cancerbiology/dlndex.cfm?pn=31062032−BOEB−11D4−80FB00508B603A14(2008年4月7日に利用した)
【0213】
発明者;Brown A.、Wise A.
出願人;GlaxoSmithKline(2003)。米国特許第0,113,814号明細書
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【0228】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体から得た生物学的試料中の乳癌細胞の転移能を予測し、または転移の予後を判定する方法であって、前記細胞中のGPR55発現のレベルを評価する工程を含む方法。
【請求項2】
(a)前記試料をGPR55に特異的に結合する結合剤と接触させる工程、
(b)前記結合剤に結合するGPR55の量を検出する工程、
(c)GPR55の量を所定のカットオフ値と任意に比較し、それによって前記癌細胞の転移能を判定する工程、を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤は抗体である請求項2記載の方法。
【請求項4】
(a)前記試料中のGPR55 mRNAの量を定量する工程、
(b)前記試験試料中のGPR55 mRNAの量を、所定の値と任意に比較し、それによって前記癌細胞の転移能を判定する工程、を含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記試料中のGPR55 mRNAの量は、RT−qPCRによって定量される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料は、原発性腫瘍から採取されるものである請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記GPR55発現のレベルは、前記細胞中のリファレンス遺伝子またはタンパク質と比較されて標準化される請求項1〜6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記GPR55発現のレベルは、対照値と比較される請求項1〜7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記個体における転移のリスクもしくは可能性の診断における使用、または転移に対する治療のための個体の選択における使用のための請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(a)第1の時点で個体から得られた生物学的試料におけるGPR55発現のレベルを評価する工程と、
(b)引き続く時点で前記個体から得られた生物学的試料を使用して工程(a)を繰り返す工程と、
(c)工程(b)において検出されたGPR55発現のレベルを、工程(a)において検出された量と比較し、それによって前記個体の癌の進行をモニターする工程と、を含む個体における乳癌の進行をモニターするための方法。
【請求項11】
所定期間を通じて前記個体における転移のリスクをモニターし、または前記個体が受けている抗癌治療の有効性をモニターするための請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1項に記載の方法における使用のための検査キットであって、前記検査キットは、
(a)前記GPR55のヌクレオチド配列の少なくとも30の近接するヌクレオチドを含む核酸分子と、
(b)試料中のGPR55 mRNAへの核酸分子の結合を検出するための手段と、を含み、
または、前記検査キットは、
(a)GPR55に選択的に結合する抗体と、
(b)GPR55への前記抗体の結合を検出するための手段と、を含む検査キット。
【請求項13】
個体の乳癌の治療方法における使用のための薬剤についてのスクリーニング方法であって、前記薬剤はGPR55阻害剤であり、前記スクリーニング方法は、前記GPR55受容体への前記物質の結合を評価する工程、または前記GPR55の発現を阻害するその能力を評価する工程を含むスクリーニング方法。
【請求項14】
(i)GPR55を含む細胞または膜を、試験化合物に所定の時間の間曝露する工程と、
(ii)GPR55の活性または発現を検出する工程と、
(iii)前記化合物で処理された細胞または膜中の前記GPR55の活性または発現を、前記化合物で処理されていない対照細胞または対照膜中で見出された活性または発現に対して比較する工程と、
(iv)前記対照に対して、GPR55の活性を低下させ、またはGPR55の発現を低下させる薬剤を選択する工程と、を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
個体の乳癌の治療方法における使用のための医薬組成物を産生するための方法であって、前記方法は、
(i)請求項13または請求項14に記載の方法の使用によって薬剤を選択する工程と、
(ii)前記薬剤を産生する工程と、
(iii)前記薬剤を医薬組成物に処方する工程と、を含む方法。
【請求項16】
個体の乳癌の治療方法における使用のためのGPR55阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
腫瘍と、GPR55阻害剤とを接触させる工程を含む、患者における乳癌の治療方法。
【請求項18】
乳癌の治療のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用。
【請求項19】
前記GPR55阻害剤は、下記の様式のうち1つ以上の様式でその効果を発揮する、請求項13〜18いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用:
(a)GPR55の発現を低下させる
(b)GPR55に直接的に拮抗する、または受容体の脱感作もしくは受容体の分解を増大させる、
(c)GPR55と、その内在性リガンドとの間の相互作用を低下させる、
(d)GPR55に媒介された細胞内シグナルを低下させる、かつ/または
(e)内在性のGPR55と、内在性リガンド結合について競合させる。
【請求項20】
前記治療は、原発性乳癌の転移を阻害する請求項13〜19いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項21】
前記治療は、骨への原発性乳癌の転移を阻害する請求項13〜20いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項22】
前記治療は、癌の再発のリスクを低下させるアジュバント治療である請求項13〜21いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項23】
前記治療は併用療法であり、前記GPR55阻害剤は、同時に、または経時的に、乳癌の治療のためのさらなる治療的介入と組み合わせて使用される請求項13〜22いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項24】
前記さらなる治療的介入は、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、および/またはトラスツズマブの投与を含む請求項23記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項25】
前記さらなる治療的介入は、外科的介入である請求項23記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項1】
個体から得た生物学的試料中の乳癌細胞の転移能を予測し、または転移の予後を判定する方法であって、前記細胞中のGPR55発現のレベルを評価する工程を含む方法。
【請求項2】
(a)前記試料をGPR55に特異的に結合する結合剤と接触させる工程、
(b)前記結合剤に結合するGPR55の量を検出する工程、
(c)GPR55の量を所定のカットオフ値と任意に比較し、それによって前記癌細胞の転移能を判定する工程、を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤は抗体である請求項2記載の方法。
【請求項4】
(a)前記試料中のGPR55 mRNAの量を定量する工程、
(b)前記試験試料中のGPR55 mRNAの量を、所定の値と任意に比較し、それによって前記癌細胞の転移能を判定する工程、を含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記試料中のGPR55 mRNAの量は、RT−qPCRによって定量される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料は、原発性腫瘍から採取されるものである請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記GPR55発現のレベルは、前記細胞中のリファレンス遺伝子またはタンパク質と比較されて標準化される請求項1〜6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記GPR55発現のレベルは、対照値と比較される請求項1〜7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記個体における転移のリスクもしくは可能性の診断における使用、または転移に対する治療のための個体の選択における使用のための請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(a)第1の時点で個体から得られた生物学的試料におけるGPR55発現のレベルを評価する工程と、
(b)引き続く時点で前記個体から得られた生物学的試料を使用して工程(a)を繰り返す工程と、
(c)工程(b)において検出されたGPR55発現のレベルを、工程(a)において検出された量と比較し、それによって前記個体の癌の進行をモニターする工程と、を含む個体における乳癌の進行をモニターするための方法。
【請求項11】
所定期間を通じて前記個体における転移のリスクをモニターし、または前記個体が受けている抗癌治療の有効性をモニターするための請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1項に記載の方法における使用のための検査キットであって、前記検査キットは、
(a)前記GPR55のヌクレオチド配列の少なくとも30の近接するヌクレオチドを含む核酸分子と、
(b)試料中のGPR55 mRNAへの核酸分子の結合を検出するための手段と、を含み、
または、前記検査キットは、
(a)GPR55に選択的に結合する抗体と、
(b)GPR55への前記抗体の結合を検出するための手段と、を含む検査キット。
【請求項13】
個体の乳癌の治療方法における使用のための薬剤についてのスクリーニング方法であって、前記薬剤はGPR55阻害剤であり、前記スクリーニング方法は、前記GPR55受容体への前記物質の結合を評価する工程、または前記GPR55の発現を阻害するその能力を評価する工程を含むスクリーニング方法。
【請求項14】
(i)GPR55を含む細胞または膜を、試験化合物に所定の時間の間曝露する工程と、
(ii)GPR55の活性または発現を検出する工程と、
(iii)前記化合物で処理された細胞または膜中の前記GPR55の活性または発現を、前記化合物で処理されていない対照細胞または対照膜中で見出された活性または発現に対して比較する工程と、
(iv)前記対照に対して、GPR55の活性を低下させ、またはGPR55の発現を低下させる薬剤を選択する工程と、を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
個体の乳癌の治療方法における使用のための医薬組成物を産生するための方法であって、前記方法は、
(i)請求項13または請求項14に記載の方法の使用によって薬剤を選択する工程と、
(ii)前記薬剤を産生する工程と、
(iii)前記薬剤を医薬組成物に処方する工程と、を含む方法。
【請求項16】
個体の乳癌の治療方法における使用のためのGPR55阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
腫瘍と、GPR55阻害剤とを接触させる工程を含む、患者における乳癌の治療方法。
【請求項18】
乳癌の治療のための薬物の調製におけるGPR55阻害剤の使用。
【請求項19】
前記GPR55阻害剤は、下記の様式のうち1つ以上の様式でその効果を発揮する、請求項13〜18いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用:
(a)GPR55の発現を低下させる
(b)GPR55に直接的に拮抗する、または受容体の脱感作もしくは受容体の分解を増大させる、
(c)GPR55と、その内在性リガンドとの間の相互作用を低下させる、
(d)GPR55に媒介された細胞内シグナルを低下させる、かつ/または
(e)内在性のGPR55と、内在性リガンド結合について競合させる。
【請求項20】
前記治療は、原発性乳癌の転移を阻害する請求項13〜19いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項21】
前記治療は、骨への原発性乳癌の転移を阻害する請求項13〜20いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項22】
前記治療は、癌の再発のリスクを低下させるアジュバント治療である請求項13〜21いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項23】
前記治療は併用療法であり、前記GPR55阻害剤は、同時に、または経時的に、乳癌の治療のためのさらなる治療的介入と組み合わせて使用される請求項13〜22いずれか1項に記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項24】
前記さらなる治療的介入は、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、および/またはトラスツズマブの投与を含む請求項23記載の方法、組成物、方法または使用。
【請求項25】
前記さらなる治療的介入は、外科的介入である請求項23記載の方法、組成物、方法または使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−523699(P2011−523699A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509000(P2011−509000)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001201
【国際公開番号】WO2009/138744
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501306999)ザ・ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アバディーン (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001201
【国際公開番号】WO2009/138744
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501306999)ザ・ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アバディーン (6)
【Fターム(参考)】
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