説明

G蛋白質共役型受容体をコードする遺伝子およびその遺伝子産物

生体において細胞の重要なセンサーとして働いているG蛋白質共役型受容体(GPCR)と同質の機能を有する新規蛋白質をコードする遺伝子として配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補的鎖を見出し、該DNAおよび該DNAの相同物、前記DNAがコードする蛋白質、前記DNAを含むベクター、前記ベクターを含む形質転換体、前記蛋白質に対する抗体、これらを用いる前記蛋白質の機能および/または発現を調節する化合物の同定方法、該蛋白質のリガンドの同定方法、該蛋白質のリガンド、さらに該蛋白質の機能および発現の異常に起因する疾患に用い得る医薬組成物、並びにその疾患の診断に使用する測定方法および試薬キットを提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、G蛋白質共役型受容体をコードする遺伝子およびその遺伝子産物に関するものである。より詳しくは、コレシストキニンオクタペプチド硫酸化型(cholecystokinin octapeptide sulfated form、以下、CCK−8Sと略称することがある)をリガンドとする、G蛋白質共役型受容体をコードする遺伝子およびその遺伝子産物に関するものである。さらに詳しくは、G蛋白質共役型受容体としての機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖、該DNAの部分塩基配列からなるDNA、前記DNAまたはその相補鎖を含有する組換えベクター、および該組換えベクターを導入されてなる形質転換体に関する。また、G蛋白質共役型受容体としての機能を有する蛋白質、および該蛋白質に対する抗体に関する。さらに、前記蛋白質の製造方法に関する。また、前記蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する、または促進する化合物の同定方法に関する。さらに、前記蛋白質のアゴニストおよびリガンドの同定方法に関する。また、該同定方法により同定されたアゴニストまたはリガンドに関する。さらに、前記蛋白質のアゴニストを少なくとも含む、CCK−8Sの減少および/またはその機能の低減に起因する疾患(痴呆(アルツハイマー病を含む)と不安症および肥満症と糖尿病)の防止剤および/または治療剤に関する。また、前記蛋白質のアゴニストを少なくとも用いることを特徴とする、CCK−8Sの減少および/またはその機能の低減に起因する疾患の防止方法および/または治療方法に関する。さらに、前記DNA、蛋白質、組換えベクター、形質転換体、抗体のうちの少なくともいずれか1つを含む、医薬組成物、血管新生に関連する疾患(例えば脳梗塞や脳挫傷あるいは腫瘍疾患)の防止剤および/または治療剤に関する。また、前記蛋白質の機能および/または前記DNAの発現を阻害する、および/または促進する化合物を含む血管新生に関連する疾患の防止剤および/または治療剤に関する。さらに、前記DNA、蛋白質、組換えベクター、形質転換体、抗体のうちの少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする血管新生に関連する疾患の防止方法および/または治療方法に関する。また、前記蛋白質の機能および/または前記DNAの発現を阻害する、および/または促進する化合物を用いることを特徴とする血管新生に関連する疾患の防止方法および/または治療方法に関する。さらに、前記蛋白質またはDNAの定量的または定性的な測定方法、前記蛋白質またはDNAを測定することを含んでなる診断のための測定方法、前記測定手段を用いることを特徴とする前記蛋白質またはDNAの異常に起因する疾患、例えば血管新生に関連する疾患の診断方法に関する。また、前記DNA、蛋白質、組換えベクター、形質転換体、抗体のうちの少なくともいずれか1つを含有してなる試薬キットおよび診断キットに関する。さらに、前記蛋白質のリガンドの同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
G蛋白質共役型受容体(G−protein coupled receptor、以下、GPCRと略称することがある)は、光、匂い、味の受容体であると同時に、ホルモンや神経伝達物質の受容体でもあり、酵母からヒトまで、生体において細胞の主要なセンサーとして働いている。
【0003】
GPCRは細胞膜に存在する糖蛋白質で、細胞膜貫通ドメインを7個有するという構造的特徴を持つ細胞膜7回貫通型受容体の1種であり、多数のメンバーを有するスーパーファミリーを構成している。既に1000種類以上のGPCR遺伝子が同定され、GPCRの3次元構造、GPCRに対する細胞外刺激物質(以下、リガンドと称し、ここでいうリガンドとは、受容体と結合する能力を持つ物質を意味する)、GPCRを介する細胞内情報伝達経路、およびその機能等に関する研究が進められている。
【0004】
GPCRはリガンドにより刺激を受けると、細胞内に存在するG蛋白質と結合する。G蛋白質は、GPCRと共役し、細胞内への情報伝達因子として機能する蛋白質である。G蛋白質は、細胞内情報伝達経路において情報伝達に関わる種々の因子(以下、エフェクターと称する)に対する機能と該蛋白質をコードする遺伝子の違いから、数種類のファミリーに大別されている。いずれのファミリーに属するG蛋白質も、α、βおよびγと称する3つのサブユニットからなる3量体であり、通常、グアノシン5´−二リン酸(GDP)がαサブユニットに特異的に結合している。GDP結合型G蛋白質は、エフェクターに対して作用を示さない不活性型である。GPCRがリガンドにより刺激を受けると、G蛋白質に結合しているGDPと細胞内に存在するグアノシン5´−三リン酸(GTP)との交換反応が生じ、G蛋白質からGDPが遊離し、それに続いてG蛋白質へGTPが結合し、GTP結合型G蛋白質が形成される。GTP結合型G蛋白質は活性型と呼ばれ、GTPが結合しているαサブユニット(αGTP)とβおよびγサブユニットからなる2量体(βγ)とに速やかに解離する。αGTPとβγは、エフェクター(例えばカルシウムイオンチャネルやカリウムイオンチャネル等)に直接作用して、細胞内情報伝達経路を活性化し、その結果、種々の生理応答を惹き起こす。
【0005】
GPCRスーパーファミリーのなかで、クラスB(Secretin like)に分類されているヒト脳血管形成阻害因子2(human brain angiogenesis inhibitor 2、以下hBAI2と略称する)は、その遺伝子がGenBankにアクセッション番号AB005298として登録されている。
【0006】
hBAI2については、配列情報と発現分布に関する報告(非特許文献1)があるが、その機能および疾患との関連に関しては報告されていない。しかし、BAI2のホモログであるBAI1との構造比較により、細胞外ドメイン中にトロンボスポンジンタイプIドメイン(以下、TSP−Iドメインと称する)が存在すると考えられている(非特許文献2)。TSP−Iドメインは、トロンボスポンジン(thrombospondin)の第385番目から第522番目のアミノ酸配列からなる領域に認められる特徴のあるドメインであり、トロンボスポンジンの細胞外マトリックスへの関与およびその血管新生阻害能に重要な機能ドメインであることが知られている。
【0007】
hBAI1については、ヒト脳での発現が特異的に高いこと、細胞外領域に血管新生抑制能を持つドメインが存在すること、p53による発現制御を受けている可能性があること等が報告されており、この遺伝子が脳での血管新生に関する機構に何らかの関与をしている可能性が示唆されている(非特許文献1−4)。
【0008】
hBAI2の関連遺伝子であるマウスBAI2については、脳虚血モデルラットの脳組織においてBAI2と血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor)との間に発現量の負の相関が見られることが報告されており、hBAI1同様に血管新生に関与している可能性が考えられている。また、そのスプライスバリアント(mRNAのスプライシングによるRNA種)の存在が報告されている(非特許文献3)。
【0009】
hBAI1およびhBAI2は共に配列情報よりGPCRファミリーであることが予想されるにも関わらず、リガンドに関する情報も含めてこれらのGPCRとしての機能に言及している報告は見られない。
【0010】
一方、コレシストキニン(cholecystokinin、以下、CCKと略称する)は、十二指腸粘膜中の内分泌細胞から放出される消化管ホルモン(gastrointestinal hormone)として知られている。CCKは、脂肪の摂取に伴って分泌され、胆嚢収縮や膵酵素分泌を促進する。そして、胆嚢収縮、膵臓酵素分泌促進、腸管運動刺激等の消化器官での作用を示す。また、CCKは満腹感を脳のニューロンに与える信号物質と考えられている。
【0011】
CCKは、33個のアミノ酸残基からなる直鎖ポリペプチド(以下、CCK−33と称する)であり、そのC末端側から7番目のチロシン残基が硫酸化されていることが知られている。CCKは、翻訳後のプロセッシングにより、CCK−4、CCK−8、CCK−12、CCK−33、CCK−58等、N末端側の切断部位が異なる数種の長さの断片が生じる。これら各断片の生理活性や存在量が異なることが確認されている。また、CCKと類似した化学構造をもち、同一生物活性を示す化合物として、カエルの皮膚から抽出されたセルレイン(cerulein)が報告されている。
【0012】
CCKは、また、脳に広く分布しており、例えば、前頭皮質、海馬、扁桃体や視床下部に多く認められ、鎮痛、鎮静、摂食抑制、記憶や学習への関与等の中枢神経での作用も報告されている。CCKは、DA(ドパミン;Dopamine)やGABA(γアミノ酪酸;γ amino butyric acid)と一部共存しており、5HT(セロトニン;5−hydroxytryptamine)作動性神経系等との相互作用も報告されている。また、CCKの放出がGABAによって調整されているという報告もある。脳内に存在して生理活性を示すCCKとして、主にCCK−8やCCK−4が報告されている。また、脳内に存在するCCK−8は、C末端側から7番目のチロシン残基が硫酸化されている硫酸化型(CCK−8S)である。
【0013】
近年、CCKが記憶の保持に必要不可欠であることが報告されている。例えば、CCK−8Sが無いと記憶を意識レベルに呼び戻して行動に移すことが困難であること、また、CCK−4(CCK−33のC末端テトラペプチド)が記憶の想起を妨げること等が明らかにされている。
【0014】
CCKの受容体として、CCK−A受容体とCCK−B受容体が報告されている。これらはいずれもG蛋白質共役型受容体である。CCK−A受容体の発現は、消化管由来の組織や細胞および血液中の白血球等で検出されている。CCK−A受容体は、細胞内情報伝達経路において、例えばホスホリパーゼCやアデニルシクラーゼ等のエフェクターの促進を介して消化の調節に関与している。一方、CCK−B受容体の発現は、脳や消化管由来の組織や細胞および血液中の白血球等で検出されている。CCK−B受容体は、ガストリン受容体とも称され、細胞内情報伝達経路において、例えばホスホリパーゼCや細胞内カルシウムイオン流入等のエフェクターの促進を介して消化の調節や細胞増殖に関与している。近年、CCK−B受容体と不安との関係が注目されている。
【0015】
【非特許文献1】シラツチ(Shiratsuchi,T.)ら、「サイトジェネティクス アンド セル ジェネティクス(Cytogenetics and cell genetics)」、1997年、第79巻、p.103−108。
【非特許文献2】ニシモリ(Nishimori,H.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、1997年、第15巻、p.2145−2150。
【非特許文献3】キー(Kee,H.J.)ら、「ジャーナル オブ セレブラル ブラッド フロー アンド メタボリズム(Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism)」、2002年、第22巻、p.1054−1067。
【非特許文献4】クル(Kaur B.)ら、「アメリカン ジャーナル オブ パソロジー(American Journal Of Pathology)」、2003年、第162巻、p.19−27。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
GPCRは生体において細胞の重要なセンサーとして働いており、様々な疾患の治療薬を開発する上で主要な標的分子である。既に数多くのGPCRが見出されているが、新たなGPCRの同定は医薬開発の分野において多大な貢献を期待できる。
本発明の課題は、GPCRと同質の機能を有する新規蛋白質をコードする遺伝子および該蛋白質を見出して提供することである。また本発明の別の課題は、GPCRと同質の機能を有する新規蛋白質のリガンドを見出して提供することである。さらに本発明の別の課題は、該蛋白質の製造法を提供することである。また本発明の別の課題は、該遺伝子を含有する組換えベクターおよび該組換えベクターを導入した形質転換体を提供することである。さらに別の本発明の課題は、該蛋白質に対する抗体を提供することである。また別の本発明の課題は、該蛋白質の機能を阻害する、または促進する化合物の同定手段を提供することである。さらに別の本発明の課題は、該蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードする遺伝子の発現の異常に起因する疾患に用い得る医薬組成物、並びにその疾患の診断方法、診断のための測定方法および試薬キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題解決のために鋭意努力し、GPCRと考えられる7回膜貫通ドメインを有する機能的膜蛋白質受容体由来の蛋白質および該蛋白質をコードする遺伝子を見出し、該遺伝子を用いてその遺伝子産物を取得することに成功した。そして、該遺伝子を発現させた動物細胞において、細胞膜上に該蛋白質が発現すること、リガンド刺激により細胞内情報伝達を介した生理応答が生じることを明らかにした。さらに、該蛋白質が、そのC末端領域で、細胞内情報伝達に関わる蛋白質と相互作用すること、またそのアミノ酸配列中に血管新生阻害機能に関与することが知られているTSP−Iドメインを3個有することを明らかにした。またさらに、CCK−8Sが該機能的膜蛋白質受容体のリガンドとして作用することを見出した。本発明はこれら知見により完成したものである。
【0018】
すなわち、本発明は、下記の群より選ばれるDNAに関する:
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖、
(ii)前記(i)のDNAを含有するDNAまたはその相補鎖、
(iii)前記(i)または(ii)のDNAの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有し、かつG蛋白質共役型受容体(G−protein coupled receptor)と同質の機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖、
(iv)前記(i)ないし(iii)のDNAの塩基配列において、1ないし数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加などの変異を有し、かつGPCRと同質の機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖
および
(v)前記(i)ないし(iv)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつGPCRと同質の機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖。
【0019】
また本発明は、前記DNAの部分塩基配列からなるDNAに関する。
【0020】
さらに本発明は、GPCRと同質の機能がリガンドとの結合によりG蛋白質を活性化する機能である前記いずれかのDNAに関する。
【0021】
さらにまた本発明は、リガンドが下記の群より選ばれるペプチドである前記いずれかのDNAに関する:
(i)CCK−8S(配列番号14)、
(ii)CCK−8Sのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド、
および
(iii)前記(i)または(ii)のペプチドを含み、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド。
【0022】
また本発明は、前記いずれかのDNAを含有する組換えベクターに関する。
【0023】
さらに本発明は、組換えベクターが発現組換えベクターである前記組換えベクターに関する。
【0024】
さらにまた本発明は、前記組換えベクターを導入されてなる形質転換体に関する。
【0025】
また本発明は、前記組換えベクターを導入されてなる動物細胞由来の形質転換体に関する。
【0026】
さらに本発明は、細胞株 FERM BP−10101号に関する。
【0027】
さらにまた本発明は、前記いずれかのDNAがコードする蛋白質に関する。
【0028】
また本発明は、下記の群より選ばれる蛋白質に関する:
(i)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(ii)前記(i)の蛋白質を含有する蛋白質、
(iii)前記(i)または(ii)の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を有し、かつGPCRと同質の機能を有する蛋白質、
および
(iv)前記(i)ないし(iii)の蛋白質のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつGPCRと同質の機能を有する蛋白質。
【0029】
さらに本発明は、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分配列からなる蛋白質に関する。
【0030】
さらにまた本発明は、前記いずれかの蛋白質であって、GPCRと同質の機能を有する蛋白質に関する。
【0031】
また本発明は、血管新生阻害機能を有する前記蛋白質に関する。
【0032】
さらに本発明は、グアニル酸キナーゼ活性を有する蛋白質および/または細胞間接着機能を有する蛋白質と相互作用する機能を有する前記蛋白質に関する。
【0033】
さらにまた本発明は、下記の群から選ばれる蛋白質であって、GPCRと同質の機能と、細胞間接着機能を有する蛋白質および/またはグアニル酸キナーゼ活性を有する蛋白質と相互作用する機能と、さらに血管新生阻害機能とを有する蛋白質に関する:
(i)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(ii)前記(i)の蛋白質を含有する蛋白質、
(iii)前記(i)または(ii)の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を有する蛋白質、
および
(iv)前記(i)ないし(iii)の蛋白質のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有する蛋白質。
【0034】
また本発明は、GPCRと同質の機能がリガンドとの結合によりG蛋白質を活性化する機能である前記いずれかの蛋白質に関する。
【0035】
さらに本発明は、前記いずれかの蛋白質であって、細胞において該蛋白質にリガンドを結合させたときに細胞膜電位の変化を発生させる機能を有する蛋白質に関する。
【0036】
さらにまた本発明は、前記いずれかの蛋白質であって、細胞において該蛋白質にリガンドを結合させたときに細胞内カルシウム濃度を増加させる機能を有する蛋白質に関する。
【0037】
また本発明は、リガンドが下記の群より選ばれるペプチドである前記いずれかの蛋白質に関する:
(i)CCK−8S(配列番号14)、
(ii)CCK−8Sのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド、
および
(iii)前記(i)または(ii)のペプチドを含み、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド。
【0038】
さらに本発明は、前記形質転換体を培養する工程を含む、前記いずれかの蛋白質の製造方法に関する。
【0039】
さらにまた本発明は、前記いずれかの蛋白質を免疫学的に認識する抗体に関する。
【0040】
また本発明は、前記いずれかの蛋白質のアゴニストまたはリガンドの同定方法であって、被検化合物または被検物質と該蛋白質とを接触させることを特徴とする同定方法に関する。
【0041】
さらに本発明は、前記同定方法であって、被検化合物または被検物質と該蛋白質とを接触させることが、被検化合物または被検物質と前記形質転換体または前記細胞株の細胞膜上に発現した蛋白質とを接触させることである同定方法に関する。
【0042】
さらにまた本発明は、前記同定方法であって、被検化合物または被検物質と前記形質転換体または前記細胞株との相互作用を可能にする条件下で該形質転換体または該細胞株と被検化合物または被検物質とを接触させ、次いで、該形質転換体または該細胞株の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系を導入し、被検化合物または被検物質と該蛋白質を接触させなかったときと比較して、該機能を変化させた被検化合物または被検物質を選択することを特徴とする同定方法に関する。
【0043】
また本発明は、前記同定方法であって、形質転換体または細胞株の細胞内カルシウム濃度を測定し、被検化合物または被検物質と該蛋白質を接触させなかったときと比較して細胞内カルシウム濃度を増加させた被検化合物または被検物質を選択することを特徴とする同定方法に関する。
【0044】
さらに本発明は、前記同定方法であって、形質転換体または細胞株の細胞膜電位を測定し、被検化合物または被検物質と該蛋白質を接触させなかったときと比較して細胞膜電位を変化させた被検化合物または被検物質と該蛋白質を選択することを特徴とする同定方法に関する。
【0045】
さらにまた本発明は、前記同定方法であって、細胞膜電位を変化させた被検化合物または被検物質を選択することが、GPCR特有の電流変化を発生させた被検物質を選択することである同定方法に関する。
【0046】
また本発明は、前記いずれかの同定方法により同定されたアゴニストまたはリガンドに関する。
【0047】
さらに本発明は、前記いずれかの蛋白質のリガンドとの結合、該蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する、または促進する化合物の同定方法であって、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする同定方法に関する。
【0048】
さらにまた本発明は、前記いずれかの蛋白質の機能を阻害する、または促進する化合物の同定方法であって、前記形質転換体または前記細胞株との相互作用を可能にする条件下で該形質転換体と被検化合物とを共存させ、次いで、該形質転換体の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系を導入し、該蛋白質の機能の存在または非存在、または変化を検出することにより、被検化合物が該蛋白質の機能を阻害する、または促進するか否かを決定することを含む同定方法に関する。
【0049】
また本発明は、前記同定方法であって、該形質転換体の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系がリガンドの添加による細胞内カルシウム濃度変化の測定系であり、蛋白質の機能の存在または非存在、または変化を検出することが、細胞内カルシウム濃度変化を検出することである同定方法に関する。
【0050】
さらに本発明は、前記同定方法であって、該形質転換体の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系がリガンドの添加による膜電位変化の測定系であり、蛋白質の機能の存在または非存在、または変化を検出することが、膜電位の変化を検出することである同定方法に関する。
【0051】
さらにまた本発明は、リガンドが下記の群より選ばれるペプチドである前記いずれかの同定方法に関する:
(i)CCK−8S(配列番号14)、
(ii)CCK−8Sのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド、
および
(iii)前記(i)または(ii)のペプチドを含み、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド。
【0052】
また本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含んでなる医薬組成物に関する。
【0053】
さらに本発明は、前記いずれかの蛋白質のアゴニストを有効成分としてその有効量含んでなる、CCK−8(配列番号14)の減少および/またはその機能の低減に起因する疾患の防止剤および/または治療剤に関する。
【0054】
さらにまた本発明は、疾患が痴呆(アルツハイマー病を含む)、不安症、肥満症および糖尿病からなる群から選ばれる疾患である前記疾患の防止剤および/または治療剤に関する。
【0055】
また本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含んでなる血管新生に関連する疾患の防止剤および/または治療剤に関する。
【0056】
さらに本発明は、前記いずれかの蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する化合物を有効成分としてその有効量含んでなる脳梗塞および/または脳挫傷の防止剤および/または治療剤に関する。
【0057】
さらにまた本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含んでなる腫瘍疾患の防止剤および/または治療剤に関する。
【0058】
また本発明は、前記いずれかの蛋白質のアゴニストを用いることを特徴とする、CCK−8(配列番号14)の減少および/またはその機能の低減に起因する疾患の防止方法および/または治療方法に関する。
【0059】
さらに本発明は、疾患が痴呆(アルツハイマー病を含む)、不安症、肥満症および糖尿病からなる群から選ばれる疾患である前記疾患の防止方法および/または治療方法に関する。
【0060】
さらにまた本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする血管新生に関連する疾患の防止方法および/または治療方法に関する。
【0061】
また本発明は、前記いずれかの蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する化合物を用いることを特徴とする脳梗塞および/または脳挫傷の防止方法および/または治療方法に関する。
【0062】
さらに本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする腫瘍疾患の防止方法および/または治療方法に関する。
【0063】
さらにまた本発明は、前記いずれかの蛋白質または該蛋白質をコードするDNAを定量的または定性的に測定する方法に関する。
【0064】
また本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする、前記測定方法に関する。
【0065】
さらに本発明は、前記いずれかの蛋白質および/または該蛋白質をコードするDNAをマーカーとして定量的または定性的に分析することを含んでなる、該蛋白質および/または該蛋白質をコードするDNAの異常に起因する疾患の診断に使用するための測定方法に関する。
【0066】
さらにまた本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする、該蛋白質および/または該蛋白質をコードするDNAの異常に起因する疾患の診断方法に関する。
【0067】
また本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする血管新生に関連する疾患の診断方法に関する。
【0068】
さらに本発明は、血管新生に関連する疾患が、脳梗塞および/または脳挫傷である前記診断方法に関する。
【0069】
さらにまた本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを含有してなる試薬キットに関する。
【0070】
また本発明は、前記いずれかの同定方法または前記いずれかの測定方法に用いる試薬キットであって、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを含有してなる試薬キットに関する。
【0071】
さらに本発明は、前記いずれかのDNA、前記組換えベクター、前記形質転換体、前記細胞株、前記いずれかの蛋白質、前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを含有することを特徴とする血管新生に関連する疾患用診断キットに関する。
【0072】
さらにまた本発明は、血管新生に関連する疾患が、脳梗塞および/または脳挫傷である前記診断キットに関する。
【発明の効果】
【0073】
本発明により、GPCRと考えられる7回膜貫通ドメインを有する新規な機能的膜蛋白質受容体由来の蛋白質および該蛋白質をコードするDNAを提供できる。本蛋白質は、TSP−Iドメインを3個有することから、血管新生阻害に関与すると考える。また、本蛋白質がそのC末端領域でMAGUK(membrane−associated guanylate kinase homologs)ファミリー関連蛋白質(グアニル酸キナーゼ活性および細胞間接着機能を有する蛋白質)と相互作用することから、本蛋白質が細胞の細胞間接着機能に関わっている可能性がある。
【0074】
本発明においてはさらに、CCK−8Sが、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体のリガンドとして作用することを見出した。CCK−8Sが1nMという低濃度で、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体を介する生物学的応答を惹き起こしたことから、CCK−8Sは該機能的膜蛋白質受容体の生体内リガンドであると考える。CCK−8Sが記憶の保持に必要不可欠であること、例えば、CCK−8Sが無いと記憶を意識レベルに呼び戻して行動に移すことが困難であることが報告されている。このような神経機能に対するCCK−8Sの作用は、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体を介していると考える。このことから、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体のアゴニストは、CCK−8Sと同質の作用、すなわち記憶等の神経機能を修飾する作用を有すると考える。
【0075】
本発明により、CCK−8Sが作用する機能的膜蛋白質受容体のアゴニストの同定および取得が可能である。また、該アゴニストを用いて神経機能を修飾することが可能である。例えば、該アゴニストを用いて記憶を保持することが可能である。さらに、該アゴニストを用いて、神経機能の障害を伴う疾患や症状の緩和が可能である。
【0076】
このように、本発明により、本蛋白質および/またはDNAの異常に起因する疾患、例えば血管新生に関連する疾患の診断、防止および/または治療が可能になる。このような疾患として、具体的には例えば脳梗塞および脳挫傷並びに腫瘍疾患等が挙げられる。また、本蛋白質が機能的膜蛋白質受容体であることから、そのリガンド、例えばCCK−8Sの量および/または機能の低下や消失等に起因する疾患の診断、防止および/または治療が可能になる。このような疾患として、記憶等の神経機能の障害を伴う疾患、具体的には例えばアルツハイマー病等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドが有する機能ドメインを、hBAI2がコードするペプチドと比較して示した模式図である。(実施例1)
【図2】cDNAクローンph01207を、FLAG−tag融合蛋白質およびHA−tag融合蛋白質としてそれぞれ動物細胞株CHO−K1細胞で発現させたときに、これら蛋白質が細胞膜上に発現されたことを説明する図である(それぞれ左側パネルおよび右側パネル)。細胞膜上の蛋白質の検出は、抗FLAG−tag抗体および抗HA−tag抗体を用いてフルオロサイトメトリーにより解析した。図中、黒で示された領域は各tag融合蛋白質を発現させた細胞を、白で示された領域は該蛋白質を発現させなかったコントロール細胞を示す。(実施例2)
【図3】GPCRのリガンド応答を細胞の膜電位変化により測定した場合に観察され得る波形(GPCR特異的な応答により生じる波形(波形1)、人為的要素などにより生じる波形(波形2〜4)および応答が無いときに認められる波形(波形5および6))を説明する図である。(実施例3)
【図4−A】cDNAクローンph01207を、HA−tag融合蛋白質として安定的に発現するCHO−K1細胞株(HA−ph01207#10−6)において、1nMのCCK−8S(配列番号14)により細胞内Ca2+濃度が上昇したことを説明する図である。一方、該cDNAをトランスフェクションしていないCHO−K1細胞株においては、CCK−8S(配列番号14)による細胞内Ca2+濃度の上昇は認められなかった。横軸はCCK−8S(配列番号14)を細胞に添加してからの時間を、縦軸は細胞内Ca2+濃度を示す。(実施例5)
【図4−B】cDNAクローンph01207を、HA−tag融合蛋白質として安定的に発現するCHO−K1細胞株(HA−ph01207#10−6)において、1nMのCCK−8NSによる細胞内Ca2+濃度の上昇が認められなかったことを説明する図である。CCK−8NS(CCK−8 Nonsulfated form)は、CCK−8Sと同じアミノ酸配列からなるCCKオクタペプチドであるが、C末端から7番目のチロシン残基が硫酸化されていないペプチドである。cDNAクローンph01207をトランスフェクションしていないCHO−K1細胞株においても、CCK−8NSによる細胞内Ca2+濃度の上昇は認められなかった。横軸はCCK−8NSを細胞に添加してからの時間を、縦軸は細胞内Ca2+濃度を示す。(実施例5)
【図4−C】cDNAクローンph01207を、HA−tag融合蛋白質として安定的に発現するCHO−K1細胞株(HA−ph01207#10−6)において、1nMのCCK−4による細胞内Ca2+濃度の上昇が認められなかったことを説明する図である。該cDNAをトランスフェクションしていないCHO−K1細胞株においても、CCK−4による細胞内Ca2+濃度の上昇は認められなかった。横軸はCCK−4を細胞に添加してからの時間を、縦軸は細胞内Ca2+濃度を示す。(実施例5)
【図4−D】cDNAクローンph01207を、HA−tag融合蛋白質として安定的に発現するCHO−K1細胞株(HA−ph01207#10−6)において、10μMのカルシウムイオノフォア A23187により細胞内Ca2+濃度が上昇したことを説明する図である。該cDNAをトランスフェクションしていないCHO−K1細胞株においても、A23187による細胞内Ca2+濃度の上昇が認められた。横軸はA23187を細胞に添加してからの時間を、縦軸は細胞内Ca2+濃度を示す。(実施例5)
【図4−E】cDNAクローンph01207を、HA−tag融合蛋白質として安定的に発現するCHO−K1細胞株(HA−ph01207#10−6)または該cDNAをトランスフェクションしていないCHO−K1細胞株において、バッファーを添加したときの細胞内Ca2+濃度を示す。横軸はバッファーを細胞に添加してからの時間を、縦軸は細胞内Ca2+濃度を示す。(実施例5)
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
本発明は、参照によりここに援用されるところの、日本特許出願番号第2003−389624号、第2004−130371号および第2004−304780号からの優先権を主張するものである。
【0079】
以下、本発明について発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。以下の詳細な説明は例示であり、説明のためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0080】
本明細書において、単離された若しくは合成の完全長蛋白質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;または単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「蛋白質」という用語を使用することがある。ここで蛋白質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドは最小サイズが2アミノ酸である。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。
【0081】
本発明は、GPCRと考えられる7回膜貫通ドメインを有する新規な機能的膜蛋白質受容体由来の蛋白質および該蛋白質をコードするDNAに関する。本蛋白質は、TSP−Iドメインを3個有することから、血管新生阻害に関与すると考える。また、本蛋白質がそのC末端領域でMAGUKファミリー関連蛋白質(グアニル酸キナーゼ活性および細胞間接着機能を有する蛋白質)と相互作用することから、本蛋白質が細胞の細胞間接着機能に関わっている可能性がある。
【0082】
本発明においてはさらに、CCK−8S(配列番号14)が、本蛋白質に係る機能的膜蛋白質受容体のリガンドとして作用することを見出した。CCK−8S(配列番号14)が1nMという低濃度で、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体を介する生物学的応答を惹き起こしたことから、CCK−8S(配列番号14)は該機能的膜蛋白質受容体の生体内リガンドであると考える。CCK−8Sが記憶の保持に必要不可欠であること、例えば、CCK−8S(配列番号14)が無いと記憶を意識レベルに呼び戻して行動に移すことが困難であることが報告されている。このような神経機能に対するCCK−8S(配列番号14)の作用は、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体を介していると考える。
【0083】
(DNA)
本発明の一態様は新規DNAに関する。該新規DNAは、ヒト脳由来長鎖cDNAライブラリーから同定した、7回膜貫通ドメインをコードする領域を有するcDNAクローンである。ヒト脳由来長鎖cDNAライブラリーは、市販ヒト脳、胎児脳、および脳海馬由来のpolyARNA(Clontech社製:カタログ番号6516−1、6525−1および6578−1)を出発原料として常法により構築したcDNAライブラリーについてdbEST(database of Expressed Sequence Tags)分析によりcDNA断片を単離して全塩基配列を決定したcDNAクローンからなるcDNAライブラリーである。
【0084】
本発明に係るDNAの具体的態様は、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補的配列からなるDNAであり得る。ここで、あるDNAの相補的配列からなるDNAを相補鎖と称することもある。配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAは、シグナル配列と予測される部分(N末端より20アミノ酸残基)を有する1518アミノ酸残基(配列番号2)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む4557bpの新規な塩基配列からなる。
【0085】
相同性検索により、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAは、hBAI2(GenBank、アクセッション番号:AB005298)と相同性を有することが判明した。hBAI2がコードする蛋白質は、4個のTSP−Iドメインの他、GPSドメインおよびGPCRファミリー2ドメイン(7回膜貫通ドメイン)を有すると考えられる。
【0086】
配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAがコードする蛋白質(配列番号2)には構造的特徴として、3個のTSP−Iドメインの他、GPSドメインおよびGPCRファミリー2ドメインが存在することが判明した(図1参照)。
【0087】
配列比較により、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAがコードする蛋白質(配列番号2)は、hBAI2がコードする蛋白質とは、TSP−Iドメインの数およびC末端アミノ酸配列に相違があることが明らかになった(図1参照)。すなわち、本蛋白質(配列番号2)は、hBAI2がコードする蛋白質のアミノ酸配列のN末端領域側の1個のTSP−Iドメインを含む55アミノ酸残基が欠失し、さらにそのC末端領域において、第1406番目のリジンに相当する1アミノ酸残基が挿入されていることが判明した。これらから、本蛋白質(配列番号2)は、hBAI2のスプライシングバリアントである可能性がある。
【0088】
配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAは、動物細胞で発現させたときに細胞膜上に発現された。また、該DNAを発現させた動物細胞において、リガンドの作用に対する応答が得られた。さらに、本DNAの遺伝子産物はそのC末端領域において、MAGUKファミリー関連蛋白質であるDLG2、DLG3およびDLG4や、AIP1、MAGI3等と相互作用し得ることが明らかになった。MAGUKファミリー関連蛋白質は、蛋白質間相互作用において標的蛋白質の最もC末端のアミノ酸配列を認識するPDZドメインを有し、細胞膜に局在して受容体やイオンチャネル等の膜蛋白質と相互作用することにより、これら膜蛋白質からの情報伝達に関与し、細胞間接着等に寄与していると考えられている。hBAI2とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用も同様に認められた。一方、hBAI2のホモログであるhBAI1が、MAGUKファミリー関連蛋白質の1つであるBAP1(BAI1−associated protein1)と、hBAI1の末端領域の部分配列(QTEV:配列番号3)を介して結合することが報告されている(シラツチ(Shiratsuchi,T.)ら、「バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)」、1998年、第247巻、p.597−604)。配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAがコードする蛋白質およびhBAI2がコードする蛋白質は、いずれもそのC末端領域にこの配列(QTEV:配列番号3)が保存されていることから、この配列部分においてPDZドメインを持つ蛋白質と相互作用する可能性がある。
【0089】
ここで相互作用とは、例えば2つの同種あるいは別種の蛋白質が、特異的に作用し合い、その結果、一方のあるいは両方の機能が変化する、例えば亢進する、または低減することを意味する。特異的に作用するとは、その作用に関わる蛋白質以外の蛋白質に比べて、より選択的に作用することを意味する。相互作用には例えば、2つの別種の蛋白質の結合あるいは一方の蛋白質による他方の蛋白質の活性化等が含まれる。
【0090】
配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAの遺伝子産物の構造的特徴および機能的特徴から、該遺伝子産物は、機能を有する膜蛋白質受容体であることが判明した。さらに、7回膜貫通ドメインを有することから、リガンド刺激によりG蛋白質と結合してこれを活性化し、細胞内情報伝達を促進して、細胞の生物学的応答を誘発する機能を有するGPCRの1つであると考えた。
【0091】
また、TSP−Iドメインを有することから、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAがコードする蛋白質は血管新生阻害機能を有すると推定した。
【0092】
本発明に係るDNAの態様の別の1つは、配列番号1に記載の塩基配列または該塩基配列の相補的塩基配列を含有するDNAである。
【0093】
本発明に係るDNAと配列相同性を有し、かつ構造的特徴やコードする蛋白質の生物学的機能の類似性等を有するDNAも本発明の範囲に包含される。
【0094】
配列相同性は、通常、塩基配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。
【0095】
構造的特徴は、7回膜貫通ドメインコード領域やTSP−Iドメインコード領域を挙げることができる。このような領域における配列相同性が、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であるDNAが好ましい。さらに、これらドメインがその機能、例えば該ドメインを含む蛋白質を膜に局在させる機能あるいは血管新生阻害機能を保持しているドメインであることがより好ましい。
【0096】
本発明に係るDNAによりコードされる蛋白質の生物学的機能の1つとして、膜蛋白質受容体としての機能を挙げることができる。膜蛋白質受容体としての機能とは、動物細胞で発現させたときに膜蛋白質として発現され、リガンドの作用により細胞内情報伝達を促進し、細胞に生物学的応答を誘発させる機能をいう。例えば、GPCRと同質の機能が挙げられる。GPCRと同質の機能とは、リガンドの作用によりG蛋白質に結合してこれを活性化させ、細胞内情報伝達を促進し、細胞に生物学的応答を誘発させる機能をいう。後述するように、本DNAがコードする膜蛋白質受容体のリガンドの1つとして、CCK−8S(配列番号14)を見出した。したがって、本発明の範囲に包含されるDNAは、好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAと配列相同性を有し、かつCCK−8S(配列番号14)の作用によりGPCRと同質の機能を示す蛋白質をコードするDNAである。
【0097】
細胞の生物学的応答として具体的には、細胞膜電位の変化あるいは細胞内カルシウム濃度の変化を例示できる。細胞膜電位の変化あるいは細胞内カルシウム濃度の変化は自体公知の方法で測定できる。細胞膜電位の変化は、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞に本発明に係るDNAを発現させ、リガンド刺激の存在下または非存在下で、膜蛋白質受容体特異的に発生する電流量を測定し、その電流量を比較することにより検出できる。細胞内カルシウム濃度の変化は、例えば、カルシウムイオンと結合し得る蛍光物質を細胞内に取り込ませ、リガンド刺激の存在下または非存在下で、励起光により蛍光現象を惹き起こし、その蛍光量を比較することにより検出できる。リガンドとして、例えば本DNAの発現が認められた細胞または生体組織から調製した試料を例示できる。試料の調製は、例えば細胞または組織を自体公知の方法で培養し、その培養上清を遠心処理等により得る方法や、細胞または組織を自体公知の方法で破砕あるいは溶解する方法により実施できる。リガンドは、これら試料から自体公知の蛋白質精製方法、例えばゲルろ過クロマトグラフィー等により精製して用いることもできる。リガンドとして具体的には、本実施例に用いたHeLa細胞株の培養上清を例示できるがこれに限定されず、細胞に発現した本DNAの遺伝子産物に作用して細胞に生物学的応答を誘発させ得るものであればいずれを用いてもよい。より好ましくは、リガンドとしてCCK−8S(配列番号14)を例示できる。
【0098】
生物学的機能の別の1つとして、グアニル酸キナーゼ活性および/または細胞接着機能を有する蛋白質、例えばMAGUKファミリー関連蛋白質と相互作用する機能を挙げることができる。MAGUKファミリー関連蛋白質として具体的には、DLG2、DLG3およびDLG4や、AIP1、MAGI3を例示できる。
【0099】
本発明に係るDNAには、上記DNAの塩基配列において1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1個ないし数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する塩基配列からなるDNAが含まれる。好ましくは、このようなDNAであって、上記生物学的機能を有する蛋白質をコードするDNAが望ましい。変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有するDNAが上記DNAと同様の構造的特徴を有し、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAがコードする蛋白質と同質の生物学的機能を有するものである限り特に制限されない。このような変異を有するDNAは、天然に存在するものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)等を単独でまたは適宜組合せて用いることができる。例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671)を利用することもできる。
【0100】
本発明に係るDNAにはまた、上記DNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするDNAが挙げられる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)等に従うことができる。具体的には、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC、0.5% SDSおよび50% ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5% SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件をいう。これらDNAは本DNAにハイブリダイゼーションするDNAであれば相補的配列を有するDNAでなくてもよい。好ましくは、コードする蛋白質が上記生物学的機能を有するDNAであることが望ましい。
【0101】
本発明に係るDNAのさらに別の態様は、上記DNAの指定された領域に存在する部分塩基配列からなるDNA断片であり得る。このような領域として、好ましくは、本DNAがコードする蛋白質の断片であってリガンドが作用する部位を含む断片をコードする領域が挙げられる。リガンドが作用する部位を含む断片をコードする領域に存在する部分塩基配列からなるDNA断片は、リガンドが作用する部位を含む断片の製造に使用できる。リガンドが作用する部位を含む断片は、本蛋白質に対するリガンドの作用、例えば本蛋白質とリガンドとの結合の検出、また該作用を促進するまたは阻害する化合物の同定に有用である。あるいは、本蛋白質に対してリガンドと同様の作用を有する化合物、すなわちアゴニストの同定に有用である。このようなDNA断片は、その最小単位として好ましくは該領域において連続する5個以上のヌクレオチド、より好ましくは10個以上、より好ましくは20個以上のヌクレオチドからなる。これらDNA断片は、本DNAの塩基配列情報に従って、目的の配列を有するものを設計し、自体公知の化学合成法により製造できる。簡便には、DNA/RNA自動合成装置を用いて製造できる。本DNA断片は、本DNAを検出するためのプライマーやプローブ、あるいは本DNAを製造するためのプライマーとして使用できる。プライマーは、好ましくは15個から30個、より好ましくは20個から25個のヌクレオチドからなる。プローブは、、好ましくは8個ないし50個のヌクレオチド、より好ましくは17個ないし35個のヌクレオチド、さらに好ましくは17個ないし30個のヌクレオチドからなる。プライマーやプローブの長さが適当な長さより長いと、偽ハイブリダイゼーションが増加するために特異性が低下する。また、長さが適当な長さより短いとミスマッチが生じるために特異性が低下する。本DNA断片はまた、蛋白質をコードするセンス鎖に相補的なDNA断片であるとき、本DNAの発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用できる。一般的に20個前後のヌクレオチドからなるDNA断片が、遺伝子の発現を阻害できることが知られていることから、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは15個以上、より好ましくは20個以上のヌクレオチドからなる。
【0102】
本発明に係るDNAは、本発明により開示されたその具体例、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAについての配列情報に基づいて、公知の遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社等を参照)により容易に取得できる。
【0103】
具体的には、本発明に係るDNAの発現が確認されている適当な起源から、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、該DNAに特有の適当なプローブやプライマーを用いて所望のクローンを選択することにより取得できる。cDNAの起源として、本DNAの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞、例えばヒトの脳等を例示できる。これら起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施できる。また、市販されているヒト脳、胎児脳、および脳海馬由来のpolyARNAからcDNAライブラリーを構築して用いることもできる。所望のクローンをcDNAライブラリーから選択する方法も特に制限されず、慣用の方法を用いることができる。例えば、目的のDNA配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法等やこれらを組合せた方法等を例示できる。ここで用いるプローブとして、本DNAの塩基配列に関する情報に基づいて化学合成されたDNA等が一般的に使用できるが、既に取得された本DNAやその断片も好ましく利用できる。また、本DNAの塩基配列情報に基づき設計したセンスプライマー、アンチセンスプライマーをこのようなプローブとして用いることもできる。
【0104】
cDNAライブラリーからの目的クローンの選択は、例えば公知の蛋白質発現系を利用して各クローンについて発現蛋白質の確認を行い、その生物学的機能を指標にして実施できる。
【0105】
本発明に係るDNAの取得にはその他、PCR(ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;エールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス;サイキ(Saiki R.K.)ら、「サイエンス(Science)」、1985年、第230巻、p.1350−1354))によるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる。cDNAライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法(「実験医学」、1994年、第12巻、第6号、p.35−)、特に5´−RACE法(フローマン(Frohman M.A.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1988年、第85巻、第23号、p.8998−9002)等の採用が好適である。PCRに使用するプライマーは、DNAの塩基配列情報に基づいて適宜設計でき、常法に従って合成により得ることができる。増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、常法により行うことができる。例えばゲル電気泳動法等によりDNA/RNA断片の単離精製を実施できる。
【0106】
かくして得られるDNAの塩基配列の決定は、常法、例えばジデオキシ法(「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1977年、第74巻、p.5463−5467)やマキサム−ギルバート法(「メソッズ イン エンザイモロジー(Methods in Enzymology)」、1980年、第65巻、p.499−)等により、また簡便には市販のシーケンスキット等を用いて行うことができる。
【0107】
本発明に係るDNAはヒト由来のものであるが、該DNAがコードする蛋白質と同質の生物学的機能を有する蛋白質をコードし、かつ構造的相同性を有する哺乳動物のDNA、例えばマウス、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ラットまたはウサギ等のDNAも本発明の範囲に包含される。
【0108】
本発明に係るDNAは、その機能、例えばコードする蛋白質の発現や、発現された蛋白質の機能が阻害されない限りにおいて、5´末端側や3´末端側に、例えばグルタチオン S−トランスフェラーゼ(GST)、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(ALP)等の酵素類、His−tag、Myc−tag、あるいはHA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類等の遺伝子が、1つまたは2つ以上付加されたものであってもよい。これら遺伝子の付加は、慣用の遺伝子工学的手法により行うことができ、遺伝子やmRNAの検出を容易にするため有用である。
【0109】
(ベクター)
本発明の一態様は、本発明に係るDNAを組込んだ組換えベクターに関する。組換えベクターは、本DNAを適当なベクターDNAに挿入することにより得ることができる。
【0110】
本発明に係るDNAを組込んだ組換えベクターは、本DNAが組込まれている組換えベクターである限りにおいて、いずれの組換えベクターであってもよい。ベクターDNAは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類および使用目的により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するものを抽出したもののほか、複製に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているものでもよい。代表的なものとして例えば、プラスミド、バクテリオファージおよびウイルス由来のベクターDNAを挙げることができる。プラスミドDNAとして、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド等を例示できる。バクテリオファージDNAとして、λファージ等を例示できる。ウイルス由来のベクターDNAとして、例えばレトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、パポバウイルス、SV40、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病ウイルス等の動物ウイルス由来のベクター、あるいはバキュロウイルス等の昆虫ウイルス由来のベクターを例示できる。その他、トランスポゾン由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来のベクターDNA等を例示できる。あるいは、これらを組合せて作成したベクターDNA、例えばプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝学的エレメントを組合せて作成したベクターDNA(コスミドやファージミド等)を例示できる。また、目的により発現ベクターやクローニングベクター等、いずれを用いることもできる。
【0111】
ベクターには、目的遺伝子の機能が発揮されるように遺伝子を組込むことが必要であり、少なくとも目的遺伝子配列とプロモーターとをその構成要素とする。これら要素に加えて、所望によりさらに、複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列、例えば、リボソーム結合配列、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、および選択マーカー等から選択した1つまたは複数の遺伝子配列を自体公知の方法により組合せてベクターDNAに組込むことができる。選択マーカーとして、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等を例示できる。
【0112】
ベクターDNAに目的遺伝子配列を組込む方法は、自体公知の方法を適用できる。例えば、目的遺伝子配列を適当な制限酵素により処理して特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターDNAと混合し、リガーゼによって再結合する方法が用いられる。あるいは、目的遺伝子配列に適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても、所望の組換えベクターが得られる。
【0113】
(形質転換体)
本発明の一態様は、本発明に係るDNAを組込んだベクターDNAを、宿主に導入して得られる形質転換体に関する。ベクターDNAとして発現ベクターを使用すれば、本DNAを発現させることができ、さらに該DNAによりコードされる蛋白質を製造できる。該形質転換体には、本DNA以外の所望の遺伝子を組込んだベクターDNAの1つまたは2つ以上をさらに導入することもできる。
【0114】
宿主として、原核生物および真核生物のいずれも用いることができる。原核生物として、例えば大腸菌(エシェリヒアコリ(Escherichia coli))等のエシェリヒア属、枯草菌等のバシラス属、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウムメリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌を例示できる。真核生物として、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、Sf9やSf21等の昆虫細胞、あるいはサル腎由来細胞(COS細胞、Vero細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞や293EBNA細胞、アフリカツメガエル卵母細胞等の動物細胞を例示できる。好ましくは動物細胞を用いる。
【0115】
ベクターDNAの宿主細胞への導入は、自体公知の手段が応用でき、例えば成書に記載されている標準的な方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)により実施できる。より好ましい方法として、遺伝子の安定性を考慮するならば染色体内へのインテグレート法が挙げられるが、簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系を使用できる。具体的な方法として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ負荷(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)および感染等が挙げられる。
【0116】
動物細胞を宿主とする場合は、組換えベクターが該細胞中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、RNAスプライス部位、目的遺伝子、ポリアデニル化部位、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、所望により複製起点が含まれていてもよい。プロモーターとして、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等を用いることができ、また、サイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。動物細胞への組換えベクターの導入方法として、好ましくは例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を例示できる。
【0117】
原核生物を宿主とする場合は、組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、目的遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0118】
細菌を宿主として用いる場合、プロモーターとして、大腸菌等の宿主中で発現できるものであれば特に限定されず、いずれを用いてもよい。例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の、大腸菌やファージに由来するプロモーターが例示できる。tacプロモーター等の人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されない。好ましくは例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等を例示できる。
【0119】
酵母を宿主とする場合、プロモーターとして、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、いずれを用いてもよい。例えば、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が例示できる。酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、好ましくは例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等を例示できる。
【0120】
昆虫細胞を宿主とする場合は、組換えベクターの導入方法として、好ましくは例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等を例示できる。
【0121】
本発明に係る形質転換体として、具体的には、HA−ph01207#10−6細胞株が挙げられる。HA−ph01207#10−6細胞株は、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAのORFのうち、シグナル配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列のN末端より20アミノ酸残基)をコードすると予測される部分を除いた塩基配列からなるDNAをN末端HA−tag融合蛋白質として発現させるベクターを、CHO−K1細胞株にトランスフェクションすることにより樹立した細胞株である。HA−ph01207#10−6細胞株は、該N末端HA−tag融合蛋白質を安定的に発現している。本細胞株の具体的な作製方法は、実施例2に詳述する。
【0122】
HA−ph01207#10−6細胞株は、受託番号 FERM BP−10101号として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成16年8月19日付けで寄託した。本細胞株の生存は、前記寄託センターにおいて平成16年9月22日に実施された試験により確認されている。
【0123】
(蛋白質)
本発明の一態様はまた、本発明に係るDNAがコードする蛋白質に関する。
【0124】
本発明に係る蛋白質の具体的態様として、例えば配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質を挙げることができる。該蛋白質は、3個のTSP−Iドメインの他、GPSドメインおよびGPCRファミリー2ドメイン(7回膜貫通ドメイン)を有する。3個のTSP−Iドメインはそれぞれ、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第297番目のヒスチジン(His)から第350番目のプロリン(Pro)までの領域;第352番目のグルタミン酸(Glu)から第405番目のプロリン(Pro)までの領域;および第408番目のアスパラギン酸(Asp)から第461番目のプロリン(Pro)までの領域からなる。7個の膜貫通ドメインはそれぞれ、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第870番目のバリン(Val)から第890番目のフェニルアラニン(Phe)までの領域;第899番目のセリン(Ser)から第919番目のグリシン(Gly)までの領域;第928番目のバリン(Val)から第948番目のロイシン(Leu)までの領域;第970番目のアルギニン(Arg)から第990番目のトレオニン(Thr)までの領域;第1012番目のアラニン(Ala)から第1032番目のフェニルアラニン(Phe)までの領域;第1087番目のロイシン(Leu)から第1107番目のアラニン(Ala)までの領域;および第1114番目のバリン(Val)から第1134番目のバリン(Val)までの領域からなる。
【0125】
本発明に係る蛋白質の別の態様は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含有する蛋白質である。
【0126】
本発明に係る蛋白質のさらに別の態様は、本蛋白質と配列相同性を有し、かつ構造的特徴や生物学的機能の類似性等を有する蛋白質である。
【0127】
配列相同性は、通常、アミノ酸配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。好ましくは、7回膜貫通ドメインやTSP−Iドメインにおける配列相同性が少なくとも70%、好ましくは70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上であり、またこれらドメインがその機能、例えば該ドメインを含む蛋白質を膜に局在させる機能あるいは血管新生阻害機能を保持していることがより好ましい。
【0128】
このような蛋白質として、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1個ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入といった変異を有するアミノ酸配列からなり、かつ上記生物学的機能を有する蛋白質を挙げることができる。アミノ酸の変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有する蛋白質が、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質と同質の機能を有するものである限り特に制限されない。
【0129】
変異を有する蛋白質は、天然において例えば突然変異や翻訳後の修飾等により生じたものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはPCR等を単独でまたは適宜組合せて用いることができる。例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671)を利用することもできる。変異の導入において、当該蛋白質の基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。
【0130】
本発明に係る蛋白質のまた別の態様は、上記蛋白質の指定された領域に存在する部分アミノ酸配列からなる断片であり得る。このような断片として、好ましくは、本蛋白質においてリガンドが作用する部位を含む断片が挙げられる。リガンドが作用する部位を含む断片は、本蛋白質に対するリガンドの作用、例えば本蛋白質とリガンドとの結合の検出、また該作用を促進するまたは阻害する化合物の同定に有用である。あるいは、本蛋白質に対してリガンドと同様の作用を有する化合物、すなわちアゴニストの同定に有用である。また、本蛋白質に対する抗体を作製するために、抗原として使用することができる。このような断片は、その最小単位として好ましくは5個以上、より好ましくは8個以上、さらに好ましくは12個以上、とくに好ましくは15個以上の連続するアミノ酸からなるものである。これら断片は、本蛋白質のアミノ酸配列情報に従って、目的の配列を有するものを設計し、例えば自体公知の化学合成法により製造できる。
【0131】
本発明に係る蛋白質はヒト由来のものであるが、本蛋白質と同質の機能を有し、かつ構造的相同性を有する哺乳動物由来の蛋白質、例えばマウス、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ラットまたはウサギ等の蛋白質も本発明の範囲に包含される。
【0132】
本発明に係る蛋白質は、本蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子工学的手法で発現させた細胞や生体試料から調製したもの、無細胞系合成産物または化学合成産物であってよく、あるいはこれらからさらに精製されたものであってもよい。また、本蛋白質は、本蛋白質をコードする遺伝子を含む細胞において発現しているものであり得る。該細胞は、本蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターをトランスフェクションして得られた形質転換体であり得る。
【0133】
本発明に係る蛋白質はさらに、その構成アミノ基またはカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない限りにおいて改変できる。また、N末端側やC末端側に別の蛋白質等を、直接的にまたはリンカーペプチド等を介して間接的に遺伝子工学的手法等を用いて付加することにより標識化したものであってもよい。好ましくは、本蛋白質の基本的な性質が阻害されないような標識化が望ましい。付加する蛋白質等として、例えばGST、β−ガラクトシダーゼ、HRPまたはALP等の酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)またはフィコエリスリン(phycoerythrin)等の蛍光物質類、マルトース結合蛋白質、免疫グロブリンのFc断片あるいはビオチン等を例示できるが、これらに限定されない。また、放射性同位元素により標識することもできる。標識化に用いる物質は、1つまたは2つ以上を組合せて付加できる。これら標識化に用いた物質自体、またはその機能を測定することにより、本蛋白質を容易に検出または精製でき、また、例えば発明に係る蛋白質と他の蛋白質との相互作用を検出できる。
【0134】
(蛋白質の製造方法)
本発明の一態様はさらに、本発明に係る蛋白質の製造方法に関する。
本発明に係る蛋白質の取得は、例えば本蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列情報に基づいて一般的遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;エールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス等を参照)により実施できる。例えば、本DNAの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞、例えばヒトの脳から常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、本蛋白質をコードする遺伝子に特有の適当なプライマーを用いて該遺伝子を増幅し、得られた遺伝子を公知の遺伝子工学的手法により発現誘導することにより取得できる。
【0135】
具体的には例えば、本発明に係る形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から目的とする蛋白質を回収することにより本蛋白質を製造できる。本形質転換体の培養は、各々の宿主に最適な自体公知の培養条件および培養方法で行うことができる。培養は、形質転換体により発現される本蛋白質自体またはその機能を指標にして実施できる。あるいは、宿主中または宿主外に産生された本蛋白質自体またはその蛋白質量を指標にして培養してもよく、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養またはバッチ培養を行ってもよい。
【0136】
目的とする蛋白質が形質転換体の細胞内あるいは細胞膜上に発現する場合には、形質転換体を破砕して目的とする蛋白質を抽出する。また、目的とする蛋白質が形質転換体外に分泌される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離処理等により形質転換体を除去した培養液を用いる。
【0137】
蛋白質は、所望により、形質転換体を培養した培養液または形質転換体から、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種分離操作方法により分離する、および/または精製できる。分離および/または精製は、本蛋白質の機能を指標にして実施できる。分離操作方法として、例えば硫酸アンモニウム沈殿、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、透析法等を単独でまたは適宜組合せて用いることができる。好ましくは、本蛋白質のアミノ酸配列情報に基づき、これらに対する特異的抗体を作成し、該抗体を用いて特異的に吸着する方法、例えば該抗体を結合させたカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーを用いることが推奨される。
【0138】
本発明に係る蛋白質はまた、一般的な化学合成法により製造できる。例えば、蛋白質の化学合成方法として、固相合成方法や液相合成方法等が知られているがいずれを用いることもできる。このような蛋白質合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていくいわゆるステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメントコンデンセーション法とを包含し、本蛋白質の合成は、そのいずれによっても行うことができる。上記蛋白質合成において用いられる縮合法も、常法に従うことができ、例えば、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)法、ウッドワード法等を例示できる。化学合成により得られた蛋白質は、さらに上記のような慣用の各種精製方法に従って、適宜精製を行うことができる。
【0139】
本発明に係る蛋白質は適当なペプチダーゼを用いて切断することにより断片化することができ、その結果、本蛋白質の断片を得ることができる。
【0140】
(抗体)
本発明の一態様は、本発明に係る蛋白質に対する抗体に関する。該抗体は、本蛋白質を抗原として用いて作製する。抗原は本蛋白質またはその断片でもよく、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらに好ましくは15個以上のアミノ酸で構成される。本蛋白質および/またはその断片に特異的な抗体を作製するためには、本蛋白質またはその断片に固有なアミノ酸配列からなる領域を用いることが好ましい。この領域のアミノ酸配列は、必ずしも本蛋白質またはその断片のものと相同または同一である必要はなく、その立体構造上の外部への露出部位が好ましく、露出部位のアミノ酸配列が一次構造上で不連続であっても、該露出部位について連続的なアミノ酸配列であればよい。抗体は免疫学的に本蛋白質および/またはその断片を特異的に結合または認識する限り特に限定されない。この結合または認識の有無は、公知の抗原抗体結合反応によって決定できる。
【0141】
抗体の産生には、自体公知の抗体作製法を利用できる。例えば、抗原をアジュバントの存在下または非存在下で、単独でまたは担体に結合して動物に投与し、体液性応答および/または細胞性応答等の免疫誘導を行うことにより抗体が得られる。担体はそれ自体が宿主に対して有害作用を示さずかつ抗原性を増強せしめるものであれば特に限定されず、例えばセルロース、重合アミノ酸、アルブミンおよびキーホールリンペットヘモシアニン等が例示できる。アジュバントは、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)、百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)、およびこれらの組み合わせが例示できる。免疫される動物は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等が好適に用いられる。
【0142】
ポリクローナル抗体は、抗原を投与された動物の血清から自体公知の抗体回収法によって取得できる。好ましい抗体回収手段として免疫アフィニティクロマトグラフィー法が挙げられる。
【0143】
モノクロ−ナル抗体は、抗原を投与された動物から抗体産生細胞(例えば、脾臓またはリンパ節由来のリンパ球)を回収し、自体公知の永久増殖性細胞(例えば、P3−X63−Ag8株等のミエローマ株)を用いた形質転換手段を導入することにより生産できる。例えば、抗体産生細胞と永久増殖性細胞とを自体公知の方法で融合させてハイブリドーマを作製してこれをクローン化し、本発明に係る蛋白質を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマを選別し、該ハイブリドーマの培養液から抗体を回収する。
【0144】
かくして得られた、本発明に係る蛋白質を認識し結合し得るポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、本蛋白質の精製用抗体、試薬または標識マーカー等として利用できる。特に本蛋白質の機能を阻害する抗体、あるいは本蛋白質に結合して本蛋白質のリガンド様作用を示す抗体は、本蛋白質の機能調節に使用できる。これら抗体は、本蛋白質およびその機能の異常に起因する各種疾患の解明、防止、改善および/または治療のために有用である。
【0145】
(リガンドの同定)
本発明の一態様はまた、本発明に係る蛋白質のリガンドの同定方法に関する。本蛋白質が新規膜蛋白質受容体であり、動物細胞において発現させたときにHeLa細胞培養上清により細胞の生物学的応答を誘発することができたことから、HeLa細胞培養上清には、該受容体のリガンドが存在すると考える。
【0146】
本発明に係るリガンドの同定方法は、調べようとする物質(以下、被検物質と称する)を本発明に係る蛋白質と接触させることを特徴とする。同定方法に用いる蛋白質は、本蛋白質をコードするDNAを含む細胞の細胞膜上に発現した蛋白質であり得る。該細胞は、本蛋白質をコードするDNA含むベクターをトランスフェクションして得られた形質転換体であり得る。
【0147】
目的とするリガンドは、被検物質と該蛋白質の結合を自体公知の結合解析方法により検出することにより得ることができる。あるいは、本蛋白質を発現する細胞を用いた同定方法において、被検物質を該蛋白質に接触させたときに誘発される該細胞の生物学的応答を測定することにより目的とするリガンドを得ることができる。被検物質を該蛋白質に接触させたときの細胞の生物学的応答が、接触させなかったときと比較して変化(促進、発生、低減または消失)した場合、該被検物質はリガンドである、またはリガンドを含むと判定できる。細胞の生物学的応答として具体的には、細胞膜電位の変化または細胞内カルシウム濃度の変化を例示できる。細胞膜電位または細胞内カルシウム濃度の測定は自体公知の方法により実施できる。あるいは、本蛋白質を発現する細胞を用いた同定方法において、生物学的応答の指標として、本蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用を測定することにより、目的とするリガンド得ることもできる。被検物質を該蛋白質に接触させたときの細胞における本蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用が、接触させなかったときと比較して変化(促進または発生)した場合、該被検物質はリガンドである、またはリガンドを含むと判定できる。本蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用は、イムノブロッティング等の自体公知の方法により検出できる。
【0148】
リガンドを同定する対象となる被検物質として、例えば本発明に係るDNAの発現が認められた細胞または生体組織から調製した試料を挙げることができる。あるいは、天然物由来あるいは合成された各種化合物を対象とすることもできる。
【0149】
このような同定方法は、試料中にリガンドが含まれているか否かの判定に有用である。また、リガンドが含有されていると判明した試料からリガンドを精製する過程においても、有効に使用できる。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー等を用いて試料を分画し精製する場合に、該分画物にリガンドが含まれているか否かを判定できる。
【0150】
このような同定方法により得られたリガンドもまた、本発明の範囲に包含される。
【0151】
(リガンド)
本発明においては、上記同定方法により、CCK−8S(配列番号14)が、本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンドとして作用することを見出した。具体的には、本発明に係るDNAを安定的に発現させた上記HA−ph01207#10−6細胞株において、CCK−8S(配列番号14)の作用により細胞内カルシウム濃度の上昇が認められた(実施例5参照)。1nMのCCK−8S(配列番号14)による該細胞株における細胞内カルシウム濃度の上昇の程度は、ポジティブコントロールであるカルシウムイオノファA23187によるものとほぼ同等であった。本発明に係るDNAを発現させていないCHO−K1細株胞では、CCK−8S(配列番号14)によるこのような細胞内カルシウム濃度の上昇は認められなかった。一方、HA−ph01207#10−6細胞株は、CCK−8S(配列番号14)と同じアミノ酸配列からなるCCKオクタペプチドであってもC末端から7番目のチロシン残基が硫酸化されていないペプチド(CCK−8 Nonsulfated form、以下、CCK−8NSと称する)に対しては応答しなかった。また、CCK−8S(配列番号14)のC末端から4番目までのアミノ酸残基からなるテトラペプチド(CCK−4)に対しても応答しなかった。具体的には、1nMのCCK−8NSまたは1nMのCCK−4による細胞内カルシウム濃度の上昇は認められなかった。これらから、HA−ph01207#10−6細胞株は、CCK−8S(配列番号14)に対して特異的に応答し、膜蛋白質受容体として機能することが判明した。また、HA−ph01207#10−6細胞株が、CCK−8S(配列番号14)に応答したがCCK−8NSには応答しなかったことから、CCK−8S(配列番号14)のリガンド作用には、CCK−8S(配列番号14)のアミノ酸配列のC末端から7番目のチロシン残基が硫酸化されていることが重要であると考える。
【0152】
このように、1nMという低濃度のCCK−8S(配列番号14)が、HA−ph01207#10−6細胞株の生物学的応答を惹き起こしたことから、CCK−8S(配列番号14)は生体内で実際に、本発明に係るDNAがコードする蛋白質を介して細胞の生物学的応答を惹き起こしていると考えられる。つまり、CCK−8S(配列番号14)は、GPCRと予想された本発明に係る機能性膜蛋白質受容体の生体内リガンドの一つであると考える。また、本発明に係る膜蛋白質受容体は、アフリカツメガエル卵母細胞において、HeLa細胞培養上清をリガンドソースとして用いたときに膜電位の変化といった生物学的応答(リガンド応答)を示した。
【0153】
本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンドの範囲には、CCK−8S(配列番号14)以外に、CCK−8S(配列番号14)のアミノ酸配列において、1個ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入といった変異を有するアミノ酸配列からなり、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチドが含まれる。CCK−8Sと同質の機能とは、本発明に係る膜蛋白質受容体の生物学的機能を誘導する機能、より具体的には、本発明に係る膜蛋白質受容体を発現している細胞において、細胞内カルシウム濃度の上昇や膜電位の変化等の生物学的応答を惹き起こす機能をいう。CCK−8S(配列番号14)においてC末端から7番目のチロシン残基が硫酸化されていることが、CCK−8S(配列番号14)のリガンド作用に重要であると考えられることから、本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンドは、該硫酸化されたチロシン残基が保存されていることが好ましい。変異を有する蛋白質は、天然において例えば突然変異や翻訳後の修飾等により生じたものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、上述の方法を利用できる。当該蛋白質の基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。また、CCK−8S(配列番号14)、またはCCK−8S(配列番号14)のアミノ酸配列において1個ないし数個の変異を有するアミノ酸配列からなりかつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチドを含むペプチドも、本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンドの範囲に含まれる。このようなペプチドにおいて、CCK−8SのC末端から7番目に存在する硫酸化チロシン残基が保有されていることが好ましい。
【0154】
CCK受容体として、CCK−A受容体(CCK1受容体とも呼称される)およびCCK−B受容体(CCK2受容体とも呼称される)の2種類のGPCRが報告されている(ヘランツ(Herranz,R.)、「メディカル リサーチ レビューズ(Medicinal Research Reviews)」、2003年、第23巻、第5号、p.559−605、レビュー)。これらはいずれもクラスA(ロドプシン類;rhodopsin like)に属するGPCRである。CCK−A受容体は主に消化器官で強く発現しており、脳では一部で発現が認められる。CCK−A受容体のリガンド親和性については、CCK−8S>>CCK−8NS、ガストリン>CCK−4の順に強い。CCK−A受容体はCCK−8S(配列番号14)に強く応答するが、CCK−A受容体のリガンドに対する特異性は認められない。一方、CCK−B受容体は消化器官に加えて脳でも広く発現している。CCK−B受容体のリガンド親和性についてはCCK−8S≧CCK−8NS、ガストリン>CCK−4の順で強く、CCK−A受容体よりも選択性が低い。
【0155】
本発明に係る膜蛋白質受容体は、その発現分布が脳で特異的に高いことから、脳における発現が低いCCK−A受容体と比較して、CCKの中枢神経系での作用に主に関与していると考える。また、脳での発現が高いCCK−B受容体と比較して、リガンド親和性が異なることから、本発明に係る膜蛋白質受容体は脳内でCCK−B受容体と異なる活性を示す可能性がある。これらから、これまでにCCKの関与が想定されている、鎮痛、鎮静、摂食抑制、記憶、学習といった生理機能に、CCK受容体として本発明に係る膜蛋白質受容体が関与していると考える。さらに、CCKは、消化器官で種々の作用を示すことが報告され、また満腹感を脳のニューロンに与える信号物質と考えられている。このことから、CCKのファミリーであるCCK−8Sも、脳のニューロンに満腹感を与える信号物質として作用すると考える。CCK−8Sの量的および機能的な低下は、満腹感の低下による肥満を惹き起こすと考える。このような肥満に、CCK受容体として本発明に係る膜蛋白質受容体が関与していると考える。また、CCK−8Sを糖尿病患者に投与するとインスリン量の増加が促進され、食後のグルコース量の増加が抑制されたことが報告されている(ボー(BO A.)ら、「ザ ジャーナル オブ クリニカル エンドクリノロジー アンド メタボリズム(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)」、2000年、第85巻、p.1043−1048)。このことから、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体が糖尿病と関連している可能性がある。したがって、本発明に係る膜蛋白質受容体に対するアゴニスト、アンタゴニストは、このような生理機能の障害を伴う疾患や症状を緩和することができる。すなわち、本発明に係る膜蛋白質受容体に対するアゴニスト、アンタゴニストは、抗不安薬、鎮痛剤、あるいは様々な中枢神経系の異常により惹き起こされる疾患に対する予防および/または治療剤の有効成分として使用できる。このような疾患として、具体的には、痴呆、パーキンソン病、パニック症候群、薬物依存症、肥満、糖尿病等の疾患が挙げられる。
【0156】
本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンドの1つが、上記のようにCCK−8S(配列番号14)であることから、CCK−8S(配列番号14)が関与すると考えられている記憶の保持といった神経機能に、本発明に係る膜蛋白質受容体が関与していると考える。CCK−8S(配列番号14)の量および/または機能の低下や消失により、記憶を意識レベルに呼び戻して行動に移すことが困難になる等の病的症状が現れる。このような記憶機能の障害を伴う疾患や症状を、本発明に係る膜蛋白質受容体のアゴニストにより緩和することができる。このような疾患として、記憶等の神経機能の障害を伴う疾患、具体的には例えば痴呆やアルツハイマー病等が挙げられる。
【0157】
(化合物の同定方法)
本発明の一態様はさらに、本発明に係る膜蛋白質受容体のアゴニストの同定方法に関する。本発明に係る膜蛋白質受容体のアゴニストの同定方法として、例えば、本蛋白質を発現させた形質転換体を用いた実験系において、該形質転換体と調べようとする化合物(以下、被検化合物と称する)とを接触させた後に、または被検化合物の共存下で、形質転換体に発生する機能変化を測定することを含む方法を挙げることができる。被検化合物の非存在下での測定結果との比較における本発明に係る膜蛋白質受容体機能の変化、例えば低減、増加、消失、出現等を検出することにより、本発明に係る膜蛋白質受容体のアゴニストを選択することができる。より好ましくは、本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)による該膜蛋白質受容体の機能変化を測定し、該機能変化と比較することにより、アゴニストを選択することができる。アゴニストは、リガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)により本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化と同質の機能変化を該膜蛋白質受容体にもたらす化合物であることが好ましい。アゴニストによる本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化は、リガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)により本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化と同質であればよく、量的に差異があってもよい。例えば、アゴニストによる本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化がリガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)により本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化より弱くてもよい。好ましくは、同等の機能変化を惹き起こすアゴニストを選択することが好ましい。本発明に係る膜蛋白質受容体の機能変化は、形質転換体の該膜蛋白質受容体を介する生物学的応答の変化を指標にして測定できる。したがって、リガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)により本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化と同質の機能変化として、例えば、形質転換体における該膜蛋白質受容体を介する細胞内カルシウム濃度の上昇が挙げられる。細胞内カルシウム濃度の変化の測定は、周知の方法を用いて実施できる(実施例5参照)。その他、リガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)により本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化と同質の機能変化として、形質転換体における該膜蛋白質受容体を介する膜電位の変化が挙げられる。膜電位の変化の測定は、周知の方法を用いて実施できる(実施例3参照)。リガンドは、リガンドを含む試料、または上記リガンドの同定方法により得たリガンド自身のいずれも使用できる。CCK−8S(配列番号14)が、本蛋白質の生体内リガンドであると考えられることから、好ましくはCCK−8S(配列番号14)をリガンドとして用いることが好ましい。CCK−8S(配列番号14)は、一般的な化学合成法により製造できる。また、市販のペプチド合成装置によっても合成できる。
【0158】
本発明に係る膜蛋白質受容体のアゴニストの同定方法は、本発明に係る膜蛋白質受容体に結合する化合物の同定方法により得られた化合物について、上記同定方法を用いて本発明に係る膜蛋白質受容体の機能変化を誘導するか否かを決定することにより、実施することもできる。
【0159】
本発明に係る膜蛋白質受容体に結合する化合物の同定方法は、本発明に係る蛋白質と該蛋白質のリガンドとを被検化合物の存在下および非存在下で反応させ、該蛋白質とリガンドとの結合を測定する方法により実施できる。本同定方法に用いる蛋白質は、本蛋白質をコードするDNAを含む細胞の細胞膜に発現した蛋白質であり得る。該細胞は、本蛋白質をコードするDNA含むベクターをトランスフェクションして得られた形質転換体であり得る。本同定方法において、本蛋白質とリガンドとの結合を阻害する化合物は、本蛋白質に結合する化合物またはリガンドに結合する化合物であり得る。本蛋白質と該蛋白質のリガンドとの結合の測定は、一般的な医薬品スクリーニングシステムで用いられている様々な結合アッセイを利用して実施できる。例えば、リガンドと本蛋白質との結合反応を行い、その後、本蛋白質に結合したリガンドを、抗リガンド抗体を用いて測定することにより、結合の測定が実施できる。リガンドに結合した抗リガンド抗体は、HRPやビオチン等で標識した二次抗体を用いて検出できる。また、あらかじめHRPやビオチン等で標識化した抗リガンド抗体を用いて、本蛋白質に結合したリガンドを検出することもできる。あるいは、本蛋白質との結合反応に用いるリガンドとして、あらかじめ所望の標識物質で標識化したリガンドを用いて上記同定方法を行い、該標識物質を検出することにより、本蛋白質に結合したリガンドを測定できる。標識物質として、一般的な結合アッセイで用いられている物質がいずれも利用できる。簡便には、放射性同位体元素が利用できる。このような同定方法で得られた化合物について、上記形質転換体の生物学的応答へのその作用を測定することにより、該化合物が本発明に係る膜蛋白質受容体の機能変化を誘導するか否かを決定できる。化合物による本発明に係る膜蛋白質受容体の機能変化が、リガンド、例えばCCK−8S(配列番号14)により本発明に係る膜蛋白質受容体に生じる機能変化と同質であれば、該化合物は、本発明に係る膜蛋白質受容体に結合して該膜蛋白質受容体を介する生物学的応答を誘導するアゴニストであると判定できる。それに対して、化合物により本発明に係る膜蛋白質受容体の機能変化が生じない場合は、該化合物は、本発明に係る膜蛋白質受容体に結合するが該膜蛋白質受容体を介する生物学的応答を誘導しないアンタゴニストであるか、または、リガンドに作用してリガンドと該膜蛋白質受容体の結合を阻害する化合物であると判定できる。
【0160】
本発明の一態様はまた、本発明に係る蛋白質の機能を阻害する、または促進する化合物、あるいは該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する、または促進する化合物の同定方法に関する。本蛋白質の機能を阻害する、または促進する該化合物の同定方法は、本蛋白質、DNA、組換えベクター、形質転換体または抗体のうち少なくともいずれか1つを用いて、自体公知の医薬品スクリーニングシステムを利用して実施できる。本同定方法により、該蛋白質の立体構造に基づくドラッグデザインによる拮抗剤の選別、蛋白質合成系を利用した遺伝子レベルでの発現の阻害剤または促進剤の選別、または抗体を利用した抗体認識物質の選別等が実施できる。
【0161】
本発明に係る蛋白質の機能を阻害する、または促進する化合物の同定は、例えば、本蛋白質の機能を測定することのできる実験系において、該蛋白質と被検化合物の相互作用を可能にする条件下で、該蛋白質と被検化合物とを共存させてその機能を測定し、ついで、被検化合物の非共存下での測定結果との比較における蛋白質の機能の変化、例えば低減、増加、消失、出現等を検出することにより、実施できる。当該蛋白質が膜蛋白質受容体であることから、該蛋白質の機能として、リガンドとの結合、細胞内情報伝達機構の活性化、細胞応答の誘発が挙げられる。より具体的には、CCK−8S(配列番号14)との結合やMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用等が例示できる。また、該蛋白質の機能は、該蛋白質を発現する細胞の生物学的応答、例えば、細胞膜電位の変化や細胞内カルシウム濃度の変化等を指標にして測定できる。該蛋白質の機能の測定は、該機能の直接的な検出により行うこともできるし、例えば機能の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより実施できる。シグナルとして、GST、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類、あるいは蛍光物質等を用いることができるが、一般的に化合物の同定方法に用いられている標識物質であれば、いずれを用いることもできる。
【0162】
被検化合物を共存させた場合の本発明に係る蛋白質の機能を、被検化合物を共存させなかった場合の本蛋白質の機能と比較することにより、該被検化合物が本蛋白質の機能に及ぼす効果を判定できる。被検化合物を共存させた場合の本蛋白質の機能が、被検化合物を共存させなかった場合の本蛋白質の機能と比較して減少した場合、該被検化合物には本蛋白質の機能を阻害する作用があると判定できる。一方、被検化合物を共存させた場合の本蛋白質の機能が、被検化合物を共存させなかった場合の本蛋白質の機能と比較して増加した場合、該被検化合物には本蛋白質の機能を促進するまたは安定化する作用があると判定できる。
【0163】
本発明の一態様はまた、本発明に係る蛋白質と該蛋白質のリガンドとの結合を促進するまたは阻害する化合物の同定方法に関する。該同定方法は、本蛋白質と該蛋白質のリガンドとを被検化合物の存在下および非存在下で反応させ、該蛋白質とリガンドとの結合を測定する方法により実施できる。また、本蛋白質の代わりに、本蛋白質を発現している細胞または本蛋白質を発現させた形質転換体を用いて、同様に該蛋白質とリガンドとの結合を測定する方法を挙げることができる。このような同定方法により、本蛋白質と該蛋白質のリガンドとの結合を阻害する化合物または促進する化合物の同定を実施できる。本蛋白質とリガンドとの結合を阻害する化合物は、本蛋白質に結合する化合物またはリガンドに結合する化合物であり得る。本蛋白質が膜蛋白質受容体であることから、本蛋白質と該蛋白質のリガンドとの結合を阻害する化合物は、本膜蛋白質受容体の機能を阻害する化合物、または促進する化合物であり得る。該化合物が、本発明に係る膜蛋白質受容体の機能を阻害する化合物であるか促進する化合物であるかは、該化合物の存在下および非存在下で、リガンドにより惹き起こされる本発明に係る膜蛋白質受容体の機能の変化を測定することにより決定できる。本蛋白質とリガンドとの結合を促進する化合物は、本発明に係る膜蛋白質受容体の機能を促進する化合物であり得る。該化合物が、本発明に係る膜蛋白質受容体の機能を促進する化合物であることは、該化合物の存在下および非存在下で、リガンドにより惹き起こされる本発明に係る膜蛋白質受容体の機能の変化を測定することにより決定できる。
【0164】
本発明に係る蛋白質の機能の測定方法として、本蛋白質を発現させた形質転換体を用いた実験系において、該形質転換体と被検化合物とを接触させた後に、または被検化合物の共存下で、該蛋白質に対するリガンドを作用させ、形質転換体に発生する生物学的応答の変化を測定することを含む方法を挙げることができる。このような測定方法は、本蛋白質の機能を促進する化合物または阻害する化合物の同定方法の実施に利用できる。作用させるリガンドは、リガンドを含む試料、または上記リガンドの同定方法により得たリガンド自身のいずれも使用できる。CCK−8S(配列番号14)が、本蛋白質の生体内リガンドであると考えられることから、好ましくはCCK−8S(配列番号14)をリガンドとして用いることが好ましい。被検化合物の非存在下での測定結果との比較における機能の変化、例えば低減、増加、消失、出現等を検出することにより、本蛋白質の機能を阻害する、または促進する化合物を選択できる。本蛋白質を発現させた形質転換体に発生する生物学的応答の変化として、例えば細胞膜電位の変化や細胞内カルシウム濃度の変化等が挙げられる。化合物により、該形質転換体の細胞膜電位の変化が増幅する、または細胞内カルシウム濃度が増加する等の変化が生じた場合、該化合物は、本蛋白質の機能を促進すると判定できる。逆に、化合物により、該形質転換体の細胞膜電位の変化が低減する、または細胞内カルシウム濃度が低減する等の変化が惹き起こされた場合、該化合物は、本蛋白質の機能を阻害すると判定できる。細胞膜電位の変化や細胞内カルシウム濃度の変化の測定は、周知の方法を用いて実施できる。また、本蛋白質の機能の測定を、MAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用を測定することにより実施できるMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用の変化やG蛋白質との結合変化の測定は、周知の方法を用いて実施できる。
【0165】
本発明の一態様はまた、本発明に係る蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用に影響を与え得る化合物の同定方法に関する。本蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用は、例えば本蛋白質を遺伝子工学的手法により発現させ、MAGUKファミリー関連蛋白質との結合の検出を行うことにより測定できる。具体的には、例えばMAGUKファミリー関連蛋白質を遺伝子工学的手法によりGST−tag融合蛋白質として発現させ、その後グルタチオンセファロースに結合させ、これに結合する本蛋白質の量を、本蛋白質に対する抗体、例えばHRPやALP等の酵素、放射性同位元素、蛍光物質またはビオチン等で標識した抗体を用いて定量できる。または、タグペプチドを融合した本蛋白質を用いれば、抗タグ抗体を用いて定量することもできる。勿論、本蛋白質を上記酵素、放射性同位元素、蛍光物質、ビオチン等で直接標識してもよい。あるいは、上記酵素、放射性同位元素、蛍光物質、ビオチン等で標識した二次抗体を用いてもよい。あるいは本蛋白質をコードするDNAとMAGUKファミリー関連蛋白質をコードするDNAとを適当な細胞を用いて共発現させ、プルダウン法により両者の結合を検出することにより、両者の相互作用を測定できる。
【0166】
本発明に係る蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用に影響する化合物の同定方法はまた、例えば、ツーハイブリッド(two−hybrid)法を用いて、本蛋白質とDNA結合蛋白質を融合蛋白質として発現するプラスミド、MAGUKファミリー関連蛋白質と転写活性化蛋白質を融合蛋白として発現するプラスミド、および適切なプロモーター遺伝子に接続したlacZ等レポーター遺伝子を含有するプラスミドを酵母や真核細胞等に導入し、被検化合物を共存させた場合のレポーター遺伝子の発現量を被検化合物非存在下でのレポーター遺伝子の発現量とを比較することにより実施できる。被検化合物を共存させた場合のレポーター遺伝子の発現量が被検化合物非存在下でのレポーター遺伝子の発現量と比較して減少した場合には、該被検化合物には本蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との結合を阻害する作用があると判定できる。一方、被検化合物を共存させた場合のレポーター遺伝子の発現量が被検化合物非存在下でのレポーター遺伝子の発現量と比較して増加した場合には、該被検化合物には本蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との結合を安定化する作用があると判定できる。
【0167】
本発明に係る蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用に影響する化合物の同定は、ビアコアシステム(BIACORE system)等の表面プラズモン共鳴センサーを用いて実施することもできる。
【0168】
本発明に係る蛋白質とMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用に影響する化合物の同定はまた、シンチレーションプロキシミティアッセイ法(Scintillation proximity assay、SPA)や蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence resonance energy transfer、FRET)を応用した方法を用いて実施できる。
【0169】
本発明に係る同定方法において用いるMAGUKファミリー関連蛋白質として具体的には、DLG2、DLG3およびDLG4や、AIP1、MAGI3を例示できる。MAGUKファミリー関連蛋白質は、本発明に係る蛋白質との相互作用に影響がない限りにおいて、一部を欠損したものであってよく、あるいは別の蛋白質等の標識物質が付加されたものであってもよい。
【0170】
本発明の一態様はまた、本発明に係るDNAの発現を阻害する、または促進する化合物の同定方法に関する。該同定方法は、本DNAの発現を測定することのできる実験系において、該DNAと被検化合物とを共存させてその発現を測定し、次いで、被検化合物の非共存下での測定結果との比較における発現の変化、例えば低減、増加、消失、出現等を検出することにより実施できる。発現の測定は、DNAがコードする蛋白質の直接的な検出により実施できるし、例えば発現の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより実施できる。シグナルとして、GST、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類、あるいは蛍光物質等を使用できる。
【0171】
本発明に係るDNAの発現に影響を与える化合物の同定はまた、例えば本DNAを含む遺伝子のプロモーター領域の下流に、該DNAの代わりにレポーター遺伝子を連結したベクターを作成し、該ベクターを導入した細胞、例えば真核細胞等と被検化合物とを接触させ、レポーター遺伝子の発現の有無および変化を測定することにより実施できる。レポーター遺伝子として、レポーターアッセイで一般的に用いられている遺伝子を使用でき、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の酵素活性を有する遺伝子を例示できる。レポーター遺伝子の発現の検出は、その遺伝子産物の活性、例えば、上記例示したレポーター遺伝子の場合は酵素活性を検出することにより実施できる。
【0172】
本発明に係るDNAの発現に影響を与える化合物の同定はまた、本発明に係る形質転換体を用いて蛋白質を発現させる実験系において、該形質転換体と被検化合物とを接触させた後に、発現された蛋白質を測定することによっても実施できる。被検化合物の非共存下での測定結果との比較における発現の変化、例えば低減、増加、消失、出現等を検出することにより、本DNAの発現を阻害する、または促進する化合物を選択できる。蛋白質の発現の有無または変化の検出は、簡便には、発現される蛋白質の生物学的機能や該蛋白質を介した細胞の生物学的応答、例えばリガンドを作用させたときに発生するMAGUKファミリー関連蛋白質との相互作用、細胞膜電位の変化、細胞内カルシウム濃度の変化を指標にして実施できる。
【0173】
(化合物)
かくして同定された化合物は、本発明に係る膜蛋白質受容体のアゴニストとして利用できる。また、上記同定方法により取得された化合物は、本発明に係る蛋白質の機能、例えば、リガンドとの結合、細胞内情報伝達の活性化、細胞応答の誘発等の機能の阻害剤、拮抗剤、促進剤または安定化剤等として利用できる。また、遺伝子レベルでの上記蛋白質に対する発現阻害剤または発現促進剤として利用できる。これら化合物は、生物学的有用性と毒性のバランスを考慮してさらに選別することにより医薬として調製することができる。またこれら化合物は、本蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現の異常に起因する各種病的症状の防止効果および/または治療効果を期待できる。
【0174】
(医薬組成物)
本発明に係る蛋白質、DNA、組換えベクター、形質転換体、抗体、リガンドまたは化合物は、本蛋白質の機能および/または発現を阻害する、拮抗する、または促進することに基づく医薬または医薬組成物の有効成分として有用である。
【0175】
本発明に係る医薬または医薬組成物は、本発明に係る蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現の異常に起因する疾患の防止剤および/または治療剤として使用できる。また、当該疾患の防止方法および/または治療方法に使用できる。
【0176】
本発明に係る蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現が過剰な場合、1つの方法として該蛋白質の機能および/または該DNAの発現を阻害する有効量の阻害剤を医薬上許容される担体とともに対象に投与して、該蛋白質の機能を阻害し、そのことにより異常な症状を改善することができる。さらに、発現ブロック法を用いて内在性の該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害してもよい。例えば本発明に係るDNA断片をアンチセンスオリゴヌクレオチドとして遺伝子治療に用い、本蛋白質をコードするDNAの発現を阻害できる。アンチセンスオリゴヌクレオチオドとして用いるDNA断片は、本DNAの翻訳領域のみでなく、非翻訳領域に対応するものであっても有用である。本DNAの発現を特異的に阻害するためには、該DNAに固有な領域の塩基配列を用いることが好ましい。
【0177】
本発明に係る蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現の減少や欠失等に関連する異常な症状の治療には、1つの方法として該蛋白質の機能および/または該DNAの発現を促進するまたは安定化する有効量の促進剤を医薬上許容される担体とともに投与し、そのことにより異常な症状を改善することを特徴とする方法が挙げられる。あるいは、遺伝子治療を用いて、対象中の細胞内で該蛋白質を生成せしめてもよい。本発明に係るDNAを利用した遺伝子治療は、公知の方法が利用できる。例えば、本DNAまたは該DNAの転写産物であるRNAを組込んだ複製欠損レトロウイルスベクターを作製し、該ベクターを用いたエクスビボ(ex vivo)において対象由来の細胞を処理し、次いで、細胞を対象に導入することもできる。
【0178】
本発明に係るDNAの一態様である配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAの組織発現は、脳全般、例えば大脳側頭極(temporal pole)運動皮質(motor cortex)および眼窩回(orbital gyri)等で特異的に高いことが判明した。したがって、本発明に係る蛋白質、DNA、並びに該蛋白質は、脳および脳細胞の恒常性維持に重要であると考える。また、卵巣癌、肝臓癌および副腎癌等の腫瘍において正常組織と比較して著しく高い発現が認められた。このことから、本蛋白質、DNA、並びに該蛋白質は、これら腫瘍疾患に関連すると考える。
【0179】
本発明に係る蛋白質は、そのアミノ酸配列中にTSP−Iドメインを有する。TSP−Iドメインは、血管新生阻害機能を担うドメインであることが報告されていることから、本蛋白質は、血管新生阻害機能を有すると考えられる。したがって、血管新生阻害に起因する疾患や血管新生阻害を伴う疾患に、本蛋白質が関与している可能性がある。また、血管新生を促進することにより治療が可能になる疾患においては、本蛋白質の機能や発現を阻害することが好ましい。このような疾患として例えば脳挫傷や脳梗塞が例示できる。このような場合、本蛋白質の機能および/または発現を低減させる、あるいは消失させる機能を有する化合物により、その改善、防止および/または治療を実施できる。すなわち、本蛋白質の機能および/または発現を阻害する化合物を有効量含む医薬組成物は、血管新生阻害に起因する疾患や血管新生阻害を伴う疾患(例えば脳挫傷や脳梗塞)の改善剤、防止剤および/または治療剤として使用できる。また、これらを用いて当該疾患の防止方法および/または治療方法を実施できる。他方、本蛋白質の機能および/または発現の低下が、血管新生に起因する疾患や血管新生を伴う疾患に関与している可能性がある。このような疾患として例えば、血管新生を伴うことが知られている腫瘍疾患が挙げられる。このような場合、本蛋白質、DNA、並びに該蛋白質の機能および/または該DNAの発現を促進する化合物により、その改善、防止および/または治療を実施できる。すなわち、本蛋白質、DNA、並びに該蛋白質の機能および/または該DNAの発現を促進する化合物を有効量含む医薬組成物は、血管新生に起因する疾患や血管新生を伴う疾患(例えば腫瘍疾患)の改善剤、防止剤および/または治療剤として使用できる。また、これらを用いて当該疾患の防止方法および/または治療方法を実施できる。
【0180】
また、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体のリガンドとして見出したCCK−8S(配列番号14)が記憶の保持に必要不可欠であること、例えば、CCK−8S(配列番号14)が無いと記憶を意識レベルに呼び戻して行動に移すことが困難であることが報告されている。このことから、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体は、CCK−8の神経機能に関与していると考える。また、CCK−B受容体と不安との関係が報告されていることから、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体が同様に不安症と関連している可能性がある。したがって、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体のアゴニスト、および該アゴニストを有効量含む医薬組成物は、このような記憶等の神経機能の障害を伴う疾患や症状および不安症等の緩和、改善、防止および/または治療に有効であると考える。記憶等の神経機能の障害を伴う疾患として、具体的には例えば痴呆(アルツハイマー病を含む)が挙げられる。さらに、CCKは、消化器官で種々の作用を示すことが報告され、また満腹感を脳のニューロンに与える信号物質と考えられている。このことから、CCKのファミリーであるCCK−8Sも、脳のニューロンに満腹感を与える信号物質として作用すると考える。CCK−8Sの量的および機能的な低下は、満腹感の低下による肥満を惹き起こすと考える。また、CCK−8Sを糖尿病患者に投与するとインスリン量の増加が促進され、食後のグルコース量の増加が抑制されたことが報告されている(ボー(BO A.)ら、「ザ ジャーナル オブ クリニカル エンドクリノロジー アンド メタボリズム(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)」、2000年、第85巻、p.1043−1048)。これらから、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体が糖尿病と関連している可能性がある。したがって、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体のアゴニスト、および該アゴニストを含む医薬組成物は、糖尿病や肥満の改善、防止および/または治療に有効であると考える。すなわち、本発明に係る機能的膜蛋白質受容体のアゴニスト、および該アゴニストを含む医薬組成物は、記憶機能の障害を伴う疾患や症状(例えば痴呆(アルツハイマー病を含む))および糖尿病や肥満の改善剤、防止剤および/または治療剤として使用できる。また、これらを用いて当該疾患の防止方法および/または治療方法を実施できる。
【0181】
本発明に係る医薬は、本発明に係る蛋白質、DNA、組換えベクター、形質転換体、抗体、リガンドまたは化合物のうち少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含む医薬となしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。
【0182】
本発明に係る医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
【0183】
医薬用担体として、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤や賦形剤等を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択使用される。
【0184】
例えば水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。これらは、剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組合せて使用される。
【0185】
所望により、通常の蛋白質製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜使用して調製することもできる。
【0186】
安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体等を例示でき、これらは単独でまたは界面活性剤等と組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。上記L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。これには、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。
【0187】
緩衝剤として、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)等を例示できる。
【0188】
等張化剤として、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等を例示できる。
【0189】
キレート剤として、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸等を例示できる。
【0190】
本発明に係る医薬および医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。
【0191】
医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μgないし100mg程度、好ましくは約0.1μgないし1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回ないし数回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
【0192】
本発明に係る医薬組成物を投与するときには、該医薬組成物を単独で使用してもよく、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。
【0193】
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択できる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。例えば、非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内等への投与が挙げられる。あるいは経口経路で投与することができる。さらに、経粘膜投与または経皮投与も実施できる。癌疾患に用いる場合は、腫瘍に注射等により直接投与することが好ましい。
【0194】
投与形態は、各種の形態が目的に応じて選択できる。その代表的なものは、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、リポソーム製剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤(点滴剤、注射剤)、経鼻剤、吸入剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形、調製することができる。
【0195】
本発明に係る医薬組成物を遺伝子治療剤として用いる場合は、一般的には、注射剤、点滴剤、あるいはリポソーム製剤として調製することが好ましい。遺伝子治療剤が、遺伝子が導入された細胞を含む形態に調製される場合は、該細胞をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、リンゲル液、細胞内組成液用注射剤中に配合した形態等に調製することもできる。また、プロタミン等の遺伝子導入効率を高める物質と共に投与されるような形態に調製することもできる。遺伝子治療剤として用いる場合、本医薬組成物は、1日に1回または数回に分けて投与することができ、1日から数週間の間隔で間歇的に投与することもできる。投与の方法は、一般的な遺伝子治療法で用いられている方法に従うことができる。
【0196】
(診断方法)
本発明に係る蛋白質、DNA、組換えベクター、形質転換体、抗体または化合物は、それ自体を、診断マーカーや診断試薬等の疾患診断手段として使用できる。
【0197】
本発明によれば、例えば本発明に係るDNAの一部または全部の塩基配列を利用することにより、個体若しくは各種組織における該DNAを含む遺伝子の異常の有無あるいは発現の有無を特異的に検出できる。本DNAの検出により、該遺伝子に起因する疾患の易罹患性、発症、および/または予後の診断が実施できる。該遺伝子に起因する疾患とは、該遺伝子の量的異常および/または機能異常等に起因する疾患を意味する。本発明に係る膜蛋白質受容体のリガンドとして見出したCCK−8S(配列番号14)は記憶等の神経機能に関わっていることが知られている。したがって、本発明に係る遺伝子の量的異常および/または機能異常により、該遺伝子の遺伝子産物である膜蛋白質受容体の機能が異常をきたしてCCK−8S(配列番号14)からの情報伝達に異常を生じる場合、記憶等の神経機能の障害を伴う疾患や症状が発生する可能性がある。したがって、本遺伝子に起因する疾患として、記憶等の神経機能の障害を伴う疾患や症状、例えばアルツハイマー病が挙げられる。また、本蛋白質は、そのアミノ酸配列中にTSP−Iドメインを有し、TSP−Iドメインが血管新生阻害機能を担うドメインであることが知られていることから、血管新生阻害に起因する疾患や血管新生阻害を伴う疾患、あるいは血管新生に起因する疾患や血管新生を伴う疾患に関与している可能性がある。このような疾患として、例えば脳腫瘍、卵巣癌、肝臓癌、副腎癌等の腫瘍疾患、並びに脳挫傷や脳梗塞等を例示できる。
【0198】
遺伝子の検出による疾患の診断は、例えば被検試料について、該遺伝子に相応する核酸の存在を検出すること、その存在量を決定すること、および/またはその変異を同定することによって実施できる。正常な対照試料との比較において、目的遺伝子に対応する核酸の存在の変化、その量的変化を検出できる。また、正常遺伝子型との比較において、目的遺伝子に対応する核酸を公知の手法により増幅した増幅生成物について、例えばサイズ変化を測定することにより欠失および挿入を検出できる。また増幅DNAを、例えば標識した本発明に係るDNAとハイブリダイゼーションさせることにより点突然変異を同定できる。このような変化および変異の検出により、上記診断を実施できる。
【0199】
本発明の一態様はまた、被検試料中の目的遺伝子の定性的または定量的な測定方法、または該遺伝子の特定領域の変異の定性的または定量的な測定方法に関する。
【0200】
被検試料は、目的遺伝子および/またはその変異遺伝子の核酸を含むものである限り特に制限されず、例えば、細胞、血液、尿、唾液、髄液、組織生検または剖検材料等の生体生物由来の生物学的試料を例示できる。あるいは所望により生物学的試料から核酸を抽出して核酸試料を調製して用いることもできる。核酸は、ゲノムDNAを検出に直接使用してもよく、あるいは分析前にPCRまたはその他の増幅法を用いることにより酵素的に増幅してもよい。RNAまたはcDNAを同様に用いてもよい。核酸試料は、また、標的配列の検出を容易にする種々の方法、例えば変性、制限酵素による消化、電気泳動またはドットブロッティング等により調製してもよい。
【0201】
検出方法は、公知の遺伝子検出法を用いることができ、例えばプラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション、サザンブロット法、ノザンブロット法、NASBA法、またはRT−PCR等が挙げられる。また、in situ RT−PCRや in situ ハイブリダイゼーション等を利用した細胞レベルでの測定を用いることもできる。本発明に係る遺伝子の検出に用いることのできる方法は上記方法に限定されず、自体公知の遺伝子検出法がいずれも使用できる。
【0202】
このような遺伝子検出法において、目的遺伝子またはその変異遺伝子の同定および/またはその増幅の実施に、本発明に係るDNA断片であってプローブとしての性質を有するものまたはプライマーとしての性質を有するものが有用である。プローブとしての性質を有するDNA断片とは、本発明に係るDNAのみに特異的にハイブリダイゼーションできる該DNA特有の配列からなるものを意味する。プライマーとしての性質を有するものとは本DNAのみを特異的に増幅できる該DNA特有の配列からなるものを意味する。また、増幅できる変異遺伝子を検出する場合には、遺伝子内の変異を有する箇所を含む所定の長さの配列を持つプライマーあるいはプローブを作成して用いる。プローブまたはプライマーは、塩基配列長が一般的に5ないし50ヌクレオチド程度であるものが好ましく、10ないし35ヌクレオチド程度であるものがより好ましく、15ないし30ヌクレオチド程度であるものがさらに好ましい。プローブは、通常は標識したプローブを用いるが、非標識であってもよく、直接的または間接的に標識したリガンドとの特異的結合によって検出してもよい。プローブおよびリガンドを標識する方法は、種々の方法が知られており、例えばニックトランスレーション、ランダムプライミングまたはキナーゼ処理を利用する方法等を例示できる。適当な標識物質として、放射性同位体、ビオチン、蛍光物質、化学発光物質、酵素、抗体等が挙げられる。
【0203】
遺伝子検出法は、PCRが感度の点から好ましい。PCRは、目的遺伝子を特異的に増幅することのできるDNA断片をプライマーとして用いる方法である限り特に制限されず、従来公知の方法、例えばRT−PCRが例示されるが、当該分野で用いられる種々の変法を適用できる。
【0204】
PCRにより、遺伝子の検出の他に、目的遺伝子および/またはその変異遺伝子のDNAの定量も実施できる。このような分析方法として、MSSA法のごとき競合的定量法、または一本鎖DNAの高次構造の変化に伴う移動度の変化を利用した突然変異検出法として知られるPCR−SSCP法を例示できる。
【0205】
本発明によればまた、例えば本発明に係る蛋白質を利用することにより、個体若しくは各種組織における該蛋白質およびその機能の異常の有無を特異的に検出できる。本蛋白質およびその機能の異常の検出により、該遺伝子に起因する疾患の易罹患性、発症および/または予後の診断が実施できる。
【0206】
蛋白質の検出による疾患の診断は、例えば被検試料について、該蛋白質の存在を検出すること、その存在量を決定すること、および/またはその変異を検出することによって実施できる。すなわち、本蛋白質および/またはその変異体を定量的あるいは定性的に測定する。正常な対照試料との比較において、目的蛋白質の存在の変化、その量的変化を検出できる。正常蛋白質との比較において、例えばアミノ酸配列を決定することによりその変異を検出できる。このような変化および変異の検出により、上記診断を実施できる。被検試料は、目的蛋白質および/またはその変異体を含むものである限り特に制限されず、例えば、血液、血清、尿、生検組織等の生体生物由来の生物学的試料を例示できる。
【0207】
本発明に係る蛋白質および変異を有する該蛋白質の測定は、本蛋白質、例えば配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、または該蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個ないし複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列、これらの断片、または該蛋白質やその断片に対する抗体を用いることにより実施できる。
【0208】
蛋白質の定量的あるいは定性的な測定は、この分野における慣用技術による蛋白質検出法あるいは定量法を用いて行うことができる。例えば、目的蛋白質のアミノ酸配列分析により変異蛋白質の検出ができるが、さらに好ましくは、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル抗体)を用いて、目的蛋白質の配列の相違、または目的蛋白質の有無を検出できる。
【0209】
本発明の一態様はさらに、被検試料中の目的蛋白質の定性的または定量的な測定方法、または該蛋白質の特定領域の変異の定性的または定量的な測定方法に関する。
【0210】
具体的には、被検試料について、目的蛋白質に対する特異抗体を用いて免疫沈降を行い、ウェスタンブロット法またはイムノブロット法で目的蛋白質の解析を行うことにより、上記検出が実施できる。また、目的蛋白質に対する抗体により、免疫組織化学的技術を用いてパラフィンまたは凍結組織切片中の目的蛋白質を検出できる。
【0211】
目的蛋白質またはその変異体を検出する方法の好ましい具体例として、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いるサンドイッチ法を含む、酵素免疫測定法(ELISA)、放射線免疫検定法(RIA)、免疫放射線検定法(IRMA)、および免疫酵素法(IEMA)等が挙げられる。その他、ラジオイムノアッセイや競争結合アッセイ等を利用することもできる。
【0212】
本発明に係る蛋白質、DNA、組換えベクター、形質転換体、および抗体はいずれも、それ自体を単独で、試薬等として使用できる。例えば、本発明に係る化合物の同定方法、あるいは発明に係る蛋白質および/またはDNAの測定方法に使用するための試薬として用いることができる。該試薬は本蛋白質またはDNAが関与する細胞情報伝達経路の解明、並びに該蛋白質および/またはDNAの異常に起因する疾患等に関する基礎的研究等に有用である。
【0213】
これらは試薬であるとき、緩衝液、塩、安定化剤、および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。なお、製剤化にあたっては、各性質に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。
【0214】
本発明はまた、本発明に係る蛋白質、DNA、組換えベクター、形質転換体、および抗体のうちの少なくともいずれか1つを含んでなる試薬キットを提供する。これらは試薬キットであるとき、本蛋白質やDNAを検出するための標識物質、標識の検出剤、反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤および反応停止液等、測定の実施に必要とされる物質を含むことができる。標識物質として、上述の標識用蛋白質、および化学修飾物質等が挙げられるが、予め該標識物質が本蛋白質あるいはDNAに付加されていてもよい。
【0215】
本発明に係る試薬キットは、上記同定方法および測定方法に使用できる。さらに本発明は、前記測定方法を用いる検査方法に、検査剤並びに検査用キットとして使用できる。また、前記測定方法を用いる診断方法にも、診断剤並びに診断用キットとして使用できる
【0216】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0217】
(ヒト脳由来cDNAライブラリーの構築と遺伝子の分取)
市販ヒト脳、胎児脳、および脳海馬由来のpolyARNA(Clontech社製:カタログNo.6516−1、6525−1、および6578−1)を出発原料として常法によりcDNAライブラリーを構築し、dbEST分析によりcDNA断片を単離してcDNAクローンの塩基配列を決定した。具体的には、小原らの方法(オハラ(Ohara,O.)ら、「ディーエヌエー リサーチ(DNA Research)」、1997年、第4巻、p.53−59)に従って調製した上記ヒト脳由来のcDNAライブラリーから、約50,000個の組換え体をランダムに選択し、このうち約30,000個のクローンのcDNAについて、その5′末端および3′末端の塩基配列を決定した。さらに約1,100個を主にインビトロの転写翻訳実験によって選択し、それらのcDNAの塩基配列を小原らの方法に従って決定した。
【0218】
全塩基配列の決定を行ったcDNAクローンについて、コンピュータプログラムを用いた汎用解析方法によってORFを予想し、この領域について7回膜貫通ドメインを有するcDNAクローンを得た。
【0219】
同定したcDNAクローンph01207は、シグナル配列と予測される部分(N末端より20アミノ酸残基)を有する1518アミノ酸残基からなるORFを含む全長4557bpの新規な塩基配列を有するDNA(配列番号1)である。相同性検索により、ph01207は、hBAI2(GenBank アクセッション番号AB005298)の配列のうち、N末端領域の55アミノ酸残基をコードする領域が欠損し、さらにC末端側領域に1アミノ酸残基(配列番号2に記載のアミノ酸配列における第1406番目のリジン)が付加したスプライスバリアントであると考えられた(図1)。
【0220】
ph01207がコードする蛋白質には構造的特徴として、3個のTSP−Iドメインの他、GPSドメインおよびGPCRファミリー2ドメイン(7回膜貫通ドメイン)が存在することが判明した。
【0221】
一方、hBAI2がコードする蛋白質は、4個のTSP−Iドメインの他、GPSドメインおよびGPCRファミリー2ドメインを有すると考えられる。ph01207がコードする蛋白質においては、hBAI2のN末端領域側の1個のTSP−Iドメインを含む領域に相当する55アミノ酸残基が欠失していることが明らかになった。
【0222】
また、ph01207遺伝子の発現組織解析により、正常の脳組織全般(例えば、大脳側頭極(temporal pole)、運動皮質(motor cortex)、眼窩回(orbital gyri)等)において本遺伝子の特異的に高い発現が認められた。さらに卵巣癌、肝臓癌および副腎癌において、各正常組織と比較して、発現の亢進が認められた。
【実施例2】
【0223】
(ph01207発現細胞株の作製と、該細胞株におけるDNAの発現)
実施例1で同定したクローンph01207を用いてph01207がコードする蛋白質をN末端エピトープタグ(epitope−tag)融合蛋白質として発現させた。
【0224】
まず、ph01207遺伝子を含む発現ベクターを構築した。実施例1で同定したクローンph01207を用いて、シグナル配列と予測される部分(N末端より20アミノ酸残基)を除いたアミノ酸配列をコードするDNAをPCRおよび制限酵素処理によりpDONR201にクローニングし、ph01207エントリーベクターを構築した。PCRは、プライマーとして配列表の配列番号4〜11のそれぞれに記載した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用い、ポリメラーゼとしてPfu turbo DNA polymerase(Stratagene社製)を用いて実施した。
【0225】
N末端epitope−tag融合型発現ベクターとして、p3×FLAG−CMV9−attRとT8HA−attR/pCINeoの2種類を準備した。p3×FLAG−CMV9−attRは、p3×FLAG−CMV9(Sigma社製)をゲートウェイベクターコンバージョンシステム(GATEWAY Vector Conversion System、Invitrogen社製)によりゲートウェイシステム(GATEWAY system)に対応化させたベクターである。T8HA−attR/pCINeoは、文献情報(ケラー(Koller,K.J.)ら、「アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)」、1997年、第250巻、p.51−60)に従い、pCINeo(Promega社製)および合成オリゴ(T8SP−HA(配列番号12)およびT8SP−HA as(配列番号13))、並びにGATEWAY Vector Conversion Systemを用いて構築した。両ベクターともにepitope−tagの前(N末端側)に分泌シグナル配列(FLAG:PPTLS、HA:T8)を有する。これらベクターを用いて、マンマリアンエクスプレッションシステムウイズゲートウェイテクノロジー(Mammalian Expression system with GATEWAY technology、Invitrogen社製)のLR反応により、N末端FLAG−tagまたはHA−tag融合型発現ベクターを構築した。構築した各発現ベクターは、制限酵素処理およびシークエンス解析により、導入した配列の翻訳領域に塩基置換や欠損のないことを確認した。
【0226】
構築した2種類の発現ベクターをそれぞれCHO−K1細胞株へフュージーン6(Fugene6、Roche社製)を用いてトランスフェクションした後、G418を含む培地(400μg/mL G418および10%牛胎仔血清を含むDMEM/F12培地)で培養することにより発現細胞株の選抜を行った。生育した発現細胞株について、epitope−tagに対するパーオキシダーゼ(POD)標識抗体(抗FLAG M2−POD抗体および抗HA−POD抗体:3F10)を用いてセルエンザイムイムノアッセイ(cell EIA)により、さらに選抜を行った。選抜した細胞株について、さらに一次抗体(抗FLAG M2抗体および抗HA抗体:クローンHA−7)およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識した二次抗体(FITC−抗マウスIgG抗体)を用いたフルオロサイトメトリー(FCM)解析による選抜を行い、発現細胞株を取得した。
【0227】
FCM解析の結果、細胞膜上に抗FLAG抗体により認識される蛋白質(FLAG−tag融合蛋白質)を発現しているクローン8株、抗HA抗体により認識される蛋白質(HA−tag融合蛋白質)を発現しているクローン4株が得られた。いずれのクローンも、FLAG−tagまたはHA−tagを認識する抗体が結合したことによる蛍光シグナルが宿主細胞株(CHO−K1)よりも明らかに強いことから、目的の遺伝子が発現していることが明らかになった。代表的な結果を図2に示す。
【0228】
FCM解析の結果から、N−末端epitope−tag融合型のph01207遺伝子産物が細胞膜上に発現することが判明した。
【0229】
HA−tag融合蛋白質の発現が認められたクローンのうちHA−ph01207#10−6と称する細胞株を、受託番号 FERM BP−10101号として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成16年8月19日付けで寄託した。本細胞株の生存は、前記寄託センターにおいて平成16年9月22日に実施された試験により確認されている。HA−ph01207#10−6細胞株は、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAのオープンリーディングフレーム(ORF)のうち、シグナル配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列のN末端より20アミノ酸残基)をコードすると予測される部分を除いた塩基配列からなるDNAをN末端HA−tag融合蛋白質として発現させるベクターを、CHO−K1細胞株にトランスフェクションすることにより樹立した細胞株であり、N末端HA−tag融合蛋白質を安定的に発現している。
【実施例3】
【0230】
(ph01207遺伝子産物の機能解析)
ph01207遺伝子産物の機能解析は、ph01207を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞にリガンドを添加したときの細胞応答の測定により実施した。細胞応答の測定は、コントロール卵母細胞(遺伝子導入していないもの)および遺伝子(ph01207 cDNAクローン)を発現させた卵母細胞をそれぞれ6個ずつ用いて、リガンドを添加したときの卵母細胞の膜電位変化の測定により行った。リガンドとして、ph01207を発現していることが認められたHeLa細胞株の培養上清を用いた。培養上清は、細胞数1.2×10のHeLa細胞株を10%牛胎仔血清を含むDMEMにて2日間培養した後に培養上清を回収し、フィルターろ過(0.45μm)することにより調製した。リガンドとして、同様に調製したロットの異なる2種類の培養上清を用いた(以下、リガンドサンプル1および2と称する)。
【0231】
ph01207遺伝子を発現させた卵母細胞とコントロール卵母細胞にリガンドサンプル1または2を添加し、膜電位変化を測定した。評価は電流量の変化と電流量の変化を示す波形により行い、電流量の変化が0.2μA以上であり、かつGPCR特異的なパターンの波形が認められた場合に、リガンド刺激に対する応答があると判定した。GPCR特異的なパターンとは図3に示す波形1のパターンをいう。図3に示す波形2〜4のようなパターンは溶媒等何らかの成分の影響あるいは高濃度のリガンド等の人為的要素により生じる波形パターンであり、リガンド刺激に対する応答ではないと判定した。また、波形5および6のようなパターンが認められた場合は、リガンド刺激に対する応答が無いと判定した。
【0232】
その結果、ph01207発現細胞にのみ電流量の変化が認められた(表1および表2)。表2中NDとは、 電流変化量が0.2μA以下であり、応答が認められなかったことを示す。表1に示すように、ph01207発現細胞株6検体の全てにおいてリガンド刺激に対する応答が認められた。それに対し、コントロール細胞は全くリガンドに対して応答しなかった(表2)。このことから、ph01207発現細胞のリガンド刺激による応答は、発現させた受容体に特異的な応答であると考える。リガンドサンプル1および2のどちらを用いても同様の結果が得られた。
【0233】
【表1】

【0234】
【表2】

【0235】
上記のように、ph01207遺伝子の発現によりリガンド刺激による細胞応答が生じたことから、ph01207遺伝子産物は、リガンドに応答して細胞内情報伝達経路を活性化する機能を有するGPCRであると考える。
【実施例4】
【0236】
(ph01207遺伝子産物の蛋白質相互作用解析)
ph01207遺伝子産物の蛋白質相互作用解析をイーストツーハイブリッドシステムを用いて検討した。
【0237】
ph01207配列情報とhBAI2配列情報に基づいて、ph01207遺伝子産物のN末端領域(4ヶ所)とC末端領域(2ヶ所)、およびhBAI2遺伝子産物のN末端領域(ph01207で55アミノ酸残基欠失している領域)とC末端領域(ph01207で1アミノ酸残基挿入のある領域)にそれぞれbait(ベイト)を設定し、hBAI2の発現分布に関する報告(非特許文献1)より選択したcDNAライブラリー(脳、海馬、乳癌と前立腺癌、心臓、骨格筋に由来する)に対してスクリーニングを行った。
【0238】
ph01207遺伝子産物(配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1406番目に相当する1アミノ酸残基の挿入有り)およびhBAI2遺伝子産物(前記アミノ酸残基の挿入なし)の各C末端領域に設計したbaitのいずれを用いたときも、pray(プレイ)としてMAGUKファミリー関連蛋白質であるDLG2、DLG3およびDLG4や、AIP1、MAGI3等が得られた。この他、hBAI2遺伝子産物特異的なprayとして、HOMER2、Citron、SYNE−1、KIF5AおよびKIFAP3が得られた。
【0239】
ph01207遺伝子産物のN末端領域(55アミノ酸残基の欠失有り)に設計されたbaitに対しては、BAT1(HLA−B associated transcript 3)のみがprayとして得られたが、hBAI2遺伝子産物のN末端領域(前記アミノ酸残基の欠失なし)に設計されたbaitに対しては、KCNN2(potassium intermediate/small conductance calcium−activated channel, subfamily N, member2)等がヒットした。
【0240】
このように、ph01207遺伝子産物とhBAI2遺伝子産物とでは、MAGUKファミリー関連蛋白質を除いて、イーストツーハイブリッドシステムにより検出される相互作用蛋白質に違いがあることが判明した。
【0241】
ph01207遺伝子産物およびhBAI2遺伝子産物は、それぞれのC末端領域において、MAGUKファミリー関連蛋白質と相互作用する。MAGUKファミリー関連蛋白質は細胞質内に存在し、細胞膜に存在する受容体やイオンチャネル等の膜蛋白質と結合することにより、これら膜蛋白質からの情報伝達に関与している。したがって、ph01207遺伝子産物とhBAI2遺伝子産物は、MAGUKファミリー関連蛋白質を介して細胞内情報伝達に関与する機能的膜蛋白質受容体であると考える。
【実施例5】
【0242】
(CCK8によるph01207発現細胞株の細胞内カルシウム濃度変化の測定)
実施例2で作製したph01207発現細胞株を用いて、CCK−8S(配列番号14)、CCK−8NSまたはCCK−4による細胞内カルシウム(Ca2+)濃度変化を測定した。実施例2で作製した細胞株は、ph01207がコードする蛋白質をFLAG−tag融合蛋白質として発現している8株およびph01207がコードする蛋白質をHA−tag融合蛋白質として発現している4株である。このうち、本実施例においては、ph01207がコードする蛋白質をHA−tag融合蛋白質として安定的に発現している細胞株の1つを細胞クローニングして得られた株である、HA−ph01207#10−6細胞株を使用した。CCK−8NSは、CCK−8S(配列番号14)と同じアミノ酸配列からなるCCKオクタペプチドであるが、C末端から7番目のチロシン残基が硫酸化されていない。CCK−4は、CCK−8S(配列番号14)のC末端から4番目までのアミノ酸残基からなるテトラペプチドである。
【0243】
CCK−8S(配列番号14)によるHA−ph01207#10−6細胞株の細胞内Ca2+濃度の変化の具体的な測定方法とその結果を以下に述べる。HA−ph01207#10−6細胞株を、96ウエルプレート(壁面が黒色で底面が透明なもの)に、細胞数2×10/100μL medium/wellで播種し、37℃にて5%CO存在下で培養した。培地(medium)は、10% 牛胎仔血清(Moregate社製)を含むDMEM/F12(Gibco社製)を用いた。翌日、各ウエルより培地を50μL抜き取り、ローディングバッファー(Loading buffer)を50μLずつ各ウエルに添加して、室温で1.5時間反応させた。ローディングバッファーは、FLIPRカルシウム3 アッセイキット(FLIPR Calcium 3 Assay Kit、Molecular Device社製)のコンポーネントAを、9.9mLのコンポーネントBに0.1mLの500mM プロベネシド(probenecid、Sigma社製)を加えた溶液にて溶解することにより調製した。反応後、フレックスステーション(FLEXstation、Molecular Device社製)を用いてCCK−8S(ペプチド研究所製)添加時の蛍光強度の経時変化をウエル毎に測定した。また、CCK−8NS(ペプチド研究所製)およびCCK−4(ペプチド研究所製)についても同様の測定を行なった。CCK−8S(配列番号14)は、0.52mgを4.5mLの1% NaHCO(Wako社製)で溶解し、0.1mM濃度の溶液を調製した。CCK−8NSは、0.53mgを0.50mLのジメチルスルホキサイド(DMSO、Sigma社製)で溶解後、4.50mLの再蒸留水HOを添加し、0.1mM濃度の溶液を調製した。CCK−4は、0.54mgを0.46mLのDMSOで溶解後、4.09mLの再蒸留水を添加し、0.2mM濃度の溶液を調製した。CCK−8S(配列番号14)、CCK−8NSおよびCCK−4は、それぞれリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で希釈して5nM溶液とし、各25μL添加(終濃度1nM)して測定を行った。細胞内Ca2+濃度の上昇を惹き起こすポジティブコントロールとしてA−23187(Calbiochem社製)を終濃度10μMで用いた。ネガティブコントロールとして、HA−ph01207#10−6細胞株の作製において宿主として用いたCHO−K1細胞株を用いた。CHO−K1細胞株にはph01207発現ベクターがトランスフェクションされていないため、ph01207遺伝子産物は発現していない。
【0244】
その結果、CCK−8S(配列番号14)により刺激したHA−ph01207#10−6細胞株の細胞内Ca2+濃度(図4−A)が、無刺激のHA−ph01207#10−6細胞株(図4−E)と比較して上昇した。しかし、HA−ph01207#10−6細胞株の細胞内Ca2+濃度の上昇は、CCK−8NSやCCK−4による刺激では認められなかった(図4−Bおよび図4−C)。また、A−23187によるHA−ph01207#10−6細胞株の細胞内Ca2+濃度の上昇が認められた(図4−D)。
【0245】
1nM CCK−8S(配列番号14)によるHA−ph01207#10−6細胞株の細胞内Ca2+濃度の上昇の程度(図4−A)は、ポジティブコントロールに用いたA−23187による細胞内Ca2+濃度の上昇の程度(図4−D)と、ほぼ同等であった。
【0246】
一方、CHO−K1細胞株は、CCK−8S(配列番号14)、CCK−8NSおよびCCK−4のいずれで刺激したときも、細胞内Ca2+濃度の上昇を示さなかった(図4−A、図4−Bおよび図4−C)。しかし、A−23187によるCHO−K1細胞の細胞内Ca2+濃度の上昇は認められた(図4−D)。
【0247】
これら結果から、HA−ph01207#10−6細胞株が、CCK−8S(配列番号14)に対して特異的に応答することが明らかになった。また、CCK−8S(配列番号14)によるHA−ph01207#10−6細胞株の細胞内Ca2+濃度の上昇には、該細胞株で発現されたph01207がコードする蛋白質が関与することが明らかになった。これらから、CCK−8S(配列番号14)は、ph01207遺伝子産物のリガンドであると考える。
【0248】
また、HA−ph01207#10−6細胞株は、1nMのCCK−8S(配列番号14)により、十分に高い生物学的応答を示した。1nMという低濃度のCCK−8S(配列番号14)が、HA−ph01207#10−6細胞株の生物学的応答を惹き起こしたことから、CCK−8は生体内で実際に、ph01207がコードする蛋白質を介して細胞の生物学的応答を惹き起こしていると考える。つまり、CCK−8S(配列番号14)は、GPCRと予想されたph01207の生体内リガンドの一つであると考える。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明により、GPCRと考えられる7回膜貫通ドメインを有する新規な機能的膜蛋白質受容体由来の蛋白質および該蛋白質をコードするDNAを提供できる。本蛋白質は、細胞で発現させたときに細胞膜上に発現され、リガンド刺激により細胞内情報伝達を活性化し、細胞応答を惹き起こす。
【0250】
本発明により、本蛋白質が関与する情報伝達経路および細胞機能の解明とその調節、並びに本蛋白質および/またはDNAの異常に起因する疾患(例えば脳挫傷や脳腫瘍)や腫瘍疾患の診断、防止および/または治療の実施が可能になる。
【0251】
また、本発明に係る機能性膜蛋白質受容体の生体内リガンドとして、CCK−8S(配列番号14)を見出した。CCK−8Sは記憶等の神経機能に関与する生理活性ペプチドである。したがって、本発明に係る機能性膜蛋白質受容体のアゴニストにより、記憶等の神経機能の障害を伴う疾患、例えばアルツハイマー病等の防止および/または治療の実施が可能になる。
【0252】
このように、本発明は基礎科学分野から医薬開発分野まで広く寄与する有用なものである。
【配列表フリーテキスト】
【0253】
配列番号1:新規機能的膜蛋白質受容体をコードするDNA。
配列番号2:配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされる蛋白質。
配列番号2:(297):(350)TSP−Iドメイン。
配列番号2:(352):(405)TSP−Iドメイン。
配列番号2:(408):(461)TSP−Iドメイン。
配列番号2:(870):(890)膜貫通ドメイン。
配列番号2:(899):(919)膜貫通ドメイン。
配列番号2:(928):(948)膜貫通ドメイン。
配列番号2:(970):(990)膜貫通ドメイン。
配列番号2:(1012):(1032)膜貫通ドメイン。
配列番号2:(1087):(1107)膜貫通ドメイン。
配列番号2:(1114):(1134)膜貫通ドメイン。
配列番号3:配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、hBAI1、およびhBAI2のそれぞれのC末端側領域に存在する部分アミノ酸配列。
配列番号4:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号5:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号6:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号7:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号8:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号9:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号10:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号11:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号12:合成オリゴヌクレオチド。
配列番号13:合成オリゴヌクレオチド。
配列番号14:CCK−8S
配列番号14:(2):(2)硫酸化。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の群より選ばれるDNA;
(i)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖、
(ii)前記(i)のDNAを含有するDNAまたはその相補鎖、
(iii)前記(i)または(ii)のDNAの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有し、かつG蛋白質共役型受容体(G−protein coupled receptor)と同質の機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖、
(iv)前記(i)ないし(iii)のDNAの塩基配列において、1ないし数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加などの変異を有し、かつG蛋白質共役型受容体と同質の機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖
および
(v)前記(i)ないし(iv)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつG蛋白質共役型受容体と同質の機能を有する蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖。
【請求項2】
請求項1に記載のDNAの部分塩基配列からなるDNA。
【請求項3】
G蛋白質共役型受容体と同質の機能がリガンドとの結合によりG蛋白質を活性化する機能である請求項1または2のいずれか1項に記載のDNA。
【請求項4】
リガンドが下記の群より選ばれるペプチドである請求項3に記載のDNA;
(i)コレシストキニンオクタペプチド硫酸化型(cholecystokinin octapeptide sulfated form;配列番号14、以下、CCK−8Sと略称する)、
(ii)CCK−8Sのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド、
および
(iii)前記(i)または(ii)に記載のペプチドを含み、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNAを含有する組換えベクター。
【請求項6】
組換えベクターが発現組換えベクターである請求項5に記載の組換えベクター。
【請求項7】
請求項5または6に記載の組換えベクターを導入されてなる形質転換体。
【請求項8】
請求項5または6に記載の組換えベクターを導入されてなる動物細胞由来の形質転換体。
【請求項9】
細胞株 FERM BP−10101号。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNAがコードする蛋白質。
【請求項11】
下記の群より選ばれる蛋白質;
(i)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(ii)前記(i)の蛋白質を含有する蛋白質、
(iii)前記(i)または(ii)の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を有し、かつG蛋白質共役型受容体(G−protein coupled receptor)と同質の機能を有する蛋白質、
および
(iv)前記(i)ないし(iii)の蛋白質のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつG蛋白質共役型受容体と同質の機能を有する蛋白質。
【請求項12】
配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分配列からなる蛋白質。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載の蛋白質であって、G蛋白質共役型受容体と同質の機能を有する蛋白質。
【請求項14】
血管新生阻害機能を有する請求項13に記載の蛋白質。
【請求項15】
グアニル酸キナーゼ活性を有する蛋白質および/または細胞間接着機能を有する蛋白質と相互作用する機能を有する請求項13に記載の蛋白質。
【請求項16】
下記の群から選ばれる蛋白質であって、G蛋白質共役型受容体(G−protein coupled receptor)と同質の機能と、細胞間接着機能を有する蛋白質および/またはグアニル酸キナーゼ活性を有する蛋白質と相互作用する機能と、さらに血管新生阻害機能とを有する蛋白質:
(i)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(ii)前記(i)の蛋白質を含有する蛋白質、
(iii)前記(i)または(ii)の蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性を有する蛋白質、
および
(iv)前記(i)ないし(iii)の蛋白質のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有する蛋白質。
【請求項17】
G蛋白質共役型受容体と同質の機能がリガンドとの結合によりG蛋白質を活性化する機能である請求項11および請求項13から16のいずれか1項に記載の蛋白質。
【請求項18】
請求項11および請求項13から16のいずれか1項に記載の蛋白質であって、細胞において該蛋白質にリガンドを結合させたときに細胞膜電位の変化を発生させる機能を有する蛋白質。
【請求項19】
請求項11および請求項13から16のいずれか1項に記載の蛋白質であって、細胞において該蛋白質にリガンドを結合させたときに細胞内カルシウム濃度を増加させる機能を有する蛋白質。
【請求項20】
リガンドが下記の群より選ばれるペプチドである請求項17から19のいずれか1項に記載の蛋白質;
(i)コレシストキニンオクタペプチド硫酸化型(cholecystokinin octapeptide sulfated form;配列番号14、以下、CCK−8Sと略称する)、
(ii)CCK−8Sのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド、
および
(iii)前記(i)または(ii)に記載のペプチドを含み、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド。
【請求項21】
請求項7または8に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項22】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質を免疫学的に認識する抗体。
【請求項23】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質のアゴニストまたはリガンドの同定方法であって、被検化合物または被検物質と該蛋白質とを接触させることを特徴とする同定方法。
【請求項24】
請求項23に記載の同定方法であって、被検化合物または被検物質と該蛋白質とを接触させることが、被検化合物または被検物質と請求項7若しくは8に記載の形質転換体または請求項9に記載の細胞株の細胞膜上に発現した蛋白質とを接触させることである同定方法。
【請求項25】
請求項24に記載の同定方法であって、被検化合物または被検物質と請求項7若しくは8に記載の形質転換体または請求項9に記載の細胞株との相互作用を可能にする条件下で該形質転換体または該細胞株と被検化合物または被検物質とを接触させ、次いで、該形質転換体または該細胞株の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系を導入し、被検化合物または被検物質と該蛋白質を接触させなかったときと比較して、該機能を変化させた被検化合物または被検物質を選択することを特徴とする同定方法。
【請求項26】
請求項24に記載の同定方法であって、形質転換体または細胞株の細胞内カルシウム濃度を測定し、被検化合物または被検物質と該蛋白質を接触させなかったときと比較して細胞内カルシウム濃度を増加させた被検化合物または被検物質を選択することを特徴とする同定方法。
【請求項27】
請求項24に記載の同定方法であって、形質転換体または細胞株の細胞膜電位を測定し、被検化合物または被検物質と該蛋白質を接触させなかったときと比較して細胞膜電位を変化させた被検化合物または被検物質と該蛋白質を選択することを特徴とする同定方法。
【請求項28】
請求項27に記載の同定方法であって、細胞膜電位を変化させた被検化合物または被検物質を選択することが、G蛋白質共役型受容体特有の電流変化を発生させた被検物質を選択することである同定方法。
【請求項29】
請求項23から28のいずれか1項に記載の同定方法により同定されたアゴニストまたはリガンド。
【請求項30】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質のリガンドとの結合、該蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する、または促進する化合物の同定方法であって、請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする同定方法。
【請求項31】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質の機能を阻害する、または促進する化合物の同定方法であって、請求項7若しくは8に記載の形質転換体または請求項9に記載の細胞株との相互作用を可能にする条件下で該形質転換体と被検化合物とを共存させ、次いで、該形質転換体の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系を導入し、該蛋白質の機能の存在または非存在、または変化を検出することにより、被検化合物が該蛋白質の機能を阻害する、または促進するか否かを決定することを含む同定方法。
【請求項32】
請求項31に記載の同定方法であって、該形質転換体の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系がリガンドの添加による細胞内カルシウム濃度変化の測定系であり、蛋白質の機能の存在または非存在、または変化を検出することが、細胞内カルシウム濃度変化を検出することである同定方法。
【請求項33】
請求項31に記載の同定方法であって、該形質転換体の細胞膜上に発現された蛋白質の機能を測定する系がリガンドの添加による膜電位変化の測定系であり、蛋白質の機能の存在または非存在、または変化を検出することが、膜電位の変化を検出することである同定方法。
【請求項34】
リガンドが下記の群より選ばれるペプチドである請求項30から33のいずれか1項に記載の同定方法;
(i)コレシストキニンオクタペプチド硫酸化型(cholecystokinin octapeptide sulfated form;配列番号14、以下、CCK−8Sと略称する)、
(ii)CCK−8Sのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などの変異を有し、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド、
および
(iii)前記(i)または(ii)に記載のペプチドを含み、かつCCK−8Sと同質の機能を有するペプチド。
【請求項35】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含んでなる医薬組成物。
【請求項36】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質のアゴニストを有効成分としてその有効量含んでなる、コレシストキニンオクタペプチド硫酸化型(cholecystokinin octapeptide sulfated form;配列番号14)の減少および/またはその機能の低減に起因する疾患の防止剤および/または治療剤。
【請求項37】
疾患が痴呆(アルツハイマー病を含む)、不安症、肥満症および糖尿病からなる群から選ばれる疾患である請求項36に記載の疾患の防止剤および/または治療剤。
【請求項38】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含んでなる血管新生に関連する疾患の防止剤および/または治療剤。
【請求項39】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する化合物を有効成分としてその有効量含んでなる脳梗塞および/または脳挫傷の防止剤および/または治療剤。
【請求項40】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含んでなる腫瘍疾患の防止剤および/または治療剤。
【請求項41】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質のアゴニストを用いることを特徴とする、コレシストキニンオクタペプチド硫酸化型(cholecystokinin octapeptide sulfated form;配列番号14)の減少および/またはその機能の低減に起因する疾患の防止方法および/または治療方法。
【請求項42】
疾患が痴呆(アルツハイマー病を含む)、不安症、肥満症および糖尿病からなる群から選ばれる疾患である請求項41に記載の疾患の防止方法および/または治療方法。
【請求項43】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする血管新生に関連する疾患の防止方法および/または治療方法。
【請求項44】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質の機能および/または該蛋白質をコードするDNAの発現を阻害する化合物を用いることを特徴とする脳梗塞および/または脳挫傷の防止方法および/または治療方法。
【請求項45】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする腫瘍疾患の防止方法および/または治療方法。
【請求項46】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質または該蛋白質をコードするDNAを定量的または定性的に測定する方法。
【請求項47】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする、請求項46に記載の測定方法。
【請求項48】
請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質および/または該蛋白質をコードするDNAをマーカーとして定量的または定性的に分析することを含んでなる、該蛋白質および/または該蛋白質をコードするDNAの異常に起因する疾患の診断に使用するための測定方法。
【請求項49】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする、該蛋白質および/または該蛋白質をコードするDNAの異常に起因する疾患の診断方法。
【請求項50】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを用いることを特徴とする血管新生に関連する疾患の診断方法。
【請求項51】
血管新生に関連する疾患が、脳梗塞および/または脳挫傷である請求項50に記載の診断方法。
【請求項52】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを含有してなる試薬キット。
【請求項53】
請求項23から28および30から34のいずれか1項に記載の同定方法または請求項46から48のいずれか1項に記載の測定方法に用いる試薬キットであって、請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを含有してなる試薬キット。
【請求項54】
請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA、請求項5または6に記載の組換えベクター、請求項7または8に記載の形質転換体、請求項9に記載の細胞株、請求項10から20のいずれか1項に記載の蛋白質、請求項22に記載の抗体のうち、少なくともいずれか1つを含有することを特徴とする血管新生に関連する疾患用診断キット。
【請求項55】
血管新生に関連する疾患が、脳梗塞および/または脳挫傷である請求項54に記載の診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【図4−D】
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【図4−E】
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【国際公開番号】WO2005/049833
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515653(P2005−515653)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017239
【国際出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【出願人】(596175810)財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所 (40)
【Fターム(参考)】