説明

GABA、タウリン高含有発芽種子及びその製造方法、並びに食品の製造方法

【課題】GABA及び/又はタウリンを高含有する発芽種子、及びその製造方法を提供すること、さらには上記発芽種子を用いる食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】γ−アミノ酪酸(GABA)含有量が、50mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子。タウリン含有量が、50mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子。種子を発芽処理に供して発芽種子を得る工程、得られた発芽種子をGABA及び/又はタウリンを含有する水溶液に、GABA及びタウリンのいずれか一方または両方の濃度が50mg/100gDW以上となる時間浸漬する工程、及び得られた発芽種子を水分含量が15%以下になるまで乾燥する工程
を含む、上記発芽種子の製造方法。上記発芽種子を用いる食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABA(γ-アミノ酪酸)及び/又はタウリンを高濃度に含有する発芽種子及びその製造方法、更に本種子を用いる食品の製造方法に関するものである。更に、詳しくは、発芽種子とGABA及び/又はタウリン含有溶液とを特定の条件で接触処理することによって、これらの物質を高濃度に含有する発芽種子を効率的に製造する方法と得られた発芽種子を適当量用いる食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のアミノ酸類、ペプチド類には各種栄養的、生理機能があることが知られている。特に、最近では、アミノ酸類のGABA、タウリン、システイン、L-カルニチン、ビタミンU等の生理機能が注目されている。このように特定のアミノ酸類には種々の機能性があることが判ってきているが、これらの物質を高濃度含有する食用の発芽種子は自然界には存在しない。そのため、これらの物質を一定量摂取するためには、「いわゆるサプリメントや薬品として摂取する」以外の方法は存在しないのが現状である。しかし、日本の食文化は、米国などサプリメント先進国のそれと異なり、機能性物質を「普段の食事によって摂取する」ことに価値を置いている。そのため、いわゆるサプリメントや薬品ではなく、発芽種子などの自然な穀物、豆類等から機能性物質を摂取することには大きな意義がある。
【0003】
このような背景から、本発明者らは、GABA、ビタミンU、タウリン、カルノシン、Tyr-Proおよび/またはL-カルニチンを高濃度に含有する食用植物体及びその製造方法を開発した(特許文献1)。ここでの食用植物体は主にスプラウトである。スプラウトとは、発芽させた種子及びそこから生育する幼植物体であり、主に、野菜として食用に供される。
【0004】
また、スプラウトとは別に、発芽処理を施した種子において、GABAを増強した発芽玄米等の穀物の種子が提案されている(特許文献2〜5)。特許文献2は、「食品素材または食品及びそれらの製造方法」に関するものであり、特許文献3は、「新しい発芽玄米の製造法及びこれより製造した発芽玄米」に関するものであり、特許文献4は、「玄米の加工方法」に関するものであり、特許文献5は、「γ−アミノ酪酸富化発芽玄米の製造方法および該発芽玄米を含有する食品」に関するものである。
【0005】
発芽玄米等の穀物の発芽種子は、種々の食品の原料として広く使用されており、特定のアミノ酸類を含有する発芽種子が簡易に製造できれば、その社会的ニーズは大きいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−89572号公報
【特許文献2】特開2003−159017号公報
【特許文献3】特開2006−81472号公報
【特許文献4】特開2005−117982号公報
【特許文献5】特開2004−159617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献2〜5に記載されたいずれの場合も、GABAの富化は、穀物等の種子を発芽さることによって、内在酵素によって胚芽中のグルタミン酸をGABAに変換することで行われるものである。そのため、GABA含量は多くても約20mg/100g乾燥穀物であり、GABA含量が低い、という問題があった。
【0008】
また、特許文献1には、GABA等の含量を高めたスプラウトについては記載があるが、GABA等の含量を高めた発芽種子についての記載はない。また、特許文献1に記載の方法は、根からの吸収と蒸散とを必要とするものであり、発芽種子においてGABA等の含量を高めることは困難であると推察される。
【0009】
前述のように、特定のアミノ酸類を含有する発芽種子が簡易に製造できれば、その社会的ニーズは大きいと考えられる。しかしながら、上記のように特定のアミノ酸類を高濃度含有する発芽種子の生産方法は知られておらず、その製造に関する研究もほとんど行われていないのが現状である。
【0010】
そこで本発明の目的は、GABA及び/又はタウリンを高含有する発芽種子、及びその製造方法を提供すること、さらには上記発芽種子を用いる食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、種々の検討を行った。その結果、原料となる種子を所定の状態まで発芽させた発芽種子を、GABA及びタウリンの少なくとも1種の物質を含有する水溶液に所定時間浸漬することで、高濃度のGABA及び/又はタウリンを高含有する発芽種子が得られることを見出した。ところが、前記浸漬後の発芽種子は、一般に食品原料として用いられるため、食品原料として用いられるまでに時間が空くことがままある。しかし、上記処理を施して高濃度のGABA及び/又はタウリンを高含有するようになった発芽種子は、通常の発芽種子に比べて保存性が悪いことが、新たに判明した。発芽種子は、スプラウト等と異なり、栄養分である胚乳を有するものであるために本来、カビの繁殖や腐敗しやすいものであるが、上記処理においてGABA及びタウリンの少なくとも1種の物質を含有する水溶液への浸漬により水分含量がより高くなったためであることが、本発明者らの検討の結果判明した。
【0012】
そこでさらにこの新たに生じた課題を解決すべく検討した結果、上記処理を施して高濃度のGABA及び/又はタウリンを高含有するようになった発芽種子を適度に乾燥することで、カビの繁殖や腐敗を抑制して、長期間の保存が可能な、高濃度のGABA及び/又はタウリンを高含有する発芽種子が得られることを見出して本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、以下のとおりである。
[1]
γ−アミノ酪酸(GABA)含有量が、50mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子。
[2]
GABA含有量が、70mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が10%以下である[1]に記載の発芽種子。
[3]
タウリン含有量が、50mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子。
[4]
タウリン含有量が、70mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が10%以下である[3]に記載の発芽種子。
[5]
種子が穀物または豆類種子である[1]〜[4]のいずれかに記載の発芽種子。
[6]
種子を発芽処理に供して発芽種子を得る工程、
得られた発芽種子をGABA及び/又はタウリンを含有する水溶液に、GABA及びタウリンのいずれか一方または両方の濃度が50mg/100gDW以上となる時間浸漬する工程、及び
得られた発芽種子を水分含量が15%以下になるまで乾燥する工程
を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の発芽種子の製造方法。
[7]
前記発芽種子の乾燥が、35〜50℃で行われる、[6]に記載の製造方法。
[8]
前記発芽種子の水溶液への浸漬時間は、6〜24時間とする[6]または[7]に記載の製造方法。
[9]
前記発芽種子の前記水溶液への浸漬は10〜35℃の温度で実施される、[6]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
[1]〜[5]のいずれかに記載の発芽種子を用いる食品の製造方法。
[11]
製造される食品がパン類、麺類、菓子類、茶類である[10]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来になく高濃度のGABA及び/又はタウリンを含有し、かつ保存性に優れた発芽種子を提供することができる。その結構、高濃度のGABA及び/又はタウリンを含有する、発芽種子を原料として用いる食品を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において発芽種子とは、根、胚軸、子葉及び胚乳を有するものを意味するものとする。一方、スプラウトは、一般に、種子が発芽して胚乳を有さない状態まで生育したものを言う。発芽種子となるまでに必要な期間等は、原料となる種子の種類や、発芽の条件(温度、水分、日光等)により異なる。
【0016】
本発明おける発芽種子は、例えば、種子を適当な時間水に浸漬後、適当な温度(10〜35℃)で0.5日〜3日間発芽処理を行うことで得られる。但し、温度や期間等の発芽の条件は、胚乳を有する状態を確認して適宜設定する。
【0017】
本発明で発芽種子とすることができる種子としては、例えば、穀物及び豆類種子等の食用種子を挙げることができる。食用穀類の種子の具体的種類の例としては米、小麦、大麦、エン麦、ひえ、あわ、さとうきび、トウモロコシ、アマランサス、普通ソバ、ダタンソバ等を上げることができる。また、食用豆類の種子の例としては大豆、小豆、大納言、金時、手亡、うずら、ささげ、いんげんまめ、べにばないんげん、えんどう、ブラックビーン、くず、インドかりん、そらまめ、タマリンド、アルファルファ、グローバ等を挙げることができる。
【0018】
本発明の発芽種子は、γ−アミノ酪酸(GABA)含有量が、50mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子である。γ−アミノ酪酸(GABA)含有量は、好ましくは70mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、さらに好ましくは100mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、より好ましくは150mg/100gドライウェィト(DW)以上である。γ−アミノ酪酸(GABA)含有量は高いほどγ−アミノ酪酸(GABA)供給源としては好ましいが、製造上の制約等を考慮すると、γ−アミノ酪酸(GABA)含有量の上限は、1000mg/100gドライウェィト(DW)程度である。γ−アミノ酪酸(GABA)を含有させることができる量は種子の種類によっても異なるが、50〜300mg/100gドライウェィト(DW)の発芽種子であれば、本発明では比較的容易に製造することができる。水分含量は、15%を超えると保存性が急激に悪化するので、15%以下とし、好ましくは10%以下である。水分含量の下限は特にないが、水分含量を低下させるために過度に乾燥することは製造上コストを押し上げことから、水分含量の下限は、例えば、5%程度である。但し、発芽種子の用途に応じて、さらに水分含量を低下させたものとすることもできる。
【0019】
さらに、本発明の発芽種子は、タウリン含有量が、50mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子である。タウリン含有量が、好ましくは70mg/100gDW以上であり、さらに好ましくは100mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、より好ましくは150mg/100gドライウェィト(DW)以上である。タウリン含有量は、タウリン供給源としては高いほど好ましいが、製造上の制約等を考慮すると、タウリン含有量の上限は、1000mg/100gドライウェィト(DW)程度である。タウリンを含有させることができる量は種子の種類によっても異なるが、50〜500mg/100gドライウェィト(DW)の発芽種子は、本発明では比較的容易に製造することができる。水分含量は、15%を超えると保存性が急激に悪化するので、15%以下とし、好ましくは10%以下である。水分含量の下限は特にないが、水分含量を低下させるために過度に乾燥することは製造上コストを押し上げことから、水分含量の下限は、例えば、5%程度である。但し、発芽種子の用途に応じて、さらに水分含量を低下させたものとすることもできる。
【0020】
[発芽種子の製造方法]
上記本発明の発芽種子は、以下の(1)〜(3)の工程を有する方法により製造することができる。
(1)種子を発芽処理に供して発芽種子を得る工程、
(2)得られた発芽種子をGABA及び/又はタウリンを含有する水溶液に、GABA及びタウリンのいずれか一方または両方の濃度が50mg/100gDW以上となる時間浸漬する工程、及び
(3)得られた発芽種子を水分含量が15%以下になるまで乾燥する工程
【0021】
(1)発芽種子を得る工程
前述のように発芽種子は、例えば、種子を適当な時間水に浸漬後、適当な温度(10〜35℃)で0.5日〜3日間発芽処理を行うことで得られる。但し、温度や期間等の発芽の条件は、胚乳を有する状態を確認して適宜設定する。尚、2〜3日程度十分に発芽させた発芽種子を用いることが、(2)の工程で、GABA及びタウリンの物質の吸収速度を高めることができるという観点からは好ましい。
【0022】
(2)GABA及び/又はタウリン含有水溶液への浸漬工程
本工程では、前記物質を含有する水溶液を発芽種子に一定時間接触させ、前記物質を発芽種子に蓄積含有させて、前記物質を高濃度に含有する発芽種子を製造する。本工程においては、発芽種子に前記水溶液を常時又は断続的に噴霧する方法又は発芽種子を水溶液に浸漬する方法が採用される。但し、吸収時間が短縮でき、処理ロット間の再現性が高く、かつ操作も簡単であるという観点から、発芽種子を水溶液に浸漬する方法が好ましい。発芽種子を水溶液に浸漬して、蒸散が生じない条件においても、良好な吸収を示すことは予想外であった。
【0023】
従来も、例えば、漬け物等の植物体について、特定のアミノ酸を含浸させる方法は知られている。しかし、通常は、このような場合、高濃度の食塩を添加し浸透圧差を用いてアミノ酸を植物体に含浸させる。そのため、植物体は細胞が破壊されて死滅し、単純な植物体内外の浸透圧差によって、アミノ酸が植物内に浸透する。それに対して、本工程では、発芽種子は生きた植物種子の生理作用により噴霧又は浸漬溶液中のGABA及び/又はタウリンの含有溶液からこれらの機能性物質を吸収する。また、漬け物等の植物体では、特定のアミノ酸を添加、含浸させる場合、含浸過程では、植物体の鮮度を維持するという観点から比較的低温(例えば、5℃前後)に維持される。
【0024】
それに対して、本工程では、発芽種子及び水溶液はより高温の10〜35℃、好ましくは15〜25℃に維持されることが適当である。本発明者らの実験によれば、本工程においては、10℃未満の温度では、上記物質の発芽種子への移行が極めて遅く、上記物質を50mg/100gDW以上含有する発芽種子を製造するには非常に長時間を要する。また、35℃を超えると、十分な吸収量が得られないだけでなく、発芽種子に褐変、萎れ、カビの発生などが生じることがある。また、水溶液噴霧又は水溶液への浸漬後の条件としては、特に限定は無く暗黒下でも光照射下でもどちらでも良いが、コストのことを考えると前者の方がより好ましい。
【0025】
発芽種子への上記水溶液の噴霧又は上記水溶液への発芽種子の浸漬では、上記溶液への接触時間は6時間以上24時間以下とすることが適当である。より好ましくは10〜16時間である。この場合、接触時間が6時間に満たない場合は、十分な吸収が行われない場合があり、また、24時間を超えると、処理効率が悪いばかりか、吸収量が同じで噴霧処理中に発芽種子等が劣化する場合がある。接触時間は、設定温度及び発芽種子中の前記物質の所望含有量を考慮して、適宜設定される。
【0026】
GABA及び/又はタウリン含有水溶液中の各物質の濃度は、0.1〜10%濃度(重量濃度)であり、0.5%以上、好ましくは1%以上とすることが、所望含有量の前記発芽種子を比較的短時間で得るという観点から適当である。水溶液中の各物質の濃度の上限は、好ましくは5%である。このような条件にすることで、GABA及び/又はタウリンを高濃度含有する発芽種子が得られる。
【0027】
発芽種子にGABA及び/又はタウリンを吸収させる時期は特に限定はないが、好ましくは、発芽処理後長時間種子を保存した場合、種子が劣化する傾向があるため、発芽処理後直後に行うのが好適である。また、発芽処理中に水溶液の噴霧処理を行っても良いし、製造した発芽種子を低温で保存し、発芽の進行を停止し、適当な時期に取り出し、上記水溶液の噴霧処理又は水溶液への浸漬処理をして機能性物質の吸収を行わせても良い。
【0028】
発芽種子への詳細な吸収方法の一例を以下に説明する。まず、濃度0.1〜10%のGABA及び/又はタウリン溶液を調製する。具体的には、GABA及び/又はタウリンを通常の水に上記の濃度となるように溶し込めばよい。なお、吸収効率を向上させる目的等で溶液にはGABA及び/又はタウリンにミネラル活性液のような液肥やキトサン等の殺菌剤、アスコルビン酸等の酸化防止剤、組織の褐変を促進する酵素の阻害剤などを加えてもよい。例えば、溶液にキトサン、カテキン、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、エチルアルコール、ヒノキチオール、ミネラル、カルシウム塩などを加えれば、より安定的に吸収効率を高めてGABA及び/又はタウリンを吸収させることが可能である。吸収処理がこれらの水溶液の発芽種子への噴霧処理の場合には、発芽種子が乾燥しないように、1時間程度の間隔で十分量の水溶液を断続的に噴霧すれば良い。
【0029】
上記GABA及びタウリン以外にも、機能性が期待できるアミノ酸類、ペプチド類として、アミノ酸類が必須アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド類がジペプチド、トリペプチドも同時に吸収させることもできる。これらの具体的な例として、必須アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリンを、アミノ酸誘導体(アミノ酸類似体)として、ビタミンU、L−カルニチン等を、ジペプチドとトリペプチドとしては、アラニルリジン、バリニルチロシン、チロシニルプロリン、アンセリン、カルノシン、GSH等を挙げることができる。また、上記に示したアミノ酸類、ペプチド類の中で、本発明に特に適しているのは水溶性の高いアミノ酸類、ペプチド類である。
【0030】
(3)乾燥工程
得られた発芽種子を水分含量が15%以下になるまで乾燥する。乾燥は、例えば、発芽種子の品質を維持しつつ行うという観点から、35〜50℃で行うことが好ましい。発芽種子の乾燥は、水分含量が15%以下、好ましくは10%以下になるまで行う。
【0031】
本発明によれば、GABA含有量が、50mg/100gDW以上、好ましくは70mg/100gDW以上である発芽種子が得られる。GABA含有量の上限については、発芽種子の種類により、実質的に含有させることができる上限量は変化するが、通常、1000mg/100gDW程度である。例えば、通常の吸収条件であれば、ダッタンソバ発芽種子の場合は、200mg/100gDW程度であれば、安定的にGABAを含有させることができる。
【0032】
本発明によれば、タウリン含有量が、50mg/100gDW以上、好ましくは70mg/100gDW以上である食用発芽種子が得られる。タウリン含有量の上限については、食用発芽種子の種類により、実質的に含有させることができる上限量は変化するが、通常、1000mg/100gDW程度である。例えば、ダッタンソバの場合、100mg/100gDW程度であれば、タウリンを含有させることができる。
【0033】
本発明の発芽種子を一定量食することにより、通常では発芽種子からの自然な形での摂取が不可能なGABA及び/又はタウリンを簡易に摂取することが可能になる。一般に、発芽種子の各種の機能性のアミノ酸類の含量は、例えば、同種類の植物であっても、その栽培方法、栽培条件、個体差などにより種々異なり、GABA及び/又は、タウリンについてはほとんどそれを含有していないこともある。本発明によれば、それらの差異にかかわらず、発芽種子をGABA及び/又はタウリン溶液で処理し、発芽種子内のその蓄積含量を天然のものに対して飛躍的に上昇させることが可能である。
【0034】
本発明は、上記本発明の発芽種子または本発明の製造方法で製造された発芽種子を用いる食品の製造方法に関する。製造される食品には特に制限はないが、例えば、パン類、菓子類、麺類、及び茶類等であることができる。食品の製造方法については、原料の少なくとも一部として、本発明の発芽種子または本発明の製造方法で製造された発芽種子を用いる以外は、常法により実施できる。
【0035】
発明でいうパン類とは、イーストの発酵を伴って製造されるパン類すべてが包含され、小麦粉にその他の穀物粉、油脂、糖類、粉乳、膨張剤、食塩、調味料、香料、乳化剤、イースト、イーストフード、酸化剤、還元剤、各種酵素類等の原料の全部または一部と水、その他の物を加えて混合発酵後、蒸す、焼く、揚げる、煮る等の加熱調理をすることによってできる食品のことである。例えば、フランスパン、食パンのようなリーンな生地のパン、テーブルロール、バターロール等のロール類、マフィン、ラスク等の特殊パン、クロワッサン、デニッシュ、あんパン、ジャムパン、クリームパン等の菓子パン、肉まん、あんまん等の蒸しパン、発酵ドーナツ等の油揚げパン、更にはピザクラスト等を挙げることができる。
【0036】
本発明でいう菓子類としては、各種穀物粉、澱粉、乳製品、芋、豆、糖類、卵等を用いて作られる菓子類全てが含まれ、例えば、ホットケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ドーナツ、パイ、ビスケット、クッキー、クラッカー、アイスクリーム、スイートポテト、ういろう、ようかん、柏餅、饅頭等を挙げることができる。
【0037】
本発明でいう麺類としては、穀物粉を主原料として麺状加工された食品全てが包含され、例えば、ソバ、中華麺、うどん、そうめん、きしめん、冷麺、スパゲッティー等を挙げることができる。
【0038】
本発明でいう茶類としては、本発明で得られる発芽種子の一部又は全量を茶の原料として、お湯又は煮出しによる抽出によって得られる飲料全てを包含し、例えば、麦茶、玄米茶、ソバ茶、小豆茶等を挙げることができる。
【実施例】
【0039】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の好適な例を示すものであり、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
【0040】
実施例1
ダッタンソバ「北海T8号」種子を用い、発芽処理前に種子を5℃の水道水に浸漬し、十分に種子に水を吸収させた。その後、ウレタンマット上に適量の種子を播き、15℃で2時間毎に20分の潅水を行い、3日間発芽処理を行って発芽ダッタンソバを調製した。
普通ソバ「キタワセソバ」種子を用い、発芽処理前に種子を10℃の水道水に浸漬し、十分に種子に水を吸収させた。その後、ウレタンマット上に適量の種子を播き、20℃で2時間毎に20分の潅水を行い、2日間発芽処理を行って発芽普通ソバを調製した。
米「おぼろずき」の玄米を用い、発芽美人を用い十分に水に浸漬した状態で25℃、2日間発芽処理を行い、発芽玄米を調製した。
小麦「キタノカオリ」種子を用い、発芽処理前に種子を10℃の水道水に浸漬し、10℃で十分に種子に水を吸収させた。その後、水に浸漬した状態で20℃、3日間発芽処理を行い発芽小麦を調製した。
六条大麦「さやかぜ」種子を用い、発芽処理前に種子を10℃の水道水に浸漬し、十分に種子に水を吸収させた。その後、その種子をウレタンマット上に適量播き、水を噴霧器を用いて十分量適当な間隔で噴霧し、30℃で、2日間発芽処理を行って発芽二条大麦を調製した。
ライ麦「春香」種子を用い、六条大麦と同様に発芽処理を行い発芽ライ小麦を調製した。
アマランサス「ニューアラスカ」種子を用い、六条大麦と同様に発芽処理を行い発芽アマランサスを調製した。
大豆「スズマル」種子を用い、普通ソバと同様に発芽処理を行い発芽大豆を調製した。
小豆「しゅまり」種子を用い、普通ソバと同様に発芽処理を行い発芽小豆を調製した。
【0041】
上記発芽種子を用い吸収処理は、以下の方法で行った。1%GABA、タウリン溶液を調製し、上記の方法で得られた各種発芽種子を上記溶液に25℃で12時間、浸漬させそれぞれGABA、タウリンを吸収させた(試験例1、2)。比較例(比較例1、2)の発芽種子は溶液の代わりに水を用い同条件で処理した。発芽種子のGABA、タウリンの定量は、吸収処理直後の発芽種子を用い高速液体クロマトグラフィーを用い山内らの方法(Food Sci. Technol. Res., 10, 247-253, 2004)によって行った。含量はDW重量当たりの含量で示した。その結果を表1(GABA)、表2(タウリン)に示す。これより、比較例の各種発芽種子に比べ、実施例の発芽種子では、いずれの種子でも十分な量のGABA、タウリン共に150mg/100DWを含有しており、本発明により、簡易、効率的にGABA、タウリン高含有発芽種子を生産できることが判る。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
実施例2
実施例1と同様に作製した発芽ダッタンソバ種子、発芽小麦種子について、GABA、タウリンをそれぞれ1%(W/W)含有する溶液を十分量1時間毎に5回噴霧器を用いて、噴霧し発芽種子にGABA、タウリンを同時に吸収させGABA、タウリン高含有発芽種子を製造した。比較例の発芽種子は溶液の代わりに水を用い同条件で処理した。発芽種子のGABA、タウリンの定量は、吸収直後の発芽種子を用い実施例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。含量はDW重量当たりの含量で示した。その結果を表3に示す。これより、比較例の発芽種子に比べ、実施例の発芽種子では、いずれの種子でも十分な量のGABA(各150mg/100gDW以上)、タウリン(各150mg/100gDW以上)を含有しており、本発明により、簡易、効率的に発芽種子に同時に2種の機能性の物質を吸収させることが可能であり、その結果として、GABA、タウリンを高濃度で含有する発芽種子を生産できることが判る。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例3
GABA、タウリンを蓄積させた発芽種子の保存時におけるGABA、タウリン蓄積含量の安定性を調べるため、実施例2と同様の方法で調製したGABA、タウリンを蓄積させた発芽ダッタンソバス種子と発芽小麦種子を製造後40℃で十分に乾燥させ乾燥種子を製造し、ポリエチレン袋に入れ20℃、湿度70%、暗黒条件でのGABA、タウリン含量の安定性評価(貯蔵試験)を行った。発芽種子のGABA、タウリンの定量は、貯蔵経時で実施例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。含量はDW重量当たりの含量で示した。その結果を表4に示す。これより、どの乾燥発芽種子も保存中にGABA、タウリンの濃度の低下がほとんどなく、長期に安定的にそれぞれGABA、ビタミンU、タウリンを含有していることが判った。これより、本発明の方法によって作製されたGABA、タウリン高含有の発芽種子中のGABA、タウリンは保存中に分解等受けずに非常に安定的に保持されることが判る。
【0047】
【表4】

【0048】
尚、上記保存時の水分の測定結果は以下のとおりである。
0日8.5%
5日8.3%
10日8.9%
20日8.3%
30日8.4%
【0049】
実施例4
GABA、タウリンを吸収させる場合のGABA、タウリンの濃度の影響を見るため、GABA、タウリンの濃度を変えた溶液を用いて、実施例1と同条件でGABA、タウリン高含有の発芽ダッタンソバ種子を作製し、吸収効率等に対する濃度の影響を評価した。発芽種子のGABA、タウリンの定量は、吸収処理直後の発芽種子を用い実施例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。含量はDW重量当たりの含量で示した。その結果を表5に示す。これより、GABA、タウリンいずれの溶液の場合にも0.5%以上の溶液を用いると効率よく発芽種子に吸収されることが判る。
【0050】
【表5】

【0051】
実施例5
GABA、タウリンをそれぞれ吸収させる場合の浸漬処理時間の影響を見るため、GABA、タウリンの浸漬時間を変えて、実施例1と同条件でGABA、タウリン高含有発芽タンソバス種子を製造し、吸収効率等に対する浸漬時間の影響を評価した。処理発芽種子のGABA、タウリンの定量は、生産直後のスプラウトを用い実施例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。含量はDW重量当たりの含量で示した。その結果を表6に示す。これより、GABA、タウリンいずれの溶液の場合にも12時間以上の浸漬処理を行うと効率よく吸収されることが明らかになった。但し、GABA、タウリンの場合は、浸漬時間を24時間に延ばしても12時間の場合と大差無いことが判る。
【0052】
【表6】

【0053】
実施例6
GABA、タウリンを吸収させる場合の温度の影響を見るため、GABA、タウリンの吸収処理時の温度条件を変えて、実施例1と同条件で種々の温度でGABA、タウリン高含有発芽ダッタンソバ、発芽二条大麦を作製し、吸収効率等に対する温度の影響を評価した。発芽種子のGABA、タウリンの定量は、処理直後の発芽種子を用い実施例1と同条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。含量はDW重量当たりの含量で示した。その結果を表7に示す。これより、GABA、タウリンいずれの溶液の場合にも15℃以上で浸漬処理を行うと効率よく吸収されることが明らかになった。
【0054】
【表7】

【0055】
実施例7
ダッタンソバ種子「北海T8号」、米種子「おぼろづき」、小麦種子「キタノカオリ」、二条大麦種子「ミカモゴールデン」、六条大麦種子「さやかぜ」、ライ麦種子「春香」、大豆「スズマル」種子発芽処理前に種子を15℃の水道水に浸漬し、十分に種子に水を吸収させた。その後、ウレタンマット上に適量の種子を播き、25℃で、3日間発芽処理を行って発芽穀物類を調製した。
【0056】
上記発芽種子を用い吸収処理は、以下の方法で行った。1%GABA、タウリン溶液を調製し、上記の方法で得られた各種発芽種子を上記溶液に25℃で12時間、浸漬させそれぞれGABA、タウリンを吸収させた。これを「生」(未乾燥)・「半乾燥」(乾燥時間:12時間)・「乾燥」(乾燥時間: 48時間)の3種類の処理を行った。「生」は収穫後0.4mm厚ポリエチレン袋に密閉し4℃暗所で2週間冷蔵保存した。「半乾燥」は収穫後70℃で12時間温風乾燥後0.4mm厚ポリエチレン袋に密閉し4℃暗所で3週間冷蔵保存した。「乾燥」は70℃48時間温風乾燥後0.4mm厚ポリエチレン袋に密閉し4℃暗所で3週間冷蔵保存した。保存試験終了後直ちに概観および匂いを評価した。概観、匂い:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
さらに、保存前の各サンプル(「半乾燥」及び「乾燥」は乾燥後)について、GABA含量及びタウリン含量を測定した(サンプル数3反復の平均値)。
【0057】
GABA吸収発芽種子の結果を表8に示し、タウリン吸収発芽種子の結果を表9に示す。
【0058】
いずれの発芽種子においても「乾燥」区ではカビ・腐れは無く、色、匂いともに良好で食品用途として十分利用可能であった。また、「半乾燥」区においては、「乾燥区」よりは概観、匂いはやや劣るものの、カビ・腐れは無く食品用途として利用可能であった。一方、「生」区は、いずれの植物種子においてもカビ・腐れが発生し、悪臭が発生したため食品用途としての利用は不可能であった。
【0059】
以上より、GABA、タウリンを吸収させた発芽穀物は、貯蔵性を高めるために「乾燥」区に準じた調製が好ましく、最低でも「半乾燥」以上の調整が必須となる。具体的には、水分含量は10%以下が好ましく、最低でも15%以下にする必要がある。
【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
実施例8
実施例1と同条件でGABA、タウリン高含有の発芽小麦種子、発芽ダッタンソバ種子、発芽アマランサス種子を作製し、得られた種子を40℃で12時間温風乾燥を行い十分に乾燥させた。次に、この乾燥種子を市販のコーヒーミルで適度に粉砕し粉末を得た。そして、この粉末と吸収処理無の同様の上記種子粉末を用い表8に示す食パン配合で発酵80分のストレート法で山型食パンを製造した。得られたパンについて、パンの品質を吸収処理無の発芽種子粉末添加の比較例のパンと比較評価した。製パン評価は、5人のパネラーによる製パン時の生地の状態、パンの内相、食感、風味の評価と菜種置換法による比容積により行った。なお、本発明の全ての実施例において、配合は小麦粉100に対する重量部で示した。
【0063】
以下にパンの製造条件を示す。
ミキシング:全原料をミキサーに入れ、135rpmでミキシングピーク時間後10秒程 度までミキシング
分割・丸め:生地量100gずつ手分割、丸め
ベンチ :30℃、20分
成型 :モルダー、シーターにて成型
ホイロ :温度38℃、湿度85%、70分
焼成 :200℃、25分
【0064】
その結果を表10に示す。この結果から、それぞれの吸収処理無の粉末添加の比較例のパンに比べ試験例のパンは、内相、食感、風味、比容積等殆ど差が無く同等の良好な評価であった。一方、GABA含量は比較例に比べ明らかに高く、全ての試験例のパンで40mg/100gDW以上であった。以上の結果から、試験例のパンは品質的にも良好であり、機能性成分のGABAを十分量含量しており、差別化されたパンとして十分商品性があると考えられる。
【0065】
【表10】

【0066】
実施例9
実施例8で使用したGABA高含有の発芽小麦種子、発芽アマランサス種子粉末を用い、下記に示すソバ麺(以下、ソバ)の製造条件で表9に示す配合でソバを製造した。その後、表2の項目について5人のパネラーによって官能評価を行った。
【0067】
・ミキシング:縦型ミキサー、低速3分、中低速7分
・製麺:冷麺製造機を用いて(生粉打ち名人)を用いてノズル(直径2mm)
からの押し出し式で製麺
・切り出し :麺の長さ25cm前後
・ゆで :沸騰水中で約1分
【0068】
麺の評価は、生麺は製麺直後、ゆで麺の場合ゆでた後冷水で麺表面のぬめりを取るために、冷水で短時間表面を洗った後評価した。その結果を表11に示す。品質評価は、5人のパネラーにより、吸収処理無の発芽種子粉末添加の比較例の麺と比較して生麺の場合、麺の繋がり具合、表面の状態、色等の評価を行い、ゆで麺の場合、麺の色、食感、風味、表面の外観について5段階の官能評価によって行った。また、全ての茹で麺から、GABAを抽出し、実施例1と同様に定量を行った。含量はDW重量当たりの含量で示した。
以上の結果から、比較例の麺と比較し、試験例の麺は、生麺、ゆで麺共にほぼ同等の品質を示し、ソバとして良好な品質であることが明らかになった。また、機能性成分のGABA含量については、試験例のゆで麺は60mg/100DW以上の十分な量含量しており、本GABA含有ソバは差別化されたソバとして十分商品性があると考えられる。
【0069】
【表11】

【0070】
実施例10
実施例8と同様のGABA高含有の発芽小麦種子、発芽ダッタンソバ種子、発芽アマランサス種子粉末と吸収処理無の発芽種子粉末を用い、表12に示す配合でクッキーを作製し、吸収処理無の粉末から作った比較例のクッキーと比較して、クッキー生地調整時の状態、得られたクッキーについて、色、食感、風味、外観の官能評価を5人のパネラーによって行った。
【0071】
クッキーの製造は以下のようにして行った。バターを湯煎にかけやわらかくして砂糖を加えてよく混合する。次に全卵を少量ずつ加え十分に混合し、それに更に小麦粉、上記発芽穀物粉末を加え十分に混合する。得られた生地を絞りだし器に入れ、10g程度ずつクッキングシートにしぼり出し、オーブンで180℃、13分焼成する。
【0072】
官能評価結果を表12に示す。これより、比較例のクッキーに比べ試験例のクッキーは、全ての官能評価項目について殆ど同等な良好な品質を示した。一方、GABA含量は比較例に比べ明らかに高く、全ての試験例のクッキーで60mg/100gDW以上であった。以上の結果から、試験例のクッキーは品質的にも良好であり、機能性成分のGABAを十分量含有しており、差別化されたクッキーとして十分商品性があると考えられる。
【0073】
【表12】

【0074】
実施例11
吸収処理用のGABA水溶液の濃度を3倍にした以外実施例1と同条件でGABA高含有の発芽大麦種子、発芽ダンタンソバ種子を作製し、得られた種子を60℃、4時間温風乾燥を行い、お茶用の乾燥発芽種子を調製した。次に、この乾燥発芽種子を用い以下の条件で穀物茶を調製した。お湯1000mlの入ったヤカンに上記の乾燥発芽種子10gを添加し、ガスコンロで加熱し沸騰した後弱火で10分間保持し、穀物茶を調製した。得られた穀物茶について、その品質をGABA吸収無処理の乾燥発芽種子を用いて同条件で調製した比較例のお茶と比較評価した。お茶の評価は色、香り、味について5人のパネラーにより官能評価した。また、全てのお茶中のGABA含量を実施例1と同様の方法によって定量した。GABA含量はお茶100ml中の含量で示した。
【0075】
表13に調製した穀物茶の評価結果を示す。これより、比較例のお茶に比べ、試験例のお茶は色、香り、味の官能評価において大差は無く殆ど同等の良好な結果を示した。しかし、GABA含量については、両者で大きな差が有り、試験例のお茶がいずれも30mg/100mlお茶以上という高濃度のGABAを含有するのに対し、比較例のその含量は非常に少ない量であった。
以上の結果から、本発明のGABA高含有の発芽穀物種子乾燥物を用いることによって、非常に高濃度のGABAを含有する機能性の期待できる高品質の穀物茶を製造できることが判る。
【0076】
【表13】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、機能性成分高含有の発芽種子製造等により農業、食品分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−アミノ酪酸(GABA)含有量が、50mg/100gドライウェィト(DW)以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子。
【請求項2】
GABA含有量が、70mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が10%以下である請求項1に記載の発芽種子。
【請求項3】
タウリン含有量が、50mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が15%以下である発芽種子。
【請求項4】
タウリン含有量が、70mg/100gDW以上であり、かつ水分含量が10%以下である請求項3に記載の発芽種子。
【請求項5】
種子が穀物または豆類種子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の発芽種子。
【請求項6】
種子を発芽処理に供して発芽種子を得る工程、
得られた発芽種子をGABA及び/又はタウリンを含有する水溶液に、GABA及びタウリンのいずれか一方または両方の濃度が50mg/100gDW以上となる時間浸漬する工程、及び
得られた発芽種子を水分含量が15%以下になるまで乾燥する工程
を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発芽種子の製造方法。
【請求項7】
前記発芽種子の乾燥が、35〜50℃で行われる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記発芽種子の水溶液への浸漬時間は、6〜24時間とする請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記発芽種子の前記水溶液への浸漬は10〜35℃の温度で実施される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発芽種子を用いる食品の製造方法。
【請求項11】
製造される食品がパン類、麺類、菓子類、茶類である請求項10記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−103801(P2011−103801A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261112(P2009−261112)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省「都市エリア産学官連携推進事業」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】