説明

GABAAアゴニストの多形性形態

ガボキサドールの2つの新規の一水和物結晶及び2つの新規の無水和物結晶が、それらを調製するための方法とともに開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水状態及び水和状態の両者における化合物4,5,6,7−テトラヒドロイソキサゾロ[5,4−c]ピリジン−3−オールの新規の多形性形態に関する。本発明はさらに、前記多形性形態を活性成分として含有する医薬組成物、薬剤における前記多形性形態の使用、及び前記多形性形態の調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物4,5,6,7−テトラヒドロイソキサゾロ[5,4−c]ピリジン−3−オール(THIP又はガボキサドール(gaboxadol)としても知られ、及びこれ以後ガボキサドールと呼ぶ)は既知のGABA受容体アゴニストであり(例、EP0000338参照)、それゆえ癲癇、パーキンソン病、統合失調症及びハンチントン舞踏病のようなさまざまな神経学的及び精神病性障害を治療する上で使用するために示唆されてきた。最近、睡眠障害(WO97/02813)及び月経前症候群(WO02/40009)の治療のためのガボキサドールの使用が開示され、ガボキサドールがα4サブユニット及びδサブユニットを含むGABA受容体における特に有力なアゴニストであるという開示(Brown et al, British J. Pharmacol., 136, 965−74 (2002))がある。
【0003】
ガボキサドールが適切であり得る他の兆候には、聴覚障害(特に耳鳴り)、前庭障害、注意欠陥多動性障害、企図振戦、又は下肢静止不能症候群が含まれる。
【0004】
ガボキサドールの調製は遊離塩基及び酸付加塩(特に臭化水素酸)の両者としてEP0000338に開示されているが、ここには水和物形態に関する言及がなく、前記臭化水素酸はEP0000338に記載された薬理検査に使用される形態であった。
【0005】
ガボキサドールは塩酸塩の形態で(例、Sigmaにより)商業的に販売されており、WO01/22941及びWO02/094225は塩酸塩の形態のガボキサドールを含む顆粒状の医薬組成物を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
WO02/094255に詳述されるように、既存の技術及び設備を採用するとき、錠剤のような医薬経口剤形の製造における塩酸塩のようなガボキサドールの酸付加塩の使用が腐食問題を生じる。それゆえ、医薬経口剤形における組み込みに適したガボキサドールの新規の形態についての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、その第一の面において、結晶形態におけるガボキサドール一水和化合物が提供される。特に、前記結晶形態は、
(a)11.5°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態I、及び
(b)25.2°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態II
から選択される。
【0008】
本発明の第二の面によると、
(a)12.8°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態I、及び
(b)16.0°、24.7°及び28.4°のうちの1つ以上にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態II
から選択される結晶形態におけるガボキサドール無水和化合物が提供される。
【0009】
本発明の第三の面によると、
(a)水中にガボキサドールの酸付加塩を溶解する段階と、
(b)約6.5のpHを提供するために十分な塩基を添加する段階と、及び
(c)前記結果として生じる沈殿を直ちに回収する段階と、
を含む、上述に定義されるような形態Iの結晶ガボキサドール一水和物を調製する方法が提供される。
【0010】
本発明の第四の面によると、
(a)水中にガボキサドールの酸付加塩を溶解する段階と、
(b)約6.5のpHを提供するために十分な塩基を添加する段階と、
(c)前記結果として生じる混合物を少なくとも12時間熟成させる段階と、及び
(d)前記結果として生じる固体を回収する段階と
を含む、上述に定義されるような形態IIの結晶ガボキサドール一水和物を調製する方法が提供される。
【0011】
本発明の第五の面によると、大気圧で100℃を上回る温度で形態Iの結晶ガボキサドール一水和物を加熱することによって、上述に定義されるような形態Iの結晶ガボキサドール無水和物を調製する方法が提供される。
【0012】
本発明の第六の面によると、大気圧で100℃を上回る温度で形態IIの結晶ガボキサドール一水和物を加熱することによって、上述に定義されるような形態IIの結晶ガボキサドール無水和物を調製する方法が提供される。
【0013】
本発明の第七の面によると、大気温でエタノール中に上述に定義されるような形態Iのガボキサドール無水和物の懸濁液を撹拌することによって、上述に定義されるような形態IIの結晶ガボキサドール無水和物を調製する方法が提供される。
【0014】
一切の疑問を回避するため、本明細書で使用される「ガボキサドール」は、4,5,6,7−テトラヒドロイソキサゾロ[5,4−c]ピリジン−3−オール遊離塩基を表し、これは以下の双性イオンとして存在すると信じられている。
【0015】
【化1】

【0016】
塩酸塩又は臭化水素酸(好ましくは塩酸塩)などのガボキサドールの酸付加塩が水に溶解され、適切な塩基(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水溶性三級アミン、好ましくはトリエチルアミン)で中和されると、ガボキサドール一水和物は形態Iとして本明細書に指定される結晶形態で沈殿する。もし中和が水酸化ナトリウムを塩基として使用する水溶性有機混合物中で、好ましくは約0℃で実行されれば、同じ生成物が得られる。前記混合物の有機成分は典型的にはアルコール(例、n−プロパノール又は2,2,2−トリフルオロエタノール)又は、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン又はN,N−ジメチルアセトアミドのような水混和性溶媒である。前記混合物の水分量は典型的には30〜70%の範囲であり、好ましくは40〜50%である。中和後のpHは典型的には6.5±0.5であり、好ましくは6.5である。この結晶形態は11.5°(2θ)でピークを有するX線粉末回折スペクトルにより特徴づけられる。さらに存在してもよい他のピークは18.1°、23.2°、24.9°、26.7°及び又は35.1°にピークを含む。この結晶形態のX線粉末回折スペクトルは、7.6Å、3.8Å、3.6Å、3.3Å、2.5Å及び2.4Åのd−間隔によりさらに特徴づけられる。この結晶形態は、約89℃で開始すると推定され約108℃(ピーク)で吸熱反応を示し、約241℃で開始すると推定され約248℃(ピーク)での発熱反応を示すDSC曲線によりさらに特徴付けられる。この結晶形態は、水の1モル当量の損失と一致する50〜125℃での11.18%の重量の損失後の250℃でのさらなる重量損失(崩壊)を示すTGA曲線によりさらに特徴付けられる。この結晶形態は、グリシンのカルボニルピークについての176.03ppmに関する16.4ppm、40.2ppm、102.8ppm、159.4ppm、172.7ppmの固相状態の13C NMR化学シフトによりさらに特徴付けられる。
【0017】
形態Iの上述のガボキサドール一水和物は、ガボキサドール塩酸(又は他の添加塩)が水溶液中で中和され、できた沈殿をすぐに回収するときに得られる。「すぐに」とは、中和処理の終了と固体の回収との間に有意な遅延がなく、中和する塩基の添加後の短時間の撹拌は例えば約1時間まで許容できることを意味するものとする。
【0018】
しかしながら、もし初期に形成された沈殿がより長い時間、例えば前記混合物を数時間、好ましくは一晩又はさらに長く撹拌することによって熟成させれば、異なる結晶形態(本明細書では形態IIと指定される)におけるガボキサドール一水和物が形成される。この結晶形態は25.2°(2θ)でピークを有するX線粉末回折スペクトルによって特徴付けられる。さらに存在するかもしれない他のピークには、14.0°、19.0°、21.6°、24.8°、26.7°及び又は27.8°にピークが含まれる。この結晶形態のX線粉末回折スペクトルは、7.6Å、6.3Å、5.7Å、4.7Å、4.1Å及び3.5Åのd−間隔によってさらに特徴付けられる。この結晶形態は約107℃で推定される開始とともに約114℃(ピーク)で吸熱反応を、及び約247℃で推定される開始とともに約255℃(ピーク)で発熱反応を示すDSC曲線によってさらに特徴付けられる。この結晶形態は、水1モル当量の損失と一致する、75〜125℃での10.13%の重量損失の後の、約250℃でのさらなる重量損失(崩壊)を示すTGA曲線によってさらに特徴付けられる。この結晶形態はグリシンのカルボニルピークについての176.03ppmの値に関する17.5ppm、40.3ppm、102.2ppm、158.5ppm及び172.5ppmの固相状態の13C NMR化学シフトによってさらに特徴付けられる。
【0019】
形態Iのガボキサドール一水和物の形態IIのガボキサドール一水和物への上述の変換は、アルコール(好ましくはイソプロパノール)の撹拌した混合物及び又は形態IIの本物のガボキサドール一水和物の種子結晶への添加によって加速される。それゆえ、形態IIの結晶性ガボキサドール一水和物を調製する代替方法は、
(a)ガボキサドールの酸付加塩を水に溶解する段階と、
(b)約6.5のpHを提供するために十分な塩基を添加する段階と、
(c)イソプロパノールを前記混合物へ添加する段階と、及び
(d)前記生成物を回収する段階
を含む。
【0020】
上述の操作はすべて、典型的には、大気温で実行される。好ましい塩基は水酸化ナトリウム水溶液である。段階(b)において、約0.3〜0.4当量の塩基が添加された後に、形態IIの本物のガボキサドール一水和物の種子結晶が好ましく添加される。段階(c)において、好ましくは少なくとも等量のイソプロパノールをゆっくり添加する。イソプロパノールの添加後、前記混合物を少なくとも1時間好ましく熟成する。段階(c)後に得られたスラリーを、所望であれば粒子サイズ分布を調整するため、湿式造粒してもよい。段階(d)において、前記生成物はろ過により典型的に回収され、既存の手段で(例えばイソプロパノール水溶液で)洗浄され及び乾燥されてもよい。
【0021】
上述のガボキサドール一水和物の2つの結晶性同質異像は、100℃を上回って(例、110℃で)加熱されるとき、形態I及び形態IIとしてそれぞれ本明細書で指定されるガボキサドール無水和物の異なる結晶性同質異像へ変換する。形態Iのガボキサドール無水和物は12.8°でのそのX線粉末回折スペクトルにおいて特徴的なピークを有する。さらに存在し得る他のピークには16.1°、24.7°及び又は28.5°のピークが含まれる。
【0022】
形態IIのガボキサドール無水和物は16.0°、24.7°及び28.4°でのそのX線粉末回折スペクトルにおいて特徴的なピークを有するが、12.8°でのピークを欠く。この結晶形態のX線粉末回折スペクトルは、6.3Å、6.1Å、5.5Å、3.7Å、3.6Å及び3.1Åのd−間隔によってさらに特徴付けられる。
【0023】
形態Iの結晶性ガボキサドール無水和物は、大気温で一定の時間、好ましくは10時間以上、エタノール又は他の低級アルコールにおける懸濁液として撹拌することによって、形態IIの結晶性ガボキサドール無水和物へ変換され得る。「低級アルコール」は最大6個(好ましくは最大4個の)炭素原子を含有するアルコールを表す。他の適切な低級アルコールにはメタノール及びn−プロパノールがあり、及び前記変換は加温によって加速されるかもしれない。形態IIの結晶性ガボキサドール無水和物は又、低級アルコール中における形態I又は形態IIのガボキサドール一水和物の懸濁液を、好ましくは少なくとも12時間及び好ましくは加温しながら撹拌することによって得られ得る。
【0024】
ガボキサドール一水和物の両結晶形態及びガボキサドール無水和物の両結晶形態は医薬処方に組み込むのに適している。特に、ガボキサドール遊離塩基のこれらの新規の同質異像は、腐食の危険性のない既存の技術と設備を使用して錠剤のような既存の経口用剤形に組み込まれてもよい。さらに、水に相当程度の溶解することを考慮すれば、前記新規の同質異像は、この目的のためにすでに使用される酸付加塩のそれと等価の生物学的利用能を示すと期待される。
【0025】
形態IIのガボキサドール一水和物は形態Iの前記一水和物よりも熱力学的により安定であり、及びそれゆえ医薬使用のための好ましい一水和物である。同様に、形態IIのガボキサドール無水和物は形態Iの前記無水和物よりも安定であり、及び医薬使用のための好ましい無水和物である。(形態Iの無水和物は25℃/70%相対湿度で一水和物へ戻るのに対し、形態IIの無水和物は25℃/90%相対湿度で一水和物へ戻る)。形態IIの一水和物は熱崩壊研究に基づいて形態IIの無水和物よりも安全な熱特性を有する。
【0026】
本発明の更なる面によると、医薬低に許容できる担体中に、上述に定義される形態I若しくは形態IIのガボキサドール一水和物、又は上述に定義される形態I若しくは形態IIのガボキサドール無水和物、又はそのいずれかの組み合わせを含む医薬組成物が提供される。好ましくは、前記組成物は形態IIのガボキサドール一水和物又は形態IIのガボキサドール無水和物を含有する。最も好ましくは、前記組成物は形態IIのガボキサドール一水和物を含有する。
【0027】
本発明の医薬組成物はたとえは本発明の1つ以上の前記化合物を活性成分として、外部適用、内部適用又は非経口適用に適した有機的又は無機的担体又は補形薬との混合で含有する、例えば固体、半固体又は液体の形態の医薬調製物である。前記活性成分は、錠剤、ペレット、カプセル、坐薬、乳化剤、懸濁液、及び使用に適したその他の形態のために、例えば通常の非毒性の医薬的に許容できる担体と調合されてもよい。使用できる担体にはグルコース、ラクトース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、澱粉ペースト、三ケイ酸マグネシウム、滑石、トウモロコシ澱粉、ケラチン、コロイド性シリカ、ジャガイモ澱粉、尿素及び固体、半固体又は液体の形態において調製物を製造する上で使用するのに適した他の担体があり、補助剤、安定化剤、増粘剤及び着色料に加えて香料が使用されてもよい。前記活性対象化合物は疾病の進行又は状態に及ぼす望ましい効果を生じるのに十分な量の医薬組成物に含有される。
【0028】
錠剤のような固体の組成物を調製するため、前記原理上の活性成分を医薬担体、例えばトウモロコシ澱粉、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二ナトリウム又はゴムのような既存の錠剤化成分及び、本発明の化合物の均質な混合物を含有する固体予備処方組成物を形成するための他の医薬希釈剤、例えば水と混合する。均質なこれらの予備処方組成物に関する場合、前記活性成分は前記組成物が錠剤、ピル及びカプセルのような等しく効果的な単位剤形へとすぐに副分割されてもよいように、前記組成物を通じて均一に分散されることが意図される。この固体予備処方組成物は次に、本発明の活性成分0.1〜約500mgを含有する上述のタイプの単位剤形へと副分割される。前記新規の組成物の錠剤又はピルはコーティングできるか又はさもなくば調合されて長期間の作用の利点が付与された剤形を提供できる。例えば錠剤又はピルは内側製剤成分及び外側製剤成分を含有でき、後者は前者を上回るエンベロープの形態にある。前記2つの成分は、胃の中での崩壊に抵抗するよう機能し及び内部成分が十二指腸へとそのまま通過できるか又は放出において遅延できる腸内層によって分離できる。さまざまな材料がこのような腸内層又はコーティングに使用でき、このような材料は多くのポリマー酸並びに、シェラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースのような材料とのポリマー酸の混合物を含む。
【0029】
吸入又はガス注入のための組成物には、医薬的に許容できる水溶性溶媒又は有機溶媒、又はその混合物における懸濁液及び粉末が含まれる。前記液体又は固体組成物は上述のような適切な医薬的に許容できる補形薬を含有してもよい。このような組成物は局所的又は全身性の効果のために経口経路又は鼻内吸入経路によって投与される。懸濁液組成物又は粉末組成物が投与されてもよく、好ましくは適切な方法で処方物を送達するデバイスから経口投与又は鼻内投与されてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物は好ましくは錠剤又はカプセルのような経口投与に適した形態にある。
【0031】
医薬組成物としての活性成分の処方のための方法及び材料は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing, 1990)のようなテキストから当業者に公知である。
【0032】
本発明の結晶ガボキサドール一水和物又は無水和物は人体の治療処置、及び特にGABA受容体アゴニズムによる寛解に影響を受けやすい障害の治療において有用である。
【0033】
従って、本発明はさらに、上述に定義されるような形態I若しくは形態IIの結晶ガボキサドール一水和物、又は上述に定義されるような形態I若しくは形態IIの結晶ガボキサドール無水物の治療効果のある量を、GABA受容体アゴニズムによる寛解に影響を受けやすい障害を治療する必要のある患者へ投与することを含む、そのような治療の方法を提供する。
【0034】
本発明はさらに、GABA受容体アゴニズムによる寛解に影響を受けやすい障害の治療のための薬剤の製造のための、上述のように定義される形態I若しくは形態IIの結晶ガボキサドール一水和物、又は上述のように定義される形態I若しくは形態IIの結晶ガボキサドール無水和物の使用を提供する。
【0035】
本発明の特定の実施態様において、前記障害はα4サブユニット及びδサブユニットを含むGABA受容体のアゴニズムによる寛解に影響を受けやすい。
【0036】
本発明のさらなる実施態様において、前記障害は癲癇、パーキンソン病、統合失調症、ハンチントン病、不眠症のような睡眠障害、月経前症候群、耳鳴りのような聴覚障害、メニエール病のような前庭障害、注意欠陥/多動性障害、企図振戦、及び下肢静止不能症候群のような神経学的障害または精神医学的障害から選択される。
【0037】
本発明のなおさらなる実施態様において、前記障害は睡眠障害、特に原発性不眠症、慢性不眠症又は一過性不眠症のような不眠症である。本実施態様内で提供されるのは、総睡眠時間の増大、非REM(急速眼球運動)期の睡眠時間の増大及び又は睡眠遅延の低下のための薬剤の製造のための本発明の化合物の使用である。
【0038】
本発明の化合物は最適な医薬効力を提供するであろう投薬量においてこのような治療を要する患者へ投与され得る。いずれかの特定の適用における使用に要する投薬量は、選択される特定の化合物又は組成物のみならず、投薬経路、治療される身体状況の性質、患者の年齢と身体状況、患者によって従われる同時投薬又は特別食、及び当業者が認識するであろう他の因子とともに患者によって変動し、適切な投薬量が最終的に担当医の判断にあることが認識されるであろう。
【0039】
典型的な投薬量は成人につき1日あたり約5〜約50mgの範囲にあり、例えば毎日5mg、10mg、15mg、20mg又は25mgである。
【実施例1】
【0040】
形態Iのガボキサドール一水和物の調製
ガボキサドール塩酸(約10%w/w)の溶液を十分なトリエチルアミンで処理して6.5のpHを与えた。結果としてできる白色固体をろ過により回収し、及び空気乾燥した。
【0041】
X線粉末回折スペクトルは大気温で記録され(CuKα照射、3°〜40°(2θ)、0.014°の段階、1段階につき0.2秒)、以下に要約される結果を与えた。
【0042】
DSCトレースは乾窒素流の下で25〜300℃(10℃/分)で記録され、以下に要約される結果を与えた。
【0043】
TGAは乾窒素流の下で25〜300℃(10℃/分)で実行され、以下に要約される結果を与えた。
【0044】
形態Iのガボキサドール一水和物についてのデータの要約
XRPD
11.5°での主要ピーク、18.1°、23.2°、24.9°、26.7°及び35.1°での補助ピーク;7.6Å、6.3Å、5.7Å、4.7Å、4.1Å及び3.5Åでのd−間隔。
【0045】
DSC
114℃での吸熱反応(ピーク、推定される開始107℃)、発熱反応255℃(ピーク、推定される開始247℃)。
【0046】
TGA
75〜125℃での10.13%の重量損失及び250℃超での更なる重量損失(崩壊)。
【0047】
固相状態13C NMR
グリシンのカルボニルピークについての176.03ppmの値に関する16.4ppm、40.2ppm、102.8ppm、159.4ppm及び172.7ppm。
【実施例2】
【0048】
形態IIのガボキサドール一水和物の調製
実施例1の手段を繰り返したが、ろ過による固体の回収前に、前記混合物を大気温で約60時間撹拌した。X線粉末回折スペクトルを大気温で記録し(CuKα照射、3°〜40°(2θ)、0.014°の段階、1段階につき0.3秒)、以下に要約される結果を与えた。
【0049】
DSCトレースは25〜300℃の間で乾窒素流の下で記録され(10℃/分)、以下に要約される結果を与えた。
【0050】
TGAは乾窒素流の下で25〜300℃(10℃/分)で乾窒素流の下で実行され、以下に要約される結果を与えた。
【0051】
形態IIのガボキサドール一水和物についてのデータの要約
XRPD
25.2°での主要ピーク、14.0°、19.0°、21.6°、24.8°、26.7°及び27.8°での補助ピーク;7.6Å、3.8Å、3.6Å、3.3Å、2.5Å及び2.4Åのd−間隔。
【0052】
DSC
108℃での吸熱反応(ピーク、推定される開始89℃)、発熱反応248℃(ピーク、推定される開始241℃)。
【0053】
TGA
50〜125℃での11.18%の重量損失及び250℃超での更なる重量損失(崩壊)。
【0054】
固相状態13C NMR
グリシンのカルボニルピークについての176.03ppmの値に関する17.5ppm、40.3ppm、102.2ppm、158.5ppm及び172.5ppm。
【実施例3】
【0055】
形態IIのガボキサドール一水和物の調製
ガボキサドール塩酸(300g、1.698mol)及び水(1.2l)を温度調節槽、オーバーヘッドスターラー、N入り口、及びフローセル湿式造粒装置を装備した5.0lの樹脂容器へ大気温(25℃)で入れる。5NのNaOH(102ml、0.3当量、0.509mol)を大気温で5分間かけて入れ、及び前記溶液を30分間熟成させる。前記バッチを形態IIのガボキサドール一水和物(15.0g、5重量%)で播種した。容器の内部温度を25℃で維持しながら、5NのNaOH(238ml、1.189mol)を3時間かけてシリンジポンプを介して添加した。前記塩基負荷の間、較正したpH電極を使用して前記反応スラリーのpHを注意深く観察した。pHが〜5.5まで上昇したとき、前記シリンジモーターをオフにして前記残余塩基(〜2ml)を6.5のpHが得られるまでシリンジから滴下して手動で漏出した。前記スラリーを大気温で1時間さらに熟成させた。iPrOH(1.86l)を大気温で2時間かけて滴下して添加した。前記スラリーを撹拌しながら1時間熟成させた。前記バッチを内部温度0〜10℃まで冷却し、0〜10℃で湿式造粒した。前記スラリーを大気温(20℃)まで加温し及びろ過した。前記湿式ケーキを3×600mlの30%水/iPrOHで置換洗浄し、及び1気圧または減圧で湿度の調節されたN(15%超の相対湿度)の下で真空/吸引乾燥し、形態IIのガボキサドール一水和物を与えた。
【実施例4】
【0056】
形態IIのガボキサドール一水和物の調製
ガボキサドール臭化水素酸(100g、0.452mol)及び水(300ml)を、オーバーヘッドスターラー、N入り口、及び更なる漏斗を装備した2lの容器へ入れた。5NのNaOH(31ml、0.4当量、0.158mol)を5分間かけて大気温で負荷し、及び前記溶液を30分間熟成させた。前記バッチを形態IIのガボキサドール一水和物(15.0g、5重量%)で播種し、前記容器の内部温度を25℃に維持しながら、5NのNaOH(54ml)を3時間かけてシリンジポンプを介して添加した。前記反応スラリーのpHを、較正したpH電極を使用して、塩基の負荷の間注意深く観察した。前記スラリーをさらに大気温で1時間熟成した。iPrOH(450ml)を大気温で2時間かけて滴下した。前記スラリーを撹拌しながら1時間熟成した。湿式造粒の後、前記スラリーを大気温(20℃)へ加温し及びろ過した。前記湿式ケーキを3×150mlの30%水/iPrOHで置換洗浄し及び1気圧又は減圧で湿度の調節されたN(15%超の相対湿度)の下で真空/吸引乾燥し、形態IIのガボキサドール一水和物を与えた。
【実施例5】
【0057】
形態Iのガボキサドール無水和物の調製
実施例1からの前記生成物の試料を大気圧、110℃で1.25時間加熱した。得られた固体のX線粉末回折スペクトルを大気温で記録し(CuKα照射、3°〜40°(2θ)、0.014°の段階、1段階につき0.1秒)、12.8°でピークを、及び16.1°、24.7°及び28.5°で更なるピークを与えた。
【実施例6】
【0058】
形態IIのガボキサドール無水和物の調製
実施例2からの前記生成物の試料を大気圧、110℃で1.25時間加熱した。得られた固体のX線粉末回折スペクトルを大気温で記録し(CuKα照射、3°〜40°(2θ)、0.014°の段階、1段階につき0.3秒)、16.0°、24.7°及び28.4°でピークを与え、及び6.3Å、6.1Å、5.5Å、3.7Å、3.6Å及び3.1Åであった。
【実施例7】
【0059】
形態Iのガボキサドール無水和物の形態IIのガボキサドール無水和物への変換
実施例5の前記生成物の試料をエタノールに懸濁し及び大気温で一晩撹拌した。得られた固体をろ過により回収し及び空気乾燥した。そのX線粉末回折スペクトルは実施例6の前記生成物のそれと適合した。
【0060】
X線粉末回折スペクトルはすべて、Bragg−Bretano(θ−θ)幾何学におけるPSD検出器を装備した40kV及び40mAで作動されるBruker D8 Advance回折計を使用して得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態におけるガボキサドール一水和化合物。
【請求項2】
(a)11.5°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態I、及び
(b)25.2°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態II
から選択される結晶形態における、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
25.2°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態IIの結晶ガボキサドール一水和物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
グリシンのカルボニルピークに対する176.03ppmの値に関する、17.5ppm、40.3ppm、102.2ppm、158.5ppm及び172.5ppmの固相状態13C NMR化学シフトによりさらに特徴付けられる、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
(a)12.8°にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態I、及び
(b)16.0°、24.7°及び28.4°のうちの1つ以上にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態II
から選択される結晶形態におけるガボキサドール無水和化合物。
【請求項6】
12.8°にピークが存在しない場合、16.0°、24.7°及び28.4°のうちの1つ以上にピークを有するCuKα照射を使用する2θ値におけるX線粉末回折スペクトルにより特徴付けられる形態IIの結晶ガボキサドール無水和物である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
(a)水中にガボキサドールの酸付加塩を溶解する段階と、
(b)約6.5のpHを提供するために十分な塩基を添加する段階と、及び
(c)生じた沈殿を直ちに回収する段階と、
を含む、請求項2に記載の形態Iの結晶ガボキサドール一水和物を調製する方法。
【請求項8】
(a)水中にガボキサドールの酸付加塩を溶解する段階と、
(b)約6.5のpHを提供するために十分な塩基を添加する段階と、
(c)生じた混合物を少なくとも12時間熟成させる段階と、及び
(d)生じた固体を回収する段階と、
を含む、請求項3に記載の形態IIの結晶ガボキサドール一水和物を調製する方法。
【請求項9】
大気圧で100℃を上回る温度で形態Iの結晶ガボキサドール一水和物を加熱することによって、請求項5に記載の形態Iの結晶ガボキサドール無水和物を調製する方法。
【請求項10】
大気圧で100℃を上回る温度で形態IIの結晶ガボキサドール一水和物を加熱することによって、請求項6に記載の形態IIの結晶ガボキサドール無水和物を調製する方法。
【請求項11】
大気温でもしくは加温しながら、最大6個の炭素原子を含有するアルコール中の形態Iのガボキサドール無水和物の懸濁液を撹拌することによって、請求項6に記載の形態IIの結晶ガボキサドール無水和物を調製する方法。
【請求項12】
医薬的に許容できる担体中に、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項3に記載の形態IIのガボキサドール一水和物を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
薬剤において使用するための、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
癲癇、パーキンソン病、統合失調症及びハンチントン病;不眠症などの睡眠障害;月経前症候群;耳鳴りなどの聴覚障害;メニエール病などの前庭障害;注意欠陥/多動性障害;企図振戦;又は下肢静止不能症候群などの神経学的障害又は精神病性障害の治療のための薬剤の製造のための、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−519697(P2007−519697A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550301(P2006−550301)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000288
【国際公開番号】WO2005/073237
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】