説明

GDNFファミリーリガンド(GFL)のミメティックまたはRETシグナル経路活性化因子を用いた、神経系細胞の生存を容易にするための方法

GFRα1受容体分子に対して結合特異性および/または調節特異性を示す化合物の有効量を、治療を必要とする対象に投与することによって、神経学的疾患および他の疾患を治療するための化合物および治療方法を開示する。本化合物は、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)のミメティック、GFRα/RETシグナル伝達経路アゴニストおよび/または直接RETアゴニスト(活性化因子)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2009年12月11日に出願した米国仮出願第61/285,858号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、本記載をもって本願に全て組み込まれたものとする。
【背景技術】
【0002】
多くの神経系疾患および全ての神経変性疾患が、ニューロンの死またはその神経突起(neuritis)の喪失によって生じるものである。今のところ、神経保護性または神経回復性の薬剤は存在しない。神経の生存を支持する数種のタンパク質が神経系疾患および神経変性疾患に対して効果的であることは、動物モデルおよび臨床試験によって示されており、一例は、パーキンソン氏病および慢性疼痛に対するGDNFファミリーリガンド(GLF)である。しかしながら、タンパク質は、薬物動態学的性質の劣る大分子であり、血液脳関門を通過することができない。
【0003】
ニューロンは非分裂性の細胞であり、生き残るためには、近隣の細胞、細胞外マトリクス(ECM)および環境からの恒常的な生存シグナルを必要とする。「生き続けよ」というシグナルは、通常、神経生存を促進する神経栄養因子によって伝達される。パーキンソン氏病(PD)やアルツハイマー病などのある種の病理学的状態においては、ニューロンは進行的に変性する。ニューロンはシナプス結合を損失し、軸索変性を経て、やがて死に至る。
【0004】
現在利用可能な神経変性疾患の治療法は症候性であり、神経変性を逆行させたり、有意に減速させたりすることが可能な他の治療方法は存在しない。神経栄養因子に基づく治療法は、神経生存の促進のみならず、軸索の再生を誘導し、シナプスの形成を支持し、そしてニューロンの機能的性質を促進することから、大きな期待が寄せられている。
【0005】
グリア細胞誘導性神経栄養因子(GDNF)はトランスフォーミング成長因子βスーパーファミリーの遠縁のメンバーであり、GDNFファミリーリガンド(GFL)の基本メンバーである。このファミリーは、次の4メンバー: GDNF、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)およびパーセフィン(PSPN)(図1)からなり、いずれも強力な神経栄養因子である(Airaksinen and Saarma, 2002)。1993年の発見以来、GDNFは、ドーパミン作動性ニューロンに対する生存支持作用、軸索出芽の誘導、PDにおいて変性するこれらニューロンの機能的ドーパミン代謝の調節という能力ゆえに、大きな注目を集めている(Lin et al., 1993)。更にGDNFは、PDの動物モデルにおいて、ドーパミンニューロンを保護するだけでなく、修復する数少ない成長因子の1つである(Bespalov and Saarma, 2007、Lindholm et al., 2007)。
【0006】
GDNFは、数多くのパーキンソン氏病動物モデルにおいて、その保護効果および神経回復効果が既に確認されており、2つの臨床試験(Gill et al., 2003、Slevin et al., 2005)において非常に有望な結果が得られているものの、近年の研究では、GDNFの明確な臨床的有用性を示すことができなかった(Lang et al., 2006)。この矛盾は、試験の構成、患者の疾病状態、およびE. coli発現GDNFの性質などにおける違いによって説明することができるかもしれない。今日まで、上記3つの試験において異なる結果が得られた理由について明確な理解は得られていない。
【0007】
GDNFは運動ニューロンも支持する(Henderson et al., 1994)ことから、GDNFは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療にも重要となるかもしれない。RETシグナル伝達が脳内のドーパミン量を増加させる(Mijatovic et al., 2007)ことから、うつ病の治療への応用も考えられる。GDNFまたはそのミメティックは、男性用避妊薬としても使用できるであろう(Meng et al., 2000)。
【0008】
NRTNは、NRTN遺伝子を保有するアデノウイルスの被殻内注射による近年の第II相臨床試験において、パーキンソン氏病患者に有意な改善が見られたことから、非常に期待される分子である(Ceregene Inc.のプレスリリース)。ARTNは、慢性疼痛の動物モデルに対する有効性(Gardell et al., 2003)および感覚ニューロンに対する回復性(Wang et al., 2008)が明らかとなったことから、現在、Biogen Idec/NsGeneの実施する神経症に対する第I相臨床試験においてテストされている。PSPNは、卒中およびアルツハイマー病の治療用として検討されている(Golden et al., 2003、Tomac et al., 2002)。
【0009】
GFL受容体複合体は適切な薬剤標的であると考えられているが、GFLポリペプチドはおそらく薬理学的に不適切な薬剤である。タンパク質に基づく療法の困難性の1つは、生物学的利用能である。GDNFは134個のアミノ酸からなる塩基性タンパク質であり、血液脳関門を通過することはできない。従って、GDNFを送達するためには脳外科手術が必要である。更に、GDNF、NRTNおよびARTNは、細胞外マトリクス(ECM)の成分であるヘパラン硫酸と相互作用する(Lin et al., 1993)。この相互作用は、投与または産生した領域からのGFLの拡散を劇的に低下させる。組み換えGDNFは、炎症および抗GDNF抗体の産生を誘導する場合があり(Lang et al., 2006)、また、組み換えGDNFは高価である。E. coli産生組み換えGDNFは、先ず不活性タンパク質として産生された後、in vitroで復元されるため、その性質はバッチごとに異なる。最後に、GDNFは特異性に欠け、GDNFはGFRα1を介した(更に、弱いがGFRα2およびGFRα3を介した)RETの活性化のみならず、全く異なる以下の受容体も活性化することができる: 神経系細胞接着分子NCAM、およびGDNF結合性ヘパラン硫酸側鎖を有するシンデカン糖タンパク質(Bespalov et al.、未出版)(Sariola and Saarma, 2003)。このような多面的なGDNFの作用は、複数の副作用につながりうる。
【0010】
哺乳動物細胞は活性化GDNFを厳密な品質管理下で分泌することから、遺伝子療法的および細胞療法的な手段は、E. coli産生組み換えGDNFと関連した免疫応答および炎症性応答の問題を克服するための一助となりうる。ウイルスベクターや、GDNF分泌性の遺伝的に修飾された細胞をポリマーカプセルに封入したものを含む移植可能な装置(Sautter et al., 1998)は、パーキンソン氏病の治療に用いることができる。残念なことに、未制御で連続的に産生されるGDNFによる恒常的なRETの活性化は悪性腫瘍につながる可能性があるため、このような方法は、発癌のリスクを高めると考えられる。例えば、GDNF過剰発現トランスジェニックマウスは精巣癌を発症する(Meng et al., 2001)。遺伝子療法や細胞療法とは異なり、小分子は決まった時間間隔で送達され、生体内で迅速に分解されることから、永続的なRETの活性化を引き起こすことはない。GDNFのミメティックは部分的なアゴニストであるという事実によって、発癌のリスクは更に減少する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、治療を必要とする対象におけるGFRα/RET受容体複合体との接触、あるいは該複合体の活性化または阻害によって疾患を治療するための方法であって、GFRα1受容体分子に対して結合特異性および/または調節特異性を示す化合物の有効量を対象に投与することを包含する方法に関する。
【0012】
対象に化合物、組成物または物質を投与することに関連して記載した本発明の全ての態様は、化合物、組成物または物質の、対象を治療するための使用、あるいは治療を必要とする対象の示す病態に対する薬物治療(または治療に有用な薬剤)の製造のための使用にも関わることを理解されたい。
【0013】
また、上記の目的に有用な、本明細書に記載した全ての化合物(またはその塩やエステル、あるいはそのプロドラッグ)は、それ自体が本発明の1つの態様である。同様に、これら化合物の少なくとも1種、および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を包含する組成物も、本発明の1つの態様である。同様に、少なくとも1種の化合物の単位剤形も本発明の1つの態様である。更に、化合物または組成物を含有する注射器などの医療器具も、本発明の1つの態様である。
【0014】
本発明において標的とする疾患には、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レット症候群、てんかん、パーキンソン氏病、脊髄損傷、卒中、低酸素症、虚血、脳の損傷、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、神経移植の合併症、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、HIV認知症、末梢神経の損傷、聴力損失、うつ病、肥満症、メタボリック症候群、疼痛、癌、およびGFRα/RET発現細胞の変性または機能不全を伴う他の病態が含まれる。
【0015】
GFRα/RET受容体複合体を阻害および/または活性化する化合物、その塩またはエステルも開示する。
【0016】
人体を対象とした方法の特許化が禁止されている出願国については、以下の限定を課すものとする:(1)ヒト対象の選択は、人体から先に採取した生物学的サンプルの試験に基づいた選択、および/または病歴、問診または人体に対して実施するものではない他の行為によって得られた情報に基づいた選択に限定されると解釈するものとし、(2)ヒト対象に対する組成物の投与は、ヒト対象が何らかの技術(例えば、経口投与、吸入、局所投与、注射、挿入など)を用いて自己投与するため、または処方した機関以外の者によって対象に投与されるための、制御された物質の処方に限定されると解釈するものとする。本願はそれぞれの出願国において、特許性のある発明主題を定義する法律または規則と合致する最も広く妥当な解釈を意図したものである。人体を対象とする方法の権利化が認められる出願国については、対象の選択および組成物の投与は、人体に対して行う方法と上記行為の両方を含むものとする。
【0017】
「発明の概要」という見出しは、発明の制限または限定を意図したものではない。本発明は、出願時の発明の詳細な説明や図面に記載した全ての態様も含んでいる。ここに添付した原請求の範囲も、本発明と考えられる態様を定義し、この参照をもってこの概要に組み込まれたものとする。
【0018】
更に上記に加え、本発明は、更なる態様として、上記で具体的に述べたバリエーションよりも僅かでも範囲の狭い全ての態様も含んでいる。例えば、簡潔さのために属や数値範囲に参照しながら発明の態様を説明した場合であっても、属に含まれる各種類や、数値範囲の中の各数値や副範囲も本発明の態様として意図していることを理解されたい。同様に、本発明の種々の態様や特性を組み合わせて、本発明の範囲に含まれることを意図した更なる態様を創設することもできる。本願の出願人が本願請求の範囲の全範囲を発明したものであるが、請求の範囲は、他者の先行技術までもその範囲に含めることを意図してはいない。従って、本願の請求項の範囲に含まれる制定法上の先行技術に対する出願人の注意が特許庁、他の法人または他の個人によって喚起された場合には、出願人は、該請求項に係る発明を再定義し、制定法上の先行技術または制定法上の先行技術から自明なバリエーションを該請求項の範囲から除外するために、適用される特許法の元で行使可能な補正する権利を保有する。このような補正後の請求項によって定義された本発明のバリエーションも本発明の態様として意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】GDNFファミリーリガンド(GFL)およびその受容体。GFLは、シグナル伝達受容体RETに直接結合することはできず、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型GFRαを必要とする。GDNF、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)およびパーセフィン(PSPN)は、GFRα/RET受容体複合体と相互作用し、更にGFRα/RET受容体複合体を介してシグナル伝達も行う。TM:膜貫通ドメイン。全てのタンパク質を3次元リボンモデルで示した。
【図2】有標細胞(proprietary cell)に基づくルシフェラーゼレポーターシステムを用いた、GFLシグナル伝達ミメティックの確認。スクリーニングしたいくつかの化合物の構造は次の通りである。化合物243G7は後述する式(VIII)で表される構造を有し、化合物299B5は後述する式(X)で表される構造を有し、化合物290A11は下記式で表される構造を有し、
【化1】

化合物319H6は下記式で表される構造を有し、
【化2】

そして化合物375F4は下記式で表される構造を有する。
【化3】

【図3】RET−ELISAアッセイによるGFLミメティックの検出。GFLミメティックは、GFRα1およびGFRα3を介してRETを活性化する。化合物219902は下記式で表される構造を有し、
【化4】

そして化合物74609は下記式で表される構造を有する。
【化5】

【図4】リン酸化アッセイにより明らかとなった、選択したGFLミメティックによるGFRαを介したRETの強力な活性化。WB:ウエスタンブロッティング。IP:免疫沈降法。pY:抗リン酸化チロシン抗体。アスタリスクは、RETの活性化を誘導するGLFミメティック化合物を示す。レーンの番号と化合物は以下の通りである。1)ジメチルスルホキシド(DMSO)、2)下記式で表される構造を有する不活性化合物クロロキン:
【化6】

3)下記式で表される構造を有する不活性化合物13005:
【化7】

4)下記式で表される構造を有する活性化合物219902:
【化8】

5)下記式で表される構造を有する活性化合物143511:
【化9】

6) 下記式で表される構造を有する不活性化合物349051:
【化10】

7)下記式で表される構造を有する不活性化合物108:
【化11】

8)下記式で表される構造を有する活性化合物292651:
【化12】

9)GDNF、および10)分子量マーカー(MW)。
【図5】GFRα1/RET発現細胞(上部パネル)、およびGFRα3/RET発現レポーター細胞系またはRET発現レポーター細胞系(下部パネル)に投与した化合物の容量反応。GFRα/RETが活性化するシグナル伝達カスケードはMAPKの活性化をもたらし、ルシフェラーゼレポータータンパク質の誘導につながる。化合物BT13、BT16、BT17は、GFRα1/RET発現レポーター細胞系およびGFRα3/RET発現レポーター細胞系において、用量依存的にルシフェラーゼ発現を誘導した。RET単独を発現する細胞においては有意な効果は見られなかった。化合物BT18はGFRα1/RET細胞系で活性を示した。GFRα3/RET発現細胞系(a3):実線、RET発現細胞系(Noa):破線。BT10は下記式で表される構造を有し、
【化13】

BT13(本明細書において「N13」と称することもある)は下記式で表される構造を有し、
【化14】

BT16(本明細書において「N16」と称することもある)は下記式で表される構造を有し、
【化15】

BT17(本明細書において「N17」と称することもある)は下記式で表される構造を有し、
【化16】

BT18は下記式で表される構造を有し、
【化17】

そしてBT19は下記式で表される構造を有する。
【化18】

【図6A】新規な(BT)GDNFミメティック/ARTNミメティックの誘導したRETのリン酸化。BT10、BT13、BT16、BT17とBT19の構造は、図5の説明に記載した通りであり、BT12は下記式で表される構造を有する。
【化19】

種々のBT化合物(構造は上述した通り)によるGFRα1/RETの活性化。MG87 RET繊維芽細胞をGFRα1構築物でトランスフェクトし、100μM濃度のBT試験化合物で処理した。上部パネルは、RET抗体で免疫沈降させた膜(IP:RET)を溶解してリン酸化チロシン抗体でプロービングしたもの(WB: pY)を表す。化合物BT13およびBT16はGFRα1を介してRETを強力に活性化した。化合物BT17およびBT18はGFRα1/RETに対する弱いアゴニストのようだ。下部パネルは、同じ膜を抗RET抗体でプロービングした結果を示す(WB:RET)。ジメチルスルホキシド(DMSO)を負の対照として用いた。GDNF(100ng/ml)を正の対照として用いた。
【図6B】BT化合物による、GFRα3/RETの活性化。MG87 RET繊維芽細胞をGFRα3構築物またはGFP構築物でトランスフェクトし、100μM濃度のBT化合物(構造は上述した通り)で処理した。上部パネルは、RET抗体で免疫沈降させた膜(IP:抗RET)を溶解してリン酸化チロシン抗体でプロービングしたもの(WB:pY)を表す。化合物BT13はGFRα3を介してRETを強力に活性化した。化合物BT16、BT17およびBT18はGFRα3/RETに対する弱いアゴニストのようだ。下部パネルは、同じ膜を抗RET抗体でプロービングした結果を示す(WB:抗RET)。GFRα3トランスフェクト細胞において、30μlのDMSOを負の対照として用いた。GFRα3トランスフェクト細胞において、ARTN(100ng/ml)を正の対照として用いた。
【図7】ベヒクル、GDNF(10μg)または記載した濃度(0.2〜5μg)のGDNFミメティックの線条体注入による、アンフェタミン誘導回転運動に対する効果。ラットに対して、線条体内の6−OHDA(28μg)による障害の誘導から3週間後に、ベヒクル、GDNFまたは上述した構造のBT GDNFミメティック化合物を線条体に投与した。アンフェタミン誘導行動を障害から6週間後に測定した。
【図8】記載したBT化合物の存在下における、マウス繊維芽細胞の細胞成長。BT10、BT13、BT16、BT17、BT18およびBT19の構造は、上述した通りである。結果は、DMSO対照(生存率は100±5%と仮定)に対する生細胞数のパーセントで表した。全ての化合物が、50μMの濃度で中庸な細胞成長阻害を示した(但し、BT10は、2μMを超える濃度で有意な毒性を示した)。
【図9】アンフェタミン誘導回転運動に対する、ベヒクル、GDNF(10μg)またはGDNFミメティック(投与量は記載の通り)の線条体注入の影響。化合物の構造は上述した通りである。
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書においては、神経学的疾患と非神経学的な疾患の両方を含む、対象の有する疾患を治療するための化合物および方法を開示する。本発明の方法は、GFRα受容体分子に対して結合特異性および/または調節特異性を示す化合物(「GDNFミメティック化合物」)または下流のRETシグナル伝達に対して結合特異性および/または調節特異性を示す化合物(「RETシグナル伝達活性化化合物」)の有効量を対象に投与することを包含する。本発明のいくつかのバリエーションにおいては、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤、アジュバントまたは担体を更に含有する組成物として、上記化合物を投与する。
【0021】
本明細書の開示においては、以下の治療学的な目標のいずれかが達成された場合に、治療は成功したものとみなす。病気の症状の改善、緩和または消失;病気またはその症状の進行の遅延または停止;変質または障害の改善、部分的治癒または完治;対象の部分的または完全な回復;および/または本発明よりも高い治療費、困難な投与または許容度の低い副作用を伴う他の標準治療法を低減または排除しながらも達成される、同等の生活の質。
【0022】
疾患は、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レット症候群、てんかん、パーキンソン氏病、脊髄損傷、卒中、低酸素症、虚血、脳の損傷、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、神経移植の合併症、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、HIV認知症、末梢神経の損傷、聴力損失、うつ病、肥満症、メタボリック症候群、疼痛、癌、またはGFRα/RET発現細胞の変性または機能不全を伴う他の病態である。
【0023】
対象は、動物またはヒトである。動物は哺乳動物である。
【0024】
更に本明細書においては、神経系細胞の生存を容易にするか、神経機能を亢進するための方法であって、GFRα1受容体分子に対して結合特異性および/または活性調節特異性を示す化合物で神経系細胞を処理することを包含する方法を開示する。更に、下流のRETシグナル伝達を誘導する化合物も開示する。
【0025】
化合物は小分子である。いくつかの態様においては、GDNFミメティック化合物は、下記式(I)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0026】
【化20】

【0027】
(式中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種であり、そしてR4は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アルケニレンアリール基および水酸基からなる群より選ばれる1種である。)いくつかの態様においては、R1およびR2は、各々独立に、アルキレンアミノ基および水素原子からなる群より選ばれる1種であり、アルキレンアミノ部分のアミノ基は、更に1個または2個のアルキル基またはアルキレンアリール基(例えば、ベンジル基)で置換されていても良い。種々の態様においては、R3は塩化アルキル基またはアミノアルキル基である。特定の態様においては、R1は水素原子であり、R2はアルキレンアミノ基である。
【0028】
いくつかの態様においては、GDNFミメティック化合物は、下記式(II)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0029】
【化21】

【0030】
(式中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そしてR3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
【0031】
いくつかの態様においては、GDNFミメティック化合物は、下記式(III)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0032】
【化22】

【0033】
(式中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そしてR3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
【0034】
いくつかの態様においては、GDNFミメティック化合物は、下記式(IV)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0035】
【化23】

【0036】
(式中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そしてR3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
【0037】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(V)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0038】
【化24】

【0039】
(式中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そしてR3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
【0040】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(VI)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0041】
【化25】

【0042】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(VII)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
【化26】

【0044】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(VIII)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0045】
【化27】

【0046】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(IX)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
【化28】

【0048】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(X)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0049】
【化29】

【0050】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(XI)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0051】
【化30】

【0052】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(XII)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0053】
【化31】

【0054】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(XIII)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0055】
【化32】

【0056】
いくつかの態様においては、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(XIV)〜(XIX)のいずれかで表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0057】
【化33】

【0058】
【化34】

【0059】
【化35】

【0060】
【化36】

【0061】
【化37】

【0062】
【化38】

【0063】
種々の場合において、RETシグナル伝達活性化化合物は、下記式(XX)で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0064】
【化39】

【0065】
(式中、R1は環式または非環式のアミノ基である。)R1の具体例としては、ジアルキルアミノ基、ピペリジニル基、置換ピペリジニル基、ピペラジニル基、置換ピペラジニル基テトラヒドロイソキノリニル基および置換テトラヒドロイソキノリニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本明細書で使用する「アルキル」という用語は、炭素原子を含む直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、典型的にはメチル基、エチル基、および直鎖状または分岐状のプロピル基とブチル基である。特に断りがない限り、炭化水素基は最大20個の炭素原子を有してもよい。「アルキル」という用語には、「架橋アルキル」、即ち、C6〜C16の二環式または多環式の炭化水素基も含まれ、具体例としては、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基やデカヒドロナフチル基が挙げられる。アルキル基は、所望により、水酸基(OH)、ハロゲン、アミノ基、スルホニル基などで置換されていてもよい。「アルコキシ」基とは、酸素置換基を有するアルキル基、例えば、O−アルキル基である。
【0067】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭素原子を含有する、直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味する。特に断りがない限り、炭化水素基は最大20個の炭素原子を有してもよい。アルケニル基は、所望により、水酸基(OH)、ハロゲン原子、アミノ基、スルホニル基などで置換されていてもよい。
【0068】
本明細書で使用する「アルキレン」という用語は、定義された置換基を更に有するアルキル基を意味する。例えば、「アルキレンアリール」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基を意味し、「アルキレンアミノ」という用語は、アミノ基で置換されたアルキル基を意味する。アルキレンアミノ部分のアミノ基は、例えば、アルキル基、アルキレンアリール基、アリール基またはこれらの組み合わせによって更に置換されていてもよい。「アルケニレン」という用語は、定義された置換基を更に有するアルケニル基を意味する。
【0069】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、単環式または多環式の芳香族基、好ましくは単環式または二環式の芳香族基、例えば、フェニル基やナフチル基を意味する。特に断りがない限り、アリール基は未置換でもよいし、1個または2個以上、特に1〜4個の置換基、例えば、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ基、アミノ基、CO2H、CO2アルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基からなる群より選ばれるもので置換されていてもよい。代表的なアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、クロロフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ニトロフェニル基、2,4−メトキシクロロフェニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「アリールオキシ」基とは、酸素置換基を有するアリール基、例えば、O−アリール基である。
【0070】
本明細書で使用する「アシル」という用語は、カルボニル基、例えば、C(O)を意味する。アシル基は、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルケニルアリール基、アルコキシ基、またはアミノ基で更に置換されていてもよい。アシル基の具体例としては、アルコキシカルボニル基(例えば、C(O)−Oアルキル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、C(O)−Oアリール)、アルキレンアリールオキシカルボニル基(例えば、C(O)−Oアルキレンアリール)、カルバモイル基(例えば、C(O)−NH2)、アルキルカルバモイル基(例えば、C(O)−NH(アルキル))やジアルキルカルバモイル基(例えば、C(O)−NH(アルキル)2)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本明細書で使用する「アミノ」という用語は、窒素含有置換基であって、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキレンアリール基およびアシル基からなる群より選ばれる置換基を0個、1個または2個有するものを意味する。置換基が0個のアミノ基は−NH2である。
【0072】
本明細書で使用する「ハロゲン」または「ハロゲン原子」("halo" or "halogen")という用語は、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子または塩素原子を意味する。
【0073】
本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」という用語は、合理的な医療的判断の範囲内において、過度の毒性、炎症、アレルギー反応などを起こすことなく、ヒトおよび下等動物の組織と接触させて用いるのに適しており、且つ妥当なリスク便益比と合致する塩類を意味する。薬学的に許容される塩は、当業界では広く知られている。例えば、S. M. Berge et al.は、J. Pharmaceutical Sciences、66: 1-19 (1977)において、薬学的に許容される塩について詳細に記載している。塩類は、本発明の化合物の最終的な単離・精製の際にin situで製造するか、あるいは遊離した塩基性官能基を適切な有機酸または無機酸と反応させることで別途製造することができる。薬学的に許容される無毒性の酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸または過塩素酸などの無機酸、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、ラクトビオン酸またはマロン酸などの有機酸を用いる方法あるいはイオン交換などの当業界で使用される他の方法で製造したアミノ基の塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン硫酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、カプロン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタン硫酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、オキサロ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。更に、適切な場合には、薬学的に許容される塩には、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、炭素数が1〜6のアルキル基、スルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成した、無毒性のアンモニウム塩、四級アンモニウム塩およびアミンカチオンが含まれる。
【0074】
製剤
本明細書に開示した化合物は、その摂取、分布および/または吸収を補助するために、他の分子、分子構造または化合物の混合物、例えば、リポソーム、担体、希釈剤、受容体標的化分子、経口用製剤、経腸用製剤、局所用製剤または他の製剤と、更に混合、封入、結合またはその他の方法で関連付けてもかまわない。このような摂取、分布および/または吸収を補助する製剤の調製方法を教示する代表的な米国特許としては、次の特許が挙げられるが、これらに限定されるものではない: 米国特許第5,108,921号、米国特許第5,354,844号、米国特許第5,416,016号、米国特許第5,459,127号、米国特許第5,521,291号、米国特許第5,543,158号、米国特許第5,547,932号、米国特許第5,583,020号、米国特許第5,591,721号、米国特許第4,426,330号、米国特許第4,534,899号、米国特許第5,013,556号、米国特許第5,108,921号、米国特許第5,213,804号、米国特許第5,227,170号、米国特許第5,264,221号、米国特許第5,356,633号、米国特許第5,395,619号、米国特許第5,416,016号、米国特許第5,417,978号、米国特許第5,462,854号、米国特許第5,469,854号、米国特許第5,512,295号、米国特許第5,527,528号、米国特許第5,534,259号、米国特許第5,543,152号、米国特許第5,556,948号、米国特許第5,580,575号および米国特許第5,595,756号。ここで参照したことをもってこれら米国特許は本願に組み込まれたものとする。
【0075】
更に本明細書においては、個々に記載した化合物を含む医薬組成物および医薬製剤を開示する。医薬組成物は、局所治療または全身治療のいずれを目的とするか、そして治療を施す面積に応じて、数々の方法で投与することができる。投与には、局所投与(点眼、および経膣送達や経腸送達を含む粘膜への投与も含まれる)、経肺投与(例えば、噴霧吸入器による投与、気管内投与、鼻腔内投与、表皮投与および経皮投与を含む、粉体またはエアゾールの吸入または吹送)、経口投与、または非経口投与が含まれる。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内の注射または点滴、あるいは頭蓋内、例えば、髄腔内または脳室内への投与が含まれる。局所投与用の医薬組成物および医薬製剤には、経皮吸収用貼付剤、軟膏、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、座薬、スプレー剤、液剤および粉剤が含まれる。公知の薬学的な担体、水性基剤、粉末基剤、油性基剤、増粘剤などの使用は必須でもよいし、好ましくてもよい。
【0076】
医薬製剤(利便性のために単位剤型で提供されてもよい)は、製薬工業界においてよく知られた公知技術に基づいて製造することができる。このような技術には、活性成分を薬学的な担体または賦形剤と接触させる工程が含まれる。一般的に製剤は、活性成分を液状担体、細かく粉砕した固体担体、またはその両方と均一且つ密接に関連付け、そして、必要であれば、製品の形状を整えることによって製造する。
【0077】
組成物は、あり得る様々な剤型のいずれにでも処方することが可能であり、剤型としては、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液状シロップ剤、ソフトゲル剤、座薬および注腸剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。組成物は、水系溶媒、非水系溶媒または混合溶媒を用いた懸濁液として処方することもできる。水系懸濁液は懸濁液の粘性を高める物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを更に含んでいてもよい。懸濁液は安定化剤を更に含んでいてもよい。
【0078】
医薬組成物としては、溶液製剤、乳化製剤、泡状製剤およびリポソーム含有製剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物および医薬製剤は、1種または複数種の浸透促進剤、担体、賦形剤、希釈剤あるいは他の活性成分または不活性成分を包含してもよい。
【0079】
乳化製剤は、典型的には、ある液体が通常直径0.1μmを超える大きさの液滴として他の液体に分散した不均質系である。乳化製剤は、分散相と、水相か油相のいずれかに溶液として存在するか、それ自体からなる別の相として存在する活性薬剤の他に、付加成分を含有してもよい。マイクロエマルジョンも、本明細書で開示する態様に含まれる。乳化製剤およびその用途は当業界で広く知られており、米国特許第6,287,860号に更に詳細に記載されている。上記米国特許は、本参照をもってその内容の全てが本願に組み込まれたものとする。
【0080】
製剤には、リポソーム製剤も含まれる。本明細書において「リポソーム」という用語は、球状の二重膜(単数または複数)を形成する両親媒性脂質からなるベヒクルを意味する。リポソームは、親油性材料によって形成された膜と、送達すべき組成物を含有する水性の内部とを有する、単層膜状または多層膜状のベヒクルである。「リポソーム」の定義には、更に「立体安定型」リポソームも含まれ、本明細書においてこの「立体安定型」リポソームは、1種または複数種の特殊化脂質を包含するリポソームを意味し、特殊化脂質とは、リポソームに取り込まれると、特殊化脂質を含まないリポソームと比べて、循環存続期間が延長される脂質である。立体安定型リポソームの例としては、リポソームのベヒクル形成性脂質部位の一部が1種または複数種の糖脂質を包含するものや、1種または複数種の親水性ポリマー(例えばポリエチレングリコール(PEG)部分など)によって誘導体化されたものが挙げられる。リポソームおよびその用途は、米国特許第6,287,860号に更に詳細に記載されており、本参照をもってその内容の全てが本願に組み込まれたものとする。
【0081】
本明細書に開示した医薬製剤および医薬組成物は、界面活性剤を含んでもよい。薬用製品、製剤および乳化剤における界面活性剤の使用は、当業界で広く知られている。界面活性剤およびその用途は、米国特許第6,287,860号に更に詳細に記載されており、本参照をもってその内容の全てが本願に組み込まれたものとする。
【0082】
1つの態様においては、本明細書で開示する化合物の効率的な送達を実行するための1種または複数種の浸透促進剤を包含する製剤を開示する。浸透促進剤は、非親油性薬剤の細胞膜を介した拡散を補助するだけでなく、親油性薬剤の透過性も促進する。浸透促進剤は5つの大まかな分類、即ち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および非キレート化非界面活性剤のいずれかに属するものとして分類することができる。浸透促進剤およびその用途は、米国特許第6,287,860号に更に詳細に記載されており、本参照をもってその内容の全てが本願に組み込まれたものとする。
【0083】
当業者は、製剤はその意図した用途、即ち、投与経路に基づいて、慣例的に設計されていることを認識するであろう。
【0084】
局所投与用の好ましい製剤としては、本発明の化合物と、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤などの局所送達用薬剤との混合物が挙げられる。好ましい脂質およびリポソームとしては、中性物質(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性物質(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))、およびカチオン性物質(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル(DOTAP)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOTMA))が挙げられる。
【0085】
経口投与用の組成物および製剤には、粉剤または顆粒剤、ミクロ粒子、ナノ粒子、水系媒体または非水系媒体を用いた溶液または懸濁液、カプセル剤、ゲルカプセル剤、分包剤、錠剤またはミニ錠剤が含まれる。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散補助剤またはバインダーの使用が望ましい場合もあろう。好ましい経口製剤は、少なくとも1種の浸透促進剤、界面活性剤およびキレート剤と共に化合物を投与するものである。好ましい界面活性剤としては、脂肪酸および/またはそのエステルまたは塩、胆汁酸および/またはその塩が挙げられる。好ましい胆汁酸/胆汁酸塩、脂肪酸およびそれらの用途は、米国特許第6,287,860号に更に詳細に記載されており、本参照をもってその内容の全てが本願に組み込まれたものとする。複数種の浸透促進剤の組み合わせ、例えば、脂肪酸/脂肪酸塩と胆汁酸/胆汁酸塩との組み合わせも好ましい。特に好ましい組み合わせは、ラウリン酸のナトリウム塩、カプリン酸およびUDCAの組み合わせである。更なる浸透促進剤としては、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明の化合物は、噴霧乾燥した粒子を含む顆粒状の薬剤、あるいはミクロ粒子またはナノ粒子となるように形成した複合体を経口的に送達することができる。複合化剤およびその用途は、米国特許第6,287,860号に更に詳細に記載されており、本参照をもってその内容の全てが本願に組み込まれたものとする。経口製剤およびその製造方法は、米国特許出願第09/108,673号、米国特許出願第09/315,298号および米国特許出願第10/071,822号のそれぞれに更に詳細に記載されており、本参照をもってそれらの内容の全てが本願に組み込まれたものとする。
【0086】
非経口投与用、髄腔内投与用または脳室内投与用の組成物および製剤は、滅菌水性溶液を含んでいてもよく、このような溶液は更に緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤を含んでいてもよい。他の適切な添加剤としては、浸透促進剤、担体化合物および他の薬学的に許容される担体または賦形剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
必要であれば、血液脳関門(BBB)の浸透を促進するために、脳に薬剤を送達するための様々な新規な手法を用いて活性化合物を投与することができる。BBBを透過しての輸送を増加するために当業界で知られている種々の手法を本発明の化合物に適合させることにより、BBBを透過しての本発明のモジュレーターの輸送を促進することができる(このような手法に関する説明としては、例えば、Pardridge. Trends in Biotechnol. 12:239-245 (1994)、Van Bree et al. Pharm. World Sci. 15:2-9 (1993)およびPardridge et al. Pharmacol. Toxicol. 71:3-10 (1992)を参照)。1つの手法においては、膜透過輸送能を強化したプロドラッグを形成するように、化合物を化学的に修飾する。適切な化学修飾としては、アミド結合またはエステル結合を介した化合物と脂肪酸の共有結合(例えば、米国特許第4,933,324号および国際公開公報WO 89/07938、米国特許第5,284,876号、Toth et al. J. Drug Target. 2:217-239 (1994)、およびShashoua et al. J. Med. Chem. 27:659-664 (1984)を参照)、および化合物の糖化(例えば、米国特許第5,260,308号を参照)が挙げられる。更に、N−アシルアミノ酸誘導体をモジュレーターにおいて用いて「脂質」プロドラッグを形成することもできる(例えば、米国特許第5,112,863号を参照)。
【0088】
BBBを透過しての輸送を促進するための別の手法としては、ペプチド性ミメティック化合物またはペプチドミメティック化合物を第2ペプチドまたは第2タンパク質に結合してキメラタンパク質を形成する方法が挙げられる。この方法において第2ペプチドまたは第2タンパク質は、吸収剤仲介型または受容体仲介型のトランスサイトーシスによりBBBを通過する。よって、本明細書に開示する化合物をこのような第2ペプチドまたは第2タンパク質とカップリングすることによって、得られたキメラタンパク質は、BBBを透過して輸送される。第2ペプチドまたは第2タンパク質は、脳毛細血管内皮細胞受容体リガンドのリガンドでもよい。例えば、好ましいリガンドは、脳毛細血管内皮細胞上のトランスフェリン受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体である(例えば、米国特許第5,182,107号と米国特許第5,154,924号、および国際公開公報WO93/10819と国際公開公報WO95/02421を参照)。BBBを透過しての輸送を仲介することのできる他の適切なペプチドまたはタンパク質としては、ヒストン(例えば、米国特許第4,902,505号を参照)、およびビオチン、葉酸塩、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ピリドキサールおよびアスコルビン酸などのリガンド(例えば、米国特許第5,416,016号と米国特許第5,108,921号を参照)が挙げられる。更に。グルコーストランスポーター GLUT−1は、糖ペプチド([Met5]エンケファリンのL−セリニル−β−D−グルコシド類似体)をBBB透過して輸送するという報告がある(Polt et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7114-1778 (1994))。このような糖ペプチドに化合物をカップリングすることによって、GLUT−1グルコーストランスポーターをモジュレーターの標的とすることができる。例えば、修飾基Aic(未修飾のアミノ基を有するコール酸誘導体である3−(O−アミノエチル−イソ)−コリル基)によって未修飾のアミンが修飾された化合物を、標準的な方法でAicのアミノ基を介して糖ペプチドにカップリングすることができる。キメラタンパク質は、組み換えDNA法(例えば、融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子の形成)、またはモジュレーターを第2ペプチドまたは第2タンパク質に化学架橋することによってキメラタンパク質を形成する方法により作製することができる。数々の化学架橋剤が当業界で知られている(例えば、イリノイ州、ロックフォードのPierce社より市販されている)。架橋剤としては、モジュレーターの第2ペプチドまたは第2タンパク質へのカップリングを高収率で行うことができ、且つその後にリンカーの開裂により生物活性モジュレーターを放出できるものを選択することができる。例えば、ビオチン−アビジンに基づくリンカーシステムを使用することができる。
【0089】
BBBを透過しての輸送を促進するための更なる手法においては、BBBを透過しての輸送を仲介する送達ベクターに化合物を封入する。例えば、化合物を、正の電荷を帯びた単層膜状リポソームなどのリポソーム(例えば、国際公開公報WO 88/07851および国際公開公報WO 88/07852を参照)またはポリマー製マイクロスフィア(例えば、米国特許第5,413,797号、米国特許第5,271,961号および米国特許第5,019,400号を参照)に封入することができる。更に送達ベクターは、BBBを透過して輸送される対象となるように修飾することもできる。例えば、BBBを透過して能動的に輸送される分子を用いて、またはトランスフェリン受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体などの脳内皮細胞受容体のリガンド(例えば、国際公開公報WO 91/04014および国際公開公報WO 94/02178を参照)を用いて、送達ベクター(例えば、リポソーム)に対して共有結合を介した修飾を行うことができる。
【0090】
BBBを透過してのモジュレーターの輸送を促進するための別の手法においては、BBBの透過性を増加する機能を有する他の薬剤(透過処理剤)と共に化合物を投与する。このようなBBB「透過処理剤」の具体例としては、ブラジキニンとブラジキニンアゴニスト(例えば、米国特許第5,112,596号を参照)および米国特許第5,268,164号に開示されたペプチド性化合物が挙げられる。
【0091】
投薬法
製剤および投与法(投薬法)の選択は、例えば、容量反応、毒性および薬物動態学的研究に基づいて行われる。投薬は、治療すべき病体の重症度および応答性に依存し、治療期間は数日から数ヶ月であり、治療効果が見られるまで、あるいは病態または病状の減少が達成されるまで継続される。慢性的な病態または症状であって、病態または症状の減少は見込まれるが、完治は不可能な場合、投薬を無期限的に継続することもある。最適な投薬スケジュールは、患者の体内における薬剤蓄積量の測定値から計算することができる。当業者は容易に最適投与量、投与方法および繰り返し頻度を決定することができる。最適投与量は、個別のオリゴヌクレオチドの相対的有効性によって変化し、通常、in vitroおよびin vivoの動物モデルにおいて効果が見られるEC50に基づいて推定することができる。通常の投与量は、体重1kg当たり0.01μg〜100gであり、1日、1週間、1月または1年に1回または複数回投与するか、あるいは2〜20年に1回投与することができる。当業者は、測定した滞留時間および体液や組織における薬剤濃度から投薬の繰り返し頻度を推定することができる。患者は、成功した治療に続き、病態の再発を防止するための維持療法を受けることが望ましいこともあり、この場合、維持量、即ち、体重1kg当たり0.01μg〜100gの範囲内のオリゴヌクレオチドを、1日1回または複数回から20年に1回までの範囲内で投与する。
【0092】
アッセイ法
GFRα受容体分子または下流RETシグナル伝達に対する結合用および/または修飾用の化合物(例えば、GDNFミメティック)のアッセイを行うための方法も開示する。アッセイによって、化合物のハイスループット解析を提供することができる。例えば、GFRα1を発現する細胞を目的化合物と接触させ、そして細胞成長の増加を指標として目的化合物がGDNFミメティックであるか否かを判定する。この際、具体的には、ミメティックアッセイの細胞成長を、化合物を使用しない対照実験のバックグラウンド値と比較する。場合によっては、細胞はGFRα1と共にルシフェラーゼを発現する細胞であり、細胞成長の指標はルシフェラーゼである。細胞成長は、細胞−化合物混合物の発光を計測することによって測定することができる。
【0093】
更に、細胞が、他の目的受容体、例えば、GFRα2、GFRα3またはGFRα4を天然にまたは組み換えによって発現するアッセイも考えられる。本発明のいくつかのバリエーションにおいては、GFRα1、GFRα2、GFRα3およびGFRα4からなる群より選ばれる1種の受容体に対して特異的な化合物を選択する。他の場合には、2種、3種または全4種の受容体を調節する化合物を選択する。
【0094】
本発明のアッセイは、正の対照、例えば、目的受容体に対する天然のリガンドを用いて実施することもできる。こうすることによって、GFRα1、GFRα2、GFRα3および/またはGFRα4のリガンド仲介性の活性化を阻害する受容体結合化合物を選択することができる。好ましいリガンドと受容体の組み合わせを図1に示した。この図には、特定のリガンド/受容体相互作用に対して模倣、調節または干渉する化合物の代表的な適応症も示した。
【0095】
本明細書に開示した別の方法は、化合物をGDNFミメティックとして評価するための二重抗体サンドイッチELISAアッセイを包含し、この方法は、いくつかの態様において、ミメティックの活性に対する定量的な測定を提供することができる。RETおよびGFRα1(または他の目的受容体の1種)を発現する細胞を目的の化合物と接触させ、次に抗RET抗体と接触させた後に、抗pY抗体(マウス抗pY抗体など)と接触させて二重抗体サンドイッチを形成する。二重抗体サンドイッチの形成は、化合物がGDNFミメティックであることの指標となる。場合によっては、サンドイッチの検出は間接的な検出でもよく、例えば、抗pY抗体がマウス抗体の場合、サンドイッチを2次抗マウスHRP結合抗体および化学発光試薬(ECL試薬など)と接触させ、得られる発光を測定する。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本願で開示した発明の実例を提供するために本願に含めたものである。本明細書の開示および当業者の一般的な技術水準を考慮すると、当業者は以下の実施例が単なる例示を意図したものであり、本願で開示した発明の精神および範囲から逸脱することなく、数々の変化、修飾および改変が採用可能であることを理解するであろう。
【0097】
方法
細胞系。RET癌原遺伝子で安定にトランスフェクトしたMG87RETマウス繊維芽細胞(Leppanen et al., 2004)。N18ラット/マウス神経膠腫/神経芽腫細胞はATCCより入手した。
【0098】
動物。上頸神経節はP0−P2ウイスターラットから単離した。実験動物の使用は、ヘルシンキ大学動物実験委員会の承認および自治体理事会(County Administrative Board)の主席獣医官の許可(HY 55−06)の下に行った。
【0099】
タンパク質。GDNFとARTNは、PeproTech Ltdより入手した。NGFはPromegaから購入した。全てのGFLの濃度を、BSAを標準としたmicroBCAキット(Pierce製)で確認した。
【0100】
プラスミド。pCDNA3(Invitrogen製)にサブクローニングした、フラッグをタグとして付した全長ラットGFRα1 cDNA(Leppanen et al., 2004)。pCDNA6(Invitrogen製)にサブクローニングした、全長ヒトGFRα1 cDNA(Sidorova et al.、未出版)。全長ヒトGFRα3 cDNA(Wang et al., 2006)。pCR3.1(Invitrogen製)内の全長ヒトRET(長鎖イソフォーム)(Runeberg-Roos et al., 2007)。MAPK活性化検出システム(Baloh et al., 2000)およびPathDetect Elk-1 (Stratagene製)は、2種のプラスミドを含んでいる。第1のプラスミドは、Elk−1の活性化ドメインおよび酵母GAL4タンパク質のDNA結合ドメイン(Gal4−Elk1)からなる、MAPK経路特異的な融合トランス活性化因子を恒常的に発現する。もう一方のプラスミドであるGal4−Lucは、酵母GAL4結合配列を含有する合成プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子を保有する。
【0101】
安定な細胞系の作製。MG87RETマウス繊維芽細胞を35mmのディッシュに植え付け、細胞のトランスフェクションを4μgのG4−Luc、Gal4−Elk(Baloh et al., 2000)およびGFRα1発現プラスミド(“αLUC”細胞)またはネオマイシン耐性遺伝子を含む空のベクター(“NOα”細胞)によって行った。トランスフェクションは、DNA送達用のリポフェクタミン2000(Invitrogen製)を、製造者の説明書に従って、4:1:1で使用して行った。次の日に細胞をトリプシン処理に付し、低密度で10cmの組織培養用ディッシュに植えつけた。安定な形質転換細胞を、500〜750μg/mlのジェネティシン(Invitrogen製)の存在下で選択した。確立された細胞系は、10% ウシ胎仔血清(FBS)、100μg/ml ノルモシン(Invivogen製)、2μg/ml ピューロマイシン、500μg/ml ジェネティシンおよび15mM HEPESを含むDMEM、pH7.2で維持した。Pathdetect Elk-1 システムおよびヒトGFRα1発現プラスミド保有細胞(“Strat−Luc”細胞)または空ベクター保有細胞(対照細胞系“NOStratis”)を選択し、10% FBS、100μg/ml ノルモシン(Invivogen製)、2μg/ml ピューロマイシン、500μg/ml G418、2μg/ml ブラスチシジンSおよび15mM HEPESを含むDMEM、pH7.2で維持した。
【0102】
レポーター遺伝子のルシフェラーゼ活性によるアッセイを用いた、GDNFミメティックの検出
アッセイ開始の1日前に、96穴プレートに細胞密度がウェル当たり20,000細胞となるように、10% FBS、100μg/ml ノルモシン、2μg/ml ピューロマイシン、500μg/ml G418および15mM HEPESを含むDMEM、pH7.2に細胞を植え付けた。次の日には、10% FBSと100μg/ml ノルモシンを含むDMEMを用いて、終濃度が100ng/mlとなるように各神経栄養因子をウェルに添加した。細胞に24時間ルシフェラーゼを産生させ、その後、20μlの1×培養細胞溶解試薬(Cell culture lysis reagent)(Promega製)を用いて溶解し、更に1回の凍結融解を行うことで、細胞溶解を完全なものとした。次に、黒色の96穴イソプレート(PerkinElmer製)のウェル内で、5μlの細胞溶解物を(氷上で)20μlのルシフェラーゼアッセイ基質(Promega製)と混合した。発光は、MicroBeta 2 カウンター(PerkinElmer製)で2回計測した。2回目の計測結果を使用した。播種細胞密度を最適化するために、2,000〜50,000細胞/ウェルをアッセイの前日に播種し、溶液中のGDNFによって刺激された細胞の応答を推定するために、播種前に終濃度が10〜100ng/mlとなるまでGDNFを細胞懸濁液に添加し、その後、細胞を細胞密度が20,000細胞/ウェルとなるように96穴プレートに播種し、24時間静置してルシフェラーゼを産生させた。容量反応曲線用には、GFLを終濃度が5〜200ng/mlとなるように添加した。ルシフェラーゼ産生に必要な最適時間を決定するために、細胞をGDNFと共に培養液中に4〜48時間放置した。短期のMAPK活性化を研究するために、αLUC細胞を100ng/mlのGDNFで0.5〜60分間処理し、増殖培地で1回洗浄し、新鮮な増殖培地中に24時間静置してルシフェラーゼを産生させた。データはM±mで表し、Mは4回の平均値であり、mは標準偏差である。検出結果は図2に示した。研究した化合物には以下のものが含まれる。
【0103】
下記式で表される構造を有する化合物299B5。
【化40】

【0104】
下記式で表される構造を有する化合物290A11。
【化41】

【0105】
下記式で表される構造を有する化合物319H6。
【化42】

【0106】
そして、下記式で表される構造を有する化合物375F4。
【化43】

【0107】
RET−ELISAアッセイを用いた、GDNFミメティックの検出
GDNFまたはそのミメティックを用いた刺激を行った後、細胞を溶解し、固相免疫沈降法と続くリン酸化チロシン検出のための抗RET抗体を予め吸着させた96穴プレートに溶解物を移動した。 リン酸化RET検出用の96穴プレート(OptiPlate 96 F HB、黒色、Wallac製)の作製: 1μg/mlのヤギ抗RET抗体(Santa Cruz製)をPBSで希釈した。75μl/ウェルの希釈した抗体を添加し、プレートを封止し、+4℃で1晩インキュベートした。その後、200μl/ウェルのPBSで3回洗浄し、ブロッキング溶液(5%BSAのTBS溶液)を用いて室温で2時間のブロッキングを行い、溶解バッファー(10mlのTBS(バッファー)当たり、1% Triton X-100、1% NP−40、0.25% デオキシコール酸、10% グリセロール、1mM Na3VO4、1mM EDTAおよび完全プロテアーゼ阻害試薬(Complete protease inhibitor)(Roche製)1錠を含む)で1回洗浄した。 抗原の結合およびシグナルの検出: 刺激した細胞(目的リガンド5〜15分間)を氷上に置き、1mMのバナジウム酸ナトリウムを添加した氷冷PBSで1回洗浄した。PBSを除去した後、細胞を100〜200μlの氷上の溶解バッファー中、+4℃において少なくとも20分間の振盪下で溶解させた。100μl/ウェルの溶解物を抗RET被覆96穴プレートに加え、プレートを封止し、+4℃の水平シェイカー上で1.5〜2時間インキュベートした。次に200μl/ウェルの洗浄バッファー(1% Triton X-100と2% グリセロールを含むTBS)で3回洗浄した。結合バッファー(1% Triton X-100、2% グリセロールと2% BSAを含むTBS)で1:1000に希釈した抗pY抗体(クローン4G10、Upstate製)を添加し(100μl/ウェル)、そして室温で1〜1.5時間インキュベートした。その後、200μl/ウェルの洗浄バッファーで3回洗浄した。結合バッファーで1:3000に希釈した二次抗マウスHRP結合抗体(Dako製)を100μl/ウェル添加した。室温で30〜40分間インキュベートし、200μl/ウェルの洗浄バッファーで3〜4回洗浄した。最後に、事前に混合し、室温に暖めておいたECL試薬100μl/ウェルを添加した。暗黒(ルミノメーター内)で1〜2分間インキュベートした後、MicroBetaルミノメーターで計測した。検出結果は図3に示す。
【0108】
化合物219902は、下記式で表される構造を有する。
【化44】

【0109】
そして、化合物74609は下記式で表される構造を有する。
【化45】

【0110】
免疫沈降法およびウエスタンブロッティングによる、RETリン酸化アッセイを用いたGDNFミメティックの検出
αLUC細胞およびNOα細胞をそれぞれ35mmの組織培養用ディッシュに植えつけ、無血清DMEMで4時間にわたり飢餓状態とし、500ng/mlのPSPNまたは100ng/mlのGDNF(正の対照)で15分間刺激した。その後、細胞を、1mM Na3VO4を含有する氷冷PBSで1回洗浄し、1ml/ウェルのRIPA修飾バッファー(150mM NaCl、1mM EDTA、1% NP−40、1% TX−100、10% グリセロール、EDTA無添加プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche製)、1mM Na3VO4、2.5mg/ml デオキシコール酸ナトリウムおよび1mM PMSFを含有する50mMのTris−HCl、pH7.4)中、氷上で溶解した。RETを抗RET C−20抗体(Santa-Cruz Biotechnology, Inc.製)で免疫沈降させた。沈殿したタンパク質を7.5%のSDS−PAGEで展開し、ニトロセルロースメンブランに転写した。10% 無脂肪乾燥乳を含むTBS−Tを用い、メンブランを室温で15分間のブロッキングに付し、3% 無脂肪乾燥乳を含むTBS−Tで1:1000に希釈した抗リン酸化チロシン抗体(クローン4G10、Upstate Biotechnology製)を用い、室温で2時間プロービングした。メンブランをTBS−Tで5分間の洗浄に3回付し、3% 無脂肪乾燥乳を含むTBS−Tを用いて希釈したHRP結合二次抗マウス抗体(DAKO製)の1:3000溶液を用い、室温で45分間インキュベートした。メンブランをTBS−Tで10分間の洗浄に5回付した。LAS3000画像化プログラムを用い、染色されたバンドをECL試薬(Pierce製)で可視化した(図4、上部パネル)。タンパク質が等量ずつロードされていることを確認するために、ストリッピングした後、抗RET C−20抗体(1:500、Santa-Cruz Biotechnology、Inc.製)でプロービングした。C−20の検出には、HRPと結合した二次抗ヤギ抗体(1:1500、DAKO製)を使用した。検出結果は図4の下部パネルに示す。
【0111】
レポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性によるアッセイを用いた、新規(BT)GDNFミメティックおよびARTNミメティックの容量反応
アッセイ開始の1日前に、96穴プレート(または384穴プレート)にウェル当たりの細胞密度が20,000細胞(あるいは384穴プレートの場合は5,000細胞)となるように、10% FBS、100μg/ml ノルモシン、2μg/ml ピューロマイシン、500μg/ml G418および15mM HEPESを含むDMEM、pH7.2に細胞を植え付けた。次の日に、終濃度が1〜50μMとなるように化合物を添加した。化合物の構造は、上述した図5の説明に示した。細胞に24時間ルシフェラーゼを産生させ、その後、20μlの1×培養細胞溶解試薬(Cell culture lysis reagent)(Promega製)を用いて溶解し、更に1回の凍結融解を行うことで、細胞溶解を完全なものとした。次に、黒色のイソプレート(PerkinElmer製)のウェル内で、5μlの細胞溶解物を(氷上で)20μlのルシフェラーゼアッセイ基質(Promega製)と混合した。発光を、MicroBeta 2 カウンター(PerkinElmer製)で2回計測した。データは誘導倍率(fold induction)として示し、対応濃度のDMSOを参照とした。データは図5を参照。
【0112】
免疫沈降法およびウエスタンブロッティングによる、RETリン酸化アッセイにおける新規(BT)GDNFミメティック/ARTNミメティックの活性
実験の前日に、MG87RET細胞を35mmの組織培養用ディッシュに植えつけた。細胞をGFRα1、GFRα3またはGFPをコードするベクターでトランスフェクトした。実験の当日には、無血清DMEMで4時間にわたり飢餓状態とし、濃度が100μMの研究対象化合物(構造は、上述した図6の説明に示した)または100ng/mlのGDNFまたはARTN(正の対照)で細胞を15分間刺激した。その後、細胞を、1mM Na3VO4を含有する氷冷PBSで1回洗浄し、1ml/ウェルのRIPA修飾バッファー(150mM NaCl、1mM EDTA、1% NP−40、1% TX−100、10% グリセロール、EDTA無添加プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche製)、1mM Na3VO4、2.5mg/ml デオキシコール酸ナトリウムおよび1mM PMSFを含有する50mMのTris−HCl、pH7.4)中、氷上で溶解した。RETを抗RET C−20抗体(Santa-Cruz Biotechnology, Inc.製)で免疫沈降させた。沈殿したタンパク質を7.5%のSDS−PAGEで展開し、ニトロセルロースメンブランに転写した。10% 無脂肪乾燥乳を含むTBS−Tを用い、メンブランを室温で15分間のブロッキングに付し、3% 無脂肪乾燥乳を含むTBS−Tで1:1000に希釈した抗リン酸化チロシン抗体(クローン4G10、Upstate Biotechnology製)を用い、室温で2時間プロービングした。メンブランをTBS−Tで5分の洗浄に3回付し、3% 無脂肪乾燥乳を含むTBS−Tを用いて希釈したHRP結合二次抗マウス抗体(DAKO製)の1:3000溶液を用い、室温で45分間インキュベートした。メンブランをTBS−Tで10分の洗浄に5回付した。LAS3000画像化プログラムを用い、染色されたバンドをECL試薬(Pierce製)で可視化した。タンパク質が等量ずつロードされていることを確認するために、ストリッピングした後、抗RET C−20抗体(1:500、Santa-Cruz Biotechnology、Inc.製)でプロービングした。C−20の検出には、HRPと結合した二次抗ヤギ抗体(1:1500、DAKO製)を使用した。検出結果を図6に示す。
【0113】
パーキンソン氏病の動物モデル
全てのラットに対し、活性化合物(即ち、GFLミメティックまたはRETシグナル伝達活性化因子)の腹腔注射(i.p.)および/または2回の定位マイクロインフュージョンを施した。具体的には、1回目には、ベヒクル(4μl)、活性化合物(1〜100mg/kg)またはGDNF(10μg)のいずれかを注入し、6時間後にはそれぞれの動物に6−OHDA(8μg)を左の背側線条体(left dorsal striatum)の同じ部位に投与した。前頂と硬膜に対する左線条体における座標は、PaxinosとWatsonのアトラス(Paxinos and Watson, 1997, The rat brain in stereotaxic coordinates (ラット脳の定位座標), Academic press, San Diego)によるとA/P +1.0、L/M +2.7、D/V −4だった。この研究は、以下のグループからなるものである: 線条体 PBS+6−OHDA、線条体 GDNF+6−OHDA、線条体 GFLミメティック+6−OHDA、および線条体 PBS+6−OHDA+i.p.GFLミメティック。
【0114】
回転行動: 障害から2週間後と4週間後に行動試験を実施した。D−アンフェタミン(フィンランド国、ヘルシンキ、University Pharmacy製)の投与(2.5mg/kgを腹腔注射)の30分前には、ラットを試験チャンバーに慣らしておいた。完全な(360°の)同側性回転および対側性回転の数を2時間にわたり記録した。障害側に対する累計同側性回転数は、右回転の数から左回転の数を引くことで算出した。
【0115】
免疫組織化学: 障害から4週間後には、過剰量のペントバルビタールナトリウム(90mg/kgを腹腔注射)(フィンランド国、Orion Pharma製)でラットを麻酔し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、続いて4% パラホルムアルデヒドを含む0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)による心臓内還流を行った。脳を取り出し、4時間の固定後処理を行い、20% ショ糖含有リン酸ナトリウムバッファー中、4℃で保存した。40μm厚の連続した環状断凍結切片をスライド式ミクロトームで切り出した。6セットの切片を凍結保護溶液(0.5M PB、30% グリセロールと30% エチレングリコール)に回収し、免疫組織化学的処理を行うまで−20℃で保存した。浮動性切片をTH−免疫組織化学のために処理した。PBSで3回すすいだ後、3% H22/10% メタノール/PBS中で内因性ペルオキシダーゼ活性の抑制処理を5分間行った。PBSで3回すすいだ後、切片を正常ウマ血清(NHS)/0.3% Triton X-100 を含むPBSとプレインキュベートすることで、非特異的な染色をブロックした。その後、切片を、1:2000に希釈したビオチン化マウス−抗TH抗体(カリフォルニア州、テメクラ、Chemicon製)と共に室温で一晩インキュベートした。続いて、切片を、1:200に希釈したビオチン化ウマ抗マウス抗体(BA2001、Vector製)とのインキュベーション、およびElite ABC Vectastainキット(Vector Laboratories製)を用いたアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体とのインキュベーションに付した。DABを発色団として使用し、反応を可視化した。
【0116】
形態解析/SN細胞数: 光学フラクショネーター(Optical fractionator)法を解像原理と公平な計測規則(West et al.,1991, Anat. Rec. 231, 482-497、Mouton et al. 2002, Brain Res. 956, 30-35)と組み合わせて使用する、公平なステレオロジーによる細胞計数法で、黒質緻密部(SNpc)のTH陽性細胞数を計測した。SNpcの全体を、Olympus BX51顕微鏡に装着したStereo Investigator(ドイツ国、MicroBrightField製)のプラットフォーム上で解析した。容量解析のために、それぞれの動物について、内側終止核(medial terminal nucleus)(MTN)が存在する(A/P軸は−5.3)SNpcの中央部から3つの切片を選択した。光学フラクショネーターによる推定は、個別の脳サンプルに関する計数誤差がx%未満となるように最適化した。それぞれの参照空間は低倍率(4×)で輪郭をとり、細胞は高倍率(60×、油浸)の対物レンズを用いて計数した。
【0117】
オスのウイスターラットでは、線条体および/または腹腔内への1回の活性化合物の注射が黒質線条体路におけるドーパミン作動性神経の6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA、8μg)誘導変性を防止した。麻酔下でラットに2回の定位マイクロインジェクションを施した。具体的には、1回目には、ベヒクル(PBS、4μl、対照群)または活性化合物を投与し、6時間後にはそれぞれの動物に6−OHDA(8μg)を左背側線条体(left dorsal striatum)の同じ部位に投与した。前頂と硬膜に対する左線条体における座標は、PaxinosとWatsonのアトラス(Paxinos and Watson, 1997, The rat brain in stereotaxic coordinates(ラット脳の定位座標), Academic press, San Diego)によるとA/P +1.0、L/M +2.7、D/V −4だった。
【0118】
全てのラットについて行動試験を2回行った。障害から2週間後と4週間後には、同側性(障害のある側への)回転行動を誘導するためにD−アンフェタミンを投与し(2.5mg/kgを腹腔注射)、行動を2時間にわたり記録した。障害から2週間後には、対照群においてアンフェタミン(2.5mg/kgを腹腔注射)は顕著な同側性回転行動を誘導すると考えられる。一方、処置群(6−OHDA処理の前に活性化合物で処置)においては、同側性回転数の増加は最小かまたは見られないと考えられる。障害から4週間後には、活性化合物はアンフェタミン誘導性の同側性回転を著しく逆転させることができ、免疫組織化学的分析も神経栄養因子によるDA細胞の顕著な防御効果を示すと考えられる。
【0119】
TH免疫組織化学。 障害から4週間後には、2回目の行動試験に続いて、過剰量のペントバルビタールナトリウム(90mg/kg)でラットを麻酔し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、続いて4% パラホルムアルデヒドを含む0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)による心臓内還流を行った。浮動性切片はTH−免疫組織化学のために処理される。光学フラクショネーター法を解像原理と公平な計測規則(West et al.,1991, Anat. Rec. 231, 482-497、Mouton et al. 2002, Brain Res. 956, 30-35)と組み合わせて使用する、公平なステレオロジーによる細胞計数法で、黒質緻密部(SNpc)のTH陽性細胞数を計測した。SNpcの全体を、Olympus BX51顕微鏡に装着したStereo Investigator(ドイツ国、MicroBrightField製)のプラットフォーム上で解析した。対照群と処置群における、黒質緻密部のTH陽性細胞数の減少はそれぞれ約30%と約4%になると考えられる。
【0120】
別のパーキンソン氏病研究
本研究の目的は、線条体(i.s.)投与した小分子GDNFミメティック(化合物13、16、319H6および292651、それぞれの構造は上述した図面の説明に示した)の、パーキンソン氏病のラットモデル6−OHDAにおける効果を調査することである。本研究で使用した亜急性障害モデルにおいては、線条体のドーパミン作動性末端の近傍に6−OHDAを注入することによって、数週間かけてゆっくりと進行する黒質(SNc)の障害を作製した(Kirik-D 1998、Exp. Neurol. 152:259-277)。このモデルにおいては、黒質線状体突起の一部は無傷のまま残されており、その部分が成長促進性および神経保護性の試薬に応答して生じる再生および機能的回復のための基質として働くことができる。
【0121】
神経毒である6−OHDAに暴露してから3週間後に、GDNFミメティック化合物、GDNFまたはベヒクルを線条体に投与した。SNc内のドーパミン作動性ニューロンに対する選択的な損傷と、ドーパミンおよびその代謝産物の線条体における濃度とを、6−OHDAの注入から12週間後に、それぞれチロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫組織化学およびHPLCで評価した。更にラットの行動障害を、前肢非対称試験(シリンダー試験)、アンフェタミン誘導回転運動非対称試験、および常同的自発回転行動の欠陥を評価するためのY字迷路試験で評価した。
【0122】
動物: 全ての動物実験は、国立衛生研究所(NIH)の実験動物の飼育および使用に関するガイドラインに基づき、南フィンランド国家州局(State Provincial Office of Southern Finland)の認可のもとに行われた。ドイツ国、Charles Riverより購入した、体重が220〜275gの合計108匹の雄ウイスターラットを実験に使用した。動物は、標準温度(22±1℃)および光制御環境(午前7時〜午後8時まで点灯)の下、飼料および水が自由に摂取可能な条件で飼育した。動物は以下の群に分けた。
【0123】
グループ1: 6−OHDAの注入から3週間後にベヒクル(0mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ2: 6−OHDAの注入から3週間後にBT13(ラット当たり5μg、即ち、0.4mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ3: 6−OHDAの注入から3週間後にBT13(ラット当たり1μg、即ち、0.1mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ4: 6−OHDAの注入から3週間後にBT13(ラット当たり0.2μg、即ち、0.2mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ5: 6−OHDAの注入から3週間後にBT16(ラット当たり0.5μg、即ち、0.2mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ6: 6−OHDAの注入から3週間後にBT292651(ラット当たり5μg、即ち、0.4mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ7: 6−OHDAの注入から3週間後にBT292651(ラット当たり1μg、即ち、0.1mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ8: 6−OHDAの注入から3週間後にBT18(ラット当たり1μg、即ち、0.2mg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
グループ9: 6−OHDAの注入から3週間後にGDNF(R & D Systems, Ltd.製、ラット当たり10μgまたは約40μg/kg、i.s.)で処理した12匹のラット
【0124】
部分的な逆行変性をSNcに発生させるために、6−OHDA障害をSauerとOertelの変法に従って実施した(Sauer and Oertel, 1994)。雄のウイスターラットに5%のイソフルラン(70% N2Oおよび30% O2中、流速300ml/分)で麻酔をかけ、定位枠に入れた。手術の際には麻酔の濃度を1〜1.5%に減少させた。恒温ブランケットシステムを用い、直腸温度を37.0±1.0℃に維持した。頭蓋骨に対する少量の骨切除開頭術によって右脳半球を露出させた。細い鉗子で硬膜を注意深く除去し、6−OHDA(4μg/μl)を右線条体に定位注入した。合計7μlの6−OHDAを流速0.5μl/分で点滴し、以下の座標で示される4箇所の間で均等に分配させた:AP +1.0、ML +2.8、DV −6.0、−5.5、−5.0および−4.4mm。カニューレは抜き取る前に更に5分間その位置に保持した。頭蓋骨の穴は続いて修復材で塞ぎ、皮膚を縫合し消毒した。ラットを静置して麻酔から醒めるのを待ち、起こりうる術後の合併症について注意深く監視した。動物は自由に飼料と水が摂取できる飼育用ケージに戻した。
【0125】
21日目に、ラットに5%のイソフルラン(70% N2Oおよび30% O2中、流速300ml/分)で再び麻酔をかけ、定位枠に入れた。手術の際には麻酔の濃度を1〜1.5%に減少させた。恒温ブランケットシステムを用い、直腸温度を37.0±1.0℃に維持した。頭蓋骨に対する少量の骨切除開頭術によって右脳半球を露出させた。GDNFまたはベヒクルを右線条体に定位注入した。各投与溶液を流速1μl/分で点滴し、以下の座標で示される4箇所の間で均等に分配させた:AP +1.0、ML +2.8、DV −6.0、−5.5、−5.0および−4.4mm。カニューレは抜き取る前に更に5分間その位置に保持した。頭蓋骨の穴は続いて修復材で塞ぎ、皮膚を縫合し消毒した。ラットを静置して麻酔から醒めるのを待ち、起こりうる術後の合併症について注意深く監視した。動物は自由に飼料と水が摂取できる飼育用ケージに戻した。
【0126】
行動試験: 自発的立ち上がり行動における前肢の使用および選択性 − シリンダー試験:飼育用ケージの壁に対する自発的立ち上がり行動における前肢の使用を定量するために、シリンダー試験(Innovative Models of CNS disease: from molecule to therapy(中枢神経系疾患の革新的モデル:分子から治療まで). Clifton, NJ, Humana, 1999 の Schallert and Tillersonの方法の変法)を使用した。6−OHDA注入の14日、35日、56日および77日後に試験を実施した。飼育用ケージの中を自由に動き回るラットを観察した。立ち上がりながら各前足とケージの壁とを接触させる行動について、処置に対して盲目の観察者によってスコアをつけた。各動物について20回の接触をスコアし、欠陥のある前肢接触および欠陥のない前肢接触のそれぞれの数を、総接触回数に対するパーセントとして計算した。
【0127】
自発的回転行動の選択性および活動性検査のためのY字迷路試験
Y字迷路は黒色に塗装したプラスチック製である。Y字迷路のアーム部はそれぞれ長さ35cm、高さ25cmおよび幅10cmであり、等角に位置している。6−OHDA注入から14日、35日、56日および77日後に、1つのアームの端にラットを置き、8分間の期間中は迷路内を自由に動き回らせた。アーム部への進入の経緯を手作業で記録した。片側6−OHDA障害を有するラットは、ドーパミン活性がより高い側(非障害部、左側)を避ける傾向にあり、よって右回りに対して偏りを示す。右回りを選択するパーセンテージは、総回転数に対する右回りのパーセンテージ((右回り/左回り+右回り)×100%)としてデータセットから求めた。右回り選択性スコアに加え、アーム部進入の総回数も計測した。
【0128】
アンフェタミン誘導性非対称回転運動
動物のアンフェタミン誘導回転行動について、6−OHDA注入から42日および84日後に試験した。運動の非対称性は、アンフェタミン(5mg/kg、i.p.)注射から45分後に、自動ロトメーターボウル(ドイツ国、TSE Systems製)で観察した。各試験の同側性回転非対称性の総スコアは、障害側に対する同側性回転の数から対側性回転の数を減じることで計算した。
【0129】
総括的健康状態および人道的見地に基づくエンドポイント
研究所職員によって動物を毎日観察した。動物の総括的健康状態が著しく悪化した場合には、過剰量のCO2によってラットを殺生し、断頭した。許容可能なエンドポイントの定義には、以下のものが含まれる: 24時間の観察期間中に見られる、自発的活動の欠失および飲食不能;大量出血;突発的炎症;解剖学的構造の欠失;20mmを超える腫脹または腫瘍;および30秒以内の体勢回復不能。
【0130】
6−OHDA暴露から85日後には、脳から血液を除去するために、ヘパリン化(2.5IU/ml)生理食塩水で動物に経心的な還流を行った。その後、脳を除去し、氷上で解剖した。
【0131】
同側性線条体および対側性線条体の全体を解剖し、重量を測定した後に直ちにドライアイス上で急速凍結し、ドーパミンおよびその代謝産物のHPLC解析のために−80℃で保存した。同側性線条体サンプルは全てHPLC解析に付した。対側性線条体サンプルのHPLC解析は行わなかった。
【0132】
SNcを含む後頭脳ブロックを、4% パラホルムアルデヒドの0.1M リン酸バッファー(PB)溶液に24時間浸漬することで固定した。30%ショ糖の0.1M PB溶液による2〜3日間の低温保護および液体窒素によるブロックの凍結後、厚さ20μmの凍結切片をクリオスタットで作製した。各ラットから得た4個の切片を1つのSuperfrostTM スライドガラスに置き(切片の間隔は100μm)、TH免疫組織化学に用いた(それぞれ4個の切片を乗せた4つの余分なスライドガラスも回収し、予備のサンプルとして−80℃で保存した)。切片を始めに再水和し、次に0.5%のTween-20を含むPBSで透過処理を行った。次に切片を、5%ヤギ血清を含むPBST(0.05%のTween 20を含むPBS)でブロックし、続いて、1:1500に希釈したウサギ抗THポリクローナル抗体(Novus Biologicals製、カタログ番号NB300−109)と共に室温で一晩インキュベートした。その後、切片を洗浄し、Alexa FluorR 594結合ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(Molecular Probes製、カタログ番号A11012)と共に室温で2時間インキュベートした。最後に、切片をすすぎ、脱水し、カバーガラスを掛け、Olympus製のAX−70蛍光顕微鏡で観察した。SNcを介してTH免疫蛍光ニューロンの数を計数した(各動物につき4個の切片)。
【0133】
同側性線条体をHPLCに付した。線条体組織サンプル中のドーパミン(DA)、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)およびホモバニール酸(HVA)の濃度を、電気化学検出を伴う高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で求めた。
【0134】
氷上で融解した後の組織サンプルを、MSE Soniprep 150 超音波破砕機(英国、クロウリー、MSE Scientific Instruments製)を用いて0.1Mの過塩素酸中でホモジェナイズした(1:10、w/v)。組織ホモジェネートを4℃、15,000gで15分間遠心分離した。上清をポリプロピレン膜(GHP Acrodisc 13、0.45μm)(米国、ミシガン州、アナーバー、Pall Corporation製)で濾過し、0.1Mの過塩素酸で希釈した(1:1)。サンプルはプラスチック製のバイアルに移し、直ちに分析した。
【0135】
ESA HPLCシステム(米国、マサチューセッツ州、チェルムスフォード、ESA Inc.製)は、582溶剤送達システム、DG−1210真空脱ガス装置、542オートサンプラー、880サーモスタット付チャンバー、および2チャンネルの5014B微小透析用セルとウインドウズデータ収集モジュール用のCoulArrayR(バージョン1.00)を備えた8チャンネルのCoulArrayR 5600電気化学アレイ検出器からなる。印加した電位は以下の通りである: −175mV(チャンネル1)、+225mV(チャンネル2)、+350mV(チャンネル3)および+450mV(チャンネル4)。DAおよびDOPACはチャンネル2で検出し、HVAはチャンネル3で検出した。注入容量は10μlとした。
【0136】
分析物は、Zorbax SB-Aqプレカラム(2.1×12.5mm、5μm)を有する、Zorbax SB-Aq逆相カラム(2.1×100mm、3.5μm)(米国、デラウエア州、ウィルミントン、リトルフォールズ、Agilent Technologies Inc.製)によって、均一溶媒で分離した。カラムは35℃に維持した。移動相は、4.75mM クエン酸一水和物、7mM 1−オクタンスルホン酸および50μM EDTA二ナトリウム−アセトニトリル混合物(98:2、v/v)を含有する100mM 第一リン酸ナトリウム溶液である。移動相のpHは、o−リン酸で2.2に調整した。流速は0.3ml/分である。DA、DOPACおよびHVAのレベルは、nmol/g湿組織で表した。
【0137】
全ての値を平均±標準偏差(SD)または標準誤差(SEM)で表し、差は、P<0.05のレベルで統計的に有意とみなした。統計解析は、StatsDirect統計用ソフトウエアを用いて実施した。平均値間の差は、一方向分散分析(ANOVA)とそれに続くDunnett検定(対照(=ベヒクル処置ラット)群との比較)で解析した。ノンパラメトリックなデータは、Kruskal-Wallis分散分析で解析した。
【0138】
結果: 12週にわたり動物を追跡調査したところ、6−OHDA処置ラットの線条体に注射したGDNFミメティック化合物が副作用を誘導することはなかった。行動アッセイにおいても、線条体内に注射した化合物BT13、BT16、BT18およびBT292651による毒性効果は見られなかった。
【0139】
6−OHDA注射から6週間後および化合物BT13(または13)、BT16(または16)、BT18(または18)およびBT292651(または292651)の線条体注入から3週間後に実施したアンフェタミン誘導回転運動アッセイにおいては、BT13が1種の濃度(0.2μg)、化合物BT16、BT18およびBT292651も1種の濃度(1μg)において、アンフェタミン誘導同側性回転運動を減少させた。図7を参照。
【0140】
6−OHDA神経毒の線条体注入から3週間後に注入したGDNFミメティック化合物BT13、BT16、BT18およびBT292651は、障害を負ったラットのアンフェタミン誘導同側性回転運動を有意に減少させた。よって化合物BT13、BT16、BT18およびBT292651は、in vivoにおいて、パーキンソン氏病のラットモデルの病的な運動行動を有意に減少させる。
【0141】
ドーパミン作動性ニューロンの生存
ラットのドーパミン作動性ニューロンを、Schinelli et al., 1988の記載に従って培養した。簡単に説明すると、妊娠15日目の雌のラット(ウイスターラット、Janvierより購入)を頚椎脱臼で殺生し、胎仔を子宮より取り出した。胎生中脳を取り出し、1%のペニシリン−ストレプトマイシン(PS、Invitrogen製)と1%のウシ血清アルブミン(BSA、Sigma製)を含む、氷冷のリーボビッツ培地(L15、Invitrogen製)に入れた。ドーパミン作動性ニューロンに富んだ発達過程の脳の領域であることから、中脳屈の前側部分のみを細胞の調製に使用した。
【0142】
中脳は、カルシウムとマグネシウムを含まないPBSで希釈した、10%のトリプシンEDTA 10×(Invitrogen製)を用いた37℃で20分のトリプシン処理によって分離した。反応は、DNAase I(グレードII)(0.1mg/ml、Roche Diagnostic製)と10% ウシ胎仔血清(FCS、Invitrogen製)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen製)の添加で停止した。次に10mlのピペットに3回通すことで、細胞を機械的に分離させた。BSA(3.5%)のL15培地溶液層の上で細胞を180×g、室温で10分の遠心分離に付した。上澄みを廃棄し、細胞ペレットをB27(2%、Invitrogen製)、L−グルタミン(0.2mM、Invitrogen製)と1%のPS溶液を添加したNeurobasal(Invitrogen製)からなる特定の培地に再懸濁した。トリパンブルー色素排除試験を用い、Neubauerサイトメーターで生細胞を計数した。
【0143】
細胞を、96穴プレート(ウェルはポリ−L−リシン(10μg/ml、Sigma製)でコートしておいた)に69,000細胞/ウェルの密度で播種し、加湿空気(95%)/CO2(5%)雰囲気下、37℃で培養した。培地の半分を2日ごとに新鮮な培地と交換した。この条件下で5日間培養した後には、星状細胞が培養液中に存在し、成長因子を放出してニューロンの分化を可能にした。神経細胞集団の3〜5%はドーパミン作動性ニューロンだった。
【0144】
6日目には培地を除去し、新鮮な培地を加えた。加えた培地は、16μM MPP+の有無、更に試験物質の有無により異なっていた。48時間の薬物処理後(培養8日目)に、細胞を4%のPFAで固定した。ドーパミン作動性ニューロンを抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)モノクローナル抗体(Sigma製)で標識した。この抗体は、ドーパミン作動性ニューロンの神経突起および細胞体を標識する。上記抗体をAlexa Fluor 488 ヤギ抗マウスIgG(Molecular probe製)で視覚化し、細胞核を蛍光マーカー(ヘキスト溶液、SIGMA製)で標識した。各条件につき、倍率を10×にしたInCell AnalyzerTM(商標) 1000(Amersham Biosciences製)を用い、1つのウェルにつき2×10枚の写真を撮影した。全ての画像を同一条件下で撮影した。
【0145】
MPP+薬物処理の有りと無しの両条件における、神経突起の長さおよび抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)抗体で標識されたニューロンの数に関する解析を、InCell AnalyzerTM 1000 3.2.ワークステーションソフトウエアで実施した。ドーパミン作動性ニューロンおよび完全長神経突起を、10枚の写真から計数した(培養条件の異なる12種の解析)。
【0146】
化合物319H6による細胞保護が、下記表のデータによって示された。これら結果は、化合物の神経保護性効果が天然の脳由来神経栄養因子(BDNF)に類似することを明確に示している。
【0147】
【表1】

【0148】
GDNFミメティック/ARTNミメティックの細胞生存率に対する効果の評価
エコーアコースティック分注器(Echo acoustic dispenser)(Labcyte Inc.製)を用いて、2.5〜125nl容量の試験化合物を384穴培養プレートに移送した。規定の濃度でDMSOに溶解した化合物の存在下に、20,000細胞/ml(500細胞/ウェル)のトリプシン化MG87RETマウス繊維芽細胞を播種した。水平振盪機で簡単に混合した後、プレートを遠心分離に付し、恒温機に移した。化合物に細胞を加えてから2日(48時間)後に、細胞の生存率をCelTiterGlo試薬(Promega製)で評価した。結果を図8に示す。
【0149】
アンフェタミン誘導回転運動
ラットに線条体内6−OHDAによって障害を誘導した3週間後に、線条体にベヒクル、GDNF、またはGDNFミメティックを投与した。アンフェタミン誘導行動を障害誘導から42日および84日後に計測した。運動の非対称性は、アンフェタミン(5mg/kg、i.p.)注射から45分後に自動ロトメーターボウル(ドイツ国、TSE Systems製)で観察した。各試験の同側性回転非対称性の総スコアは、障害側に対する同側性回転の数から対側性回転の数を減じることで計算した。データを下記図9に示す。
【0150】
他の適切な疾患モデル
パーキンソン氏病について上述した実験と同様に、以下の適切な疾患モデルを用いた実験を設計し、実施することができる: ALS(例えば、SOD1G93Aラットモデル)、脳虚血(例えば、中大脳動脈結紮齧歯動物モデル)、アルツハイマー病(例えば、Αβ過剰発現トランスジェニックマウスモデル)、慢性疼痛(例えば、脊柱神経結紮ラットモデル)など。
【0151】
参考文献
本明細書に引用した文献は、それらの全内容が参照によって本願に組み込まれたものとする。更に、特定のアッセイまたは試薬に関する教示のために文献が引用された場合には、その特定の教示も参照によって本願に組み込まれたものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0152】
【特許文献1】Longo, et al.、Methods of facilitating neural cell survival using non-peptide and peptide BDNF neurotrophin mimetics、米国特許出願公開第20070060526号、2007年3月15日。
【非特許文献】
【0153】
【非特許文献1】Airaksinen, and Saarma. 2002. The GDNF family: signalling, biological functions and therapeutic value. Nat Rev Neurosci. 3:383-94.
【非特許文献2】Airavaara, et al. 2004. Increased extracellular dopamine concentrations and FosB/DeltaFosB expression in striatal brain areas of heterozygous GDNF knockout mice. Eur J Neurosci. 20:2336-44.
【非特許文献3】Baloh, et al. 2000. Functional mapping of receptor specific city domains of glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF) family ligands and production of GFRα1 RET-specific agonists. J Biol Chem. 275:3412-20.
【非特許文献4】Bespalov and Saarma. 2007. GDNF family receptor complexes are emerging drug targets. Trends Pharmacol Sci. 28:68-74.
【非特許文献5】Enslen, et al. 1996. Regulation of mitogen-activated protein kinases by a calcium/calmodulin-dependent protein kinase cascade. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 93:10803.
【非特許文献6】Garces, et al. 2001. Responsiveness to neurturin of subpopulations of embryonic rat spinal motoneuron does not correlate with expression of GFRα1 or GFRα2. Dev Dyn. 220:189-97.
【非特許文献7】Gardell, et al. 2003. Multiple actions of systemic artemin in experimental neuropathy. Nat Med. 9:1383-9.
【非特許文献8】Gill, et al. 2003. Direct brain infusion of glial cell line-derived neurotrophic factor in Parkinson disease. Nat Med. 9:589-95.
【非特許文献9】Golden, et al. 2003. Neurturin and persephin promote the survival of embryonic basal forebrain cholinergic neurons in vitro. Exp Neurol. 184:447-55.
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【非特許文献31】Schinelli S, Zuddas A, Kopin IJ, Barker JL, di Porzio U (1988) 1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine metabolism and 1-methyl-4-phenylpyridinium uptake in dissociated cell cultures from the embryonic mesencephalon. J Neurochem, 50(6):1900-7.
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【非特許文献33】Slevin, et al. 2005. Improvement of bilateral motor functions in patients with Parkinson disease through the unilateral intraputaminal infusion of glial cell line-derived neurotrophic factor. J Neurosurg. 102:216-22.
【非特許文献34】Tokugawa, et al. 2003. XIB4035, a novel nonpeptidyl small molecule agonist for GFRα-1. Neurochem Int. 42:81-6.
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【非特許文献37】Wang, et al. 2006. Structure of artemin complexed with its receptor GFRα3: convergent recognition of glial cell line-derived neurotrophic factors. Structure. 14: 1083-92.
【非特許文献38】Wang, et al. 2008. Persistent restoration of sensory function by immediate or delayed systemic artemin after dorsal root injury. Nat Neurosci. 11:488-96.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化46】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、
R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、水酸基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
上記式(I)中のR1およびR2が、各々独立に、アルキレンアミノ基および水素原子からなる群より選ばれる1種であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式(II):
【化47】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
下記式(III):
【化48】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
下記式(IV):
【化49】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
下記式(V):
【化50】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
下記式(XX):
【化51】

(式中、R1は環式または非環式のアミノ基である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
上記式(XX)中のR1が、ジアルキルアミノ基、ピペリジニル基、置換ピペリジニル基、ピペラジニル基、置換ピペラジニル基、テトラヒドロイソキノリニル基および置換テトラヒドロイソキノリニル基からなる群より選ばれる1種であることを特徴とする、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
下記式(VI)〜(XIX):
【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

のいずれかで表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
請求項1〜9の化合物の少なくとも1種、および薬学的に許容される希釈剤、アジュバントまたは担体を包含する組成物。
【請求項11】
単位剤形になっているか、または投薬用の滅菌容器に収容されていることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの化合物または組成物を含有する医療器具、好ましくは注射器。
【請求項13】
ニューロン、神経系細胞、神経前駆細胞、神経始原細胞または神経組織の成長を調節するための方法であって、該細胞または組織を請求項1〜11のいずれかの化合物または組成物と接触させることを包含する方法。
【請求項14】
Ex vivoで接触させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該化合物が、GFRα/RET受容体複合体活性化因子、GFRα/RET受容体複合体阻害因子、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)の少なくとも1種のミメティック、およびRET活性化因子からなる群より選ばれる少なくとも1種としての活性を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
対象の有する疾患の治療用である、請求項1〜12および15のいずれかに記載の化合物、組成物または医療器具。
【請求項17】
疾患の治療を、GFRα/RET受容体複合体の調節によって行うことを特徴とする、請求項16に記載の化合物、組成物または医療器具。
【請求項18】
該疾患が、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レット症候群、てんかん、パーキンソン氏病、脊髄損傷、卒中、低酸素症、虚血、脳の損傷、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、神経移植の合併症、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、HIV認知症、末梢神経の損傷、聴力損失、うつ病、肥満症、メタボリック症候群、疼痛、癌、およびGFRα/RET発現細胞の変性または機能不全を伴う他の病態からなる群より選ばれるものであることを特徴とする、請求項16または17に記載の化合物、組成物または医療器具。
【請求項19】
対象が哺乳動物であることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の化合物、組成物または医療器具。
【請求項20】
対象がヒトであることを特徴とする、請求項19に記載の化合物、組成物または医療器具。
【請求項21】
治療を必要とする対象におけるGFRα/RET受容体複合体との接触、あるいは該複合体の活性化または阻害によって疾患を治療するための方法であって、GFRα1受容体分子に対して結合特異性および調節特異性の少なくとも1種を示す化合物の有効量を対象に投与することを包含する方法。
【請求項22】
GFRα1受容体分子に対して結合特異性および調節特異性の少なくとも1種を示す化合物の使用であって、治療を必要とする対象におけるGFRα/RET受容体複合体との接触、あるいは該複合体の活性化または阻害によって疾患を治療するための使用。
【請求項23】
治療を必要とする対象におけるGFRα/RET受容体複合体との接触、あるいは該複合体の活性化または阻害によって疾患を治療するために、GFRα1受容体分子に対する結合および調節の少なくとも1種に用いる化合物。
【請求項24】
該疾患が、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レット症候群、てんかん、パーキンソン氏病、脊髄損傷、卒中、低酸素症、虚血、脳の損傷、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、神経移植の合併症、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、HIV認知症、末梢神経の損傷、聴力損失、うつ病、肥満症、メタボリック症候群、疼痛、癌、およびGFRα/RET発現細胞の変性または機能不全を伴う他の病態からなる群より選ばれるものであることを特徴とする、請求項21〜23のいずれかに記載の方法、使用または化合物。
【請求項25】
対象が哺乳動物であることを特徴とする、請求項21〜24のいずれかに記載の方法、使用または化合物。
【請求項26】
対象がヒトであることを特徴とする、請求項25に記載の方法、使用または化合物。
【請求項27】
該化合物が、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)の少なくとも1種のミメティックであることを特徴とする、請求項21〜26のいずれかに記載の方法、使用または化合物。
【請求項28】
グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)の少なくとも1種のミメティックとしての活性を有する、精製した化合物。
【請求項29】
請求項28の精製した化合物を包含し、薬学的に許容される希釈剤または担体を更に包含する組成物。
【請求項30】
単位剤形になっているか、または投薬用の滅菌容器に収容されていることを特徴とする、請求項28に記載の精製した化合物または請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
請求項28〜30のいずれかの精製した化合物または組成物を含有する医療器具、好ましくは注射器。
【請求項32】
該化合物が小分子であることを特徴とする、請求項21〜30のいずれかに記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項33】
該化合物が、下記式(I):
【化66】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、
R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アルケニレンアリール基および水酸基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項21〜32のいずれかに記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項34】
該化合物が、下記式(II):
【化67】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項21〜32のいずれかに記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項35】
該化合物が、下記式(III):
【化68】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項21〜32のいずれかに記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項36】
該化合物が、下記式(IV):
【化69】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項21〜32のいずれかに記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項37】
該化合物が、少なくとも1種のGFRα1受容体分子に対して結合特異性および調節特異性の少なくとも1種を示す親化合物の誘導体を包含し、該誘導体も、少なくとも1種のGFRα1受容体分子に対して結合特異性および調節特異性の少なくとも1種を示すことを特徴とする、請求項21〜32のいずれかに記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項38】
該誘導体は、有効性、選択性、親水性、親油性、両親媒性、可溶性、生物学的利用能,および肝分解に対する耐性からなる群より選ばれる少なくとも1種の性質が親化合物よりも強化されていることを特徴とする、請求項37に記載の方法、使用、化合物または組成物。
【請求項39】
対象におけるRETの下流活性化によって疾患を治療するための方法であって、RETを活性化する化合物を対象に投与することを包含する方法。
【請求項40】
治療を必要とする対象におけるRETの下流活性化によって疾患を治療するための、RETを活性化する化合物の使用。
【請求項41】
該化合物が小分子であることを特徴とする、請求項39または40に記載の方法または使用。
【請求項42】
RETを活性化する、精製した化合物。
【請求項43】
請求項42の化合物、および薬学的に許容される希釈剤または担体を包含する組成物。
【請求項44】
単位剤形になっているか、または投薬用の滅菌容器に収容されていることを特徴とする、請求項42または43の化合物または組成物。
【請求項45】
請求項42〜44のいずれかの化合物または組成物を含有する医療器具、好ましくは注射器。
【請求項46】
該化合物が、下記式(V):
【化70】

(式中、
R1およびR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基およびアルキレンアミノ基からなる群より選ばれる1種であり、そして
R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アリール基、アルキレンアリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキレンアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基およびジアルキルカルバモイル基からなる群より選ばれる1種である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項39〜45のいずれかに記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項47】
該化合物が、下記式(VI):
【化71】

で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項39〜45のいずれかに記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項48】
該化合物が、下記式(VII):
【化72】

で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項39〜45のいずれかに記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項49】
該化合物が、下記式(VIII):
【化73】

で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項39〜45のいずれかに記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項50】
該化合物が、下記式(IX):
【化74】

で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項39〜45のいずれかに記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項51】
該化合物が、下記式(XX):
【化75】

(式中、R1は環式または非環式のアミノ基である。)
で表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項39〜45のいずれかに記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項52】
上記式(XX)中のR1が、ジアルキルアミノ基、ピペリジニル基、置換ピペリジニル基、ピペラジニル基、置換ピペラジニル基、テトラヒドロイソキノリニル基および置換テトラヒドロイソキノリニル基からなる群より選ばれる1種であることを特徴とする、請求項51に記載の方法、使用、化合物、組成物または器具。
【請求項53】
GDNFのミメティックを同定するための方法であって、目的化合物をGFRα1を発現する細胞と接触させ、そして細胞成長を計測することを包含し、バックグラウンドの細胞成長に対する細胞成長の増加を、化合物がGDNFのミメティックであることの指標とする方法。
【請求項54】
細胞成長の増加を検出するために、目的化合物の存在下における細胞成長を、目的化合物の非存在下における細胞成長と比較することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
該細胞は、組み換えによってGFRα1を発現する細胞であることを特徴とする、請求項53または54に記載の方法
【請求項56】
該細胞は、更にレポータータンパク質を発現し、レポータータンパク質またはレポータータンパク質活性の測定によって細胞成長を検出することを特徴とする、請求項53〜55のいずれかに記載の方法
【請求項57】
レポータータンパク質がルシフェラーゼであることを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
細胞成長の測定が、ルシフェラーゼ活性の計測を包含することを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
GDNFのミメティックを同定するための方法であって、化合物をRETおよびGFRα1を発現する細胞と接触させ、そしてRETのリン酸化を検出することを包含し、バックグラウンドに対して増加したRETのリン酸化を、化合物がGDNFのミメティックであることの指標とする方法。
【請求項60】
該細胞を溶解し、そして細胞溶解物をRETに結合する抗体と接触させることを特徴とする、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
RETをリン酸化チロシンに結合する抗体(抗pY抗体)と接触させ、そしてRETに結合した抗体の量を計測することによってRETのリン酸化を測定する工程を更に包含する、請求項59または60に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−513588(P2013−513588A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542580(P2012−542580)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069535
【国際公開番号】WO2011/070177
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(512152525)
【氏名又は名称原語表記】GeneCode AS
【Fターム(参考)】