説明

GLP−1およびエキセンディンに関する発明

本発明は、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)ならびにエキセンディン−3及び(又は)エキセンディン−4から誘導されるペプチドであって、GLP−1受容体に結合し、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するための手段の製造に、標識して、または標識せずに、使用することができるペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
胃腸膵神経内分泌腫瘍の局在診断において、ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(SRS)は、超音波に次いで、最も重要な診断方法である。その原理は、腫瘍細胞によって吸収される放射性標識ペプチドの助けを借りた、腫瘍の特異的描写である。次に、ガンマカメラの助けを借りて、腫瘍組織における放射能の蓄積を視覚的に検証することができる。ある腫瘍タイプがSRSに必要な受容体の一つ(例えばソマトスタチン類似体オクトレオチド(登録商標)の受容体)を持っている場合、それらの腫瘍の検証は問題なく行なうことができる。しかし、対応する受容体が発現されない場合、それらはシンチグラフィによる検証をすり抜けてしまう。放射性標識ペプチドは、局在診断だけでなく、腫瘍を処置する方法にも対応する。この方法では、オクトレオチド(登録商標)などのソマトスタチン類似体を適当な放射性核種(α放射体またはβ放射体)で標識することにより、特異的受容体を指向する放射性ペプチド治療を実施することができる。対応する放射性核種が、ペプチドにより(例えばそのペプチドに予め結合しておいた金属キレーターとの錯化を介して)、それらが確かに腫瘍細胞に吸収されはするが、もはや排泄されることはできないような形で、化学的に結合されるという事実は、結果として、腫瘍組織における高度な特異的蓄積をもたらす。
【0002】
しかし、インスリノーマおよび小細胞気管支癌などの神経内分泌腫瘍(NET)はいずれも、ソマトスタチン類似体オクトレオチド(登録商標)を使ったSRSまたは放射性ペプチド療法にとって欠かすことのできない必要なサブタイプのソマトスタチン受容体を発現させない。特にインスリノーマは、かなりのパーセンテージが、シンチグラフィ診断では検出できない。小細胞気管支癌でもSRSは適当な方法にはならない。なぜなら、原発腫瘍は見えることも多いが、転移では受容体発現が失われるため、転移を明らかにすることはできないからである。したがってこれらは、興味深い追加治療または代替治療法である放射性ペプチド療法には、利用し難い。それゆえに、上述の腫瘍によって吸収されるであろう適当なペプチドが、必要とされている。
【0003】
インクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)ならびにその類似体エキセンディン−3およびエキセンディン−4(アメリカドクトカゲHeloderma horridumおよびHeloderma suspectumの唾液に由来する)は、他の多くの種類の腫瘍と共に、インスリノーマおよび小細胞気管支癌でも、その受容体が発現されるペプチドである。インスリノーマは、GLP−1ならびにエキセンディン−3およびエキセンディン−4が食後インスリン分泌を誘発している膵臓のランゲルハンス島内のインスリン産生β細胞に起源を持つ。
【背景技術】
【0004】
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)をシンチグラフィに利用するには、そのペプチドを標識する必要がある。その方法および放射性核種によるタンパク質の標識方法は当業者に知られており、数多くの特許出願(例えば独国特許第690 18 226 T2号)および科学刊行物に詳述されている。そこに記載されている、画像診断法に応用するためのペプチド、および病理組織における治療有効分子の交換のためのペプチドは、通常、ペプチド中のアミンを介して、N末端で挿入される。ペプチドは、それと同時に、安定化に関して、さらに修飾されなければならない。
【0005】
例えば、米国特許第2003/0232761 A1号で使用されるGLP−1およびその誘導体GLP−1(7−37)は、一つのアミンにより、そのN末端で修飾される。したがってGLP−1のN末端は、もはやGLP−1受容体を結合するためには使用することができず、それゆえに、受容体結合も、内部移行も、これらのペプチドでは不十分になる。したがって後者は、インスリノーマおよび小細胞気管支癌の放射性ペプチド療法での利用には不適当である。経験が示すように、突然変異、例えばGLP−1およびエクセンディン3またはエクセンディン4のペプチド配列内でのアミノ酸の置換、および治療分子またはシグナル生成分子によるそれらの考えうる修飾は、ほとんどの場合、受容体へのさらなる結合を妨害するようなペプチド構造の損傷を引き起こす。
【0006】
N末端に影響を及ぼさない、他のGLP−1修飾方法は、現在、知られていない。さらにまた、インスリノーマおよび小細胞気管支癌の放射線療法での使用に適した、標識または非標識GLP−1誘導体も知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、現在の技術水準が持つ欠陥を取り除くこと、そして標識することができるペプチドであって、その標識化を行なってもなおGLP−1受容体を結合することができ、GLP−1受容体の発現が関与する疾患を診断および治療するための薬剤の製造に利用することができるペプチドを、入手可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、本願請求項により、アミンによってC末端で修飾され、かつ、N末端を介してGLP−1受容体に結合する、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1とエキセンディン−3またはエキセンディン−4とのキメラペプチドによって解決される。これらのペプチド誘導体およびキメラペプチドは、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患もしくは悪性疾患の診断剤および治療剤の製造に利用するために、非標識であるか、または標識される。
【0009】
GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のこれらペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドにより、NET(特にインスリノーマによるもの)および小細胞気管支癌を含むGLP−1受容体発現腫瘍の診断および治療に利用されるシンチグラフィ用手段の製造が行なわれる。これが可能になったのは初めてのことである。なぜなら、本発明に基づくペプチド誘導体はアミンによってC末端で修飾され、そのおかげでN末端をGLP−1受容体への結合に利用することができるからである。
【0010】
GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4の、本発明に基づく(例えば放射性標識)ペプチド誘導体、ならびにキメラペプチドが、GLP−1受容体に結合することにより、GLP−1受容体発現腫瘍の表示が可能になり、それによって、患者の医療をかなり改善することが可能になる。NETは、とりわけ、現在のところ十分な感度を持つ非侵襲的方法を利用することができないインスリノーマなどの胃腸膵NET、または肺の領域に局在した小細胞気管支癌のもの(この場合は、炎症過程と腫瘍または転移との特異的弁別が、非侵襲的方法ではどちらも不可能である)である。
【0011】
さらにまた、本発明によるペプチド誘導体およびキメラペプチドを使用することにより、膵臓におけるインスリン産生細胞の密度およびGLP−1受容体の発現が、インビボおよびインビトロで可視化される。これは、例えばGLP−1受容体発現細胞の表示(糖尿病の場合はインビボ表示)においてなされる。なぜなら、これらはインスリンも分泌する細胞だからである。膵臓におけるGLP−1受容体密度の表示は、医薬品による治療中および医薬品による治療後の糖尿病患者の場合は、特に重要である。また、悪性組織および良性組織におけるGLP−1受容体の分布も表示される。ここで関連づけられる疑問は、臨床的性質を持つと共に、科学的性質も持つ。なぜなら、ヒトにおけるGLP−1受容体の配置に関して利用できる包括的データは、まだ無いからである。
【0012】
したがって本発明の利点は、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドが、薬剤の製造に、特に受容体指向の特異的表示および治療、特にNETの治療、この例では特にインスリノーマおよび小細胞気管支癌の治療のための薬剤の製造に、利用されることである。
【0013】
GLP−1受容体シンチグラフィは、小細胞気管支癌の診断には特に適当であり、リンパ節内の転移の特異的検出(炎症によって変化したリンパ節と転移によって攻撃されたリンパ節との対比)を初めて可能にする。本発明によるGLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドは、GLP−1受容体発現が関与する全ての悪性疾患および良性疾患の診断剤および治療剤として、特に以下に挙げる用途にも応用される:磁気共鳴映像法(MRI)における造影剤;シンチグラフィ(SPECT,単光子放射型コンピュータ断層撮影)および放射性ペプチド療法における放射性薬剤;PET(陽電子放射断層撮影);受容体媒介型の化学療法;ならびに光診断。本明細書において光診断とは、特定波長による蛍光分子の刺激を意味し、これは続いて、異なる波長の光放射を誘発する。検出されるのはその放射波長である。当業者は、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドのC末端における標識の種類を、希望する用途に応じて、例えばシンチグラフィまたは放射線療法には放射性核種から、磁気共鳴映像法(MRI)における造影剤にはガドリニウムから、そして内視鏡検査または科学的検査には蛍光色素から、容易に選択することができる。
【0014】
本発明によれば、悪性疾患とは、患部組織が健常組織と比較したその分化レベルの変化、侵襲的成長、または血流もしくはリンパ系へのその組織の伝播を示す疾患である。全ての神経内分泌腫瘍、特に、胃腸路のもの、とりわけインスリノーマ、気管支癌、膵癌、およびGLP−1受容体の過剰発現に結び付けられる他の全ての悪性疾患は、このカテゴリーに属する。
【0015】
本発明によれば、良性疾患とは、患部組織がその分化レベルを有意に失わず、侵襲的成長を示さず、血流またはリンパ系への組織転移を持たないことを特徴とする疾患である。これには例えば糖尿病が含まれるが、摂食障害または精神障害も含まれる。
ペプチド誘導体およびキメラペプチドの特徴づけ
驚いたことに、アミンを介してC末端で修飾されているGLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドは、そのN末端でGLP−1受容体に結合することがわかった。さらにこれらは、天然ペプチドと同じように、GLP−1受容体に対して高い親和度を示す。腫瘍保有ヘアレスマウスを使って実験では、陽性腫瘍組織のGLP−1受容体における特異的取り込みが示される。
【0016】
本発明のペプチド誘導体およびキメラペプチドは、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患の診断および治療に応用するための薬剤として、標識されていないか、またはキレーターによりC末端アミンで標識される。この場合、標識のタイプは、主に放射性金属、MRI造影剤、蛍光発色団または化学療法剤からなる。
【0017】
標識の手順および方法は、当業者にはよく知られており(例:DE 690 18 226 T2)、例えば放射性核種、非磁性金属および他のMRI造影剤または蛍光色素の結合などによって行なわれる。これは、本発明のペプチド誘導体およびキメラペプチドの受容体結合または内部移行が損なわれず、GLP−1受容体結合性N末端は遊離(非連結)のままであることを意味する。
【0018】
元のペプチドのアミノ酸配列:
GLP-1:
H-His-Asp-Glu-Phe-Glu-Arg-His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-Gly-OH
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
エキセンディン−3:
H-His-Ser-Asp-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
Pro-Ser-NH2
38 39
エキセンディン−4:
H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
Pro-Ser-NH2
38 39
本発明によれば、GLP−1(1−37)、エキセンディン−3およびエキセンディン−4の以下のペプチド誘導体が製造される:
GLP−1(x−y)A1−37
エキセンディン−3(z−k)A1−40
エキセンディン−4(z−k)A1−40
式中、
x=GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸1〜36
y=GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸2〜37
z=エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸1〜38
k=エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸2〜39
A=シグナル分子としての、またはシグナル分子を結合するための、またはそれらを安定化するための、一種以上のアミノ酸またはその誘導体からなる付加基。Aは、C末端に位置することが好ましく、そのアミンは、好ましくはリジンであるか、あるいは遊離アミンを持つ他のアミノ酸、例えばオルニチン、または遊離アミンを持つ有機基であって、そこに、放射性核種もしくはMRI造影剤、蛍光色素または化学療法剤による標識化のためにキレーターが結合される。
【0019】
使用することができるキレーターには、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、あるいはN,N−ビス(2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチルグリシン)、あるいはDOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)、HYNIC(6−ヒドラジノピリジン−3−カルボン酸)、MAG3(メルカプトアセチル−グリシルグリシルグリシン)、N4(1,4,8,11−テトラアザウンデカン)、および上記キレーターの全ての公知の誘導体が含まれる。指数部は、付加基を択一的に見いだすことができるアミノ酸配列内の位置を示す。
GLP−1(x−y)A1−37
ここには、長さの異なるGLP−1誘導体が含まれ、xには、2〜37の数字が割り当てられるyよりも小さい1〜36の数字を割り当てることができる。Aは付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、yよりも1大きい。付加基は、好ましくは、アミン・リジンである。
エキセンディン−3(z−k)A1−40
ここには、長さの異なるエキセンディン−3誘導体が含まれ、zには、2〜39の数字が割り当てられるkよりも小さい1〜38の数字を割り当てることができる。Aは付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、yよりも1大きい。付加基は、好ましくは、アミン・リジンである。
エキセンディン−4(z−k)A1−40
ここには、長さの異なるエキセンディン−4誘導体が含まれ、zには、2〜39の数字が割り当てられるkよりも小さい1〜38の数字を割り当てることができる。Aは付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、yよりも1大きい。付加基は、好ましくは、アミン・リジンである。
【0020】
以下のペプチド誘導体は特に好ましい:
1.MC10:(DTPA−Lys37)GLP1(7−36)アミド
2.MC13:(DTPA−Lys40)エキセンディン−3アミド
3.MC11:(DTPA−Lys40)エキセンディン−4アミド。
【0021】
合成は、例えばPeptide Specialty Laboratories GmbH社において、メリフィールド法に従って行なわれ、HPLCで精製される。
【0022】
MC10 (DTPA−Lys37)GLP1(7−36)アミドは、C末端に遊離アミンを持つアミノ酸として、好ましくは37位のリジンと、キレーターDTPAとを保有する、GLP−1のアミノ酸7〜36からなる。
【0023】
MC13 (DTPA−Lys40)エキセンディン−3アミドは、C末端に遊離アミンを持つアミノ酸として、好ましくは40位のリジンと、キレーターDTPAとを保有する、エキセンディン−3の全アミノ酸配列からなる。
【0024】
MC11 (DTPA−Lys40)エキセンディン−4アミドは、C末端に遊離アミンを持つアミノ酸として、好ましくは39位のリジンと、キレーターDTPAとを保有する、エキセンディン−4の全アミノ酸配列からなる。
【0025】
本発明によれば、GLP−1(1−37)およびエキセンディン−3またはエキセンディン−4から、以下のキメラペプチドが製造される:
GLP−1(x−y)エキセンディン−3(z−k)A1−75
GLP−1(x−y)エキセンディン−4(z−k)A1−75
エキセンディン−3(z−k)GLP−1(x−y)A1−75
エキセンディン−4(z−k)GLP−1(x−y)A1−75
【0026】
ここでは以下の定義が適用される。
x=GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸1〜36
y=GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸2〜37
z=エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸1〜38
k=エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸2〜39
A=シグナル分子としての、またはシグナル分子を結合するための、またはそれらを安定化するための、一種以上のアミノ酸またはその誘導体からなる付加基。AはC末端に位置することが好ましく、アミンは、好ましくはリジンであるか、あるいは遊離アミンを持つ他のアミノ酸、例えばオルニチン、または遊離アミンを持つ有機基であって、そこに、放射性核種もしくはMRI造影剤、蛍光色素または化学療法剤による標識化のためにキレーターが結合される。使用することができるキレーターには、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、あるいはN,N−ビス(2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチルグリシン)、あるいはDOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)、HYNIC(6−ヒドラジノピリジン−3−カルボン酸)、MAG3(メルカプトアセチル−グリシルグリシルグリシン)、N4(1,4,8,11−テトラアザウンデカン)、および上記キレーターの全ての公知の誘導体が含まれる。
【0027】
指数部は、付加基を択一的に見いだすことができるアミノ酸配列内の位置を示す。
GLP−1(x−y)エキセンディン−3(z−k)A1−75
ここには、GLP−1およびエキセンディン−3のキメラペプチドが含まれ、このキメラペプチドでは、GLP−1のアミノ酸1〜36の後に、エキセンディン−3のアミノ酸1〜39が続く。Aは、付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、GLP−1およびエキセンディン−3のアミノ酸数よりも1大きく、好ましくはアミノ・リジンである。
GLP−1(x−y)エキセンディン−4(z−k)A1−75
ここには、GLP−1およびエキセンディン−4のキメラペプチドが含まれ、このキメラペプチドでは、GLP−1のアミノ酸1〜36の後に、エキセンディン−4のアミノ酸1〜39が続く。Aは付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、GLP−1およびエキセンディン−4のアミノ酸数よりも1大きく、好ましくはアミン・リジンである。
エキセンディン−3(z−k)GLP−1(x−y)A1−75
ここには、エキセンディン−3およびGLP−1のキメラペプチドが含まれ、この場合、zには、1〜38の数字を割り当てることができるが、zは、2〜39の数字を割り当てることができるkより小さい。Aは付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、yよりも1大きい。付加基は、好ましくは、アミン・リジンである。
エキセンディン−4(z−k)GLP−1(x−y)A1−75
ここには、エキセンディン−4およびGLP−1のキメラペプチドが含まれ、この場合、zには、1〜38の数字を割り当てることができるが、zは、2〜39の数字を割り当てることができるkより小さい。Aは付加基であり、どの位置にあってもよいが、好ましくはC末端にあって、yよりも1大きい。付加基は、好ましくは、アミン・リジンである。
【0028】
キメラGLP−1(x−y)エキセンディン−3(z−k)A1−75またはGLP−1(x−y)エキセンディン−4(z−k)A1−75ペプチドの典型例は、GLP−1(7−36)エキセンディン(33−39)LysアミドからなるMC12である(合成は、Peptide Specialty Laboratories GmbH社において、メリフィールド法に従って行なわれ、HPLCで精製される)。
MC12:(Ser37, Gly38, Ala39, Pro40, Pro41, Pro42, Ser43, DTPA−Lys44アミド) GLP1(7−36)
MC12は、C末端にアミン、好ましくは44位のリジンと、キレーターDTPA、ならびにエキセンディン(33−39)Lysアミドの7アミノ酸の鎖を保有する、GLP−1(7−36)の全アミノ酸配列からなる。したがってキメラペプチドGLP−1(7−36)エキセンディン(33−39)Lysアミドになる。
【0029】
ここで、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4の、長さの異なるペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4の、長さの異なるキメラペプチドであって、それらの基礎となるGLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のアミノ酸配列のさまざまな組み合わせを含有するものが存在することは、当業者には明らかである。
【0030】
本発明に基づく、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドであって、アミンによりC末端で修飾され、GLP−1受容体ではそのN末端を介して結合するものには、上述したペプチドGLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4とは一箇所以上の位置で識別することができ、かつそれらの配列に対して高い相同性を持つ分子も、含まれる。この場合、相同性とは、少なくとも40%の配列一致度、特に60%の一致度、好ましくは80%を超える一致度、とりわけ好ましくは90%を超える一致度を意味する。上述したアミノ酸配列からの逸脱は、欠失、置換及び(又は)挿入によって生じうる。
【0031】
さらにまた、本発明によるGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドであって、C末端が修飾されていないものも、製造される。それらは特に糖尿病治療剤の製造に使用される。
GLP−1(x−y)エキセンディン−3(z−k)
GLP−1(x−y)エキセンディン−4(z−k)
エキセンディン−3(z−k)GLP−1(x−y)
エキセンディン−4(z−k)GLP−1(x−y)
MC20:(Ser33, Gly34, Ala35, Pro36, Pro37, Pro38, Ser39)エキセンディンGLP1(7−36)
MC20は、C末端にエキセンディン(33−39)の7アミノ酸の鎖を保有する、GLP−1(7−36)の全アミノ酸配列からなる。したがって無修飾キメラペプチドGLP−1(7−36)エキセンディン(33−39)になる。
ペプチド誘導体およびキメラペプチドの標識化
本発明のペプチド誘導体およびキメラペプチドを、適切な安定化緩衝液に、例えば金属を安定化する目的で、好ましくは0.5M酢酸ナトリウム(pH5.4)に、約10−3Mの濃度で溶解する。あるいは、蛍光色素の安定化には酢酸アンモニウムの緩衝液が好ましく、化学療法剤および造影剤の安定化には生理緩衝液が好ましい。標識化は、付加基Aにおいて、放射性核種、MRI造影剤、蛍光色素または化学療法剤の結合によって行なわれる。用途がインビトロであるかインビボであるかに応じて、異なる方法が適用される。
【0032】
以下の元素が、放射性核種として、共有結合または錯体結合に使用される。
【0033】
【表1】

例えば以下に挙げる蛍光色素/発色団を使用した:フルオレセイン、ローダミン、クマリン、BODIPY、ピレン(カスケードブルー)、ルシファーイエロー、フィコビリタンパク質、シアニン、アレクサフルオロ(AlexaFluoro)、オレゴングリーン、テキサスレッド、クマリンおよびそれらの誘導体。
【0034】
使用することができるキレーターには、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、あるいはN,N−ビス(2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチルグリシン)、あるいはDOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)、HYNIC(6−ヒドラジノピリジン−3−カルボン酸)、MAG3(メルカプトアセチル−グリシルグリシルグリシン)、N4(1,4,8,11−テトラアザウンデカン)、および上記キレーターの全ての公知の誘導体が含まれる。
【0035】
使用することができるMRI造影剤には、ガドリニウム、マンガン、鉄、ユーロピウム、銅、ニッケル、クロム、プラセオジム、ジスプロシウムもしくはホルミウムまたはそれらの化合物が含まれ、さらに、ペルフルオロカーボンなどの陰性MRI造影剤、ならびにF−19、H−1、P−31、Na−19などのMRI分光法用同位体も含まれる。本発明にいう陰性MRI造影剤とは、MRIシグナルを消失させるか、著しく減弱する(すなわち増幅しない)ものである。
【0036】
使用することができる化学療法剤には、アルキル化剤、インターカレーター、代謝拮抗物質、酵素阻害剤および酵素遮断剤、ならびに紡錘体毒(例えばアルキルスルホネート、エチルイミン、ニトロソ尿素類、ナイトロジェンマスタード誘導体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、ポドフィリン誘導体、タキサン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、他の細胞増殖抑制性抗生物質、白金化合物、カンプトテシン誘導体、種々のホルモン、成長因子、インターフェロンまたはインターロイキン)、その他、Preiss,Dornhoff,Hagmann,Schmieder著「Onkologie 2004/05」(Zuckschwerdtverlag発行)の230〜287頁に記載されている化学療法剤、ならびに他の全ての細胞増殖抑制物質または細胞毒性物質が含まれる。
【0037】
本発明のタンパク質誘導体およびキメラタンパク質を使用する用途のタイプに応じて、そしてまた、上述のタンパク質を使って製造される、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するための薬剤のタイプに応じて、標識化反応は、2種類の方法で行なわれることになる。
【0038】
放射線療法におけるインビトロ用途のための標識化
適切な安定化緩衝液、好ましくは0.5M酢酸ナトリウム(pH5.4)に、約10−3Mの濃度で溶解しておいた本発明のペプチド誘導体またはキメラペプチド3μLを、標識化のために、0.5M酢酸ナトリウム(pH5.4)500μLに加える。pH値は3〜6である。次に、0.1M HCl 500μL中の111InCl(Tyco,オランダ・ペッテン)185MBqを加え、37℃で30分間インキュベートする。最後に、全ての結合部位を飽和させるために、natInClの10−3M溶液3μLを加えた後、さらに30分間インキュベートする。品質管理はHPLCカラムで行なう。
カラム:CC 250/4.6 Nucleosil 120−5 C18(Machery−Nagel,スイス・エンジンゲン)
勾配:0→5分 100% 0.05M NHOOCCH,pH5.4(緩衝液A);5→25分 100%緩衝液A→50%緩衝液A/50%アセトニトリル)。
インビトロ用途のための品質管理は、98%を超える標識化収率で満たされる。このようにして、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するために、例えば膵臓細胞の細胞培養物および組織培養物中で使用することができる、放射性標識薬剤を入手することができる。
【0039】
放射線療法におけるインビボ用途のための標識化
適切な安定化緩衝液、好ましくは0.5M酢酸ナトリウム(pH5.4)に、約10−3Mの濃度で溶解しておいた本発明のペプチド誘導体またはキメラペプチド3μLを、標識化のために、0.5M酢酸ナトリウム(pH5.4)500μLに加える。最後に、0.1M HCl 500μL中の111InCl(Tyco,オランダ・ペッテン)185MBqを加え、37℃で30分間インキュベートする。品質管理はHPLCカラムで行なう。
カラム:CC 250/4.6 Nucleosil 120−5 C18(Machery−Nagel,スイス・エンジンゲン)
勾配:0→5分 100% 0.05M NHOOCCH,pH5.4(緩衝液A);5→25分 100%緩衝液A→50%緩衝液A/50%アセトニトリル)。
インビボ用途のための品質管理は、98%を超える標識化収率で満たされる。
【0040】
このようにして、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するために、例えば患者内の腫瘍を検出するために使用することができる、放射性標識薬剤を入手することができる。
【0041】
「患者」という用語はヒトおよび脊椎動物を等しく意味する。したがって本薬剤はヒト医学にも獣医学にも応用することができる。本発明に基づく治療的および診断的に有効な薬剤は、許容できる薬学的組成物の一部として、以下のいずれかの形態で患者に与えられる:経口、直腸、非経口、静脈内/動脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、槽内、頭蓋内、腟内,
腹腔内、脈管内、局所(散剤、軟膏または点滴剤)または噴霧(エアロゾル)。必要な用量は、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患の個々の診断例および治療例ごとに、医師によって決定されることになる。
【0042】
内部移行研究
内部移行研究により、本発明のペプチド誘導体およびキメラタンパク質(どちらもインビトロ放射性標識されたもの)の細胞内への輸送を、典型的に示す。
【0043】
6穴プレートに100,000個のGLP−1受容体トランスフェクトCHO細胞を播種する。細胞を、それらがコンフルエントになるまで成長させる。次に四つの群を形成させる。
【0044】
第1群:全結合、PBSで洗浄
100,000cpmの111In(10−15Mol)標識ペプチドを培地2mLに加え、37℃で1時間インキュベートする。次に、それをPBSで3回洗浄し、20mM MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)+0.1%Triton−X−100(pH7.4)で、細胞を分離する。細胞内への取り込みをγ線計数器で測定する。ブラッドフォード法に基づくBio−Rad(ドイツ・ミュンヘン)製のタンパク質アッセイキットを使って、タンパク質含量により、細胞数を測定する。結果をcpm/μg−タンパク質の形で表す。
【0045】
第2群:非特異的結合、PBSで洗浄
20μLの10−3M GLP−1溶液および100,000cpmの111In標識ペプチドを培地2mLに加え、37℃で1時間インキュベートする。次に、それをPBSで3回洗浄し、20mM MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)+0.1%Triton−X−100(pH7.4)で、細胞を分離する。細胞内への取り込みをγ線計数器で測定する。ブラッドフォード法に基づくBio−Rad(ドイツ・ミュンヘン)製のタンパク質アッセイキットを使って、タンパク質含量により、細胞数を測定する。結果をcpm/μg−タンパク質の形で表す。
【0046】
第3群:全結合、酸で洗浄
20μLの10−3M GLP−1溶液および100,000cpmの111In標識ペプチドを培地2mLに加え、37℃で1時間インキュベートする。次に、それを0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)で1回、PBSで2回洗浄し、20mM MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)+0.1%Triton−X−100(pH7.4)で、細胞を分離する。細胞内への取り込みをγ線計数器で測定する。ブラッドフォード法に基づくBio−Rad(ドイツ・ミュンヘン)製のタンパク質アッセイキットを使って、タンパク質含量により、細胞数を測定する。結果をcpm/μg−タンパク質の形で表す。
【0047】
第4群:非特異的結合、酸で洗浄
20μLの10−4M GLP−1溶液および100,000cpmの111In標識ペプチドを培地2mLに加え、37℃で1時間インキュベートする。次に、それを0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)で1回、PBSで2回洗浄し、20mM MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)+0.1%Triton−X−100(pH7.4)で、細胞を分離する。細胞内への取り込みをγ線計数器で測定する。ブラッドフォード法に基づくBio−Rad(ドイツ・ミュンヘン)製のタンパク質アッセイキットを使って、タンパク質含量により、細胞数を測定する。結果をcpm/μg−タンパク質の形で表す。
評価:
【0048】
【数1】

【0049】
【表2】

これらの結果は細胞内への良好な輸送が起こっていることを示す。
結合研究
結合研究により、本発明のインビボ標識性放射性標識ペプチド誘導体およびキメラタンパク質によって起こるGLP−1受容体への特異的結合を示す。6穴プレートに100,000個のGLP−1受容体トランスフェクトCHO細胞を播種する。細胞を、それらがコンフルエントになるまで成長させる。次に100,000cpmの111In標識ペプチド2mLを加える。結合を調べるために、次にそれを10−3 GLP−1溶液20μLで遮断する。
【0050】
【表3】

例えばヘアレスマウスなどの齧歯類でインビボ生体内分布を示すことができる。そのために、GLP−1トランスフェクトCHO細胞をヘアレスマウスに注射する。約3〜5週間後に、腫瘍は約300mgの大きさに成長していた。次に、本発明の111In標識ペプチド37MBqをマウスに注射し、4時間後にγカメラで測定する。この手法の過程で、腎臓による迅速なクリアランスおよび腎臓における取り込みがあった。GLP−1受容体陽性腫瘍における高度な取り込みもあったが、GLP−1受容体陰性腫瘍は取り込みをほとんど示さなかった。膵臓でもわずかな取り込みがあったが、他の臓器は目に見える取り込みを示さなかった。
【0051】
エクスビボ生体内分布研究を、各群4匹のマウスからなる群で行なう。ここでは555kBqのIn−111標識MC10を尾静脈に注射する。注射の1、4および24時間後に、全てのマウスを屠殺し、その臓器を摘出する。
【0052】
放射能の取り込みを測定し、臓器を重さを測定する。臓器重量1gあたりの注射した用量の%を計算する。結果は以下のとおりである。
【0053】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンによるC末端での修飾およびGLP−1受容体へのN末端の結合を特徴とする、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項2】
ペプチドGLP−1(1−37):
H-His-Asp-Glu-Phe-Glu-Arg-His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-Gly-OH
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
およびエキセンディン−3:
H-His-Ser-Asp-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
Pro-Ser-NH2
38 39
またはエキセンディン−4:
H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
Pro-Ser-NH2
38 39
のアミノ酸配列を完全にまたは部分的に有する、請求項1に記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項3】
GLP−1(x−y)A1−37、またはエキセンディン−3(z−k)A1−40、またはエキセンディン−4(z−k)A1−40
[式中、
xは、GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸1〜36を表し、
yは、GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸2〜37を表し、
zは、エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸1〜38を表し、
kは、エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸2〜39を表し、
そしてAは、シグナル分子としての、またはシグナル分子を結合するための、またはそれらを安定化するための、一種以上のアミノ酸またはその誘導体からなる付加基であって、指数部は、その付加基を見いだすことができるアミノ酸配列内の位置を示す]
に由来する、請求項1に記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項4】
付加基Aが好ましくはC末端に位置して、アミンを表す、請求項3に記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項5】
付加基Aが好ましくはリジンである、請求項3又は4に記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項6】
付加基Aが遊離アミンを持つアミノ酸、たとえばオルニチン、または遊離アミンを持つ有機基である、請求項3〜5のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項7】
放射性核種もしくはMRI造影剤、蛍光色素または化学療法剤による標識化のために、キレーターが付加基Aに結合される、請求項3〜6のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項8】
キレーターが、N,N−ビス(2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチルグリシン)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)、HYNIC(6−ヒドラジノピリジン−3−カルボン酸)、MAG3(メルカプトアセチル−グリシルグリシルグリシン)、N4(1,4,8,11−テトラアザウンデカン)、および全ての公知の誘導体、好ましくはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)である、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項9】
標識化が放射性核種、MRI造影剤、蛍光色素及び(又は)化学療法剤の結合である、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項10】
蛍光色素が、特に、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、BODIPY、ピレン(カスケードブルー)、ルシファーイエロー、フィコビリタンパク質、シアニン、アレクサフルオロ、オレゴングリーン、テキサスレッド、クマリンおよびそれらの誘導体より成る群から選ばれる、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項11】
放射性核種が、特に、F−18、Cu−64、Cu−67、Ga−67、Ga−68、Y−86、Y−90、Tc−99m、In−111、I−123、I−124、I−131、Lu−177、Re−186、Re−188、Pt−193m、Pt−195m、Ac−225、At−211、Bi−213、Sm−153またはEr−169より成る群から選ばれる、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項12】
MRI造影剤が、ガドリニウム、マンガン、鉄、ユーロピウム、銅、ニッケル、クロム、プラセオジム、ジスプロシウムもしくはホルミウム、またはそれらの化合物であるか、あるいはペルフルオロカーボン、またはF−19、H−1、P−31、Na−19である、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項13】
化学療法剤が、特に、アルキルスルホネート、エチルイミン、ニトロソ尿素類、ナイトロジェンマスタード誘導体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、ポドフィリン誘導体、タキサン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、他の細胞増殖抑制性抗生物質、白金化合物、カンプトテシン誘導体、ホルモン、成長因子、インターフェロンもしくはインターロイキン、または細胞増殖抑制性物質もしくは細胞毒性物質より成る群から選ばれる、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項14】
インビトロ用途のための放射性核種の結合による標識化が、natInCLによる結合部位の飽和によって行なわれる、上記請求項のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体。
【請求項15】
GLP−1およびエキセンディン(このエキセンディンはエキセンディン−3またはエキセンディン−4から選択される)のキメラペプチドであって、
ペプチドGLP−1(1−37):
H-His-Asp-Glu-Phe-Glu-Arg-His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-Gly-OH
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
およびエキセンディン−3:
H-His-Ser-Asp-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
Pro-Ser-NH2
38 39
またはエキセンディン−4:
H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-
19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
Pro-Ser-NH2
38 39
のアミノ酸配列を完全にまたは部分的に有することを特徴とする、キメラペプチド。
【請求項16】
GLP−1(x−y)エキセンディン−3(z−k)、GLP−1(x−y)エキセンディン−4(z−k)、エキセンディン−3(z−k)GLP−1(x−y)またはエキセンディン−4(z−k)GLP−1(x−y)
[式中、
xは、GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸1〜36を表し、
yは、GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸2〜37を表し、
zは、エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸1〜38を表し、
kは、エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸2〜39を表す]
に由来する、請求項15に記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項17】
GLP−1(x−y)エキセンディン−3(z−k)A1−75、GLP−1(x−y)エキセンディン−4(z−k)A1−75、エキセンディン−3(z−k)GLP−1(x−y)A1−75またはエキセンディン−4(z−k)GLP−1(x−y)A1−75
[式中、
xは、GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸1〜36を表し、
yは、GLP−1アミノ酸配列のアミノ酸2〜37を表し、
zは、エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸1〜38を表し、
kは、エキセンディン−3またはエキセンディン−4アミノ酸配列のアミノ酸2〜39を表し、
そしてAは、シグナル分子としての、またはシグナル分子を結合するための、またはそれらを安定化するための、一種以上のアミノ酸またはその誘導体からなる付加基であって、指数部は、その付加基を見いだすことができるアミノ酸配列内の位置を示す]
に由来する、請求項15に記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項18】
付加基Aが好ましくはC末端に位置して、アミンを表す、請求項17に記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項19】
付加基Aが好ましくはリジンである、請求項17に記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項20】
付加基Aが、好ましくは、遊離アミンを持つアミノ酸、例えばオルニチン、または遊離アミンを持つ有機基である、請求項17に記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項21】
放射性核種もしくはMRI造影剤、蛍光色素または化学療法剤による標識化のために、キレーターが付加基Aに結合される、請求項17〜20のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項22】
キレーターが、N,N−ビス(2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチルグリシン)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)、HYNIC(6−ヒドラジノピリジン−3−カルボン酸)、MAG3(メルカプトアセチル−グリシルグリシルグリシン)、N4(1,4,8,11−テトラアザウンデカン)、および全ての公知の誘導体、好ましくはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)である、請求項17〜21のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項23】
標識化が放射性核種、MRI造影剤、蛍光色素及び(又は)化学療法剤の結合である、請求項17〜22のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項24】
蛍光色素が、特に、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、BODIPY、ピレン(カスケードブルー)、ルシファーイエロー、フィコビリタンパク質、シアニン、アレクサフルオロ、オレゴングリーン、テキサスレッド、クマリンおよびそれらの誘導体より成る群から選ばれる、請求項17〜23のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項25】
放射性核種が、特に、F−18、Cu−64、Cu−67、Ga−67、Ga−68、Y−86、Y−90、Tc−99m、In−111、I−123、I−124、I−131、Lu−177、Re−186、Re−188、Pt−193m、Pt−195m、Ac−225、At−211、Bi−213、Sm−153またはEr−169より成る群から選ばれる、請求項17〜24のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項26】
MRI造影剤が、ガドリニウム、マンガン、鉄、ユーロピウム、銅、ニッケル、クロム、プラセオジム、ジスプロシウムもしくはホルミウム、またはそれらの化合物であるか、あるいはペルフルオロカーボン、またはF−19、H−1、P−31、Na−19である、請求項17〜25のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項27】
化学療法剤が、特に、アルキルスルホネート、エチルイミン、ニトロソ尿素類、ナイトロジェンマスタード誘導体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、ポドフィリン誘導体、タキサン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、他の細胞増殖抑制性抗生物質、白金化合物、カンプトテシン誘導体、ホルモン、成長因子、インターフェロンもしくはインターロイキン、または細胞増殖抑制性物質もしくは細胞毒性物質より成る群から選ばれる、請求項17〜26のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項28】
インビトロ用途のための放射性核種の結合による標識化が、natInCLによる結合部位の飽和によって行なわれる、請求項17〜27のいずれか1つに記載の、GLP−1およびエキセンディンのキメラペプチド。
【請求項29】
GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患の診断剤および治療剤を製造するための、請求項17〜28のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドの使用。
【請求項30】
組織中のインスリン産生細胞の密度を決定するための、請求項1〜28のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドの使用。
【請求項31】
GLP−1受容体の発現またはそれらの密度を決定するための、請求項1〜28のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4のペプチド誘導体、ならびにGLP−1、エキセンディン−3またはエキセンディン−4のキメラペプチドの使用。
【請求項32】
請求項1および17のいずれか1つに記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4の標識ペプチド誘導体、またはGLP−1、エキセンディン−3もしくはエキセンディン−4の標識キメラペプチドを有する、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するための薬剤。
【請求項33】
請求項1および16に記載の、GLP−1、エキセンディン−3およびエキセンディン−4の非標識ペプチド誘導体、またはGLP−1、エキセンディン−3もしくはエキセンディン−4の非標識キメラペプチドを有する、GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するための薬剤。
【請求項34】
標識化が放射性核種、MRI造影剤、蛍光色素及び(又は)化学療法剤の結合を有する、請求項32に記載の薬剤。
【請求項35】
GLP−1受容体発現が関与する良性疾患および悪性疾患を診断および治療するための、請求項32又は33に記載の薬剤の使用。
【請求項36】
神経内分泌腫瘍(NET)、特にインスリノーマおよび小細胞気管支癌を診断および治療するための、請求項32又は33に記載の薬剤の使用。
【請求項37】
シンチグラフィ、PET、SPECT、MRI、光診断、受容体媒介型の化学療法、受容体媒介型の細胞増殖抑制療法または細胞毒療法、および放射性ペプチド療法における、請求項32に記載の薬剤の使用。

【公表番号】特表2008−511557(P2008−511557A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528593(P2007−528593)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001503
【国際公開番号】WO2006/024275
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(506110690)フィリップス−ウニベルジテート・マールブルク (8)
【Fターム(参考)】