説明

GLP−1分子の投与方法

【課題】ペプチドの有効な経口デリバリーに至るには数多くの障壁がある。タンパクやペプチドが吸収部位へ到達する前に、消化管の高い酸含量や遍在する消化酵素がタンパクやペプチドを分解することが多い。さらに、多くのペプチドが小腸における上皮膜の細胞を効率的に通過して血流に達することができない。最終的に、多くの薬物は、消化管で遭遇する低いpHレベルでは不溶性になる。
【解決手段】本発明は、非共有結合様式でGLP-1化合物と相互作用して、化合物が胃の膜を通過し、かつその治療的活性を残しているようにする特定のデリバリー剤分子の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド−1化合物および特定のデリバリー剤を含む経口投与に有用な製剤に関する。この製剤の経口投与は、2型糖尿病ならびに種々の他の健康状態の治療に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
過去数十年にわたって、糖尿病の治療を改善するために継続的な研究が行われてきている。糖尿病の人々の約90%が、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)としても知られる2型糖尿病である。2型糖尿病は、一般に、依然としてインスリンを作り出すが、身体の細胞によってインスリンを有効に用いることができない。これは、血糖値の上昇に応答して生産されるインスリンの量が細胞が、グルコースを有効に吸収して血糖値を低下させるのに十分ではないというのが主たる原因である。
多数の臨床前および臨床調査データが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)化合物が、2型糖尿病および他の健康状態の治療薬として非常に有望であるということを示唆している。GLP-1は、インスリン分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、胃内容排出の阻害、グルコース利用の増進および体重減少の誘発などの数多くの生物学的効果を誘発する。さらに、臨床前試験が、GLP-1が、疾患の進行として起こるβ細胞変性を防止するようにも作用するということを示唆している。おそらく、最も顕著なGLP-1の特徴は、インスリン療法またはインスリン発現を増加することによって作用するいくつかのタイプの経口療法を用いる場合に見られる高血糖に関連する危険なしでインスリン分泌を刺激するその能力である。
【0003】
しかし、GLP-1治療薬の発達は非常に困難なものである。これは、溶液製剤製造工程中およびインビボにおけるペプチドの不安定性が主たる原因である。高血糖または他の健康状態を治療するためにGLP-1化合物を用いる唯一の刊行された臨床試験は、皮下注射または継続的皮下注入または継続的な静脈内投与によってデリバリーされうるようにGLP-1化合物を製剤化することを含んでいる。体重減少を望んでいる多くの2型糖尿病または肥満の患者は、1日数回の注射を含む治療処方を受けることを喜んではいない。したがって、経口デリバリーなどの別の非侵入性手段によってデリバリーされうるGLP-1化合物療法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許番号5,541,155
【特許文献2】米国特許番号5,693,338
【特許文献3】米国特許番号5,976,569
【特許文献4】米国特許番号5,643,957
【特許文献5】米国特許番号5,955,503
【特許文献6】米国特許番号6,100,298
【特許文献7】米国特許番号5,650,386
【特許文献8】米国特許番号5,866,536
【特許文献9】米国特許番号5,965,121
【特許文献10】米国特許番号5,989,539
【特許文献11】米国特許番号6,001,347
【特許文献12】米国特許番号6,071,510
【特許文献13】米国特許番号5,820,881
【特許文献14】米国特許番号6,242,495
【特許文献15】WO 02/02509
【特許文献16】WO 01/51454
【特許文献17】WO 01/44199
【特許文献18】WO 01/32130
【特許文献19】WO 00/59863
【特許文献20】WO 00/50386
【特許文献21】WO 00/47188
【特許文献22】WO 00/40203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念ながら、ペプチドの有効な経口デリバリーに至るには数多くの障壁がある。タンパクやペプチドが吸収部位へ到達する前に、消化管の高い酸含量や遍在する消化酵素がタンパクやペプチドを分解することが多い。さらに、多くのペプチドが小腸における上皮膜の細胞を効率的に通過して血流に達することができない。最終的に、多くの薬物は、消化管で遭遇する低いpHレベルでは不溶性になる。
【0006】
GLP-1化合物が溶液製剤中有で相対的に不安定であり、かなり狭い条件下でのみ溶液中で存続し、溶液製剤で投与した場合にインビボの半減期が相対的に短いという事実は、これらの化合物が経口経路で効果的にデリバリーされえないということを示唆した。したがって、GLP-1化合物を生物学的に活性な分子が経口投与後に血流に吸収されるように製剤しうることは驚くべきことであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非共有結合様式でGLP-1化合物と相互作用して、化合物が胃の膜を通過し、かつその治療的活性を残しているようにする特定のデリバリー剤分子の使用に関する。本発明で用いるデリバリー剤は一連の米国特許(米国特許番号5,541,155;5,693,338;5,976,569;5,643,957;5,955,503;6,100,298;5,650,386;5,866,536;5,965,121;5,989,539;6,001,347;6,071,510;5,820,881;および6,242,495を参照;WO 02/02509;WO 01/51454;WO 01/44199;WO 01/32130;WO 00/59863;WO 00/50386;WO 00/47188;およびWO 00/40203も参照)に開示されているが、これらのデリバリー剤とGLP-1化合物を含む製剤の経口投与は、開示も示唆もされていない。さらに、1種以上のクラスのデリバリー剤と組み合わせて、特定のクラスの化合物を効率的にデリバリーすることができるかどうかに、数多くのパラメーターが影響を与える。たとえば、ペプチドのコンホメーション、特定の製剤条件下での分子における表面荷電、溶解度プロフィール、製剤された成分としての安定性ならびにプロテアーゼ消化を受けやすさ、およびインビボ安定性のすべてが、化合物を経口デリバリーする能力に影響を及ぼす。
【0008】
本発明は、経口投与することができる、GLP-1化合物およびデリバリー剤を含む新規な製剤の開発を包含する。本発明は、経口投与しうる、GLP-1化合物および特定のデリバリー剤を含む製剤を提供する。GLP-1化合物は、天然のGLP-1;GLP-1フラグメント;GLP-1類縁体;GLP-1の天然体、フラグメントまたは類縁体の誘導体;ならびにエキセンジン3およびエキセンジン4でありうる。デリバリー剤は、米国特許番号5,541,155;5,693,338;5,976,569;5,643,957;5,955,503;6,100,298;5,650,386;5,866,536;5,965,121;5,989,539、6,001,347;6,071,510;5,820,881;および6,242,495;およびWO 02/02509;WO 01/51454;WO 01/44199;WO 01/32130;WO 00/59863;WO 00/50386;WO 00/47188;およびWO 00/40203に記載のデリバリー剤から選ばれる。
【0009】
好ましいGLP-1化合物は、1つ以上の以下の位置:8、12、16、18、19、20、22、25、27、30、33および37に変更を含む類縁体または類縁体の誘導体であり、Val8 GLP-1(7-37)OHと比べて、強化された効力を示す。好ましいGLP-1化合物を、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13または配列番号:14においても記載する。より好ましいGLP-1化合物は、配列番号:2、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14の化合物である。
【0010】
好ましいデリバリー剤を第1表に記載する。より好ましいデリバリー剤は、1、2、4、5、6、9、10、11、13、14、15、20、21、22、23、24、26、28、30、31、35、36、38、39、40、41、42、43、44、46、51、52および54から選ばれる第1表の番号に対応するデリバリー剤である。
【0011】
また本発明は、刺激を必要とする患者においてGLP-1受容体を刺激する方法を包含し、該方法は、患者に有効量の本明細書に記載の経口製剤を投与するステップを含む。GLP-1受容体刺激を必要とする患者として、非インスリン依存性糖尿病および肥満の患者が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で用いるアミノ酸に対する三文字略語コードは、PCT実施細則のアペンディックス2、アネックスCの表3および37C.F.R. SS 1.822(d)(1)(2000)に含まれるリストに従う。
【0013】
本明細書に開示し、記載する本発明の目的のために、次の用語および略語を以下のとおり定義する。
【0014】
本明細書で用いる用語「製剤」は、GLP-1化合物が胃を通って全身に循環してGLP-1受容体に結合し、インスリン分泌活性をもたらすシグナルトランスダクション経路を開始する能力をもつように経口投与される一緒になったGLP-1化合物および特定のデリバリー剤を意味する。製剤は、GLP-1がGLP-1受容体に結合する能力を保持するのであれば、必要に応じて他の作用剤を含むことができる。
【0015】
本明細書で用いる用語「経口」は、化合物が胃、小腸または大腸を通過して全身に循環するような、口による化合物のデリバリーを意味する。
【0016】
本明細書で用いる用語「GLP-1化合物」は、GLP-1受容体に結合してインスリン分泌活性をもたらすシグナルトランスダクション経路を開始する能力をもつ、天然のGLP-1ポリペプチド(GLP-1(7-37)OHおよびGLP-1(7-36)NH2)、GLP-1フラグメント、GLP-1類縁体、天然のGLP-1ポリペプチド,GLP-1フラグメントまたはGLP-1類縁体のGLP-1誘導体およびエキセンジン3およびエキセンジン44を包含するポリペプチドを意味する。
【0017】
用語「インスリン分泌活性」は、グルコースレベルの上昇に応答して、インスリン分泌を刺激し、それによって細胞によるグルコース取り込みを引き起こし、血漿グルコースレベルを低下させる能力を意味する。たとえば、インスリン分泌活性は、実施例1に記載の方法を用いて決定することができる。GLP-1分子の存在下に、膵島細胞がバックグラウンドレベル以上のインスリンレベルを分泌するならば、GLP-1分子はインスリン分泌活性を有する。
【0018】
用語「DPP IV耐性」は、拡張された代謝安定性および改善された生物活性をもつGLP-1分子を意味する。たとえば、DPP IV耐性は、実施例2に記載の方法を用いて決定することができる。DPP IVの存在下に、GLP-1分子が天然のGLP-1以上の拡張された代謝安定性をもつならば、GLP-1分子はDPP IV耐性を有する。DPP IV耐性GLP-1分子は、DPP IV認識部位(8位)においてアミノ酸変化を有することができるか、またはDPP IV耐性ペプチドは、認識部位へのDPP IVの到達性を制限する結合基を有することができ、あるいはその両方でありうる。
【0019】
「GLP-1フラグメント」は、GLP-1(7-37)OHまたはその類縁体もしくは誘導体のN末端およびC末端から1個以上のアミノ酸をトランケートした後に得られるポリペプチドである。GLP-1(7-37)OHを記述するのに用いる命名法は、GLP-1フラグメントにも適用できる。たとえば、GLP-1(9-36)OHは、N末端から2個のアミノ酸およびC末端から1個のアミノ酸をトランケートすることによって得られたGLP-1フラグメントを意味する。フラグメント内のアミノ酸は、GLP-1(7-37)OHにおける対応するアミノ酸と同じ数によって示される。たとえば、GLP-1(7-37)OHと同様に、GLP-1(9-36)OHにおけるN末端グルタミン酸は9位にあり;12位はフェニルアラニンによって占められ;および22位はグリシンによって占められる。GLP-1(7-36)OHでは、GLP-1(7-37)OHの37位のグリシンは欠失している。
【0020】
「GLP-1類縁体」は、類縁体がインスリン分泌活性をもつように、GLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-37)OHのフラグメントに十分な相同性を有している。GLP-1類縁体が、1、2、3、4または5個のアミノ酸がGLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-37)OHのフラグメントの対応する位置におけるアミノ酸とは相異するように変更された、GLP-1(7-37)OHまたはそのフラグメントのアミノ酸配列を有するのが好ましい。本明細書においてGLP-1化合物を示すのに用いた用語において置換アミノ酸およびその位置は、親構造の前に示される。たとえば、Glu22 GLP-1(7-37)OHは、GLP-1(7-37)OHの22位に通常見出されるグリシンがグルタミン酸で置換されたGLP-1化合物を意味し;Val8 Glu22 GLP-1(7-37)OHは、GLP-1(7-37)OHの8位に見出されるアラニンおよび22位に通常見出されるグリシンが、それぞれバリンおよびグルタミン酸で置換されたGLP-1化合物を意味する。
【0021】
GLP-1分子には、1個以上のアミノ酸が、GLP-1(7-37)OHまたはそのフラグメントもしくは類縁体のN末端および/またはC末端に加えられたポリペプチドも含まれる。このタイプのGLP-1分子は約39アミノ酸以下であるのが好ましい。「伸長された」GLP-1分子は、GLP-1(7-37)OHにおける対応するアミノ酸と同じ数によって示される。たとえば、GLP-1(7-37)OHのN末端に2個のアミノ酸を付加することによって得られたGLP-1では、N末端アミノ酸は、5位に位置し;およびGLP-1(7-37)OHのC末端に1個のアミノ酸が付加されることによって得られたGLP-1分子では、C末端アミノ酸は、38位に位置する。したがって、これらの「伸長された」GLP-1化合物の両方において、GLP-1(7-37)OHと同様に、12位はフェニルアラニンによって占められ、22位はグリシンによって占められる。伸長GLP-1分子の1−6アミノ酸は、GLP-1(1-37)OHの対応する位置のアミノ酸と同じか、または保存的置換であるのが好ましい。伸長GLP-1分子の38−45アミノ酸は、グルカゴンまたはエキセンジン−4の対応する位置のアミノ酸と同じか、または保存的置換であるのが好ましい。
【0022】
「GLP-1誘導体」は、GLP-1、GLP-1フラグメントまたはGLP-1類縁体のアミノ酸配列を有するが、付加的に1個以上のそのアミノ酸側鎖、α炭素原子、末端アミノ基または末端カルボン酸基の化学的修飾を有する分子を意味する。化学的修飾として、化学基の付加、新たな結合の創成および化学基の除去が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミノ酸側鎖の修飾として、リシンε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジンまたはリシンのN-アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギンカルボン酸のアルキル化およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。末端アミノ基の修飾として、脱アミノ、N低級アルキル、N-ジ-低級アルキルおよびN-アシル修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。末端カルボキシ基の修飾として、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミドおよび低級アルキルエステル修飾が挙げられるが、これらに限定されるものではない。低級アルキルは、C1-C4アルキルである。さらに、1個以上の側鎖または末端基を、タンパク質化学者に公知の保護基によって保護することができる。アミノ酸のα炭素は、モノまたはジメチル化されてもよい。
【0023】
本発明の目的のために、ビトロGLP-1受容体シグナリングアッセイを用いて、部分的伸長GLP-1が、インビボでインスリン分泌活性を示すかどうかを決定する。本発明に包含される伸長GLP-1ペプチドは、Val8 GLP-1(7-37)OHとして知られるDPP IV耐性GLP-1類縁体のインビトロ効力の10分の1以上のインビトロ効力を有する。本発明の伸長GLP-1ペプチドが、Val8 GLP-1(7-37)OHと同様あるいはそれよりも強力であるのが、より好ましい。
本明細書で用いる「インビトロ効力」は、セルベースアッセイにおけるGLP-1受容体を活性化するペプチドの能力の尺度である。インビトロ効力は、1回用量反応試験において50%の活性をもたらす化合物の有効濃度である「EC50」で表す。本発明の目的として、ヒトGLP-1受容体を安定して発現するHEK-293 Aurora CRE-BLAM細胞での蛍光アッセイを用いてインビトロ効力を決定する。これらのHEK-293細胞は、β−ラクタマーゼ(BLAM)遺伝子の発現を推進するcAMP応答エレメント(CRE)を有するDNAベクターを安定して組み込んでいる。GLP-1アゴニストと受容体との相互作用が、cAMP応答エレメントの活性化とそれに続くβ−ラクタマーゼの発現をもたらすシグナルを開始する。次いで、β−ラクタマーゼによって切断されるときに蛍光を放射するβ−ラクタマーゼCCF2/AM基質(Aurora Biosciences Corp.)を、GLP-1アゴニスト効力の尺度を提供するように特定の量のGLP-1アゴニストに暴露された細胞に加えることができる。このアッセイは、Zlokarnikらの(1998)Science 279:84-88(実施例1も参照)にさらに述べられている。実施例1に列挙した化合物についてのEC50値は、上述のBLAMアッセイを用い、0.00003ナノモル〜30ナノモルの範囲の希釈物を用いて用量反応曲線を作成することによって決定した。相対的インビトロ効力の値は、コントロールとしてVal8 GLP-1(7-37)OHで試験を行い、コントロールに基準値1を割り当てることによって確立される。
【0024】
用語「デリバリー剤」は、米国特許番号5,541,155;5,693,338;5,976,569;5,643,957;5,955,503;6,100,298;5,650,386;5,866,536;5,965,121;5,989,539;6,001,347;6,071,510;5,820,881;および6,242,495;およびWO 02/02509;WO 01/51454;WO 01/44199;WO 01/32130;WO 00/59863;WO 00/50386;WO 00/47188;およびWO 00/40203に記載の分子を意味する。デリバリー剤は、一般にアミノ酸から誘導され、本発明の経口製剤において有用である。誘導されたアミノ酸は、ポリアミノ酸およびペプチドの形態をとることもできる。アミノ酸は、少なくとも1つの遊離アミン基を有するカルボン酸であり、天然および合成アミノ酸が含まれる。ポリアミノ酸は、ペプチドまたはエステル、無水物または無水物連結などの連結しうる他の基によって形成される結合によって連結した2個以上のアミノ酸のいずれかである。ペプチドは、ペプチド結合によって結合した2つ以上のアミノ酸である。ペプチドは、2個のアミノ酸を有するジペプチドから数百個のアミノ酸を有するポリペプチドまでの長さで変化することができる。好ましいペプチドとして、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドおよびペンタペプチドが挙げられる。
さらに、本発明のデリバリー剤は、必要に応じて、塩の形態をとる。塩の例として、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸ナトリウム、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、臭化水素酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。
【0025】
本発明の種々の経口製剤は、必要に応じて、医薬的に許容しうる緩衝液を含むことができる。医薬的に許容しうる緩衝液の例として、二塩基性リン酸ナトリウムなどのリン酸塩緩衝液、TRIS、マレイン酸グリシルグリシン、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムまたはグリシン、ヒスチジン、リシンもしくはアルギニンなどのアミン酸が挙げられる。他の医薬的に許容しうる緩衝液は、当業界で公知である。緩衝液が、リン酸塩、TRIS、マレイン酸塩およびグリシンから選ばれるのが好ましい。緩衝液がTRISであるのがより好ましい。
【0026】
TRISの濃度が、約1 mM〜100 mMであるのが好ましい。濃度が、約10 mM and 約50 mMであるのがより好ましく、約20 mMであるのが最も好ましい。
経口製剤のpHは、安定性が提供され、経口投与にとって許容されうるように調節する。pHを約7.0〜約9.0に調節するのが好ましく、pHが約7.4〜8.4であるのがより好ましい。pHが約7.8〜8.4であるのがさらにより好ましい。pHが約7.8〜8.1であるのが最も好ましい。
【0027】
本発明の種々の経口製剤は、必要に応じて、懸濁剤を含むことができる。デリバリー剤には、その溶解度特性により、懸濁剤を必要とするものもある。懸濁剤の一例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの最終濃度が、約2%〜約10%(重量/体積)であるのが好ましい。濃度が、約2%〜約5%(w/v)であるのがより好ましい。濃度が、約3.9%(w/v)であるのが最も好ましい。
本発明の経口製剤は、必要に応じて、コソルベントを含むことができる。デリバリー剤には、その溶解度特性により、コソルベントを必要とするものもある。コソルベントの例として、エタノール、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセタミド、N,N-ジメチルホルムアミド、グリコフロール、エトキシジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300およびポリビニルピロリドンが挙げられる。コソルベントの最終濃度が、約5%〜約30%(体積/体積)であるのが好ましい。濃度が、約10%〜約25%(v/v)であるのがより好ましい。濃度が、約20%(v/v)であるのが最も好ましい。
【0028】
本発明の経口製剤は、必要に応じて、保存剤を含むことができる。保存剤は、抗菌剤として作用するように製剤に加える化合物を意味する。非経口投与において有効であり、許容しうると当業界において知られる保存剤には、フェノール性保存剤、アルキルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、レゾルシノールおよび他の類似の保存剤ならびにその混合物がある。フェノール性保存剤の例として、クレゾールおよびフェノールまたはクレゾールとフェノールの混合物が挙げられる。クレゾールの例として、メタクレゾール、オルトクレゾール、パラクレゾール、クロロクレゾールまたはそれらの混合物が挙げられる。アルキルパラベンは、C1〜C4アルキルパラベンまたはそれらの混合物を意味する。アルキルパラベンの例として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンが挙げられる。濃度は、微生物の成長を妨げることによる保存剤の有効性を維持するのに十分でなければならない。保存剤が、フェノール誘導体であるのが好ましい。保存剤がクレゾールであるのがより好ましい。保存剤が、メタクレゾールであるのがさらにより好ましい。
【0029】
最終混合物における保存剤の好ましい濃度は、約1.0 mg/mL〜約20.0 mg/mLである。最終混合物における保存剤の濃度範囲が、約2.0 mg/mL〜約8.0 mg/mL、約2.5 mg/mL〜約4.5 mg/mLおよび約2.0 mg/mL〜約4.0 mg/mLであるのがより好ましい。最終混合物における保存剤の濃度が、約3.0 mg/mLであるのが最も好ましい。
【0030】
本発明の経口製剤は、必要に応じて、等張化剤を含むことができる。等張化剤は、生理的に耐容性であり、細胞膜を通る水の正味流れを防止するために製剤に適当な浸透張力を授与する化合物を意味する。このような化合物の例として、グリシン、NaClなどの塩類ならびにデキストロース、マンニトールおよびスクロースなどの糖類が挙げられる。これらの化合物が、通例、公知の濃度でこのような目的に用いられる。イオン強度または浸透張力を調節するために一種以上の等張化剤を加えることができる。好ましい等張化剤は、NaClである。NaClの濃度は、好ましくは約10 mM〜200 mM、より好ましくは約50 mM〜150 mMおよび最も好ましくは約100 mMである。
また、投与組成物は、錠剤、カプセル剤または散剤などの粒剤といったような固体の剤形であってもよい。固体投与剤形は、固体の化合物と固体の活性作用剤の混合によって製造することができる。別法として、凍結乾燥、沈殿形成、結晶化および固体分散などの当業界で公知の方法により、化合物および活性作用剤の溶液から固体を得ることができる。
【0031】
本発明における使用に適するGLP-1化合物
本発明のGLP-1化合物は、固相合成化学、天然源からのGLP-1分子の精製、組換えDNA技術またはこれらの方法の組み合わせなどの種々の当業界で公知の方法によって製造することができる。たとえば、GLP-1ペプチドを製造する方法は、米国特許番号5,118,666;5,120,712;5,512,549;5,977,071;および6,191,102に記載されている。当業界での慣例によって、GLP-1(7-37)OHのアミノ末端は、残基番号7を割り当てられており、カルボキシ末端は、番号37を割り当てられている。ポリペプチド中の他のアミノ酸は、配列番号:1に示すように、連続的に番号付けられる。たとえば、12位は、フェニルアラニンであり、22位はグリシンである。2つの天然のトランケートされたGLP-1ペプチドを、式I,配列番号:1で表す。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、Xaa37はGlyまたは-NH2である。
【0034】
GLP-1化合物が配列番号:1のアミノ酸配列をもつか、または1、2、3、4または5個のアミノ酸が配列番号:1と相異するように変更されるのが好ましい。
【0035】
好ましいグループのGLP-1化合物は式I(配列番号:2)のGLP-1類縁体からなる:
【0036】
【数2】

【0037】
ここで、
Xaa8は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa9は、Glu、AspまたはLys;
Xaa11は、Thr、Ala、Gly、Ser、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa14は、Ser、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa16は、Val、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Tyr、Glu、Asp、TrpまたはLys;
Xaa17は、Ser、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa18は、Ser、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp、Trp、TyrまたはLys;
Xaa19は、Tyr、Phe、Trp、Glu、Asp、GlnまたはLys;
Xaa20は、Leu、Ala、Gly、Ser、Thr、Ile、Val、Glu、Asp、Met、Trp、TyrまたはLys;
Xaa21は、Glu、AspまたはLys;
Xaa22は、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa23は、Gln、Asn、Arg、Glu、AspまたはLys;
Xaa24は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Arg、Glu、AspまたはLys;
Xaa25は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa26は、Lys、Arg、Gln、Glu、AspまたはHis;
Xaa27は、Leu、Glu、AspまたはLys;
Xaa30は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa31は、Trp、Phe、Tyr、Glu、AspまたはLys;
Xaa32は、Leu、Gly、Ala、Ser、Thr、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa33は、Val、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Glu、AspまたはLys;
Xaa34は、Asn、Lys、Arg、Glu、AspまたはHis;
Xaa35は、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys;
Xaa36は、Gly、Arg、Lys、Glu、AspまたはHis;
Xaa37は、Pro、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLys、もしくは欠失;
Xaa38は、Ser、Arg、Lys、Glu、AspまたはHis、もしくは欠失;
Xaa39は、Ser、Arg、Lys、Glu、AspまたはHis、もしくは欠失;
Xaa40は、Gly、Asp、GluまたはLys、もしくは欠失;
Xaa41は、Ala、Phe、Trp、Tyr、Glu、AspまたはLys、もしくは欠失;
Xaa42は、Ser、Pro、Lys、GluまたはAsp、もしくは欠失;
Xaa43は、Ser、Pro、Glu、AspまたはLys、もしくは欠失;
Xaa44は、Gly、Pro、Glu、AspまたはLys、もしくは欠失;および
Xaa45は、Ala、Ser、Val、Glu、AspまたはLys、Ala NH2、Ser NH2、Val NH2、Glu NH2、Asp NH2またはLys NH2、もしくは欠失;
ただし、37、38、39、40、41、42、43または44位のアミノ酸が欠失場合、該アミノ酸の下流のアミノ酸もそれぞれ欠失。
【0038】
式IのGLP-1化合物が、GLP-1(7-37)OHまたはエキセンジン−4における対応するアミノ酸と相異する6個未満のアミノ酸を含むのが好ましい。
【0039】
GLP-1(7-37)OHまたはエキセンジン−4における対応するアミノ酸と相異する5個未満のアミノ酸を含むのがより好ましい。GLP-1(7-37)OHまたはエキセンジン−4における対応するアミノ酸と相異する4個未満のアミノ酸を含むのがよりさらに好ましい。
【0040】
本発明のGLP-1化合物は、そのC-1-6-エステルまたはアミドまたはC-1-6-アルキルアミドまたはC-1-6-ジアルキルアミドなどの式Iの誘導体を含む。WO99/43706には、式IのGLP-1化合物の誘導体が記載されており、これは全体を参考文献として本発明に援用される。WO 99/43706に記載のように誘導体化された式Iの化合物および誘導体化されない式Iの化合物は、本発明に包含される。
【0041】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式II(配列番号:3)のGLP-1類縁体からなる:
【0042】
【数3】

【0043】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThr;
Xaa9は、Thr、Ser、Arg、Lys、Trp、Phe、Tyr、GluまたはHis;
Xaa11は、Asp、Glu、Arg、Thr、Ala、LysまたはHis;
Xaa12は、His、Trp、PheまたはTyr;
Xaa16は、Leu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Tyr、GluまたはAla;
Xaa18は、His、Pro、Asp、Glu、Arg、Ser、AlaまたはLys;
Xaa19は、Gly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、ArgまたはCys;
Xaa23は、His、Asp、Lys、Glu、GlnまたはArg;
Xaa24は、Glu、Arg、AlaまたはLys;
Xaa26は、Trp、Tyr、Phe、Asp、Lys、GluまたはHis;
Xaa27は、Ala、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、ArgまたはLys;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp、SerまたはHis;
Xaa31は、Asp、Glu、Ser、Thr、Arg、TrpまたはLys;
Xaa33は、Asp、Arg、Val、Lys、Ala、GlyまたはGlu;
Xaa34は、Glu、LysまたはAsp;
Xaa35は、Thr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、HisまたはGlu;
Xaa36は、Thr、Ser、Asp、Trp、Tyr、Phe、Arg、GluまたはHis;
R37は、Lys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、Gly、Gly-Pro、もしくは欠失。
【0044】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式III(配列番号:4)のGLP-1類縁体からなる。
【0045】
【数4】

【0046】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチルヒスチジンまたはα-メチルヒスチジン;
Xaa8は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThr;
Xaa11は、Asp、Glu、Arg、Thr、Ala、LysまたはHis;
Xaa12は、His、Trp、PheまたはTyr;
Xaa16は、Leu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、GluまたはAla;
Xaa22は、Gly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、ArgまたはCys;
Xaa23は、His、Asp、Lys、GluまたはGln;
Xaa24は、Glu、His、AlaまたはLys;
Xaa25は、Asp、Lys、GluまたはHis;
Xaa27は、Ala、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、ArgまたはLys;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp、SerまたはHis;
Xaa33は、Asp、Arg、Val、Lys、Ala、GlyまたはGlu;
Xaa34は、Glu、LysまたはAsp;
Xaa35は、Thr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、HisまたはGlu;
Xaa36は、Arg、GluまたはHis;
R37は、Lys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、Gly、Gly-Pro、もしくは欠失。
【0047】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式IV(配列番号:5)のGLP-1類縁体からなる:
【0048】
【数5】

【0049】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、MetまたはThr;
Xaa12は、His、Trp、PheまたはTyr;
Xaa16は、Leu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、GluまたはAla;
Xaa22は、Gly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、ArgまたはCys;
Xaa23は、His、Asp、Lys、GluまたはGln;
Xaa26は、Asp、Lys、GluまたはHis;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp、SerまたはHis;
Xaa35は、Thr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、HisまたはGlu;
R37は、Lys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、Gly、Gly-Pro、もしくは欠失。
【0050】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式V(配列番号:6)のGLP-1類縁体からなる:
【0051】
【数6】

【0052】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、SerまたはThr;
Xaa22は、Gly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、ArgまたはCys;
Xaa23は、His、Asp、Lys、GluまたはGln;
Xaa24は、Ala、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、ArgまたはLys;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp、SerまたはHis;
R37は、Lys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、Gly、Gly-Pro、もしくは欠失。
【0053】
式I、II、III、IVおよびVの好ましいGLP-1化合物は、GLP-1類縁体またはGLP-1類縁体のフラグメントからなる[ここで、類縁体またはフラグメントは、8位にアラニン以外のアミノ酸を包含する(8位類縁体)]。これらの8位類縁体が、天然のGLP-1(7-37)OHの対応するアミノ酸と比較して、9、11、12、16、18、22、23、24、26、27、30、31、33、34、35、36および37位に1個以上のさらなる変化を含むのが好ましい。これらの類縁体が、天然のGLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-36)OHの対応するアミノ酸と比較して、6個以下の変化を有するのもまた好ましい。より好ましい類縁体は、天然のGLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-36)OHの対応するアミノ酸と比較して、5個以下の変化を有するか、または天然のGLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-36)OHの対応するアミノ酸と比較して、4個以下の変化を有する。これらの類縁体が、天然のGLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-36)OHの対応するアミノ酸と比較して、3個以下の変化を有するのが、よりさらに好ましい。これらの類縁体が、天然のGLP-1(7-37)OHの対応するアミノ酸と比較して、2個以下の変化を有するのが、最も好ましい。
【0054】
好ましい式II、III、IVおよびVのGLP-1化合物は、22位のグリシンおよび好ましくは8位のアラニンが、他のアミノ酸で置換されたGLP-1類縁体またはGLP-1類縁体のフラグメントを含む。22位が、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンまたはリシンである場合、8位は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニンであるのが好ましく、バリンまたはグリシンであるのがより好ましい。22位がシステイン酸などのスルホン酸である場合、8位は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニンであるのが好ましく、バリンまたはグリシンであるのがより好ましい。
【0055】
他の好ましいGLP-1化合物として、8位のアミノ酸が、好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであり、30位が、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリンまたはヒスチジン、より好ましくはグルタミン酸である以外はGLP-1(7-37)OHの配列を有する類縁体である、式IV(配列番号:5)のGLP-1類縁体が挙げられる。
【0056】
他の好ましいGLP-1化合物として、8位のアミノ酸が、好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであり、37位が、ヒスチジン、リシン、アルギニン、トレオニン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、より好ましくはヒスチジンである以外はGLP-1(7-37)OHの配列を有する類縁体である、式IV(配列番号:5)のGLP-1類縁体が挙げられる。
【0057】
他の好ましいGLP-1化合物として、8位のアミノ酸が、好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであり、22位が、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸またはアルギニン、より好ましくはグルタミン酸またはリシンであり、23位が、リシン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸およびヒスチジン、より好ましくはリシンまたはグルタミン酸である以外はGLP-1(7-37)OHの配列を有する類縁体である、式IV(配列番号:5)のGLP-1類縁体が挙げられる。
【0058】
他の好ましいGLP-1化合物として、8位のアミノ酸が、好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであり、22位が、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸またはアルギニン、より好ましくはグルタミン酸またはリシンであり、27位が、アラニン、リシン、アルギニン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンまたはヒスチジン、より好ましくはアラニンである以外はGLP-1(7-37)OHの配列を有する類縁体である、式V(配列番号:6)のGLP-1類縁体が挙げられる。
【0059】
他の好ましいGLP-1化合物として、8位のアミノ酸および9、11、12、16、18、22、23、24、26、27、30、31、33、34、35、36および37位から選ばれる1、2または3個のアミノ酸が天然のGLP-1(7-37)OHの対応する位置のアミノ酸とは相異する以外はGLP-1(7-37)OHの配列を有する類縁体である、式IIのGLP-1類縁体が挙げられる。
【0060】
他の好ましい式IIのGLP-1化合物として、Val8-GLP-1(7-37)OH、Gly8-GLP-1(7-37)OH、Glu22-GLP-1(7-37)OH、Asp22-GLP-1(7-37)OH、Arg22-GLP-1(7-37)OH、Lys22-GLP-1(7-37)OH、Cys22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Arg22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Cys22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Arg22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Cys22-GLP-1(7-37)OH、Glu22-GLP-1(7-36)OH、Asp22-GLP-1(7-36)OH、Arg22-GLP-1(7-36)OH、Lys22-GLP-1(7-36)OH、Cys22-GLP-1(7-36)OH、Val8-Glu22-GLP-1(7-36)OH、Val8-Asp22-GLP-1(7-36)OH、Val8-Arg22-GLP-1(7-36)OH、Val8-Lys22-GLP-1(7-36)OH、Val8-Cys22-GLP-1(7-36)OH、Gly8-Glu22-GLP-1(7-36)OH、Gly8-Asp22-GLP-1(7-36)OH、Gly8-Arg22-GLP-1(7-36)OH、Gly8-Lys22-GLP-1(7-36)OH、Gly8-Cys22-GLP-1(7-36)OH、Lys23-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys23-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Lys23-GLP-1(7-37)OH、His24-GLP-1(7-37)OH、Val8-His24-GLP-1(7-37)OH、Gly8-His24-GLP-1(7-37)OH、Lys24-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys24-GLP-1(7-37)OH、Glu30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Asp30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Asp30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Asp30-GLP-1(7-37)OH、Gln30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Gln30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Gln30-GLP-1(7-37)OH、Tyr30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Tyr30-GLP-1(7-37)OH、Ser30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Ser30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Ser30-GLP-1(7-37)OH、His30-GLP-1(7-37)OH、Val8-His30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-His30-GLP-1(7-37)OH、Glu34-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu34-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu34-GLP-1(7-37)OH、Ala34-GLP-1(7-37)OH、Val8-Ala34-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Ala34-GLP-1(7-37)OH、Gly34-GLP-1(7-37)OH、Val8-Gly34-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Gly34-GLP-1(7-37)OH、Ala35-GLP-1(7-37)OH、Val8-Ala35-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Ala35-GLP-1(7-37)OH、Lys35-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys35-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Lys35-GLP-1(7-37)OH、His35-GLP-1(7-37)OH、Val8-His35-GLP-1(7-37)OH、Gly8-His35-GLP-1(7-37)OH、Pro35-GLP-1(7-37)OH、Val8-Pro35-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Pro35-GLP-1(7-37)OH、Glu35-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu35-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu35-GLP-1(7-37)OH、Val8-Ala27-GLP-1(7-37)OH、Val8-His37-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-Lys23-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-Glu23-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-Ala27-GLP-1(7-37)OH、Val8-Gly34-Lys35-GLP-1(7-37)OH、Gly8-His37-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-Ala27-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu22-Ala27-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys22-Glu23-GLP-1(7-37)OHおよびGly8-Lys22-Glu23-GLP-1(7-37)OHが挙げられる。
【0061】
本発明に用いる別の好ましいGLP-1類縁体および誘導体は、式VI(配列番号:7)の分子からなる。
【0062】
【数7】

【0063】
ここで、
R1は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチルヒスチジンおよびα-メチルヒスチジンから選ばれる;
Xは、Ala、Gly、Val、Thr、Ileおよびα-メチル-Alaから選ばれる;
Yは、Glu、Gln、Ala、Thr、SerおよびGlyから選ばれる;
Zは、Glu、Gln、Ala、Thr、SerおよびGlyから選ばれる;および
R2は、Gly-OHである。
【0064】
本発明に用いるGLP-1化合物の他の好ましいグループは、WO 91/11457に開示されており、本質的に、
(a)26位および/または34位のリシンに対するグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アルギニンまたはD-リシンによる置換;または36位のアルギニンに対するグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、リシンまたはD-アルギニンによる置換;
(b)31位のトリプトファンに対する酸化耐性アミノ酸による置換;
(c)16位のバリンに対するチロシン;18位のセリンに対するリシン;21位のグルタミン酸に対するアスパラギン酸;22位のグリシンに対するセリン;23位のグルタミンに対するアルギニン;24位のアラニンに対するアルギニン;および26位のリシンに対するグルタミン:の少なくとも1つによる置換;
(d)8位のアラニンに対するグリシン、セリンまたはシステイン;9位のグルタミン酸に対するアスパラギン酸、グリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンまたはフェニルアラニン;10位のグリシンに対するセリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンまたはフェニルアラニン;および15位のアスパラギン酸に対するグルタミン酸;:の少なくとも1つによる置換;および
(e)7位のヒスチジンに対するグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンもしくはフェニルアラニンまたはヒスチジンのD-もしくはN-アシル化あるいはアルキル化体による置換;ここで、置換が(a)、(b)、(d)および(e)である場合、置換されたアミノ酸は、必要に応じて、D-体であることができ、7位で置換されたアミノ酸は、必要に応じて、N-アシル化またはN-アルキル化体でありうる;
から選ばれる少なくとも1つの修飾を有する、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)もしくはGLP-1(7-37)またはそのアミド体、およびその医薬的に許容しうる塩からなる。
【0065】
酵素であるジペプチジル−ペプチダーゼIV(DPP IV)が、投与されたGLP-1の観察された急速インビボ不活性化の原因なので[たとえば、Mentlein、R.ら、Eur. J. Biochem.、214:829-835(1993)を参照]、融合タンパク質に関連してDPP IVの活性から保護されるGLP-1類縁体および誘導体が好ましく、GLP-1化合物がGly8-GLP-1(7-37)OH、Val8-GLP-1(7-37)OH、α-メチル-Ala8-GLP-1(7-37)OHまたはGly8-Gln21 GLP-1(7-37)OHである融合タンパク質がより好ましい。
【0066】
本発明に用いるGLP-1化合物の別の好ましいグループは、米国特許番号5,512,549(これは全体を参考文献として明示的に本発明に援用される)に記載の式VII(配列番号:8)の化合物からなる。
【0067】
【数8】

【0068】
ここで、
R1は、4-イミダゾプロピオニル、4-イミダゾアセチルまたは4-イミダゾ-α,α-ジメチル-アセチルから選ばれる;
R2は、C6-C10非分枝アシルから選ばれる、または欠失;
R3は、Gly-OHまたはNH2から選ばれる;および
Xaaは、LysまたはArg。
【0069】
本発明で用いる、より好ましい式VIIの化合物は、XaaがArgおよびR2がC6-C10非分枝アシルである化合物である。本発明で用いる、さらにより好ましい式IVの化合物は、XaaがArg、R2がC6-C10非分枝アシルおよびR3がGly-OHである化合物である。本発明で用いる、非常に好ましい式IVの化合物は、XaaがArg、R2がC6-C10非分枝アシル、R3がGly-OHおよびR1が4-イミダゾプロピオニルである化合物である。本発明で用いる、特に好ましい式IVの化合物は、XaaがArg、R2がC8非分枝アシル、R3がGly-OHおよびR1が4-イミダゾプロピオニルである化合物である。
他の好ましいGLP-1誘導体は、米国特許番号6,268,343 B1に記載されている。より好ましいGLP-1誘導体は、Arg34Lys26-(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である。
【0070】
GLP-1化合物が、このような類縁体またはフラグメントのためのバックボーンが8位にアラニン以外のアミノ酸を含む、GLP-1類縁体を包含するのが好ましい(8位類縁体)。バックボーンが、7位にL-ヒスチジン、D-ヒスチジンまたはデスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジンなどのヒスチジンの修飾体を包含してもよい。これらの8位類縁体が、天然のGLP-1(7-37)OHの対応するアミノ酸と比較して、12、16、18、19、20、22、25、27、30、33および37位に1個以上のさらなる変化を含むのが好ましい。これらの8位類縁体が、天然のGLP-1(7-37)OHの対応するアミノ酸と比較して、16、18、22、25および33位に1個以上のさらなる変化を含むのがより好ましい。
【0071】
好ましい態様において、GLP-1類縁体は、12位のアミノ酸がトリプトファンまたはチロシンから選ばれるGLP-1(7-37)OHである。12位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。12位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。
【0072】
別の好ましい態様において、GLP-1類縁体は、16位のアミノ酸がトリプトファン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンまたはチロシンから選ばれるGLP-1(7-37)OHである。16位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。16位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。16位および8位における置換に加えて、30位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのもまた好ましい。16位および8位における置換に加えて、37位のアミノ酸がヒスチジンで置換されるのもまた好ましい。
【0073】
別の好ましい態様において、GLP-1類縁体は、18位のアミノ酸がトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、リシン、ロイシンまたはイソロイシン、好ましくはトリプトファン、チロシンおよびイソロイシンから選ばれるGLP-1(7-37)OHである。18位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。18位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。18位および8位における置換に加えて、30位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのもまた好ましい。18位および8位における置換に加えて、37位のアミノ酸がヒスチジンで置換されるのもまた好ましい。
【0074】
別の好ましい態様において、GLP-1類縁体は、19位のアミノ酸がトリプトファンまたはフェニルアラニン、好ましくはトリプトファンから選ばれるGLP-1(7-37)OHである。19位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。19位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。19位および8位における置換に加えて、30位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのもまた好ましい。19位および8位における置換に加えて、37位のアミノ酸がヒスチジンで置換されるのもまた好ましい。
【0075】
別の好ましい態様において、GLP-1類縁体は、25位のアミノ酸がバリン、イソロイシンまたはロイシン、好ましくはバリンから選ばれるGLP-1(7-37)OHである。25位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。25位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。25位および8位における置換に加えて、30位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのもまた好ましい。25位および8位における置換に加えて、37位のアミノ酸がヒスチジンで置換されるのもまた好ましい。
【0076】
別の好ましい態様において、GLP-1類縁体は、27位のアミノ酸がイソロイシンまたはアラニンから選ばれるGLP-1(7-37)OHである。27位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。27位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。27位および8位における置換に加えて、30位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのもまた好ましい。27位および8位における置換に加えて、37位のアミノ酸がヒスチジンで置換されるのもまた好ましい。
【0077】
別の好ましい態様において、GLP-1類縁体は、33位のアミノ酸がイソロイシンであるGLP-1(7-37)OHである。33位における置換に加えて、8位のアミノ酸が、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンまたはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンで置換されるのがより好ましい。33位および8位における置換に加えて、22位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのが、さらにより好ましい。33位および8位における置換に加えて、30位のアミノ酸がグルタミン酸で置換されるのもまた好ましい。33位および8位における置換に加えて、37位のアミノ酸がヒスチジンで置換されるのもまた好ましい。
【0078】
GLP-1化合物は、以下の位置に1個以上の修飾を有する:8、12、16、18、19、20、22、25、27、30、33および37。これらのGLP-1化合物は、GLP-1(7-37)OHと比べて増強された効力を示し、式VIII(配列番号:9)のアミノ酸配列を含む。
【0079】
【数9】

【0080】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、SerまたはThr;
Xaa12は、Phe、TrpまたはTyr;
Xaa16は、Val、Trp、Ile、Leu、PheまたはTyr;
Xaa18は、Ser、Trp、Tyr、Phe、Lys、Ile、Leu、Val;
Xaa19は、Tyr、TrpまたはPhe;
Xaa20は、Leu、Phe、TyrまたはTrp;
Xaa22は、Gly、Glu、AspまたはLys;
Xaa25は、Ala、Val、IleまたはLeu;
Xaa27は、Glu、IleまたはAla;
Xaa30は、AlaまたはGlu;
Xaa33は、ValまたはIle;および
Xaa37は、Gly、His、NH2、または欠失。
【0081】
幾つかの好ましい式VIIIのGLP-1化合物として、GLP-1(7-37)OH、GLP-1(7-36)NH2、Gly8-GLP-1(7-37)OH、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-GLP-1(7-37)OH、Val8-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-GLP-1(7-37)OH、Leu8-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-GLP-1(7-37)OH、Ile8-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-GLP-1(7-37)OH、Ser8-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-GLP-1(7-37)OH、Thr8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Tyr12-GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr12-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Tyr16-GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr16-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Leu8-Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Ile8-Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Leu8-Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Ile8-Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Leu8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Ile8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Ser8-Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Thr8-Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Ser8-Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-Asp22-GLP-1(7-37)OH、Thr8-Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Ser8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Thr8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Glu22-GLP-1(7-37)OH、Glu22-GLP-1(7-36)NH2、Asp22-GLP-1(7-37)OH、Asp22-GLP-1(7-36)NH2、Lys22-GLP-1(7-37)OH、Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Ala27-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu22-Ala27-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Leu8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Ile8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Ser8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Thr8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Val8-His37-GLP-1(7-37)OH、Val8-His37-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-His37-GLP-1(7-37)OH、Gly8-His37-GLP-1(7-36)NH2、Leu8-His37-GLP-1(7-37)OH、Leu8-His37-GLP-1(7-36)NH2、Ile8-His37-GLP-1(7-37)OH、Ile8-His37-GLP-1(7-36)NH2、Ser8-His37-GLP-1(7-37)OH、Ser8-His37-GLP-1(7-36)NH2、Thr8-His37-GLP-1(7-37)OH、Thr8-His37-GLP-1(7-36)NH2が挙げられる。
【0082】
複数の置換を有する幾つかの好ましい式VIIIのGLP-1化合物として、8位がバリンまたはグリシン、22位がグルタミン酸、16位がチロシン、ロイシンまたはトリプトファン、18位がチロシン、トリプトファンまたはイソロイシン、25位がバリンおよび33位がイソロイシンであるGLP-1(7-37)OHが挙げられる。他の好ましい。GLP-1化合物として、以下のものが挙げられる:Val8-Tyr16 GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr12 Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr16 Phe19 GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr16 Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Trp16 Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Leu16 Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Ile16 Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Phe16 Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Trp18-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Tyr18-Glu22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Phe18-Glu22-GLP-1(7-37)OHおよびVal8-Ile18-Glu22-GLP-1(7-37)OH。
【0083】
本発明のGLP-1には、エキセンジン化合物も含まれる。エキセンジン−3およびエキセンジン−4は、ドクトカゲ科(Helodermatidae)のトカゲ毒から最初に単離された生理的に活性なペプチドであり、哺乳類の壁細胞において、GLP-1受容体に結合してcAMP依存性H産生を刺激することが明らかにされている。エキセンジン−3およびエキセンジン−4は両方とも、GLP-1と約53%相同な39個のアミノ酸からなるペプチドである。それらは、GLP-1活性の強力なアゴニストとして働く。特に、エキセンジン(9-39アミノ酸)として知られるエキセンジンのN-末端がトランケートされた誘導体は、エキセンジン−3、エキセンジン−4およびGLP-1のインヒビターである。
エキセンジン化合物は代表的に、エキセンジン−3、エキセンジン−4またはその類縁体もしくはフラグメントのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。エキセンジン−3およびエキセンジン−4は、米国特許番号5,424,286に開示されている。
【0084】
エキセンジン−3は、配列番号:10のアミノ酸配列を有する:
【0085】
【数10】

【0086】
エキセンジン−4は、配列番号:11のアミノ酸配列を有する:
【0087】
【数11】

【0088】
GLP-1化合物として、エキセンジンまたはエキセンジン類縁体のN-末端および/またはC-末端から1個以上のアミノ酸をトランケートした後に得られるポリペプチドであるエキセンジンフラグメントも挙げられる。さらに、GLP-1化合物として、エキセンジンまたはそのフラグメントのN-末端および/またはC-末端に1個以上のアミノ酸が加えられたエキセンジンポリペプチドが挙げられる。このタイプのエキセンジン化合物は、約45個以下のアミノ酸を有する。
【0089】
また、GLP-1として、「エキセンジン類縁体」が挙げられる。エキセンジン類縁体は、類縁体がインスリン分泌活性をもつように、エキセンジン−4、エキセンジン−3またはそのフラグメントに十分な相同性を有する。エキセンジンフラグメントおよび/または類縁体の活性は、実施例1に記載するようなインビトロアッセイを用いて評価することができる。
【0090】
エキセンジン類縁体が、1、2、3または4個のアミノ酸がエキセンジン−4またはエキセンジン−4のフラグメントの対応する位置におけるアミノ酸と相異するように修飾された、エキセンジン−4またはそのフラグメントのアミノ酸配列を有するのが好ましい。エキセンジン化合物を示すために本明細書で用いた命名法において、置換されているアミノ酸およびその位置は、親構造に先立って示される。たとえば、Val8-エキセンジン−4は、通常エキセンジン-4の8位に見出されるグリシンが、バリンで置換されたエキセンジン化合物を表す。
【0091】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式IX(配列番号:12)のGLP-1/エキセンジン−4類縁体からなる:
【0092】
【数12】

【0093】
ここで、
Xaa7は、L ヒスチジン、D ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Gly、AlaまたはVal;
Xaa16は、LeuまたはVal;
Xaa18は、LysまたはSer;
Xaa19は、GlnまたはTyr;
Xaa20は、MetまたはLeu;
Xaa22は、GluまたはGln;
Xaa23は、GluまたはGln;
Xaa25は、ValまたはAla;
Xaa26は、ArgまたはLys;
Xaa27は、LeuまたはGlu;
Xaa30は、GluまたはAla;
Xaa33は、ValまたはLys;
Xaa34は、AsnまたはLys;
Xaa36は、GlyまたはArg;および
R37は、Gly、Pro、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、または欠失。
【0094】
本発明に有用なさらなるエキセンジン類縁体は、国際公開公報WO 99/25728(Beeleyら);WO 99/25727-Beeleyら);WO 98/05351(Youngら);WO 99/40788(Youngら);WO 99/07404(Beeleyら);およびWO 99/43708(Knudsenら)に記載されている。
【0095】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式X(配列番号:12)のアミノ酸配列を有する。
【0096】
【数13】

【0097】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、SerまたはThr;
Xaa12は、Phe、TrpまたはTyr;
Xaa16は、Val、Trp、Ile、Leu、PheまたはTyr;
Xaa18は、Ser、Trp、Tyr、Phe、Lys、Ile、Leu、Val;
Xaa19は、Tyr、TrpまたはPhe;
Xaa20は、Leu、Phe、TyrまたはTrp;
Xaa22は、Gly、Glu、AspまたはLys;
Xaa25は、Ala、Val、IleまたはLeu;
Xaa27は、Glu、IleまたはAla;
Xaa30は、AlaまたはGlu;
Xaa33は、ValまたはIle;
Xaa34は、Lys、Asp、ArgまたはGlu;
Xaa36は、Gly、ProまたはArg;
Xaa37は、Gly、ProまたはSer;
Xaa38は、Ser、ProまたはHis;
Xaa39は、Ser、Arg、Thr、TrpまたはLys;
Xaa40は、SerまたはGly;
Xaa41は、Ala、Asp、Arg、Glu、LysまたはGly;
Xaa42は、Pro、Ala、NH2、または欠失;
Xaa43は、Pro、Ala、NH2、または欠失;
Xaa44は、Pro、Ala、Arg、Lys、His、NH2、または欠失;
Xaa45は、Ser、His、Pro、Lys、Arg、NH2、または欠失;
Xaa46は、His、Ser、Arg、Lys、NH2、または欠失;および
Xaa47は、His、Ser、Arg、Lys、NH2、または欠失;
ただし、もしXaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45、Xaa46またはXaa47が欠失しているならば各アミノ酸の下流は存在せず、さらに、GLP-1ペプチドはXaa36で始まる次のC-末端アミノ酸伸長:Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2をもたない。
【0098】
別の好ましいグループのGLP-1化合物は、式XI(配列番号:14)のアミノ酸配列を有する。
【0099】
【数14】

【0100】
ここで、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジン;
Xaa8は、Gly、Val、Leu、Ile、SerまたはThr;
Xaa16は、Val、Trp、Ile、Leu、PheまたはTyr;
Xaa22は、Gly、Glu、AspまたはLys;
Xaa25は、Ala、Val、IleまたはLeu;
Xaa33は、ValまたはIle;
Xaa34は、Lys、Asp、ArgまたはGlu;
Xaa36は、Gly、ProまたはArg;
Xaa37は、Gly、ProまたはSer;
Xaa38は、Ser、ProまたはHis;
Xaa39は、Ser、Arg、Thr、TrpまたはLys;
Xaa40は、SerまたはGly;
Xaa41は、Ala、Asp、Arg、Glu、LysまたはGly;
Xaa42は、ProまたはAla;
Xaa43は、ProまたはAla;
Xaa44は、Pro、Ala、Arg、Lys、His、NH2、または欠失;
Xaa45は、Ser、His、Pro、Lys、Arg、NH2または欠失;
Xaa46は、His、Ser、Arg、Lys、NH2または欠失;および
Xaa47は、His、Ser、Arg、Lys、NH2または欠失;
ただし、もしXaa44、Xaa45、Xaa46またはXaa47が欠失しているならば各アミノ酸の下流は存在せず、さらに、GLP-1ペプチドはXaa36で始まる次のC-末端アミノ酸伸長:Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2をもたない。
【0101】
式XおよびXIの好ましい態様として、8位にバリンまたはグリシンおよび22位にグルタミン酸を有するGLP-1化合物が挙げられる。
【0102】
本発明における使用に適するデリバリー剤
本発明のデリバリー剤は、当業界で公知であり、WO 90/36480;WO 96/30036;米国特許番号5,643,957;6,242,495(これらはすべて、全体を参考文献として本発明に援用される)に記載の有機化学的方法によって製造することができる。
【0103】
本発明のデリバリー剤の多くは、アミノカプリル酸、ブチリルヒドロキサミン酸、アミノフェニル酪酸、アミノフェニルヘキサン酸、アミノフェニルプロピオン酸、アミノサリチル酸、アミノフェニルコハク酸、アミノノナン酸、アミノニコチン酸、アミノバレン酸、アミノフェニル酢酸、アミノカプリン酸、アミノウンデカン酸、アミノヘプタン酸、アミノヒドロキシ安息香酸およびアミノデカン酸などのアミノ酸(これらに限定されるものではない)から容易に製造することができる。
【0104】
たとえば、これらのデリバリー剤は、単一の酸と、アミノ酸に存在する遊離アミノ部分と反応する適当な作用剤とを反応させてアミドを形成することによって製造することができる。当業者には周知のことであるが、保護基を用いて望ましくない副反応を回避することができる。
【0105】
デリバリー剤は、再結晶または固体カラム支持体上での分画によって精製することができる。適当な再結晶溶媒系として、アセトニトリル、メタノールおよびテトラヒドロフランが挙げられる。分画は、移動相としてメタノール/n-プロパノール混合物を用いるアルミナなどの適当な固体カラム支持体;移動相としてトリフルオロ酢酸/アセトニトリルを用いる逆相カラム支持体;および移動相として水を用いるイオン交換クロマトグラフィーで行うことができる。陰イオン交換クロマトグラフィーを行う場合、連続的0-500 mM塩化ナトリウム勾配を用いるのが好ましい。
【0106】
本発明において有用なデリバリー剤は、米国特許番号5,541,155;5,693,338;5,976,569;5,643,957;5,955,503;6,100,298;5,650,386;5,866,536;5,965,121;5,989,539;6,001,347;6,071,510;5,820,881;および6,242,495;およびWO 02/02509;WO 01/51454;WO 01/44199;WO 01/32130;WO 00/59863;WO 00/50386;WO 00/47188;およびWO 00/40203(これらはすべて、全体を参考文献として本発明に援用される)に記載されている。当業者であれば、デリバリー剤を変更して本発明に用いることができることを理解するであろう。
【0107】
デリバリー剤の例を第1表に記載する。表1の中でも好ましいデリバリー剤は、番号1、2、4、5、6、9、10、11、13、14、15、20、21、22、23、24、26、28、30、31、35、36、38、39、40、41、42、43、44、46、51、52および54のデリバリー剤である。
【0108】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0109】
GLP-1化合物およびデリバリー剤を含む経口製剤は、広範囲の疾患および健康状態の治療に用いることができる。GLP-1化合物は、最初、GLP-1受容体に作用することによってその生理的効果を発揮する。したがって、GLP-1受容体刺激またはGLP-1化合物の投与に好都合に応答する疾患および/または健康状態をもつ患者は、本発明経口製剤で治療することができる。これらの患者は、「GLP-1化合物による治療を必要とする」あるいは「GLP-1受容体刺激を必要とする」と言われる。このような患者として、非インスリン依存性糖尿病、インスリン依存性糖尿病、脳卒中(WO 00/16797を参照)、心筋梗塞(WO 98/08531を参照)、肥満(WO 98/19698を参照)、外科手術後の異化的変化(米国特許番号6,006,753を参照)、機能性消化不良および過敏性腸症候群(WO 99/64060を参照)の患者が挙げられる。また、たとえば、非インスリン依存性糖尿病を発症する危険性のある患者などのGLP-1化合物による予防的処置を必要とする患者も包含される(WO 00/07617を参照)。耐糖能異常または空腹時グルコース異常の患者、身長および体液について正常体重よりも約25%以上多い体重である患者、部分的膵切除を行った患者、片親あるいは両親が非インスリン依存性糖尿病の患者、妊娠性糖尿病であった患者および急性または慢性膵炎であった患者が、非インスリン依存性糖尿病を発症する危険性のある患者である。
【0110】
本発明は、以下の実施例を参照して、より良く理解することができる。これらの実施例は、本発明の特定の態様を代表することを意図するものであり、本発明の範囲に制限を加えるものではない。
【実施例】
【0111】
実施例1
インスリン分泌活性の決定
膵臓組織のコラゲナーゼ消化を、フィコール勾配(ハンクスの平衡塩類溶液中、27%、23%、20.5%および11%、pH7.4)上で分離する。20.5%/11%の界面から膵島を回収し、洗浄し、立体顕微鏡下、外分泌物および他の組織を含まないように摘み出す。95%空気/5%CO2下、37℃にて、11 mMグルコースを含む、10%ウシ胎児血漿を補足したRPMI 1640培地中で一夜インキュベートする。試験するGLP-1化合物を、10%ウシ胎児血漿および16.7 mMグルコースを含むRPMI培地中、好ましくは3ナノモル〜30ナノモルの濃度範囲で調製する。次いで、総体積250μLのGLP-1化合物を含む培地を入れた96ウエルのマイクロタイター皿に、約8〜10個の単離された膵島をピペットで移す。GLP-1化合物の存在下、95% 空気、5% CO2下、 37℃にて90分間膵島をインキュベートする。膵島を含まない培地のアリコートを集め、存在するインスリンの量について、Equate インスリン RIA キット(Binax、Inc.、ポートランド、ME)を用いるラジオイムノアッセイにより、その100μLをアッセイする。
【0112】
実施例2
DPPIVの存在下でのGLP-1安定性
ヒト血漿中でのGLP-1のインキュベーションによって、各GLP-1分子の安定性を決定することができる。健康なヒトのボランティアから得られる血漿(800μL)を300 pmol/LのGLP-1分子とともに37℃にて6時間までインキュベートする。次いで、Deaconら、in J. Clin. Endocrinol. Metab. 80:952-957(1995)にしたがって、逆相HPLCおよびRIAを行う。
【0113】
実施例3
デリバリー剤ナンバー15の製剤
約600 mgのデリバリー剤ナンバー15を、I型ガラスバイアルに秤量し、最終濃度200 mg/mLに達するように3 mLの塩基(0.1 N NaOH、pH 12.7)を加える。pHは7.1に調節され、濃度は171 mg/mLであると見積もられる。次いで、デリバリー剤ナンバー15をMilli-Q(登録商標)水で150 mg/mLに希釈する。
【0114】
実施例4
デリバリー剤ナンバー40の製剤
デリバリー剤ナンバー40および9は、実施例1の方法によれば、所望濃度150 mg/mLでは不溶性である。塩基でpH11.5にさらに希釈しても所望濃度150 mg/mLに至らない。試験したコソルベントは、エタノール、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセタミド、N,N-ジメチルホルムアミド、グリコフロール、エトキシジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300およびポリビニルピロリドンである。
しかし、デリバリー剤ナンバー40については、I型ガラスバイアルに秤量し、Milli-Q(登録商標)水を加え、次いで、10 N NaOHでpHを調節する。このアプローチを用い、デリバリー剤ナンバー40について150 mg/mL溶液に到達する(pH 8.22)。
【0115】
実施例5
デリバリー剤ナンバー9の製剤
デリバリー剤ナンバー9は水に対して不溶性なので、懸濁液製剤をヒドロキシプロピルメチルセルロース(Klucel(登録商標))懸濁化剤の4%w/v(水性)懸濁液として調製する。300 mgのデリバリー剤ナンバー9を入れたI型ガラスバイアルに、約1.7 mLの懸濁化剤を加える。調製物を3分間氷冷し、次いで、Misonix Sonicator(登録商標)超音波プロセッサー XL(3/16th インチマイクロチップ)を用い、氷上で30分間プローブ超音波処理を行う。超音波処理により、pH 7.98において、デリバリー剤ナンバー9の平均粒子径が、48μmから8μmに減少する(Coulter(登録商標) LS 粒子径アナライザー)。次いで、この製剤を懸濁化剤で150 mg/mLに希釈する。
【0116】
実施例6
他のデリバリー剤
上記実施例5と同様にして調製するデリバリー剤ナンバー10、11、12、16、18、22、25、27、33および52以外のすべての他のデリバリー剤は、上記実施例3および4と同様にして調製する。デリバリー46および54は、2つの別の製剤に調製する:一方は実施例3または4のいずれかに従い、他方は実施例5に従う。
【0117】
実施例7
安定性試験
デリバリー剤ナンバー9、15および40について安定性試験を行う。所望濃度150 mg/mLを達成するようにそれぞれ上記のようにして新たにデリバリー剤を調製する。サンプルを3つの2 mLのアリコートに分割し、−20℃、4℃および周囲温度で3日間保管する。保管期間を終了した後、HPLCアッセイおよび分析を行う。結果を第2表に示す。
【0118】
【表8】

【0119】
実施例8
GLP-1化合物の製剤
GLP-1化合物を蒸留水で希釈することによってVal8-Glu22-GLP-1の溶液を調製し、7 mg/mLの濃度を得る。2 N NaOHでpHを10.5にゆっくりと上昇させ、室温にて30分間インキュベートする。多量の1 M Tris緩衝液(pH 8.0)を加え、最終緩衝液濃度を20 mM Trisにし、1 Nまたは5 N HClでpH7.8に調節する。次いで、低タンパク質結合0.22μMシリンジフィルター(Millex GV、Millipore)で溶液を濾過し、GLP-1化合物の濃度を紫外線分光分析で決定する。20 mM Tris緩衝液(pH 7.8)で溶液を希釈して、最終濃度5.5 mg/mLにする。次いで、使用するまで、−70℃にて1.0 mLのアリコートでペプチド溶液を保管する。
【0120】
実施例9
最終製剤
4.5 mLのデリバリー剤と0.5 mLのGLP-1化合物を合わせることによって、インビボ投与の30分〜1時間前に新たに最終製剤を調製する。投与前に12時間絶食させた雌性スプラーグ・ドーリー・ラットに、最終製剤2 mL/kg(1.1 mg/kgのGLP-1化合物、300 mg/kgのデリバリー剤)を経口胃管栄養法で投与する。GLP-1化合物単独の皮下投与をコントロール(0.011 mg/kg)として用いる。平均薬物動態学的パラメーターを下記の表に示す。
【0121】
【表9】

【0122】
上記データから、Val8-Glu22-GLP-1の経口投与についてのバイオアベイラビリティ%は、デリバリー剤ナンバー15を含む製剤では2.72%、デリバリー剤ナンバー40を含む製剤では1.01%およびデリバリー剤ナンバー9を含む製剤では0.3%と算定される。
すべてのデリバリー剤の薬物動態学的パラメーターを下記第4表に示す。
【0123】
【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、または配列番号:14のGLP-1化合物(ただし、GLP-1化合物がHVEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGRGである場合を除く)および
下式:
【化1A】

【化1B】

の化合物からなる群から選ばれるデリバリー剤を含む医薬組成物。
【請求項2】
医薬的に許容しうる緩衝液、懸濁剤、コソルベント、保存剤および等張化剤からなる群から選ばれる1つ以上の賦形剤をさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
錠剤、カプセル剤または散剤などの粒剤などの固体の剤形である請求項1または2に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2010−6836(P2010−6836A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231896(P2009−231896)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願2003−570937(P2003−570937)の分割
【原出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願人】(500139958)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (28)
【Fターム(参考)】