説明

GLP−1産生増強剤

【課題】 本発明の課題は、新たな作用機序に基づく糖尿病および/または糖尿病性合併症の予防および/または治療剤を提供することにある。
【解決手段】 本発明に係るPG受容体アゴニスト、具体的には、一般式(I)
【化1】


(式中、すべての記号は明細書の記載と同じ意味を表わす。)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグはGLP−1産生増強作用を有し、同作用に基づくグルカゴン分泌量抑制作用およびインスリン合成促進作用ないし血糖値上昇抑制および/または降下作用を有するため、糖尿病および/または糖尿病性合併症の予防および/または治療剤の有効成分として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジン(以下、PGと略す。)受容体アゴニストを含有してなるGLP−1産生増強剤に関する。
【0002】
さらに詳しく言えば、本発明は、PG受容体アゴニストであるIPアゴニスト、特に、一般式(I)
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、およびそれらのプロドラッグを含有してなるGLP−1産生増強剤に関する。
【背景技術】
【0005】
現在、重症糖尿病患者に対しては、主にインスリン製剤投与治療が行われており、速攻型あるいは除放型皮下投与製剤、吸入製剤、経口製剤など、患者のQOLの改善を目指した様々な製剤が開発されているが、血糖値に応じた微調整を行ってくれる膵β細胞の機能には到底及ばない。また、長期投与においては、糖尿病合併症(細小血管障害や大血管障害)を発症し、動脈硬化症の大きなリスクファクターとなっている。
【0006】
インスリンは動物における最も重要な血糖調節ホルモンであり、その産生および分泌は膵β細胞に限局される。したがって、糖尿病薬の開発は、(1)膵β細胞の発生、分化、死および再生に関する研究、(2)インスリン分泌機構に関する研究、(3)インスリン作用不足に関する研究等の進展が不可欠である。
【0007】
膵β細胞は、かつては増殖しない細胞であると考えられていたが、出生後もさまざまな状況に応じて前駆細胞から新たにβ細胞が新生して膵島が造られている。また、分化したβ細胞も低率ではあるが増殖することが知られている。その一方で、β細胞の一部がアポトーシスにより失われ、40〜50日ごとにターンオーバーしている。このようにして膵β細胞量としては一生涯を通じてゆるやかに増加していることが解ってきた。
【0008】
β細胞が損傷をうけた場合や、妊娠、肥満などでインスリン抵抗性が出現し、インスリン必要量が増加する場合には、β細胞の肥大が起こるとともに、新たなβ細胞が前駆細胞から新生する。その結果、β細胞量が増加して、正常な糖代謝が維持される。一方、スルホニル尿素剤に代表されるインスリン分泌促進剤はいずれ膵β細胞を疲弊させる。
【0009】
再生医学的アプローチとしては、in vivoで内因性の幹細胞システムを賦活化することにより、生体内で膵β細胞量をコントロールする方法が、将来の新しい糖尿病治療法として注目を集めている。
【0010】
膵β細胞の分化・増殖因子としてヒト胎児膵細胞を用いた研究から各種増殖因子等のサイトカイン類が注目され、例えば、HGFの関与が示唆されている(非特許文献1、2)。また、同作用を有する十二指腸と小腸から分泌される消化管ホルモンである、インクレチンも注目されている。インクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド−1;glucagon-like peptide-1(以下、GLP−1と略記する。)やグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプタイド;glucose-dependent insulinotropic polypeptide(以下、GIPと略する。)等が知られている。
【0011】
GLP−1および/またはGIPは、糖のホメオスタシスの制御に深く関与する腸起源のペプチドである。GLP−1は、グルカゴン前駆体のプレプログルカゴンの組織特異的な翻訳後プロセシングにより腸のL細胞において合成され、食事に反応して循環中へ放出される。これらのペプチドは、腸島軸の主要メディエーターであり、特定の受容体に結合することによって作用する。
【0012】
GLP−1は、主として膵臓に作用し、β細胞によるインスリン放出をグルコース濃度依存的に促進することが知られている。また、グルカゴンの分泌を抑制し、胃の空洞化を遅らせ、末梢のグルコース処理を高める可能性が示唆されている。
【0013】
GLP−1の投与によりインスリン非依存型糖尿病患者において食後のグルコースレベルが正常化され得ることから、GLP−1の治療薬としての可能性が示唆されている(非特許文献3)。また、GLP−1はインスリン依存型糖尿病患者において血糖コントロールを改善する作用も有している(非特許文献4)。さらに、GLP−1のインスリン放出促進作用は血漿グルコース濃度に依存しているため(非特許文献5)、低い血漿グルコース濃度ではGLP−1介在性のインスリン放出が低く、重篤な低血糖症を招かないメリットがある。従って、必要時に応じ、血中GLP−1量をコントロールすることによって、安全性の高い糖尿病治療が可能になると考えられる。
【0014】
血中GLP−1量をコントロールする方法として、GLP−1自体あるいは改変GLP−1投与が挙げられるが、GLP−1は2〜6分と非常に短い血漿中半減期のため(非特許文献6)、その治療剤としての可能性が限定されている。例えば、安定なGLP−1作動薬として、exendin−4が開発されているが、1日2回の注射剤であり、嘔吐等の副作用が報告されている。
【0015】
さらに、血中GLP−1量がコントロールされる機序の一つに、活性型GLP−1のジペプチジルペプチダーゼIV(以下、DPP−IVと略記する。)による不活化が知られている。よって、DPP−IV阻害により、必要量の血中活性型GLP−1を維持させることが可能である(非特許文献7、非特許文献8)。
【0016】
一方、GLP−1産生あるいは分泌を誘導する化合物(特許文献1参照)についての報告もある(非特許文献9、10)。
【0017】
PGは、PGD、PGE、PGFα、PGI、TXAなどよりなるが、生体内では8種類の受容体に結合し、それぞれの作用を発揮する。これら受容体には、PGD受容体(DP)、4種類のPGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGF受容体(FP)、PGI受容体(IP)、TXA受容体(TP)の存在が知られている。
【0018】
PGIは、アラキドン酸カスケードと呼ばれる生体内代謝経路においてPGHより生合成される天然生理活性物質である(非特許文献11)。
【0019】
現在までに、IPアゴニストとして、特開昭55−501098号公報、特開昭57−501127号公報、西独国特許出願公開第3504677号明細書、特開昭54−130543号公報、特開昭54−95552号公報、特開昭62−134787号公報、特開昭59−157050号公報、特開昭61−30519号公報、特開昭59−137445号公報、特開昭59−141536号公報、特開平03−246252号公報、特開平03−005457号公報、特開昭52−136161号公報、米国特許第4306075号明細書、特開昭55−057559号公報、特開昭61−087811号公報、特開昭48−097898号公報、特開昭55−000313号公報、特開昭58−219162号公報、国際公開第00/07992号パンフレット、特開昭50−70380号公報、特開昭59−210644号公報、特開昭58−124778号公報、特開昭57−32277号公報、特開昭57−144276号公報、特表平09−506894号公報、特表平09−509958号公報、特表平11−509191号公報、欧州特許第0542203号明細書、米国特許第5362879号明細書、特開平08−245498号公報、特開平10−087608号公報、特開平10−010610号公報、特開平11−005764号公報、特開平06−87811号公報、特開平08−109162号公報、特開平06−025074号公報、特開平07−145057号公報、特開平06−072978号公報、特開2000−86635号公報、特開平06−056744号公報、特表2001−522830号公表、特表2001−521029号公報、特表2001−526257号公報、特表2000−191523号公報、特開平11−228417号公報、および特表2003−508396号公報に記載されている化合物が報告されている。
【0020】
既に、IPアゴニストが、糖尿病、特に、糖尿病性神経症に対する有効性を発揮することは示されているが(特許文献2および3参照)、血糖値上昇の抑制および/または降下作用、インスリン産生または分泌保持、グルカゴン分泌量の抑制、脂質低下作用、膵β細胞再生促進作用またはGLP−1産生増強を有することは示されていない。
【0021】
【特許文献1】国際公開第99/08991号パンフレット。
【0022】
【特許文献2】特開平02−167227号公報。
【0023】
【特許文献3】国際公開第2004/032965号パンフレット。
【0024】
【非特許文献1】Timo Otonkoski、ほか5名、ディアベテス(Diabetes)、1994年、第43巻、p.947−953。
【0025】
【非特許文献2】Park MK、ほか1名、エクスペリメンタル アンド モレキュラー メディスン(Experimental and Molecular Medicine)、2003年、第35巻、第6号、p.494−500。
【0026】
【非特許文献3】Gutniak,M.K.、ほか3名、ディアベテス ケア(Diabetes Care)、1994年、第17巻、第9号、p.1039〜1044。
【0027】
【非特許文献4】Creutzfeldt,W.O.、ほか5名、ディアベテス ケア(Diabetes Care)1996年、第19巻、第6号、p.580〜586。
【0028】
【非特許文献5】George,G.H.、ほか2名、ネイチャー(Nature)、1993年、第361巻、p.362〜365。
【0029】
【非特許文献6】T.J.Kieffer、ほか2名、エンドクリノロジ−(Endocrinology)、1995年、第136巻、p.3585〜3596。
【0030】
【非特許文献7】Balkan,B 、ほか2名、ディアベトロギア(Diabetologia)、1999年、第42巻、p.1324〜1331。
【0031】
【非特許文献8】Holst,J.J.、ディアベテス(Diabetes)、1998年、第47巻、p.1663〜1670。
【0032】
【非特許文献9】第41回日本糖尿病学会年次学術集会、1998年、No.3N 004。
【0033】
【非特許文献10】第43回日本糖尿病学会年次学術集会、2000年、No.I−5−12。
【0034】
【非特許文献11】S.Moncada、ほか3名、ネイチャー(Nature)、1976年、第263巻、p.663−665。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
GLP−1産生増強作用を有する化合物を見出すことができれば、糖尿病および/または糖尿病性合併症の予防および/または治療剤として有用であり、このような化合物を見出すことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明者らは、GLP−1産生増強作用を有する化合物を見出すべく、鋭意研究した結果、本発明に係るPG受容体アゴニスト、特にIPアゴニストがこの課題を達成することを見出し、本発明を完成した。
【0037】
すなわち、本発明は、
(1) PG受容体アゴニストを含有してなるGLP−1産生増強剤、
(2) PG受容体アゴニストが、IPアゴニストである前記(1)記載の剤、
(3) IPアゴニストが、一般式(I)
【0038】
【化2】

【0039】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである前記(2)記載の剤、
(4) 一般式(I)で示される化合物が、(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸または(Z)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸である前記(3)記載の剤、
(5) GLP−1産生増強がGLP−1産生および/または分泌誘導である前記(1)記載の剤、
(6) グルカゴン分泌量抑制剤である前記(5)記載の剤、
(7) 血糖上昇抑制および/または血糖降下剤である前記(5)記載の剤、
(8) 脂質低下剤である前記(5)または(6)記載の剤、
(9) 膵β細胞再生促進剤である前記(5)記載の剤、
(10) インスリン合成促進剤である前記(5)または(9)記載の剤、
(11) GLP−1により予防および/または治療され得る疾患の予防および/または治療剤である前記(1)記載の剤、
(12) GLP−1により予防および/または治療され得る疾患が、高脂血症、糖尿病、および/または糖尿病性合併症である前記(11)記載の剤、
(13) 糖尿病が、インスリン非依存性またはインスリン依存性糖尿病である前記(12)記載の剤、
(14) PG受容体アゴニストを含有してなる糖尿病および/または糖尿病性合併症の予防および/または治療剤、
(15) PG受容体アゴニストが、IPアゴニストである前記(14)記載の剤、
(16) IPアゴニストが、一般式(I)
【0040】
【化3】

【0041】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである前記(15)記載の剤、
(17) 一般式(I)で示される化合物が、(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、または(Z)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸である前記(16)記載の剤、
(18) グルカゴン分泌量抑制剤である前記(14)記載の剤。
(19) 血糖上昇抑制および/または血糖降下剤である前記(14)記載の剤、
(20) 膵β細胞再生促進剤である前記(14)記載の剤、
(21) 脂質低下剤である前記(20)記載の剤。
(22) インスリン合成促進剤である前記(14)または(20)記載の剤、
(23) サイトカイン産生誘導剤である前記(20)記載の剤、
(24) 糖尿病が、インスリン非依存性またはインスリン依存性糖尿病である前記(14)記載の剤、
(25) 前記(3)記載の一般式(I)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと、アルドース還元酵素阻害薬、インスリン製剤、インスリン分泌促進薬、速効型インスリン分泌促進薬、スルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、GLP−1アゴニスト、DPP−IV阻害薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン拮抗薬、PPAR作動薬、PPAR−γ作動薬、PPAR−α作動薬、PPAR−αおよびγ作動薬、フルクトース・ビスフォスファターゼ阻害薬、GSK−3β阻害薬、高低親和性ナトリウム/グルコース共輸送体阻害薬、Glut移行促進薬、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬、β3作動薬、免疫抑制薬、および糖尿病性合併症治療薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬、ならびに、
(26) 前記(3)記載の一般式(I)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと、降圧薬、利尿薬、高脂血症治療薬、循環改善薬、脳血管障害治療薬、腎疾患治療薬、膵疾患治療薬、抗血小板薬、抗動脈硬化薬、および抗炎症薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬に関する。
【0042】
本明細書中、PG受容体アゴニストとしては、EPアゴニスト、DPアゴニスト、FPアゴニスト、TPアゴニスト、またはIPアゴニスト等が挙げられる。
【0043】
本明細書中、EPアゴニストとしては、PGEもしくはその誘導体またはPGEもしくはその誘導体等が挙げられ、さらにPGE受容体サブタイプであるEP1、EP2、EP3、およびEP4に対するそれぞれの選択的アゴニストが挙げられる。これら選択的アゴニストは、その選択的アゴニスト活性を超えない、他のPGE受容体サブタイプに対するアゴニスト活性および/またはIPに対するアゴニスト活性を有していてもよい。そのような選択的アゴニストとしては、例えば、EP2、EP4および/またはIPに対するアゴニスト活性を有するものが挙げられる。同様に、PGE誘導体(例えば、リマプロストやオルノプロスチル等)は、そのアゴニスト活性を超えないPGE受容体サブタイプ又はIPに対するアゴニスト活性を有していてもよい。
【0044】
本明細書中、EP1選択的アゴニストとしては、例えば、ONO−DI−004(特開平11−322709号公報)および同公報に記載された化合物等が挙げられる。
【0045】
本明細書中、EP2アゴニストとしては、例えば、ONO−8815およびONO−8815Lyn(特開平11−193268号公報)ならびに同公報に記載された化合物、AH−13205(Anthony T、ほか5名、(Cardiovascular Drug Reviews)、1993年、第11巻,第2号,p.165−179.)、CP−533536(欧州特許出願公開第11108426号明細書)および同明細書に記載された化合物、ブタプロストおよびリオプロスチル(米国特許第4132738号明細書)ならびに同明細書に記載の化合物、ミソプロストール(米国特許第3965143号明細書)および同明細書に記載の化合物、AY23626(Coleman RA、ほか2名、(Advances in Prostaglandin,Thromboxane,and Leukotriene Research)、1987年、第17A巻、p.467−70.)、欧州特許出願公開第860430号明細書、特開2000−128858号公報、国際公開第99/33794号パンフレット、欧州特許出願公開第974580号明細書、国際公開第95/19964号パンフレット、国際公開第98/28264号パンフレット、国際公開第99/19300号パンフレット、欧州特許出願公開第0911321号明細書、国際公開第98/58911号パンフレット、米国特許第5698598号明細書、または米国特許第6376533号明細書に記載された化合物等が挙げられる。
【0046】
本明細書中、EP3アゴニストとしては、例えば、TEI−3356(米国特許第4692464号明細書)および同明細書に記載の化合物、M&B28767(特表昭51−125255号公報)および同公報に記載の化合物、GR63799X(特開昭61−249951号公報)および同公報に記載の化合物、SC−46275(米国特許第4863961号明細書)および同明細書に記載の化合物、エンプロスチル(米国特許第3985791号明細書)および同明細書に記載の化合物、サルプロストン(欧州特許第0139608号明細書)および同明細書に記載の化合物、ONO−AE−248(国際公開第98/34916号パンフレット)および同パンフレットに記載の化合物、特開平07−215929号公報、特開平08−239356号公報、国際公開第97/05091号パンフレット、国際公開第99/25358号パンフレット、特開平11−012249号公報、特開平10−168056号公報、または特開平07−233145号公報に記載された化合物等が挙げられる。
【0047】
本明細書中、EP4アゴニストとしては、例えば、ONO−4817(国際公開第00/009872号パンフレット)および同パンフレット記載の化合物、ならびに特開昭53−21159号公報、特開昭52−05764号公報、特開昭52−73865号公報、特開昭52−133975号公報、特開昭57−54166号公報、国際公開第02/042268号パンフレット、または国際公開第00/003980号パンフレットに記載された化合物等が挙げられる。
【0048】
本明細書中、IPアゴニストとして、例えば、PGIもしくはその誘導体、Octimibate(西独特許公開公報3504677号明細書)および同明細書記載の化合物、アタプロスト(特開昭54−130543号公報)および同公報記載の化合物、CS−570(特開昭54−95552号公報)および同公報記載の化合物、ベラプロスト・ナトリウム(特開昭62−134787号公報)および同公報記載の化合物、シカプロスト(特開昭59−157050号公報)および同公報記載の化合物、OP−2507(特開昭61−30519号公報)および同公報記載の化合物、クリンプロスト(特開昭59−137445号公報)および同公報記載の化合物、ピミルプロスト(特開昭59−141536号公報)および同公報記載の化合物、TY−11223(特開平03−246252号公報)および同公報記載の化合物、samixogrel(特開平03−005457号公報)および同公報記載の化合物、エポプロステノール・ナトリウム(特開昭52−136161号公報)および同公報記載の化合物、treprostinil sodium(米国特許第4306075号明細書)および同明細書記載の化合物、イロプロスト(特開昭55−057559号公報)および同公報記載の化合物、イブジラスト(特開昭48−097898号公報)および同公報記載の化合物、オザグレル・ナトリウム(特開昭55−000313号公報)および同公報記載の化合物、イスボグレル(特開昭58−219162号公報)および同公報記載の化合物、TRA−418(国際公開第00/07992号パンフレット)および同パンフレット記載の化合物、フタラジノール(特開昭50−70380号公報)および同公報記載の化合物、ならびに特開昭55−501098号公報、特開昭57−501127号公報、特開昭59−210644号公報、特開昭58−124778号公報、特開昭57−32277号公報、特開昭57−144276号公報、特表平09−506894号公報、特表平09−509958号公報、特表平11−509191号公報、欧州特許第0542203号明細書、米国特許第5362879号明細書、特開平08−245498号公報、特開平10−087608号公報、特開平10−010610号公報、特開平11−005764号公報、特開平06−87811号公報、特開平08−109162号公報、特開平06−025074号公報、特開平07−145057号公報、特開平06−072978号公報、特開2000−86635号公報、特開平06−056744号公報、特表2001−522830号公表、特表2001−521029号公報、特表2001−526257号公報、特表2000−191523号公報、特開平11−228417号公報、または特表2003−508396号公報に記載された化合物等が挙げられる。
【0049】
PG受容体アゴニストとして好ましくは、EP2アゴニスト、EP4アゴニスト、またはIPアゴニストであり、特に好ましくは、IPアゴニストである。
【0050】
IPアゴニストとして上記特許公開公報に掲載されている化合物のうち、好ましくは、特開平06−87811号公報、特開平08−109162号公報、特開平06−025074号公報、特開平07−145057号公報、特開平06−072978号公報、または特開2000−86635号公報に記載されている化合物であり、特に好ましい化合物として、特開平06−87811号公報または特開平08−109162号公報に記載されている一般式(I)に示される化合物、
【0051】
【化4】

【0052】
(式中、
【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
を表わし、Rは水素原子またはC1〜4アルキル基を表わし、Rは(i)水素原子、(ii)C1〜8アルキル基、(iii)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(v)ベンゼン環もしくはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(vi)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、Rは(i)C1〜8アルキル基、(ii)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、(iii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iv)ベンゼン環もしくはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(v)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、eは3〜5の整数を表わし、fは1〜3の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わし、qは1または2を表わし、rは1〜3の整数を表わし、
【0056】
【化7】

【0057】
は、一重結合または二重結合を表わし、
【0058】
【化8】

【0059】
は、基中の
【0060】
【化9】

【0061】
が一重結合の場合、
【0062】
【化10】

【0063】
を表わし、二重結合の場合、
【0064】
【化11】

【0065】
を表わす。ただし、
【0066】
【化12】

【0067】
が前記(iii)または(iv)で示される基である場合には、−(CH−および=CH−(CH−は環上のaまたはbの位置に結合するものとし、RおよびR基中の環は、さらに、1〜3個のC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはトリハロメチル基で置換されていてもよい。)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、ならびにそれらのプロドラッグが挙げられる。
【0068】
一般式(I)中、
【0069】
【化13】

【0070】
として好ましくは、
【0071】
【化14】

【0072】
である。
一般式(I)中、C1〜4アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基等の直鎖状または分岐鎖状のC1〜4アルキル基等が挙げられる。
【0073】
一般式(I)中、C1〜8アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖状または分岐鎖状のC1〜8アルキル基等が挙げられる。
【0074】
一般式(I)中、C1〜4アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ基等の直鎖状または分岐鎖状のC1〜4アルコキシ基等が挙げられる。
【0075】
一般式(I)中、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
【0076】
一般式(I)中、トリハロメチル基としては、例えば、トリフルオロメチル等が挙げられる。
【0077】
一般式(I)中、C4〜7シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル基等が挙げられる。
【0078】
一般式(I)中、窒素原子1個を含む4〜7員単環としては、例えば、アゼチジン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、アゼピン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピンもしくはパーヒドロアゼピン環またはこれらの環の一部もしくは全部が飽和した環等が挙げられる。
【0079】
一般式(I)中、Rとして好ましくは、(i)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、(ii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iii)ベンゼン環もしくはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基であり、特に好ましいのは、(i)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、または(ii)窒素原子1個を含む4〜7員単環であり、Rとして好ましくは、(i)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、(ii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iii)ベンゼン環もしくはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基であり、特に好ましくは、(i)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基または(ii)窒素原子1個を含む4〜7員単環である。
【0080】
本明細書中、一般式(I)に示される具体的な化合物としては、[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、(Z)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、[5−[2−(ジフェニルメチリデンアミノオキシ)エチル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、[1−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−2,3−ジヒドロインデン−4−イルオキシ]酢酸、[6−[1−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]メチル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、[6−[1−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]メチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、[5−[2−[1,1−(3−ジピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチリデン]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、および[5−[3−(ジフェニルメチリデンアミノオキシ)−1−プロペニル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、それらの塩、それらの溶媒和物、ならびにそれらのプロドラッグが挙げられる。
【0081】
一般式(I)に示される化合物のうち、好ましいものとしては、(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、すなわち
【0082】
【化15】

【0083】
で示される化合物および(Z)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸、すなわち
【0084】
【化16】

【0085】
で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物ならびにそれらのプロドラッグである。
【0086】
一般式(I)に示される化合物には、(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸および(Z)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸の混合物も含まれる。
【0087】
IPアゴニストのうち、その他好ましい化合物としては、Octimibate、アタプロスト、CS−570、ベラプロスト・ナトリウム、シカプロスト、OP−2507、クリンプロスト、ピミルプロスト、TY−11223、samixogrel、エポプロステノール・ナトリウム、treprostinil sodium、イロプロスト、イブジラスト、オザグレル・ナトリウム、イスボグレル、TRA−418、およびフタラジノールなどが挙げられる。
【0088】
本明細書中、GLP−1増加促進あるいは産生増強とは、GLP−1産生および/または分泌誘導を含んでいてもよい作用を意味する。
【0089】
本明細書中、GLP−1および/またはGIP産生増強とは、GLP−1および/またはGIP産生および/または分泌誘導を含んでいてもよい作用である。
【0090】
本明細書中、GLP−1産生および/または分泌誘導とは、GLP−1mRNA発現の増加に起因する当該誘導、GLP−1タンパク質合成の増加に起因する当該誘導、GLP−1産生細胞からの分泌増加に起因する当該誘導、GLP−1の血中への分泌増加に起因する当該誘導、およびそれぞれの過程におけるGLP−1mRNAおよび/またはGLP−1分解の抑制から選択される作用を意味する。
【0091】
本明細書中、GLP−1低下抑制とは、GLP−1分解阻害作用を含んでいてもよい作用を意味する。
【0092】
本明細書中、血糖(値)上昇抑制および/または血糖(値)降下とは、空腹時および飽食時血糖値の上昇を抑制および/または当該血糖値を低下させる活性、糖負荷後2時間までの血糖値の上昇を抑制および/または当該血糖値を低下させる活性、およびHbA1Cの上昇を抑制および/またはHbA1Cを低下させる活性から選択される1種以上をなし得る作用を意味する。さらに、好ましくは、空腹時血糖値が約126mg/dL以下、糖負荷後2時間までの血糖値が約200mg/dL以下、およびHbA1Cが約6.1%以下から選択される1種以上をなし得る作用であり、特に、好ましくは、空腹時血糖値が約109mg/dL以下、糖負荷後2時間血糖値が約140mg/dL以下、およびHbA1Cが約5.5%以下から選択される1種以上をなし得る効果を有していることを意味する。
本明細書中、グルカゴン量抑制および/またはグルカゴン分泌量抑制とは、空腹時の血中グルカゴン濃度を約430pg/mL以下に低下させることを含んでいてもよい作用を意味する。
【0093】
本明細書中、インスリン合成促進とは、インスリン分泌指数を約0.4以上、好ましく約0.8以上にすることを含んでいてもよい作用を意味する。
【0094】
本明細書中、低血糖とは、血糖値が約60mg/dL以下を意味する。
【0095】
本明細書中、血中脂質改善または脂質低下とは、空腹時における、総コレステロール量低下、HDLコレステロール量増加、LDLコレステロール量低下、遊離脂肪酸量低下、および中性脂肪(トリグリセライド等)量低下から選択される1種以上をなし得る作用である。
【0096】
総コレステロール量低下とは、総コレステロール量を低下させる活性を有していればよいことを意味するが、好ましくは空腹時約240mg/dL以下、特に好ましくは空腹時約220mg/dL以下に低下させ得る作用を意味する。
【0097】
HDLコレステロール量増加とは、HDLコレステロール量を増加させる活性を有していればよいことを意味するが、好ましくは空腹時約40mg/dL以上、特に好ましくは空腹時約50mg/dL以上に増加させ得る作用を意味する。
【0098】
LDLコレステロール量低下とは、LDLコレステロール量を低下させる活性を有していればよいことを意味しているが、好ましくは空腹時約150mg/dL以下に低下させ得る作用を意味する。
【0099】
遊離脂肪酸量の低下とは、遊離脂肪酸量を低下させる活性を有していればよいが、好ましくは約620μEq/L以下に低下させ得る作用を意味する。
【0100】
中性脂肪量低下とは、中性脂肪量を低下させる活性を有していればよいことを意味しているが、好ましくは空腹時約200mg/dL以下、特に好ましくは空腹時約150mg/dL以下に低下させ得る作用を意味する。
【0101】
本明細書中、膵β細胞再生促進とは、体内で減少した膵β細胞の増殖、幹細胞(例えば、胚性幹細胞等)のインシュリン分泌細胞への分化および/または増殖、あるいは体性幹細胞(例えば、膵幹上皮細胞など)からインシュリン分泌細胞への分化および/または増殖を促進する作用を意味する。また、膵β細胞の肥大による機能亢進も含む。
【0102】
本明細書中、サイトカイン産生誘導とは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、各種の線維芽細胞増殖因子(a/bFGF)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アンジオポエチン、低酸素誘導因子(HIF)、インスリン様成長因子(IGF)、骨形成蛋白質(BMP)、結合組織成長因子(CTGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)またはそのファミリーの増殖因子等を産生誘導する作用を意味する。
【0103】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体z(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、互変異性体、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0104】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【0105】
【化17】

【0106】
は紙面の向こう側(すなわちα−配置)に結合していることを表わし、
【0107】
【化18】

【0108】
は紙面の手前側(すなわちβ−配置)に結合していることを表わし、
【0109】
【化19】

【0110】
はα−配置、β−配置またはそれらの混合物であることを表わし、
【0111】
【化20】

【0112】
は、α−配置とβ−配置の混合物であることを表わし、
【0113】
【化21】

【0114】
は、一重結合または二重結合を表わす。
【0115】
本発明に係る一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で塩に変換される。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、酸付加塩等が挙げられる。塩としては薬学的に許容される塩が好ましく、特に、好ましくは、酸付加塩である。
【0116】
塩は、水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(例えば、カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩が挙げられる。
【0117】
酸付加塩は水溶性であることが好ましい。適当な酸付加塩としては、例えば塩酸塩、ニ塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ジメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩が挙げられるが、好ましくは、塩酸塩、ニ塩酸塩、ジメタンスルホン酸塩、およびメタンスルホン酸塩である。
【0118】
一般式(I)で示される化合物およびそれらの塩は、溶媒和物に変換することもできる。
【0119】
溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)のような溶媒和物が挙げられる。
【0120】
一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により一般式(I)で示される化合物に変換される化合物をいう。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては、一般式(I)で示される化合物がアミノ基を有する場合、そのアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、一般式(I)で示される化合物のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert−ブチル化された化合物など);一般式(I)で示される化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、一般式(I)で示される化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物など);一般式(I)で示される化合物がカルボキシ基を有する場合、該カルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、一般式(I)で示される化合物のカルボキシ基がエチルエステル化、イソプロピルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物など);一般式(I)で示される化合物がカルボキシ基を有する場合、該カルボキシ基がヒドロキシメチル基と置き換わった化合物等が挙げられる。これらの化合物はそれ自体公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。
[本発明に係る化合物の製造方法]
本明細書中、IPアゴニストは、特開昭55−501098号公報、特開昭57−501127号公報、西独特許公開公報3504677号明細書、特開昭54−130543号公報、特開昭54−95552号公報、特開昭62−134787号公報、特開昭59−157050号公報、特開昭61−30519号公報、特開昭59−137445号公報、特開、特開平03−005457号公報、特開昭52−136161号公報、米国特許第4306075号、特開昭55−057559号公報、特開昭48−097898号公報、特開昭55−000313号公報、特開昭58−219162号公報、国際公開第00/07992号パンフレット、特開昭50−70378号公報、特開昭59−210644号公報、特開昭58−124778号公報、特開昭57−32277号公報、特開昭57−144276号公報、特表平9−506894号公報、特表平9−509958号公報、特表平11−509191号公報、欧州特許第0542203号明細書、米国特許第5362879号明細書、特開平08−245498号公報、特開平10−087608号公報、特開平10−010610号公報、特開平11−005764号公報、特開平06−87811号公報、特開平08−109162号公報、特開平06−025074号公報、特開平07−145057号公報、特開平06−072978号公報、特開2000−86635号公報、特開平06−056744号公報、特表2001−522830号公表、特表2001−521029号公報、特表2001−526257号公報、特表2000−191523号公報、特開平11−228417号公報、および特表2003−508396号公報等に記載された方法、これらに準ずる方法、もしくは当該公報の実施例に示す方法、または公知の方法に従って製造することができる。
【0121】
特に、一般式(I)で示される本発明に係る化合物は、特開平06−87811号公報または特開平08−109162号公報に記載された方法、これらに準ずる方法、または当該公報の実施例に示す方法に従って製造することができる。
[毒性]
本発明に係る化合物の毒性は非常に低いものであり、医薬として使用するために十分安全である。
[医薬品への適用]
本発明に係る化合物は、糖尿病、例えば、インスリン非依存性糖尿病、ケトーシス抵抗性糖尿病、若年者の成人発症型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、ケトーシスに傾きやすい糖尿病、若年性糖尿病、インスリン不足性糖尿病、飢餓糖尿病、潜在性糖尿病(ポテンシャル糖尿病)、不安定型糖尿病、無症状糖尿病、膵性糖尿病、もしくは糖尿病前症(境界型糖尿病)等の予防および/または治療剤として有用であると考えられる。
【0122】
ひいては、糖尿病性合併症、例えば、糖尿病性アシドーシス、糖尿病性神経障害、糖尿病性多発性神経障害、糖尿病性ミエロパシー、糖尿病性リポイド類壊死病、糖尿病性胃不全麻痺、糖尿病性黄色腫、糖尿病性壊疽、糖尿病性関節炎、糖尿病性亀頭炎、糖尿病性胸髄神経根障害、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性昏睡、糖尿性糸球体硬化症、糖尿病性脂肪血症、糖尿病性歯肉炎、糖尿病性湿疹、糖尿病性神経症性悪質液、糖尿病性脊髄ろう、糖尿病性大呼吸、糖尿病性虹彩ルベオーシス、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚炎、糖尿病性腎症、および糖尿病性網膜症から選択される1種以上の合併症、動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋梗塞、狭心症、脳血管障害、脳卒中、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、および間欠性跛行等の大血管障害の予防および/または治療剤として有用であると考えられる。
【0123】
また、本発明に係る化合物は、GLP−1により予防および/または治療され得る疾患の予防および/または治療剤として有用であると考えられる。GLP−1により予防および/または治療され得る疾患とは、血中および/または組織GLP−1濃度の増加、その維持、および/または低下抑制によって、予防および/または治療され得る疾患を意味する。例えば、上記疾患ならびにグルカゴノーマもしくはグルカゴノーマ症候群および高グルカゴン血症等が挙げられる。
【0124】
本発明に係る化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、(1)本発明に係る化合物による上記した疾患の予防および/または治療効果の補完および/または増強、(2)本発明に係る化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または(3)本発明に係る化合物の副作用の軽減のために他の薬剤と組み合わせて、あるいは併用剤として投与してもよい。
【0125】
本発明に係る化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明に係る薬剤を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明に係る化合物を後に投与してもよく、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0126】
前記他の薬剤は、低分子化合物であってもよく、また高分子の蛋白、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(DNA、RNA、遺伝子)、アンチセンス、デコイ、抗体であるか、またはワクチン等であってもよい。他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明に係る薬剤と他の薬剤の配合比は、投与対象の年齢および体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば、本発明に係る薬剤1質量部に対し、他の薬剤を0.01乃至100質量部用いればよい。他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、本発明に係る薬剤の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0127】
他の薬剤としては、例えば、アルドース還元酵素阻害薬、インシュリン製剤、インシュリン分泌促進薬、速効型インシュリン分泌促進薬、スルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、GLP−1アゴニスト、DPP−IV阻害薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン拮抗薬、PPAR作動薬、PPAR−γ作動薬、PPAR−α作動薬、またはPPAR−αおよびγ作動薬、フルクトース・ビスフォスファターゼ阻害薬、GSK−3β阻害薬、高低親和性ナトリウム/グルコース共輸送体阻害薬、Glut4移行促進剤、フォスファチジルイノシトール刺激薬、リン酸付加分解酵素阻害薬、PG合成刺激薬、トリプシンフォスファターゼ阻害薬、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬、カルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ阻害薬、リパーゼ阻害薬、脂質過酸化酵素阻害薬、ドーパミンD2作動薬、β3作動薬、アミリン作動薬、ヒスタミンH1拮抗薬、ナトリウムチャネル拮抗薬、アデノシンA2作動薬、カリウムチャネル開口薬、抗酸化薬、5−HT取り込み阻害薬、5−HT2C作動薬、TNF−α拮抗薬、抗CD3モノクローナル抗体、抗GDF−8抗体、IL−2作動薬、組換ヒトIGF−1、ソマトスタチン作動薬、PKC阻害薬、NGF作動薬、EGF作動薬、PDGF作動薬、免疫抑制薬、その他糖尿病治療薬および糖尿病性合併症治療薬等が挙げられる。
【0128】
アルドース還元酵素阻害薬として、例えば、リサレスタット、イミレスタット、ソルビニール、フィダレスタット、ゼナレスタット、ポナルレスタット、トルレスタット、ゾポルレスタット、エパルレスタット、メトソルビニール、ミナルレスタット、リンドルレスタット、JTT−811、SG−210、bimoclomol、AL−1567、TAT、AS−3201、NZ−314およびAD−5467等が挙げられる。
【0129】
インスリン製剤として、例えば、インスリン・デテミール、インスリン・アスパルト、インスリン・グラルジン、インスリン・グルリジン、インスリン・リスプロ、インスリン(遺伝子組換え)(商品名;イスヒューマン)、吸入インスリン、経皮インスリン、insulin semi−synthetic、insulin oral、HMR−4006、NN−344、INGAP peptide、Albulin、BasulinおよびAI−401等が挙げられる。
【0130】
インスリン分泌促進薬として、例えば、レパグリニド、ミグリトール、エクセナチドおよびAVE−0010等が挙げられる。
【0131】
速効型インスリン分泌促進薬として、例えば、ナテグリニドおよびミチグリニド・カルシウム水和物等が挙げられる。
【0132】
スルホニル尿素薬として、例えば、トリブタミド、グリクロピラミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トラザミド、グリクラシド、グリベンクラミドおよびグリメピリド等が挙げられる。
【0133】
ビグアナイド薬として、例えば、メトホルミンおよびブホルミン等が挙げられる。
【0134】
GLP−1アゴニストとして、例えば、インシュリノトロピン、liraglutide、CJC−1131、GLP−1、R−1583、LY−307161およびrGLP−1(Betatropin)等が挙げられる。
【0135】
DPP−IV阻害薬として、例えば、LAF−237、P−32/98、P−93/01、TS−021、815541、825964、823093、TA−6666およびMK−0431等が挙げられる。
【0136】
α−グルコシダーゼ阻害薬として、例えば、ミグリトール、ボグリボースおよびアカルボース等が挙げられる。
【0137】
グルカゴン拮抗薬として、例えば、NN−2501等が挙げられる。
【0138】
PPAR作動薬として、PPARα、γ、およびδ受容体に対する作動薬であればよく、これらの2以上の組み合わせであってもよい。例えば、GW−677954、GW−544およびbexarotene等が挙げられる。
【0139】
PPAR−γ作動薬として、例えば、ピオグリタゾン・塩酸、ロシグリタゾン・マレイン酸、balaglitazone、R−483、netoglitazone、naveglitazar、T−131、SUN−E7001およびCLX−0921等が挙げられる。
【0140】
PPAR−α作動薬として、例えば、K−111、LY−510929、AVE−0847およびAVE−8134等が挙げられる。
【0141】
PPAR−αおよびγ作動薬として、例えば、ムラグリタザル、テサグリタザル、TAK−559、GW−409544およびONO−5129等が挙げられる。
【0142】
フルクトース・ビスフォスファターゼ阻害薬として、例えば、CS−917およびMB06322等が挙げられる。
【0143】
GSK−3β阻害薬として、CT118637、GI179186X、CP−70949、GW784752XおよびGW784775X等が挙げられる。
【0144】
高低親和性ナトリウム/グルコース共輸送体阻害薬として、例えば、T−1095、KGT−1251およびAVE−2268等が挙げられる。
【0145】
Glut移行促進剤としては、Glut4移行促進剤が挙げられ、具体的にはYM−1919等が挙げられる。
【0146】
フォスファチジルイノシトール刺激薬として、例えば、レグリタザル等が挙げられる。
【0147】
インスリン感受性増強薬として、例えば、FK−614、MBX−102、CLX−0901、dexlipotamおよびGPI−5693等が挙げられる。
【0148】
リン酸付加分解酵素阻害薬として、例えば、ingliforibおよびAVE−5688等が挙げられる。
【0149】
プロスタグランジン合成刺激薬として、例えば、Tarabetic等が挙げられる。
【0150】
トリプシンフォスファターゼ阻害薬として、例えば、ISIS−113715等が挙げられる。
【0151】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬として、例えば、BVT−3498およびAMG−331等が挙げられる。
【0152】
カルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ阻害薬として、例えば、ST−1326等が挙げられる。
【0153】
リパーゼ阻害薬として、例えば、オルリスタットおよびATL−962等が挙げられる。
【0154】
脂質過酸化酵素阻害薬として、例えば、チリラザド・メシル酸等が挙げられる。
【0155】
ドーパミンD2作動薬として、例えば、メシル酸ブロモクリプチンおよびウリジン等が挙げられる。
【0156】
β3作動薬として、例えば、YM−178、solabegron hydrochloride、N−5984およびLY−377604等が挙げられる。
【0157】
アミリン作動薬として、例えば、pramlintide acetate等が挙げられる。
【0158】
ヒスタミンH1拮抗薬として、例えば、ReN−1869等が挙げられる。
【0159】
ナトリウムチャネル拮抗薬として、例えば、オクスカルバゼピン等が挙げられる。
【0160】
アデノシンA2作動薬として、例えば、MRE−0094等が挙げられる。
【0161】
カリウムチャネル開口薬として、例えば、NN−414等が挙げられる。
【0162】
抗酸化薬として、例えば、EGb−761等が挙げられる。
【0163】
5−HT取り込み阻害薬として、例えば、デュロキセチン・塩酸等が挙げられる。
【0164】
5−HT2C作動薬として、例えば、APD−356等が挙げられる。
【0165】
TNF−α拮抗薬として、例えば、BLX−1002等が挙げられる。
【0166】
抗CD3モノクローナル抗体として、例えば、TRX−4等が挙げられる。
【0167】
抗GDF−8抗体として、例えば、MYO−029等が挙げられる。
【0168】
IL−2作動薬として、例えば、denileukin diftitox等が挙げられる。
【0169】
組換ヒトIGF−1として、例えば、mecasermin rinfabate、ソマトメジン−I(遺伝子組換え)、メカセルミン(遺伝子組換え)、PV−705およびペグビソマント等が挙げられる。
【0170】
ソマトスタチン作動薬として、例えば、BIM−23190等が挙げられる。
【0171】
PKC阻害薬として、例えば、ルボキシスタウリン等が挙げられる。
【0172】
NGF作動薬として、例えば、TAK−428等が挙げられる。
【0173】
EGF作動薬として、例えば、DWP−401等が挙げられる。
【0174】
PDGF作動薬として、例えば、ベカプレルミン等が挙げられる。
【0175】
免疫抑制薬として、例えば、tiplimotide、AVE−0277、NBI−6024およびrhGAD65等が挙げられる。
【0176】
その他糖尿病または糖尿病性合併症治療薬として、例えば、ピリドキサミン・塩酸、ピラジノイルグアニジン、カプサイシン、S−15261、CS−011、R−1439、R−765、R−1438、R−1440、AnervaX.RA、V−411、Gluconoct、TAK−654、c−3347、CKD−401、ESP−A、Y−128、QR−333、EXO−226、P−57、第二世代レプチン、RO−63−8695およびDI−5012等が挙げられる。
【0177】
さらに、他の薬剤としては、例えば、降圧薬、利尿薬、高脂血症治療薬、循環改善薬、脳血管障害治療薬、腎疾患治療薬、膵疾患治療薬、抗血小板薬、抗動脈硬化薬および抗炎症薬等が挙げられる。
【0178】
降圧薬としては、例えば、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシンII合成酵素阻害薬およびアンギオテンシンII拮抗薬等がある。具体的には、例えば、マレイン酸エラナプリル、メシル酸ドキサゾシン、塩酸イミダプリスル、塩酸テモカプリル、ニルバジピン、塩酸マニジピン、リシノプリル、カルベシロール、塩酸ベタキソロール、シルニジピン、塩酸セリプロロール、ニプラジロール、アラセプリル、シラザプリル、酒石酸メトプロロール、塩酸バルニジピン、トランドラプリル、塩酸キナプリル、塩酸ベナゼプリル、塩酸エホニジピン、塩酸ブナゾシン、カプトプリル、塩酸デラプリル、テルミサルタン、マロン酸ボピンドロール、ウラピジル、フェロジピン、塩酸テラゾシン、塩酸アモスラロール、アラニジピン、カドララジン、エンサンチリソロール、カンデサルタン、ロサルタン・カリウム、バルサルタン、アテノロール、ヒドロクロロチアジド、メチルドーパ、ニフェジピンおよびニトロプルシド・ナトリウム等が挙げられる。
【0179】
利尿薬としては、例えば、トラセミド、アミロリド、フロセミド、ヒドロクロロチアジン、マンニトール、イソソルビド、アゾセミド、スピロノラクトンおよびカンレイ酸カリウム等が挙げられる。
【0180】
高脂血症治療薬としては、PPARαおよびδ作動薬、HMG−CoA還元酵素阻害薬、およびコレステロール吸収阻害薬等がある。具体的には、例えば、クロフィブラートアルミニウム、アトルバスタチン・カルシウム 水和物、ベザフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、コレスチミド、コレスチラミン、デキストラン硫酸ナトリウム、エラスターゼ、フルバスタチン・ナトリウム、ニセリトロール、ニコモール、ピタバスタチン・カルシウム、ポリエンホスファチジルコリン、プラバスタチン・ナトリウム、プロブコール、シンバスタチン、ソイステロール、アルプロスタジル、ニセルゴリン、塩酸ニカルジピン、ニコチン酸トコフェノール、酒石酸イフェンプロジル、アルガトロバン、エポプロステノール・ナトリウム、ポリスチレンスル・ナトリウム、メシル酸アメジニウム、シチコリン、塩酸ファスジル水和物、塩酸ロメリジンおよびフマル酸ニゾフェノン等が挙げられる。
【0181】
循環改善薬としては、血管拡張薬、血小板凝集抑制薬、血栓溶解薬等がある。具体的には、例えば、ブトクタミド・セミコハク酸、fosphenytoin disodium、オザグレル・ナトリウム、アマンタジン・塩酸、イデベノン、ニセルゴリン、アニラセタム、メマンチン・塩酸、ニルバジピン、アロチノロール・塩酸、ベニジピン・塩酸、カルベジロール、ペリンドプリル エルブミン、ロサルタン・カリウム、カンデサルタンシレキセチル、ボセンタン、イルベサルタン、ファスジル水和物・塩酸、ニコランジル、プラバスタチン・ナトリウム、エプティフィバチド、イコサペント酸エチル、シロスタゾール、クロピドグレル・硫酸、アブシキシマブ、キシメラガトラン、アルテプラーゼ、チソキナーゼおよびロシグリタゾン・マレイン酸等が挙げられる。
【0182】
脳血管障害治療薬としては、例えば、オザグレル・ナトリウム、アルガトロバン、エダラボン、アスピリン、チクロピジン、シロスタゾール、ワルファリン等が挙げられる。
【0183】
腎疾患治療薬としては、例えば、ジラゼプ・塩酸、ジピリダモール、イコデキストリン、ペルサンチン、コメリアン、プレドニン、ソルメドロール、エンドキサン、イムラン、ブレディニン、サンデイミュン、ヘパリン、ワーファリン、レニベ−スおよびカプトリル等が挙げられる。
【0184】
膵疾患治療薬としては、例えば、ウリナスタチン、メシル酸ガベキサート、メシル酸カモスタットおよびメシル酸ナファモスタット等が挙げられる。
【0185】
抗血小板薬としては、例えば、ダルテパリン・ナトリウム、ダナパロイド・ナトリウム、ヘパリン・カルシウム、ヘパリン・ナトリウム、ヘパリン類似物質、パルナパリン・ナトリウム、レビパリン・ナトリウム、クエン酸・ナトリウムおよびワルファリン・カリウム等が挙げられる。
【0186】
抗動脈硬化薬としては、例えば、プラバスタチン、シンバスタチン、クロフィブラート、クリノフィブラート、ベザフィブラート、コレスチラミン、プロブコール、ニセリトロール、エイコサペンタエン酸、チクロピジン、シロスタゾール、ベラプロストおよびリマプロスト等が挙げられる。
【0187】
抗炎症薬等としては、NSAIDおよび選択的COXII阻害薬等がある。具体的には、例えば、アスピリン、ロキソニン、ジクロフェナク、セレコキシブ、チアプロフェン酸、アルミノプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ザルトプロフェン、スプロフェン、ケトプロフェン、プラノプロフェン、フェンチアザク、ドロキシカム、イブプロフェン、アセクロフェナク、アンフェナク・ナトリウム、テノキシカム、オキサプロジン、ピロキシカム、エモルファゾン、トルフェナム酸、インドメタシンファルネシル、プログルメタシン・マレイン酸、スリンダク、モフェゾラク、エトドラク、ロナゾラク・カルシウム、アンピロキシカム、メサラジン、デフラザコート、ニメスリド、エトリコキシブ、ケトロラック・トロメタモール、パレコキシブ、ロベンザリット・二ナトリウム、オーラノフィン、ロキソプロフェン・ナトリウム、ブシラミン、アクタリット、ピロキシカム・けい皮酸、ナブメトン、サラゾスルファピリジン、ロルノキシカム、メロキシカム、プレドニゾロン・ファルネシル酸、ジアセレイン、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、デキサメタゾン・パルミチン酸、フルチカゾン・プロピオン酸、メチルプレドニゾロン・スレプタン酸、ブデソニド、ジフルプレドナート、デキサメタゾン・プロピオン酸、ジフロラゾン・酢酸、プレドニゾロン・吉草酸酢酸、ヒドロコルチゾン・酪酸プロピオン酸、クロベタゾン・酪酸、デプロドン・プロピオン酸、ハロベタゾール・プロピオン酸、ハルシノニド、アムシノニド、ベタメタゾン・酪酸プロピオン酸、モメタゾン・フランカルボン酸、メチルプレドニゾロン・アセポン酸、エトフェナマート、タカルシトール、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ウフェナマート、フェルビナク、ベクロメタゾン・プロピオン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、オルゴテイン、ミゾリビンおよびメトトレキサート等が挙げられる。
【0188】
本発明に係る化合物と他の薬剤の質量比は特に限定されない。
【0189】
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
【0190】
本発明に係る化合物または本発明に係る化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0191】
本発明に係る化合物の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法または処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから100mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、あるいは成人一人当たり、一回につき、0.1ngから50mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、あるいは一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0192】
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0193】
本発明に係る化合物または本発明に係る化合物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤、経口投与における徐放性製剤、および非経口投与のための注射剤、外用剤、吸入剤、坐剤およびこれらの徐放性製剤等として用いられる。
【0194】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤および顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。
【0195】
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロースまたはデンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0196】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁、または乳化される。さらに、この液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤または緩衝剤等を含有していてもよい。
【0197】
また、経口投与における徐放性製剤もまた有効である。これらの徐放性製剤に用いるゲル形成物質とは、溶媒を含んで膨潤し、そのコロイド粒子が互いにつながり、三次元の網目構造をとり、流動性を失ったゼリー様の物体を形成可能な物質である。製剤上は、主に結合剤、増粘剤及び徐放性基剤として使用される。例えば、アラビアゴム、カンテン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアガム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロースが使用できる。中でもヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下HPMCと略す)が好適に用いられる。HPMCは、ヒドロキシプロポキシル基やメトキシル基の置換度や粘度の異なる種々のタイプのものがあるが、メトローズ60SH(HPMC2910)もしくは90SH(HPMC2208)タイプで、平均粘度が4000cpsのものが適している。
【0198】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはエタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらに、この注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸またはポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤または保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また、無菌の固形剤、例えば、凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0199】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により調製される。
【0200】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に混和または溶融させて調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルまたはオレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウまたはセレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコールまたはセトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリンまたは流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはマクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油またはテレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワランまたはスクワレン等)、水、吸収促進剤またはかぶれ防止剤から選ばれるものが単独でまたは2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤または着香剤等を含んでいてもよい。
【0201】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(例えば、エタノールまたはイソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはエチルセルロース等)、中和剤(例えば、トリエタノールアミンまたはジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤およびかぶれ防止剤から選ばれるものが単独でまたは2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤等を含んでいてもよい。
【0202】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて製造される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(例えば、プロピレングリコールまたは1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(例えば、2−ヘキシルデカノールまたはセタノール等)、乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類または脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤およびかぶれ防止剤から選ばれるものが単独でまたは2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤等を含んでいてもよい。
【0203】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチンまたはメチルセルロース等)、湿潤剤(例えば、尿素、グリセリンまたはプロピレングリコール等)、充填剤(例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウムまたはマグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤およびかぶれ防止剤から選ばれるものが単独でまたは2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤等を含んでいてもよい。
【0204】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤およびかぶれ防止剤から選ばれるものが単独でまたは2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤等を含んでいてもよい。
【0205】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤および懸濁化剤等から選ばれるものが単独でまたは2種以上に溶解、懸濁または乳化させて調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤等を含んでいてもよい。
【0206】
噴霧剤、吸入剤およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば、米国特許第2,868,691号および同第3,095,355号に詳しく記載されている。
【0207】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤または吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水もしくは他の適当な媒体に溶解または懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0208】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウムまたはパラベン等)、着色剤、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウム等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウムまたは濃グリセリン等)、増粘剤(例えば、カリボキシビニルポリマー等)または吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0209】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(例えば、ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(例えば、デンプンまたはデキストリン等)、賦形剤(例えば、乳糖またはセルロース等)、着色剤、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウムまたはパラベン等)または吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0210】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(例えば、アトマイザーまたはネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0211】
徐放性製剤としては、皮下、筋肉、および/または他の組織へ投与可能なものが好ましく、国際公開第04/032965号パンフレットに記載されているPLGA(PLA/PGA)やゼラチン製剤等が挙げられる。
【0212】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【発明の効果】
【0213】
本発明に係るPG受容体アゴニスト、特に、IPアゴニストは、GLP−1産生増強作用を有し、同作用に基づくグルカゴン分泌量抑制作用およびインスリン合成促進作用ないし血糖値上昇抑制および/または降下作用を有するため、糖尿病および/または糖尿病合併症の予防および/または治療剤として有用である。
【0214】
当該作用の一部には、当該化合物による膵β細胞再生が関与しているものと解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0215】
以下、実施例および生物学的実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0216】
また、実施例に示す化合物名は、ACD/Name Batchによって命名した。
実施例1
投与開始日(投与1日目)に、KK−A/Ta Jclマウス(雄、6週齢、n=8)に本発明に係る被験化合物1((E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸)もしくは対照化合物1(5−{4−[2−(5−エチルピリジン−2−イル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン)(ピオグリタゾン)をそれぞれ30mg/kg、または対照媒体(0.5%CMC)を経口投与し、投与後6時間に眼窩静脈叢から採血した。血糖値は、酵素電極法にてアントセンスII(ダイキン工業株式会社)を用いて測定した。なお、当該試験は給餌・給水下で実施した。
【0217】
上記単回投与に引き続き、連続して計14日間、各化合物の同量を1日1回反復投与した。3および11日目の各化合物投与後6時間に同様に採血し、血糖値を測定した。
【0218】
14日目の投与から18時間以上絶食させた動物にグルコース溶液(2g/kg、10mL/kg)を経口投与した。なお、当該糖負荷前、糖負荷後120分に血糖値を測定した。なお、各化合物投与は糖負荷前3時間に行った。また、糖負荷後3時間に麻酔下、全採血した後、主に肝臓、膵臓、および腎臓について重量測定と同時に肉眼的剖検所見を得た。当該血液を、遠心分離して血漿を得た。なお、血漿は、測定時まで超低温フリーザーに凍結保存し、以下の測定に使用した。
【0219】
血糖値はヘキソキナーゼ・G−6−PDH法、総コレステロール量(以下、TC量と略記する。)は酵素法により、トリグリセライド量(以下、TG量と略記する。)はGPO・HDAOS法によって検出し、生化学自動分析装置(AU400、オリンパス株式会社)を用いて測定した。血漿インスリン量(以下、IRI量と略記する。)および血漿グルカゴン量(以下、IRG量と略記する。)はELISA法によって検出し、プレートリーダー(Immuno Mini NJ−2300、ナルジェ・ヌンク・インターナショナル株式会社)を用いて測定した。なお、膵インスリン含量(以下、膵IRI含量と略記する。)は、凍結膵に75%エタノールを加えてホモジネート後、遠心上清をSep−Pak(C18;WATER)処理にてインスリン分画を採取して、ELISA法にて測定した。
【0220】
血糖値、TC量、TG量、IRI量、IRG量、膵IRI含量、IRI量(膵臓1mg当り)および体重値は、それぞれ群ごとに平均値±標準誤差で表わされる。有意差検定は、媒体群と各投与群間について、F検定後、等分散の場合にはスチューデントのt検定を、不等分散の場合はアスピン−ウェルヒのt検定を行った。なお、有意水準は5%未満(p<0.05)を有意とし、1%未満(**:p<0.01)および5%未満(*:p<0.05)とに分けて表示する。
[結果]
表1は、各化合物の単回投与による血糖値への影響を示す。被験化合物1は、投与後3時間に対照媒体群に比し有意な血糖降下作用を示した。一方、対照化合物1は有意な血糖降下作用は示さなかった。
【0221】
表2は、各化合物の反復投与後3日目および11日目の血糖値への影響を示す。被験化合物1は、反復投与により血糖降下作用を示した。
【0222】
表3は、各化合物の14日間反復投与後の糖負荷試験における血糖値への影響を示す。空腹時血糖(糖負荷前)はいずれも有意な差を示さなかったが、糖負荷後120分において、被験化合物1は、溶媒対照群に比し有意な血糖低下作用を示した。一方、対照化合物1では有意差は認められなかった。
【0223】
表4は、各化合物の14日間反復投与後の糖負荷後3時間におけるTC量およびTG量への影響を示す。被験化合物1は、TC量の低下傾向を示した。
【0224】
表5は、各化合物の14日間反復投与後の糖負荷後3時間における血糖値、血漿インスリン(IRI)量、および血漿グルカゴン(IRG)量への影響を示す。被験化合物1は、血糖値の低下、IRI量の増加、およびIRG量の減少を示したが、対照化合物1は、いずれも変化を示さなかった。
【0225】
表6は、各化合物の14日間反復投与後における膵IRI含量および膵臓単位重量当りのIRI量に対する影響を示す。被験化合物1は、対照媒体群に比べ膵臓中のインスリン含量の増加および膵臓単位重量当たりのインスリン量の増加を示したが、対照化合物1は、膵インスリン含量の増加は示さなかった。これらの結果から、被験化合物1には、膵β細胞の再生促進に伴う膵インスリン合成量の増加が示唆された。
【0226】
表7は、各化合物の14日間反復投与後におけるマウス体重への影響を示す。被験化合物1は、対照媒体群に比し体重変化を示さなかった。一方、対照化合物1は有意な体重増加を示した。
【0227】
剖検所見において、対照化合物1は5/8例の肝臓に白色化を認め、脂肪肝が示唆されたが、被験化合物1および対照媒体群はいずれも変化は認められなかった。
【0228】
以上の結果から、被験化合物1は、対照化合物1(ピオグリタゾン)に比し、より有用な抗糖尿病薬になり得ることが示唆された。
【0229】
【表1】

【0230】
【表2】

【0231】
【表3】

【0232】
【表4】

【0233】
【表5】

【0234】
【表6】

【0235】
【表7】

【0236】
実施例2
KK−A/Ta Jclマウスに、連続7日間、本発明に係る被験化合物1((E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸)または対照化合物1(5−{4−[2−(5−エチルピリジン−2−イル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン)をそれぞれ21mg/100g混餌投与する。なお、通常餌を与えた群を対照群とする。
【0237】
各化合物の混餌投与前ならびに混餌投与開始後2日目、5日目、および7日目において尾静脈採血し、実施例1に記載した方法により血糖値を測定する。
【0238】
混餌投与開始7日目の混餌投与後60分に、麻酔下腹部大動脈から採血を行う。当該血液を試料とし、血糖値、TG量、TC量、IRI量、およびIRG量を実施例1に記載した方法により測定する。血漿GLP−1量はELISA法によって検出し、プレートリーダー(Immuno Mini NJ−2300)を用いて測定する。
実施例3
Crj:CD(SD)IGSラットに、7日間、本発明に係る被験化合物1((E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸)の10mg/kgを経口、または3mg/kgを皮下投与する。なお、被験化合物1投与の両群に対して0.5%CMC投与群を対照群とする。
【0239】
さらに、約18時間以上絶食させた後、上記化合物をそれぞれ同量、単回経口投与する。当該投与後約5分〜2時間にブドウ糖溶液2g/kg/5mLを経口投与し、当該ブドウ糖溶液投与前ならびに投与後15分、30分、60分、および120分に採血を行い、それぞれの血漿GLP−1量、血糖値、IRI量、およびIRG量を実施例1と同様の方法により測定する。体重測定は、上記18時間以上の絶食後に行う。また、化合物投与前の採血により回収した血漿に対しても同様の測定を行う。
実施例4
16時間以上絶食したJcl:Wistarラットに、本発明に係る被験化合物1((E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸)/グルコース混合液、対照化合物1(5−{4−[2−(5−エチルピリジン−2−イル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン)(ピオグリタゾン)/グルコース混合液、および対照媒体(0.5%CMC/グルコース混合液)を、それぞれ被験化合物1が10mg/kg、対照化合物1が30mg/kgとなるよう、および対照媒体として0.5%CMC/グルコース混合液の相当量を経口投与した。いずれもグルコース負荷量は2g/kgを経口投与した。投与後30分に、EDTA−2Na処理したキャピラリーを用いて、尾静脈から約300μLの血液を採取し、定法に従い血漿を分離した。得られた血漿について、血糖値、GLP−1量、IRI量およびIRG量を実施例1と同様の方法により測定した。
[結果]
表8は、正常ラットへの各化合物の単回投与および糖負荷後30分の血糖値、血漿GLP−1量、IRI量およびIRG量を示す。被験化合物1は、GLP−1量の増加、IRI量の増加、およびIRG量の減少を示した。
【0240】
【表8】

【0241】
実施例5
GK/Jclラット(糖尿病動物)に、13日間、本発明に係る被験化合物1((E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸)および対照化合物1(5−{4−[2−(5−エチルピリジン−2−イル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン)(ピオグリタゾン)をそれぞれ10mg/kgおよび30mg/kg、または対照媒体(0.5%CMC/グルコース混合液)を経口投与する。14日目に、16時間以上絶食した動物に、被験化合物1/グルコース混合液および対照化合物1/グルコース混合液をそれぞれ10mg/kgおよび30mg/kgとなるよう経口投与し、対照媒体として0.5%CMC/グルコース混合液の相当量を経口投与する。グルコース負荷量は2g/kgを経口投与するものとする。投与前、投与後5、15、30、60および120分に、EDTA−2Na処理したキャピラリーを用いて、尾静脈から約300μLの血液を採取し、定法に従い血漿を分離する。得られた血漿について、GLP−1量、血糖値、IRI量およびIRG量を実施例1と同様の方法により測定する。
製剤例1
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に5mgの活性成分を含有する錠剤100錠を得た。
・(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸 ……500mg
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤) ……200mg
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) ……100mg
・微結晶セルロース ……9.2 g
製剤例2
以下の各成分を常法により混合した後、溶液を常法により滅菌し、5mlずつアンプルに充填し、常法により凍結乾燥し、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル100本を得た。
・(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸 ……2.0g
・マンニトール ……20 g
・蒸留水 ……500ml
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明に係るPG受容体アゴニスト、特に、IPアゴニストは、GLP−1産生増強作用を有し、同作用に基づくグルカゴン分泌量抑制作用およびインスリン合成促進作用ないし血糖値上昇抑制および/または降下作用を有するため、糖尿病および/または糖尿病性合併症の予防および/または治療剤の有効成分として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PG受容体アゴニストを含有してなるGLP−1産生増強剤。
【請求項2】
PG受容体アゴニストが、IPアゴニストである請求項1記載の剤。
【請求項3】
IPアゴニストが、一般式(I)
【化1】

(式中、
【化2】

は、
【化3】

を表わし、Rは、水素原子またはC1〜4アルキル基を表わし、Rは(i)水素原子、(ii)C1〜8アルキル基、(iii)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(v)ベンゼン環もしくはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(vi)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、Rは(i)C1〜8アルキル基、(ii)フェニル基もしくはC4〜7シクロアルキル基、(iii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iv)ベンゼン環もしくはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(v)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、eは3〜5の整数を表わし、fは1〜3の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わし、qは1または2を表わし、rは1〜3の整数を表わし、
【化4】

は、一重結合または二重結合を表わし、
【化5】

は、基中の
【化6】

が一重結合の場合、
【化7】

を表わし、二重結合の場合、
【化8】

を表わす。ただし、
【化9】

が前記(iii)または(iv)で示される基である場合には、当該基中の−(CH−および=CH−(CH−は環上のaまたはbの位置に結合するものとし、RおよびR基中の環は、さらに、1〜3個のC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはトリハロメチル基で置換されていてもよい。)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである請求項2記載の剤。
【請求項4】
一般式(I)で示される化合物が、(E)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸または(Z)−[5−[2−[1−フェニル−1−(3−ピリジル)メチリデンアミノオキシ]エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イルオキシ]酢酸である請求項3記載の剤。
【請求項5】
GLP−1産生増強が、GLP−1産生および/または分泌誘導である請求項1記載の剤。
【請求項6】
グルカゴン分泌量抑制剤である請求項5記載の剤。
【請求項7】
血糖上昇抑制および/または血糖降下剤である請求項5記載の剤。
【請求項8】
脂質低下剤である請求項5または6記載の剤。
【請求項9】
膵β細胞再生促進剤である請求項5記載の剤。
【請求項10】
インスリン合成促進剤である請求項5または9記載の剤。
【請求項11】
GLP−1により予防および/または治療され得る疾患の予防および/または治療剤である請求項1記載の剤。
【請求項12】
GLP−1により予防および/または治療され得る疾患が、高脂血症、糖尿病、および/または糖尿病性合併症である請求項11記載の剤。
【請求項13】
糖尿病が、インスリン非依存性またはインスリン依存性糖尿病である請求項12記載の剤。
【請求項14】
請求項3記載の一般式(I)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと、アルドース還元酵素阻害薬、インスリン製剤、インスリン分泌促進薬、速効型インスリン分泌促進薬、スルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、GLP−1アゴニスト、DPP−IV阻害薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン拮抗薬、PPAR作動薬、PPAR−γ作動薬、PPAR−α作動薬、PPAR−αおよびγ作動薬、フルクトース・ビスフォスファターゼ阻害薬、GSK−3β阻害薬、高低親和性ナトリウム/グルコース共輸送体阻害薬、Glut4移行促進薬、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬、β3作動薬、免疫抑制薬、および糖尿病性合併症治療薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬。
【請求項15】
請求項3記載の一般式(I)で示される化合物、それらの塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと、降圧薬、利尿薬、高脂血症治療薬、循環改善薬、脳血管障害治療薬、腎疾患治療薬、膵疾患治療薬、抗血小板薬、抗動脈硬化薬、および抗炎症薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬。

【公開番号】特開2006−199694(P2006−199694A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369929(P2005−369929)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】