説明

GLP−2製剤

【課題】保存および/または高温暴露に対して優れた安定性を示すGLP−2ペプチドおよびその類似体製剤の提供。
【解決手段】生理学的に許容されるレベルに製剤のpHを調節するのに十分な量のリン酸緩衝液、L−ヒスチジンならびにマンニトールおよびスクロースからなる群より選択される増量剤を含有するGLP−2ペプチド製剤。製剤のpHは好ましくは6.0以上、更に好ましくは6.9〜7.9である。GLP−2ペプチドもしくはその類似体の濃度は、好ましくは0.1〜50mg/mlである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GLP-2ペプチドおよびその類似体の製剤を提供する。特に、本発明は、改良された安定性を有するGLP-2ペプチドおよびGLP-2類似体の製剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
治療用ペプチドを投与するには、保存中安定に保たれるペプチド製剤が必要である。一般に、ペプチドの場合には非経口投与が用いられる。なぜなら、ペプチドはサイズが大きいため、生体膜を通過することが困難であるからである。ペプチドは経時的分解および/または凝集や沈殿を起こす傾向があるので、製剤化するのはとりわけ困難である。分解、凝集、および沈殿はいずれも、不安定な製剤であることを示唆する。そのような不安定な製剤は、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)の承認を得ることができないので、市販することができない。
【0003】
保存中のペプチドの分解に影響を及ぼす製剤変数としては、pH、存在する塩の量、賦形剤のタイプおよび量が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このほか、凍結および乾燥サイクルの温度、圧力、および時間もまた、凍結乾燥ペプチド製剤の安定性に影響を及ぼす可能性がある。これらの変数のほとんどについてその役割が研究されているが、変数の相乗効果は依然としてあまりよく理解されていない。
【0004】
グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)は、胃腸管の疾患を処置する治療用途をもつ33アミノ酸ペプチドである。特に、GLP-2およびその類似体は胃腸管の機能の増強および保持ならびに腸組織の増殖の促進を行う栄養剤として作用することが判明している。たとえば、米国特許第5,834,428号、同第5,789,379号、および同第5,990,077号、ならびに国際公開第WO 98/52600号を参照されたい。
【0005】
GLP-2もしくはその類似体の商品開発を行うには、商業上許容される方法を用いて容易に調製することのできる安定なGLP-2製剤が必要である。GLP-2はタンパク質であり、従来の低分子量薬物よりもかなり不安定であるので、GLP-2もしくはその類似体の製剤は、医薬品業界が通常は遭遇することのない課題を抱えている。たとえば、GLP-2の位置10におけるメチオニンの酸化、ならびに位置11、16、および/または24におけるアスパラギンの脱アミノは、考えられる分解経路である。さらに、GLP-2もしくはその類似体は、表面に吸着して凝集体および/または沈殿を形成する可能性もあり、それにより製剤が不安定になるおそれがある。
【0006】
商業上許容される方法を用いて調製することのできるGLP-2ペプチドおよびその類似体の安定な製剤が当技術分野で必要とされている。本発明はこうしたニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、商業上許容される方法を用いて調製することのできるGLP-2およびその類似体の安定な製剤を提供する。
【0008】
製薬上許容される製剤中で比較的高濃度のGLP-2を使用できることが見出された。さらに、約5.5以上、より好ましくは約6以上、さらにより好ましくは約6.9〜約7.9、最も好ましくは約7.3〜約7.4のpHが安定な製剤を得るのに適していることが判明した。
【0009】
また、GLP-2類似体h[Gly2]GLP-2は、塩濃度に依存して、40〜55℃で相転移を起こし、塩の存在下で疎水性になることが見出された。このほか、Tween 80(登録商標)、塩、およびアルギニンは、h[Gly2]GLP-2の安定な製剤を製造するのに適した物質でないことも分かった。
【0010】
本発明の1態様によれば、(1)医療上有用な量のGLP-2、(2)製薬上許容されるレベル、特に約6.0以上に製剤のpHを調節するのに十分なリン酸緩衝液、(3)安定化量のアミノ酸L-ヒスチジン、ならびに(4)スクロースおよびマンニトールから選択される増量剤、を含有するGLP-2製剤が提供される。
【0011】
より特定的には、(1)医療上有用な量のGLP-2、たとえば、約0.1〜約50mg/ml、好ましくは約5〜約40mg/ml、より好ましくは約7〜約30mg/ml、さらにより好ましくは約10〜約20mg/ml、最も好ましくは約20mg/mlのGLP-2、(2)生理学的に許容されるレベル、すなわち6以上にpHを保持するリン酸緩衝液、(3)安定化用アミノ酸、特にL-ヒスチジン、および(4)増量剤、特にマンニトール、を含有するGLP-2製剤が提供される。本明細書に記載されているパーセントはすべて(水のパーセントを除く)、g/ml単位での重量/凍結乾燥前の製剤化製品の体積(×100)である。含水率パーセントは、重量/凍結乾燥製品の重量(×100)である。
【0012】
本発明の1実施形態では、GLP-2製剤は、その用時調製物中に、(1)用時調製物のpHを約6.9〜7.9に保持するのに必要な量、好ましくは約7.3〜約7.4のpHに保持する量のリン酸緩衝液、(2)約0.5〜約1%のL-ヒスチジン、(3)約2〜約5%のマンニトール、好ましくは約2.5〜約3.5%のマンニトール、最も好ましくは約3%のマンニトール、および(4)約0.1〜約50mg/ml、好ましくは約5〜約40mg/ml、より好ましくは約7〜約30mg/ml、さらにより好ましくは約10〜約20mg/ml、最も好ましくは約20mg/mlのGLP-2もしくはその類似体、を含有するh[Gly2]GLP-2凍結乾燥製剤である。
【0013】
本発明のより好ましい実施形態では、用時調製物中に、(1)約7〜約30mg/ml、好ましくは約10〜約20mg/ml、最も好ましくは約20mg/mlのh[Gly2]GLP-2、(2)pHを約7.3〜約7.4に保持するのに十分なリン酸緩衝液、(3)約0.5〜約1%のL-ヒスチジン、および(4)約3%のマンニトール、を含有するh[Gly2]GLP-2凍結乾燥製剤が提供される。
【0014】
本発明の他の態様において、GLP-2の凍結乾燥製剤を製造する方法が提供される。そのような方法には、次のステップ:
(a)GLP-2もしくはその類似体、リン酸緩衝液、L-ヒスチジン、およびマンニトールを含むGLP-2製剤を調製すること、
(b)製剤を約-40℃まで凍結させること、
(c)第1の乾燥処理を約-20℃で行うこと、
(d)第2の乾燥処理を約+20℃で行うこと、
が含まれる。
【0015】
好ましい実施形態では、凍結乾燥処理に付される液体製剤は、(1)h[Gly2]GLP-2類似体、(2)約6.9〜7.9のpH、より好ましくは約7.3〜7.4のpHに用時調製物を保持する35mMのリン酸緩衝液、(3)約0.5〜約1%のL-ヒスチジン、および(4)約3%のマンニトール、を含有する。
【0016】
本発明の他の態様によれば、非経口投与を行うべくGLP-2の製薬上許容される製剤を調製する方法が提供される。この方法には、凍結乾燥されたGLP-2製剤を用時調製するステップが含まれる。
【0017】
本発明によれば、(1)本発明の凍結乾燥GLP-2製剤を含む滅菌バイアル、(2)その用時調製に適したビヒクル、好ましくは滅菌水、(3)用時調製に関する説明書、および(4)場合により投与に関する説明書、を含んでなる治療上有用なキットがさらに提供される。キットは、用時調製物を注射するのに好適な器具をさらに含んでいてもよい。
【0018】
以上の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ解説的なものであり、特許請求された本発明のさらなる説明の提供を意図したものである。他の目的、効果、および新規な特徴は、以下の発明の詳細な説明から当業者には自明なものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】熱ストレス試験を用いた、特定のアミノ酸安定剤がh[Gly2]GLP-2の製剤に及ぼす影響を示した棒グラフである。熱の適用前および適用後の両方について3つの異なるアミノ酸製剤の純度パーセント(%)をプロットしてある。
【図2】L-ヒスチジンがh[Gly2]GLP-2のリン酸緩衝製剤に及ぼす影響を示した棒グラフである。0および4時間における3つの異なる製剤の純度%をプロットしてある。
【図3】室温および60℃における逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)分析による増量剤のスクリーニング結果を示した棒グラフである。7つの異なるアミノ酸製剤の純度%をプロットしてある。
【図4】サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)分析による増量剤のスクリーニング結果を示した棒グラフである。「HMW」は高分子量ピークを表す。7つの異なる製剤の純度%をプロットしてある。
【図5】凍結乾燥前の液体状態にあるh[Gly2]GLP-2のマンニトールおよびスクロース製剤を4℃で保存したときの安定性を示した棒グラフである。4つの異なる製剤の純度%を0分から49分まで7分間隔でプロットしてある。
【図6】凍結乾燥されたh[Gly2]GLP-2のマンニトールおよびスクロース製剤を60℃で保存したときの安定性を示した棒グラフである。4つの異なるアミノ酸製剤の純度%をプロットしてある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、優れた保存安定性を呈するGLP-2製剤に関する。「GLP-2」という用語は、本明細書中で使用する場合、天然に存在するGLP-2ペプチドもしくはそのGLP-2類似体を意味する(特に別段の指示がないかぎり)。
【0021】
本発明のGLP-2製剤は、1回もしくは複数回用量の投与、たとえば、注射による投与に好適な液体製剤として提供することができる。液体製剤はまた、凍結乾燥剤形の調製に利用しうるストック溶液としても役立てることができる。したがって、本発明のGLP-2製剤は、凍結乾燥形態で、たとえば、用時調製してから注射可能な液体製剤として投与するのに好適なフリーズドライ粉末として、提供することができる。
【0022】
本発明の凍結乾燥製剤は、周囲温度で6ヶ月および4℃で18ヶ月の保存安定性を呈する。保存安定性は、最小量のペプチド分解、好ましくは約5%より低いペプチド分解、より好ましくは約3%〜約4%より低いペプチド分解、さらにより好ましくは約1%〜約2%より低いペプチド分解によって示される。ペプチド分解は、標準的な逆相HPLC(RP-HPLC)法を用いて測定することができる。
【0023】
天然に存在するGLP-2ペプチドは、高度に保存されたペプチドである。したがって、本発明で使用するGLP-2ペプチドには、種々の天然に生成される形のGLP-2、特に脊椎動物種(魚およびトリ種を含む)、より特定的には哺乳動物(たとえば、霊長類、齧歯動物(ラット、マウス、デグー、ハムスターおよびモルモットを含む)、ブタ、およびウシ)、さらに特定的にはヒト形のGLP-2が包含される。本質的なことではないが望ましくは、使用すべく選択された天然に存在するGLP-2ペプチドは、処置対象の被験者と同一の種に由来するものである。
【0024】
本発明で使用できる可能性のあるGLP-2類似体には、GLP-2受容体のアゴニストおよびアンタゴニストが包含される。GLP-2アゴニストは、最初に、受容体に結合し、続いて、受容体と共役する細胞内第二メッセンジャー系を刺激することにより、GLP-2受容体を活性化する。本発明の1実施形態では、GLP-2アゴニストは、GLP-2受容体に選択的に作用する。選択的に作用するGLP-2アゴニストは、好適なGLP-2受容体結合もしくは機能アッセイにおいて、より大きな親和力でGLP-2受容体に結合する化合物である。そのようなより大きな親和力は、好ましくは、GLP-1受容体のような異なる受容体タイプのときと比較して少なくとも1桁大きい。他の実施形態では、GLP-2類似体は、天然に存在するGLP-2の親和力と少なくとも等価な親和力でGLP-2受容体に結合する。
【0025】
本発明の他の実施形態では、GLP-2ペプチドは、1個以上のアミノ酸の置換、付加、欠失、もしくは改変が組み込まれかつ生物学的活性が保持された天然GLP-2の類似体である。
【0026】
ヒトGLP-2およびラットGLP-2のアゴニスト活性にはインタクトなN末端が必要であると考えられるが、C末端ではアゴニスト活性が損なわれない範囲で数残基までの種々の欠失が許容される。種々のGLP-2種相同体間で保存される領域の外側の部位では、置換が許容される。同様に、GLP-2種間で保存される領域内の部位でも置換が許容される。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は保存的置換である。たとえば、アミノ酸クラスの1メンバーを他のメンバーにより置換することができる。具体的には、グリシンによるアラニンの置換、グルタミンによるアスパラギンの置換、ロイシンもしくはイソロイシンによるメチオニンの置換などが可能である。
【0027】
天然に存在するGLP-2ペプチドが、最初の4個のN末端残基の1つ以上で、特に、これらのN末端残基の任意の1つ以上が欠失することにより、突然変異している場合、ヒトおよびラットのGLP-2類似体のアンタゴニスト活性が現れる。このほか、天然に存在するhGLP-2が、(1)次の位置:Asp15、Phe22、Thr29、Thr32および/またはAsp33のいずれにも天然には存在しないアミノ酸で置換されている場合、ならびに(2) Ala2が、次のアミノ酸:Leu、Cys、Glu、Arg、TrpおよびPO3-Tyr2のいずれかにより置換されている場合、アンタゴニスト活性が現れる。さらに、GLP-2類似体のアンタゴニストには、アゴニスト活性を呈する天然に存在するGLP-2もしくはGLP-2類似体の腸栄養活性の阻害を惹起する天然に存在するGLP-2ペプチドの任意の突然変異体もしくは変異体が包含される。アンタゴニストとして作用するGLP-2の構造類似体については、WO 98/03547に具体的に記載されている。
【0028】
GLP-2受容体類似体は、GLP-2受容体を産生するように遺伝子操作された細胞に対してペプチドをスクリーニングすることにより同定することができる。GLP-2受容体はクローン化されている。Munroe et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(4):1569 (1999)を参照されたい。GLP-2受容体が機能的に組み込まれた細胞、およびGLP-2類似体をスクリーニングするためのその使用についても、1998年6月18日に公開された国際公開WO 98/25955号に記載されている。
【0029】
好ましい実施形態では、アゴニスト活性を有するGLP-2類似体は、DPP-IVのような内因性酵素による分解に対する耐性を付与すべく改変されたものである。そのような類似体は、好適には、位置2のアラニン残基の置換が組み込まれている。特定の実施形態では、Ala2残基は、グリシンもしくはセリンにより、またはたとえば米国特許第5,789,379号に記載されているような他の残基により置換されている。好ましい実施形態では、GLP-2受容体アゴニストは[Gly2]GLP-2である。ヒトの処置で使用するために、GLP-2類似体は、本質的なことではないが望ましくは、ヒトGLP-2ペプチドもしくは類似体、特に、ヒトGLP-2のGly2類似体である。
【0030】
h[Gly2]GLP-2類似体は5.5未満のpHで沈澱し、温度プロファイルから約40℃の熱誘発性塩依存性転移温度が示されることを見いだした。pH溶解度プロフィルに基づいて、リン酸緩衝液がGLP-2ペプチドに最適な緩衝能力を提供することを明らかにした。さらに、リン酸緩衝液にL-ヒスチジンを添加するとGLP-2ペプチドが効果的に安定化されるが、アルギニン、クエン酸塩もしくはリシンを添加してもGLP-2組成物が効果的に安定化されないことがわかった。L-ヒスチジンは、GLP-2ペプチドが分解前のインタクトな状態にある期間を長くする安定化用アミノ酸として作用する。
【0031】
本発明の凍結乾燥製剤は、約5重量%以下の水、好ましくは2重量%以下の水、より好ましくは約1重量%以下の水を含む粉末形態で提供されるのが好ましい。
【0032】
上記製剤に組み込まれる増量剤は、非晶質不定形ケークを生じる。ラクトース、トレハロース、およびマルトース糖は、マンニトールおよびスクロースほどGLP-2製剤を効果的に安定化させないことがわかった。マンニトールは、GLP-2製剤用の好ましい賦形剤であることがわかった。
【0033】
本発明の製剤に組み込まれる緩衝剤は、患者に投与すべく生理学的に許容される範囲内のpHに調製物を緩衝化させることのできる物質から選択される。「生理学的に許容される」製剤とは、患者に投与するうえで許容される範囲で製剤のさらなる投与を行うことができないほど極端ではない反応をレシピエント中で誘発する製剤を指す。より特定的には、製剤のpHは、約5.5以上、より好ましくは約6以上、さらにより好ましくは約6.9〜約7.9、最も好ましくは約7.3〜約7.4でなければならないことがわかった。好ましくは、緩衝剤はリン酸塩ベースであり、最も好ましくは、35mMリン酸緩衝液が使用される。
【0034】
本発明の製剤には、医療上有効な量、すなわち、治療上もしくは診断上有用な量のGLP-2が組み込まれている。そのような量は、選択されたGLP-2ペプチドもしくは類似体のタイプおよび調製物の最終使用目的に基づいて決定することができる。GLP-2の治療上有用な量としては、GLP-2投与の恩恵を受けうる被験者を処置するのに有用な1回用量が挙げられる。これについては、米国特許第5,834,428号;同第5,789,379号;同第5,990,077号;および同第5,952,301号、ならびに国際公開WO 98/52600号にさらに十分に記載されている。
【0035】
1つの用途において、本発明の製剤は、胃腸疾患、特に、腸の疾患、障害もしくは状態を処置するために利用できると思われる。治療上有用な量としてはまた、対象の被験者に送達しうるGLP-2の複数回用量が挙げられる。GLP-2の診断上有用な量としては、被験者においてGLP-2の内因性レベルもしくはGLP-2薬物のレベルを、たとえば、GLP-2治療の開始時、もしくはGLP-2処置期間中、評価するときに検量体として有用な量が挙げられる。したがって、GLP-2の医療上有用な量は、数マイクログラムからミリグラムオーダーまで広い範囲にわたる可能性がある。好ましくは、本発明の製剤は、約0.1〜約50mg/mlのGLP-2、好ましくは約5〜約40mg/ml、より好ましくは約7〜約30mg/ml、さらにより好ましくは約10〜約20mg/ml、最も好ましくは約20mg/mlのGLP-2を提供する。
【0036】
本発明の実施形態では、凍結乾燥に好適なh[Gly2]GLP-2の液体製剤は、(1)好ましくは約7〜約30mg/ml、さらにより好ましくは約10〜約20mg/ml、最も好ましくは約20mg/mlのh[Gly2]GLP-2;(2)約2〜約5%、好ましくは約2.5〜約3.5%、最も好ましくは約3%のマンニトール;(3)好ましくはL-ヒスチジンである約0.5〜約1%のアミノ酸安定剤;(4)約6.9〜7.9のpH、好ましくは約7.3〜約7.4のpHに用時調製物を緩衝化させうる量のリン酸緩衝液を含有する。
【0037】
好ましくは、本発明のGLP-2製剤を個々のバイアル中に所望の体積で充填し、バイアルを凍結乾燥処理に付す。凍結乾燥処理には、乾燥が均一に進行するように注意深く制御された温度サイクル処理が含まれる。乾燥処理は、GLP-2製剤中、約5%以下の水、好ましくは約2%以下の水、より好ましくは約1%以下の水になるまで、継続する。
【0038】
本発明に好適な凍結乾燥処理には、凍結処理および2段階乾燥処理が含まれる。例示的な凍結処理では、(1)最初に約2℃/分で周囲温度から約-1℃まで製剤バイアルを冷却させてから約15分間にわたり約-1℃に保持し、(2)次に、約2℃/分で約-1℃から約-40℃までバイアルを冷却させてから約4時間にわたり約-40℃に保持する。
【0039】
例示的な第1の乾燥サイクルでは、約2℃/分で約-40℃から約-20℃まで温度を上昇させてから約150mTの真空下かつ約-80℃の凝縮器温度で約14時間にわたり約-20℃に保持する。例示的な第2の乾燥サイクルでは、約2℃/分で約-20℃から約+20℃までバイアルを加温してから、約5%以下の水、好ましくは約2%以下の水、より好ましくは約1%以下の水になるまで、約150mTの真空および約-80℃の凝縮器温度で約14時間にわたり約+20℃に保持する。その後、好ましくはバイアルを約4℃で保存する。
【0040】
本発明はまた、(1)本発明の凍結乾燥されたフリーズドライGLP-2製剤の入った少なくとも1つのバイアル;(2)用時調製用の滅菌水の入った少なくとも1つのバイアル;(3)用時調製に関する説明書;および(4)場合により投与用注射器具を含んでなる医療上有用なキットを提供する。キットを使用するために、ユーザーは、好ましくは製剤バイアルに水を移すことにより、水と製剤バイアルを混合する。本発明の凍結乾燥製剤は、用時調製により迅速に溶解し、用時調製時、4℃で少なくとも約12時間、好ましくは約24時間まで安定である。好ましい実施形態では、凍結乾燥製剤の用時調製は、滅菌水を用いて、好ましくはGLP-2の1回用量あたり約1mL以下の滅菌水を用いて行う。用時調製するために、滅菌水をシリンジに吸い込んでから、凍結乾燥GLP-2製剤の入ったバイアルに移してもよい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示して本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載されている特定の条件もしくは詳細事項に制限されるものではないことを理解すべきである。本明細書全体を通して、米国特許などの公に利用可能な文書のいかなる引用も、参照により具体的に組み入れられるものとする。
【0042】
実施例1: h[Gly2]GLP-2の製剤化および凍結乾燥
この実施例の目的は、GLP-2ペプチドh[Gly2]GLP-2の凍結乾燥製剤を調製することであった。
【0043】
35mMリン酸ナトリウムを含むpH7.4のベース製剤化用緩衝液を次のように調製した。(1)滅菌して発熱物質を除去したフラスコに精製水を添加し;(2)ナトリウム七水和物をフラスコに添加し;そして(3)一塩基性リン酸ナトリウム一水和物をフラスコに添加した。この緩衝液を混合して、pHが7.4±0.2であることを確認した。次に、ベース製剤化用緩衝液を用いてGLP-2ペプチドh[Gly2]GLP-2液体バルク薬物を10mg/mlの濃度に希釈した。その後、最終濃度が7.76g/LになるようにL-ヒスチジンを添加し、そして最終濃度が30g/Lになるようにマンニトールを添加した。
【0044】
調製物を注意深く混合した後、0.22μmフィルターを介して調製物を滅菌済み充填用タンク中に濾過した。次に、タンクから3cc滅菌済みUSP Type Iガラスバイアル中にGLP-2調製物の1mlアリコートを無菌状態で充填し、その後、滅菌済みゴム栓で部分的に蓋をして凍結乾燥トレー中に配置した。
【0045】
次に、バイアルを凍結乾燥器中に送入し、そして約4時間かけて-40±2℃の温度まで製剤を前凍結させることにより凍結乾燥サイクルを開始した。凍結処理では、最初に製剤バイアルを2℃/分で周囲温度から-1℃まで冷却させてから約15分間にわたり-1℃に保持した。この第1の凍結処理の後、バイアルを2℃/分で-1℃から-40℃まで冷却させてから4時間にわたりバイアルを-40℃に保持した。
【0046】
第1の主要乾燥サイクルでは、2℃/分で-40℃から-20℃まで温度を上昇させてから150mTの真空下かつ-80℃の凝縮器温度で約14時間にわたり-20℃に保持した。第2の乾燥サイクルでは、2℃/分で-20℃から+20℃までバイアルを加温してから150mTの真空および-80℃の凝縮器温度で約14時間にわたり+20℃に保持した。第2の乾燥サイクルは、約5%以下の水、好ましくは約2%以下の水、より好ましくは約1%以下の水がGLP-2製剤中に残存する状態になるまで、継続した。その後、バイアルを4℃で保存した。
【0047】
凍結乾燥サイクルの終了時、濾過済み窒素でバイアルをパージし、ゴム栓を十分にバイアルに押し込んだ。栓をしたバイアルを凍結乾燥器から取り出し、クリンプアルミニウムシールで永久的に密封し、そしてポリプロピレンフリップオフボタンで蓋をした。
【0048】
実施例2: 製剤を安定化させるアミノ酸のスクリーニング
この実施例の目的は、高温暴露に対するGLP-2の安定性に及ぼす種々のアミノ酸添加剤の影響を調べることであった。
【0049】
以下に記載のいくつかのアミノ酸を用いてh[Gly2]GLP-2製剤の試験を行った。
試験した製剤には、(1)10mg/mlの濃度のh[Gly2]GLP-2;および(2)以下に列挙されている添加剤が含まれていた。組成物のpHは、7.1〜7.5に保持した。
1. 10mMリン酸塩、10mMグルタミン酸塩
2. 10mMリン酸塩、10mMグルタミン酸塩、50mMアルギニン
3. 10mMリン酸塩、10mMクエン酸塩
4. 10mMリン酸塩、10mMクエン酸塩、50mMアルギニン
5. 10mMリン酸塩、100mMクエン酸塩
6. 10mMリン酸塩、100mMクエン酸塩、50mMアルギニン
7. 10mMリン酸塩、10mMセリン
8. 10mMリン酸塩、10mMセリン、50mMアルギニン
9. 10mMリン酸塩、10mMプロリン
10. 10mMリン酸塩、10mMプロリン、50mMアルギニン
11. 10mMリン酸塩、10mMヒスチジン
12. 10mMリン酸塩、10mMヒスチジン、50mMアルギニン
13. 10mMリン酸塩、10mMグリシン
14. 10mMリン酸塩、10mMグリシン、50mMアルギニン
15. 10 mM His、10mMグリシン
16. 10 mM His、10mMグリシン、50mMアルギニン
【0050】
調製後、実施例1のプロトコルに従ってサンプルを凍結乾燥させ、40℃で14日間保存し、0.4mg/mlまで希釈し、次に60℃で4時間加熱した。
【0051】
アルギニンを含有する製剤はすべて、加熱により沈澱した(製剤2、4、6、8、10、12、14、および16)。製剤5(100mMクエン酸塩)および製剤15(L-ヒスチジンおよびグリシン)もまた沈澱した。L-ヒスチジン、10mMクエン酸塩、セリン、プロリン、グルタミン酸塩、およびグリシンを含有する製剤(製剤1、3、7、9、11、および13)は、他のアミノ酸を添加せずに使用した場合、類似の安定性を示した(図1を参照されたい)。
【0052】
図2に示されているように、リン酸緩衝液と組み合わせてL-ヒスチジンを安定剤として使用したところ、GLP-2ペプチドは、60℃で4時間の熱ストレス時、安定な状態に保持された。
【0053】
実施例3: 増量剤のスクリーニング
この実施例の目的は、高温暴露に対するGLP-2ペプチドの安定性に及ぼす種々の増量剤添加剤の影響を調べることであった。
【0054】
0.4mg/mlの濃度のGLP-2ペプチドh[Gly2]GLP-2の以下の製剤を、実施例1の凍結乾燥処理に従って凍結乾燥させた。その後、組成物を用時調製し、そして60℃まで加熱した。
1. 25mMヒスチジン、35mMリン酸塩、3%マンニトール
2. 50mMヒスチジン、35mMリン酸塩、3%マンニトール
3. 75mMヒスチジン、35mMリン酸塩、3%マンニトール
4. 25mMヒスチジン、25mMリン酸塩、3%スクロース
5. 25mMヒスチジン、25mMリン酸塩、3%トレハロース
6. 25mMヒスチジン、25mMリン酸塩、3%マルトース
7. 25mMヒスチジン、25mMリン酸塩、3%ラクトース
【0055】
図3および4に示されているように、マンニトールサンプル(製剤1、2、および3)が最小量のGLP-2分解を起こしたことが逆相HPLCデータ(図3)から実証される。さらに、3つのL-ヒスチジン濃度(25mM、50mMおよび75mM)のいずれにおいても、同等な安定性を示した。また、マルトースおよびラクトース(製剤6および7)を除いて、すべての製剤中のGLP-2類似体が凝集なしに単一ピークとして溶出したことがSE-HPLC分析(図4)から判明した。製剤6および7では、これに加えて約6%を占める高分子量(HMW)不純物ピークが現れた。しかしながら、これらのサンプルに60℃の熱ストレスを加えたところ、高分子量不純物凝集体は、製剤6および7で約20%まで増大した。
【0056】
したがって、マンニトールおよびスクロースは、本発明のGLP-2製剤への添加が許容される候補化合物であることが示された。
【0057】
実施例4: 増量剤のスクリーニング
この実施例の目的は、高温暴露に対するGLP-2の安定性に及ぼす増量剤添加剤スクロースおよびマンニトールの効果を比較することであった。
【0058】
10mg/mlのh[Gly2]GLP-2の以下の製剤を調製し、それぞれの製剤中のGLP-2の安定性を分析した。生理学的浸透圧モル濃度を満たすために、製剤2のスクロース濃度を5%に増大させた。
1. 35mMリン酸塩、50mMヒスチジン、3%マンニトール(pH 7.4)
2. 35mMリン酸塩、50mMヒスチジン、5%スクロース(pH 7.4)
3. 35mMリン酸塩、25mMリシン、3%マンニトール(pH 7.4)
4. 35mMリン酸塩、25mMリシン、5%マンニトール(pH 7.4)
【0059】
次に、実施例1の凍結乾燥処理に従って製剤を凍結乾燥させてから用時調製を行って安定性を試験した。次に、4時間かけて60℃まで製剤を加熱してから安定性を試験した。
【0060】
室温および40℃で保存した凍結乾燥サンプルはすべて、安定な状態で保持された。
【0061】
次に、凍結乾燥および高温暴露に対する製剤の安定性を測定された。L-ヒスチジンおよびマンニトールを含有する製剤1では、GLP-2分解を示す証拠は観測されなかった。しかしながら、ヒスチジン/スクロース、リシン/マンニトール、およびリシン/マンニトールをそれぞれ含有する製剤2、3、および4では、経時的GLP-2分解を示す証拠が観測された(図6を参照されたい)。
【0062】
これらの結果から、スクロースおよびリシンを添加すると高温暴露でGLP-2ペプチドが不安定化することが示唆される(図5も参照されたい)。
【0063】
実施例5: h[Gly2]GLP-2の純度および量
GLP-2の純度は、ペプチド分解もしくはその欠如の尺度である。GLP-2の量は、GLP-2の全含有率の尺度であり、したがって、ペプチド分解、沈殿および/または凝集の定量的な量に関する指標となる。
【0064】
h[Gly2]GLP-2の純度および量を調べるために、逆相HPLCを利用する。逆相クロマトグラフィーは、化合物をその極性に基づいて分離することのできる結合相クロマトグラフィー法である。h[Gly2]GLP-2は、カラム中の疎水性シリカベースの結合逆相充填物質に吸着し、アセトニトリル勾配で移動相の疎水性を増加させることにより単一ピークとして溶出する。h[Gly2]GLP-2サンプルは比較標準と対比させて定量する。
【0065】
装置
Waters HPLCシステムもしくは等価なシステム
Vydac (Hesperia, CA)、C18逆相分析カラム、4.6mm×25cm、粒径5μm、細孔径300Å、もしくは等価物
Vydac (Hesperia, CA)、C18分析ガードカートリッジ、4.6mm×30mm、粒径5μm、細孔径300Å、もしくは等価物
Hamiltonデジタルシリンジもしくは等価物
ピペット
【0066】
材料
メンブランフィルター(0.45μm)
HPLC標準ガラスバイアル、ポリプロピレンインサート、およびPTFE隔膜
アセトニトリル、HPLCグレード
Milli-Q水
トリフルオロ酢酸(TFA)、スペクトルグレード
重炭酸アンモニウム、ACSグレード
1M水酸化アンモニウム
【0067】
手順
クロマトグラフィー条件
移動相: 溶離液A: Milli-Q水中0.1%(v/v)TFA
溶離液B: アセトニトリル中0.1%(v/v)TFA
オートサンプラー:2〜8℃
検出器:設定波長214nmおよび感度2AU
実行時間:45分
グラジエント条件:

使用後、20%アセトニトリル中にカラムを保存する。
【0068】
10mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH8)の調製
約200mLのMilli-Q水に0.20グラムの重炭酸アンモニウムを溶解させる。1M水酸化アンモニウムを用いてpHを8.0±0.1に調整する。最終体積が250mLになるようにMilli-Q水を添加する。1週間の有効期限を設定し、2〜8℃で保存する。緩衝液を室温まで加温してからpHを調べ、使用前に緩衝液を0.45μmフィルターに通して濾過する。
【0069】
標準の調製
濾過済み10mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH8)でh[Gly2]GLP-2比較標準を200μg/mLの濃度に用時調製する。
【0070】
サンプルの調製
標準の調製に用いたのと同じ緩衝液でh[Gly2]GLP-2試験サンプルを200μg/mLの濃度に用時調製/希釈する。二重反復試験サンプルを調製する。
【0071】
分析
50μLの標準溶液を6回注入する。h[Gly2]GLP-2ピークの保持時間および面積の%RSDは、5%以下(NMT)であり、h[Gly2]GLP-2ピークのUSPテーリング係数は、1〜2である。
50μLのブランク(濾過済み10mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH8))を1回注入する。
50μLのh[Gly2]GLP-2試験サンプルを1回注入する。
試験サンプルを10回注入した後および実験終了時に50μLの標準溶液を1回注入する。
【0072】
データ処理および計算
データ処理
HPLCシステムに備えられているソフトウェアを起動して、5〜40分で観測された全ピーク下の面積を積分する。ただし、ブランク注入のクロマトグラムで観測されたピークに対応するピークはすべて除外する。
計算式
%純度 = h[Gly2]GLP-2ピーク面積×100
検出された全ピークの面積
濃度 = (サンプルのh[Gly2]GLP-2ピーク面積×標準の濃度)×希釈倍率(DF)
標準の平均h[Gly2]GLP-2ピーク面積
【0073】
実施例6
実施例1の方法に従って、9mg/mlのh[Gly2]GLP-2の凍結乾燥製剤を調製した。実施例4の方法を用いて4℃および25℃でサンプルの純度および薬物含量を測定することにより、このサンプルの安定性を試験した。結果を表1および表2に示す。これらの表に示されているように、サンプルは、4℃および25℃でそれぞれ少なくとも6ヶ月間および18ヶ月間の安定性を示した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
本発明の精神もしくは範囲から逸脱することなく本発明の方法および組成物に種々の修正および変更を加えることができることは当業者には自明であろう。したがって、本発明の修正および変更は、添付の特許請求の範囲内およびそれらの等価物の範囲内に含まれるかぎり、本発明に包含されるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医療上有用な量の天然に存在するGLP-2ペプチドもしくはその類似体であって、(i)該類似体が1個もしくは数個のアミノ酸の置換、付加、欠失、もしくは改変を有するものであり、かつ(ii)該GLP-2ペプチドもしくはその類似体がGLP-2受容体アゴニストである、該GLP-2ペプチドもしくはその類似体、
(b)生理学的に許容されるレベルに製剤のpHを調節するのに十分な量のリン酸緩衝液、
(c)L-ヒスチジン、ならびに
(d)マンニトールおよびスクロースからなる群より選択される増量剤、
を含有するGLP-2製剤。
【請求項2】
製剤のpHが6.0以上、6.9〜7.9、または7.3〜7.4である、請求項1に記載のGLP-2製剤。
【請求項3】
前記GLP-2ペプチドもしくはその類似体が0.1〜50mg/ml、5〜40mg/ml、7〜30mg/ml、または10〜20mg/mlの濃度で存在する、請求項1または2に記載のGLP-2製剤。
【請求項4】
前記L-ヒスチジンが0.5〜1%の量で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のGLP-2製剤。
【請求項5】
前記増量剤が2〜5%、または2.5〜3.5%の濃度で存在するマンニトールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のGLP-2製剤。
【請求項6】
前記GLP-2ペプチドが、哺乳動物GLP-2ペプチド、脊椎動物GLP-2ペプチド、およびヒトGLP-2ペプチドからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のGLP-2製剤。
【請求項7】
前記GLP-2ペプチドが、霊長類、ラット、マウス、ブタ種、ヒツジ種、ウシ種、デグー、ハムスター、モルモット、魚、ニワトリ、およびヒトからなる群より選択された動物に由来するGLP-2種の配列を有する、請求項6に記載のGLP-2製剤。
【請求項8】
前記GLP-2ペプチドが、内因性酵素に対する耐性を付与すべく改変された類似体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のGLP-2製剤。
【請求項9】
前記改変が、GLP-2の位置2のアラニン残基を他の好適なアミノ酸、好ましくはグリシンおよびセリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換することを含む、請求項8に記載のGLP-2製剤。
【請求項10】
5重量%以下、または2重量%以下の水を含む凍結乾燥された形態である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のGLP-2製剤。
【請求項11】
(a)周囲温度で少なくとも6ヶ月間まで、この期間中のGLP-2製剤の保存後に観察されるペプチド分解が5%より低い、3%〜4%より低い、または1%〜2%より低い、および
(b)4℃の温度で少なくとも18ヶ月間まで、この期間中のGLP-2製剤の保存後に観察されるペプチド分解が5%より低い、3%〜4%より低い、または2%より低い、
から選択される条件下で安定である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のGLP-2製剤。
【請求項12】
(a)0.1〜50mg/mlのGLP-2ペプチドもしくはその類似体であって、(i)該類似体が1個もしくは数個のアミノ酸の置換、付加、欠失、もしくは改変を有するものであり、かつ(ii)該GLP-2ペプチドもしくはその類似体がGLP-2受容体アゴニストである、該GLP-2ペプチドもしくはその類似体、
(b)製剤のpHを6.0以上、または6.9〜7.9、または7.3〜7.4に調節するのに十分な量のリン酸緩衝液、
(c)0.5〜1%のL-ヒスチジン、および
(d)2〜5%のマンニトール、
を含有するGLP-2製剤。
【請求項13】
凍結乾燥されている、請求項12に記載のGLP-2製剤。
【請求項14】
次のステップ:
(a)(i)GLP-2ペプチドもしくはその類似体であって、(i)該類似体が1個もしくは数個のアミノ酸の置換、付加、欠失、もしくは改変を有するものであり、かつ(ii)該GLP-2ペプチドもしくはその類似体がGLP-2受容体アゴニストである、該GLP-2ペプチドもしくはその類似体、
(ii)製剤のpHを6.0以上、6.9〜7.9、または7.3〜7.4に調節するのに十分な量のリン酸緩衝液、
(iii)L-ヒスチジン、ならびに
(iv)マンニトールおよびスクロースからなる群より選択される増量剤、
を含有するGLP-2製剤を調製すること、
(b)該製剤を-40℃まで凍結させること、
(c)該製剤を-20℃の第1の乾燥処理で乾燥させること、ならびに
(d)該製剤を+20℃の第2の乾燥処理で乾燥させること、
を含んでなる、GLP-2の凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(b)の凍結処理が、
(a)2℃/分で周囲温度から-1℃まで前記製剤を冷却し、続いて15分間にわたり前記製剤を-1℃に保持すること、および
(b)2℃/分で-1℃から-40℃まで前記製剤を冷却し、続いて4時間にわたり前記製剤を-40℃に保持すること、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(c)の乾燥処理が、
(a)2℃/分で-40℃から-20℃まで温度を上昇させること、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(d)の乾燥処理が、
(a)2℃/分で-20℃から+20℃まで前記製剤を加温すること、
(b)前記製剤中に残存する水が5%より低くなるまで、または2%以下になるまで150mTの真空および-80℃の凝縮器温度で14時間にわたり前記製剤を+20℃に保持すること、
を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
(a)(i)GLP-2ペプチドもしくはその類似体であって、該類似体が1個もしくは数個のアミノ酸の置換、付加、欠失、もしくは改変を有するものであり、かつ該GLP-2ペプチドもしくはその類似体がGLP-2受容体アゴニストである、該GLP-2ペプチドもしくはその類似体、
(ii)製剤のpHを5.5以上、6.0以上、6.9〜7.9、または7.3〜7.4に調節するのに十分な量のリン酸緩衝液、
(iii)L-ヒスチジン、ならびに
(iv)マンニトールおよびスクロースからなる群より選択される増量剤、
を含む凍結乾燥したGLP-2製剤、
(b)用時調製用の滅菌水の入ったバイアル、
(c)用時調製に関する説明書、ならびに
(d)投与用注射器具、
を含んでなるキット。
【請求項19】
前記GLP-2製剤が、用時調製後、少なくとも12時間、または最大24時間まで安定である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
胃腸疾患を有するヒトもしくは動物を処置するための医薬の製造における、
(a)GLP-2ペプチドもしくはその類似体であって、(i)該類似体が1個もしくは数個のアミノ酸の置換、付加、欠失、もしくは改変を有するものであり、かつ(ii)該GLP-2ペプチドもしくはその類似体がGLP-2受容体アゴニストである、該GLP-2ペプチドもしくはその類似体、
(b)製剤のpHを5.5以上、6.0以上、6.9〜7.9、または7.3〜7.4に調節するのに十分な量のリン酸緩衝液、
(c)L-ヒスチジン、ならびに
(d)マンニトールおよびスクロースからなる群より選択される増量剤、
を含有する治療上有効な量のGLP-2製剤の使用。
【請求項21】
前記GLP-2製剤が注射または注入により投与されるものである、請求項20に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−116861(P2012−116861A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27323(P2012−27323)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2001−549681(P2001−549681)の分割
【原出願日】平成12年12月29日(2000.12.29)
【出願人】(505166351)エヌピーエス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】NPS PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】