説明

GLYT1阻害薬としてのピペリジンおよびアゼチジン誘導体

本発明は、統合失調症を治療するためのGlyT1阻害剤として式(I)の化合物


(式中、両方のpは1または2であり、Rは一般にヘテロアリールまたはシクロアルキルであり、RはC3−6シクロアルキルまたはフェニルであり、Rはヘテロアリールである。)およびこの医薬的に許容される塩、これを含む医薬組成物、ならびにこれらの調製のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に統合失調症の治療に使用するための、GlyT1阻害薬としての複素環式スルホニルアゼチジンおよびピペリジンを対象とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
統合失調症は、陰性症状(感情鈍麻、禁断症状、無快感症)および陽性症状(偏執症、幻覚、妄想)ならびに顕著な認知障害の組合せを特徴とする消耗性の精神障害である。統合失調症の病因は現在不明であるが、この疾患は生物学的因子、環境因子および遺伝学的因子の複雑な相互作用により引き起こされると思われる。40年以上前にフェンシクリジン(PCP)がヒトにおいて統合失調症患者で見られる状態と非常に類似した精神病的状態を誘発することが見出された。PCPの主要な作用様式がイオンチャネル型グルタミン酸受容体のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)サブタイプの非競合的拮抗薬のものであるという知見は、統合失調症のNMDA受容体機能低下モデルの開発を導き、一連の研究を促した(Jentsch JD and Roth RH,1999 Neuropsychopharmacology,20:201)。
【0003】
哺乳類の中枢神経系における速いグルタミン酸作動性神経伝達は、イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluR)に作用する興奮性アミノ酸グルタミン酸によって主に媒介される。iGluRはα−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)、カイニン酸およびNMDA受容体サブタイプを含む3つの主要なサブクラスから構成されている(Hollmann M and Heinemann S,1994,Annu.Rev.Neurosci.17:31)。これら3つのサブクラスは、多重結合のリガンド依存性陽イオンチャネルであり、グルタミン酸の結合に反応して開き、脱分極性の興奮性後シナプス電流を誘発する。分子クローニングから、NMDA受容体ファミリーが2つの主要なサブユニットであるNR1およびNR2から構成されることが明らかとなっている。さらに、NR3と名付けられた、発生学的に調節されている新規の抑制性のサブユニットが最近報告されている。それぞれの一連のサブユニットには、高度の分子多様性がある。現在まで、ただ1つのNR1サブユニット遺伝子がクローニングされているが、NR1遺伝子の選択的スプライシングは8つの異なるサブユニットを生成できる。これとは対照的に、NR2サブユニットに関して4つの遺伝子がクローニングされており(NR2A、NR2B、NR2C、およびNR2D)、このうちのいくつかは選択的スプライシングを示す(Hollmann M and Heinemann S,1994,Annu.Rev.Neurosci.17:31)。これらの複数のサブユニットはヘテロマーのグルタミン酸依存性イオンチャネルを形成する。天然に存在する受容体の正確なサブユニットの化学量論は依然として不明であるが、NR1およびNR2サブユニットはいずれもが哺乳類の発現系において機能的に活性な受容体−チャネル複合体の発現に必要とされる。NMDA受容体の活性化は、グルタミン酸およびグリシンの両方の結合を必要とする(Johnson JW and Ascher P,1987,Nature 325:529)。興味深いことに、部位特異的変異誘発試験によれば、これら2つのコアゴニストの結合部位は、別々のサブユニット上に存在している(Laube B,Hirai H,Sturgess M,Betz H and Kuhse J,1997,Neuron 18:493)。NR2AおよびNR2Bサブユニット上には、受容体のN末端と細胞外ループとの間の相互作用により、グルタミン酸のための結合ポケットが形成されている。類似の実験では、NR1サブユニットの相同領域にグリシン結合部位が置かれている(Kuryatov A,Laube B,Betz H and Kuhse J,1994,Neuron 12:1291)。実際のサブユニット構成にもよるが、グルタミン酸およびグリシンはNMDA受容体を活性化し、EC50値は高ナノモルから低マイクロモルの範囲である。さらに、NMDA受容体の細孔はマグネシウムを透過させない。正常な安静時には、細胞外マグネシウムは細孔内の部位に結合することが可能であり、チャネルのマグネシウムブロックを形成する。このマグネシウムブロックはチャネルに強い電圧依存性を与え、これによりNMDA受容体はグルタミン酸、グリシンの結合、および電流を伝える前のシナプス後脱分極の発生を必要とする同時検出器として働くことができる。特に興味深いのは、精神異常発現薬MK−801、PCPおよびケタミンはすべて、マグネシウム結合部位と重複する部位と結合することによりNMDA受容体−チャネルのオープンチャネルブロッカーとして働くという知見である。NMDA受容体サブユニットおよび調節部位の豊富な多様性が、生理学的および薬理学的に異なるヘテロマー受容体の複雑な組合せをもたらし、NMDA受容体を新規な治療化合物のデザインのための理想的な標的としていることは明らかである。
【0004】
NMDA受容体は、限定されるものではないが、シナプス可塑性、認知、注意および記憶など、さまざまな神経生理学的現象において重要な役割を果たしている(Bliss T and Collingridge W,1993,Nature 361:31;Morris RGM et al.,1986,Nature 319:774)。精神異常発現性薬は、精神運動興奮薬(コカイン、アンフェタミン)、幻覚剤(LSD)、およびNMDA受容体アンタゴニスト(PCP、ケタミン)を含む幅広い薬物群を構成している。これらのうちで、NMDA受容体アンタゴニストのみが統合失調症の陽性症状、陰性症状および認知症状を確実に誘導するように思われる。ヒト被験体におけるケタミン誘発性精神病の比較試験、ならびにレクリエーショナルドラッグとしてPCPを乱用している患者の症状の所見から、NMDA受容体アンタゴニスト誘発性精神病と統合失調症との間の確かな類似性一覧が作成された(Jentsch JD and Roth RH,1999 Neuropsychopharmacology,20:201)。NMDA受容体アンタゴニストは統合失調症の症状を忠実に模倣し、診察室でこの2つを区別するのは困難なほどである。さらに、NMDA受容体アンタゴニストは統合失調症の患者の症状を悪化させ、安定している患者の症状の再発を引き起こす可能性がある。最後に、グリシン、D−サイクロセリンおよびD−セリンなどのNMDA受容体コアゴニストが統合失調症患者に利益をもたらすという知見は、この障害にNMDA受容体機能低下が関与し、NMDA受容体活性の増加が治療上の利益をもたらす可能性があることを示している(Leiderman E et al.,1996,Biol.Psychiatry 39:213,Javitt DC et al.,1994,Am.J.Psychiatry 151:1234,Heresco−Levy U,2000,Int.J.Neuropsychopharmacol.3:243,Tsai G et al.,1998,Biol.Psychiatry 44:1081)。動物モデルでの多数の試験は、統合失調症におけるNMDA機能低下説を支持する。NMDA NR1サブユニットの正常なレベルのわずか5%しか発現しない変異マウスの最近の作製は、機能性NMDA受容体の減少が、統合失調症の他の動物モデルで観察された状態に非常に良く似た状態を誘発することを示している(Mohn AR et al.,1999,Cell 98:427)。統合失調症のほかに、限定されるものではないが、認知障害、認知症、パーキンソン病、アルツハイマー病および双極性障害を含むヒト中枢神経系(CNS)の多数の疾患状態にグルタミン酸作動性経路の機能障害が関係している。
【0005】
NMDA受容体機能は、コアゴニストであるグリシンの利用可能性を変化させることにより調節できる。グルタミン酸不在下ではグリシンのシナプス濃度を増加させてもNMDA受容体の活性化を引き起こさないので、このアプローチはNMDA受容体の活性依存性の活性化を維持するという重大な強みがある。シナプスのグルタミン酸レベルは、高親和性輸送メカニズムにより厳重に維持されており、グリシン部位の活性化の増大は、活性化されたシナプスのNMDA成分を強化するだけである。標準的な神経遮断薬療法の追加として高用量のグリシンが経口投与された臨床試験では、統合失調症患者の症状の改善がみられた(Javitt et al.Int.J.Neuropsychopharmacol.(2001) 4:385−391)。外因性グリシンを投与せずにシナプスのグリシンレべルを増加させる一方法は、シナプスからのグリシンの除去を阻害することである。このアプローチが統合失調症の治療に有用であるエビデンスは、統合失調症であるが抗精神病薬に対する反応が不十分な患者にサルコシンを投与した二重盲検プラセボ比較試験から得られている。有益な効果が陽性症状、陰性症状および認知症状において認められ、グリシン再取り込みの阻害が統合失調症治療に対する合理的なアプローチであることを示している。
【0006】
2つの特異的なグリシン輸送体、GlyT1およびGlyT2が同定されており、タウリン、γ−アミノ酪酸(GABA)、プロリン、モノアミン類およびオーファン輸送体を含む神経伝達物質輸送体のNa/Cl依存性ファミリーに属することが示されている(Smith KE et al.,1992,Neuron 8:927;Borowsky B et al.,1993,Neuron 10:851;Liu QR et al.,1993,J.Biol.Chem.268:22802;Kim KM et al.,1994,Mol.Pharmacol.45:608;Morrow JA et al.,1998,FEBS Lett.439:334;Nelson N,1998,J.Neurochem.71:1785)。GlyT1およびGlyT2は異なる種から単離されており、アミノ酸レベルの同一性はわずか50%であることが示されている。哺乳類の中枢神経系におけるこれらの発現パターンも異なっており、GlyT2は脊髄、脳幹および小脳で発現し、GlyT1はこれらの領域ならびに皮質、海馬、中隔および視床などの前脳領域に存在する(Smith KE et al.,1992,Neuron 8:927;Borowsky B et al.,1993,Neuron 10:851;Liu QR et al.,1993,J.Biol.Chem.268:22802)。細胞レベルでは、GlyT2はラット脊髄においてグリシン作動性神経終末により発現されると報告されているのに対して、GlyT1はグリア細胞により選択的に発現されると思われる(Zafra F et al.,1995,J.Neurosci.15:3952)。発現に関するこれらの諸研究から、GlyT2は主としてグリシン作動性シナプスでグリシンの取り込みを担うのに対して、GlyT1はNMDA受容体発現シナプスの近傍でグリシン濃度の監視に関与しているという結論が導かれている。最近のラットでの機能的研究では、強力な阻害薬(N−[3−(4’−フルオロフェニル)−3−(4’−フェニルフェノキシ)プロピル])サルコシン(NFPS)を用いるGlyT1の遮断がラットにおいてNMDA受容体活性を高め、NMDA受容体依存性の長期増強作用を促進することが示されている(Bergeron R et al.,1998,PNAS USA 95:15730;Kinney G et al.,2003,J.Neurosci.23:7586)。さらに、NFPSはマウスにおいて、感覚入力の手段であり統合失調症患者において欠乏していることが知られているプレパルス抑制を促進することが報告されている(Kinney G et al.,2003,J.Neurosci.23:7586)。前脳領域におけるGlyT1のこれらの生理学的効果は、統合失調症患者の症状改善におけるGlyT1阻害薬であるサルコシンの有益な効果を示す臨床報告(TsaiおよびCoyle WO 99/52519)と共に、選択的GlyT1取り込み阻害薬が新しい種類の抗精神病薬を代表するものであることを示している。
【0007】
WO−A−05094514号(Merck & Co.,Inc.and Merck Sharp & Dohme Ltd.)には、GlyT1阻害薬としてのピペリジン誘導体が開示されている。しかし、Rの位置に複素環を有する化合物の例は開示されていない。
【0008】
WO−A−05110983号(Merck & Co.,Inc.and Merck Sharp & Dohme Ltd.)には、GlyT1阻害薬としてのアゼチジン誘導体が開示されている。しかし、Rが複素環である化合物の開示はない。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、グリシン輸送体GlyT1を阻害する、グルタミン酸神経伝達機能不全に関連する神経障害および精神障害、ならびにこのグリシン輸送体GlyT1が関与している疾患の治療に有用である化合物を対象とする。
【0010】
本発明は、式Iの化合物
【0011】
【化2】

[式中:
pはともに、1または2であり;
は、−(CH−R1a{式中、nは、独立して、0から6であり、R1aは、
(1)(a)非置換の、または1から6個のハロゲン原子もしくはヒドロキシで置換されているC1−6アルキル、
(b)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、または
(c)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環、
(2)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、
(3)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピペリジニル、
(4)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピラニル、
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−O−C1−6アルキル、
(6)−CO
(式中、Rは、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、または1から6個のフルオロで置換されている−C1−6アルキル、
(c)ベンジル、および
(d)フェニル
から選択される。)、
(7)−NR1011
(式中、R10およびR11は、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C1−6アルキル(R12およびR13は、独立して、水素および−C1−6アルキルから選択される。)、
(c)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C3−6シクロアルキル、
(d)ベンジル、
(e)フェニル
から選択される。)、および
(8)−CONR1011
から選択される。}であり;
は、
(1)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、
(2)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環、
(3)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−NR1011、フェニルもしくは複素環で置換されているC1−8アルキル(前記フェニルもしくは複素環は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている。)、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、および
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)
から選択され;
2a、R2bおよびR2cは、独立して、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)非置換の、または
(a)1から6個のハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、もしくは
(d)−NR1011
で置換されている−C1−6アルキル、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲンで置換されている−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、および
(15)−NO
から選択され;
は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環であり;
およびRは、独立して、
(1)水素、および
(2)非置換の、またはハロゲンもしくはヒドロキシルで置換されているC1−6アルキル
から選択され、
またはRおよびRは、ともにC3−6シクロアルキル環を形成し;
Aは、
(1)−O−、および
(2)−NR10
から選択され、
mは、0または1であり、mが0である場合には、Rは、カルボニルと直接結合している。]、
ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーを対象とする。
【0012】
は、好ましくは、C3−6シクロアルキルまたは複素環であり(前記複素環は、O、NもしくはSから選択される1個、2個、3個もしくは4個のヘテロ原子を含有し、多くとも1個のヘテロ原子がOもしくはSである5員の不飽和環、または1個、2個もしくは3個の窒素原子を含有する6員の不飽和環である。)、Rが、ハロゲンもしくはヒドロキシで所望により置換されている。特に、Rは、C3−6シクロアルキルまたは窒素含有複素環(ピリジンなど)である。従って、Rは、シクロプロピルまたはピリジン(ピリド−3−イルもしくは3−フルオロピリド−2−イルなど)であり得る。
【0013】
Nは、好ましくは、0または1である。
【0014】
は、好ましくは、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル(メチルなど)、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシもしくはアミノで置換されているフェニルまたはC3−6シクロアルキルである。Rは、特に、ハロゲン(クロロもしくはフルオロなど)で場合により置換されているフェニルまたはシクロヘキシルである。Rの具体例は、シクロヘキシル、2,4−ジクロロフェニル、2−クロロ−6−フルオロフェニル、5−フルオロ−2,4−ジクロロフェニルおよび6−クロロ−2,5−ジフルオロフェニルである。
【0015】
は、一般に、O、NもしくはSから選択される1個、2個、3個もしくは4個のヘテロ原子を含有し、多くとも1個のヘテロ原子がOもしくはSである5員の不飽和環、または1個、2個もしくは3個の窒素原子を含有する6員の不飽和環であり、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、ニトロもしくはアミノで場合により置換されている。Rは、好ましくは、5員環である。Rは、好ましくは、非置換であるか、またはC1−4アルキル(メチルもしくはエチルなど)もしくはハロゲン(クロロなど)で置換されている。Rは、置換もしくは非置換トリアゾール、置換もしくは非置換ピラゾール、置換もしくは非置換インダゾール、置換もしくは非置換ピリジンまたは置換もしくは非置換チオフェンであってよい。Rの特定の具体例は、1−メチルピラゾール−4−イル、1−メチルインダゾール−4−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−イル、1−メチル−1,3,4−トリアゾール−2−イル、ピリジン−3−イル、1−メチル−1,2,3−トリアゾール−3−イル、1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル、チオフェン−2−イル、1,2−ジメチルインダゾール−5−イル、2−メチルチオフェン−5−イル、2−クロロチオフェン−5−イル、1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル、2−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−イル、1−エチル−1,2,3−トリアゾール−4−イルおよび2−エチル−1,2,3−トリアゾール−4−イルである。
【0016】
およびRは、一般に、水素である。
【0017】
Mは、一般に、0である。
【0018】
一実施形態では、本発明は、式I’の化合物
【0019】
【化3】

[式中:
は、−(CH−R1a{式中、nは独立して0から6であり、R1aは、
(1)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、もしくはR2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環で置換されているC1−6アルキル、
(2)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、
(3)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピペリジニル、
(4)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピラニル、
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−O−C1−6アルキル、
(6)−CO
(式中、Rは、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、または1から6個のフルオロで置換されている−C1−6アルキル、
(c)ベンジル、および
(d)フェニル
から選択される。)、
(7)−NR1011
(式中、R10およびR11は、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C1−6アルキル(R12およびR13は、独立して、水素および−C1−6アルキルから選択される。)、
(c)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C3−6シクロアルキル、
(d)ベンジル、
(e)フェニル
から選択される。)、および
(8)−CONR1011
からなる群から選択される。}であり;
は、
(1)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、
(2)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環、
(3)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−NR1011、フェニルもしくは複素環で置換されているC1−8アルキル(前記フェニルもしくは複素環は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている。)、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、および
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)
からなる群から選択され;
2a、R2bおよびR2cは、独立して、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)非置換の、または
(a)1から6個のハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、もしくは
(d)−NR1011
で置換されている−C1−6アルキル、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲンで置換されている−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、および
(15)−NO
からなる群から選択され;
は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環であり;
およびRは、独立して、
(1)水素、および
(2)非置換の、またはハロゲンもしくはヒドロキシルで置換されているC1−6アルキル
からなる群から選択され、
またはRおよびRは、ともにC3−6シクロアルキル環を形成し;
Aは、
(1)−O−、および
(2)−NR10
からなる群から選択され;
mは、0または1であり、mが0である場合には、Rは、カルボニルと直接結合している。]、
ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーを対象とする。
【0020】
一実施形態では、本発明は、式I’の化合物[式中、Rは、CH1a(式中、R1aは、非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくはNR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、またはR2a、R2bおよびR2cによって置換されている複素環である。)からなる群から選択されるか、またはRは、R2a、R2bもしくはR2cで置換されている複素環である。]、またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
【0021】
さらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが、CH1a(式中、R1aは、C3−6環状アルキル(シクロプロピルなど)、または複素環、適切には、不飽和複素環(ピリジンなど)である。)からなる群から選択される化合物を含む。
【0022】
さらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが複素環である化合物を含む。適切には、この複素環は不飽和複素環(ピリジンなど)である。前記複素環は、適切には、上文に定義されているR2a、R2bおよびR2cで置換されている。適切には、R2a、R2bおよびR2cのうちの少なくとも2個は、水素であり、3個目のものは水素、メチルまたはフッ素である。
【0023】
本発明の一実施形態は、式I’aの化合物
【0024】
【化4】

(式中:
2dは、
(1)水素、
(2)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシルもしくはフェニルで置換されているC1−6アルキル、
(3)ヒドロキシ、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)ハロゲン、特に、フッ素、
(6)−NR1011
からなる群から選択され;
およびR、R、R、R、R10、R11、Aおよびmは、本明細書に定義されている。)、
またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
【0025】
本発明の一実施形態は、式I’a’の化合物
【0026】
【化5】

(式中:
1bは、
(1)水素、
(2)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシルもしくはフェニルで置換されているC1−6アルキル、
(3)ヒドロキシ、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)ハロゲン、特に、フッ素、および
(6)−NR1011
からなる群から選択され;
およびR、R、R、R、R10、R11、Aおよびmは、本明細書に定義されている。)、
またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
【0027】
式I’aおよびI’a’において、R1aおよびR2dは、好ましくは、水素またはフッ素である。
【0028】
本発明の一実施形態は、式I’a’’の化合物
【0029】
【化6】

(式中、R、R、R、R、Aおよびmは、上文に定義されているとおりである。);またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
【0030】
本発明の一実施形態は、式Ibの化合物:
【0031】
【化7】

(式中、Rは、C1−6アルキルであり、およびR、R、R、p、Aおよびmは、本明細書に定義されている。)、またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
【0032】
本発明の一実施形態は、RがC1−3アルキルであり、およびRが水素またはC1−3アルキルである化合物を含む。
【0033】
この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが(S)配置のC1−3アルキルであり、およびRが水素である化合物を含む。
【0034】
また、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rがメチルであり、およびRが水素である化合物も含む。
【0035】
また、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rがメチルであり、およびRがメチルである化合物も含む。
【0036】
また、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが水素であり、およびRが水素である化合物も含む。
【0037】
本発明の一実施形態は、mが0である化合物を含む。
【0038】
この実施形態の範囲内で、本発明は、式Icの化合物
【0039】
【化8】

(式中、p、R、R、R、RおよびRは、本明細書に定義されている。)、またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
【0040】
さらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが、
(1)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、
(2)R2a、R2bおよびR2cで置換されているチエニル、
(3)非置換の、または1から6個のハロゲン、フェニルもしくは−NR1011で置換されているC1−8アルキル(前記フェニルは、R2a、R2bおよびR2cで置換されている。)、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル
からなる群から選択され、および
2a、R2bおよびR2cが、独立して、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−OCHF
(8)−SCF
(9)−SCHF、および
(10)−NH
からなる群から選択される化合物を含む。
【0041】
またさらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが、フェニルまたはチエニルであり、およびR2a、R2bおよびR2cが、独立して、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−OCHF
(8)−SCF
(9)−SCHF、および
(10)−NH
からなる群から選択される化合物も含む。
【0042】
またさらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが、フェニルであり、およびR2a、R2bおよびR2cが、独立して、
(1)水素、
(2)フルオロ、
(3)クロロ、
(4)ブロモ、
(5)−OCH
(6)−CF、および
(7)−NH
からなる群から選択される化合物も含む。
【0043】
またさらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、Rが、フェニルであり、およびR2a、R2bおよびR2cが、独立して、
(1)水素、
(2)フルオロ、
(3)クロロ、および
(4)ブロモ
からなる群から選択される化合物も対象とする。
【0044】
この実施形態の範囲内で、本発明は、式Idの化合物
【0045】
【化9】

(式中、p、R、R2a、R2b、R、R、RおよびRは、本明細書に定義されている。);ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーを含む。
【0046】
この実施形態の範囲内で、本発明は、式Id’の化合物
【0047】
【化10】

(式中、p、R、R2a、R2b、R2cおよびRは、本明細書に定義されている。);ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーを含む。
【0048】
また、この実施形態の範囲内で、本発明は、式Id’’の化合物
【0049】
【化11】

(式中、p、R、R2a、R2b、R2c、RおよびRは、本明細書に定義されている。);ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーも含む。
【0050】
適切には、Rは、R2a、R2bおよびR2cで置換されている、1個、2個もしくは3個の窒素原子を含有する不飽和複素環(R2a、R2bおよびR2cは、好ましくは、水素、フッ素およびC1−6アルキル、最も好ましくは、水素またはメチルから選択される。)である。
【0051】
最も適切には、Rは、1個、2個もしくは3個の窒素原子を含有する5員の不飽和複素環であり、前記複素環の炭素原子のうちの1個を通じてスルホニル基に結合されている。
【0052】
好ましくは、Rは、以下の基
【0053】
【化12】

(式中、X、YおよびZのうちの少なくとも1個は窒素であり、およびその他の基のうちの1個は窒素であって、第3の位置は炭素であり;およびR3aは、水素またはC1−6アルキル、好ましくは、メチルである。)であるか、またはRはピリジンである。
【0054】
最も好ましくは、Rは、以下の基
【0055】
【化13】

であり、R3aは、水素またはメチルである。
【0056】
式I’の化合物の好ましいクラスは、式I’eのもの:
【0057】
【化14】

(式中、R1cは、基CH1bでありまたはR2a、R2bもしくはR2cで置換されている複素環であり、およびR1b、R、R2a、R2b、R2c、R、R、R、Aおよびmは、上文に定義されているとおりである。);ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオ異性体である。
【0058】
式(I’e)の化合物の一群は、式I’fのもの:
【0059】
【化15】

(式中、R1b、R、R、R、R、Aおよびmは、上文に定義されているとおりである。);ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオ異性体である。
【0060】
好ましくは、R1bは、シクロプロピル基または不飽和複素環(ピリジンなど)である。
【0061】
式(I’e)の化合物のさらなる群は、式I’gのもの:
【0062】
【化16】

(式中、複素環R、R、R、R、Aおよびmは、上文に定義されているとおりである。);ならびに医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオ異性体である。
【0063】
好ましくは、前記複素環は、R2a、R2bおよびR2cによって置換されている不飽和複素環である。
【0064】
適切には、前記複素環は、少なくとも1個の窒素原子を含有し、R2a、R2bおよびR2cのうちの少なくとも2個は水素であり、3個目のものは水素、メチルまたはフッ素である。好ましくは、前記複素環はピリジンである。
【0065】
もう1つの実施形態では、式I’’の化合物
【0066】
【化17】

[式中:
は、−(CH−R1a{式中、nは、独立して、0から6であり、R1aは、
(1)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、もしくはR2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環で置換されているC1−6アルキル、
(2)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、
(3)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピペリジニル、
(4)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピラニル、
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−O−C1−6アルキル、
(6)−CO
(式中、Rは、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、または1から6個のフルオロで置換されている−C1−6アルキル、
(c)ベンジル、および
(d)フェニル
から選択される。)、
(7)−NR1011
(式中、R10およびR11は、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C1−6アルキル(R12およびR13は、独立して、水素および−C1−6アルキルから選択される。)、
(c)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C3−6シクロアルキル、
(d)ベンジル、
(e)フェニル
から選択される。)、および
(8)−CONR1011
からなる群から選択される。}
であり;
は、
(1)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、
(2)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環、
(3)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−NR1011、フェニルもしくは複素環で置換されているC1−8アルキル(前記フェニルもしくは複素環は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている。)、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、および
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)
からなる群から選択され;
2a、R2bおよびR2cは、独立して、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)非置換の−C1−6アルキルまたは
(a)1から6個のハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、もしくは
(d)−NR1011
で置換されている−C1−6アルキル、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲンで置換されている−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、および
(15)−NO
からなる群から選択され;
は、
(1)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシル、−NR1011、もしくはR2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環で置換されているC1−6アルキル、
(2)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシルもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、
(3)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくはNR1011で置換されている−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)、および
(4)−NR1011、および
(5)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環
からなる群から選択され;
およびRは、独立して、
(1)水素、および
(2)非置換の、またはハロゲンもしくはヒドロキシルで置換されているC1−6アルキル
からなる群から選択されるか、
またはRおよびRは、ともにC3−6シクロアルキル環を形成し;
Aは、
(1)−O−、および
(2)−NR10
からなる群から選択され;
mは、0または1であり、mが0である場合には、Rは、カルボニルと直接結合している。]、
ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマー。
【0067】
一実施形態では、本発明は、式I’’の化合物[式中、Rは、(CH1a(式中、R1aは、非置換の、またはR2a、R2bおよびR2cで置換されているC3−6シクロアルキルである。)からなる群から選択される。]を含む。適切には、nは1であり、およびR1aは、非置換のC3−6シクロアルキル、好ましくは、シクロプロピルである。
【0068】
さらに、この実施形態の範囲内で、本発明は、式I’’の化合物(式中、Rは、R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環である。)を含む。前記複素環は、好ましくは不飽和複素環部分、例えば、窒素含有不飽和複素環(ピリジルなど)であり、R2aおよびR2bは水素であり、およびR2cは水素もしくはフッ素であるか、または飽和複素環部分、例えば、C1−6アルキルで場合により置換されている窒素含有飽和複素環(ピペリジルなど)である。
【0069】
本発明の一実施形態は、式I’’aの化合物
【0070】
【化18】

(式中:
Rは、
(1)水素、および
(2)C1−6アルキル;好ましくは、メチル
からなる群から選択され;
1bは、
(1)水素、
(2)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシルもしくはフェニルで置換されているC1−6アルキル、
(3)ヒドロキシ、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)ハロゲン、および
(6)−NR1011
からなる群から選択され;
およびR、R、RAおよびmは、本明細書に定義されている。);またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
1bは、好ましくは、水素である。
【0071】
本発明の一実施形態は、式I’’a’の化合物
【0072】
【化19】

(式中:
1bは、ハロゲン、適切には、フッ素であり;
およびR、R、RAおよびmは、本明細書に定義されている。);またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを含む。
1bは、好ましくは、水素またはフッ素である。
【0073】
本発明の一実施形態は、式I’’a’’:
【0074】
【化20】

(式中、R1cは、非置換の、またはR2a、R2bおよびR2cで置換されているC3−6シクロアルキルであり;
およびR、R2a、R2b、R2c、R、RAおよびmは、本明細書に定義されている。);またはこの医薬的に許容される塩またはこの個々のエナンチオマーもしくはジアステレオ異性体を含む。適切には、nは1であり、およびR1cは、非置換のC3−6シクロアルキル、好ましくは、シクロプロピルである。
【0075】
式(I)の化合物の好ましい基は、式I’’eのもの
【0076】
【化21】

(式中、R1cならびにR2a、R2bおよびR2cは、上文に定義されているとおりであり、およびR3aは、ハロゲンまたはC1−6アルキルまたはC1−6ハロアルキル基で場合により置換されている不飽和複素環である。)である。
【0077】
1cの好ましい値は、上文に定義されているとおりである。
【0078】
2a、R2b、R2cは、好ましくは、水素またはハロゲン、適切には、塩素またはフッ素である。好ましくは、R2a、R2b、R2cのうちの1個だけが水素である。
【0079】
3aは、好ましくは、1個以上の窒素原子を含有する6員の複素環(例えば、ピリジン)、または硫黄原子もしくは1から3個の窒素原子、好ましくは、2から3個の窒素原子を含有する5員の複素環である(前記複素環は、1個もしくは2個のハロゲン原子またはC1−6アルキルまたはC1−6ハロアルキル基(メチルまたはエチルなど)で場合により置換されている。)。
【0080】
前記複素環は、好ましくは、環炭素を通じてスルホニル基に結合される。
【0081】
好ましい複素環としては、チエニル、トリアゾリル、ピラゾリルおよびイミダゾリルが挙げられる。
【0082】
前記複素環の置換基は、環炭素原子およびまたは環窒素原子と結合し得る(窒素含有複素環の場合)。
【0083】
本発明の具体的な実施形態は、本明細書の実施例の対象化合物、ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーからなる群から選択される化合物を含む。
【0084】
本発明の化合物は、1以上のキラル中心を含む可能性があるため、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー混合物ならびに個々のジアステレオマーとして生じる場合がある。分子の様々な置換基の性質によっては、さらなる不斉中心が存在することもある。このような不斉中心はそれぞれ、独立して、2種類の光学異性体を生み出し、起こり得る光学異性体およびジアステレオマーの全てが、混合物としても、純粋または部分的に精製された化合物としても、本発明の範囲内に含まれることが意図される。本発明は、これらの化合物のこのような異性体の全てを含むものである。式Iは、好ましい立体化学を含まない化合物クラスの構造を示している。
【0085】
これらのジアステレオマーの独立した合成またはこれらのクロマトグラフ分離は、当分野で公知のように、本明細書に開示されている手法の適当な改変により行ってよい。これらの絶対立体化学は、結晶生成物、または必要に応じて、公知絶対配置の不斉中心を含有する試薬で誘導体化される結晶中間体のX線結晶学によって決定することができる。
【0086】
必要に応じて、個々のエナンチオマーを単離するために、化合物のラセミ混合物を分割してよい。この分割は、当分野で周知の方法により行うことができる(例えば、化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物とカップリングさせて、ジアステレオマー混合物を作り、その後、分別結晶またはクロマトグラフィーなどの標準的な方法により個々のジアステレオマーの分離を行う)。カップリング反応では、多くの場合、エナンチオマー的に純粋な酸または塩基を用いて塩が生成される。その後、ジアステレオマー誘導体は、追加されたキラル残基を切断することによってこの純粋なエナンチオマーに変換され得る。化合物のラセミ混合物は、キラル固定相を利用したクロマトグラフ法によってを直接分割することもでき、この方法については当分野で周知である。
【0087】
または、当分野で周知の方法により、光学的に純粋な出発物質または既知立体配置の試薬を用いた立体選択的合成によって、化合物の任意のエナンチオマーを得てもよい。
【0088】
当業者には分かるように、本明細書において用いられる、ハロまたはハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含むものである。同様に、C1−6アルキルなどの場合のC1−6は、この基が直線または分枝配置で1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素を有することを特定することを定義するものであり、C1−8アルキルは、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルを含む。独立して置換基で置換されていると表されている基は、独立して、複数のこのような置換基で置換されていてよい。本明細書において用いられる用語「複素環」とは、不飽和複素環部分と飽和複素環部分の両方を包含し、この場合、前記不飽和複素環部分(すなわち、「ヘテロアリール」)としては、ベンゾイミダゾリル、ベンズイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、およびこれらのN−オキシドが挙げられ、前記飽和複素環部分としては、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、チオモルホリニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびにこれらのN−オキシドが挙げられる。
【0089】
用語「医薬的に許容される塩」とは、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む医薬的に許容される毒性のない塩基または酸から調製した塩をさす。無機塩基から得られる塩としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は、2種類以上の結晶構造で存在する可能性があり、水和物の形態でも存在し得る。医薬的に許容される毒性のない有機塩基から得られる塩としては、一級アミン、二級、および三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、ならびに塩基イオン交換樹脂の塩、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノ−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。本発明の化合物が塩基性である場合には、無機および有機酸を含む医薬的に許容される毒性のない酸から塩を調製してよい。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、および酒石酸が特に好ましい。当然のことながら、本明細書において、本発明の化合物への言及は、医薬的に許容される塩も含むことを意味する。
【0090】
例示する本発明は、実施例および本明細書において開示する化合物の使用である。本発明内の特定の化合物には、以下の実施例において開示される化合物、ならびにこれらの医薬的に許容される塩およびこれらの個々のジアステレオマーからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0091】
対象化合物は、有効量の前記化合物の投与段階を含む、グリシン輸送体GlyT1の活性の阻害を必要とする患者(哺乳類など)においてグリシン輸送体GlyT1の活性を阻害する方法に有用である。本発明は、本明細書において開示する化合物の、グリシン輸送体GlyT1活性阻害薬としての使用を対象とする。本発明の方法によれば、霊長類(特に、ヒト)の他に、様々なその他の哺乳類も治療することができる。
【0092】
本発明は、さらに、本発明の化合物を薬剤担体または希釈剤と組合せる段階を含む、ヒトおよび動物におけるグリシン輸送体GlyT1の活性を阻害するための薬剤の製造のための方法を対象とする。
【0093】
本方法で治療される被験体は、一般に、グリシン輸送体GlyT1の活性を阻害することが望まれる、哺乳類、好ましくは、ヒト、男性または女性である。用語「治療上有効な量」とは、研究者、獣医、医師または他の臨床医学者によって求められている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出す対象化合物の量を意味する。当業者が、有効量の本発明の化合物で、神経障害および精神障害に現在苦しむ患者を治療することにより、または神経障害および精神障害に苦しむ患者を予防的に治療することにより、神経障害および精神障害に影響を及ぼし得ることが認識されている。本明細書において用いられる、用語「治療」および「治療すること」とは、本明細書に記載される神経障害および精神障害の進行を遅延、中断、阻止、制御または停止させ得る全てのプロセスをさすが、必ずしも全ての障害症状の完全消失を示すものではなく、特に、このような疾患または障害に罹りやすい患者において進行を遅延させるか、または顕著な症状の危険性を低下させるための予防的治療もさす。
【0094】
本明細書において用いられる、用語「組成物」とは、特定成分を特定量で含む生成物、ならびに特定成分の特定量での組合せから直接または間接的に生じる任意の生成物も含むものである。このような用語は、医薬組成物に関して、有効成分と、担体を構成する不活性成分を含む生成物、ならびに任意の2種類以上の成分の組合せ、複合体形成もしくは凝集から、または1種類以上の成分の解離から、または1種類以上の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から、直接または間接的に生じる任意の生成物も包含するものである。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬的に許容される担体を混合することによって作製される任意の組成物を包含する。「医薬的に許容される」とは、担体、希釈剤または賦形剤が処方の他の成分と相溶性であり、この受容者に対して有害ではないものでなければならないということを意味する。
【0095】
用語、「(化合物)の投与」およびまたは「(化合物)を投与すること」とは、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを、治療を必要とする個体に提供することを意味すると考えるべきである。
【0096】
本発明に従う化合物の、グリシン輸送体の活性、特に、GlyT1の活性を阻害する際の有用性は、当分野で公知の方法論で立証することができる。ペニシリン(100μg/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)の存在下、10%ウシ胎児血清含有RPMI 1640培地を入れた96ウェルのCytostarシンチレーティングマイクロプレート(Amersham Biosciences)でGlyT1を内因的に発現しているヒト胎盤絨毛癌細胞(JAR細胞(ATCC番号HTB−144))を培養した。アッセイの前に、5%COの加湿雰囲気中で37℃にて40から48時間、細胞を増殖させた。Cytostarプレートから培養培地を除去し、JAR細胞をTB1A緩衝液(120mM NaCl、2mM KCl、1mM CaCl、1mM MgCl、10mM HEPES、5mM L−アラニン、pH7.5 Tris塩基で調整)30μlとともに、本発明の化合物を加えてまたは加えないで1分間インキュベートした。次に、各ウェルに、TB1Aで希釈した[14C]−グリシン30μlを加えて、終濃度を10マイクロモルとした。室温にて3時間のインキュベーション後、Cytostarシンチレーティングマイクロプレートを密封し、Top Countシンチレーションカウンター(Packard)で計数した。10mM非標識グリシンの存在下で、[14C]−グリシンの非特異的取り込みを確認した。[14C]タウリン取り込み試験は、非特異的取り込みを確認するために10mM非標識タウリンを使用したことを除いて同じプロトコールに従って行った。効力を確認するために、細胞に、様々な濃度の本発明の化合物、続いて、一定濃度の[14C]グリシンを加えた。[14C]グリシンの特異的取り込みの50%を阻害する本化合物の濃度(IC50値)を、アッセイデータから非線形曲線フィッティングにより決定した。
【0097】
特に、以下の実施例の化合物は、前述のアッセイでの[14C]グリシンの特異的取り込みの阻害において、一般に、IC50値が約10マイクロモル未満の活性を有していた。本発明内の好ましい化合物は、前述のアッセイでの[14C]グリシンの特異的取り込みの阻害においてIC50値が約1マイクロモル未満の活性を有していた。これらの化合物は、[14C]タウリン取り込み(JAR細胞におけるタウリン輸送体TauTによる)と比べて、[14C]グリシン取り込み(JAR細胞におけるGlyT1による)に対して選択的であった。このような結果は、GlyT1輸送体の活性の阻害薬として使用されるときの前記化合物の固有の活性を示している。
【0098】
NMDA受容体は、幅広いCNSプロセスに中心的なものであり、ヒトまたは他の種における様々な病態において役割を果たす。GlyT1輸送体の作用はNMDA受容体周囲のグリシンの局所濃度に影響を及ぼす。選択的GlyT1阻害薬は、シナプスからのグリシンの除去を遅らせ、シナプスのグリシンレベルを上昇させる。このことにより、次には、NMDA受容体のグリシン結合部位の占有が高まり、これによってNMDA受容体の活性化が高まり、続いて、シナプス前終末からグルタミン酸が放出される。NMDA受容体が効率的に機能するには一定量のグリシンが必要であるため、この局所濃度への任意の変化はNMDA媒介性神経伝達に影響を及ぼすことが可能である。認知症、鬱病および精神病(例えば、統合失調症)などの特定の神経精神障害、ならびに学習記憶障害(例えば、注意欠陥障害および自閉症)には、NMDA媒介性神経伝達の変化が関与している。
【0099】
本発明の化合物は、以下の状態または疾患の1以上を含む、グルタミン酸神経伝達機能不全に関連する様々な神経障害および精神障害の治療において有用性を有する。統合失調症または精神病{統合失調症(偏執型、解体型、緊張型または未分化型)、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、感応性精神病性障害、一般的な医学的症状に起因する精神病性障害および物質誘発性または薬剤誘発性(フェンシクリジン、ケタミンおよび他の解離性麻酔薬、アンフェタミンおよび他の精神刺激薬ならびにコカイン)精神病精神病性障害、情動障害を伴う精神病、短期反応精神病、統合失調性精神病、「統合失調症スペクトル」障害(分裂病質人格障害または統合失調症性人格障害など)、または、統合失調症および他の精神病の陽性症状および陰性症状の両方を含む精神病を伴う病気(大鬱病、躁鬱(双極性)障害、アルツハイマー病および心的外傷後ストレス症候群など)を含む。};認知障害{認知症(アルツハイマー病、虚血、多発脳梗塞性認知症、外傷、血管問題もしくは卒中、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、周生期低酸素症、他の一般的な医学的症状または薬物乱用に関連するもの)を含む。};せん妄、健忘障害または加齢に伴う認知機能低下;不安障害(急性ストレス障害、広場恐怖症、全般性不安障害、強迫性障害、パニック発作、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、対人恐怖症、特定恐怖症、物質誘発性不安障害および一般的な医学的症状に起因する不安症を含む。);物質関連障害および常習行為(物質誘発性せん妄、持続性認知症、持続性健忘障害、精神病性障害または不安障害;アルコール、アンフェタミン類、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤、ニコチン、オピオイド類、フェンシクリジン、鎮静薬、催眠薬または抗不安薬を含む物質への耐性、依存または禁断症状を含む。);肥満症、神経性大食症および強迫性摂食障害;双極性障害、気分障害(抑鬱障害を含む。);鬱病(単極性鬱病、季節性鬱病および産後鬱病を含む)、月経前症候群(PMS)および月経前不快気分障害(PDD)、一般的な医学的症状に起因する気分障害、ならびに物質誘発性気分障害;学習障害、広汎性発達障害(自閉性障害を含む。)、注意障害(注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む)および行為障害;NMDA受容体関連障害(自閉症、鬱病、良性健忘症、小児期学習障害および閉鎖性頭部外傷など);運動障害{無動症および無動硬直性症候群(パーキンソン病、薬剤誘発性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、進行性核上麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン−ALS認知症複合および大脳基底核石灰化症を含む。)、投薬誘発性パーキンソン症候群(神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、神経遮断薬悪性症候群、神経遮断薬誘発性急性失調症、神経遮断薬誘発性急性アカシジア、神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジアおよび投薬誘発性姿勢振戦など)、ジル・ド・ラ・トゥーレット症候群、癲癇、筋肉痙攣および筋痙直または筋脱力を伴う障害(振戦を含む。)を含む。};ジスキネジア[振戦(静止時振戦、姿勢振戦および企図振戦など)、舞踏病(シドナム舞踏病、ハンチントン病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬剤誘発性舞踏病および片側バリズムなど)、ミオクロヌス(全身性ミオクロヌスおよび限局性ミオクロヌスを含む。)、チック(単純チック、複雑チックおよび症候性チックを含む。)、ならびにジストニア{全身性ジストニア(特発性ジストニア、薬剤誘発性ジストニア、症候性ジストニアおよび発作性ジストニアなど)、および限局性ジストニア(眼瞼痙攣、顎口腔ジストニア、痙攣性発声障害、痙攣性斜頸、軸性ジストニア、ジストニア性書痙および片麻痺性ジストニアなど)を含む。}を含む。];尿失禁;神経損傷(眼損傷、網膜症または眼の黄斑変性、耳鳴り、聴覚障害および難聴、ならびに脳浮腫を含む。);嘔吐;ならびに睡眠障害(不眠症および睡眠発作を含む)。
【0100】
上述の障害のうち、統合失調症、双極性障害、鬱病(単極性鬱病、季節性鬱病および産後鬱病を含む。)、月経前症候群(PMS)および月経前不快気分障害(PDD)、学習障害、広汎性発達障害(自閉性障害を含む。)、注意障害(注意欠陥/多動性障害を含む。)、自閉症、チック障害(トゥーレット障害を含む。)、不安障害(恐怖症および心的外傷後ストレス障害を含む。)、認知症に関連する認知障害、エイズ認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、痙直、ミオクロヌス、筋肉痙攣、耳鳴りならびに聴覚障害および難聴の治療が特に重要である。
【0101】
特定の実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を、これを必要とする患者に投与する段階を含む、認知障害を治療するための方法を提供する。特定の認知障害は、認知症、せん妄、健忘障害および加齢性の認知機能低下である。現在、「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)の第四版用修正版は、認知症、せん妄、健忘障害および加齢性の認知機能低下をはじめとする認知障害を含む診断ツールを提供している。本明細書において、用語「認知障害」には、DSM−IV−TRに記載される精神病の治療が含まれる。当業者であれば、精神障害に別の学名、疾病分類および分類体系があること、ならびに、これらの体系が医学的および科学的進歩とともに発展することを理解する。従って、用語「認知障害」は、他の診断原因に説明されるような障害を含むことが意図される。
【0102】
別の特定の実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を、これを必要とする患者に投与する段階を含む、不安神経症を治療するための方法を提供する。特定の不安神経症は、全身性不安神経症、強迫性障害、強迫症および不安発作である。現在、「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)の第四版用修正版は、全身性不安神経症、強迫性障害、強迫症および不安発作である不安神経症を含む診断ツールを提供している。本明細書において、用語「不安神経症」には、DSM−IV−TRに記載される精神障害の治療が含まれる。当業者であれば、精神障害に別の学名、疾病分類および分類体系があること、ならびに、これらの体系が医学的および科学的進歩とともに発展することを理解する。従って、用語「不安神経症」は、他の診断原因に説明されるような障害を含むことが意図される。
【0103】
別の特定の実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を、これを必要とする患者に投与する段階を含む、統合失調症または精神病を治療するための方法を提供する。特定の統合失調症または精神病の症状は、偏執型、解体型、緊張型または未分化型統合失調症および物質誘発性精神病性障害である。現在、「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)の第四版用修正版は、偏執型、解体型、緊張型または未分化型統合失調症および物質誘発性精神病性障害を含む診断ツールを提供している。本明細書において、用語「統合失調症または精神病」には、DSM−IV−TRに記載される精神障害の治療が含まれる。当業者であれば、精神障害に別の学名、疾病分類および分類体系があること、ならびに、これらの体系が医学的および科学的進歩とともに発展することを理解する。従って、用語「統合失調症または精神病」は、他の診断原因に説明されるような障害を含むことが意図される。
【0104】
別の特定の実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を、これを必要とする患者に投与する段階を含む、物質関連障害および常習行為を治療するための方法を提供する。特定の物質関連障害および常習行為は、持続性認知症、持続性健忘障害、精神病性障害または物質乱用に誘導される不安神経症;および、乱用物質への耐性、乱用物質への依存または乱用物質からの離脱である。現在、「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)の第四版用修正版は、持続性認知症、持続性健忘障害、精神病性障害または物質乱用に誘導される不安神経症;および、乱用物質への耐性、乱用物質への依存または乱用物質からの離脱を含む診断ツールを提供している。本明細書において、用語「物質関連障害および常習行為」には、DSM−IV−TRに記載される精神障害の治療が含まれる。当業者であれば、精神障害に別の学名、疾病分類および分類体系があること、ならびに、これらの体系が医学的および科学的進歩とともに発展することを理解する。従って、用語「物質関連障害および常習行為」は、他の診断原因に説明されるような障害を含むことが意図される。
【0105】
別の特定の実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を、これを必要とする患者に投与する段階を含む、疼痛を治療するための方法を提供する。特定の疼痛の実施形態は、骨関節痛(骨関節炎)、反復運動痛、歯痛、癌性疼痛、筋筋膜痛(筋損傷、線維筋痛症)、周術期疼痛(一般的な外科手術、婦人科)、慢性疼痛および神経因性疼痛である。
【0106】
別の特定の実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を、これを必要とする患者に投与する段階を含む、肥満症または過剰な食物摂取に関連する摂食障害およびこれに関連する合併症を治療するための方法を提供する。現在、肥満症は、「疾病および関連保健問題の国際統計分類(International Classification of Diseases and Related Health Problems)」の第十版(ICD−10)(1992 World Health Organization)に一般的な医学的症状として含まれている。「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)の第四版用修正版は、医学的症状に影響を及ぼす心理的要因の存在下での肥満症を含む診断ツールを提供している。本明細書において、用語「肥満症または過剰な食物摂取に関連する摂食障害」には、ICD−10およびDSM−IV−TRに記載されている医学的症状および障害の治療が含まれる。当業者であれば、一般的な医学的症状に別の学名、疾病分類および分類体系があること、ならびに、これらの体系が医学的および科学的進歩とともに発展することを理解する。従って、用語「肥満症または過剰な食物摂取に関連する摂食障害」は、他の診断原因に説明されるような症状および障害を含むことが意図される。
【0107】
対象化合物は、本明細書に記される疾病、障害および症状の予防、治療、制御、寛解、またはリスクの低下のための方法においてさらに有用である。
【0108】
対象化合物は、グリシン輸送体GlyT1活性の阻害剤を含むその他の薬剤と組合せた、前述の疾病、障害および症状の予防、治療、制御、寛解、またはリスクの低下のための方法においてさらに有用である。
【0109】
本発明の化合物は、本発明の化合物またはその他の薬物が有用性を有する疾病または症状の治療、予防、制御、寛解、またはリスクの低下において、1種類以上のその他の薬物と組合せて用いてよく、この場合、共に用いる薬物の組合せは、いずれかの薬物単独よりも安全であるか、またはより効果的である。このようなその他の薬物は、一般的に用いられる経路および量で本発明の化合物と同時にまたは連続して投与してよい。本発明の化合物を1種類以上のその他の薬物と同時に用いる場合、このようなその他の薬物と本発明の化合物を含有する単位投与形の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法には、本発明の化合物と1種類以上のその他の薬物を異なった重複するスケジュールで投与する治療法も含まれる。1種類以上のその他の有効成分と組合せて用いる場合、本発明の化合物とその他の有効成分は、各々が単独で用いられる場合よりも少ない用量で用いられることも意図される。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1種類以上のその他の有効成分を含有するものが含まれる。
【0110】
上記の組合せには、本発明の化合物の1種類のその他の活性化合物との組合せだけでなく、2種類以上のその他の活性化合物との組合せが含まれる。同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾病または症状の予防、治療、制御、寛解、またはリスクの低下に用いられるその他の薬物を組合せて用いてよい。このようなその他の薬物は、一般的に用いられる経路および量で、本発明の化合物と同時にまたは連続して投与してよい。本発明の化合物を1種類以上のその他の薬物と同時に用いる場合、本発明の化合物に加えてこのようなその他の薬物を含有する医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1種類以上のその他の有効成分も含有するものが含まれる。
【0111】
本発明の化合物の第2の有効成分に対する重量比は様々であってよく、各成分の有効量に依存する。一般に、各々の有効量が用いられる。従って、例えば、本発明の化合物がその他の薬剤と組み合わされている場合、本発明の化合物のその他の薬剤に対する重量比は一般に約1000:1から約1:1000の範囲であり、好ましくは約200:1から約1:200の範囲である。本発明の化合物とその他の有効成分の組合せも一般に前述の範囲内であるが、いずれの場合にも、各有効成分の有効量を用いるべきである。
【0112】
このような本発明の化合物とその他の活性薬剤の組合せは、別々にまたは併用して投与してよい。さらに、1つの成分の投与は、その他の薬剤の投与よりも前であっても、同時であっても、または後であってもよい。
【0113】
従って、対象化合物は、単独で、または対象適応症に有益であることが公知のその他の薬剤、または本発明の化合物の有効性、安全性、簡便性を増大させるかまたは望まれない副作用もしくは毒性を減少させる、受容体もしくは酵素に影響を及ぼすその他の薬物と組合せて用いることができる。対象化合物およびその他の薬剤は、併用療法で、または固定した組合せで同時投与してよい。
【0114】
一実施形態では、対象化合物は、抗アルツハイマー病薬、β−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、イブプロフェン、ビタミンEを含むNSAID、および抗アミロイド抗体を組合せて用いてよい。
【0115】
もう1つの実施形態では、対象化合物を、鎮静薬、催眠薬、抗不安薬(anxiolytics)、抗精神病薬、抗不安薬(antianxiety agents)、シクロピロロン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニストおよびアンタゴニスト、メラトニン作動薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、5HT−2アンタゴニストなど、例えば:アジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アリピプラゾール、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスピロン(busprione)、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼプ酸、クロルジアゼポキシド、クロレタート(clorethate)、クロルプロマジン、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デキスクラモール、ジアゼパム、ジクロラルフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エスタゾラム、エトクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフルル、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバマート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、レクラゼパム、リスペリドン、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、テマゼパム、チオリダジン、チオチキセン、トラカゾラート、トラニルシプロマイン(tranylcypromaine)、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド(tricetamide)、トリクロホス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾラゼパム、ゾルピデム、およびこれらの塩、およびこれらの組合せなどと組合せて用いるか、または対象化合物を光療法または電気刺激を用いるものなどの物理的方法の使用と併用して投与してよい。
【0116】
もう1つの実施形態では、対象化合物は、レボドパ(カルビドパまたはベンセラジドなどの選択的な脳外のデカルボキシラーゼ阻害剤を含むまたは含まない)、ビペリデンなどの抗コリン薬(場合によりこの塩酸塩または乳酸塩として)および塩酸トリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール(benzhexol))、エンタカポンなどのCOMT阻害剤、MOA−B阻害剤、酸化防止剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動薬、NMDA受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アンタゴニスト、ならびに、アレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリドおよびプラミペキソールなどのドーパミン受容体アゴニストと組合せて用いてよい。当然のことではあるが、ドーパミンアゴニストは、医薬的に許容される塩、例えば、アレンテモール臭化水素酸塩、ブロモクリプチンメシレート、フェノルドパムメシレート、ナキサゴリド塩酸塩およびペルゴリドメシレートの形態であってよい。リスリドおよびプラミペキソールは、一般的に塩でない形態で用いられる。
【0117】
もう1つの実施形態では、対象化合物は、フェノチアジン、チオキサンテン、複素環式ジベンズアゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジンおよびインドロンクラスの神経遮断薬由来の化合物と組合せて用いてよい。フェノチアジンの適した例としては、クロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジンおよびトリフルオペラジンが挙げられる。チオキサンテンの適した例としては、クロルプロチキセンおよびチオチキセンが挙げられる。ジベンズアゼピンの例はクロザピンである。ブチロフェノンの例はハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの例はピモジドである。インドロンの例はモリンドロン(molindolone)である。その他の神経遮断薬としては、ロキサピン、スルピリドおよびリスペリドンが挙げられる。当然のことではあるが、対象化合物と組合せて用いられる場合、神経遮断薬は、医薬的に許容される塩、例えば、クロルプロマジン塩酸塩、メソリダジンベシレート、チオリダジン塩酸塩、マレイン酸アセトフェナジン、塩酸フルフェナジン、フルフェナジンエナタート、デカン酸フルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、塩酸チオチキセン、デカン酸ハロペリドール、コハク酸ロキサピンおよび塩酸モリンドンの形態であってよい。ペルフェナジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジドおよびリスペリドンは、一般的に塩でない形態で用いられる。従って、対象化合物は、アセトフェナジン、アレンテモール、アリピプラゾール、アミスルプリド、ベンズヘキソール(benzhexol)、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドパ、レボドパとベンセラジド、レボドパとカルビドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドロン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモジド、プラミペキソール、クエチアピン、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシフェニジル、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジンまたはジプラシドンと組み合わせて用いてよい。
【0118】
もう1つの実施形態では、対象化合物は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(三級アミン三環系抗うつ薬および二級アミン三環系抗うつ薬を含む)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、可逆性モノアミンオキシダーゼ阻害剤(RIMA)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、非定型抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、5−HT1Aアゴニストまたはアンタゴニスト、特に5−HT1A部分的アゴニスト、ならびにコルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニストをはじめとする、抗うつ薬または抗不安薬と組合せて用いてよい。具体的な薬剤としては、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミンおよびトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミンおよびセレギリン;モクロベミド:ベンラファキシン;デュロキセチン;アプレピタント;ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドンおよびビロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムおよびプラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロンおよびイプサピロン、ならびにこれらの医薬的に許容される塩が挙げられる。
【0119】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射もしくは注入、皮下注射、またはインプラント)により、吸入スプレーにより、鼻腔の、膣の、直腸の、舌下の、または局所の投与経路により投与してよく、単独または共に、従来の毒性のない医薬的に許容される担体、アジュバントおよび各投与経路に適切なビヒクルを含有する、適した投薬単位の剤形に処方してよい。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどの温血動物の治療に加えて、本発明の化合物はヒトでの使用に効果的である。
【0120】
本明細書において用いられる用語「組成物」は、特定の成分を既定された量または割合で含む生成物、ならびに、特定成分の特定量での化合から直接または間接的に生じる任意の生成物を含むことが意図される。医薬組成物に関して、この用語は、1種類以上の有効成分および随意の不活性成分を含む担体を含む生成物、ならびに、任意の2種類以上の成分の組合せ、複合体形成もしくは凝集から、または1種類以上の成分の解離から、または1種類以上の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から、直接または間接的に生じる任意の生成物を含むことが意図される。一般に、医薬組成物は均一および密に調製され、有効成分を液体担体または細かく分割された固体担体または双方と会合させた後、必要に応じて生成物を所望の剤形へ成形する。医薬組成物には、活性のある目的化合物が、疾病の過程または症状に所望の効果をもたらすために十分な量で含まれる。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬的に許容される担体とを混合して作製される任意の組成物を含む。
【0121】
経口使用を目的とする医薬組成物は、医薬組成物の製造のための当分野に公知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬的に簡潔および口当りの良い製剤をもたらすため、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1種類以上の薬剤を含有してよい。錠剤は、錠剤の製造に適した毒性のない医薬的に許容される賦形剤と混合された有効成分を含有する。錠剤は、コートされていなくても、消化管での崩壊および吸収を遅延させ、これによって長期間にわたる持続作用もたらす公知の技法でコートされていてもよい。経口使用のための組成物は、有効成分が不活性の固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、または、有効成分が水または油性媒質(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセル剤としても提示され得る。水性懸濁液、油性懸濁液、分散性粉末または顆粒剤、水中油型エマルジョン、および無菌水性注射液または油性懸濁液は、当分野で公知の標準法により調製することができる。
【0122】
グリシン輸送体GlyT1活性の阻害を必要とする症状の治療において、適当な投薬量レベルは、一般に、1日当たり患者の体重1kgあたり約0.01から500mgであり、単回または複数回投与で投与できる。好ましくは、投薬量レベルは、1日当たり約0.1から約250mg/kg;より好ましくは、1日当たり約0.5から約100mg/kgである。適した投薬量レベルは1日当たり約0.01から250mg/kg、1日当たり約0.05から100mg/kg、または1日当たり約0.1から50mg/kgである。この範囲内で、投薬量は、1日当たり0.05から0.5、0.5から5または5から50mg/kgである。経口投与には、治療される患者に対して投薬量を症候により調節するため、組成物は、1.0から1000ミリグラムの有効成分、特に1.0、5.0、10、15.20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900、および1000ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態で提供されるのが好ましい。化合物は、1日に1から4回、好ましくは、1日に1回または2回の投与計画で投与してよい。この投与計画を最適な治療応答が得られるよう調節することができる。しかし、当然のことながら、任意の特定の患者に対する特定の用量レベルおよび投薬頻度は変動する可能性があり、種々の要因(用いる特定の化合物の活性、前記化合物の代謝安定性および作用期間、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与様式および投与回数、排泄率、薬物の組合せ、特定の症状の重篤度、ならびに治療を受けるホストを含む。)に依存する。化学反応の記述および続く実施例に用いられる略語は以下の通りである。
【0123】
CHCl ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
PS−DIEA ポリスチレンジイソプロピルエチルアミン
PS−DMAP ポリスチレン4−N,N−ジメチルアミノピリジン
DCC ポリスチレンジシクロヘキシルカルボジイミド
Ra−Ni ラネーニッケル
HOBt ヒドロキシベンゾトリアゾール
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
MeOH メタノール
【0124】
本発明の化合物を調製するためのいくつかの方法が以下のスキームおよび実施例で説明される。出発物質および必要な中間体は、いくつかの場合に市販されているが、そうでなければ、文献の手順に従って、または本明細書に説明されるように調製することもできる。
【0125】
本発明の化合物は、文献で公知であるか実験手順に例示されるその他の標準的な操作に加えて、以下のスキームに示される反応を用いて調製することができる。スキーム中に示される置換基の番号は、請求項で用いられる番号とは必ずしも相関しておらず、明確にするために、これまでの定義下で複数の置換基が前記化合物と結合可能である場合も単一の置換基が前記化合物と結合しているとして示される。本発明の化合物を生成するために用いられる反応は、文献で公知であるか実験手順に例示されるエステル加水分解、保護基の切断などのその他の標準的な操作に加えて、本明細書のスキームおよび実施例に示される反応を用いて調製される。
【0126】
いくつかの場合、最終生成物を、例えば置換基の操作により、さらに修飾してよい。これらの操作としては、限定されるものではないが、当業者に一般的に公知の還元、酸化、アルキル化、アシル化、および加水分解反応が挙げられ得る。いくつかの場合、前述の反応スキームを実施する順序は、反応を促進にするため、または望まれない反応性生物を避けるために変動する可能性がある。以下の実施例は、本発明がより十分理解されるように提供される。これらの実施例は単に説明のためのものであって、決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0127】
また、本発明は、式(II)または(III):
【0128】
【化22】

の化合物の、それぞれアシル化剤X SOまたはY CO(A)Rとのアシル化を含む、式(I)の化合物の調製のための方法を提供し、p、RからR、Aおよびmは前記定義の通りであり、XおよびYは置換可能な基であって、その後、場合により当業者に公知の方法によって1つの基RからRを別の基RからRに変換される。
【0129】
従って、式IIIの化合物は、EtNなどの塩基およびDCMなどの溶媒の存在下でRN=C=Oと(Rは上記定義の通りである)、または、HOBt、DCMおよびEtNなどの塩基の存在下でRCOHと(この場合もRは上記定義の通りである)、またはCDIなどの触媒の存在下でROHもしくはRNHと(Rは上記定義の通りである)反応させることができる。
【0130】
XおよびYは、塩素などのハロゲン原子であることが便宜である。アシル化反応は、通常塩基の存在下で非極性溶媒、例えばジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素中で行われる。
【0131】
式(II)の化合物は、スキームIの方法により調製することができる。
【0132】
【化23】

【0133】
およびRが水素である場合、式(IIa)の化合物は、スキームIIの方法により調製することができる。
【0134】
【化24】

【0135】
がC1−4アルキルであり、Rが水素またはC1−6アルキルである場合、式(IIa)の化合物は、スキームIIIの方法により調製することができる。
【0136】
【化25】

式(III)の化合物は、スキームIVまたはVの方法により調製することができる。
【0137】
【化26】

Lは、ハロゲン化物などの脱離基である。
【0138】
が水素であり、Rが水素である、本発明の化合物の一般的な反応スキームIVに説明されるように、KHMDSなどの塩基を用いて適当に置換された4−シアノピペリジンを脱プロトン化し、続いて、例えば2−フルオロピリジンを用いる求核置換反応によりI−2が得られる。この物質をHClに暴露するとBoc保護基が除去されて遊離アミンが得られ、これを標準的な反応条件下で塩化スルホニルと処理させて対応するスルホンアミドを得る。水素雰囲気下でRa−Niを用いる水素化により対応するアミンが得られ、これを標準的な反応条件下でアシル化すると最終物質が得られる。この場合、用いた全ての塩化スルホニル、酸塩化物およびカルボン酸は市販のものであったか、または出発4−シアノピペリジンなどのように文献による方法で調製した。
【0139】
【化27】

【0140】
がC1−6アルキルであり、Rが水素またはC1−6アルキルである、化合物の一般的な反応スキームVに説明されるように、適当に置換された4−シアノピペリジンを標準的な反応条件下で塩化スルホニルと反応させて対応するスルホンアミドを得る。グリニャール試薬を用いるニトリルへの求核付加反応またはアルキルセリウム試薬を用いるニトリルへの二重求核付加反応により対応するアミンが得られる。ラセミ化合物をクロマトグラフィー分割した後、標準条件下でこの物質をアシル化すると最終物質が得られる。この場合、全ての塩化スルホニル、酸塩化物、グリニャール試薬、およびアルキルリチウム試薬、酸塩化物、およびカルボン酸は市販のものであった。出発4−シアノピペリジンは市販されている。
【実施例1】
【0141】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(シクロプロピルメチル)−1−[(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)スルホニル]ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
4−シアノ−4−(シクロプロピルメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
−70℃にて、THF(60ml)中、リチウムジイソプロピルアミド(THF中2M溶液;60ml;0.12mol)の攪拌溶液に、THF(150ml)中、4−シアノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(21g;0.1mol)を1時間かけて添加した。混合物を−70℃にて1時間撹拌し、次にTHF(20ml)中、(ブロモメチル)シクロプロパン(17.53g;0.13mol)を添加した。溶液を−70℃にて1時間撹拌し、次に2時間かけて周囲温度まで温めた。反応物をブライン(150ml)に注入し、EtOAc(3×200ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(200ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて茶色の油状物質を得た。粗生成物を、イソヘキサン中5%EtOAcで溶出するシリカでのクロマトグラフィーに付し、標題生成物を無色油状物質(24.8g)として得た。
【0142】
H NMRδ(ppm)(CDCl):4.15−4.09(2H,m)、3.05(2H,s)、2.02(2H,m)、1.49(13H,m)、1.00−0.84(1H,m)、0.61−0.55(2H,m)、0.19(2H,m)。
【0143】
4−アミノメチル−4−(シクロプロピルメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
前段階の生成物(19g;71.86mmol)エタノール(300ml)および水酸化アンモニウム(25%;25ml)の溶液に、ラネーニッケル(50%水性スラリー約10ml)を添加し、混合物を水素雰囲気下(40psi)、パール装置上で18時間振とうした。LC/MSにより出発物質の不在が示され、目的とする質量イオン(m/e=268)の生成物が得られた。触媒フィルターで混合物を濾過し、エタノール(5×50ml)を用いて十分に触媒を洗浄した。溶媒を蒸発させると標題化合物が無色の油状物質として得られ、これを次の段階に直接使用した(19g)。
【0144】
4−シクロプロピルメチル−4−[(2,4−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:
前段階の生成物(5g、18.6mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶かした。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.9mL、22.3mmol)を添加し、混合物を氷浴中で冷却し、この間に2,4−塩化ジクロロベンゾイル(2.9mL、20.5mmol)を滴下した。混合物を室温まで温め、1時間撹拌し、次に減圧下で濃縮し、溶出剤として20%酢酸エチル:80%ジクロロメタン混合物を用いるシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーで直接精製して所望の生成物を得た。(8.1g)。
【0145】
H NMRδ(ppm)(CDCl):7.66(1H,d,J=8.3Hz)、7.43(1H,d,J=1.9Hz)、7.33(1H,dd,J=1.8,8.3Hz)、6.30(1H,m)、3.59(2H,br s)、3.51−3.41(4H,m)、1.53(4H,m)、1.45(9H,s)、1.34(2H,d,J=6.6Hz)、0.72−0.65(1H,m)、0.52(2H,m)、0.06(2H,m)。
【0146】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(シクロプロピルメチル)ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
前段階の生成物(8.1g)をジクロロメタン(50mL)に溶かして氷浴中で冷却した。トリフルオロ酢酸(10mL)を滴下し、混合物を室温にまで温め、2時間攪拌した。溶媒および過剰なトリフルオロ酢酸を真空下で除去し、残渣を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和して酢酸エチル(4×100mL)で抽出した。合わせた有機物を水(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(無水)で乾燥させ、濾過し、蒸発させて所望の生成物を得た。(5.2g)。m/z(ES)341(M+H)。
【0147】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(シクロプロピルメチル)−1−[(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)スルホニル]ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
前段階の生成物(200mg、0.59mmol)を、ジクロロメタン(5mL)に溶かした。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.15mL、0.88mmol)を添加し、続いて1−メチル−1H−ピラゾール−4−塩化スルホニル(116mg、0.64mmol)を添加した。混合物を室温にて2時間攪拌して、次に溶出剤として20%酢酸エチル:80%ジクロロメタン混合物を用いる、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーで直接精製して標題化合物(160mg)を得た。
【0148】
H NMRδ(ppm)(CDCl):7.75(1H,s)、7.73(1H,s)、7.61(1H,d,J=8.3Hz)、7.43(1H,d,J=1.8Hz)、7.33(1H,dd,J=1.9,8.3Hz)、6.26(1H,m)、3.98(3H,s)、3.48(2H,d,J=6.4Hz)、3.22−3.18(2H,m)、3.02−2.96(2H,m)、1.74−1.67(4H,m)、1.27−1.25(2H,m)、0.67−0.61(1H,m)、0.52(2H,m)、0.05(2H,m)。m/z(ES+)485(M+H)。
【0149】
以下の化合物は、実施例1の方法により調製した。
【0150】
【表1】

【実施例2】
【0151】
2,4−ジクロロ−N−[4−(シクロプロピルメチル)−1−(1−メチル−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−スルホニル)ピペリジン−4−イルメチル]−ベンズアミド:
2,4−ジクロロ−N−[4−(シクロプロピルメチル)−1−(1H−[1,2,3]トリアゾール−4−スルホニル)ピペリジン−4−イルメチル]ベンズアミド(472mg、1.0mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(5mL)に溶かした。炭酸カリウム(276mg、2mmol)およびヨウ化メチル(81μL,1.3mmol)を添加し、混合物を室温にて一晩攪拌した。
【0152】
混合物を酢酸エチル(20mL)と水(20mL)との間で分液した。水相をさらに酢酸エチル(2×20mL)で抽出し、合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ(無水)、濾過して蒸発させ、油状物質を得た。これを溶出剤として15%酢酸エチル:85%ジクロロメタン混合物を用いる、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、次に溶出剤として20%酢酸エチル:80%ジクロロメタン混合物を用いる分取薄層クロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(60mg)を得た。
【0153】
H ΝMRδ(ppm)(CDCl):7.96(1H,s)、7.61(1H,d,J=8.3Hz)、7.43(1H,d,J=1.8Hz)、7.32(1H,dd,J=1.8,8.3Hz)、6.28(1H,m)、4.18(3H,s),3.51(2H,d,J=6.4Hz)、3.44−3.38(2H,m)、3.34−3.28(2H,m)、1.71(4H,m)、1.28(2H,d,J=6.6Hz)、0.67−0.61(1H,m)、0.53−0.50(2H,m)、0.05−0.02(2H,m)。m/z(ES+)486(M+H)。
【0154】
【表2】

【実施例3】
【0155】
2,4−ジクロロ−N−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−4−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−4−イルメチル]−ベンズアミド:
4−シアノ−4−(ピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
氷浴中で冷却した、トルエン(3.6ml)中、4−シアノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(500mg;2.38mmol)および2−(クロロメチル)ピリジン(334mg;2.62mmol)の撹拌懸濁液に、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(トルエン中0.5M;5.7ml;2.86mmol)を10分かけて添加した。反応混合物を1.5時間撹拌しながら周囲温度まで温めた。反応物をブライン(25ml)に注入し、EtOAc(3×30ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(30ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させ、橙色の油状物質を得た。粗生成物を、イソヘキサン中50%EtOAcで溶出するシリカでのクロマトグラフィーに付し、所望の生成物を無色の油状物質として得た(375mg)。
【0156】
H NMRδ(ppm)(CDCl):8.57−8.55(1H,m)、7.71−7.65(1H,m)、7.35(1H,t,J=4.3Hz)、7.22−7.20(1H,m)、4.11(2H,m)、3.01(4H,t,J=12.9Hz)、1.89(2H,d,J=13.4Hz)、1.65−1.57(2H,m)、1.44(9H,s);m/e=202(m−Boc)。
【0157】
4−(アミノメチル)−4−(ピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
メタノール(5ml)中、前段階の化合物(363mg;1.20mmol)の2.0Mアンモニア溶液に、ラネーニッケル(50%水性スラリー約0.5ml)を添加し、混合物を水素雰囲気下(45psi)、パール装置上で15.5時間振とうした。触媒フィルターで混合物を濾過し、メタノール(5×25ml)を用いて十分に触媒を洗浄した。溶媒を蒸発させて所望の化合物を緑色の油状物質として得、これを次の段階に直接使用した(351mg)。m/e=306。
【0158】
4−[(2,4−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−4−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:
0℃にて、DCM(3.5ml)中、前段階の化合物(349mg;1.14mmol)およびn−エチルジイソプロピルアミン(0.22g;0.30ml;1.71mmol)の攪拌溶液に、2,4−塩化ジクロロベンゾイル(0.314g;0.21ml;1.49mmol)を滴下し、溶液を周囲温度まで温めながら3時間攪拌した。水(5ml)およびDCM(5ml)を添加し、反応物を5分間攪拌し、次に5μPTFEフリットを通過させた。有機相を回収して蒸発させた。粗生成物を、イソヘキサン中35%EtOAcで溶出するシリカでのクロマトグラフィーに付し、所望の化合物を白色泡沫状固体として得た(360mg)。
【0159】
H NMRδ(ppm)(CDCl):8.42−8.38(2H,m)、7.65−7.59(2H,m)、7.46(1H,d,J=2.0Hz)、7.33(1H,dd,J=2.0,8.2Hz)、7.17−7.13(1H,m)、7.10(1H,d,J=7.7Hz)、3.67−2.77(8H,m)、1.52−1.44(13H,m);m/e=478/480(3:2)。
【0160】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(ピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
DCM(4ml)中、前段階の化合物(356mg;0.744mmol)の攪拌溶液に、トリフルオロ酢酸(0.57ml;7.44mmol)を添加し、溶液を周囲温度にて1.5時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をDCM(20ml)と飽和炭酸水素ナトリウム溶液(20ml)との間で分液した。2M水酸化ナトリウム溶液を用いて水相のpHを10に調節し、次に水相をDCM(20ml)で抽出した。合わせた有機物をMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて泡沫状の白色固体(150mg)を得、これをさらなる精製を行わずに使用した。m/e=378/380(3:2)。
【0161】
2,4−ジクロロ−N−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−4−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−4−イルメチル]−ベンズアミド:
0℃にて、DCM(2ml)中、前段階の化合物(148mg;0.391mmol)の攪拌溶液に、n−エチルジイソプロピルアミン(0.0742g;0.10ml;0.587mmol)を添加し、続いて1−メチル−1H−ピラゾール−4−塩化スルホニル(92mg;0.508mmol)を添加して溶液を周囲温度にて3.5時間撹拌した。DCM(5ml)および水(5ml)を添加し、混合物を5分間激しく攪拌し、次に5μPTFE分離フリットに流し込んで通過させた。DCM層を蒸発させて油状物質を得、これをDCM中0.5%から5%メタノールで溶出するシリカでのクロマトグラフィーに付し、生成物を油状物質として得た。油状物質をイソヘキサンでトリチュレートし、薄い橙色の固体を得た(39mg)。
【0162】
H NMRδ(ppm)(CDCl):8.41(1H,d,J=4.1Hz)、8.35(1H,t,J=6.8Hz)、7.76(1H,s)、7.72(1H,s)、7.66−7.62(1H,m)、7.55(1H,d,J=8.2Hz)、7.46(1H,d,J=1.9Hz)、7.32(1H,dd,J=1.9,8.3Hz)、7.18−7.14(1H,m)、7.10(1H,d,J=7.7Hz)、3.97(3H,s)、3.51(2H,d,J=12.9Hz)、3.16(2H,d,J=6.5Hz)、2.80(4H,d,J=−0.0Hz)、1.74−1.64(4H,m)。m/e=522/524(3:2)。
【実施例4】
【0163】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1−[(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スルホニル]ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
4−シアノ−4−(3−フルオロピリジン−2−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
窒素雰囲気下、アセトン/氷浴中で冷却した、トルエン(40ml)中、4−シアノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(7g;33.29mmol)および2−クロロ−3−フルオロピリジン(4.82g;36.62mmol)の撹拌懸濁液に、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(トルエン中0.5M;79.9ml;39.95mmol)溶液を、内部温度を−10℃以下に保ちながら30分かけて添加した。次に、反応混合物を2時間撹拌しながら周囲温度まで温めた。反応物をブライン(150ml)に注入し、EtOAc(3×100ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(100ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて茶色の油状物質を得た。粗生成物を、DCM中10%EtOAcで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに付し、所望の生成物を無色の油状物質として得た(4.8g)。
【0164】
H NMRδ(ppm)(CDCl):8.41(1H,dd,J=1.3,3.2Hz)、7.51−7.45(1H,m)、7.37−7.33(1H,m)、4.16(2H,m)、3.28(2H,m)、2.28(2H,d,J=13.3Hz)、2.17(2H,t,J=11.1Hz)、1.47(9H,d,J=5.4Hz)。;m/e=206(m−Boc)。
【0165】
4−アミノメチル−4−(3−フルオロピリジン−2−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
メタノール(15ml)中、前段階の生成物(4g;13.0997mmol)の2.0Mアンモニア溶液に、ラネーニッケル(50%水性スラリー約1ml)を添加し、混合物を水素雰囲気下(50psi)、パール装置上で18時間振とうした。LC/MSにより出発物質の消費が示され、目的とする質量イオン(m/e=309)の生成物が得られた。触媒を濾過により除去し、メタノール(5×10ml)で十分に洗浄して、濾液を蒸発させると所望の化合物がゴム状物質として得られ、これを次の段階に直接使用した(3.9g)。
【0166】
4−{2,4−ジクロロベンゾイル}アミノメチル−4−(3−フルオロピリジン−2−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
0℃にて、DCM(10ml)中、前段階の化合物(1g;3.23mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(0.46g;0.615ml;3.56mmol)の攪拌溶液に、2,4−塩化ジクロロベンゾイル(0.677g;0.45ml;3.23mmol)を滴下し、溶液を周囲温度まで温めながら48時間攪拌した。水(4ml)を添加し、反応物を10分間攪拌し、次に5μPTFEフリットを通過させた。有機相を回収して蒸発させた。粗生成物を、DCM中10%EtOAcで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに付し、生成物を無色の油状物質として得た(1.23g)。
【0167】
H NMRδ(ppm)(CDCl):8.36(1H,d,J=2.2Hz)、7.56(1H,d,J=8.4Hz)、7.41−7.35(2H,m)、7.23(2H,m)、6.82(1H,s)、3.94(2H,s)、3.63(2H,m)、3.45−3.41(2H,m)、2.52(2H,m)、1.70(2H,m)、1.46(9H,s)。;m/e=482:484(3:2)。
【0168】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(3−フルオロピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
0℃にて、DCM(10ml)中、前段階の化合物(1.2g;2.5mmol)の攪拌溶液に、トリフルオロ酢酸(2ml;26mmol)を添加し、溶液を周囲温度にて3時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAc(50ml)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)との間で分液した。水相をEtOAc(50ml)で抽出し、合わせた有機物をMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させると泡沫状の白色固体(0.94g)が得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した。m/e=382/384(3:2)。
【0169】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1−[(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スルホニル]ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
0℃にて、DCM(10ml)中、前段階の化合物(0.3g;0.78mmol)の攪拌溶液に、N−エチルジイソプロピルアミン(0.406g;0.543ml;3.13mmol)を添加し、続いて1,2,3−トリアゾール−4−塩化スルホニル(0.32g;0.252ml;1.56mmol)を添加し、溶液を周囲温度にて2.5時間撹拌した。DCM(5ml)および水(5ml)を添加し、混合物を5分間激しく攪拌し、次に5μPTFE分離フリットに流し込んで通過させた。DCM層を蒸発させると油状物質が得られ、これをDCM中5%メタノールで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフフィーを行い、標題生成物を白色の泡沫状固体として得た(105mg)。
【0170】
1H NMR(ppm)(DMSO):8.53(1H,s)、8.40(1H,t,J=6.4Hz)、8.32(1H,d,J=4.5Hz)、7.62−7.56(2H,m)、7.43(1H,dd,J=2.0,8.2Hz)、7.35−7.31(1H,m)、7.15(1H,d,J=8.2Hz)、3.56(2H,d,J=6.4Hz)、3.48(2H,d,J=12.9Hz)、2.68(2H,t,J=10.2Hz)、2.56(2H,s)、1.87(2H,t,J=10.5Hz);m/e=513:515(3:2)。
【0171】
以下の化合物は、適切な塩化スルホニルおよび酸塩化物を用いて実施例4の方法により調製した。
【0172】
【表3】



【実施例5】
【0173】
2,4−ジクロロ−N−{[4−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1−[(1−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スルホニル]ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド:
トルエン(5ml)中、2,4−ジクロロ−N−{[4−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1−[(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スルホニル]ピペリジン−4−イル]メチル}ベンズアミド(0.15g;0.29mmol)の懸濁液に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(0.35g;0.4ml;2.92mmol)を添加し、混合物を1時間加熱還流させた。真空下で溶媒を除去し、トルエンを用いて残渣を2回共沸させた。粗生成物を、DCM中3%メタノールで溶出するシリカゲルでの分取薄層クロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を最も極性の強い異性体として得た(30mg)。
【0174】
H NMR(ppm)(CDCl):8.32(1H,d,J=4.5Hz)、7.95(1H,s)、7.49(1H,d,J=8.3Hz)、7.40−7.33(2H,m)、7.25(2H,dd,J=0.0,7.9Hz)、6.74(1H,s)、4.17(3H,s)、3.87(2H,d,J=6.2Hz)、3.52(2H,t,J=8.7Hz)、3.36(2H,dd,J=3.5,7.6Hz)、2.70−2.64(2H,m)、1.90−1.86(2H,m);m/e=527:529。
【0175】
以下の化合物は、NH複素環のアルキル化により(実施例4において調製されたように)実施例5の方法により調製した。
【0176】
【表4】


【実施例6】
【0177】
2,4−ジクロロ−N−{[3−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1−(2−チエニルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド:
3−シアノ−3−(3−フルオロピリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
窒素雰囲気下、アセトン/氷浴中で冷却した、トルエン(100ml)中の3−シアノアゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル(5g;27.43mmol)および2−クロロ−3−フルオロピリジン(5.05g;38.41mmol)の攪拌懸濁液に、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(トルエン中0.5M溶液;71.34ml;35.67mmol)を、内部温度を−10℃以下に保ちながら30分かけて添加した。反応混合物を周囲温度まで温め、次にさらに2時間攪拌した。反応物をブライン(150ml)に注入し、EtOAc(3×100ml)で抽出した。合わせた有機相をブライン(100ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて茶色の油状物質を得た。粗生成物を、DCM中5%EtOAcで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに付し、所望の生成物を無色の油状物質(2.67g)として得た。
H NMR(ppm)(CDCl):8.45(1H,dd,J=1.1,4.6Hz)、7.55−7.49(1H,m)、7.43−7.39(1H,m)、4.66(2H,d,J=8.9Hz)、4.57(2H,d,J=8.8Hz)、1.45(9H,s)。
【0178】
3−アミノメチル−3−(3−フルオロピリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
メタノール(30ml)中、前段階の生成物(2.5g;9.0157mmol)の2.0Mアンモニア溶液に、ラネーニッケル(50%水性スラリー約1ml)を添加し、混合物を水素雰囲気下(50psi)、パール装置上で12時間振とうした。LC/MSにより出発物質の消費が示され、目的とする質量イオン(m/e=282)の生成物が得られた。濾過により触媒を除去し、メタノール(5×10ml)で十分に洗浄した。濾液を蒸発させると所望の化合物がゴム状物質として得られ、これを次の段階に直接使用した(2.5g)。
【0179】
3−{2,4−ジクロロベンゾイル}アミノメチル−3−(3−フルオロピリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
0℃にて、DCM(30ml)中、前段階の生成物(2.2g;7.8201mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(1.21g;1.62ml;9.38mmol)の攪拌溶液に、2,4−塩化ジクロロベンゾイル(1.802g;1.20ml;8.60mmol)を滴下し、溶液を周囲温度まで温めながら4時間攪拌した。水(1ml)を添加して反応を停止させ、揮発性物質を蒸発させた。残渣を、EtOAc(100ml)と水(50ml)との間で分液した。水相をEtOAc(50ml)で抽出し、合わせた有機物をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて橙色の油状物質を得た。粗生成物を、DCM中20%EtOAcで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーに付し、生成物を無色の油状物質として得た(3.2g)。
【0180】
H NMR(ppm)(CDCl):8.36(1H,d,J=4.5Hz)、7.55(1H,d,J=8.4Hz)、7.42(2H,dd,J=9.2,20.7Hz)、7.29(2H,s)、6.72(1H,s)、4.40(2H,d,J=8.9Hz)、4.10(4H,m)、1.44(9H,s)。;m/e=454:456。
【0181】
2,4−ジクロロ−N−[(1−(3−フルオロピリジン−2−イル)アゼチジン)メチル]ベンズアミド:
0℃にて、DCM(30ml)中、前段階の生成物(2.8g;6.163mmol)の攪拌溶液に、トリフルオロ酢酸(2.37ml;30.8mmol)を添加し、溶液を次に周囲温度にて3時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAc(50ml)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)との間で分液した。水相をEtOAc(50ml)で抽出し、合わせた有機物をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させると泡沫状の白色固体(2.05g)が得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した。m/e=354/356。
【0182】
2,4−ジクロロ−N−{[3−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1−(2−チエニルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド:
0℃にて、DCM(5ml)中、前段階の生成物(0.1g;0.28mmol)およびn−エチルジイソプロピルアミン(.091g;0.12ml;0.70mmol)の攪拌溶液に、チオフェン−2−塩化スルホニル(0.056g;0.31mmol)を添加し、溶液を周囲温度にて18時間撹拌した。LC/MSは、単一の生成物を示した(m/e=500:502(3:2))。反応物をDCM(5ml)および水(2ml)で希釈し、10分間激しく撹拌した。混合物を5μPTFE分離フリットに流し込んで通過させ、DCM層を回収し、溶媒を真空下で蒸発させて油状物質を得た。粗生成物を、DCM中20%EtOAcで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに付し、標題化合物を泡沫状の白色固体として得た(69mg)。
【0183】
H NMR(ppm)(DMSO):8.77(1H,t,J=5.9Hz)、8.26(1H,d,J=4.5Hz)、7.95(1H,d,J=4.8Hz)、7.69(1H,d,J=2.9Hz)、7.62(2H,dd,J=0.0,1.8Hz)、7.48(1H,dd,J=1.8,8.2Hz)、7.35−7.31(1H,m)、7.24(1H,d,J=8.2Hz)、7.17(1H,t,J=4.3Hz)、4.21(2H,d,J=8.9Hz)、4.05(2H,dd,J=0.0,8.8Hz)、3.71(2H,d,J=6.3Hz);m/e=500:502(3:2)。
【0184】
以下の化合物は、適切な塩化スルホニルを用いて実施例6の方法により調製した。
【0185】
【表5】



【実施例7】
【0186】
2,4−ジクロロ−N−{[3−(シクロプロピルメチル)−1−(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド:
3−シアノ−3−(シクロプロピルメチル)アゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
0℃にて、THF(60ml)中、ジイソプロピルアミン(3.33g;4.64ml;32.92mmol)の溶液にn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M;13.17ml;32.92mmol)を添加した。溶液を30分間攪拌し、次に−78℃まで冷却した。3−シアノアゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(5g;27.43mmol)のTHF(40ml)溶液を添加し、溶液を1時間攪拌した。(ブロモメチル)シクロプロパン(4.81g;3.42ml;35.67mmol)を次に撹拌しながら滴下し、溶液を−78℃にて30分間撹拌し、次に周囲温度まで温め、3時間撹拌した。反応物を氷浴中で冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させた。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAc(300ml)および水(100ml)との間で分液した。有機相を分離し、MgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて、橙色の油状物質を得た。粗生成物を、DCM中15%EtOAcで溶出するシリカゲルプラグに通し、生成物を淡黄色の油状物質として得た(5.25g)。
【0187】
H NMR(ppm)(CDCl):4.27(2H,d,J=8.7Hz)、3.90(2H,d,J=8.7Hz)、1.82(2H,d,J=6.8Hz)、1.45(9H,s)、0.88−0.78(1H,m)、0.63−0.57(2H,m)、0.26(2H,m)。
【0188】
3−(アミノメチル)−3−(シクロプロピルメチル)アゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
前段階の生成物(2.2g;9.31mmol)のメタノール(2.0M;20ml)中アンモニア溶液に、ラネーニッケル(50%水性スラリー約1ml)を添加し、混合物を水素雰囲気下(50psi)、パール装置上で12時間振とうした。LC/MSにより出発物質の消費が示され、目的とする質量イオン(m/e=240)の新規生成物のピークが得られた。触媒を窒素下での濾過により除去し、メタノール(6×20ml)で洗浄した。濾液を蒸発させると無色の油状物質が得られ、これをさらなる精製を行わずに次の段階で使用した。
【0189】
3−{2,4−ジクロロベンゾイル}アミノメチル−3−(シクロプロピルメチル)−3−フルオロピリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボン酸tert−ブチル:
0℃にて、DCM(30ml)中、前段階の生成物(2.12g;8.82mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(1.71g;2.3ml;13.23mmol)の溶液に2,4−塩化ジクロロベンゾイル(2.21g;1.48ml;10.58mmol)を滴下し、溶液を周囲温度まで温めながら4時間攪拌した。水(5ml)の添加により反応を停止させ、揮発性物質を蒸発させた。残渣をEtOAc(100ml)および水(50ml)との間で分液した。水相をEtOAc(50ml)で抽出し、合わせた有機物をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて橙色の油状物質を得た。粗生成物を、DCM中20%EtOAcで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに付し、生成物を無色の油状物質として得た(2.58g)。
【0190】
H NMR(ppm)(CDCl):7.64(1H,d,J=8.3Hz)、7.43(1H,d,J=1.9Hz)、7.33−7.31(1H,m)、6.51(1H,s)、3.80−3.72(6H,m)、1.61(2H,d,J=6.5Hz)、1.42(9H,s)、0.72−0.64(1H,m)、0.57−0.51(2H,m)、0.12(2H,q,J=5.0Hz);m/e=413:415。
【0191】
2,4−ジクロロ−N−{[3−(シクロプロピルメチル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド:
0℃にて、DCM(30ml)中、前段階の生成物(2.58g;6.24mmol)の攪拌溶液に、トリフルオロ酢酸(3.51g;2.37ml;30.81mmol)を添加し、溶液を周囲温度にて3時間撹拌した。LC/MSにより出発物質の消費が示され、目的とする質量イオン(m/e=313:315[3:2])の生成物が得られた。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAc(50ml)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)との間で分液した。水相をEtOAc(2×50ml)で抽出し、合わせた有機物をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させると泡沫状の白色固体が得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した(1.95g)。
【0192】
2,4−ジクロロ−N−{[3−(シクロプロピルメチル)−1−(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド:
0℃にて、DCM(8ml)中、前段階の生成物(0.5g;1.59mmol)の攪拌溶液に、N−エチルジイソプロピルアミン(0.52g;0.69ml;3.99mmol)を添加し、続いて1,2,3−トリアゾール−4−塩化スルホニル(0.45g;2.23mmol)を添加し、溶液を周囲温度にて18時間撹拌した。LC/MSにより単一の生成物が示された(m/e=444:446(3:2))。反応物をDCM(10ml)および水(2ml)で希釈し、10分間激しく攪拌した。混合物を5μPTFE分離フリットに流し込んで通過させ、DCM層を回収し、溶媒を真空下で蒸発させて油状物質を得た。粗生成物を、DCM中5%メタノールで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに付し、得られた泡沫状の白色固体の標題化合物をメタノールから再結晶させて白色固体を得た(350mg)。
【0193】
H NMR(ppm)(CDOD):8.41(1H,s)、7.54(1H,s)、7.42(2H,s)、3.82(4H,q,J=8.4Hz)、3.56(2H,s)、1.33(2H,d,J=6.3Hz)、0.50(1H,s)、0.49(1H,m)、0.39(2H,m)、0.00(2H,m)。
【0194】
以下の化合物は、適切な塩化スルホニルを用いて実施例7の方法により調製した。
【0195】
【表6】

【実施例8】
【0196】
2,4−ジクロロ−N−({3−(シクロプロピルメチル)−1−[(1−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スルホニル]アゼチジン−3−イル}メチル)ベンズアミド:
0℃にて、DMF(5ml)中、2,4−ジクロロ−N−{[3−(シクロプロピルメチル)−1−(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド(0.1g;0.23mmol)の攪拌溶液に、炭酸カリウム(0.062g;0.45mmol)を添加し、続いてヨウ化メチル(0.048g;0.021ml;0.34mmol)を添加して、溶液を周囲温度にて18時間攪拌した。LC/MSにより、同一の質量イオンの3つの新規の生成物が示された(m/e=458:460(3:2))。水(1ml)を添加し、減圧下で溶媒を除去し、残渣をトルエンと共に2回共沸させた。粗生成物を、DCM中4%メタノールで溶出するシリカゲル分取薄層クロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を最も極性の強い異性体として得た(24mg)。
【0197】
H NMR(ppm)(DMSO):8.85(1H,s)、8.62(1H,t,J=6.1Hz)、7.69(1H,d,J=2.0Hz)、7.50(1H,dd,J=2.0,8.2Hz)、7.43(1H,d,J=8.2Hz)、4.14(3H,s)、3.75(2H,d,J=8.4Hz)、3.67(2H,d,J=8.4Hz)、3.40(2H,d,J=6.2Hz)、(2H,d,J=6.7Hz)、0.43(1H,m)、0.33−0.29(2H,m)、−0.05(2H,m);m/e=458:460(3:2)。
【0198】
以下の表中の化合物は、適切なNH複素環(実施例6または7でのように調製されたもの)および適切なヨウ化アルキルから、実施例8の方法により調製した。
【0199】
【表7】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

[式中:
pはともに、1または2であり;
は、−(CH−R1a{式中、nは、独立して、0から6であり、R1aは、
(1)(a)非置換の、または1から6個のハロゲン原子もしくはヒドロキシで置換されているC1−6アルキル、
(b)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、または
(c)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環、
(2)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、
(3)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピペリジニル、
(4)非置換の、またはC1−6アルキル、1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−O−C1−6アルキルもしくは−NR1011で置換されているピラニル、
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−O−C1−6アルキル、
(6)−CO
(式中、Rは、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、または1から6個のフルオロで置換されている−C1−6アルキル、
(c)ベンジル、および
(d)フェニル
から選択される。)、
(7)−NR1011
(式中、R10およびR11は、独立して、
(a)水素、
(b)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C1−6アルキル(R12およびR13は、独立して、水素および−C1−6アルキルから選択される。)、
(c)非置換の、またはヒドロキシ、1から6個のフルオロもしくは−NR1213で置換されている−C3−6シクロアルキル、
(d)ベンジル、
(e)フェニル
から選択される。)、および
(8)−CONR1011
から選択される。}であり;
は、
(1)R2a、R2bおよびR2cで置換されているフェニル、
(2)R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環、
(3)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシ、−NR1011、フェニルもしくは複素環で置換されているC1−8アルキル(前記フェニルもしくは複素環は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている。)、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されているC3−6シクロアルキル、および
(5)非置換の、または1から6個のハロゲン、ヒドロキシもしくは−NR1011で置換されている−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)
から選択され;
2a、R2bおよびR2cは、独立して、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)非置換の、または
(a)1から6個のハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、もしくは
(d)−NR1011
で置換されている−C1−6アルキル、
(4)非置換の、または1から6個のハロゲンで置換されている−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、および
(15)−NO
から選択され;
は、R2a、R2bおよびR2cで置換されている複素環であり;
およびRは、独立して、
(1)水素、および
(2)非置換の、またはハロゲンもしくはヒドロキシルで置換されているC1−6アルキル
から選択され、
またはRおよびRは、ともにC3−6シクロアルキル環を形成し;
Aは、
(1)−O−、および
(2)−NR10
から選択され;
mは、0または1であり、mが0である場合には、Rは、カルボニルと直接結合している。]
ならびにこの医薬的に許容される塩およびこの個々のエナンチオマーおよびジアステレオマー。
【請求項2】
が、C3−6シクロアルキルまたは複素環であり(前記複素環は、O、NもしくはSから選択される1個、2個、3個もしくは4個のヘテロ原子を含有し、多くとも1個のヘテロ原子がOもしくはSである5員の不飽和環、または1個、2個もしくは3個の窒素原子を含有する6員の不飽和環である。)、Rが、ハロゲンもしくはヒドロキシで場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシもしくはアミノで場合により置換されているフェニルまたはC3−6シクロアルキルである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、O、NもしくはSから選択される1個、2個、3個もしくは4個のヘテロ原子を含有し、多くとも1個のヘテロ原子がOもしくはSである5員の不飽和環、または1個、2個もしくは3個の窒素原子を含有する6員の不飽和環であり、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、ニトロもしくはアミノで場合により置換されている、請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の化合物またはこの医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
治療法によりヒトの身体の治療の方法に用いるための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、またはこの医薬的に許容される塩。
【請求項7】
統合失調症を治療するための薬剤の製造のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物またはこの医薬的に許容される塩の使用。
【請求項8】
統合失調症に罹患している対象を治療する方法であって、治療上有効量の、請求項1に記載の化合物またはこの医薬的に許容される塩を、この被験体に投与する段階を含む、方法。

【公表番号】特表2008−524316(P2008−524316A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547679(P2007−547679)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050258
【国際公開番号】WO2006/067529
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】