説明

GOSとポリフルクトースとの相乗作用

【課題】腹部膨満、ガス発生、腹痛、及び/又は鼓腸を治療し又は予防する組成物の提供。
【解決手段】プレバイオティク炭水化物の新規な相乗混合物、特に、ガラクトオリゴ糖(GOS、例えばTOS)とポリフルクトース(例えばイヌリン)との混合物、並びにこれらを含む栄養組成物。ガラクト−オリゴ糖がトランスガラクト−オリゴ糖であり、及び/又はポリフルクトースがイヌリンである。ガラクト−オリゴ糖:ポリフルクトースの量が、5:95から95:5の比を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの健康及び栄養の分野に関する。本発明は、プレバイオティク炭水化物の新規な相乗混合物、特に、ガラクトオリゴ糖(GOS、例えばTOS)とポリフルクトース(例えばイヌリン)との混合物、並びにこれらを含む栄養組成物を提供する。栄養組成物は、哺乳瓶で保育した又は一部哺乳瓶で保育した乳児(infants)に与えたときに有益な効果を発揮し、また炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)など、腸に問題のある成人により消化されるとき、健康改善効果も発揮する。
【背景技術】
【0002】
ヒト大腸(典型的には盲腸、結腸、及び直腸に分けられる)のミクロフローラは、ヒトの栄養及び健康に極めて重大な役割を演ずる。細菌組成物が影響を受け、食事摂取によって調節することができる。胃及び小腸を通過した炭水化物は細菌によって代謝され、代謝の大部分の最終産物としてアセテートやプロピオネート、ブチレート、バレレートなどの短鎖脂肪酸(SCFA)を形成し、これが引き続き血中に放出される。細菌発酵のその他の最終産物には、例えば、ラクテート及びスクシネートが含まれる。また、これら最終産物の総量及び組成(相対量)は、細菌成長、pH、病原種の排除などに重大な効果を発揮する。微生物叢及びヒトの健康に有益な影響を及ぼす方法は、プレバイオティクスの投与である。「プレバイオティクス」は、結腸内の1種又は限られた数の細菌の成長及び/又は活性を選択的に刺激することによって、宿主に有益な影響を及ぼし、したがって宿主の健康を改善する「非消化性食品成分」と定義された(Gibson及びRoberfroid 1995, J.Nutr. 125, 1401-1412)。プレバイオティクスとして分類されるように化合物が満たさなければならない基準は、1)胃腸管(胃、小腸)の上部で加水分解せず又は吸収されてはならないこと、2)結腸内の1種又は複数の潜在的に有益な細菌により、選択的に発酵しなければならないこと、3)より健康な組成物に向けて結腸微生物叢を変化させなければならないこと、及び4)好ましくは被験体(subject)の健康に有益な効果を引き起こさなければならないことである。一般に使用されるプレバイオティクスは、大腸に向かって胃腸管の上部を未消化のまま通過する、いわゆる非消化性炭水化物(又は「可溶性食物繊維」)である。これらには、例えば、フルクトオリゴ糖(FOS)、オリゴフルクトース、イヌリン、及びトランスガラクトオリゴ糖(TOS)が含まれる。文献では、フルクトオリゴ糖やイヌリン、オリゴフルクトース、イヌロ−オリゴ糖などの様々な用語の使用の間にしばしば矛盾があり、同じ用語を異なる化合物又は組成物に使用できることに留意すべきである。
【0003】
プレバイオティクスの摂取によって刺激される、周知の有益な細菌は、ラクトバシリ(Lactobacilli)やビフィドバクテリア(Bifidobacteria)などの乳酸菌であり、健康上の利益はこの刺激作用に起因するものとされてきた。例えばオリゴフルクトースなど、イヌリン及びイヌリン型フルクタンが腸の機能に及ぼす有益な影響が記述されており(Jenkins他, 1999, J.Nutrition 129, 1431S-1433S)、この影響は、ビフィズス菌の作用に起因すると考えられているが、これは、便のビフィドバクテリアカウントを経てインビボで又はインビトロで測定された、全ビフィドバクテリアに対する選択的成長刺激作用を指す(例えば、Roberfroid, Am J Clin Nutr 2001, 73(suppl), 406S-409S参照)。
【0004】
母乳で育てた乳児に定着している大部分の細菌は、ビフィドバクテリアであるので、人乳にも、ビフィズス菌の作用があるようである。対照的に、調合乳で育てた乳児の細菌コロニー形成は、ビフィドバクテリアで占有されておらず、その細菌種がより多様である(Harmsen他, 2000, J.Pediatr.Gastroenterol.Nutr. 30, 61-67)。人乳中に見られるオリゴ糖は、ビフィズス菌又はプレバイオティク効果に寄与しており、人乳にできる限り厳密に類似するように、特に人乳と同じか又は非常に類似したプレバイオティク効果を発揮するように、乳児用調合乳を改質する努力がなされていると考えられる。これは、乳児用調合乳にプレバイオティクスを添加することによって行われてきた(Boehm他, Acta Paediatr. Suppl. 2003, 441,64-67及びMoro他, 2002, J Pediatr Gastroenterol Nutr 34, 291-295)。例えば、調整牛乳に、トランス−ガラクトオリゴ糖(TOS)及びイヌリンHPを含んだオリゴ糖混合物を補うことにより、哺乳瓶保育の乳児における便のビフィドバクテリア数が増大することが記載されている(Boehm他, 2002, Arch Dis Child 86, F178-F181)。
【0005】
また、乳児用調合乳にTOS及びイヌリンを補うことにより、ビフィズス菌効果が発揮されること、及び便のpHが低下することが記載されている(Boehm他、2003 前掲; Moro他 2003, Acta Paediatr. Suppl. 441: 77-79; Marini他 2003, Acta Paediatr.Suppl. 441: 80-81; Boehm他 2002, Arch.Dis.Child Fetal. Neonata. Ed. 86: F178-F181; Moro他 2002, J.Padiatr. Gastroenterol.Nutr. 34:291-295; Schmelzle他 2003, J Pediatr. Gastroenterol. Nutr. 36: 343-51)。
【0006】
プレバイオティクスを乳酸菌により発酵させると、有機酸が生成され、pHが低下する。ラクトバシリは、ラクテート、又はラクテート及びアセテートを生成する(短鎖脂肪酸;SCFA)。ラクテートは、L−又はD−型をとることができる。一方、ビオフィリドバクテリアはL−ラクテート及アセテートを生成するが、D−ラクテートは生成しない。ビフィドバクテリア(及びその他の乳酸菌)は、通常、HやCHなどのガスの生成を引き起こさない。これらは、プロピオネートやブチレート、イソブチレート、バレレート、及びイソバレレートなどのその他のSCFAも生成しない。イソブチレートやイソバレレートなどのSCFAの存在は、クロストリジア(Clostridia)及びバクテロイデス(Bacteroides)又はエンテロバクテリアセエ(Enterobacteriaceae)などの他の細菌種による炭水化物の発酵を示しており、或いは、タンパク質の発酵(ビフィドバクテリウムではその能力が乏しい)を示している。また、プロピオニバクテリア(Propionibacteria)やエンテロコッキ(Enterococi)及びペジオコッキ(Pediococci)など、その他の腸内細菌も、アセテート又はラクテートを生成することが可能である。
【0007】
あるプレバイオティク炭水化物の摂取によって、ビフィドバクテリア及び/又はラクトバシリの(相対)量が増加することが、前に報告されている。同時に、SCFAの形成の増加及びpHの低下が観察されている。しかし、イヌリンやGOSなどのプレバイオティクスを食事に導入した場合、鼓腸や腹痛などの望ましくない症状をもたらすガスの発生も、報告されている。さらに、アセテートだけではなく、例えば望ましくないブチレートの増加も報告されている。したがって、あるプレバイオティクスを含んだ栄養補助サプリメントの消費から得られる望ましくない作用の範囲が記述されている。
【0008】
母乳保育の乳児の結腸及び便では、見出された大部分のSCFAがアセテートである。さらに、高濃度のラクテートが見出される。これらの(相対)量は、成人(ラクテートの濃度は全体として無視できる)で又は標準的な調合乳で保育した乳児で観察される量よりも多い。その後、プロピオネートの濃度、特にブチレートの濃度は、成人の場合よりも母乳保育の乳児の結腸及び便の場合でより低く、標準的な乳児用調合乳で保育した乳児の場合よりもさらに低い。便のpHは、母乳保育の子供の場合に最も低い。上述のように、消費したときに母乳保育した乳児のものと非常に似ている腸内ミクロフローラをもたらす栄養組成物、特に調合乳組成物を提供することが望ましい。
【0009】
SCFA及びラクテートと結腸の低pHに関する健康上の多くの効果が記述されている。より低いpH及び有機酸の存在は、抗病原効果を発揮し、乳酸菌(ビフィドバクテリアを含む)などの耐酸性細菌に利点をもたらすことが記述されている。また、SCFAが腸壁に及ぼす効果についても記述されている。SCFAは結腸細胞のエネルギー源であり、それによって、腸バリアの完全性(integrity)を補助している。SCFAは、蠕動、胆汁酸代謝、水吸収、及び細胞分化に及ぼす影響にも関与する(例えば、EP1105002参照)。SCFAは、粘液の生成を刺激することが知られており、ミネラル吸収及び粘膜生成に関与する。
【特許文献1】EP1105002
【非特許文献1】Gibson及びRoberfroid 1995, J.Nutr. 125, 1401-1412
【非特許文献2】Jenkins他, 1999, J.Nutrition 129, 1431S-1433S
【非特許文献3】Roberfroid, Am J Clin Nutr 2001, 73(suppl), 406S-409S
【非特許文献4】Harmsen他, 2000, J.Pediatr.Gastroenterol.Nutr. 30, 61-67
【非特許文献5】Boehm他, Acta Paediatr. Suppl. 2003, 441,64-67
【非特許文献6】Moro他, 2002, J Pediatr Gastroenterol Nutr 34, 291-295
【非特許文献7】Boehm他, 2002, Arch Dis Child 86, F178-F181
【非特許文献8】Moro他 2003, Acta Paediatr. Suppl. 441: 77-79
【非特許文献9】Marini他 2003, Acta Paediatr.Suppl. 441: 80-81
【非特許文献10】Boehm他 2002, Arch.Dis.Child Fetal. Neonata. Ed. 86: F178-F181
【非特許文献11】Schmelzle他 2003, J Pediatr. Gastroenterol. Nutr. 36: 343-51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等は、驚くべきことに、GOS(特にTOS)及びポリフルクトース(特にイヌリン)を一緒に投与した場合、腸内ビフィドバクテリア数の増加で説明することができず、したがって従来技術(例えば、Boehm他 2002, 前掲)のTOS又はイヌリンHPで記述されたビフィズス菌の作用に起因するものではない、いくつかの有益な効果をもたらすことを見出した。特に、GOSとポリフルクトースの混合物を投与した後、形成されたSCFA総量が増し、アセテート及びラクテートの相対量が増し、乳児の便のpHが低下し、それによってこれらの効果がビフィドバクテリアの(相対)量の増加に相関しないことを見出したことは、予期せぬことであった。有益なSCFA量及びプロフィルとラクテートの量の増加の他に、ガス発生の減少が観察された。さらに、ラクテートそのものは、プロスタグランジンE1及びプロスタグランジンE2の分泌が増加することがわかったので、結腸に対してこれまで知られていなかった有益な効果を発揮することがわかった。この効果は、SCFA、特にアセテートに関して前に報告されただけであった(Willemsen他, 2003, Gut 52, 1442-1447)。したがってラクテートを含む組成物、及びラクテート生成を刺激するプレバイオティクスを含む組成物は、ムチン生成を刺激するために、また粘膜バリアの完全性を支持するために使用することができる(粘膜保護)。ラクテートはさらに、結腸筋の自然発生的な収縮及び緊張を低下させ、その結果、痙攣及び痛みを緩和することがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがってプレバイオティク組成物は、ビフィドバクテリアの数を増加させず又は実質的に増加させず、その一方で全SCFA量を増加させ、SCFAプロフィルに有益な変化をもたらし(アセテートの増加、ブチレート及びプロピオネートの減少)、乳酸を増加させ(有益な収縮及び緊張低減効果、及び粘膜刺激効果をもたらす)、便のpHを低下させ、ガスの発生を減少させ、SCFAをより漸進的に形成し(結腸遠位部での形成も含む)、即ち発酵産物の全体的に最適なパターン(L−ラクテートがより多く、ブチレートがより少ないなど)という点が新規である。これらの変化の全ては、結腸環境を、母乳保育の乳児のものにより類似したものにする。したがって本発明の一実施形態は、母乳保育の乳児の結腸環境に本質的に類似している結腸環境をもたらす組成物を調製するための、GOSとポリフルクトースの混合物の有効量での使用を、本明細書で提供する。
【0012】
見出された有益な効果は、GOS又はポリフルクトース(例えばTOS又はイヌリン)を単独で投与した場合よりも、同時投与した場合のほうでかなり明らかであり、GOS及びポリフルクトースが相乗的に作用することを示していた。従来技術では、TOSとイヌリンの投与の個々の効果を、これら2タイプの化合物の同時投与と直接比較する研究は行われておらず、明らかに、そのような独立した個々の研究を互いに比較することはできず、相乗効果を特定するのに不適切である。
【0013】
GOSとポリフルクトース(例えばTOS及びイヌリン)とのこの新規な相乗的相互作用、及びこれらの同時投与のインビボ効果は、結腸及び/又は腹部痙攣、腹部膨満、鼓腸、腹痛、便秘、IBS、IBD、アレルギー、及び/又は腸の粘膜保護の増大といった治療や予防など、GOSとポリフルクトースの両方を適切な(相乗的)量で含む組成物の新しい使用をもたらす。さらに、ラクテート(D−ラクテート及び/又はL−ラクテート、好ましくはL−ラクテート)を含む組成物を使用して、これらの症状又は障害の1種又は複数を治療し又は予防することができる。
【0014】
したがって、意外なことに、腸内細菌叢によるプレバイオティクスの特定の混合物(GOS及びポリフルクトース)の発酵は、強化され且つ動態的に有利なSCFA及びラクテートの形成をもたらし、代謝最終産物の改善されたパターンももたらす。その結果、粘液生成に対する効果や抗炎症効果、痛みの知覚に対する効果、及び腹部痙攣/疝通に対する効果など(結腸の弛緩及び自然発生的収縮の両方を介して)、多くの有利な効果が得られる。これらプレバイオティク混合物を含む栄養組成物は、IBDやIBSなど腸に問題のある成人、又は栄養不良に起因して腸バリアの完全性が低下している成人に使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
定義
「多糖」は、鎖長が少なくとも10単位である単糖単位の炭水化物鎖を指す。対照的に「オリゴ糖」は、その鎖長が10単位未満である。
【0016】
「重合度」又は「DP」は、オリゴ又は多糖鎖の糖単位の総数を指す。「平均DP」は、組成物中のオリゴ糖又は多糖鎖の平均DPを指し、このとき可能性ある単糖又は二糖は考慮しない(存在する場合には、除去することが好ましい)。組成物の平均DPは、組成物同士を区別するのに使用する。さらに、組成物中のグルコース単位%やフルクトース単位%などの糖単位%は、区別される。
【0017】
「ポリフルクトース」又は「ポリフルクタン」又は「フルクト多糖」は、重合度が10以上であるβ結合フルクトース単位の鎖を含む多糖炭水化物を指し、例えば、イヌリン(例えばイヌリンHP)、レバン、及び/又は「混合型ポリフルクタン」を含む(下記参照)。
【0018】
「イヌリン」又は「非加水分解イヌリン」又は「イヌリンHP」は、本明細書では、鎖の大部分(少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%)の重合度(DP)が10以上であるグルコース末端フルクトース鎖を指すのに使用する。したがってイヌリンは、GF(但し、Gはグルコシル単位を表し、Fはフルクトシル単位を表し、nは互いに結合しているフルクトシル単位の数であり、nは9以上である)と呼ぶことができる。G/F比は約0.1から0である。しかしイヌリン分子の少量は、末端グルコース単位を持たなくでよい。平均DPは、本明細書では好ましくは少なくとも15であり、より好ましくは20以上であり、例えば20、21、22、23、25、30、40、60、70、100、150以上である。イヌリンでは、フルクトース単位がβ(2→1)結合により結合している。適切なイヌリンは、例えば、平均DP>23のRaftiline(登録商標)HP(Orafti)として市販されている。
【0019】
「加水分解イヌリン」又は「オリゴフルクトース」は、DPが10よりも低いグルコース及びフルクトース末端フルクトース鎖の混合物を指す。したがって、加水分解イヌリンを、GF鎖とF鎖の混合物と呼ぶことができる(但しGはグルコシル単位であり、Fはフルクトシル単位であり、n=1〜8である)。加水分解イヌリンは、β(1−2)フルクトシル−フルクトース結合の切断から得られた、イヌリンの(酵素又は酸性)加水分解産物又は部分加水分解産物である。加水分解イヌリンという用語は、合成により作製され又は組換えにより作製された、同じ構造体を有するイヌリンも包含する。
【0020】
「レバン」又は「レブラン」又は「レブリン」又は「レブロサン」は、フルクトース単位がβ(2→6)結合により結合しているポリフルクトースからなる多糖を指す。出発時にグルコース部分が存在することができるが、必ずしも必要ではない。重合度は10よりも高い。
【0021】
「混合型ポリフルクタン」では、フルクトース単位はβ(2→1)及びβ(2→6)結合により結合する。混合型ポリフルクタンは、分枝状であり、DP>10を有する。
【0022】
「GOS」又は「ガラクトオリゴ糖」、又は「トランス−ガラクトオリゴ糖」又は「TOS」は、DPが10以下であり且つ平均DPが2、3、4、5、又は6であるガラクトース単位からなるオリゴ糖を指す。グルコース単位は、鎖の還元端に存在することができる。GOSは、少なくとも2/3ガラクトース単位を含有することが好ましい。β−(1−4)グリコシド結合によるトランス−ガラクトオリゴ糖(TOS)が最も好ましい。そのようなGOSは、例えば、β−(1−4)グリコシド結合及びβ−(1−6)グリコシド結合によるトランス−ガラクトオリゴ糖を含むVivinal(登録商標)GOS(Borculo Domo Ingredients,Zwolle,オランダから市販されている)に見出されるものである。
【0023】
「SCFA」又は「短鎖脂肪酸」は、細菌性腸内発酵の最終生成物として生成された、炭素鎖の長さがC6までの脂肪酸を指し、例えばアセテート(C2)やプロピオネート(C3)、ブチレート及びイソブチレート(C4)、バレレート及びイソバレレート(C5)などである。「iC4〜5」という表現は、イソブチレート、バレレート、及びイソバレレートを合わせたものを指す。
【0024】
「相乗的に有効な量」は、同時投与したときに1種(又は複数)の特定の生理学的効果(本明細書の他の部分に記述される)をもたらすGOS及びポリフルクトース(例えばTOS及びイヌリン)の量、即ちこの同時投与の全体的効果が、GOS又はポリフルクトースの個々の投与の効果を合わせたものよりも著しく大きい量を指す。例えば、GOS単独投与の効果がXであり、ポリフルクトース単独投与の効果がYである場合、GOSとポリフルクトースの同時投与の効果はX+Yよりも大きく、例えば1/2の濃度のGOSと1/2の濃度のポリフルクトースを合わせた同時投与の効果は、(1/2)・X+(1/2)・Yよりも大きい効果を有する。
【0025】
2種以上の物質の「同時投与」は、これら物質を、同じ時間に(同時に)又は短時間のスパンで(別々に又は逐次使用、例えば何分又は何時間以内で)投与される1つの組成物又は別々の組成物(部品のキット;組み合わせた組成物として)として、一個人に投与することを指す。
【0026】
「腸溶」は、本明細書では、被験体の胃腸管への直接的な送達を指す(例えば経口的に、或いはチューブ、カテーテル、又はストーマを介して)。
【0027】
「含む」という用語は、述べられている部分、ステップ、又は組成物の存在を指定することと解釈されるが、1種又は複数の追加の部分、ステップ、又は組成物の存在を排除するものではない。
【0028】
「乳児」は、本明細書では、0〜36月齢、好ましくは0〜18月齢、又はより好ましくは0〜12月齢のヒトを指す。
【0029】
「母乳保育の乳児」は、ヒトの母乳でのみ育てられた乳児を指す。「非又は一部母乳保育の乳児」は、ヒトの母乳だけで育てられたわけではない乳児を指す。これには、1日当たり少なくとも1本の哺乳瓶(約80ml)の調合乳で育てられた乳児が含まれる。
【0030】
「パーセンテージ」又は「平均」は、他に特に指定しない限り、又は別の基準を意味することが明らかでない限り、一般に、平均の重量パーセンテージを指す。
【0031】
一実施形態では、本発明は、GOSとポリフルクトースの両方を適切な(相乗的に有効な)量で含む組成物の、いくつかの新規な使用を提供する。
【0032】
本発明による使用及び方法
本明細書に記述される様々な使用では、被験体が好ましくはヒト被験体であり、より好ましくは、12月齢までの乳児である新生児などの乳児である。特に、哺乳瓶で保育され又は一部哺乳瓶で保育された乳児を指す。或いは被験体は、子供、10代、又は成人でもよい。特に、疲労、うつ病、又はふさぎ込みをもたらす可能性もある、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)、鼓腸、腹部痙攣、疝痛、腹部膨満、腹痛などであるがこれらに限定することのない腸の問題を、本発明による組成物を使用して予防及び/又は治療することができる。また、粘膜生成を強化することができ、腸の最適状態には及ばない機能から生ずるアレルギーを予防し又は治療することもできる。栄養不良、手術、化学療法からもたらされた結果としてバリア機能が損なわれた患者では、腸バリア機能も改善することができる。
【0033】
TOS及びイヌリンを含む組成物など、GOSとポリフルクトースの両方を含む組成物は、一実施形態において、被験体の大腸でSCFAの生成を誘発するために、また投与後に生成されたSCFAの(腸及び/又は便での)総量を著しく増加させるために、且つ/又は生成された(腸及び/又は便の)SCFAの相対量を著しく修正するために、特に全SCFAからの(腸及び/又は便の)アセテートの相対量を増加させるために、且つ/又は生成された腸内ラクテートの量(絶対及び相対)を著しく増加させるために、且つ/又は腸内ガスの発生を著しく減少させ又は防止するために、且つ/又は結腸の遠位部分までSCFAの生成を広げるために、且つ/又は大腸内のpH及び便のpHを著しく低下させるために、使用することができる。また、全SCFAに対する腸及び/又は便のブチレート、イソブチレート、バレレート、及び/又はイソバレレートの合計を、減少させることができる。これらの効果は、腸内ビフィドバクテリアの総数及び/又は相対数に著しい影響を及ぼすことなく、投与後に実現される。任意の疾患又は障害、或いはこれら腸の作用の1つ又は複数に関連し又は伴う不快感を、治療し又は予防するための組成物が、本明細書で提供される。
【0034】
本発明は、腹部膨満、ガス発生、腹痛、及び/又は鼓腸を治療し又は予防する組成物を製造するための、ガラクト−オリゴ糖及びポリフルクトースの使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、アレルギー、湿疹、又はアトピー性疾患を治療し又は予防する組成物を製造するための、ガラクトオリゴ糖及びポリフルクトースの使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、疝痛の治療及び/予防をし、且つ/又は結腸の収縮、好ましくは緊張性及び/又は相動性収縮を緩和させる組成物を製造するための、ガラクト−オリゴ糖及びポリフルクトースの使用を提供する。別の実施形態では、本発明は、過敏性腸症候群又は炎症性腸疾患を治療し又は予防する組成物を製造するための、ガラクト−オリゴ糖及びポリフルクトースの使用を提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、大腸の腸バリア機能及び/又は大腸での粘液生成を増大させる組成物を製造するための、ガラクト−オリゴ糖及びポリフルクトースの使用を提供する。
【0035】
他に特に指示しない限り、「著しい増加」(例えばSCFA、アセテート、又はラクテートの)は、本明細書では、GOS又はポリフルクトース(例えばイヌリン)を単独で投与したときに生成された量と比較した場合、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、又はそれ以上の増加を指す。同様に他に特に指示しない限り、「著しい減少」(例えばガス発生の)とは、ポリフルクトース(例えばイヌリン)を単独で投与したときに生成された量と比較した場合、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、25%、50%、又はそれ以上(例えば70%、80%、90%、100%)の減少を指す。
【0036】
GOS及びポリフルクトース組成物の発酵産物として生成されたSCFAの総量の増加は、被験体の便サンプルのpHの著しい低下として測定することもでき、これは、大腸におけるpHのインビボ低下を反映している。乳児では、TOS及びポリフルクトース(例えばイヌリン)を同時投与した後に、便のpHが約5.8以下に、例えばpH5.6、5.5、又は5.4、又は5.2に低下し、一方、標準的な調合乳で保育した乳児のpHは、約6付近又はそれ以上、例えば約pH5.9、6.8、又はさらに7.0であることがわかった。したがってpHの著しい低下は、標準的な調合乳で保育された乳児と比較した場合、少なくとも15%又は0.9単位のpHの低下であることを指す。
【0037】
適切な量でのGOSとポリフルクトースとの同時投与の別の有益な効果は、SCFAの組成が、GOS又はポリフルクトースを投与したときとは著しく異なることである。特に、ブチレートの相対量が著しく減少するのに対し、アセテートの相対量は著しく増加する。したがって組成物は、全SCFA量だけではなく相対的なSCFAの割合も変化させるのに使用することができる。TOS及びポリフルクトース(例えばイヌリン)を同時投与した乳児では、その相対的なSCFAレベルが、母乳保育の乳児に見出されるレベルにより類似しており、アセテート:プロピオネート:ブチレートの比が一般に約80〜85%:10〜15%:1〜5%であるのに対し、標準的な調合乳で保育した乳児では、その比が一般に約69〜74%:16〜19%:5〜6%である(実施例に示されるように)。したがって、本発明による組成物によって、特にアセテートの相対量が増加し、プロピオネート及びブチレートの相対量が減少する。GOS及びポリフルクトースの同時投与の結果、アセテート:プロピオネート:ブチレートの割合は、調合乳で保育した乳児の場合よりも母乳保育した乳児の場合に非常に厳密に類似する(高レベルのブチレート及びプロピオネートと比較的低レベルのアセテートを生成する)。相対的なSCFAの割合に及ぼす効果は、例えば実施例に記述されるようなインビボ研究又はインビトロ発酵系を使用した、投与後の様々な時点での便サンプルのガスクロマトグラフィなど、当技術分野で知られている方法によって測定することができる。「著しく修正されたSCFA組成物」又は「著しく増加した量のアセテート」は、GOS又はポリフルクトースを投与しない場合、或いはGOS又はポリフルクトースを個々に投与した場合よりも、少なくとも約4%、5%、10%、15%、又はそれ以上高いアセテートの量(全SCFAに対する%)を指す。プロピオネート及び/又はブチレートの相対量は、GOS又はポリフルクトースを投与しない場合、或いはGOS又はポリフルクトースを個々に投与した場合よりも低いことが好ましい。一実施形態では、本発明による組成物は、腸及び/又は便のアセテートを全SCFAの約85%よりも高く、例えば86%、87%、88%、90%、又はそれ以上増加させるのに適している。
【0038】
GOS及びポリフルクトースを同時投与したときに観察された、さらに別の有益な効果とは、GOSのみ又はポリフルクトースのみ投与したときに見られた分枝状SCFAの割合に比べ、分枝状SCFAが著しく減少することである。本明細書で使用する「分枝状SCFAの著しい減少」は、プレバイオティクスで保育されない乳児に見られる濃度に比べ、少なくとも70%減少すること、又は便内の割合が全SCFAの1.5%未満になることを指す。全SCFAに対する分枝状SCFAの割合は、分枝状SCFAの合計、即ちイソブレート及びイソバレレート及びバレレートを合わせた量を、全SCFAの合計、即ちアセテート及びプロピオネート及びブチレート及びイソブチレート及びイソバレレート及びバレレートなどを合わせた量で割ることによって、測定することができる。
【0039】
分枝状SCFAは有害であるので、分枝状SCFAの割合が減少することは、被験体の健康に有益である。これは、タンパク質の発酵によりpHが上昇し且つHSなどの有害な薬剤の形成を引き起こすため、望ましくないタンパク質の分解が少ないことを示している。
【0040】
ブチレートの著しい減少は、プレバイオティクスで保育されない乳児に見られる濃度と比べ、少なくとも50%減少することに関し、又は便内の割合が全SCFAの4%未満になる。一実施形態では、本発明による組成物は、腸内(及び/又は便の)ブチレート、イソブチレート、バレレート、及びイソバレレートの合計を全SCFAの7%よりも低く、例えば全SCFAの6.5%、6%、5%、4%又はそれ以下に減少させるのに適している。
【0041】
別の実施形態では、GOS及びポリフルクトースを含む組成物は、結腸内の発酵の長さを延ばすのに適している。特に細菌性発酵は、結腸の遠位部分でのSCFA生成によって示されるように、同時投与後の結腸の最も遠位にある部分でさらに活性になる。結腸の遠位部分は、GOSのみ又はポリフルクトースのみ含む組成物の投与の後、SCFAが全く生成されないかごくわずかしか生成されない。さらに、結腸の始まりでの速い発酵が、同時投与後に見られるが、これは抗病原効果に特に重要なことであり、母乳保育の乳児にも観察されることである。全体的にこれは、組成物が、被験体の結腸全体を通して比較的均一な発酵パターンを確立し且つ/又は維持するのに、また発酵及びSCFA生成を結腸の遠位部分にまで拡張するのに適していることを示している。したがって、SCFA及びおそらくその他の発酵産物、特にラクテートも、結腸全体を通して、また結腸の始部、中間部、及び終部で生成される。
【0042】
他の実施形態では、試験被験体及び対照被験体、即ちGOS単独又はポリフルクトース単独又はプレバイオティクスを含まない同等の基本的組成物を与えたものの便サンプルを分析することによって再び決定することができるように、GOS及びポリフルクトースの相乗的な量での同時投与を、ラクテート生成を著しく増加させるために使用することができる。「ラクテートの著しい増加」は、GOS又はポリフルクトースが投与されない被験体に比べ、GOS及びポリフルクトースを含む組成物を同時投与された被験体では少なくとも5%、10%、20%、又はさらに50%以上のラクテートが生成されることを指す。例えば、6g/lのTOS/イヌリン混合物(90%:10%)が補われた標準的な調合乳で保育された乳児は、16週目で約16%のラクテート(酸全体に対する%として)を生成するのに対し、標準的な調合乳で保育された乳児は約0.6%を生成し、母乳保育の乳児は約35%のラクテートを生成した。母乳保育の乳児により生成されたラクテートの量に一致しないが、標準的な調合乳にTOS及びイヌリン混合物を補うことにより、ラクテートの生成に著しい増加が生じた。実施例に見られるように、ラクテートは、予期しない有益な効果を発揮することがわかった。アセテートと同様に、プロスタグランジンE1及びプロスタグランジンE2の生成が増加し、その結果、上皮ムチン発現が高まった。腸粘膜は、伝染性病原体、アレルゲン、及び発癌物質に対するバリアとして働くので、ヒトの健康に重要な役割を演ずる。したがって、粘膜の発生及び/又は完全性にポジティブな影響を及ぼす組成物を使用して、新生児で健康な粘膜を構築するのを助けることができ、また哺乳瓶で保育された又は部分的に哺乳瓶で保育された乳児、及び適正に機能しない腸粘膜によりもたらされた又はそのような腸粘膜に関連した症状又は疾患に罹っている被験体で、健康な粘膜を確立するのを助けることができる。例えば、炎症性腸疾患(IBD、例えば大腸炎やクローン病など)や過敏性腸症候群(IBS)などの腸の問題を、治療し又は予防することができ、或いは病原体の粘膜への結合及び/又は進入を減少させることができ、或いは喘息発症などのその他の免疫学的問題を、予防し又は低減することができる。また、栄養不良、手術、化学療法などの結果もたらされる腸バリアの完全性の損失も、予防し又は低減することができる。
【0043】
さらに、自然発生的収縮及び腹部緊張は、D−又はL−ラクテート投与の後、用量依存的な手法で著しく低下した。したがって本発明による組成物は、腸内ラクテートレベルを増加させ、それによって腹痛や疝痛、腹部収縮、腹部緊張などの症状を治療し又は予防するのに使用することができる。
【0044】
ラクテートそのものは、これまで知られていない効果を発揮することがわかったので、本発明の目的は、上述の症状及び障害を治療し又は予防するのに使用することができる、ラクテートを適切な量で含む組成物を提供することでもある。一実施形態では、組成物は、ラクテートのみを適切な量で含み、一方別の実施形態では、本明細書で記述されるGOS及びポリフルクトース組成物は、腸内ラクテートレベルをさらに増加させるためにラクテートをさらに含む。本発明によるそのようなある組成物は、TOS及びイヌリンを相乗的に有効な量で含み、ラクテートを適切な量でさらに含む。一実施形態では、腸内及び/又は便のラクテートを、約10mmol/kg便よりも多く増加させるのに適した組成物が提供される。
【0045】
便サンプルの分析を指す場合、これは、実際のインビボ効果の間接的な測定と理解される。同様に、インビトロアッセイを実施することができ、細菌集団をインビトロ成長させ、適切な量の組成物を培養物に添加する。特に、実施例で記述されるインビトロ発酵系を使用することができる。
【0046】
したがって、GOS及びポリフルクトースを含む組成物の同時投与は、下記の生理学的効果の1種又は複数を実現するのに使用することができる:
−全SCFAの著しい増加
−pHの著しい低下
−著しく変性されたSCFA組成物
−分枝状SCFAの著しい減少
−生成されたSCFA 1モル当たりのガス生成の著しい減少
−結腸の最遠位部分での発酵も含む、より長くより均一な発酵、及び/又は
−結腸の最遠位部分でのSCFAの多量の初期形成及び/又は乳酸形成
−結腸の始部、中間部、及び終部でのSCFAの生成の促進
−乳酸(絶対及び/又は相対)の著しい増加、及び/又は
−形成された全乳酸の比としての、L−ラクテートの相対量の増加。
【0047】
好ましい実施形態では、GOS及びポリフルクトースの両方を含む組成物を使用した場合、GOS又はポリフルクトースのみを含み或いはGOSもポリフルクトースも含まない組成物を投与したときに比べ、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、又は全てのこれらの効果を著しく修正する。特に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は全てのこれらの効果は、GOS及びポリフルクトースを個々に投与した効果の合計よりも、GOS及びポリフルクトースを同時投与した(相乗的に有効な量)後に著しく大きい。
【0048】
したがって本発明による相乗的組成物は、相乗的に有効な量の投与の後、乳児の大腸で健康な微生物叢を構築及び/又は維持するのに特に適している。好ましい実施形態では、生後1週間以内に相乗的に有効な量のGOS及びポリフルクトースが補われた調合乳などの基本的組成物だけで、乳児を保育する。したがって好ましい組成物は、乳児用の規定食組成物である。別の実施形態では、乳児に本発明による組成物を部分的にのみ与える。一実施形態では、組成物は、ガス発生、鼓腸、大腸炎、腹部膨満、腹部痙攣、腹痛、IBS、IBD、アレルギーの1種又は複数から選択された症状を治療し又は予防するのに使用し、且つ/又は粘膜保護として使用する。したがってGOS及びポリフルクトースは、鼓腸、過剰なガス発生、大腸炎、腹部膨満、腹部痙攣、腹痛、IBS、IBD、アレルギー、低下した腸バリア機能の治療の際、及び/又は粘膜保護として、同時に、個別に、又は逐次に使用するための組成物又は組み合わせた組成物の調製に使用することができる。被験体は、この場合、乳児から子供、10代、成人にまで及ぶ任意の被験体でよい。GOS及びポリフルクトースが相乗的に有効な量で添加される基本的組成物は、被験体の年齢、投与形態、及び治療し又は予防される主な症状に応じて異なることが明らかである。例えば乳児の場合、基本的組成物は、液体又は粉末形態の乳児用調合乳又は乳児用調製乳が好ましいが、成人の場合は、栄養補給組成物(液体、半液体、又は固体)又はチューブ形態での食物摂取がより適切である可能性がある。
【0049】
好ましい実施形態では、GOS及びポリフルクトースは、形成された腸内SCFAの総量を著しく増加させ、且つ/又は腸内SCFA組成を著しく向上させ(特にSCFAの総量に対するアセテートのパーセンテージを著しく増加させ)、且つ/又はラクテートの生成を著しく増加させ、且つ/又は腸内pHを低下させ、且つ/又は腸内ガス発生を著しく減少させるのに適切な、相乗的に有効な量で同時投与する。
【0050】
疝痛及び/又は腹部痙攣、腹部膨満及び/又は鼓腸、腹痛、IBS、IBD、及び/又はアレルギーの治療及び/又は予防をするための、相乗的に有効な量のGOS及びポリフルクトースを含む組成物の使用が提供される。粘膜保護の増大、及び腸バリアの強化のための、そのような組成物の使用も提供される。必ずしも1つの組成物を指す必要はなく、GOS及びポリフルクトースは別個の組成物中に存在することができ、同時投与したときに相乗的に有効な量をもたらすものであることが理解される。
【0051】
SCFAレベル、プロフィル、及び腸内pHのこれらの変化により、組成物は、下記の下流の有益な効果の1つ又は複数を引き起こすことができる:
a)SCFA生成部位での腸浸透性が低下する。これは、疾患を予防し健康を維持するのに、特にアレルギーの発症を予防するのに重要である。GOS及びポリフルクトースの同時投与がより均一な発酵を引き起こし、発酵を結腸の遠位部分にまで拡張するという知見は、この点に関して重要であるが、それは結腸の遠位部分も含めた腸の浸透性を均等に低下させることができ、それによって腸を健康な状態で均等に維持できるからである。
b)腸の運動性又は蠕動運動が高まり、それによって、調合乳で保育される乳児で観察される一般的な問題である便秘を低減させ、又は予防する。
c)自然発生的な収縮及び結腸筋の緊張の量の低下により、痙攣が少なくなり、腹痛が少なくなる。
d)特に被験体が乳児である場合、被験体の骨鉱化及び骨発生に重要な、カルシウムイオン吸収が増加する。
e)疲労やうつ病、気分の変動などの健康悪化の2次症状を低下させることができる。
f)腸粘膜の粘液生成が著しく高くなり、それによって病原体の結合及びコロニー化に対する保護がもたらされる。特に、ラクテートのレベルは粘液生成に対して正に相関することがわかった。したがって本発明による組成物は、粘膜生成を刺激するのに使用することができる。
g)胆汁代謝は、母乳保育の乳児で観察されるレベル及び/又はパターンに変更することができる。
h)腸病原性微生物の成長は、結腸全体に沿って阻害される。
【0052】
したがって、相乗的に有効な量のGOS及びポリフルクトースを含む組成物は、上記生理学的効果の1つ又は複数を維持し又は確立するために(例えば新生児、未熟児、又は成熟児、或いは非又は一部母乳保育の乳児、或いは成人などのその他の被験体で)、また健康な大腸環境及び大腸の最適な活性を確実にし又は確立することによって、被験体の健康を維持し又は改善するために使用することができる。
【0053】
特に、疝痛及び/又は腹部痙攣、腹部膨満及び/又は鼓腸、腹痛、IBS、IBD、及び/又はアレルギー、腸病原性感染(例えば細菌、ウイルス、真菌)、下痢、湿疹、アレルギーによって誘発される喘息、及びその他のアトピー性疾患、及び/又は便秘などの疾患、障害、又は症状の発生率、持続時間、及び/又は重症度は、本発明による組成物の投与によって低下させ、無くし、又は予防することができる。本発明による組成物は、結腸の収縮、好ましくは相動的及び/又は緊張性収縮を緩和させるために使用してもよい。
【0054】
本発明による組成物
上述の使用に適した組成物は、ポリフルクトース及びGOSを相乗的に有効な量で含む。組成物は、GOS/ポリフルクトースを、3/97から97/3、好ましくは5/95から95/5、より好ましくは90/10から45/55に及ぶ比で含む。例えば10/90や20/80、30/70、40/60、50/50、55/45、60/40、70/30、80/20、85/15、90/10など、これら端点間の個々の比の全てが本明細書に包含される。
【0055】
(最適な)相乗効果を実現するのに必要とされる投薬量及びGOS/ポリフルクトースの比は、組成物のタイプと投与する方法及び頻度に応じて変えることができる。しかし2〜3の例を以下に示す。当業者なら、最良の生理学的効果を実現するのに各組成物の投薬量はどれだけ必要であるか、またどのGOS/ポリフルクトースの比が最も適切であるか、容易に決定することができる。例えば、主な目的が、GOS及びポリフルクトースを含む組成物の経口投与によってSCFAの全レベルを高めることである場合、当業者は、様々な組成物(GOS及びポリフルクトースを合わせたもの、GOS単独、ポリフルクトース単独を含む)を作製し、当技術分野で知られているインビボ又はインビトロ試験を使用して、高SCFAレベルを誘発する際のそれらの効率を比較することになる。「日用量」又は「1日当たりの投薬量」に言及するとき、これは、投薬量を被験体に一度に投与しなければならないことを示すものではないと理解される。
【0056】
相乗的に有効な量の乳児用調合乳は、例えば、約4g/l、5g/l、又はそれ以上のGOS及びポリフルクトース混合物を含む基本的組成物(例えば標準的な乳児用調合乳)であって、GOSとポリフルクトースとの比が本明細書の他の部分で述べたように変えることができるものからなるものでよい(例えば、90%GOS:10%ポリフルクトース)。
【0057】
ポリフルクトースは、例えば、レバン及び/又はイヌリンである。組成物に使用されるレバンやイヌリンなどのポリフルクトースは、天然源(植物又は細菌)から抽出することができ、或いは当技術分野で知られているデノボ合成によって又は組換えDNA技法によって作製することができる。イヌリンの抽出、サイズ分離、及び精製方法については、例えばDe Leenheer(1996)、US6569488及びUS5968365に記載されている。組換え生成方法は、例えばUS6559356に記載されている。合成は、一般に、スクロース分子及びフルクトシル転写酵素活性を有する酵素の使用を含む。組成物での使用に適するイヌリンも、既に市販されており、例えばRaftiline(登録商標)HP,Oraftiがある。
【0058】
植物イヌリンは、一般に、細菌性イヌリンよりも非常低い重合度を有する(細菌での100000までと比較した場合、150までである)。植物源には、キク科(Compositae)などの双子葉植物種が含まれる。主にその根、球根、他は塊茎で比較的大量のイヌリンを生成する種の例は、チコリ、アスパラガス、ダリア、キクイモ、ニンニクなどである(Kaur及びGupta, J.Biosci. 2002, 27, 703-714参照)。イヌリンは、好ましくはオリゴフルクトースを含むべきではないので、加水分解は避けるべきであり、或いは存在するオリゴフルクトース及び/又は単糖又は二糖を、使用前に除去すべきである。
【0059】
PDが少なくとも10、15、20、50、70、100、120、130、150、200、300、500、又はそれ以上のポリフルクトースが特に好ましい。レバンなどのポリフルクトースは、10以上のPDが維持される限り、長すぎる鎖に関連した粘度の問題が回避されるように加水分解することができる。
【0060】
レバンは、植物(例えば単子葉植物)や酵母、真菌、細菌などの天然源から得ることもでき、或いは化学的に又は組換えDNA技術を使用して作製することもできる。
【0061】
GOSは、植物(例えばチコリ、大豆)や細菌などの天然源から得ることができ、或いは当技術分野で知られるように、合成によって又は組換えDNA技術によって作製することができる。GOSは、β−ガラクト−オリゴ糖又はα−ガラクト−オリゴ糖、或いは両方の混合物でよい。特に、ガラクトース残基は、β(1−4)及びβ(1−6)グリコシド結合(トランスGOS又はTOS)により結合される。組成物での使用に適するGOSも、例えばVivinal(登録商標)GOS,Bouculo Domo Ingredients,Zwolle,オランダなどが、既に市販されている。GOSは、β−ガラクトシダーゼで酵素作用によりラクトースを処理することによって、又はポリグルカンからの加水分解によって、ラクトースから得ることもできる。好ましい実施形態では、TOSを使用する。一実施形態では、好ましいポリフルクトースがイヌリンHPであり、したがってTOSとイヌリンHPとの組合せも、本明細書では好ましい実施形態である。
【0062】
提供されるその他の組成物は、特に上述の使用のため、ラクテートを適切な量で含む組成物である。ラクテートの適切な量は様々でよく、例えば1日当たり1から30gに及ぶ可能性がある。
【0063】
本発明による組成物は、食品組成物、食品サプリメント組成物、又は医薬品組成物でよい。ポリフルクトース及びGOS(及び/又はラクテート)の他に、追加の成分を含むことができる。食品組成物又は食品サプリメント組成物の場合、その追加の成分は、食品グレードであり且つ生理学的に許容されるものであるべきである。「食品」は、追加の栄養摂取又は食品サプリメント組成物を必要としない液体、固体、又は半固体の栄養組成物、特に総合食品組成物(食品代用品)を指す。食品サプリメント組成物は、その他の手段による栄養摂取に完全に変わるものではない。食品及び食品サプリメント組成物は、好ましい実施形態では、経腸的に、好ましくは経口的に1日数回投与されることが好ましいベビーフード又は食品サプリメント、未熟児用の食品又は食品サプリメント、乳児用食品、幼児用食品などである。食品又は食品サプリメント組成物は、非又は一部母乳保育の乳児に特に適している。また組成物は、固形食への適応期間の乳児、又は母乳から哺乳瓶へと変化していく乳児に有利に投与される。また組成物は、人乳強化サプリメントの一部でもよい。
【0064】
一実施形態では、組成物は、例えば当技術分野で知られているように、特に欧州委員会が命令する91/321/EEC及びその改正案に記載されているような、乳児用調合乳又は乳児用調製乳であるが、有効量のポリフルクトース及びGOSを含むように改質することができる。乳児用調合乳又は乳児用調製乳は、ラクトース不耐性乳児用の場合、乳(牛乳、ヤギ乳など)、乳児用調合乳(IMF)、又は大豆をベースにすることができ、或いは、アレルギー又は吸収に関する問題を有する乳児用の場合、窒素源としてアミノ酸を含有することができる。したがって、市販されている乳児用調合乳又は乳児用調製乳は、乳タンパク質又は大豆タンパク質ベース、脂肪、ビタミン、消化性炭水化物、及びミネラルを、推奨される1日量で含み、粉末、液体濃縮物、又はすぐに与えられる状態の組成物を含むことができる。
【0065】
改質された乳児用調合乳又は乳児用調製乳の投与の結果、便のpH、細菌組成物、SCFAの生成及びプロフィル、ガス生成などの分析によって決定することができるように、母乳保育の乳児の場合と類似した大腸環境がもたらされる。組成物が飲料である場合、好ましくは1日に消費され又は投与される体積(1日有効用量を含む)が約100から1500mlであり、より好ましくは1日当たり約450から1000mlである。調合乳が固体である場合、好ましくは1日に消費され又は投与される量(1日有効量を含む)が約15から220g/日であり、好ましくは約70から150kg/日の調合乳粉末である。
【0066】
GOS及びポリフルクトースの1日有効量は、乳児の場合、約1から30g/日に及び、好ましくは約2から10g/日に及び、成人の場合は約5から約20g/日に及ぶ。
【0067】
本発明による食品又は食品サプリメント組成物は、ビタミン(A、B1、B2、B3、B5、B12、C、D、E、Kなど)やプロバイオティクス(例えばビフィドバクテリア、ラクトバシリなど)、その他のプレバイオティクス、繊維、ラクトフェリン、免疫グロブリン、ヌクレオチドなどのその他の活性成分をさらに含むことができる。タンパク質や脂質、及びその他の炭水化物(例えば消化性炭水化物、非消化性炭水化物、可溶性又は不溶性炭水化物)は、様々な量で存在させることができる。乳児用栄養食中に存在する典型的な不溶性の非消化性炭水化物は、大豆多糖、難消化性デンプン、セルロース、及びヘミセルロースである。乳児用栄養食に使用される典型的な可溶性の消化性炭水化物は、例えばマルトデキストリン、ラクトース、マルトース、グルコース、フルクトース、スクロース、及びその他の単糖又は二糖、或いはこれらの混合物である。組成物は、例えばグルコースやラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロース、又はセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムサッカリン、タルカム、炭酸マグネシウムなどの、その他の不活性成分及び担体を含んでもよい。組成物は、水、電解質、必須及び非必須アミノ酸、微量元素、ミネラル、繊維、甘味料、香料、着色剤、乳化剤、及び安定剤(大豆レシチン、クエン酸、モノ−又はジ−グリセリドのエステル)、保存剤、結合剤、芳香剤などを含んでもよい。
【0068】
特に乳児用食品又は食品サプリメント用の組成物に適した脂質は、乳脂肪、植物脂質、例えばキャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、オリーブ油、魚油など、或いは適切な脂肪酸(ポリ不飽和且つ/又は飽和)を含む画分又はこれらの混合物である。
【0069】
特に乳児用食品又は食品サプリメント用の組成物に適したタンパク質には、カゼイン、乳清、脱脂練乳、大豆、牛肉、コラーゲン、トウモロコシ、及びその他の植物タンパク質、又は加水分解したタンパク質、遊離アミノ酸などが含まれる。乳児用食品又は食品サプリメント組成物に含まれるタンパク質は、アレルギーのリスクを低下させるため、広範にわたって加水分解され且つ/又は一部加水分解すされることが好ましい。本発明による乳児用食品組成物は、ミネラルの推奨される1日量など、栄養的に有意な量で、毎日又は毎週の食事に不可欠な全てのビタミン及びミネラルを含むことが好ましい。
【0070】
食品又は食品サプリメント組成物は、一実施形態では、食品ベースを基にして(即ち食品ベースから開始して又は食品ベースを含めて)作製してもよい。例えば、ミルク、ヨーグルト、ヨーグルトをベースにした飲料、又はバターミルクを含むがこれらに限定することのない発酵乳製品などの乳製品を、基にすることができ又は含むことができる。そのような組成物は、有効量のポリフルクトース及びGOS又はTOSを適切な食品又は食品ベースに添加することによって、それ自体が知られている手法により調製することができる。適切なその他の食品ベースは、植物ベース、肉ベースなどでよい。
【0071】
本発明による食品又は食品サプリメント組成物は、治療として且つ/又は予防的に使用することができる。即ち、被験体の胃腸の問題又は疾患を診断した後に投与することができ、或いは、症状が出る前に投与することができる(例えば、胃腸の問題を引き起こし易いハイリスク患者に)。例えば、便秘や鼓腸、アレルギー、疝痛、腹痛、腹部痙攣、IBD、IBSなどの、大腸の疾患又は最適状態には及ばない機能に関連した症状が観察された場合、組成物の投与は、健康な大腸環境を再び確立し、又はそのような症状の発症を予防するのを助ける。
【0072】
一実施形態では、組成物は、健康な微生物叢及び/又は健康な大腸環境の発生を支持するために、予防的に投与される。「健康な大腸環境」とは、便の分析及びガス生成により決定することができるような、正常な腸の生理現象及び活性、特に栄養、水の正常な吸収、病原体の結合、コロニー化、及び感染などに対する粘膜の耐性を指す。特に、最適な生理現象及び活性を指す。大腸の任意の最適ではない機能により、記述される症状が生じ、便の分析及び/又はガス生成によって決定することができる。最適ではない機能による腸疾患又は障害を本明細書に含める。
【0073】
IBDや大腸炎、IBS、及び/又は増加したバリアの完全性などの腸障害又は最適ではない腸機能の症状を、治療し又は予防するための医薬品組成物は、薬物や生物活性タンパク質、又はペプチド、プロバイオティクス、及びその他のものなど、追加の生物活性成分を含むことができる。食品又は食品サプリメント組成物に関して記述される実施形態は、医薬品組成物にも適用される。
【0074】
本発明による組成物は、投与方法に応じて、液体や固体、半固体、錠剤、粉末などの任意の剤形にすることができる。被験体への投与は経口が好ましいが、いくつかの用途の場合、直腸又はチューブ供給(胃、十二指腸、或いは小腸又は大腸にチューブを直接進入させる)が適切である可能性がある。
【0075】
本発明の別の実施形態は、上述のように、相乗的に有効な量のGOS(又はTOS)及びポリフルクトースを適切な組成物ベースに添加することによって、本発明による組成物を製造するための方法を提供することである。
【0076】
以下の非限定的な実施例は、GOSとポリフルクトースとの相乗効果について述べている。他に特に指示しない限り、本発明の実施は、分子生物学、薬理学、免疫学、ウイルス学、微生物学、又は生化学の標準的な従来方法を用いることになる。そのような技法は、参照により全て本明細書に援用されるSambrook及びRussell(2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Volume 1及び2, Ausubel他(1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USA 及びRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa, 第17版,(1985), Microbiology: A Laboratory Manual(第6版), James Cappuccino, Laboratory Methods in Food Microbiology (第3版), W.Harrigan(Author) Academic Pressに記載されている。
【実施例1】
【0077】
インビトロ発酵研究は、発酵パターンに対する相乗効果を示す
1.1 材料及び方法
微生物
微生物を、哺乳瓶で保育した乳児の新鮮な便から得た。1から4月齢に及ぶ乳児からの新鮮な便物質を溜め、保存培地に2時間以内入れた。
【0078】
組成物/基質
基質として、プレバイオティクス(TOS;TOS(VivinalGOS,Borculo Domo Ingredients,オランダ)及びイヌリン(raftilinHP,Orafti,ベルギー)の9/1(w/w)の比の混合物;イヌリン;オリゴフルクトース及びイヌリンの1/1(w/w)の比の混合物、又は無し(ブランク))を使用した。
【0079】
培地
McBain&MacFarlane培地:緩衝ペプトン水3.0g/l、酵母抽出物2.5g/l、ムチン(刷子縁)0.8g/l、トリプトン3.0g/l、L−システイン−HCl 0.4g/l、胆汁酸塩0.05g/l、KHPO・3HO 2.6g/l、NaHCO0.2g/l、NaCl 4.5g/l、MgSO・7HO 0.5g/l、CaCl 0.228g/l、FeSO・7HO 0.005g/l。500mlのスコットボトルに培地を満たし、121℃で15分間滅菌した。
【0080】
緩衝培地:KHPO・3HO 2.6g/l、NaHCO0.2g/l、NaCl 4.5g/l、MgSO・7HO 0.5g/l、CaCl 0.228g/l、FeSO・7HO 0.005g/l。pHを、KHPO又はNaHCOを用いて6.3±0.1に調節した。500mlのスコットボトルに培地を満たし、121℃で15分間滅菌した。
【0081】
保存培地:緩衝ペプトン20.0g/l、L−システイン−HCl 0.5g/l、チオグリコール酸ナトリウム0.5g/l、1リットル当たりレサズリン錠剤を1個。pHを、1M NaOH又はHClを用いて6.7±0.1に調節した。培地をマイクロ波で沸騰させた。30mlの血清ボトルに25mlの培地を満たし、121℃で15分間滅菌した。
【0082】
新鮮な便を保存培地と混合した。新鮮な便は、4℃で数時間、この形で保存することができる。
【0083】
便懸濁液:便の保存溶液を、13000rpmで15分間、遠心分離にかけた。上澄みを除去し、便を、McBain&MacFarlane培地と1:5の重量比で混合した。
【0084】
発酵
便懸濁液3.0mlを、ボトル内で、85mgのグルコース又はプレバイオティクと合わせ又は何も添加せず(ブランク)、完全に混合した。t=0サンプルを引き出した(0.5ml)。得られた懸濁液2.5mlを、緩衝培地60mlで満たされた60mlのボトル内で、透析チューブ内に引き込んだボトルを十分に閉じ、37℃でインキュベートした。サンプルを、3、24、及び48時間後に皮下注射器で透析チューブから(0.2ml)又は透析緩衝液(1.0ml)から得て、即座に氷上に置いて発酵を停止させた。
【0085】
短鎖脂肪酸及びラクテートの決定
実施例2を参照されたい。値は、ブランクに対して補正した。
【0086】
ガスの決定
t=3、t=24、及びt=48で、ボトルのゴムキャップに皮下6ml注射器を刺し、ガス圧が0バールになるまでこの注射器によりヘッドスペースからガスを引き出すことによって、60mlボトルのヘッドスペース内のガス圧をガス圧メータ(Druckmessumformer,Econtronic,ドイツ)により測定した。注射器内の体積は、形成されたガスの体積であった。値をブランクに対して補正した。
【0087】
1.2 結果
インビトロ発酵を、下記のサンプルを使用して実施した:
1.) 8.5mgのTOS(VivinalGOS,Borculo Domo Ingredients社製,オランダ)
2.) 85mgのイヌリン(RaftilinHP,Orafti社製,ベルギー)
3.) 85mgのTOS/イヌリンであって、そのTOS/イヌリンの比が9/1(w/w)であるもの、及び
4.) 85mgのOF(raftiloseP95,Orafti社製,ベルギー)/イヌリン(raftilinHP)であって、OF/イヌリンの比が1/1(w/w)であるもの。
【0088】
生成されたSCFAの総量
結果を図1に示す。図1は、TOS/イヌリンの混合物が、単一成分の場合よりも繊維1g当たり著しく高い量のSCFAをもたらしたが、同様にオリゴフルクトース(OF)及びイヌリンの混合物の場合よりも高いことを示している。また、比が1/1である85mgのTOS/イヌリンについても試験をしたが(データは図示せず)、やはり相乗効果が示された。
【0089】
L−及びD−ラクテートの生成
L−及びD−ラクテートは、t=3でのみ決定することができた。表1は、その時点で形成された代謝最終産物を示す。
【0090】
【表1】

【0091】
やはり、単一成分のTOS及びイヌリンと比べた場合、相乗的により高いラクテートの形成が、混合物であるTOS/イヌリンの場合に観察される。OF及びイヌリンとの混合物と比べた場合、ラクテートのパーセンテージ(酸全体に対して)及びL−/D−ラクテートの比は、TOS/イヌリン混合物の場合のほうが高い。
【0092】
SCFAの相対量
図2は、48時間後の発酵産物のパターンを示す。TOS/イヌリンの混合物は、単一成分の場合よりも著しく高い酢酸パーセンテージを示しており、これはオリゴフルクトース(OF)及びイヌリンの混合物の場合よりも高い。母乳保育の乳児の便は、高い酢酸パーセンテージを示しており、したがってTOS/イヌリンの混合物は、母乳保育の乳児の場合に最も類似している発酵産物パターンをもたらす。
【0093】
ガス発生
結果を図3に示す。ガスの発生に関し、TOSとTOS/イヌリン混合物とは、形成されたSCFA 1mmol当たり最も低い量のガスを形成する。イヌリンとOF/イヌリン混合物とは、さらに多量のガス発生を示す。SCFA 1mmol当たりで発生されたガスの量は、TOS/イヌリン混合物で最も低い。
【0094】
SCFA形成の動態
表2は、SCFA形成の動態を示す。TOS/イヌリンの組合せは、24時間から48時間の間で多量のSCFAを形成することが依然として示され、これは、結腸の遠位部分で依然としてSCFAが形成され、結腸浸透性、粘膜形成、及び抗病原体効果などに対して有益な効果を発揮することを示している。また最初の3時間で、人乳オリゴ糖の場合のように(データは図示せず)最も多い量のSCFAが形成される。結腸の始まりでの素早い発酵は、抗病原体効果のため重要なものである。
【0095】
【表2】

【実施例2】
【0096】
TOS/イヌリンに関する臨床研究:アセテートの相対的な増加及びブチレートの相対的な減少は、ビフィドバクテリアの増加に相関していない。TOS及びイヌリンは相乗効果を発揮する
2.1 材料及び方法
それぞれの妊娠期間の最後の3カ月にある、母乳保育を決めた63名の妊婦と母乳保育を選択しない57名を募集した。出生時の体重が正常であり、先天的異常、先天的疾患、又は胃腸疾患のない乳児を、分娩後3日以内に登録した。研究は、医療センター(St.Radboud,Nijmegen,オランダ)の倫理委員会によって承認された。文書にされたインフォームドコンセントを、研究への登録前に両親から得た。
【0097】
母乳保育しないことを決めた母親の乳児を、無作為に且つ二重盲検的に2つの調合乳グループ(OSF、SF)の一方に割り当てた。標準的な調合乳のグループ(SF;n=19)には、通常の非サプリメントの乳児用調合乳を与えた(Nutrilon I,Nutricia社製,オランダ)。標準希釈131g/lでの標準的な調合乳の主な組成データを表3に示す。プレバイオティク調合乳のグループ(OSF;n=19)には、6g/lのトランスガラクト−オリゴ糖(TOS;Vivinal GOS,Borculo Domo Ingredients社製,Zwolle,オランダ)及びイヌリン(PF;RaftilineHP,Orafti活性食品成分(active food ingredient),Tienen,ベルギー)の混合物が補われた同様の標準的な乳児用調合乳を与えた。混合物は、90%TOS及び10%イヌリン(ポリフルクトース)を含んでいた。研究用調合乳を、研究期間中に任意に与えた。母乳保育を決めた母親には、研究の過程で母乳を与え続けるよう奨励し、必要に応じて授乳コンサルタントが支援した。母乳保育の終わりに、それぞれの乳児に2種の調合乳の一方を与えた。それぞれの訪問中に未使用の調合乳の缶の数を数え、消費した調合乳の量と記録された食物摂取とを比較することによって、コンプライアンスの評価をした。
【0098】
【表3】

【0099】
アンケート
母親の人口学的、臨床的、及び人体測定学的データを、分娩前に収集した。分娩に関する情報を、分娩後5日目に母親から得た。乳児の食物摂取、調合乳耐性、便の特徴、健康及び人体測定学的な情報を、出産後5日、10日、28日、及びその後は4週間ごとに1度、研究が終了するまでのアンケートから得た。
【0100】
便サンプル
両親に、その乳児から、出生後5日目、10日目、28日目、及びその後は4週ごとに1回、便のサンプルを採取するよう依頼した。サンプルは、両親が排便後にできる限り早くおむつから採取し、便容器(Greiner Labortechnik社製,オランダ)に収集し、即座に−20℃で貯蔵し、調査員が持ち運び用フリーザに入れて実験室に輸送した。
【0101】
便サンプルの調製
SCFAの決定のため、サンプル1gを、MilliQ中に10×希釈した氷水中で解凍し、ストマッカー(IUL Instruments社製,Barcelona,スペイン)を使用して10分間均質化した。350μlの均質化した便を、200μlの5%(v/v)ギ酸、100μlの1.25g/l 2−エチル酪酸(Sigma-Aldrich社製,Zwijndrecht,オランダ)、及び350μlのMilliQと混合した。サンプルを、14000rpmで5分間遠心分離にかけて、大きい粒子を除去し、上澄みを−20℃で貯蔵した。FISH分析及び乳酸測定のため、サンプルを氷水中で解凍し、リン酸緩衝生理食塩液pH7.4(PBS)中に10×(w/v)希釈し、ストマッカーを使用して10分間均質化した。均質化した便を、−20℃で貯蔵した。
【0102】
蛍光in situハイブリダイゼーション
FISH分析を、多少変更した状態で記述されるように(Langendijk他, 1995, Appl. Environ. Microbiol. 61:3069-3075)実施した。パラホルムアルデヒド固定サンプルを、ゼラチンで被覆したスライドガラス(PTFE被覆8−ウェル[1cm/ウェル]オブジェクトスライド,CBN labsuppliers社製,Drachten,オランダ)に塗布し、空気乾燥した。乾燥したサンプルを、96%エタノール中で10分間脱水した。ハイブリダイゼーション緩衝液(20mm Tris−HCl、0.9M NaCl、0.1%SDS[pH7.1])を、10ng/lのCy3標識したビフィドバクテリウム特異的プローブBifl64mod(5'-CAT CCG GYA TTA CCA CCC)と共に予熱し、乾燥サンプルに添加した。Bif 164 modは、プローブS-G-Bif-a-0164-a-A-18(Langendijik他, 1995, Appl.Environ.Microbiol. 61:3069-3075)の修正版である。スライドを、暗く湿気のあるチャンバ内で、50℃で一晩インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、スライドを50mlの予熱した洗浄緩衝液(20mM Tris−HCl、0.9M NaCl[pH7.2])中で30分間洗浄し、MilliQ中で簡単に濯いだ。全ての細菌を染色するため、サンプルを、PBS中に溶かした0.25ng/lの4’、6’−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)と共に、室温で5分間インキュベートした。DAPI染色後、スライドをMilliQ中で簡単に濯ぎ、乾燥し、Vectashield(Vector Laboratories社製,Burlingame,CA,米国)に装着し、カバースリップで覆った。スライドを、自動画像分析ソフトウェア(Analysis 3.2,Soft Imaging Systems社製,Munster,ドイツ)を搭載したOlympus AX70 エピ蛍光顕微鏡を使用して、自動的に分析した。サンプル当たりのビフィドバクテリウムのパーセンテージは、25カ所の無作為に選択された顕微鏡的位置を分析することによって決定した。各位置で、DAPIフィルターセット(SP 100,Chroma Technology社製,Brattleboro,米国)を用いて全ての細胞を数え、Cy3フィルターセット(41007,Chroma Technology社製.Brattleboro,米国)を使用して全てのビフィドバクテリアを数えることにより、ビフィドバクテリアのパーセンテージを決定した。
【0103】
短鎖脂肪酸の分析
短鎖脂肪酸(SCFA)、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、及びn−吉草酸を、水素炎イオン化検出器を備えたVarian 3800ガスクロマトグラフィ(GC)(Varian社製,Walnut Creek,米国)により定量的に決定した。サンプル0.5μlを、担体ガスとしてヘリウムを使用して(3.0psi)、カラム(Stabilwax,15×0.53mm,膜厚1.00μm,Restek社製,米国)内に80℃で注入した。サンプル注入後、炉を16℃/分の速度で160℃に加熱し、その後、20℃/分の速度で220℃に加熱し、最後に1.5分間、220℃の温度で維持した。インジェクタ及び検出器の温度は200℃であった。2−エチル酪酸を、内部標準物質として使用した。
【0104】
ラクテート分析
均質化した便を氷上で解凍し、14000rmpで5分間遠心分離にかけ、100μlの上澄みを100℃で10分間加熱して、全ての酵素を不活性化した。ラクテートは、D−及びL−ラクテート−デヒドロゲナーゼを含むL−乳酸検出キットを使用して(Boehringer Mannheim社製,Mannheim,ドイツ)、酵素作用により決定した。ラクテートは、十分大量の便サンプルでのみ決定した。
【0105】
pH分析
−20℃で貯蔵した後、便サンプルを解凍し、Inlab 423 pH電極(Mettler-Toledo社製,Coulumbo,米国)を備えたHandylab pHメータ(Scott Glas社製,Mainz,ドイツ)を使用して、便のpHを室温で直接測定した。
【0106】
データ分析
研究の前、パワー計算は、介入調合乳グループと標準調合乳グループとの間でのビフィドバクテリアのパーセンテージの差が30%であり、このときSDが25%であることを検出するために、1グループ当たり13名の乳児が含まれるべきであることを示していた。調合乳グループで予測された30%の低下が理由で、計算よりも多くの乳児を研究に含めた。統計パッケージSPSS(バージョン11/0)を使用して、結果の統計分析を行った。全ての値について、正規分布プロットの目視検査によりその正規性をチェックした。これらグループ間でのビフィドバクテリアのパーセンテージ、pH、SCFAの相対量、及びラクテートの差を、分散分析を使用して有意性に関して試験した。有意差である場合(P<0.05)、ボンフェローニ事後試験を使用してこれらの群を比較した。母乳保育及び哺乳瓶保育を二重盲検的に割り当てること、及び十分な無作為化を確実にすることは可能ではないので、母乳保育グループと調合乳保育グループとを比較する統計分析は行われていなかった。母乳保育グループからのデータは、乳児がその時点で母乳だけで保育されている場合にのみ与えられる。
【0107】
2.2 結果
合計で、120名(−プログループ)の乳児が含まれた。57名の乳児は、生後すぐに調合乳保育を開始し、調合乳グループの間で均等に分けた。生後すぐに母乳で保育された63名の乳児のうち、24名については16週齢になる前に調合乳保育に切り替え、5名は離脱した。研究被験体の特徴を、表4に示す。調合乳グループの中で、9名の乳児が、出生から16週以内で研究から離脱した(SFで4名、OSFグループで5名)。離脱の理由には、疝痛、牛乳アレルギーの疑い、便秘、及び実施上の問題が含まれていた。
【0108】
【表4】

【0109】
便ビフィドバクテリア
保育グループの、5日齢、10日齢、4、8、12、及び16週齢における便のビフィドバクテリアのパーセンテージを表5に示し、量を表5に示す。OSFグループは、全ての生後経過時間での合計細菌数から、SFグループよりも高いビフィドバクテリア%を有する傾向があるが、その差は、統計上異なるものではなかった。意外なことに、母乳保育の乳児でのビフィドバクテリアのパーセンテージも比較的低く、調合乳保育グループに準じていた。
【0110】
予備データは、BF及びOSFグループでのラクトバシリの増加も示すが、便細菌叢中のラクトバシリの量はビフィドバクテリアよりも少なくとも1桁少なく、パターン全体はごくわずかしか変化しない。
【0111】
pH結果
調合乳保育乳児の便に関して測定されたpH値を、表6に示す。最低のpHは、母乳で保育した乳児に見られた。OSF調合乳で保育した乳児の便の、便pHは、SFグループよりも低かった(p<0.045、5日齢を除く全ての生後経過時間)。
【0112】
SCFA結果
便中のSCFAの総量を、以下の表5に示す。
【0113】
全SCFAからの異なるSCFAのパーセンテージを、表6に示す。調合乳グループ間での全SCFA濃度に見出される統計的有意差はない。また、SCFAの量は、その他の保育グループの場合と同等である。しかし、早くも10日が過ぎると、標準調合乳で保育した乳児と比べたときに、OSF又は母乳で保育した乳児との間でSCFAプロフィルの差を見ることができる。GOS及びポリフルクトースを含有する調合乳で保育された乳児、及び母乳で保育された乳児は、標準調合乳で保育した乳児と比べた場合、より高いパーセンテージのアセテート、及びより低いパーセンテージのプロピオネート、ブチレート、iC4−6 SCFAを有する。
【0114】
ラクテート結果
全てのグループのラクテート濃度(mmol/kg便)を、表5に示す。早くも5日齢から、OS調合乳(図示せず)及び母乳グループは、標準調合乳グループと比べた場合により高い量のラクテートを有する。ラクテートの相対量(SCFA及びラクテートの合計に対するパーセンテージとして)は、母乳保育の乳児で最も高く、標準調合乳保育の乳児で最も低い。TOS/イヌリンを含有する調合乳で保育された乳児は、中間的な相対量のアセテートを有する。16週齢のOSF保育の乳児におけるラクテートのパーセンテージ(酸全体に対して)は、SFの乳児の場合と著しく異なっている。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】


P<0.05 SFとの比較;SF=標準的な調合乳、OSF=GOS+イヌリンが補われたSF;BF=母乳。
【0117】
上記事項は、このGOSとポリフルクトースとの組合せで保育された乳児の便において、pHが低下すること、より多くのラクテートが形成されること、母乳保育の乳児によく似ている酸(アセテート及びラクテート)パターンが形成されること、及びこの効果は、ビフィドバクテリアの定量的増加が原因であるとすることができないことを実証している。
【実施例3】
【0118】
Muc−2、PGE1、及びPGE2発現に対するラクテート及びSCFA混合物の有益な効果
3.1 材料及び方法
ラクテート及びSCFA混合物の効果を、以下の変更点、即ちラクテート及びアセテート/プロピオネート/ブチレート(90/5/5)混合物について試験をしたこと以外、Willemsen, LEM, Koetsier MA, van Deventer SJH, van Tol EAF (2003), Gut 52:1442-1447に記載される通りに分析した。粘液生成実験では、CCD18及びT83細胞の同時培養を使用したのに対し、PGE1及びPGE2生成実験では、CCD18の単一培養を使用した。
【0119】
3.2 結果
90/5/5(アセテート/プロピオネート/ブチレート)の混合物中のSCFAとL−ラクテートの用量は、図4Aに見られるように、CCD18とT84細胞の同時培養中で、MUC−2発現を依存的に誘発した。またPGE1及びPGE2の濃度は、図4Bに見られるように、CCD18細胞で増加する。添加された有機酸がより高い濃度であるとき、その増加は統計的に有意なものになる。
【実施例4】
【0120】
ラクテートが結腸収縮に及ぼす影響
4.1 材料及び方法
オスのウィスターラット(CKP/Harlan,Wageningen/Horst,オランダ)を、制御された温度及び光サイクルの条件下で収容し、食物ペレット及び水に自由に触れることができるようにした。動物に、NO、O、及びイソフルランの混合物で麻酔をかけ、腹部を切開し、結腸をすぐに取り出した。組織を、クレブス−ヘンゼライト緩衝液pH7.4(組成(単位mM):118.0 NaCl、4.75 KCl、1.18 MgSO、2.5 CaCl、10 グルコース、1.17 KHPO、及び24.9 NaHCO)に入れた。
【0121】
結腸を遠位部分と近位部分とに切断し、クレブス−ヘンゼライト緩衝液で濯ぎ、それと同時に内容物の便を静かに搾り出した。可能な限りインビボ状態に近付けるため、95%O−5%COを連続通気したクレブス−ヘンゼライト緩衝液が入っている20mlウォータジャケット(37℃)器官浴(Schuler,HSE社製,ドイツ)内の、等力トランスデューサ(F30型372,HSE社製,ドイツ)に、1cmの完全に無傷な切片を長手方向に結合した。切片を徐々に延ばして静止張力1gにし、断続的に洗浄しながら45分間平衡にした。静止時及び種々の刺激に対する応答時の切片の張力を、トランスデューサ増幅器モジュール(HSE社製,ドイツ)により増幅し、マルチペンレコーダ(Rikadenki,HSE社製,ドイツ)で記録した。
【0122】
切片を、40mM KClと共に5分間インキュベートし、収縮応答を測定した。KClは、5分間隔で3回続けて洗浄することにより、洗い流した。次いで切片を、アセテート又はL−乳酸ナトリウムの濃度を100mMまで上昇させながらインキュベートした。酸溶液は、蒸留水で新たに調製した。NaOHをアセテートに添加して、中性pHを得た。脂肪酸とのインキュベーションの終了時、40mM KClを添加して、KClに対する収縮応答が脂肪酸の影響を受けるか否か決定した。新たなインキュベーションの前に、断続的に洗浄しながら、切片を新鮮なクレブス−ヘンゼライト緩衝液中で45分間平衡にした。
【0123】
実験プロトコルは、結腸の2つの近位切片及び2つの遠位切片からなるものであった。データ分析(n=3)のため、刺激によって誘発される収縮レベルを、5分間のインキュベーション後の張力(g)と定義した。同一切片(近位又は遠位)から得られたデータを使用して、平均値を計算し、各切片は、それ自体の対照サンプルとしての働きをした。
【0124】
4.2 結果
図5からわかるように、酢酸ナトリウム、及び特にL−乳酸ナトリウムは、緊張性収縮の張力を低下させる。緩和効果は、結腸の近位部分におけるよりも、結腸の遠位部分でのほうが高い。
【0125】
また、自然発生的な収縮、相動性収縮の回数は、酢酸ナトリウム及びL−乳酸ナトリウムを添加したときに結腸の近位部分で減少し、一方、結腸の遠位部分では何の効果も観察されない。
【0126】
しかし結腸の近位部分では、KClに対する応答としての緊張性収縮が、25mMの酢酸ナトリウム又はL−乳酸ナトリウムが存在する場合又は存在しない場合で同等である。より高い濃度では、KClを添加した後であっても、著しい緩和が観察される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】乳児から得られた新鮮な便によって、TOS、イヌリン、TOS/イヌリンの9/1混合物、オリゴフルクトース及びイヌリンの1/1混合物を48時間インビトロ発酵させた後の、アセテート、プロピオネート、及びブチレートの形成を示す図である。
【図2】乳児から得られた新鮮な便によって、TOS、イヌリン、TOS/イヌリンの9/1混合物、オリゴフルクトース及びイヌリンの1/1混合物を48時間インビトロ発酵させた後の、アセテート、プロピオネート、及びブチレートの相対量を示す図である。形成されたアセテート及びプロピオネート及びブチレートの合計は、試験される繊維ごとに100%に設定した。
【図3】乳児から得られた新鮮な便によって、TOS、イヌリン、TOS/イヌリンの9/1混合物、オリゴフルクトース及びイヌリンの1/1混合物を48時間インビトロ発酵させた後の、ガスの形成を示す図である。形成されたガスの量(ml)は、形成された全SCFA量(繊維1g当たりのmmol数)に関連していた。
【図4】SCFAの混合物(モルベースで90/5/5の比のアセテート/プリピオネート/ブチレート)及びL−ラクテートの効果を示す図である。図4Aは、0、0.1、0.5、1、及び4mMのSCFA混合物又はL−ラクテートが、CCD18/T84の同時培養(n=6)におけるmuc−2発現に及ぼす影響を示す図である。誤差棒はSEMを示す。1及び4mMのSCFA混合物と0.5、1、及び4mMのL−ラクテートの増加は、著しく有意である。図4Bは、0、50、100、250、及び500μMのSCFA混合物又はL−ラクテートが、CCD18細胞(n=6)における自然発生なPGE1及びPGE2応答に及ぼす影響を示す図である。誤差棒はSEMを示す。100、250、及び500μMのSCFA混合物と、100μLのL−ラクテートにおけるPEG1の増加は、著しく有意である。100、250、及び500μMのSCFA混合物と、250μLのL−ラクテートにおけるPEG2の増加は、著しく有意である(P<0.05)。
【図5】酢酸ナトリウム及びL−乳酸ナトリウムが、結腸の遠位部分及び近位部分での自発的収縮に及ぼす影響を示す。ブランク(緊張度を1gに設定)0%である。40mM KClを添加した後の緊張度を、100%に設定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹部膨満、ガス発生、腹痛、及び/又は鼓腸を治療し又は予防する組成物を製造するための、ガラクト−オリゴ糖及びポリフルクトースの使用。
【請求項2】
ガラクト−オリゴ糖:ポリフルクトースの量が、5:95から95:5の比を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ガラクト−オリゴ糖:ポリフルクトースの量が、90:10から45:55の比を有する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ガラクト−オリゴ糖がトランスガラクト−オリゴ糖であり、及び/又はポリフルクトースがイヌリンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリフルクトースが、平均重合度20以上のイヌリンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
組成物が、食品組成物又は食品サプリメント組成物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
組成物が、乳児用栄養食である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
乳児用栄養食が、乳児用調合乳又は乳児用調製乳である、請求項7に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−87133(P2012−87133A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254992(P2011−254992)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【分割の表示】特願2007−527072(P2007−527072)の分割
【原出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】