GPCおよびSEC−MALSによる結合体化糖の寸法分析
【課題】結合体化糖抗原について、特に髄膜炎菌の糖の結合体について、分子サイズ、分子量および関連のパラメータを測定するための新規かつ改善された方法の提供。
【解決手段】多重角光散乱光度法(SEC−MALS)による検出を有するGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)およびサイズ除去クロマトグラフィーを使用して、糖結合体の分子サイズおよび分子量のそれぞれを正確に測定し得る。本発明は、(a)サンプル内の結合体化糖抗原の分子サイズを測定するためのプロセスであって、GPCによりサンプルを分析する工程を包含するプロセス、および(b)サンプル内の結合体化糖抗原の分子量を測定するためのプロセスであって、SEC−MALSによってサンプルを分析する工程を包含するプロセス、を提供する。
【解決手段】多重角光散乱光度法(SEC−MALS)による検出を有するGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)およびサイズ除去クロマトグラフィーを使用して、糖結合体の分子サイズおよび分子量のそれぞれを正確に測定し得る。本発明は、(a)サンプル内の結合体化糖抗原の分子サイズを測定するためのプロセスであって、GPCによりサンプルを分析する工程を包含するプロセス、および(b)サンプル内の結合体化糖抗原の分子量を測定するためのプロセスであって、SEC−MALSによってサンプルを分析する工程を包含するプロセス、を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載される全ての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチンの分析および品質管理の分野にあり、このワクチンとしてはキャリアと結合体化した細菌の莢膜糖が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
キャリアタンパク質と結合体化した莢膜糖抗原を含む免疫原は、当該分野で周知である。結合体化は、T細胞非依存性抗原をT細胞依存性抗原へと変換し、これによって記憶応答を増強させ、そして保護免疫を展開させることを可能にし、そしてプロトタイプの結合体化ワクチンは、Haemophilus influenzae b型(Hib)に対するものであった[例えば、参考文献1(非特許文献1)の第14章を参照のこと]。Hibワクチン以降、Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)およびStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)に対して保護するための結合体化糖ワクチンが開発されている。ワクチンを結合体化する他の生物体は、Streptococcus agalactiae(群Bの連鎖球菌属)[2](非特許文献2)、Pseudomonas aeruginosa[3](非特許文献3)、およびStaphylococcus aureus[4](非特許文献4)が有益である。
【0004】
全長の莢膜糖を使用するのではなく、加水分解工程後の所望のサイズのオリゴ糖フラグメントを選択することが可能であり[例えば、参考文献5(非特許文献5)]、そして中程度の鎖長のオリゴ糖を用いた結合体が、向上した免疫誘発[例えば、参考文献6および7](非特許文献6および7)を提供することが報告されている。ヒトへの使用を承認されている、3つのN.meningitidis血清型C結合体化ワクチンのうち、MenjugateTM[8](非特許文献8)およびMeningitecTMは、オリゴ糖に基づき、NeisVac−CTMは全長の多糖を使用する。
【0005】
結合体がワクチン中に含まれる場合、製造および発売のための品質管理は一般にその結合体が規定の分子サイズおよび/または分子量を有すること、またこれらのパラメータがバッチ間で一貫していることを必要とする。分子サイズおよび分子量は、また、ワクチンの安定性をモニタリングするために使用され得る。なぜなら、結合体は時間の経過につれて凝集し得、サイズおよび分子量の増加を生じ得るからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Vaccines(Plotkinら、編)第4版、ISBN:0721696880.
【非特許文献2】Bakerら、J Infect Dis(2003)188:66−73
【非特許文献3】Theilackerら、Infect Immun(2003)71:3875−84
【非特許文献4】Anonymous Drugs RD(2003)4:383−5
【非特許文献5】Ravenscroftら、Vaccine(1999)17:2802−2816
【非特許文献6】Paolettiら、J Clin Invest(1992)89:203−9
【非特許文献7】Andersonら、J lmmunol(1986)137:1181−6
【非特許文献8】Jones、Curr Opin Investig Drugs(2001)2:47−49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結合体化糖抗原について、特に髄膜炎菌の糖の結合体について、分子サイズ、分子量および関連のパラメータを測定するための新規かつ改善された方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
本発明者らは、ゲル透過クロマトグラフィーおよびSEC−MALS(重角光散乱光度法による検出を備えたサイズ排除クロマトグラフィー)を使用して、糖結合体の分子サイズおよび分子量をそれぞれ正確かつ信頼性高く測定し得ることを発見した。
【0009】
従って、本発明は、サンプル内の結合体化糖抗原の分子サイズを測定するためのプロセスを提供し、このプロセスはゲル透過クロマトグラフィーによりサンプルを分析する工程を包含する。クロマトグラフィー分析の保持時間は、例えば、検量線との比較によって、粘度半径(viscosity radius(Rη))に変換され、これによって分子サイズの単純な計算を可能にする。サンプル中の結合体の平均分子サイズおよび/または分子サイズ分布は、この方法で容易に決定され得る。
【0010】
本発明はまた、サンプル内の結合体化糖抗原の分子量を測定するためのプロセスを提供し、このプロセスはSEC−MALSによってサンプルを分析する工程を包含する。このSEC保持時間が、分子量へと変換され得る。サンプル中の結合体の平均分子量および/または分子量分布(多分散性)は、この方法で容易に決定され得る。参考文献9は、SEC−MALSが以前に、結合体化前の骨髄球菌の糖および結合体化前の連鎖球菌の糖の測定に使用されたことを報告するが、結合体後のデータは報告されていない。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
サンプル内の結合体化糖抗原の分子サイズを測定するためのプロセスであって、ゲル透過クロマトグラフィーによりサンプルを分析する工程を包含する、プロセス。
(項目2)
サンプル内の結合体化糖抗原の分子量を測定するためのプロセスであって、SEC−MALSによってサンプルを分析する工程を包含する、プロセス。
(項目3)
前記糖が細菌の莢膜糖である、項目1または2に記載のプロセス。
(項目4)
前記莢膜糖が、Neisseria meningitidisの血清型A、C、W135、またはYに由来する、項目3に記載のプロセス。
(項目5)
前記糖がオリゴ糖である、項目4に記載のプロセス。
(項目6)
前記結合体がタンパク質キャリアを有する、項目1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目7)
前記タンパク質キャリアがCRM197またはジフテリア毒素である、項目6に記載のプロセス。
(項目8)
血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが57.1ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が88.5kDa±20%である、組成物。
(項目9)
血清型CのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが57.0ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が85.2kDa±20%である、組成物。
(項目10)
血清型W135のN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが68.7ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が110.1kDa±20%である、組成物。
(項目11)
血清型YのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが63.3ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が84.7kDa±20%である、組成物。
(項目12)
項目8〜11に記載される前記結合体のうちの2つ以上を含む、組成物。
(項目13)
2つのバッチのワクチンであって、ここで:
(a)両方のバッチのワクチンは:
(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
を含み;
(b)第一バッチの血清型Aの糖の分子サイズがA1であり、第二バッチの血清型Aの糖の分子サイズがA2であり;
(c)該第一バッチの血清型Cの糖の分子サイズがC1であり、該第二バッチの血清型Cの糖は分子サイズがC2であり;
(d)該第一バッチの血清型W135の糖の分子サイズがW1であり、該第二バッチの血清型W135の糖は分子サイズがW2であり;
(e)該第一バッチの血清型Yの糖の分子サイズがY1であり、該第二バッチの血清型Yの糖は分子サイズがY2であり;
(f)A1/A2の比率、C1/C2の比率、W1/W2の比率、およびY1/Y1の比率が各々、0.90〜1.10の間である、
ワクチン。
(項目14)
2つのバッチのワクチンであって、ここで:
(a)両方のバッチのワクチンは:
(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
を含み;
(b)第一バッチの血清型Aの糖の分子量がA1であり、第二バッチの血清型Aの糖の分子量がA2であり;
(c)該第一バッチの血清型Cの糖の分子量がC1であり、該第二バッチの血清型Cの糖の分子量がC2であり;
(d)該第一バッチの血清型W135の糖の分子量がW1であり、該第二バッチの血清型W135の糖の分子量がW2であり;
(e)該第一バッチの血清型Yの糖の分子量がY1であり、該第二バッチの血清型Yの糖の分子量がY2であり;
(f)A1/A2の比率、C1/C2の比率、W1/W2の比率、およびY1/Y1の比率が各々、0.90〜1.10の間である、
ワクチン。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、既知の水力学的サイズの6種のデキストランの較正曲線を示す。
【図2】図2は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図3】図3は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図4】図4は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図5】図5は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図6】図6は、図7および図8のdn/dc較正に対する、既知濃度の調整した出力電圧を示す。
【図7】図6は、図7および図8のdn/dc較正に対する、既知濃度の調整した出力電圧を示す。
【図8】図6は、図7および図8のdn/dc較正に対する、既知濃度の調整した出力電圧を示す。
【図9】図9は、SEC−MALSからのDebyeプロットを示す。
【図10】図10は、RIシグナルおよび90°MALSシグナルの重ね合わせを示す。
【図11】図11は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【図12】図12は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【図13】図13は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【図14】図14は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(糖)
本発明は、結合体化糖抗原に関するパラメータの測定を可能にする。この糖抗原は、代表的に、細菌の莢膜糖であり、例えば、Neisseria meningitidis(血清型A、B、C、W135、またはY)、Streptococcus pneumoniae(血清型4、6B、9V、14、18C、19Fまたは23F)、Streptococcus agalactiae(型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VIIまたはVIII)、Haemophilus influenzae(型分け可能な(typeable)株:a、b、c、d、eまたはf)、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、などに由来する。他の糖分析物としては、グルカン(例えば、真菌性グルカン(例えば、Candida albicansにおけるグルカン))、および真菌性莢膜糖(例えば、Cryptococcus neoformans由来の莢膜糖)が挙げられる。本発明は、血清型A、C、W135およびYのN.meningitidisの莢膜糖由来の莢膜糖を分析するのに特に有用である。
【0013】
N.meningitidisの血清型Aの莢膜は、(αl→6)結合したN−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェートのホモポリマーであり、これはC3位およびC4位に部分的にO−アセチル化を有する。N.meningitidisの血清型Bの莢膜は、(α2→8)結合したシアル酸のホモポリマーである。N.meningitidisの血清型Cの莢膜糖は、(α2→9)結合したシアル酸(N−アセチルノイラミン酸、すなわち’ΝeuΝAc’)のホモポリマーであり、これは7位および/または8位において可変性のO−アセチル化を有する。N.meningitidisの血清型W135の糖は、シアル酸−ガラクトースの二糖単位[→4)−D−Νeup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(l→]からなるポリマーであり、これはシアル酸の7位と9位とに可変性のO−アセチル化を有する[10]。N.meningitidisの血清型Yの糖は、血清型W135の糖と類似であるが、二糖の反復単位がガラクトースの代わりにグルコースを含むこと[→4)−D−Νeup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(l→]を除く。H.influenzae b型の莢膜糖は、リボース、リビトールおよびリン酸のポリマー[’PRP’、(ポリ−3−β−D−リボース−(l,l)−D−リビトール−5−リン酸)]である。
【0014】
他の好ましい糖抗原は、真核細胞の糖(例えば、真菌の糖、植物の糖、ヒトの糖(例えば、癌抗原)など)である。他の好ましい糖は、リポポリ多糖およびリポオリゴ糖である。
【0015】
糖抗原は、天然に見られるような形態であり得るか、または誘導形態であり得、例えば、化学的改変および/または脱重合に供されている糖である。本発明は、莢膜多糖のオリゴ糖断片を分析するのに特に有用である。天然の多糖は、一般的に、少なくとも重合度20(例えば、20、30、40、50、60またはそれ以上)を有し、そしてこれらは脱重合(例えば、加水分解)によって、(例えば、20未満の重合度を有する)オリゴ糖断片へと変換され得る。
【0016】
糖の化学的加水分解は、一般に、当該分野で標準的な条件下での酸または塩基のいずれかを用いた処理を含む。莢膜糖をその成分の単糖へと脱重合するための条件は、当該分野で公知である。血清型Wl35およびYの糖に対して、加水分解は好ましい。TFA(トリフルオロ酢酸)を用いた酸加水分解は、血清型C、W135およびYの全ての加水分解のために使用され得、血清型Cに対しては、シアル酸の分解を避けるためにわずかにより低いインキュベーション温度(100℃よりも90℃)が好ましい。代表的なTFA処置は、最終濃度2MまでのTFAの添加、続いて90℃〜100℃に90分間加熱する工程を包含する。血清型Cの糖は、全体的な糖内容物分析のため、100mMのHClを用いた80℃で2時間の処理により加水分解され得る[11]。他の代表的な加水分解条件は、高温(例えば、70℃〜80℃)においてミリモル濃度の弱酸(例えば、酢酸)を含む。
【0017】
本発明は、異なる長さの種々の糖(例えば、同じ親の糖の異なる断片)を含む結合体サンプルを用いた使用に特に有用である。
【0018】
(結合体)
分析されるべき糖抗原は、キャリアと結合体化される。T細胞非依存性の抗原からT細胞依存性の抗原へと糖を変換することによってその糖の免疫原性を増大させ、これによって免疫記憶を刺激する(prime)ことを可能にするため、共有結合性の結合体化が使用される。結合体化は、小児用ワクチンに特に有用であり、そしてこの結合体化は周知技術である(例えば、参考文献12〜21に概説される)。糖はキャリアに直接連結され得る[22、23]が、リンカーまたはスペーサー(例えば、脂肪酸、β−プロピオンアミド[24]、ニトロフェニル−エチルアミン[25]、ハロアシルハライド[26]、グリコシド結合[27]、6−アミノカプロン酸[28]、ADH[29]、C4〜C12部分[30]、など)が一般に使用される。
【0019】
結合体における代表的なキャリアタンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(例えば、ジフテリア毒素または破傷風毒素)である。CRM197ジフテリア毒素誘導体[31−33]は、MenjugateTMおよびMeningitecTMにおけるキャリアタンパク質であり、一方、破傷風毒素は、NeisVacTMにおいて使用される。ジフテリア毒素は、MenactraTMにおけるキャリアとして使用される。CRMl97は、PrevnarTMにおけるキャリアタンパク質である。他の公知のキャリアタンパク質としては、N.meningitidisの外膜タンパク質[34]、合成ペプチド[35、36]、熱ショックタンパク質[37、38]、百日咳タンパク質[39、40]、サイトカイン[41]、リンホカイン[41]、ホルモン[41]、増殖因子[41]、種々の病原体由来抗原に由来する複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質[42]、H.influenzae由来のタンパク質D[43、44]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[45]、鉄取り込みタンパク質[46]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[47]、などが挙げられる。組成物は、例えば、キャリア抑制の危険性を低減させるため、1つより多くのタンパク質を使用し得、そして単独のキャリアタンパク質が1つより多くの糖抗原を保持し得る[48]。結合体は一般に、1:5(すなわちタンパク質過剰)〜5:1(すなわち糖過剰)の間の糖タンパク質比率(w/w)を有する。組成物は、結合体に付加した遊離のキャリアタンパク質を含み得る[49]。
【0020】
本発明は、連鎖球菌の糖(血清型A、C、W135およびY)とCRM197キャリアとの結合体を分析するのに特に適している。このような結合体は、参考文献50〜53に開示される方法により調製され得る。好ましい結合体は、参考文献51に従い調製されたもの、すなわちCRM197キャリアと脂肪酸リンカーとを有するオリゴ糖断片である。
【0021】
(ゲル透過クロマトグラフィー)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)は、周知の標準的な技術である。本発明は、一般に、HPGPC(高性能GPC)を使用する。このGPC技術は、サンプル中の結合体の水力学的サイズ(混合物中の平均サイズおよび/またはサイズ分布)を決定するため、本発明に従って使用される。
【0022】
GPCカラムにおける保持時間は、標準的な技術によって粘度半径(Rη)に変換され得る。代表的に、カラムにおける保持時間は公知の分子サイズの標準品に対して決定され、これによってこれら2つのパラメータの相関を可能にする。次いで、結合体の分子サイズは、カラムにおける保持時間から推測され得る。例えば、既知の分子サイズのデキストランを使用したカラムの検量、およびそれらの保持時間は、三次多項式を使用して粘度半径と相関され得る[54、55]。この粘度半径は、その分子の形状が保持に対して有する効果を説明するために、固有粘度および分子量を使用する。
【0023】
不均一混合物において、GPC技術は、混合物中の平均分子サイズおよび/または分子サイズ分布の両方を決定するために使用され得る。
【0024】
(SEC−MALS)
サイズ除去クロマトグラフィー(SEC)は、周知技術である。分離の結果は、重角光散乱(MALS)光度法および示差屈折率検出法により分析され得る。この方法は、流速および固定相などのクロマトグラフィーのパラメータとは無関係に、そして分子量の検量の必要なしに、分子量の分布情報および水力学半径(分子サイズ)を、ポリマーの確認および他の物理的パラメータを提供する[9]。分子量の検量を必要とせずに、MALSによる分子量の決定は、目的のポリマーに関して、目的の溶媒中の目的の波長および温度における特定の屈折率(dn/dc)を予め決定することに基づく。
【0025】
このようにしてSEC−MALSは、結合体の分子量を決定するために使用され得る。サンプルの分子量は、代表的なDebyeプロットから観察される場合のSECピークの各々の部分(slice)において決定され、分子量はこのプロットの切片(intercept)から決定される[56−58]。濃度に比例する屈折率シグナル、ならびに濃度および分子量に比例する90°MALSシグナルは、分子量分布を決定するために重ね合わされ得る。
【0026】
不均一混合物において、SEC−MALS技術は、混合物中の平均分子量および/または分子量分布(多分散性)の両方を決定するために使用され得る。
【0027】
(結合体組成物)
本発明は、血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは57.1Åであり、そして/またはその結合体の分子量は88.5kDaである。本組成物はまた、血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み得、ここでその結合体の分子量は190kDaである。
【0028】
本発明は、血清型CのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは57.0Åであり、そして/またはその結合体の分子量は85.2kDaである。
【0029】
本発明は、血清型W135のN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは68.7Åであり、そして/またはその結合体の分子量は110.1kDaである。本組成物はまた、血清型W135のN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み得、その結合体の分子量は347kDaである。
【0030】
本発明は、血清型YのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは63.3Åであり、そして/またはその結合体の分子量は84.7kDaである。本組成物はまた、血清型YのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み得、ここでその結合体の分子量は486kDaである。
【0031】
分子サイズおよび分子量に関する上記の値は単一の数量(figure)として示されるが、本発明は、これらの数量が±20%、±15%、±10%、±5%、±2%などである結合体に及ぶ。
【0032】
本発明はまた、上記の血清型Aの結合体、血清型Cの結合体、血清型W135の結合体、および血清型Yの結合体のうちの2つ以上(例えば、2つ、3つまたは4つ)を含む組成物を提供する。
【0033】
本発明はまた、多価結合体ワクチンを調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)本発明の方法を使用して2つ以上の結合体を分析する工程、および(b)これら分析された結合体を組合わせて多価ワクチンを形成する工程。
【0034】
本発明はまた、多価結合体ワクチンを調製するための方法を提供し、この方法は、本発明の方法を使用して分析されている2つ以上の結合体を混合する工程を包含する。
【0035】
(混合糖)
本発明は、莢膜糖の結合体を含む組成物における分析を可能にする。一般的に、本発明は1つの型の結合体(すなわち、同じキャリアに繋がれた、同じ莢膜糖に由来する糖)を含むサンプルに対して使用される。従って、多価結合体ワクチン(例えば、MenactraTM、PrevnarTM)に関して、本発明は一般的に、最終的な多価産物を作製するために組み合わされる前の個々の結合体において使用され、その結合体自身の最終産物において使用されるのではない。しかしながら、2つの結合体が著しく異なる分子サイズおよび分子量を有する場合、並行した分析は真っ直ぐである。
【0036】
(保存中の安定性)
本発明は、保存の間の結合体の安定性をモニタリングするために使用され得る。従って、本発明の方法は、同じ物質由来のサンプルについて時間t1およびt2において実施され得る。そして分析の結果が比較され得る。分子量および/または分子サイズの有意な変化は、そのワクチンが完全には安定でないことを示す。従って、本発明は、安定なワクチンを選択し、そして不安定なワクチンを却下するために使用され得る。
【0037】
(非結合体成分)
組成物中の結合体を分析することだけでなく、本発明のプロセスは他の成分または他の特性(例えば、浸透圧、pH、個々の糖または結合体の重合度、タンパク質(特にキャリアタンパク質に関する)含量、アルミニウム含量、界面活性剤含量、保存剤含量、など)の分析を含み得る。
【0038】
本発明は、ワクチン組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、本発明に従い結合体の分子量および/または分子サイズの分析の工程、およびその組成物のpH測定の工程、必要に応じてその後、その組成物のpHを所望の値(例えば、6〜8の間、または約7)に調整する工程、を包含する。
【0039】
本発明はまた、ワクチン組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、(a)上記されたような1つ以上の結合体を提供する工程;(b)この結合体(単数または複数)をバルクのワクチンへと処方する工程;(c)pHおよび/または他の特性に関してこのバルクワクチンを分析する工程;およびそのバルクワクチンが医療使用に受容可能であることを工程(c)からの結果が示す場合、(d)このバルクからヒト使用のためにワクチンを包装する工程、を包含する。工程(c)は、最小の糖濃度の評価、非結合体化糖:結合体化糖の比率の評価、などを含み得る。工程(d)は、単位投与形態または多用量投与形態(例えば、バイアルまたはシリンジ)へと包装する工程を包含し得る。代表的なヒトの注射用量は、0.5mlの容量を有する。
【0040】
本発明は、ワクチン組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)上記されたような1つ以上の結合体を提供する工程;および(b)この結合体化糖と1つ以上のさらなる抗原とを混合する工程、であって、この1つ以上のさらなる抗原としては、以下である:
−血清型CのN.meningitidis由来の莢膜糖抗原。
−血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖抗原。
−血清型BのN.meningitidis由来のタンパク質抗原。
−N.meningitidis血清型Bのミクロ微小胞[59]、「天然のOMV」[60]、小疱(bleb)または外膜小胞(vesicle)[例えば、参考文献61〜66、など]の調製物。
−Haemophilus influenzae b型由来の糖抗原。
−Streptococcus pneumoniae由来の抗原(例えば、多価結合体化糖抗原[例えば、引用文献67〜69])。
−A型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、不活性化ウイルス[引用文献70、71])。−B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原[例えば、71、72]。
−Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳毒素(PT)および糸状ヘマグルチニン(FHA)、また必要に応じてペルタクチンおよび/または凝集原2および凝集原3[例えば、参考文献73および74]と組み合わされる。細胞性百日咳抗原が使用され得る。
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリア毒素[例えば、参考文献75の第3章]、例えばCRM197変異体[例えば、76]。
−破傷風抗原(例えば、破傷風毒素[例えば、参考文献75の第4章]。
−ポリオ抗原[例えば、参考文献77、78]、(例えば、IPV)。
【0041】
このような抗原は、アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化物またはリン酸塩)に吸収され得る。好ましくは、任意のさらなる糖抗原が結合体として含まれる。
【0042】
本発明の結合体は、アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化物またはリン酸塩)に同様に吸収されてもよいし、またはその結合体は吸収されなくてよい(例えば、溶液中に遊離していてよい)。
【0043】
(バッチ間の一貫性)
本発明のプロセスは信頼でき、一貫しており、従って異なるバッチの結合体の有効な比較を可能にする。従って、異なるバッチの結合体が調製され得、アッセイされ得、そして結合体ワクチンの調製における販売および使用のため、一貫性のあるバッチが選択され得、一方、逸脱したバッチは棄却され得る。
【0044】
本発明は、2つのバッチのワクチンを提供し、ここで:(a)両方のバッチのワクチンは:(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み;(b)第一バッチ中の血清型Aの糖の分子サイズはA1であり、第二バッチ中の血清型Aの糖の分子サイズはA2である;(c)第一バッチ中の血清型Cの糖の分子サイズはC1であり、第二バッチ中の血清型Cの糖の分子サイズはC2である;(d)第一バッチ中の血清型W135の糖の分子サイズはW1であり、第二バッチ中の血清型W135の糖の分子サイズはW2である;(e)第一バッチ中の血清型Yの糖の分子サイズはY1であり、第二バッチ中の血清型Yの糖の分子サイズはY2である;(f)A1/A2の比、C1/C2の比、W1/W2の比およびY1/Y2の比は各々0.90〜1.10の間であり、好ましくは各々0.95〜1.05の間である。
【0045】
本発明は、2つのバッチのワクチンを提供し、ここで:(a)両方のバッチのワクチンは、以下を含む:(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;b)第一バッチ中の血清型Aの糖の分子量はA1であり、第二バッチ中の血清型Aの糖の分子量はA2である;(c)第一バッチ中の血清型Cの糖の分子量はC1であり、第二バッチ中の血清型Cの糖の分子量はC2である;(d)第一バッチ中の血清型W135の糖の分子量はW1であり、第二バッチ中の血清型W135の糖の分子量はW2である;(e)第一バッチ中の血清型Yの糖の分子量はY1であり、第二バッチ中の血清型Yの糖の分子量はY2である;(f)A1/A2の比、C1/C2の比、W1/W2の比およびY1/Y2の比は、各々0.90〜1.10の間であり、好ましくは各々0.95〜1.05の間である。
【0046】
(f)において特定された比は、比較される各々のバッチ由来の単独のサンプルに基づき得るが、代表的には各々のバッチの複数のサンプル由来の平均の値(例えば、平均値)に基づき得る。従って、これら2つのバッチは、複数回のサンプリングに供され得、そして各々のサンプルは、複数の測定(A1、A2、C1、C2、W1、W2、Y1およびY2)に供され得、次いで各々のバッチに対する平均が計算され得、そしてこの平均を使用して必要な比を計算し得る。
【0047】
各々のバッチ(またはロット)のワクチンは、別個に調製されている。例えば、2つの異なるバッチは、同じバルクの単独の結合体についての別個の混合によってか、または別個に調製されたバルクの単独の結合体の混合によって作製され得る。同じバルク混合物の異なるサンプルは、異なるバッチにならない。なぜならこれらのサンプルは、異なる結合体の混合物を調製する場合に起こる差異から生じるバッチ間の変動に供されないからである。
【0048】
(一般則)
用語「含むこと(comprising)」は、「含むこと(including)」ならびに「構成すること(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む」組成物は、主としてXから構成されてよく、またはいくらかの付加物(例えば、X+Y)を含んでよい。
【0049】
単語「実質的に(substantially)」とは、「完全に(completely)」を退けない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要な場合、語「実質的に」は本発明の定義から省略され得る。
【0050】
数値xと関係した用語「約(about)」は、例えば、x±10%を意味する。
【実施例】
【0051】
(発明の実施の形態)
血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Yの髄膜炎菌由来のオリゴ糖のCRM197結合体は、参考文献51に一般に記載されるように調製した。これらの結合体の各々を、本発明に従ってHPGPCおよびSEC−MALSによって分析した。
【0052】
(HPGPC分析)
糖結合体ワクチンは、一般的に、複数の部位においてタンパク質キャリアと結合された、異なる長さの糖の範囲を有する糖形態のアレイから構成される。HPGPCを使用して、水力学的サイズおよびサイズ分布を決定することによって、分子サイズに関して髄膜炎糖結合体を特徴決定した。
【0053】
較正には、6種のデキストランのセットを使用し、水力学的サイズは17Å〜115Åに及んだ。標準品のHPGPC分析は、図1に示される。標準の分子量および計算した分子量は以下のとおりである:
【0054】
【表1】
デキストラン分析を使用し、三次多項式を使用して、粘度半径(Rη)とGPC保持時間とを関連付けた[54、55]:Rη(Å単位)=(108)(30Mp[η]/(π×6.023×1023))1/3
ここで、Mp=頂部のMw、および[η]=固有粘度(dL/g単位)。
【0055】
結合体の粘度半径を、この式から計算した。この式は、固有粘度およびMwを使用して、分子の形状が保持の際に有する効果を説明する。
【0056】
個々の結合体の分析は、図2〜図5に示される。水力学的サイズを以下のように計算した:
【0057】
【表2】
分析のための実施例条件として、50μlの注入容量中の血清群Aの結合体を、TSK−Gel G4000SW(300×7.5mm内径)に対して0.1M リン酸ナトリウム/0.2M 硫酸アンモニウムの移動相(pH7.0)を用いて分析した。流速は、0.5ml/分だった。Waters 410屈折率(refaction index)検出器を使用した。
【0058】
(SEC−MALS分析)
SEC−MALS分析の前に、分析条件の下で結合体の屈折率(dn/dc)を決定した。設定濃度に対する実施例の電圧出力を図6に示す。この出力は、図7および図8に示される標準曲線へと導いた。計算値は以下のとおりである:
【0059】
【表3】
SEC−MALSによってこれらの結合体を分析した。図9の代表的なDebyeプロットから分かるように、SECピークの各々のデータ部分(slice)におけるサンプルのモル質量を決定した。モル質量を、プロットの切片(intercept)から決定した[56−58]。濃度に比例するRIシグナル(青)と、濃度およびモル質量に比例する90°MALS検出器(赤)とを、重ね合わせ得る(図10)。
【0060】
モル質量(モルあたりのグラム)の分析を、図11〜図14に示す。MenA糖結合体、MenW135糖結合体およびMenY糖結合体は、より高いMWに関する低濃度の段部(shoulder)を有する主要なピークを有するが、MenC結合体はより均一な物質の単独のピークを有することを、この分析は示す。
【0061】
これらのピークの分析結果(kDa単位でのMW;Mw/Mnでの多分散性)は以下のとおりである:
【0062】
【表4】
本発明は例示によってのみ記載されており、本発明の範囲および精神の中に在るままに改変がなされ得ることが理解される。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載される全ての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチンの分析および品質管理の分野にあり、このワクチンとしてはキャリアと結合体化した細菌の莢膜糖が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
キャリアタンパク質と結合体化した莢膜糖抗原を含む免疫原は、当該分野で周知である。結合体化は、T細胞非依存性抗原をT細胞依存性抗原へと変換し、これによって記憶応答を増強させ、そして保護免疫を展開させることを可能にし、そしてプロトタイプの結合体化ワクチンは、Haemophilus influenzae b型(Hib)に対するものであった[例えば、参考文献1(非特許文献1)の第14章を参照のこと]。Hibワクチン以降、Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)およびStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)に対して保護するための結合体化糖ワクチンが開発されている。ワクチンを結合体化する他の生物体は、Streptococcus agalactiae(群Bの連鎖球菌属)[2](非特許文献2)、Pseudomonas aeruginosa[3](非特許文献3)、およびStaphylococcus aureus[4](非特許文献4)が有益である。
【0004】
全長の莢膜糖を使用するのではなく、加水分解工程後の所望のサイズのオリゴ糖フラグメントを選択することが可能であり[例えば、参考文献5(非特許文献5)]、そして中程度の鎖長のオリゴ糖を用いた結合体が、向上した免疫誘発[例えば、参考文献6および7](非特許文献6および7)を提供することが報告されている。ヒトへの使用を承認されている、3つのN.meningitidis血清型C結合体化ワクチンのうち、MenjugateTM[8](非特許文献8)およびMeningitecTMは、オリゴ糖に基づき、NeisVac−CTMは全長の多糖を使用する。
【0005】
結合体がワクチン中に含まれる場合、製造および発売のための品質管理は一般にその結合体が規定の分子サイズおよび/または分子量を有すること、またこれらのパラメータがバッチ間で一貫していることを必要とする。分子サイズおよび分子量は、また、ワクチンの安定性をモニタリングするために使用され得る。なぜなら、結合体は時間の経過につれて凝集し得、サイズおよび分子量の増加を生じ得るからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Vaccines(Plotkinら、編)第4版、ISBN:0721696880.
【非特許文献2】Bakerら、J Infect Dis(2003)188:66−73
【非特許文献3】Theilackerら、Infect Immun(2003)71:3875−84
【非特許文献4】Anonymous Drugs RD(2003)4:383−5
【非特許文献5】Ravenscroftら、Vaccine(1999)17:2802−2816
【非特許文献6】Paolettiら、J Clin Invest(1992)89:203−9
【非特許文献7】Andersonら、J lmmunol(1986)137:1181−6
【非特許文献8】Jones、Curr Opin Investig Drugs(2001)2:47−49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結合体化糖抗原について、特に髄膜炎菌の糖の結合体について、分子サイズ、分子量および関連のパラメータを測定するための新規かつ改善された方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
本発明者らは、ゲル透過クロマトグラフィーおよびSEC−MALS(重角光散乱光度法による検出を備えたサイズ排除クロマトグラフィー)を使用して、糖結合体の分子サイズおよび分子量をそれぞれ正確かつ信頼性高く測定し得ることを発見した。
【0009】
従って、本発明は、サンプル内の結合体化糖抗原の分子サイズを測定するためのプロセスを提供し、このプロセスはゲル透過クロマトグラフィーによりサンプルを分析する工程を包含する。クロマトグラフィー分析の保持時間は、例えば、検量線との比較によって、粘度半径(viscosity radius(Rη))に変換され、これによって分子サイズの単純な計算を可能にする。サンプル中の結合体の平均分子サイズおよび/または分子サイズ分布は、この方法で容易に決定され得る。
【0010】
本発明はまた、サンプル内の結合体化糖抗原の分子量を測定するためのプロセスを提供し、このプロセスはSEC−MALSによってサンプルを分析する工程を包含する。このSEC保持時間が、分子量へと変換され得る。サンプル中の結合体の平均分子量および/または分子量分布(多分散性)は、この方法で容易に決定され得る。参考文献9は、SEC−MALSが以前に、結合体化前の骨髄球菌の糖および結合体化前の連鎖球菌の糖の測定に使用されたことを報告するが、結合体後のデータは報告されていない。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
サンプル内の結合体化糖抗原の分子サイズを測定するためのプロセスであって、ゲル透過クロマトグラフィーによりサンプルを分析する工程を包含する、プロセス。
(項目2)
サンプル内の結合体化糖抗原の分子量を測定するためのプロセスであって、SEC−MALSによってサンプルを分析する工程を包含する、プロセス。
(項目3)
前記糖が細菌の莢膜糖である、項目1または2に記載のプロセス。
(項目4)
前記莢膜糖が、Neisseria meningitidisの血清型A、C、W135、またはYに由来する、項目3に記載のプロセス。
(項目5)
前記糖がオリゴ糖である、項目4に記載のプロセス。
(項目6)
前記結合体がタンパク質キャリアを有する、項目1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目7)
前記タンパク質キャリアがCRM197またはジフテリア毒素である、項目6に記載のプロセス。
(項目8)
血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが57.1ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が88.5kDa±20%である、組成物。
(項目9)
血清型CのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが57.0ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が85.2kDa±20%である、組成物。
(項目10)
血清型W135のN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが68.7ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が110.1kDa±20%である、組成物。
(項目11)
血清型YのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物であって、該結合体の分子サイズが63.3ű20%であり、そして/または該結合体の分子量が84.7kDa±20%である、組成物。
(項目12)
項目8〜11に記載される前記結合体のうちの2つ以上を含む、組成物。
(項目13)
2つのバッチのワクチンであって、ここで:
(a)両方のバッチのワクチンは:
(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
を含み;
(b)第一バッチの血清型Aの糖の分子サイズがA1であり、第二バッチの血清型Aの糖の分子サイズがA2であり;
(c)該第一バッチの血清型Cの糖の分子サイズがC1であり、該第二バッチの血清型Cの糖は分子サイズがC2であり;
(d)該第一バッチの血清型W135の糖の分子サイズがW1であり、該第二バッチの血清型W135の糖は分子サイズがW2であり;
(e)該第一バッチの血清型Yの糖の分子サイズがY1であり、該第二バッチの血清型Yの糖は分子サイズがY2であり;
(f)A1/A2の比率、C1/C2の比率、W1/W2の比率、およびY1/Y1の比率が各々、0.90〜1.10の間である、
ワクチン。
(項目14)
2つのバッチのワクチンであって、ここで:
(a)両方のバッチのワクチンは:
(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;
を含み;
(b)第一バッチの血清型Aの糖の分子量がA1であり、第二バッチの血清型Aの糖の分子量がA2であり;
(c)該第一バッチの血清型Cの糖の分子量がC1であり、該第二バッチの血清型Cの糖の分子量がC2であり;
(d)該第一バッチの血清型W135の糖の分子量がW1であり、該第二バッチの血清型W135の糖の分子量がW2であり;
(e)該第一バッチの血清型Yの糖の分子量がY1であり、該第二バッチの血清型Yの糖の分子量がY2であり;
(f)A1/A2の比率、C1/C2の比率、W1/W2の比率、およびY1/Y1の比率が各々、0.90〜1.10の間である、
ワクチン。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、既知の水力学的サイズの6種のデキストランの較正曲線を示す。
【図2】図2は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図3】図3は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図4】図4は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図5】図5は、血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Y由来のCRM197結合体のHPGPC分析を示す。
【図6】図6は、図7および図8のdn/dc較正に対する、既知濃度の調整した出力電圧を示す。
【図7】図6は、図7および図8のdn/dc較正に対する、既知濃度の調整した出力電圧を示す。
【図8】図6は、図7および図8のdn/dc較正に対する、既知濃度の調整した出力電圧を示す。
【図9】図9は、SEC−MALSからのDebyeプロットを示す。
【図10】図10は、RIシグナルおよび90°MALSシグナルの重ね合わせを示す。
【図11】図11は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【図12】図12は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【図13】図13は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【図14】図14は、血清型A、血清型C、血清型Wl35および血清型Y由来のCRM197結合体に関するSEC−MALSによる分子量分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(糖)
本発明は、結合体化糖抗原に関するパラメータの測定を可能にする。この糖抗原は、代表的に、細菌の莢膜糖であり、例えば、Neisseria meningitidis(血清型A、B、C、W135、またはY)、Streptococcus pneumoniae(血清型4、6B、9V、14、18C、19Fまたは23F)、Streptococcus agalactiae(型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VIIまたはVIII)、Haemophilus influenzae(型分け可能な(typeable)株:a、b、c、d、eまたはf)、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、などに由来する。他の糖分析物としては、グルカン(例えば、真菌性グルカン(例えば、Candida albicansにおけるグルカン))、および真菌性莢膜糖(例えば、Cryptococcus neoformans由来の莢膜糖)が挙げられる。本発明は、血清型A、C、W135およびYのN.meningitidisの莢膜糖由来の莢膜糖を分析するのに特に有用である。
【0013】
N.meningitidisの血清型Aの莢膜は、(αl→6)結合したN−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェートのホモポリマーであり、これはC3位およびC4位に部分的にO−アセチル化を有する。N.meningitidisの血清型Bの莢膜は、(α2→8)結合したシアル酸のホモポリマーである。N.meningitidisの血清型Cの莢膜糖は、(α2→9)結合したシアル酸(N−アセチルノイラミン酸、すなわち’ΝeuΝAc’)のホモポリマーであり、これは7位および/または8位において可変性のO−アセチル化を有する。N.meningitidisの血清型W135の糖は、シアル酸−ガラクトースの二糖単位[→4)−D−Νeup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(l→]からなるポリマーであり、これはシアル酸の7位と9位とに可変性のO−アセチル化を有する[10]。N.meningitidisの血清型Yの糖は、血清型W135の糖と類似であるが、二糖の反復単位がガラクトースの代わりにグルコースを含むこと[→4)−D−Νeup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(l→]を除く。H.influenzae b型の莢膜糖は、リボース、リビトールおよびリン酸のポリマー[’PRP’、(ポリ−3−β−D−リボース−(l,l)−D−リビトール−5−リン酸)]である。
【0014】
他の好ましい糖抗原は、真核細胞の糖(例えば、真菌の糖、植物の糖、ヒトの糖(例えば、癌抗原)など)である。他の好ましい糖は、リポポリ多糖およびリポオリゴ糖である。
【0015】
糖抗原は、天然に見られるような形態であり得るか、または誘導形態であり得、例えば、化学的改変および/または脱重合に供されている糖である。本発明は、莢膜多糖のオリゴ糖断片を分析するのに特に有用である。天然の多糖は、一般的に、少なくとも重合度20(例えば、20、30、40、50、60またはそれ以上)を有し、そしてこれらは脱重合(例えば、加水分解)によって、(例えば、20未満の重合度を有する)オリゴ糖断片へと変換され得る。
【0016】
糖の化学的加水分解は、一般に、当該分野で標準的な条件下での酸または塩基のいずれかを用いた処理を含む。莢膜糖をその成分の単糖へと脱重合するための条件は、当該分野で公知である。血清型Wl35およびYの糖に対して、加水分解は好ましい。TFA(トリフルオロ酢酸)を用いた酸加水分解は、血清型C、W135およびYの全ての加水分解のために使用され得、血清型Cに対しては、シアル酸の分解を避けるためにわずかにより低いインキュベーション温度(100℃よりも90℃)が好ましい。代表的なTFA処置は、最終濃度2MまでのTFAの添加、続いて90℃〜100℃に90分間加熱する工程を包含する。血清型Cの糖は、全体的な糖内容物分析のため、100mMのHClを用いた80℃で2時間の処理により加水分解され得る[11]。他の代表的な加水分解条件は、高温(例えば、70℃〜80℃)においてミリモル濃度の弱酸(例えば、酢酸)を含む。
【0017】
本発明は、異なる長さの種々の糖(例えば、同じ親の糖の異なる断片)を含む結合体サンプルを用いた使用に特に有用である。
【0018】
(結合体)
分析されるべき糖抗原は、キャリアと結合体化される。T細胞非依存性の抗原からT細胞依存性の抗原へと糖を変換することによってその糖の免疫原性を増大させ、これによって免疫記憶を刺激する(prime)ことを可能にするため、共有結合性の結合体化が使用される。結合体化は、小児用ワクチンに特に有用であり、そしてこの結合体化は周知技術である(例えば、参考文献12〜21に概説される)。糖はキャリアに直接連結され得る[22、23]が、リンカーまたはスペーサー(例えば、脂肪酸、β−プロピオンアミド[24]、ニトロフェニル−エチルアミン[25]、ハロアシルハライド[26]、グリコシド結合[27]、6−アミノカプロン酸[28]、ADH[29]、C4〜C12部分[30]、など)が一般に使用される。
【0019】
結合体における代表的なキャリアタンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(例えば、ジフテリア毒素または破傷風毒素)である。CRM197ジフテリア毒素誘導体[31−33]は、MenjugateTMおよびMeningitecTMにおけるキャリアタンパク質であり、一方、破傷風毒素は、NeisVacTMにおいて使用される。ジフテリア毒素は、MenactraTMにおけるキャリアとして使用される。CRMl97は、PrevnarTMにおけるキャリアタンパク質である。他の公知のキャリアタンパク質としては、N.meningitidisの外膜タンパク質[34]、合成ペプチド[35、36]、熱ショックタンパク質[37、38]、百日咳タンパク質[39、40]、サイトカイン[41]、リンホカイン[41]、ホルモン[41]、増殖因子[41]、種々の病原体由来抗原に由来する複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質[42]、H.influenzae由来のタンパク質D[43、44]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[45]、鉄取り込みタンパク質[46]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[47]、などが挙げられる。組成物は、例えば、キャリア抑制の危険性を低減させるため、1つより多くのタンパク質を使用し得、そして単独のキャリアタンパク質が1つより多くの糖抗原を保持し得る[48]。結合体は一般に、1:5(すなわちタンパク質過剰)〜5:1(すなわち糖過剰)の間の糖タンパク質比率(w/w)を有する。組成物は、結合体に付加した遊離のキャリアタンパク質を含み得る[49]。
【0020】
本発明は、連鎖球菌の糖(血清型A、C、W135およびY)とCRM197キャリアとの結合体を分析するのに特に適している。このような結合体は、参考文献50〜53に開示される方法により調製され得る。好ましい結合体は、参考文献51に従い調製されたもの、すなわちCRM197キャリアと脂肪酸リンカーとを有するオリゴ糖断片である。
【0021】
(ゲル透過クロマトグラフィー)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)は、周知の標準的な技術である。本発明は、一般に、HPGPC(高性能GPC)を使用する。このGPC技術は、サンプル中の結合体の水力学的サイズ(混合物中の平均サイズおよび/またはサイズ分布)を決定するため、本発明に従って使用される。
【0022】
GPCカラムにおける保持時間は、標準的な技術によって粘度半径(Rη)に変換され得る。代表的に、カラムにおける保持時間は公知の分子サイズの標準品に対して決定され、これによってこれら2つのパラメータの相関を可能にする。次いで、結合体の分子サイズは、カラムにおける保持時間から推測され得る。例えば、既知の分子サイズのデキストランを使用したカラムの検量、およびそれらの保持時間は、三次多項式を使用して粘度半径と相関され得る[54、55]。この粘度半径は、その分子の形状が保持に対して有する効果を説明するために、固有粘度および分子量を使用する。
【0023】
不均一混合物において、GPC技術は、混合物中の平均分子サイズおよび/または分子サイズ分布の両方を決定するために使用され得る。
【0024】
(SEC−MALS)
サイズ除去クロマトグラフィー(SEC)は、周知技術である。分離の結果は、重角光散乱(MALS)光度法および示差屈折率検出法により分析され得る。この方法は、流速および固定相などのクロマトグラフィーのパラメータとは無関係に、そして分子量の検量の必要なしに、分子量の分布情報および水力学半径(分子サイズ)を、ポリマーの確認および他の物理的パラメータを提供する[9]。分子量の検量を必要とせずに、MALSによる分子量の決定は、目的のポリマーに関して、目的の溶媒中の目的の波長および温度における特定の屈折率(dn/dc)を予め決定することに基づく。
【0025】
このようにしてSEC−MALSは、結合体の分子量を決定するために使用され得る。サンプルの分子量は、代表的なDebyeプロットから観察される場合のSECピークの各々の部分(slice)において決定され、分子量はこのプロットの切片(intercept)から決定される[56−58]。濃度に比例する屈折率シグナル、ならびに濃度および分子量に比例する90°MALSシグナルは、分子量分布を決定するために重ね合わされ得る。
【0026】
不均一混合物において、SEC−MALS技術は、混合物中の平均分子量および/または分子量分布(多分散性)の両方を決定するために使用され得る。
【0027】
(結合体組成物)
本発明は、血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは57.1Åであり、そして/またはその結合体の分子量は88.5kDaである。本組成物はまた、血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み得、ここでその結合体の分子量は190kDaである。
【0028】
本発明は、血清型CのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは57.0Åであり、そして/またはその結合体の分子量は85.2kDaである。
【0029】
本発明は、血清型W135のN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは68.7Åであり、そして/またはその結合体の分子量は110.1kDaである。本組成物はまた、血清型W135のN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み得、その結合体の分子量は347kDaである。
【0030】
本発明は、血清型YのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含む組成物を提供する。ここで、その結合体の分子サイズは63.3Åであり、そして/またはその結合体の分子量は84.7kDaである。本組成物はまた、血清型YのN.meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み得、ここでその結合体の分子量は486kDaである。
【0031】
分子サイズおよび分子量に関する上記の値は単一の数量(figure)として示されるが、本発明は、これらの数量が±20%、±15%、±10%、±5%、±2%などである結合体に及ぶ。
【0032】
本発明はまた、上記の血清型Aの結合体、血清型Cの結合体、血清型W135の結合体、および血清型Yの結合体のうちの2つ以上(例えば、2つ、3つまたは4つ)を含む組成物を提供する。
【0033】
本発明はまた、多価結合体ワクチンを調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)本発明の方法を使用して2つ以上の結合体を分析する工程、および(b)これら分析された結合体を組合わせて多価ワクチンを形成する工程。
【0034】
本発明はまた、多価結合体ワクチンを調製するための方法を提供し、この方法は、本発明の方法を使用して分析されている2つ以上の結合体を混合する工程を包含する。
【0035】
(混合糖)
本発明は、莢膜糖の結合体を含む組成物における分析を可能にする。一般的に、本発明は1つの型の結合体(すなわち、同じキャリアに繋がれた、同じ莢膜糖に由来する糖)を含むサンプルに対して使用される。従って、多価結合体ワクチン(例えば、MenactraTM、PrevnarTM)に関して、本発明は一般的に、最終的な多価産物を作製するために組み合わされる前の個々の結合体において使用され、その結合体自身の最終産物において使用されるのではない。しかしながら、2つの結合体が著しく異なる分子サイズおよび分子量を有する場合、並行した分析は真っ直ぐである。
【0036】
(保存中の安定性)
本発明は、保存の間の結合体の安定性をモニタリングするために使用され得る。従って、本発明の方法は、同じ物質由来のサンプルについて時間t1およびt2において実施され得る。そして分析の結果が比較され得る。分子量および/または分子サイズの有意な変化は、そのワクチンが完全には安定でないことを示す。従って、本発明は、安定なワクチンを選択し、そして不安定なワクチンを却下するために使用され得る。
【0037】
(非結合体成分)
組成物中の結合体を分析することだけでなく、本発明のプロセスは他の成分または他の特性(例えば、浸透圧、pH、個々の糖または結合体の重合度、タンパク質(特にキャリアタンパク質に関する)含量、アルミニウム含量、界面活性剤含量、保存剤含量、など)の分析を含み得る。
【0038】
本発明は、ワクチン組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、本発明に従い結合体の分子量および/または分子サイズの分析の工程、およびその組成物のpH測定の工程、必要に応じてその後、その組成物のpHを所望の値(例えば、6〜8の間、または約7)に調整する工程、を包含する。
【0039】
本発明はまた、ワクチン組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、(a)上記されたような1つ以上の結合体を提供する工程;(b)この結合体(単数または複数)をバルクのワクチンへと処方する工程;(c)pHおよび/または他の特性に関してこのバルクワクチンを分析する工程;およびそのバルクワクチンが医療使用に受容可能であることを工程(c)からの結果が示す場合、(d)このバルクからヒト使用のためにワクチンを包装する工程、を包含する。工程(c)は、最小の糖濃度の評価、非結合体化糖:結合体化糖の比率の評価、などを含み得る。工程(d)は、単位投与形態または多用量投与形態(例えば、バイアルまたはシリンジ)へと包装する工程を包含し得る。代表的なヒトの注射用量は、0.5mlの容量を有する。
【0040】
本発明は、ワクチン組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)上記されたような1つ以上の結合体を提供する工程;および(b)この結合体化糖と1つ以上のさらなる抗原とを混合する工程、であって、この1つ以上のさらなる抗原としては、以下である:
−血清型CのN.meningitidis由来の莢膜糖抗原。
−血清型AのN.meningitidis由来の莢膜糖抗原。
−血清型BのN.meningitidis由来のタンパク質抗原。
−N.meningitidis血清型Bのミクロ微小胞[59]、「天然のOMV」[60]、小疱(bleb)または外膜小胞(vesicle)[例えば、参考文献61〜66、など]の調製物。
−Haemophilus influenzae b型由来の糖抗原。
−Streptococcus pneumoniae由来の抗原(例えば、多価結合体化糖抗原[例えば、引用文献67〜69])。
−A型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、不活性化ウイルス[引用文献70、71])。−B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原[例えば、71、72]。
−Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳毒素(PT)および糸状ヘマグルチニン(FHA)、また必要に応じてペルタクチンおよび/または凝集原2および凝集原3[例えば、参考文献73および74]と組み合わされる。細胞性百日咳抗原が使用され得る。
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリア毒素[例えば、参考文献75の第3章]、例えばCRM197変異体[例えば、76]。
−破傷風抗原(例えば、破傷風毒素[例えば、参考文献75の第4章]。
−ポリオ抗原[例えば、参考文献77、78]、(例えば、IPV)。
【0041】
このような抗原は、アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化物またはリン酸塩)に吸収され得る。好ましくは、任意のさらなる糖抗原が結合体として含まれる。
【0042】
本発明の結合体は、アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化物またはリン酸塩)に同様に吸収されてもよいし、またはその結合体は吸収されなくてよい(例えば、溶液中に遊離していてよい)。
【0043】
(バッチ間の一貫性)
本発明のプロセスは信頼でき、一貫しており、従って異なるバッチの結合体の有効な比較を可能にする。従って、異なるバッチの結合体が調製され得、アッセイされ得、そして結合体ワクチンの調製における販売および使用のため、一貫性のあるバッチが選択され得、一方、逸脱したバッチは棄却され得る。
【0044】
本発明は、2つのバッチのワクチンを提供し、ここで:(a)両方のバッチのワクチンは:(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体を含み;(b)第一バッチ中の血清型Aの糖の分子サイズはA1であり、第二バッチ中の血清型Aの糖の分子サイズはA2である;(c)第一バッチ中の血清型Cの糖の分子サイズはC1であり、第二バッチ中の血清型Cの糖の分子サイズはC2である;(d)第一バッチ中の血清型W135の糖の分子サイズはW1であり、第二バッチ中の血清型W135の糖の分子サイズはW2である;(e)第一バッチ中の血清型Yの糖の分子サイズはY1であり、第二バッチ中の血清型Yの糖の分子サイズはY2である;(f)A1/A2の比、C1/C2の比、W1/W2の比およびY1/Y2の比は各々0.90〜1.10の間であり、好ましくは各々0.95〜1.05の間である。
【0045】
本発明は、2つのバッチのワクチンを提供し、ここで:(a)両方のバッチのワクチンは、以下を含む:(i)血清型AのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(ii)血清型CのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iii)血清型W135のNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;(iv)血清型YのNeisseria meningitidis由来の莢膜糖の結合体;b)第一バッチ中の血清型Aの糖の分子量はA1であり、第二バッチ中の血清型Aの糖の分子量はA2である;(c)第一バッチ中の血清型Cの糖の分子量はC1であり、第二バッチ中の血清型Cの糖の分子量はC2である;(d)第一バッチ中の血清型W135の糖の分子量はW1であり、第二バッチ中の血清型W135の糖の分子量はW2である;(e)第一バッチ中の血清型Yの糖の分子量はY1であり、第二バッチ中の血清型Yの糖の分子量はY2である;(f)A1/A2の比、C1/C2の比、W1/W2の比およびY1/Y2の比は、各々0.90〜1.10の間であり、好ましくは各々0.95〜1.05の間である。
【0046】
(f)において特定された比は、比較される各々のバッチ由来の単独のサンプルに基づき得るが、代表的には各々のバッチの複数のサンプル由来の平均の値(例えば、平均値)に基づき得る。従って、これら2つのバッチは、複数回のサンプリングに供され得、そして各々のサンプルは、複数の測定(A1、A2、C1、C2、W1、W2、Y1およびY2)に供され得、次いで各々のバッチに対する平均が計算され得、そしてこの平均を使用して必要な比を計算し得る。
【0047】
各々のバッチ(またはロット)のワクチンは、別個に調製されている。例えば、2つの異なるバッチは、同じバルクの単独の結合体についての別個の混合によってか、または別個に調製されたバルクの単独の結合体の混合によって作製され得る。同じバルク混合物の異なるサンプルは、異なるバッチにならない。なぜならこれらのサンプルは、異なる結合体の混合物を調製する場合に起こる差異から生じるバッチ間の変動に供されないからである。
【0048】
(一般則)
用語「含むこと(comprising)」は、「含むこと(including)」ならびに「構成すること(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む」組成物は、主としてXから構成されてよく、またはいくらかの付加物(例えば、X+Y)を含んでよい。
【0049】
単語「実質的に(substantially)」とは、「完全に(completely)」を退けない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要な場合、語「実質的に」は本発明の定義から省略され得る。
【0050】
数値xと関係した用語「約(about)」は、例えば、x±10%を意味する。
【実施例】
【0051】
(発明の実施の形態)
血清型A、血清型C、血清型W135および血清型Yの髄膜炎菌由来のオリゴ糖のCRM197結合体は、参考文献51に一般に記載されるように調製した。これらの結合体の各々を、本発明に従ってHPGPCおよびSEC−MALSによって分析した。
【0052】
(HPGPC分析)
糖結合体ワクチンは、一般的に、複数の部位においてタンパク質キャリアと結合された、異なる長さの糖の範囲を有する糖形態のアレイから構成される。HPGPCを使用して、水力学的サイズおよびサイズ分布を決定することによって、分子サイズに関して髄膜炎糖結合体を特徴決定した。
【0053】
較正には、6種のデキストランのセットを使用し、水力学的サイズは17Å〜115Åに及んだ。標準品のHPGPC分析は、図1に示される。標準の分子量および計算した分子量は以下のとおりである:
【0054】
【表1】
デキストラン分析を使用し、三次多項式を使用して、粘度半径(Rη)とGPC保持時間とを関連付けた[54、55]:Rη(Å単位)=(108)(30Mp[η]/(π×6.023×1023))1/3
ここで、Mp=頂部のMw、および[η]=固有粘度(dL/g単位)。
【0055】
結合体の粘度半径を、この式から計算した。この式は、固有粘度およびMwを使用して、分子の形状が保持の際に有する効果を説明する。
【0056】
個々の結合体の分析は、図2〜図5に示される。水力学的サイズを以下のように計算した:
【0057】
【表2】
分析のための実施例条件として、50μlの注入容量中の血清群Aの結合体を、TSK−Gel G4000SW(300×7.5mm内径)に対して0.1M リン酸ナトリウム/0.2M 硫酸アンモニウムの移動相(pH7.0)を用いて分析した。流速は、0.5ml/分だった。Waters 410屈折率(refaction index)検出器を使用した。
【0058】
(SEC−MALS分析)
SEC−MALS分析の前に、分析条件の下で結合体の屈折率(dn/dc)を決定した。設定濃度に対する実施例の電圧出力を図6に示す。この出力は、図7および図8に示される標準曲線へと導いた。計算値は以下のとおりである:
【0059】
【表3】
SEC−MALSによってこれらの結合体を分析した。図9の代表的なDebyeプロットから分かるように、SECピークの各々のデータ部分(slice)におけるサンプルのモル質量を決定した。モル質量を、プロットの切片(intercept)から決定した[56−58]。濃度に比例するRIシグナル(青)と、濃度およびモル質量に比例する90°MALS検出器(赤)とを、重ね合わせ得る(図10)。
【0060】
モル質量(モルあたりのグラム)の分析を、図11〜図14に示す。MenA糖結合体、MenW135糖結合体およびMenY糖結合体は、より高いMWに関する低濃度の段部(shoulder)を有する主要なピークを有するが、MenC結合体はより均一な物質の単独のピークを有することを、この分析は示す。
【0061】
これらのピークの分析結果(kDa単位でのMW;Mw/Mnでの多分散性)は以下のとおりである:
【0062】
【表4】
本発明は例示によってのみ記載されており、本発明の範囲および精神の中に在るままに改変がなされ得ることが理解される。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−246490(P2011−246490A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−192126(P2011−192126)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2007−516078(P2007−516078)の分割
【原出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192126(P2011−192126)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2007−516078(P2007−516078)の分割
【原出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]