説明

GPCRGPR1の調節剤としての天然ペプチド及び誘導体並びにそれらの使用

本発明は、GPR1 GPCR(Gタンパク質共役レセプター)のリガンドとしての、ヒューマニン及びその誘導体の識別に関する。本発明は、GPR1レセプターの活性を調節する作用剤のスクリーニングアッセイの基礎としての、GPR1ポリペプチドとヒューマニンポリペプチドとの相互作用の使用を包含する。本発明はまた、GPR1/ヒューマニンポリペプチド相互作用を基礎とした診断アッセイ、並びに診断及びスクリーニングアッセイを行うためのキットを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、Gタンパク質共役レセプター(GPCR)、GPR1の新規なリガンドの識別及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
Gタンパク質共役レセプター(GPCR)は、細胞内のシグナルの伝達を担うタンパク質である。通常、GPCRは、7つの膜貫通部位を有する。リガンドがGPCRの部分又は断片に結合すると、シグナルが細胞内で伝達され、細胞の生物学的又は生理学的特性又は挙動の変化を引き起こす。G−タンパク質、エフェクター(細胞内酵素及びG−タンパク質により調節されるチャンネル)及びベーターアレスチンと共に、GPCRは、細胞内二次メッセンジャーの状態を細胞外入力と結び付けるシグナル伝達系モジュールの構成要素である。GPCR遺伝子及び遺伝子産物は、様々な生理学的プロセスを調節することができ、そして疾患の潜在的な原因となる。GPCRは、中枢神経系及び末梢生理学的プロセスの両方に対して重要であると思われる。GPCRタンパク質スーパーファミリーは、5つのファミリーに代表される:ファミリーI、ロドプシン及びベータ2−アドレナリンレセプターに代表されるレセプターで、現在、200を超えるユニークなメンバーにより代表される;ファミリーII、副甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチンレセプターファミリー;ファミリーIII、メタボトロピックグルタミン酸レセプターファミリー;ファミリーIV、CAMPレセプターファミリー、D.discoideumの走化性及び成長に重要;及びファミリーV、STE2等の真菌類の接合フェロモンレセプター。Gタンパク質は、グアニンヌクレオチドに結合する、アルファ、ベータ及びガンマサブユニットから構成されるヘテロ3量体タンパク質のファミリーの代表である。通常、これらのタンパク質は、シグナル伝達のために細胞表面レセプター(7つの膜貫通部位を含むレセプター)に結合する。実際、GPCRへのリガンドの結合に続き、コンフォメーションの変化がGタンパク質に伝えられ、それは、アルファ−サブユニットに結合したGDP分子のGTP分子への変換及びアルファ−サブユニットのベータ−ガンマ−サブユニットからのかい離を引き起こす。アルファ、ベータ及びガンマ−サブユニットのGTP−結合形態は、典型的には、エフェクター調節部分として機能し、cAMP(例えば、アデニル酸シクラーゼの活性化により)、ジアシルグリセロール又はイノシトールリン酸等の2次メッセンジャーの生成に導く。
【0003】
現在、機能が特定されていない既知のGPCRは、薬剤の作用及び開発の主要ターゲットを構成している。潜在的な予防及び治療特性を有する、新しいアゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニングに使用することができる新規なGタンパク質共役レセプターを識別するための努力が続けられている。嗅覚レセプターを除外しても、今日までに、300を超えるGPCRがクローニングされた。メカニズムから言えば、全臨床関連薬剤のおよそ50−60%が、様々なGPCRの機能を調節することにより作用する。
【0004】
GPR1(配列ID Nos:1(ヒトポリヌクレオチド配列、図1);2(ヒトアミノ酸配列、図2);3(マウスポリヌクレオチド配列、図3);4(マウスアミノ酸配列、図4);5(ラットポリヌクレオチド配列、図5);6(ラットアミノ酸配列、図6);7(アカゲザルポリヌクレオチド配列、図7);8(アカゲザルアミノ酸配列、図8);9(カニクイザルポリヌクレオチド配列、図9)及び10(カニクイザルアミノ酸配列、図10))は、オーファンGタンパク質共役レセプターとして記述されてきた。GPR1をコードする遺伝子は、ヒト第2染色体の2q33.3領域に帰属された。GPR1を、潜在的コレセプター活性についてのfusionアッセイにおいて、HIV−1、HIV−2及びSIVウイルス株の範囲で試験をした(Farzan et al.、J.Exp.Med.、186:405−411、1997;Shimizu et al.、J.Virol.、73:5231−5239、1999;Shimizu et al.、J.Gen.Virol.、89:3126−3136、2008;Shimizu et al.、AIDS、27:761−769、2009)。幾つかのHIV株は(GUN−1、GUN−1/A、GUN−1/S及びGUN−1/T)、GPR1をコレセプターとして効率的に使用した。従って、このレセプターは、ケモカインレセプターファミリーには属さない免疫不全症ウイルスのコレセプターのようである。Jinno−Oue et al.(J.Biol.Chem.、280:30924−30934、2005)は、GPR1のNH2−末端細胞外領域由来の合成ペプチドが、X4 HIV1による梗塞(infraction)を優先的に阻害することを示した。
【0005】
ヒューマニン(HN、配列ID No:12(ヒトヒューマニンアミノ酸配列、図12)は、最近同定されたペプチドであり、アルツハイマー病(AD)関連傷害に対して神経を保護する役割を有する(Hashimoto et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:6336−6341、2001)。事実、ヒューマニンは、最初にAD患者からの生存ニューロンのcDNAライブラリーから同定された。それ以来、その保護的役割は、様々なAD関連傷害からのみならず、プリオン誘導(Sponne et al.、Mol.Cell Neurosci.25:95−102、2004)及び化学物質誘導損傷(Mamiya及びUkai、Br.J.Pharmacol. 134:1597−1599、2001)に対しても記述されており、すなわち、その神経保護因子としての役割が広がった。続いて、他の多くの細胞毒性剤に対して保護作用を示し(Kariya et al.、Mol.Cell Biochem.、254:83−89、2003)、そして平滑筋細胞等の非神経細胞(Jung and Van Nostrand、J. Neurochem、82: 266−272、2003)、ラット褐色細胞腫細胞(Kariya et al.、Neuroreport、13:903−907、2002)及びリンパ球(Kariya et al.、Mol.Cell Biochem.、254:83−89、2003)を保護することが示された。構造的に、HNは、哺乳類のミトコンドリア16SリボソームRNA内のオープンリーディングフレームから翻訳される24アミノ酸ポリペプチドである(Hashimoto et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98:6336−6341、2001)。HNは、細胞内タンパク質であり、分泌タンパク質でもある。それは、(HNペプチドに特異的な抗体を用いたイムノブロット及び免疫組織化学的分析によって)正常マウス精巣及び結腸において検出された(Tajima et al.、Neurosci.Lett.、324:227−231、2002)。これまで、その産生の調節についてはほとんど知見がなかった。HNは、Bax−関連タンパク質(Guo et al.、Nature、22:456−461、2003)、IGF結合タンパク質−3(IGFBP−3)(Ikonen et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100;13042−13047、2003)、サイトカイン複合体関与CNTFレセプターアルファ/WSX−1/gp130(Hashimoto et al.、Mol.Biol.Cell.、20:2864−2873、2009)等の、様々なアポトーシス促進タンパク質のパートナーに結合することにより細胞の生存を促進するが、Gタンパク質共役レセプターFPRL1(別名FPR2)及びFPRL2(別名FPR3)にも高い親和性と効率で結合し、活性化する(Ying et al.、J.Immunol.、172:7078−7085、2004;Harada et al.、Biochem.Biophys.Res.Comm.、324:255−261、2004)。
【0006】
ケマリン又はケマリン誘導体をリガンドとして用いた、GPR1活性の調節剤(modifiers)の識別方法は、WO2007/149807に記載されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、GPR1 GPCR(Gタンパク質共役レセプター)のリガンドとしての、ヒューマニン及びその誘導体の識別に関する。本発明は、GPR1レセプターの活性を調節する作用剤のスクリーニングアッセイの基礎としての、GPR1ポリペプチドとヒューマニンポリペプチドとの相互作用の使用を包含する。本発明はまた、GPR1/ヒューマニンポリペプチド相互作用を基礎とした診断アッセイ、並びに診断及びスクリーニングアッセイを行うためのキットを包含する。
【0008】
本発明の種々の態様を以下に記述する:
1) 本発明は、GPR1の機能を調節する作用剤を識別する方法に関し、当該方法は:a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドと接触させる工程;及びb) GPR1ポリペプチドのヒューマニンポリペプチドへの相互作用を測定する工程であって、候補調節剤非存在下での相互作用に対する、候補調節剤存在下での相互作用の増大又は減少が、候補調節剤をGPR1の機能を調節する作用剤として識別する上記工程、を含む。
【0009】
2) 本発明のさらなる態様は、サンプル中の、GPR1の機能を調節する作用剤の存在を検出する方法に関し、当該方法は、a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、サンプルの存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドと接触させる工程;及びb) GPR1ポリペプチドのヒューマニンポリペプチドへの相互作用を測定する工程であって、候補調節剤非存在下での相互作用に対する、サンプル存在下での相互作用の増大又は減少が、サンプル中のGPR1の機能を調節する作用剤の存在を示す上記工程、を含む。
【0010】
3) 本発明のさらなる態様は、GPR1の機能を調節する作用剤を識別する方法に関し、当該方法は:a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドに接触させる工程;及びb) GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程であって、候補調節剤非存在下における活性に対する、候補調節剤の存在下における活性の変化が、候補調節剤をGPR1の機能を調節する作用剤として識別する上記工程、を含む。
【0011】
4) 本発明のさらなる態様は、サンプル中の、GPR1の機能を調節する作用剤の存在を検出する方法に関し、当該方法は:a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、サンプルの存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドと接触させる工程;b) GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程;及びc) GPR1及びヒューマニンポリペプチドを含み、サンプルを含まない反応において測定した活性の量を、GPR1、ヒューマニンポリペプチド及びサンプルを含む反応において測定した活性の量と比較する工程であって、サンプル非存在下における活性に対する、サンプル存在下における活性の変化が、サンプル中のGPR1の機能を調節する作用剤の存在を示す上記工程、を含む。
【0012】
5) 本発明のさらなる態様は、GPR1ポリペプチドのシグナル伝達を減少させる作用剤を識別する方法に関し、当該方法は:a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドと接触させる工程;b) 候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程;及びc) 候補調節剤の存在下で測定した活性を、候補調節剤の非存在下で測定した活性と比較する工程であって、候補調節剤の非存在下における活性に対する、候補調節剤の存在下における活性の減少が、候補調節剤をGPR1ポリペプチドのシグナル伝達を減少させる作用剤として識別する上記工程、を含む。
【0013】
6) 本発明のさらなる態様は、当該作用剤がアンタゴニストである、態様1)〜5)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0014】
7) 本発明のさらなる態様は、GPR1の機能を調節する作用剤を識別する方法に関し、当該方法は:a) GPR1ポリペプチドを候補調節剤と接触させる工程;b) 候補調節剤の存在下で、GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程;及びc) 候補調節剤の存在下で測定した活性を、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドと接触させるサンプル内で測定した活性と比較する工程であって、候補調節剤の存在下で測定した活性の量が、EC50で存在するヒューマニンポリペプチドにより引き起こされる量の少なくとも50%である場合に、当該候補調節剤をGPR1の機能を調節する作用剤として識別する上記工程、を含む。
【0015】
8) 本発明のさらなる態様は、サンプル中の、GPR1の機能を調節する作用剤の存在を検出する方法に関し、当該方法は:a) GPR1ポリペプチドをサンプルと接触させる工程;b) サンプルの存在下でGPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程;及びc) サンプルの存在下で測定した活性を、GPR1ポリペプチドがヒューマニンポリペプチドと接触する反応において測定した活性と比較する工程であって、サンプルの存在下で測定した活性の量が、EC50で存在するヒューマニンポリペプチドにより引き起こされる量の少なくとも20%である場合に、GPR1の機能を調節する作用剤が検出される上記工程、を含む。
【0016】
9) 本発明のさらなる態様は、GPR1ポリペプチドのシグナル伝達を増強する作用剤を識別する方法に関し、当該方法は:a) GPR1ポリペプチドを候補調節剤と接触させる工程;b) 候補調節剤の存在下でGPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程;及びc) 候補調節剤の存在下で測定した活性を、GPR1ポリペプチドがヒューマニンポリペプチドと接触する反応において測定した活性と比較する工程であって、候補調節剤の存在下で測定した活性の量が、EC50で存在するヒューマニンポリペプチドにより引き起こされる量の少なくとも10%である場合に、当該候補調節剤をGPR1のシグナル伝達を増強する作用剤として識別する上記工程、を含む。
【0017】
10) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチドが、そのEC50付近で(そして好ましくはそのEC50で)存在する、態様7)〜9)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0018】
11) 本発明のさらなる態様は、当該作用剤がアゴニストである、態様7)〜10)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0019】
12) 本発明のさらなる態様は、GPR1の機能を調節する当該作用剤がサンプル中に存在する、態様1)〜11)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0020】
13) 態様1)〜12)のいずれか1つに従う好ましい態様において、当該測定は、標識置換(label displacement)、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)、蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer)、蛍光消光(fluorescence quenching)及び蛍光偏光(fluorescence polarization)(好ましくは標識置換、蛍光共鳴エネルギー転移及び蛍光偏光から、そしてより好ましくは標識置換及び蛍光共鳴エネルギー転移から)から選択される方法を用いて行われる。
【0021】
14) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.2であり、かつ当該ヒューマニンポリペプチド配列がSEQ ID No.12であり、そして当該ヒューマニンポリペプチドが当該GPR1ポリペプチドに特異的に結合する、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0022】
15) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.2、SEQ ID No.4、SEQ ID No.6、SEQ ID No.8及びSEQ ID No.10から成る群より選択される、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0023】
16) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.2である、態様1)〜14)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0024】
17) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.4である、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0025】
18) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.6である、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0026】
19) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.8である、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0027】
20) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.10である、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0028】
21) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチド配列が、SEQ ID No.12、SEQ ID No.13、SEQ ID No.14及びSEQ ID No.15から成る群より選択される、態様1)〜13)又は15)〜20)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0029】
22) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチド配列がSEQ ID No.12である、態様1)〜20)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0030】
23) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチド配列がSEQ ID No.13である、態様1)〜13)又は15)〜20)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0031】
24) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチド配列がSEQ ID No.14である、態様1)〜13)又は15)〜20)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0032】
25) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチド配列がSEQ ID No.15である、態様1)〜13)又は15)〜20)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0033】
26) 本発明のさらなる態様は、当該ヒューマニンポリペプチドが、当該GPR1ポリペプチドに特異的に結合する、態様1)〜25)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0034】
27) 本発明の好ましい態様は、ヒューマニンポリペプチドが検出可能に標識された、態様1)〜26)のいずれか1つに従う方法に関する。当該ヒューマニンポリペプチドは、放射性同位体、蛍光体、蛍光の消光剤、酵素、アフィニティー・タグ及びエピトープタグから成る群より(好ましくは、放射性同位体、蛍光体及びエピトープタグから成る群より、そしてより好ましくは、放射性同位体及び蛍光体から成る群より)選択される種で検出可能に標識されることが好ましい。
【0035】
28) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチドが細胞内又は細胞上で発現する、態様1)〜27)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0036】
29) 本発明のさらなる態様は、当該接触が、当該GPR1ポリペプチドを発現する細胞内又は細胞上で行われる、態様1)〜28)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0037】
30) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチドが細胞膜内に存在する、態様1)〜27)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0038】
31) 本発明のさらなる態様は、当該細胞が、COS−7−細胞、CHO細胞、U2OS細胞、LM(TK−)細胞、NIH−3T3細胞、HEK細胞、K−562細胞及び1321N1星状細胞種細胞から成る群より選択される、態様28)〜30)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0039】
32) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチドが、合成リポソーム又はウイルス誘発性発芽膜上又はそれらの内部(そして好ましくはウイルス誘発性発芽膜上又はそれらの内部)に存在する、態様1)〜27)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0040】
33) 本発明のさらなる態様は、当該接触が、GPR1ポリペプチドを含有する合成リポソーム(Tajib et al.、Nature Biotechnology、18:649−654、2000)又はウイルス誘発性発芽膜上又はそれらの内部で行われる、態様1)〜27)又は32)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0041】
34) 本発明のさらなる態様は、当該方法が、さらにGα16の存在下で行われる、態様1)〜33)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0042】
35) 本発明のさらなる態様は、当該方法が、GPR1ポリペプチドを発現する細胞からの膜画分を用いて行われる、態様1)〜34)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0043】
36) 本発明のさらなる態様は、作用剤が、ペプチド、ポリペプチド、抗体又はその抗原結合フラグメント、脂質、炭水化物、核酸及び有機低分子から成る群より、好ましくはOLE_LINK2OLE_LINK3ペプチド、ポリペプチド、抗体又はその抗原結合フラグメント及び有機低分子OLE_LINK2OLE_LINK3から成る群より、そしてより好ましくはペプチド、ポリペプチド及び有機低分子から成る群より選択される、態様1)〜35)のいずれか1つに従う方法に関する。最も好ましくは、作用剤は有機低分子である。
【0044】
37) 本発明のさらなる態様は、当該GPR1ポリペプチドへの結合の測定が、2次メッセンジャーのレベルの変化の検出を含む、態様1)〜36)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0045】
38) 本発明のさらなる態様は、GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程が、2次メッセンジャーのレベルの変化の検出を含む、態様1)〜36)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0046】
39) 本発明のさらなる態様は、シグナル伝達活性を測定する工程が、グアニンヌクレオチドの結合又は交換、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、ベータ−アレスチン1の移動、ベータ−アレスチン2の移動、プロテインキナーゼC活性、ホスファチジルイノシトールの分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、アラキドン酸、MAPキナーゼ活性、チロシンキナーゼ活性又はレポーター遺伝子発現の測定を含む、態様1)〜38)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0047】
40) 好ましい態様において、態様39)に従うシグナル伝達活性の測定は、ベータ−アレスチンアッセイ(beta−arrestin−based assay)の使用を含む。
【0048】
41) 別の好ましい態様において、態様39)に従うシグナル伝達活性の測定は、FLIPRアッセイ又はエクオリンアッセイ、そして好ましくはエクオリンアッセイの使用を含む。
【0049】
42) 本発明のさらなる態様は、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害を診断する方法に関し、当該方法は:a) 組織サンプルを、ヒューマニンポリペプチドに特異的な抗体に接触させる工程;b) 抗体の組織サンプルへの結合を検出する工程;及びc) 工程(b)で検出された結合を標準と比較する工程であって、標準に対する結合性の違いがGPR1の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断である上記工程を含む。
【0050】
43) 本発明のさらなる態様は、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害を診断する方法に関し、当該方法は:a) 組織サンプルを、GPR1ポリペプチドに特異的な抗体及びヒューマニンポリペプチドに特異的な抗体に接触させる工程;b) 抗体の組織サンプルへの結合を検出する工程;及びc) 工程(b)で検出された結合を標準と比較する工程であって、標準に対する、いずれかの抗体又は両方の抗体の結合性の違いがGPR1の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断である上記工程を含む。
【0051】
44) 本発明のさらなる態様は、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害を診断する方法に関し、当該方法は:a) 組織サンプルから核酸を単離する工程;b) 核酸を鋳型として用いてヒューマニンポリヌクレオチドを増幅する工程;及びc) 工程(b)で生成した増幅されたヒューマニンポリヌクレオチドの量を標準と比較する工程であって、標準に対する、増幅されたヒューマニンポリヌクレオチドの量の違いが、GPR1の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断である上記工程、を含む。好ましい態様において、増幅工程はRT/PCRを含む。別の好ましい態様において、当該量を比較する工程は、マイクロアレイ上で行われる。
【0052】
45) 本発明のさらなる態様は、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害を診断する方法に関し、当該方法は:a) 組織サンプルから核酸を単離する工程;b) 核酸を鋳型として用いてヒューマニンポリヌクレオチドを増幅する工程;及びc) 工程(b)で生成した増幅されたヒューマニンポリヌクレオチドの配列を標準と比較する工程であって、標準に対する配列における違いが、GPR1の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断である上記工程、を含む。好ましい態様において、増幅工程はRT/PCRを含む。別の好ましい態様において、標準はSEQ ID NO:11である。別の好ましい態様において、配列を比較する当該工程はミニ配列分析を含む。別の好ましい態様において、配列を比較する当該工程は、マイクロアレイ上で行われる。
【0053】
46) 本発明のさらなる態様は、単離したGPR1ポリペプチド及び単離したヒューマニンポリペプチドを含む組成物に関する。
【0054】
47) 本発明のさらなる態様は、単離したGPR1ポリペプチド及びその包装材を含む、GPR1シグナル伝達を調節する作用剤のスクリーニング又はGPR1ポリペプチドの異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断のためのキットに関する。好ましい態様において、当該キットはさらにヒューマニンポリペプチドを含む。本発明に従う診断用キットは、例えば、組織サンプル又は組織サンプルから調製した抽出物が、上昇したヒューマニン又はGPR1のレベル又は活性を有するか否かの決定を可能にする。当該キットはまた、GPR1又はヒューマニンポリペプチドをコードする遺伝子における突然変異の識別及びGPR1又はヒューマニンポリペプチドをコードする核酸のレベルの異常の検出を可能にするものであってもよい。
【0055】
類似の組織サンプル又は類似の組織サンプルから調製した抽出物から一般的に観察されるレベルと比較して、組織サンプル又は組織サンプルから調製した抽出物において、レベルが10%以上上昇する場合には、ヒューマニン又はGPR1は「上昇したレベル」を有する。
【0056】
一般的に観察されるレベルと比較して、レベルが10%以上増大又は減少する場合には、GPR1又はヒューマニンポリペプチドをコードする核酸は「異常なレベル」を有する。
【0057】
48) 本発明のさらなる態様は、GPR1ポリペプチドをコードする単離したポリヌクレオチド及びその包装材を含む、GPR1シグナル伝達を調節する作用剤のスクリーニング又はGPR1ポリペプチドの異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断のためのキットに関する。好ましい態様において、当該キットはさらに、ヒューマニンポリペプチドをコードする単離したポリヌクレオチドを含む。
【0058】
49) 本発明のさらなる態様は、GPR1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでトランスフォームされた細胞及びその包装材を含む、GPR1シグナル伝達を調節する作用剤のスクリーニング又はGPR1ポリペプチドの異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断のためのキットに関する。好ましい態様において、当該キットはさらに、ヒューマニンポリペプチドをコードする単離したポリヌクレオチド又はヒューマニンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する細胞を含む。
【0059】
本明細書で使用する「GPR1ポリペプチド」という用語は、下記の2つの本質的な特性を有するポリペプチドを意味する:1) GPR1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に対し、少なくとも70%のアミノ酸相同性、そして好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%のアミノ酸相同性を有し;そして2) GPR1ポリペプチドはGPR1活性を有する、すなわち、当該ポリペプチドは、ヒューマニンポリペプチド又はその機能的フラグメントに反応する。最適な場合には、「GPR1ポリペプチド」はまた、本明細書で定義したGPR1シグナル伝達活性を有する。
【0060】
本明細書で使用する「GPR1ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で定義したGPR1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0061】
本明細書で使用する「GPR1活性」という用語は、GPR1ポリペプチドによる、ヒューマニンポリペプチド又はその機能性フラグメントの特異的結合を意味する。
【0062】
本明細書で使用する「GPR1シグナル伝達活性」という用語は、GPR1ポリペプチドによるシグナル伝達の開始又は伝播を意味する。GPR1シグナル伝達活性は、下記の1又は2以上をアッセイすることにより、シグナル伝達カスケードの検出可能な工程を計測することによりモニターされる:Gタンパク質上のGTP交換に対するGDPの刺激;ベータ−アレスチン1の移動;ベータ−アレスチン2の移動;アデニル酸シクラーゼ活性の変化;プロテインキナーゼCの調節;(2次メッセンジャー、ジアシルグリセロール及びイノシトール三リン酸を生成する)ホスファチジルイノシトールの分解;細胞内カルシウムの流動;MAPキナーゼの活性化;チロシンキナーゼの調節;又は遺伝子又はレポーター遺伝子活性の調節。測定可能な活性が、下記のGPR1活性のアッセイのいずれかに関して、ヒューマニンポリペプチドの実質的非存在下で得られたベースラインから10%以上上がり又は下がった場合に、シグナル伝達カスケードにおける検出可能な工程が開始され又は仲介されたと考える。測定可能な活性は、例えばベータ−アレスチンの移動の測定におけるように、直接測定することができる。あるいは、測定可能な活性は、例えば、レポーター遺伝子のアッセイにおけるように、間接的に測定することができる。
【0063】
本明細書で使用する「検出可能な工程」という用語は、例えば、2次メッセンジャーの測定又は修飾(例えばリン酸化)タンパク質の検出により直接的に、あるいは、例えばその工程の下流の効果をモニターすることにより間接的に測定することができる工程を意味する。例えば、アデニル酸シクラーゼの活性化によりcAMPが生成する。アデニル酸シクラーゼの活性は、例えば、その試験においてcAMPの産生をモニターするアッセイにより直接的に、あるいはcAMPの実際のレベルの計測により間接的に計測することができる。
【0064】
本明細書で使用する「単離された」という用語は、その組成において、異なる性質を有する共雑分子が50(重量)%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満、そして最も好ましくは2%未満である、分子、例えばポリペプチド又はポリヌクレオチドの集合を意味する。「単離された」という用語がGPR1ポリペプチドに適用される場合には、その語は、特に、脂質膜に結合し又は脂質膜に組み込まれたGPR1ポリペプチドをも包含することを意味する。
【0065】
本明細書で使用する「ヒューマニンポリペプチド」という用語は、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつ/又はそのシグナル伝達活性を活性化するSEQ ID NO:12、13、14又は15で表されるポリペプチドのいずれかに対して(好ましくは、SEQ ID NO:12で表されるポリペプチドに対して)、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドを意味する。「ヒューマニンポリペプチド」はまた、上記の定義に合致するポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:12の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性のレベルの少なくとも10%(好ましくは、少なくとも50%)を保持する当該フラグメントをも意味する。得られたポリペプチドが、SEQ ID NO:12で表される全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性のレベルの少なくとも10%(好ましくは、少なくとも50%)を保持する限り、ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12に対して、付加、挿入、欠失又は置換を含むことができる。
【0066】
好ましい態様において、「ヒューマニンポリペプチド」という用語は、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつ/又はそのシグナル伝達活性を活性化するSEQ ID NO:12で表されるポリペプチドに対し、少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドを意味する。
【0067】
別の好ましい態様において、「ヒューマニンポリペプチド」という用語は、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつ/又はそのシグナル伝達活性を活性化するSEQ ID NO:13で表されるポリペプチドに対し、少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドに関する。
【0068】
さらに別の好ましい態様において、「ヒューマニンポリペプチド」という用語は、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつ/又はそのシグナル伝達活性を活性化するSEQ ID NO:14で表されるポリペプチドに対し、少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドに関する。
【0069】
さらになお別の好ましい態様において、「ヒューマニンポリペプチド」という用語は、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつ/又はそのシグナル伝達活性を活性化するSEQ ID NO:15で表されるポリペプチドに対し、少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドに関する。
【0070】
「特異的に結合する」という用語は、ヒューマニンポリペプチドが500nM以下のEC50又はKdを有することを意味する。
【0071】
誘導体は、類似のポリペプチド、融合タンパク質又はそれらの欠失体であってもよい。
【0072】
GPR1に結合し、かつ/又はGPR1のシグナル伝達活性を活性化するために必要な配列に加えて、切断型ヒューマニンポリペプチドを含むヒューマニンポリペプチドは、例えば、ヒューマニンポリペプチド融合タンパク質におけるように、付加的な配列を含むことができる。融合のパートナーの非限定的な例は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HA−タグ、Mycタグ、FLAGタグ)を含む。
【0073】
本明細書で使用する「ヒューマニンポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で定義したヒューマニンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はその相補体を意味する。「ヒューマニンポリヌクレオチド」は、Gly14−ヒューマニン、d−Ser14−ヒューマニン又はAla8−ヒューマニン等の切断型又は修飾ヒューマニンをコードするポリヌクレオチド配列であってもよい。
【0074】
本発明はまた、上記の方法により識別され又は検出される作用剤にも関する。加えて、本発明は、当該作用剤を含む組成物に関する。
【0075】
本発明はさらに、本発明に従う作用剤又は組成物の、GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害の予防又は治療のための医薬の製造のための使用を意図する。
【0076】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1ー関連障害は、中枢神経系(CNS)障害から成る群より選択される。CNS障害は、中枢神経系の障害並びに末梢神経系の障害を含む。CNS障害は、脳損傷、脳血管疾患及びそれらの影響、パーキンソン病、皮質基底核変性症、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む痴呆、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脳卒中、脳卒中後障害、ポスト外傷性脳損傷及び小血管性脳血管疾患を包含するが、これらに限定されるものではない。アルツハイマー病、血管性痴呆、レビー小体型認知症、クロモソーム第17染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型痴呆、ピック病を含む前頭側頭型痴呆、進行性核性麻痺、皮質基底核変性症、ハンチントン病、視床変性症、クロイツフェルト−ヤコブ痴呆、HIV痴呆、痴呆を伴う精神分裂病及びコルサコフ精神病等の痴呆もまた、CNS障害と考えられる。同様に、軽度の認知障害、加齢関連性記憶障害、加齢関連性認知機能低下、血管性認知障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害及び学習障害を伴う小児における記憶障害等の認知関連障害もまた、CNS障害と考えられる。この定義の意味において、疼痛もまたCNS障害と考えられる。疼痛は、多発性硬化症、脊髄損傷、坐骨神経痛、腰椎術後疼痛症候群、外傷性脳損傷、てんかん、パーキンソン病、脳卒中後障害及び脳及び脊髄の血管性病変(例えば、梗塞、脳溢血、血管奇形)等のCNS障害と関連付けることができる。非中枢神経障害性疼痛は、乳房切除後疼痛と関連するもの、幻肢感、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、三叉神経性ジアラジオキュロパシー(trigeminal neuralgiaradioculopathy)、術後疼痛、HIV/AIDS関連疼痛、癌疼痛、代謝性神経障害(例えば、糖尿病性神経障害、結合組織疾患に二次的な脈管神経障害)、例えば、肺癌、又は白血病、又はリンパ腫、又は前立腺癌、結腸癌若しくは胃癌に関連する腫瘍随伴症多発性神経障害、三叉神経痛、頭蓋神経痛およびヘルペス後神経痛を含む。末梢神経損傷に関連する疼痛、中心性疼痛(すなわち、脳虚血による)及び様々な慢性疼痛、すなわち、腰痛、背部疼痛(腰部疼痛)、炎症性及び/又はリウマチ性疼痛。頭痛(例えば、前兆のある偏頭痛、前兆のない偏頭痛、及びその他の偏頭痛障害)、一過性及び慢性緊張性頭痛、緊張性様頭痛、群発性頭痛並びに慢性発作性片側頭痛もまたCNS障害である。膵炎、腸膀胱炎(intestinal cystitis)、月経困難症、過敏性腸症候群、クローン病、胆石疝痛、尿管疝痛、心筋梗塞等の内臓疼痛及び骨盤腔疼痛症候群、例えば、外陰部痛、精巣痛、尿道症候群及びプロタトジニア(protatodynia)もまたCNS障害である。また、急性疼痛、例えば術後疼痛及び外傷後疼痛も神経系の障害であると考えられる。
【0077】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1ー関連障害は、さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーから成る群より選択される。
【0078】
炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、下記の群の疾患及び障害の1つ、幾つか又はすべてを含むが、これらに限定されるものではない:
1) 急性肺障害(ALI);成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS);慢性気管支炎若しくはそれに関連する呼吸困難を含む慢性閉塞性肺(pulmonary)、気道又は肺(lung)疾患(COPD,COAD又はCOLD);肺気腫;及び他の薬物治療、特に他の吸入薬物治療に起因する気道過敏性の悪化。特に、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、COPD,COAD及びCOLDを含む。
【0079】
2) さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、いかなるタイプの、又はいかなる病因による気管支炎をも包含する。
【0080】
3) さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、いかなるタイプの、又はいかなる病因による気管支拡張症及び塵肺症をも包含する。
【0081】
4) さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、内因性(非アレルギー性)喘息若しくは外因性(アレルギー性)喘息、軽度の喘息、中等度の喘息、重症喘息、気管支炎性喘息、運動誘発喘息、職業性喘息及び細菌感染に続いて誘発される喘息を含む、いかなるタイプの、又はいかなる病因による喘息をも包含する。
【0082】
5) さらなる炎症性疾患は、下記の群の疾患及び障害の1つ、幾つか又はすべてを含む:
【0083】
5a) 特に、炎症性疾患は、好中球関連障害、特に、過剰−好中球増多症を含む、気道及び/又は肺に影響を与えるような気道の好中球関連障害を含む。さらに、好中球関連障害はまた、歯周炎、糸球体腎炎、嚢胞性線維症をも含む。
【0084】
5b) さらなる炎症性疾患は、乾癬、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ヘルペス状皮膚炎、硬皮症、過敏性血管炎、じんましん、紅斑性狼瘡及び表皮剥離等の皮膚疾患を含む。
【0085】
5c) さらなる炎症性疾患はまた、炎症相を有する疾患又は状態にも関連する。炎症相を有する疾患又は状態は、結膜炎、角膜乾燥症及び春期カタル等の眼に影響を与える疾患及び状態;アレルギー性鼻炎を含む鼻に影響を与える疾患;並びに全身性紅斑性狼瘡、多発性軟骨炎、硬皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膠原病、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーブンス・ジョンソン症候群、突発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患 (例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、バセドウ病眼症、慢性過敏性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、角膜乾燥症及び春季カタル、間質性肺線維症、乾癬性関節炎及び糸球体腎炎等の、自己免疫反応が関連し、又は自己免疫相若しくは自己免疫的な病因を有する炎症性疾患、を含むが、これらに限定されるものではない。
【0086】
5d) さらに、自己免疫反応が関連し、又は自己免疫相若しくは自己免疫的な病因を有する炎症性疾患は、間接リウマチ、橋本病及びI又はII型糖尿病を含む。
【0087】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は、さらに、心血管障害から成る群より選択される。
【0088】
心血管障害は、(心臓を含む)心血管系統の1又は2以上の病的状態及び依存性組織の疾患を意味する。心血管系統の病的状態及び依存性組織の疾患は、突発性心筋症、糖尿病性心筋症を含む代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬剤誘発性心筋症、虚血性心筋症及び高血圧性心筋症等の心筋の障害(心筋症又は心筋炎);大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈等の主要血管のアテローム性疾患(大血管性疾患);網膜細動脈、糸球体細動脈、神経栄養血管、心細動脈、及び目、腎臓、心臓及び中枢及び末梢神経系の関連する毛細血管等の細血管の中毒性、薬剤誘発性及び(高血圧性及び/又は糖尿病性疾患を含む)代謝疾患(微小血管障害);並びに大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈等の主要血管のアテローム病変のプラーク破裂を含むが、これらに限定されるものではない。
【0089】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1ー関連障害は、さらに、神経炎症から成る群より選択される。
【0090】
神経炎症は、細胞情報伝達分子の産生、グリア(グリア、グリア)の活性化経路及び反応の活性化、炎症促進性サイトカイン又はケモカイン、アストロサイトの活性化経路及び反応の活性化、ミクログリアの活性化経路及び反応の活性化、一酸化窒素合成酵素の産生及び一酸化窒素の蓄積、急性期タンパク質、シナプトフィジン及びシナプス後肥厚部タンパク95(PSD−95)の喪失、補体カスケードの構成要素、シナプス機能の喪失又は減少、プロテインキナーゼ活性(例えば、細胞死関連プロテインキナーゼ活性)、行動障害、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、細胞死(例えば、神経細胞死)及び/又はアミロイド班のアミロイドβ沈着等の酸化ストレス関連反応を意味する。
【0091】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は、さらに、免疫応答から成る群より選択される。
【0092】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は、さらに、嚢胞性線維症、肺線維症、肺高血圧、創傷治癒、糖尿病性腎症、移植組織における炎症の減少、病原微生物により引き起こされる炎症性疾患から成る群より選択される。
【0093】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は、さらに、HIV−介在レトロウイルス感染から成る群より選択される。
【0094】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は、癌、腫瘍転移、卵巣及び子宮腫瘍から成る群より選択される。
【0095】
−ここで、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は、女性不妊症から成る群より選択される。
【0096】
本発明はさらに、ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害の予防又は治療のための医薬の製造のための、本発明の作用剤又は組成物の使用を意図する。
【0097】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、中枢神経系(CNS)障害から成る群より選択されCNS障害は、中枢神経系の障害並びに末梢神経系の障害を含む。CNS障害は、脳損傷、脳血管疾患及びそれらの影響、パーキンソン病、皮質基底核変性症、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む痴呆、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脳卒中、脳卒中後障害、ポスト外傷性脳損傷及び小血管性脳血管疾患を包含するが、これらに限定されるものではない。アルツハイマー病、血管性痴呆、レビー小体型認知症、クロモソーム第17染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型痴呆、ピック病を含む前頭側頭型痴呆、進行性核性麻痺、皮質基底核変性症、ハンチントン病、視床変性症、クロイツフェルト−ヤコブ痴呆、HIV痴呆、痴呆を伴う精神分裂病及びコルサコフ精神病等の痴呆もまた、CNS障害と考えられる。同様に、軽度の認知障害、加齢関連性記憶障害、加齢関連性認知機能低下、血管性認知障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害及び学習障害を伴う小児における記憶障害等の認知関連障害もまた、CNS障害と考えられる。この定義の意味において、疼痛もまたCNS障害と考えられる。疼痛は、多発性硬化症、脊髄損傷、坐骨神経痛、腰椎術後疼痛症候群、外傷性脳損傷、てんかん、パーキンソン病、脳卒中後障害及び脳及び脊髄の血管性病変(例えば、梗塞、脳溢血、血管奇形)等のCNS障害と関連付けることができる。非中枢神経障害性疼痛は、乳房切除後疼痛と関連するもの、幻肢感、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、三叉神経性ジアラジオキュロパシー(trigeminal neuralgiaradioculopathy)、術後疼痛、HIV/AIDS関連疼痛、癌疼痛、代謝性神経障害(例えば、糖尿病性神経障害、結合組織疾患に二次的な脈管神経障害)、例えば、肺癌、又は白血病、又はリンパ腫、又は前立腺癌、結腸癌若しくは胃癌に関連する腫瘍随伴症多発性神経障害、三叉神経痛、頭蓋神経痛およびヘルペス後神経痛を含む。末梢神経損傷に関連する疼痛、中心性疼痛(すなわち、脳虚血による)及び様々な慢性疼痛、すなわち、腰痛、背部疼痛(腰部疼痛)、炎症性及び/又はリウマチ性疼痛。頭痛(例えば、前兆のある偏頭痛、前兆のない偏頭痛、及びその他の偏頭痛障害)、一過性及び慢性緊張性頭痛、緊張性様頭痛、群発性頭痛並びに慢性発作性片側頭痛もまたCNS障害である。膵炎、腸膀胱炎(intestinal cystitis)、月経困難症、過敏性腸症候群、クローン病、胆石疝痛、尿管疝痛、心筋梗塞等の内臓疼痛及び骨盤腔疼痛症候群、例えば、 外陰部痛、精巣痛、尿道症候群及びプロタトジニア(protatodynia)もまたCNS障害である。また、急性疼痛、例えば術後疼痛及び外傷後疼痛も神経系の障害であると考えられる。
【0098】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーから成る群より選択される。
【0099】
炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、下記の群の疾患及び障害の1つ、幾つか又はすべてを含むが、これらに限定されるものではない:
【0100】
1) 急性肺障害(ALI);成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS);慢性気管支炎若しくはそれに関連する呼吸困難を含む慢性閉塞性肺(pulmonary)、気道又は肺(lung)疾患(COPD,COAD又はCOLD);肺気腫;及び他の薬物治療、特に他の吸入薬物治療に起因する気道過敏性の悪化。特に、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、COPD,COAD及びCOLDを含む。
【0101】
2) さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、いかなるタイプの、又はいかなる病因による気管支炎をも包含する。
【0102】
3) さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、いかなるタイプの、又はいかなる病因による気管支拡張症及び塵肺症をも包含する。
【0103】
4) さらに、炎症性疾患、閉塞性気道疾患及びアレルギーは、内因性(非アレルギー性)喘息若しくは外因性(アレルギー性)喘息、軽度の喘息、中等度の喘息、重症喘息、気管支炎性喘息、運動誘発喘息、職業性喘息及び細菌感染に続いて誘発される喘息を含む、いかなるタイプの、又はいかなる病因による喘息をも包含する。
【0104】
5) さらなる炎症性疾患は、下記の群の疾患及び障害の1つ、幾つか又はすべてを含む:
【0105】
5a) 特に、炎症性疾患は、好中球関連障害、特に、過剰−好中球増多症を含む、気道及び/又は肺に影響を与えるような気道の好中球関連障害を含む。さらに、好中球関連障害はまた、歯周炎、糸球体腎炎、嚢胞性線維症をも含む。
【0106】
5b) さらなる炎症性疾患は、乾癬、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ヘルペス状皮膚炎、硬皮症、過敏性血管炎、じんましん、紅斑性狼瘡及び表皮剥離等の皮膚疾患を含む。
【0107】
5c) さらなる炎症性疾患はまた、炎症相を有する疾患又は状態にも関連する。炎症相を有する疾患又は状態は、結膜炎、角膜乾燥症及び春期カタル等の眼に影響を与える疾患及び状態;アレルギー性鼻炎を含む鼻に影響を与える疾患;並びに全身性紅斑性狼瘡、多発性軟骨炎、硬皮症、ウェゲナー肉芽腫症、膠原病、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーブンス・ジョンソン症候群、突発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患 (例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、バセドウ病眼症、慢性過敏性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、角膜乾燥症及び春季カタル、間質性肺線維症、乾癬性関節炎及び糸球体腎炎等の、自己免疫反応が関連し、又は自己免疫相若しくは自己免疫的な病因を有する炎症性疾患、を含むが、これらに限定されるものではない。
【0108】
5d) さらに、自己免疫反応が関連し、又は自己免疫相若しくは自己免疫的な病因を有する炎症性疾患は、間接リウマチ、橋本病及びI又はII型糖尿病を含む。
【0109】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、心血管障害から成る群より選択される。
【0110】
心血管障害は、(心臓を含む)心血管系統の1又は2以上の病的状態及び依存性組織の疾患を意味する。心血管系統の病的状態及び依存性組織の疾患は、突発性心筋症、糖尿病性心筋症を含む代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬剤誘発性心筋症、虚血性心筋症及び高血圧性心筋症等の心筋の障害(心筋症又は心筋炎);大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈等の主要血管のアテローム性疾患(大血管性疾患);網膜細動脈、糸球体細動脈、神経栄養血管、心細動脈、及び目、腎臓、心臓及び中枢及び末梢神経系の関連する毛細血管等の細血管の中毒性、薬剤誘発性及び(高血圧性及び/又は糖尿病性疾患を含む)代謝疾患(微小血管障害);並びに大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈等の主要血管のアテローム病変のプラーク破裂を含むが、これらに限定されるものではない。
【0111】
ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、神経炎症から成る群より選択される。神経炎症は、細胞情報伝達分子の産生、グリア(グリア、グリア)の活性化経路及び反応の活性化、炎症促進性サイトカイン又はケモカイン、アストロサイトの活性化経路及び反応の活性化、ミクログリアの活性化経路及び反応の活性化、一酸化窒素合成酵素の産生及び一酸化窒素の蓄積、急性期タンパク質、シナプトフィジン及びシナプス後肥厚部タンパク95(PSD−95)の喪失、補体カスケードの構成要素、シナプス機能の喪失又は減少、プロテインキナーゼ活性(例えば、細胞死関連プロテインキナーゼ活性)、行動障害、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、細胞死(例えば、神経細胞死)及び/又はアミロイド班のアミロイドβ沈着等の酸化ストレス関連反応を意味する。
【0112】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、免疫応答から成る群より選択される。
【0113】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、さらに、嚢胞性線維症、肺線維症、肺高血圧、創傷治癒、糖尿病性腎症、移植組織における炎症の減少、病原微生物により引き起こされる炎症性疾患から成る群より選択される。
【0114】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、癌、腫瘍転移、卵巣及び子宮 腫瘍から成る群より選択される。
【0115】
−ここで、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、女性不妊症から成る群より選択される。
【0116】
−本発明はまた、医薬の製造のための、本発明の切断型(truncated)及び/又は修飾ヒューマニンポリペプチド又は全長ヒューマニンポリペプチドの使用に関する。
【0117】
−当該医薬は、GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害の治療に適用してもよく、当該GPR1−関連疾患又はGPR1ー関連障害は、本明細書の上記部分に定義した群から優先的に選択される。
【0118】
−当該医薬は、ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害の治療に適用してもよく;当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害は、本明細書の上記部分に定義した群から優先的に選択される。
【0119】
−本明細書で使用する「候補化合物」及び「候補調節剤」という用語は、GPR1ポリペプチドへのリガンドの結合を調節する能力又はGPR1ポリペプチドの活性を調節する能力について評価を行う化合物又は組成物を意味する。候補調節剤は、例えば、低分子化合物、動物、植物、細菌又は真菌細胞の抽出物中並びにかかる細胞からの調整培地に含まれる化合物を包含する天然又は合成化合物でありえる。好ましくは、候補調節剤は、天然又は合成化合物であり得、特に有機低分子化合物である。
【0120】
−本明細書で使用する「低分子」という用語は、3000ダルトン未満、好ましくは1500未満、さらにより好ましくは1000未満、そして最も好ましくは600ダルトン未満の分子量を有する化合物を意味する。「有機低分子」は、炭素を含む低分子化合物である。
【0121】
−本明細書で使用する「結合性の変化」又は「活性の変化」という用語及び「結合性の差」又は「活性の差」という同義語は、記載されたアッセイにおける、結合性又はシグナル伝達活性の少なくとも10%の増大又は減少を意味する。
【0122】
−本明細書で使用する「ヒューマニンポリペプチドのGPR1への結合を許容する条件」という用語は、例えば、温度、塩濃度、pH及びタンパク質濃度の条件等、その条件下でOLE_LINK4OLE_LINK5ヒューマニンポリペプチドがGPR1に結合する条件を意味する。正確な結合条件は、例えば、そのアッセイが生きた細胞を用いるか、細胞の膜画分のみを用いるか、又は細胞のタンパク質画分のみを用いるか等のアッセイの性質により変わる。OLE_LINK4OLE_LINK5
−本明細書で使用する「ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件」という用語は、例えば、温度、塩濃度、pH及びタンパク質濃度の条件等、その条件下でヒューマニンポリペプチドがGPR1に結合する条件を意味する。正確な結合条件は、例えば、そのアッセイが生きた細胞を用いるか、細胞の膜画分のみを用いるか、又は細胞のタンパク質画分のみを用いるか等のアッセイの性質により変わる。
【0123】
−本明細書で使用する「サンプル」という用語は、GPR1ポリペプチドへの結合又はGPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を調節する主体の存在について試験を行う分子のソース(source)を意味する。
【0124】
−サンプルは、環境サンプル、動物、植物、酵母若しくは細菌細胞又は組織の天然抽出物、臨床サンプル、合成サンプル又は組み換え細胞若しくは発酵プロセスからの調整培地でありえる。「組織サンプル」という用語は、GPR1ポリペプチド、ヒューマニンポリペプチド、GPR1又はヒューマニンポリペプチドをコードする核酸又はリガンド結合性及び/又はGPR1ポリペプチドの活性を調節する主体の存在、量、質又は活性について試験を行う組織を意味する。
【0125】
−本明細書で使用する「組織」という用語は、生物内で特定の機能を行う細胞の集合体を意味する。本明細書で使用する「組織」という用語は、特定の生理学的領域からの細胞素材を意味する。特定の組織の細胞は、幾つかの異なるタイプの細胞を含むことができる。その非限定的な例は脳組織であり、これはさらにニューロン及びグリア細胞、並びに毛細管内皮細胞及び血液細胞を含み、これらはすべてその組織セクション又はサンプルに含まれる。固体組織に加えて、「組織」という用語は、血液などの非固体組織を包含することを意図している。
【0126】
−本明細書で使用する「膜画分」という用語は、GPR1ポリペプチドを含む細胞脂質膜の調製物を意味する。本明細書でこの用語が使用される場合には、「膜画分」は、非膜関連細胞成分の少なくとも一部(すなわち、少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも60%、そして最も好ましくは少なくとも90%)が除かれている点で細胞ホモジネートと区別される。「膜関連」という用語は、脂質膜に組み込まれているか、又は脂質膜に組み込まれている成分と物理的に関連を有する細胞成分を意味する。
【0127】
−本明細書で使用する「2次メッセンジャー」という用語は、GPCRからのシグナルの伝達に関与するGタンパク質共役レセプターの活性化により生成され又はその濃度の変化が引き起こされる分子を意味する。2次メッセンジャーの非限定的な例は、cAMP、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸及び細胞内カルシウムを含む。「2次メッセンジャーのレベルの変化」という用語は、候補調節剤の非存在下で行われたアッセイにおける検出量に対する、その2次メッセンジャーの検出レベルにおける少なくとも10%の増大又は減少を意味する。
【0128】
−本明細書で使用する「エクオリンアッセイ(aequorin−based assay)」という用語は、活性化GPCRにより引き起こされる細胞内カルシウムの流れを測定する、GPCR活性についてのアッセイを意味し、細胞内カルシウムの流れは、細胞内で発現したエクオリンの蛍光により測定される。
【0129】
−本明細書で使用する「結合」という用語は、リガンド(例えば、ヒューマニンポリペプチド)のレセプター(例えば、GPR1)との物理的な結合を意味する。本明細書でこの用語が使用される場合には、結合が500nM以下のEC50又はKdで起こるならば、それは「特異的」である。
【0130】
−本明細書で使用する「EC50」という用語は、ヒューマニンポリペプチド又は他のリガンドの結合及びGPR1ポリペプチドの機能的活性を含む、得られた活性が、同じアッセイを用いて測定可能なそのGPR1活性の最大値の50%である作用剤の濃度を意味する。別の表現をすれば、「EC50」は、100%の活性を、アゴニストをさらに添加しても増大しない活性の量に設定した場合の、50%の活性を与える作用剤の濃度である。「ヒューマニンポリペプチドのEC50」は、ヒューマニンポリペプチドの性質によって変化することに留意すべきであり;例えば、変異ヒューマニンポリペプチド(すなわち、挿入、欠失、置換又はヒト以外の種からのヒューマニンポリペプチド分子を含む他のポリペプチドとの融合、及び上記のヒューマニンポリペプチドの定義を充足するそれらの変異型)は、野生型ヒューマニンポリペプチドに比べ、より高い、より低い又は同等のEC50値を持ちえる。従って、ヒューマニンポリペプチド変異配列が、SEQ ID NO:12の野生型ヒューマニンポリペプチドと異なる場合には、当業者は、その変異型のEC50を従来の方法に従って決定することができる。あるヒューマニンポリペプチドのEC50は、少なくともGPR1応答を飽和させるか又は最大値まで上昇させる量のヒューマニンポリペプチドの存在下で、一定量のGPR1ポリペプチドの活性についてアッセイを行い、次いで測定されたGPR1活性をヒューマニンポリペプチドの濃度に対してプロットすることにより測定される。
【0131】
−本明細書で使用する「IC50」という用語は、GPR1レセプターの最大活性を50%減少させるアンタゴニスト又はインバースアゴニストの濃度である。
【0132】
−本明細書で使用する「Kd」という用語は、解離定数を意味する。解離定数は、特定のタンパク質の結合部位の半分が占められている状態におけるリガンドの濃度に相当するモル濃度(M)、すなわち、リガンドが結合しているタンパク質の濃度が、リガンドが結合していないタンパク質の濃度と等しい状態のリガンドの濃度である。
【0133】
−本明細書で使用する「検出可能に標識された」という用語は、分子の特性、例えば、容易に検出できる官能基(標識)を組み込む構造的な修飾を有するヒューマニンポリペプチド又は他のGPR1リガンドを意味する。検出可能な標識は、蛍光性化合物、同位体標識化合物、化学発光化合物、量子ドット(quantum dot)標識、ビオチン、酵素、高電子密度試薬(electron−dense reagents)及び抗血清又はモノクロナル抗体が入手できるハプテン又はタンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。様々な検出方法は、分光的、光化学的、放射化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的手段を含むが、これらに限定されるものではない。
【0134】
−本明細書で使用する「アフィニティータグ(affinity tag)」という用語は、標識された分子に、その標識に結合する試薬によって特異的に結合される能力を付与する、目的の分子に結合した標識(例えば、ヒューマニンポリペプチド又は他のGPR1リガンド)を意味する。アフィニティータグは、(「エピトープタグ」として知られる)抗体に対するエピトープ、ビオチン、6X His及びGSTを含むが、これらに限定されるものではない。アフィニティータグは、標識種の精製並びに検出に用いることができる。
【0135】
−本明細書で使用する「結合の減少」という用語は、GPR1の既知又は被疑調節剤を用いたアッセイで検出される結合量における、その既知又は被疑調節剤を欠いたそのアッセイで検出される結合量に対する、少なくとも10%の減少を意味する。
【0136】
−本明細書で使用する「供給する」という用語は、医薬又は作用剤について使用する場合には、アッセイ混合物への又は培養中の細胞への医薬又は作用剤の添加を意味する。この用語はまた、医薬又は作用剤の動物への投与をも意味する。かかる投与は、例えば、(適宜な担体、例えば、無菌生理食塩水又は水中での)注射により又は吸入により、又は経口、経皮、直腸、膣又は薬剤投与の他の通常のルートによるものでありえる。
【0137】
−本明細書で使用する「効果的な量」という用語は、本明細書で定義するGPR1活性の変化(すなわち、GPR1活性の少なくとも10%の増大又は減少)を引き起こす医薬又はGPR1調節剤の量を意味する。
【0138】
−本明細書で使用する「標準」という用語は、GPR1又はヒューマニンポリペプチド活性の異常により特徴づけられる疾患又は障害の影響を受けていない個体から取られたサンプルを意味する。「標準」は、GPR1又はヒューマニンポリペプチド又はmRNAレベル及び質(すなわち、変異体対野生型)の比較のための、並びにGPR1活性の比較のための対照として使用される。
【0139】
−本明細書で使用する「増幅する」という用語は、核酸配列に適用される場合には、核酸配列の1又は2以上のコピーが鋳型核酸から生成する工程を意味する。「増幅」の好ましい方法は、PCR又はRT/PCRである。
【0140】
−本明細書で使用する「実質的非存在」という用語は、GPCR機能を、本明細書に開示され又は当該技術分野で知られたアッセイによる測定で、少なくとも10%活性化又は阻害するのに必要なレベル未満の活性化又は阻害因子のレベルを意味する。
【0141】
−本明細書で使用する「Gタンパク質共役レセプター」又は「GPCR」という用語は、7つのアルファヘリックス膜貫通部位を有する膜結合ポリペプチドを意味する。機能的GPCRはリガンド又はアゴニストと結合し、そしてまたG−タンパク質とも結合して活性化する。
【0142】
−GPR1はGPCRである。
【0143】
−本明細書で使用する「GPR1ポリペプチドの機能を調節する作用剤」という用語は、GPR1活性を増強し又は減少させる分子又は化合物であり、ヒューマニンポリペプチド又は他のアゴニストの結合性を変える分子又は化合物及び/又はGPR1下流のシグナル伝達活性を変える分子又は化合物を含む。
【0144】
−本明細書で使用する「トランスジェニック動物」という用語は、いずれかの動物、好ましくは非ヒト哺乳類、鳥、魚又は両生類であって、その動物の細胞の1又は2以上が、当該技術分野でよく知られたトランスジェニック技術等の人工的な介入により導入された異種核酸を含む、上記動物を意味する。核酸は、マイクロインジェクション又は組み換えウイルスによる感染等の計画的な遺伝子操作による細胞の前駆体への導入により、細胞に直接的に又は間接的に導入される。遺伝子操作の語は古典的な交雑育種又は体外受精を含まず、むしろ組み換えDNA分子の導入に向けられている。この分子は染色体内に組み込まれてもよく、又は染色体外複製DNAであってもよい。本明細書に記載する典型的なトランスジェニック動物において、導入遺伝子は、細胞に、対象ポリペプチド、例えばアゴニスト又はアンタゴニスト形態の1つの組み換え形態を発現させる。しかし、例えば、後に記載するFLP又はCREリコンビナーゼ依存コンストラクト等の、組み換え遺伝子が発現していないトランスジェニック動物もまた意図されている。さらに、「トランスジェニック動物」はまた、組み換え及びアンチセンス技術の双方を含む人為的な介入により、1又は2以上の遺伝子の遺伝子破壊が引き起こされたこれらの組み換え動物も包含する。
【0145】
−本明細書で使用する「抗体」という用語は、従来の免疫グロブリン分子並びに主題のポリペプチドの1つに対して特異的に反応性を有するそのフラグメントである。抗体は従来の技術を用いて断片化することができ、そしてそのフラグメントは、全抗体について後に記載するものと同じ方法で、その有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)2フラグメントは、抗体をペプシンで処理することにより生成させることができる。得られるF(ab)2フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元することができ、Fabフラグメントを生成する。さらに、本発明の抗体は、二重特異性、単鎖並びにキメラ及びその抗体の少なくとも1つのCDR領域により付与されたポリペプチドに対するアフィニティを有するヒト化分子を包含することを意図している。好ましい態様において、抗体はさらに、検出を可能にする標識を結合したものを含む(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光性化合物、化学発光性化合物、酵素又は酵素補因子でありえる)。
【0146】
−本明細書で使用する「ヌル突然変異」という用語は、ポリペプチドをコードする染色体配列を、そのポリペプチドが発現しないように変える挿入、欠失又は置換を意味する。
【0147】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X−10%XからX+10%Xの間、好ましくはX−5%XからX+5%Xの間を表す。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」(あるいは「およそ」)という用語は、この出願において、Y−10℃からY+10℃の間、好ましくはY−5℃からY+5℃の間を表す。
【0148】
本出願において、アミノ酸の名称又はそれぞれの略語の前の接頭語は、アミノ酸が非天然d−配置を有することを意味し;例えば、「d−Ser14−ヒューマニン」の語は、天然ヒューマニンの14位のアミノ酸がd−配置を有するセリンで置換されているヒューマニンアミノ酸配列を意味する。アミノ酸に対して一文字略号を用いる場合には、上記のd−セリンは「dS」で表され、例えば、SEQ ID No.15では:「MAPRGFSCLLLLTdSEIDLPVKRRA」となる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、ヒトGPR1レセプターをコードする領域のcDNA(SEQ NO:1)を示す。
【図2】図2は、ヒトGPR1アミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す。
【図3】図3は、マウスGPR1レセプターをコードする領域のcDNA(SEQ NO:3)を示す。
【図4】図4は、マウスGPR1アミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を示す。
【図5】図5は、ラットGPR1レセプターをコードする領域のcDNA(SEQ NO:5)を示す。
【図6】図6は、ラットGPR1アミノ酸配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図7】図7は、アカゲザルGPR1レセプターをコードする領域のcDNA(SEQ NO:7)を示す。
【図8】図8は、アカゲザルGPR1アミノ酸配列(SEQ ID NO:8)を示す。
【図9】図9は、カニクイザルGPR1レセプターをコードする領域のcDNA(SEQ NO:9)を示す。
【図10】図10は、カニクイザルGPR1アミノ酸配列(SEQ ID NO:10)を示す。
【図11】図11は、ヒトヒューマニンをコードする領域のcDNA(SEQ NO:11)を示す。
【図12】図12は、ヒトヒューマニン アミノ酸配列(SEQ ID NO:12)を示す。
【図13】図13は、Gly14−ヒューマニンアミノ酸配列(SEQ ID NO:13)を示す。
【図14】図14は、Ala8−ヒューマニン アミノ酸配列(SEQ ID NO:14)を示す。
【図15】図15は、d−Ser14−ヒューマニンアミノ酸配列(SEQ ID NO:15)を示す。
【図16】図16は、GPR1によるベータ−アレスチン2の移動に対するヒューマニンの効果を示す。
【図17】図17は、GPR1によるベータ−アレスチン2の移動に対するGly14−ヒューマニンの効果を示す。
【図18】図18は、GPR1によるベータ−アレスチン2の移動に対するd−Ser14−ヒューマニンの効果を示す。
【図19】図19は、GPR1によるベータ−アレスチン2の移動に対するAla8−ヒューマニンの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0150】
本発明の詳細な記述
本発明は、オーファンGPR1 GPCRのリガンドとしてのヒューマニンポリペプチドの識別に関する。これらのリガンド−レセプター相互作用は、その相互作用、ひいてはGPR1の機能を調節する作用剤のスクリーニングアッセイに有用である。既知のヒューマニンポリペプチド及びそれらのレセプターとの相互作用もまた、異常なレセプター活性に関連する状態の診断に供される。
【0151】
I. GPR1の活性を調節する作用剤の識別のためのアッセイ
GPR1の活性を調節する作用剤は、レセプターのヒューマニンポリペプチドとの相互作用を利用する多くの方法において識別することができる。例えば、GPR1/ヒューマニンポリペプチド相互作用をin vitro、培養細胞上で又はin vivoで再構成する能力は、結合を阻害する作用剤の識別のためのターゲットを提供する。相互作用の遮断に基づくアッセイは、かかる分子のライブラリー又は集合から、有機低分子等の作用剤を識別できる。あるいは、かかるアッセイは、天然資源からのサンプル又は抽出物、例えば、植物、真菌若しくは細菌抽出物中の、又はヒトの組織サンプル(例えば、腫瘍組織)中の作用剤を識別することができる。1つの側面において、抽出物は、例えば、ヒューマニンポリペプチド自体の変異を含む、変異核酸、ペプチド又はポリペプチドのライブラリーを発現する細胞から作ることができる。
【0152】
次いで、GPR1/ヒューマニンポリペプチド相互作用の調節剤は、レセプターを介した下流のシグナル伝達を測定する結合性アッセイ(binding assay)又は機能性アッセイ(functional assay)を用いてスクリーニングすることができる。結合性アッセイ(binding assay)及び機能性アッセイの双方とも、ヒューマニンポリペプチドを用いて検証される。
【0153】
GPR1機能を調節する作用剤を識別するための、GPR1/ヒューマニンポリペプチド相互作用をより直接的に使用する別のアプローチは、候補作用剤又は候補調節剤により誘導されるGPR1下流シグナル伝達の変化を測定する。これらの機能性アッセイは、単離細胞膜核分中又は表面にレセプターを発現する細胞上で行うことができる。
【0154】
以下の記述は、GPR1とヒューマニンポリペプチドの相互作用に基づく結合性及び機能性アッセイの双方の方法を提供する。
【0155】
A. GPR1ポリペプチド
GPR1とヒューマニンポリペプチドの相互作用を用いるアッセイは、GPR1ポリペプチド源を必要とする。ヒトGPR1のポリヌクレオチドとポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:1及び2として表される。マウスGPR1のポリヌクレオチドとポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:3及び4として表される。ラットGPR1のポリヌクレオチドとポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:5及び6として表される。アカゲザルGPR1のポリヌクレオチドとポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:7及び8として表される。カニクイザルGPR1のポリヌクレオチドとポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:9及び10として表される。ヒトヒューマニンのポリヌクレオチドとポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:11及び12として表される。他のヒューマニンポリペプチド配列は、本明細書において、SEQ ID NO:13−15として表される。
【0156】
GPR1ポリペプチド配列はまた、Swissprotデータベースに、accession Nos.P46091、Q53TR9及びQ6NVX4で記録されている。関連配列は、ヒトGPR1(GenBank Accession Nos.NP_001091669.1及びNP_005270.2(ポリペプチド配列);GenBank Accession Nos.U13666、AC007383、BC058005及びBC067833(ヌクレオチド配列))、マウスGPR1(GenBank Accession No.BC032934(ヌクレオチド配列)及びSwissprot Accession No.Q8K087(ポリペプチド配列))、ラットGPR1(GenBank Accession No.S74702(ヌクレオチド配列)及びSwissprot Accession No.P46090(ポリペプチド配列))、アカゲザル(GenBank Accession No.AF100204(ヌクレオチド配列)及びSwissprot Accession No.Q97664(ポリペプチド配列))及びカニクイザル(GenBank Accession No.AF292382(ヌクレオチド配列)及びSwissprot Accession No.Q95LH1(ポリペプチド配列))のものを含む。
【0157】
当業者は、既知の配列からデザインしたプライマー又はプローブを用いて、基本的なPCR及び分子クローン技術を介して、そのタンパク質をコードするmRNAを含むサンプルからのGPR1配列を容易に増幅することができる。
【0158】
組み換えポリペプチドの発現は、当該技術分野においてよく知られている。当業者は、本発明の有用なGPR1ポリペプチドの真核又は前核細胞内での発現のためのベクター及び発現制御配列を容易に選択することができる。
【0159】
結合性又はシグナル伝達機能を持つためには、GPR1は、細胞膜又は界面活性剤様の合成リポソームに結合していなければならない。細胞膜画分を調製する方法は当業者によく知られており、例えば、Hubbard及びCohn(J.Cell Biol.、64:461−479、1975)によって報告された方法である。GPR1を含有する膜を製造するためには、かかる技術を、内因的に(endogenously)又は組み換えによりGPR1を発現する細胞に適用するだけでよい。あるいは、膜遊離GPR1は、ポリペプチドの界面活性剤溶液の希釈により、膜調製物中に組み込むことができる(例えば、Salamon et al.、Biophys.J.、71:283−294、1996)。
【0160】
B.ヒューマニンポリペプチド
ヒトヒューマニンポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、本明細書において、それぞれSEQ ID NO:11及び12として表される。ヒューマニンポリペプチド配列はまた、Swissprotデータベースにaccession No.Q8IVG9にて記録されている。
【0161】
他のヒューマニンポリペプチド配列はまた、本明細書において、SEQ ID NO:13、14及び15として表される。
【0162】
GPR1と同様に、ヒューマニンポリヌクレオチドは、既知の配列を増幅プライマー又はプローブとして用いて、標準的なPCR及び分子クローニング技術を介してクローンすることができる。同様に、クローンされたヒューマニンポリペプチドは、当該技術分野で知られているように、真核又は前核細胞中で発現することができる。非限定的な例として、哺乳類ヒューマニン発現ベクター系は、(Mishizuma及びNagata、Nucl.Acids Res.、18:5322、1990により記載された)ヒトEFlaのプロモーター、ポリリンカー、ECMV配列内リボソーム進入部位(IRES、Ghattas et al.により記載、Mol.Cell.Biol.、11:5848−5859、1991)及びSV40ポリシグナルが続くネオマイシン耐性遺伝子を含むバイシストロン性発現ベクターを含むことができる。ヒューマニンポリペプチドはまた、in vitroでの転写及び翻訳を介して、in vitroで発現させることもできる。
【0163】
さらに、そのアッセイ又は技術において望ましい場合には、本発明の有用なヒューマニンポリペプチドは、融合タンパク質又はタグ結合タンパク質として製造することもできる。ヒューマニンポリペプチドの精製又は検出を容易にするために、例えば、全長ヒューマニンポリペプチド又はその一部(すなわち、少なくとも10アミノ酸、好ましくは、少なくとも20アミノ酸以上で、全長ヒューマニンポリペプチドより1アミノ酸少ないものまで)を、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)、FLAGタグ、Mycタグ又は6X−Hisペプチドに融合することができる。タグ結合又は融合タンパク質の製造のための方法又はベクターは、当業者によく知られており、かかる融合又はタグ結合タンパク質を単離し検出する方法も同様である。
【0164】
ヒューマニンポリペプチド及び特に切断形態はまた、当該技術分野で知られているように、化学合成により製造することもできる。
【0165】
組み換えヒューマニンポリペプチドは、精製して用いることができる。あるいは、ヒューマニンをトランスフェクトした細胞からの調整培地を使用できる。本発明において、その結合性又は機能性アッセイに必要なヒューマニンの量は、アッセイによって変わる。タグ結合ヒューマニンポリペプチドのGPR1に対するアフィニティー及びEC50値は、全長野生型ヒューマニンポリペプチドに比べて変わるかもしれず、従って、そのアッセイに必要な量は、野生型の値に対して調整することができる。そのアッセイにおいて必要な場合には、ヒューマニンポリペプチドは、合成の間に、培地中で、放射標識されたアミノ酸、例えば、35S−Met等の35S−標識アミノ酸、14C−Leu等の14C−標識アミノ酸、H−標識(トリチウム標識した)アミノ酸又は適宜な他のアミノ酸、を取り込ませることによって標識することができる。化学標識の方法は、当該技術分野で知られている。
【0166】
蛍光標識はまた、標準的標識技術を用いて、ヒューマニンポリペプチド又は他のGPR1リガンドに結合することができる。
【0167】
C. GPR1活性の調節剤を識別するためのアッセイ
GPR1レセプターのリガンドとしてのヒューマニンポリペプチドの識別は、レセプター活性のアゴニスト、アンタゴニスト及びインバースアゴニストを識別するためのスクリーニングアッセイを可能にする。スクリーニングアッセイには2つの一般的なアプローチがある。
【0168】
1) GPR1を発現する細胞、かかる細胞からの膜抽出物又はGPR1を含有する固定化脂質膜を、標識ヒューマニンポリペプチド及び候補化合物に暴露するリガンド結合アッセイ。インキュベーションに続いて、反応混合物を、標識ヒューマニンポリペプチドのGPR1レセプターへの特異的結合について計測する。標識ヒューマニンポリペプチドに干渉するか又はそれを置換する化合物は、GPR1活性のアゴニスト、アンタゴニスト又はインバースアゴニストでありえる。これらのカテゴリーのいずれが適合するかを確かめるためには、陽性化合物に対して機能性分析を行うことができる。
【0169】
2) GPR1のシグナル伝達活性を測定する機能性アッセイ。a) アゴニストのスクリーニングについては、GPR1を発現する細胞又はそれから調製した膜を、候補化合物と共にインキュベートし、そしてGPR1のシグナル伝達活性を測定する。アッセイは、アゴニストとしてのヒューマニンポリペプチドを用いて検証し、レセプター活性を調節する化合物によって誘起された活性を、ヒューマニンポリペプチドによって誘起された活性と比較する。アゴニスト又は部分的アゴニストが存在する場合、アゴニスト又は部分的アゴニストは、野生型ヒトヒューマニンポリペプチドの最大活性の少なくとも10%に相当する最大生物学的活性を持ち、そして好ましくは、50%、75%、100%又はそれ以上の活性を持ち、野生型ヒトヒューマニンポリペプチドよりも2−倍、5−倍、10−倍又はそれ以上の高い活性を有する場合も含まれる。b) アンタゴニスト又はインバースアゴニストのスクリーニングについては、GPR1を発現する細胞又はそれから単離した膜を、ヒューマニンポリペプチドの存在下にて、候補化合物の存在下又は非存在下で、シグナル伝達活性についてアッセイする。アンタゴニスト又はインバースアゴニストは、アンタゴニスト又はインバースアゴニストを欠いた反応に比べ、ヒューマニンポリペプチド−刺激レセプター活性のレベルを少なくとも10%減少させる。c) インバースアゴニストスクリーニングについては、恒常的なGPR1活性を発現する細胞又はそれから単離した膜を、候補化合物の存在下及び非存在下にて、レセプターの活性を測定する機能性アッセイにおいて使用することができる。インバースアゴニストは、レセプターの恒常的な活性を少なくとも10%減少させる化合物である。GPR1の過剰発現(すなわち、in vivoで細胞において自然に発現されるレベルに対し、GPR1ポリペプチドの5倍以上過剰な発現)は、恒常的な活性化につながるかもしれない。GPR1は、強い構成的プロモーター(constitutive promoter)、例えば、CMV early promoterの制御下に置くことにより過剰発現させることができる。あるいは、保存GPCRアミノ酸又はアミノ酸部位の特定の突然変異は、恒常的な活性を導く傾向がある(Kjelsberg et al.、J.Biol.Chem.、267:1430−1433、1992;McWhinney et al.、J.Biol.Chem.、275:2087−2097、2000;Ren et al.、J.Biol.Chem.、268:16483−16487,1993;及びParma et al.、Nature、365:649−651、1993)。
【0170】
リガンド結合及び置換アッセイ(ligand binding and displacement assay):ヒューマニンポリペプチドのGPR1への結合を阻害する化合物をスクリーニングするためには、細胞上で発現するGPR1ポリペプチド又はレセプターポリペプチドを含む単離した膜を、ヒューマニンポリペプチドと共に使用することができる。結合又はヒューマニンポリペプチドの置換のみを測定するアッセイで識別された場合には、化合物は、それらがアゴニスト、アンタゴニスト又はインバースアゴニストのいずれとして作用するのかを決めるために、機能性試験に付されなければならない。
【0171】
置換実験については、GPR1ポリペプチドを発現する細胞を、候補調節剤の濃度上昇の存在下又は非存在下で、標識ヒューマニンポリペプチドと共に結合バッファー中でインキュベートする。アッセイを検証し較正するためには、非標識ヒューマニンポリペプチドの濃度上昇を用いた対照競合反応を行うことができる。インキュベーション後、細胞をよく洗い、そして結合している標識ヒューマニンポリペプチドを、その標識について適宜な方法で測定する(例えば、シンチレーション計測、酵素アッセイ、蛍光等)。候補調節剤存在下における、結合した標識ヒューマニンポリペプチドの量の少なくとも10%の減少は、候補調節剤による結合の置換を示す。標識ヒューマニンポリペプチドの50%を置換する場合(準飽和(sub−saturating)ヒューマニンポリペプチド用量)には、候補調節剤は、本明細書に記載した本アッセイ又は他のアッセイにおいて、特異的に結合すると考えられる。
【0172】
あるいは、結合又は結合の置換は、表面プラズモン共鳴(SPR)でモニターすることができる。表面プラズモン共鳴アッセイは、ヒューマニンポリペプチドの、水相からの、センサー上の膜内に固定化されたGPR1ポリペプチドへの結合又は結合の喪失により引き起こされる、固定化センサー近傍の質量の変化により、2つの分子の間の結合を測定する定量的方法として使用することができる。この質量変化は、ヒューマニンポリペプチド又は候補調節剤の注入又は除去後に、時間に対する共鳴単位(resonance units)として計測され、そして例えば、Biacore Biosensor(Biacore AB)を用いて測定することができる。GPR1は、Salamon et al.によって記述された方法(Biophys J.71:283−294;Biophys.J.、80:1557−1567、2001;Trends Biochem.Sci.、24:213−219、1999)に従って、薄層脂質膜中のセンサーチップ(例えば、リサーチグレードCM5チップ;Biacore AB)上に固定化することができる。Sarrio et al.(Mol.Cell.Biol.、20:5164−5174、2000)は、チップ上の脂質層中に固定化したGPCR A(1)アデノシンレセプターに対するリガンドの結合を検出するためにSPRを使用することができることを示した。当業者は、Sarrio et al.により報告された条件(Mol.Cell.Biol.、20:5164−5174、2000)を出発点として用いて、SPRアッセイにおける、ヒューマニンポリペプチドのGPR1への結合の条件を微調整することができる。
【0173】
SPRは、結合の調節剤について、少なくとも2つの方法でアッセイを行うことができる。第一に、ヒューマニンポリペプチドを、固定化GPR1ポリペプチドに予め結合させ、次いで、約10μl/minの流速及び1nMから100μMの範囲の濃度で候補調節剤を注入することができる。結合ヒューマニンポリペプチドの置換は定量化でき、調節剤の結合の検出を可能にする。あるいは、膜結合GPR1ポリペプチドを候補調節剤と予めインキュベートし、そしてヒューマニンポリペプチドと接触させる。調節剤に予め暴露されていないチップ上の結合に対する、調節剤に暴露されたGPR1へのヒューマニンポリペプチドの結合の違いが結合性を示す。いずれのアッセイにおいても、候補調節剤非存在下におけるヒューマニンポリペプチドの結合量に対する、候補調節剤存在下におけるヒューマニンポリペプチドの結合量の10%以上の減少は、候補調節剤が、GPR1とヒューマニンポリペプチドの相互作用を阻害することを示す。
【0174】
ヒューマニンポリペプチドのGPR1への結合の阻害を測定する別の方法は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を用いる。FRETは、蛍光供与体(fluorescence donor)(D)の発光スペクトルが蛍光受容体(fluorescence acceptor)(A)の励起スペクトルと重複する場合に、互いに近接した(通常、<100オングストロームの距離)DとAの間で起こる量子力学的現象である。試験を行う分子、例えば、ヒューマニンポリペプチド及びGPR1ポリペプチドを、供与体及び受容体蛍光体の相補的ペアで標識する。GPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用により密接に結合している間は、供与体蛍光体の励起に伴って発光される蛍光は、ポリペプチドが結合していない場合にその励起波長に反応して発光された蛍光とは異なる波長を有し、各波長での発光強度の測定により、非結合ポリペプチドに対する結合ポリペプチドの定量化を可能にする。ポリペプチドを標識する蛍光体の供与体:受容体ペアは、当業者によく知られている。Cyan FP(CFP、供与体(D))及びYellow FP(YFP、受容体(A))として知られるA.victoria GFPの変異体は、特に有用である。GFP変異体は、タンパク質−タンパク質相互作用を測定するためのFRETスキームのD−Aペアとして供するために、結合ペアのそれぞれのメンバーを用いて融合タンパク質として作ることができる。融合体としてのGFP変異体の発現のためのベクターは、当該技術分野で知られている。例として、CFP−ヒューマニンポリペプチド融合体とYFP−GPR1融合体を作ることができる。標識ヒューマニンポリペプチドとGPR1タンパク質の混合物への候補調節剤の添加は、候補調節剤を欠いたサンプルと比べて、例えば、YFP蛍光の減少により裏付けられるエネルギー転移の阻害を引き起こす。
【0175】
GPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用の検出のためのFRETを用いたアッセイにおいて、候補調節剤を欠いたサンプルと比べた、候補調節剤を含むサンプル中における受容体波長での蛍光発光強度の10%以上の減少は、候補調節剤がGPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用を阻害することを示す。
【0176】
FRETの変法は、分子相互作用をモニターするために蛍光消光を使用する:
相互作用するペアの一方の分子を蛍光体で標識し、そして他方を、それと近接状態になった場合に蛍光体の蛍光を消光する分子で標識することができる。励起に伴う蛍光の変化は、蛍光体を結合した分子:消光体ペアの結合の変化を示す。一般的に、標識GPR1ポリペプチドの蛍光の増大は、消光体を保持するヒューマニンポリペプチドが置換されたことを示す。消光アッセイについては、候補調節剤を欠いたサンプルと比べた、候補調節剤を含むサンプル中における蛍光発光強度の10%以上の増大は、候補調節剤がGPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用を阻害することを示す。
【0177】
表面プラズモン共鳴及びFRET法に加えて、蛍光偏光測定は、タンパク質−タンパク質結合を定量化するのに有用である。蛍光タグを付された分子の蛍光偏光値は、回転相関時間(the rotational correlation time)又は反転速度(tumbling rate)に依存する。蛍光標識されたヒューマニンポリペプチドと結合するGPR1により形成された複合体等のタンパク質複合体は、複合体ではない標識ヒューマニンポリペプチドよりも高い偏光値を有する。GPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用の候補阻害剤を含ませることにより、もしその候補阻害剤が、GPR1のヒューマニンポリペプチドとの相互作用を撹乱し又は阻害するならば、候補阻害剤を欠いた混合物と比較して、蛍光偏光が減少する。蛍光偏光は、ポリペプチド又はタンパク質複合体の形成を撹乱する小分子の識別に好適である。候補調節剤を欠いたサンプルの蛍光偏光に比べた、候補調節剤を含むサンプルにおける蛍光偏光の10%以上の減少は、候補調節剤がGPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用を阻害することを示す。
【0178】
GPR1−ヒューマニンポリペプチド相互作用をモニターする別の代替法は、バイオセンサーアッセイを使用する。
【0179】
ICSバイオセンサーは、AMBRI(Australian Membrane Biotechnology Research Institute)によって記述されている。この技術において、GPR1及びヒューマニンポリペプチド等のマクロ分子の会合は、懸架した膜二重層中のグラミシジン促進イオンチャンネルの閉鎖と結び付いており、従って、バイオセンサーの(インピーダンスと類似する)アドミッタンスの測定可能な変化と関連付けられる。このアプローチは、6桁を超えるアドミッタンスの変化において直線的であり、小分子コンビナトリアルライブラリの大規模なハイスループットスクリーニング(high throughput screening)に理想的である。候補調節剤を欠いたサンプルのアドミッタンスに比べた、候補調節剤を含むサンプルにおけるアドミッタンスの10%以上の変化(増大又は減少)は、候補調節剤が、GPR1とヒューマニンポリペプチドの相互作用を阻害することを示す。
【0180】
タンパク質−タンパク質相互作用のアッセイにおいては、相互作用の調節剤は、必ずしもタンパク質の物理的に相互作用する部位と直接的に相互作用する必要はなくてもよいということに留意することが重要である。調節剤が、タンパク質−タンパク質相互作用の部位から除かれた部位で相互作用し、例えば、GPR1ポリペプチドのコンフォメーションの変化を引き起こすこともありえる。それでもやはり、このように作用する調節剤(阻害剤又はアゴニスト)は、GPR1の活性を調節する作用剤として重要である。
【0181】
記載した結合性アッセイのいずれもが、GPR1レセプター分子に結合し、又はヒューマニンポリペプチドのレセプターへの結合に影響を与えるサンプル、例えば組織サンプル中の作用剤の存在を決定するのに用いることができる。そのために、GPR1ポリペプチドを、サンプルの存在下又は非存在下でヒューマニンポリペプチド又は別のリガンドと反応させ、そしてヒューマニンポリペプチド又はリガンドの結合を、使用する結合性アッセイに適した方法で測定する。ヒューマニンポリペプチド又は他のリガンドの結合の10%以上の減少は、サンプルが、GPR1又はリガンドのレセプターポリペプチドへの結合を調節する作用剤を含むことを示す。
【0182】
レセプター活性の機能性アッセイ
i. GTPアーゼ/GTP結合性アッセイ:
GPR1等のGPCRにとって、レセプター活性の測定は、レセプターを含む細胞膜によるGTPの結合である。Traynor及びNahorskiにより記述された方法(Mol.Pharmacol.、47:848−854、1995)においては、標識されたGTPの結合を測定することにより、膜に結合したG−タンパク質を本質的に測定する。GTP結合性アッセイでは、レセプターを発現する細胞から単離した膜は、それ自体35S−GTP−ガンマ−S及びGDPを含むバッファー中でインキュベートしてもよい。インキュベーションの後、非結合標識GTPをろ過により除く。結合標識GTPを、液体シンチレーション計測により測定する。
【0183】
ヒューマニンポリペプチド−誘導GPR1活性の調節についてアッセイするために、GPR1ポリペプチドを発現する細胞から調製した膜を、ヒューマニンポリペプチドと混合し、そしてGPR1活性の候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GTP結合アッセイを行う。候補調節剤を含むこの種のアッセイにおける、シンチレーション計測により測定された標識GTP結合の、調節剤を含まないアッセイに比べた10%以上の減少は、候補調節剤がGPR1活性を阻害することを示す。
【0184】
アゴニストとして作用する化合物を識別するために、類似のGTP−結合性アッセイをヒューマニンポリペプチド無しで行うことができる。この場合、ヒューマニンポリペプチド−刺激GTP結合を標準として用いる。化合物が10μM以下で存在するときに、ヒューマニンポリペプチドにより誘導されるGTP結合のレベルの少なくとも50%を誘導する場合に、その化合物はアゴニストと考えられ、そして、ヒューマニンポリペプチドにより誘導されるレベルと同じか又はより高いレベルを誘導することが好ましい。
【0185】
GTPアーゼ活性は、GPR1ポリペプチドを含む膜をガンマ−32P−GTPとインキュベートすることにより測定される。活性GTPアーゼは、標識を無機リン酸として放出し、それは、分離後、シンチレーション計数により検出される。候補化合物の非特異的効果を除外するために、対照は、GPR1を発現しない細胞(モック−感染)から単離された膜を用いたアッセイを含む。
【0186】
GPR1−調節GTPアーゼ活性に対する候補調節剤の効果についてアッセイするために、膜サンプルを、調節剤の存在下又は非存在下でヒューマニンポリペプチドとインキュベートし、次いでGTPアーゼアッセイを行う。調節剤を含まないサンプルと比べた、GTP結合又はGTPアーゼ活性のレベルの10%以上の変化(増大又は減少)は、候補調節剤によるGPR1の調節を示す。
【0187】
ii. 下流経路活性化アッセイ:
a. カルシウム流動−エクオリン−アッセイ:
エクオリンアッセイは、GPCRの活性化により誘導された細胞内カルシウム放出に対するミトコンドリアのアポエクオリンの応答を利用する(Stables et al、Anal.Biochem.、252:115−126、1997;Detheux et al.、J.Exp.Med.、192 1501−1508、2000)。要約すると、GPR1−発現クローンを、ミトコンドリアのアポエクオリンとGα16を同時発現するようにトランスフェクトする。細胞をセレンテラジンH(Molecular Probes)とインキュベートし、洗浄し(例えば、DMEM−F12培養培地中で)、そして所定の濃度にて再懸濁する(例えば、約0.5×106細胞/ml)。次いで、細胞を試験アゴニストペプチドと混合し、そしてエクオリンによる光照射をルミノメーターで記録する。結果を相対発光量(Relative Light Units)(RLU)として表す。候補化合物の非特異的効果を除外するために、対照は、GPR1を発現しない細胞(モック−感染)から単離された膜を用いたアッセイを含む。
【0188】
GPR1ポリペプチドを発現し、候補調節剤で処理した細胞のサンプルにおいて、GPR1ポリペプチドを発現するが、候補調節剤で処理しなかった細胞のサンプルに比べ又はGPR1ポリペプチドを発現しないが(モック−感染細胞)、候補調節剤で処理した細胞のサンプルに比べて、光強度が10%以上増大又は減少した場合には、エクオリン活性又は細胞内カルシウムレベルは「変化」する。
【0189】
ヒューマニンポリペプチドの非存在下で行う場合には、このアッセイは、GPR1活性のアゴニストを識別するために使用することができる。このアッセイをヒューマニンポリペプチドの存在下で行う場合には、アンタゴニスト又はアロステリック調節剤のアッセイに用いることができる。
【0190】
b. アデニル酸シクラーゼアッセイ:
アデニル酸シクラーゼ活性のアッセイは、Kenimer&Nirenberg(Mol.Pharmacol.、20:585−591、1981)に記載されている。
【0191】
本発明によれば、GPR1活性の候補調節剤で処理した細胞から得たサンプルにおいて、候補調節剤で処理しない細胞の類似のサンプルと比較して、又はGPR1ポリペプチドを発現しないが(モック−感染細胞)、候補調節剤で処理した細胞のサンプルと比較して、10%以上増大又は減少する場合には、アデニル酸シクラーゼ活性は「変化」する。
【0192】
c. cAMPアッセイ:
細胞内又は細胞外cAMPは、cAMPラジオイムノアッセイ(RIA)又はcAMP結合タンパク質を用いて、当該技術分野において広く知られた方法に従って測定される。例えば、Horton及びBaxendale(Methods Mol.Biol.、41:91−105、1995)は、cAMPに対するRIAを記述する。cAMPを測定するための多くのキットが市販されている。幾つかの候補調節剤に有りえる非特異的効果を除外するために、対照反応はモック感染細胞の抽出物を用いて行うべきである。
【0193】
GPR1ポリペプチドを発現し、GPR1活性の候補調節剤で処理した細胞において(又はかかる細胞の抽出物において)、Horton及びBaxendale(Methods Mol.Biol.、41:91−105、1995)のRIA−ベースアッセイを用いて検出されたcAMPのレベルが、候補調節剤で処理しない類似の細胞におけるcAMPレベルと比べて、少なくとも10%増大又は減少する場合には、cAMPのレベルは「変化」する。
【0194】
d. リン脂質の分解、DAG産生及びイノシトール三リン酸レベル:
リン脂質の分解を活性化するレセプターは、リン脂質の分解及び結果としての2次メッセンジャー、DAG及び/又はイノシトール三リン酸(IP3)の生成をモニターすることにより、GPR1の既知の又は被疑調節剤の活性に起因する変化についてモニターできる。これらの各々を測定する方法は、Ian M.Bird.Totowa、NJ、Humana Press、1998により編集されたPhospholipid Signaling Protocolsに記載されている。ホスファチジルイノシトールの分解のアッセイについても記載するRudolph et al.(J.Biol.Chem.、274:11824−11831、1999)も参照されたい。アッセイは、候補調節剤の存在下又は非存在下で、ヒューマニンポリペプチドで処理し又は処理しないGPR1を発現する細胞又はその抽出物を用いて行うべきである。幾つかの候補調節剤に有りえる非特異的効果を除外するために、対照反応はモック感染細胞又はそれらの抽出物を用いて行うべきである。
【0195】
本発明によれば、GPR1ポリペプチドを発現しかつ候補調節剤で処理した細胞からのサンプルにおいて、候補調節剤で処理しないGPR1ポリペプチド発現細胞からのサンプルにおいて観察されるレベルに比べて、少なくとも10%増大又は減少する場合には、ホスファチジルイノシトールの分解及びジアシルグリセロール及び/又はイノシトール三リン酸レベルは「変化」する。
【0196】
e. PKC活性化アッセイ:
成長因子レセプターチロシンキナーゼは、リン脂質−及びカルシウム−活性化プロテインキナーゼのファミリーであるプロテインキナーゼC(PKC)の活性化が関与する経路を介してシグナル伝達を行う傾向がある。PKCの活性化は、最終的には、c−fos、c−myc及びc−junを含む数々のプロトオンコジーン転写因子をコードする遺伝子、プロテアーゼ、I型コラゲナーゼ及びプラスミノーゲン活性化因子阻害因子を含むプロテアーゼ阻害因子並びに細胞内接着分子I(ICAM I)を含む接着分子の転写に帰結する。PKCによって誘導された遺伝子産物の増大を検出するためにデザインされたアッセイは、PKCの活性化、そしてそれによってレセプター活性をモニターするために用いることができる。加えて、PKCを介してシグナルを伝達するレセプターの活性は、PKCの活性化による遺伝子の活性化のための制御配列によって主導されるレポーター遺伝子コンストラクトを通じてモニターすることができる。このタイプのレポーター遺伝子−ベースのアッセイについて、以下により詳細に議論する。PKC活性のより直接的な測定については、Kikkawa et al.(J.Biol.Chem.、257:13341、1982)の方法を用いることができる。このアッセイは、PKCの基質ペプチドのリン酸化を測定するもので、基質ペプチドは、その後、ホスフォセルロースろ紙への結合により分離される。このPKCアッセイ系は、精製したキナーゼの活性又は粗細胞抽出物中の活性を測定するために使用できる。
【0197】
可能なアッセイの1つにおいて、基質は、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質タンパク質(MARCKS)由来のペプチドAc−FKKSFKL−NH2である。このペプチドの酵素のKは約50μMである。当該技術分野で知られる他の塩基性のプロテインキナーゼC−選択性ペプチドを、それらのKの少なくとも2〜3倍の濃度にて使用することもできる。アッセイに必要な補助因子は、カルシウム、マグネシウム、ATP、ホスファチジルセリン及びジアシルグリセロールを含む。ユーザーの意図により、アッセイは、存在するPKCの量(活性化条件)又は存在する活性PKCの量(非活性化条件)を決定するために行うことができる。本発明のほとんどの目的に対しては、活性化しえるPKCを測定するよりも、単離した場合にサンプル中で活性なPKCを測定するような非活性化条件が使用される。非活性化条件において、EGTAを選択するアッセイではカルシウムは省略される。アッセイは、HEPES、DTT、MgCl、ATP、ガンマ−32P−ATP、ペプチド基質、ホスファチジルセリン/ジアシルグリセロール膜及びカルシウム(又はEGTA)を含む混合物中で行われる。反応は、適宜な温度(例えば、約30℃)にて適宜な時間(例えば、5−10分)行い、次いでATP及びEDTAを添加して反応を止める。
【0198】
反応を止めた後、各反応液の一部をWhatman P81リン酸セルロースフィルター上にスポットし、次いで、希釈リン酸、そして最後に95%EtOHで洗浄する。
【0199】
結合した放射活性をシンチレーション計数で測定する。標識ATPの比活性(cpm/nmol)を、反応液のサンプルをP81ペーパー上にスポットし、そして洗浄することなく計測することにより決定する。PKC活性の単位は、1分当たりに転移したphosphateのnmol数と定義される。
【0200】
あるいは、アッセイは、PanVeraにより販売されるプロテインキナーゼCアッセイキットを用いて行うことができる。
【0201】
アッセイは、候補調節剤の存在下又は非存在下にて、ヒューマニンポリペプチドで処理し又は処理しない、GPR1ポリペプチドを発現する細胞からの抽出物について行ってもよい。幾つかの候補調節剤に有りえる非特異的効果を除外するために、対照反応はモック感染細胞又はそれらからの抽出物を用いて行うべきである。
【0202】
本発明によれば、GPR1を発現し、かつ候補調節剤で処理した細胞からの抽出物において、候補調節剤で処理しない細胞からの類似のサンプルで行った反応に比べて、上記のいずれかのアッセイにより測定したPKCの単位が、少なくとも10%増大又は減少する場合は、PKC活性は候補調節剤により「変化」する。
【0203】
f. キナーゼアッセイ:
MAPキナーゼ活性は、市販の幾つかのキット、例えば、New England Biolabsにより販売されるp38MAPキナーゼアッセイキット(Cat♯9820)又はPerkin−Elmer Life Sciencesにより販売されるFlashPlate MAPキナーゼアッセイのいずれかを用いてアッセイすることができる。
【0204】
GPR1ポリペプチドを発現し、候補調節剤で処理した細胞からのサンプルにおいて、候補調節剤で処理しない類似の細胞からのサンプルにおけるMAPキナーゼ活性に比べて、活性のレベルが10%以上増大又は減少する場合は、MAPキナーゼ活性は「変化」する。
【0205】
既知の合成又は天然チロシンキナーゼ基質及び標識phosphateを用いたチロシンキナーゼ活性の直接的なアッセイは、他のタイプのキナーゼ(例えば、Ser/Thrキナーゼ)に対する類似のアッセイと同様によく知られている。キナーゼアッセイは、GPR1ポリペプチドを発現し、候補調節剤の存在下又は非存在下にて、ヒューマニンポリペプチドで処理し又は処理しない細胞からの精製キナーゼ及び粗抽出物の双方で行うことができる。幾つかの候補調節剤に有りえる非特異的効果を除外するために、対照反応はモック感染細胞又はそれらからの抽出物を用いて行うべきである。基質は、全長タンパク質又は基質を代理する合成ペプチドのいずれであってもよい。Pinna&Ruzzene(Biochem.Biophys.Acta. 1314:191−225、1996;参考文献として本明細書に取り込む。)は、キナーゼ活性の測定に有用な多くのリン酸化基質部位を挙げている。多くのキナーゼ基質ペプチドは市販されている。特に有用なのは、市販の「Src−関連ペプチド」RRLIEDAEYAARGであり、これは、多くのレセプター及び非レセプターチロシンキナーゼの基質である。下記のアッセイはペプチド基質のフィルターへの結合を必要とするので、ペプチド基質は、結合を促進するために正味の正電荷を持つべきである。
【0206】
一般的に、ペプチド基質は、少なくとも2つの塩基性残基と遊離アミノ末端を持つ。
【0207】
一般に、アッセイは、キナーゼバッファー(BSA、トリス−Cl、MgCl;アッセイを行うキナーゼによって、MgClの代わりに又はそれに加えて、MnClを用いることができる。)、ATP、32P−ATP、ペプチド基質、試験を行うキナーゼを含む細胞抽出物(キナーゼアッセイに用いる細胞抽出物は、オルトバナジン酸ナトリウム等のホスファターゼ阻害剤を含むべきである。)及びHOを含む適宜な体積で行われる。反応は約30℃で行われ、そして細胞抽出物の添加により開始される。
【0208】
キナーゼ反応は30秒から約30分行い、次いで希釈、冷トリクロロ酢酸(TCA)を添加する。サンプルを小型遠心機で回転し、そして上清画分をWhatman P81リン酸セルロース円形フィルターにスポットする。フィルターは希釈リン酸、次いでアセトンで洗浄する。フィルターを乾燥し、そして取り込まれた32Pをシンチレーション計数により測定する。キナーゼ反応液中のATPの比活性(例えば、cpm/pmolで)を、反応液の少量のサンプルをP81円形フィルター上にスポットし、洗浄することなく直接計数することにより測定する。次いで、キナーゼ反応液において得られた分当たりの計数(ブランクを差し引く。)を比活性で割って、反応において転移したphosphateのモル数を決定する。
【0209】
GPR1ポリペプチドを発現し、候補調節剤で処理した細胞からのサンプルにおいて、候補調節剤で処理しない類似の細胞からのサンプルにおけるキナーゼ活性と比べて、キナーゼ活性のレベルが10%以上増大又は減少する場合に、チロシンキナーゼ活性は「変化」する。
【0210】
g. 下流経路活性化の転写レポーター:
アゴニストのレセプター、例えばGPR1、により開始された細胞内シグナルは細胞内事象のカスケードを始動させ、それは、最終的に、1又は2以上の遺伝子の転写又は翻訳の急速かつ検出可能な変化を引き起こす。従って、レセプターの活性は、GPR1活性化に応答する制御配列により主導されるレポーター遺伝子の発現を測定することによりモニターできる。
【0211】
本明細書で使用する「プロモーター」は、遺伝子発現のレセプター−介在制御に必要な転写制御要素を意味し、基本的なプロモーターのみならず、レセプター−制御発現に必要ないかなるエンハンサー又は転写因子結合部位をも含む。
【0212】
アゴニストの結合により生じる細胞内シグナルに応答し、そして選択されたプロモーターを、その転写、翻訳又は最終的な活性を容易に検出しかつ測定できるレポーター遺伝子に作動的につなげるプロモーターを選択することにより、転写ベースのレポーターアッセイは、そのレセプターが活性化されるか否かの指標を迅速に与える。
【0213】
ルシフェラーゼ、CAT、GFP、ベータ−ラクタマーゼ又はベータ−ガラクトシダーゼ等のレポーター遺伝子は、これらの産物の検出に対するアッセイと同様に、当業者によく知られている。
【0214】
レセプター活性のモニターに特によく適合する遺伝子は、迅速に;一般的には、レセプターとエフェクタータンパク質又はリガンドの間の数分の接触の間に誘導される「即初期」遺伝子である。即初期遺伝子の転写の誘導は、新しい制御タンパク質の合成を必要としない。リガンドの結合に対する急速な応答に加えて、レポーターコンストラクトを作成するために有用な好ましい遺伝子の特徴は静止期(quiescent)細胞における低い又は検出不可能な発現;遷移的かつ新しいタンパク質の合成と独立した誘導;転写のその後のshut−offが新しいタンパク質合成を必要とすること;そしてこれらの遺伝子から転写されたmRNAが短い半減期を有すること、を含む。転写制御要素が有用なものであるためには、これらの特性のすべてを有することが好ましいが、必須ではない。
【0215】
多くの異なる刺激に応答する遺伝子の例は、c−fosプロトオンコジーンである。c−fos遺伝子は、成長因子、ホルモン、分化特異剤(differentiation−specific agents)、ストレス及び細胞表面タンパク質の他の既知の誘導剤により、タンパク質−合成−依存的に活性化される。c−fos発現の誘導は、極端に速く、しばしばレセプター刺激から数分以内でおこる。この特徴は、レセプター活性化のレポータとしての使用にとって特に魅力的なc−fos調節領域をつくる。
【0216】
転写因子CREB(環状AMP応答要素結合タンパク質)は、名前が意味するように、細胞内AMPのレベルに応答する。従って、cAMPレベルの調節を介してシグナルを伝達するレセプターの活性化は、転写因子の結合又はCREB結合要素(CRE又はcAMP応答要素と称される)に連結するレポータ遺伝子の発現のいずれかを測定することによりモニターすることができる。CREB結合活性に応答するレポーターコンストラクトは、U.S.Patent No.5,919、649に記載されている。
【0217】
他のプロモーター及び転写コントロール要素は、c−fos要素及びCREB応答コンストラクトに加えて、血管作動性腸管ペプチド(VIP)遺伝子プロモーター(cAMP応答;Fink et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.、85:6662−6666、1988);ソマトスタチン遺伝子プロモーター(cAMP応答;Montminy et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.、8.3:6682−6686、1986);プロエンケファリンプロモーター(cAMP、ニコチン性アゴニスト及びホルボールエステルに応答;Comb et al.、Nature、323:353−356、1986);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子プロモーター(cAMP応答;Short et al.、J.Biol.Chem.、261:9721−9726、1986)を含む。
【0218】
GPCR活性の変化に応答する転写制御要素のさらなる例は、AP−1転写因子に応答するもの及びNF−kB活性に応答するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0219】
プロモーターコンストラクトは、そのコンストラクトでトランスフェクトしたGPR1発現細胞をヒューマニンポリペプチドに暴露することによって試験されるべきである。ヒューマニンポリペプチドに応答するレポーターの発現の少なくとも2倍の増加は、そのレポータがGPR1活性の指標であることを示す。
【0220】
GPR1活性をヒューマニンポリペプチド−応答転写レポーターコンストラクトと共にアッセイするには、GPR1ポリペプチドを安定に発現する細胞を、コンストラクトで安定にトランスフェクトする。アゴニストのスクリーニングを行うには、細胞を未処理で放置するか、候補調節剤に暴露するか又はヒューマニンポリペプチドに暴露し、そしてレポーターの発現を測定する。ヒューマニンポリペプチド−処理培養を、既知のアゴニストにより誘導された転写のレベルの標準として用いる。候補調節剤存在下における、レポーターの発現の少なくとも50%の増大は、候補がGPR1活性の調節剤であることを示す。アゴニストは、少なくとも20%、そして好ましくはヒューマニンポリペプチドと同量以上のレポーターの発現を誘導する。細胞が、ヒューマニンポリペプチド又は別のアゴニストの非存在下にて、レポーターの基礎的活性が上昇するようなレベルでGPR1ポリペプチドを発現する場合には、このアプローチは、インバースアゴニストをスクリーニングするために用いることもできる。候補調節剤存在下における、その非存在の場合と比べた、レポーター活性の10%以上の減少は、その化合物がインバースアゴニストであることを示す。
【0221】
アンタゴニストをスクリーニングするためには、GPR1を発現し、レポーターコンストラクト細胞を担持する細胞を、候補調節剤の存在下及び非存在下にて、ヒューマニンポリペプチド(又は別のアゴニスト)に暴露する。候補調節剤存在下における、候補調節剤の非存在の場合と比べた、レポーター発現の10%以上の減少は、その候補がGPR1活性の調節剤であることを示す。
【0222】
転写アッセイのための対照は、GPR1を発現するが、レポーターコンストラクトを担持しない細胞並びにプロモーターの無いレポーターコンストラクトを有する細胞を含む。GPR1−制御転写の調節剤として識別された化合物については、それらの活性の特異性及びスペクトラムを決定するために、それらが、他の制御配列により又は他のレセプターにより主導される転写に影響を与えるか否かを測定するための分析も行うべきである。
【0223】
転写レポーターアッセイ及びほとんどの細胞ベースのアッセイは、GPR1活性の調節剤について、タンパク質の発現ライブラリーをスクリーニングするのに好適である。ライブラリーは、例えば、天然のソース、例えば、植物、動物、細菌等からのcDNAライブラリーであってもよく、又は1又は2以上のポリペプチドの突然変異型をランダムに又は体系的に発現するライブラリーであってもよい。GPR1のスクリーニングに用いる異なるライブラリーにおいて、ウイルスベクター中のゲノムライブラリーを、1つの細胞又は組織のmRNA contentを発現させるために用いることもできる。
【0224】
GTP−結合、GTPアーゼ、アデニル酸シクラーゼ、cAMP、リン脂質−分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、PKC、キナーゼ及び転写レポーターアッセイを含むレセプター活性のアッセイのいずれもが、サンプル、例えば組織サンプル中の、GPR1レセプター分子の活性に影響を与える作用剤の存在を測定するために用いることができる。そのためには、GPR1ポリペプチドを、サンプル又はサンプルの抽出物の存在下及び非存在下にて、活性についてアッセイを行う。サンプル又は抽出物の存在下における、サンプルの非存在下と比べたGPR1活性の増大は、サンプルがレセプター活性のアゴニストを含むことを示す。ヒューマニンポリペプチド又は別のアゴニスト及びサンプルの存在下における、ヒューマニンポリペプチドのみが存在する場合のレセプター活性に比べたレセプター活性の減少は、サンプルがGPR1活性のアンタゴニストを含むことを示す。所望ならば、次いで、サンプルを分画し、さらに試験を行い、アゴニスト又はアンタゴニストを単離又は精製することができる。サンプルが調節剤を含んでいると言うために必要な、測定した活性の増大又は減少の量は、用いたアッセイのタイプに依存する。一般的に、サンプルの非存在下で行ったアッセイに比べた10%以上の変化(増大又は減少)は、サンプル中の調節剤の存在を示す。好ましくは、アゴニストは、ヒューマニンポリペプチドの少なくとも20%、そして好ましくは75%又は100%以上、例えば、2−倍、5−倍、10−倍以上のレセプターの活性化を刺激する。
【0225】
他の機能性アッセイは、例えば、マイクロフィジオメーター又はバイオセンサーアッセイ(Hafner、Biosens.Bioelectron.、15:149−158、2000)を含む。
【0226】
II. GPR1とヒューマニンポリペプチドの相互作用に基づく診断アッセイ:
GPCRを通じたシグナル伝達は、多くの疾患及び障害の病理に関与する。GPR1は、免疫不全症ウイルスのコレセプターとして作用し、免疫プロセス、障害又は疾患において役割を担うことが示された。GPR1の発現パターンはまた、このレセプターが他の疾患、障害又はプロセスにおいて役割を担っている可能性を示唆するが、当該GPR1−関連疾患又はGPR1−関連障害は前記の通りである。
【0227】
GPR1のヒューマニンポリペプチドとの相互作用は、GPR1シグナル伝達が関与する疾患、障害又はプロセスの診断又はモニターのためのアッセイの基礎として使うことができる。
【0228】
GPR1−関連疾患、障害又はプロセスの診断アッセイは、いくつかの異なる形態を有しえる。
【0229】
第一に、診断アッセイは、組織サンプル中のGPR1及び/又はヒューマニンポリペプチド、遺伝子又はmRNAの量を測定することができる。これらのポリペプチドのいずれか又は双方をコードするmRNAの量を測定するアッセイもまた、このカテゴリーに適合する。
【0230】
第二に、アッセイは、レセプター又はリガンドの質を評価することができる。例えば、ある固体が、GPR1又はヒューマニンポリペプチドのいずれか又は双方の突然変異又は変異型を発現するか否かを測定するアッセイは、診断に用いることができる。
【0231】
第三に、GPR1ポリペプチドの1又は2以上の活性を測定するアッセイは、診断に用いることができる。
【0232】
従って、本発明は、GPR1−関連疾患、障害又はプロセスの診断アッセイに関する。GPR1−関連疾患、GPR1−関連障害又はGPR1−関連プロセスは、前記した群からの一部であってもよい。
【0233】
本発明はまた、当該ヒューマニンポリペプチド−関連疾患又はヒューマニンポリペプチド−関連障害が前記した通りである、ヒューマニンポリペプチド−関連疾患、障害又はプロセスの診断アッセイにも関する。
【0234】
この方法によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドであってもよく;かつ、当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を持つGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、そしてそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:12の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12に対し1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは切断型ヒューマニンポリペプチドであってもよく;当該ヒューマニンポリペプチドは、突然変異したヒューマニンポリペプチドであってもよく;当該ヒューマニンポリペプチドは、追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HAタグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0235】
この方法によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:13で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を持つポリペプチドであってもよく;かつ当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、そしてそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:13の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:13の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:13に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは、追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HA−タグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0236】
この方法によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:14で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を持つポリペプチドであってもよく;そして当該当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、そしてそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:14の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:14の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:14に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HAタグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0237】
この方法によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:15で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を有するポリペプチドであってもよく;そして当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を有するGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、そしてそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:15の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:15の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:15に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、 HAタグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0238】
A. GPR1又はヒューマニンポリペプチドの量を測定するアッセイ
レセプター又はそのリガンドの異常なレベルがサンプル中に存在するか否かを測定するために、GPR1及びヒューマニンポリペプチドレベルを測定し、標準と比較することができ、そのいずれもが、GPR1シグナル伝達の障害の可能性を示す。ポリペプチドレベルは、例えば、そのポリペプチドに特異的な抗体を用いて、免疫組織化学により測定される。GPR1活性により特徴づけられる疾患又は障害を患うと疑われる個体から単離したサンプルを、GPR1又はヒューマニンポリペプチドの抗体と接触させ、そして抗体の結合を、当該技術分野で知られているように(例えば、二次抗体と複合した酵素の活性の測定により)測定する。
【0239】
GPR1及び/又はヒューマニンポリペプチドレベルの測定に対する別のアプローチは、影響を受けた組織からの細胞のフローサイトメトリー分析を用いる。GPR1又はヒューマニンポリペプチドに特異的な抗体の蛍光標識を含むフローサイトメトリーの方法は、当業者によく知られている。他のアプローチは、ラジオイムノアッセイアッセイ又はELISAを含む。これらのそれぞれに対する方法も当業者によく知られている。
【0240】
検出した結合の量を、健常な個体からの、又は影響を受けた個体のそれほど影響を受けていない部位からの類似の組織のサンプルにおける結合と比較する。標準と比べた10%以上の増大は、GPR1の異常により特徴づけられる疾患又は障害と診断される。
【0241】
GPR1及びヒューマニンポリペプチドの発現はまた、組織のサンプル中の当該ポリペプチドのいずれか又は双方をコードするmRNAの量を決定することによっても測定することができる。mRNAは、定量的又は準定量的PCRによって定量することができる。「定量的」増幅の方法は、当業者によく知られており、そしてGPR1及びヒューマニンポリペプチドの双方の増幅のためのプライマー配列を本明細書に開示する。定量的PCRの通常の方法は、同じプライマーを用いて制御配列の既知の量を同時に共増幅(co−amplifying)することを含む。
【0242】
これにより、PCR反応を較正するために用いることができる内部標準が得られる。定量的PCRについての詳細なプロトコルは、PCR Protocols、A Guide to Methods and Applications、Innis et al.、Academic Press、Inc.N.Y.、(1990)中に記載されており、これは、参考文献として本明細書に取り込まれる。健常な個体からの同様の組織のサンプル中の、又は影響を受けた個体の影響を受けていない部位からの組織のサンプル中の発現量と比較した、サンプル中のGPR1又はヒューマニンポリペプチドをコードするmRNAの量の10%以上の増大は、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害であると診断される。
【0243】
B. 定量的アッセイ
GPR1ポリペプチド又はそれをコードするmRNAが野生型であるか否かを評価するアッセイは、診断に用いることができる。
【0244】
GPR1又はヒューマニンポリペプチドの異常により特徴づけられる疾患又は障害をこのように診断するために、サンプルから単離したRNAを、ヒューマニンポリペプチド及び/又はGPR1のPCR増幅の鋳型として用いる。次いで、増幅した配列を、標準的な方法を用いて直接シークエンスするか、又は、最初にベクター中にクローンし、次いでシークエンスする。野生型GPR1又はヒューマニンポリペプチドの配列に対する、1又は2以上のコードされたアミノ酸を変える配列中の違いは、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断となりえる。コードされた配列の変化がサンプル中で同定される場合には、変異レセプター又はリガンドを発現させ、そしてその活性を野生型GPR1又はヒューマニンポリペプチドのものと比較することは有用でありえる。他の利点に加えて、このアプローチにより、恒常的に活性な突然変異体及びヌル突然変異体を含む新規な突然変異体が得られる。
【0245】
標準的なシークエンス法に加え、例えば、野生型と変異配列を区別するmolecular beaconsのハイブリッド形成(hybridization)を用いて、特定の突然変異体の存在について増幅配列をアッセイすることができる。1個のヌクレオチドほどの小さな変化に基づいて区別を行うハイブリッド形成アッセイは、当業者によく知られている。あるいは、例えば、U.S.Patents 5,888,819、6,004,744及び6,013,431に記載されたものを含む、多くの「ミニシークエンス(minisequencing)」アッセイのいずれかを行うことができる。当該技術分野で知られるこれらのアッセイ及び他のアッセイにより、そのサンプル中における、既知の多形性を有する核酸の存在を測定することができる。
【0246】
所望であれば、アレイ又はマイクロアレイ−ベースの方法を用いて、GPR1又はヒューマニンポリペプチド配列における突然変異の発現又は存在を分析することもできる。核酸の発現をミニシークエンスし、定量するためのアレイ−ベースの方法は当業者によく知られている。
【0247】
C. 機能性アッセイ
GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断は、機能性アッセイを用いて行うこともできる。それを行うためには、組織サンプルから調製した細胞膜又は抽出物を、本明細書に記載したようなGPR1活性のアッセイに用いる(例えば、リガンド結合アッセイ、GTP−結合アッセイ、GTPアーゼアッセイ、アデニル酸シクラーゼアッセイ、cAMPアッセイ、リン脂質の分解、ジアシルグリセロール若しくはイノシトール三リン酸アッセイ、PKC活性化アッセイ又はキナーゼアッセイ)。検出した活性を、健常な個体又は影響を受けた個体の影響を受けていない部位から得た標準サンプル中のものと比較する。代替法として、サンプル又はサンプル抽出物をGPR1を発現する細胞に適用し、次いで標準サンプルと比較したGPR1シグナル伝達活性を測定することができる。これらのアッセイのいずれかにおいて測定した活性における、標準の活性に対する10%以上の違いは、GPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害と診断される。
【0248】
本発明に従う、細胞中のGPR1活性の調節
GPR1のリガンドとしてのヒューマニンポリペプチドの同定により、細胞内でGPR1ポリペプチドの活性を調節する方法が得られる。GPR1ポリペプチドの機能を調節する作用剤をその細胞に与えることにより、細胞内のGPR1活性は調節される。この調節は、さらなる調節剤の識別のためのアッセイの一部として培養細胞中で、又は例えば、ヒトを含む動物中で行うことができる。作用剤には、本明細書で定義したヒューマニンポリペプチド並びに本明細書に記載したスクリーニング方法を用いて識別されたさらなる調節剤が含まれる。
【0249】
作用剤は、培養細胞に添加することにより細胞に与えることができる。与える量は、その作用剤の相同性及びそれを与える目的に応じて変わる。例えば、GPR1活性のアンタゴニストを識別するための培養アッセイにおいては、好ましくは、レセプターを最大値の半分活性化するヒューマニンポリペプチドの量(例えば、約EC50)を、好ましくはレセプターの飽和に必要な用量を超えることなく、添加する。この用量は、ヒューマニンポリペプチドのさらなる添加がGPR1活性にさらなる効果を及ぼさない点を測定するために、ヒューマニンポリペプチドの量を設定する(titrating)ことにより決定することができる。
【0250】
GPR1活性の調節剤を、疾患又は障害の治療のために動物に投与する場合には、投与量は、望まれる結果に基づいて当業者が調整することができる。1又は2以上の測定可能な病理的側面(例えば、腫瘍細胞の増殖、炎症性細胞の蓄積)が、治療前の値と比較して少なくとも10%変わる場合には、成功裏な治療が達成されている。
【0251】
本発明の有用な候補調節剤
候補調節剤は、いかなる大きさ又は起源の合成又は天然化合物のライブラリーからもスクリーニングすることができる。莫大な数の方法が、現在、糖類、ペプチド、脂質、炭水化物及び核酸ベースの化合物のランダム及び指向性合成(random and directed synthesis)に用いられている。有機低分子のライブラリーを含む、異なる大きさの合成化合物ライブラリーは、よく知られたコンビナトリアル又はパラレル化学技術を用いて調製してもよく、又は多くの企業から市販されている。あるいは、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、多くの企業から入手可能であるか、又は当業者によく知られた方法により容易に製造できる。加えて、天然又は合成的に製造されたライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的及び生化学的手段を用いて容易に修飾される。
【0252】
前記したように、候補調節剤は、既知のポリペプチド(例えば、ヒューマニンポリペプチド、抗体)又は核酸ライブラリーにおいてコードされる核酸(例えば、アプタマー(aptamers))の変異体であってもよい。ライブラリーでトランスフォームされた細胞(例えば、細菌、酵母又はより高等な真核細胞)は、増殖させ、そして抽出物として調製し、次いでGPR1結合性アッセイ又はGPR1活性の機能性アッセイに適用される。
【0253】
本発明の有用な抗体
本発明は、GPR1及びヒューマニンポリペプチドの抗体を提供する。抗体は、当該技術分野で知られた標準的なプロトコル(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual ed. by Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press:1988)を見よ。)を用いて作成することができる。マウス、ハムスター又はウサギ等の哺乳動物は、ペプチドの免疫原性フォーム(例えば、抗体反応を誘起できるGPR1又はヒューマニンポリペプチド又は抗原性フラグメント又は本明細書に前記した融合タンパク質)を用いて免疫できる。抗体を生成させるための免疫原は、ポリペプチド(例えば、単離した組み換えポリペプチド又は合成ペプチド)をアジュバントと混合することにより調製できる。あるいは、GPR1又はヒューマニンポリペプチド又はペプチドは、より大きな免疫原性タンパク質との融合タンパク質として製造される。ポリペプチドは、キーホールリンペットヘモシニアン(keyhole limpet hemocyanin)等の他のより大きな免疫原性タンパク質に共有結合させることもできる。あるいは、Costagliola et al.(J.Clin.Invest.、105:803−811、2000)に記載されているように、GPR1若しくはヒューマニンポリペプチド又はこれらのタンパク質のフラグメントをコードするプラスミド又はウイルスベクターを、ポリペプチドを発現させ、そして動物中で免疫反応を起こすために用いることもできる。抗体を生成させるためには、典型的には、免疫原を、ウサギ、ヒツジ又はマウス等の実験動物の皮内、皮下又は筋肉内に投与する。上記の抗体に加えて、単鎖抗体等の遺伝子改変した抗体誘導体を製造することができる。
【0254】
免疫化の進展は、血漿又は血清中の抗体の力価を検出することによりモニターできる。抗体のレベルを評価するために、免疫原を抗原として用いた標準的なELISA、フローサイトメトリー又は他の免疫アッセイを使うこともできる。抗体調製物は、単に、免疫化した動物からの血清であってもよく、又は、所望であれば、例えば、固定化免疫原を用いたアフィニティ・クロマトグラフィーにより、ポリクロナル抗体を血清から単離することができる。
【0255】
モノクロナル抗体を作るためには、抗体−産生脾細胞を免疫化した動物よりハーヴェストし、そして標準的な体細胞融合法により、ミエローマ細胞のような不死化した(immortalizing)細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を得る。かかる技術は当業者によく知られており、そして、例えば、ハイブリドーマ技術(KohlerとMilsteinにより最初に開発された、Nature、256:495−497、1975))、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbar et al.、Immunology Today、4:72、1983)及びヒトモノクロナル抗体を製造するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al.、Monoclonal Antibodies and cancer Therapy、Alan R.Liss、Inc.pp.77−96、1985)を包含する。ハイブリドーマ細胞は、ヒューマニンポリペプチド又はGPR1ペプチド又はポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生について、免疫化学的にスクリーニングすることができ、そして、モノクロナル抗体は、かかるハイブリドーマ細胞を含む培養の培地から単離される。
【0256】
本発明の有用なトランスジェニック動物
GPR1又はヒューマニンポリペプチド又はその変異体を発現するトランスジェニック動物は、GPR1を介したシグナル伝達の研究並びにGPR1の活性を調節する薬剤又は作用剤の研究に有用である。トランスジェニック動物は少なくとも1つの外来遺伝子を含む非ヒト動物であり、その外来遺伝子はトランスジーンと呼ばれ、トランスジェニック動物の遺伝物質の一部である。好ましくは、トランスジーンは動物の生殖細胞系に含まれ、その動物の子孫に伝えられることができる。トランスジーンを動物の遺伝物質中に導入するためには、トランスジーンの受精卵の前核へのマイクロインジェクション及び胚性幹細胞の操作(U.S.Patent No.4,873,191;Palmiter and Brinster、Ann.Rev.Genet.、20:465−499、1986;フランス特許出願2593827)を含むが、それらに限定されない多くの技術を用いてよい。トランスジェニック動物は、そのすべての細胞内にトランスジーンを担持でき、又は遺伝的にモザイクでありえる。
【0257】
従来の遺伝子導入法によれば、正常な又は修飾した遺伝子の追加のコピーを、接合子(zygote)の雄性前核中に注入し、そして受容体(recipient)マウスのゲノムDNA中に取り込ませる。トランスジーンは、確立されたトランスジェニック株内で、メンデル則に従って伝えられる。トランスジーンは恒常的に発現され、又は組織特異的に若しくは外因性の薬剤に反応して発現され、例えば、1つのトランスジーンを発現するテトラサイクリンAトランスジェニック動物は、2番目のトランスジーンを発現する2番目のトランスジェニック動物と交配させることができ、それらの子孫は両方のトランスジーンを担持し、そして発現する。
【0258】
ノックアウトマウス
GPR1又はヒューマニンポリペプチド又は変異体のいずれかをコードする染色体配列中にホモ接合型欠失(homozygous deletion)を有する動物は、レセプター及びリガンドの機能を研究するために有用でありえる。ヒューマニンポリペプチドがGPR1に結合する唯一のリガンドであるか、又はそれがファミリーの一員であるかに関連して、ヒューマニンのノックアウトが別個のフェノタイプを持つか否かは特に重要である。さらに、特定の生理学的及び/又は病理学的過程におけるGPR1/ヒューマニンポリペプチドの同定は特に重要である。
【0259】
i. 標準的ノックアウト動物
ノックアウト動物は、相同的組み換えを用いて遺伝子欠失を創る方法により製造することができる。この技術は、胚に由来し、培養で維持され、そしてホストの胚盤胞に導入された場合に、動物のすべての組織の形成に関与する能力を有する胚性幹(ES)細胞の開発に基づく。ノックアウト動物は、相同的組み換えをES細胞中の特定のターゲット遺伝子に向け、それによりヌル対立遺伝子を作ることにより製造される。ノックアウト動物を作る技術は、十分に記載されている(例えば、Huszar et al.、Cell、88:131、1997;及びOhki−Hamazaki et al.、Nature、390:165、1997を見よ。)。当業者は、遺伝子標的コンストラクトを作成するために、(本明細書に記載され、そして当該技術分野で知られた)GPR1及びヒューマニンの配列を用いて、ホモ接合GPR1又はヒューマニンポリペプチドノックアウト動物(例えば、マウス)を作ることができる。
【0260】
ii. 組織特異的ノックアウト
部位指定相同的組み換え(targeted homologous recombination)の方法は、バクテリオファージP1、部位特異的リコンビナーゼCreに基づく、部位特異的組み換えのためのシステムの開発によって改善されてきた。バクテリオファージP1からのCre−loxP部位特異的DNAリコンビナーゼは、特定の組織又は成長段階に限定した遺伝子のノックアウトを作成するために、トランスジェニックマウスアッセイにおいて使用される。全体的な遺伝子ノックアウトに対し、部位に限定された遺伝的欠失は、フェノタイプを特定の細胞/組織にわりあてることができるという利点がある。Cre−loxP系においては、1番目のトランスジェニックマウス株は、loxP部位を、興味の対象である遺伝子の1又は2以上のエクソンに並べて配置するように設計する。このいわゆる「floxed遺伝子」のホモ接合体を、細胞/組織型転写プロモーターの制御下でCre遺伝子を発現する2番目のトランスジェニックマウスと交配させる。次いで、Creタンパク質がloxP認識配列の間のDNAを切除し、そして標的遺伝子機能を効果的に除去する。現在では、例えば、哺乳動物組織特異的遺伝子の誘導的不活性化を含む、この方法の多くのin vivoの実例がある(Wagner et al.、Nucleic Acids Res.、25:4323、1997)。従って、当業者は、GPR1又はヒューマニンが、選択した組織又は細胞型内で組織特異的に除去されたノックアウト動物を作ることができる。
【0261】
本発明に従う有用なキット
本発明は、GPR1活性の調節剤のスクリーニングに有用なキット並びにGPR1シグナル伝達の異常により特徴づけられる疾患又は障害の診断に有用なキットを提供する。本発明に従う有用なキットは、(例えば、単離した膜上、GPR1を発現する細胞又はSPRチップ上等、膜−又は細胞−結合GPR1ポリペプチドを含む)単離したGPR1ポリペプチド及び単離したヒューマニンポリペプチドを含むことができる。
【0262】
キットは、GPR1に特異的な抗体及び/又はヒューマニンポリペプチドの抗体を含むこともできる。
【0263】
あるいは又は加えて、キットは、GPR1ポリペプチドを発現するようにトランスフォームした細胞及び/又はヒューマニンポリペプチドを発現するようにトランスフォームした細胞を含むことができる。さらなる態様において、本発明に従うキットは、GPR1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及び/又はヒューマニンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。なおさらなる態様において、本発明に従うキットは、以下に記載するように、GPR1又はヒューマニンの増幅に有用な特異的なプライマーを含んでもよい。本発明に従うすべてのキットは、上記のアイテム又はアイテムの組み合わせ及びそれらのための包装材を含む。キットは使用説明書も含む。
【0264】
本キットによれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を持つポリペプチドであってもよく、当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を持つGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:12の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:12に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HA−タグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0265】
本キットによれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:13で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性の相同性を持つポリペプチドであってもよく、当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を持つGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:13の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:13の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:13に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HA−タグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0266】
本キットによれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:14で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を持つポリペプチドであってもよく;当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を持つGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:14の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:14の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:14に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは追加の配列を含んでヒューマニン融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HA−タグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0267】
本キットによれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:15で表されるポリペプチドに対して、少なくとも31%の相同性、そして好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%、そして特に100%の相同性を持つポリペプチドであってもよく;当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を持つGPR1ポリペプチドに特異的に結合し、かつそのシグナル伝達活性を活性化する。あるいは、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:15の全長ポリペプチドのフラグメントであって、SEQ ID NO:15の全長ポリペプチドの結合活性及び/又はシグナル伝達活性化のレベルの少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%)を保持する当該フラグメントであってもよい。本発明によれば、当該ヒューマニンポリペプチドは、SEQ ID NO:15に対し、1又は2以上の付加、挿入、欠失又は置換を含んでもよい。当該ヒューマニンポリペプチドは追加の配列を含んでヒューマニンポリペプチド融合タンパク質を形成してもよく、当該追加の配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6X以上のHis)又はエピトープタグ(例えば、HA−タグ、Mycタグ、FLAGタグ)配列から成る群より選択してもよい。
【0268】
生物学的アッセイ
In vitroアッセイ
ヒューマニンポリペプチド及びヒューマニンポリペプチド誘導体によるヒトGPR1レセプター活性の調節を、下記の実験方法に従って測定する。
【0269】
実験方法:
ベータ−アレスチン2の移動の測定:
組み換えヒトGPR1レセプター及びベータ−アレスチン2(CHO−K1−hGPR1−ベータ−アレスチン2)を発現する細胞、PathHunter eXpress細胞を、384−ウェル組織培養プレート中に、20.000細胞/ウェルの密度、25μlの体積にて、OCC2培地(P/N30−409)中にプレートした。細胞をマイクロプレート中にシードした後、試験前に、それらを37℃、5%COの加湿インキュベータ内に24時間置いた。OCC2培地を廃棄し、そしてOLE_LINK6各ウェル当たり20μlのHBSS 1X(Gibco、14065)、20mMHEPES(Gibco、16530)、0.1%(w/v)BSA(Sigma、A3803)、pH7.4OLE_LINK6で置き換えた。被験化合物のストック溶液をDMSO中に10Mmの濃度で調製し、そしてHBSS1X(Gibco、14065)、20mM HEPES(Gibco、16530)、0.1%(w/v)BSA(Sigma、A3803)、pH7.4で、活性化用量反応曲線に必要な濃度に段階希釈した。PathHunter eXpress細胞をインキュベータから除き、化合物プレートから5μlを移した。37℃にて90分間インキュベートした。インキュベーションの間、各384ウェルプレート用の検出試薬の検量線用溶液を、下記の試薬を混合することにより調製した:細胞アッセイバッファー(19部)、基質試薬1(5部)及び基質2(1部)。調製した検出試薬をウェル当たり12.5μl添加し、そして室温(23℃)で90分間インキュベートした。サンプルを、標準蛍光プレートリーダー(Fluostar)にて、下記の条件下で読んだ:測定インターバル(measurement interval):0.1秒、interval time:0.1秒、インターバル数(number of interval):1、ゲイン:自動調整、発光フィルター:レンズ。生データをGrphPad Prism softwareで分析して、曲線を作成し、そしてEC50を算出した。
【0270】
GPR1レセプターに関し、すべての例示化合物のアゴニスト活性(EC50値)は46−93nMの範囲内であり、平均は64nMである。選択した化合物のアゴニスト活性を表1に示す。表1で言及した化合物は市販されている。
【0271】
【表1】

【0272】
略語
BSA: ウシ血清アルブミン
cAMP: 環状アデノシン一リン酸
CAT: クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ
CDR: 相補性決定領域
CRE: cAMP応答配列
CRE: 環化組み換え
(Cyclization Recombination)
DAG: ジアシルグリセロール
DMSO: ジメチルスルホキシド
EGTA: エチレングリコール−ビス(ベータ−アミノエチルエーテル)−
N,N,N’,N’−テトラ酢酸
ELISA: 酵素免疫測定法
FLP: フリッパーゼ組み換え酵素
(FLiPpase Recombinase Enzyme)
FPRL1: ホルミルペプチドレセプターLike1
FPRL2: ホルミルペプチドレセプターLike2
FRET: 蛍光エネルギー転移
GDP: グアノシン二リン酸
GPCR: Gタンパク質共役レセプター
GPR1 Gタンパク質共役レセプター1
GTP: グアノシン三リン酸
HBSS: ハンクス平衡塩類溶液
HEPES: 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HIV: ヒト免疫不全症ウイルス
HN: ヒューマニン
Kd: 解離の平衡定数
PCR: ポリメラーゼ連鎖反応
RT/PCR: 逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応
RLU 相対発光量(Relative Light Units)
SIV: サル免疫不全ウイルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPR1の機能を調節する作用剤を識別する方法であって:a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドと接触させる工程;及びb) GPR1ポリペプチドのヒューマニンポリペプチドへの相互作用を測定する工程であって、候補調節剤非存在下での相互作用に対する、候補調節剤存在下での相互作用の増大又は減少が、候補調節剤をGPR1の機能を調節する作用剤として識別する上記工程、を含む上記方法。
【請求項2】
GPR1の機能を調節する作用剤を識別する方法であって:a) ヒューマニンポリペプチドのGPR1ポリペプチドへの相互作用を許容する条件下で、候補調節剤の存在下及び非存在下にて、GPR1ポリペプチドをヒューマニンポリペプチドに接触させる工程;及びb) GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程であって、候補調節剤非存在下における活性に対する、候補調節剤の存在下における活性の変化が、候補調節剤をGPR1の機能を調節する作用剤として識別する上記工程、を含む上記方法。
【請求項3】
GPR1の機能を調節する作用剤を識別する方法であって:a) GPR1ポリペプチドを候補調節剤と接触させる工程;b) 候補調節剤の存在下で、GPR1ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程;及びc) 候補調節剤の存在下で測定した活性を、GPR1ポリペプチドがヒューマニンポリペプチドと接触するサンプル内で測定した活性と比較する工程であって、候補調節剤の存在下で測定した活性の量が、EC50で存在するヒューマニンポリペプチドにより引き起こされる量の少なくとも50%である場合に、当該候補調節剤をGPR1の機能を調節する作用剤として識別する上記工程、を含む上記方法。
【請求項4】
GPR1の機能を調節する当該作用剤がサンプル中に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
当該測定が、標識置換、表面プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光消光及び蛍光偏光から選択される方法を用いて行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.2であり、かつ当該ヒューマニンポリペプチド配列がSEQ ID No.12であり、そして当該ヒューマニンポリペプチドが当該GPR1ポリペプチドに特異的に結合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
当該GPR1ポリペプチド配列がSEQ ID No.2、SEQ ID No.4、SEQ ID No.6、SEQ ID No.8及びSEQ ID No.10から成る群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
当該ヒューマニンポリペプチド配列が、SEQ ID No.12、SEQ ID No.13、SEQ ID No.14及びSEQ ID No.15から成る群より選択される、請求項1〜5又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
当該ヒューマニンポリペプチドが検出可能に標識された、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
当該GPR1ポリペプチドが細胞内又は細胞上で発現する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
当該GPR1ポリペプチドが細胞膜内に存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
当該細胞が、COS−7−細胞、CHO細胞、U2OS細胞、LM(TK−)細胞、NIH−3T3細胞、HEK細胞、K−562細胞及び1321N1星状細胞種細胞から成る群より選択される、請求項10又は11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
当該GPR1ポリペプチドが、合成リポソーム又はウイルス誘発性発芽膜上又はそれらの内部に存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
当該方法が、さらにGα16の存在下で行われる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
当該作用剤が、ペプチド、ポリペプチド、抗体又はその抗原結合フラグメント、脂質、炭水化物、核酸及び有機低分子から成る群より選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
シグナル伝達活性を測定する工程が、グアニンヌクレオチドの結合又は交換、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、ベータ−アレスチン1の移動、ベータ−アレスチン2の移動、プロテインキナーゼC活性、ホスファチジルイノシトールの分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、アラキドン酸、MAPキナーゼ活性、チロシンキナーゼ活性又はレポーター遺伝子発現の測定を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2013−506829(P2013−506829A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531544(P2012−531544)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054439
【国際公開番号】WO2011/039731
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】