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GPR119アゴニスト並びにそれを含むインスリン分泌促進剤、血糖降下剤および糖尿病の治療または予防剤
説明

GPR119アゴニスト並びにそれを含むインスリン分泌促進剤、血糖降下剤および糖尿病の治療または予防剤

【課題】新規なGPR119アゴニストを提供し、それを高血糖の治療・予防などに使用すること。
【解決手段】5-hydroxy-6E,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid(5-HEPE)を有効成分とするGPR119アゴニスト、並びにそれを含むインスリン分泌促進剤、血糖降下剤および糖尿病の治療または予防剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPR119アゴニスト(活性化剤)並びにそれを含むインスリン分泌促進剤、血糖降下剤および糖尿病の治療または予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
GPR119(Gタンパク質共役型受容体119)は、近年、ヒトゲノム解析によって見つかった新たなGタンパク質共役受容体である。GPR119アゴニストは、cAMP産生を促進し、インスリン分泌を促進することが知られている。GPR119アゴニストとしては、[6−(4−ベンゼンスルホニル−ピペリジン−1−イル)−5−ニトロ−ピリミジン−4−イル]−(4−メタンスルホニル−フェニル)−アミン(特許文献1)、6'−[4−(2−メトキシカルボニル−アセチル)−フェノキシ]−3'−ニトロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,2']ビピリジニル−4−カルボン酸エチルエステル(特許文献2)、3−[6−(4−メタンスルホニル−フェニルアミノ)−5−ニトロ−ピリミジン−4−イルオキシメチル]−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(特許文献3)、4−[1−(4−メタンスルホニル−フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(特許文献4)などの置換へテロアリール誘導体が知られている(特許文献5)。
なお、GPR119アゴニストが関与しないインスリン分泌促進のメカニズムとしては、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)などのインクレチンを分解するDPP−IV(ジペプチジルペプチターゼ−IV)の阻害が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−516572号公報
【特許文献2】特表2006−518763号公報
【特許文献3】特表2007−528856号公報
【特許文献4】特表2007−531698号公報
【特許文献5】特開2008−195733号公報
【特許文献6】特表2008−540651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なGPR119アゴニストを提供することを課題とする。また、本発明は、新規なGPR119アゴニストを、医薬、食品の成分として使用し、高血糖の治療・予防のための医薬、高血糖の改善・予防のための食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、5-hydroxy-6E,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid(5-HEPE)がGPR119アゴニストとして作用すること、さらにはインスリン分泌促進作用や血糖低下作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0006】
(1)5-hydroxy-6E,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid(5-HEPE)を有効成分とする、GPR119アゴニスト。
(2)(1)に記載のGPR119アゴニストを含むインスリン分泌促進剤。
(3)(1)に記載のGPR119アゴニストを含む血糖降下剤。
(4)(1)に記載のGPR119アゴニストを含む糖尿病の治療または予防剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のGPR119アゴニストは、cAMP産生促進作用、インスリン分泌促進作用、血糖値降下作用を有する。従って、本発明のGPR119アゴニストは、cAMP産生促進剤、インスリン分泌促進剤、血糖値降下剤として使用できる。本発明のGPR119アゴニストは、高血糖の治療・予防のための医薬、糖尿病の合併症の治療・予防のための医薬や、循環器系疾患(高血圧、高脂血症など)の治療・予防のための医薬、高血糖改善・予防のための食品、糖尿病の合併症の改善・予防のための食品や、循環器系疾患(高血圧、高脂血症など)の改善・予防のための食品の成分として好適である。
特に、本発明のGPR119アゴニストは、摂食時などの高血糖条件下のみで、インスリン分泌促進作用を発揮し、血糖値の上昇を抑える。従って、本発明の医薬、食品は、非摂食時などの比較的低血糖条件下で、過度な低血糖を引き起こす危険性が小さく、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】5-HEPEのGPR119アゴニスト活性(GPR119へのGTP-γS結合促進活性)を示す図である。
【図2】5-HEPEのcAMP産生促進効果を示す図である。
【図3】5-HEPEのインスリン分泌促進効果を示す図である。
【図4】5-HEPEの血糖値上昇抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のGPR119アゴニストは、5-HEPEを有効成分として含む。5-HEPEは光学異性体を含み、異性体の混合物でもよいし、S体でもよい。また、5-HEPEは塩でもよい。
5-HEPEは合成されたものでも、5-HEPEを含む試料から単離・精製されたものでもよい。
また、5-HEPEはEPA(エイコサペンタエン酸)を酵素により酸化することによって得られるものでもよい(参考文献:Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol. 81, pp689-693, 1984)。ここで、酵素としてはシクロオキシゲナーゼが例示され、植物由来シクロオキシゲナーゼでもよい。
【0010】
本発明のGPR119アゴニストは、インスリン分泌促進作用、血糖降下作用を有する。従って、本発明のGPR119アゴニストはインスリン分泌促進剤や血糖降下剤として用いることができる。
【0011】
本発明のGPR119アゴニストは、そのままで、又は通常医薬に用いられる担体とともに製剤化することにより、GPR119の不活性状態に起因するcAMP産生の低下、インスリン分泌の低下、血糖値の上昇が引き起こす疾病の治療・予防のための医薬(以下「本発明の医薬」ともいう。)として用いることができる。このような疾病としては、例えば、糖尿病、糖尿病合併症、高血圧及び高脂血症などの循環器系疾患等が挙げられる。
【0012】
本発明の医薬の剤形は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択できる。具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤等が挙げられる。
【0013】
本発明の医薬は、5-HEPE以外の有効成分を含有していてもよい。
また、本発明の医薬の製剤化の際、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、矯味矯臭剤、希釈剤等を加えてもよい。
【0014】
本発明の医薬の投与方法は、経口的投与、非経口投与の何れであってもよい。また、本発明の医薬の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて決定されるが、一般的には、有効成分量として成人一日あたり1μg/kgから1000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから100mg/kg程度の範囲である。本発明の医薬は、5-HEPEに必要に応じて任意成分を配合することにより製造することができる。
【0015】
本発明のGPR119アゴニストは、通常用いられる食品原料とともに加工することにより、GPR119の不活性状態、これに起因するcAMP産生の低下、インスリン分泌の低下、血糖値の上昇が引き起こす疾病の予防・改善のための食品(以下「本発明の食品」ともいう。)として用いることができる。このような疾病としては、例えば、糖尿病、糖尿病合併症、高血圧及び高脂血症などの循環器系疾患等が挙げられる。
本発明において、「食品」には、人間が摂取する食品の他、人間以外の動物が摂取する飼料も含まれる。
【0016】
本発明の食品における前記培養物又は抽出物の含有量は、食品の用途、食品の形態等に応じて決定される。例えば、5-HEPEの含有量が食品全体に対し、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%となるような含有量とすることができる。
【0017】
本発明の食品の形態は特に限定されない。例えば、飲料、菓子などの加工食品が挙げられる。
本発明の食品は、5-HEPE以外の健康増進成分を含有していてもよい。
【0018】
また、本発明の食品の摂取量は、食品の用途、食品の形態等に応じて決定されるが、例えば、5-HEPEの摂取量が、成人一日あたり1μg/kgから1000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから100mg/kg程度の範囲となるような摂取量を目安とすることができる。本発明の食品は、5-HEPEを食品原料とともに加工することにより製造することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に限定されない。
【0020】
1.GPR119アゴニスト活性の測定
(1)試薬
5-HEPEはCayman社製の試薬(Item Number 32200)を用いた。コントロールとしてGPR119アゴニスト活性が知られているリゾフォスファチジルコリン(LPC)を使用した。
【0021】
(2)GPCRアッセイ
インビトロでGPR119アゴニスト活性を評価した。活性評価は、[35S]GTP−γSのバインディングアッセイにより行った。詳細な方法は、生物物理43(1)37−39(2003)に示されるとおりである。
【0022】
その結果、5-HEPEに強いGPR119アゴニスト活性が検出された。そこで、さらに5-HEPEをヘペス緩衝液を用いて希釈し、ドーズリスポンスを確認した。図1に示すように、5-HEPEのEC50は52nMであり、LPCと同オーダーのアゴニスト活性を示した。
【0023】
2.cAMP産生促進作用の測定
5-HEPEについてcAMP産生促進作用を測定した。
具体的な方法は、以下のとおりである。
GPR119を安定的に発現するCHO細胞を作製し、この細胞に各濃度の5-HEPE(DMSO溶液)を添加してcAMP濃度を測定した。
具体的には、まず、5-HEPEのDMSO溶液2μlをKRB(Krebs-Ringer bicarbonate、組成は下記参照) (グルコース20mM)198μlに溶解し、活性測定用のサンプルとした。
活性測定2日前に96wellプレートに1.0×104[cells/well]になるようCHO(GPR119)細胞を播種した。2日後、培地をアスピレーターで吸い、KRB (グルコース 0mM)で細胞をウォッシュした。続いて、ウェルにKRB(グルコース2.5mM)100μlを加えて、30分CO2インキュベーター内でインキュベートした。その後、KRB(グルコース 0mM)で細胞をウォッシュした。各wellのKRBを除去した後に、上記作製したサンプルを、各wellに100μlずつ添加し、37℃ CO2インキュベーターで2時間インキュベートした。また、コントロールとしてLPCを添加した。
その後、キット(Amersham cAMP Biotrak Enzymeimmunoassay System RPN 225)を用いてcAMP活性の測定を行った(下記の参考文献参照)。
【0024】
<KRBの組成>
NaCl 119mM
KCl 4.74mM
CaCl2 2.54mM
MgCl2 1.19mM
KH2PO4 1.19mM
NaHCO3 25mM
HEPES(pH 7.4) 10mM NaOHでpHを調整
BSA 0.05%
<参考文献>
A role for intestinal endocrine cell-expressed g protein-coupled receptor 119 inglycemic control by enhancing glucagon-like Peptide-1 and glucose-dependent insulinotropic Peptide release.
Chu ZL, Carroll C, Alfonso J, Gutierrez V, He H, Lucman A, Pedraza M, Mondala H,Gao H, Bagnol D, Chen R, Jones RM, Behan DP, Leonard J.
Endocrinology. 2008 May;149(5):2038-47.
【0025】
その結果、図2に示すように、5-HEPEを培地に添加した場合には、LPCよりも高いcAMP産生が検出された。これより、5-HEPEは、細胞のcAMP産生促進作用を有することが判った。
【0026】
3.インスリン分泌促進作用の測定
5-HEPEについてインスリン分泌促進作用を測定した。具体的な方法は、以下のとおりである。
測定を行う2日前に、マウスすい島細胞由来MIN6細胞を96wellプレートに1.0×104cell/wellとなるように、播種した。細胞をKRB (グルコース 0mM)でウォッシュし、KRB (グルコース 2.5mM) 100μl加え、37℃ CO2インキュベーターで30分インキュベートした。続いて、KRB(グルコース 0mM)で細胞を2回ウォッシュした。
各wellのKRBを除去した後に、各濃度の5-HEPEを含むKRB溶液(グルコース濃度は2.8mM(lowGlc)または16.7mM(highGlc))を各wellに200μlずつ添加し、37℃、CO2インキュベーターで2時間インキュベートした。また、コントロールとしてLPCを添加し、同様にインキュベートした。
続いて、シバヤギ レビス インスリン-マウス(Hタイプ)のキットを使用し、分泌されたInsulin量を測定した。測定は、キットのプロトコールに従った(下記参照)。
【0027】
<プロトコール>
ビオチン結合抗インスリン抗体を付属の緩衝液で100倍に希釈・・・(1)
ペルオキシダーゼ・アビジン結合物を付属の緩衝液で100倍に希釈・・・(2)
付属の洗浄液をmillQで10倍に希釈・・・(3)
抗体固相化プレートを(3)で4回ウォッシュ
(1)を100μlずつ加える
サンプル希釈液又はコントロールを10μlずつ分注してよく混ぜる
室温で2時間インキュベート
抗体固相化プレートを(3)で4回ウォッシュ
(2)を100μlずつ分注して、よく混ぜる
室温で30分インキュベート
抗体固相化プレートを(3)で4回ウォッシュ
発色液を100μlずつ分注して、よく混ぜる
室温で30分インキュベート
反応停止液を100μlずつ分注して、よく混ぜる
マイクロプレートリーダー(450nm)で吸光度測定
【0028】
その結果、図3に示すように、5-HEPEを培地に添加した場合にはグルコース濃度依存的なインスリン分泌量が認められ、その値(15nM)もLPCと同程度であった。これより、5-HEPEは、すい島細胞のインスリン分泌促進作用を有することが判った。
【0029】
4.SDTラット(糖尿病モデルラット)を用いた糖負荷試験
糖尿病モデルラット(系統名:SDT/Jcl 9週齢 ♂、数量:5匹×3群 計15匹、微生物学的グレード:SPF)を用いて、糖負荷試験(GTT)を行った。ラットの飼育は以下の条件で行った。
【0030】
<条件>
温度:20〜26℃
湿度:45〜70%
換気回数:10〜15回/時間
照明時間:明 7:00〜19:00、暗 19:00〜7:00
微生物学的グレード:SPF
飼育ラック:オープンラック1台(MAX30ケージ)
飼育ケージ:クリーンケージ(282×451×157mm)
収容匹数:2匹×5ケージ 計10匹
飲水:給水ボトル(250cc)に充填後、高圧蒸気滅菌(121℃、30分)
給水:給水ボトル1本を週2回
床敷き:プレナーチップ(121℃、30分 高圧蒸気滅菌)
ケージ交換:1回/週
【0031】
糖負荷試験は、以下の方法で行った。
まず、5-HEPEの0.25mg/ml溶液を1%アラビノース含有リン酸緩衝液を用いて調製し、これを糖投与24時間前および2時間前(計2回)に、1群(5匹)に経口投与(事前投与)した。投与量は、1.5ml/回/匹であった。また、コントロールとして他の1群(5匹)に1%アラビノース含有リン酸緩衝液を同様に投与し、他の一群(5匹)にはエイコサペンタエン酸(EPA)の0.25mg/ml溶液(1%アラビノース含有リン酸緩衝液)を投与した。
糖投与前日より1晩(17h)絶食した。糖投与は、「大塚糖液50%」(ブドウ糖液)を、2.0g/kg(体重)腹腔内投与(IP)した。また、絶食前、絶食後の2回、体重を測定した。
各群のラットの尾から、絶食前、絶食後、糖投与後15分、30分、60分、120分の計6回採血し、ロッシュ・ダイアグノスティック製「アキュチェック・アビバ」を用いて血糖値を測定し、各群ごとに各回の平均血糖値を算出した。
【0032】
その結果、図4に示すとおり、コントロール群では糖投与後15〜30分の間に血糖値が急激に上昇したが、5-HEPEを事前投与した群では糖投与後の血糖値の上昇が抑制された。一方で、糖投与前、及び糖投与120分経過後には、5-HEPEを事前投与した群でも、コントロール群と同程度の血糖値であった。以上より、5-HEPEは、高血糖時にのみ血糖値の上昇を抑え、低血糖時には血糖値を下げないことが判った。なお、絶食前、絶食後で体重の変化は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、糖尿病治療薬、糖尿病食などに応用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-hydroxy-6E,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid(5-HEPE)を有効成分とする、GPR119アゴニスト。
【請求項2】
請求項1に記載のGPR119アゴニストを含むインスリン分泌促進剤。
【請求項3】
請求項1に記載のGPR119アゴニストを含む血糖降下剤。
【請求項4】
請求項1に記載のGPR119アゴニストを含む糖尿病の治療または予防剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63913(P2013−63913A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201858(P2011−201858)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】