説明

GPR26Gタンパク質共役受容体

配列番号3または配列番号5で示すアミノ酸配列、並びにそれらのホモログ、バリアント、及び誘導体を含むGPR26 G-タンパク質共役受容体(GPCR)ポリペプチドを開示する。GPR26ポリペプチドをコードすることができる核酸も開示する。GPR26受容体は、精神疾患の診断及び治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のファミリーのメンバーである、GPCRのポリペプチド及び核酸に関するものであって、以下ではこれを「GPR26 GPCR」と呼ぶ。本発明はまた、このような核酸及びポリペプチドの作用の阻害または活性化、特に、精神疾患を治療するための候補物質を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
医学的に意義深い生物学的プロセスの多くは、Gタンパク質及び/またはcAMPなどのセカンドメッセンジャーを伴うシグナル伝達経路に関与するタンパク質によって媒介される(Lefkowitz、Nature、1991年、351巻、353〜354頁)。これらのタンパク質は、「Gタンパク質との経路に関与するタンパク質」または「PPGタンパク質」と呼ばれている。PPGタンパク質の例には、アドレナリン作動薬及びドーパミンに対するものなどのGPCR(Kobilka,B.K.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、1987年、84巻、46〜50頁;Kobilka B.K.ら、Science、1987年、238巻、650〜656頁;Bunzow,J.R.ら、Nature、1988年、336巻、783〜787頁)、Gタンパク質自体、エフェクタータンパク質、例えばホスホリパーゼC、アデニルシクラーゼ、及びホスホジエステラーゼ、並びにアクチュエータータンパク質、例えばプロテインキナーゼA、及びプロテインキナーゼC(Simon,M.I.ら、Science、1991年、252巻、802〜8頁)が含まれる。
【0003】
シグナル伝達の一形態では、ホルモン結合が、細胞の内側でアデニル酸シクラーゼを活性化する。Gタンパク質は、ホルモン受容体をアデニル酸シクラーゼに連結する。Gタンパク質は、ホルモン受容体によって活性化されると、GTPを結合型GDPと交換する。GTP結合型は、次いで、アデニル酸シクラーゼに結合し、それを活性化する。GTPのGDPへの加水分解はGタンパク質自体によって触媒され、Gタンパク質をその基底の、不活性型に戻す。従って、Gタンパク質は、シグナルを受容体からエフェクターに中継する中間体としての、及びシグナルの持続時間を制御する時計としての、2つの役割を果たす。
【0004】
GPCRの膜タンパク質遺伝子のスーパーファミリーは、推定上の7回膜貫通ドメインを特徴とし、このドメインは、細胞外または細胞質内のループによって連結されている膜貫通型α-へリックスを代表すると考えられている。GPCR(7TM受容体としても知られている)には、ホルモン、ウイルス、成長因子、及び神経受容体など、広範囲の生物学的に活性な受容体が含まれる。アミノ酸約20から30個の、7つの保存されている疎水性の広がりは、少なくとも8個の分岐する親水性のループを連結する。7回膜貫通領域は、それぞれTM1からTM7と呼ばれている。TM3がシグナル伝達に結びつけられている。GPCRファミリーには、精神疾患性障害及び神経学的障害を治療するために用いられる神経遮断薬に結合する、ドーパミン受容体が含まれる。このファミリーの他のメンバーには、それだけには限定されないが、カルシトニン、アドレナリン作動薬、エンドセリン、cAMP、アデノシン、ムスカリン性、アセチルコリン、セロトニン、ヒスタミン、トロンビン、キニン、卵胞刺激ホルモン、オプシン、内皮分化遺伝子-1、ロドプシン、匂い物質、及びサイトメガロウイルス受容体が含まれる。
【0005】
殆どのGPCRには、最初の2つの細胞外ループの各々に、単一の保存されているシステイン残基があり、これらは、タンパク質の構造を安定化すると考えられているジスルフィド結合を形成している。システイン残基のリン酸化及び脂質付加(パルミチル化またはファルネシル化)は、いくつかのGPCRのシグナル伝達に影響を及ぼし得る。殆どのGPCRは、第3の細胞質内のループ及び/またはカルボキシ末端の内側に、潜在的なリン酸化部位を含んでいる。β-アドレナリン受容体などのいくつかのGPCRの場合は、プロテインキナーゼA及び/または特定の受容体キナーゼによるリン酸化が受容体の脱感作を媒介する。いくつかの受容体の場合は、GPCRのリガンド結合性部位は、いくつかのGPCR膜貫通ドメインによって形成される親水性のソケット(socket)を含むと考えられており、このソケットはGPCRの疎水性残基によって取り囲まれている。各Gタンパク質共役受容体の膜貫通らせんの親水性の面は、内側に面し、極性のリガンド結合性部位を形成すると考えられている。TM3は、TM3アスパラギン酸残基などのリガンド結合性部位を有するとして、いくつかのGタンパク質共役受容体に結びつけられている。TM5のセリン、TM6のアスパラギン、及びTM6またはTM7のフェニルアラニンまたはチロシンも、リガンドの結合に結びつけられている。
【0006】
GPCRは、ヘテロ三量体Gタンパク質によって、様々な細胞内酵素、イオンチャンネル、及びトランスポーターに細胞内で共役していることがある(Johnsonら、Endoc.Rev.、1989年、10巻、317〜331頁を参照されたい)。様々なGタンパク質のα-サブユニットは、特定のエフェクターを優先的に刺激して、細胞における様々な生物学的機能を変調する。細胞質内のGPCR残基のリン酸化は、いくつかのGPCRのGタンパク質共役の調整にとって重要なメカニズムである。GPCRは、哺乳動物の宿主内の多くの部位に見られる。GPCRを標的とする350近くの治療薬が商品化に成功しいる。
【0007】
GPCRには、治療の標的として、確立され、証明されている経緯がある。明らかに、障害、機能障害、及び疾患を予防し、寛解し、または矯正する役割を果たすことができるさらなる受容体を同定し、特徴付ける必要がある。
【0008】
精神疾患は、脳の障害、特に情動性または感情の不安定性、行動の調節不全、及び/または認知障害に関わるものを定義するのに用いられる幅広い用語である。精神疾患は、患者を衰弱させることがあり、患者一人を看護することは、著しい感情的及び金銭的重荷である。
【0009】
不安は、「対象の恒常性を損なう可能性がある潜在的な脅威に対する、対象の防御的、生理学的、かつ行動学的な反応」と定義される。この反応が過剰または順応不良であり、無能力化する場合に、病的とみなされる(Belzung,C.、及びGriebel,G(2001年)、「Measuring normal and pathological anxiety-like behavior in mice:a review」、Behav Brain Res、125巻、141〜9頁)。不安障害には6タイプあり:複数の領域における過剰な心配を特徴とする汎化した不安障害;侵入的な、不安誘発性の心的外傷の記憶を特徴とする心的外傷後ストレス障害;特定の誘因の激しい恐怖を特徴とする特定の恐怖症;社会的状況の怖れ及び回避を伴う社会不安障害;強烈な不安の、予測不可能な急な発作を特徴とするパニック障害;不安の強迫及び不安低減性の強迫性の行動を特徴とする強迫性障害である(Gordon,J.A.、及びHen,R.(2004年)「Genetic approaches to the study of Anxiety」、Annu Rev Neurosci、27巻、193〜222頁)。扁桃体及び海馬を伴う神経回路が、不安の根底をなすと考えられている(Rosen,J.B.、及びSchulkin,J.(1998年)「From normal fear to pathological anxiety」、Psychological Review、105巻(2)、325〜350頁)。不安障害は、最も一般的な精神疾患である。
【0010】
うつ病は、「心理学的、行動的、及び生理学的レベル上、様々な生涯のストレッサーに上手く対処することが無能力である徴候」と記述することができる(Cryan,J.F及びMombereau,C.(2004年)「In search of a depressed mouse: utility of models for studying depression-related behaviour in genetically modified mice」Mol Psychiatry.、9巻、326〜57頁)。これは、感情的及び身体的な引きこもりを伴う悲しみの感情を特徴とする(Taylor, C.、Fricker, A.D.、Devi, L.A、及びGomes, I.(2005年)、「Mechanisms of action of antidepressants: from neurotransmitter systems to signalling pathways」Cell Signal.、17巻、549〜57頁)。うつ病は単一の疾患ではなく、多くの病態を含むものである。サブタイプは定義されているが、これらは症候の相違によるものであり、根底をなす疾患状態を反映しない可能性がある(Nestler, E.J.ら、(2002年)「Neurobiology of depression」Neuron、34巻、13〜25頁)。現在の抗うつ薬は、約40%の患者に効果がない。
【0011】
精神病は、重症の思考及び認知の障害を有する精神状態を定義する語である。精神病のエピソードは衰弱性であり、通例、幻覚、パラノイア、妄想、無秩序な思考、及び社会相互作用の障害を伴う。精神病は、現実との接触の喪失を一般的に伴い、これは患者にとって非常に破壊的であり得る。精神病の症状は、双極性障害、重症の臨床的なうつ状態、及び統合失調症を含む状態で現れる。これらの状態は、十分に理解されておらず、これらを予防及び治療するための有効な治療が必要とされている。特に、統合失調症の陰性症状の治療には、未だ対処されていない著しい必要性がある。最も一般的に用いられる薬物であるクロザピン及びオランザピンは、十分な効果を生じるのに2〜4週間かかり、統合失調症の陰性症状に対する効果は比較的弱い。
【0012】
不安、うつ病、及び精神病の症状には著しい重複が存在し、特に、うつ病及び不安は、同時に起こる可能性があり(独立して一緒に起こり、気分の一致がない)、または共存性であることがある(重複する症状とともに起こり、気分の一致がある)。さらに、精神病の50%には、同時発生の不安があると考えられている。
【特許文献1】米国特許第5,492,840号
【特許文献2】米国特許第5,482,835号
【特許文献3】WO84/03564号
【特許文献4】EP-A-0239400号
【特許文献5】米国特許第5,545,807号
【特許文献6】米国特許第6,075,181号
【特許文献7】米国特許第4,946,779号
【非特許文献1】Lefkowitz、Nature、1991年、351巻、353〜354頁
【非特許文献2】Kobilka,B.K.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、1987年、84巻、46〜50頁
【非特許文献3】Kobilka B.K.ら、Science、1987年、238巻、650〜656頁
【非特許文献4】Bunzow,J.R.ら、Nature、1988年、336巻、783〜787頁
【非特許文献5】Simon,M.I.ら、Science、1991年、252巻、802〜8頁
【非特許文献6】Johnsonら、Endoc.Rev.、1989年、10巻、317〜331頁
【非特許文献7】Belzung,C.、及びGriebel,G(2001年)、「Measuring normal and pathological anxiety-like behavior in mice:a review」、Behav Brain Res、125巻、141〜9頁
【非特許文献8】Gordon,J.A.、及びHen,R.(2004年)「Genetic approaches to the study of Anxiety」、Annu Rev Neurosci、27巻、193〜222頁
【非特許文献9】Rosen,J.B.、及びSchulkin,J.(1998年)「From normal fear to pathological anxiety」、Psychological Review、105巻(2)、325〜350頁
【非特許文献10】Cryan,J.F及びMombereau,C.(2004年)「In search of a depressed mouse:utility of models for studying depression-related behaviour in genetically modified mice」Mol Psychiatry.、9巻、326〜57頁
【非特許文献11】Taylor, C.、Fricker, A.D.、Devi, L.A、及びGames, I.(2005年)、「Mechanisms of action of antidepressants:from neurotransmitter systems to signalling pathways」Cell Signal.、17巻、549〜57頁
【非特許文献12】Nestler, E.J.ら、(2002年)「Neurobiology of depression」Neuron、34巻、13〜25頁
【非特許文献13】http:// www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/search.shtml
【非特許文献14】J. Sambrook、E. F. Fritsch、及びT. Maniatis、1989年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献15】Ausubel, F. M.ら(1995年、及び定期的な補完;Current Protocols in Molecular Biology、第9、13、及び16章、John Wiley & Sons, New York、ニューヨーク州)
【非特許文献16】B. Roe, J. Crabtree、及びA. Kahn、1996年、DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques、John Wiley & Sons
【非特許文献17】J. M. Polak及びJames O'D. McGee、1990年、In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press
【非特許文献18】M. J. Gait(編集)、1984年、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, Irl Press
【非特許文献19】D. M. J. Lilley及びJ. E. Dahlberg、1992年、Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology、Academic Press
【非特許文献20】Proteins - Structure and Molecular Properties、第2版、T. E. Creighton、W. H. Freeman and Company、New York、1993年
【非特許文献21】Wold, F.、Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects、1〜12頁、Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B. C. Johnson編集、Academic Press、New York、1983年
【非特許文献22】Seifterら、「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」、Meth Enzymol(1990年)182巻、626〜646頁
【非特許文献23】Rattanら、「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」、Ann NY Acad Sci(1992年)663巻:48〜62頁
【非特許文献24】Devereuxら、1984年、Nucleic Acids Research、12巻、387頁
【非特許文献25】Atschulら、1990年、J Molec Biol、403〜410頁
【非特許文献26】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST
【非特許文献27】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html
【非特許文献28】Wagnerら、Cell Physiol Biochem、2000年、10巻(1〜2)、1〜12頁
【非特許文献29】Scharf, D.ら(1994年)Results Probl. Cell Differ.、20巻、125〜162頁
【非特許文献30】Porath,J.ら(1992年)Prot.Exp.Purif.、3巻、263〜281頁
【非特許文献31】Kroll,D.J.ら(1993年)DNA Cell Biol.、12巻、441〜453頁
【非特許文献32】Merrifield J.(1963年)J.Am.Chem.Soc.、85巻、2149〜2154頁
【非特許文献33】Aizawa(1988年)、Anal.Chem.Symp.、17巻、683頁
【非特許文献34】Wattら、1998年、J Biol Chem、5月29日、273巻(22)、14053〜8頁
【非特許文献35】Hoffmanら、2000年、Proc Natl Acad Sci USA、10月10日、97巻(21)、11215〜20頁
【非特許文献36】Figlerら、1997年、Biochemistry、12月23日、36巻(51)、16288〜99頁
【非特許文献37】Sarrioら、2000年、Mol Cell Biol、2000年7月、20巻(14)、5164〜74頁
【非特許文献38】Coliganら、Current Protocols in Immunology、1巻(2)、第5章(1991年)
【非特許文献39】Blundell及びJohnson(1976年)Protein Crystallography、Academic Press、New York
【非特許文献40】Parceら(1989年)Science、246巻、243〜247頁
【非特許文献41】Owickiら(1990年)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA、87巻、4007〜4011頁
【非特許文献42】Evansら(1981年)Nature、292巻、154〜156頁
【非特許文献43】Bradleyら(1984年)Nature、309巻、255〜258頁
【非特許文献44】Gosslerら(1986年)PNAS、83巻、9065〜9069頁
【非特許文献45】Robertsonら(1986年)Nature、322巻、445〜448頁
【非特許文献46】Jaenisch, R.(1988年)Science、240巻、1468〜1474頁
【非特許文献46】Morrisonら(1984年)Proc Natl Acad Sci、81巻、6851〜6855頁
【非特許文献48】Neubergerら、(1984年)Nature、312巻、604〜608頁
【非特許文献49】Takedaら(1985年)Nature、314巻、452〜454頁
【非特許文献50】O'Connor, J Neurochem(1991年)56巻、560頁、「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」、CRC Press、Boca Raton、フロリダ州(1988年)
【非特許文献51】Leeら、Nucleic Acids Res(1979年)6巻、3073頁
【非特許文献52】Cooneyら、Science(1988年)241巻、456頁
【非特許文献53】Dervanら、Science (1991年)251巻、1360頁
【非特許文献54】「Gene Therapy and other Molecular Genetic-based Therapeutic Approaches」第20章(及びそこに引用される参考文献)「Human Molecular Genetics」T Strachan及びA P Read、BIOS Scientific Publishers Ltd (1996年)
【非特許文献55】Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro編集、 1985年)
【非特許文献56】Russら、Nature、2000年3月2日、404巻(6773)、95〜99頁
【非特許文献57】Bakshi VP、Swerdlow NR、及びGeyer MA、Clozapine antagonizes phencyclidine-induced deficits in sensorimotor gating of the startle response.、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1994年、271巻、787〜794頁
【非特許文献58】McGhie A及びChapman J.、Disorders of attention and perception in early schizophrenia.、Br. J. Med. Psychol.、1961年、34巻、103〜116頁
【非特許文献59】Braff DL、Geyer MA、及びSwerdlow NR.、Human studies of prepulse inhibition of startle:normal subjects, patient groups, and pharmacological studies.、Psychopharm.、2001年、156巻、234〜258頁
【非特許文献60】Geyer MA、Mcilwain KL、及びPaylor R.、Mouse genetic models for prepulse inhibition:an early review.、Mol Psych.、2002年、7巻、1039〜1053頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
精神疾患、特に不安障害、精神病の障害、及び抑うつ障害を予防及び治療するための有効な治療に対する強い必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、GPR26が精神疾患に関与し、従って有用な治療上及び診断上の標的であるという驚くべき理解に基づくものである。本発明者らは、驚くべきことに、機能的GPR26遺伝子を欠く動物は精神疾患を示す表現型を表すことを見出した。従って、GPR26受容体は、精神疾患に関与し、治療上及び診断上の標的である。
【0015】
本発明の第1の態様によると、精神疾患の治療に適する物質を同定する方法は、候補物質がGPR26の活性に影響を及ぼすか否かを決定する工程を含む。
【0016】
本発明の第2の態様によると、非ヒトトランスジェニック動物は、機能的に障害された内因性のGPR26遺伝子を有する。
【0017】
本発明の第3の態様によると、機能的に障害された内因性のGPR26遺伝子を有する非ヒトトランスジェニック動物を用いて、精神疾患を治療するためのGPR26のアゴニストまたはアンタゴニストを同定する。
【0018】
本発明の第4の態様によると、機能的に障害された内因性のGPR26遺伝子を有する非ヒトトランスジェニック動物を、精神疾患用のモデルとして用いる。
【0019】
本発明の第5の態様によると、個体における精神疾患の存在または感受性を決定するための方法は、(i)患者から単離したサンプル中のGPR26遺伝子の発現レベルを決定する工程と、(ii)コントロールと比較して、個体が精神疾患を有するか否か、または感受性があるか否かを決定する工程とを含む。
【0020】
本発明の第6の態様によると、GPR26ポリペプチドの活性に影響を及ぼす物質を、精神疾患を予防または治療するための医薬の製造に用いる。
【0021】
本発明の第7の態様によると、外因性のGPR26ポリヌクレオチドを、精神疾患を治療または予防するための医薬の製造に用いる。
【0022】
本発明の第8の態様によると、GPR26ポリヌクレオチドの発現を増大または低減する物質を、精神疾患を治療または予防するための医薬の製造に用いる。
【0023】
本発明を、添付の図を参照にして記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
GPR26 GPCR
本発明は、新規なGPCRに関し、特に、本発明者らがGPR26 GPCRと呼ぶ、ロドプシン型の7回膜貫通型受容体、及びそのホモログ、バリアント、または誘導体に関する。
【0025】
GPR26は、ヒトGPR26をコードするcDNA生成物の増幅したものを配列決定した結果によって示す通り、Gタンパク質共役受容体ファミリーの他のタンパク質に、構造的に関連する。配列番号1のcDNA配列は、配列番号3に示すアミノ酸337個のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(配列番号2、ヌクレオチド番号54(開始コドンを含む)から1067(終始コドンを含む))を含む。ヒトGPR26は、染色体位置10q26.2〜q26.3にマッピングされることが見出されている。
【0026】
GPR26との同一性及び類似性
HMM構造予想ソフトウエアpfam(http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/search.shtml)を用いてGPR26ポリペプチド(配列番号3)を分析し、GPR26ペプチドは7TM-1構造上のクラスのGPCRであることが確認された。
【0027】
最も緊密なヒトのホモログであるGPR78(マウスのオルソログを欠く)は、ヒトGPR26と、同一性を51%、及び類似性を67%共有する(図1を参照されたい)。GPR78と異なり、GPR26はGPCRのサブファミリーには属さず、ガストリン放出ホルモンBB2受容体、並びにセロトニン5-HT-5A及び5B受容体と最高の同一性を共有する(それぞれ25%及び23%)。
【0028】
ヒトGPR26 GPCRのマウスのホモログはクローニングされており、その核酸配列及びアミノ酸配列を、配列番号4及び配列番号5にそれぞれ示す。配列番号4のマウスGPR26 GPCR cDNAは、ヒトGPR26 GPCR(配列番号2)配列と高度の同一性を示し、マウスGPR26 GPCRのアミノ酸配列(配列番号5)は、ヒトGPR26 GPCR(配列番号3)と高度の同一性及び類似性を示す。GPR26のアミノ酸配列は、マウスのオルソログと同一性を95%及びポジティブを97%共有する。マウスの遺伝子は、染色体7 F3上に位置する。
【0029】
ヒトGPR26は、ラットのオルソログと95%同一でもある。
【0030】
ヒト及びマウスのGPR26 GPCRは、従って、GPCRの大ファミリーのメンバーである。
【0031】
GPR26の発現プロファイル
GPR26 cDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により、GPR26の発現は脳だけで検出される。マウスの脳では、GPR26は、海馬、線条体、視床、前脳、皮質、橋、及び視床下部を含むCNSで広範に発現される。BLASTNによるヒト及びマウスのESTデータソースを検索するための配列番号1のGPR26 cDNAを用いると、ヒト乳児脳及びマウス7日新生仔小脳、マウス16日新生仔小脳、マウス視覚野、マウス10日新生仔皮質、マウス新生仔脳、並びに受胎12.5、15.5、及び17.5日後のマウス胎仔脳を起源とするライブラリーに由来するcDNAに、同一性の高いマッチングが見出されている。これは、GPR26が、これらの組織で発現されることを指摘している。従って、GPR26ポリペプチド、核酸、プローブ、抗体、発現ベクター、及びリガンドは、これら及びその他の組織におけるGPR26 GPCRの過剰発現、過小発現、及び異常発現に関連する疾患の検出、診断、治療、及び他のアッセイに有用である。
【0032】
GPR26関連疾患
本明細書に記載した方法及び組成物によると、GPR26は、ある範囲の疾患を治療及び診断するための治療及び診断に有用である。GPR26は、以下に論じるようにGPR26の活性を修飾する分子をアッセイするのにも有用である。GPR26を修飾する分子は、GPR26関連疾患に対する潜在的な治療物質である。GPR26が関与する疾患は、便宜上GPR26関連疾患と呼ばれる。これらの疾患は精神疾患である。本明細書で用いられる精神疾患という語は、不安障害、精神病、及び抑うつ障害など、情動性または感情性の不安定性、行動の調節異常、及び/または認知障害もしくは欠陥を含む疾患を含めた、脳機能の障害を意味する。「精神疾患」の語には、歩行運動の欠損、すなわち運動障害に関連する障害、例えば、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び運動失調に関わる障害も含まれる。ヒト及び動物(獣医学)の治療及び診断は、本発明の範囲内である。
【0033】
ヒトGPR26は、染色体位置10q26.2〜q26.3にマッピングされる。従って、特定の一実施形態では、GPR26 GPCRを用いて、この遺伝子座、染色体のバンド、領域、アーム、または同じ染色体にマッピングされる疾患を治療または診断してもよい。
【0034】
本明細書に提供するデータは、実施例に詳述し、以下に概略するように、GPR26が精神疾患に関与することを指摘している。特に、GPR26ノックアウトマウスが不安、うつ病、及び精神病を実証することを、データは指摘している。
【0035】
ヒトのRT-PCRパネルでは、遺伝子は脳だけで発現され、マウスの脳のRT-PCRパネルでは、遺伝子はCNSで広く発現される。LacZ染色は、また、精神医学的疾患、認知、及び記憶におけるGPR26の関与を支持する発現パターンを指摘している(実施例3(I))。行動試験(実施例3(II))では、GPR26ノックアウトマウスは、野生型マウスに比べて歩行運動活動の低減を表し、付随行動には変化がないことが示される。歩行運動活動の低減は、CNS起源である(筋肉起源ではない)。GPR26ノックアウトマウスは、また、野生型マウスよりもストレス性の環境においてより上手く対処し、うつ病をそれほど示さない。
【0036】
オープンフィールド、高架式十字迷路及び高架式ゼロ迷路試験(実施例4〜6)では、GPR26ノックアウトマウスは不安であることを指摘している。
【0037】
MK-801誘発性の自発運動増加(実施例7)試験では、GPR26ノックアウトマウスは心因性の表現型を有することを指摘している。
【0038】
水迷路試験(実施例8)は、また、GPR26マウスは歩行運動欠損を有することを指摘している。実施例4〜6、及び8におけるデータは、GPR26で作用するアゴニストはある範囲の運動障害、好ましくはパーキンソン病またはハンチントン舞踏病を治療するのに有用であることも指摘している。
【0039】
プレパルス阻害のデータ(実施例9)は、実施例7で見られた精神病の表現型を支持するものであり、好ましくはアゴニストによるGPR26の変調は、精神病、好ましくは統合失調症の治療に有用性があることを指摘している。
【0040】
GPR26関連疾患は、上記で定義したような精神疾患である。好ましい疾患には、不安障害、精神病に関わる疾患、及び抑うつ障害が含まれる。好ましい一実施形態では、データは、GPR26に対するアゴニストは、抗不安薬、及び/または抗精神薬として有益であってよいことを指摘している。代替の好ましい一実施形態では、GPR26に対するアンタゴニストは、抗うつ薬として、またはADHD(注意欠陥多動性障害)を治療するのに有用である。
【0041】
本明細書で用いられる「不安障害」の語は、病理学的な不安に関わる障害を意味する。不安は「その恒常性を損なう可能性がある潜在的な脅威に対する、対象の防御的な生理学的及び行動学的反応」である。この反応が過剰または順応不良であり、無能力化する場合に、病的であるとみなされる(Belzung, C.及びGriebel, G (2001年)上述)。不安障害には6タイプあり:複数の領域における過剰な心配を特徴とする、汎化した不安障害;侵入的な、不安誘発性の心的外傷の記憶を特徴とする心的外傷後ストレス障害;特定の誘因の激しい恐怖を特徴とする特定の恐怖症;社会的状況の怖れ及び回避を伴う社会不安障害;強烈な不安の、予測不可能な急な発作を特徴とするパニック障害;不安の強迫及び不安低減性の強迫性の行動を特徴とする強迫性障害である(Gordon,J.A.、及びHen,R.(2004年)上述、扁桃体及び海馬を伴う神経回路が、不安の根底をなすと考えられている(Rosen,J.B.、及びSchulkin,J.(1998年)上述)。
【0042】
本明細書で用いられる「精神病」の語は、精神病が症候であり、または症候であり得る疾患を意味する。精神病は、重症の精神疾患の症候であると一般的にみなされているが、それ自体は診断ではない。精神病に関連する、または関連し得るあらゆる精神疾患は、本発明の範囲内である。精神病に関わる好ましい疾患は、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、及び重症の臨床的なうつ病である。脳傷害(または他の神経学的障害)、薬物中毒及び禁断(特に、アルコール、バルビツレート、及びベンゾジアゼピン)、狼瘡、高齢者における電解質障害(尿路感染症など)、疼痛症候群、睡眠うつ病、並びに過度のストレス(例えば、心的外傷後ストレス症候群)も、精神病性のエピソードを引き起こすことがあり、本発明の範囲内である。最も好ましい精神病は、統合失調症である。
【0043】
本明細書で用いられる「抑うつ障害」の語は、うつ病に関わる疾患であり、「心理学的、行動的、及び生理学的レベル上、様々な生涯のストレッサーに上手く対処することが無能力である徴候」である(Cryan,J.F及びMombereau,C.(2004年)上述)。これは、感情的及び身体的な引きこもりを伴う悲しみの感情を特徴とする(Taylor,Cら(2005年)、上述)。
【0044】
不安、うつ病、及び精神病の症状には著しい重複が存在し、特に、うつ病及び不安は、同時に起こることがあり(独立して一緒に起こり、気分の一致がない)、または共存性であることがある(重複する症状とともに起こり、気分の一致がある)。
【0045】
さらに好ましい疾患は、歩行運動の欠損、すなわち運動障害に関連する障害、例えば、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び運動失調に関わる障害である。パーキンソン病など、大脳基底核に関連する運動障害が好ましい。
【0046】
好ましい精神疾患には、大うつ病、気分変調、双極性障害、季節性情緒障害、産後うつ病、対人不安、心的外傷後ストレス症候群、恐怖症、対人恐怖、特殊な恐怖、パニック障害、強迫性障害、急性ストレス、障害、分離不安障害、全般的な不安障害、統合失調症などの精神病、双極性障害(躁うつ病)、及び重症の臨床的なうつ病、他の状態に関連する精神病(脳傷害(または他の神経学的障害)、薬物中毒及び禁断(特に、アルコール、バルビツレート、及びベンゾジアゼピン)、狼瘡、高齢者における電解質異常(尿路感染症など)、疼痛症候群、睡眠うつ病、並びに過度のストレス(心的外傷後ストレス症候群など)を含む)、薬物乱用、アルツハイマー病、虚血性/血管性痴呆、ピック病、びまん性レビー小体痴呆、前頭側頭骨の痴呆、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、進行性核上性麻痺、AIDS/HIV痴呆、プリオン感染症、脳炎、ADHD(注意欠陥多動性障害)、神経梅毒、血管炎、並びに進行性多巣性白質脳症が含まれる。
【0047】
使用される方法
本発明の実践では、別段の指摘がなければ、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技術が使用され、これらは当業者の能力の範囲内である。このような技術は、文献で説明される。例えば、J: Sambrook、E. F. Fritsch、及びT. Maniatis、1989年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel, F. M.ら(1995年、及び定期的な補完;Current Protocols in Molecular Biology、第9、13、及び16章、John Wiley & Sons, New York、ニューヨーク州); B. Roe, J. Crabtree、及びA. Kahn、1996年、DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques、John Wiley & Sons;J. M. Polak及びJames O'D. McGee、1990年、In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M. J. Gait(編集)、1984年、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, Irl Press;並びにD. M. J. Lilley及びJ. E. Dahlberg、1992年、Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology、Academic Pressを参照されたい。これらの一般的な文書は、各々参照として本明細書に組み入れられる。
【0048】
GPR26 GPCRポリペプチド
本明細書で用いられる「GPR26 GPCRポリペプチド」の語は、配列番号5、もしくはより好ましくは配列番号3に示すアミノ酸配列、またはそのホモログ、バリアント、もしくは誘導体を含むポリペプチドを意味する。「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって相互に連結している2つ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質、すなわち、ペプチドアイソスターを意味する。「ポリペプチド」は、ペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと通例呼ばれる短い鎖、及び一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を意味する。ポリペプチドは、20個の遺伝子にコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。
【0049】
「ポリペプチド」には、翻訳後プロセシングなどの天然のプロセスによって、または当技術分野ではよく知られている化学的な修飾技術のいずれかによって修飾されているアミノ酸配列が含まれる。修飾は、ペプチドのバックボーン、アミノ酸側鎖、及びアミノまたはカルボキシ末端を含めた、ポリペプチドのあらゆる場所で生じることができる。所与のポリペプチドにおけるいくつかの部位で、同程度または様々な程度で、同じタイプの修飾が存在し得ることを理解されよう。所与のポリペプチドが、多くのタイプの修飾を含んでいてよい。
【0050】
ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝していてもよく、分枝のある、またはない環状であってもよい。環状、分枝、及び分枝した環状のポリペプチドは、翻訳後の天然のプロセスに起因してもよく、または合成方法によって作製されてもよい。タンパク質の修飾の多くは知られており、例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties、第2版、T. E. Creighton、W. H. Freeman and Company、New York、1993年、並びにWold, F.、Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects、1〜12頁、Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B. C. Johnson編集、Academic Press、New York、1983年;Seifterら、「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」、Meth Enzymol (1990年)182巻、626〜646頁、並びにRattanら、「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」、Ann NY Acad Sci(1992年)663巻:48〜62頁を参照されたい。
【0051】
本明細書で用いられる「バリアント」、「ホモログ」、「誘導体」、または「フラグメント」の語には、配列から、または配列に対する1つ(または複数)のアミノ酸のあらゆる置換、変異、修飾、交換、欠失、または付加が含まれる。バリアントは、サイレント変化及び機能的に等しいポリペプチドを生成する、欠失、挿入、または置換の変異を有してもよい。計画的なアミノ酸の置換は、サイズ、電荷、及び疎水性などの、類似の物理化学的性質に基づいてなされることがある。
【0052】
保存的な置換は、例えば以下の表に従って行うことができる。2列目の同じブロックにあるアミノ酸、好ましくは3列目の同じ行にあるアミノ酸を、相互に置換することができる。
【0053】
【表1】

【0054】
状況によって別の方法が認められなければ、「GPR26」及び「GPR26 GPCR」に対する言及には、このようなGPR26のバリアント、ホモログ、誘導体、及びフラグメントに対する言及が含まれる。
【0055】
好ましくは、GPR26に適用するように、アミノ酸配列はGPCR活性を有し、より好ましくは、配列番号3または配列番号5として示すGPR26 GPCRの少なくとも同じ活性を有する。特に、「ホモログ」の語は、得られたアミノ酸配列がGPCR活性を有するのであれば、構造及び/または機能に関して同一性を網羅する。配列同一性(すなわち、類似性)に関しては、好ましくは、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または最も好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性が存在する。これらの語は、GPR26 GPCR核酸配列の対立形質のバリアントであるアミノ酸に由来するポリペプチドも包含する。
【0056】
GPR26 GPCRなどの受容体の「受容体活性」または「生物学的活性」に言及がなされる場合、これらの語は、同様の活性、または活性の改善、または望ましくない副作用が低減したこれらの活性を含めた、GPR26受容体の代謝的または生理学的機能を意味することが企図される。GPR26受容体の抗原活性及び免疫原性活性も含まれる。GPCR活性の例、並びにこれらの活性をアッセイ及び定量する方法は、当技術分野では知られており、本明細書における他所で詳しく記載してある。
【0057】
本発明のGPR26ポリペプチドは、異種性のアミノ酸配列を、典型的にはN末端またはC末端に、好ましくはN末端にさらに含むことができる。異種性の配列には、細胞内または細胞外タンパク質のターゲティングに影響を及ぼす配列(例えば、リーダー配列)が含まれ得る。異種性の配列には、本発明のポリペプチドの免疫原性を増大する配列、並びに/またはポリペプチドの同定、抽出、及び/もしくは精製を促進する配列も含まれ得る。特に好ましい別の異種性の配列は、好ましくはN末端である、ポリヒスチジンなどのポリアミン酸の配列である。少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは少なくとも17個のアミノ酸であるが、50個より少ないアミノ酸のポリヒスチジン配列が特に好ましい。
【0058】
GPR26 GPCRポリペプチドは、「成熟した」タンパク質の形態であってよく、または融合タンパク質などのより大型のタンパク質の一部分であってもよい。分泌性の配列もしくはリーダー配列、プロ配列、複数のヒスチジン残基などの精製において助けとなる配列、または組換えの生成中の安定性のためのさらなる配列を含む、さらなるアミノ酸配列を含むのが有利であることが多い。
【0059】
本発明のGPR26ポリペプチドを、知られている技術を用いて、組換えの手段によって作製するのが好ましい。しかし、固相合成など、当業者にはよく知られている技術を用いて、合成の手段によって作製してもよい。本発明のポリペプチドを、例えば、抽出及び精製において助けるために、融合タンパク質として生成してもよい。融合タンパク質パートナーの例には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、6xHis、GAL4(DNA結合性及び/または転写活性ドメイン)、並びにβ-ガラクトシダーゼが含まれる。トロンビン切断部位など、融合タンパク質配列の除去を可能にするために、融合タンパク質のパートナーと対象のタンパク質配列との間にタンパク質分解性の切断部位を含むのも有利であることがある。融合タンパク質が、対象の配列のタンパク質の機能を妨害しないのが好ましい。
【0060】
本発明のGPR26ポリペプチドは、実質的に単離された形態であってよい。この語は、天然状態からのヒトの手による改変を意味することが企図される。「単離された」組成物または物質が天然に存在する場合は、そのもともとの環境から変更され、または除去され、または両方である。例えば、この語が本明細書で使用されるように、生存する動物に天然に存在するポリヌクレオチド、核酸、またはポリペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存する材料から分離された同じポリヌクレオチド、核酸、またはポリペプチドは天然状態から「単離されて」いる。
【0061】
しかしながら、GPR26 GPCRタンパク質を、タンパク質の意図された目的を妨害しない担体または希釈剤と混合してもよく、それでも実質的に単離されているとみなされることが理解されよう。本発明のポリペプチドは、実質的に精製されている形態であってもよく、その場合、一般的に、90%を超えて、例えば、調製物におけるタンパク質の95%、98%、または99%が、本発明のGPR26 GPCRポリペプチドである調製物で、タンパク質を含んでいる。
【0062】
本発明は、本発明によるGPR26ポリペプチドの一部分を含むペプチドにも関する。従って、GPR26 GPCRのフラグメント、及びそのホモログ、バリアント、または誘導体が含まれる。本発明のペプチドは、2個と200個の間のアミノ酸、好ましくは4個と40個の間のアミノ酸の長さであってよい。ペプチドは、本明細書に開示するようにGPR26 GPCRポリペプチドに由来していてよく、例えば、トリプシンなどの適切な酵素での消化によってもよい。あるいは、ペプチド、フラグメントなどを、組換えの手段によって作製してもよく、または合成的に合成してもよい。
【0063】
「ペプチド」の語には、レトロインベルソのDペプチドなど、当技術分野では知られている様々な合成ペプチドのバリエーションが含まれる。ペプチドは抗原決定基、及び/またはT細胞のエピトープであってよい。ペプチドはin vivoで免疫原性であってよい。ペプチドがin vivoで中和抗体を誘発することができるのが好ましい。
【0064】
本発明によるGPR26ポリペプチドは、種をまたがって保存されている配列を含んでもよい。保存領域は、少なくとも2種間で高度の相同性を示す。例えば、領域は、上記に記載した試験を用いてアミノ酸レベルで、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性を示してよい。保存領域に対応する配列を含むペプチドを、以下にさらに詳しく説明するような、治療戦略で用いてもよい。あるいは、GPR26 GPCRペプチドは、非保存の領域の少なくとも部分に対応する配列を含んでもよい。異種性の領域は、少なくとも2種間に低度の相同性を示す。
【0065】
GPR26 GPCRポリヌクレオチド及び核酸
本発明は、本明細書の他所にさらに詳しく記載するように、GPR26ポリヌクレオチド、GPR26ヌクレオチド、及びGPR26核酸、生成方法、これらの使用などを包含する。
【0066】
「GPR26ポリヌクレオチド」、「GPR26ヌクレオチド」、及び「GPR26核酸」の語は、交換可能に用いることができ、配列番号1、配列番号2、もしくは配列番号4に示す核酸配列を含むポリヌクレオチド/核酸、またはそのホモログ、バリアント、もしくは誘導体を意味することが企図される。ポリヌクレオチド/核酸は、好ましくは配列番号1、または配列番号2の、最も好ましくは配列番号2の、核酸配列のホモログ、バリアント、または誘導体である、またはこれらを含む。
【0067】
これらの語が、本発明のポリペプチド及び/またはペプチド、すなわちGPR26ポリペプチドをコードすることができる核酸配列を含むことも企図される。従って、GPR26 GPCRポリヌクレオチド及び核酸は、配列番号3もしくは配列番号5に示すアミノ酸配列、またはそのホモログ、バリアント、または誘導体を含むポリペプチドをコードすることができる核酸配列を含む。好ましくは、GPR26 GPCRポリヌクレオチド及び核酸は、配列番号3に示すアミノ酸配列、またはそのホモログ、バリアント、もしくは誘導体を含むポリペプチドをコードすることができるヌクレオチド配列を含む。
【0068】
「ポリヌクレオチド」の語は、当技術分野ではよく知られており、修飾または非修飾のRNAまたはDNAであってよい、あらゆるポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを意味する。「ポリヌクレオチド」には、制限なく、一本鎖及び二本鎖の分子(並びに、二本鎖及び一本鎖の領域を含む分子)、一本鎖であってよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子、またはより典型的には二本鎖、もしくは一本鎖及び二本鎖の領域の混合物が含まれる。さらに、「ポリヌクレオチド」は、DNAもしくはRNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖の領域を意味する。ポリヌクレオチドの語には、1つもしくは複数の修飾されている塩基を含むDNAまたはRNA、及び安定性もしくはその他の理由のために修飾されているバックボーンを有するDNAまたはRNAも含まれる。「修飾されている」塩基には、例えばトリチル化されている塩基、及びイノシンなどの稀な塩基が含まれる。様々な修飾がDNA及びRNAになされており、従って「ポリヌクレオチド」は、自然界に典型的に見られる、化学的、酵素的、または代謝的に修飾されている形態のポリヌクレオチド、並びにウイルス及び細胞に特徴的な化学的形態のDNA及びRNAを包含する。「ポリヌクレオチド」は、しばしばオリゴヌクレオチドと呼ばれる、比較的短いポリヌクレオチドも包含する。
【0069】
多くのヌクレオチド配列は、遺伝暗号の縮重の結果として同じポリペプチドをコードすることができることを、当業者であれば理解するであろう。
【0070】
本明細書で用いられる「ヌクレオチド配列」の語は、ヌクレオチド配列、オリゴヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列、並びにそのバリアント、ホモログ、フラグメント、及び誘導体(例えば、その部分)を意味する。ヌクレオチド配列は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖またはその組合せであろうと、二本鎖また一本鎖であってもよい、ゲノム、合成または組換え起源のRNAまたは(好ましくは)DNAであってよい。
【0071】
好ましくは、得られたヌクレオチド配列は、好ましくは配列番号3または配列番号5として示されるGPCRと少なくとも同じ活性を有する、GPCR活性を有するポリペプチドをコードする。好ましくは、「ホモログ」の語は、GPCR活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。配列同一性(すなわち、類似性)に関すると、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性が存在する。より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性が存在する。これらの語は、配列の対立遺伝子のバリエーションも包含する。
【0072】
配列の相同性の計算
本明細書に提示する配列のあらゆるものに関する配列同一性は、他の配列が配列に対して、例えば少なくとも70%の配列同一性を有する否かを見るために、任意の1つまたは複数の配列を、別の配列と単純に「眼球」比較(すなわち、厳密な比較)をすることによって決定することができる。
【0073】
相対的な配列同一性は、例えばデフォルトパラメータを用いて、同一性を決定するのに適するあらゆるアルゴリズムを用いて、2つ以上の配列間の%同一性を計算することができるコンピュータプログラムによって、決定することもできる。このようなコンピュータプログラムの例には、CLUSTAL、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら、1984年、Nucleic Acids Research、12巻、387頁)、FASTA(Atschulら、1990年、J Molec Biol、403〜410頁)、及びBLAST (Ausubelら、1999年、同書)が含まれる。
【0074】
パラメータをデフォルト値(ヒストグラム=yes;ディスクリプション=100;期待値-10;アラインメント=50;マトリックス-BLOSUM62(BLASINに対する代替のスコアマトリックスなし);フィルター-Dust (BLASIN)、SEG (他のプログラム))に設定して、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTで提供されるBLASTアルゴリズムを使用するのが好ましい。BLASTアルゴリズムは、本明細書に参照として組み入れられるhttp://www.ncbi.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlに詳しく記載されている。
【0075】
ハイブリダイゼーション及びホモログ
本発明は、本明細書に提示する配列またはそのあらゆるフラグメントもしくは誘導体に、あるいは上記のあらゆるものの相補体にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を包含する。好ましくは、ハイブリダイズすることができる配列は、関連の配列の相補体である。
【0076】
本明細書に提示するヌクレオチド配列に、またはその相補体に選択的にハイブリダイズすることができる本発明のヌクレオチド配列は、少なくとも20の、好ましくは少なくとも25もしくは30の、例えば少なくとも40、60、もしくは100、またはそれを超える近接するヌクレオチドの領域にわたって、本明細書に提示する対応するヌクレオチド配列に、一般的には少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85もしくは90%、さらにより好ましくは少なくとも95%もしくは98%相同である。本発明の好ましいヌクレオチド配列は、配列番号1、2、または4に相同の領域を含む。配列の一つに、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、80%、または90%、より好ましくは少なくとも95%相同である領域を含む。
【0077】
「選択的にハイブリダイズ可能な」の語は、本発明の標的のヌクレオチド配列がバックグラウンドを大幅に超えるレベルでプローブにハイブリダイズすることが見出されている条件下で、プローブとして用いられるヌクレオチド配列を用いることを意味する。当業者には馴染み深いプロセスにおける中程度から最大に厳密な条件下で、本明細書に提示するヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列も、本発明の範囲内に含まれる。最大の厳密性は、典型的には、Tm-5℃(プローブのTmを5℃下回る)で起こり、高度の厳密性はTmを約5℃から10℃下回り、中程度の厳密性はTmを約10℃から20℃下回り、低い厳密性はTmを約20℃から25℃下回って起こる。当業者であれば理解するように、最大の厳密性のハイブリダイゼーションを、同一のヌクレオチド配列を同定または検出するのに用い、一方、中程度の(または低い)厳密性のハイブリダイゼーションを、類似または関連のヌクレオチド配列を同定または検出するのに用いることができる。
【0078】
好ましい一実施形態では、本発明は、厳密な条件下(例えば、65℃及び0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015M Na3クエン酸pH7.0})で本発明のGPR26 GPCRヌクレオチド配列の1つまたは複数にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を網羅する。本発明のヌクレオチド配列が二本鎖の場合は、個々の、または組合せのいずれかの二本鎖の両方の鎖が本発明に包含される。ヌクレオチド配列が一本鎖の場合は、そのヌクレオチド配列の相補的な配列も、本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0079】
本発明は、本明細書に提示する配列に相補的である配列にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列、またはそのあらゆるフラグメントもしくは誘導体も包含する。同様に、本発明は、本発明の配列にハイブリダイズすることができる配列に相補的であるヌクレオチド配列を包含する。これらのタイプのヌクレオチド配列は、バリアントのヌクレオチド配列の例である。この点においては、「バリアント」の語は、本明細書に提示するヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる配列に相補的である配列を包含する。しかし、好ましくは、「バリアント」の語は、厳密な条件下(例えば、65℃及び0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015 Na3クエン酸pH7.0})でハイブリダイズすることができる配列に相補的である配列を包含する。
【0080】
GPR26 GPCRのクローニング
本発明は、GPR26 GPCR、そのホモログ、並びにヒト、及びマウス、ブタ、ヒツジなどの他の種からの他の構造的または機能的に関連する遺伝子をクローニングの達成を可能にする。配列番号1、配列番号2、配列番号4、またはそれらのフラグメントに含まれるヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドを、部分または全長のcDNA、及び好適なライブラリーからのGPR26 GPCRをコードするゲノムのクローンを単離するための、cDNA及びゲノムのDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いてもよい。このようなプローブを用いて、cDNA、及び、GPR26 GPCR遺伝子に対する配列類似性、好ましくは高度の配列類似性を有する、他の遺伝子(ヒト以外の種からのホモログ及びオルソログをコードする遺伝子を含む)のゲノムのクローンを単離してもよい。ハイブリダイゼーションのスクリーニング、クローニング、及び配列決定の技術は当業者には知られており、例えば、Sambrookら(上述)に記載されている。
【0081】
典型的には、プローブとして用いるのに適するヌクレオチド配列は、参照の配列と、60%同一、好ましくは70%同一、好ましくは80%同一、より好ましくは90%同一、さらにより好ましくは95%同一である。プローブは、一般的に、少なくとも15個、好ましくは少なくとも30個、より好ましくは少なくとも50個のヌクレオチドを含む。特に好ましいプローブは、150個と500個の間の範囲のヌクレオチドであり、より詳しくは約300個のヌクレオチドである。
【0082】
ヒト以外の種からのホモログ及びオルソログを含む、GPR26 GPCRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得るための一実施形態は、配列番号1、配列番号2、配列番号4、またはそれらのフラグメントを有する標識されたプローブで、厳密なハイブリダイゼーション条件下で、好適なライブラリーをスクリーニングする工程と、部分的な、または全長のcDNAと、前記ポリヌクレオチド配列を含むゲノムのクローンとを単離する工程とを含む。このようなハイブリダイゼーション技術は、当業者にはよく知られている。厳密なハイブリダイゼーション条件は上記に規定した通りであり、あるいは、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性し、せん断したサケ精子DNAを含む溶液で、42℃で一夜インキュベートし、その後約65℃で0.1×SSC中でフィルターを洗浄する下での条件である。
【0083】
GPR26 GPCRに対する機能的アッセイ
クローニングした推定のGPR26 GPCRポリヌクレオチドを、配列分析または機能的アッセイによって検証してもよい。例えば、推定のGPR26 GPCR、またはホモログを、その活性が当技術分野ではよく知られている受容体をアッセイする方法を用いて、受容体の活性に対してアッセイしてもよい。好ましい方法は、本明細書に参照として組み入れられる、Wagnerら、Cell Physiol Biochem、2000年、10巻(1〜2)、1〜12頁に述べられている2つの電極の電位固定を用いた、アフリカツメガエルの卵母細胞系である。アフリカツメガエル系をやはり用いて、以下にさらに詳しく記載する、リガンドを活性化するために知られているリガンド及び組織/細胞の抽出物をスクリーニングしてもよい。
【0084】
GPR26 GPCRに対する発現アッセイ
GPR26 GPCR関連疾患を治療するための有用な治療法をデザインするためには、GPR26の発現プロファイル(野生型であるか、特定の突然変異であるか)を決定するのが有用である。当技術分野で知られている方法を用いて、GPR26が発現される器官、組織、及び細胞型(並びに発生段階)を決定してもよい。例えば、伝統的な、または「電子工学的な」(すなわち、データベースにおける相同性検索の)ノーザンブロット (Sambrook、上述、第7章及びAusubel, F. M.ら、上述、第4及び16章)を行ってもよい。逆転写PCR(RT-PCR)をやはり使用して、GPR26遺伝子または変異体の発現をアッセイしてもよい。GPR26の発現プロファイルを決定するための、より感度のよい方法には、当技術分野では知られている、RNAseプロテクションアッセイが含まれる。
【0085】
GPR26 GPCRポリペプチドの発現
本発明は、GPR26 GPCRポリペプチドを生成するためのプロセスを含む。この方法は、一般には、適切な条件(すなわち、GPR26 GPCRポリペプチドが発現される条件)下でGPR26 GPCRポリペプチド、またはそのホモログ、バリアント、もしくは誘導体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することを含む。
【0086】
当業者にはよく知られている方法を用いて、GPR26 GPCR、並びに好適な転写及び翻訳の制御エレメントをコードする配列を含む発現ベクターを構築する。これらの方法には、in vitroの組換えDNA技術、合成技術、及びin vivoの遺伝的組換えが含まれる。GPR26 GPCRをコードする配列を含み、発現するように、様々な発現ベクター/宿主系を利用してもよい。これらは当業者には明らかであり、それだけには限定されないが、組換えのバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドのDNA発現ベクターで形質転換した細菌などの微生物;酵母菌の発現ベクターで形質転換した酵母菌;ウイルスの発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫の細胞系;ウイルスの発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、もしくはタバコモザイクウイルス(TMV))で、または細菌の発現ベクター(例えば、TiもしくはpBR322プラスミド)で形質転換した植物の細胞系;あるいは数々のウイルスベースの発現系を利用してよい場合は、動物、特に哺乳動物の細胞系、例えば、ヒトの細胞が含まれる。人工染色体(例えば、酵母菌、ヒト)を用いて、核酸の大型フラグメントを細胞に送達してもよい。本発明は、使用する宿主細胞によって制限されない。
【0087】
「制御エレメント」または「制御配列」は、宿主のタンパク質と相互作用をして転写及び翻訳を実行する、ベクターのこれら非翻訳の領域(すなわち、エンハンサー、プロモーター、並びに5'及び3'の非翻訳領域)である。これらのエレメントは、その強さ及び特異性において異なることがある。当業者には明らかであるように、ベクター系及び利用する宿主に応じて、構成的プロモーター及び誘導性プロモーターを含むあらゆる数の適切な転写エレメント及び翻訳エレメントを用いてもよい。
【0088】
特定の開始シグナルを用いて、GPR26 GPCRをコードする配列のより効率的な翻訳も実現することができる。このようなシグナルには、ATG開始コドン及び隣接の配列が含まれる。GPR26 GPCR及びその開始コドンをコードする配列並びに上流の配列が好適な発現ベクター中に挿入される場合は、さらなる転写または翻訳の制御シグナルは必要とされないことがある。しかし、コード配列だけ、またはそのフラグメントが挿入される場合は、ATG開始コドンを含む外来の翻訳制御シグナルを提供しなければならない。さらに、挿入物全体を確実に翻訳するために、開始コドンは正しいリーディングフレームになければならない。外来の翻訳エレメント及び開始コドンは、天然及び合成両方の、様々な起源であってよい。発現の効率は、文献に記載されているものなど、用いる特定の細胞系に好適なエンハンサーを包含することによって増強することができる (Scharf,Dら(1994年)Results Probl.Cell Differ.、20巻、125〜162頁)。
【0089】
さらに、宿主細胞株を、挿入された配列の発現を調節し、または望ましい様式で発現されたタンパク質をプロセシングするその能力に関して選択してもよい。このようなポリペプチドの修飾には、それだけには限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質付加、及びアシル化が含まれる。「プレプロ」型のタンパク質を切断する、翻訳後プロセシングを用いて、正確な挿入、フォールディング、及び/または機能を促進してもよい。翻訳後活性に特異的な細胞機構及び特徴的なメカニズムを有する様々な宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びWI38)は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、Bethesda、メリーランド州)から入手可能であり、確実に外来のタンパク質の正確な修飾及びプロセシングするように選択されることがある。
【0090】
組換えタンパク質を、長期に、高収率で生成するためは、安定な発現が好ましい。例えば、GPR26 GPCRを安定に発現することができる細胞系を、ウイルス起源の複製及び/または内因性の発現エレメント、及び同じもしくは別々のベクター上に選択可能なマーカー遺伝子を含み得る発現ベクターを用いて形質転換することができる。ベクターの導入後、細胞を増殖培地で約1日から2日間増殖させた後、選択培地に切り換えてもよい。安定に形質転換した細胞の耐性のクローンを、細胞型に好適な組織培養技術を用いて増殖させてもよい。当技術分野ではよく知られているように、あらゆる数の選択系を用いて、形質転換した細胞系を回収してもよい。
【0091】
あるいは、GPR26 GPCRをコードする核酸配列を含み、GPR26 GPCRを発現する宿主細胞を、当業者には知られている様々な他の手順によって同定してもよい。これらの手順には、それだけには限定されないが、DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼーション、並びに核酸またはタンパク質の配列を検出及び/または定量するための、膜、溶液、またはチップベースの技術を含むタンパク質のバイオアッセイまたは免疫アッセイの技術が含まれる。
【0092】
GPR26 GPCRをコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞を、発現、及び細胞培養物からのタンパク質の回収に適する条件下で培養してもよい。形質転換された細胞が生成したタンパク質は、細胞膜に位置し、配列及び/または用いるベクターに応じて細胞内に分泌または含まれていてよい。当業者であれば理解するように、GPR26 GPCRをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞または真核細胞の細胞膜を通してGPR26 GPCRを直接分泌するシグナル配列を含むようにデザインされていてよい。他の構築を用いて、GPR26 GPCRをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に連結してもよい。このような精製を促進するドメインには、それだけには限定されないが、固定化した金属上における精製を可能にする、ヒスチジン-トリプトファンモジュールなどの金属キレート性ペプチド、固定化した免疫グロブリン上における精製を可能にするタンパク質Aドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製系で利用されるドメイン(Immunex Corp.、Seattle、ワシントン州)が含まれる。XA因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen、San Diego、カリフォルニア州)に特異なものなどの切断可能なリンカー配列を、精製ドメインとGPR26 GPCRコード配列との間に含むことを用いて、精製を促進してもよい。このような発現ベクターの一つは、GPR26 GPCRを含む融合タンパク質、及びチオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位に先行する6個のヒスチジン残基をコードする核酸の発現をもたらす。ヒスチジン残基は、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー上の精製(IMIAC;Porath,J.ら(1992年)Prot.Exp.Purif.、3巻、263〜281頁に記載されている)を促進し、エンテロキナーゼの切断部位は、融合タンパク質からGPR26 GPCRを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターの考察は、Kroll,D.J.ら(1993年、DNA Cell Biol.、12巻、441〜453頁)に提供される。
【0093】
GPR26 GPCRのフラグメントは、組換えの生成によるだけではなく、固相技術を用いた直接のペプチド合成によっても生成することができる(Merrifield J.(1963年)J.Am.Chem.Soc.、85巻、2149〜2154頁)。タンパク質合成は、手動の技術によって、または自動化によって行うことができる。自動化の合成は、例えば、Applied Biosystems 431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を用いて実現することができる。GPR26 GPCRの様々なフラグメントを別々に合成し、次いで、結合して全長の分子を生成してもよい。
【0094】
バイオセンサー
GPR26のポリペプチド、核酸、プローブ、抗体、発現ベクター、及びリガンドは、バイオセンサーとして(及び、バイオセンサーの生成に)有用である。
【0095】
Aizawa(1988年)、Anal.Chem.Symp.、17巻、683頁によると、バイオセンサーは、分子を認識するための受容体の独特な組合せ、例えば、固定化した抗体、またはGPR26 G-タンパク質共役受容体などの受容体を有する選択性の層、及び測定した値を伝達するためのトランスデューサーであると定義されている。このようなバイオセンサーの1グループは、受容体の、周囲の媒体との相互作用による、表面層の光学的性質にもたらされる変化を検出する。このような技術の中では、特に、エリプソメトリー、及び表面プラズモン共鳴法に言及することができる。GPR26を組み入れるバイオセンサーを用いて、ペプチドホルモン、プリンもしくはプリン類似体などのヌクレオチド、またはこれらのリガンドの類似体などの、GPR26リガンドの存在またはレベルを検出してもよい。このようなバイオセンサーの構築は、当技術分野ではよく知られている。
【0096】
このように、GPR26受容体を発現する細胞系を、[3H]イノシトールリン酸または他のセカンドメッセンジャーの、受容体促進性の形成によって、リガンドを検出するためのレポーター系として用いてもよい(Wattら、1998年、J Biol Chem、5月29日、273巻(22)、14053〜8頁)。受容体-リガンドのバイオセンサーは、Hoffmanら、2000年、Proc Natl Acad Sci USA、10月10日、97巻(21)、11215〜20頁にも記載されている。GPR26を含む光学及び他のバイオセンサーを用いて、例えば、Figlerら、1997年、Biochemistry、12月23日、36巻(51)、16288〜99頁、及びSarrioら、2000年、Mol Cell Biol、2000年7月、20巻(14)、5164〜74頁によって記載されているように、G-タンパク質、及び他のタンパク質との相互作用のレベルまたは存在を検出してもよい。バイオセンサー用のセンサーユニットは、例えば、米国特許第5,492,840号に記載されている。
【0097】
スクリーニングアッセイ
本発明のGPR26 GPCRポリペプチドを、受容体に結合し、GPR26を活性化する物質(アゴニスト)またはその活性化を阻害する物質(アンタゴニスト)に対するスクリーニングプロセスで使用してもよい。精神疾患の治療に適する物質を同定する方法は、候補物質がGPR26の活性に影響を及ぼすか否かを決定する工程を含む。本明細書で用いられる「物質」の語は、当業者には理解されるように、受容体の活性に影響を及ぼし得る部分を意味する。物質が化合物であるのが好ましい。従って、候補物質は、それ(候補物質)がGPR26の活性に影響を及ぼすか否かを決定するために試験される物質である。
【0098】
「化合物」の語は、生物学的な巨大分子(例えば、核酸、タンパク質、非ペプチド、もしくは有機分子)、または、細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に哺乳動物)の細胞もしくは組織などの生物学的材料から作製された抽出物、またはさらに無機元素もしくは分子など、化学的な化合物(天然に存在する、または合成の)を意味する。化合物が抗体であるのが好ましい。
【0099】
候補の物質が、受容体(GPR26)の活性に結合し、または他の方法で影響を及ぼすか否かを決定する方法は、当技術分野ではよく知られている。in vitro、in vivo、及びin silico(すなわち、ドッキングアルゴリズムの使用)の方法は、本発明の範囲内である。
【0100】
本発明のポリペプチドを用いて、例えば、細胞、無細胞の調製物、化合物ライブラリー、及び天然生成物の混合物などにおける小分子の基質とリガンドの結合を評価してもよい。これらの基質及びリガンドは、天然の基質及びリガンドであってもよく、または構造的もしくは機能的模倣物であってもよい。Coliganら、Current Protocols in Immunology、1巻(2)、第5章(1991年)を参照されたい。
【0101】
一般的に、GPR26 GPCRのアゴニスト及びアンタゴニストを、上記に定義したような精神疾患のための目的で、治療用及び予防の目的で使用する。
【0102】
GPR26 GPCRタンパク質と相互作用することができると思われる候補の化合物の合理的なデザインは、本発明によるポリペプチドの高次構造の構造研究に基づいていてよい。好ましい構造の分析には、エックス線結晶学及びNMRが含まれる。これらは、どのアミノ酸残基が分子の接触領域を構成するかに関する手引きを提供するものである。タンパク質の構造決定の詳しい記載については、例えば、Blundell及びJohnson(1976年) Protein Crystallography、Academic Press、New Yorkを参照されたい。
【0103】
合理的なデザインに対する一代替は、本発明のGPR26受容体ポリペプチドをその表面上に発現する、好適な細胞を一般的に生成することを伴うスクリーニング手順を用いる。このような細胞には、動物、酵母菌、ショウジョウバエ(Drosophila)、または大腸菌からの細胞が含まれる。次いで、受容体(または発現された受容体を含む細胞膜)を発現する細胞を、試験化合物と接触させて、機能的反応の結合、刺激、または阻害を観察する。例えば、アフリカツメガエルの2電極膜電位固定系(Wagnerら、上述)を用いてもよい。さらに、マイクロフィジオメトリック(microphysiometric)アッセイを用いて、GPR26受容体活性をアッセイしてもよい。広範囲の2次性のメッセンジャー系の活性化により、細胞から少量の酸の押出がもたらされる。形成された酸は、細胞内シグナリングプロセスを煽るのに必要とされる代謝活性の増大の結果である。細胞の周囲の培地におけるpHの変化は非常に小さいが、例えば、サイトセンサーマイクロフィジオメーター(Molecular Devices Ltd.、Menio Park、カリフォルニア州)によって検出可能である。サイトセンサーは、従って、本発明のG-タンパク質共役受容体などの細胞内シグナリング経路を利用するエネルギーに共役している受容体の活性化を検出することができる。
【0104】
各候補化合物を個々にGPR26受容体で試験する代わりに、候補のリガンドのライブラリーまたはバンクを生成及びスクリーニングすると有利であることがある。従って、例えば、200個を超える推定の受容体リガンドのバンクが、スクリーニング用に構築されている。バンクは、ヒト7TM受容体によって作用することが知られている伝達物質、ホルモン、及びケモカイン;ヒト7TM受容体に対する推定のアゴニストであってよい天然に存在する化合物;それに対する哺乳動物の対応物が未だに同定されていない、非哺乳動物の、生物学的に活性なペプチド;並びに天然には見出されないが未知の天然のリガンドで7TM受容体を活性化する化合物を含む。機能的(すなわち、カルシウム、cAMP、マイクロフィジオメーター、卵母細胞の電気生理学、など、他を参照されたい)アッセイ、及び他にさらに詳しく記載されているような結合アッセイの両方を用いて、知られているリガンドに対する受容体をスクリーニングするために、このバンクを用いる。しかし、今のところ、それに対するアゴニストまたはアンタゴニストが依然として存在しない哺乳動物の受容体は多数存在する。従って、これらの受容体に対する活性のリガンドは、今日までに同定されているリガンドバンク内に含まれないことがある。従って、本発明のGPR26受容体を、また、(カルシウム、cAMP、マイクロフィジオメーター、卵母細胞の電気生理学など、機能的スクリーニングを用いて)天然のリガンドを同定するための組織抽出物に対して機能的にスクリーニングする。ポジティブな機能的反応を生成する抽出物を、活性化のリガンドを単離及び同定するまで、本明細書に記載する通りにアッセイされる分画とともに連続的に亜分画化することができる。
【0105】
HEK293細胞で発現される7TM受容体は、PLCの活性化及びカルシウム動員、及び/またはcAMPの刺激もしくは阻害に対して機能的に共役することが示されている。従って、一スクリーニング技術は、本発明のGPR26 GPCR受容体を発現する細胞(例えば、形質移入したアフリカツメガエルの卵母細胞、CHO、またはHEK293細胞)の、受容体の活性化によって引き起こされる細胞外pHまたは細胞内カルシウムの変化を測定する系における使用を含む。この技術では、化合物を、本発明の受容体ポリペプチドを発現する細胞と接触させてもよい。次いで、シグナル伝達、pHの変化、またはカルシウムレベルにおける変化などの、セカンドメッセンジャーの反応を測定して、潜在的な化合物が受容体を活性化するか、阻害するかを決定する。
【0106】
別の一方法は、GPR26受容体が媒介するcAMP及び/またはアデニル酸シクラーゼの蓄積の阻害または刺激を決定することによる、受容体阻害薬に対するスクリーニングを伴う。このような方法は、真核細胞に、細胞表面上で受容体を発現するための本発明の受容体を形質移入することを伴う。次いで、細胞を、本発明の受容体の存在下で潜在的なアンタゴニストに曝露する。次いで、cAMP蓄積の量を測定する。潜在的なアンタゴニストが受容体に結合し、従って受容体の結合を阻害する場合は、受容体が媒介するcAMPのレベル、またはアデニル酸シクラーゼの活性は、低減または増大される。
【0107】
本発明の受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストを検出するための別の一方法は、本明細書に参照として組み入れられる、米国特許第5,482,835号に記載される、酵母菌ベースの技術である。
【0108】
候補の化合物がタンパク質、特に抗体またはペプチドである場合は、候補の化合物のライブラリーを、ファージディスプレイ技術を用いてスクリーニングしてもよい。ファージディスプレイは、組換えのバクテリオファージを利用する分子スクリーニングのプロトコルである。この技術は、バクテリオファージを、各ファージまたはファージミドが特定の候補の化合物を発現するように、候補の化合物のライブラリーからの1つの化合物をコードする遺伝子で形質転換することを伴う。形質転換されたバクテリオファージ(固相に繋留されているのが好ましい)は、好適な候補の化合物を発現し、それをそのファージコート上に提示する。本発明のポリペプチドまたはペプチドに結合することができる特定の候補の化合物を、親和性相互作用に基づく選択の戦略によって濃縮する。次いで、成功した候補物質を特徴付ける。ファージディスプレイは、標準の親和性リガンドスクリーニング技術をしのぐ利点を有する。ファージの表面は、その天然に存在する高次構造により緊密に類似する、3次元の立体配座で候補物質を提示する。これにより、スクリーニング目的の、より特異的かつより高い親和結合性が可能になる。
【0109】
化合物のライブラリーをスクリーニングする別の一方法は、一ライブラリーの化合物を発現する組換えDNA分子で安定に形質転換した、真核生物または原核生物の宿主細胞を利用するものである。これらの細胞は、生存可能な、または固定した形態のいずれかで、標準の結合パートナーアッセイに用いることができる。細胞の反応を検出するための高感度の方法を記載してある、Parceら(1989年)Science、246巻、243〜247頁;及びOwickiら(1990年)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA、87巻、4007〜4011頁も参照されたい。ライブラリーの化合物を発現する細胞を、125I-抗体、及び結合性組成物に対するその結合アフィニティーが測定されている候補の化合物などの試験サンプルなど、本発明のGPR26ポリペプチドに結合することが知られている標識されている抗体と接触させ、または一緒にインキュベートする場合は、競合のアッセイは特に有用である。次いで、結合及び自由の標識ポリペプチドに対する結合パートナーを分離して、結合の度合いを評価する。結合した試験サンプルの量は、ポリペプチドに結合する標識された抗体の量に反比例する。
【0110】
結合の度合いを評価するために、多数の技術の任意の1つを用いて、遊離の結合パートナーから結合を分離することができる。この分離の工程は、典型的に、フィルターへの接着とその後の洗浄、プラスチックへの接着とその後の洗浄、または細胞膜の遠心分離などの手順を伴うことがある。
【0111】
さらに別の取組みは、可溶化した、未精製の、または可溶化し精製した、例えば、形質転換した真核生物または原核生物の宿主細胞から抽出した、ポリペプチドまたはペプチドを使用することである。これにより、特異性、自動化する能力、及び薬物試験のハイスループットの増大の利点のある「分子」結合アッセイが可能になる。
【0112】
候補の化合物のスクリーニングに対する別の一技術は、例えば、本発明のポリペプチドに対する、適切な結合親和性を有する新規な化合物に対するハイスループットのスクリーニングを提供する取組みを伴い、WO84/03564号に詳しく記載されている。最初に、多数の異なる小型ペプチドの試験化合物を、固体の基質上、例えば、プラスチック製のピン、またはいくつかの他の好適な表面上で合成する;Fodorら(1991年)を参照されたい。次いで、ピンを全て、本発明の可溶化したポリペプチドと反応させ、洗浄する。次の工程は、結合したポリペプチドを検出することを伴う。ポリペプチドと特異的に相互作用する化合物を、このように同定する。
【0113】
リガンド結合アッセイにより、受容体の薬理を確認するための直接方法がもたらされ、これはハイスループットのフォーマットに適用できる。受容体に対して精製したリガンドを、結合試験用に高い特異的な活性(50〜2000Ci/mmol)に対して放射標識してもよい。次いで、放射標識のプロセスにより、リガンドのその受容体に対する活性が低減しないという決定を行う。バッファー、イオン、pH、及び、ヌクレオチドなどの他のモジュレーターに対するアッセイ条件を最適化して、膜及び細胞の受容体の供給源全体の両方に対する、実際的なシグナル対ノイズ比を確立する。これらアッセイに対して、特異的な受容体の結合を、過剰な非標識の競合性リガンドの存在下で測定した放射活性を差し引いた、全体に関連する放射活性と規定する。可能であれば、1個を超える競合性のリガンドを用いて、残余の非特異的な結合を規定する。
【0114】
アッセイは、候補の化合物の結合を単純に試験してもよく、受容体を有する細胞に対する接着を、候補の化合物に直接もしくは間接的に関連する標識によって、または標識した競合物質との競合を伴うアッセイで検出する。さらに、これらのアッセイは、その表面に受容体を有する細胞に好適な検出系を用いて、候補の化合物が受容体の活性化によって産生されるシグナルをもたらすか否かを試験することができる。活性化の阻害薬は、一般的には、知られているアゴニストの存在下でアッセイし、候補の化合物の存在による、アゴニストの活性化に対する影響を観察する。
【0115】
さらに、アッセイは、候補の化合物をGPR26 GPCRポリペプチドを含む溶液と混合して混合物を形成する工程と、混合物におけるGPR26 GPCR活性を測定する工程と、混合物のGPR26 GPCR活性を標準と比較する工程を単に含んでいてよい。
【0116】
また、GPR26 GPCR cDNA、タンパク質、及びタンパク質に対する抗体を用いて、細胞におけるGPR26 GPCR mRNA及びタンパク質の生成に対する、添加した化合物の効果を検出するためのアッセイを形作ることもできる。例えば、当技術分野では知られている標準の方法によってモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、GPR26 GPCRタンパク質の、分泌されるレベルまたは細胞に関連するレベルを測定するためにELISAを構築してもよく、これを用いて、適切に操作された細胞または組織からGPR26 GPCRの生成を阻害または増強し得る物質(それぞれアンタゴニストまたはアゴニストとも呼ばれる)を見出すことができる。スクリーニングアッセイを行うための標準方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0117】
潜在的なGPR26 GPCRアンタゴニストの例には、抗体、または場合によってはヌクレオチド及びその類似体(プリン及びプリン類似体を含む)、GPR26 GPCRのリガンドに緊密に関連するオリゴヌクレオチドもしくはタンパク質(例えば、リガンドのフラグメント)、または受容体に結合するが反応を誘発しないため受容体の活性が妨げられる小分子が含まれる。従って、本発明は、GPR26ポリペプチド及び/または本発明のペプチドに特異的に結合することができる化合物も提供する。
【0118】
このようなスクリーニングを行うのに必要な材料を、スクリーニングキット中に包装してもよい。このようなスクリーニングキットは、GPR26 GPCRポリペプチド、またはGPR26 GPCRポリペプチドの生成を低減または増強する化合物に対する、アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質、酵素などを同定するのに有用である。スクリーニングキットは、(a)GPR26 GPCRポリペプチド、(b)GPR26 GPCRポリペプチドを発現する組換えの細胞、(c)GPR26 GPCRポリペプチドを発現する細胞膜、または(d)GPR26 GPCRポリペプチドに対する抗体を含む。スクリーニングキットは、使用説明書を場合により含むことがある。
【0119】
トランスジェニック動物
本発明は、天然もしくは組換えのGPR26 GPCR、またはホモログ、バリアント、もしくは誘導体を、正常の発現レベルに比べて増大または低減したレベルで発現することができるトランスジェニック動物をさらに包含する。GPR26遺伝子の欠失(両方の対立遺伝子の、すなわち-/-)を含む、1つまたは複数の機能喪失型の結果、機能的GPR26受容体を発現しないトランスジェニック動物(「GPR26ノックアウト」)が含まれる。これらの動物は、機能的に障害された内因性のGPR26遺伝子を有すると言われている。あらゆる機能的(GPR26)ポリペプチドを発現しない非ヒト動物は、「ヌル」変異を有するとしばしば言われる。
【0120】
好ましくは、トランスジェニック動物は、ブタ、ヒツジ、またはげっ歯動物などの非ヒト哺乳動物である。トランスジェニック動物がマウスまたはラットであるのが最も好ましい。このようなトランスジェニック動物をスクリーニング手順で用いて、GPR26 GPCRのアゴニスト及び/またはアンタゴニストを同定してもよく、また、in vivoで疾患に対する治療としてのそれらの有効性に対して試験してもよい。
【0121】
例えば、GPR26 GPCRの生成において欠損であるように操作されているトランスジェニック動物を、GPR26 GPCRのアゴニスト及び/またはアンタゴニストを同定するためのアッセイで用いてもよい。一アッセイは、GPR26 GPCR受容体の非存在下で生理学的反応を生成するか否かを決定するために、潜在的な薬物(候補のリガンドまたは化合物)を評価するようにデザインされている。これは、薬物を上記で論じたトランスジェニック動物に投与し、次いで、当業者には明らかである特定の反応に対して動物をアッセイすることにより遂行することができる。GPR26ノックアウト動物に由来する組織を、受容体結合アッセイで用いて、潜在的な薬物(候補のリガンドまたは化合物)がGPR26受容体に結合するか否かを決定してもよい。このようなアッセイは、GPR26受容体の生成において欠損であるように操作されたトランスジェニック動物から第1の受容体調製物を、また、あらゆる同定されているGPR26リガンドまたは化合物に結合することが知られている供給源から第2の受容体調製物を得ることにより行うことができる。一般的には、第1及び第2の受容体調製物は、それらを得た供給源を除く全ての局面で類似している。例えば、トランスジェニック動物(上記及び下記に記載するような)からの脳組織をアッセイで用いる場合は、正常の(野生型の)動物からの匹敵する脳組織を、第2の受容体調製物の供給源として用いる。各々の受容体調製物を、GPR26受容体に結合することが知られているリガンドと、単独で、及び候補のリガンドまたは化合物の存在下の両方でインキュベートする。候補のリガンドまたは化合物を、いくつかの異なる濃度で検査するのが好ましい。
【0122】
既知のリガンドによる結合が試験化合物によって置換される度合いを、第1及び第2の受容体の調製物の両方に対して決定する。トランスジェニック動物に由来する組織を、直接、アッセイで用いてもよく、または組織を加工して、それ自体アッセイで用いられる膜または膜タンパク質を単離してもよい。好ましいトランスジェニック動物はマウスである。リガンドを、結合アッセイに適合性のあらゆる手段を用いて標識してもよい。これには、制限なく、放射性の、酵素の、蛍光の、または化学発光の標識化(及び、上記にさらに詳しく記載したような他の標識化技術)が含まれる。
【0123】
さらに、GPR26 GPCR受容体のアンタゴニストを、機能的なGPR26を発現する野生型の動物に対して、及びGPR26受容体の機能の発現の低減または破壊に関連するあらゆる表現型の特徴を表す同定された動物に対して候補の化合物などを投与することによって同定してもよい。
【0124】
非ヒトトランスジェニック動物を産生するための方法は、当技術分野ではよく知られており、あらゆる適切な方法を用いることができる。例示の一実施形態では、本発明のトランスジェニックの非ヒト動物を、導入遺伝子を非ヒト動物の生殖系列中に導入することによって生成する。構築物のコピーの1つまたはいくつかを、ゲノム中に組み入れてもよい。様々な発生段階における胚性の標的細胞を用いて導入遺伝子を導入することができる。胚性の標的細胞の発生段階に応じて、様々な方法を用いる。導入遺伝子の胚中への導入は、例えば、マイクロインジェクション、電気穿孔、またはリポフェクションなど、当技術分野では知られているあらゆる手段によって遂行することができる。導入遺伝子構築物を受精卵中に導入した後、卵を、様々な時間の間in vitroでインキュベートしても、または代理の宿主中に再移植しても、またはその両方でもよい。成熟するまでin vitroでインキュベートすることは、本発明の範囲内である。一般的な方法の一つは、胚をin vitroで、種に応じて約1〜7日間インキュベートし、次いで、それを代理の宿主中に再移植することである。
【0125】
本発明の目的では、接合子は、実質的には、完全な生物体に発生することができる二倍体細胞の形成である。一般的には、接合子は、1つまたは複数の配偶子からの、半数体の2個の核の融合によって、天然または人工的のいずれかで形成された核を含む卵からなる。
【0126】
接合子に加えられる導入遺伝子構築物のコピー数は、加えられる外来の遺伝材料の総量に依存し、遺伝の形質転換が起こるのを可能にする量である。理論的には、1コピーだけが必要とされるが、その1コピーが機能的であることを保証するために、一般的には多くのコピー、例えば、1000〜20000コピーの導入遺伝子の構築物を利用する。本発明に関しては、外来のDNA配列の表現型の発現を増強するために、挿入される外来のDNA配列の各々の機能性のコピーを2個以上有すると有利であることが多い。
【0127】
それが細胞、核膜、または他の現存する細胞もしくは遺伝の構成にとって破壊的でない限り、外来の遺伝材料を核の遺伝材料中に加えることを可能にするあらゆる技術を利用することができる。外来の遺伝材料を、マイクロインジェクションによって核の遺伝材料中に挿入することが好ましい。細胞及び細胞構造のマイクロインジェクションは、当技術分野では知られており、用いられている。
【0128】
標準の方法を用いて、再移植を遂行する。通常は、代理の宿主を麻酔し、胚を卵管中に挿入する。特定の宿主中に移植する胚の数は種によって異なるが、通常は、その種が天然に生成する子孫の数に匹敵する。
【0129】
代理の宿主のトランスジェニックの子孫を、あらゆる適切な方法によって導入遺伝子の存在及び/または発現に対してスクリーニングしてもよい。スクリーニングは、導入遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるプローブを用いて、サザンブロットまたはノーザンブロット分析によって遂行することが多い。導入遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体を用いたウエスタンブロット分析を、導入遺伝子生成物の存在に対してスクリーニングするための代替の、またはさらなる方法として使用してもよい。導入遺伝子の存在を評価するための代替の、またはさらなる方法には、制限なく、酵素及び/または免疫学的アッセイなどの適切な生化学アッセイ、特定のマーカーまたは酵素の活性に対する組織学的染色、フローサイトメトリー分析などが含まれる。血液の分析も、血中の導入遺伝子生成物の存在を検出するのに、かつ、様々なタイプの血液細胞及び他の血液成分のレベルに対する導入遺伝子の効果を評価するのに有用であることがある。
【0130】
トランスジェニック動物を適切なパートナーと交配することによって、またはトランスジェニック動物から得た卵及び/または精子のin vitroの受精によって、トランスジェニック動物の子孫を得てもよい。パートナーとの交配を行う場合は、パートナーはトランスジェニック及び/またはノックアウトであってもよく、またはそうでなくてもよい。パートナーが、トランスジェニックである場合は、同じ導入遺伝子を含んでもよく、または異なる導入遺伝子を含んでもよく、または両方を含んでもよい。あるいは、パートナーは親系統であってよい。in vitroの受精を用いる場合は、受精した胚を、代理の宿主中に移植してもよく、またはin vitroでインキュベートしてもよく、または両方でもよい。いずれかの方法を用いて、上記に記載した方法、または他の好適な方法を用いて、導入遺伝子の存在に対して子孫を評価してもよい。
【0131】
本発明に従って生成されるトランスジェニック動物は、外来の遺伝材料を含む。上記に述べたように、外来の遺伝材料は、ある実施形態では、GPR26 GPCR受容体の生成をもたらすDNA配列である。さらに、そのような実施形態では、配列は、特定のタイプの細胞における導入遺伝子生成物の発現を可能にすることが好ましい、転写調節エレメント、例えばプロモーターに付着している。
【0132】
導入遺伝子の導入に対する代替の標的細胞は、胚性幹細胞(ES)である。ES細胞は、in vitroで培養し、胚と融合した、着床前の胚から得られる(Evansら(1981年)Nature、292巻、154〜156頁;Bradleyら(1984年)Nature、309巻、255〜258頁;Gosslerら(1986年)PNAS、83巻、9065〜9069頁;及びRobertsonら(1986年)Nature、322巻、445〜448頁)。導入遺伝子は、DNA形質移入によって、またはレトロウイルスが媒介する形質導入によって、ES細胞中に効率的に導入することができる。このような形質転換されたES細胞は、その後、非ヒト動物からの胚盤胞と結合することができる。その後、ES細胞は、胚をコロニー形成し、得られたキメラの動物の生殖系列に寄与する。再考には、Jaenisch, R.(1988年)Science、240巻、1468〜1474頁を参照されたい。
【0133】
本発明者らは、非ヒトトランスジェニック動物も提供し、トランスジェニック動物は、好ましくは上記に記載したようにGPR26受容体機能に対するモデルとして、改変されたGPR26遺伝子を有することを特徴とする。遺伝子に対する改変には、機能の突然変異の欠失もしくはその他の喪失、標的のもしくはランダムの突然変異を有するヌクレオチド配列を有する外来遺伝子の導入、別の種からの外来の遺伝子の導入、またはこれらの組合せが含まれる。トランスジェニック動物は、改変に対してホモ接合型またはヘテロ接合型のいずれかであってよい。それらに由来する動物及び細胞は、GPR26受容体機能を変調することができる生物学的に活性な物質をスクリーニングするのに有用である。スクリーニング方法は、特異性、及び精神疾患に対する潜在的な治療の作用を決定するのに特に有用である。動物は、正常の脳の機能におけるGPR26受容体の役割を調査するためのモデルとして有用である。
【0134】
本発明の別の一態様は、機能的に障害された内因性のGPR26遺伝子を有するが、そのゲノムに異種性のGPR26タンパク質(すなわち、別の種からのGPR26)をコードする導入遺伝子も保有し、発現する、トランスジェニックの非ヒト動物に関係する。好ましくは、動物はマウスであり、異種性のGPR26はヒトのGPR26である。動物、または本発明のこのような動物に由来する細胞系は、ヒトのGPR26で再構成され、in vivo及びin vitroでヒトのGPR26を阻害する物質を同定するのに用いることができる。例えば、ヒトのGPR26によりシグナリングを誘発する刺激を、物質の存在下及び非存在下で、試験する動物または細胞系に適用することができ、動物または細胞系における反応を測定することができる。In vivoまたはin vitroでヒトGPR26を阻害する物質を、物質の非存在下の反応と比べた、物質の存在下の反応の低減に基づいて同定することができる。
【0135】
本発明は、GPR26 GPCR-欠損のトランスジェニックの非ヒト動物(「GPR26 GPCRノックアウト」)も提供する。このような動物は、好ましくは内因性のGPR26 GPCRのゲノム配列が分裂または欠失した結果として、低減した、または全くないGPR26 GPCR活性を発現するものである。好ましくは、このような動物はGPCR活性を発現しない。より好ましくは、動物は、配列番号3または配列番号5として示されるGPR26 GPCRの活性を発現しない。GPR26 GPCRノックアウトは、以下にさらに詳しく記載するように、当技術分野では知られている様々な手段によって産生され得る。
【0136】
本発明は、宿主細胞においてGPR26遺伝子を機能的に障害するための核酸構築物にも関する。核酸構築物は、a)非相同の置換部分、b)非相同の置換部分の上流に位置する第1の相同性領域であって、第1の相同性領域は、第1のGPR26遺伝子配列に実質的に同一なヌクレオチド配列を有し、c)非相同の置換部分の下流に位置する第2の相同性領域であって、第2の相同性領域は、第2のGPR26遺伝子配列に実質的に同一なヌクレオチド配列を有し、第2のGPR26遺伝子配列は、天然に存在する内因性のGPR26遺伝子における第1のGPR26遺伝子配列の下流に位置を有する。さらに、第1及び第2の相同性領域は、核酸分子を宿主細胞中に導入する場合、核酸構築物と宿主細胞における内因性のGPR26遺伝子との間の相同の組換えに十分な長さである。好ましい一実施形態では、非相同の置換部分は、好ましくはlacZ及びポジティブ選択の発現カセットを含み、好ましくは制御エレメントに操作的に連結しているネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含む、発現レポーターを含む。
【0137】
好ましくは、第1及び第2のGPR26遺伝子の配列は、配列番号6に由来し、配列番号4またはそのホモログ、バリアント、もしくは誘導体を含んでもよい。
【0138】
本発明の別の一態様は、その中に本発明の核酸構築物が組み入れられる組換えのベクターに関する。本発明のさらに別の一態様は、その中に本発明の核酸構築物が導入され、それによって核酸構築物と宿主細胞の内因性のGPR26遺伝子との間の相同の組換えが可能になり、内因性GPR26遺伝子の機能的な障害がもたらされる宿主細胞に関する。宿主細胞は、脳から、またはマウス胚性幹細胞などの多能性細胞からGPR26を通常発現する哺乳動物の細胞であってよい。その中に核酸構築物が導入され、内因性のGPR26遺伝子と相同的に組み換えられる胚性幹細胞のさらなる発生により、胚性幹細胞からの子孫であり、従ってそのゲノムにGPR26遺伝子の障害を保有する細胞を有する非ヒトトランスジェニック動物が生成される。次いで、その生殖系列にGPR26遺伝子の障害を保有する動物を選択し、繁殖させて、体細胞全て及び生殖細胞にGPR26遺伝子の障害を有する動物を生成することができる。次いで、このようなマウスを、GPR26遺伝子の障害に対してホモ接合性であるように繁殖させることができる。
【0139】
GPR26 GPCR欠損のトランスジェニック動物を、実施例1及び2に記載するように産生することができる。
【0140】
抗体
本発明の目的では、「抗体」の語は、相反するものを特定しなければ、それだけには限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントを含む。このようなフラグメントには、標的物質に対するその結合活性を保持する抗体全体のフラグメント、Fv、F(ab')、及びF(ab')2フラグメント、並びに単鎖抗体(scFv)、融合タンパク質、及び抗体の抗原結合性部位を含む他の合成タンパク質が含まれる。抗体及びそのフラグメントは、ヒト化抗体、例えばEP-A-0239400号に記載されているものであってよい。さらに、例えば、米国特許第5,545,807号及び第6,075,181号に記載されているような、完全なヒト可変領域を有する抗体(またはそのフラグメント)も用いてもよい。中和抗体、すなわち、物質であるアミノ酸配列の生物学的活性を阻害するものが、診断及び治療に特に好ましい。
【0141】
抗体は、免疫化によって、またはファージディスプレイライブラリーの使用によって、など、標準の技術によって生成することができる。
【0142】
本発明のポリペプチドまたはペプチドを用いて、知られている技術によって抗体を開発してもよい。このような抗体は、GPR26 GPCRタンパク質、またはホモログ、フラグメントなどに特異的に結合することができることがある。
【0143】
ポリクローナル抗体が望ましい場合は、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、本発明のポリペプチドまたはペプチドを含む免疫学的組成物で免疫化してもよい。宿主の種に応じて、フロイントのアジュバント、及び水酸化アルミニウムを含めた様々なアジュバントを用いて、免疫学的反応を増大してもよい。BCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)は、精製した物質であるアミノ酸配列を、全身性の防御を刺激する目的で免疫学的に損なわれている個体に投与する場合に使用してもよい、潜在的に有用なヒトのアジュバントである。
【0144】
本発明のポリペプチドまたはペプチドから得ることができるエピトープに対するモノクローナル抗体も、当業者であれば容易に生成することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法論は、よく知られている。
【0145】
さらに、「キメラの抗体」を生成するために開発された技術では、好適な抗原特異性及び生物学的活性を有する分子を得るための、マウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子へのスプライシングを用いることができる(Morrisonら(1984年)Proc Natl Acad Sci、81巻、6851〜6855頁;Neubergerら、(1984年)Nature、312巻、604〜608頁;Takedaら(1985年)Nature、314巻、452〜454頁)。あるいは、単鎖抗体を生成するために記載されている技術(米国特許第4,946,779号)を、単鎖抗体に特異的な物質を生成するために適用することができる。
【0146】
本発明のポリペプチドまたはペプチドから入手可能なエピトープに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体は両方とも、診断において特に有用であり、中和性の抗体は受動免疫療法において有用である。特に、モノクローナル抗体を用いて、抗イディオタイプの抗体を産生してもよい。抗イディオタイプの抗体は、物質の「内部イメージ」、及び/またはそれに対する保護が望ましい物質を保有する免疫グロブリンである。抗イディオタイプの抗体を産生するための技術は、当技術分野では知られている。これらの抗イディオタイプの抗体も、治療において有用である。
【0147】
上記に記載した抗体を使用して、ポリペプチドを発現するクローンを単離もしくは同定し、またはアフィニティークロマトグラフィーによってポリペプチドを精製してもよい。
【0148】
GPR26 GPCRポリペプチドに対する抗体を、また、精神疾患を治療するために使用してもよい。
【0149】
診断用のアッセイ
GPR26は精神疾患に関係付けられている。従って、個体において、または好ましくは個体から単離したサンプル中のGPR26の存在及び/または活性を検出することにより、当業者には理解されるように、精神疾患の存在、または感受性に対して診断を行うことが可能になる。
【0150】
本発明は、GPR26 GPCRポリヌクレオチド及びポリペプチド(並びにそのホモログ、バリアント、及び誘導体)の、診断試薬として、または遺伝分析における診断で用いるための使用にも関する。GPR26 GPCR核酸(ホモログ、バリアント、及び誘導体を含む)に相補的である核酸、またはそれにハイブリダイズすることができる核酸、並びにGPR26ポリペプチドに対する抗体も、このようなアッセイで有用である。
【0151】
好ましい一実施形態では、診断はin vitroで行われ、すなわち、診断されるヒトまたは動物の身体に対して行われない。
【0152】
個体(すなわち患者)における精神疾患の存在または感受性を決定する方法は、(i)個体から単離したサンプル中のGPR26の発現レベルを決定する工程と、(ii)サンプルを単離した個体が精神疾患を有するか否か、または感受性があるか否かを、コントロールと比較して決定する工程とを含む。
【0153】
機能障害に関連するGPR26 GPCR遺伝子の突然変異した形態の検出は、GPR26 GPCRの過小発現、過剰発現、または改変された発現に起因する疾患の診断または疾患に対する感受性の診断に加えることができ、または規定することができる診断ツールを提供する。GPR26 GPCR遺伝子(制御配列を含む)に突然変異を保有する個体を、当技術分野では知られている様々な技術によって、DNAレベルで検出することができる。好ましくは、対象の領域(GPR26 GPCRを含む)を、PCRを用いて増幅し、その後、直接配列決定または他の通常用いられる方法によって突然変異を分析する。
【0154】
例えば、DNAを患者から単離し、GPR26のDNA多型パターンを決定してもよい。同定したパターンを、GPR26の過剰発現、過小発現、または異常発現に関連する疾患に罹患していることが知られている患者のコントロールと比較する。次いで、GPR26関連疾患に関連する遺伝子多型のパターンを発現する患者を、同定することができる。GPR26 GPCR遺伝子の遺伝学的解析は、当技術分野では知られているあらゆる技術によって行うことができる。例えば、個体をGPR26の対立遺伝子のDNA配列を決定することによって、RFLP(制限断片長多型)またはSSCP(一本鎖DNA高次構造多型)分析によってスクリーニングしてもよい。GPR26に対する遺伝子配列またはその発現を制御するあらゆる配列におけるDNA多型の存在を検出することによって、患者をGPR26の過剰発現、過小発現、または異常発現に関連する疾患に対する遺伝的素因を有すると同定することができる。
【0155】
次いで、このように同定した患者を、GPR26関連疾患の出現を妨げるために、または、より積極的にGPR26関連疾患の早期において疾患のさらなる出現または発症を妨げるために治療することができる。GPR26関連疾患は精神疾患である。
【0156】
本発明は、GPR26関連疾患に関連する患者の遺伝的多型パターンを同定するためのキットをさらに開示する。キットには、DNAサンプル採取手段、及び遺伝的多型パターンを決定するための手段が含まれ、次いで、これをコントロールのサンプルと比較して、GPR26関連疾患に対する患者の感受性を決定する。GPR26ポリペプチド及び/またはこのようなポリペプチドに対する抗体(もしくはそのフラグメント)を含む、GPR26関連疾患を診断するためのキットも提供する。
【0157】
診断用のアッセイは、記載した方法によって、GPR26 GPCR遺伝子における突然変異を検出することにより、精神疾患に対する感受性を診断または決定するためのプロセスを提供する。
【0158】
GPR26 GPCRポリペプチド及び核酸の存在を、サンプルにおいて検出することができる。従って、上記に列挙したような感染症及び疾患を、GPR26 GPCRポリペプチドまたはGPR26 GPCR mRNAのレベルが異常に低減または増大した対象に由来するサンプルから決定することを含む方法によって、診断することができる。サンプルは、発現のレベルまたはパターンにおける空間的または時間的変化を含めた、増大した、低減した、またはその他の方法で異常な、GPR26 GPCR発現に関連する疾患に罹患している、または罹患していることが疑われる生物体からの細胞または組織のサンプルを含むことがある。そのような疾患に罹患している、または罹患していることが疑われる生物体におけるGPR26の発現のレベルまたはパターンを、疾患の診断の手段として正常の生物体における発現のレベルまたはパターンと通常比較する。
【0159】
従って、概して、本発明は、サンプルを、核酸に特異的である核酸プローブの少なくとも1つと接触させ、前記サンプルを核酸の存在に対してモニターすることによって、サンプルにおけるGPR26 GPCR核酸を含む核酸の存在を検出する方法を含む。例えば、核酸プローブは、GPR26 GPCR核酸、またはその部分に特異的に結合することができ、その2つの間の結合が検出され、複合体自体の存在も検出され得る。さらに、本発明は、細胞サンプルを、ポリペプチドと結合することができる抗体と接触させ、前記サンプルをポリペプチドの存在に対してモニターすることによって、GPR26 GPCRポリペプチドの存在を検出する方法を包含する。これは、抗体とポリペプチドとの間で形成した複合体の存在をモニターすることによって、またはポリペプチドと抗体との間の結合をモニターすることによって実現すると便利であることがある。2つの実体間の結合を検出する方法は、当技術分野では知られており、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)、表面プラズモン共鳴法などが含まれる。
【0160】
発現の低減または増大は、例えば、PCR、RT-PCR、RNaseプロテクション、ノーザンブロッティング、及び他のハイブリダイゼーション法などのポリヌクレオチドの定量に対して当技術分野ではよく知られている方法の任意のものを用いて、RNAレベルで測定することができる。宿主に由来するサンプルにおけるGPR26 GPCRなどのタンパク質のレベルを決定するのに用いることができるアッセイ技術は、当業者にはよく知られている。このようなアッセイ方法には、ラジオイムノアッセイ、競合的結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、及びELISAアッセイが含まれる。
【0161】
本発明は、疾患、または精神疾患に対する感受性に対する診断用キットに関する。
【0162】
診断用キットは、GPR26 GPCRポリヌクレオチドもしくはそのフラグメント、相補的なヌクレオチド配列、GPR26 GPCRポリペプチドもしくはそのフラグメント、またはGPR26 GPCRポリペプチドに対する抗体を含む。
【0163】
染色体アッセイ
本発明のヌクレオチド配列は、染色体の同定にも役立つ。配列は、個々のヒトの染色体上の特定の位置を、特に標的にし、それとハイブリダイズすることができる。上記に記載したように、ヒトGPR26 GPCRは、染色体位置10q26.2〜q26.3にマッピングされることが見出されている。
【0164】
本発明による、関連の配列の染色体へのマッピングは、これらの配列を遺伝子に関連する疾患に相関させる上で重要な第一の工程である。配列が、正確な染色体の位置にマッピングされたら、染色体上の配列の物理的な位置を、遺伝子のマップデータに相関させることができる。このようなデータは、例えば、V.McKusick、Mendelian inheritance in Man(ジョンズホプキンス大学ウェルチ医学図書館からオンラインで入手可能)に見ることができる。遺伝子と、同じ染色体領域にマッピングされた疾患との間の関係を、次いで、リンケージ解析によって同定する(物理的に隣接する遺伝子の共遺伝)。
【0165】
罹患している個体と非罹患の個体間のcDNAまたはゲノムの配列における相違も決定することができる。いくらかの、または全ての罹患している個体に突然変異が観察されるがいかなる正常の個体で観察されない場合は、突然変異がその疾患の原因である可能性がある。
【0166】
予防及び治療の方法
本発明は、GPR26 GPCR活性の過剰量及び不十分量の両方に関連する異常状態を治療する方法を提供する。
【0167】
GPR26 GPCRの活性が過剰である場合は、いくつかの取組みが利用可能である。一取組みは、対象に、本明細書上記に記載した阻害化合物(アンタゴニスト)を、GPR26 GPCRに対するリガンドの結合を阻止することによって、または第2のシグナルを阻害することによって、活性化を阻害するのに有効な量の薬学的に許容できる担体と一緒に投与し、それによって異常な状態を軽減することを含む。
【0168】
別の一取組みでは、内因性のGPR26 GPCRと競合してリガンドに結合することができる可溶性の形態のGPR26 GPCRポリペプチドを投与してもよい。このような競合物質の典型的な実施形態は、GPR26 GPCRポリペプチドのフラグメントを含む。
【0169】
さらに別の一取組みでは、内因性のGPR26 GPCRをコードする遺伝子の発現を、発現阻止技術を用いて阻害することができる。知られているそのような技術は、内部で産生された、または別々に投与された、アンチセンスの配列の使用を伴う。例えば、O'Connor, J Neurochem(1991年)56巻、560頁、「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」、CRC Press、Boca Raton、フロリダ州(1988年)を参照されたい。あるいは、遺伝子とともに三重らせんを形成するオリゴヌクレオチドを供給してもよい。例えば、Leeら、Nucleic Acids Res(1979年)6巻、3073頁;Cooneyら、Science(1988年)241巻、456頁;Dervanら、Science (1991年)251巻、1360頁を参照されたい。これらのオリゴマーを、それ自体で投与してもよく、または関連のオリゴマーをin vivoで発現してもよい。
【0170】
GPR26 GPCR及びその活性の過小発現に関連する異常状態を治療するために、いくつかの取組みも利用可能である。一取組みは、対象に、GPR26 GPCRを活性化する化合物、すなわち上記に記載したアゴニストの治療上有効な量を、薬学的に許容できる担体と組み合わせて、それによって異常状態を緩和するために投与することを含む。あるいは、対象における関連の細胞によってGPR26 GPCRの内因性の生成をもたらすために、遺伝子治療を使用してもよい。例えば、本発明のポリヌクレオチドを、上記に記載するような複製欠損のレトロウイルスのベクターにおいて発現させるために操作してもよい。次いで、レトロウイルスの発現の構築物を単離し、パッケージング細胞が、今度は対象の遺伝子を含む感染性のウイルス粒子を生成するように、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含むレトロウイルスのプラスミドベクターで形質導入したパッケージング細胞中に導入してもよい。これらのプロデューサー細胞を、in vivoで細胞を操作し、in vivoでポリペプチドを発現させるために、対象に投与してもよい。遺伝子治療の概要については、「Gene Therapy and other Molecular Genetic-based Therapeutic Approaches」第20章(及びそこに引用される参考文献)「Human Molecular Genetics」T Strachan及びA P Read、BIOS Scientific Publishers Ltd (1996年)を参照されたい。
【0171】
製剤及び投与
可溶性の形態のGPR26 GPCRポリペプチドなどのペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニストのペプチドまたは小分子を、適切な製薬上の担体と組み合わせて配合してもよい。このような製剤は、治療上有効な量のポリペプチドまたは化合物、及び薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む。このような担体には、それだけには限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組合せが含まれる。製剤は、投与様式に適合しなければならず、当技術分野の技術の範囲内に十分ある。本発明は、本発明の前述の組成物の1つまたは複数の成分で満たした1つまたは複数の容器を含む、薬剤上の包装及びキットにさらに関する。
【0172】
本発明のポリペプチド及び他の化合物を、単独で、または治療用化合物などの他の化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0173】
薬剤組成物の全身投与の好ましい形態には、典型的には静脈内注射による注射が含まれる。皮下、筋肉内、または腹腔内など、他の注射経路を用いることができる。全身投与の代替の手段には、胆汁酸塩、またはフシジン酸、または他の界面活性剤などの浸透剤を用いた経粘膜投与及び経皮投与が含まれる。さらに、腸溶性製剤またはカプセル化製剤に適切に配合する場合は、経口投与も可能である。これらの化合物の投与は、軟膏、ペースト、ゲルなどの形態で、局所的及び/または限局的であってもよい。
【0174】
必要とされる投与量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、対象の状態の性質、及び担当の開業医の判断に依存する。しかし、適切な投与量は、対象の体重1kgあたり0.1〜100μgの範囲である。しかし、必要とされる投与量における広範囲の変動を、入手可能な様々な化合物、及び様々な投与経路の異なる効率を考慮に入れて予想しなければならない。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高い投与量を必要とすることが予想される。当技術分野では十分に理解されるように、これらの投与量レベルにおける変動を、最適化のための標準の経験的なルーチンを用いて調整することができる。
【0175】
上記で記載した通り「遺伝子治療」としばしば呼ばれる治療モダリティにおいて、治療で用いられるポリペプチドを、対象で内因性に産生することもできる。従って、例えば、対象からの細胞を、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドで操作して、ex vivoで、及び、例えばレトロウイルスのプラスミドベクターの使用によって、ポリペプチドをコードすることができる。次いで、細胞を対象中に導入する。
【0176】
薬剤組成物
本発明は、本発明のポリペプチド、ペプチド、または抗体と、任意選択で薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤(それらの組合せを含む)との組合せの治療上有効な量を投与することを含む、薬剤組成物を提供する。
【0177】
薬剤組成物は、ヒト及び獣医学の医薬において、ヒトまたは動物に使用するためであってよく、薬学的に許容できる希釈剤、担体、または賦形剤の任意の1つまたは複数を典型的に含む。治療用の使用のための許容できる担体または希釈剤は、製薬の技術分野ではよく知られており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro編集、1985年)に記載されている。製薬上の担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図されている投与経路、及び標準の製薬上の慣例に関して選択することができる。薬剤組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤として、またはそれに加えて含むことができる。
【0178】
保存剤、安定化剤、色素、及び、さらには着香料を、薬剤組成物で提供してもよい。保存料の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。抗酸化剤及び懸濁化剤も用いてもよい。
【0179】
様々な送達系に応じて、異なる組成物/製剤が必要とされることがある。
【0180】
必要に応じて、薬剤組成物を、吸入によって、坐剤または膣坐薬の形態で、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、もしくは散布剤の形態で局所に、皮膚パッチ剤の使用によって、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形態で経口的に、または単独でもしくは賦形剤との混合のいずれかでカプセル剤もしくは卵形剤で、または着香料もしくは着色料を含むエリキシル剤、液剤、もしくは懸濁剤の形態で投与することができ、あるいは、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下に、非経口的に注射することができる。非経口投与に対しては、組成物は溶液を血液と等張にするのに十分な塩または単糖類などの他の物質を含んでもよい滅菌水溶液の形態で用いると最良であり得る。口腔または舌下の投与に対しては、組成物を、従来の様式で製剤することができる錠剤またはトローチ剤の形態で投与することができる。
【0181】
ワクチン
本発明の別の一実施形態は、哺乳動物に免疫反応を誘発するための方法に関し、その方法は、前記動物を精神疾患から保護するために、抗体及び/またはT細胞の免疫反応を生成するのに十分な、GPR26 GPCRポリペプチド、またはそのフラグメントを哺乳動物に接種することを含む。
【0182】
本発明のさらに別の一実施形態は、哺乳動物に免疫反応を誘発するための方法に関し、その方法は、そのような免疫学的反応を誘発して前記動物を疾患から保護するための抗体を生成するために、in vivoでGPR26 GPCRポリヌクレオチドの発現を指示するベクターによってGPR26 GPCRポリペプチドを送達することを含む。
【0183】
本発明のさらなる一実施形態は、免疫学的な/ワクチンの製剤(組成物)に関し、製剤は、哺乳動物の宿主中に導入した場合に、その哺乳動物中にGPR26 GPCRポリペプチドに対する免疫学的反応を誘発し、組成物はGPR26 GPCRポリペプチドまたはGPR26 GPCR遺伝子を含む。ワクチン製剤は、適切な担体をさらに含んでいてよい。
【0184】
GPR26 GPCRポリペプチドは、胃で分解することがあるので、非経口的に(皮下、筋肉内、静脈内、皮下などの注射を含む)投与することが好ましい。非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、及び製剤を受容者の血液と等張にする溶質を含んでもよい水性及び非水性の滅菌注射液;並びに懸濁化剤または増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、密封したアンプル及びバイアルなどの、単位投与量または多回投与の容器で提示してもよく、使用直前に滅菌の液体担体の添加だけを必要とする凍結乾燥条件で保存してもよい。ワクチン製剤は、水中油型系及び当技術分野では知られている他の系など、製剤の免疫原性を増強するためのアジュバント系も含んでもよい。投与量は、ワクチンの特定の活性に依存し、ルーチンの実験によって容易に決定することができる。
【0185】
ワクチンを、本発明の2つ以上のポリペプチドまたはペプチドから調製してもよい。
【0186】
有効成分として免疫原性のポリペプチドまたはペプチドを含むワクチンの調製物は、当業者には知られている。典型的には、そのようなワクチンを、液体の溶液または懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製し、注射前の液体における溶液または懸濁液に適切な固体の形態として調製してもよい。調製物を乳化してもよく、またはタンパク質をリポソームにカプセル化してもよい。免疫原性の有効成分を、薬学的に許容でき、有効成分と適合性である賦形剤と混合することが多い。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びこれらの組合せである。
【0187】
さらに、所望により、ワクチンは、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、及び/またはワクチンの有効性を増強するアジュバントなどの少量の補助剤を含んでもよい。有効であることがあるアジュバントの例には、それだけには限定されないが、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-nor-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、nor-MDPと呼ばれる)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEと呼ばれる)、並びに細菌からの3つの抽出物、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレート、及び細胞壁スケルトン(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween80乳剤中に含むRIBIが含まれる。
【0188】
アジュバント及び他の物質のさらなる例には、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型乳剤、水中油型乳剤、ムラミルジペプチド、菌体内毒素、リピドX(lipid X)、コリネバクテリウムパルブム(プロピオノバクテリウムアクネス(propionobacterium acnes))、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミソール、DEAE-デキストラン、ブロック共重合体、または他の合成のアジュバントが含まれる。このようなアジュバントは、Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.、Rahway、ニュージャージー州)、またはフロイントの不完全アジュバント及び完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、ミシガン州)など、様々な供給源から市販されている。
【0189】
典型的には、Amphigen(水中油型)、Alhydrogel(水酸化アルミニウム)、またはAmphigenとAlhydrogelとの混合物などのアジュバントを用いる。水酸化アルミニウムだけがヒトの使用に認可されている。
【0190】
免疫原とアジュバントの比率は、両方が有効量で存在する限り、広範囲にわたって変化することができる。例えば、水酸化アルミニウムは、ワクチン混合物約0.5%の量で(Al2O3ベースで)存在することができる。0.2から200μg/ml、好ましくは5から50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの範囲における最終濃度の免疫原を含むようにワクチンを配合すると好都合である。
【0191】
ワクチンを、慣例的には、非経口に、注射によって、例えば、皮下または筋肉内のいずれかで投与する。他の投与様式に適するさらなる製剤には、坐剤、及び場合によっては経口の製剤が含まれる。坐剤に関しては、伝統的な結合剤及び担体には、例えば、ポリアルキレングリコール、またはトリグリセリドが含まれていてよく、このような坐剤は、有効成分を0.5%から10%、好ましくは1%から2%の範囲で含む混合物から形成されていてよい。経口の製剤には、例えば、製剤グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、通常使用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末剤の形態をとり、有効成分10%から95%、好ましくは25%から70%を含む。ワクチン組成物が凍結乾燥されている場合は、凍結乾燥した材料を投与前に、例えば懸濁剤として、再構成してもよい。再構成は、バッファーで行うのが好ましい。
【0192】
本発明のポリペプチドを、中性の形態または塩の形態として、ワクチン中に配合してもよい。薬学的に許容できる塩には酸付加塩(ペプチドの遊離のアミノ基と形成される)が含まれ、酸付加塩は、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、及びマレイン酸などの有機酸と形成される。遊離のカルボキシル基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、及びプロカインなどの有機塩基に由来してもよい。
【0193】
投与
典型的には、医師が、個々の対象に最も適する実際の投与量を決定し、それは年齢、体重、及び特定の患者の反応で変化する。以下の投与量は、平均的な症例の例示である。もちろん、より高い、またはより低い投与量範囲が値する個々の場合が存在し得る。
【0194】
本発明の薬剤組成物及びワクチン組成物を、直接注射によって投与してもよい。組成物を、非経口の、粘膜の、筋肉内の、静脈内の、皮下の、眼内の、または経皮の投与のために配合してもよい。典型的には、各タンパク質を、0.01から30mg/kg体重、好ましくは0.1から10mg/kg、より好ましくは0.1から1mg/kg体重の投与量で投与することができる。
【0195】
「投与した」の語は、ウイルス性または非ウイルスの技術による送達を含む。ウイルスの送達のメカニズムには、それだけには限定されないが、アデノウイルスのベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)のベクター、ヘルペスウイルスのベクター、レトロウイルスのベクター、レンチウイルスのベクター、及びバキュロウイルスのベクターが含まれる。非ウイルスの送達メカニズムには、脂質が媒介する形質移入、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、陽イオン性表面両親媒性物質(CFA)、及びそれらの組合せが含まれる。このような送達メカニズムのための経路には、それだけには限定されないが、粘膜、鼻腔、経口、非経口、消化管、局所、または舌下の経路が含まれる。
【0196】
「投与した」の語には、それだけには限定されないが、例えば、点鼻薬もしくは吸入用エアロゾルとして、または摂取可能な溶液として、粘膜の経路による送達;送達が、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下の経路などの摂取可能な形態による非経口の経路が含まれる。
【0197】
「同時投与した」の語は、例えば、本発明のポリペプチドとアジュバントなどのさらなる実体との各々の投与の部位及び時間が、免疫系の必要な変調が実現されるようであることを意味する。従って、ポリペプチド及びアジュバントを、同じ時間の瞬間に、同じ部位に投与してもよく、ポリペプチドを、アジュバントと異なる時間に、異なる部位に投与すると有利でもあり得る。ポリペプチドとアジュバントとは、同じ送達ビヒクルにおいて送達してもよく、ポリペプチドと抗原とが連結し、及び/もしくは非連結で、並びに/または遺伝的に連結し、及び/もしくは非連結でもよい。
【0198】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ヌクレオチド、抗体と、任意選択でアジュバントとを、宿主の対象に、単回投与として、または多回投与で、別々に投与しても、または同時投与してもよい。
【0199】
本発明のワクチン組成物及び薬剤組成物を、注射(非経口、皮下、及び筋肉内注射を含む)、鼻腔内、粘膜、経口、膣内、尿道、または眼内投与など、数々の異なる経路によって投与してもよい。
【0200】
本発明のワクチン組成物及び薬剤組成物を、非経口的に、注射によって、例えば、皮下または筋肉内のいずれかで、慣習的に投与してもよい。他の投与様式に適するさらなる製剤には、坐剤、及び場合によって経口製剤が含まれる。坐剤では、伝統的な結合剤及び担体は、例えば、ポリアルキレングリコール、またはトリグリセリドを含むことがあり、このような坐剤は、有効成分を0.5%から10%の範囲で含む混合物から形成してもよく、1%から2%でもよい。経口製剤には、例えば、製剤グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの通常使用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末剤の形態をとり、有効成分10%から95%、好ましくは25%から70%を含む。ワクチン組成物が凍結乾燥されている場合は、凍結乾燥した材料を投与前に、例えば懸濁剤として、再構成してもよい。再構成は、バッファーで行うのが好ましい。
【実施例】
【0201】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって、さらに記載する。
【0202】
<実施例1.トランスジェニックGPR26ノックアウトマウス:GPR26遺伝子ターゲティングベクターの構築>
GPR26遺伝子を含むPACを、コード配列の一部に由来する放射標識したプローブを用いてマウスPACライブラリーから同定した。79kbのギャップのあるマウスゲノムのコンティグを、GeneWalker(Clontech)に類似の、in-house制限部位アンカーPCR法を用いて構築した。さらなるバイオインフォマティクスの研究により、コンティグのサイズを182kbに増大した。このコンティグはターゲティングベクター中にクローニングするための相同のアームをデザインするのを可能にする、十分なフランキング配列の情報を提供するものであった。
【0203】
マウスGPR26遺伝子には、3個のコーディングエキソンがある。ターゲティング戦略は、7tmのコード領域の578個の塩基を含む、第1のコーディングエキソンの大部分を削除するようにデザインされている。削除される領域に隣接する、1.6kbの5'相同のアーム、及び4.0kbの3'相同のアームを、PCRによって増幅し、フラグメントをターゲティングベクター中にクローニングする。アームを増幅するために用いる各オリゴヌクレオチドプライマーの5'末端を、レポーター/選択カセットのいずれかの末端に位置するベクターのポリリンカーのクローニング部位に適合性があり、それ自体にアームのない、レアカット制限酵素に対して異なる認識部位を含むように合成する。GPR26の場合は、プライマーを、Notl/Spelの5'アームクローニング部位及びAscl/Fselの3'アームクローニング部位を有する、以下のプライマーの表に列挙するようにデザインする。
【0204】
アームのプライマー対(5'armF/5'armR)及び(3'armF/3'armR)の他に、GPR26遺伝子座に特異的なさらなるプライマーを、以下の目的でデザインする:単離した推定上の標的クローンにおいて、標的遺伝子座のサザン分析を可能にする、各アームの外側の、及びそれを超えて延長する非反復のゲノムDNAの2本の短い150〜300bpフラグメントを増幅するための、5'及び3'プローブプライマー対(5'prF/5'prR及び3'prF/3'prR);ベクター特異的なプライマー、この場合はasc350とともにマルチプレックスPCRで使用する場合に野生型、ヘテロ接合性、及びホモ接合性のマウス間の区別を可能にする、マウスの遺伝子型解析用プライマー対(hetF及びhetR);並びに、最後に、5'アーム領域の末端の上流にアニーリングし、ベクターの5'末端に特異的なプライマー、この場合はDR1と対になった場合にターゲティング事象に特異的な1.7kbのアンプライマーを生成するターゲティング用スクリーニングプライマー(5'scr)。このアンプライマーは、望ましいゲノムの改変が生じ、正確にターゲティングされた細胞の、ランダムに組み込まれたベクターのコピーを含むクローンのバックグラウンドからの区別を可能にする場合に、細胞からのテンプレートDNAに由来し得るのみである。これらのプライマーの位置、及びターゲティング戦略で用いるGPR26遺伝子座の領域のゲノム構成を、図6(及び配列番号6)に示す。
【0205】
GPR26プライマー配列(それぞれ配列番号7〜19)
mus2Maugh 5'prF(配列番号7) TGGTGCTTAGCATCTGTCAAGGTGTAG
mus2Maugh 5'prR(配列番号8) CTACACTGTATTTCAGAGCCTGGTGAG
mus2Maugh 5'scr(配列番号9) AGGCTCTGAAATACAGTGTAGGTGGTC
mus2Maugh 5'armF(配列番号10) aaagcggccgcGGAGGTAGCATCCCATAGAAAGGCAAG
mus2Maugh 5'armR(配列番号11) tttactagTTGGACAGCAGCGACACGCCGATAGTG
mus2Maugh 3'armF(配列番号12) aaaggcgcgccTGTTGGTGGACATACACCCCAGGTGAG
mus2Maugh 3'armR(配列番号13) tttggccggccGGTCCCAGTAACAGCAGCTCCTGAGTC
mus2Maugh 3'prF(配列番号14) AGCCAGAGAACCTGCCTGCTTGGTCTC
mus2Maugh 3'prR(配列番号15) ACTCGCAGATGAGGACACTGGGAACAG
mus2Maugh het(配列番号16) GCTCGGCTTCCACCAGCTATATGCCTC
mus2Maugh hetR a350(配列番号17) ACTCACCTGGGGTGTATGTCCACCAAC
Asc350(配列番号18) GTCGTGACCCATGGCGATGCCTGCTTG
DR1(配列番号19) CATGCCGCCTGCGCCCTATTGATCATG
【0206】
ホモロジーアームの位置を、GPR26遺伝子を機能的に障害するように選択する。削除するGPR26領域を、GPR26遺伝子と同じ配向で配列された促進されているネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子からなる選択カセットの上流の内因性の遺伝子発現レポーター(フレーム非依存のlacZ遺伝子)からなる非相同の配列で置換する場合に、ターゲティングベクターを調製する。
【0207】
5'及び3'のホモロジーアームをターゲティングベクター中にクローニングした後、標準の分子生物学の技術を用いて、高度に純粋な大型のDNA調製物を作製する。新たに調製した内毒素を含まないDNA20μgを、アンピシリン耐性遺伝子と細菌の複製開始点との間のベクターのバックボーンにおける特有の部位に存在する、別のレアカット制限酵素であるSwalで制限する。次いで、線状化したDNAを沈澱させ、リン酸緩衝食塩水100μlに再懸濁し、電気泳動に備える。
【0208】
電気泳動24時間後、形質移入した細胞を、ネオマイシン200μg/mlを含む培地で9日間培養する。クローンを拾って96ウェルのプレート中に入れ、複製させ、増殖させ、その後PCR(上記に記載するように5'scr及びDR1プライマーを用いて)によってスクリーニングして、内因性のGPR26遺伝子とターゲティング構築物との間に相同組換えが起きたクローンを同定する。ポジティブクローンを、1〜5%の割合で確認することができる。これらのクローンを増殖させて、レプリカを凍結させ、全て標準の手順を用いて、十分に高品質のDNAを、上記に記載した通りに調製した外部の5'及び3'のプローブを用いてターゲティング事象のサザンブロットの確認用に調製する(Russら、Nature、2000年3月2日、404巻(6773)、95〜99頁)。診断用の制限酵素で消化したDNAのサザンブロットを外部のプローブでハイブリダイズした場合、相同的にターゲティングされたES細胞のクローンを、突然変異のバンド及び非改変の野生型のバンドの存在によって検証する。例えば、5'プローブでは、BamHI消化したゲノムDNAから8.7kbの野生型のバンドと2.4kbの目標のバンドが得られ、3'プローブでは、BamHIが切断するDNAから、8.7kbの野生型バンドと5.5kbの標的のバンドが得られる。
【0209】
<実施例2.トランスジェニックGPR26ノックアウトマウス:GPR26欠損マウスの産生>
メス及びオスC57BL/6マウスを交配させ、妊娠3.5日目に胚盤胞を単離する。選択したクローンから胚盤胞1個あたり10〜12個の細胞を注射し、7〜8個の胚盤胞を、偽妊娠したメスF1の子宮に移植する。いくつかの高レベルの(最高100%)のアグーチのオス(アグーチの毛色は、標的クローンから遺伝した細胞の寄与を示している)を含むキメラの仔の同腹仔が生まれる。これらのキメラのオスを、MF1及び129マウスのメスと交配させ、生殖細胞系伝達を、それぞれ、アグーチの毛色によって、及びPCRの遺伝子型解析によって決定する。
【0210】
PCRの遺伝子型解析を、第3のベクター特異的なプライマー(asc350)とともにプライマーhetF及びhetRを用いて、溶解したテールクリップ(tail clip)上で行う。このマルチプレックスPCRは、プライマーhetF及びhetRから、野生型の遺伝子座(存在する場合)から増幅され、236bpのバンドが得られる。hetFに対する部位はノックアウトマウスでは欠失しており、ゆえにこの増幅は標的の対立遺伝子から脱落する。しかし、asc350プライマーは、3'アームのちょうど内側の領域にアニーリングするhetRプライマーと組み合わさって、標的遺伝子座から379bpのバンドを増幅する。従って、このマルチプレックスPCRは、以下のように同腹仔の遺伝子型を明らかにする:野生型のサンプルは単一の236bpのバンドを表し;ヘテロ接合性のDNAサンプルは236bpと379bpに2本のバンドを生じ、ホモ接合性のサンプルは標的特異的な379bpのバンドだけを示す。
【0211】
<実施例3.生物学的結果>
I)遺伝子発現パターン
A)RT-PCR
ヒトRT-PCRのパネルでは、遺伝子は脳のみで発現している。マウス脳RT-PCRのパネルでは、遺伝子は、海馬、線条体、視床、前脳、皮質、橋、及び視床下部を含むCNSで広範に発現している。
【0212】
B)LacZ染色
代表的な組織切片を大器官から作製する。固定液及び染色液が浸透するように、小器官全体及び管をスライスして開く。組織をPBS(リン酸緩衝食塩水)で完全にすすいで、血液または腸内容物を除去する。組織を固定液(2%ホルムアルデヒド、0.2%グルタルアルデヒド、0.02%NP40、1mM MgCl2、デオキシコール酸ナトリウム0.23mMを含むPBS)に、30〜45分間放置する。その後PBSで5分間3回洗浄し、組織を30℃でXgal染色液(PBS中4mMフェロシアン化カリウム、4mMフェリシアン化カリウム、2mM MgCl2、1mg/mlX-gal)に18時間放置する。組織を、PBSで3回洗浄し、4%ホルムアルデヒドで24時間後固定し、再度PBS洗浄し、その後70%エタノールに保存する。
【0213】
GPR26は、大脳皮質、海馬、特にCA3領域、扁桃体、嗅覚皮質、視床下部、外側中隔、及び腹側被蓋野で発現することが見出された。この発現パターンは、精神疾患、認知、及び記憶における重要性を示唆するものである。
【0214】
II)行動
全動物を、餌と水を自由に摂取させ、午前7時に点灯する12時間光/12時間暗闇の光-暗闇サイクル下に収容した。日周性効果を回避するために、動物をセット時刻に試験した。
【0215】
A)POPMAP試験
この試験は、改良されているIrwinの観察スクリーニングであり、従って当業者に周知である。ノックアウトマウスは、野生型のコントロールマウスに比べて歩行運動活性の低減を示すことが観察された(図2を参照されたい)。
【0216】
B)Laboras
Laboras(Laboratory Animal Behaviour Observation Registration and Analysis System)システムは、Metris BV(オランダ)により市販されている自動化行動装置である。Laborasは、振動のパターンを用いて、行動を自動的に記録し定量化する。全動物を、餌と水を自由に摂取させ、午前7時に点灯する12時間光/12時間暗闇の光-暗闇サイクル下に収容する。日周性効果を回避するために、動物をセット時刻に試験する。マウスに餌と水を自由に摂取させ、最初の1時間この装置に放置する。
【0217】
Laborasでは、動物は歩行運動活性の低減を示し(移動距離及び歩行持続時間)、付随行動(クライミング(climbing)及びグルーミング)に変化はなく、観察された突然変異の効果は、協調または筋肉強度の低減の結果ではないことを示唆していた。図3a及び図3bを参照されたい。
【0218】
C)ロータロッド
運動協調性及びバランスを、5分間の経過にわたって4〜40rpmまでの一定速度で加速するロータロッド上の成績によって測定する。マウスをロータロッド上に残し、マウスがロッドから落下するか、または10分間(600秒)が経過するまで試験を行う。落下の潜時を記録する。試験の間に10分間の静止のあるセッションで、各マウスを3回試験する。ロータロッド試験では、ノックアウトマウスと野生型マウスの間に有意差は観察されなかった。
【0219】
D)握力
動物の筋肉強度を、Bioseb握力装置を用いて決定する。この装置は、調節可能なトラフ(trough)、及び三角形の真鍮環のある押-引ひずみゲージからなり、動物の前足が真鍮環を握り、グリップが壊れるまで動物を尾に対して引っ張る。握力をgで定量化する。
【0220】
ノックアウトマウスと野生型のコントロールとの間で、握力における有意差は観察されなかった。
【0221】
このデータは、歩行運動活性に観察された低減は、協調または筋肉強度の低減の結果ではないと思われることをさらに示唆している。このデータ及び発現パターンは、歩行運動活性における低減は、CNSに由来することを示唆している。
【0222】
E)Porsolt強制水泳試験
Porsolt強制水泳試験は、動物は通常、有害刺激(深い水)から回避しようと努力するという仮定に基づいた、広く用いられているうつ病モデルである。有害刺激が回避不能である場合、マウスは、最終的には回避しようとするのを止め、不動の姿勢をとる。回避しようとするのを初期に止めることは、ストレス誘発性のうつ病の類似とみなされる。抗うつ薬の治療により、回避行動は回復する。マウスを、水を満たした透明なプラスチック製の円筒(直径19cm×高さ30cm)に、足が円筒の底部に接触できず、マウスが上部から逃げられないように放置する。マウスを装置に6分間放置し、最初の2分間に動物を慣らし、次の4分では静止時間の累積合計及び最初の休止までの潜時を記録する。
【0223】
突然変異のマウスは、野生型のコントロールよりも静止が少なかった(wt=163.26±13.9、KO=123.64±9.1、t検定P=0.028)。このデータは、GPR26ノックアウトマウスは、野生型マウスに比べてストレスの多い環境により上手く対処し、うつ病をそれほど示さないことを示唆している(図4を参照されたい)。
【0224】
F)フェンシクリジンに対する反応
動物にフェンシクリジン4mg/kgを注射し、Laboras装置に1時間放置し、行動を定量化した。
【0225】
この試験において、フェンシクリジンは歩行運動活性における低減を誘発した。これは、ステレオタイプの行動における増大の結果と解釈された。ノックアウトマウスでは、フェンシクリジンに対する反応は逆転し、ノックアウトマウスは、おそらくステレオタイプの行動における低減の結果、フェンシクリジンの投与後に歩行運動活性のわずかな増大を示した。薬物と遺伝子型との間の相互作用は、統計的に有意であった(P=<0.001)。このデータは、GPR26ノックアウトマウスは、フェンシクリジンの精神異常発現効果に対して耐性であることを指摘するものである(図5を参照されたい)。
【0226】
<実施例4.オープンフィールド>
オープンフィールドは、大型で正方形の(60cm×60cm)Perspex製のアリーナを含む。この試験は、明るい光線の下で行う。これは、歩行運動活性、探索動因、新奇恐怖、広場恐怖、及びマウスにおける他の局面の不安または恐怖の組合せを測定する。2つの別々のオープンフィールド試験では、メスKOマウスは、中央ゾーンでより多くの時間を費やし、より長く静止する傾向があることが確認された。これは、マウスは、不安の表現型を示す「フリージング」行動を示すことを指摘するものである。
【0227】
図8は、野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)のオープンフィールドの結果を示すグラフである(nb、Z3=中央ゾーン)。
【0228】
<実施例5.高架式ゼロ迷路>
ゼロ迷路は、地上70cmの高架の環状のプラットホーム(幅3cm及び内径55cm)からなる。これは、2つの向かい合った、密閉された四分円(高さ21.5cmの黒色の壁のある)と、連続の探索を可能にする2つのオープンの四分円とに分けられている。ゼロ迷路は、マウスが新奇な環境を探索する傾向と、高さ及び開放のさらなる構成成分のある明るく照らされているオープンフィールドの有害な性質との間の葛藤を活用するものである。メスKOマウスは、オープンアームで費やす時間が有意に少なく、クローズドアームで静止する時間が多いことが確認された。さらに、KOマウスでは長距離の移動に有意な低減が確認された。このデータは、KOマウスに不安の表現型が増大したことを示すものである。図9は、野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)の高架式ゼロ迷路の結果を示すグラフである(nb、P.時間=アームで費やした時間)。
【0229】
<実施例6.高架式十字迷路>
十字迷路は、2つのオープンアーム及び2つエンクローズドアーム(高さ21.5cmの黒い壁のある)、並びに1つの中央プラットホーム(6×6cm)からなる。装置は、地上70cmの高架である。十字迷路は、マウスが新奇な環境を探索する傾向と、高さ及び開放のさらなる構成成分のある明るく照らされているオープンフィールドの有害な性質との間の葛藤を活用するものである。KOマウスは、オープンアームで費やす時間が有意に少なく、有意に少ない覗き込み数を生成することが確認された。KOマウスが静止に費やす時間が有意に多いことも観察された。これらのデータは、KOマウスにおける不安の増大した表現型を示すものである。図10は、野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)に対する高架式十字迷路の結果を示すグラフである。
【0230】
まとめると、上記の試験(オープンフィールド、高架式ゼロ迷路、及び高架式十字迷路)からのデータは、GPR26 KOマウスは不安の表現型を示すものである。これは、GPR26に対するアゴニストは、抗不安薬効果を発揮する可能性があることを示唆している。
【0231】
<実施例7.MK-801誘発性の自発運動増加>
この試験では、マウスにMK-801(0.3mg/kg)を注射する。MK-801は、非競合性のNMDAチャンネル遮断薬である。これは、より低い投与量で歩行運動活性を増大することが知られている(より高い投与量ではステレオタイプの行動が増大する)。この試験からのデータは、常同症における低減よりもむしろ、NMDAチャンネル遮断に対する歩行運動反応の増大を支持するものである(図11)。このデータは、KOマウスでは、本発明者らが中隔側坐核においてNMDAチャンネル遮断薬によって放出されるドーパミンの増大を観察したことを示している。このデータは、これらのマウスにおいて心因性の表現型に翻訳され、GPR26のアゴニストは抗精神病薬効果を発揮する可能性があることを示唆している。あるいは、アンタゴニストは、パーキンソン病またはADHDに有用性がある可能性がある。図11は、野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)のMK-801が誘発する自発運動増加の結果を示すグラフである。
【0232】
<実施例8.水迷路>
この試験では、マウスを、25±1℃の水を満たした1mの円形プールに放置する。水浸したプラットホームを見つけるように、マウスを4日にわたって訓練する。平均スピード(平均スピードから静止に費やした時間を引いたもの)、及び静止に費やした時間は、有意に低減し、KOグループの動物ではそれぞれ増大する(図12)。これは、KOマウスは歩行運動の欠損を表すことを示唆している。
【0233】
不安試験(高架式十字迷路、高架式ゼロ迷路):静止に費やした時間、及び移動した距離に関するこれらの試験で得られたデータ(KOグループにおいてそれぞれ増大及び低減)は、KOマウスは歩行運動の欠損を表すことを示し得るものである(図9及び10)。
【0234】
まとめると、これらのデータは、GPR26で作用するアゴニストは、パーキンソン病、ハンチントン病などの運動障害の範囲において有用性があり得ることを示すものである。
【0235】
<実施例9.行動:プレパルス阻害>
プレパルス阻害(PPI)は、大音声の(115dB)刺激によって喚起される驚愕反応が、驚愕刺激の100ms前に提示されるずっと静かな短い音声刺激(バックグラウンドを3〜10dB上回る)によって阻害されることによって観察される現象である。このいわゆるプレパルス阻害は、統合失調症患者で障害され、精神運動のゲーティングにおける欠損を反映することがある。
【0236】
PPIは、げっ歯動物において喚起され、アンフェタミン、アポモルフィン、フェンシクリジン、及びMK801などの心因性の薬及び精神異常発現薬によって障害され得る。この障害は、ハロペリドール、クロザピン、及びオランザピンなどの抗精神病薬によって逆転され得る。(Bakshi VP、Swerdlow NR、及びGeyer MA、Clozapine antagonizes phencyclidine-induced deficits in sensorimotor gating of the startle response.、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1994年、271巻、787〜794頁)。従って、PPIの動物モデルは、構築及び予測的両方の妥当性とともに存在する。PPIに対する薬物または突然変異のあらゆる効果は、統合失調症の治療における潜在的な有用性を強く示すものである。(McGhie A及びChapman J.、Disorders of attention and perception in early schizophrenia.、Br. J. Med. Psychol.、1961年、34巻、103〜116頁、Braff DL、Geyer MA、及びSwerdlow NR.、Human studies of prepulse inhibition of startle:normal subjects, patient groups, and pharmacological studies.、Psychopharm.、2001年、156巻、234〜258頁)。
【0237】
動物を、餌と水を自由に摂取させ、午前7時に点灯する12時間光/12時間暗闇の光-暗闇サイクル下に収容し、日周性効果を回避するために、セット時刻に試験した。マウス(野生型のコントロールと対応する年齢をマッチさせた、オスとメス各6匹のKOマウス)を、驚愕チャンバー(San Diego Instruments、San Diego、カリフォルニア州、米国)に放置する。各システムは、小型ファンで換気し、天井に装着した電球によって照射する、音声を減弱したチャンバーからなる。チャンバーは、枠に装着した透明のアクリル製保持円筒を含んでいる。円筒及び枠は、枠の各隅の下に配置した4個のネジによっておよそPlexiglas製のベースに上げられている。囲いの天井に装着した小型スピーカーを通して、音響刺激を送達する。枠の下に装着した圧電性の加速度計によって、驚愕反応が伝えられる。出力シグナルをデジタル化し、整流し、San Diego Instruments Startle Reflexソフトウエアを有するPC上の連続する1ミリ秒(ms)の読みとして記録する。驚愕刺激は、長さ50msの、115dBパルスの広範なスペクトルのノイズである。プレパルス刺激はバックグラウンドを3、7、及び10dB上回るもので、驚愕刺激の100ms前に提示された。刺激は、偽無作為化の様式で提示された。
【0238】
動物を、ドーパミンアゴニストであるアンフェタミンの存在下及び非存在下で、PPI欠損に対して繰り返し試験して、この神経伝達物質系内のあらゆる変化を評価する。
【0239】
別々の一団の動物を、非選択性のNMDA受容体アンタゴニストであるジゾシルピン(MK801)の存在下及び非存在下で、PPI欠損に対して繰り返し試験して、他の神経伝達物質系の変化を評価する。げっ歯動物における、これらの薬物によるPPIに対する障害効果に対する拮抗作用は、潜在的な抗精神病の性質の証拠として理解されることが多い(Geyer MA、Mcllwain KL、及びPaylor R.、Mouse genetic models for prepulse inhibition:an early review.、Mol Psych.、2002年、7巻、1039〜1053頁)。
【0240】
結果を図13に示す。アンフェタミンで処理しなかったKO動物は、WT動物に比べてPPI反応においていかなる変化も示さない。アンフェタミンによってPPI反応に対して引き起こされた欠損は、アンフェタミン処理したWT動物と比べて、オスKO動物で増悪した。この効果は、バックグラウンドを7dB上回ったところで最も明白であったが、遺伝子型の効果はバックグラウンドを10dB上回ったところでも見られた。
【0241】
上記の明細書で言及した出版物は全て、参照として本明細書に組み入れられる。本発明の、記載した方法及び系統の、様々な修正形態及び変形形態は、当業者であれば、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関連して記載してあるが、請求される本発明は、このような特定の実施形態に、必要以上に制限されてはならないことを理解すべきである。実際、分子生物学または関連する分野の技術者には明らかである、本発明を実行するために記載されている様式の様々な修正形態は、以下の特許請求の範囲内にあることが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】ヒトGPR26のヒトGPR78とのアラインメント(同一性=170/327(51%)、ポジティブ=222/327(67%)、ギャップ=4/327(1%))。
【図2】GPR26ノックアウトマウスは、野生型のコントロールマウスと比較して歩行運動活性の低減を示すPOPMAP試験の結果。
【図3a】野生型のコントロールマウスと比較して、GPR26ノックアウトマウスにおける歩行運動活性(歩行運動継続時間)の低減を示すLABORAS試験の結果。
【図3b】野生型のコントロールマウスと比較して、GPR26ノックアウトマウスにおける歩行運動活性(移動距離)の低減を示すLABORAS試験の結果。
【図4】Porsolt強制水泳試験の結果。
【図5】フェンシクリジンに対する、GPR26ノックアウトマウス及び野生型マウスの反応。
【図6】ターゲティング戦略で用いられるプライマーの位置を示す、マウスGPR26のゲノム配列(配列範囲1〜6731、配列番号6としても含まれる)のゲノム配列。
【図7】ノックアウトのベクター。
【図8】野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)に対するオープンフィールドの結果(Z3=中央ゾーン)。
【図9】野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)に対する高架式ゼロ迷路の結果(P時間=アームで費やした時間)。
【図10】野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)に対する高架式十字迷路の結果。
【図11】野生型(WT)マウスと比較した、ノックアウト(KO)に対するMK-801誘発性の自発運動増加の結果。
【図12】モリスの水迷路で観察された水泳スピード及び静止時間。
【図13】*は同等のビヒクルで処理したグループと比較して、薬物処理の有意な(p<0.05)効果を示し(対応のあるT検定)、+は同等の野生型グループと比較して、遺伝子型の有意な(p<0.05)効果を示す(反復測定ANOVA)PPI阻害のデータ。
【0243】
配列番号1は、ヒトGPR26のcDNA配列。
配列番号2は、配列番号1に由来するオープンリーディングフレーム。
配列番号3は、ヒトGPR26のアミノ酸配列。
配列番号4は、マウスGPR26に対するcDNAのオープンリーディングフレーム。
配列番号5は、マウスGPR26のアミノ酸配列。
配列番号6は、(図6でも示す)5'アームから3'アームまでのマウスGPR26のゲノム配列。
配列番号7〜19は、ターゲティングベクターの構築及び分析に用いられるマウスGPR26プライマーのヌクレオチド配列、並びに標的の遺伝子座を含む物質を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補物質がGPR26の活性に影響を及ぼすか否かを決定する工程を含む、精神疾患の治療に適した物質の同定方法。
【請求項2】
前記物質がGPR26の活性を阻害するアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物質がGPR26の活性を増強するアゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
GPR26が、本明細書において配列番号3もしくは配列番号5、またはこれらの配列と少なくとも70%の配列同一性を有する配列として同定されるポリペプチドを含む、またはこのポリペプチドをコードする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
GPR26が、本明細書において配列番号3、配列番号5、またはこれらの配列と少なくとも70%の同一性を有する配列として同定されるポリペプチドからなる、またはこのポリペプチドをコードする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
精神疾患が、不安障害、精神病に関連する疾患、または抑うつ障害である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
候補物質がGPR26の活性に影響を及ぼすか否かを決定するために、GPR26ポリペプチドを候補物質と接触させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
候補物質を、GPR26ポリペプチドを発現する細胞と接触させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
候補物質を、GPR26ポリペプチドを発現する非ヒト動物に投与する工程と、前記動物が行動の変化を示すか否かを決定する工程とを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
非ヒト動物が機能的GPR26ポリペプチドを発現する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
非ヒト動物が野生型である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
非ヒト動物がげっ歯動物である、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
機能的に障害された内因性GPR26遺伝子を有する、非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項14】
ヌル変異を有する、請求項13に記載の非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項15】
GPR26遺伝子に対して-/-である、請求項13または14に記載の非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項16】
精神疾患の治療のためのGPR26遺伝子のアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための、請求項13から15のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック動物、またはその単離された細胞もしくは組織の使用。
【請求項17】
請求項13から15のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック動物の、精神疾患用のモデルとしての使用。
【請求項18】
(i)患者から単離したサンプル中のGPR26遺伝子の発現レベルを決定する工程と、(ii)コントロールと比較して、サンプルを単離した個体が精神疾患を有するか否か、または感受性か否かを決定する工程とを含む、個体における精神疾患の感受性の存在を決定する方法。
【請求項19】
精神疾患を予防または治療するための医薬の製造における、GPR26ポリペプチドの活性に影響を及ぼす物質の使用。
【請求項20】
精神疾患を治療または予防するための医薬の製造における、外来性のGPR26ポリヌクレオチドの使用。
【請求項21】
精神疾患を治療または予防するための医薬の製造における、GPR26ポリヌクレオチドの転写または発現を増大または低減する物質の使用。
【請求項22】
精神疾患が請求項6で定義されるものである、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法または使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図6−4】
image rotate

【図6−5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2009−513126(P2009−513126A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537198(P2008−537198)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004024
【国際公開番号】WO2007/049059
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(507200802)タケダ・ケンブリッジ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】