説明

GPS受信機搬送波位相測定値の品質監視装置、方法、プログラム

【課題】GPS受信機において搬送波位相測定値の品質を監視する技術に関し、特別に設計した受信アンテナもしくはGPS受信機を使用しなくても、複数周波数信号対応のGPS受信機の搬送波位相測定値に生じている異常を数cm級の精度で監視し、正確に衛星を特定する。
【解決手段】測定値異常判定部3は、GPS受信機1の搬送波位相測定部2が測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を各GPS衛星10に対して計算する。測定値異常判定部3は、その時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の搬送波位相測定値を特定してその搬送波位相測定値の異常を検出する。異常が検出されなかった衛星に対して、座標計算部4で測位が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、GPS(グローバルポジショニングシステム、Global Positioning System)受信機もしくは全地球航法衛星システム(GNSS)受信機において、搬送波位相測定値の品質を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS受信機や全地球航法衛星システム(GNSS)受信機(以下、総称してGPS受信機と呼ぶ)は、アンテナを通して複数のGPS衛星から受信した周波数信号から搬送波位相測定値を算出し、その算出した値を用いて自装置の位置座標を計算している。ここで、位置座標とは、衛星との間の直線距離に相当する。
【0003】
搬送波位相測定値は、コード位相測定値に比べて高精度(ほぼ1cm以下の精度)ではあるが、衛星からの直接波以外に、受信機周辺環境で発生する反射波が間接波として混入する等の原因で、誤差が生じる。この結果として、搬送波位相測定値から推定される位置座標の精度が損なわれることになる。
【0004】
また搬送波位相の測位においては,搬送波位相測定値に含まれている整数未知数(バイアス項と呼ばれている)に対する推定計算が必要である。しかし例えば、4cm程度の測定値誤差が加わることでも誤推定を引き起こす原因となり、その場合は位置推定には数十cmから1m以上の誤差を生じ、精密測位の性能を大きく損ねてしまう。
【0005】
現在,各GPS衛星は2周波数信号(L1信号とL2信号)を発信している。複数周波数信号対応のGPS受信機による搬送波位相測定値の計算方法に関しては、2周波数の受信信号の搬送波位相測定値に対して線形結合量を算出し、幾何距離項及び電離層遅延項を推定する方法が広く知られている。
【0006】
また、近い将来のGPS衛星の仕様として、上記L1及びL2信号にL5信号が追加された3周波数信号を発信する仕様が取り決められている。3周波数信号を用いることで、より高精度な搬送波位相の測定が可能となる。
【0007】
以上の背景技術に対して、次のような従来技術が知られている。
第1の従来技術として、上述した間接波の強度自体をある程度抑制する目的で、特別に設計された受信アンテナを用いる方法が知られている。
【0008】
第2の従来技術として、GPS受信機の測定値に及ぼす間接波の影響をある程度抑制する目的で、特別に設計されたGPS受信機の信号処理回路を用いる方法が知られている。
第3の従来技術として、搬送波位相測定値の異常を監視する目的で,測定値時間変化を監視し、妥当値との比較によって異常を判断する方法が知られている。
【0009】
本出願が開示する技術に関連する従来技術として、下記先行技術文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−71869号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】B.ホフマン−ウェレンホフ,H.リヒテネガー,J.コリンズ、「GPS理論と応用」、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、2005年3月31日、p.108−109、p.120−123、p.240−241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、第1又は第2の従来技術は、特別な受信アンテナや信号処理回路を設ける必要があった。製造コスト削減のためには、特別な構成を備える必要がなく、プログラム等により雑音成分を推定できることが好ましい。
【0013】
また、第3の従来技術に関連し、測定値の時間変化には、受信機座標の移動や衛星クロックの変動によって生じる項が含まれている。このため、たとえ静止受信機の場合であっても、現実には、異常値監視の精度は衛星信号の1波長(およそ20cm)を達成することも難しいという問題点を有していた。
【0014】
開示する技術が解決しようとする課題は、特別に設計した受信アンテナもしくはGPS受信機を使用しなくても、複数周波数信号対応のGPS受信機の搬送波位相測定値に生じている異常を高精度に監視し、正確に衛星を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、開示する技術は、グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための装置、方法、プログラムとして実現され、例えば装置として実現される場合には以下の構成を有する。
【0016】
線形結合量計算部は、受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対して幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を各衛星に対して計算する。
【0017】
時系列値監視部は、その時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の搬送波位相測定値を特定してその搬送波位相測定値の異常を検出する。
【発明の効果】
【0018】
開示する技術によれば、幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値の時間的連続性を監視するだけで、搬送波位相測定値の異常を効率的に判定することが可能となる。
【0019】
これにより、特別に設計した受信アンテナもしくはGPS受信機を使用しなくても、複数周波数信号対応のGPS受信機の搬送波位相測定値に生じている異常を高精度に監視し、正確に衛星を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】GPS受信機を含むグローバル・ポジショニング・システムの実施形態の構成図である。
【図2】第1の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャートである。
【図3】第1の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実行する処理Bを示す動作フローチャートである。
【図4】第2の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャート(その1)である。
【図5】第2の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャート(その2)である。
【図6】第3の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャートである。
【図7】第3の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実行する処理Bを示す動作フローチャートである。
【図8】第4の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実行する処理Aを示す動作フローチャートである。
【図9】GPS受信機1を実現できるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、GPS受信機を含むグローバル・ポジショニング・システムの実施形態について詳細に説明する。
図1は、GPS受信機を含むグローバル・ポジショニング・システムの実施形態の構成図である。図1に示すように、グローバル・ポジショニング・システムは、GPS衛星10と、GPS受信機1とを含む。
【0022】
GPS衛星10は、時間情報及びGPS衛星10自身の軌道情報を含むデータを信号に乗せて地上に向けて発信している。GPS受信機1は、GPS衛星10から受信した2周波数信号又は3周波数信号から自装置の位置座標を算出する。
【0023】
本実施形態に係るGPS受信機1は、搬送波位相測定部2、測定値異常判定部3及び座標計算部4を含んで構成される。
GPS受信機1の搬送波位相測定部2は、GPS衛星10から受信した2周波数信号又は3周波数信号から搬送波位相測定値を算出する。測定値異常判定部3は、搬送波位相測定値の異常を判定し、異常な測定値を座標計算から排除する。座標計算部4は、測定値異常判定部3にて判定された正常な搬送波位相測定値を用いて、GPS受信機1の位置座標を計算し、出力する。
【0024】
なお、GPS受信機1は複数の衛星10から2周波数信号又は3周波数信号を受信しているが、図1においては省略して記載している。また、図1においては、搬送波位相測定値からGPS受信機1の位置座標を算出する処理に関わる構成のみが示されている。
【0025】
図1に示されるGPS受信機1では、測定値異常判定部3において、搬送波位相測定値の異常が判定され、異常な測定値が座標計算から排除される。
以下、図1に示されるGPS受信機1の測定値異常判定部3に関する第1から第5の実施形態について、具体的に説明する。
【0026】
測定値異常判定部3の各実施形態について説明する前に、測定値異常の判定のための測定値異常判定部3の基本的な動作について説明する。
まず、搬送波位相測定部2が測定する2周波数(L1、L2)若しくは3周波数(L1、L2、L3)の各搬送波位相測定値φ及びその測定雑音δφは、以下の数1式、数2式、数3式で表される。
【数1】

【数2】

【数3】

【0027】
上記の数1式、数2式、及び数3式において、添え字kは各GPS衛星10に対応する。添え字L1、L2、及びL3は、2周波数信号(L1、L2)又は3周波数信号(L1、L2、L3)に対応する。δtrec は、GPS受信機1のクロック誤差である。λはGPS信号波長で、下記数4式によって算出される。ここで、cは光速、fは各信号周波数を示す。各信号周波数は、fL1=1540×1023kHz、fL2=1200×1023kHz、fL5=1150×1023kHzである。
【数4】

【0028】
また数1式、数2式、及び数3式において、Iは電離圏遅延項である。ρk はGPS受信機1と各GPS衛星10との幾何距離で、下記数5により計算される。ここで、rk は各GPS衛星10の座標、rrec はGPS受信機1の座標である。
【数5】

【0029】
更に、数1式、数2式、及び数3式において、定数Nは整数バイアス項を表す。定数κは、下記数6式で計算される。
【数6】

【0030】
ここで、下記数7式及び数8式で示されるような線形結合を考える。
【数7】

【数8】

【0031】
上述の数7式及び数8式において更に、測定誤差部分の線形結合量、


はそれぞれ、下記数9式及び数10式で表される。
【数9】

【数10】

【0032】
上記数7式及び数9式において、電離層遅延項Iは含まれているが、その変動は幾何距離項ρの変動に比べると一般に緩やかである。搬送波位相測定値に異常な不連続が生じていなければ、その測定値から数7式によって算出される線形結合量は、滑らかに変化する時系列値となる。なおこの時系列値には、測定値に固有で正常的誤差の変動が含まれる。
【0033】
一方、上記数8式及び数10式においては、電離層遅延項Iは含まれず、受信機座標(自由度3)の反映である幾何距離項ρとGPS受信機1のクロック誤差項δtrec (自由度1)が含まれる。
【0034】
以上の知見に基づく、測定値異常判定部3の第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態において測定値異常判定部3は、現在時刻において各GPS衛星10から得られる2周波数の搬送波位相測定値を用いて、数7式の第1の線形結合量を計算する。そして、測定値異常判定部3は、この第1の線形結合量の時系列が滑らかに連続変化しているかを監視し、正常変化として記憶している大きさに比較して大きい不連続が生じたならば、すなわち、測定値の誤差成分等による大きいふらつきが生じ、連続性からの乖離があれば、そのGPS衛星10に関して、搬送波位相測定値が異常であると判定する。
【0035】
測定値異常判定部3は、測定値が異常であると判定したGPS衛星10については、その衛星の測定値を測位計算から排除する。
一方、測定値異常判定部3は、測定値が正常であると判定したGPS衛星10については、その時刻でそのGPS衛星10から得られる2周波数の搬送波位相測定値を用いて、数8式の第2の線形結合量を計算し、そのGPS衛星10の識別子と共に記憶する。
【0036】
以上の測定値異常の判定処理により、各測定時刻毎に、5衛星以上の測定値が得られているならば、どれか1つの衛星について上述の測定値異常の判定処理にて判定されなかった測定値異常が発生している場合には、自由度の差によりその異常を検知できる。
【0037】
そこで、測定値異常判定部3は、5衛星以上の測定値が得られている場合に、得られている全てのGPS衛星10からの搬送波位相測定値を使って図1の座標計算部4に現在の測定時刻での測位を実施させる。そして、測定値異常判定部3は、最小2乗法により測位結果の残差の2乗和に対してχ2乗検定を実施し、異常測定値を有するGPS衛星10を検出する。測定値異常判定部3は、測定値異常が検出されたGPS衛星10を測位計算から排除し、座標計算部4に更に測位を実施させる。そして、測定値異常判定部3は、最終的に5衛星異常の測定値が得られていて、なおかつ異常測定値を有するGPS衛星10がなくなった時点で、その時点で座標計算部4にて得られている測定結果を、現在時刻の測位結果として出力する。
以上のようにして、搬送波位相測定値に関して、信頼度の高い異常判定を行うことが可能となる。
【0038】
図2は、第1の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャートである。
測定値異常判定部3は、最初のGPS衛星10(k=1)からスタートし(ステップS201)、未処理のGPS衛星10が有るか否かを判定しながら(ステップS212)、順次GPS衛星10(k)を選択する(ステップS213)。そして、測定値異常判定部3は、選択された各衛星につき以下のステップS202からS211の一連の処理を実行する。
【0039】
まず、測定値異常判定部3は、現在時刻において図1の搬送波位相測定部2が各GPS衛星10(k)から得ているL1及びL2に関する搬送波位相測定値、


と、L1及びL2の各信号周波数fL1及びfL2から数4式に基づいて算出される各波長値λL1及びλL2を用いて、数7式で示される第1の線形結合量、

を算出する(図2のステップS202)。この部分は、特許請求の範囲の線形結合量計算ステップ、第1の線形結合量計算ステップ、線形結合量計算部の実現例である。
【0040】
次に、測定値異常判定部3は、ステップS202で算出した第1の線形結合量を、衛星別に過去の値と合わせて記憶する(図2のステップS203)。
次に、測定値異常判定部3は、ステップS203にて衛星別に順次記憶されている過去の第1の線形結合量のうち、現在処理中のGPS衛星10(k)に関する最近の一定期間の第1の線形結合量の平滑値を計算する(図2のステップS204)。
そして、測定値異常判定部3は、ステップS202にて算出された現在時刻の第1の線形結合量とステップS204にて計算した平滑値との差dyを計算する(図2のステップS205)。
【0041】
測定値異常判定部3は、この差dyの絶対値が、後述するステップS206とS207で算出されている判定値よりも小さいか否かを判定する(図2のステップS208)。この部分は、特許請求の範囲の時系列値監視ステップ、第1の時系列値監視ステップ、時系列値監視部の実現例である。
【0042】
測定値異常判定部3は、ステップS208の判定がNOならば、第1の線形結合量の時系列において大きい不連続が生じたとして搬送波位相測定値は異常であると判定する。この場合には、測定値異常判定部3は、現在処理中のGPS衛星10は後述する処理Bでの測位計算のためには記憶せずに排除する。その後、測定値異常判定部3は、次の衛星の処理に移る(図2のステップS206→S212)。
【0043】
一方、測定値異常判定部3は、ステップS208の判定がYESならば、第1の線形結合量の時系列は連続的に変化しているとして搬送波位相測定値は正常であると判定する。
この場合、測定値異常判定部3はまず、ステップS205で算出した差dyを、衛星別に過去の値と合わせて記憶する(図2のステップS209)。測定値異常判定部3は、前述のステップS208での判定処理に先立ち、ステップS209にて衛星別に順次記憶されている過去のdyの2乗値のうち、現在処理中のGPS衛星10(k)に関する最近の一定期間の2乗値の平均を算出する(図2のステップS206)。そして、測定値異常判定部3は、ステップS206にて算出した平均の平方根×3を、ステップS208での判定値とする(図2のステップS207)。
【0044】
次に、測定値異常判定部3は、現在時刻において図1の搬送波位相測定部2が各GPS衛星10(k)から得ているL1及びL2に関する搬送波位相測定値、


と、L1及びL2の各信号周波数fL1及びfL2から数4式に基づいて算出される各波長値λL1及びλL2と、数6式に基づいて算出される定数κL2を用いて、数8式で示される線形結合量、

を計算する(図2のステップS210)。そして、測定値異常判定部3は、その計算結果を現在選択しているGPS衛星10の識別子kと共に記憶する(図2のステップS211)。この記憶内容は、後述する処理Bにて使用される。
【0045】
測定正常時における上述のステップS209からS211までの一連の処理の後、測定値異常判定部3は、次の衛星の処理に移る(図2のステップS211→S212)。
以上の図2に示される処理Aによって、測定値異常判定部3は、現在の測定時刻において搬送波位相測定値が正常であるGPS衛星10(k)に関する情報を収集し記憶する。
【0046】
図3は、現在の測定時刻において、上記処理Aに引き続いて測定値異常判定部3が実行する処理Bを示す動作フローチャートである。
まず、測定値異常判定部3は、前述した図2のステップS211にて記憶した測定値が正常である全GPS衛星10に関する第2の線形結合量を取り出す(図3のステップS301)。
【0047】
次に、測定値異常判定部3は、ステップS301で取り出したGPS衛星10の数が4機以上か否かを判定する(図3のステップS302)。
測定値異常判定部3は、ステップS301で取り出したGPS衛星10の数が4機より少ないと判定した場合には、測位が十分に行えない判定して、現在時刻の測位計算は出力しない(図3のステップS302→S308)。この後、測定値異常判定部3は、現在の測定時刻における処理Bを終了し、次の測定時刻での処理Aの実行に移行する。
【0048】
測定値異常判定部3は、ステップS301で取り出したGPS衛星10の数が4機以上と判定した場合には、ステップS301にて取得した処理対象のGPS衛星10に対応する第2の線形結合量を図1の座標計算部4に引き渡す。そして、測定値異常判定部3は、座標計算部4に対して上記第2の線形結合量を用いた4機以上の衛星による測位を実行させる。この測位処理としては、前掲した非特許文献1等に記載されている一般的な手法を用いることができる。ここで、測定値異常判定部3は、測位結果に関する最小2乗計算のための残差2乗和を計算する(以上、図3のステップS303)。
【0049】
次に、測定値異常判定部3は、ステップS303にて計算した残差2乗和に対してχ2乗検定を実施し、前述の処理Aでは検出できなかった異常衛星を検出する(図3のステップS304)。測定値異常判定部3は、ステップS304での処理の結果、異常衛星が1機以上見つかったか否かを判定する(図3のステップS305)。
【0050】
測定値異常判定部3は、異常衛星が1機以上見つかったと判定した場合には、その異常衛星を排除した上で、再度ステップS301からS304までの一連の処理を実行する(図3のステップS305→S306→S301)。
【0051】
測定値異常判定部3は、以上の処理の繰返しにより、ステップS302にてGPS衛星10が4機以上検出され、かつ異常衛星が見つからなかったと判定された場合に、ステップS303で得られている測位結果を出力する(図3のステップS305→S307)。これが、現在の測定時刻に対応する測位結果となる。ステップS307の出力処理の後、測定値異常判定部3は、現在の測定時刻における処理Bを終了し、次の測定時刻での処理Aの実行に移行する。
【0052】
次に、測定値異常判定部3の第2の実施形態について説明する。
上述の測定値異常判定部3の第1の実施形態は、搬送波位相測定値が2周波数(L1、L2)である場合の実施形態であった。図1のGPS衛星10が3周波数(L1、L2、L3)に対応している場合には、測定値異常判定部3は、L1及びL2に関する第1の線形結合量(数7式)及び第2の線形結合量(数8式に加えて、L1及びL5に関する下記数11式から数14で示される線形結合量を異常判定に用いることができる。
【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【0053】
上記数11式から数14式は、L2がL5に置き換わっただけで、式の意味は、前述の数7式から数10式の場合と同じである。以下の説明では、数11式から計算される線形結合量を第3の線形結合量と呼び、数12式から計算される線形結合量を第4の線形結合量と呼ぶことにする。
【0054】
上述の追加的な線形結合量に基づいて、測定値異常判定部3の第2の実施形態は、GPS衛星10毎に、まず前述の第1の線形結合量の連続性を判定し、この判定で連続性を検出できなかった場合には、更に第3の線形結合量の連続性を判定する。測定値異常判定部3は、第3の線形結合量で連続性を検出できた場合には、そのGPS衛星10の測定値はL1とL5の2周波数に関して正常であると判定できる。そして、測定値異常判定部3は、L1とL5に関する第4の線形結合量を計算し、その結果を処理Bに引き渡す。
以上のようにして、第2の実施形態では、3周波数を用いることにより、より安定した測位の実施が可能となる。
【0055】
図4及び図5は、第2の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャートである。図4及び図5において、図2の第1の実施形態の場合と同じ処理には同じステップ番号が付されている。
【0056】
測定値異常判定部3は、最初のGPS衛星10(k=1)からスタートし(図4のステップS201)、未処理のGPS衛星10が有るか否かを判定しながら(図5のステップS212)、順次GPS衛星10(k)を選択する(図5のステップS213)。そして、測定値異常判定部3は、選択された各衛星につき以下の図4のステップS202から図5のS211の一連の処理を実行する。
【0057】
まず、図4のステップS202から図4のステップS211までは、前述した第1の実施形態における図2のステップS202からS211までの一連の処理と同じである。
ただし、図4のステップS208の判定がNO(異常)であった場合には、次のGPS衛星10の処理に移行するのではなく、図5のステップS501の処理に移行する。
【0058】
ステップ501において測定値異常判定部3は、現在時刻において図1の搬送波位相測定部2が各GPS衛星10(k)から得ているL1及びL5に関する搬送波位相測定値、


と、L1及びL5の各信号周波数fL1及びfL5から数4式に基づいて算出される各波長値λL1及びλL5を用いて、数11式で示される第3の線形結合量、

を算出する。この部分は、特許請求の範囲の第2の線形結合量計算ステップの実現例である。
【0059】
その後の図5のステップS203から図5のステップS209までの処理は、第1の実施形態における図2のステップS203からステップS209までの一連の処理と同様であり、第3の線形結合量に対して搬送波位相測定値の異常判定が行われる。この部分は、特許請求の範囲の第2の時系列値監視ステップの実現例である。
【0060】
この結果、第3の線形結合量に対して連続性が検出でき図5のステップS208の判定がYESとなった場合には、L1とL5の2周波数に対して搬送波位相測定値が正常であると判定できたことになる。即ち、L1とL2の2周波数に対しては搬送波位相測定値の正常性が検出できなかったが、L1とL5の2周波数に対してはOKとなったということである。このように、2周波数から3周波数に処理能力が向上することにより、1つのGPS衛星10に関して、搬送波位相測定値が正常になる確率が高くなり、測定の安定性を高めることができる。
【0061】
ステップS209の後、測定値異常判定部3は、現在時刻において図1の搬送波位相測定部2が各GPS衛星10(k)から得ているL1及びL2に関する搬送波位相測定値、


と、L1及びL5の各信号周波数fL1及びfL5から数4式に基づいて算出される各波長値λL1及びλL5と、数6式に基づいて算出される定数κL5を用いて、数12式で示される線形結合量、

を計算する(図5のステップS502)。そして、測定値異常判定部3は、その計算結果を現在選択しているGPS衛星10の識別子kと共に記憶する(図5のステップS211)。この記憶内容は、後述する処理Bにて使用される。
【0062】
測定値異常判定部3は、図5のステップS208の判定がNOならば、第1の線形結合量の時系列に加えて第3の線形結合量の時系列でも大きい不連続、すなわち、測定値の誤差成分等による大きいふらつき(連続性からの乖離)が生じたとして、最終的に搬送波位相測定値は異常であると判定する。この場合には、測定値異常判定部3は、現在処理中のGPS衛星10は後述する処理Bでの測位計算のためには記憶せずに排除する。その後、測定値異常判定部3は、次の衛星の処理に移る(図5のステップS208→S212)。
【0063】
測定値異常判定部3の第2の実施形態が図4及び図5の動作フローチャートで示される処理Aの後に実行する処理Bの動作フローチャートは、第1の実施形態における図3の動作フローチャートと同じである。
【0064】
次に、測定値異常判定部3の第3の実施形態について説明する。
前述した測定値異常判定部3の第1の実施形態では、図2の処理Aで、ステップS208の判定がNOとなって第1の線形結合量の時系列で大きい不連続が生じたと判定された場合は、現在処理中のGPS衛星10は測位計算のためには記憶されずに排除された。
【0065】
これに対して、第3の実施形態では、第1の線形結合量の時系列で大きい不連続が生じたと判定された場合には、現在処理中のGPS衛星10は排除されず、処理Bでの測位計算における最小2乗計算における最小2乗重みが小さい値にされて測位が実行される。
これにより、搬送波位相測定値が異常であると判定されたGPS衛星10に残っている有意な情報を活用することが可能となる。
【0066】
図6及び図7はそれぞれ、第3の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理A及び処理Bを示す動作フローチャートである。図6又は図7において、図2又は図3の第1の実施形態の場合と同じ処理には同じステップ番号が付されている。
【0067】
第3の実施形態では、測定値異常判定部3は、図6のステップS208の判定がNOとなって第1の線形結合量の時系列で大きい不連続が生じたと判定された場合には、次の処理が実行される。
【0068】
即ちまず、測定値異常判定部3は、現在処理中のGPS衛星10(k)に関する最小2乗重みを1/3に変更することを指示するフラグを設定する(図6のステップS208→S601)。
【0069】
次に、測定値異常判定部3は、現在処理中のGPS衛星10(k)に関する1/3への重み変更指示を、GPS衛星10(k)の識別子kと共に記憶する。この記憶内容は、後述する処理Bにて使用される。
【0070】
その後、測定値異常判定部3は、図6のステップS210の処理に移行する。この処理は、第1の実施形態における図2のステップS210と同じ処理である。即ち、搬送波位相測定値が異常となったGPS衛星10(k)に関しても、第2の線形結合量が計算されて処理Bのために記憶される。
以上の処理以外の処理Aに関する各処理は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0071】
次に、図7に示される第3の実施形態における処理Bにおいて、まず、測定値異常判定部3が測位計算の対象とするGPS衛星10は、図6のステップS211にて記憶された全てのGPS衛星10が対象となる(図7のステップS301)。
【0072】
次に、測位計算に伴って測定値異常判定部3が実行する残差2乗和の最小2乗計算においては、図6のステップS602にて重み変更指示が記憶されているGPS衛星10については、最小2乗重みが1/3にされる。
以上の処理以外の処理Bに関する各処理は、第1の実施形態の場合と同様である。
これにより、搬送波位相測定値が異常であると判定されたGPS衛星10に残っている有意な測位情報を活用しつつ、そのGPS衛星10での測定値異常の悪影響が測位に及ばないような制御を実現することができる。
【0073】
次に、測定値異常判定部3の第4の実施形態について説明する。
第1の実施形態の処理A(図2)では、第1の線形結合量の連続性判定のためにステップS205で差dyを計算するにあたって使用される平滑値は、ステップS203にて記憶された自受信機での第1の線形結合量の過去値のみであった。
【0074】
これに対して、第4の実施形態では、近隣のGPS受信機1から2周波数又は3周波数の搬送波位相測定値が順次受信され、それに対応する第1の線形結合量の過去値が計算され、平滑値として使用される。
【0075】
これによって、より安定な搬送波位相測定値の異常判定が行えるようになる。
図8は、第4の実施形態において、測定値異常判定部3が各測定時刻毎に実施する処理Aを示す動作フローチャートである。図8において、図2の第1の実施形態の場合と同じ処理には同じステップ番号が付されている。
【0076】
図8において、測定値異常判定部3は、近隣に存在するGPS受信機1から2周波数又は3周波数の搬送波位相測定値を順次受信し、それに対応する第1の線形結合量の最近の過去値を算出する(図8のステップS801)。そして、測定値異常判定部3は、その算出結果を、ステップS204での平滑値計算に入力する。この受信処理は例えば、インターネットや携帯電話のネットワークを利用して随時実行されるように実現することができる。この部分は、特許請求の範囲の近隣受信機測定値取得ステップの実現例である。
【0077】
測定値異常判定部3の第4の実施形態が図8の動作フローチャートで示される処理Aの後に実行する処理Bの動作フローチャートは、第1の実施形態における図3の動作フローチャートと同じである。
【0078】
上述の第4の実施形態において、測定値異常判定部3が平滑値の計算のために搬送波位相測定値を受信する近隣のGPS受信機1は、単一である必要はなく複数であってもよい。この場合、測定値異常判定部3がステップS204にて平滑値を計算するときに、近隣のGPS受信機1の距離情報を受信し、その距離に応じた重みを用いた加重平均処理によって平滑値を計算するように実現することができる。
【0079】
図9は、図1に示されるGPS受信機1を実現できるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。このコンピュータは、携帯電話やカーナビゲーションシステムに搭載することができる。
【0080】
図9に示されるコンピュータは、CPU901、メモリ902、入力装置903、出力装置904、外部記憶装置905、可搬記録媒体909が挿入される可搬記録媒体駆動装置906、及びネットワーク接続装置907を有し、これらがバス908によって相互に接続された構成を有する。同図に示される構成は上記システムを実現できるコンピュータの一例であり、そのようなコンピュータはこの構成に限定されるものではない。
【0081】
CPU901は、当該コンピュータ全体の制御を行う。メモリ902は、プログラムの実行、データ更新等の際に、外部記憶装置905(或いは可搬記録媒体909)に記憶されているプログラム又はデータを一時的に格納するRAM等のメモリである。CUP901は、プログラムをメモリ902に読み出して実行することにより、全体の制御を行う。
【0082】
入力装置903は、例えば、キーボード、マウス等及びそれらのインタフェース制御装置とからなる。入力装置903は、ユーザによるキーボードやマウス等による入力操作を検出し、その検出結果をCPU901に通知する。
【0083】
出力装置904は、表示装置、印刷装置等及びそれらのインタフェース制御装置とからなる。出力装置904は、CPU901の制御によって送られてくるデータを表示装置や印刷装置に出力する。
【0084】
外部記憶装置905は、例えばハードディスク記憶装置である。主に各種データやプログラムの保存に用いられる。
可搬記録媒体駆動装置906は、光ディスクやSDRAM、コンパクトフラッシュ(登録商標)等の可搬記録媒体909を収容するもので、外部記憶装置905の補助の役割を有する。
【0085】
ネットワーク接続装置907は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)又はWAN(ワイドエリアネットワーク)の通信回線を接続するための装置である。
前述した第1〜第4の実施形態によるシステムは、それに必要な機能を搭載したプログラムをCPU901が実行することで実現される。そのプログラムは、例えば外部記憶装置905や可搬記録媒体909に記録して配布してもよく、或いはネットワーク接続装置907によりネットワークから取得できるようにしてもよい。
【0086】
以上の第1〜第4の実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための方法において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算ステップと、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視ステップと、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記2)
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための方法において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、2周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算ステップと、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視ステップと、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記3)
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための方法において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、第1及び第2の周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む第1の線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する第1の線形結合量計算ステップと、
該第1の線形結合量の時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の搬送波位相測定値を特定する第1の時系列値監視ステップと、
該第1の時系列値監視ステップにて不連続を生じている衛星の搬送波位相測定値が特定された場合に、更に第3の周波数及び前記第1又は第2の周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む第2の線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する第2の線形結合量計算ステップと、
該第2の線形結合量の時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する第2の時系列値監視ステップと、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記4)
前記時系列値監視ステップは、前記特定された搬送波位相測定値を、測位計算の際に排除する、
ことを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記5)
前記時系列値監視ステップは、前記特定された搬送波位相測定値に関して、測位計算の際に該特定された搬送波位相測定値の最小2乗重みを低下させる、
ことを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記6)
前記時系列値監視ステップは、前記線形結合量の時系列値の正常時における短時間変動成分の大きさをに基づいて、該時系列値の時間的連続性を判定する、
ことを特徴とする付記1乃至5の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記7)
近隣に存在する前記受信機から2周波数又は3周波数の搬送波位相測定値を順次受信して該測定値に対応する前記線形結合量の時系列値を算出する近隣受信機測定値取得ステップを更に含み、
前記時系列値監視ステップは、前記線形結合量計算ステップにて計算される時系列値と前記近隣受信機測定値取得ステップにて取得された時系列値との差の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する、
ことを特徴とする付記1乃至6の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記8)
前記近隣受信機測定値取得ステップは、近隣に存在する前記受信機から2周波数又は3周波数の搬送波位相測定値を順次受信して該測定値に対応する前記線形結合量の時系列値を算出し、
前記時系列値監視ステップは、前記線形結合量計算ステップにて計算される時系列値と前記近隣受信機測定値取得ステップにて取得された時系列値に対する該時系列値に対応する受信機と自受信機との距離に応じた加重平均結果との差の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する、
ことを特徴とする付記7に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
(付記9)
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するコンピュータに、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算ステップと、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視ステップと、
を実行させるためのプログラム。
(付記10)
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための装置において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対する電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算部と、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視部と、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視装置。
【産業上の利用可能性】
【0087】
開示する技術は、携帯電話やカーナビゲーションシステム等に搭載されるGPS受信機に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 GPS受信機
2 搬送波位相測定部
3 測定値異常判定部
4 座標計算部
901 CPU
902 メモリ
903 入力装置
904 出力装置
905 外部記憶装置
906 可搬記録媒体駆動装置
907 ネットワーク接続装置
908 バス
909 可搬記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための方法において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、2周波数の受信信号に対して幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算ステップと、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視ステップと、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
【請求項2】
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための方法において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、第1及び第2の周波数の受信信号に対して幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む第1の線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する第1の線形結合量計算ステップと、
該第1の線形結合量の時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の搬送波位相測定値を特定する第1の時系列値監視ステップと、
該第1の時系列値監視ステップにて不連続を生じている衛星の搬送波位相測定値が特定された場合に、更に第3の周波数及び前記第1又は第2の周波数の受信信号に対して幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む第2の線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する第2の線形結合量計算ステップと、
該第2の線形結合量の時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する第2の時系列値監視ステップと、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
【請求項3】
前記時系列値監視ステップは、前記特定された搬送波位相測定値を、測位計算の際に排除する、
ことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
【請求項4】
前記時系列値監視ステップは、前記特定された搬送波位相測定値に関して、測位計算の際に該特定された搬送波位相測定値の最小2乗重みを低下させる、
ことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
【請求項5】
近隣に存在する前記受信機から2周波数又は3周波数の搬送波位相測定値を順次受信して該測定値に対応する前記線形結合量の時系列値を算出する近隣受信機測定値取得ステップを更に含み、
前記時系列値監視ステップは、前記線形結合量計算ステップにて計算される時系列値と前記近隣受信機測定値取得ステップにて取得された時系列値との差の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
【請求項6】
前記近隣受信機測定値取得ステップは、近隣に存在する前記受信機から2周波数又は3周波数の搬送波位相測定値を順次受信して該測定値に対応する前記線形結合量の時系列値を算出し、
前記時系列値監視ステップは、前記線形結合量計算ステップにて計算される時系列値と前記近隣受信機測定値取得ステップにて取得された時系列値に対する該時系列値に対応する受信機と自受信機との距離に応じた加重平均結果との差の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載のGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視方法。
【請求項7】
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するコンピュータに、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対して幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算ステップと、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
グローバルポジショニングシステム又は全地球航法衛星システムの受信機において複数の衛星に対して測定した搬送波位相測定値の異常を検出するための装置において、
前記受信機で測定した複数周波数信号に対する搬送波位相測定値に基づき、複数周波数の受信信号に対して幾何距離項を含まず電離層遅延項を含む線形結合量の時系列値を前記各衛星に対して計算する線形結合量計算部と、
該時系列値の時間的連続性を監視することにより、不連続を生じている衛星の前記搬送波位相測定値を特定して該搬送波位相測定値の異常を検出する時系列値監視部と、
を含むことを特徴とするGPS受信機搬送波位相測定値の品質監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210436(P2010−210436A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57048(P2009−57048)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】