GPS受信装置およびGPS受信装置における誤差円半径の設定方法
【課題】 GPSによる測位誤差を正確に反映した誤差円半径を設定できる「GPS受信装置およびGPS受信装置における誤差円半径の設定方法」を提供する。
【解決手段】 誤差円半径の設定方法は、2次元測位時に、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測するステップと、予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差円半径を設定するステップと、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出するステップと、算出された移動特性に基づき設定された誤差円半径を修正するステップとを有する。
【解決手段】 誤差円半径の設定方法は、2次元測位時に、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測するステップと、予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差円半径を設定するステップと、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出するステップと、算出された移動特性に基づき設定された誤差円半径を修正するステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に用いられるGPS受信装置およびGPS受信装置における誤差円半径の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、複数のGPS衛星からの信号を利用して受信点の位置を算出するものであり、このシステムは、車両等の移動体用のナビゲーション装置に広く利用されている。GPSにおいて、4つ以上のGPS衛星を測位に利用すれば、受信機の緯度、経度および高さを算出することができ、3つのGPS衛星を測位に利用すれば、受信機の緯度および経度を算出することができる。一般に、前者を3次元測位といい、後者を2次元測位と呼んでいる。
【0003】
測位の精度を考えれば、当然に3次元測位をすることが望ましいが、受信機の受信環境(例えば、高層ビル群や奥深い山中など)によっては、3つのGPS衛星しか捕捉することができず、2次元測位となることがある。2次元測位では、GPS衛星からの信号により高度を算出することができないため、3次元測位時に得られた高度情報を記憶(ホールド)しておき、これを高度情報の予測値として利用している。
【0004】
例えば特許文献1は、3次元測位から2次元測位に切り替わった際、3次元測位で用いた測位用衛星の配置から高さ方向誤差情報を求め、この高さ方向誤差情報から3次元測位で求めた高さ情報をホールドする有効時間を決定し、2次元測位時の緯度、経度の測位精度を改善している。
【0005】
また、GPSによる測位位置は、実際の位置に対して誤差を含んでいる。GPSによる測位位置が、実際の位置に対してどれくらい離れているのかの目安の距離を円で表したものを誤差円半径と呼んでいる。誤差円半径が小さければ、測位位置の精度が高く、誤差円半径が大きければ、精度が低いことになる。測位位置に誤差を生じさせる要因として、2次元測位時に予測される高さ情報、測位されるGPS衛星の仰角、GPS衛星の配置、マルチパスなどが挙げられる。
【0006】
車載用ナビゲーション装置では、GPSによる測位に加えて、角速度センサやジャイロセンサなどを用いた自立航法による位置検出手段を備えている。自立航法による位置検出は、誤差が累積されるため、誤差円半径を用いて自立航法の位置修正を行っている。例えば、図9(a)に示すように、GPSによる測位位置S1と自律航法による位置S2の距離が誤差円半径Rを超えたとき、図9(b)に示すように自立航法による位置S2をGPSによる測位位置S1に引き付ける処理を行っている。
【0007】
車載用ナビゲーション装置では、道路上に自車位置を正確に描画するため、測位位置を道路位置へマッチングさせるマップマッチング技術が用いられている。マップマッチングでは、誤差円半径内に含まれる道路をマッチング候補とし、その中で一定の条件を満足する道路に測位位置をマッチングさせている。
【0008】
特許文献2は、GPS衛星から送られてくる精度情報(URA(User Range Accuracy))と、衛星の配置により算出される精度低下率(PDOP(Position Dilution of Precision)やHDOP(Horizontal DOP))とにより誤差円半径を算出し、誤差円半径内の道路を対象としてマップマッチングを行い、現在位置を推定している。誤差円半径の精度が高い場合にはマップマッチングの対象とする範囲が狭くなり、演算処理の負担が軽減され、一方、誤差円半径の精度が低い場合にはマップマッチングの対象とする範囲が広くなるが、その代わりに現在位置の推定精度が向上する。
【0009】
【特許文献1】特開平8−86852号
【特許文献2】特開平6−148307号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
GPS測位による誤差円半径が正確でないと、上記したように自立航法の位置に誤差が累積したとき、正しい位置への復帰が遅れるという問題がある。特許文献2に開示されるように、GPS衛星からの精度情報やGPS衛星の配置による精度低下率を用いて誤差円半径を設定しても、依然として誤差円半径の正確さは不十分である。
【0011】
特に、2次元測位時には、現実の高度と測位計算に使用する高度(直前に3次元測位したもの)に高度誤差があるため、緯度、経度にも誤差が生じてしまう。このことは特許文献1においても示されており、図10に示すように、高さ誤差と緯度・経度誤差に比例関係が生じている。したがって、現実の高度と2次元測位の高度の差が大きいほど、誤差円半径が大きくなってしまう。
【0012】
また、3次元測位時は、高度に加えてVDOP(Vertical DOP)を得ることができる。VDOPは、垂直方向の測位位置精度であり、VDOPが小さいほど高度の精度が良い。VDOPは、現実の高度と3次元測位高度との誤差と密接な関係があり、このことは特許文献1においても示されており、図11に示すように、VDOPと高さ誤差に比例関係が生じている。すなわち、VDOPが大きいほど、高さ誤差が大きくなる。以上から、2次元測位時の誤差円半径は、現実の高度と直前の3次元測位の高度との誤差、およびVDOPに関係があると考えられる。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、GPSによる測位誤差を正確に反映した誤差円半径を設定することができるGPS受信装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、GPS受信装置による測位位置に基づき正確な自車位置を得ることができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る、GPS衛星からの信号を用いて2次元測位または3次元測位を行うGPS受信装置は、2次元測位時のときに、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測する高度誤差予測手段と、予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定する第1の設定手段とを有する。
【0015】
好ましくは、高度誤差予測手段は、少なくとも3次元測位時の高度情報および速度情報から単位速度あたりの高度変化量を算出して高度誤差を予測し、また、少なくとも3次元測位時の垂直方向の測位位置精度情報および速度情報から単位速度あたりの垂直方向の測位位置精度情報の加算量を算出し、高度誤差を予測する。
【0016】
さらに好ましくはGPS受信装置は、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出する移動特性算出手段と、算出された移動特性に基づき第1の設定手段により設定された誤差量を修正する修正手段とを有する。誤差量は、例えば誤差円半径である。
【0017】
本発明に係る、GPS衛星からの信号により2次元測位または3次元測位が可能なGPS受信装置における誤差量の設定方法は、2次元測位時に、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測するステップと、予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定するステップを有する。誤差量の設定方法はさらに好ましくは、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出するステップと、算出された移動特性に基づき設定された誤差量を修正するステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るGPS受信装置によれば、2次元測位時のときに、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測し、その予測された高度誤差に基づき2次元測位時の誤差量を設定するようにしたので、実際の位置との誤差をより正確に反映した誤差量を得ることができる。その結果、誤差量に基づく、マップマッチング処理や自立航法による位置の引き付け処理などを、正確にかつ迅速に行うことができ、ひいては、ナビゲーション装置における自車位置の表示処理を正確にかつ円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係るGSP受信装置は、好ましくは車載用ナビゲーション装置において実施される。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の実施例に係るGPS受信装置の構成を示すブロック図である。同図において、GPS受信装置1は、GPS衛星からのGPS信号をアンテナ10を介して受信するRF受信部12と、RF受信部12で受信されたGPS信号に基づきGPS受信装置を測位する演算制御部14と、演算されたデータ等を記憶するデータメモリ16と、演算制御部14が実行するプログラムを格納するプログラムメモリ18とを備えている。プログラムメモリ18には、GPSによる3次元測位または2次元測位による誤差円半径の算出を行うプログラムなどが格納されている。
【0021】
GPS衛星から発せられたGPS信号は、GPS衛星に関する軌道情報を含むアルマナックデータ、各衛星の正確な軌道情報と信号を発射した時刻情報を含むエフェメリスデータ等を含み、これらは所定のフォーマットで符号化されている。RF受信部12は、受信したGPS信号をデコードし、これを演算制御部14へ出力する。演算制御部14は、デコードされた信号に基づき位置を測位する。測位されたデータは、ナビゲーション装置本体へ供給され、そこで、道路地図上に自車位置マーク等を描画するために利用される。
【0022】
図2は、GPS受信装置の誤差円半径算出フローを示す図である。このフローは、GPS誤差要因に基づき誤差円半径を算出するステップと(ステップS101)、算出された誤差円半径を走行特性を考慮して修正するステップと(ステップS102)を有している。ステップS101の誤差円半径の算出は、主に受信装置を定点においたときの静的測位の誤差であり、ステップS102の誤差円半径の修正は、主に受信装置を移動させたときの動的測位の誤差である。
【0023】
GPS誤差要因として、次のようなものが挙げられる。
1.測位ステータス
3次元測位か2次元測位かの測位状態である。4つ以上の衛星を測位に使用すれば、高度を測定できる3次元測位となる。一方、衛星3つのときは、高度を測定できない2次元測位となる。3次元測位は、2次元測位よりも精度が良い。
【0024】
2.仰角
測位に使用している衛星の地上からの角度である。一般的に仰角が低いと、電離層や対流圏の遅延により誤差が大きくなるといわれる。電離層遅延とは、GPSが使用するマイクロ波が、電離層の屈折率変化によって進行速度が遅れることである。また、対流圏遅延とは、大気の屈折率が1でないために生じる、GPS信号の通過遅れである。
【0025】
3.PDOP・HDOP
PDOPとは、衛星同士を結んだ立体の体積であり、3次元測位での位置精度を示す。PDOPが小さい(立体の体積が大きい)ときに、精度が良くなる。但し、2次元測位のときはPDOPを計算できないため、HDOPを使用する。HDOPは、水平方向の測位位置精度を示し、小さいときに緯度・経度の精度が良いといわれる。
【0026】
4.重心ベクトル
PDOPは、衛星同士を結んだ立体の体積であることから、衛星の散らばり具合を示すことができる。しかし、衛星が中心付近に集まっているか、端に固まっているかの偏りを示すことはできない。衛星が端に固まっている場合は、同方向からの受信信号が多くなるため、測位位置の精度が悪くなる。そこで衛星の偏りを示すため、重心ベクトルを指標として考慮する。重心ベクトルとは、測位に使用する複数の衛星をXY平面上で1つの図形とみなし、その図形の重心と、原点からの距離である。重心ベクトルが小さいほど、衛星が中心方向に集まり、大きいほど端に偏ることを示す。
【0027】
5.擬似距離
衛星から受信機までの距離測定値である。マルチパスが起こりやすい遮蔽環境では時間変動が起こりやすく、測位精度と密接な関係がある。
【0028】
6.高度・速度・2次元測位継続時間・VDOP
3次元測位から2次元測位に変化した際、参考にする誤差要因である。
2次元測位のときの誤差要因は、上記したように、実際の高度と測位計算に用いる3次元測位で得られた高度との高度誤差である。この高度誤差は、緯度、経度の誤差と比例関係にある(図10参照)。さらに高度誤差は、VDOPと比例関係にある(図11参照)。
【0029】
本実施例のGPS受信装置では、GPS誤差要因のうち、仰角、DOP、衛星は位置の偏り、高度誤差から誤差円半径を算出する。特に、高度誤差を計算するにあたり、直前の3次元測位ステータスを利用して、現実の高度を予測する。
【0030】
図3は、GPS誤差要因による誤差円半径の算出フローを示す図である。本実施例のGPS受信装置では、1秒毎に2次元測位または3次元測位が行われるものとする。GPS受信装置による測位が開始されると、演算制御部14において、2次元測位か3次元測位かの測位状態が判別される(ステップS201)。この判別は、測位可能なGPS衛星の数によって判別される。
【0031】
3次元測位されているとき、最低仰角による誤差円半径R0、PDOPによる誤差円半径R1、および重心ベクトルによる誤差円半径R2が算出される(ステップS202)。R0は、最低仰角のLog関数に定数を加えたもの(−7.2175×Ln(ELVmin)+30.921)、R1は、PDOPのlog関数に定数を加えたもの(5.2614×Ln(PDOP)+9.9656)、R2は、重心ベクトルのlog関数に定数を加えたもの(4.3835×Ln(Vector)+20.409)である。なお、「ELVmin」は、最低仰角、「Vector」は重心ベクトルの意である。
【0032】
これらの式は、GPS受信装置により測位された分析データに基づき決定されている。分析データの実際の誤差はバラツキがあるため、95%確率で含まれる2σ値として扱っている。ここでいう「実際の誤差」とは、GPS定点測位の場合には、測位位置から基準点(GPS受信装置の実際の位置)までの距離であり、GPS動的測位の場合には、測位位置から走行道路までの法線距離である。
【0033】
次に、演算制御部14は、高度誤差Δh=0を設定する(ステップS203)。3次元測位では高度を算出することができるためである。従って、高度誤差による誤差円半径R3についても、R3=0を設定する(ステップS204)。
【0034】
次に、演算制御部14は、GPS誤差要因による誤差円半径Rを算出する(ステップS205)。誤差円半径Rは、R=R0+(R1−R0)+(R2−R0)によって規定される。ここで、最低仰角による誤差円半径R0を基準とするのは、最低仰角が最も精度に影響を及ぼすためである。さらに、演算制御部14は、測位された高度、VDOP、速度を履歴として保存する(ステップS206)。
【0035】
測位状態が2次元測位であるとき、演算制御部14は、2次元測位に切り替わる前に3次元測位が行われていたかを判定する(ステップS207)。3次元測位が行われていないと、高度誤差を正確に予測することができないので、その場合にはエラー処理となる。切替前に3次元測位が行われていた場合、演算制御部14は、2次元測位の継続時間が10秒以上であるか否かを判定する(ステップS208)。10秒以上の2次元測位が継続する場合には、データ精度が古くその精度が低下したとみなされるので、エラー処理となる。
【0036】
2次元測位が10秒未満の状態にあるとき、演算制御部14は、3次元測位における高度、VDOP、速度の履歴が2秒分あるか否かを判定する(ステップS209)。履歴がないときは、高度誤差を予測できないので、エラー処理となる。これらの履歴情報があるとき、演算制御部14は、最低仰角による誤差円半径R0、HDOPによる誤差円半径R1、および重心ベクトルによる誤差円半径R2を算出する(ステップS210)。R0は、最低仰角のLog関数に定数を加えたもの(−6.6343×Ln(ELVmin)+31.861)、R1は、HDOPのlog関数に定数を加えたもの(4.393×Ln(HDOP)+13.151)、R2は、重心ベクトルのlog関数に定数を加えたもの(3.6807×Ln(Vector)+19.063)であり、これの式は、実験値などに基づく経験則によって決定されている。
【0037】
次に、演算制御部14は、2次元測位時の高度誤差を予測するために、以下の式による計算を行う(ステップS211)。なお、速度および進行角未測位によりVおよびVoが得られなかった場合は、1秒前のGPS速度でミラーリングしたものを使用する。
【数3】
【0038】
高度誤差Δhを算出したならば、次に、演算制御部14は、高度誤差による誤算半径R3(R3=0.2149×Δh+1.5836+1秒前のR3)を計算する(ステップS212)。
【0039】
次に、演算制御部14は、GPS誤差要因による誤差円半径Rを算出する(ステップS213)。誤差円半径Rは、R=R0+(R1−R0)+(R2−R0)+R3によって規定される。そして、今回の測位された高度誤差による誤差円半径R3が履歴として保存される(ステップS214)。
【0040】
上記ステップS211およびステップS212による計算の意味は、次のようなことである。2次元測位の直前の、過去2回の3次元測位の高度、VDOP、速度を利用して、単位速度(1km/h)当りの高度変化量を計算する。次に、単位速度当りの高度変化量に、2次元測位時の速度Vを掛けることで、2次元測位時の高度誤差が求まる。そして、3次元測位時のVDOPに2次元測位時の高度誤差を加えることで2次元測位時の予測高度が求まる。
【0041】
一方、未測位のとき(ステップS201)、2次元測位に切り替わる前に3次元測位がされていないとき(ステップS207)、2次元測位が10秒以上であるとき(ステップS208)、および高度、VDOP、速度の履歴がないとき(ステップS209)、エラー処理として、異常フラグをオンにし(ステップS215)、最低仰角による誤差円半径R0、PDOP・HDOPによる誤差円半径R1、および重心ベクトルによる誤差円半径R2をすべて「0」にする(ステップS216)。さらに、高度誤差Δh=0(ステップS217)、高度誤差による誤差円半径R3=0(ステップS218)、GPS誤差要因による誤差円半径R=1000m(ステップS219)とする。
【0042】
このように、2次元測位時の高度誤差Δhは、直前の3次元測位時の高度、VDOP、速度を考慮して算出されるので、高度誤差による誤差円半径R3の精度も高くなり、結果として、GPS誤差要因による誤差円半径Rの精度を高くすることができる。
【0043】
次に、図2に示した走行特性考慮による誤差円半径の計算について説明する。上記したように、本発明では、GPS誤差要因に加え、GPS衛星受信装置すなわち車両の走行特性(または移動特性)を考慮することで、誤差円半径を拡張もしくは伸縮する係数を算出する。本実施例の走行特性は、どれだけ走行したかという走行距離と、どちらの方向を向いているかという進行角の2つの特性を算出する。
【0044】
1.走行距離
GPS測位点間の距離が、実際の走行距離にどれだけ近いかを判断する。走行距離比率は、測位された緯度、経度座標値から算出した走行距離と、ドップラー効果による速度から算出された走行距離との比である。ドップラー効果による速度は精度が高いため、この走行距離比率が「1」に近いほど、実際の走行距離に近くなる。以下の式により、「走行距離比率」として信頼度を決定する。
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、XはGPS経度の直交座標[m]、YはGPS緯度の直交座標[m]、vはGPS速度、tは4秒間分の時間(0:今回、−1.1秒前、−2.2秒前、−3.3秒前)である。
【0047】
2.進行角
GPS測位点間の角度が、実際の進行角にどれだけ近いかを判断する。進行角誤差は、測位された緯度、経度座標値から算出された進行角と、ドップラー効果による方位から算出された進行角との差である。ドップラー効果による方位は精度が高いため、この差が「0」に近いほど、実際の進行角に近くなる。以下の式により、「進行角誤差」として信頼度を決定する。
【0048】
【数5】
ここで、θGPSは、GPS方位[度]、θXYは測位位置進行角[度]である。
【0049】
図4は、走行特性考慮による誤差円半径の計算フローを示す図である。同図に示すように、先ず、演算制御部14は、測位開始後5秒未満であるか、あるいは異常フラグがオンであるかをチェックする(ステップS301)。測位開始が5秒未満のとき、データが不十分であるためエラー処理となる。異常フラグがオン(図3のステップ215)のときもエラー処理となる。
【0050】
次に、4秒間連続で速度/進行角を測位しているか否かを判定する(ステップS302)。4秒間連続で測位している場合には、4秒間連続で速度が0か否かが判定される(ステップS303)。速度が0でないとき、すなわち走行がされているとき、演算制御部14は、走行距離比率Pが0.98≦P≦1.02か否かを判定する(ステップS304)。走行距離比率Pがこの範囲を満たす場合には、進行角誤差が30度以下であるか否かを判定する(ステップS305)。進行角誤差が30度以下であれば、演算制御部14は、GPS誤差要因による誤差円半径Rに係数0.13を乗じ、走行特性考慮後の誤差円半径Rs=R×0.13を算出する(ステップS306)。進行角誤差が30度以上の場合には、Rs=R×0.75とする(ステップS307)。走行特性の信頼度が幾分低いので、それに応じて係数を0.75とし、ステップS306のときよりも誤差円半径が大きくなる。なお、GPS誤差要因による誤差円半径Rは、2次元測位時または3次元測位時のいずれかである。
【0051】
ステップS304において、走行距離比率Pが0.98≦P≦1.02の範囲を満足しないとき、演算制御部14は、走行距離比率Pが、0.9≦P≦1.1の範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS308)。満足する場合には、進行角誤差が30度以下か否かが判定され(ステップS309)、30度以下であれば、誤差円半径Rs=0.19×Rとなり(ステップS310)、30度以下でなければ、誤差円半径Rs=0.81×Rとなる(ステップS311)。
【0052】
また、ステップS308の範囲を満足していないときにも、進行角誤差が30度以下か否かが判定され(ステップS312)、30度以下であれば、誤差円半径Rs=R×0.93(ステップS313)となり、30度以下でなければ、誤差円半径Rs=R×1.59となる(ステップS314)。
【0053】
一方、ステップS301においてエラー処理となったとき、走行特性を全く考慮できないので、誤差円半径Rs=Rとする(ステップS315)。ステップS302においてエラー処理となったとき、誤差円半径Rs=R×3.3となり(ステップS316)、ステップS303においてエラー処理となったとき、誤差円半径Rs=R×0.44とする(ステップS317)。これらの係数は、経験則から算出された値である。
【0054】
以上のようにして、走行特性を考慮した誤差円半径Rsが算出されると、今回の緯度、経度を履歴として保存し、かつ、今回の速度、進行角を履歴として保存し(ステップS318)、これらのデータは、次の走行特定考慮による誤差円半径の計算に使用される。
【0055】
次に、本実施例のGPS受信装置による効果について説明する。効果の評価方法として、「正解率」と「精度」の2を用いる。「正解率」とは、誤差円半径が実際の誤差よりも大きい確率を示す。すなわち、誤差円半径としての正当性を示す指標である。正解率は、以下の式により定義される。
【0056】
【数6】
【0057】
「精度」とは、誤差円半径と実際の誤差との差を絶対値で示したものである。すなわち、誤差円半径が実際の誤差にどれだけ近いかという指標である。これは、以下の式により定義される。
【0058】
【数7】
【0059】
精度の計算には、誤差円半径=1000mとなるエラー処理の箇所は含めないこととし、また、実際の誤差は、GPS測位位置から走行道路に引いた垂線の距離(法線誤差)とした。理想としては、「正解率」が100%で、かつ精度が0に近いことが誤差円半径にとって望ましい。
【0060】
図5は、縦軸が実際の誤差[m]、横軸が|実際の誤差−誤差円半径|[m]のグラフに、分析データをもとに従来手法により算出された誤差円半径(菱形のプロット)と、本実施例により算出された誤差円半径(四角のプロット)とを表示している。従来手法による誤差円半径は、実際の誤差と誤差円半径の差が20〜500mとバラツキが非常に大きいのに対し、本実施例による誤差円半径は、その差が0〜60mとバラツキが小さく、その精度が良いことがわかる。
【0061】
図6は、図5にプロットされたデータを1σ(上位68%確率値)と2σ(上位95%確率値)により評価した精度を示している。従来の誤差円半径は、1σのとき492.9m、2σのとき500mであるのに対し、本実施例による誤差円半径は、1σのとき26.1m、2σのとき37.7mであり、実際の誤差により近くなっている。
【0062】
図7(a)は、市街地Aを走行したときに実際にサンプリングした測位データに基づき算出された誤差円半径の正解率と精度を示す表である。従来手法による誤差円半径では、正解率は100%であるが、精度は272.18mと非常に大きく、実際の誤差と隔たりが大きいことが分かる。一方、本実施例による誤差円半径では、正解率は98.2%であり、精度は42.49mである。つまり、高い正解率を維持しつつ、精度も高いことがわかる。
【0063】
図7(b)は、高層ビル群が多い市街地Bを走行したときに実際にサンプリングした測位データに基づき算出された誤差円半径の正解率と精度を示す表である。従来手法による正解率は、94.5%であり、精度は478.11mであるのに対し、本実施例による正解率は、90.1%であり、精度は113.02mである。このことからも、本実施例による誤差円半径は、実際の誤差に近く、かつ実際の誤差の大部分を含み得る、適正な大きさであることがわかる。
【0064】
図8は、本実施例に係るGPS受信装置をナビゲーション装置に適用したときのブロック図である。ナビゲーション装置100は、上記したGPS衛星からの電波を受信して車両の現在位置と現在方位を測定するGPS受信装置1、自立航法用センサ112、アンテナ114を介して車両外部の現在の道路交通情報を受信するVICS・FM多重レシーバ116、操作パネル122、音声入力部124およびリモコン操作部126を含むユーザ入力インターフェース120、大容量のハードディスクを有する記憶装置130、無線または有線によりデータ通信を可能とするデータ通信制御部132、スピーカ142から音声を出力させる音声出力部140、ディスプレイ152に画像を表示させる表示制御部150、種々のプログラムを記憶するプログラムメモリ160、データを一時記憶するデータメモリ170、および制御部180を含んでいる。
【0065】
記憶装置130は、ナビゲーションの各種機能を実行するためのプログラムおよびデータベースを記憶する。データベースは、地図データ、施設データを含み、地図データは、道路に関するリンクデータおよび交差点データが含まれる。プログラムメモリ160は、記憶装置130に記憶されたプログラムをロードし、そこには、GPS受信装置からの測位データに基づき、自車位置をマップマッチングさせるプログラムや自立航法用センサ112の累積誤差を修正するためのプログラム等が格納される。データメモリ170は、記憶装置130から読み出した地図データやGPS受信装置1からの測位データ等を記憶する。
【0066】
本実施例に係るGPS受信装置1をナビゲーション装置100に用いることで、実際の位置との誤差をより正確に反映した誤差円半径を提供することができ、自立航法用センサ112の誤差の累積を迅速に解消し、また、マップマッチングによる処理負担を軽減し、自車位置の表示等を高速に行うことができる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るGPS受信装置は、車両等の移動体のナビゲーション装置やシステムなどに広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例に係るGPS受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係るGPS受信装置の誤差円半径算出フローを示す図である。
【図3】図2に示すGPS誤差要因による誤差円半径算出フローを示す図である。
【図4】図2に示す走行特性考慮による誤差円半径算出フローを示す図である。
【図5】本実施例のGPS受信装置の効果を示す図である。
【図6】本実施例のGPS受信装置の効果を示す図である。
【図7】従来手法と本実施例の正解率と精度とを対比した表である。
【図8】GPS受信装置をナビゲーション装置に適用した図である。
【図9】誤差円半径の利用方法の1つを説明する図である。
【図10】高さ誤差と緯度・経度誤差の関係を示す図である。
【図11】高さ誤差とVDOPとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1:GPS受信装置 10:アンテナ
12:RF受信部 14:演算制御部
16:データメモリ 18:プログラムメモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に用いられるGPS受信装置およびGPS受信装置における誤差円半径の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、複数のGPS衛星からの信号を利用して受信点の位置を算出するものであり、このシステムは、車両等の移動体用のナビゲーション装置に広く利用されている。GPSにおいて、4つ以上のGPS衛星を測位に利用すれば、受信機の緯度、経度および高さを算出することができ、3つのGPS衛星を測位に利用すれば、受信機の緯度および経度を算出することができる。一般に、前者を3次元測位といい、後者を2次元測位と呼んでいる。
【0003】
測位の精度を考えれば、当然に3次元測位をすることが望ましいが、受信機の受信環境(例えば、高層ビル群や奥深い山中など)によっては、3つのGPS衛星しか捕捉することができず、2次元測位となることがある。2次元測位では、GPS衛星からの信号により高度を算出することができないため、3次元測位時に得られた高度情報を記憶(ホールド)しておき、これを高度情報の予測値として利用している。
【0004】
例えば特許文献1は、3次元測位から2次元測位に切り替わった際、3次元測位で用いた測位用衛星の配置から高さ方向誤差情報を求め、この高さ方向誤差情報から3次元測位で求めた高さ情報をホールドする有効時間を決定し、2次元測位時の緯度、経度の測位精度を改善している。
【0005】
また、GPSによる測位位置は、実際の位置に対して誤差を含んでいる。GPSによる測位位置が、実際の位置に対してどれくらい離れているのかの目安の距離を円で表したものを誤差円半径と呼んでいる。誤差円半径が小さければ、測位位置の精度が高く、誤差円半径が大きければ、精度が低いことになる。測位位置に誤差を生じさせる要因として、2次元測位時に予測される高さ情報、測位されるGPS衛星の仰角、GPS衛星の配置、マルチパスなどが挙げられる。
【0006】
車載用ナビゲーション装置では、GPSによる測位に加えて、角速度センサやジャイロセンサなどを用いた自立航法による位置検出手段を備えている。自立航法による位置検出は、誤差が累積されるため、誤差円半径を用いて自立航法の位置修正を行っている。例えば、図9(a)に示すように、GPSによる測位位置S1と自律航法による位置S2の距離が誤差円半径Rを超えたとき、図9(b)に示すように自立航法による位置S2をGPSによる測位位置S1に引き付ける処理を行っている。
【0007】
車載用ナビゲーション装置では、道路上に自車位置を正確に描画するため、測位位置を道路位置へマッチングさせるマップマッチング技術が用いられている。マップマッチングでは、誤差円半径内に含まれる道路をマッチング候補とし、その中で一定の条件を満足する道路に測位位置をマッチングさせている。
【0008】
特許文献2は、GPS衛星から送られてくる精度情報(URA(User Range Accuracy))と、衛星の配置により算出される精度低下率(PDOP(Position Dilution of Precision)やHDOP(Horizontal DOP))とにより誤差円半径を算出し、誤差円半径内の道路を対象としてマップマッチングを行い、現在位置を推定している。誤差円半径の精度が高い場合にはマップマッチングの対象とする範囲が狭くなり、演算処理の負担が軽減され、一方、誤差円半径の精度が低い場合にはマップマッチングの対象とする範囲が広くなるが、その代わりに現在位置の推定精度が向上する。
【0009】
【特許文献1】特開平8−86852号
【特許文献2】特開平6−148307号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
GPS測位による誤差円半径が正確でないと、上記したように自立航法の位置に誤差が累積したとき、正しい位置への復帰が遅れるという問題がある。特許文献2に開示されるように、GPS衛星からの精度情報やGPS衛星の配置による精度低下率を用いて誤差円半径を設定しても、依然として誤差円半径の正確さは不十分である。
【0011】
特に、2次元測位時には、現実の高度と測位計算に使用する高度(直前に3次元測位したもの)に高度誤差があるため、緯度、経度にも誤差が生じてしまう。このことは特許文献1においても示されており、図10に示すように、高さ誤差と緯度・経度誤差に比例関係が生じている。したがって、現実の高度と2次元測位の高度の差が大きいほど、誤差円半径が大きくなってしまう。
【0012】
また、3次元測位時は、高度に加えてVDOP(Vertical DOP)を得ることができる。VDOPは、垂直方向の測位位置精度であり、VDOPが小さいほど高度の精度が良い。VDOPは、現実の高度と3次元測位高度との誤差と密接な関係があり、このことは特許文献1においても示されており、図11に示すように、VDOPと高さ誤差に比例関係が生じている。すなわち、VDOPが大きいほど、高さ誤差が大きくなる。以上から、2次元測位時の誤差円半径は、現実の高度と直前の3次元測位の高度との誤差、およびVDOPに関係があると考えられる。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、GPSによる測位誤差を正確に反映した誤差円半径を設定することができるGPS受信装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、GPS受信装置による測位位置に基づき正確な自車位置を得ることができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る、GPS衛星からの信号を用いて2次元測位または3次元測位を行うGPS受信装置は、2次元測位時のときに、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測する高度誤差予測手段と、予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定する第1の設定手段とを有する。
【0015】
好ましくは、高度誤差予測手段は、少なくとも3次元測位時の高度情報および速度情報から単位速度あたりの高度変化量を算出して高度誤差を予測し、また、少なくとも3次元測位時の垂直方向の測位位置精度情報および速度情報から単位速度あたりの垂直方向の測位位置精度情報の加算量を算出し、高度誤差を予測する。
【0016】
さらに好ましくはGPS受信装置は、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出する移動特性算出手段と、算出された移動特性に基づき第1の設定手段により設定された誤差量を修正する修正手段とを有する。誤差量は、例えば誤差円半径である。
【0017】
本発明に係る、GPS衛星からの信号により2次元測位または3次元測位が可能なGPS受信装置における誤差量の設定方法は、2次元測位時に、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測するステップと、予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定するステップを有する。誤差量の設定方法はさらに好ましくは、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出するステップと、算出された移動特性に基づき設定された誤差量を修正するステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るGPS受信装置によれば、2次元測位時のときに、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測し、その予測された高度誤差に基づき2次元測位時の誤差量を設定するようにしたので、実際の位置との誤差をより正確に反映した誤差量を得ることができる。その結果、誤差量に基づく、マップマッチング処理や自立航法による位置の引き付け処理などを、正確にかつ迅速に行うことができ、ひいては、ナビゲーション装置における自車位置の表示処理を正確にかつ円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係るGSP受信装置は、好ましくは車載用ナビゲーション装置において実施される。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の実施例に係るGPS受信装置の構成を示すブロック図である。同図において、GPS受信装置1は、GPS衛星からのGPS信号をアンテナ10を介して受信するRF受信部12と、RF受信部12で受信されたGPS信号に基づきGPS受信装置を測位する演算制御部14と、演算されたデータ等を記憶するデータメモリ16と、演算制御部14が実行するプログラムを格納するプログラムメモリ18とを備えている。プログラムメモリ18には、GPSによる3次元測位または2次元測位による誤差円半径の算出を行うプログラムなどが格納されている。
【0021】
GPS衛星から発せられたGPS信号は、GPS衛星に関する軌道情報を含むアルマナックデータ、各衛星の正確な軌道情報と信号を発射した時刻情報を含むエフェメリスデータ等を含み、これらは所定のフォーマットで符号化されている。RF受信部12は、受信したGPS信号をデコードし、これを演算制御部14へ出力する。演算制御部14は、デコードされた信号に基づき位置を測位する。測位されたデータは、ナビゲーション装置本体へ供給され、そこで、道路地図上に自車位置マーク等を描画するために利用される。
【0022】
図2は、GPS受信装置の誤差円半径算出フローを示す図である。このフローは、GPS誤差要因に基づき誤差円半径を算出するステップと(ステップS101)、算出された誤差円半径を走行特性を考慮して修正するステップと(ステップS102)を有している。ステップS101の誤差円半径の算出は、主に受信装置を定点においたときの静的測位の誤差であり、ステップS102の誤差円半径の修正は、主に受信装置を移動させたときの動的測位の誤差である。
【0023】
GPS誤差要因として、次のようなものが挙げられる。
1.測位ステータス
3次元測位か2次元測位かの測位状態である。4つ以上の衛星を測位に使用すれば、高度を測定できる3次元測位となる。一方、衛星3つのときは、高度を測定できない2次元測位となる。3次元測位は、2次元測位よりも精度が良い。
【0024】
2.仰角
測位に使用している衛星の地上からの角度である。一般的に仰角が低いと、電離層や対流圏の遅延により誤差が大きくなるといわれる。電離層遅延とは、GPSが使用するマイクロ波が、電離層の屈折率変化によって進行速度が遅れることである。また、対流圏遅延とは、大気の屈折率が1でないために生じる、GPS信号の通過遅れである。
【0025】
3.PDOP・HDOP
PDOPとは、衛星同士を結んだ立体の体積であり、3次元測位での位置精度を示す。PDOPが小さい(立体の体積が大きい)ときに、精度が良くなる。但し、2次元測位のときはPDOPを計算できないため、HDOPを使用する。HDOPは、水平方向の測位位置精度を示し、小さいときに緯度・経度の精度が良いといわれる。
【0026】
4.重心ベクトル
PDOPは、衛星同士を結んだ立体の体積であることから、衛星の散らばり具合を示すことができる。しかし、衛星が中心付近に集まっているか、端に固まっているかの偏りを示すことはできない。衛星が端に固まっている場合は、同方向からの受信信号が多くなるため、測位位置の精度が悪くなる。そこで衛星の偏りを示すため、重心ベクトルを指標として考慮する。重心ベクトルとは、測位に使用する複数の衛星をXY平面上で1つの図形とみなし、その図形の重心と、原点からの距離である。重心ベクトルが小さいほど、衛星が中心方向に集まり、大きいほど端に偏ることを示す。
【0027】
5.擬似距離
衛星から受信機までの距離測定値である。マルチパスが起こりやすい遮蔽環境では時間変動が起こりやすく、測位精度と密接な関係がある。
【0028】
6.高度・速度・2次元測位継続時間・VDOP
3次元測位から2次元測位に変化した際、参考にする誤差要因である。
2次元測位のときの誤差要因は、上記したように、実際の高度と測位計算に用いる3次元測位で得られた高度との高度誤差である。この高度誤差は、緯度、経度の誤差と比例関係にある(図10参照)。さらに高度誤差は、VDOPと比例関係にある(図11参照)。
【0029】
本実施例のGPS受信装置では、GPS誤差要因のうち、仰角、DOP、衛星は位置の偏り、高度誤差から誤差円半径を算出する。特に、高度誤差を計算するにあたり、直前の3次元測位ステータスを利用して、現実の高度を予測する。
【0030】
図3は、GPS誤差要因による誤差円半径の算出フローを示す図である。本実施例のGPS受信装置では、1秒毎に2次元測位または3次元測位が行われるものとする。GPS受信装置による測位が開始されると、演算制御部14において、2次元測位か3次元測位かの測位状態が判別される(ステップS201)。この判別は、測位可能なGPS衛星の数によって判別される。
【0031】
3次元測位されているとき、最低仰角による誤差円半径R0、PDOPによる誤差円半径R1、および重心ベクトルによる誤差円半径R2が算出される(ステップS202)。R0は、最低仰角のLog関数に定数を加えたもの(−7.2175×Ln(ELVmin)+30.921)、R1は、PDOPのlog関数に定数を加えたもの(5.2614×Ln(PDOP)+9.9656)、R2は、重心ベクトルのlog関数に定数を加えたもの(4.3835×Ln(Vector)+20.409)である。なお、「ELVmin」は、最低仰角、「Vector」は重心ベクトルの意である。
【0032】
これらの式は、GPS受信装置により測位された分析データに基づき決定されている。分析データの実際の誤差はバラツキがあるため、95%確率で含まれる2σ値として扱っている。ここでいう「実際の誤差」とは、GPS定点測位の場合には、測位位置から基準点(GPS受信装置の実際の位置)までの距離であり、GPS動的測位の場合には、測位位置から走行道路までの法線距離である。
【0033】
次に、演算制御部14は、高度誤差Δh=0を設定する(ステップS203)。3次元測位では高度を算出することができるためである。従って、高度誤差による誤差円半径R3についても、R3=0を設定する(ステップS204)。
【0034】
次に、演算制御部14は、GPS誤差要因による誤差円半径Rを算出する(ステップS205)。誤差円半径Rは、R=R0+(R1−R0)+(R2−R0)によって規定される。ここで、最低仰角による誤差円半径R0を基準とするのは、最低仰角が最も精度に影響を及ぼすためである。さらに、演算制御部14は、測位された高度、VDOP、速度を履歴として保存する(ステップS206)。
【0035】
測位状態が2次元測位であるとき、演算制御部14は、2次元測位に切り替わる前に3次元測位が行われていたかを判定する(ステップS207)。3次元測位が行われていないと、高度誤差を正確に予測することができないので、その場合にはエラー処理となる。切替前に3次元測位が行われていた場合、演算制御部14は、2次元測位の継続時間が10秒以上であるか否かを判定する(ステップS208)。10秒以上の2次元測位が継続する場合には、データ精度が古くその精度が低下したとみなされるので、エラー処理となる。
【0036】
2次元測位が10秒未満の状態にあるとき、演算制御部14は、3次元測位における高度、VDOP、速度の履歴が2秒分あるか否かを判定する(ステップS209)。履歴がないときは、高度誤差を予測できないので、エラー処理となる。これらの履歴情報があるとき、演算制御部14は、最低仰角による誤差円半径R0、HDOPによる誤差円半径R1、および重心ベクトルによる誤差円半径R2を算出する(ステップS210)。R0は、最低仰角のLog関数に定数を加えたもの(−6.6343×Ln(ELVmin)+31.861)、R1は、HDOPのlog関数に定数を加えたもの(4.393×Ln(HDOP)+13.151)、R2は、重心ベクトルのlog関数に定数を加えたもの(3.6807×Ln(Vector)+19.063)であり、これの式は、実験値などに基づく経験則によって決定されている。
【0037】
次に、演算制御部14は、2次元測位時の高度誤差を予測するために、以下の式による計算を行う(ステップS211)。なお、速度および進行角未測位によりVおよびVoが得られなかった場合は、1秒前のGPS速度でミラーリングしたものを使用する。
【数3】
【0038】
高度誤差Δhを算出したならば、次に、演算制御部14は、高度誤差による誤算半径R3(R3=0.2149×Δh+1.5836+1秒前のR3)を計算する(ステップS212)。
【0039】
次に、演算制御部14は、GPS誤差要因による誤差円半径Rを算出する(ステップS213)。誤差円半径Rは、R=R0+(R1−R0)+(R2−R0)+R3によって規定される。そして、今回の測位された高度誤差による誤差円半径R3が履歴として保存される(ステップS214)。
【0040】
上記ステップS211およびステップS212による計算の意味は、次のようなことである。2次元測位の直前の、過去2回の3次元測位の高度、VDOP、速度を利用して、単位速度(1km/h)当りの高度変化量を計算する。次に、単位速度当りの高度変化量に、2次元測位時の速度Vを掛けることで、2次元測位時の高度誤差が求まる。そして、3次元測位時のVDOPに2次元測位時の高度誤差を加えることで2次元測位時の予測高度が求まる。
【0041】
一方、未測位のとき(ステップS201)、2次元測位に切り替わる前に3次元測位がされていないとき(ステップS207)、2次元測位が10秒以上であるとき(ステップS208)、および高度、VDOP、速度の履歴がないとき(ステップS209)、エラー処理として、異常フラグをオンにし(ステップS215)、最低仰角による誤差円半径R0、PDOP・HDOPによる誤差円半径R1、および重心ベクトルによる誤差円半径R2をすべて「0」にする(ステップS216)。さらに、高度誤差Δh=0(ステップS217)、高度誤差による誤差円半径R3=0(ステップS218)、GPS誤差要因による誤差円半径R=1000m(ステップS219)とする。
【0042】
このように、2次元測位時の高度誤差Δhは、直前の3次元測位時の高度、VDOP、速度を考慮して算出されるので、高度誤差による誤差円半径R3の精度も高くなり、結果として、GPS誤差要因による誤差円半径Rの精度を高くすることができる。
【0043】
次に、図2に示した走行特性考慮による誤差円半径の計算について説明する。上記したように、本発明では、GPS誤差要因に加え、GPS衛星受信装置すなわち車両の走行特性(または移動特性)を考慮することで、誤差円半径を拡張もしくは伸縮する係数を算出する。本実施例の走行特性は、どれだけ走行したかという走行距離と、どちらの方向を向いているかという進行角の2つの特性を算出する。
【0044】
1.走行距離
GPS測位点間の距離が、実際の走行距離にどれだけ近いかを判断する。走行距離比率は、測位された緯度、経度座標値から算出した走行距離と、ドップラー効果による速度から算出された走行距離との比である。ドップラー効果による速度は精度が高いため、この走行距離比率が「1」に近いほど、実際の走行距離に近くなる。以下の式により、「走行距離比率」として信頼度を決定する。
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、XはGPS経度の直交座標[m]、YはGPS緯度の直交座標[m]、vはGPS速度、tは4秒間分の時間(0:今回、−1.1秒前、−2.2秒前、−3.3秒前)である。
【0047】
2.進行角
GPS測位点間の角度が、実際の進行角にどれだけ近いかを判断する。進行角誤差は、測位された緯度、経度座標値から算出された進行角と、ドップラー効果による方位から算出された進行角との差である。ドップラー効果による方位は精度が高いため、この差が「0」に近いほど、実際の進行角に近くなる。以下の式により、「進行角誤差」として信頼度を決定する。
【0048】
【数5】
ここで、θGPSは、GPS方位[度]、θXYは測位位置進行角[度]である。
【0049】
図4は、走行特性考慮による誤差円半径の計算フローを示す図である。同図に示すように、先ず、演算制御部14は、測位開始後5秒未満であるか、あるいは異常フラグがオンであるかをチェックする(ステップS301)。測位開始が5秒未満のとき、データが不十分であるためエラー処理となる。異常フラグがオン(図3のステップ215)のときもエラー処理となる。
【0050】
次に、4秒間連続で速度/進行角を測位しているか否かを判定する(ステップS302)。4秒間連続で測位している場合には、4秒間連続で速度が0か否かが判定される(ステップS303)。速度が0でないとき、すなわち走行がされているとき、演算制御部14は、走行距離比率Pが0.98≦P≦1.02か否かを判定する(ステップS304)。走行距離比率Pがこの範囲を満たす場合には、進行角誤差が30度以下であるか否かを判定する(ステップS305)。進行角誤差が30度以下であれば、演算制御部14は、GPS誤差要因による誤差円半径Rに係数0.13を乗じ、走行特性考慮後の誤差円半径Rs=R×0.13を算出する(ステップS306)。進行角誤差が30度以上の場合には、Rs=R×0.75とする(ステップS307)。走行特性の信頼度が幾分低いので、それに応じて係数を0.75とし、ステップS306のときよりも誤差円半径が大きくなる。なお、GPS誤差要因による誤差円半径Rは、2次元測位時または3次元測位時のいずれかである。
【0051】
ステップS304において、走行距離比率Pが0.98≦P≦1.02の範囲を満足しないとき、演算制御部14は、走行距離比率Pが、0.9≦P≦1.1の範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS308)。満足する場合には、進行角誤差が30度以下か否かが判定され(ステップS309)、30度以下であれば、誤差円半径Rs=0.19×Rとなり(ステップS310)、30度以下でなければ、誤差円半径Rs=0.81×Rとなる(ステップS311)。
【0052】
また、ステップS308の範囲を満足していないときにも、進行角誤差が30度以下か否かが判定され(ステップS312)、30度以下であれば、誤差円半径Rs=R×0.93(ステップS313)となり、30度以下でなければ、誤差円半径Rs=R×1.59となる(ステップS314)。
【0053】
一方、ステップS301においてエラー処理となったとき、走行特性を全く考慮できないので、誤差円半径Rs=Rとする(ステップS315)。ステップS302においてエラー処理となったとき、誤差円半径Rs=R×3.3となり(ステップS316)、ステップS303においてエラー処理となったとき、誤差円半径Rs=R×0.44とする(ステップS317)。これらの係数は、経験則から算出された値である。
【0054】
以上のようにして、走行特性を考慮した誤差円半径Rsが算出されると、今回の緯度、経度を履歴として保存し、かつ、今回の速度、進行角を履歴として保存し(ステップS318)、これらのデータは、次の走行特定考慮による誤差円半径の計算に使用される。
【0055】
次に、本実施例のGPS受信装置による効果について説明する。効果の評価方法として、「正解率」と「精度」の2を用いる。「正解率」とは、誤差円半径が実際の誤差よりも大きい確率を示す。すなわち、誤差円半径としての正当性を示す指標である。正解率は、以下の式により定義される。
【0056】
【数6】
【0057】
「精度」とは、誤差円半径と実際の誤差との差を絶対値で示したものである。すなわち、誤差円半径が実際の誤差にどれだけ近いかという指標である。これは、以下の式により定義される。
【0058】
【数7】
【0059】
精度の計算には、誤差円半径=1000mとなるエラー処理の箇所は含めないこととし、また、実際の誤差は、GPS測位位置から走行道路に引いた垂線の距離(法線誤差)とした。理想としては、「正解率」が100%で、かつ精度が0に近いことが誤差円半径にとって望ましい。
【0060】
図5は、縦軸が実際の誤差[m]、横軸が|実際の誤差−誤差円半径|[m]のグラフに、分析データをもとに従来手法により算出された誤差円半径(菱形のプロット)と、本実施例により算出された誤差円半径(四角のプロット)とを表示している。従来手法による誤差円半径は、実際の誤差と誤差円半径の差が20〜500mとバラツキが非常に大きいのに対し、本実施例による誤差円半径は、その差が0〜60mとバラツキが小さく、その精度が良いことがわかる。
【0061】
図6は、図5にプロットされたデータを1σ(上位68%確率値)と2σ(上位95%確率値)により評価した精度を示している。従来の誤差円半径は、1σのとき492.9m、2σのとき500mであるのに対し、本実施例による誤差円半径は、1σのとき26.1m、2σのとき37.7mであり、実際の誤差により近くなっている。
【0062】
図7(a)は、市街地Aを走行したときに実際にサンプリングした測位データに基づき算出された誤差円半径の正解率と精度を示す表である。従来手法による誤差円半径では、正解率は100%であるが、精度は272.18mと非常に大きく、実際の誤差と隔たりが大きいことが分かる。一方、本実施例による誤差円半径では、正解率は98.2%であり、精度は42.49mである。つまり、高い正解率を維持しつつ、精度も高いことがわかる。
【0063】
図7(b)は、高層ビル群が多い市街地Bを走行したときに実際にサンプリングした測位データに基づき算出された誤差円半径の正解率と精度を示す表である。従来手法による正解率は、94.5%であり、精度は478.11mであるのに対し、本実施例による正解率は、90.1%であり、精度は113.02mである。このことからも、本実施例による誤差円半径は、実際の誤差に近く、かつ実際の誤差の大部分を含み得る、適正な大きさであることがわかる。
【0064】
図8は、本実施例に係るGPS受信装置をナビゲーション装置に適用したときのブロック図である。ナビゲーション装置100は、上記したGPS衛星からの電波を受信して車両の現在位置と現在方位を測定するGPS受信装置1、自立航法用センサ112、アンテナ114を介して車両外部の現在の道路交通情報を受信するVICS・FM多重レシーバ116、操作パネル122、音声入力部124およびリモコン操作部126を含むユーザ入力インターフェース120、大容量のハードディスクを有する記憶装置130、無線または有線によりデータ通信を可能とするデータ通信制御部132、スピーカ142から音声を出力させる音声出力部140、ディスプレイ152に画像を表示させる表示制御部150、種々のプログラムを記憶するプログラムメモリ160、データを一時記憶するデータメモリ170、および制御部180を含んでいる。
【0065】
記憶装置130は、ナビゲーションの各種機能を実行するためのプログラムおよびデータベースを記憶する。データベースは、地図データ、施設データを含み、地図データは、道路に関するリンクデータおよび交差点データが含まれる。プログラムメモリ160は、記憶装置130に記憶されたプログラムをロードし、そこには、GPS受信装置からの測位データに基づき、自車位置をマップマッチングさせるプログラムや自立航法用センサ112の累積誤差を修正するためのプログラム等が格納される。データメモリ170は、記憶装置130から読み出した地図データやGPS受信装置1からの測位データ等を記憶する。
【0066】
本実施例に係るGPS受信装置1をナビゲーション装置100に用いることで、実際の位置との誤差をより正確に反映した誤差円半径を提供することができ、自立航法用センサ112の誤差の累積を迅速に解消し、また、マップマッチングによる処理負担を軽減し、自車位置の表示等を高速に行うことができる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るGPS受信装置は、車両等の移動体のナビゲーション装置やシステムなどに広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例に係るGPS受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係るGPS受信装置の誤差円半径算出フローを示す図である。
【図3】図2に示すGPS誤差要因による誤差円半径算出フローを示す図である。
【図4】図2に示す走行特性考慮による誤差円半径算出フローを示す図である。
【図5】本実施例のGPS受信装置の効果を示す図である。
【図6】本実施例のGPS受信装置の効果を示す図である。
【図7】従来手法と本実施例の正解率と精度とを対比した表である。
【図8】GPS受信装置をナビゲーション装置に適用した図である。
【図9】誤差円半径の利用方法の1つを説明する図である。
【図10】高さ誤差と緯度・経度誤差の関係を示す図である。
【図11】高さ誤差とVDOPとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1:GPS受信装置 10:アンテナ
12:RF受信部 14:演算制御部
16:データメモリ 18:プログラムメモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星からの信号を用いて2次元測位または3次元測位を行うGPS受信装置であって、
2次元測位時のときに、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して2次元測位時の高度誤差を予測する高度誤差予測手段と、
予測された高度誤差を利用して2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定する第1の設定手段と、
を有するGPS受信装置。
【請求項2】
高度誤差予測手段は、少なくとも3次元測位時の高度情報および速度情報から単位速度あたりの高度変化量を算出して高度誤差を予測する、請求項1に記載のGPS受信装置。
【請求項3】
高度誤差予測手段は、少なくとも3次元測位時の垂直方向の測位位置精度情報および速度情報から単位速度あたりの垂直方向の測位位置精度情報の加算量を算出し、高度誤差を予測する、請求項1または2に記載のGPS受信装置。
【請求項4】
高度誤差予測手段は、以下の式により高度誤差を予測する、請求項1ないし3いずれか1つに記載のGPS受信装置。
【数1】
【請求項5】
GPS受信装置はさらに、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出する移動特性算出手段と、算出された移動特性に基づき第1の設定手段により設定された誤差量を修正する修正手段とを有する、請求項1ないし4いずれか1つに記載のGPS受信装置。
【請求項6】
GPS受信装置はさらに、3次元測位のときにGPS誤差要因に基づき誤差量を設定する第2の設定手段を有し、修正手段は、第2の設定手段により設定された誤差量を修正する、請求項5に記載のGPS受信装置。
【請求項7】
移動特性算出手段は、測位により得られた所定期間の緯度および経度から第1の移動距離を算出し、かつ、測位により得られた所定期間の速度から第2の移動距離を算出し、第1の移動距離と第2の移動距離の比を算出する、請求項5または6に記載のGPS受信装置。
【請求項8】
移動特性算出手段は、測位により得られた所定期間の緯度および経度から第1の進行角を算出し、かつ、測位により得られた所定期間の方位から第2の進行角を算出し、第1の進行角と第2の進行角の差を算出する、請求項5または6に記載のGPS受信装置。
【請求項9】
修正手段は、第1または第2の設定手段により設定された誤差量に、移動特性算出手段による移動特性に応じた係数を乗じる、請求項5ないし8いずれか1つに記載のGPS受信装置。
【請求項10】
速度および方位は、ドップラー効果により算出される、請求項7または8に記載のGPS受信装置。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれか1つに記載のGPS受信装置と、GPS受信装置による誤差量を利用して自車位置を検出する検出し、これをディスプレイ上に表示する手段とを備えたナビゲーション装置。
【請求項12】
GPS衛星からの信号により2次元測位または3次元測位が可能なGPS受信装置における誤差量の設定方法であって、
2次元測位時に、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測するステップと、
予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定するステップを有する、誤差量の設定方法。
【請求項13】
誤差量設定方法はさらに、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出するステップと、算出された移動特性に基づき設定された誤差量を修正するステップとを有する、請求項12に記載の誤差量の設定方法。
【請求項14】
高度誤差を予測するステップは、以下の式により高度誤差を予測する、請求項12に記載の誤差量の設定方法。
【数2】
【請求項15】
移動特性を算出するステップは、2次元測位または3次元測位から得られた所定期間の緯度および経度から第1の移動距離および第1の進行角を算出し、かつ、測位から得られた所定期間の速度および方位から第2の移動距離および第2の進行角を算出し、第1の移動距離と第2の移動距離の比、および第1の進行角と第2の進行角の差を算出する、請求項12に記載の誤差量の設定方法。
【請求項1】
GPS衛星からの信号を用いて2次元測位または3次元測位を行うGPS受信装置であって、
2次元測位時のときに、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して2次元測位時の高度誤差を予測する高度誤差予測手段と、
予測された高度誤差を利用して2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定する第1の設定手段と、
を有するGPS受信装置。
【請求項2】
高度誤差予測手段は、少なくとも3次元測位時の高度情報および速度情報から単位速度あたりの高度変化量を算出して高度誤差を予測する、請求項1に記載のGPS受信装置。
【請求項3】
高度誤差予測手段は、少なくとも3次元測位時の垂直方向の測位位置精度情報および速度情報から単位速度あたりの垂直方向の測位位置精度情報の加算量を算出し、高度誤差を予測する、請求項1または2に記載のGPS受信装置。
【請求項4】
高度誤差予測手段は、以下の式により高度誤差を予測する、請求項1ないし3いずれか1つに記載のGPS受信装置。
【数1】
【請求項5】
GPS受信装置はさらに、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出する移動特性算出手段と、算出された移動特性に基づき第1の設定手段により設定された誤差量を修正する修正手段とを有する、請求項1ないし4いずれか1つに記載のGPS受信装置。
【請求項6】
GPS受信装置はさらに、3次元測位のときにGPS誤差要因に基づき誤差量を設定する第2の設定手段を有し、修正手段は、第2の設定手段により設定された誤差量を修正する、請求項5に記載のGPS受信装置。
【請求項7】
移動特性算出手段は、測位により得られた所定期間の緯度および経度から第1の移動距離を算出し、かつ、測位により得られた所定期間の速度から第2の移動距離を算出し、第1の移動距離と第2の移動距離の比を算出する、請求項5または6に記載のGPS受信装置。
【請求項8】
移動特性算出手段は、測位により得られた所定期間の緯度および経度から第1の進行角を算出し、かつ、測位により得られた所定期間の方位から第2の進行角を算出し、第1の進行角と第2の進行角の差を算出する、請求項5または6に記載のGPS受信装置。
【請求項9】
修正手段は、第1または第2の設定手段により設定された誤差量に、移動特性算出手段による移動特性に応じた係数を乗じる、請求項5ないし8いずれか1つに記載のGPS受信装置。
【請求項10】
速度および方位は、ドップラー効果により算出される、請求項7または8に記載のGPS受信装置。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれか1つに記載のGPS受信装置と、GPS受信装置による誤差量を利用して自車位置を検出する検出し、これをディスプレイ上に表示する手段とを備えたナビゲーション装置。
【請求項12】
GPS衛星からの信号により2次元測位または3次元測位が可能なGPS受信装置における誤差量の設定方法であって、
2次元測位時に、3次元測位時の高度情報、垂直方向の測位位置精度情報、および速度情報を利用して高度誤差を予測するステップと、
予測された高度誤差に基づき2次元測位時の測位誤差を示す誤差量を設定するステップを有する、誤差量の設定方法。
【請求項13】
誤差量設定方法はさらに、2次元測位または3次元測位の測位結果に基づき移動特性を算出するステップと、算出された移動特性に基づき設定された誤差量を修正するステップとを有する、請求項12に記載の誤差量の設定方法。
【請求項14】
高度誤差を予測するステップは、以下の式により高度誤差を予測する、請求項12に記載の誤差量の設定方法。
【数2】
【請求項15】
移動特性を算出するステップは、2次元測位または3次元測位から得られた所定期間の緯度および経度から第1の移動距離および第1の進行角を算出し、かつ、測位から得られた所定期間の速度および方位から第2の移動距離および第2の進行角を算出し、第1の移動距離と第2の移動距離の比、および第1の進行角と第2の進行角の差を算出する、請求項12に記載の誤差量の設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−258525(P2006−258525A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74450(P2005−74450)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
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