説明

GPS技術を用いたモバイルテレマティクスのための高速ハンドオフ

本発明は、モバイルテレマティクスアプリケーションにおけるハンドオフの削減に関する。特に、本発明は、あるネットワークから他のネットワークへのハンドオフによって生じる遅延および一時データの損失を削減するために、GPS技術を用いてモバイル環境でIPアドレスを定義する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、モバイルテレマティクスアプリケーションにおけるハンドオフ遅延を削減する方法に関する。特に、本発明は、あるネットワークから他のネットワークへのハンドオフによって生じる遅延および一時データの損失を削減するために、GPS技術を用いてモバイル環境でIPアドレスを定義する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
移動中にもネットワークにアクセスしアプリケーションを利用したいと望むユーザがますます増えるにつれて、モバイルテレマティクスは急速に進歩しつつある技術である。例えば、11Mb/sで動作するIEEE802.11b無線LANや54Mb/sで動作するIEEE802.11aは、市場からの支持を大いに受け、私的空間および公的空間で急増している。新しいラップトップ、ノートパソコンやPDAにはIEEE802.11のLANカードが組み込まれるようになり、無線アクセスポイントも電話ジャックのようにどこにでも存在するようになる可能性がある。3Gモバイル無線データサービスは新興の技術である。また、WLANは比較的高帯域の性能を有し低い機器費用(周波数免許費が不要)しかかからないので、3Gモバイル無線データサービスに対する競合もしくは補完と考えられている。
【0003】
しかしながら、モバイル環境において有用であるためには、異なるネットワークに属するアクセスポイント間での高速なハンドオフが要求される。モバイル環境におけるハンドオフ遅延全体に寄与する要素はいくつか存在する。例えば、モバイルユーザがあるサービスエリアから他のサービスエリアに移動すると、異なるアクセスポイントに接続するか否かの決定がされなければならず、これによってレイヤ2検出遅延が生じる可能性がある。レイヤ2検出遅延は、CDMAのようなソフトハンドオフを提供する技術によってほぼ克服されており、一般に、アクセスポイントからのビーコン間隔がレイヤ2検出によって生じる遅延の主な原因となる。一般的に、レイヤ2遅延に関する高性能の目安は100ミリ秒程度である。
【0004】
レイヤ2ハンドオフが完了すると、モバイル装置は異なるサブネットに存在することを発見しなければならない。これは一般にICMPルータやフォーリンエージェント(FA)や他のサーバからの広告(advertisement)を聞くことによって達成される。この処理
の間に、モバイル装置は、自身に新しいIPアドレスを再設定するか、フォーリンエージェントにケアオブアドレス(COA:care-of-address)を再設定する必要がある。これ
もハンドオフ遅延の原因となり、IPアドレス発見フェーズとして位置づけられる。
【0005】
モバイル装置の再設定とIPアドレスの割り当てに続いて、一般にメディア転送遅延(media redirection delay)として位置づけられる、さらなる遅延が生じうる。特に、モ
バイル装置は、利用されているモビリティ管理スキームに応じて、SIP ReInvi
te、MIP登録やMIP更新メッセージを送信することによって、新しいIPアドレスに転送されるようになる。転送遅延は、必要となるメッセージの数およびモバイル装置と対応するホストとの距離に応じて変化する。
【0006】
従来技術は、ハンドオフ遅延に寄与する種々の要素に対応することによってハンドオフ遅延全体を削減する種々の方法について検討しているが、この分野における改良の要求が残っている。
【発明の開示】
【0007】
<発明の概要>
本発明は、IPアドレスの発見と設定に関連するハンドオフ遅延を削減する方法を提供する。特に、IPアドレスの定義においてGPS技術を用いることで、ハンドオフにおけるIPアドレスの発見と設定を高速に行うことができ、したがってハンドオフ遅延全体を削減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<発明の詳細な説明>
本発明は、モバイル環境におけるハンドオフのIPアドレス発見処理および設定処理中の遅延を削減するための方法およびシステムを提供する。特に、本発明に係る方法およびシステムは、IPアドレスの決定にGPS技術を利用して、IPアドレスの発見と再設定処理の要する時間を削減する。これは、ハンドオフ時間全体を削減することにつながり、したがって、モバイルテレマティクスアプリケーションを改善する。
【0009】
IPアドレスの発見と再設定に関するハンドオフ遅延はいくつかの要素に分類することができる。特に、IPアドレスの割り当てに要する時間、すなわちモバイル装置が要求を送信してからIPアドレスを受信するまでの時間は、利用する獲得方法に応じて変化する。DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)もしくはPPP(Point-to-Point Protocol)を利用して新しいIPアドレスを取得する場合は30秒もかかることがあることが報告されている。さらに、DRCP(Dynamic Registration and Configuration Protocol)を利用すると、IPアドレスの割り当て処理の時間は約70ミリ秒まで削減され
ることが報告されている。さらに、再設定もしくはノードのセットアップ時間、すなわち新しいIPアドレスがモバイル装置によって受信された後にインタフェースを設定する時間がかかる。ノードのセットアップ時間は約38ミリ秒かかることが報告されている。DRCPはIPアドレスの衝突を解決する手法を一切提供していないことに留意されたい。
【0010】
IPアドレスの発見と再設定中の重大な遅延のさらなる原因は、モバイル装置に送信されるIPアドレスが既に使用されているものではないことを保証するためのアドレス衝突解決処理を実行することが必要なために生じる。種々のARP(Address Resolution Protocol:アドレス解決プロトコル)処理がアドレス衝突解決のために利用されるが、これ
によって15秒もの重大な遅延が生じることが報告されている。例えば、プロキシARP、インバースARP、リバースARPおよびDHCP ARPはアドレス衝突の解決を提供するための既知の機構である。
【0011】
IPアドレスの発見、再設定およびアドレス衝突解決の際に生じる遅延は、全てGPS技術を用いる本発明によって削減することができる。以下で本発明についてより十分に説明する。
【0012】
本発明は、アドレスの発見、再設定およびアドレス衝突解決によって生じる遅延を削減する機能を含む情報ゲートウェイ(IG)要素を有するオーバーレイネットワークから構成されるシステムを提供する。具体的には、IGは基幹モバイル電気通信ネットワークに接続されるが、顧客に高速なハンドオフを提供したいと望むサービスプロバイダによって制御される。情報ゲートウェイは顧客に対するアクセスポイントとみなすことができ、各IGは隣接するIGに位置情報および他の情報を送信するGPS装置を備える。さらに、IGとアクセスする各モバイル装置は、モバイル装置がどこに位置するのかをいつでもIGに伝えられるように、GPS受信機を備える必要がある。
【0013】
IGはそれぞれ、ハンドオフに際に有用な情報を含むデータベースを含んでも良い。具体的には、隣接するIGの位置およびモバイル装置の現在位置を知っているので、各IGは、モバイル装置が移動するであろう推定エリアのリストと、その場所に位置するIGと
を決定することができる。このような次のIGの位置が決定されると、現在のIGは移動が切迫する前にあらかじめ次のIGに対してさらなる情報を送ることができる。この方法によれば、GPS情報がハンドオフ処理を補強することができ、ハンドオフ遅延全体を削減することができる。換言すると、処理をより早くに、つまりハンドオフが実際に要求されるより前に始めることで、IP発見処理をより早くに始めることができ、したがって遅延が少なくなる。
【0014】
さらに、各IGはその位置エリア内で利用可能なIPアドレスのデータベースを含んでも良い。このデータベースは、他のモバイル装置がどのIPアドレスを使用しているかを判断することによって定期的に更新されても良い。この方法によれば、必要な情報の多くをIGから入手できるので、アドレス衝突解決処理が大幅に短縮される。具体的には、利用可能なIPアドレスの動的なリストを保持することで、IGはアドレス衝突解決の必要性をほぼ排除できる。ただし、サービスエリア内のユーザであってモバイルユーザではないユーザおよびサービスプロバイダのIGネットワークを利用していないユーザからIPアドレス情報を収集する必要性が残ることに留意されたい。例えば、IGはDHCPサーバからIPアドレス情報を受信可能とすることができる。あるいは、IGは、データベース内のIPアドレスに対して標準的なARP処理を実行して、アドレス衝突がないことを保証しても良い。さらにまた、IGはHP Open ViewのようなSNMP監視エージェントを利用して各IGのサブネット内のルータからARPキャッシュ情報を抽出し、したがって、いつでもサブネット内の全てのモバイル装置に係るその瞬間のARPキャッシュ情報を取得することが可能である。このようすれば、利用可能なIPアドレスのリストはIGによって動的に維持される。さらに、特定の区域で利用されているIPアドレスのリストは、IGによってローカライズされたマルチキャストアドレスに送信されてもよい。このようにして、隣接するサービスエリアへの移動が間近なモバイル装置は、ローカライズされたマルチキャストアドレスを聞くことによって、既に利用されているIPアドレスの情報を得ることができる。これは衝突解決処理の高速化にも有用である。
【0015】
ハンドオフ遅延の削減を活用するために、本発明においては、モバイル装置はIPアドレス情報をIGから取得可能であることが重要である。したがって、本発明は、モバイル装置が起動時にローカルのIGを発見する方法を提供する。これは、いずれのプレプロビジョニング(pre-provisioning)、すなわちDHCPのサーバオプションまたはDNS“srv”オプションによっても実現可能である。具体的には、本発明の一実施形態は、以下に示すとおりである。
【0016】
ステップ1−初期化処理:
このステップでは、モバイル装置は利用可能な機構(例えば、LAN環境ではDHCP、WAN環境ではPPP、IPv6環境でステートレスな自動設定を利用している場合はIPv6ルータ)によって自身を設定する。この自動設定の間に、モバイル装置はローカルでサービスを提供しているIGを発見し、このローカルIGからIPアドレス情報をダウンロードする。さらに、アドレス衝突解決の実行に役立たせるために、このエリア内の関連付けられたルータからARPキャッシュエントリをダウンロードしても良い。
【0017】
ステップ2−新しいIPアドレスのトリガー:
ローカルIGは、モバイル装置からGPS情報を収集し、モバイル装置がどこに位置しどこに向かっているのかを追跡する。ハンドオフを要する新しいサービスエリアにモバイル装置が移動することが目前となった場合は、ローカルIGは適切な隣接IGと連絡を取り、その新しいサービスエリア内で利用可能なIPアドレスを受信する。トリガー時点でローカルIGはモバイル装置と同じエリア内に存在しているので、新しいIPアドレスを発見するための遅延はほとんどない。さらに、IPアドレス情報は各IGで動的に更新されるので、アドレス衝突解決をする必要性が大幅に減少しており、場合によってはその必
要性が全くない。さらに、IGは利用可能なIPアドレス情報をデータベースからモバイル装置へ提供するので、モバイル装置の設定を開始することができる。
【0018】
本発明は、どのような異なるサブネット間の移動に対しても適用可能であり、たとえこれらのサブネットがWLAN,LAN、IPv4やIPv6のように異なる技術を利用する場合でも適用可能である。サービスプロバイダは、ネットワーク全体を管理する必要はなく、オーバレイネットワーク内のIGを管理できればよい。各IGはサーバのように振る舞い、現在のセッションが維持され、モバイル装置が新しいサービスエリアに移動し新しいIPアドレスが獲得された後に初めて新しいセッションが開始されるようにコネクションを分割しても良い。
【0019】
要約すると、本発明は、新しいIPアドレスの発見、設定およびアドレス衝突解決に関連するハンドオフ遅延を削減するシステムおよび方法を提供する。本発明に係るIGオーバーレイネットワークを利用することで、モバイル装置が新しいサービスエリアに移動する前にあらかじめハンドオフ処理を開始することができる。さらに、IGはアドレス衝突解決を動的に実行し利用可能なIPアドレスを保持するため、モバイル装置が新しいサービスエリア内に移動したときにほぼ即座に新しいIPアドレスを割り当てることができる。
【0020】
上述の明細書を考慮すれば当業者であれば、本発明の他の実施例や変形は容易に理解できるであろう。そのような他の実施例や変形例も同様に、添付の請求の範囲に記載された発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルユーザに高速なハンドオフサービスを提供するための電気通信ネットワークであって、
第1のサービスエリア内に位置し、前記第1のサービスエリア内で利用可能なIPアドレスのリストを記憶する第1の記憶手段を有する第1の情報ゲートウェイと、
前記第1のサービスエリアに隣接する第2のサービスエリア内に位置し、前記第2のサービスエリア内で利用可能なIPアドレスのリストを記憶する第2の記憶手段を有する第2の情報ゲートウェイと、
前記第1の情報ゲートウェイと前記第2の情報ゲートウェイとが通信するための第1の通信手段と、
地理的位置を特定するGPS手段を有するモバイルユーザ装置と、
前記モバイルユーザ装置が前記第1の情報ゲートウェイまたは前記第2の情報ゲートウェイと通信するための第2の通信手段と、
を有する電気通信ネットワーク。
【請求項2】
前記第1の情報ゲートウェイおよび前記第2の情報ゲートウェイの両方に関連付けられたアドレス衝突解決手段をさらに有する請求項1に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項3】
前記アドレス衝突解決手段はARP機構を備える請求項2に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項4】
前記ARP機構は、プロキシARP、インバースARP、リバースARPおよびDHCP ARPのいずれかである請求項3に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項5】
前記第1の記憶手段および前記第2の記憶手段はデータベースから構成される請求項1に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項6】
前記第1のサービスエリアは、WLANネットワーク、LANネットワーク、IPv4ネットワークまたはIPv6ネットワークである請求項1に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項7】
前記第2のサービスエリアは、WLANネットワーク、LANネットワーク、IPv4ネットワークまたはIPv6ネットワークである請求項1に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項8】
第1のサービスエリアから第2のサービスエリアに移動するモバイルユーザに対するハンドオフ遅延を削減するための方法であって、
モバイルユーザに高速なハンドオフサービスを提供するための電気通信ネットワークであって、
第1のサービスエリア内に位置し、前記第1のサービスエリア内で利用可能なIPアドレスのリストを記憶する第1の記憶手段を有する第1の情報ゲートウェイと、
前記第1のサービスエリアに隣接する第2のサービスエリア内に位置し、前記第2のサービスエリア内で利用可能なIPアドレスのリストを記憶する第2の記憶手段を有する第2の情報ゲートウェイと、
前記第1の情報ゲートウェイと前記第2の情報ゲートウェイとが通信するための第1の通信手段と、
地理的位置を特定するGPS手段を有するモバイルユーザ装置と、
前記モバイルユーザ装置が前記第1の情報ゲートウェイまたは前記第2の情報ゲートウェイと通信するための第2の通信手段と、
を有する電気通信ネットワークを構築し、
前記モバイルユーザ装置と前記第1の情報ゲートウェイとの間の通信を前記第2の通信手段によって確立し、
前記モバイルユーザ装置の前記地理的位置を前記第1の情報ゲートウェイに提供し、
前記モバイルユーザ装置が前記第1のサービスエリアから前記第2のサービスエリアへ移動するのに先立って、
前記第1の情報ゲートウェイと前記第2の情報ゲートウェイとの間の通信を前記第1の通信手段によって確立し、
前記第2の情報ゲートウェイの前記第2の記憶手段に記憶されている少なくとも1つの利用可能なIPアドレスを前記第1の情報ゲートウェイに送信し、
前記利用可能なIPアドレスを前記モバイルユーザ装置に送信し、
前記第2のサービスエリアへの進入の際に、前記モバイルユーザ装置が前記利用可能なIPアドレスを利用するように設定する方法。
【請求項9】
前記第1の記憶手段および前記第2の記憶手段内の利用可能なIPアドレスのリストを動的に更新するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モバイルユーザ装置と前記第1の情報ゲートウェイとの間の通信の確立は、前記モバイルユーザ装置の起動時に行われる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
サービスエリア内の利用可能なIPアドレスのリストを記憶する方法であって、
前記サービスエリア内に位置する情報ゲートウェイであって、前記サービスエリア内の利用可能なIPアドレスのリストを記憶する記憶手段を有する情報ゲートウェイを準備し、
前記利用可能なIPアドレスのリストを動的に更新する方法。
【請求項12】
前記動的に更新することは、前記利用可能なIPアドレスに対してアドレス衝突解決処理を実行することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アドレス衝突解決処理はARP機構からなる請求項12に記載の電気通信ネットワーク。
【請求項14】
前記ARP機構は、プロキシARP、インバースARP、リバースARPおよびDHCP ARPのいずれかである請求項13に記載の電気通信ネットワーク。

【公表番号】特表2007−537622(P2007−537622A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506252(P2007−506252)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009682
【国際公開番号】WO2005/099285
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(399047921)テルコーディア テクノロジーズ インコーポレイテッド (61)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】