説明

GPS測位システム

【課題】GPS衛星を利用した測位に、測位地点の近くに高層建築物などの測位誤差要因が存在する場合にも高い精度で測位できる。
【解決手段】現地条件観測用GPS受信機30は、GPS衛星20からの電波受信に高層建築物40からの反射波の影響を受けやすい場所に設置され、GPS衛星からの電波受信による測位データと内部設定された絶対位置データとの偏差(ずれ分)を補正データとして周辺に送信する。GPS測位端末10Aは、現地条件観測用GPS受信機の周辺に位置したときに補正データを受信して現地点の測位データを補正する。
現地条件観測用GPS受信機に代えて、その地点の絶対位置(緯度、経度)データを周辺に送信する位置標識を備え、GPS測位端末は絶対位置データを検知して現地点の測位データを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星を使った移動体の測位システムに係り、特に高層建築物などの測位誤差要因による測位精度への影響を取り除いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS衛星を使った測位システムとして、電子基準点を利用したRTK(Rial Time Kinematic)GPS測位システムがある。この測位システムは、各地に電子基準点を配置し、移動体に搭載したGPS測位端末が近くの電子基準点から基準点データの配信サービスを受けることで測位するが、基準点からの距離が大きくなると測位誤差の増大や初期化時間が増大する。
【0003】
この問題を解決する手法として、複数の基準点データから、VRS(Virtual Reference Station:仮想基準点)を設定し、このVRSデータを基にGPS測位端末の測位データを補正するVRS方式が提案されている。
【0004】
図3はVRS方式の概略構成を示す。電子基準点1A、1B、1Cは数10km単位で分散配置され、GPS衛星からの電波受信で各位置での測位データを得る。測位センタ2は、電子基準点からの測位データを24時間連続して受信し、この解析により電子基準点1A、1B、1Cで囲まれるエリア上空の電離層、対流圏の状態や衛星の軌道に関する情報を掌握し、当該エリア内に仮想基準点を求め、この位置での補正データを求める。測位観測者はGPS測位端末3により測位センタ2から補正データの配信を受け、RTK−GPS方式による測位を補正することで正確な位置を算出する。
【0005】
他の補正方式として、VRS測位情報とGPS単独測位情報から移動体の位置を求める方式もある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−318270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先にあげたVRSによる補正は、電子基準点とそれによって囲まれた範囲において、電子基準点と同じ条件で測位されたものとして、補正を行うものである。実際に測位している地点近くの電子基準点で取得して測位データによる補正であれば、衛星から地球に届く間の電離層や対流圏等の条件が大きく異なることはないことから、高い精度で測位を行うことが可能である。
【0007】
しかし、この場合に実際に測位している場所でのそのほかの条件については、加味することができない。例えば、測位している近傍に高層建築物がある場合、その建築物に衛星からの電波がぶつかり反射波が発生し、衛星からの電波が測位する点に届くまでの距離が変わってしまい、ずれを生じるようになる。
【0008】
市街地などで、移動体で移動しながら測位する場合などは、時々刻々と状態が変化する。このような場合は、VRSによる補正はできても実際の場所における誤差要因を排除することはできない。
【0009】
本発明の目的は、GPS衛星を利用した測位に、測位地点の近くに高層建築物などの測位誤差要因が存在する場合にも高い精度で測位できるGPS測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するため、以下のGPS測位システムを特徴とする。
【0011】
(1)移動体に搭載されるGPS測位端末がGPS衛星からの電波受信による単独測位、またはRTK−GPS測位システムの電子基準点からの電波受信により測位を行うGPS測位システムにおいて、
GPS衛星からの電波受信に建築物からの反射波の影響を受けやすい場所に設置され、GPS衛星からの電波受信による測位データと内部設定された絶対位置データとの偏差(ずれ分)を補正データとして周辺に送信する現地条件観測用GPS受信機を備え、
前記GPS測位端末は、前記現地条件観測用GPS受信機の周辺に位置したときに前記補正データを受信して現地点の測位データを補正する手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
(2)移動体に搭載されるGPS測位端末がGPS衛星からの電波受信による単独測位、またはRTK−GPS測位システムの電子基準点からの電波受信により測位を行うGPS測位システムにおいて、
GPS衛星からの電波受信に建築物からの反射波の影響を受けやすい場所に設置され、その地点の絶対位置(緯度、経度)データを周辺に送信する位置標識を備え、
前記GPS測位端末は、前記位置標識の周辺に位置したときに前記絶対位置データを検知して現地点の測位データを更新する手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、GPS衛星からの電波受信に建築物からの反射波の影響を受けやすい場所で、GPS衛星からの電波受信による測位データと絶対位置データの偏差による補正データ、または絶対位置データを送信する手段を備えておき、この補正データまたは絶対位置データでGPS測位端末による現地の測位データを補正または更新するようにしたため、GPS衛星を利用した測位に、測位地点の近くに高層建築物などの測位誤差要因が存在する場合にも高い精度で測位できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、本実施形態を示す測位システムの要部構成図である。移動体になる自動車10にはGPS衛星20からの電波を受信して単独測位ができるGPS測位端末10Aを搭載し、任意のタイミングで現地点の測位データを求める。
【0015】
現地条件観測用GPS受信機30は、高層建築物などのGPS測位誤差要因が存在する位置近くに設置され、衛星からの受信電波が高層建築物で反射されることによる測位データの位置ずれ分(縦横方向、さらには高さ方向)を補正データとして連続的に求める。この補正データは、受信機30にその地点の絶対位置(緯度、経度)データを内部設定しておき、GPS衛星20からの電波受信で測位を行い、この測位データと内部設定された絶対位置データとの偏差(ずれ分)として作成する。この補正データの送信エリアは、受信機30の周辺(例えば半径数十メートル)のみとし、受信機30の近くを移動する自動車のGPS測位端末10Aが補正データとして受信できるようにしておく。
【0016】
このシステム構成において、移動体になる自動車10に搭載するGPS測位端末10Aが単独測位を行い、この現地点の測位データを現地条件観測用GPS受信機30の近くを走行中に受信した補正データで補正する。この補正により、衛星からの電波がGPS測位端末10Aに届くまでの距離が高層建築物40で反射されて変わっている場合の当該エリア内での位置ずれ分を補正し、高い精度の測位を得ることができる。また、GPS測位端末10Aは、GPS電波の受信による測位機能のほか、補正データの受信機能をもつもので済む。
【0017】
なお、GPS測位端末10Aは、単独測位に限らず、各地に電子基準点を配置し、移動体に搭載したGPS測位端末が近くの電子基準点から基準点データの配信サービスを受けることで測位するRTK−GPS測位システムを利用して測位するものでもよい。
【0018】
(実施形態2)
図2は、本実施形態を示す測位システムの要部構成図である。本実施形態が図1と異なる部分は、現地条件観測用GPS受信機30から測位の補正データを取得するのに代えて、移動体が走行する道路面にその地点の絶対位置(緯度、経度)データを記した位置標識50を設けておき、この位置標識50の上を走行する移動体が位置標識50に記された位置データを検知することでGPS測位端末10Aによる測位データを更新する点にある。なお、絶対位置データは、あらかじめ精密な測地を行なって設定される。
【0019】
この構成により、自動車が標識50上を通過する度に、GPS測位端末10Aによる測位データを位置標識50の絶対位置データに更新することができる。
【0020】
なお、絶対位置データは標識に記した符号(コード)に限るものでなく、到達距離が数メートルの無線電波や超音波、光発信器として同等の作用効果を得ることができる。これらの場合、位置標識は路面に設置する必要がなく、道路側面の建造物(道路壁、電柱、信号機など)に設置することができる。
【0021】
また、GPS測位端末10Aは、単独測位に限らず、各地に電子基準点を配置し、移動体に搭載したGPS測位端末が近くの電子基準点から基準点データの配信サービスを受けることで測位するRTK−GPS測位システムを利用して測位するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1を示す測位システムの要部構成図。
【図2】本発明の実施形態2を示す測位システムの要部構成図。
【図3】VRS方式の概略構成図。
【符号の説明】
【0023】
10 自動車
10A GPS測位端末
20 GPS衛星
30 現地条件観測用GPS受信機
40 高層建築物
50 位置標識

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるGPS測位端末がGPS衛星からの電波受信による単独測位、またはRTK−GPS測位システムの電子基準点からの電波受信により測位を行うGPS測位システムにおいて、
GPS衛星からの電波受信に建築物からの反射波の影響を受けやすい場所に設置され、GPS衛星からの電波受信による測位データと内部設定された絶対位置データとの偏差(ずれ分)を補正データとして周辺に送信する現地条件観測用GPS受信機を備え、
前記GPS測位端末は、前記現地条件観測用GPS受信機の周辺に位置したときに前記補正データを受信して現地点の測位データを補正する手段を備えたことを特徴とするGPS測位システム。
【請求項2】
移動体に搭載されるGPS測位端末がGPS衛星からの電波受信による単独測位、またはRTK−GPS測位システムの電子基準点からの電波受信により測位を行うGPS測位システムにおいて、
GPS衛星からの電波受信に建築物からの反射波の影響を受けやすい場所に設置され、その地点の絶対位置(緯度、経度)データを周辺に送信する位置標識を備え、
前記GPS測位端末は、前記位置標識の周辺に位置したときに前記絶対位置データを検知して現地点の測位データを更新する手段を備えたことを特徴とするGPS測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58490(P2009−58490A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228462(P2007−228462)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】