説明

GaNLEDデバイスの製造方法

【課題】レジスト層のパターニングを用いてGaNLED層を選択的に織地化する。
【解決手段】GaNLEDデバイスを製造する方法に関し、少なくともGaN層を含むスタック層が織地化される。該方法は、その表面に前記スタック層を備えた基板を用意するステップと、レジスト層を前記スタック層に直接に堆積させるステップと、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第1部分を覆い、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第2部分を覆っていないマスクを、前記レジスト層の上方に位置決めするステップと、前記レジスト層の第2部分を光源に露出するステップと、マスクを除去するステップと、レジスト層を、カリウム(potassium)を含む現像液に接触させるステップとを踏む。前記現像液は、露光された前記レジスト部分の下方に位置したエリアにおいて、表面に湿式エッチングを施すことによって、露光された前記レジスト部分を除去し、前記スタックの少なくとも上部層の表面を織地化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体プロセスの分野に関し、特に、GaNLED(窒化ガリウムLED)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNLED技術は、ノートブック、TVバックライト、一般照明などの種々の応用の開発および生産において重要である。GaN層の表面織地化(texturization)は、LEDの光取り出し効率を改善する(デバイス表面からより多くの光を取り出す)が知られている。GaNおよびバッファ層の織地化は、適切な湿式エッチング液、例えば、KOHなどを用いて、またはGaN層のドライエッチングによって行うことができる。多くの場合、湿式エッチングによる織地化は、ウエハの表面全体を粗面化することになる。ウエハでの追加プロセスが必要な場合、粗い表面は、粗面化の後に実施される他のプロセス、例えば、リソグラフステップの妨げになることがある。粗い表面が、リソグラフツールのアライメントに問題を引き起こすことがあり、これはツールがアライメントマスクを明瞭に視認できないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
LED層の選択的織地化は、先行技術、例えば、米国公開第2011/0095306号から知られており、窒化物層パターンまたはパターン化したフォトレジスト層が、層のある一定のエリアが織地化されるの防止するために使用される。織地化は、別個のステップであり、即ち、パターン化した層を形成し、例えば、露光したレジスト部分を現像し、続いて、織地化のための適切なエッチングツールへ基板を移動することが必要になる。パターン化したフォトレジスト層を用いた場合、KOHは、フォトレジストをエッチングするため、織地化のために使用できない。従って、先行技術で現時点で知られているような選択的織地化は、技術的に複雑であり、時間を要するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、レジスト層のパターニングを用いて、GaNLED層を選択的に織地化することに関する。フォトレジストパターニングを用いて、溶液に露出したエリアだけが織地化されるとともに、レジストで覆われたエリアは保護され、織地化されない。
【0005】
本開示は、GaNLEDデバイスを製造する方法に関し、少なくともGaN層を含むスタック層が織地化される。該方法は、下記のステップを含む。
・表面に前記スタック層を備えた基板を用意するステップ。
・レジスト層を前記スタック層に直接に堆積させるステップ。
・マスクを前記レジスト層の上方に位置決めするステップ。前記マスクは、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第1部分を覆い、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第2部分を覆っていない。
・前記レジスト層の第2部分を光源に露出するステップ。
・マスクを除去するステップ。
・レジスト層を、カリウム(potassium)を含む現像液に接触させるステップ。前記現像液は、露光された前記レジスト部分の下方に位置したエリアにおいて、表面に湿式エッチングを施すことによって、露光された前記レジスト部分を除去し、前記スタックの少なくとも上部層の表面を織地化する。
【0006】
一実施形態によれば、スタック層は、GaN層と、バッファ層とを含む。前記バッファ層は、AlGaN層の上部にAlN層を備える。レジスト層は、前記AlN層の上に直接に堆積される。そして、少なくともAlN層が織地化される。
【0007】
他の実施形態によれば、前記スタック層は、GaN層を含む。前記レジストは、前記GaN層の上に直接に堆積される。そして、少なくとも前記GaN層が織地化される。
【0008】
前記湿式エッチングは、光電気化学エッチングの条件下で行ってもよい。
【0009】
一実施形態によれば、前記現像液は、1つ又はそれ以上のホウ酸カリウムの水溶液である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】GaNLEDデバイスを第1基板から第2(キャリア)基板へ移送するための先行技術のプロセスを示す。
【図2】図1のプロセスで行う金属接合ステップの詳細を示す。
【図3】特定の実施形態に係る本開示の方法を用いて織地化されたGaNスタックを示す。
【図4】本発明に係る織地化方法のステップを示す。
【図5】本発明の方法に係る図3のGaNベースの層の織地化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、下記ステップを実施することによって、少なくともGaN層を含むスタック層が織地化されるプロセスに関する。
・表面に前記スタック層を備えた基板を用意するステップ。
・レジスト層を前記スタック層に直接に堆積させるステップ。
・マスクを前記レジスト層の上方に位置決めするステップ。前記マスクは、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第1部分を覆い、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第2部分を覆っていない。
・前記レジスト層の第2部分を光源に露出するステップ。
・マスクを除去するステップ。
・レジスト層を、カリウム(potassium)を含む現像液に接触させるステップ。前記現像液は、露光された前記レジスト部分の下方に位置したエリアにおいて、露光された前記レジスト部分を除去し、前記スタックの少なくとも上部層の表面を織地化する。
【0012】
本開示について、好ましい実施形態に基づいてより詳細に説明する。以下で提供したパラメータ値の全ては、例として引用しただけに過ぎず、本発明の範囲を限定するものでない。GaNLEDデバイスを生産する1つの方法は、Si(111)ウエハ上でのLED製造の後に適用される、GaN層移送プロセスによるものであり、GaN層へのpおよびnコンタクト形成を含む。パッシベーション層を付与した後、接合金属を堆積する。そして、ウエハは、約250℃の温度での金属接合を用いて、Siキャリア基板(これはSi(100)基板またはSi(111)基板でもよい)に接合される。次に、元のSi(111)基板は、研削(grinding)および湿式エッチングによって完全に除去される。こうしてGaNLEDは、新しいキャリア基板に移送される。
【0013】
図1は、前の段落で要約した方法に係る接合ステップの概要を示す。最初に、GaNLEDデバイス1は、Si(111)基板2の上に製造される(図1(a))。これは、先行技術で知られているように、下記ステップによって行うことができる。
1.GaNベースのLED層のエピタキシャル成長。
2.ドーパント活性化アニール。
3.LEDメサ3のドライエッチング。
4.リフトオフを用いて、Agベースのp型コンタクトおよびTi/Alベースのn型コンタクト4/5のパターニング。
5.CVDによるSiO金属間絶縁体(IMD: inter-metal dielectric)6の堆積。
6.ドライエッチングを用いて、p型電極およびn型電極に向かうコンタクトホールのパターニング。
7.Auベースの相互接続層7の堆積およびパターニング。
8.CVDによるSiOパッシベーション層8の堆積。
【0014】
GaNベースのLED層は、アイクストロン社(Aixtron)MOCVDエピ・リアクタを用いて堆積できる。全スタック厚は、約3.7μmであり、欠陥密度を低減するための、AlN/AlGaN/GaN層を含むバッファ層と、n型SiドープGaNクラッド層およびp型MgドープGaNクラッド層と、多重InGaN量子井戸(MQW)と、InGaN電子ブロック層(EBL)とからなる。メサエッチングは、p型GaN、EBL、MQWおよびn型GaNの一部を除去して、その結果、フィールド領域でのGaNスタック9の残部厚さは、2.8〜3μmである。
【0015】
そして、Cu/Sn接合層10を製造する。図1(b)参照。図2に詳細に図示している(図2では、簡潔さのためにデバイス層1を示していない)。Cu堆積のためのシード層(30nmTiW/150nm、不図示)が、デバイスウエハの酸化物パッシベーションの上部に堆積できる。同じタイプのシード層は、Si(100)またはSi(111)キャリアウエハの上に直接堆積してもよい。シード層の堆積後、5μmCu層11、そして10μmSn層12が電気メッキを用いてデバイスウエハ上に堆積される。そして、Cu/Snの同じ層が、キャリアウエハ20の上に電気メッキされる。金属層の他の組成を使用してもよく、他の厚さのこれらの層でもよい。例えば、一方の表面がCu/Sn層を受け入れて、他方の表面がCu層だけを受け入れてもよい。両面にCu/Sn層を使用する利点は、接合前にSn表面のクリーニング処理を必要としない点である。
【0016】
メタライゼーションの後、図2に示した手順を用いて、適切な装置内、例えば、EVG 520ボンダーで、2つのウエハは接合される(図1(c))。最初に、2つのウエハを接触させる。そして、接合チャックの温度を250℃に上昇させて、10分間維持する。同時に、1000Nの荷重をウエハスタックに印加する。再び、これらのパラメータは、単なる例に過ぎず、開示範囲を限定するものでない。
【0017】
金属接合は、Cu−Sn系の拡散はんだ付け(あるいは液相拡散接合)によって行われる。はんだ層12(Sn)が溶けて、適度な温度(250℃)で2つの母層(Cu)の中に拡散すると、銅と錫の金属間化合物(CuSn)からなる層13を形成する。CuSn金属間化合物は、元のSn(232℃)よりかなり高い融点(>415℃)を有する。これは、いずれか後続(高温)プロセスの際、金属シールが固体状態で持続するという利点を提供する。
【0018】
そして、Si(111)デバイスウエハは、2つの処理ステップで除去される。即ち、Siデバイス基板を、〜100μmまたはそれ未満の厚さに薄くするステップ(図1(d))と、残ったSiの湿式エッチングのステップ(図1(e))。Siウエハを元の厚さ1000μmから100μmへ薄くするのは、研削またはラップ仕上げ(lapping)、および研磨によって実施できる。Siデバイス基板をさらに除去するには、HNA液(HF:HNO:CHCOOHからなるエッチング液)を用いた等方性Si湿式エッチングプロセスが適用できる。そして、これらのステップの後、織地化(texturization)およびコンタクト21の孔開けが行われる(図1(f))。実際の織地化ステップは、図1には示していないが、以下、詳細に説明する。
【0019】
図3は、デバイス基板2の除去後(即ち、図1(e)に示すように)、キャリアウエハ20上に存在した状態でのスタック9の構成の詳細を示す。バッファ層が上部に存在しており、アンドープGaN層25、AlGaN層26(好ましくは、変化する組成を持つ多重AlGaN層のスタック)、および AlN上部層27からなる。図3に示す厚さは、現実的な層厚の例である。「デバイス層」1は、図1により詳細に示すように、LEDメサと、コンタクト層とを含む。n−GaN層24は、メサエッチング後に残る元のn−GaN層の残部である。
【0020】
本発明によれば、こうして製造したGaNスタック9は、図4に示すように、コンタクト21の孔開け前に織地化ステップが施される。レジスト層30をGaNスタック9の上に堆積し、マスク31を介して光を露光する。マスクは、レジスト層のエリア33を覆い、レジストのエリア32を覆っていない。露光した後、カリウム(potassium)を含む現像液に接触させることによって、エリア32を除去する。好ましくは、現像液は、ホウ酸カリウム水溶液(例えば、四ホウ酸カリウム(K[B(OH)]・2HO等)である。AZエレクトロニックマテリアルズ社の製品AZ400K(ホウ酸カリウムの濃縮物)を適量の脱イオン水と混合することによって、適切な現像液を準備してもよい。例えば、1部のAZ400Kと4部の脱イオン水を混合することによって、濃度0.28N(規定度)のホウ酸カリウム水溶液を持つ現像液が得られる。
【0021】
本発明によれば、カリウム含有現像液との接触は、全てのレジストが露出エリア32から除去されるまで維持され、GaNスタック9の露出エリア34が現像液との接触によって織地化されるまで続行する。バッファ層は、、通常の湿式エッチング条件下(即ち、室温かつ(光)電気化学エッチング無し)でカリウム含有現像液によってエッチングされ、その結果、織地化が得られる。
【0022】
図5は、出願人が行った特定のテストの結果を示す。上部AlN層27およびAlGaN層26の一部が織地化され、約100〜300nm(ピーク・トゥ・ピーク)の粗さが得られている。この結果を達成するために、上述したように、AZ400Kを基本にして、使用する現像液を準備した(0.28N(規定度)のホウ酸カリウム水溶液)。使用したレジストは、AZ社から入手可能な製品AZ10XTである(しかし、他のレジスト製品もAZ400K現像液などで機能する)。
【0023】
接触時間は5分間で、温度は25℃であった。一般に、本発明の方法では、この接触時間は、好ましくは5〜10分間である。レジスト現像液によって織地化が行われるため、織地化ステップの際、エリア33において除去されるレジストが無く、織地化が効率的に局所化される。レジスト除去の後、露出したエリア32(デバイスエリア)だけが織地化され、エリア33(例えば、アライメントマーク領域)は、レジストによって保護され、織地化されない。
【0024】
さらに本開示は、レジストの除去および局所エリアの織地化が1つのステップで行われるため、時間および製造コストの点で有利である。本開示の方法は、選択的織地化のためのハードマスクプロセスを要しない。
【0025】
他の実施形態によれば、デバイスウエハ2の上に存在したままで、GaNスタック9上で織地化が行われる。GaNスタック9上の堆積およびレジスト層30のパターニングを含む上述のステップは、本実施形態にも適用可能である。しかしながら、この場合、現像液と最初に接触する上部層は、レジストを除去した場合、GaN層24及び/又は、メサ3の上部にあるGaN層である(図1(a))。
【0026】
これらのGaN層での欠陥密度に依存して、上述したようなカリウム含有現像液を用いて 通常の湿式エッチング条件下で、GaN層の織地化が行われる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、GaN層の織地化は、光電気化学エッチング(PEC)によって、例えば、文献("Comparison of different GaN etching techniques", Lei Ma et al, CS MANTECH Conference, April 24-27, 2006, Vancouver)に記載された方法に従って行われる。
【0027】
さらに他の実施形態によれば、本開示に係る織地化は、図1の実施形態に従って製造されていないGaNスタック、例えば、キャリアウエハへのGaNスタックの移送を含まない他のプロセスで製造されたスタック上で行われる。
【0028】
本開示を図面および上記説明で詳細に図示し説明したが、こうした図示および説明は、事例的または例示的であって、限定的でないと考えるべきである。開示した実施形態への他の変形例は、図面、開示内容および添付の請求項の研究から、本発明を実践する当業者によって理解され実施できる。請求項において、用語「備える、含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外しておらず、不定冠詞"a"または"an"は、複数を除外していない。ある一定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという事実だけでは、これらの手段の組合せが好都合に使用できないことを示すものでない。請求項中のいずれの参照符号も、その範囲を制限するものとして解釈すべきでない。
【0029】
特別に指定していない限りは、ある層が他の層または基板の「上に」堆積または製造されるという記載は、下記のオプションを含む。
・前記層は、前記他の層または基板の上に直接に、即ち、接触した状態で製造または堆積されること。
・前記層は、前記層と前記他の層または基板との間にある1つまたはスタックの中間層の上に製造または堆積されること。
【0030】
前述の説明は、本発明のある実施形態を詳説している。しかしながら、前述のものが文章にどのように詳説しているかに関わらず、本開示は、多くの方法で実施できることは理解されよう。特定の用語の使用は、本開示のある特徴または態様を記載する際、その用語が、関連している本開示の特徴または態様の任意の特徴を含むと限定されるものとここで再定義されると意味するものと理解すべきでないことに留意する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNLEDデバイスを製造する方法であって、
・少なくともGaN層(24,25)を含むスタック層(9)を、表面に備えた基板を用意するステップと、
・レジスト層(30)を前記スタック層に直接に堆積させるステップと、
・前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第1部分(33)を覆い、前記レジスト層の1つ又はそれ以上の第2部分(32)を覆っていないマスク(31)を、前記レジスト層の上方に位置決めするステップと、
・前記レジスト層の第2部分(32)を光源に露出するステップと、
・マスク(31)を除去するステップと、
・レジスト層を、カリウムを含む現像液に接触させるステップであって、前記現像液は、露光された前記レジスト部分(32)の下方に位置したエリア(34)において、前記表面に湿式エッチングを施すことによって、露光された前記レジスト部分(32)を除去し、前記スタックの少なくとも上部層の表面を織地化するステップと、を含む方法。
【請求項2】
スタック層(9)は、GaN層(24)と、バッファ層とを含み、
前記バッファ層は、AlGaN層(26)の上部にAlN層(27)を備え、
レジスト層は、前記AlN層(27)の上に直接に堆積され、少なくともAlN層が織地化されるようにした請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スタック層(9)は、GaN層を含み、
前記レジストは、前記GaN層の上に直接に堆積され、少なくとも前記GaN層が織地化されるようにした請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記湿式エッチングは、光電気化学エッチングの条件下で行われるようにした請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記現像液は、1つ又はそれ以上のホウ酸カリウムの水溶液であるた請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
現像液との接触は、5〜10分間維持されるようにした請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記現像液は、濃度0.28Nのホウ酸カリウム水溶液であり、
現像液との接触は、25℃の温度で、5分間維持されるようにした請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110416(P2013−110416A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−256048(P2012−256048)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】