説明

GlyT1阻害剤として用いるためのモルホリニルおよびピペリジニル基を有する化合物

本発明は、式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物[R、R、R、R、R、R、R、R、R、nおよびArは明細書中の記載と同じ]ならびにかかる化合物の使用を提供する。該化合物はGlyT1トランスポーターを阻害し、統合失調症を含む、特定の神経障害および神経精神障害の処置に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシントランスポーターを阻害する化合物に、神経障害および神経精神障害、特に精神病、認知症、または注意欠陥障害を処置するための薬物の製造におけるその使用に関する。本発明は、さらにこれらの化合物およびその薬剤製剤を製造する方法を含む。
【背景技術】
【0002】
分子クローニングにより、哺乳動物の脳に、GlyT1およびGlyT2と呼ばれる2つのクラスのグリシントランスポーターが存在することが明らかになっている。GlyT1は、前脳部にて優勢的に見られ、その分布は、グルタミン作動性の経路およびNMDA受容体の分布に一致している(Smithら、Neuron、8巻、1992年、927−935頁)。分子クローニングにより、さらにGlyT−la、GlyT−1b、およびGlyT−1cと呼ばれるGlyT1の3つの変種が存在することが明らかになり(Kimら、Molecular Pharmacology、45巻、1994年、608−617頁)、これらは各々、脳および末梢の組織で独特の分布を示している。変種は、特異的なスプライシングおよびエキソンの利用によって生じ、それらのN末端領域が異なる。それとは対照的に、GlyT2は、脳幹および脊髄にて優勢的に見られ、その分布はストリキニーネ感受性のグリシン受容体の分布にぴったりと一致している(Liuら、J.Biological Chemistry、268巻、1993年、22802−22808頁;JurskyおよびNelson、J.Neurochemistry、64巻、1995年、1026−1033頁)。GlyT2が媒介するグリシン輸送の別の顕著な特徴は、GlyT1が媒介するグリシン輸送の場合のように、サルコシンによって阻害されないことである。これらのデータは、グリシンのシナプスのレベルを調節することにより、GlyT1およびGlyT2は、それぞれNMDA受容体およびストリキニーネ感受性のグリシン受容体の活性に選択的に影響を及ぼすという見解と一致する。
【0003】
NMDA受容体は、臨界的に記憶および学習に関与しており(RisonおよびStaunton、Neurosci.Biobehav.Rev.、19巻、533−552頁(1995年);Danyszら、Behavioral Pharmacol.、6455−474頁(1995年))、さらに、NMDAが媒介する神経伝達の機能の低下は、統合失調症の症状の根底をなし、または原因となっているようである(OlneyおよびFarber、Archives General Psychiatry、52巻、998−1007頁(1996年))。したがって、GlyT1を阻害し、その結果NMDA受容体のグリシンの活性化を増大する作用物質は、新規な抗精神病薬および抗認知症薬として、また、注意欠陥障害および器質性脳症候群などの認知過程が損なわれる他の疾患を処置するために用いることができる。逆に言えば、NMDA受容体の過剰な活性化は、数々の疾患状態、特に脳卒中に付随するニューロンの死、おそらくは、アルツハイマー病、多発梗塞性認知症、AIDS認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、またはニューロン細胞死が生じる他の病状、例えば脳卒中もしくは頭の外傷などの神経変性疾患に関係がある。CoyleおよびPuttfarcken、Science、262巻、689−695頁(1993年);LiptonおよびRosenberg、New Engl.J.of Medicine、330巻、613−622頁(1993年);Choi、Neuron、1巻、623−634頁(1988年)。したがって、GlyT1の活性を上昇させる薬剤はNMDA受容体のグリシン活性化の低下をもたらし、NMDA受容体の活性を用いて、これらのおよび関連のある疾患状態を処置することができる。同様に、NMDA受容体のグリシン部位を直接阻止する薬物を用いて、これらのおよび関連のある疾患状態を処置することができる。
【0004】
グリシン輸送阻害薬は、例えば、公表されている国際特許出願WO第03/055478号(SmithKline Beecham)に開示されているものなど、当技術分野ではすでに知られている。
しかし、選択的にGlyT2トランスポーターよりもGlyT1トランスポーターを阻害するものを含めた、GlyT1トランスポーターを阻害することができるさらなる化合物を同定する必要が依然としてある。
この度、一連の新規な化合物がGlyT1トランスポーターを阻害し、したがって、統合失調症を含む、特定の神経障害および神経精神障害の処置に有用であることが見出された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、第1の態様では、式(I):
【化1】

【0006】
[式中:
RおよびRは、その結合する炭素原子と一緒になって、置換されていてもよいC3−8シクロアルキルまたは置換されていてもよいC3−8複素環を形成するか;あるいは
Rは置換されていてもよいC1−8アルキル、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル、置換されていてもよいC3−8複素環、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;Rは水素、ハロゲン、置換されていてもよいC1−8アルキルおよび置換されていてもよいC3−8シクロアルキルからなる群より選択され;
は水素、ハロゲン、置換されていてもよいC1−8アルキルおよび置換されていてもよいC3−8シクロアルキルからなる群より選択され;
、R、RおよびRは、独立して、水素またはハロゲンから選択され;
およびRは、独立して、水素、ハロゲン、C1−4アルキルからなる群より選択されるか、あるいはRおよびRは一緒になってC3−4シクロアルキルを形成し;
Arは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり;および
nは0、1、2または3を意味する]
で示される化合物、またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0007】
本明細書で用いられる「アルキル」なる語は、全ての異性体型の直鎖または分枝のアルキルを意味する。C1−4アルキルの例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルが含まれる。C1−8アルキルの例には、C1−4アルキルの他に、ペンチル、ネオペンチル、sec−ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルが含まれる。
本明細書で用いられる「シクロアルキル」なる語は、非芳香族の環状飽和炭化水素環を意味する。例えば、C3−4シクロアルキルとして、シクロプロピル、およびシクロブチルが含まれる。C3−8シクロアルキルの例には、さらに、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクタニルが挙げられる。
【0008】
本明細書で用いられる「C3−8複素環」なる語は、1から3個の炭素原子が、N、OおよびSから独立して選択されるヘテロ原子によって置換されているC3−8シクロアルキル基を意味する。一例として、アジリジニル、オキセタニル、オキシラニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ジチアニル、アゼパニルおよびオクタヒドロアゾシニルが挙げられる。本明細書で用いられる「C4−8複素環」なる語は、1から3個の炭素原子が、N、OおよびSから独立して選択されるヘテロ原子によって置換されているC4−8シクロアルキル基を意味する。一例として、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチエニル、ジオキサニル、ジチアニル、アゼパニルおよびオクタヒドロアゾチニルが挙げられる。
本明細書で用いられる「アリール」なる語は、5員または6員の単環芳香族基、または8員から11員の二環芳香族基を意味する。一例として、フェニル、インデニル、アズレニル、およびナフチルが挙げられる。
【0009】
本明細書で用いられる「ヘテロアリール」なる語は、1、2、3、または4個の炭素原子がN、O、およびSから独立して選択されるヘテロ原子によって置換されている5員または6員の単環芳香族基、あるいは、1から4個の炭素原子がN、O、およびSから独立して選択されるヘテロ原子によって置換されており、環の1つが部分的にまたは完全に飽和していてもよい8員から11員の二環芳香族基を意味する。5員または6員の単環ヘテロアリールの例には、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、トリアゾリル、トリアジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、およびピリミジニルが含まれ、両方の環が芳香族である8員から11員の二環ヘテロアリールの例には、キノキサリニル、キナゾリニル、ピリドピラジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ナフチリジニル、キノリニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル[4,5−b]ピリジニル、ピリドピリミジニル、およびイソキノリニルが含まれる。環の1つが部分的にまたは完全に飽和している8員から11員の二環のヘテロアリールの例には、ジヒドロベンゾフラニル、インダニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、ソインドリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ベンズオキサジニル、およびベンゾアゼピニルが含まれる。
【0010】
本明細書で用いられる「ハロゲン」およびその略語である「ハロ」なる語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
本明細書で用いられる「塩」なる語は、無機または有機の酸または塩基、4級アンモニウム塩、および内部に形成されている塩から調製される本発明による化合物のあらゆる塩を意味する。生理学的に許容できる塩は、親化合物に比べて水溶性が高いので医薬の応用に特に適している。そのような塩は、明らかに、生理学的に許容できる陰イオンまたは陽イオンを有していなければならない。本発明の化合物の適切に生理学的に許容できる塩には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの無機酸で形成される酸付加塩、および酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、イソチオン酸、粘液酸、ゲンチシン酸、イソニコチン酸、サッカリン酸、グルクロン酸、フロ酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン(パモン)酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルフィニル酸、アルギン酸、ガラクトウロン酸、およびアリールスルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸などの有機酸で形成される酸付加塩、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、ならびに、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルマイン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)、リジン、およびプロカインなどの有機塩基で形成される塩基の付加塩、ならびに内部に形成される塩が含まれる。非生理学的に許容できる陰イオンまたは陽イオンを有する塩は、生理学的に許容できる塩の調製のための、および/または、例えばインビトロの状態の非治療で使用するための有用な中間化合物として、本発明の範囲内にある。
【0011】
本明細書で用いられる「溶媒和物」なる語は、溶質(本発明では、式(I)の化合物またはその塩)および溶媒により形成される様々な化学量論の複合体を意味する。本発明の目的のそのような溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害してはならない。適切な溶媒の例には、それだけには限定されないが、水、メタノール、エタノール、および酢酸が含まれる。好ましくは、用いる溶媒は、医薬上許容される溶媒である。適切な医薬上許容される溶媒の例には、水、エタノールおよび酢酸が含まれる。用いる溶媒が水であるのが最も好ましい。
【0012】
本明細書で用いられる、「置換されていてもよい」なる語は、
ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、ニトロ、C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロC1−4アルキル、ハロC1−4アルコキシ、アリールC1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、ヒドロキシC1−4アルキル、C1−4アルコキシC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルC1−4アルコキシ、C1−4アルカノイル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルスルホニルオキシ、C1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル、アリールスルホニル、アリールスルホニルオキシ、アリールスルホニルC1−4アルキル、C1−4アルキルスルホンアミド、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミドC1−4アルキル、C1−4アルキルアミドC1−4アルキル、アリールスルホンアミド、アリールカルボキシアミド、アリールスルホンアミドC1−4アルキル、アリールカルボキシアミドC1−4アルキル、アロイル、アロイルC1−4アルキル、アリールC1−4アルカノイル、C1−4アシル、アリール、アリールC1−4アルキル、C1−4アルキルアミノC1−4アルキル、基R10N−、ROCO(CH、RCON(R10)(CH、R10NCO(CH、RRNSO(CHまたはRSONR10(CH(ここで、RおよびR10は、各々独立して、水素またはC1−4アルキルから選択されるか、もしくは必要に応じてR10は、C3−6アザシクロアルカンもしくはC3−6(2−オキソ)アザシクロアルカン環の部分を形成し、mは0、1、2、3、もしくは4である)、または基R10N(CH−またはR10N(CHO−(ここで、pは1、2、3または4である);置換基がR10N(CH−またはR10N(CHO−である場合は、基の(CH部分の少なくとも1つのCHを有するRは、C3−6アザシクロアルカンを形成することもでき、R10は水素であってもよく、C1−4アルキルまたはそれが結合している窒素とともに第1のC3−6アザシクロアルカンに縮合している第2のC3−6アザシクロアルカンを形成する。さらに、Rが所望により置換されていてもよいC3−8シクロアルキル、または所望により置換されていてもよいC3−8複素環である場合、所望により置換されていてもよいシクロアルキルまたは複素環の基はさらに、C1−3アルキレン基により所望により架橋されていてよい。
【0013】
1つを超える置換基がある場合には、置換基は異なっていても同じでもよい。置換基が存在する場合には、置換基の数は、1、2、3、または4個であることが好ましい。
一実施形態では、RおよびRは一緒になって、所望により置換されていてもよいC3−8シクロアルキルまたは所望により置換されていてもよいC3−8複素環を形成する。例えば、RおよびRはテトラヒドロピラニル、シクロヘキシル、ピペリジニルを形成してもよく、それらは、各々、二重結合を有する、テトラヒドロピラニリデン、シクロヘキシリデンおよびピペリジニリデンを形成するであろう。
【0014】
もう一つ別の実施形態では、Rはフェニルなどのアリールであり、Rは上記したとおりである。
一の実施形態では、RおよびRは共に水素である。
一の実施形態において、R、RおよびRは水素であり、Rはフッ素である。
一の実施形態において、Arは、C1−4アルキル、CF、ハロゲンまたはC3−6シクロアルキルから選択される1個または2個の基により置換されていてもよいフェニルなどの所望により置換されていてもよいアリールである。
一の実施形態において、nは1である。
一の実施形態において、RおよびRは共に水素である。
【0015】
一の実施形態において、本発明は、式(Ia):
【化2】

【0016】
[式中:
Rは、その各々が、ハロゲン、オキソ、シアノ、C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロC1−4アルキル、ハロC1−4アルコキシ、アリールC1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルコキシC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルC1−4アルコキシ、C1−4アルカノイル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル、アリールスルホニル、アリールスルホニルC1−4アルキル、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミドC1−4アルキル、アロイル、アロイルC1−4アルキル、C1−4アシル、アリール、アリールC1−4アルキル、C1−4アルキルアミノC1−4アルキル、基R10N−、RCON(R10)(CHまたはR10NCO(CH(ここで、RおよびR10は、各々独立して、水素またはC1−4アルキルから選択されるか、または必要に応じてR10はC3−6アザシクロアルカン環の部分を形成し、mは0、1、2、3または4である)からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されていてもよい、C1−8アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8複素環、アリールまたはヘテロアリールからなる群から選択され;
【0017】
Zは水素、フッ素または塩素であり;および
Arは、その各々が、ハロゲン、オキソ、シアノ、C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロC1−4アルキル、ハロC1−4アルコキシ、アリールC1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルコキシC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルC1−4アルコキシ、C1−4アルカノイル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル、アリールスルホニル、アリールスルホニルC1−4アルキル、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミドC1−4アルキル、アロイル、アロイルC1−4アルキル、C1−4アシル、アリール、アリールC1−4アルキル、C1−4アルキルアミノC1−4アルキル、基R10N−、RCON(R10)(CHまたはR10NCO(CH(ここで、RおよびR10は、各々独立して、水素またはC1−4アルキルから選択されるか、または必要に応じてR10はC3−6アザシクロアルカン環の部分を形成し、mは0、1、2、3または4である)からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されていてもよい、フェニルまたはヘテロアリールを意味する]
で示される化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0018】
式(I)の化合物の実施形態および特徴の全てが、式(Ia)の化合物に適用される。
好ましい実施形態の様々な態様は、不適切でない場合には、それぞれ他の好ましい実施形態の態様と組み合わせることができることを理解されたい。
本発明の化合物の一例として、(2E)−N−({1−[(4−エチルフェニル)メチル]−4−ピペリジニル}メチル)−N−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−3−フェニル−2−プロペンアミド、あるいはその塩または溶媒和物が挙げられる。
【0019】
式(I)の化合物は、1つを超える形態で結晶化する能力を有することがある。これは、多形として知られる特徴であり、このような多形性の形態(「多形体」)は、式(I)の範囲内にあることが理解される。多形は、一般に、温度、または圧力、または双方の変化に対する反応として起こることがあり、結晶化の過程における変動にも起因する。多形体は、X線回折のパターン、溶解性、および融点など、当技術分野で知られている様々な物理的特徴によって区別することができる。
本明細書に記載した化合物のあるものは、立体異性体の形態で存在することができる(すなわち、これらは1つまたは複数の不斉炭素原子を含むことがあり、またはシス−トランス異性体を表すことがある)。個々の立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマー)、およびこれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。かくして、以下に示される式(I)の各形態、ならびにその混合物も本発明の範囲内にある。
【0020】
【化3】

【0021】
同様に、式(I)の化合物は、式に示したもの以外の互変体の形態で存在することができ、これらも本発明の範囲内に含まれることが理解される。
上記したように、式(I)の化合物の個々のエナンチオマーを調製することができ、そのようなエナンチオマーに対する好ましい立体化学の指示が与えられている。好ましい一実施形態では、光学的に純粋なエナンチオマーが望ましい。「光学的に純粋なエナンチオマー」なる語は、化合物が、約90重量%を超えて所望の異性体を含み、好ましくは約95重量%を超えて所望の異性体を含み、最も好ましくは約99重量%を超えて所望の異性体を含み、この重量パーセントは化合物の異性体の全重量をもとにしている。
本発明の化合物は、標準的な化学を含む、様々な方法により製造することができる。先に定義したあらゆる変数は、別段の記載がなければ、先に定義した意味を継続して有する。例示的な一般的な合成方法を以下に述べ、次いで、本発明の特定の化合物を、実施例で調製する。
【0022】
一般式(I)の化合物は、以下の合成スキームに一部述べるような有機合成の技術分野で知られている方法を参照にして、また方法により、前述の文書に開示されている方法により調製することができる。感受性の基または反応性の基に対する保護基を、化学の一般的原理に従って、必要に応じて使用することが十分に理解されることも、以下に記載するスキームの全てで認識される。有機合成の標準方法に従って、保護基を操作する(T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts(1991年)、Protecting Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons)。これらの基は、当業者であれば容易に明白である方法を用いて、化合物の合成の都合のよい段階で除去する。プロセスの選択、ならびに反応条件およびそれらを行う順番は、式(I)の化合物の調製に一致する。当業者であれば、式(I)の化合物に立体中心が存在するか否かを理解するであろう。したがって、本発明は、両方の可能な立体異性体を含み、ラセミ化合物だけではなく個々のエナンチオマーも含む。立体化学が特定の位置で可変的であると示唆される場合、立体異性体の混合物を得ることができ、この混合物は示される場合には分離されている。立体異性体は、高速液体クロマトグラフィーまたは他の好適な手段により分離することができる。単一のエナンチオマーの化合物が望まれる場合には、立体特異的な合成により、または最終化合物の分割により、またはあらゆる好都合な中間化合物により得ることができる。最終化合物、中間化合物、または出発材料の分割は、当技術分野では知られているあらゆる適切な方法により行うことができる。例えば、「Stereochemistry of Organic Compounds」E.L.Eliel、S.H.Wilen、およびL.N.Mander著(Wiley−Interscience、1994年)を参照されたい。
【0023】
先に定義した式(I)の化合物を調製するための典型的な反応経路を、スキーム1および2に示す。
一般構造(2)および(3)の出発物質、ならびに試薬(7)、(8)、(9)および(13)は、文献で知られているか、当技術分野で知られている方法を用いて調製することができる。
【0024】
【化4】


ここで、R、R−R、nおよびArは、上記(1)で定義した通りであり、Lは脱離基である。
【0025】
脱離基の例として、ハロゲン、ヒドロキシ、OC(=O)アルキル、OC(=O)O−アルキル、およびOSOMeが挙げられる。好ましくは、Lはハロゲンであり、工程(ii)、(iv)および(v)におけるアシル化は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中で行うことができる。Lがヒドロキシを表す場合には、反応を、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート]などのジイミド試薬の存在下で、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中で行う。
【0026】
還元工程(i)は、不活性溶媒中での触媒的水素化分解(例えば、低級アルコールまたは酢酸エチル中のパラジウム/炭素を用いて)および触媒的移動の水素化分解(例えば、パラジウムブラックおよびギ酸のメタノール溶液)または化学還元(例えば、鉄および酢酸)など、周知の方法を用いて行うことができる。
還元工程(iii)および(vii)は、テトラヒドロフランなどの不活性溶媒中、水素化アルミニウムリチウムを用いて還元するなどの標準的方法を用いて達成することができる。還元的アミノ化工程(vi)は、例えば、1,2−ジクロロエタンまたはジクロロメタンなどの不活性溶媒中、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤の存在下、(3)をアルデヒド(8)と反応させる、既知の方法を用いて行われうる。
【0027】
【化5】

【0028】
ここで、R、RないしR、nおよびArは(1)にて定義したとおりであり、Lはスキーム1にて定義した脱離基であって、Pは保護基である。
保護基Pの例として、t−ブチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、ベンジルオキシカルボニルおよび所望により置換されていてもよいベンジルが挙げられる。脱保護条件は個々の保護基に依存するであろう;上記した基の場合、これらの条件は、各々、酸性(例えば、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸)、塩基性(例えば、水性メタノールなどの溶媒中の炭酸カリウム)および不活性溶媒中の触媒性水素化分解(例えば、低級アルコールまたは酢酸エチル中のパラジウム/チャコールの使用)である。保護基を相互変換することもこの範囲内にある。
【0029】
還元工程(i)、還元的アミノ化工程(ii)およびアシル化工程(iii)はスキーム1に記載されるように達成されうる。アミン(12)の化合物(1)への変換は、適当なケトン(RまたはR=H)またはアルデヒド(R=R=H)を用いての還元的アミノ化などの既知の方法により、あるいは炭酸カリウムなどの塩基の存在下、ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中でアルキル化剤を用いるN−アルキル化を介して達成され得る。別法として、アルキル化は、ミツノブ条件下、すなわち、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランなどの不活性溶媒中、トリフェニルホスフィンまたはトリブチルホスフィンなどのホスフィン試薬およびジエチルアゾジカルボキシラート、ジイソプロピルアゾジカルボキシラートまたは1,1’−アゾジカルボニルジピペリジンなどのアゾジカルボニル試薬の存在下、適当なアルコールを用いて達成され得る。
【0030】
従って、第2の態様において、本発明は、式(I)の化合物の調製方法であって、
(a)式(II):
【化6】

[式中、RないしR、nおよびArは式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物を、式(III):
【化7】

[式中、R、RおよびRは式(I)の記載と同意義であり、Lは脱離基である]
で示される化合物と反応させるか;あるいは
【0031】
(b)式(IV):
【化8】

[式中、RおよびRないしRは式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物を、式(V):
【化9】

[式中、R、R、nおよびArは式(I)の記載と同意義であり、Zはハロゲン、ヒドロキシまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシなどの脱離基を意味する]
で示される化合物と反応させるか;あるいは
【0032】
(c)nが1、2または3である式(I)の化合物の場合、上記で定義した式(IV)の化合物を、式(VI):
【化10】

[式中、R、RおよびArは式(I)の記載と同意義であり、pはnから1を引いた数であり、AはRまたはRである]
で示される化合物と反応させ;
【0033】
次いで、工程(a)、工程(b)または工程(c)について、
いずれの保護基を除去してもよく、および/または、
式(I)の化合物を、別の式(I)の化合物に変換してもよく、および/または、
塩もしくは溶媒和物を形成してもよい
工程を含む、方法を提供する。
【0034】
式(I)の化合物は、標準の技術を用いて、式(I)のさらなる化合物に変換することができる。例えば、また、限定的なものとしてよりむしろ例示として、可能な変換反応には、塩化アセチルなどの好適なアシル化試薬でのアシル化、ヨウ化メチルなどの好適なアルキル化試薬を用いるアルキル化、および無水メタンスルホン酸などのスルホニル化剤を用いたスルホニル化が含まれる。
医薬上許容される塩は、慣例的には、好適な酸または酸誘導体との反応により調製することができる。
本発明の化合物は、GlyT1トランスポーターを阻害する。化合物は、GlyT2トランスポーターよりもGlyT1トランスポーターを選択的に阻害することができる。
このような化合物は、ある種の神経障害および神経精神障害の処置に適する。本明細書で用いられる「処置」、および「処置する」は、確立された症状の緩和および/または治療、ならびに予防を意味する。
【0035】
本発明の化合物のGlyT1トランスポーターに対する親和性は、以下のアッセイにより決定することができる:
グリシン(タイプ1)トランスポーターを発現するHEK293細胞を、L−グルタミン2mM、G418 0.8mg/ml、および加熱不活化したウシ胎児血清(Gibco BRL)10%を含む細胞培養液(DMEM/NUTmixF12)中、37℃、5%COで増殖させた。T175フラスコで70−80%のコンフルエントに増殖させた細胞を回収し、アッセイバッファー[NaCl(140mM)、KCl(5.4mM)、CaCl(1.8mM)、MgSO(0.8mM)、HEPES(20mM)、グルコース(5mM)、およびアラニン(5mM)、pH7.4]に、1.6x10細胞/mlで再懸濁した。等容量のLeadseeker(登録商標)SPAビーズ(アッセイバッファー中12.5mg/mlで懸濁)を細胞に加え、細胞/ビーズ懸濁液25μLを、アッセイバッファー14μLを含む384ウェルの白色固体底プレートの各ウェルに移した(20000細胞/ウェル)。化合物を、DMSO中10mMのストックとして調製した。5mMの最高濃度から化合物の2倍の段階希釈を、DMSOで作成した。各濃度の化合物1μLを、384ウェルのパラレル分取を用いてアッセイプレートに添加した。各ウェルに基質(10μL)を加えた(グリシン5mMを含むアッセイバッファーに[H]−グリシンの1:40希釈)。最終のDMSO濃度=2%。5分間暴露して、PerkinElmer Viewluxを用いてデータを回収した。Grafitを用いてIC50値を決定した。
【0036】
以下の代替のアッセイも用いることができる。
グリシン(タイプ1)トランスポーターを発現するHEK293細胞を、細胞培養液[L−グルタミン2mM、G418 0.8mg/ml、および加熱不活化したウシ胎児血清10%を含むDMEM/NUTmixF12]で、37℃および5%COで増殖させた。T175フラスコで70−80%のコンフルエントに増殖させた細胞を回収し、アッセイバッファー[NaCl 140mM、KCl 5.4mM、CaCl1.8mM、MgSO0.8mM、HEPES20mM、グルコース5mM、およびアラニン5mM、pH7.4]中、1.6x10細胞/mLで再懸濁した。10mMの最高濃度から化合物をDMSOで2倍に段階希釈し、各化合物から16データポイントの投与量−反応を得た。各濃度の化合物250nLをアッセイプレートに添加した。等容量のリードシーカー(LeadseekerTM)WGA SPAビーズ(アッセイバッファー中12.5mg/mlで懸濁)を細胞懸濁液に加え、細胞/ビーズ懸濁液12.5μLを、試験化合物250nLを含有する384ウェルの白色固体底プレートの各ウェルに移した(10000細胞/ウェル)。各ウェルに基質(12.5μL)を加えた[グリシン2mMを含むアッセイバッファーに[H]−グリシンストックの1:100希釈]。最終のDMSO濃度は1v/v%であった。パーキン・エルマー・ビューレックスを用いてデータを集めた。Grafitを用いてIC50値を決定した。
【0037】
化合物のplC50が4.8以上、または10μMの濃度で阻害が30%を超える場合に、化合物はGlyT1トランスポーターで活性があるとみなされる。以下の例の化合物は、GlyT1トランスポーターでplC50が6.0を超えることが見出された。本発明の好ましい化合物は、GlyT1トランスポーターでplC50が6.0を超えることが判明した。
したがって、本発明のさらなる一態様では、治療で使用するための、前述の式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
本発明のもう一つ別の態様では、GlyT1が媒介する障害の処置に使用するための、前述の式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0038】
本明細書で用いる「GlyT1が媒介する障害」なる語は、GlyT1トランスポーターの活性を変更する薬物を投与することにより処置することができる障害を意味する。上記に記載したように、GlyT1トランスポーターの作用は、NMDA受容体周囲のグリシンの局部濃度に影響を及ぼす。NMDA受容体が効率よく機能するためには、ある量のグリシンが必要とされるので、グリシンの局所濃度に対するあらゆる変化はNMDAが媒介する神経伝達に影響を及ぼし得る。上記に記載したように、NMDAが媒介する神経伝達は、認知症、うつ病および精神病、例えば統合失調症、ならびに学習障害および記憶障害、例えば注意欠陥障害および自閉症などの、ある種の神経精神障害に関係している。したがって、GlyT1トランスポーターの活性を変更すると、このような障害に影響を及ぼすと考えられる。
【0039】
本明細書で言及するGlyT1が媒介する障害は、統合失調症、認知症、ならびに注意欠陥障害および器質脳症候群などの他の形態の認知損傷を含めた、神経障害および神経精神障害を含む。他の神経精神障害には、薬物性(フェンシクリジン、ケタミン、および他の解離性麻酔薬、アンフェタミンおよび他の精神賦活薬、ならびにコカイン)精神病、情動障害に関連する精神病、短期反応精神病、統合失調情動精神病、およびNOS精神病、統合失調質もしくは統合失調症性人格障害などの「統合失調症圏」障害、または精神病(例えば、大うつ病、躁うつ性(双極性)障害に付随する疾患、アルツハイマー病、および外傷後ストレス症候群)、ならびに自閉症などのNMDA受容体に関連する障害、うつ病、良性健忘症、小児期学習障害、および閉塞性頭部外傷が含まれる。
【0040】
本発明のもう一つ別の態様では、上記で定義した式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、GlyT1が媒介する障害に罹患しており、または感受性のある、ヒトを含む哺乳動物を処置する方法が提供される。
本発明のもう一つ別の態様では、上記で定義した式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の、GlyT1が媒介する障害を処置するための薬剤の調製における使用が提供される。
上記に記載した使用または方法で処置する、GlyT1が媒介する障害は、統合失調症、認知症、および注意欠陥障害を含む精神病、特に統合失調症であることが好ましい。
【0041】
本明細書で用いられる「有効量」なる語は、例えば研究者または臨床医が探求する組織、系、動物、またはヒトの生物学的反応または医学的反応を誘発する、薬物または薬剤の量を意味する。
本発明にしたがって用いる化合物は原材料として投与することができるが、有効成分は医薬組成物の形態で提供することが好ましい。
したがって、本発明のさらなる一態様では、上記に記載した式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの医薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0042】
これらの医薬組成物は、例えば統合失調症など、GlyT1阻害薬が指摘される臨床的病状の処置に用いることができる。担体は、受容者にとって薬学的に許容できなければならず、組成物中の他の成分と相容性でなければならず、すなわち心身に有害な作用を有してはならない。担体は固体でも液体でもよく、単位投与量形態として、式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の少なくとも1つとともに処方することが好ましい。所望により、他の生理学的に活性な成分を、本発明の医薬組成物に組み入れてもよい。
【0043】
本発明の文脈内では、本明細書に用いる用語は、American Psychiatric Association(DSM−IV)発行のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版、および/またはInternational Classification of Diseases、第10版(ICD−10)で分類されているものである。本明細書で言及する障害の様々な亜型は、本発明の部分として企図されるものである。以下に列挙する疾患の後の括弧内の番号は、DSM−IVにおける分類番号を意味する。
【0044】
詳しく述べると、式(I)の化合物は、亜型である、妄想型(295.30)、解体型(295.10)、緊張型(295.20)、鑑別不能型(295.90)、および残遺型(295.60)を含む統合失調症;統合失調症様障害(295.40);亜型である双極型およびうつ型を含む、統合失調感情障害(295.70);亜型である色情型、誇大妄想型、嫉妬型、被害妄想型、身体型、混合型、および非特定型を含む妄想性障害(297.1);短期精神障害(298.8);共有精神障害(297.3);妄想を伴う亜型および幻覚を伴う亜型を含む一般的な医学的病状による精神障害;妄想を伴う亜型(293.81)および幻覚を伴う亜型(293.82)を含む物質誘発性精神障害;および他に特定されない精神障害(298.9)の処置に有用である。
【0045】
式(I)の化合物は、大うつ病エピソード、そう病エピソード、混合エピソード、および軽そう病エピソードを含む気分障害;大うつ病性障害、気分変調性障害(300.4)、他に特定されないうつ病性障害(311)を含むうつ病性障害;I型双極性障害、II型双極性障害(軽そう病エピソードを伴う再発性大うつ病エピソード)(296.89)、循環障害(301.13)、および他に特定されない双極性障害(296.80)を含む双極性障害;うつ病の特徴を伴う亜型、大うつ病様エピソードを伴う亜型、そう病の特徴を伴う亜型、および混合型の特徴を伴う亜型)を含む一般的な医学的病状による気分障害(298.83)、物質誘発性気分障害(うつ病の特徴を伴う亜型、そう病の特徴を伴う亜型、および混合型の特徴を伴う亜型を含む)、ならびに他に特定されない気分障害を含む気分障害(296.90)を含む、他の気分障害の処置にも有用である。
【0046】
式(I)の化合物は、不安発作、広場恐怖症、パニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症(300.22)、動物型、自然環境型、血液−注射−外傷型、状況型、およびその他の型の亜型を含む特定恐怖症(300.29)、対人恐怖症(300.23)、強迫性障害(300.3)、心的外傷ストレス障害(309.81)、急性ストレス障害(308.3)、全般性不安障害(300.02)、一般的な医学的病状による不安障害(293.84)、物質誘発性不安障害、および他に特定されない不安障害(300.00)を含む不安障害の処置にも有用である。
【0047】
式(I)の化合物は、物質依存症および物質乱用などの物質使用障害;物質中毒、物質離脱、物質誘発性せん妄、物質誘発性持続性認知症、物質誘発性持続性健忘性障害、物質誘発性精神障害、物質誘導性気分障害、物質誘発性不安障害、物質誘発性性的機能不全、物質誘発性睡眠障害、および幻覚発現薬性持続性知覚障害(フラッシュバック)などの物質誘発性障害;アルコール依存症(303.90)、アルコール乱用(305.00)、アルコール中毒(303.00)、アルコール離脱(291.81)、アルコール中毒せん妄、アルコール離脱せん妄、アルコール誘発性持続性認知症、アルコール誘発性持続性健忘性障害、アルコール誘発性精神障害、アルコール誘発性気分障害、アルコール誘発性不安障害、アルコール誘発性性的機能不全、アルコール誘発性睡眠障害、および他に特定されないアルコールに関連する障害(291.9)などのアルコールに関連する障害;アンフェタミン依存症(304.40)、アンフェタミン乱用(305.70)、アンフェタミン中毒(292.89)、アンフェタミン離脱(292.0)、アンフェタミン中毒せん妄、アンフェタミン誘導性精神障害、アンフェタミン誘導性気分障害、アンフェタミン誘導性不安障害、アンフェタミン誘導性性機能障害、アンフェタミン誘導性睡眠障害、および他に特定されないアンフェタミンに関連する障害(292.9)などのアンフェタミン(またはアンフェタミン様)に関連する障害;カフェイン中毒(305.90)、カフェイン誘導性不安障害、カフェイン誘導性睡眠障害、および他に特定されないカフェインに関連する障害(292.9);大麻依存症(304.30)、大麻乱用(305.20)、大麻中毒(292.89)、大麻中毒せん妄、大麻誘発性精神障害、大麻誘発性不安障害、および他に特定されない大麻に関連する障害(292.9)などの大麻に関連する障害;コカイン依存症(304.20)、コカイン乱用(305.60)、コカイン中毒(292.89)、コカイン離脱(292.0)、コカイン中毒せん妄、コカイン誘発性精神障害、コカイン誘導性気分障害、コカイン誘導性不安障害、コカイン誘導性性的機能不全、コカイン誘導性睡眠障害、および他に特定されないコカインに関連する障害(292.9)などのコカインに関連する障害;幻覚発現薬依存症(304.50)、幻覚発現薬乱用(305.30)、幻覚発現薬中毒(292.89)、幻覚発現薬性持続性知覚障害(フラッシュバック)(292.89)、幻覚発現薬中毒せん妄、幻覚発現薬誘導性精神障害、幻覚発現薬誘導性気分障害、幻覚発現薬誘導性不安障害、および他に特定されない幻覚発現薬に関連する障害(292.9)などの幻覚発現薬に関連する障害;吸入薬依存症(304.60)、吸入薬乱用(305.90)、吸入薬中毒(292.89)、吸入薬中毒せん妄、吸入薬誘発性持続性認知症、吸入薬誘発性精神障害、吸入薬誘発性気分障害、吸入薬誘発性不安障害、および他に特定されない吸入薬に関連する障害(292.9)などの吸入薬に関連する障害;ニコチン依存症(305.1)、ニコチン離脱(292.0)、および他に特定されないニコチンに関連する障害(292.9)などのニコチンに関連する障害;オピオイド依存症(304.00)、オピオイド乱用(305.50)、オピオイド中毒(292.89)、オピオイド離脱(292.0)、オピオイド中毒せん妄、オピオイド誘発性精神障害、オピオイド誘発性気分障害、オピオイド誘発性性的機能不全、オピオイド誘導性睡眠障害、および他に特定されないオピオイドに関連する障害(292.9)などのオピオイドに関連する障害;フェンシクリジン依存症(304.60)、フェンシクリジン乱用(305.90)、フェンシクリジン中毒(292.89)、フェンシクリジン中毒せん妄、フェンシクリジン誘導性精神障害、フェンシクリジン誘導性気分障害、フェンシクリジン誘導性不安障害、および他に特定されないフェンシクリジンに関連する障害(292.9)などのフェンシクリジン(またはフェンシクリジン様)に関連する障害;鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬依存症(304.10)、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬乱用(305.40)、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬中毒(292.89)、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬離脱(292.0)、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬中毒せん妄、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬離脱せん妄、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬持続性認知症、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬持続性健忘障害、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬誘発性精神障害、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬誘発性気分障害、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬誘発性不安障害、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬誘発性性的機能不全、鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬誘発性睡眠障害、および他に特定されない鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬に関連する障害(292.9)などの鎮静薬、催眠薬、または抗不安薬に関連する障害;各種薬物の依存症(304.80)などの各種薬物に関連する障害;ならびに、タンパク同化ステロイド、硝酸吸入薬、および亜酸化窒素などの他の(もしくは未知の)物質に関連する障害を含めた、物質に関連する障害の処置にも有用である。
【0048】
式(I)の化合物は、原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、日周期リズム睡眠障害(307.45)、および他に特定されない睡眠異常(307.47)などの睡眠異常等の原発性睡眠障害;悪夢障害(307.47)、夜驚症障害(307.46)、夢遊障害(307.46)、および他に特定されない錯睡眠(307.47)などの錯睡眠等の原発性睡眠障害;別の心的障害に関連する不眠症(307.42)および別の心的障害に関連する過眠症(307.44)などの別の心的障害に関連する睡眠障害;一般的な医学的病状による睡眠障害、亜型である不眠型、過眠型、錯睡眠型、および混合型を含む物質誘発性睡眠障害を含めた睡眠障害の処置にも有用である。
【0049】
式(I)の化合物は、亜型である制限型およびむちゃ食い/排出型を含む拒食症(307.1);亜型である排出型および非排出型を含む神経性過食症(307.51);肥満;強迫性摂食障害;および他に特定されない摂食障害(307.50)などの摂食障害の処置にも有用である。
式(I)の化合物は、自閉性障害(299.00);亜型である注意欠陥多動障害混合型(314.01)、注意欠陥多動障害不注意優勢型(314.00)、注意欠陥多動障害多動性優勢型(314.01)、および他に特定されない注意欠陥多動障害(314.9)を含む注意欠陥多動障害;他動性障害;亜型である小児期発症型(321.81)、青年期発症型(312.82)、および特定されない発症(312.89)を含む行為障害、反抗挑戦性障害(313.81)、および他に特定されない破壊的行動障害などの破壊的行動障害;ならびにトゥーレット障害(307.23)などのチック障害の処置にも有用である。
【0050】
式(I)の化合物は、亜型である妄想性人格障害(301.0)、統合失調質人格障害(301.20)、統合失調型人格障害(301.22)、反社会性人格障害(301.7)、境界型人格障害(301.83)、演技性人格障害(301.50)、自己愛性人格障害(301.81)、回避性人格障害(301.82)、依存性人格障害(301.6)、強迫性人格障害(301.4)、および他に特定されない人格障害(301.9)を含む人格障害の処置にも有用である。
【0051】
式(I)の化合物は、統合失調症、双極性障害、うつ病、認知損傷に付随する他の精神障害および精神病状などの、他の疾患における認知損傷の処置を含めた、認知の向上にも有用である。本発明の文脈内では、認知損傷は、例えば、注意、見当識、学習障害、記憶(すなわち記憶障害、健忘症、健忘性障害、一過性全健忘症候群、および年齢に付随する記憶の障害)、ならびに言語機能を含む認知機能の障害;脳卒中の結果としての認知損傷、アルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、エイズに関連する認知症、または多発梗塞性認知症、アルコール性認知症、甲状腺機能低下に関連する認知症、ならびに小脳萎縮症および筋萎縮性側策硬化症などの他の変性障害に付随する認知症などの他の痴呆状態;せん妄またはうつ病(仮性痴呆状態)のトラウマ、頭部外傷、年齢に関連する認知低下、脳卒中、神経変性、薬物誘発性状態、神経毒性物質、軽度の認知損傷、年齢に関連する認知損傷、認知損傷に関連する自閉症、ダウン症候群、精神病に関連する認知欠損、および電気ショック処置後に関連する認知損傷;ならびにパーキンソン病、神経遮断薬誘発性パーキンソニズム、および遅発性ジスキネジーなどの運動障害の処置を含む。
【0052】
式(I)の化合物は、性的欲求低下障害(302.71)および性嫌悪障害(302.79)などの性的衝動障害;女性性的刺激障害(302.72)および男性勃起障害(302.72)などの性的刺激障害;女性オルガスム障害(302.73)、男性オルガスム障害(302.74)、および早発射精(302.75)などのオルガスム障害;性交疼痛(302.76)および膣痙(306.51)などの性交疼痛障害;他に特定されない性的機能不全(302.70);露出症(302.4)、フェチシズム(302.81)、窃触症(302.89)、小児性愛(302.2)、性的マゾヒズム(302.83)、性的サディズム(302.84)、服装倒錯性フェチシズム(302.3)、窃視症(302.82)、および他に特定されない性倒錯(302.9)などの性倒錯;小児における性同一性障害(302.6)、および青年期または成年における性同一性障害(302.85)などの性同一性障害;ならびに他に特定されない性的障害(302.9)を含めた、性的機能不全の処置にも有用である。
【0053】
本発明は、統合失調症、気分障害、不安障害、物質に関連する障害、睡眠障害、摂食障害、自閉症障害、注意欠陥他動性障害、破壊的行動障害、チック障害、人格障害、他の疾患における認知損傷、性的機能不全、パーキンソン病、運動障害、うつ病、双極性障害、認知損傷、肥満、嘔吐、運動障害、強迫性障害、健忘症、攻撃性、めまい、認知症、および日周期リズム障害の処置に使用するための、前記に記載した式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物も提供する。
【0054】
本発明は、精神障害、統合失調症、パーキンソン病、物質の乱用、運動障害、うつ病、双極性障害、不安、認知損傷、摂食障害、肥満、性的機能不全、睡眠障害、嘔吐、運動障害、強迫性障害、健忘症、攻撃性、自閉症、めまい、認知症、日周期リズム障害、および胃運動性障害の処置に使用するための、前記に記載した式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物も提供する。
本発明の別の一態様では、上記で定義した式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の有効量を投与することを含む、GlyT1が媒介する障害に罹患しており、または感受性のある、ヒトを含む哺乳動物を処置する方法が提供される。
【0055】
本発明は、上記に記載した式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、統合失調症、気分障害、不安障害、物質に関連する障害、睡眠障害、摂食障害、自閉症障害、注意欠陥多動性障害、破壊的行動障害、チック障害、人格障害、他の疾患における認知損傷、性的機能不全、パーキンソン病、運動障害、うつ病、双極性障害、認知損傷、肥満、嘔吐、運動障害、強迫性障害、健忘症、攻撃性、めまい、認知症、および日周期リズム障害を処置する方法も提供する。
【0056】
本発明は、上記に記載した式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、精神障害、統合失調症、パーキンソン病、物質の乱用、運動障害、うつ病、双極性障害、不安、認知損傷、摂食障害、肥満、性的機能不全、睡眠障害、嘔吐、運動障害、強迫性障害、健忘症、攻撃性、自閉症、めまい、認知症、日周期リズム障害、および胃運動性障害を処置する方法も提供する。
【0057】
本発明の別の一態様では、上記で定義した式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の、GlyT1が媒介する障害を処置するための薬物の調製における使用が提供される。
上記に記載した使用または方法により処置するGlyT1が媒介する障害は、統合失調症、認知症、および注意欠陥障害を含む精神病、特に統合失調症であることが好ましい。
【0058】
本発明は、統合失調症、気分障害、不安障害、物質に関連する障害、睡眠障害、摂食障害、自閉症障害、注意欠陥多動性障害、破壊的行動障害、チック障害、人格障害、他の疾患における認知損傷、性的機能不全、パーキンソン病、運動障害、うつ病、双極性障害、認知損傷、肥満、嘔吐、運動障害、強迫性障害、健忘症、攻撃性、めまい、認知症、および日周期リズム障害を処置するための薬物の製造における、前記に記載した式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0059】
本発明は、精神障害、統合失調症、パーキンソン病、物質の乱用、運動障害、うつ病、双極性障害、不安、認知損傷、摂食障害、肥満、性的機能不全、睡眠障害、嘔吐、運動障害、強迫性障害、健忘症、攻撃性、自閉症、めまい、認知症、日周期リズム障害、および胃運動性障害を処置するための薬物の製造における、前記に記載した式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の使用も提供する。
【0060】
本明細書で用いられる「有効量」なる語は、例えば研究者または臨床医が探求する組織、系、動物、またはヒトの生物学的反応または医薬上の反応を誘発する、薬物または薬剤の量を意味する。
本発明にしたがって用いる化合物は原材料として投与することができるが、有効成分は医薬組成物の形態で提供することが好ましい。
したがって、本発明のさらなる一態様では、上記に記載した式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの医薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0061】
これらの医薬組成物生物は、例えば統合失調症などGlyT1阻害薬が指摘される臨床的病状の処置に用いることができる。担体は、受容者にとって薬学的に許容できなければならず、組成物中の他の成分と相容性でなければならず、すなわち心身に有害な作用を有してはならない。担体は、固体でも液体でもよく、単位投与量形態として、式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の少なくとも1つとともに処方することが好ましい。所望により、他の生理学的に活性な成分を、本発明の医薬組成物に組み入れてもよい。
【0062】
本発明の化合物は、1つまたは複数の他の治療用物質、例えば、5HT3拮抗薬、セロトニン作用薬、NK−1拮抗薬、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、ドパミン作動性抗うつ薬、H3拮抗薬、5HT1A拮抗薬、5HT1B拮抗薬、5HT1D拮抗薬、D1作用薬、M1作用薬、および/または抗痙攣薬などの様々な抗うつ薬、ならびに非定型抗精神病薬、および向知性薬と組み合わせて用いると有利であることがあることを、当業者であれば理解するであろう。
【0063】
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な5HT3拮抗薬には、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、メトクロプラミドが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なセロトニン拮抗薬には、スマトリプタン、ラウウォルシン(rauwolscine)、ヨヒンビン、メトクロプラミドが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なSSRIには、フルオキセチン、シタロプラム、フェモキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、インダルピン、セルトラリン(setraline)、ジメルジンが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なSNRIには、ベンラファキシン、およびレボキセチンが含まれる。
【0064】
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な三環系抗うつ薬には、イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、およびノルトリプチリンが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なドパミン作動性抗うつ薬には、ブプロピオンおよびアミネプチンが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な抗痙攣薬には、例えば、ジバルプロエクス、カルバマゼピン、およびジアゼパムが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な非定型抗精神病薬には、例えば、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、およびクロザピンが含まれる。
組合せの化合物、または組成物は、同時に(同一の、もしくは異なる医薬処方のいずれかにおいて)、別々に、または逐次に投与することができることが理解されよう。
【0065】
式(I)の化合物、ならびにそれらの医薬上許容される塩および溶媒和物は、改善された精神障害の処置を提供するための、他の典型的な、および非定型の抗精神病薬との組合せにも適している。式(I)の化合物、ならびにそれらの医薬上許容されるその塩および溶媒和物の組合せ、使用、および方法に付随する詳しい利点として、個々の成分に通常用いるよりも低い投与量で有効性が同等であり、または向上していることが含まれる。精神障害の、陽性症状、および/または陰性症状、および/または認知症状の処置の改善も見ることができる。本発明の処置の組合せ、使用、および方法は、ある神経遮断薬での処置に十分に反応できない患者、または耐性である患者の処置にも利点をもたらすことができる。
【0066】
本発明の併用療法は、補助的に投与することが好ましい。補助的投与は、各成分を別々の医薬組成物または装置の形態で、完全に重複し、または一部重複して投与することを意味する。2つまたはそれを超える治療用物質の治療的投与のこのレジームは、当業者および本明細書で補助的な治療的投与として概ね言及され、付加的な治療的投与でも知られる。患者が式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの神経遮断薬を、別々であるが、完全に重複し、または一部重複する治療的投与を受ける、あらゆる、かつ、全ての治療レジメンは、本発明の範囲内である。本明細書に記載した補助的な治療的投与の一実施形態では、患者は、典型的には、ある期間、1つまたは複数の構成成分の治療的投与に安定化され、次いで別の成分の投与を受ける。本発明の範囲内では、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1つの神経遮断薬の投与を受けている患者に対する補助的な治療的処置として投与することが好ましいが、本発明の範囲は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の投与を受けている患者に対する少なくとも1つの神経遮断薬の補助的な治療的投与も含む。
【0067】
本発明の併用療法は、同時に投与してもよい。同時投与は、単一の医薬組成物、または両成分を構成し、もしくは含む装置の形態で、あるいは同時に投与される成分の1つを、各々が含む別々の組成物もしくは装置として、個々の成分を一緒に投与する処置のレジメンを意味する。同時に組み合わせるための、このような別々の個々の成分の組合せは、パーツのかたまりの形態で提供することができる。
【0068】
したがってさらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1つの神経遮断薬の治療的投与を受けている患者に補助的に治療的投与することによる、精神障害を処置する方法を提供する。さらなる一態様では、本発明は、少なくとも1つの神経遮断薬の治療的投与を受けている患者における精神障害を処置するための補助的な治療的投与のための薬物の製造における、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。本発明は、少なくとも1つの神経遮断薬の治療的投与を受けている患者における精神障害を処置するための補助的な治療的投与のための、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物をさらに提供する。
【0069】
さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の治療的投与を受けている患者に、少なくとも1つの神経遮断薬を補助的に治療的投与することによる、精神障害を処置する方法を提供する。さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の治療的投与を受けている患者における精神障害を処置するための補助的な治療的投与のための薬物の製造における、少なくとも1つの神経遮断薬の使用を提供する。本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物の治療的投与を受けている患者における精神障害を処置するための補助的な治療的投与のための少なくとも1つの神経遮断薬をさらに提供する。
【0070】
さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1つの神経遮断薬と組み合わせて同時に治療的投与することによる、精神障害を処置する方法を提供する。本発明は、精神障害の処置において同時に治療的投与するための薬物の製造における、式(I)の化合物または医薬上許容されるその塩と少なくとも1つの神経遮断薬との組合せの使用をさらに提供する。本発明は、精神障害の処置において少なくとも1つの神経遮断薬と同時に治療的投与するための薬物の製造における、式(I)の化合物または医薬上許容されるその塩の使用をさらに提供する。本発明は、精神障害の処置において、少なくとも1つの神経遮断薬と同時に治療的投与するための使用のための式(I)の化合物または医薬上許容されるその塩をさらに提供する。本発明は、精神障害の処置において式(I)の化合物または医薬上許容されるその塩と同時に治療的投与をするための薬物の製造における、少なくとも1つの神経遮断薬の使用をさらに提供する。
【0071】
さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの気分安定薬または抗そう病薬、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの気分安定薬または抗そう病薬を含む、医薬組成物を含む医薬組成物を同時に治療的投与することによる精神障害を処置する方法、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1つの気分安定薬または抗そう病薬を含む医薬組成物の精神障害を処置するための薬物の製造における使用、ならびに精神障害の処置において使用するための、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1つの気分安定薬または抗そう病薬を含む医薬組成物を提供する。
【0072】
さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物、または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物、および同時に治療的投与するための神経遮断薬を各々が含む1つまたは複数のさらなる投与量形態を含む初回投与量形態を含む、精神障害の処置における使用のためのパーツのかたまりを提供する。
本発明の文脈の中で、精神障害は、統合失調症、気分障害、不安障害、物質に関連する障害、睡眠障害、摂食障害、自閉症障害、注意欠陥多動性障害、破壊的行為障害、チック障害、人格障害、他の疾患における認知損傷、性的機能不全、運動障害、うつ病、双極性障害、認知損傷、および強迫性障害、ならびに全ての本明細書で述べた様々な形態の障害など、上記に記載したこれらの障害を含み、これらは本発明の部分として企図される。
【0073】
本発明で有用な神経遮断薬/向精神薬の例として、それだけには限定されないが、ハロペリドール、ピモジド、およびドロペリドールなどのブチロフェノン系;クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、チフルプロマジン(thiflupromazine)、プロクロルペラジン、およびアセトフェナジンなどのフェノチアジン系;チオチキセン、およびクロルプロチキセンなどのチオキサンテン系;チエノベンゾジアゼピン系;ジベンゾジアゼピン系;ベンズイソキサゾール系;ジベンゾチアゼピン系;イミダゾリジノン系;ベンズイソチアゾリル−ピペラジン系;ラモトリジンなどのトリアジン系;ロキサピンなどのジベンゾオキサゼピン(dibenzoxazepine)系;モリンドンなどのジヒドロインドロン類;アリピプラゾール;ならびに抗精神病作用を有するこれらの誘導体が含まれる。
【0074】
本発明の使用に好ましい神経遮断薬を、表1に示す。
【表1−1】


【表1−2】

【0075】
選択された神経遮断薬の商品名および供給業者の例は以下の通りである。クロザピン(Mylan、Zenith Goldline、UDL、NovartisからCLOZARIL(登録商標)の商品名で入手可能)、オランザピン(LillyからZYPREX(登録商標)の商品名で入手可能)、ジプラシドン(PfizerからGEODON(登録商標)の商品名で入手可能)、リスペリドン(JanssenからRISPERDAL(登録商標)の商品名で入手可能)、フマル酸クエチアピン(AstraZenecaからSEROQUEL(登録商標)の商品名で入手可能)、ハロペリドール(Ortho−McNeilからHALDOL(登録商標)の商品名で入手可能)、クロルプロマジン(SmithKline Beecham(GSK)からTHORAZINE(登録商標)の商品名で入手可能)、フルフェナジン(Apothecon、Copley、Schering、Teva、およびAmerican Pharmaceutical Partners、PasadenaからPROLIXIN(登録商標)の商品名で入手可能)、チオチキセン(PfizerからNAVANE(登録商標)の商品名で入手可能)、トリフルオペラジン(10−[3−(4−メチル−1−ピペラジニル)プロピル]−2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン二塩酸塩、Smith Klein BeckmanからSTELAZINE(登録商標)の商品名で入手可能)、ペルフェナジン(ScheringからTRILAFON(登録商標)の商品名で入手可能)、チオリダジン(Novartis、Roxane、HiTech、Teva、およびAlpharmaからMELLARIL(登録商標)の商品名で入手可能)、モリンドン(EndoからMOBAN(登録商標)の商品名で入手可能)、およびロキサピン(WatsonからLOXITANE(登録商標)の商品名で入手可能)。さらに、ベンペリドール(Glianimon(登録商標))、ペラジン(Taxilan(登録商標))、またはメルペロン(Eunerpan(登録商標))を用いることができる。
【0076】
他の好ましい神経遮断薬には、プロマジン(SPARINE(登録商標)の商品名で入手可能)、トリフルルプロマジン(triflurpromazine)(VESPRIN(登録商標)の商品名で入手可能)、クロルプロチキセン(TARACTAN(登録商標)の商品名で入手可能)、ドロペリドール(INAPSINE(登録商標)の商品名で入手可能)、アセトフェナジン(TINDAL(登録商標)の商品名で入手可能)、プロクロルペラジン(COMPAZINE(登録商標)の商品名で入手可能)、メトトリメプラジン(NOZINAN(登録商標)の商品名で入手可能)、ピポチアジン(PIPOTRIL(登録商標)の商品名で入手可能)、ジプラシドン、および 非経口が含まれる。
【0077】
本発明の化合物は、1つまたは複数の他の治療用物質、例えば、5HT3拮抗薬、セロトニン拮抗薬、NK−1拮抗薬、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、ノルアドレナリン再取込み阻害薬、三環系抗うつ薬、ドパミン作動性抗うつ薬、H3拮抗薬、5HT1A拮抗薬、5HT1B拮抗薬、5HT1D拮抗薬、D1作用薬、M1作用薬、および/または抗痙攣薬などの様々な抗うつ薬、ならびに非定型抗精神病薬、および向知性薬と組み合わせて有利に用いることができることを、当業者であれば理解するであろう。
【0078】
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な5HT3拮抗薬には、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、メトクロプラミドが含まれる。本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なセロトニン作用薬には、スマトリプタン、ラウウォルシン、ヨヒンビン、メトクロプラミドが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なSSRIには、フルオキセチン、シタロプラム、フェモキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、インダルピン、セルトラリン、ジメルジンが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なSNRIには、ベンラファキシンおよびレボキセチンが含まれる。
【0079】
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な三環系抗うつ薬には、イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、およびノルトリプチリンが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切なドパミン作動性抗うつ薬には、ブプロピオンおよびアミネプチンが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な抗痙攣薬には、例えば、ジバルプロエクス、カルバマゼピン、およびジアゼパムが含まれる。
本発明の化合物と組み合わせて用いることができる適切な非定型抗精神病薬には、例えば、リスペリドン、オランザピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、およびクロザピンが含まれる。
【0080】
組合せの化合物、または組成物は、同時に(同一の、もしくは異なる薬剤製剤のいずれかにおいて)、別々に、または逐次に投与することができることが理解されよう。
可能な処方には、経口の、舌下の、バッカルの、非経口の(例えば、皮下の、筋肉内の、または静脈内の)、直腸の、局所の、および鼻腔内の投与に適するもの、および吸入または通気(口または鼻のいずれかによる)の投与に適する形態のものが含まれる。特定の患者に最も適する投与手段は、処置する病状の性質および重症度により、有効化合物の性質によるが、可能な場合には経口投与が好ましい。
【0081】
経口投与に適する処方は、各々が所定の量の有効成分を含む、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ剤などの別個の単位で、粉末剤もしくは顆粒剤で、水性もしくは非水性の液体の溶液もしくは懸濁剤で、または水中油型もしくは油中水型の乳剤で提供することができる。
舌下の、またはバッカルの投与に適する処方には、有効化合物、ならびに典型的には糖およびアラビアゴムもしくはトラガカントゴムなどの味付けされた基剤を含むロゼンジ剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアラビアゴムなどの不活性な基剤中に有効化合物を含む香錠が含まれる。
【0082】
非経口投与に適する処方は、典型的には、所定の濃度の有効化合物を含む滅菌の水溶液を含み、この溶液は意図する受容者の血液と等張であることが好ましい。そのような溶液は、静脈から投与することが好ましいが、皮下注射または筋肉内注射により投与することもできる。
直腸投与に適する処方は、有効成分、および、座剤の基剤を形成する1つまたは複数の固体の担体、例えばココアバターを含む、単位投与量の座剤として提供することが好ましい。
局所の、または鼻腔内の適用に適する処方には、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、パスタ剤、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾル、および油剤が含まれる。このような処方に適する担体には、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの組合せが含まれる。
【0083】
本発明の処方は、あらゆる適切な方法により、典型的には、有効化合物を液体もしくは微粉化した固体の担体、またはその両方と、望ましい比率で均一かつ完全に混合し、次いで、必要であれば得られた混合物を望ましい形状に形作ることにより調製することができる。
例えば、錠剤は、有効成分の粉末または顆粒、および1つまたは複数の所望の成分、例えば、結合剤、滑沢剤、不活性の希釈剤、もしくは界面活性の分散剤を含む均質な混合物を圧縮することにより、あるいは粉末化した有効成分および不活性の液体の希釈剤の均質な混合物を成形することにより、調製することができる。
非経口投与のための水溶液は、典型的には、有効化合物を十分な水に溶解して望ましい濃度にし、次いで得られた溶液を滅菌および等張にすることにより調製する。
【0084】
投与する正確な投与量は、患者の年齢および病状、ならびに投与の頻度および経路により、担当の医師の最終判断にあることが理解されよう。化合物は、1回のまたは分割した投与量で投与することができ、1回または複数回、例えば、1日1から4回投与することができる。
統合失調症を含む、GlyT1阻害物質が媒介する神経障害および神経精神障害を処置するために、(体重約70kgの)ヒトに対する、経口の、舌下の、非経口の、バッカルの、直腸の、鼻腔内の、または局所の投与のために、本発明により使用するための有効成分の提唱されている投与量は、例えば、1日1回から4回投与することができる単位投与量あたりの有効成分が、約1から約1000mg、好ましくは約5から約500mg、より好ましくは約10から約100mgであることができる。
【0085】
本発明を、以下の非限定的な実施例により、さらに説明する。
略語
テトラヒドロフラン THF
ジクロロメタン DCM
トリエチルアミン TEA
酢酸エチル EtOAc
重炭酸ナトリウム NaHCO
水素化アルミニウムリチウム LAH
ジメチルスルホキシド DMSO
【0086】
記載例および実施例
記載例1:4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)モルホリン
【化11】

【0087】
氷塩浴にて冷却したモルホリン(71.3ml;0.82モル)のTHF(60ml)中溶液に、3,4−ジフルオロニトロベンゼン(30g;0.18モル)を滴下した。添加後、冷却を外し、反応混合物を1.25時間にわたって室温にまで加温した。得られた淡黄色懸濁液を冷却し、水性クエン酸を25分間にわたって滴下し、つづいてさらに35分間攪拌した。トルエン(1L)を添加し、得られた溶液を水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させて標記生成物を淡黄色固体として得た(42.6g;100%)。H NMR(CDCl)δ:3.29(4H,m)、3.88(4H,m)、6.92(1H,t,J=9Hz)、7.91(1H,m)、8.00(1H,m)。
【0088】
記載例2:3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)アニリン
【化12】

【0089】
エタノール(1.2L)中の4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)モルホリンD1(42.6g、0.19モル)を、NTPで18時間、10%Pd/Cプレート(4g)上で水素化した。得られた混合物をキーゼルガーを介して濾過し、濾液を真空下で蒸発させて標記生成物(36.9g、100%)を無色固体として得た。H NMR(CDCl)δ:2.96(4H,m)、3.55(2H,brs)、3.84(4H,m)、6.41(2H,m)、6.79(1H,m)。
【0090】
記載例3:1−[(4−エチルフェニル)カルボニル]−4−ピペリジンカルボン酸エチル
【化13】

【0091】
塩化4−エチルベンゾイル(21.8ml、0.128モル)のDCM(70ml)中溶液を30分間にわたって0℃のイソニペコチン酸エチル(23.27g、0.148モル)およびTEA(41.5ml、0.296モル)のDCM(300ml)中攪拌溶液に滴下した。該反応混合物を室温にまで加温し、一夜攪拌した。該混合物を蒸発させ、残渣をEtOAc(350ml)に溶かし、水(400ml)、1M HCl(2x250ml)、NaHCO(飽和)(250ml)およびブライン(2z150ml)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥させて濃縮し、標記生成物を白色固体として得た(40.5g、95%)。H NMR(300MHz、DMSO)δ:1.1(6H,m)、1.4(2H,m)、1.7(2H,brm)、2.5(3H,m)、2.9(2H,brm)、3.45(1H,brm)、4.0(2H,q)、4.2(1H,brm)、7.10(4H,m)。
【0092】
記載例4:1−[(4−エチルフェニル)カルボニル]−4−ピペリジンカルボン酸
【化14】

【0093】
水酸化ナトリウム(300ml、1M)を、室温にて水性メタノール(300ml:300ml)中の1−[(4−エチルフェニル)カルボニル]−4−ピペリジンカルボン酸エチル D3(43.3g、0.15モル)に攪拌しながら添加した。18時間後、混合物を真空下で約500mlにまで濃縮し、2N HClで酸性にして酸性生成物を淡黄色ガムとして沈殿させ、それを放置して固化させた。該固体を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて標記生成物(35.7g、91%)を無色固体として得た。マススペクトル(電子噴射 LC/MS):測定値 262(MH)。C1519NOとして、計算値 261。
【0094】
記載例5:1−[(4−エチルフェニル)カルボニル]−N−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−4−ピペリジンカルボキシアミド
【化15】

【0095】
アルゴン下、0℃での無水トルエン(250ml)中の1−[(4−エチルフェニル)カルボニル]−4−ピペリジンカルボン酸 D4(12.65g、48.4ミリモル)に、塩化チオニル(50ml、700ミリモル)を0.5時間にわたって滴下した。得られた混合物を室温にし、18時間攪拌し、ついで真空下で蒸発させた。残渣をトルエン(x2)から蒸発させて酸塩化物の粗製物(14g、100%)をアンバー色油として得、それを精製することなく使用した。
上記の酸塩化物のDCM(50ml)中溶液を0℃の3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)アニリン(7.13g、36ミリモル)およびトリエチルアミン(14ml、101ミリモル)のDCM(450ml)中攪拌溶液に滴下した。得られた混合物を室温にし、18時間攪拌し、ついでNaHCO(飽和)と分配させた。有機相を乾燥させ、真空下で蒸発させて標記生成物(20.1g、91%)を灰白色固体として得た。マススペクトル(電子噴射 LC/MS):測定値 440(MH)。C2530FNとして、計算値 439。
【0096】
記載例6:N−({1−[(4−エチルフェニル)メチル]−4−ピペリジニル}メチル)−3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)アニリン

【0097】
無水THF(350ml)中の1−[(4−エチルフェニル)カルボニル]−N−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−4−ピペリジンカルボキシアミド D5(20.1g、46ミリモル)に、LAH(130ml、THF中1M溶液)をアルゴン下、0℃にて滴下した。反応物を室温まで加温し、ついで還流温度で3時間加熱した。室温に冷却した後、水(140ml)、2N NaOH(17ml)および水(14ml)を氷冷しながら連続して滴下した。5分後、硫酸ナトリウムを加え、攪拌をさらに10分間続け、その後で反応混合物を濾過した。固体をTHFで十分に洗浄し、合した濾液および洗浄液を真空下で蒸発させた。残渣を酢酸エチルで溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーに付し、標記生成物(13g、94%)を灰白色固体として得た。マススペクトル(電子噴射 LC/MS):測定値 412(MH)。C2534FNOとして、計算値 411。
【0098】
実施例1:(2E)−N−({1−[(4−エチルフェニル)メチル]−4−ピペリジニル}メチル)−N−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−3−フェニル−2−プロペンアミド
【化16】

【0099】
TEA(0.075ml;0.54ミリモル)含有のDCM(1.5ml)中N−({1−[(4−エチルフェニル)メチル]−4−ピペリジニル}メチル)−3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)アニリン D6(0.075g;0.18ミリモル)に、塩化シンナモイル(0.046g;0.27ミリモル)を加えた。外界温度にて18時間経過した後、反応混合物を飽和水性NaHCOで洗浄し、有機相をシリカゲルを予め充填したカートリッジにローディングし、それをDCMおよびメタノール−DCMの混合液で溶出して標記生成物(0.084g;80%)を得た。マススペクトル(電子噴射 LC/MS):測定値 542(MH)。C3440FNとして、計算値 541。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
RおよびRは、その結合する炭素原子と一緒になって、置換されていてもよいC3−8シクロアルキルまたは置換されていてもよいC3−8複素環を形成するか;あるいは
Rは置換されていてもよいC1−8アルキル、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル、置換されていてもよいC3−8複素環、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;Rは水素、ハロゲン、置換されていてもよいC1−8アルキルおよび置換されていてもよいC3−8シクロアルキルからなる群より選択され;
は水素、ハロゲン、置換されていてもよいC1−8アルキルおよび置換されていてもよいC3−8シクロアルキルからなる群より選択され;
、R、RおよびRは、独立して、水素またはハロゲンから選択され;
およびRは、独立して、水素、ハロゲン、C1−4アルキルからなる群より選択されるか、あるいはRおよびRは一緒になってC3−4シクロアルキルを形成し;
Arは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり;および
nは0、1、2または3を意味する]
で示される化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
Rがフェニルなどのアリールであるところの、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびRが共に水素であるところの、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
、RおよびRが水素であり、Rがフッ素であるところの、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
ArがC1−4アルキル、CF、ハロゲンまたはC3−6シクロアルキルより選択される1個または2個の基で置換されていてもよいフェニルなどの、置換されていてもよいアリールであるところの、請求項1−4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
nが1であるところの、請求項1―5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
およびRが共に水素であるところの、請求項1−6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式(Ia):
【化2】

[式中:
Rは、その各々が、ハロゲン、オキソ、シアノ、C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロC1−4アルキル、ハロC1−4アルコキシ、アリールC1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルコキシC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルC1−4アルコキシ、C1−4アルカノイル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル、アリールスルホニル、アリールスルホニルC1−4アルキル、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミドC1−4アルキル、アロイル、アロイルC1−4アルキル、C1−4アシル、アリール、アリールC1−4アルキル、C1−4アルキルアミノC1−4アルキル、基R10N−、RCON(R10)(CHまたはR10NCO(CH(ここで、RおよびR10は、各々独立して、水素またはC1−4アルキルから選択されるか、または必要に応じてR10はC3−6アザシクロアルカン環の部分を形成し、mは0、1、2、3または4である)からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されていてもよい、C1−8アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8複素環、アリールまたはヘテロアリールからなる群から選択され;
Zは水素、フッ素または塩素であり;および
Arは、その各々が、ハロゲン、オキソ、シアノ、C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロC1−4アルキル、ハロC1−4アルコキシ、アリールC1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルコキシC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキルC1−4アルコキシ、C1−4アルカノイル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル、アリールスルホニル、アリールスルホニルC1−4アルキル、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミドC1−4アルキル、アロイル、アロイルC1−4アルキル、C1−4アシル、アリール、アリールC1−4アルキル、C1−4アルキルアミノC1−4アルキル、基R10N−、RCON(R10)(CHまたはR10NCO(CH(ここで、RおよびR10は、各々独立して、水素またはC1−4アルキルから選択されるか、または必要に応じてR10はC3−6アザシクロアルカン環の部分を形成し、mは0、1、2、3または4である)からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されていてもよい、フェニルまたはヘテロアリールを意味する]
で示される化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
(2E)−N−({1−[(4−エチルフェニル)メチル]−4−ピペリジニル}メチル)−N−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−3−フェニル−2−プロペンアミドまたはその塩もしくは溶媒和物である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
(a)式(II):
【化3】

[式中、RないしR、nおよびArは請求項1の記載と同意義である]
で示される化合物を、式(III):
【化4】

[式中、R、RおよびRは請求項1の記載と同意義であり、Lは脱離基である]
で示される化合物と反応させるか;あるいは
(b)式(IV):
【化5】

[式中、RおよびRないしRは請求項1の記載と同意義である]
で示される化合物を、式(V):
【化6】

[式中、R、R、nおよびArは請求項1の記載と同意義であり、Zはハロゲン、ヒドロキシまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシなどの脱離基を意味する]
で示される化合物と反応させるか;あるいは
(c)nが1、2または3である式(I)の化合物の場合、上記で定義した式(IV)の化合物を、式(VI):
【化7】

[式中、R、RおよびArは請求項1の記載と同意義であり、pはnから1を引いた数であり、AはRまたはRである]
で示される化合物と反応させ;
次いで、工程(a)、工程(b)または工程(c)について、
いずれの保護基を除去してもよく、および/または、
式(I)の化合物を、別の式(I)の化合物に変換してもよく、および/または、
塩もしくは溶媒和物を形成してもよい
工程を含む、請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項11】
治療に使用するための、請求項1−9のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
GlyT1が媒介する障害の処置に使用するための、請求項1−9のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
障害が、統合失調症、認知症または注意欠陥障害を含む精神病である、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
請求項1−9のいずれかに記載の化合物の有効量を投与することを含む、GlyT1が媒介する障害に罹患しているか、感受性であるヒトを含む哺乳動物を処置する方法。
【請求項15】
障害が、統合失調症、認知症または注意欠陥障害を含む精神病である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
GlyT1が媒介する障害を処置するための薬物の調製における、請求項1−9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項17】
障害が、統合失調症、認知症または注意欠陥障害を含む精神病である、請求項16記載の使用。
【請求項18】
請求項1−9のいずれかに記載の化合物、および少なくとも1つの医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2007−533715(P2007−533715A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508960(P2007−508960)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001449
【国際公開番号】WO2005/103042
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】