説明

GnRH類似体製剤

本発明は、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を構成する組成物に関する。前記前製剤は、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる。本発明は、さらに、そのような組成物を投与することを含む治療方法、薬剤充填済み投与デバイス、および前記製剤を含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GnRHアゴニストおよび/またはアンタゴニスト等の活性物質を制御放出するためのin situ生成組成物のための製剤前駆体(前製剤(pre-formulation))、ならびにこのような製剤を用いた治療方法に関するものである。特に、本発明は、両親媒性成分と、少なくとも1種のGnRHアゴニストおよび/またはアンタゴニストまたはその他の活性物質を含む、非経口的に適用される前製剤であって、体液等の水性流体に曝露されると相転移を起こし、これにより制御放出マトリクスを形成する前製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調剤、栄養素、ビタミン等を含む多くの生理活性物質が、「機能発現枠(functional window)」を有している。すなわち、これらの作用物質が何らかの生物学的効果をもたらすことが確認できる濃度範囲が存在する。適切な身体部分における濃度(例えば、局所的な濃度、または血清中濃度として表される濃度)がある一定のレベルを下回ると、その作用物質はいかなる有益な効果も発揮しなくなる。同様に、上限濃度レベルが通常存在し、そのレベルよりも濃度を高くしたとしてもさらなるメリットは得られない。場合によっては、特定レベルを超えて濃度を高めると、望ましくない影響や、あるいは危険な影響すら及ぼすことがある。
【0003】
生理活性物質のいくつかは、生物学的半減期が長く、かつ/または機能発現枠が広いため、時として、機能的な生物学的濃度をかなりの期間(例えば、6時間から数日間)にわたって維持するように投与し得る。また、別の場合においては、クリアランス速度が速く、かつ/または機能発現枠が狭いため、生物学的濃度をこの枠の範囲内に維持するためには、少量ずつの定期的(また、さらには継続的)な投与が要求される。これは、非経口経路での投与(例えば、腸管外投与)が望ましいか、または必要である場合には、特に困難となり得る。なぜなら、自己投与が困難で、これにより、不都合および/または不十分な服薬遵守が生じる場合があるためである。このような場合には、活性が必要とされる全期間にわたって治療レベルとなるように活性物質を供給する単回投与が有利である。
【0004】
性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)(黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびゴナドレリンとしても知られる)は、主としてヒトの脳下垂体に作用する自然発生のデカペプチドホルモンである。GnRHの効果は、黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)等の下垂体ホルモンを放出させることと、排卵等のプロセスにおけるホルモン制御に寄与することである。LH(性腺刺激ホルモンとしても知られる)の放出により、卵巣および精巣におけるステロイド産生が促進され、これにより、プロゲステロン、エストロゲン、およびテストステロン/ジヒドロテストステロン(DHT)のレベルが制御される。
【0005】
GnRH自体は、pyro−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−Gly−Leu−Arg−Pro−Gly−NH(GnRH−I)という構造の翻訳後修飾デカペプチドである。2種類の天然の変異体(varients)である、5位にHis、7位にTrp、8位にTyr置換を有するGNRH−IIおよび7位にTrp、8位にLeuを有するGnRH_IIIもまた公知である。アゴニスト特性を有する数種類のペプチド類似体が公知であり、これらのほとんどにおいて、10位のGly−NHがN−Et−NHに置換されている。フェルチレリンにおいては、10位のGlyがN−Et−NHに置換されているだけであるが、GnRH−Iにさらなる置換を加えた類似体としては、リュープロレリン(ロイプロリド)(6位がD−Leu)、ブセレリン(6位がSer(Bu))、ヒストレリン(6位がd−His(Imbzl))、デスロレリン(6位がd−Trp)が挙げられる。別の一般的なノナペプチドアゴニストはゴセレリンであるが、これは、6位がSer(Bu)に置換され、10位のGly−NHがAzaGly−NHに置換されたものである。ナファレリン(Narafelin)(6位がd−Nal)およびトリプトレリン(6位がd−Trp)は、いずれも10位のGly−NH基を保持している。2つの最も一般的なGnRHアゴニスト(ロイプロリドおよびゴセレリン)の構造を以下に示す。
【0006】
ロイプロリド:pyro−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Leu−Leu−Arg−Pro−N−Et−NH(アセテート)
ゴセレリン:pyro−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Ser(Bu)−Leu−Arg−Pro−Azgly−NH(アセテート)
GnRHアンタゴニストもまた少数知られているが、これらもやはり前記GnRH−I構造をベースとしている。このようなGnRHアンタゴニストとしては、アバレリックス(D−Ala−D−Phe−D−Ala−Ser−Tyr−D−Asp−Leu−Lys(Pr)−Pro−D−Ala)、アンタレリックス(D−Nal−D−Phe−D−Pal−Ser−Phe−D−Hcit−Leu−Lys(Pr)−Pro−D−Ala)、セトロレリックス(D−Nal−D−Phe−D−Pal−Ser−Tyr−D−Cit−Leu−Arg−Pro−D−Ala)、ガニレリックス(D−Nal−D−Phe−D−Pal−Ser−Tyr−D−hArg−Leu−HArg−Pro−D−Ala)、イトレリックス(Itrelix)(D−Nal−D−Phe−D−Pal−Ser−NicLys−D−NicLys−Leu−Lys(Pr)−Pro−D−Ala)、およびNal−Glu(D−Nal−D−Phe−D−Pal−Ser−D−Glu−D−Glu−Leu−Arg−Pro−D−Ala)が挙げられる。
【0007】
単回用量のロイプロリド等のGnRHアゴニストの投与により、性腺刺激ホルモン(すなわち、LHおよびFSH)の下垂体による放出が活性化され、この結果、血清中LHおよびFSH濃度が上昇し、卵巣および精巣におけるステロイド産生が活性化される。雄性の血清中のテストステロンおよびジヒドロテストステロン(DHT)、ならびに閉経前の雌性の血清中エストロンおよびエストラジオール濃度の一時的な上昇が、当該薬剤を1日1回投与する初期治療において観察される。
【0008】
短期的および/または間欠的な治療における強力なGnRHアゴニストの効果はステロイド産生を活性化することであるが、当該薬剤が長期的な投与において動物およびヒトに及ぼす主な効果は、性腺刺激ホルモン分泌の阻害と、卵巣および精巣におけるステロイド産生の抑制である。正確な作用メカニズムは未だ完全には解明されていないが、GnRHアゴニストを用いた継続的治療は、下垂体のGnRH受容体および/または精巣のLH受容体の数を減少させ、下垂体および/または精巣の脱感作をそれぞれ引き起こすものと思われる。当該薬剤は、性腺刺激ホルモンに対する受容体の親和性には影響を与えないようである。ロイプロリドの作用メカニズムは、ステロイド産生を制御する酵素の阻害および/または誘導も含んでいる可能性がある。その他の作用メカニズムは、生物活性が変化したLH分子の分泌、またはLHおよびFSH分泌の正常な拍動パターンの攪乱を含んでいることが考えられる。
【0009】
多数の深刻な医学的徴候が、性腺ステロイドホルモンの濃度に関連する、および/または影響される。これらには、癌、特に乳癌および前立腺癌を含むある種の腫瘍性疾患ならびに良性前立腺肥大;青年における性的早熟または思春期遅発症;多毛症(hirsuitism);アルツハイマー病;ならびに性腺機能低下症、無排卵、無月経、精子減少症、子宮内膜症、平滑筋腫(子宮筋腫)、月経前症候群、および多嚢胞性卵巣疾患等の、生殖器系に関連するある一定の疾患が含まれる。この系の制御は、体外受精法においても重要である。
【0010】
GnRHアゴニストを用いた治療により、性腺ステロイドホルモン濃度の影響を受ける疾患が悪化することも考えられるが、治療を2週間前後またはそれよりも長い期間継続した場合には、上述のダウンレギュレーション効果により、これらのホルモンが去勢レベルにまで低下する。その結果、ある種の前立腺癌および乳癌等のホルモン感受性腫瘍(hormone-receptive tumours)、ならびに早発思春期(precoucious puberty)やこれら以外の上述の疾患の多くを、GnRHアゴニストを用いた長期的な治療によって改善または緩和することができる。
【0011】
長期にわたる持続的な治療、特に間欠的な投薬により所望の効果とは逆の効果がもたらされる可能性があるこのような治療においては、所望の効果を確実に達成するため、注意深い観察と患者の服薬遵守が必要であることは明らかである。GnRHアゴニストの安定した長期投薬の必要性から、数少ない持続放出製剤、特に類似体ロイプロリド(上記参照)の持続放出製剤が開発されるに至った。一番最近紹介されたロイプロリドをベースとする製品は、エリガード(Eligard)(アトリックス・ラボラトリーズ(Atrix Laboratories)社)であるが、これは、N−メチル−ピロリドン(NMP)に溶解されたポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)ポリマー製剤を含み、これに投与直前にロイプロリドが添加される。エリガードは、1ヶ月、3ヶ月、および4ヶ月用の徐放製品として入手できる。この送達システムの主な不利点は、送達賦形剤(delivery vehicle)の性質および投与の複雑さにある。リュープロンと呼ばれるロイプロリドのデポー製品およびトレルスターLAと呼ばれるトリプトレリンのデポー製品もまた利用可能であり、これらはPLGAミクロスフェアの懸濁液の形態で投与される。これらに関しても、投与は複雑であり、デポーの性質は理想的なものではない。
【0012】
特に、前記エリガード系は、3つの袋、ストッパー、針、および取り替え用プランジャーロッドを含むキットに含まれる、2つの接続可能な注射器内に充填された形態で供給される。当該組成物は、冷凍しなければ5日間しか保存できず、また30分以内に調整および投与しなければならない。混合と投与には、注射器のプランジャーロッドを取り外して入れ替えること、前記2つの注射器を接続すること、これらの間で内容物を繰り返し移動させて混合することを含む、約17の別個の工程が必要である。この方法では、首尾よく投与を行うには相当の経験を積んだ医療従事者が必要であり、また、たとえ熟練者であっても、上述の処理を行うにはかなりの時間を要することは明らかである。したがって、同様の性能を有するデポー製品を、「投与準備完了」の形態、好ましくは、通常行われているに過ぎない注射技術により直接投与できる単純な注射液の形態で提供することは極めて有利である。
【0013】
さらに、既存のGnRH類似体徐放製剤は、通常20ゲージ以上のかなり太い針により投与しなければならない。このことは、通常ポリマー分散液またはポリマーミクロスフェア懸濁液である、使用されるポリマー投薬系の性質上、必要となる。細い針を通して容易に投与でき、よって、この処置の間の患者の不快感を軽減できる、低粘度の均一な溶液からなる系を提供することが有利であることは明らかである。実際の患者への投与に先立つ、医療専門家または患者が調製に要する時間を短縮することもまた、別の重要な課題である。
【0014】
徐放製剤の分解に一般的に使用されているポリ乳酸(poly-lactate)、ポリグリコール酸(poly-glycolate)、およびポリ−ラクテート−コ−グリコレート(poly-lactate-co-glycolate)ポリマーもまた、少なくとも一部の患者において何らかの過敏反応の原因となる。特に、これらのポリマーは、通常酢酸不純物をある程度の割合で含有しており、この不純物が、投与時に注射部位を刺激する。その後前記ポリマーが分解されると、乳酸およびグリコール酸が分解物として生じ、さらなる過敏反応が引き起こされる。太い針による投与と刺激性の内容物の複合効果により、投与部位における不快感および結合性瘢痕組織の形成は、望ましいレベルを超えてしまう。
【0015】
既存のGnRH類似体デポー系のさらなる制約は、特定の患者に合うように投薬を容易に個別調整できないということである。GnRH類似体が効果的であることがわかっている特定の適応症の一つとして、早発思春期を遅らせることが挙げられるが、この適応症においては、対象の体重にかなりのばらつきがあり、体重に合わせて調整した用量を使用しなければならない。しかしながら、連結された一対の注射器によって注射剤の賦形剤に溶解または分散された予め計量した乾燥粉末を含むデポー系では、かなり広範囲にわたる事前測定用量が提供されるのでなければ、このような制御は不可能である。前記デポー製剤は、ポリマー溶液中、活性物質が均一に溶解していない場合があるため、部分的に投与することはできない。よって、対象に固有の基準で決定した用量を投与時に投与できる均一なデポー前駆体があれば、極めて有利である。
【0016】
薬剤送達の観点から、ポリマーデポー組成物には、一般に、比較的低い薬剤量(drug loads)しか受容せず、かつ「バースト/遅延(lag)」放出プロファイルを有するという不利点がある。特に、液剤またはプレポリマーとして適用した場合のポリマーマトリクスの性質により、前記組成物が最初に投与された際、薬物放出の初期バーストが起こる。その後、低放出期間があり、前記マトリクスの分解が始まり、これに引き続いて、最後に放出速度が増加し、所望の持続プロファイルに落ち着く。このバースト/遅延放出プロファイルにより、活性物質のインビボ濃度は、投与直後に機能発現枠を超えて急上昇し、持続機能濃度に到達する前の遅延期間中に、機能発現枠の下限を超えて下落し得る。機能的および毒物学的観点から、このバースト/遅延放出プロファイルが、望ましくなく、且つ、危険であり得ることは明らかである。さらに、「ピーク」点における副作用の危険により、提供可能な平衡濃度までもが制約される可能性もある。
【0017】
GnRHアゴニストの場合、投与直後における「バースト」期間とは、前記組成物が、平衡が確立されてから所望される効果とは正反対の効果を有する期間であることは明らかである。最初に投与されると、アゴニスト特性により、ステロイドホルモン産生の一時的な増加が引き起こされ、これにより、例えば、進行した前立腺癌の場合には、泌尿器系の問題の症状の悪化を招くことや、あるいは麻痺を引き起こすことすらある。この初期相の結果、「バースト」効果がなかった場合でさえ、死亡した患者の例も報告されており、持続が確立される前のバーストを回避することが好ましいことは明らかである。さらに、初期「バースト」相において不必要に多量のペプチドを患者に与えると、毒作用や商品コストの上昇をもたらす可能性がある。
【0018】
さらに、PLGAのマイクロビーズおよび懸濁液の製造も、ある一定の既存のデポー系においてはかなり困難なことである。詳細には、前記ビーズは粒状であり、またポリマーは膜を詰まらせることから、通常これらは濾過滅菌できず、さらに、PLGA共重合体は40℃前後で溶融するため、これらを熱処理により滅菌することは不可能である。その結果、複雑な製造工程を全て無菌性の高い条件下で行わなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者らは、ある種の両親媒性成分と、少なくとも1種のGnRH類似体と、生物学的に許容可能な溶媒とを、分子性溶液等の低粘度相中に含む前製剤を提供することにより、従来のGnRH類似体デポー製剤の欠点の多くに対応した前製剤を生成し得ることを立証した。特に、前記前製剤は、製造が容易であり、濾過滅菌してもよく、低粘度であり(通常細い針を通した、簡単かつ痛みの少ない投与を可能とする)、高濃度での生理活性物質の含有を可能にし(これにより、より少量の組成物の使用ですむ可能性がある)、より深度の浅い部位で注射を行えばよく、かつ/または制御可能な「バースト」または「非バースト」放出プロファイルを有する所望の非ラメラデポー組成物をインビボで形成する。また、前記組成物は、筋肉内投与、皮下投与、および各種体腔への投与が可能な非毒性で生物学的に許容可能な生分解性材料から形成される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
よって、第1の態様において、本発明は、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
一般に、前記水性流体は、体液、特に血管外液、細胞外液/間質液または血漿であり、前記前製剤は、このような流体(例えば、インビボの流体)との接触により液晶相構造を形成する。本発明の前製剤は、通常、投与前に有意量の水分を含んでいない。
【0022】
本発明の第2の態様においては、ヒトまたはヒト以外の動物(好ましくは、哺乳類)の身体にGnRH類似体を送達する方法であって、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、
c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む前製剤を腸管外投与(例えば、筋肉内または好ましくは皮下に投与)することを含み、これにより、前記前製剤が、投与後にインビボで水性流体との接触により少なくとも1つの液晶相構造を形成する送達方法がさらに提供される。このような方法で投与される前製剤は、本明細書中に記載のような本発明の前製剤であることが好ましい。
【0023】
別の態様において、本発明は、液晶デポー組成物の調製方法であって、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む前製剤をインビボで水性流体に曝露することを含む調製方法をさらに提供する。
【0024】
投与される前製剤は、本明細書中に記載のような本発明の前製剤であることが好ましい。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、(好ましくは、哺乳類である)対象への生理活性物質の投与に適した前製剤の形成方法であって、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒との低粘度混合物を形成することと、前記低粘度混合物に、あるいは、前記低粘度混合物の形成に先立ち成分a、b、またはcのうちの少なくとも1つに、少なくとも1種のGnRH類似体を溶解または分散させることを含む方法を提供する。このように形成された前製剤は、本明細書に記載されているような本発明の製剤であることが好ましい。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物の、前記GnRH類似体の持続性投与に使用される前製剤の製造における使用であって、前記前製剤は、水性流体と接触すると少なくとも1つの液晶相構造を形成することができる、低粘度混合物の使用を提供する。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、治療を必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳類である対象を、GnRH類似体を用いて治療する方法であって、前記対象に、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む前製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
前記治療方法は、癌、特に乳癌および前立腺癌を含む腫瘍性疾患ならびに良性前立腺肥大;青年における性的早熟または思春期遅発症;多毛症(hirsuitism);アルツハイマー病;ならびに性腺機能低下症、無排卵、無月経、精子減少症、子宮内膜症、平滑筋腫(子宮筋腫)、月経前(premenstral)症候群、および多嚢胞性卵巣疾患等の、生殖器系に関連するある一定の疾患から選択される少なくとも1つの疾患を治療する方法であることが好ましい。前記方法は、体外受精法(IVF)であってもよい。
【0029】
さらに別の態様において、本発明は、癌、特に乳癌および前立腺癌を含む腫瘍性疾患ならびに良性前立腺肥大;青年における性的早熟または思春期遅発症;多毛症(hirsuitism);アルツハイマー病;ならびに性腺機能低下症、無排卵、無月経、精子減少症、子宮内膜症、平滑筋腫(子宮筋腫)、月経前(premenstral)症候群、または多嚢胞性卵巣疾患等の、生殖器系に関連するある一定の疾患の治療に使用するための、あるいはIVF治療の一環として使用するためのデポーのインビボ形成に用いる低粘度前製剤医薬品の製造における、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のGnRH類似体との使用を提供する。
【0030】
本発明の前製剤は、その最終的な「投与準備完了」形態において、長期保存に対し安定しているという点で極めて有利である。その結果、これらの前製剤は、医療従事者か、あるいは十分に訓練された医療従事者である必要はなく、また複雑な調合物を調製するだけの経験またはスキルを有していなくてもよい患者またはその介護人のいずれかによって、容易に投与に供され得る。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、測定用量の本発明の前製剤を予め装填した使い捨て投与デバイス(デバイス部品も含む)を提供する。このようなデバイスは、通常、投与のための準備が完了している1回分の用量を含有し、一般的に、前記組成物が投与時までデバイス内に保存されるように無菌包装されている。好適なデバイスとしては、カートリッジ、アンプル、および、特に、一体型の針または好適な使い捨て針を収容するように適合させた標準的な(例えば、ルアー)取り付け具のいずれかを備えた注射器および注射筒が挙げられる。
【0032】
本発明の薬剤充填済みデバイスは、投与キットに適切に組み込まれていてもよく、このキットもまた、本発明の別の態様をなす。よって、さらに別の態様においては、本発明は、少なくとも1種のGnRH類似体を投与するためのキットであって、測定用量の本発明の製剤を含み、さらに投与デバイスまたはその部品を任意に含むキットを提供する。前記用量は、筋肉内投与または好ましくは皮下投与に適したデバイスまたは部品内に保持されていることが好ましい。前記キットは、針、スワブ等のような投与用部品をさらに備えていてもよく、投与に関する説明書を任意に備えていることが好ましい。このような説明書は、通常、本明細書に記載の経路での、および/または本明細書中において先に挙げた疾患の治療目的での投与に関するものである。
【0033】
本発明の製剤は、投与後に非ラメラ液晶相を生成する。生理活性物質の送達における非ラメラ相構造(液晶相等)の使用は、現在では、比較的よく確立されている。このような構造は、両親媒性化合物が溶媒に曝露された際に形成される。なぜなら、両親媒性物質は、極性基および非極性基の両方を有し、これらは一団となって極性領域および非極性領域を形成するからである。これらの領域は、極性および非極性化合物の両方を効果的に可溶化できる。さらに、両親媒性物質によって極性および/または非極性溶媒中に形成される構造の多くは、他の両親媒性化合物を吸着および安定化することができる非常に大きな面積の極性/非極性境界を有する。また、両親媒性物質は、酵素を含む侵食性の生物学的環境から少なくともある程度は活性物質を保護するように調合することができ、これにより、活性物質の安定性と放出を有利に制御することができる。
【0034】
両親媒性物質/水、両親媒性物質/油、および両親媒性物質/油/水の相図における非ラメラ領域の形成は、周知の現象である。このような相には、キュービックP相、キュービックD相、キュービックG相、およびヘキサゴナル相等、分子レベルでは流体であるが、著しい長距離秩序を示す液晶相と、非ラメラであるが液晶相の長距離秩序を欠く二分子層シートの多重相互結合両連続ネットワークを含むL3相とが含まれる。前記両親媒性物質シートの曲率に応じて、これらの相は、正(平均曲率が非極性領域を指向する)または逆(平均曲率が極性領域を指向する)と表現され得る。
【0035】
前記非ラメラ液晶相およびL3相は、熱力学的に安定な系である。すなわち、これらは単に、層やラメラ相等に分離および/または再構成される準安定な状態にあるのではなく、熱力学的に安定な脂質/溶媒混合物の形態である。
【0036】
バルク液晶相は一般に高粘性であるため、本発明の前製剤は、投与前に液晶でないことが重要である。よって、前記前製剤は、投与されると相変化を起こして液晶塊(liquid crystalline mass)を形成する低粘度非液晶製剤である。低粘度混合物の特に好ましい例は、分子性溶液および/または、L2相および/またはL3相等の等方相である。先に述べたように、L3は、何らかの相構造を有してはいるものの、液晶相の長距離秩序を欠く相互結合シートの非ラメラ相である。一般に高粘性である液晶相とは異なり、L3相は、より低い粘度を有している。L3相、分子性溶液、および/または1つ以上の成分からなるバルク分子性溶液に懸濁したL3相の粒子からなる混合物もまた好適であることは明らかである。L2相は、いわゆる「逆ミセル」相またはマイクロエマルジョンである。最も好ましい低粘度混合物は、分子性溶液、L3相、およびその混合物である。L2相は、以下に述べるような膨潤L2相の場合を除き、好適性が劣る。
【0037】
本明細書中で使用される「低粘度混合物」という用語は、対象に容易に投与し得る混合物、特に、標準的な注射器および針からなる装置によって容易に投与される混合物を表すものとして使用されている。これは、例えば、1mlの使い捨て注射器からゲージの小さい針を通して供給される能力で表してもよい。低粘度混合物は、19awgの針、好ましくは19ゲージよりも細い針、より好ましくは23awg(あるいは、最も好ましくは27ゲージ)の針を通して、指圧によって供給可能であることが好ましい。特に好ましい実施形態においては、低粘度混合物は、0.22μmのシリンジフィルター等の標準的な滅菌濾過膜を通過できる混合物とすべきである。好適な粘度の典型的な範囲は、例えば、20℃で0.1〜5000mPas、好ましくは1〜1000mPasである。
【0038】
本明細書中に示すような低粘度の溶媒を少量添加することにより、極めて顕著な粘度の変化をもたらすことができることが確認されている。図1に示すように、例えば、わずか5%の溶媒を脂質混合物に添加するだけで、粘度を100分の1にまで低下させることができ、10%の溶媒を添加すれば、粘度を10,000分の1にまで低下させられる場合もある。この非線形の相乗効果を達成するために、粘度を低下させるにあたり、適度に低粘度で、かつ好適な極性を有する溶媒を採用することが重要である。このような溶媒には、本明細書中において以下に挙げるものが含まれる。
【0039】
本発明は、本明細書中に記載の成分a、b、c、および少なくとも1種のGnRH類似体を含む前製剤を提供する。これらの成分の量は、典型的には、a)を40〜70%、b)を30〜60%、およびc)を0.1〜10%の範囲とし、GnRH類似体を0.1%〜10%の割合で存在させる。本明細書中に記載の%は、特に指定のない限り、いずれも重量%である。前記製剤は、実質的にこれらの成分のみで構成されていてもよく、一態様においては、完全にこのような成分のみで構成されている。成分a)の好ましい範囲は43〜60%、特に45〜55%であり、成分b)の好ましい範囲は35〜55%、特に40〜50%である。
【0040】
a:bの比率は、典型的には40:60〜70:30、好ましくは45:55〜60:40、より好ましくは48:52〜55:45である。50:50程度の比率が極めて効果的である。
【0041】
前製剤における溶媒成分c)の量は、いくつかの特徴に多大な影響を与える。特に、粘度および放出の速度(および持続時間)は、溶媒濃度の変化に伴い著しく変化する。よって、溶媒の量は、少なくとも低粘度混合物を供給するのに十分な量とするが、これに加えて、所望の放出速度が得られるように決定される。これは、以下に挙げる実施例に鑑みた日常的に使用される方法で決定してもよい。典型的には、溶媒の濃度を0.1〜10%とすれば、好適な放出および粘度特性が得られる。この濃度は好ましくは2〜8%であり、5%前後の量が極めて効果的である。
【0042】
本発明者らによる目覚しい発見は、放出の最初の数日間における活性物質の放出プロファイルを「調整」する上で、前記製剤中の溶媒の割合を使用できるということである。より詳細には、本発明の製剤は全て驚くほど低い「バースト/遅延」効果を有し(実際、遅延期間が全くないこともある)、注射から数日以内(例えば、5日以内、好ましくは3日以内、より好ましくは1日以内)にプラトー放出レベルに達するが、最初の1〜2日間に活性物質の制御「バースト」/初期放出が必要とされる場合には、これは、先に挙げた範囲の上部にまで溶媒の割合を高めることによって達成することができる。これに対し、上述の範囲の中間から下部では、実質的にバーストがなく、迅速にプラトー放出レベルにまで低下するデポーを生成する製剤が提供される。
【0043】
よって、一実施形態において、本発明は、成分c)を0.1〜6重量%前後含有し、投与後初期の活性化合物の放出が少ない(「非バーストプロファイル」)製剤およびデポーを提供する。別の実施形態において、本発明は、成分c)を6.5〜10重量%前後含有し、投与後初期の活性化合物の初期放出が多い(「バーストプロファイル」)製剤およびデポーを提供する。
【0044】
活性物質の初期放出が少ない(「非バーストプロファイル」)とは、最初の24時間における血漿中濃度−時間曲線下面積が、曲線全体における曲線下面積(時間0から時間無限大または時間0から最終のサンプリング時点までを測定または推定)の15%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは7%未満であることと定義される。さらに、48時間以内、より好ましくは24時間以内、最も好ましくは12時間以内にプラトーに達するように、初期ピーク後のプラトー血漿中濃度レベルまでの低下は迅速に起こるべきである。逆に、初期放出が多い(「バーストプロファイル」)とは、15%を超える活性物質が24時間以内に放出されること、より好ましくは20%を超える活性物質が最初の24時間で放出されることである。プラトーへの低下は、36時間後まで、より好ましくは48時間後まで、最も好ましくは72時間後まで起こらない。これらのプロファイルのそれぞれが、活性物質の血漿中濃度の「プラトー」レベルへの迅速な安定を伴っていることが好ましい。例えば、10日後の血漿中濃度は、5日目〜20日目の平均濃度を50%を超えて上回るかまたは下回るべきではない。これは、30%以下、より好ましくは20%以下であることが好ましい。
【0045】
先に示したように、本発明の前製剤における成分cの量は、少なくとも、成分a、b、およびcから成る低粘度混合物(例えば、分子性溶液、上記参照)を提供する上で十分な量とされ、いかなる特定の成分の組み合わせに関しても、標準的な方法で容易に決定される。偏光顕微鏡法、核磁気共鳴、および低温透過型電子顕微鏡法(cryo−TEM)と組み合わせた目視観察で溶液、L2相もしくはL3相、または液晶相、あるいはcryo−TEMの場合のように、このような相の分散された断片を観察する等の技術により、相挙動そのものを分析してもよい。標準的な手段により、粘度を直接測定してもよい。先に述べたように、実用上適切な粘度は、効果的に注射可能な、特に濾過滅菌可能な粘度である。これは、本明細書中に記載のように容易に判断できる。
【0046】
本明細書中に記載の成分「a」は、少なくとも1種のジアシルグリセロール(DAG)であり、よって、2つの非極性「尾部」基を有する。前記2つの非極性基は、同一または異なる数の炭素原子を有していてもよく、それぞれ独立して飽和または不飽和であってもよい。非極性基の例としては、C〜C32アルキルおよびアルケニル基が挙げられるが、これらは通常、長鎖カルボン酸のエステルとして存在する。これらはしばしば、炭素鎖における炭素原子数および不飽和数に言及して説明される。したがって、CX:Zは、炭素原子数がXであり不飽和数がZである炭化水素鎖を示す。例としては、特に、カプロイル(C6:0)基、カプリロイル(C8:0)基、カプリル(C10:0)基、ラウロイル(C12:0)基、ミリストイル(C14:0)基、パルミトイル(C16:0)基、フィタノイル(C16:0)基、パルミトレオイル(C16:1)基、ステアロイル(C18:0)基、オレオイル(C18:1)基、エライドイル(C18:1)基、リノレオイル(C18:2)基、リノレノイル(C18:3)基、アラキドノイル(C20:4)基、ベヘノイル(C22:0)基、およびリグノセロイル(C24:9)基が挙げられる。よって、典型的な非極性鎖は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトール酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、もしくはリグノセリン酸、またはこれらに対応するアルコールを含む、天然エステル脂質の脂肪酸をベースとするものである。好ましい非極性鎖は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸であり、特にオレイン酸である。
【0047】
任意の数のジアシル脂質の混合物を、成分aとして使用してもよい。この成分が、グリセロールジオレアート(GDO)の少なくとも一部を含むことが好ましい。極めて好ましい例は、GDOを少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、さらには実質的に100%含むDAGである。
【0048】
GDOおよびその他のジアシルグリセロールは自然源由来の生成物であるため、その他の鎖長等を有する「混入物質」としての脂質がいくらかの割合で通常存在する。よって、一態様において、本明細書中で使用されるGDOは、付随する不純物を含む商業用等級のGDO(すなわち、商業純度のGDO)を示すために使用されている。これらの不純物を精製により分離除去してもよいが、前記等級に該当すれば、このような処理はほとんど必要ない。しかしながら、必要であれば、「GDO」を、少なくとも80%が純粋なGDO、好ましくは少なくとも85%が純粋なGDO、より好ましくは少なくとも90%が純粋なGDO等、実質的に化学的に純粋なGDOであってもよい。
【0049】
本発明における成分「b」は、少なくとも1種のホスファチジルコリン(PC)である。成分aと同様に、この成分は、極性の頭部基と、少なくとも1つの非極性の尾部基を備えている。成分aと成分bとの違いは、主に極性基にある。よって、成分aに関して先に考察した脂肪酸または対応するアルコールから、前記非極性部を適切に生じさせてもよい。成分a)と同様に、前記PCは2つの非極性基を含む。
【0050】
ホスファチジルコリン部は、いかなるジアシルグリセロール部よりも好適に、自然源から派生し得る。好適なリン脂質源としては、卵、心臓(例えば、ウシの心臓)、脳、肝臓(例えば、ウシの肝臓)、および大豆を含む植物源が挙げられる。このような材料源は、成分bの構成成分を1つ以上提供し得るが、前記構成成分は、リン脂質のいかなる混合物を含んでいてもよい。これらまたはその他の材料源から生じた単一のPCまたは複数のPCの混合物を使用してもよいが、大豆PCまたは卵PCを含む混合物が極めて適している。前記PC成分は、好ましくは大豆PCまたは卵PCを少なくとも50%、より好ましくは大豆PCまたは卵PCを少なくとも75%、最も好ましくは実質的に純粋な大豆PCまたは卵PCを含有する。
【0051】
本発明の前製剤は、GnRH類似体活性物質の制御放出を目的として対象に投与されるため、前記成分が生体適合性であることが重要である。この点において、本発明の前製剤は、PCおよびDAGのいずれもが良好に許容され、インビボにて哺乳類の身体に元来存在する成分へと分解されるため、極めて有利である。
【0052】
成分aおよびbの特に好ましい組み合わせは、GDOとPC、特にGDOと大豆PCの組み合わせである。
【0053】
本発明の前製剤の成分「c」は、酸素を含有する有機溶媒である。前記前製剤は、投与(例えば、インビボでの投与)後、水性流体との接触によりデポー組成物を生成するものであるため、この溶媒は、対象にとって許容可能なものであり、前記水性流体と混合可能であり、かつ/または前記前製剤から前記水性流体中に拡散もしくは溶解可能であることが望ましい。よって、少なくとも中程度の水溶性を有する溶媒が好ましい。
【0054】
好適なバージョンでは、前記溶媒は、aおよびbを含む前記組成物に比較的少量、すなわち、好ましくは10%未満を添加した場合に、一桁以上の大幅な粘度低下をもたらす。本明細書中に記載のように、10%の溶媒の添加により、溶媒を含まない組成物に対し、その組成物が溶媒を含まない溶液またはL相、または水等の不適切な溶媒、またはグリセロールであったとしても、2桁、3桁、または4桁も粘度を低下させることができる。
【0055】
成分cとしての使用に適した代表的な溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類(ラクトン類を含む)、エーテル類、アミド類、およびスルホキシド類から選択される少なくとも1種の溶媒が挙げられる。アルコール類が特に好適であり、好適な溶媒群を形成する。好適なアルコール類の例としては、エタノール、イソプロパノール、およびグリセロールホルマールが挙げられる。エタノールが最も好ましい。ジオールおよびポリオールよりも、モノオールのほうが好ましい。ジオールまたはポリオールを使用する場合、少なくとも等量のモノオールまたはその他の好ましい溶媒と併用することが好ましい。ケトン類の例としては、アセトン、n−メチルピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、およびプロピレンカーボネートが挙げられる。好適なエーテル類としては、ジエチルエーテル、グリコフロール(glycofurol)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソバーバイド(dimethylisobarbide)、およびポリエチレングリコールが挙げられる。好適なエステル類としては、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピルが挙げられ、硫化ジメチルは、好適な硫化物溶媒である。好適なアミド類およびスルホキシド類としては、ジメチルアセトアミド(DMA)およびジメチルスルホキシド(DMSO)がそれぞれ挙げられる。
【0056】
極めて好ましい組み合わせは、大豆PCと、GDOと、エタノールの組み合わせである。
【0057】
ほとんどまたは全ての成分cが、ハロゲン置換された炭化水素を含有しないことが好ましい。なぜなら、このような成分cは、生体適合性が低くなる傾向を示すからである。ジクロロメタンまたはクロロホルム等のハロゲン化溶媒が一部必要である場合、この割合は、通常、最小限とされる。
【0058】
本明細書中で使用される成分cは、単一の溶媒であってもよいし、あるいは複数の好適な溶媒の混合物であってもよいが、通常、低粘度とされる。本発明の主たる態様の一つは低粘度の前製剤を提供することであり、好適な溶媒の主な役割はこの粘度を低下させることであるため、このことは重要である。この低下は、溶媒のより低い粘度による効果と、溶媒と脂質組成物間の分子間相互作用による効果の組み合わせの結果である。本発明者らの所見の一つは、本明細書に記載される低粘度の酸素含有溶媒は、組成物の脂質部分との間に極めて有利かつ予期しなかった分子間相互作用を引き起こし、これにより、少容量の溶媒の添加によって非線形の粘度低下をもたらすというものである。
【0059】
「低粘度」溶媒成分c(単一の溶媒または混合物)の粘度は、通常、20℃で18mPas以下とすべきである。この粘度は、好ましくは20℃で15mPas以下であり、より好ましくは10mPas以下、最も好ましくは7mPas以下である。
【0060】
本発明の前製剤のさらに別の利点は、生理活性物質をより高濃度で系に含有させられるということである。特に、成分a〜c(特に、c)を適切に選択することにより、高濃度の活性物質を前製剤に溶解または懸濁し得る。これにより、投与容量を低減し、対象の不快感を緩和することができる。
【0061】
本発明の前製剤は、通常、有意量の水分を含有してはいない。脂質組成物から微量の水分を全て除去することは実質的に不可能であるため、これは、容易に除去できない最低限の微量の水分のみが存在することを示唆するものと解釈されたい。このような量は、一般に、前製剤の1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。好ましい一態様において、本発明の前製剤は、グリセロール、エチレングリコール、またはプロピレングリコールを含有せず、直前に述べたように、ほんの微量の水分のみを含有する。
【0062】
本発明の前製剤は、1種以上のGnRH類似体またはその他の活性物質(以下参照)(本明細書中では、あらゆる「活性物質」という記載がこれらを指すものである)を含有する。GnRHはペプチドホルモンであるため、典型的なGnRH類似体は、特に12個以下のアミノ酸で構成されるペプチドである。このようなペプチドは、GnRH−I、II、および/またはIII、および/または本明細書中で挙げたものを含む1種以上の公知の類似体に、構造的に関連していることが好ましい。ペプチドは、遺伝コードに示された20個のα−アミノ酸から選択されるアミノ酸のみを含有してもよいし、あるいは、より好ましくは、これらのアミノ酸の異性体およびその他の天然および非天然アミノ酸(一般的には、α、β、またはγ−アミノ酸)、ならびにその類似体および誘導体を含有してもよい。好ましいアミノ酸としては、公知のGnRH類似体の構成成分として上述したものが挙げられる。
【0063】
アミノ酸誘導体は、ペプチドの末端に特に有用であるが、ペプチドの末端において、末端のアミノ基またはカルボキシレート基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド(amide)基、チオ基、アミド(amido)基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジまたはトリアルキルアミノ基、アルキル基(本明細書全体を通し、C〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソ−、sec−、またはt−ブチル基等を意味する)、アリール基(例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル(napthyl)基等)、またはヘテロ原子を少なくとも1つ有していることが好ましく、かつ原子の合計が10以下、より好ましくは6以下であることが好ましいこれら以外の官能基のような、その他の官能基によって、またはその他の官能基で置換されていてもよい。
【0064】
特に好ましいGnRH類似体は、6〜12個のα-アミノ酸からなる拘束性ペプチドであり、これらの特定例としては、先に挙げたもの、ならびに、特に、先に挙げた配列を有するロイプロリドおよびゴセレリンが挙げられる。
【0065】
本明細書中で使用する「GnRH類似体」は、あらゆるGnRHアゴニストまたはアンタゴニスト、好ましくはペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド類似体を指す。ペプチド由来のGnRHアゴニストが最も好ましく、これには先に挙げたもの、および、特にロイプロリドまたはゴセレリンが含まれる。
【0066】
GnRH類似体は、一般的に、製剤全体の0.02〜12重量%となるように調合される。典型的な値は、0.1〜10%、好ましくは0.2〜8%、より好ましくは0.5〜6%である。1〜5%前後のGnRH類似体含有量が最も好ましい。
【0067】
製剤に含有させるのに適したGnRH類似体の用量、よって、使用される製剤の容量は、所望の治療レベル、特定の物質の活性、および選択された特定の活性物質のクリアランス速度にはもちろん、放出速度(例えば、溶媒の種類および使用量によって制御される放出速度)および放出持続期間にも左右される。通常、1用量当たり0.1〜500mgの量が、7日間〜180日間治療レベルを提供するのに適している。この量は、1〜200mgであることが好ましい。ロイプロリドまたはゴセレリンに関しては、このレベルは、通常1〜120mg前後(例えば、持続期間30日〜180日)である。ロイプロリドの量は、30日間〜1年間、好ましくは3〜6ヶ月間の放出用に設計されたデポーに関し、注射と注射の間の期間において、一日当たり0.02〜1mg前後であることが好ましい。活性物質の安定性および放出速度の直線性は、薬剤量と持続時間が直線関係になくてもよいことを意味していることは明らかである。30日ごとに投与するデポーは、本明細書中に示すGnRH類似体のうちの1種のような活性物質を、例えば、2〜30mg含有していてもよく、90日ごとに投与されるデポーは、このような活性物質を6〜90mg含有していてもよい。
【0068】
本発明の前製剤は、腸管外投与用に調合される。この投与は、一般的には、血管内へ投与する方法ではなく、皮下、腔内、または筋肉内投与であることが好ましい。前記投与は通常注射によって行われるが、注射という用語は、本明細書中では、針、カテーテル、または無針注射器等、前記製剤が皮膚を通過するようにするあらゆる方法を示すのに使用されている。
【0069】
好ましい腸管外投与は、筋肉内注射または皮下注射によって行われ、深部皮下注射によって行われることが最も好ましい。本発明の組成物の重要な特徴は、当該組成物が、筋肉内および皮下、ならびにその他の経路により、毒作用または著しい局所効果をもたらすことなく投与可能であるということである。本発明の組成物は、腔内投与にも適している。深部皮下注射は、既存のデポーの一部で用いられる(深部)筋肉内注射と比べると深度が浅く、かつ対象が感じる痛みが少ないという利点を有し、また、注射の容易さと局所的な副作用のリスクの低さを兼ね備えていることから、本件に関しは技術的に最適である。前記製剤によれば、予測可能な期間にわたる活性物質の持続放出が、皮下注射および筋肉内注射のいずれによっても提供されるということは、本発明者らの驚くべき知見である。これにより、注射部位を広い範囲で変更できると共に、注射部位における組織の深度を詳細に検討することなく、用量を投与することができる。
【0070】
本発明の前製剤は、特にインビボで水性流体に曝露されると、非ラメラ液晶デポー組成物を提供する。本明細書中で使用される「非ラメラ」という用語は、正もしくは逆の液晶相(キュービック相もしくはヘキサゴナル相等)またはL3相、あるいはこれらの任意の組み合わせを示すのに使用されている。液晶という用語は、あらゆるヘキサゴナル液晶相、あらゆるキュービック液晶相、および/またはこれらのあらゆる混合物を示す。本明細書中で使用されるヘキサゴナルは、「正」または「逆」のヘキサゴナル(好まくは逆)を示し、「キュービック」は、特に指定のない限り、任意のキュービック液晶相を示す。
【0071】
多くの脂質の組み合わせに関しては、ある特定の非ラメラ相のみが存在するか、あるいは安定した状態で存在する。本明細書中に記載の組成物が、その他の成分の組み合わせの多くにおいては存在しない非ラメラ相を高い頻度で示すということは、本発明の驚くべき特徴である。したがって、特に有利な一実施形態では、本発明は、水性溶媒で希釈された場合にI相および/またはL相領域を存在させる成分の組み合わせを備えた組成物に関する。このような領域の有無は、いかなる組み合わせに関しても、組成物を単純に水性溶媒で希釈し、この結果生じた相構造を本明細書に記載の方法で観察することにより、簡単にテストできる。
【0072】
極めて有利な実施形態において、本発明の組成物は、水分との接触によりI相、またはI相を含む混合相を形成してもよい。I相は、不連続な水性領域を有する逆キュービック液晶相である。この相は、活性物質の制御放出に特に有利であり、特に水溶性活性物質等の極性活性物質と組み合わせた場合に特に有利である。これは、不連続な極性ドメインが、前記活性物質の迅速な拡散を防止するからである。Lのデポー前駆体は、I相デポー構成物との併用が極めて効果的である。これは、L相が、分離した極性コアを取り囲む連続的な疎水性領域を有するいわゆる「逆ミセル」相であるからである。よって、Lは、親水性の活性物質と同様の利点を有する。
【0073】
体液との接触後の過渡段階において、組成物は複数の相を含み得るが、これは、特にかなりの大きさの内部デポーを投与した場合、初期表面相の形成により、デポーのコアへの溶媒の透過が遅延されるからである。理論にとらわれることなく、この表面相、特に液晶表面相の過渡形成は、組成物とその周囲との間の交換速度を即座に制限することにより、本発明の組成物の「バースト/遅延」プロファイルを劇的に低減するように働くものと考えられる。遷移相は、(通常、外側からデポーの中心に向かって順に)HIIまたはLα、I、L、および液体(溶液)を含んでいてもよい。本発明の組成物は、生理的温度の水分との接触後に、これらの相を少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、過渡段階で同時に形成可能であることが極めて好ましい。特に、少なくとも過渡的に形成される前記相の1つがI相であることが極めて好ましい。
【0074】
本発明の前製剤が低粘度であることを理解することは重要である。その結果、これらの前製剤は、バルク液晶相であってはならない。なぜなら、液晶相は全て、注射器またはスプレーディスペンサーで投与可能な粘度よりもはるかに高い粘度を有するからである。よって、本発明の前製剤は、溶液、L相、またはL相のいずれか、特に、溶液またはLのいずれかのような、非液晶状態にある。本明細書全体を通して使用されるL相は、10重量%を超える粘度低下効果を有する溶媒(成分c)を含有する「膨潤」L相であることが好ましい。これは、溶媒を含有しないか、より少量の溶媒を含有するか、あるいは本明細書中に明記する酸素含有低粘度溶媒に付随する粘度低下効果をもたらさない溶媒(または混合物)を含有する、「濃縮」または「非膨潤」L相とは対照的である。
【0075】
本発明の前製剤は、投与されると、低粘度混合物から高粘度(通常、組織付着性)デポー組成物へと相構造転移する。通常、これは、分子混合物、膨潤Lおよび/またはL3相から、正もしくは逆ヘキサゴナルもしくはキュービック液晶相またはこれらの混合物等の1つ以上の(高粘度)液晶相への転移である。先に示したように、投与後に、さらなる相転移が起こってもよい。本発明が機能する上で、完全な相転移を必要としないことは明らかであるが、投与された混合物の少なくとも表面層が液晶構造を形成する。この転移は一般に、投与された製剤の少なくとも表面領域(空気、体表面、および/または体液と直接接触している部分)に関しては迅速である。これは、数秒または数分(例えば、最高30分、好ましくは最高10分、より好ましくは5分以下)で生じることが最も好ましい。前記組成物の残部は、拡散によって、および/または表面領域が分散するにつれて、よりゆっくりと液晶相に相変化してもよい。
【0076】
よって、好ましい一実施形態において、本発明は、水性流体との接触により、少なくともその一部がヘキサゴナル液晶相を形成する、本明細書中に記載されているような前製剤を提供する。このように形成されたヘキサゴナル相は、徐々に分散および/または分解して活性物質を放出してもよいし、あるいは引き続きキュービック液晶相へと変化し、次いでこのキュービック液晶相が徐々に分散してもよい。ヘキサゴナル相は、キュービック相構造、特にI相およびL相と比べ、活性物質、特に親水性活性物質をより迅速に放出すると考えられる。したがって、キュービック相の形成前にヘキサゴナル相が形成された場合、これは活性物質の初期放出を招き、濃度を効果的なレベルにまで急速に高め、その後、前記キュービック相が分解するにつれて、漸進的な「維持量(maintenance dose)」の放出が起こる。このようにして、放出プロファイルを制御してもよい。
【0077】
また、理論にとらわれることなく、本発明の前製剤は、(例えば、体液への)曝露により、含有する有機溶媒の一部または全部を(例えば、拡散によって)喪失すると共に、身体的環境(例えば、インビボ環境)から水性流体を取り込み、これにより、前記製剤の少なくとも一部分が非ラメラ、特に液晶相構造を生成すると考えられる。ほとんどの場合、これらの非ラメラ構造は高粘性であり、インビボ環境に容易に溶解または分散されない。この結果、限られた領域のみが体液に曝露され、モノリシック「デポー」がインビボで生成される。さらに、非ラメラ構造は大きな極性、非極性、および境界領域を有しているため、ペプチド等の活性物質を可溶化および安定化し、これらを劣化メカニズムから保護する上で極めて効果的である。前製剤から形成されたデポー組成物が数日間、数週間、または数ヶ月間にわたって徐々に分解されるにしたがい、前記組成物から活性物質が徐々に放出および/または拡散される。デポー組成物内の環境は比較的保護されているため、本発明の前製剤は、比較的短い生物学的半減期を有する活性物質(上記参照)に極めて適している。
【0078】
本発明の製剤により形成されるデポー系は、活性物質を分解から保護する上で極めて効果的であり、よって放出期間の延長を可能にする。公知のPLGA徐放製品と、GDO、大豆PC、エタノール、および活性物質を含有する本発明の製剤との間で、比較試験を行った。これらの試験により、本発明の製剤は、シミュレートされたインビボ条件下で、公知の組成物に比べ、分解の程度が低いことがわかった。よって、本発明の製剤は、20日〜360日に1回、好ましくは30日〜240日に1回、より好ましくは60日〜180日に1回だけ投与すればよいGnRH類似体のインビボデポーを提供し得る。より長く安定な放出期間が、医療従事者が要する時間を短縮するのみならず、患者の快適さおよび服薬遵守の上でも望ましいことは明らかである。
【0079】
本発明のデポー前駆体の顕著な利点は、これらが安定で均一な相であるということである。すなわち、これらは、相分離を起こすことなく、室温または冷蔵庫内温度でかなり長期間(好ましくは、少なくとも6ヶ月間)保存し得る。これにより、有利な保存が可能になるだけでなく、個々の対象の種、年齢、性別、体重、および/または身体状態を考慮したGnRH類似体の用量の選択が、選択した容量を注射することによって可能となる。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、総薬物曝露量(AUCまたは平均プラトー血漿中濃度として観察される)は注射容量に比例するにもかかわらず、活性物質の初期放出(Cmaxとして観察される)は、試料として用いた容量の注射では少なくとも10倍の範囲において、投与容量に比例しないことを発見した。それどころか、Cmaxは、注射された投与容量の表面積に相関し得ることがわかった。すなわち、Cmaxは、注射された投与容量の3分の2乗に比例する。投与容量を10倍にしても、Cmaxは10倍にはならず、よって、Cmaxと総薬剤曝露量(AUCまたは平均プラトー血漿中濃度レベル)の関係は、投与容量の増加に伴い減少を示す。このことは極めて有利である。なぜなら、この特性により、総用量を著しく増加させたとしても、潜在的に有毒な血漿薬剤濃度に達するリスクが低減されるからである。しかしながら、重要なことに、投薬が注射量に直接比例しない状況下においても、デポー前駆体の均一な性質により、事前測定用量の部分的な投与が可能となり、この投与は、対象における関連可変要素のいずれかまたは全てを考慮し得る投薬表、カルテ、ソフトウェアによる計算等を参照して行い得る。
【0080】
よって、本発明は、特に対象の体重に基づき、個々人に特異な投薬用量を選択することを含む方法を提供する。この用量選択の手段は、投与容量を選択することである。
【0081】
さらに、ロイプロリドの長期(例えば、4ヶ月)放出用に調合されたPLGA溶液型のデポーは、当該活性物質の「バースト」放出を示すが、初期バーストにおける最大濃度は、プラトーレベルにおける最大濃度の100〜600倍である。先に示したように、特にGnRHアゴニストに関しては、その初期効果が症状の悪化を招くことのある性腺ステロイド産生の増加であるため、このことは極めて不利になり得る。
【0082】
前記前製剤により、活性物質の放出プロファイルにおいて「バースト」効果がほとんど見られないデポー組成物が得られるということは、本発明者らによって成された予期しなかった発見である。このことが予期されなかったのは、前記前駆組成物の低粘度混合物(特に、これが溶液である場合)は、水分に曝露されると、NMPに懸濁したPLGAに見られるように、迅速に活性物質を喪失するものと考えられていたからである。実際には、本発明の前製剤は、表面結合した、または溶解された活性物質が、初期に「洗い落とされる」か、または「洗い流される」傾向を示す従来公知のポリマーベースのデポー組成物と比べて、初期「バースト」の程度が著しく低かった。よって、一実施形態において、本発明は、投与後における活性物質の最高血漿中濃度が、投与後24時間から5日の間における平均濃度の40倍以下となる注射前製剤およびこの前製剤から生じるデポー組成物を提供する。この比率は、前記平均濃度の25倍以下であることが好ましく、20倍以下(例えば、最高10倍、または最高5倍)であることが最も好ましい。これは、既存のPLGA/NMPデポー製品と比べて桁違いの進歩である。
【0083】
本発明の組成物は、投与後に「遅延」効果がほとんどないデポー組成物の生成も可能にする。よって、さらに別の実施形態において、本発明は、1回の投与後7日目の活性物質の血漿中濃度が、投与後21日目の活性物質の血漿中濃度以上となる注射可能な前製剤およびこの前製剤から生じるデポー組成物を提供する。同様に、最初の21日間の活性物質の濃度を、投与後30日目以降におけるいずれの時点の濃度よりも常に高くする必要がある。この徐々に低下する放出プロファイルは、徐放GnRH類似体製剤に関しては、これまでに実証されていなかった。
【0084】
本明細書中に示した特徴および好ましい特徴との組み合わせにより、本発明の前製剤は、以下に挙げる好ましい特徴を1つ以上、単独または同時に有していてもよい。
【0085】
成分a)は、GDOを含むか、実質的にGDOで構成されるか、または好ましくはGDOのみで構成される。
【0086】
成分b)は、大豆PCを含むか、実質的に大豆PCで構成されるか、または好ましくは大豆PCのみで構成される。
【0087】
成分c)は、1、2、3、もしくは4炭素アルコール、好ましくはイソプロパノール、またはより好ましくはエタノールを含むか、実質的にこのような成分で構成されるか、または好ましくはこのような成分のみで構成される。
【0088】
前記前製剤は、本明細書中に挙げたGnRH類似体から選択される少なくとも1種のGnRH類似体、好ましくはロイプロリドまたはゴセレリンを含有する。
【0089】
前記前製剤は、本明細書中に記載のような低粘度を有する。
【0090】
前記前製剤は、インビボ投与すると、本明細書中に記載のような液晶相を形成する。
【0091】
前記前製剤は、インビボ投与後にデポーを生成し、このデポーは、少なくとも30日間、好ましくは少なくとも90日間、より好ましくは少なくとも180日間にわたり、少なくとも1種のGnRH類似体を治療レベルで放出する。
【0092】
本明細書中に示した特徴および好ましい特徴との組み合わせにより、本発明の治療方法は、以下に挙げる好ましい特徴を1つ以上、単独または同時に有していてもよい。
【0093】
前記方法は、先に示した好ましい特徴を1つ以上有する製剤のうちの少なくとも1種を投与することを含む。
【0094】
前記方法は、本明細書中に記載の製剤のうちの少なくとも1種を、筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深部皮下注射によって投与することを含む。
【0095】
前記方法は、本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスにより投与することを含む。
【0096】
前記方法は、20ゲージ以下、好ましくは20ゲージ未満、最も好ましくは23ゲージ以下の針を通して投与することを含む。
【0097】
前記方法は、20日〜360日ごと、好ましくは30日〜240日ごと、より好ましくは60日〜180日ごとに1回投与することを含む。
【0098】
本明細書中に示した特徴および好ましい特徴との組み合わせにより、本明細書中に示す前製剤の医薬品の製造における使用は、以下に挙げる好ましい特徴を1つ以上、単独または同時に有していてもよい。
【0099】
前記使用は、先に示した好ましい特徴を1つ以上有する製剤のうちの少なくとも1種の使用を含む。
【0100】
前記使用は、本明細書中に記載の製剤のうちの少なくとも1種を、筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深部皮下注射によって投与するための医薬品の製造を含む。
【0101】
前記使用は、本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスにより投与する医薬品の製造を含む。
【0102】
前記使用は、20ゲージ以下、好ましくは20ゲージ未満、最も好ましくは23ゲージ以下の針を通して投与する医薬品の製造を含む。
【0103】
前記使用は、20日〜360日ごと、好ましくは30日〜240日ごと、より好ましくは60日〜180日ごとに1回投与する医薬品の製造を含む。
【0104】
本明細書中に示した特徴および好ましい特徴との組み合わせにより、本発明の薬剤充填済みデバイスは、以下に挙げる好ましい特徴を1つ以上、単独または同時に有していてもよい。
【0105】
前記薬剤充填済みデバイスは、本明細書中に記載の好ましい製剤を含有する。
【0106】
前記薬剤充填済みデバイスは、20ゲージ未満、好ましくは23ゲージ以下の針を備える。
【0107】
前記薬剤充填済みデバイスは、1回分の用量である0.1〜500mg、好ましくは1〜200mgのGnRH類似体を含む。
【0108】
前記薬剤充填済みデバイスは、ゴセレリンまたはロイプロリドを5〜90mg前後含む。
【0109】
前記薬剤充填済みデバイスは、注射準備完了形態にある本発明の組成物の均一な混合物を含む。
【0110】
前記薬剤充填済みデバイスは、5ml以下、好ましくは3ml以下、より好ましくは2ml以下の総投与容量を含む。
【0111】
本明細書中に示した特徴および好ましい特徴との組み合わせにより、本発明のキットは、以下に挙げる好ましい特徴を1つ以上、単独または同時に有していてもよい。
【0112】
前記キットは、本明細書中に記載の好ましい製剤を含む。
【0113】
前記キットは、本明細書中に記載の薬剤充填済みデバイスを含む。
【0114】
前記キットは、20ゲージ未満、好ましくは23ゲージ以下の針を含む。
【0115】
前記キットは、1回分の用量である0.1〜500mg、好ましくは1〜200mgのGnRH類似体を含む。
【0116】
前記キットは、ロイプロリドまたはゴセレリンを5〜90mg前後含有している。
【0117】
前記キットは、5ml以下、好ましくは3ml以下、より好ましくは2ml以下の総投与容量を含む。
【0118】
前記キットは、本明細書中に記載の経路および/または頻度での投与に関する説明書を含む。
【0119】
前記キットは、本明細書中に記載の治療方法において使用する投与に関する説明書を含む。
【0120】
本発明の別の態様においては、対応するデポー前製剤を、異なる活性物質を使用して調製してもよい。これらのそれぞれに関し、成分a)、b)およびc)の種類および割合は、一般的かつ好ましい製剤として先に示した通りであり、特に、添付の請求項に示した通りであり、以下に示す活性物質の適切な用量については、これらの記載中のGnRH類似体を活性物質に入れ替えて考えればよい。これらの製剤は、添付の実施例で実証するように、先に考察したGnRH類似体と同様の方法で産生、試験、および使用してもよい。組成物、キット、およびデバイスに関する本発明の態様は全て、以下に挙げる活性物質にも同様に適用され、さらに以下に示すような治療方法が適用される。
【0121】
よって、一態様において、本発明は、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)リスペリドンまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0122】
前記リスペリドン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。リスペリドンまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり1〜200mg前後であり、1〜12週間の持続期間に関し、持続期間1週間当たり10〜100mgであることが好ましい。
【0123】
本発明は、先に述べたようなリスペリドン類似体組成物を投与することを含む薬物療法、好ましくは、統合失調症の治療方法をさらに提供する。本発明はまた、統合失調症の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなリスペリドン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、リスペリドン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0124】
本発明の組成物のさらに別の驚くべき態様は、これら組成物は、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも4週間の持続期間にわたり、非極性の小分子(すなわち、非ペプチド分子)を放出するデポーを形成できるということである。従来公知のデポー組成物は、一般的に、ペプチドおよびその他の極性活性物質、ならびに高分子量の物質に限られていた。このことは、数日を超える非極性および/または小分子活性物質の持続放出をこれまでに示していない、脂質をベースとするデポー組成物に特に当てはまる。本発明のこの態様では、「小分子」とは、分子量が1,000amu未満、好ましくは800amu未満、最も好ましくは500amu未満の活性物質を意味する。また、非極性とは、オクタノールと水との間の「logP」分配係数が1を超える、好ましくは2を超える、より好ましくは3を超える分子を指すものである。テストステロン等のステロイドホルモンは、特に好ましい非極性小分子である。a:bが60:40〜40:60程度である組成領域は、本明細書に記載のあらゆる活性物質の持続放出に最適であるが、これらの種類の活性物質の持続放出に特に適していることがわかっている。好ましい組成領域は、a:b(重量比)が55:45〜45:55、最も好ましくは52:48〜48:52である。
【0125】
別の態様において、本発明は、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)テストステロンまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0126】
前記テストステロン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。テストステロンまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり5〜100mg前後であり、1〜24週間、好ましくは8〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり10〜70mgであることが好ましい。
【0127】
本発明は、先に述べたようなテストステロン類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に雄性の性腺機能低下症の治療のためのものである。本発明はまた、雄性の性腺機能低下症の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなテストステロン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、テストステロン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0128】
別の態様においては、本発明は、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のアロマターゼ阻害剤との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0129】
前記アロマターゼ阻害剤は、典型的にはアナストロゾール、フェマラ、またはアロマシンである。前記アロマターゼ阻害剤組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。少なくとも1種のアロマターゼ阻害剤の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり3〜10mgの経口用量に相当し、これは、通常、1〜24週間、好ましくは4〜12週間(例えば、8週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり0.03〜1mg、好ましくは0.05〜0.8mgである。
【0130】
本発明は、先に述べたようなアロマターゼ阻害剤組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、局所進行性または転移性の早期乳癌の治療のためのものである。本発明はまた、局所進行性または転移性の早期乳癌の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなアロマターゼ阻害剤組成物の使用も提供する。本発明は、アロマターゼ阻害剤組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0131】
別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)ブプレノルフィンまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0132】
前記ブプレノルフィン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。ブプレノルフィンまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり10〜250mg前後であり、1〜24週間、好ましくは4〜12週間(例えば、8週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり15〜200mgであることが好ましい。
【0133】
本発明は、先に述べたようなブプレノルフィン類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与すること含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、痛み、中でも慢性的な痛みの治療のためのものであるか、あるいはオピオイド中毒の治療において用いられるものである。本発明はまた、痛み、中でも慢性的な痛みを治療するための医薬品、またはオピオイド中毒の治療において用いられる医薬品の製造における、先に述べたようなブプレノルフィン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、ブプレノルフィン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0134】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)フェンタニルまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0135】
前記フェンタニル類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。フェンタニル、またはアルフェンタニル、スフェンタニル(sulfentanil)、およびレミフェンタニル等、少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体の含有量は、通常、デポー持続期間1時間当たり10〜200μg前後であり、24〜170時間、好ましくは48〜120時間(例えば、72時間)の持続期間に関し、持続期間1時間当たり25〜100μgであることが好ましい。フェンタニル類似体デポーは、筋肉内もしくは皮下注射、または好ましくは硬膜外カテーテルによって投与してもよい。
【0136】
本発明は、先に述べたようなフェンタニル類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、痛み、中でも慢性的な痛みまたは術後痛の治療のためのものであり、このような治療においては硬膜外投与が好ましい場合がある。本発明はまた、硬膜外投与が好ましい場合がある、痛み、中でも慢性的な痛みまたは術後痛の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなフェンタニル類似体組成物の使用も提供する。本発明は、フェンタニル類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0137】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)フィナステリドまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0138】
前記フィナステリド類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。フィナステリドの含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり10〜100mg前後であり、4〜24週間、好ましくは8〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり15〜60mgであることが好ましい。
【0139】
本発明は、先に述べたようなフィナステリド類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、男性型禿頭症および/または前立腺肥大の治療のためのものである。本発明はまた、男性型禿頭症および/または前立腺肥大の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなフィナステリド類似体組成物の使用も提供する。本発明は、フィナステリド類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0140】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)インターフェロンベータ、または少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0141】
前記インターフェロンベータ類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。インターフェロンベータまたは類似体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり0.5〜10mg前後であり、4〜24週間、好ましくは8〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり0.7〜5mgであることが好ましい。
【0142】
本発明は、先に述べたようなインターフェロンベータ類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、多数の硬化症の治療のためのものである。本発明はまた、多数の硬化症の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなインターフェロンベータ類似体組成物の使用も提供する。本発明は、インターフェロンベータ類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0143】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)少なくとも1種のドーパミンアゴニストとの低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤も提供する。
【0144】
前記ドーパミンアゴニスト組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。プラミペキソール等のドーパミンアゴニストの含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり1〜100mg前後であり、4〜24週間、好ましくは8〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり2〜50mgであることが好ましい。
【0145】
本発明は、先に述べたようなドーパミンアゴニスト組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、パーキンソン病の治療のためのものである。本発明はまた、パーキンソン病の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなインターフェロンベータ類似体組成物の使用も提供する。本発明は、ドーパミンアゴニスト組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0146】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)ソマトトロピン、または少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤も提供する。
【0147】
前記ソマトトロピン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。ソマトトロピンまたは類似体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり0.1〜10mg前後であり、4〜24週間、好ましくは8〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり0.2〜8mgであることが好ましい。
【0148】
本発明は、先に述べたようなソマトトロピン類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、ヒト成長ホルモン欠乏症ならびに小児および成人における低身長の治療のためのものである。本発明はまた、ヒト成長ホルモン欠乏症ならびに小児および成人における低身長の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなソマトトロピン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、ソマトトロピン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0149】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)クロニジン等のαアゴニスト、または少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤を提供する。
【0150】
前記クロニジン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。クロニジンまたは類似体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり0.2〜50mg前後であり、4〜24週間、好ましくは8〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり0.7〜25mgであることが好ましい。
【0151】
本発明は、先に述べたようなクロニジン類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に高血圧の治療のためのものである。本発明はまた、高血圧の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなクロニジン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、クロニジン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。αアゴニスト組成物に関しては、デポーの投与量を個々の患者に合わせて調整できることが特に重要となる。
【0152】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)ナルトレキソン、または少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤も提供する。
【0153】
前記ナルトレキソン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。ナルトレキソンまたは類似体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり70〜1000mg前後であり、1〜6週間、好ましくは1〜4週間(例えば、2週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり350〜750mgであることが好ましい。
【0154】
本発明は、先に述べたようなナルトレキソン類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、オピオイド(opoid)中毒および/または依存症の治療のためのものである。本発明はまた、オピオイド(opoid)中毒および/または依存症の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなナルトレキソン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、ナルトレキソン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0155】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)タキソール、または少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤も提供する。
【0156】
前記タキソール類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。タキソールまたは類似体の含有量は、通常、パクリタキセルまたは構造的に関連のある誘導体であり、デポー持続期間1週間当たり20〜120mg前後存在し、1〜12週間、好ましくは1〜8週間(例えば、3または6週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり35〜80mg存在することが好ましい。
【0157】
本発明は、先に述べたようなタキソール類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、リンパ節陽性乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌および/またはカポジ肉腫等の癌の治療のためのものである。本発明はまた、リンパ節陽性乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌および/またはカポジ肉腫等の癌の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなナルトレキソン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、タキソール類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。送達する時点で投薬量を患者に合わせて調整できることは、本発明のこの態様においては極めて重要である。なぜなら、投薬量は、通常、体表面積に左右されるからである。
【0158】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)ブピバカイン、またはレボブピバカイン等、少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤も提供する。
【0159】
前記ブピバカイン類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。ブピバカインまたは少なくとも1種のその類似体もしくは誘導体の含有量は、通常、デポーの持続期間1時間当たり5〜200mg前後であり、16〜170時間、好ましくは48〜120時間(例えば、72時間)の持続期間に関し、持続期間1時間当たり10〜100mgであることが好ましい。ブピバカイン類似体デポーは、筋肉内もしくは皮下注射、または硬膜外カテーテル、あるいはその他の適切な経路で投与してもよい。
【0160】
本発明は、先に述べたようなブピバカイン類似体組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に痛み、中でも慢性的な痛みまたは術後痛の治療のためのものであり、このような治療においては硬膜外投与が適切な場合がある。本発明はまた、硬膜外投与が適切である場合がある、痛み、中でも慢性的な痛みまたは術後痛の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなブピバカイン類似体組成物の使用も提供する。本発明は、ブピバカイン類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0161】
さらに別の態様において、本発明はまた、a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、d)GLP−1、または少なくとも1種のその類似体、受容体アゴニスト、もしくは誘導体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤も提供する。
【0162】
前記GLP−1類似体組成物は、本明細書中に記載の好ましい組成物であることが好ましい。GLP−1または類似体の含有量は、通常、デポー持続期間1週間当たり0.05〜10mg前後であり、1〜24週間、好ましくは2〜16週間(例えば、12週間)の持続期間に関し、持続期間1週間当たり0.1〜8mgであることが好ましい。
【0163】
グルカゴン様ペプチド(GLP)−1は、栄養素の摂取ならびに神経および内分泌刺激に反応し、腸のL細胞から循環器系へと放出される強力な糖調節ホルモン(glucoregulatory hormone)である。構造的には、GLP−1は、MWが4.2KDaの37個のアミノ酸からなるペプチドであり、異なる種間で高度に保存された配列を有する。GLP−1は、グルコースによって促進されるインスリン分泌および生合成の増強、グルカゴン分泌の抑制、胃内容排出、および食物摂取を含む作用によるグルコース恒常性の調節(modification)に関与する。インスリン分泌を活性化し、グルカゴン放出を阻害するGLP−1の能力は、グルコースに依存しており、よって、GLP−1の投与による低血糖のリスクは低い。GLP−1はまた、ベータ細胞の増殖と新生の促進およびベータ細胞のアポトーシスの阻害を含むメカニズムにより、糖尿病の前臨床モデルにおけるベータ細胞塊を増加させる。動物およびヒトの両方における研究は、GLP−1が心血管系を保護する役割も果たし得ることを示している。
【0164】
GLP−1の総合作用のため、このペプチドを2型糖尿病の治療薬として使用することに多大な関心が寄せられるようになった。しかしながら、未変性GLP−1の治療可能性は、その極めて短い血漿中半減期(2分間に満たない)により制限される。これは、タンパク質分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ(DPP)−IVによる迅速な不活性化と、腎クリアランスの両方に起因する。このため、エクセナチド(バイエッタ(Byetta)、アミリン−リリー(Amylin-Lilly)社)、リラグルチド(ノボ ノルディスク(Novo Nordisk)社)、CJC−1131(コンジュケム(ConjuChem)社)、AVE010(ジーランド ファーマ−サノフィ・アベンティス(Zealand Pharma-Sanofi-Aventis)社)、LY548806(リリー(Lilly)社)、およびTH−0318(セラテクノロジーズ(TheraTechnologies)社)を含む、長時間作用型抗DPP−IV性GLP−1類似体が、臨床使用のために開発されている。これらは全て、1日1回または2回投与する製品であり、制御放出(1週間)用のエクセナチド(exentide)製品(Alkermes−Amylin−Lilly社)が、現在臨床検査中である。これらのGLP−1模倣薬は、未変性GLP−1とほぼ同等の親和性でGLP−1受容体と結合し、未変性GLP−1と同じ生物学的作用をもたらすが、DPP−IVによって媒介される不活性化および腎クリアランスに対して耐性を有する。これらの化合物は、より持続的なGLP−1様活性を、より長時間にわたってインビボで発揮できる。未変性GLP−1の作用を延長する別の治療的アプローチは、DPP−IV活性を阻害し、これによりGLP−1の分解を防止することである。DPP−IV活性を阻害する数種類の経口活性物質が、2型糖尿病治療用として審査されている。
【0165】
本発明は、先に述べたようなGLP−1類似体、組成物を、特に治療を必要とする対象に投与することを含む治療方法をさらに提供する。前記治療方法は、特に、糖尿病、中でも2型糖尿病の治療のためのものである。本発明はまた、糖尿病、中でも2型糖尿病の治療用の医薬品の製造における、先に述べたようなGLP−1類似体組成物の使用も提供する。本発明は、GLP−1類似体組成物を含む本明細書中に記載の薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書中に記載のキットをさらに提供する。
【0166】
下記の非限定的な実施例および添付図面を参照しながら、本発明についてさらに説明する。
【0167】
図1は、ロイプロリド製剤前駆体(ロイプロリド0.3重量%)投与後のラットモデルにおける血漿中ロイプロリドレベルを示している。
【0168】
図2は、テストステロンウンデカノアート(TEU)およびテストステロンエナンタート(TEE)製剤前駆体(テストステロンエステル25重量%)投与後のラットモデルにおける血漿中テストステロンレベルを示している。
【実施例1】
【0169】
組成物の選択によるデポー中の各種液晶相の利用可能性
ホスファチジルコリン(「PC」−リポイド(Lipoid) S100)とグリセロールジオレアート(GDO)を異なる割合で含有し、さらにEtOHを溶媒として含有する注射製剤を調製し、デポー前駆体製剤を過剰量の水で平衡化した後、各種液晶相が得られることを例証した。
【0170】
適量のPC、GDO、およびEtOHをガラスバイアルで計量し、得られた混合物を、PCが完全に溶解し、透明な溶液となるまで振盪器にかけた。次に、GDOを添加し、注射可能な均一溶液を調製した。
【0171】
各製剤をバイアルに注入し、過剰量の水で平衡化した。相挙動を、目視ならびに交差偏光子間(between crossed polarizes)で、25℃で評価した。結果を下記の表に示す。
【0172】
【表1】

【実施例2】
【0173】
共溶媒添加によるPC/GDO混合物の粘度
PC/GDOおよび共溶媒の混合物を、実施例1に記載の方法によって調製した。EtOH含有量は、まず、ロータリーエバポレーター上で前記PC/GDO混合物からEtOHを蒸発させ、実質的にPCおよびGDOのみからなる粘性の液体混合物のみを残すことにより調製した。次に、共溶媒を、下記表2に示す割合で添加した。
【0174】
これら試料を数日間平衡化させた後、フィジカ(Physica) UDS 200レオメータを用いて25℃で粘度測定を行った。
【0175】
【表2】

【0176】
この実施例は、注射製剤を得るためには、粘度低下特性を有する溶媒が必要であることを例証するものである。グリセロールを含有する混合物(試料19)または水を含有する混合物(試料20および21)は、EtOHを含有する試料(試料13、14、および17と比較)と同等の溶媒濃度で注射可能とするには粘度が高過ぎる。
【実施例3】
【0177】
ペプチドであるロイプロリドを含有するデポー組成物の調製
酢酸ロイプロリドは、合成ノナペプチドの酢酸塩であり、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)(黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)としても知られている)の類似体である。ロイプロリドを対象に投与すると、卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)分泌の初期増加(いわゆるフレア効果)が見られ、これにより、雄性の精巣によるテストステロンの産生および雌性の卵巣によるエストロゲンの産生が活性化される。約10日後、ダウンレギュレーションにより、去勢手術と同等の著しい性機能低下効果が達成される。一般的には、これによって誘発される可逆的な性腺機能低下症が治療目標である。
【0178】
ロイプロリドを、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、前記ペプチドおよび前記脂質を溶解し、均一かつ透明な溶液とするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。試料の最終的な組成を、下記表3に示す。
【0179】
【表3】

【0180】
過剰量の水相に前記製剤前駆体を注入(注射器23G;0.6mm×30mm)したところ、モノリシック液晶相が得られた。すなわち、ロイプロリドは、水性の環境に曝露された後も、モノリス形成および相挙動を変化させなかった。
【0181】
この実施例のロイプロリドデポー前駆体製剤に関し、保存時の結晶化に対する安定性を調べた。各製剤は、4〜8℃で少なくとも2週間安定であった。
【実施例4】
【0182】
皮下投与されたロイプロリド含有デポー製剤からのインビボ放出調査
インビボラットモデルにおいて、ロイプロリドの薬物放出を28日間観察した。注射器(23G、0.6mm×25mm)を用いて、前記製剤を肩甲骨と肩甲骨の間に皮下投与した。ラットの血漿中のロイプロリド濃度を、28日間観察した(図1参照)。用量を3mg/kg、投与容量を1ml/kgとしたが、これは、デポー製剤前駆体におけるロイプロリド0.3重量%の薬剤量に相当する(実施例3の製剤A)。
【0183】
図1は、ロイプロリド製剤前駆体(ロイプロリド0.3重量%)投与後のラットモデルにおける血漿中ロイプロリドレベルを示している。調査対象の製剤は、初期放出が最低限(低「バースト」)であり、放出持続期間が少なくとも28日間の放出プロファイルを示していることがわかる。
【実施例5】
【0184】
ペプチドであるゴセレリンを含有するデポー組成物の調製
ゴセレリンは、GnRHアゴニスト類似体としても知られる、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の強力な合成デカペプチド類似体である。ゴセレリンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)受容体と結合し、長期間の投与の後、性腺刺激ホルモンの内因性分泌を阻害し、卵巣および精巣における性ホルモンの産生を抑制する。この物質は、テストステロンの産生を去勢レベルにまで低減させ、さらに、アンドロゲン受容体陽性腫瘍の進行を阻害し得る。
【0185】
ゴセレリンを、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、前記ペプチドおよび前記脂質を溶解し、均一かつ透明な溶液とするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。試料の最終的な組成を、下記表4に示す。
【0186】
【表4】

【0187】
過剰量の水相に前記製剤前駆体を注入(注射器23G;0.6mm×30mm)したところ、モノリシック液晶相が得られた。すなわち、ゴセレリンは、水性の環境に曝露された後も、モノリス形成および相挙動を変化させなかった。
【0188】
この実施例のゴセレリンデポー前駆体製剤に関し、保存時の結晶化に対する安定性を調べた。各製剤は、4〜8℃で少なくとも2週間安定であった。
【実施例6】
【0189】
ペプチドであるトリプトレリンを含有するデポー組成物の調製
トリプトレリンは、GnRHアゴニスト類似体としても知られる、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の強力な合成デカペプチド類似体である。トリプトレリンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)受容体と結合し、長期間の投与の後、性腺刺激ホルモンの内因性分泌を阻害し、卵巣および精巣における性ホルモンの産生を抑制する。この物質は、テストステロンの産生を去勢レベルにまで低減させ、さらに、アンドロゲン受容体陽性腫瘍の進行を阻害し得る。
【0190】
トリプトレリンを、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、前記ペプチドおよび前記脂質を溶解し、均一かつ透明な溶液とするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。試料の最終的な組成を、下記表5に示す。
【0191】
【表5】

【0192】
過剰量の水相に前記製剤前駆体を注入(注射器23G;0.6mm×30mm)したところ、モノリシック液晶相が得られた。すなわち、トリプトレリンは、水性の環境に曝露された後も、モノリス形成および相挙動を変化させなかった。
【0193】
この実施例のトリプトレリンデポー前駆体製剤に関し、保存時の結晶化に対する安定性を調べた。各製剤は、4〜8℃で少なくとも2週間安定であった。
【実施例7】
【0194】
ペプチドであるブセレリンを含有するデポー組成物の調製
ブセレリンは、GnRHアゴニスト類似体としても知られる、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の極めて強力な合成ノナペプチド類似体である。ブセレリンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)受容体と結合し、長期間の投与の後、性腺刺激ホルモンの内因性分泌を阻害し、卵巣および精巣における性ホルモンの産生を抑制する。この物質は、テストステロンの産生を去勢レベルにまで低減させ、さらに、アンドロゲン受容体陽性腫瘍の進行を阻害し得る。
【0195】
ブセレリンを、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、前記ペプチドおよび前記脂質を溶解し、均一かつ透明な溶液とするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。試料の最終的な組成を、下記表6に示す。
【0196】
【表6】

【0197】
過剰量の水相に前記製剤前駆体を注入(注射器23G;0.6mm×30mm)したところ、モノリシック液晶相が得られた。すなわち、ブセレリンは、水性の環境に曝露された後も、モノリス形成および相挙動を変化させなかった。
【0198】
この実施例のブセレリンデポー前駆体製剤に関し、保存時の結晶化に対する安定性を調べた。各製剤は、4〜8℃で少なくとも2週間安定であった。
【実施例8】
【0199】
ラットにおけるデポー製剤の分解
各種容量(1、2、6ml/kg)のデポー前駆体(PC36重量%、GDO54重量%、EtOH10重量%)をラットに注射し、14日後にこれを除去した。この後も相当量の製剤が依然としてラットの皮下に存在していたことがわかった。表7参照。
【0200】
【表7】

【実施例9】
【0201】
GnRHアゴニスト類似体を含有するさらに別の組成物
ペプチド活性物質を、GDO(数種類の純度レベルのうちの一純度レベルを有するもの)、PC、エタノール、および任意にジオレオイルPGを含む混合物と表8に示す割合(重量)で混合することにより、実施例3、5、6、および7に記載のように製剤を調製した。
【0202】
【表8】

【0203】
【表9】

【実施例10】
【0204】
グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)のデポー組成物の調製
GLP−1のデポー前駆体を、2つの異なる方法で調製した。
1)GLP−1を、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
2)GLP−1を、少量の滅菌水にまず溶解した。次に、予め調製したPC、GDO、およびEtOHの液体混合物であって、EtOHの含有量が約5〜10重量%であるものを、前記GLP−1/水の溶液に添加した。この結果得られた混合物を、ボルテックス混合により1分間混合した。
【0205】
試料の最終的な組成を、下記表9に示す。数種類の純度レベルのGDO、ならびに大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0206】
【表10】

【0207】
【表11】

【実施例11】
【0208】
パクリタキセルのデポー組成物の調製
パクリタキセル、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、パクリタキセルのデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0209】
試料の最終的な組成を、下記表11に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0210】
【表12】

【0211】
【表13】

【実施例12】
【0212】
インターフェロンベータ1Aのデポー組成物の調製
インターフェロンベータ1Aのデポー前駆体を、2つの異なる方法で調製した。
1)インターフェロンベータ1Aを、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
2)インターフェロンベータ1Aを、少量の滅菌水にまず溶解した。次に、予め調製したPC、GDO、およびEtOHの液体混合物であって、EtOHの含有量が約5〜10重量%であるものを、前記インターフェロンベータ1A/水の溶液に添加した。この結果得られた混合物を、ボルテックス混合により1分間混合した。
【0213】
試料の最終的な組成を、下記表12に示す。大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0214】
【表14】

【0215】
【表15】

【実施例13】
【0216】
ヒト成長ホルモン(hGH)のデポー組成物の調製
hGHのデポー前駆体を、2つの異なる方法で調製した。
1)hGHを、PC、GDO、およびEtOHとまず混合した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
2)hGHを、少量の滅菌水にまず混合した。次に、予め調製したPC、GDO、およびEtOHの液体混合物であって、EtOHの含有量が約5〜10重量%であるものを、前記hGH/水の混合物に添加した。この結果得られた混合物を、ボルテックス混合により1分間混合した。
【0217】
試料の最終的な組成を、下記表13に示す。大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0218】
【表16】

【0219】
【表17】

【実施例14】
【0220】
ナルトレキソンのデポー組成物の調製
ナルトレキソン、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、ナルトレキソンのデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0221】
試料の最終的な組成を、下記表14に示す。
【0222】
【表18】

【0223】
【表19】

【実施例15】
【0224】
ブピバカインおよびレボブピバカインのデポー組成物の調製
ブピバカインまたはレボブピバカイン、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、ブピバカイン(またはレボブピバカイン)のデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0225】
試料の最終的な組成を、下記表15に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0226】
【表20】

【0227】
【表21】

【実施例16】
【0228】
プラミペキソールのデポー組成物の調製
プラミペキソール、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、プラミペキソールのデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0229】
試料の最終的な組成を、下記表16に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0230】
【表22】

【0231】
【表23】

【実施例17】
【0232】
クロニジンのデポー組成物の調製
クロニジン、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、クロニジンのデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0233】
試料の最終的な組成を、下記表17に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0234】
【表24】

【0235】
【表25】

【実施例18】
【0236】
レボチロキシンのデポー組成物の調製
レボチロキシン、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、レボチロキシンのデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0237】
試料の最終的な組成を、下記表18に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0238】
【表26】

【0239】
【表27】

【実施例19】
【0240】
ブプレノルフィンのデポー組成物の調製
ブプレノルフィン、PC、GDO、およびEtOHを混合することにより、ブプレノルフィンのデポー前駆体を調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0241】
試料の最終的な組成を、下記表19に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0242】
【表28】

【0243】
【表29】

【実施例20】
【0244】
テストステロンエステルのデポー組成物の調製
テストステロンのウンデカノアートおよびエナンタートエステルのデポー前駆体を、前記テストステロンエステル、PC、GDO、およびEtOHを混合することによって調製した。この際、混合を容易にするため、過剰量のEtOHを添加した。この段階でのEtOH含有量は、通常、約50〜80重量%であった。次いで、前記過剰量のEtOHを回転蒸発または凍結乾燥により除去し、その後、最終的なEtOH含有量を必要に応じて調整した。
【0245】
試料の最終的な組成を、下記表20に示す。これらの組成物においては、大豆および卵ホスファチジルコリン(PC)の両方を使用した。
【0246】
【表30】

【0247】
【表31】

【実施例21】
【0248】
皮下投与されたテストステロンエステル含有デポー製剤からのインビボ放出調査
インビボラットモデルにおいて、テストステロンウンデカノアートおよびテストステロンエナンタートの薬物放出を28日間観察した。注射器(23G、0.6mm×25mm)を用いて、前記製剤を肩甲骨と肩甲骨の間に皮下投与した。ラットの血漿中のテストステロン濃度を、28日間観察した(図2参照)。用量を125mg/kg、投与容量を0.5ml/kgとしたが、これは、前記デポー製剤前駆体におけるテストステロンエステル25重量%の薬剤量に相当する(実施例18における製剤R)。
【0249】
図2は、テストステロンウンデカノアート(TEU)およびテストステロンエナンタート(TEE)製剤前駆体(テストステロンエステル25重量%)投与後のラットモデルにおける血漿中テストステロンレベルを示している。調査対象の製剤は、放出持続期間が少なくとも28日間の放出プロファイルを示していることがわかる。
【実施例22】
【0250】
二部式混合デバイスを用いたhGHのデポー前駆体の調製
0.15gの滅菌水に7.5mgのhGHをまず溶解することによって、hGHのデポー前駆体を調製した。この溶液を、1mlのガラス注射器に吸引した。PC、GDO、およびEtOH(PC/GDO/EtOH=40.5/49.5/10重量%)を含有する溶液(0.84g)を、第2のガラス注射器に吸引した。
【0251】
hGH/水および前記脂質混合物をそれぞれ含有する前記2つの注射器を、両端がメスのルアーアダプターを用いて接続し、前記2種類の溶液を、その内容物を繰り返し前後に押すことによって混合した。約15サイクル前後に押した後、前記デポー前駆体を、前記注射器の一方に集め、23ゲージの針を用いて食塩水へ注入した。
【実施例23】
【0252】
二部式混合デバイスを用いたインターフェロンベータ1Aのデポー前駆体の調製
0.1gの滅菌水に1.0mgのインターフェロンベータ1Aをまず溶解することによって、インターフェロンベータ1Aのデポー前駆体を調製した。この溶液を、1mlのガラス注射器に吸引した。PC、GDO、およびEtOH(PC/GDO/EtOH=40.5/49.5/10重量%)を含有する溶液(0.9g)を、第2のガラス注射器に吸引した。
【0253】
インターフェロンベータ1A/水および前記脂質混合物をそれぞれ含有する前記2つの注射器を、両端がメスのルアーアダプターを用いて接続し、前記2種類の溶液を、その内容物を繰り返し前後に押すことによって混合した。約15サイクル前後に押した後、前記デポー前駆体を、前記注射器の一方に集め、23ゲージの針を用いて食塩水へ注入した。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】実施例4のロイプロリド(3mg/kg)製剤前駆体(ロイプロリド0.3重量%)投与後のラットモデルにおける血漿中ロイプロリドレベル。
【図2】実施例19の異なるテストステロン誘導体(TEU=テストステロンウンデカノアートおよびTEE=テストステロンエナンタート)投与後のラットモデルにおける血漿中テストステロンレベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、
b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、
c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、
d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む前製剤であって、水性流体との接触により、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、あるいは形成することができる前製剤。
【請求項2】
成分a)が、GDOを含む、請求項1に記載の前製剤。
【請求項3】
成分b)が、大豆PCを含む、請求項1または2いずれか一つに記載の前製剤。
【請求項4】
成分c)が、エタノールを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前製剤。
【請求項5】
ロイプロリドおよびゴセレリンから選択される少なくとも1種のGnRH類似体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前製剤。
【請求項6】
治療を必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳類である対象を、GnRH類似体を用いて治療する方法であって、前記対象に、
a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、
b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、
c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、
d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む前製剤を投与することを含む方法。
【請求項7】
前記治療方法が、癌、特に乳癌および前立腺癌を含む腫瘍性疾患ならびに良性前立腺肥大;青年における性的早熟または思春期遅発症;多毛症(hirsuitism);アルツハイマー病;ならびに性腺機能低下症、無排卵、無月経、精子減少症、子宮内膜症、平滑筋腫(子宮筋腫)、月経前(premenstral)症候群、または多嚢胞性卵巣疾患等の、生殖器系に関連するある一定の疾患から選択される少なくとも1つの疾患を治療する、あるいはIVF治療の一環として使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤のうちの少なくとも1種を投与することを含む、請求項6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深部皮下注射により投与することを含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
薬剤充填済み投与デバイスにより投与することを含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
20ゲージ未満の針を通して投与することを含む、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
20日〜360日ごと、好ましくは30日〜240日ごと、より好ましくは60日〜180日ごとに1回投与することを含む、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
送達する時点で投薬量を選択する、請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記選択する量は、対象の体重に対して相対的に選ぶ、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
注射容量により前記投薬量を選択する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
癌、特に乳癌および前立腺癌を含む腫瘍性疾患ならびに良性前立腺肥大;青年における性的早熟または思春期遅発症;多毛症(hirsuitism);アルツハイマー病;ならびに性腺機能低下症、無排卵、無月経、精子減少症、子宮内膜症、平滑筋腫(子宮筋腫)、月経前(premenstral)症候群、または多嚢胞性卵巣疾患等の、生殖器系に関連するある一定の疾患から選択される少なくとも1つの疾患の治療に使用するための、あるいはIVF治療の一環として使用するためのデポーのインビボ形成に用いる低粘度前製剤医薬品の製造における、
a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、
b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、
c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、
d)少なくとも1種のGnRH類似体との使用。
【請求項17】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤のうちの少なくとも1種の使用を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深部皮下注射により投与する医薬品の製造を含む、請求項16または17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
薬剤充填済み投与デバイスにより投与する医薬品の製造を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
20ゲージ未満の針を通して投与する医薬品の製造を含む、請求項16〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
20日〜360日ごとに1回投与する医薬品の製造を含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、
b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、
c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、
d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む測定用量の前製剤を予め装填した使い捨て投与デバイス。
【請求項23】
注射器と注射筒である、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
請求項1〜5に記載の製剤を含む、請求項22または23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
20ゲージ未満の針を備えた、請求項22〜24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
1回分の用量である0.1〜500mgのGnRH類似体を含む、請求項22〜25のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
ロイプロリドまたはゴセレリンを5〜90mg前後含む、請求項22〜26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
総投与容量が5ml以下である、請求項22〜27のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項29】
少なくとも1種のGnRH類似体を投与するためのキットであって、
a)少なくとも1種のジアシルグリセロールと、
b)少なくとも1種のホスファチジルコリンと、
c)少なくとも1種の酸素含有有機溶媒と、
d)少なくとも1種のGnRH類似体との低粘度混合物を含む測定用量の製剤を含むキット。
【請求項30】
請求項22〜28のいずれか一項に記載の投与デバイスを含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
20ゲージ未満の針を備えた、請求項29または30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
1回分の用量である0.1〜500mgのGnRH類似体を含む、請求項29〜31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
ロイプロリドまたはゴセレリンを5〜90mg前後含む、請求項29〜32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深部皮下注射による投与に関する説明書を含む、請求項29〜33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
請求項6〜15のいずれか一項に記載の治療方法において使用する投与に関する説明書を含む、請求項29〜34のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−526934(P2008−526934A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550827(P2007−550827)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004752
【国際公開番号】WO2006/075125
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】