H型ブリッジ回路およびモータ駆動装置
【課題】モータに適用した場合に、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図るようにしたH型ブリッジ回路などを提供すること。
【解決手段】この発明は、MOSトランジスタTr1〜Tr4からなるH型ブリッジ1と、制御回路2とを備える。MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、サイズが異なる2つのMOSトランジスタからなる。制御回路2は、通常動作状態において、トランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr4−1、Tr4−2をオンにして負荷5に電流を供給する。また、制御回路2は、負荷5に電流を回生させる直前において、トランジスタTr4−2のオンを継続状態とし、トランジスタTr1−1をオフにしたのち、トランジスタTr1−2、Tr4−1をオフにして負荷5に供給する電流を制限するようにした。
【解決手段】この発明は、MOSトランジスタTr1〜Tr4からなるH型ブリッジ1と、制御回路2とを備える。MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、サイズが異なる2つのMOSトランジスタからなる。制御回路2は、通常動作状態において、トランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr4−1、Tr4−2をオンにして負荷5に電流を供給する。また、制御回路2は、負荷5に電流を回生させる直前において、トランジスタTr4−2のオンを継続状態とし、トランジスタTr1−1をオフにしたのち、トランジスタTr1−2、Tr4−1をオフにして負荷5に供給する電流を制限するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタなどで構成されるH型ブリッジ回路などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどを駆動するための回路として、モータなどのコイルに電流を供給するH型ブリッジ回路(フルブリッジ回路)が知られている。図23〜図26は、そのH型ブリッジ回路の各動作時における電流経路を示す。
このH型ブリッジ回路は、例えば図23に示すように、P型のMOSトランジスタTr1、Tr2と、N型のMOSトランジスタTr3、Tr4とを備え、電源VDDと電源VSSとに接続される。そして、MOSトランジスタTr1、Tr3のドレイン同士の接続部と、MOSトランジスタTr2、Tr4のドレイン同士の接続部との間に、負荷としてコイル5が接続される。
【0003】
MOSトランジスタTr1、Tr2のゲートには制御信号PG1、PG2が入力され、MOSトランジスタTr3、Tr4のゲートには制御信号NG1、NG2が入力される。また、MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、寄生ダイオードD1〜D4を有する。
次に、このような従来のH型ブリッジ回路において、負荷としてモータのコイル5を接続し、モータを駆動制御する場合の動作例について説明する。
【0004】
図27は、この動作例の場合の各部の信号の波形例を示す。図27において、OUT1、OUT2はモータのコイル5の両端の電圧、IDDは電源VDDからH型ブリッジ回路に供給される電流、ILはモータのコイル5に流れる電流を示す。
図23〜図26参照して、モータが正転動作から逆転動作に移行する時の電流経路について説明する。
【0005】
図27の時刻t1以前のモータの正転動作時には、MOSトランジスタTr1、Tr3の各ゲートの制御信号PG1、NG1はLレベル、MOSトランジスタTr2、Tr4の各ゲートの制御信号PG2、NG2はHレベルとなる(図27(A)〜(D)参照)。このときには、MOSトランジスタTr1、Tr4はオンであり、MOSトランジスタTr2、Tr3はオフである。
【0006】
したがって、モータの正転動作時の電流経路は、図23に示すように、電源VDDからの電流が、MOSトランジスタTr1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4を経由して電源VSSに至る。
その後、図27の時刻t1において、モータが正転動作から逆転動作に切り換わるときには、制御信号PG1、NG1はLレベルからHレベルに変化し、制御信号PG2、NG2はHレベルからLレベルに変化する。このときには、MOSトランジスタTr1、Tr4はオンからオフに切り換わり、MOSトランジスタTr2、Tr3はオフからオンに切り換わる。
【0007】
しかし、その切り換わる瞬間には、図24に示すように、電源VSSからMOSトランジスタTr3の寄生ダイオードD3、コイル5、MOSトランジスタTr2の寄生ダイオードD2、および電源VDDの電流経路で逆流電流が流れる。この逆流電流は、コイル5に蓄積された電荷が無くなるまで流れ続ける。
図27の時刻t2において、コイル5の電荷が無くなると、図25に示すように、電源VDDからの電流が、MOSトランジスタTr2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3を経由して電源VSSに至るようになる。
【0008】
その後、図27の時刻t3において、モータが逆転動作から正転動作に切り換わる瞬間においても、図26に示すように、電源VSSからMOSトランジスタTr4の寄生ダイオードD4、コイル5、MOSトランジスタTr1の寄生ダイオードD1、および電源VDDの電流経路で逆流電流が流れる。この逆流電流は、図27の時刻t4まで流れ続けることになる。
【0009】
このようなH型ブリッジ回路における逆流電流を防止する方法として、モータの正転動作と逆転動作の切り換え時に、ノンオーバーラップ期間を設ける方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
この従来方法では、図28に示すH型ブリッジ回路のMOSトランジスタTr1〜Tr4の駆動制御は、図29に示すような制御信号PG1、PG2、NG1、NG2が使用される。また、その駆動制御には、モータの正転動作と逆転動作の切り換えを行う正逆制御信号HALLが使用される。
【0010】
この従来方法では、図29に示すように、第1動作モード期間T1と第2動作モード期間T2とがある。そして、正逆制御信号HALLがLレベルのときには第1動作モード期間T1となり、正逆制御信号HALLがHレベルのときには第2動作モード期間T2となる。
また、第1動作モード期間T1は、図29に示すように、PWM制御期間T11、ノンオーバーラップ期間T12、PWM制御期間T13、および正転動作期間T14からなる。第2動作モード期間T2は、図29に示すように、PWM制御期間T21、ノンオーバーラップ期間T22、PWM制御期間T23、および逆転動作期間T24からなる。
【0011】
図29の時刻t1以前であって、第1動作モード期間T1内の正転動作期間T14には、MOSトランジスタTr1、Tr3の制御信号PG1、NG1はLレベル、MOSトランジスタTr2、Tr4の制御信号PG2、NG2はHレベルとなる(図29(B)〜(E)参照)。このときには、MOSトランジスタTr1、Tr4はオンであり、MOSトランジスタTr2、Tr3はオフである。したがって、モータの正転動作時の電流経路は、電源VDDからの電流が、MOSトランジスタTr1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4を経由して電源VSSに至る。
【0012】
しかし、時刻t1において、正逆制御信号HALLがLレベルからHレベルに変化して、第1動作モード期間T1から第2動作モード期間T2に変化すると、上記の電流経路が変更を開始する。
第2動作モード期間T2のうち、最初のPWM制御期間T21では、制御信号PG1がPWM信号となり(図29(B)参照)、これによりMOSトランジスタTr1がPWM制御される。PWM制御期間T21が終了すると、ノンオーバーラップ期間T22に移行するが、このノンオーバーラップ期間T22は予め設定された任意の時間である。
【0013】
ノンオーバーラップ期間T22の初期におけるコイル5の電流の経路は、図29に示すように、電源VSS、MOSトランジスタTr3の寄生ダイオードD3、コイル5、およびMOSトランジスタTr4を経由して電源VSSに戻り、時間の経過とともにコイル5の電流ILは減少する(図29(I)参照)。
図29の時刻t2において、コイル5の電流ILがほぼ0〔mA〕になったときに(図29(I)参照)、制御信号NG1をLレベルからHレベルに切り換え、制御信号NG2をHレベルからLレベルに切り換え、H型ブリッジ回路のローサイド側のMOSトランジスタTr3、Tr4のオンオフが切り換える。この場合には、ローサイド側のMOSトランジスタTr3、Tr4のオンオフが切り換わっても、電源VDDへの逆転電流は発生しない。また、H型ブリッジ回路の出力端子のキックバック電圧も発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−296850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の従来方法では、ノンオーバーラップ期間T22をモータの電気的な時定数よりも長く設定した場合には、コイル5の電流ILが0〔mA〕の期間を十分に確保できる。このため、上記のように、コイル5の電流ILが0〔mA〕になったときに、H型ブリッジ回路のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフが切り換えれば、電源VDDへの逆転電流は発生しない。しかし、H型ブリッジ回路への電源VDDからの電流IDDの供給のタイミングが遅れてしまうので、モータの回転数が低下し効率が悪くなることがある。
【0016】
逆に、ノンオーバーラップ期間T22をモータの電気的な時定数よりも短く設定すると、以下の事態が発生する。
すなわち、図30(I)に示すように、コイル5の電流ILが流れている時刻t2において、制御信号NG1、NG2の切り換えが起こり(図30(D)(E)参照)、H型ブリッジ回路のローサイド側のMOSトランジスタTr3、Tr4のオンオフの切り換えが発生する。このため、ノンオーバーラップ期間T22内において、電源VSSからMOSトランジスタTr3の寄生ダイオードD3、コイル5、MOSトランジスタTr2の寄生ダイオードD2、および電源VDDの電流経路で逆流電流が流れる。
【0017】
ステップダウンコンバート型の電源を用いている場合、その電源は回路から電源側に電流を引くことができないため、コイル5の還流電流を電源に流し込もうとすると、電源の電位が上昇する。
上記の方法のように、逆流電流が発生した瞬間、電源VDDの電位が上昇する。H型ブリッジ回路とその制御回路を同じ電源で駆動させる方法をとった場合、電源VDDの上昇により電流経路を指定するための制御回路を故障させるおそれがある。
【0018】
このような問題があるので、ノンオーバーラップ期間中において、ローサイド側のMOSトランジスタのオンオフの切り換えの直前までに、回生電流が0〔A〕になるように消費させなければならない。
しかし、従来方法では、回生電流の消費時間の短縮を図ることができず、ノンオーバーラップ期間を短縮することができない。このため、従来方法では、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることができないという課題がある。
【0019】
そこで、本発明の目的は、上述の事情に鑑み、モータに適用した場合に、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図るようにしたH型ブリッジ回路などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決して本発明の目的を達成するために、本発明は、以下のように構成される。
本発明は、第1の電源と第2の電源との間に直列に接続される第1及び第2のトランジスタと、前記第1の電源と前記第2の電源との間に直列に接続される第3及び第4のトランジスタと、を備え、前記第1及び第2のトランジスタの接続点と前記第3及び第4のトランジスタの接続点との間に負荷を接続するH型ブリッジと、前記負荷の通電方向を切り換える切換信号を入力し、当該入力にしたがって前記第1、第2、第3及び第4のトランジスタの駆動をそれぞれ制御する制御回路と、を備え、前記第1のトランジスタは、第1−1のトランジスタと、前記第1−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第1−2のトランジスタとから構成され、前記第2のトランジスタは、第2−1のトランジスタと、前記第2−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第2−2のトランジスタとから構成され、前記第3のトランジスタは、第3−1のトランジスタと、前記第3−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第3−2のトランジスタとから構成され、前記第4のトランジスタは、第4−1のトランジスタと、前記第4−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第4−2のトランジスタとから構成され、前記制御回路は、前記第1、第2、第3、および第4のトランジスタを構成する8つのトランジスタのそれぞれについて、予め定めた手順で個別にオンオフ制御することを特徴とする。
【0021】
また、本発明において、前記制御回路は、通常動作状態において、前記第1−1及び第1−2のトランジスタと前記第4−1及び第4−2のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1及び第2−2のトランジスタと第3−1及び第3−2のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1トランジスタをオフにしたのち、前記第1−2のトランジスタ及び前記第4−1トランジスタをオフにし、または、前記第3−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1トランジスタをオフにしたのち、前記第2−2のトランジスタ及び前記第3−1のトランジスタをオフにして前記負荷に供給する電流を制限することを特徴とする。
【0022】
本発明において、前記制御回路は、通常動作状態において、前記第1−1のトランジスタと前記第4−1のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1のトランジスタと前記第3−1のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1のトランジスタをオフにし、前記第1−2のトランジスタをオンにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1のトランジスタをオフにし、前記第2−2のトランジスタをオンにして前記負荷に供給する電流を制限し、前記負荷の電流回生時において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第4−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第4−1のトランジスタをオフにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第3−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第3−1のトランジスタをオフにすることを特徴とする
【発明の効果】
【0023】
このように本発明では、H型ブリッジを構成するトランジスタを、トランジスタサイズが異なる2つのトランジスタで構成し、その2つのトランジスタのオンオフ制御を別個に行うようにした。
このため、本発明によれば、負荷に回生電流が流れる直前に、その2つのトランジスタのオンオフを別個に制御することで、H型ブリッジのオン抵抗を大きくし、回生電流の消費時間の短縮化を図ることが可能となる。
したがって、本発明によれば、モータの駆動に適用する場合に、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のH型ブリッジ回路の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態をモータの駆動に適用した場合の動作例を説明する、各部の波形例を示す波形図である。
【図3】第1実施形態において、正転動作期間T14およびPWM制御期間T21における電流経路を説明する図である。
【図4】第1実施形態において、PWM制御期間T21のときの回生電流を説明する図である。
【図5】第1実施形態において、時刻t3〜t4の期間における電流経路を説明する図である。
【図6】第1実施形態において、時刻t4〜t5の期間における電流経路を説明する図である。
【図7】第1実施形態において、逆転動作期間T24およびPWM制御期間T23における電流経路を説明する図である。
【図8】第1実施形態において、PWM制御期間T23のときの回生電流を説明する図である。
【図9】第1実施形態において、時刻t10〜t11の期間における電流経路を説明する図である。
【図10】第1実施形態において、時刻t11〜t12の期間における電流経路を説明する図である。
【図11】本発明のH型ブリッジ回路の第2実施形態の構成を示す図である。
【図12】第2実施形態をモータの駆動に適用した場合の動作例を説明する、各部の波形例を示す波形図である。
【図13】第2実施形態において、正転動作期間T14およびPWM制御期間T21における電流経路を説明する図である。
【図14】第2実施形態において、時刻t1〜t3の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図15】第2実施形態において、時刻t3〜t4の期間における電流経路を説明する図である。
【図16】第2実施形態において、時刻t4〜t4´の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図17】第2実施形態において、時刻t4´〜t5の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図18】第2実施形態において、逆転動作期間T24およびPWM制御期間T23における電流経路を説明する図である。
【図19】第2実施形態において、時刻t8〜t10の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図20】第2実施形態において、時刻t10〜t11の期間における電流経路を説明する図である。
【図21】第2実施形態において、時刻t11〜t11´の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図22】第2実施形態において、時刻t11´〜t12の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図23】従来回路、およびその従来回路におけるモータの正転動作時の電流経路を示す図である。
【図24】従来回路において、モータの正転動作から逆転動作への切り換え時の電流経路を示す図である。
【図25】従来回路におけるモータの逆転動作時の電流経路を示す図である。
【図26】従来回路において、逆転動作から正転動作への切り換え時の電流経路を示す図である。
【図27】従来回路のトランジスタの駆動制御時の各部の波形例を示す図である。
【図28】従来回路、およびコイル電流の回生時における電流経路を説明する図である。
【図29】従来回路において、トランジスタを従来方法で駆動制御する場合の各部の波形例を示す図である。
【図30】その従来方法の課題を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態の構成)
図1は、本発明のH型ブリッジ回路の第1実施形態の構成を概要を示す図である。
この第1実施形態に係るH型ブリッジ回路は、図1に示すように、H型ブリッジ1と、制御回路2とを備えている。
【0026】
H型ブリッジ1は、図1に示すように、P型のMOSトランジスタTr1、Tr2と、N型のMOSトランジスタTr3、Tr4とを備えている。
MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。また、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。
【0027】
このH型ブリッジ1では、MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3の共通接続部が出力端子3と接続され、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4の共通接続部が出力端子4と接続されている。そして、その接続端子3、4間に負荷としてコイル5が接続される。
また、このH型ブリッジ1では、図1に示すように、MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、トランジスタサイズが異なる大小2つのMOSトランジスタから構成される。
【0028】
MOSトランジスタTr1は、P型のMOSトランジスタTr1−1と、MOSトランジスタTr1−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr1−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr1−1は寄生ダイオードD1−1を有し、MOSトランジスタTr1−2は寄生ダイオードD1−2を有する。
【0029】
また、MOSトランジスタTr2は、P型のMOSトランジスタTr2−1と、MOSトランジスタTr2−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr2−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr2−1は寄生ダイオードD2−1を有し、MOSトランジスタTr2−2は寄生ダイオードD2−2を有する。
【0030】
さらに、MOSトランジスタTr3は、N型のMOSトランジスタTr3−1と、MOSトランジスタTr3−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr3−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr3−1は寄生ダイオードD3−1を有し、MOSトランジスタTr3−2は寄生ダイオードD3−2を有する。
【0031】
また、MOSトランジスタTr4は、N型のMOSトランジスタTr4−1と、MOSトランジスタTr4−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr4−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr4−1は寄生ダイオードD4−1を有し、MOSトランジスタTr4−2は寄生ダイオードD4−2を有する。
【0032】
制御回路2は、負荷であるコイル5の通電方向を切り換える切換信号HALLを入力し、この入力信号にしたがって、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。この生成された制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2は、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
【0033】
また、制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。この生成された制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2は、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
(第1実施形態の動作)
次に、第1実施形態の動作例について、図面を参照して説明する。
【0034】
この動作例は、H型ブリッジ1の負荷であるコイル5としてモータのコイルを接続し、モータを駆動制御する場合について説明する。
このモータの駆動制御のために、制御回路2にはモータの正転と逆転の動作を切り換える切換信号HALLが入力される。
制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、図2に示すように、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。
【0035】
また、制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、図2に示すように、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。
この動作例では、図2に示すように、第1動作モード期間T1と第2動作モード期間T2とがあり、切換信号HALLがLレベルのときに第1動作モード期間T1となり、切換信号HALLがHレベルのときに第2動作モード期間T2となる。
【0036】
また、第1動作モード期間T1は、図2に示すように、PWM制御期間T11、ノンオーバーラップ期間T12、PWM制御期間T13、および正転動作期間T14からなる。第2動作モード期間T2は、図2に示すように、PWM制御期間T21、ノンオーバーラップ期間T22、PWM制御期間T23、および逆転動作期間T24からなる。
図2の時刻t1以前であって、第1動作モード期間T1内の正転動作期間T14には、図2(B)(C)のように制御信号PG1−1、PG1−2はLレベルになり、図2(F)(G)のように制御信号NG1−1、NG1−2はLレベルになる。また、図2(D)(E)のように制御信号PG2−1、PG2−2はHレベルになり、図2(H)(I)のように制御信号NG2−1、NG2−2はHレベルになる。
【0037】
このため、正転動作期間T14には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr4−1、Tr4−2はオンになり、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2はオフになる。したがって、モータの正転動作時の電流経路は、図3に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1、Tr4−2を経由して電源VSSに至る。
【0038】
図2の時刻t1において、切換信号HALLがLレベルからHレベルに変化すると、第1動作モード期間T1から第2動作モード期間T2に変化する。
第2動作モード期間T2のうち、最初のPWM制御期間T21では、制御信号PG2−1、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はなく(図2(D)〜(I)参照)、制御信号PG1−1、PG1−2だけがLレベルからPWM信号に変化する(図2(B)(C)参照)。PWM信号は、図2(B)(C)示すようにHレベルとLレベルを交互に繰り返す信号である。
【0039】
このため、PWM制御期間T21では、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオンのときには電源VDDからの電流IDDが流れ、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオフのときにはその電流IDDが0〔mA〕となる(図2(L)参照)。これに伴い、コイル5の両端の電圧OUT1が図2(J)のように変化し、その電圧OUT2はLレベルを維持する(図2(K)参照)。
【0040】
このようにPWM制御期間T21では、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2はオフとオンの期間を交互に繰り返す。
このため、制御信号PG1−1、PG1−2、がHレベルであってMOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオフのときには、電源VDDから電流IDDの供給がないが、コイル5は電源VDDからの電流供給が断たれてから放電を開始する。したがって、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオフのときには、図4に示すように、電源VSS、MOSトランジスタD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
【0041】
ここで、寄生ダイオードD3−1、D3−2のしきい値電圧をVF、MOSトランジスタTr4−1のオン抵抗をR41、MOSトランジスタTr4−2のオン抵抗をR42とすると、コイル5に蓄積されたエネルギー損失ELは、次式のようになる。
EL=(VF×IL)+IL2 ×〔R41×R42/(R41+R42)〕
このため、コイル5に蓄積されたエネルギーは上記のエネルギー損失ELによって消失するので、コイル5の電流ILは時間の経過とともに減少する(図2(M)参照)。
【0042】
一方、制御信号PG1−1、PG1−2がLレベルであってMOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図3に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1、Tr4−2を経由して電源VSSに至る。このとき、コイル5の電流ILは時間の経過とともに増加する(図2(M)参照)。
【0043】
このように、PWM制御期間T21には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2はPWM信号によりPWM駆動をするので、図2(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が小さくなっていくため、PWM制御期間T21の終了時は開始時と比較して電流ILは小さくなる。
ここで、制御信号PG1−1、PG1−2は、時刻t1においてLレベルからPWM信号に変化する。
【0044】
しかし、制御信号PG1−1は、時刻t2においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t2においてトランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr1−1はオフになる。一方、制御信号PG1−2は、時刻t4においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t3にLレベルに変化したのち時刻t4にHレベルに変化する。このため、制御信号PG1−2は、図2(C)のように、時刻t3〜t4にはLレベルとなり、このLレベルの期間には、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr1−2はオンになるので、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなる。
【0045】
また、時刻t3には、図2(H)に示すように、制御信号NG2−1はHレベルからLレベルに変化する。このとき、制御信号NG2−2は、図2(I)に示すように、Hレベルのままである。このため、時刻t3には、MOSトランジスタTr4−2はオンのままであるが、トランジスタサイズの大きなMOSトランジスタTr4−1はオフとなり、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなる。
【0046】
このような動作により、時刻t3〜t4の期間の電流経路は、図5に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−2を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子3、4側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が少なくなる。
図2の時刻t4になると、PWM制御期間T21が終了し、ノンオーバーラップ期間T22に移行する。
【0047】
ノンオーバーラップ期間T22に移行すると、時刻t4〜t5の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1はLレベル、制御信号NG2−2だけがHレベルである。
このため、時刻t4〜t5の期間の電流経路は、図6に示すように、電源VSS、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2の寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図2(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる。
【0048】
ここで、ノンオーバーラップ期間T22に移行する直前において、上記のように、コイル5の出力端子3、4側の出力抵抗が大きくなっており、コイル5への電流供給が制限されている。このため、従来方法と比較すると、ノンオーバーラップ期間T22に移行するときに、コイル5の蓄積エネルギーが小さいために、コイル5に流れる回生電流を短時間で消失できる。
【0049】
このため、従来方法に比べて、電源VDDへの逆流電流の防止を向上させることできる。また、従来方法に比べて、ローサイド側のMOSトランジスタのオンオフの切り換えを早めに行うことができるため、モータの回転効率を向上させることができる。さらに、従来方法と同様に、PWM制御時間を確保できるので、騒音の抑制効果も確保することができる。
【0050】
一方、モータの電気的な時定数によっては、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズが最適でない場合も想定される。その場合には、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズを自由に変更できるように設計すれば、モータの電気的な時定数の差異に応じてそのサイズを調整することができる。
図2の時刻t5において、制御回路2は、制御信号NG1−1、NG1−2をLレベルからHレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−2をHレベルからLレベルに切り換える。このときには、回生電流は完全に消費しているため、上記のようにH型ブリッジ1のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えても、逆流電流やキックバック電圧は発生しない。
【0051】
ここで、時刻t5において、上記のようにH型ブリッジ1のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換え、これと同時にMOSトランジスタTr2−1、Tr2−2をオンにすると、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2とMOSトランジスタTr4−2に貫通電流が流れ、H型ブリッジ1が故障するおそれがある。
そこで、制御回路2は、時刻t5においてH型ブリッジ1のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えたのち、貫通電流が発生しない程度の遅延時間を持たせ、時刻t6において、制御信号PG2−1、PG2−2をHレベルからPWM信号に切り換え(図2(D)(E)参照)、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2がオンするようにしている。
【0052】
図2の時刻t6において、ノンオーバーラップ期間T22が終了すると、PWM制御期間T23に移行する。PWM制御期間T23では、制御信号PG1−1、PG1−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はなく(図2(B)(C)(F)〜(I)参照)、制御信号PG2−1、PG2−2だけがHレベルからPWM信号に変化する(図2(D)(E)参照)。PWM信号は、図2(D)(E)に示すようにHレベルとLレベルを交互に繰り返す信号である。
【0053】
このため、制御信号PG2−1、PG2−2がHレベルであってMOSトランジスタTr2−1、Tr2−2がオフのときには、図8に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
一方、制御信号PG2−1、PG2−2がLレベルであってMOSトランジスタTr2−1、Tr2−2がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図7に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1、Tr3−2を経由して電源VSSに至る。
【0054】
このように、PWM制御期間T23には、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2はPWM信号によりPWM駆動をするので、図2(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が大きくなっていくため、PWM制御期間T23の終了時は開始時と比較して電流ILは大きくなる。
そして、図2の時刻t7になると、PWM制御期間T23を終了し、逆転動作期間T24に移行する。逆転動作期間T24には、制御信号PG1−1、PG1−2、NG1−1、NG1−2はHレベルであり(図2(B)(C)(F)(G)参照)、制御信号PG2−1、PG2−2、NG2−1、NG2−2はLレベルとなる(図2(D)(E)(H)(I)参照)。
【0055】
このため、逆転動作期間T24には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr4−1、Tr4−2はオフになり、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2はオンになる。したがって、モータの逆転動作時の電流経路は、図7に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1、Tr3−2を経由して電源VSSに至る。
【0056】
図2の時刻t8において、切換信号HALLがHレベルからLレベルに変化すると、第2動作モード期間T2から第1動作モード期間T1に移行する。第1動作モード期間T1に移行すると、最初のPWM制御期間T11では、制御信号PG2−1、PG2−2はPWM信号となる。
しかし、制御信号PG2−1は、時刻t9においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t9においてトランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr2−1はオフになる。一方、制御信号PG2−2は、時刻t11においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t10にLレベルに変化したのち時刻t11にHレベルに変化する。このため、制御信号PG2−2は、図2(E)のように、時刻t10〜t11にはLレベルとなり、このLレベルの期間には、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr2−2はオンになるので、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなる。
【0057】
また、時刻t10には、図2(F)に示すように、制御信号NG1−1はHレベルからLレベルに変化する。このとき、制御信号NG1−2は、図2(G)に示すように、Hレベルのままである。このため、時刻t10には、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr3−2はオンのままであるが、トランジスタサイズの大きなMOSトランジスタTr3−1はオフとなり、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなる。
【0058】
このような動作により、時刻t10〜t11の期間の電流経路は、図9に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−2を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子3、4側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が制限されて少なくなる。
【0059】
図2の時刻t11になると、PWM制御期間T11が終了し、ノンオーバーラップ期間T12に移行する。ノンオーバーラップ期間T12に移行すると、時刻t11〜t12の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG2−1、NG2−2はLレベル、制御信号NG1−2だけがHレベルである。
【0060】
このため、時刻t11〜t12の期間の電流経路は、図10に示すように、電源VSS、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2の寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図2(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる。
【0061】
そして、図2の時刻t12において、制御回路2は、制御信号NG1−2をHレベルからLレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−1、NG2−2をLレベルからHレベルに切り換える。
図2の時刻t13になると、ノンオーバーラップ期間T12を終了し、PWM制御期間T13に移行する。PWM制御期間T13では、制御信号PG2−1、PG2−2、NG2−1、NG2−2はHレベルであり、制御信号PG1−1、PG1−2がPWM信号となり、制御信号NG1−1、NG1−2はLレベルである。このため、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2はPWM駆動され、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2はオフを維持し、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2はオンを維持する。
【0062】
図2の時刻t14になると、PWM制御期間T13を終了し、上記の正転動作期間T14となる。
以上のように、第1実施形態では、PWM制御期間T21からノンオーバーラップ期間T22に移行する直前に、MOSトランジスタTr4−2のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr1−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr1−2、Tr4−1をオンからオフに切り換えるようにした。
【0063】
また、第1実施形態では、PWM制御期間T11からノンオーバーラップ期間T12に移行する直前に、MOSトランジスタTr3−2のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr2−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr2−2、Tr3−1をオンからオフに切り換えるようにした。
このため、第1実施形態では、PWM制御期間からノンオーバーラップ期間に移行するときに、コイル5の両端の出力抵抗を大きくし、コイル5に流れる回生電流の消費時間の短縮化できるので、ノンオーバーラップ期間の短縮化を図ることができる。
したがって、第1実施形態によれば、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることができる。
【0064】
(第2実施形態の構成)
図11は、本発明のH型ブリッジ回路の第2実施形態の構成を示す図である。
この第2実施形態に係るH型ブリッジ回路は、図11に示すように、H型ブリッジ1Aと、制御回路2Aとを備えている。
H型ブリッジ1Aは、図11に示すように、P型のMOSトランジスタTr1、Tr2と、N型のMOSトランジスタTr3、Tr4とを備えている。
MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。また、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。
【0065】
このH型ブリッジ1Aでは、MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3の共通接続部が出力端子3と接続され、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4の共通接続部が出力端子4と接続されている。そして、その接続端子3、4間に負荷としてコイル5が接続される。
また、このH型ブリッジ1Aでは、図11に示すように、MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、トランジスタサイズが異なる大小2つのMOSトランジスタから構成される。
【0066】
MOSトランジスタTr1は、P型のMOSトランジスタTr1−1と、MOSトランジスタTr1−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr1−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr1−1は寄生ダイオードD1−1を有し、MOSトランジスタTr1−2は寄生ダイオードD1−2を有する。
【0067】
また、MOSトランジスタTr2は、P型のMOSトランジスタTr2−1と、MOSトランジスタTr2−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr2−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr2−1は寄生ダイオードD2−1を有し、MOSトランジスタTr2−2は寄生ダイオードD2−2を有する。
【0068】
また、MOSトランジスタTr3は、N型のMOSトランジスタTr3−1と、MOSトランジスタTr3−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr3−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr3−1は寄生ダイオードD3−1を有し、MOSトランジスタTr3−2は寄生ダイオードD3−2を有する。
【0069】
また、MOSトランジスタTr4は、N型のMOSトランジスタTr4−1と、MOSトランジスタTr4−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr4−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr4−1は寄生ダイオードD4−1を有し、MOSトランジスタTr4−2は寄生ダイオードD4−2を有する。
【0070】
制御回路2Aは、負荷であるコイル5の通電方向を切り換える切換信号HALLを入力し、この入力信号にしたがって、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。この生成された制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2は、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
【0071】
また、制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。この生成された制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2は、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
【0072】
(第2実施形態の動作)
次に、第2実施形態の動作例について、図面を参照して説明する。
この動作例は、H型ブリッジ1Aの負荷であるコイル5としてモータのコイルを接続し、モータを駆動制御する場合について説明する。
このモータの駆動制御のために、制御回路2Aにはモータの正転と逆転の動作を切り換える切換信号HALLが入力される。
制御回路2Aは、切換信号HALLにしたがって、図12に示すように、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。
【0073】
また、制御回路2Aは、切換信号HALLにしたがって、図12に示すように、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。
この動作例では、図12に示すように、第1動作モード期間T1と第2動作モード期間T2とがあり、切換信号HALLがLレベルのときに第1動作モード期間T1となり、切換信号HALLがHレベルのときに第2動作モード期間T2となる。
【0074】
また、第1動作モード期間T1は、図12に示すように、PWM制御期間T11、ノンオーバーラップ期間T12、PWM制御期間T13、および正転動作期間T14からなる。第2動作モード期間T2は、図12に示すように、PWM制御期間T21、ノンオーバーラップ期間T22、PWM制御期間T23、および逆転動作期間T24からなる。
図12の時刻t1以前であって、第1動作モード期間T1内の正転動作期間T14には、図12(B)のように制御信号PG1−1はLレベルになり、図12(F)、(G)、(I)のように制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−2はLレベルになる。また、図12(C)(D)(E)のように制御信号PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベルになり、図12(F)のように制御信号NG2−1はHレベルになる。
【0075】
このため、正転動作期間T14には、MOSトランジスタTr1−1、Tr4−1はオンになり、MOSトランジスタTr1−2、Tr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2、Tr4−2はオフになる。したがって、モータの正転動作時の電流経路は、図13に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1を経由して電源VSSに至る。
【0076】
図12の時刻t1において、切換信号HALLがLレベルからHレベルに変化すると、第1動作モード期間T1から第2動作モード期間T2に移行する。
第2動作モード期間T2のうち、最初のPWM制御期間T21では、制御信号PG1−2、PG2−1、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はない(図12(C)〜(I)参照)。しかし、制御信号PG1−1は、時刻t1においてLレベルからPWM信号に変化し(図12(B)参照)、時刻t2においてPWM信号からHレベルに変化する。また、制御信号PG1−2は、時刻t3においてHレベルからLレベルに変化し、時刻t4おいてLレベルからHレベルに変化する。このため、時刻t1〜時刻t3の期間では、制御信号PG1−1はHレベルとLレベルを交互に繰り返し、制御信号PG1−2はHレベルを維持する。
【0077】
従って、時刻t1〜時刻t3の期間では、制御信号PG1−1がHレベルであってMOSトランジスタTr1−1がオフのときには、電源VDDから電流IDDの供給がないが、コイル5は電源VDDからの電流供給が断たれてから放電を開始する。したがって、MOSトランジスタTr1−1がオフのときには、図14に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−1、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
【0078】
ここで、寄生ダイオードD3のしきい値電圧をVF、MOSトランジスタTr4のオン抵抗をR4とすると、コイル5に蓄積されたエネルギー損失ELは、次式となる。
EL=(VF×IL)+(IL2 ×R4)
このため、コイル5に蓄積されたエネルギーは上記のエネルギー損失ELによって消失するので、コイル5の電流ILは時間の経過とともに減少する(図12(M)参照)。
【0079】
一方、制御信号PG1−1がLレベルであってMOSトランジスタTr1−1がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図13に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1を経由して電源VSSに至る。
このように、時刻t1〜時刻t3の期間では、MOSトランジスタTr1−1はPWM信号によりPWM駆動をするので、図12(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が小さくなっていくため、時刻t3には時刻t1と比較して電流ILは小さくなる。
【0080】
ここで、時刻t3において、制御信号PG1−2はHレベルからLレベルに変化し、このLレベルは時刻t4まで維持する。このときには、制御信号PG1−1はHレベルを維持している。
このため、時刻t3〜t4の期間では、トランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr1−1はオフになり、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr1−2はオンになるので、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなる。
【0081】
また、時刻t3〜t4の期間の電流経路は、図15に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が少なくなる。
このような動作により、図12の時刻t4になると、PWM制御期間T21が終了し、ノンオーバーラップ期間T22に移行する。このノンオーバーラップ期間T22において、ローサイド側のNMOSトランジスタもサイズの大きなトランジスタからサイズの小さなトランジスタに切り換え、出力抵抗を大きくしたい。これらのトランジスタの切り替えを同時に行うと、回生電流が寄生ダイオードD2−1、D2−2を経由して電源VDDへ逆流してしまう。そこで、回生電流の逆流を防ぐため、次のように制御する。すなわち、時刻t4〜t4´の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG1−2はLレベル、制御信号NG2−1、NG2−2はHレベルとなる。
【0082】
このため、時刻t4〜t4´の期間の電流経路は、図16に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れ、電源VDDへの逆流電流は発生しない。しかし、トランジスタTr4−1とTr4−2がオンしている状態では、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が小さくなっているので、ILが消費されにくい。
そのため、時刻t4〜t4´は逆流電流が発生しない程度の時間でよい。
【0083】
時刻t4´において、制御信号NG2−1がHレベルからLレベルとなるのでトランジスタTr4−1はオフとなる。従って、t4´〜t5の期間の電流経路は、図17に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図12(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる。
【0084】
ここで、ノンオーバーラップ期間T22に移行する直前において、上記のように、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなっており、コイル5への電流供給が制限されている。ノンオーバーラップ期間T22に移行するときに、コイル5の蓄積エネルギーが小さいために、コイル5に流れる回生電流を短時間で消失できる。
このため、従来方法に比べて、電源VDDへの逆流電流の防止を向上させることできる。また、従来方法に比べて、ローサイド側のMOSトランジスタのオンオフの切り換えを早めに行うことができるため、モータの回転効率を向上させることができる。さらに、従来方法と同様に、PWM制御時間を確保できるので、騒音の抑制効果も確保することができる。
【0085】
一方、モータの電気的な時定数によっては、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズが最適でない場合も想定される。その場合には、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズを自由に変更できるように設計すれば、モータの電気的な時定数の差異に応じてそのサイズを調整することができる。
図12の時刻t5において、制御回路2Aは、制御信号NG1−1をLレベルからHレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−2をHレベルからLレベルに切り換える。このときには、回生電流は完全に消費しているため、上記のようにH型ブリッジ1Aのローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えても、逆流電流やキックバック電圧は発生しない。
【0086】
ここで、時刻t5において、上記のようにH型ブリッジ1Aのローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換え、これと同時にMOSトランジスタTr2−1をオンにすると、MOSトランジスタTr2−1とMOSトランジスタTr4に貫通電流が流れ、H型ブリッジ1Aが故障するおそれがある。
そこで、制御回路2Aは、時刻t5においてH型ブリッジ1Aのローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えたのち、貫通電流が発生しない程度の遅延時間を持たせ、時刻t6において、制御信号PG2−1をHレベルからPWM信号に切り換え(図12(D)参照)、MOSトランジスタTr2−1がオンするようにしている。
【0087】
図12の時刻t6において、ノンオーバーラップ期間T22が終了すると、PWM制御期間T23に移行する。
PWM制御期間T23では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はなく(図12(B)(C)(E)〜(I)参照)、制御信号PG2−1だけがHレベルからPWM信号に変化する(図12(D)参照)。PWM信号は、図12(D)に示すようにHレベルとLレベルを交互に繰り返す信号である。
【0088】
このため、制御信号PG2−1がHレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオフのときには、図19に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
一方、制御信号PG2−1がLレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図18に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。
【0089】
このように、PWM制御期間T23には、MOSトランジスタTr2−1はPWM信号によりPWM駆動をするので、図12(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が大きくなっていくため、PWM制御期間T23の終了時は開始時と比較して電流ILは大きくなる。
そして、図12の時刻t7になると、PWM制御期間T23を終了し、逆転動作期間T24に移行する。逆転動作期間T24には、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−2、NG1−1はHレベルであり(図12(B)(C)(E)(F)参照)、制御信号PG2−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2はLレベルとなる(図12(D)(G)(H)、(I)参照)。
【0090】
このため、逆転動作期間T24には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−2、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2はオフになり、MOSトランジスタTr2−1、Tr3−1はオンになる。したがって、モータの逆転動作時の電流経路は、図18に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。
【0091】
図12の時刻t8において、切換信号HALLがHレベルからLレベルに変化すると、第2動作モード期間T2から第1動作モード期間T1に移行する。第1動作モード期間T1のうち、最初のPWM制御期間T11では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はない(図12(B)(C)(E)〜(I)参照)。しかし、制御信号PG2−1は、時刻t8においてLレベルからPWM信号に変化し(図12(D)参照)、時刻t9においてPWM信号からHレベルに変化する。また、制御信号PG2−2は、時刻t10においてHレベルからLレベルに変化し、時刻t11おいてLレベルからHレベルに変化する。このため、時刻t8〜時刻t10の期間では、制御信号PG2−1はHレベルとLレベルを交互に繰り返し、制御信号PG2−2はHレベルを維持する。
【0092】
従って、時刻t8〜時刻t10の期間では、制御信号PG2−1がHレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオフのときには、電源VDDから電流IDDの供給がないが、コイル5は電源VDDからの電流供給が断たれてから放電を開始する。したがって、MOSトランジスタTr2−1がオフのときには、図19に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
【0093】
一方、制御信号PG2−1がLレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図18に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。
このように、時刻t8〜時刻t11の期間では、MOSトランジスタTr2−1はPWM信号によりPWM駆動をするので、図12(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が小さくなっていくため、時刻t10には時刻t8と比較して電流ILは小さくなる。
【0094】
ここで、時刻t10において、制御信号PG2−2はHレベルからLレベルに変化し、このLレベルは時刻t11まで維持する。このときには、制御信号PG2−1はHレベルを維持している。
このため、時刻t10〜t11の期間では、トランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr2−1はオフになり、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr2−2はオンになるので、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなる。
【0095】
また、時刻t10〜t11の期間の電流経路は、図20に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が少なくなる。
図12の時刻t11になると、PWM制御期間T11が終了し、ノンオーバーラップ期間T12に移行する。ノンオーバーラップ期間T12に移行すると、時刻t11〜t11´の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG1−2はHレベル、制御信号NG2−1、NG2−2がLレベルである。
【0096】
このため、時刻t11〜t11’ の期間の電流経路は、図21に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。
時刻t11´において、制御信号NG1−1がHレベルからLレベルとなるのでトランジスタTr3−1はオフとなる。従って、時刻t11´〜t12の期間の電流経路は、図22に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図12(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる
ここで、ノンオーバーラップ期間T12に移行する直前において、上記のように、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなっており、コイル5への電流供給が制限されている。ノンオーバーラップ期間T12に移行するときに、コイル5の蓄積エネルギーが小さいために、コイル5に流れる回生電流を短時間で消失できる。
【0097】
そして、図12の時刻t12において、制御回路2Aは、制御信号NG1−2をHレベルからLレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−1をLレベルからHレベルに切り換える。
図12の時刻t13になると、ノンオーバーラップ期間T12を終了し、PWM制御期間T13に移行する。PWM制御期間T13では、制御信号PG1−2、PG2−1、PG2−2、NG2−1はHレベルであり、制御信号PG1−1がPWM信号となり、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−2はLレベルである。このため、MOSトランジスタTr1−1はPWM駆動され、MOSトランジスタTr1−2、Tr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2、Tr4−2はオフを維持し、MOSトランジスタTr4−1はオンを維持する。
【0098】
図12の時刻t14になると、PWM制御期間T13を終了し、上記の正転動作期間T14となる。
以上のように、第2実施形態では、PWM制御期間T21からノンオーバーラップ期間T22に移行する直前に、MOSトランジスタTr4−1のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr1−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr1−2をオフからオンに切り換えるようにした。
【0099】
また、第2実施形態では、ノンオーバーラップ期間T22において、MOSトランジスタTr4−1のオンを継続した状態でMOSトランジスタTr4−2をオンしたのち、MOSトランジスタTr4−1がオンからオフに切り換えた。
また、第2実施形態では、PWM制御期間T11からノンオーバーラップ期間T12に移行する直前に、MOSトランジスタTr3−1のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr2−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr2−2をオフからオンに切り換えるようにした。
【0100】
また、第2実施形態では、ノンオーバーラップ期間T12において、MOSトランジスタTr3−1のオンを継続した状態でMOSトランジスタTr3−2をオンしたのち、MOSトランジスタTr3−1がオンからオフに切り換えた。
このため、第2実施形態では、PWM制御期間からノンオーバーラップ期間に移行するときに、H型ブリッジ1Aの出力抵抗を大きくし、コイル5に流れる回生電流の消費時間の短縮化できるので、ノンオーバーラップ期間の短縮化を図ることができる。
したがって、第2実施形態によれば、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることができる。
【0101】
(その他の実施形態など)
(1)上記の実施形態では、H型ブリッジ1、1Aのハイサイド側のトランジスタをP型のMOSトランジスタTr1、Tr2とし、そのローサイド側のトランジスタをN型のMOSトランジスタTr3、Tr4とした。この場合には、電源VDDは正の電源となり、電源VSSは負の電源またはグランドとなる。
(2)上記の実施形態の変形例として、H型ブリッジ1、1Aのハイサイド側のトランジスタをP型のMOSトランジスタTr1、Tr2からN型のMOSトランジスタに置き換えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のH型ブリッジ回路は、家庭製品、工業用・医療用機器などの駆動源となる各種のモータの他に、ボイスモータなどの駆動に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
Tr1〜Tr4・・・MOSトランジスタ
Tr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2・・・MOSトランジスタ
Tr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2・・・MOSトランジスタ
1、1A・・・H型ブリッジ
2、2A・・・制御回路
3、4・・・出力端子
5・・・コイル(負荷)
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタなどで構成されるH型ブリッジ回路などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどを駆動するための回路として、モータなどのコイルに電流を供給するH型ブリッジ回路(フルブリッジ回路)が知られている。図23〜図26は、そのH型ブリッジ回路の各動作時における電流経路を示す。
このH型ブリッジ回路は、例えば図23に示すように、P型のMOSトランジスタTr1、Tr2と、N型のMOSトランジスタTr3、Tr4とを備え、電源VDDと電源VSSとに接続される。そして、MOSトランジスタTr1、Tr3のドレイン同士の接続部と、MOSトランジスタTr2、Tr4のドレイン同士の接続部との間に、負荷としてコイル5が接続される。
【0003】
MOSトランジスタTr1、Tr2のゲートには制御信号PG1、PG2が入力され、MOSトランジスタTr3、Tr4のゲートには制御信号NG1、NG2が入力される。また、MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、寄生ダイオードD1〜D4を有する。
次に、このような従来のH型ブリッジ回路において、負荷としてモータのコイル5を接続し、モータを駆動制御する場合の動作例について説明する。
【0004】
図27は、この動作例の場合の各部の信号の波形例を示す。図27において、OUT1、OUT2はモータのコイル5の両端の電圧、IDDは電源VDDからH型ブリッジ回路に供給される電流、ILはモータのコイル5に流れる電流を示す。
図23〜図26参照して、モータが正転動作から逆転動作に移行する時の電流経路について説明する。
【0005】
図27の時刻t1以前のモータの正転動作時には、MOSトランジスタTr1、Tr3の各ゲートの制御信号PG1、NG1はLレベル、MOSトランジスタTr2、Tr4の各ゲートの制御信号PG2、NG2はHレベルとなる(図27(A)〜(D)参照)。このときには、MOSトランジスタTr1、Tr4はオンであり、MOSトランジスタTr2、Tr3はオフである。
【0006】
したがって、モータの正転動作時の電流経路は、図23に示すように、電源VDDからの電流が、MOSトランジスタTr1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4を経由して電源VSSに至る。
その後、図27の時刻t1において、モータが正転動作から逆転動作に切り換わるときには、制御信号PG1、NG1はLレベルからHレベルに変化し、制御信号PG2、NG2はHレベルからLレベルに変化する。このときには、MOSトランジスタTr1、Tr4はオンからオフに切り換わり、MOSトランジスタTr2、Tr3はオフからオンに切り換わる。
【0007】
しかし、その切り換わる瞬間には、図24に示すように、電源VSSからMOSトランジスタTr3の寄生ダイオードD3、コイル5、MOSトランジスタTr2の寄生ダイオードD2、および電源VDDの電流経路で逆流電流が流れる。この逆流電流は、コイル5に蓄積された電荷が無くなるまで流れ続ける。
図27の時刻t2において、コイル5の電荷が無くなると、図25に示すように、電源VDDからの電流が、MOSトランジスタTr2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3を経由して電源VSSに至るようになる。
【0008】
その後、図27の時刻t3において、モータが逆転動作から正転動作に切り換わる瞬間においても、図26に示すように、電源VSSからMOSトランジスタTr4の寄生ダイオードD4、コイル5、MOSトランジスタTr1の寄生ダイオードD1、および電源VDDの電流経路で逆流電流が流れる。この逆流電流は、図27の時刻t4まで流れ続けることになる。
【0009】
このようなH型ブリッジ回路における逆流電流を防止する方法として、モータの正転動作と逆転動作の切り換え時に、ノンオーバーラップ期間を設ける方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
この従来方法では、図28に示すH型ブリッジ回路のMOSトランジスタTr1〜Tr4の駆動制御は、図29に示すような制御信号PG1、PG2、NG1、NG2が使用される。また、その駆動制御には、モータの正転動作と逆転動作の切り換えを行う正逆制御信号HALLが使用される。
【0010】
この従来方法では、図29に示すように、第1動作モード期間T1と第2動作モード期間T2とがある。そして、正逆制御信号HALLがLレベルのときには第1動作モード期間T1となり、正逆制御信号HALLがHレベルのときには第2動作モード期間T2となる。
また、第1動作モード期間T1は、図29に示すように、PWM制御期間T11、ノンオーバーラップ期間T12、PWM制御期間T13、および正転動作期間T14からなる。第2動作モード期間T2は、図29に示すように、PWM制御期間T21、ノンオーバーラップ期間T22、PWM制御期間T23、および逆転動作期間T24からなる。
【0011】
図29の時刻t1以前であって、第1動作モード期間T1内の正転動作期間T14には、MOSトランジスタTr1、Tr3の制御信号PG1、NG1はLレベル、MOSトランジスタTr2、Tr4の制御信号PG2、NG2はHレベルとなる(図29(B)〜(E)参照)。このときには、MOSトランジスタTr1、Tr4はオンであり、MOSトランジスタTr2、Tr3はオフである。したがって、モータの正転動作時の電流経路は、電源VDDからの電流が、MOSトランジスタTr1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4を経由して電源VSSに至る。
【0012】
しかし、時刻t1において、正逆制御信号HALLがLレベルからHレベルに変化して、第1動作モード期間T1から第2動作モード期間T2に変化すると、上記の電流経路が変更を開始する。
第2動作モード期間T2のうち、最初のPWM制御期間T21では、制御信号PG1がPWM信号となり(図29(B)参照)、これによりMOSトランジスタTr1がPWM制御される。PWM制御期間T21が終了すると、ノンオーバーラップ期間T22に移行するが、このノンオーバーラップ期間T22は予め設定された任意の時間である。
【0013】
ノンオーバーラップ期間T22の初期におけるコイル5の電流の経路は、図29に示すように、電源VSS、MOSトランジスタTr3の寄生ダイオードD3、コイル5、およびMOSトランジスタTr4を経由して電源VSSに戻り、時間の経過とともにコイル5の電流ILは減少する(図29(I)参照)。
図29の時刻t2において、コイル5の電流ILがほぼ0〔mA〕になったときに(図29(I)参照)、制御信号NG1をLレベルからHレベルに切り換え、制御信号NG2をHレベルからLレベルに切り換え、H型ブリッジ回路のローサイド側のMOSトランジスタTr3、Tr4のオンオフが切り換える。この場合には、ローサイド側のMOSトランジスタTr3、Tr4のオンオフが切り換わっても、電源VDDへの逆転電流は発生しない。また、H型ブリッジ回路の出力端子のキックバック電圧も発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−296850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の従来方法では、ノンオーバーラップ期間T22をモータの電気的な時定数よりも長く設定した場合には、コイル5の電流ILが0〔mA〕の期間を十分に確保できる。このため、上記のように、コイル5の電流ILが0〔mA〕になったときに、H型ブリッジ回路のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフが切り換えれば、電源VDDへの逆転電流は発生しない。しかし、H型ブリッジ回路への電源VDDからの電流IDDの供給のタイミングが遅れてしまうので、モータの回転数が低下し効率が悪くなることがある。
【0016】
逆に、ノンオーバーラップ期間T22をモータの電気的な時定数よりも短く設定すると、以下の事態が発生する。
すなわち、図30(I)に示すように、コイル5の電流ILが流れている時刻t2において、制御信号NG1、NG2の切り換えが起こり(図30(D)(E)参照)、H型ブリッジ回路のローサイド側のMOSトランジスタTr3、Tr4のオンオフの切り換えが発生する。このため、ノンオーバーラップ期間T22内において、電源VSSからMOSトランジスタTr3の寄生ダイオードD3、コイル5、MOSトランジスタTr2の寄生ダイオードD2、および電源VDDの電流経路で逆流電流が流れる。
【0017】
ステップダウンコンバート型の電源を用いている場合、その電源は回路から電源側に電流を引くことができないため、コイル5の還流電流を電源に流し込もうとすると、電源の電位が上昇する。
上記の方法のように、逆流電流が発生した瞬間、電源VDDの電位が上昇する。H型ブリッジ回路とその制御回路を同じ電源で駆動させる方法をとった場合、電源VDDの上昇により電流経路を指定するための制御回路を故障させるおそれがある。
【0018】
このような問題があるので、ノンオーバーラップ期間中において、ローサイド側のMOSトランジスタのオンオフの切り換えの直前までに、回生電流が0〔A〕になるように消費させなければならない。
しかし、従来方法では、回生電流の消費時間の短縮を図ることができず、ノンオーバーラップ期間を短縮することができない。このため、従来方法では、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることができないという課題がある。
【0019】
そこで、本発明の目的は、上述の事情に鑑み、モータに適用した場合に、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図るようにしたH型ブリッジ回路などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決して本発明の目的を達成するために、本発明は、以下のように構成される。
本発明は、第1の電源と第2の電源との間に直列に接続される第1及び第2のトランジスタと、前記第1の電源と前記第2の電源との間に直列に接続される第3及び第4のトランジスタと、を備え、前記第1及び第2のトランジスタの接続点と前記第3及び第4のトランジスタの接続点との間に負荷を接続するH型ブリッジと、前記負荷の通電方向を切り換える切換信号を入力し、当該入力にしたがって前記第1、第2、第3及び第4のトランジスタの駆動をそれぞれ制御する制御回路と、を備え、前記第1のトランジスタは、第1−1のトランジスタと、前記第1−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第1−2のトランジスタとから構成され、前記第2のトランジスタは、第2−1のトランジスタと、前記第2−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第2−2のトランジスタとから構成され、前記第3のトランジスタは、第3−1のトランジスタと、前記第3−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第3−2のトランジスタとから構成され、前記第4のトランジスタは、第4−1のトランジスタと、前記第4−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第4−2のトランジスタとから構成され、前記制御回路は、前記第1、第2、第3、および第4のトランジスタを構成する8つのトランジスタのそれぞれについて、予め定めた手順で個別にオンオフ制御することを特徴とする。
【0021】
また、本発明において、前記制御回路は、通常動作状態において、前記第1−1及び第1−2のトランジスタと前記第4−1及び第4−2のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1及び第2−2のトランジスタと第3−1及び第3−2のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1トランジスタをオフにしたのち、前記第1−2のトランジスタ及び前記第4−1トランジスタをオフにし、または、前記第3−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1トランジスタをオフにしたのち、前記第2−2のトランジスタ及び前記第3−1のトランジスタをオフにして前記負荷に供給する電流を制限することを特徴とする。
【0022】
本発明において、前記制御回路は、通常動作状態において、前記第1−1のトランジスタと前記第4−1のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1のトランジスタと前記第3−1のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1のトランジスタをオフにし、前記第1−2のトランジスタをオンにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1のトランジスタをオフにし、前記第2−2のトランジスタをオンにして前記負荷に供給する電流を制限し、前記負荷の電流回生時において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第4−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第4−1のトランジスタをオフにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第3−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第3−1のトランジスタをオフにすることを特徴とする
【発明の効果】
【0023】
このように本発明では、H型ブリッジを構成するトランジスタを、トランジスタサイズが異なる2つのトランジスタで構成し、その2つのトランジスタのオンオフ制御を別個に行うようにした。
このため、本発明によれば、負荷に回生電流が流れる直前に、その2つのトランジスタのオンオフを別個に制御することで、H型ブリッジのオン抵抗を大きくし、回生電流の消費時間の短縮化を図ることが可能となる。
したがって、本発明によれば、モータの駆動に適用する場合に、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のH型ブリッジ回路の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態をモータの駆動に適用した場合の動作例を説明する、各部の波形例を示す波形図である。
【図3】第1実施形態において、正転動作期間T14およびPWM制御期間T21における電流経路を説明する図である。
【図4】第1実施形態において、PWM制御期間T21のときの回生電流を説明する図である。
【図5】第1実施形態において、時刻t3〜t4の期間における電流経路を説明する図である。
【図6】第1実施形態において、時刻t4〜t5の期間における電流経路を説明する図である。
【図7】第1実施形態において、逆転動作期間T24およびPWM制御期間T23における電流経路を説明する図である。
【図8】第1実施形態において、PWM制御期間T23のときの回生電流を説明する図である。
【図9】第1実施形態において、時刻t10〜t11の期間における電流経路を説明する図である。
【図10】第1実施形態において、時刻t11〜t12の期間における電流経路を説明する図である。
【図11】本発明のH型ブリッジ回路の第2実施形態の構成を示す図である。
【図12】第2実施形態をモータの駆動に適用した場合の動作例を説明する、各部の波形例を示す波形図である。
【図13】第2実施形態において、正転動作期間T14およびPWM制御期間T21における電流経路を説明する図である。
【図14】第2実施形態において、時刻t1〜t3の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図15】第2実施形態において、時刻t3〜t4の期間における電流経路を説明する図である。
【図16】第2実施形態において、時刻t4〜t4´の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図17】第2実施形態において、時刻t4´〜t5の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図18】第2実施形態において、逆転動作期間T24およびPWM制御期間T23における電流経路を説明する図である。
【図19】第2実施形態において、時刻t8〜t10の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図20】第2実施形態において、時刻t10〜t11の期間における電流経路を説明する図である。
【図21】第2実施形態において、時刻t11〜t11´の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図22】第2実施形態において、時刻t11´〜t12の期間における回生電流の電流経路を説明する図である。
【図23】従来回路、およびその従来回路におけるモータの正転動作時の電流経路を示す図である。
【図24】従来回路において、モータの正転動作から逆転動作への切り換え時の電流経路を示す図である。
【図25】従来回路におけるモータの逆転動作時の電流経路を示す図である。
【図26】従来回路において、逆転動作から正転動作への切り換え時の電流経路を示す図である。
【図27】従来回路のトランジスタの駆動制御時の各部の波形例を示す図である。
【図28】従来回路、およびコイル電流の回生時における電流経路を説明する図である。
【図29】従来回路において、トランジスタを従来方法で駆動制御する場合の各部の波形例を示す図である。
【図30】その従来方法の課題を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態の構成)
図1は、本発明のH型ブリッジ回路の第1実施形態の構成を概要を示す図である。
この第1実施形態に係るH型ブリッジ回路は、図1に示すように、H型ブリッジ1と、制御回路2とを備えている。
【0026】
H型ブリッジ1は、図1に示すように、P型のMOSトランジスタTr1、Tr2と、N型のMOSトランジスタTr3、Tr4とを備えている。
MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。また、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。
【0027】
このH型ブリッジ1では、MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3の共通接続部が出力端子3と接続され、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4の共通接続部が出力端子4と接続されている。そして、その接続端子3、4間に負荷としてコイル5が接続される。
また、このH型ブリッジ1では、図1に示すように、MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、トランジスタサイズが異なる大小2つのMOSトランジスタから構成される。
【0028】
MOSトランジスタTr1は、P型のMOSトランジスタTr1−1と、MOSトランジスタTr1−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr1−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr1−1は寄生ダイオードD1−1を有し、MOSトランジスタTr1−2は寄生ダイオードD1−2を有する。
【0029】
また、MOSトランジスタTr2は、P型のMOSトランジスタTr2−1と、MOSトランジスタTr2−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr2−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr2−1は寄生ダイオードD2−1を有し、MOSトランジスタTr2−2は寄生ダイオードD2−2を有する。
【0030】
さらに、MOSトランジスタTr3は、N型のMOSトランジスタTr3−1と、MOSトランジスタTr3−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr3−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr3−1は寄生ダイオードD3−1を有し、MOSトランジスタTr3−2は寄生ダイオードD3−2を有する。
【0031】
また、MOSトランジスタTr4は、N型のMOSトランジスタTr4−1と、MOSトランジスタTr4−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr4−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr4−1は寄生ダイオードD4−1を有し、MOSトランジスタTr4−2は寄生ダイオードD4−2を有する。
【0032】
制御回路2は、負荷であるコイル5の通電方向を切り換える切換信号HALLを入力し、この入力信号にしたがって、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。この生成された制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2は、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
【0033】
また、制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。この生成された制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2は、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
(第1実施形態の動作)
次に、第1実施形態の動作例について、図面を参照して説明する。
【0034】
この動作例は、H型ブリッジ1の負荷であるコイル5としてモータのコイルを接続し、モータを駆動制御する場合について説明する。
このモータの駆動制御のために、制御回路2にはモータの正転と逆転の動作を切り換える切換信号HALLが入力される。
制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、図2に示すように、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。
【0035】
また、制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、図2に示すように、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。
この動作例では、図2に示すように、第1動作モード期間T1と第2動作モード期間T2とがあり、切換信号HALLがLレベルのときに第1動作モード期間T1となり、切換信号HALLがHレベルのときに第2動作モード期間T2となる。
【0036】
また、第1動作モード期間T1は、図2に示すように、PWM制御期間T11、ノンオーバーラップ期間T12、PWM制御期間T13、および正転動作期間T14からなる。第2動作モード期間T2は、図2に示すように、PWM制御期間T21、ノンオーバーラップ期間T22、PWM制御期間T23、および逆転動作期間T24からなる。
図2の時刻t1以前であって、第1動作モード期間T1内の正転動作期間T14には、図2(B)(C)のように制御信号PG1−1、PG1−2はLレベルになり、図2(F)(G)のように制御信号NG1−1、NG1−2はLレベルになる。また、図2(D)(E)のように制御信号PG2−1、PG2−2はHレベルになり、図2(H)(I)のように制御信号NG2−1、NG2−2はHレベルになる。
【0037】
このため、正転動作期間T14には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr4−1、Tr4−2はオンになり、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2はオフになる。したがって、モータの正転動作時の電流経路は、図3に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1、Tr4−2を経由して電源VSSに至る。
【0038】
図2の時刻t1において、切換信号HALLがLレベルからHレベルに変化すると、第1動作モード期間T1から第2動作モード期間T2に変化する。
第2動作モード期間T2のうち、最初のPWM制御期間T21では、制御信号PG2−1、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はなく(図2(D)〜(I)参照)、制御信号PG1−1、PG1−2だけがLレベルからPWM信号に変化する(図2(B)(C)参照)。PWM信号は、図2(B)(C)示すようにHレベルとLレベルを交互に繰り返す信号である。
【0039】
このため、PWM制御期間T21では、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオンのときには電源VDDからの電流IDDが流れ、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオフのときにはその電流IDDが0〔mA〕となる(図2(L)参照)。これに伴い、コイル5の両端の電圧OUT1が図2(J)のように変化し、その電圧OUT2はLレベルを維持する(図2(K)参照)。
【0040】
このようにPWM制御期間T21では、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2はオフとオンの期間を交互に繰り返す。
このため、制御信号PG1−1、PG1−2、がHレベルであってMOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオフのときには、電源VDDから電流IDDの供給がないが、コイル5は電源VDDからの電流供給が断たれてから放電を開始する。したがって、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオフのときには、図4に示すように、電源VSS、MOSトランジスタD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
【0041】
ここで、寄生ダイオードD3−1、D3−2のしきい値電圧をVF、MOSトランジスタTr4−1のオン抵抗をR41、MOSトランジスタTr4−2のオン抵抗をR42とすると、コイル5に蓄積されたエネルギー損失ELは、次式のようになる。
EL=(VF×IL)+IL2 ×〔R41×R42/(R41+R42)〕
このため、コイル5に蓄積されたエネルギーは上記のエネルギー損失ELによって消失するので、コイル5の電流ILは時間の経過とともに減少する(図2(M)参照)。
【0042】
一方、制御信号PG1−1、PG1−2がLレベルであってMOSトランジスタTr1−1、Tr1−2がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図3に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1、Tr4−2を経由して電源VSSに至る。このとき、コイル5の電流ILは時間の経過とともに増加する(図2(M)参照)。
【0043】
このように、PWM制御期間T21には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2はPWM信号によりPWM駆動をするので、図2(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が小さくなっていくため、PWM制御期間T21の終了時は開始時と比較して電流ILは小さくなる。
ここで、制御信号PG1−1、PG1−2は、時刻t1においてLレベルからPWM信号に変化する。
【0044】
しかし、制御信号PG1−1は、時刻t2においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t2においてトランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr1−1はオフになる。一方、制御信号PG1−2は、時刻t4においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t3にLレベルに変化したのち時刻t4にHレベルに変化する。このため、制御信号PG1−2は、図2(C)のように、時刻t3〜t4にはLレベルとなり、このLレベルの期間には、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr1−2はオンになるので、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなる。
【0045】
また、時刻t3には、図2(H)に示すように、制御信号NG2−1はHレベルからLレベルに変化する。このとき、制御信号NG2−2は、図2(I)に示すように、Hレベルのままである。このため、時刻t3には、MOSトランジスタTr4−2はオンのままであるが、トランジスタサイズの大きなMOSトランジスタTr4−1はオフとなり、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなる。
【0046】
このような動作により、時刻t3〜t4の期間の電流経路は、図5に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−2を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子3、4側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が少なくなる。
図2の時刻t4になると、PWM制御期間T21が終了し、ノンオーバーラップ期間T22に移行する。
【0047】
ノンオーバーラップ期間T22に移行すると、時刻t4〜t5の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1はLレベル、制御信号NG2−2だけがHレベルである。
このため、時刻t4〜t5の期間の電流経路は、図6に示すように、電源VSS、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2の寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図2(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる。
【0048】
ここで、ノンオーバーラップ期間T22に移行する直前において、上記のように、コイル5の出力端子3、4側の出力抵抗が大きくなっており、コイル5への電流供給が制限されている。このため、従来方法と比較すると、ノンオーバーラップ期間T22に移行するときに、コイル5の蓄積エネルギーが小さいために、コイル5に流れる回生電流を短時間で消失できる。
【0049】
このため、従来方法に比べて、電源VDDへの逆流電流の防止を向上させることできる。また、従来方法に比べて、ローサイド側のMOSトランジスタのオンオフの切り換えを早めに行うことができるため、モータの回転効率を向上させることができる。さらに、従来方法と同様に、PWM制御時間を確保できるので、騒音の抑制効果も確保することができる。
【0050】
一方、モータの電気的な時定数によっては、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズが最適でない場合も想定される。その場合には、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズを自由に変更できるように設計すれば、モータの電気的な時定数の差異に応じてそのサイズを調整することができる。
図2の時刻t5において、制御回路2は、制御信号NG1−1、NG1−2をLレベルからHレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−2をHレベルからLレベルに切り換える。このときには、回生電流は完全に消費しているため、上記のようにH型ブリッジ1のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えても、逆流電流やキックバック電圧は発生しない。
【0051】
ここで、時刻t5において、上記のようにH型ブリッジ1のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換え、これと同時にMOSトランジスタTr2−1、Tr2−2をオンにすると、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2とMOSトランジスタTr4−2に貫通電流が流れ、H型ブリッジ1が故障するおそれがある。
そこで、制御回路2は、時刻t5においてH型ブリッジ1のローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えたのち、貫通電流が発生しない程度の遅延時間を持たせ、時刻t6において、制御信号PG2−1、PG2−2をHレベルからPWM信号に切り換え(図2(D)(E)参照)、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2がオンするようにしている。
【0052】
図2の時刻t6において、ノンオーバーラップ期間T22が終了すると、PWM制御期間T23に移行する。PWM制御期間T23では、制御信号PG1−1、PG1−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はなく(図2(B)(C)(F)〜(I)参照)、制御信号PG2−1、PG2−2だけがHレベルからPWM信号に変化する(図2(D)(E)参照)。PWM信号は、図2(D)(E)に示すようにHレベルとLレベルを交互に繰り返す信号である。
【0053】
このため、制御信号PG2−1、PG2−2がHレベルであってMOSトランジスタTr2−1、Tr2−2がオフのときには、図8に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
一方、制御信号PG2−1、PG2−2がLレベルであってMOSトランジスタTr2−1、Tr2−2がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図7に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1、Tr3−2を経由して電源VSSに至る。
【0054】
このように、PWM制御期間T23には、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2はPWM信号によりPWM駆動をするので、図2(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が大きくなっていくため、PWM制御期間T23の終了時は開始時と比較して電流ILは大きくなる。
そして、図2の時刻t7になると、PWM制御期間T23を終了し、逆転動作期間T24に移行する。逆転動作期間T24には、制御信号PG1−1、PG1−2、NG1−1、NG1−2はHレベルであり(図2(B)(C)(F)(G)参照)、制御信号PG2−1、PG2−2、NG2−1、NG2−2はLレベルとなる(図2(D)(E)(H)(I)参照)。
【0055】
このため、逆転動作期間T24には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr4−1、Tr4−2はオフになり、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2はオンになる。したがって、モータの逆転動作時の電流経路は、図7に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1、Tr3−2を経由して電源VSSに至る。
【0056】
図2の時刻t8において、切換信号HALLがHレベルからLレベルに変化すると、第2動作モード期間T2から第1動作モード期間T1に移行する。第1動作モード期間T1に移行すると、最初のPWM制御期間T11では、制御信号PG2−1、PG2−2はPWM信号となる。
しかし、制御信号PG2−1は、時刻t9においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t9においてトランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr2−1はオフになる。一方、制御信号PG2−2は、時刻t11においてPWM信号からHレベルに変化するので、時刻t10にLレベルに変化したのち時刻t11にHレベルに変化する。このため、制御信号PG2−2は、図2(E)のように、時刻t10〜t11にはLレベルとなり、このLレベルの期間には、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr2−2はオンになるので、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなる。
【0057】
また、時刻t10には、図2(F)に示すように、制御信号NG1−1はHレベルからLレベルに変化する。このとき、制御信号NG1−2は、図2(G)に示すように、Hレベルのままである。このため、時刻t10には、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr3−2はオンのままであるが、トランジスタサイズの大きなMOSトランジスタTr3−1はオフとなり、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなる。
【0058】
このような動作により、時刻t10〜t11の期間の電流経路は、図9に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−2を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子3、4側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が制限されて少なくなる。
【0059】
図2の時刻t11になると、PWM制御期間T11が終了し、ノンオーバーラップ期間T12に移行する。ノンオーバーラップ期間T12に移行すると、時刻t11〜t12の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG2−1、NG2−2はLレベル、制御信号NG1−2だけがHレベルである。
【0060】
このため、時刻t11〜t12の期間の電流経路は、図10に示すように、電源VSS、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2の寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図2(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる。
【0061】
そして、図2の時刻t12において、制御回路2は、制御信号NG1−2をHレベルからLレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−1、NG2−2をLレベルからHレベルに切り換える。
図2の時刻t13になると、ノンオーバーラップ期間T12を終了し、PWM制御期間T13に移行する。PWM制御期間T13では、制御信号PG2−1、PG2−2、NG2−1、NG2−2はHレベルであり、制御信号PG1−1、PG1−2がPWM信号となり、制御信号NG1−1、NG1−2はLレベルである。このため、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2はPWM駆動され、MOSトランジスタTr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2はオフを維持し、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2はオンを維持する。
【0062】
図2の時刻t14になると、PWM制御期間T13を終了し、上記の正転動作期間T14となる。
以上のように、第1実施形態では、PWM制御期間T21からノンオーバーラップ期間T22に移行する直前に、MOSトランジスタTr4−2のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr1−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr1−2、Tr4−1をオンからオフに切り換えるようにした。
【0063】
また、第1実施形態では、PWM制御期間T11からノンオーバーラップ期間T12に移行する直前に、MOSトランジスタTr3−2のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr2−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr2−2、Tr3−1をオンからオフに切り換えるようにした。
このため、第1実施形態では、PWM制御期間からノンオーバーラップ期間に移行するときに、コイル5の両端の出力抵抗を大きくし、コイル5に流れる回生電流の消費時間の短縮化できるので、ノンオーバーラップ期間の短縮化を図ることができる。
したがって、第1実施形態によれば、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることができる。
【0064】
(第2実施形態の構成)
図11は、本発明のH型ブリッジ回路の第2実施形態の構成を示す図である。
この第2実施形態に係るH型ブリッジ回路は、図11に示すように、H型ブリッジ1Aと、制御回路2Aとを備えている。
H型ブリッジ1Aは、図11に示すように、P型のMOSトランジスタTr1、Tr2と、N型のMOSトランジスタTr3、Tr4とを備えている。
MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。また、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4とは直列接続され、この直列回路が高電位側の電源VDDと低電位側の電源VSSとの間に接続される。
【0065】
このH型ブリッジ1Aでは、MOSトランジスタTr1とMOSトランジスタTr3の共通接続部が出力端子3と接続され、MOSトランジスタTr2とMOSトランジスタTr4の共通接続部が出力端子4と接続されている。そして、その接続端子3、4間に負荷としてコイル5が接続される。
また、このH型ブリッジ1Aでは、図11に示すように、MOSトランジスタTr1〜Tr4のそれぞれは、トランジスタサイズが異なる大小2つのMOSトランジスタから構成される。
【0066】
MOSトランジスタTr1は、P型のMOSトランジスタTr1−1と、MOSトランジスタTr1−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr1−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr1−1は寄生ダイオードD1−1を有し、MOSトランジスタTr1−2は寄生ダイオードD1−2を有する。
【0067】
また、MOSトランジスタTr2は、P型のMOSトランジスタTr2−1と、MOSトランジスタTr2−1に比べてトランジスタサイズが小さなP型のMOSトランジスタTr2−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr2−1は寄生ダイオードD2−1を有し、MOSトランジスタTr2−2は寄生ダイオードD2−2を有する。
【0068】
また、MOSトランジスタTr3は、N型のMOSトランジスタTr3−1と、MOSトランジスタTr3−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr3−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr3−1は寄生ダイオードD3−1を有し、MOSトランジスタTr3−2は寄生ダイオードD3−2を有する。
【0069】
また、MOSトランジスタTr4は、N型のMOSトランジスタTr4−1と、MOSトランジスタTr4−1に比べてトランジスタサイズが小さなN型のMOSトランジスタTr4−2とからなり、これらが並列に接続されている。MOSトランジスタTr4−1は寄生ダイオードD4−1を有し、MOSトランジスタTr4−2は寄生ダイオードD4−2を有する。
【0070】
制御回路2Aは、負荷であるコイル5の通電方向を切り換える切換信号HALLを入力し、この入力信号にしたがって、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。この生成された制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2は、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
【0071】
また、制御回路2は、切換信号HALLにしたがって、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。この生成された制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2は、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2の各ゲートに入力され、駆動制御される。
【0072】
(第2実施形態の動作)
次に、第2実施形態の動作例について、図面を参照して説明する。
この動作例は、H型ブリッジ1Aの負荷であるコイル5としてモータのコイルを接続し、モータを駆動制御する場合について説明する。
このモータの駆動制御のために、制御回路2Aにはモータの正転と逆転の動作を切り換える切換信号HALLが入力される。
制御回路2Aは、切換信号HALLにしたがって、図12に示すように、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2を生成する。
【0073】
また、制御回路2Aは、切換信号HALLにしたがって、図12に示すように、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2のそれぞれの駆動制御を行う、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2を生成する。
この動作例では、図12に示すように、第1動作モード期間T1と第2動作モード期間T2とがあり、切換信号HALLがLレベルのときに第1動作モード期間T1となり、切換信号HALLがHレベルのときに第2動作モード期間T2となる。
【0074】
また、第1動作モード期間T1は、図12に示すように、PWM制御期間T11、ノンオーバーラップ期間T12、PWM制御期間T13、および正転動作期間T14からなる。第2動作モード期間T2は、図12に示すように、PWM制御期間T21、ノンオーバーラップ期間T22、PWM制御期間T23、および逆転動作期間T24からなる。
図12の時刻t1以前であって、第1動作モード期間T1内の正転動作期間T14には、図12(B)のように制御信号PG1−1はLレベルになり、図12(F)、(G)、(I)のように制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−2はLレベルになる。また、図12(C)(D)(E)のように制御信号PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベルになり、図12(F)のように制御信号NG2−1はHレベルになる。
【0075】
このため、正転動作期間T14には、MOSトランジスタTr1−1、Tr4−1はオンになり、MOSトランジスタTr1−2、Tr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2、Tr4−2はオフになる。したがって、モータの正転動作時の電流経路は、図13に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1を経由して電源VSSに至る。
【0076】
図12の時刻t1において、切換信号HALLがLレベルからHレベルに変化すると、第1動作モード期間T1から第2動作モード期間T2に移行する。
第2動作モード期間T2のうち、最初のPWM制御期間T21では、制御信号PG1−2、PG2−1、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はない(図12(C)〜(I)参照)。しかし、制御信号PG1−1は、時刻t1においてLレベルからPWM信号に変化し(図12(B)参照)、時刻t2においてPWM信号からHレベルに変化する。また、制御信号PG1−2は、時刻t3においてHレベルからLレベルに変化し、時刻t4おいてLレベルからHレベルに変化する。このため、時刻t1〜時刻t3の期間では、制御信号PG1−1はHレベルとLレベルを交互に繰り返し、制御信号PG1−2はHレベルを維持する。
【0077】
従って、時刻t1〜時刻t3の期間では、制御信号PG1−1がHレベルであってMOSトランジスタTr1−1がオフのときには、電源VDDから電流IDDの供給がないが、コイル5は電源VDDからの電流供給が断たれてから放電を開始する。したがって、MOSトランジスタTr1−1がオフのときには、図14に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−1、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
【0078】
ここで、寄生ダイオードD3のしきい値電圧をVF、MOSトランジスタTr4のオン抵抗をR4とすると、コイル5に蓄積されたエネルギー損失ELは、次式となる。
EL=(VF×IL)+(IL2 ×R4)
このため、コイル5に蓄積されたエネルギーは上記のエネルギー損失ELによって消失するので、コイル5の電流ILは時間の経過とともに減少する(図12(M)参照)。
【0079】
一方、制御信号PG1−1がLレベルであってMOSトランジスタTr1−1がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図13に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1を経由して電源VSSに至る。
このように、時刻t1〜時刻t3の期間では、MOSトランジスタTr1−1はPWM信号によりPWM駆動をするので、図12(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が小さくなっていくため、時刻t3には時刻t1と比較して電流ILは小さくなる。
【0080】
ここで、時刻t3において、制御信号PG1−2はHレベルからLレベルに変化し、このLレベルは時刻t4まで維持する。このときには、制御信号PG1−1はHレベルを維持している。
このため、時刻t3〜t4の期間では、トランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr1−1はオフになり、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr1−2はオンになるので、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなる。
【0081】
また、時刻t3〜t4の期間の電流経路は、図15に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr1−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr4−1を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が少なくなる。
このような動作により、図12の時刻t4になると、PWM制御期間T21が終了し、ノンオーバーラップ期間T22に移行する。このノンオーバーラップ期間T22において、ローサイド側のNMOSトランジスタもサイズの大きなトランジスタからサイズの小さなトランジスタに切り換え、出力抵抗を大きくしたい。これらのトランジスタの切り替えを同時に行うと、回生電流が寄生ダイオードD2−1、D2−2を経由して電源VDDへ逆流してしまう。そこで、回生電流の逆流を防ぐため、次のように制御する。すなわち、時刻t4〜t4´の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG1−2はLレベル、制御信号NG2−1、NG2−2はHレベルとなる。
【0082】
このため、時刻t4〜t4´の期間の電流経路は、図16に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−1、Tr4−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れ、電源VDDへの逆流電流は発生しない。しかし、トランジスタTr4−1とTr4−2がオンしている状態では、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が小さくなっているので、ILが消費されにくい。
そのため、時刻t4〜t4´は逆流電流が発生しない程度の時間でよい。
【0083】
時刻t4´において、制御信号NG2−1がHレベルからLレベルとなるのでトランジスタTr4−1はオフとなる。従って、t4´〜t5の期間の電流経路は、図17に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD3−1、D3−2、コイル5、MOSトランジスタTr4−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図12(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる。
【0084】
ここで、ノンオーバーラップ期間T22に移行する直前において、上記のように、コイル5の出力端子3側の出力抵抗が大きくなっており、コイル5への電流供給が制限されている。ノンオーバーラップ期間T22に移行するときに、コイル5の蓄積エネルギーが小さいために、コイル5に流れる回生電流を短時間で消失できる。
このため、従来方法に比べて、電源VDDへの逆流電流の防止を向上させることできる。また、従来方法に比べて、ローサイド側のMOSトランジスタのオンオフの切り換えを早めに行うことができるため、モータの回転効率を向上させることができる。さらに、従来方法と同様に、PWM制御時間を確保できるので、騒音の抑制効果も確保することができる。
【0085】
一方、モータの電気的な時定数によっては、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズが最適でない場合も想定される。その場合には、2つのMOSトランジスタのトランジスタサイズを自由に変更できるように設計すれば、モータの電気的な時定数の差異に応じてそのサイズを調整することができる。
図12の時刻t5において、制御回路2Aは、制御信号NG1−1をLレベルからHレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−2をHレベルからLレベルに切り換える。このときには、回生電流は完全に消費しているため、上記のようにH型ブリッジ1Aのローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えても、逆流電流やキックバック電圧は発生しない。
【0086】
ここで、時刻t5において、上記のようにH型ブリッジ1Aのローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換え、これと同時にMOSトランジスタTr2−1をオンにすると、MOSトランジスタTr2−1とMOSトランジスタTr4に貫通電流が流れ、H型ブリッジ1Aが故障するおそれがある。
そこで、制御回路2Aは、時刻t5においてH型ブリッジ1Aのローサイド側のMOSトランジスタのオンオフを切り換えたのち、貫通電流が発生しない程度の遅延時間を持たせ、時刻t6において、制御信号PG2−1をHレベルからPWM信号に切り換え(図12(D)参照)、MOSトランジスタTr2−1がオンするようにしている。
【0087】
図12の時刻t6において、ノンオーバーラップ期間T22が終了すると、PWM制御期間T23に移行する。
PWM制御期間T23では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はなく(図12(B)(C)(E)〜(I)参照)、制御信号PG2−1だけがHレベルからPWM信号に変化する(図12(D)参照)。PWM信号は、図12(D)に示すようにHレベルとLレベルを交互に繰り返す信号である。
【0088】
このため、制御信号PG2−1がHレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオフのときには、図19に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
一方、制御信号PG2−1がLレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図18に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。
【0089】
このように、PWM制御期間T23には、MOSトランジスタTr2−1はPWM信号によりPWM駆動をするので、図12(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が大きくなっていくため、PWM制御期間T23の終了時は開始時と比較して電流ILは大きくなる。
そして、図12の時刻t7になると、PWM制御期間T23を終了し、逆転動作期間T24に移行する。逆転動作期間T24には、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−2、NG1−1はHレベルであり(図12(B)(C)(E)(F)参照)、制御信号PG2−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2はLレベルとなる(図12(D)(G)(H)、(I)参照)。
【0090】
このため、逆転動作期間T24には、MOSトランジスタTr1−1、Tr1−2、Tr2−2、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2はオフになり、MOSトランジスタTr2−1、Tr3−1はオンになる。したがって、モータの逆転動作時の電流経路は、図18に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。
【0091】
図12の時刻t8において、切換信号HALLがHレベルからLレベルに変化すると、第2動作モード期間T2から第1動作モード期間T1に移行する。第1動作モード期間T1のうち、最初のPWM制御期間T11では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−2、NG1−1、NG1−2、NG2−1、NG2−2に変化はない(図12(B)(C)(E)〜(I)参照)。しかし、制御信号PG2−1は、時刻t8においてLレベルからPWM信号に変化し(図12(D)参照)、時刻t9においてPWM信号からHレベルに変化する。また、制御信号PG2−2は、時刻t10においてHレベルからLレベルに変化し、時刻t11おいてLレベルからHレベルに変化する。このため、時刻t8〜時刻t10の期間では、制御信号PG2−1はHレベルとLレベルを交互に繰り返し、制御信号PG2−2はHレベルを維持する。
【0092】
従って、時刻t8〜時刻t10の期間では、制御信号PG2−1がHレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオフのときには、電源VDDから電流IDDの供給がないが、コイル5は電源VDDからの電流供給が断たれてから放電を開始する。したがって、MOSトランジスタTr2−1がオフのときには、図19に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、および電源VSSの経路で電流ILが回生電流として流れる。
【0093】
一方、制御信号PG2−1がLレベルであってMOSトランジスタTr2−1がオンのときには、再び電源VDDからの電流供給が開始される。すなわち、図18に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−1、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。
このように、時刻t8〜時刻t11の期間では、MOSトランジスタTr2−1はPWM信号によりPWM駆動をするので、図12(M)に示すようにコイル5の電流ILは増減を繰り返す。しかし、PWM信号のデューティー比が小さくなっていくため、時刻t10には時刻t8と比較して電流ILは小さくなる。
【0094】
ここで、時刻t10において、制御信号PG2−2はHレベルからLレベルに変化し、このLレベルは時刻t11まで維持する。このときには、制御信号PG2−1はHレベルを維持している。
このため、時刻t10〜t11の期間では、トランジスタサイズが大きなMOSトランジスタTr2−1はオフになり、トランジスタサイズが小さなMOSトランジスタTr2−2はオンになるので、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなる。
【0095】
また、時刻t10〜t11の期間の電流経路は、図20に示すように、電源VDDからの電流IDDが、MOSトランジスタTr2−2、コイル5、およびMOSトランジスタTr3−1を経由して電源VSSに至る。このときには、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなっているので、コイル5への電流供給量が少なくなる。
図12の時刻t11になると、PWM制御期間T11が終了し、ノンオーバーラップ期間T12に移行する。ノンオーバーラップ期間T12に移行すると、時刻t11〜t11´の期間では、制御信号PG1−1、PG1−2、PG2−1、PG2−2はHレベル、制御信号NG1−1、NG1−2はHレベル、制御信号NG2−1、NG2−2がLレベルである。
【0096】
このため、時刻t11〜t11’ の期間の電流経路は、図21に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−1、Tr3−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。
時刻t11´において、制御信号NG1−1がHレベルからLレベルとなるのでトランジスタTr3−1はオフとなる。従って、時刻t11´〜t12の期間の電流経路は、図22に示すように、電源VSS、寄生ダイオードD4−1、D4−2、コイル5、MOSトランジスタTr3−2および電源VSSの電流経路で電流ILが回生電流として流れる。この回生電流ILは、時間の経過に伴い減少し、図12(M)に示すようにほぼ0〔mA〕となる
ここで、ノンオーバーラップ期間T12に移行する直前において、上記のように、コイル5の出力端子4側の出力抵抗が大きくなっており、コイル5への電流供給が制限されている。ノンオーバーラップ期間T12に移行するときに、コイル5の蓄積エネルギーが小さいために、コイル5に流れる回生電流を短時間で消失できる。
【0097】
そして、図12の時刻t12において、制御回路2Aは、制御信号NG1−2をHレベルからLレベルに切り換えるとともに、制御信号NG2−1をLレベルからHレベルに切り換える。
図12の時刻t13になると、ノンオーバーラップ期間T12を終了し、PWM制御期間T13に移行する。PWM制御期間T13では、制御信号PG1−2、PG2−1、PG2−2、NG2−1はHレベルであり、制御信号PG1−1がPWM信号となり、制御信号NG1−1、NG1−2、NG2−2はLレベルである。このため、MOSトランジスタTr1−1はPWM駆動され、MOSトランジスタTr1−2、Tr2−1、Tr2−2、Tr3−1、Tr3−2、Tr4−2はオフを維持し、MOSトランジスタTr4−1はオンを維持する。
【0098】
図12の時刻t14になると、PWM制御期間T13を終了し、上記の正転動作期間T14となる。
以上のように、第2実施形態では、PWM制御期間T21からノンオーバーラップ期間T22に移行する直前に、MOSトランジスタTr4−1のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr1−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr1−2をオフからオンに切り換えるようにした。
【0099】
また、第2実施形態では、ノンオーバーラップ期間T22において、MOSトランジスタTr4−1のオンを継続した状態でMOSトランジスタTr4−2をオンしたのち、MOSトランジスタTr4−1がオンからオフに切り換えた。
また、第2実施形態では、PWM制御期間T11からノンオーバーラップ期間T12に移行する直前に、MOSトランジスタTr3−1のオンを継続した状態で、MOSトランジスタTr2−1をオンからオフにしたのち、MOSトランジスタTr2−2をオフからオンに切り換えるようにした。
【0100】
また、第2実施形態では、ノンオーバーラップ期間T12において、MOSトランジスタTr3−1のオンを継続した状態でMOSトランジスタTr3−2をオンしたのち、MOSトランジスタTr3−1がオンからオフに切り換えた。
このため、第2実施形態では、PWM制御期間からノンオーバーラップ期間に移行するときに、H型ブリッジ1Aの出力抵抗を大きくし、コイル5に流れる回生電流の消費時間の短縮化できるので、ノンオーバーラップ期間の短縮化を図ることができる。
したがって、第2実施形態によれば、逆流電流や騒音の発生を抑制しつつ、モータの回転効率の向上を図ることができる。
【0101】
(その他の実施形態など)
(1)上記の実施形態では、H型ブリッジ1、1Aのハイサイド側のトランジスタをP型のMOSトランジスタTr1、Tr2とし、そのローサイド側のトランジスタをN型のMOSトランジスタTr3、Tr4とした。この場合には、電源VDDは正の電源となり、電源VSSは負の電源またはグランドとなる。
(2)上記の実施形態の変形例として、H型ブリッジ1、1Aのハイサイド側のトランジスタをP型のMOSトランジスタTr1、Tr2からN型のMOSトランジスタに置き換えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のH型ブリッジ回路は、家庭製品、工業用・医療用機器などの駆動源となる各種のモータの他に、ボイスモータなどの駆動に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
Tr1〜Tr4・・・MOSトランジスタ
Tr1−1、Tr1−2、Tr2−1、Tr2−2・・・MOSトランジスタ
Tr3−1、Tr3−2、Tr4−1、Tr4−2・・・MOSトランジスタ
1、1A・・・H型ブリッジ
2、2A・・・制御回路
3、4・・・出力端子
5・・・コイル(負荷)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源と第2の電源との間に直列に接続される第1及び第2のトランジスタと、前記第1の電源と前記第2の電源との間に直列に接続される第3及び第4のトランジスタと、を備え、前記第1及び第2のトランジスタの接続点と前記第3及び第4のトランジスタの接続点との間に負荷を接続するH型ブリッジと、
前記負荷の通電方向を切り換える切換信号を入力し、当該入力にしたがって前記第1、第2、第3及び第4のトランジスタの駆動をそれぞれ制御する制御回路と、を備え、
前記第1のトランジスタは、第1−1のトランジスタと、前記第1−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第1−2のトランジスタとから構成され、
前記第2のトランジスタは、第2−1のトランジスタと、前記第2−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第2−2のトランジスタとから構成され、
前記第3のトランジスタは、第3−1のトランジスタと、前記第3−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第3−2のトランジスタとから構成され、
前記第4のトランジスタは、第4−1のトランジスタと、前記第4−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第4−2のトランジスタとから構成され、
前記制御回路は、前記第1、第2、第3、および第4のトランジスタを構成する8つのトランジスタのそれぞれについて、予め定めた手順で個別にオンオフ制御することを特徴とするH型ブリッジ回路。
【請求項2】
前記制御回路は、
通常動作状態において、前記第1−1及び第1−2のトランジスタと前記第4−1及び第4−2のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1及び第2−2のトランジスタと第3−1及び第3−2のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、
前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1トランジスタをオフにしたのち、前記第1−2のトランジスタ及び前記第4−1トランジスタをオフにし、または、前記第3−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1トランジスタをオフにしたのち、前記第2−2のトランジスタ及び前記第3−1のトランジスタをオフにして前記負荷に供給する電流を制限することを特徴とする請求項1に記載のH型ブリッジ回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
通常動作状態において、前記第1−1のトランジスタと前記第4−1のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1のトランジスタと前記第3−1のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、
前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1のトランジスタをオフにし、前記第1−2のトランジスタをオンにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1のトランジスタをオフにし、前記第2−2のトランジスタをオンにして前記負荷に供給する電流を制限し、
前記負荷の電流回生時において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第4−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第4−1のトランジスタをオフにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第3−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第3−1のトランジスタをオフにすることを特徴とする請求項1に記載のH型ブリッジ回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載のH型ブリッジ回路を備え、前記H型ブリッジ回路がモータのコイルを駆動することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項1】
第1の電源と第2の電源との間に直列に接続される第1及び第2のトランジスタと、前記第1の電源と前記第2の電源との間に直列に接続される第3及び第4のトランジスタと、を備え、前記第1及び第2のトランジスタの接続点と前記第3及び第4のトランジスタの接続点との間に負荷を接続するH型ブリッジと、
前記負荷の通電方向を切り換える切換信号を入力し、当該入力にしたがって前記第1、第2、第3及び第4のトランジスタの駆動をそれぞれ制御する制御回路と、を備え、
前記第1のトランジスタは、第1−1のトランジスタと、前記第1−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第1−2のトランジスタとから構成され、
前記第2のトランジスタは、第2−1のトランジスタと、前記第2−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第2−2のトランジスタとから構成され、
前記第3のトランジスタは、第3−1のトランジスタと、前記第3−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第3−2のトランジスタとから構成され、
前記第4のトランジスタは、第4−1のトランジスタと、前記第4−1のトランジスタに比べてトランジスタサイズが小さな第4−2のトランジスタとから構成され、
前記制御回路は、前記第1、第2、第3、および第4のトランジスタを構成する8つのトランジスタのそれぞれについて、予め定めた手順で個別にオンオフ制御することを特徴とするH型ブリッジ回路。
【請求項2】
前記制御回路は、
通常動作状態において、前記第1−1及び第1−2のトランジスタと前記第4−1及び第4−2のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1及び第2−2のトランジスタと第3−1及び第3−2のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、
前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1トランジスタをオフにしたのち、前記第1−2のトランジスタ及び前記第4−1トランジスタをオフにし、または、前記第3−2のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1トランジスタをオフにしたのち、前記第2−2のトランジスタ及び前記第3−1のトランジスタをオフにして前記負荷に供給する電流を制限することを特徴とする請求項1に記載のH型ブリッジ回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
通常動作状態において、前記第1−1のトランジスタと前記第4−1のトランジスタをオンにし、または、前記第2−1のトランジスタと前記第3−1のトランジスタをオンにして前記負荷に電流を供給し、
前記負荷に電流を回生させる直前において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第1−1のトランジスタをオフにし、前記第1−2のトランジスタをオンにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第2−1のトランジスタをオフにし、前記第2−2のトランジスタをオンにして前記負荷に供給する電流を制限し、
前記負荷の電流回生時において、前記第4−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第4−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第4−1のトランジスタをオフにし、または、前記第3−1のトランジスタのオンを継続状態とし、前記第3−2のトランジスタをオンにしたのち、前記第3−1のトランジスタをオフにすることを特徴とする請求項1に記載のH型ブリッジ回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載のH型ブリッジ回路を備え、前記H型ブリッジ回路がモータのコイルを駆動することを特徴とするモータ駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2013−110863(P2013−110863A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254211(P2011−254211)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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